説明

杭基礎の施工方法及びその杭基礎

【課題】各既製杭の上部に取り付けられるフーチングの形状を小さくできる杭基礎の施工方法及びその杭基礎を提供する。
【解決手段】杭基礎の施工方法であって、2個の掘削孔2を相互に連通するように掘削し、連通する各掘削孔2にセメントミルク(充填材)3を充填し、セメントミルク(充填材)3を充填した各掘削孔2にそれぞれ既製コンクリート杭1を建込み、各掘削孔2と既製コンクリート杭1の隙間のセメントミルク(充填材)3により2本の既製コンクリート杭1を一体化する杭基礎の施工方法と、相互に連通する2個の掘削孔2の各掘削孔2にそれぞれ既製コンクリート杭1を建込み、各掘削孔2と既製コンクリート杭1の隙間に充填されたセメントミルク(充填材)3により2本の既製コンクリート杭1を一体化した杭基礎である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の既製杭から構成される杭基礎の施工方法及びその杭基礎に関する。
【背景技術】
【0002】
大型の構造物の建設においては、大径の杭が使用されることがあり、大径の現場打ち杭に限らず、大径の既製杭が使用される。
【0003】
しかし、既製杭の直径は、技術開発の進展により拡大されてきているが、未だ製造技術と規格上の制約から最大直径に上限がある。
そのため、柱荷重が大きく1本の既製杭の支持力では十分でない場合には、1個の柱に対してフーチングを介して数本の既製杭で柱荷重を支持する必要がある。
その場合、構造物を支持する既製杭は、一本ごとにある間隔を保って施工されている。
そして、杭の最小間隔について、例えば、「建築基礎構造設計指針」(社団法人日本建築学会発行、2002年4月15日、第2版第2刷)の第199頁第6〜24行(非特許文献1参照)に記載があり、この記載によれば、杭の最小間隔の目安値として、埋込み杭の場合は、杭径の2倍以上としている。
【0004】
図9は、従来の基礎構造を示すもので、2本の既製コンクリート杭の上部にフーチングを取り付けた状態を示す基礎構造で、(a)はその平面図、(b)はその断面図である。
図9に示す従来の基礎構造における2本の既製コンクリート杭の間の間隔は前記の非特許文献1の記載に基づいて、既製コンクリート杭の径の2倍以上となっている。
【0005】
この場合、2本の既製コンクリート杭の間の間隔は、既製コンクリート杭の径の2.5倍以上離れているから、柱にかかる荷重は柱から既製コンクリート杭へとフーチングによって分散されて伝達されることになる。
そのため、フーチングは2本の既製コンクリート杭の間の間隔を覆う必要があるので、相応の大きさのものになる。
【0006】
また、柱からの荷重を分散して2本の既製コンクリート杭に伝達するので、フーチングはせん断力及び曲げ応力等に耐えるものとしなければならない。
したがって、フーチングは構造的に相応の大きさのものとなり、これには所要のコンクリート強度及び鉄筋量等の材料および型枠が必要となる。
また、このようなフーチング施工をするには時間と人手も要することになる。
さらに、このフーチングのための地面掘削が余分に必要となることも多く、これにも仮設材料や時間及び人手を要する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】建築基礎構造設計指針(社団法人日本建築学会発行、2002年4月15日、第2版第2刷の第199頁第6〜24行参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、各既製杭の上部に取り付けられるフーチングの形状を小さくできる杭基礎の施工方法及びその杭基礎を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、(1)、杭基礎の施工方法であって、複数の掘削孔を相互に連通するように掘削し、連通する前記各掘削孔に充填材を充填し、前記充填材を充填した前記各掘削孔にそれぞれ既製杭を建込み、前記各掘削孔と前記既製杭の隙間の前記充填材により前記複数本の既製杭を一体化する杭基礎の施工方法である。
【0010】
