説明

杭穴掘削ヘッド

【課題】ヘッド本体1と掘削腕40とが揺動時に摺れる面に凹部を形成せずに、異物の入り込みを防止して、掘削腕の揺動角度の確実な規制をする。
【解決手段】掘削ロッド52に連結できるヘッド本体1の正面の水平軸20の周りに揺動自在に、掘削腕40を連結して掘削ヘッド50とする。ヘッド本体1に、小径掘削時に掘削腕40の側縁40bに当接して、揺動を規制するストッパー22と(a)、大径掘削時に掘削腕40の側縁40bに当接して、揺動を規制するストッパー26、28と(b)、を取り付ける。ヘッド本体1、水平軸20及び掘削腕40は、「掘削腕40が小径掘削時の揺動角度で(a)、一旦逆回転した際に、両掘削腕40の先端裏面がヘッド本体1の正面より離れるように変形して、掘削腕40の裏面がストッパー22の上方を通過できるように変形可能」とし、続いて正回転して大径掘削状態(b)となるように、取付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、杭穴を掘削して基礎杭を構築する際に、杭穴を掘削するために使用する掘削ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、掘削ロッドの下端に接続できるヘッド本体の両側に揺動自在に掘削腕を取り付けて、揺動角度を変化させることにより掘削径を自在に変更して掘削する掘削ヘッドが提案され実施されている。この場合、所定の掘削径に掘削腕を保持するために、掘削腕とヘッド本体との間に、ストッパーの役割を果たす部材が必要であった。
【0003】
例えば、掘削腕の外面(ヘッド本体の表面と摺れる面)に掛止突起を設け、ヘッド本体の表面(係止腕と摺れる面)に掛止突起を係止できる掛止穴を形成していた(特許文献1)。
【特許文献1】特開平8−338020
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の技術の場合、掛止穴と掛止穴との間を掘削腕が移動する際に、掛止突起の先端がヘッド本体の表面に当設し、掘削腕の外面とヘッド本体の表面との間に異物が入り込み、掘削腕の揺動に支障がある場合もあった。また、掛止突起が掛止していない掛止穴では、掘削腕で塞がれないため、掛止穴は開放状態となり、掛止穴内に異物が入り込み、掘削腕の規制に支障がある場合もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、この発明は、ヘッド本体表面の掛止穴を廃止し、掘削腕の掛止突起も廃止して、上記問題点を解決した。
【0006】
即ち、この発明は、以下の(1)〜(3)の要件を具備したことを特徴とする杭穴掘削ヘッドである。
(1) 掘削ロッドに連結できるヘッド本体の両正面に、前記ヘッド本体の水平軸の周りに揺動自在に、下端部に掘削刃を取り付けた掘削腕の上端部を連結する。
(2) 前記ヘッド本体に、小径掘削時に前記掘削腕の側縁に当接して、前記掘削腕の揺動を規制する小径用ストッパー、大径掘削時に前記掘削腕の側縁に当接して、前記掘削腕の揺動を規制する大径用ストッパーを夫々取り付ける。
(3) 前記ヘッド本体、前記水平軸及び前記掘削腕は、「前記両掘削腕の先端裏面が前記ヘッド本体の正面より離れるように変形して、前記掘削腕の裏面が前記小径用ストッパーの上方を通過できるように変形可能」に、連結されている。
【0007】
また、他の発明は、以下の(1)〜(3)の要件を具備したことを特徴とする杭穴掘削ヘッドである。
(1) 掘削ロッドに連結できるヘッド本体の両正面に、前記ヘッド本体の水平軸の周りに揺動自在に、下端部に掘削刃を取り付けた掘削腕の上端部を連結する。
(2) 前記ヘッド本体に、前記ヘッド本体を正回転時して小径掘削時に前記掘削腕の側縁に当接して、前記掘削腕の揺動を規制する小径用ストッパーと、前記ヘッド本体を正回転して大径掘削時に前記掘削腕の側縁に当接して、前記掘削腕の揺動を規制する大径用ストッパーとを、夫々取り付ける。
(3) 前記ヘッド本体、前記水平軸及び前記掘削腕は、「前記小径掘削時の掘削腕の揺動角度でヘッド本体を下方に下げて、前記掘削刃の先端が杭穴底に加圧された際に、前記両掘削腕の先端裏面が前記ヘッド本体の正面より離れるように変形して、前記掘削腕の裏面が前記小径用ストッパーの上方を通過できるように変形可能」に、連結されている。
【0008】
また、他の発明は、以下の(1)〜(3)の要件を具備したことを特徴とする杭穴掘削ヘッドである。
(1) 掘削ロッドに連結できるヘッド本体の両正面に、前記ヘッド本体の水平軸の周りに揺動自在に、下端部に掘削刃を取り付けた掘削腕の上端部を連結する。
(2) 前記ヘッド本体に、小径掘削時に前記掘削腕の側縁に当接して、前記掘削腕の揺動を規制する小径用ストッパー、大径掘削時に前記掘削腕の側縁に当接して、前記掘削腕の揺動を規制する大径用ストッパーを夫々取り付ける。
(3) 前記ヘッド本体、前記水平軸及び前記掘削腕は、「前記掘削腕が小径掘削時の揺動角度で、前記ヘッド本体を逆回転した際に、前記両掘削腕の先端裏面が前記ヘッド本体の正面より離れるように変形して、前記掘削腕の裏面が前記小径用ストッパーの上方を通過できるように変形可能」に、連結されている。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、ヘッド本体に、掘削腕の側縁に当接するストッパーを設けたので、ヘッド本体又は掘削腕のいずれにも、掘削土などの異物が入り込む凹部が形成されないので、掘削腕の揺動角度を容易且つ確実に規制して、正確な掘削径で杭穴を構築できる。また、正回転して、小径掘削、大径掘削のいずれもできるように、ストッパーを配置できるので、中掘工法に適用した場合に、地上への排土の支障なく杭穴掘削ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(1) 掘削ロッド52の下端部に連結できる連結部5を有するヘッド本体1の上端部(直方体部6)の正面7、7に水平軸20、20を設けて、水平軸20、20に、下端部に掘削刃47、47を有する掘削腕40の上端部(本体部41の上端部)を夫々連結する。この際、ヘッド本体1の各正面7、11、16と掘削腕40の裏面44とが夫々対向する。
掘削腕40、40は水平軸20周りに揺動可能に取り付けてあり、ヘッド本体1の各正面7、11、16と掘削腕40の裏面44とが摺るように摺動する。更に、掘削腕40ヘッド本体1に対して所定の抵抗を加えると、揺動腕40の上端部(水平軸20取付高さ付近)を軸にして、揺動方向とは直角の方向に回転して下端が矢示61、61方向に開いて、ヘッド本体1の下端部(膨大部15)の正面16と掘削腕40の裏面44との間に隙間36を生じるように変形可能となっている(図3(b))。以上のような作動ができるように、掘削腕40と水平軸20との取付け、水平軸20とヘッド本体1との取り付けが構成されている(図1)。
【0011】
(2) ヘッド本体1に、ヘッド本体1(掘削ロッド52)を正回転した際の掘削腕40の揺動角度(傾斜。小径掘削状態)を維持するための第1ストッパー(小径用ストッパー)22を設ける。また、ヘッド本体1(掘削ロッド52)を正回転して、更に掘削腕40が揺動角度(傾斜)を大きくした大径掘削状態を維持するための第2ストッパー(大径用ストッパー)26、上部ストッパー28を設ける(図1)。
【0012】
(3) 以上のようにして、掘削ヘッド50を構成する(図1(a)(b))。ヘッド本体1の下端部にも固定掘削刃3、3が下方に向けて突設してある。
【0013】