また、本発明は、(2)、杭基礎の施工方法であって、所定直径の1個の掘削孔を掘削し、前記掘削孔に充填材を充填し、前記充填材を充填した前記掘削孔の中心部に複数本の既製杭をまとめて建込み、前記掘削孔と前記複数本の既製杭の隙間の前記充填材により前記複数本の既製杭を一体化する杭基礎の施工方法である。
【0011】
請求また、本発明は、(3)、前記充填材はセメントミルクである上記(1)または(2)記載の杭基礎の施工方法である。
【0012】
また、本発明は、(4)、相互に連通する複数の掘削孔の各掘削孔にそれぞれ既製杭を建込み、前記各掘削孔と前記既製杭の隙間に充填された充填材により前記複数本の既製杭を一体化した杭基礎である。
【0013】
また、本発明は、(5)、所定直径の1個の掘削孔の中心部に複数本の既製杭をまとめて建込み、前記掘削孔と前記複数本の既製杭の隙間に充填された充填材により前記複数本の既製杭を一体化した杭基礎である。
【0014】
また、本発明は、(6)、前記充填材はセメントミルクである上記(4)または(5)記載の杭基礎である。
【0015】
なお、本発明の目的に添ったものであれば上記(1)から(6)を適宜組み合わせた構成も採用可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の杭基礎の施工方法及びその杭基礎によれば、従来例(図9に示すもの)に比較して、フーチングの形状寸法を小さくすることができる。
そのため、フーチングの断面性能の低減も可能となる。さらに、フーチングの形状寸法を小さくすることによって、全体的な資材の低減および施工工期・人手の低減が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る施工方法における相互に連通する2個の掘削孔を二軸オーガーで掘削する工程を示す断面図である。
【図2】図2は、図1に示す相互に連通する2個の各掘削孔にセメントミルクを充填する工程を示し、(a)は相互に連通する2個の各掘削孔の平面図、(b)はその断面図である。
【図3】図3は、図2に示すセメントミルクを充填した相互に連通する2個の各掘削孔に既製コンクリート杭を建込んだ状態を示す断面図である。
【図4】図4は、図3に示す2本の既製コンクリート杭の上部にフーチングを取り付けた状態を示す基礎構造で、(a)はその平面図、(b)はその断面図である。
【図5】図5は、相互に連通する3個の掘削孔を直線状に掘削した掘削孔の平面図で、図2(a)に相当する平面図である。
【図6】図6は、相互に連通する3個の掘削孔を略三角形状に掘削した掘削孔の平面図で、図2(a)に相当する平面図である。
【図7】図7は、相互に連通する4個の掘削孔を略四角形状に掘削した掘削孔の平面図で、図2(a)に相当する平面図である。
【図8】図8は、本発明の他の実施の形態に係るものの平面図である。
【図9】図9は、従来の基礎構造を示すもので、2本の既製コンクリート杭の上部にフーチングを取り付けた状態を示す基礎構造で、(a)はその平面図、(b)はその断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態に係る杭基礎の施工方法及びその杭基礎について以下に図1〜7を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係る施工方法における相互に連通する2個の掘削孔を二軸オーガーで掘削する工程を示す断面図である。
【0020】
図2は、図1に示す相互に連通する2個の各掘削孔にセメントミルクを充填する工程を示し、図2(a)は相互に連通する2個の各掘削孔の平面図、図2(b)はその断面図である。
【0021】
図3は、図2に示すセメントミルクを充填した相互に連通する2個の各掘削孔に既製コンクリート杭を建込んだ状態を示す断面図である。
【0022】
図4は、図3に示す2本の既製コンクリート杭の上部にフーチングを取り付けた状態を示す基礎構造で、 図4(a)はその平面図、 図4(b)はその断面図である。
【0023】
図5は、相互に連通する3個の掘削孔を直線状に掘削した掘削孔の平面図で、図2(a)に相当する平面図である。
【0024】
図6は、相互に連通する3個の掘削孔を略三角形状に掘削した掘削孔の平面図で、図2(a)に相当する平面図である。