(4) この掘削ヘッド50は、掘削ロッド52の下端部を連結部4に接続して、従来の掘削ヘッドと同様に、ヘッド本体1の固定掘削刃3、3又は掘削腕40の掘削刃47を地盤に当てて、掘削ロッド52を正回転すれば、ヘッド本体1も正回転して、杭穴57の掘削を開始できる。この際、掘削腕40の掘削刃47が杭穴底(地面)に当接して生じる抵抗、あるいは掘削土などにより掘削腕40(本体部51又は掘削刃47)自体が受ける抵抗により、掘削腕40は開いて、外側縁40bが第1ストッパー22に当接して、それ以上揺動角度が開くことを規制され、所定の径D1で杭穴57の軸部58を掘削できる(図2(a))。
【0014】
(5) 杭穴57の軸部58の掘削が完了したならば、掘削腕40を矢示61、61方向に開いて、掘削腕40の裏面44とヘッド本体1の下端部の正面16との間に隙間36を生じさせ(図3(b))、掘削腕40の裏面44側が第1ストッパー22の先端(上方)をくぐらせて(通り抜けさせて)、掘削腕40を大径掘削用の揺動角度に開き、外側縁40bを第2ストッパー26に当接させて、それ以上揺動角度が開くことを規制させて、所定の径D2で杭穴57の拡底部59を掘削できる(図2(b))。
【0015】
(6) (5)で、掘削腕40を矢示61、61方向に開き、隙間36を生じさせるための一の方法は、小径掘削状態で、一旦掘削ロッド52(ヘッド本体1)を逆回転させると共に若干下方に下げれば、掘削腕40が杭穴36内の掘削泥土の抵抗を受けて、矢示61、61方向にやや大きく開くので(図3(b))、直ぐに掘削ロッド52(ヘッド本体1)を正回転すれば、掘削腕40は第1ストッパー22を飛び越えることができる。この際、長く正転した間に非常に強い力で第一ストッパー22に掘削腕40が押し付けられている状態にあり、逆回転によりこの状態を解除することで掘削ヘッド50を下方に押し込んだ際の掘削腕40の移動を容易とする。
この方法を採用する場合には、掘削腕が土圧の抵抗を受ける構造とするとすることが必要である。例えば、掘削する土質にもよるが、掘削腕40が開きやすいように、掘削腕40、40の各本体部41の下端部や各掘削刃47を外側に向けて開いた形状とし(図1)、あるいは、ヘッド本体1の下端より掘削腕40の先端が下方に位置している形状とし(図1、図2)、あるいは、小径掘削状態(及び大径掘削状態)で、正面視でヘッド本体1と掘削腕40とが重ならず、掘削腕40が下方又は横方向に突出した状態となる形状とし(図2(a)(b))、あるいは、掘削腕40の表面に小傾斜板などを設けることもできる(ただし掘削時に生じる抵抗はできるだけ少なくできることが望ましい)(図示していない)。
また、他の方法では、小径掘削状態で、掘削ロッド52(ヘッド本体1)を押し下げて掘削刃47、47を杭穴57の底に押し付けながら、正回転すると、掘削刃47、47が杭穴57の底との抵抗により、掘削腕40、40は矢示61、61方向に開くとともに(図3(b))、直ぐに第1ストッパー22を飛び越えることができる。また、この際、上記一の方法と同様に、掘削刃47、47を杭穴57の底に押し付けながら一旦逆回転して、直ぐに正回転させることもできる。また、この方法を採用する場合には、小径掘削状態で、掘削刃47の先端が、固定掘削刃3、3の先端よりも下方に位置していることが望ましい(図2(a))。
また、上記一の方法と他の方法とを併用することもできる。
【0016】
(7) 杭穴57の拡底部59の掘削が完了したならば、掘削ヘッド50のヘッド本体1の吐出口32からセメントミルクを拡底部59内に吐出して、掘削ヘッド50を正回転しながら掘削土と撹拌混合して、ソイルセメントを形成する。
【0017】
(8) ソイルセメントの形成が完了したならば、再び、掘削腕40を矢示61、61方向に開いて、掘削ロッド52(ヘッド本体1)を逆回転して、掘削腕40の裏面44とヘッド本体1の下端部の正面16との間に隙間36を生じさせ(図3(b))、第1ストッパー22の先端を掘削腕40の裏面44側をくぐらせる(通り抜けさせる)。続いて、掘削ロッド52(ヘッド本体1)の回転を止めて、揺動腕40を下垂れ状態にして、掘削ヘッド50を地上に引き上げる。
【0018】
(9) (8) において、隙間36を生じさせる一の方法は、大径掘削状態で、一旦掘削ロッド52(ヘッド本体1)を逆回転させ、掘削腕40が杭穴36内の掘削泥土の抵抗を受けるようにして、矢示61、61方向に開かせば(図3(b))、掘削腕40は第1ストッパー22を飛び越えることができる。この方法を採用する場合には、拡底部59内の状態にもよるが、掘削腕40、40の各本体部41の下端部や各掘削刃47を外側に向けて開いた形状とすれば(図1(b))、掘削ロッド52を下方に押し下げることにより、矢示61、61方向に開く抵抗力を与えることができる。
また、他の方法では、大径掘削状態で、掘削ロッド52(ヘッド本体1)の掘削刃47、47を杭穴57の底に押し付ければ、掘削刃47、47が杭穴57の底との抵抗により、掘削腕40、40は矢示61、61方向に開くので(図3(b))、逆回転させれば、第1ストッパー22を飛び越えることができる。この方法を採用する場合には、大径掘削状態で、掘削刃47の先端が、固定掘削刃3、3の先端よりも下方に位置していることが望ましい(図2(b))。
【実施例1】
【0019】
図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【0020】
[1]掘削ヘッド50の構成
【0021】
(1) ヘッド本体1は、基部2の下端に固定掘削刃3、3を下方に向けて突設し、基部2の上端に掘削ロッド52との連結部4を有する。ヘッド本体1の基部2は上部の直方体部6、中間部の縮小部10、下部の膨大部15とからなり、膨大部15の下面に固定掘削刃3、3が突設されている。
基部2の直方体部6の正面7から縮小部10の正面11が同一幅でフラットに形成され、縮小部10の正面11の下部は直方体部6の正面7より大きな幅で横方向に突出して膨大部15が形成され、膨大部の正面16の下縁18の中央が最も下がった略円弧に形成されている。また、膨大部15は、略水平の上面19を有し、縮小部の側面12、膨大部15の水平部19、側面17が連続している。
また、基部2の縮小部10の側面12は、上縁(直方体部6の側面8の下縁)から膨大部15の側面17の下縁に向けて徐々に幅が小さくなるように斜めに形成されている。
【0022】
(2) ヘッド本体1の基部2の直方体部6の正面7、7に水平軸20、20が夫々突設され、両水平軸20に、夫々掘削腕40の上端部が取り付けられている。
【0023】
(3) 掘削腕40の本体部41の正面42は、下方に向けて、水平軸20が取り付けられた上部で幅広に形成され、中間部で幅狭に形成され、下端部で再び幅広に形成されている。
また、掘削腕40の本体部41の側面43は全長に亘り略同じ幅で形成され、かつヘッド本体1の正面7、11、16の傾斜に沿って屈曲して形成されている。即ち、側面43で、本体部41の上部が鉛直で、中間部は下方に向けて掘削腕40、40が近づくように(中心、下方に向けて)傾斜し、下部は両掘削腕40、40が離れるように(外方、下方に向けて)傾斜して形成されている。
本体部41の下端部に、掘削刃47、47を、下方に向けて固定する。掘削刃47、47は、本体部41の下部(掘削刃47、47の取付部分)の傾斜に併せて、外側、下方に向けて傾斜して取り付けられている。
また、本体部41の上端に、上部膨出部45を連設する。
【0024】