【0025】
図7は、相互に連通する4個の掘削孔を略四角形状に掘削した掘削孔の平面図で、図2(a)に相当する平面図である。
【0026】
本発明の実施の形態に係る施工方法について以下に説明する。
まず、2本の既製コンクリート杭(既製杭)を埋込み工法について説明する。
図1に示すように、二軸オーガー8によって地盤(支持層)6及び中間地盤7に掘削孔2を掘削する。
二軸オーガー8によって掘削された掘削孔2は、図2(a)に示すように、略ひょうたん状に形成され、2個の掘削孔2は相互に連通している。
【0027】
次に、図2(a),図2(b)に示すように、2個の掘削孔2にセメントミルク(充填材)3を充填する。
その際、地盤(支持層)6の部分には、セメント量を多くしたセメントミルク(充填材)3を根固め液として注入し、その上にセメントミルク(充填材)3を周辺固定液として充填する。
【0028】
次に、図3に示すように、セメントミルク(充填材)3を充填した各掘削孔2にそれぞれ既製コンクリート杭1を建込む。
セメントミルク(充填材)3が硬化することにより2本の既製コンクリート杭1は一体化されて杭基礎となる。
【0029】
以上のような施工方法によって、図3に示すように、相互に連通する2個の掘削孔2の各掘削孔2にそれぞれ既製コンクリート杭1を建込み、各掘削孔2と既製コンクリート杭1の隙間に充填されたセメントミルク(充填材)3により2本の既製コンクリート杭1を一体化した杭基礎を構成することができる。
なお、図3において、9は捨てコンクリート、10は砕石を示す。
【0030】
そして、図4(a),図4(b)に示すように、2本の既製コンクリート杭1の上部にフーチングを取り付けることにより基礎構造が形成される。
【0031】
次に、3本の既製コンクリート杭1を建込むための掘削孔2の例について説明する。
図5に示すものは、相互に連通する3個の掘削孔2を直線状に掘削した掘削孔2の平面図で、図2(a)に相当する平面図である。
3個の掘削孔2を直線状に掘削するには、図5において左側と中央の掘削孔2を二軸オーガー8により掘削し、続いて中央と右側の掘削孔2をもう一度、二軸オーガー8により掘削する。
すなわち、二軸オーガー8の二度掘りにより3個の掘削孔2を直線状に掘削する。
その後、相互に連通する3個の掘削孔2にセメントミルク(充填材)3を充填する。
【0032】
次に、図示はしないが、セメントミルク(充填材)3を充填した各掘削孔2にそれぞれ既製コンクリート杭1を建込む。
セメントミルク(充填材)3が硬化することにより3本の既製コンクリート杭1は一体化されて杭基礎となる。
そして、図示はしないが、3本の既製コンクリート杭1の上部にフーチングを取り付けることにより基礎構造が形成される。
【0033】
図6に示すものは、相互に連通する3個の掘削孔2を略三角形状に掘削した掘削孔2の平面図で、図2(a)に相当する平面図である。
3個の掘削孔2を略三角形状に掘削するには、図6において下側の2個の掘削孔2を二軸オーガー8により掘削し、続いて上側の掘削孔2を一軸オーガーにより掘削する。
その後、相互に連通する3個の掘削孔2にセメントミルク(充填材)3を充填する。
【0034】
次に、図示はしないが、セメントミルク(充填材)3を充填した各掘削孔2にそれぞれ既製コンクリート杭1を建込む。
セメントミルク(充填材)3が硬化することにより3本の既製コンクリート杭1は一体化されて杭基礎となる。
そして、図示はしないが、3本の既製コンクリート杭1の上部にフーチングを取り付けることにより基礎構造が形成される。
【0035】
次に、4本の既製コンクリート杭1を建込むための掘削孔2の例をついて説明する。
図7に示すものは、相互に連通する4個の掘削孔2を略四角形状に掘削した掘削孔2の平面図で、図2(a)に相当する平面図である。
4個の掘削孔2を略四角形状に掘削するには、図7において下側の2個の掘削孔2を二軸オーガー8により掘削し、続いて上側の2個の掘削孔2を二軸オーガー8により掘削する。
その後、相互に連通する4個の掘削孔2にセメントミルク(充填材)3を充填する。
【0036】
次に、図示はしないが、セメントミルク(充填材)3を充填した各掘削孔2にそれぞれ既製コンクリート杭1を建込む。