(4) ヘッド本体1の直方体部6の側面8に、撹拌及び排土用の撹拌板34、34を、側面視で斜めに突設する(図1(a)(b))。また、ヘッド本体1の縮小部10の側面12、12に、横設した円柱状形状で、セメントミルクなどを放出する吐出口32、32を設ける(図1(b))。吐出口32には開閉弁が設けられ、吐出口32からヘッド本体1、連結部4から掘削ロッド52を通して地上に至るパイプに連結して(図示していない)、地上から各種掘削液やセメントミルクなどを杭穴57内へ放出する際に使用する。
【0025】
(5) また、掘削腕40が揺動傾斜して小径掘削状態となった傾斜角度を保持するために、ヘッド本体1の膨大部15の正面16、16に、掘削腕40の下部(中間部又は下端部)に当設する第1ストッパー22を固定する。第1ストッパー22は、その一面(内側)22aが、掘削腕40の外側縁40bに当接する。
また、ヘッド本体1の膨大部15の正面16、16に、この状態で、掘削腕40の内側縁40aに当接する出没ストッパー24を固定する。出没ストッパー24は、外方に向けて凸の半球状で、ヘッド本体1の膨大部15の正面16から露出してあり、通常は突出状態となるようにバネなどで付勢しており、押圧により正面16と同程度に没するようになっている。
また、掘削腕40は、第1ストッパー22で、それ以上開かないように規制され、出没ストッパー24で、それ以下に閉じないように規制して、常に一定の傾斜角度を保持するように作用する。
【0026】
(6) また、掘削腕40が揺動傾斜して大径掘削状態となった傾斜を保持するために、ヘッド本体1の膨大部15の上面19、19に(又は正面16、16に)、第2ストッパー26を固定する。また、この状態で、同様に、掘削腕40が揺動傾斜して大径掘削状態となった傾斜を保持するために、ヘッド本体1の直方体部6の正面7に、掘削腕40の上方膨出部45に当接して、掘削腕40がそれ以上開かないように、最大角度を規制する上部ストッパー28を固定する。
また、この状態で、第1ストッパー22の他面(外側)22bが、掘削腕40の内側縁40aに当設して、掘削腕40がそれ以下に閉じないように最小角度を規制するように作用する。
【0027】
(7) また、ヘッド本体1の基部2の膨大部15の正面16に、掘削腕が下方に垂れた状態で、逆回転した際に、垂れた状態を維持する第3ストッパー30を固定する。第3ストッパー30は、逆回転時に掘削腕40の内則縁40aが当接する。
【0028】
(8) 以上のようにして、この発明の掘削ヘッド50を構成する(図1(a)(b))。掘削腕40が摺動した際に、掘削腕40の裏面44が、ヘッド本体1の基部2の各正面7、11、16に沿って揺動するような形状に形成してある。
また、前記において、ヘッド本体1及び掘削腕40は、大径掘削状態に掘削腕40が傾斜した状態で、掘削腕40の掘削刃47の下端は、ヘッド本体1の固定掘削刃3の下端より下方に位置するように形成されている(図2(b))。
また、小径掘削状態又は大径掘削状態で、掘削刃47、47の先端を地盤(杭穴の底)に押圧すると地盤との抵抗により、あるいは押圧せずに杭穴内で逆回転すると掘削土の抵抗により、掘削腕40、40は、水平軸20付近を軸として、僅かに回転して、下端が矢示61、61方向(揺動方向とは直角な方向)に開いて、ヘッド本体1の各正面7、11、16と掘削腕40の裏面44との間に隙間36が開くように、ヘッド本体1、水平軸20及び掘削腕40は形成されている(図3(b))。第1ストッパー22の高さは、この隙間36より低く、第2ストッパー26はこの隙間36より高く形成されている。
尚、掘削腕40、各ストッパー22、24、26、28、30は、ヘッド本体1の両側に同一に形成されている。
【0029】
[2]掘削ヘッドの使用(掘削方法)
【0030】
次に、前記実施例に基づくこの発明の掘削ヘッド50を中掘工法に使用した例について説明する。
【0031】
(1) 中掘工法において、掘削ロッド52の先端に掘削ヘッド40を取付け、掘削ヘッド50を中空の既製杭54の中空部55を挿通して(図1(a)(b))、既製杭54の下端56から突出させる(図2(a))。
【0032】
(2) 掘削ロッド52を正回転すると、掘削ヘッド50の掘削腕40、40は、掘削刃47、47の先端が地面(杭穴底)に接触し、摩擦により掘削腕11は夫々揺動し(図2(a)。小径揺動状態)、掘削腕40、40は、第1ストッパー22及び出没ストッパー24に規制される。従って、掘削刃47、47及び固定掘削刃3、3で、予め定められた径D1の杭穴57の軸部58を掘削できる(図2(a)、図3(a))。また、この際、掘削土は、掘削ロッド52の螺旋翼により(図示していない)、既製杭54の中空部55を通って上方に移送される。
掘削ヘッド50による杭穴57の軸部58の掘削が完了した後、あるいは掘削しながら徐々に、既製杭54を下降する。
【0033】
(3) 次に、杭穴57の軸部58の掘削が完了した時点で、一旦掘削ロッド52の回転速度を緩め、掘削ロッド52を押し下げる。この状態(小径掘削状態に掘削腕40が傾斜した状態)で、掘削腕40の掘削刃47の下端は、ヘッド本体1の固定掘削刃3の下端より下方に位置しているので、掘削ロッド52を押し下げると、掘削刃47、47の先端が地盤(杭穴57の底面)に押圧する。これにより、掘削腕40、40の下端は矢示61、61方向に離れるようになり(水平軸20付近を中心に僅かに回転して)、ヘッド本体1の各正面7、11、16と掘削腕40の裏面44との間に隙間36が開く(図3(b))。従って、掘削腕40の裏面44が第1ストッパー22を乗り越えて(図3(b))、揺動傾斜角度が大きく開き、掘削腕40の外側縁40bが第2ストッパー26に当接すると共に、掘削腕40の上方膨出部45が上部ストッパー28に当接して、両ストッパー26、28により、掘削腕40の揺動角度が規制され、それ以上大きく開かないようになる。
また同時に、掘削腕40の内側縁40aが第1ストッパー22の他面(外側)22bに当接するので、掘削腕40がそれ以下に閉じることも規制され、掘削腕40はその傾斜角度を維持する。従って、径D2の杭穴57の拡底部59の掘削が正確にできる。
尚、この際、掘削ロッド52を上昇させて、または既製杭54を下降させれば、掘削ヘッド50の掘削腕40が既製杭54の下端56に当接し、それ以上掘削ロッド52を上昇させることはできない(既製杭54を下降させることはできない)ので、掘削腕40、40が第2ストッパー26、上部ストッパー28に規制されて大径掘削状態に開いていることが確認できる。
【0034】
(4) 所定の深さだけ、径D2で拡底部59の掘削をしたならば、杭穴底から掘削刃47、47を離し、掘削ヘッド50の回転を続けて、拡底部59内の掘削土を撹拌しながら、ヘッド本体1の吐出口32、32からセメントミルクを吐出してソイルセメントを形成する。
【0035】
(5) 所定のセメントミルクが形成されたならば、掘削ロッド52(掘削ヘッド50)の回転を止めて、掘削ロッド52を押し下げて、掘削ヘッド52の掘削刃47、47を杭穴底に押しつけて、ヘッド本体1の各正面7、11、16と掘削腕40の裏面44とが隙間36を生じるように開いた状態にして(図3(b))、掘削ロッド52を逆回転すると、掘削腕40、40は、第1ストッパー22、22を乗り越えて閉じ(図3(a))、揺動傾斜角度が小さくなり、下方に垂れた状態となる(図1)。また、この際、掘削腕40の内側縁40aが第3ストッパー30に係止するので、逆回転により掘削腕40が第1ストッパー22とは逆側に振れることを防止でき、下方に垂れた状態を維持できる。
この状態で、掘削ロッド52及び掘削ヘッド50を既製杭54の中空部55を通って(図1(a)(b))、地上へ引き上げると共に、中空の既製杭54を下方に押し下げ、既製杭54の下端56を拡底部59内に位置させる(図示していない)。