セメントミルク(充填材)3が硬化することにより4本の既製コンクリート杭1は一体化されて杭基礎となる。
そして、図示はしないが、4本の既製コンクリート杭1の上部にフーチングを取り付けることにより基礎構造が形成される。
【0037】
次に、本発明の他の実施の形態に係る杭基礎の施工方法及びその杭基礎について以下に図8を参照して説明する。
図8に示すように、図示しない大口径掘削機により、所定直径(大口径)の1個の掘削孔2’を掘削する。
その後、掘削孔2’にセメントミルク(充填材)3を充填する。
【0038】
次に、セメントミルク(充填材)3を充填した掘削孔2’の中心部に3本の既製コンクリート杭(既製杭)1’をまとめて建込む。
セメントミルク(充填材)3が硬化することにより3本の既製コンクリート杭1’は一体化されて杭基礎となる。
そして、図示はしないが、3本の既製コンクリート杭1’の上部にフーチングを取り付けることにより基礎構造が形成される。
【0039】
本発明の実施の形態及び他の実施の形態に係る杭基礎の施工方法及びその杭基礎によれば、従来例(図9に示すもの)に比較して、フーチング4の形状寸法を小さくすることができる。
そのため、フーチング4の断面性能の低減も可能となる。さらに、フーチング4の形状寸法を小さくすることによって、全体的な資材の低減および施工工期・人手の低減が可能である。
【0040】
以上で説明した本発明の実施の形態及び他の実施の形態に係る杭基礎の施工方法及びその杭基礎においては、既製杭として既製コンクリート杭を使用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、既製コンクリート杭に代えて既製鋼製杭を使用することもできる。
また、既製コンクリート杭及び既製鋼製杭は中実のものでも、中空のものでもよい。
【符号の説明】
【0041】
1…既製コンクリート杭(既製杭)
2,2’ …掘削孔
3…セメントミルク(充填材)
4…フーチング
5…柱
6…地盤(支持層)
7…中間地盤
8…二軸オーガー
9…捨てコンクリート
10…砕石



【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭基礎の施工方法であって、複数の掘削孔を相互に連通するように掘削し、連通する前記各掘削孔に充填材を充填し、前記充填材を充填した前記各掘削孔にそれぞれ既製杭を建込み、前記各掘削孔と前記既製杭の隙間の前記充填材により前記複数本の既製杭を一体化することを特徴とする杭基礎の施工方法。
【請求項2】
杭基礎の施工方法であって、所定直径の1個の掘削孔を掘削し、前記掘削孔に充填材を充填し、前記充填材を充填した前記掘削孔の中心部に複数本の既製杭をまとめて建込み、前記掘削孔と前記複数本の既製杭の隙間の前記充填材により前記複数本の既製杭を一体化することを特徴とする杭基礎の施工方法。
【請求項3】
前記充填材はセメントミルクであることを特徴とする請求項1または2記載の杭基礎の施工方法。
【請求項4】
相互に連通する複数の掘削孔の各掘削孔にそれぞれ既製杭を建込み、前記各掘削孔と前記既製杭の隙間に充填された充填材により前記複数本の既製杭を一体化したことを特徴とする杭基礎。
【請求項5】
所定直径の1個の掘削孔の中心部に複数本の既製杭をまとめて建込み、前記掘削孔と前記複数本の既製杭の隙間に充填された充填材により前記複数本の既製杭を一体化したことを特徴とする杭基礎。
【請求項6】
前記充填材はセメントミルクであることを特徴とする請求項4または5記載の杭基礎。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−236311(P2010−236311A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87046(P2009−87046)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000176512)三谷セキサン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】