【0036】
(6) 以上のようにして、セメントミルク(ソイルセメント)が固化したならば、基礎杭を構築が完了する(図示していない)。
【0037】
[3]他の実施例
【0038】
(1) 前記実施例では、掘削ヘッド50を中掘工法に使用したが、予め杭穴を掘削してその後に杭穴に既製杭を埋設するいわゆる先掘工法や、杭穴内にコンクリート及び鉄筋かごを入れる現場造成杭などにおいて、杭穴を掘削する際に、使用することもできる(図示していない)。
【0039】
(2) また、前記実施例において、ヘッド本体1及び掘削腕40の形状は実施例に限定されず、ヘッド本体1の水平軸20周りに、掘削刃47、47付き掘削腕40、40が揺動可能に連結された構造であれば、他の構造であっても可能である(図示していない)。
【0040】
(3) 前記実施例において、小径掘削時に開きが縮まらないように出没ストッパー24を設けたが、省略することもできる(図示していない)。
また、大径掘削時に開きの最大を規制する第2ストッパー26、上部ストッパー28を設けたが、いずれか一方を省略することもできる(図示していない)。
【0041】
(4) 前記実施例において、掘削腕40の裏面44とヘッド本体1の正面7、11、16との間が開くように水平軸20付近を軸として、掘削腕40の掘削刃47側が回動する機構は、掘削腕40と水平軸20の取り付け構造、または水平軸20とヘッド本体1の取付構造のいずれか一方又は両方の取付構造で実現させても良い(図示していない)。
【0042】
(5) また、前記実施例において、大径掘削状態に掘削腕40が傾斜した状態で、掘削腕40の掘削刃47の下端は、少なくともヘッド本体1の固定掘削刃3の下端より下方に位置するように形成したが(図2(b))、少なくとも小径掘削状態で、掘削腕40の掘削刃47の下端が、ヘッド本体1の固定掘削刃3の下端より下方に位置するように形成することが望ましい。杭穴内の掘削土やセメントミルクの状態により、掘削ロッド52を逆回転したり上下動させることにより、掘削腕40全体が受ける抵抗により、矢示61、61方向に掘削腕40、40が開く構造とすることができれば、掘削腕40の掘削刃47の下端位置とヘッド本体1の固定掘削刃3の下端位置は同等の高さにし、あるいは逆にするなど任意である(図示していない)。
【0043】
(6) また、前記実施例において、吐出口32をヘッド本体1の縮小部10の側面12、12に設けたが、掘削腕40、40の作動に支障が無い他の位置、例えば膨大部15の下面などに設けることもできる(図示していない)。また、複数箇所に併設することもできる(図示していない)。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明の実施例で(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図2】同じくこの発明の実施例で(a)は小径掘削状態の正面図、(b)は大径掘削状態の正面図である。
【図3】同じくこの発明の実施例で(a)は小径掘削状態の側面図、(b)は小径掘削状態への移行中の側面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 ヘッド本体
2 ヘッド本体の基部
3 ヘッド本体の固定掘削刃
4 ヘッド本体の連結部
6 基部の直方体部(ヘッド本体)
7 基部の直方体部の正面
8 基部の直方体部の側面
10 基部の縮小部(ヘッド本体)
11 基部の縮小部の正面
12 基部の縮小部の側面
15 基部の膨大部(ヘッド本体)
16 基部の膨大部の正面
17 基部の膨大部の側面
20 水平軸(ヘッド本体)
22 第1ストッパー(ヘッド本体)
24 出没ストッパー(ヘッド本体)
26 第2ストッパー(ヘッド本体)
28 上部ストッパー(ヘッド本体)
30 第3ストッパー(ヘッド本体)
32 吐出口(ヘッド本体)
34 撹拌翼(ヘッド本体)
40 掘削腕
40a 掘削腕の内則縁
40b 掘削腕の外則縁
41 掘削腕の本体部
42 掘削腕の本体部の正面
43 掘削腕の本体部の側面
44 掘削腕の本体部の裏面
45 掘削腕の上部膨出部
47 掘削腕の掘削刃
50 掘削ヘッド
52 掘削ロッド
54 既製杭
55 既製杭の中空部
56 既製杭の下端
57 杭穴
58 杭穴の軸部
59 杭穴の拡底部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(1)〜(3)の要件を具備したことを特徴とする杭穴掘削ヘッド。
(1) 掘削ロッドに連結できるヘッド本体の両正面に、前記ヘッド本体の水平軸の周りに揺動自在に、下端部に掘削刃を取り付けた掘削腕の上端部を連結する。
(2) 前記ヘッド本体に、小径掘削時に前記掘削腕の側縁に当接して、前記掘削腕の揺動を規制する小径用ストッパー、大径掘削時に前記掘削腕の側縁に当接して、前記掘削腕の揺動を規制する大径用ストッパーを夫々取り付ける。
(3) 前記ヘッド本体、前記水平軸及び前記掘削腕は、「前記両掘削腕の先端裏面が前記ヘッド本体の正面より離れるように変形して、前記掘削腕の裏面が前記小径用ストッパーの上方を通過できるように変形可能」に、連結されている。
【請求項2】
以下の(1)〜(3)の要件を具備したことを特徴とする杭穴掘削ヘッド。
(1) 掘削ロッドに連結できるヘッド本体の両正面に、前記ヘッド本体の水平軸の周りに揺動自在に、下端部に掘削刃を取り付けた掘削腕の上端部を連結する。
(2) 前記ヘッド本体に、前記ヘッド本体を正回転時して小径掘削時に前記掘削腕の側縁に当接して、前記掘削腕の揺動を規制する小径用ストッパーと、前記ヘッド本体を正回転して大径掘削時に前記掘削腕の側縁に当接して、前記掘削腕の揺動を規制する大径用ストッパーとを、夫々取り付ける。
(3) 前記ヘッド本体、前記水平軸及び前記掘削腕は、「前記小径掘削時の掘削腕の揺動角度でヘッド本体を下方に下げて、前記掘削刃の先端が杭穴底に加圧された際に、前記両掘削腕の先端裏面が前記ヘッド本体の正面より離れるように変形して、前記掘削腕の裏面が前記小径用ストッパーの上方を通過できるように変形可能」に、連結されている。
【請求項3】
以下の(1)〜(3)の要件を具備したことを特徴とする杭穴掘削ヘッド。
(1) 掘削ロッドに連結できるヘッド本体の両正面に、前記ヘッド本体の水平軸の周りに揺動自在に、下端部に掘削刃を取り付けた掘削腕の上端部を連結する。
(2) 前記ヘッド本体に、小径掘削時に前記掘削腕の側縁に当接して、前記掘削腕の揺動を規制する小径用ストッパー、大径掘削時に前記掘削腕の側縁に当接して、前記掘削腕の揺動を規制する大径用ストッパーを夫々取り付ける。
(3) 前記ヘッド本体、前記水平軸及び前記掘削腕は、「前記掘削腕が小径掘削時の揺動角度で、前記ヘッド本体を逆回転した際に、前記両掘削腕の先端裏面が前記ヘッド本体の正面より離れるように変形して、前記掘削腕の裏面が前記小径用ストッパーの上方を通過できるように変形可能」に、連結されている。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−13695(P2009−13695A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177729(P2007−177729)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(000176512)三谷セキサン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】