説明

板ガラスの位置決め装置及びその位置決め方法

【課題】可撓性を有する略矩形の板ガラスを、適切な工夫を講じて支持面上で円滑に支障なく押動させることにより、板ガラスの位置決めの困難化並びに不当な撓みに起因する割れの発生等を的確に回避する。
【解決手段】 略矩形で可撓性を有する板ガラス2の第1端面2aを押圧部材4が押圧することにより、板ガラス2を支持面3a上で押動させると共に、板ガラス2の第1端面2aと平行な第2端面2bを基準面5xに当接させて、板ガラス2の位置決めを行うに際して、板ガラス2の第1端面側部位2cを持ち上げ手段6が持ち上げることにより、板ガラス2に下方に凸となる撓み2dを生じさせた状態で、押圧部材4が板ガラス2の第1端面2aを押圧するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板ガラスの位置決め装置及びその位置決め方法に係り、特に、略矩形で可撓性を有する板ガラスを適正に基準面に対して位置決めするための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ(サーフェイスエミッションディスプレイを含む)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、及び有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(以下、FPDという)に用いられる板ガラスは、薄肉化が推進されている。
【0003】
この種の板ガラスは、その製造工程において、研削加工に代表される各種の処理が端面に施される関係上、処理対象となる端面を、その処理に先立って正確に位置決めしておく必要がある。そのため、板ガラスの端面処理装置の前段位置には、板ガラスの位置決め装置が配備されるのが通例である。
【0004】
この位置決め装置の具体例として、例えば特許文献1には、送りローラによって所定位置に導き入れられた基板に対して、先ず第1移動機構部の押動部が基板の第1端面を押動し、次いで第2移動機構部の押動部が基板の第1端面と直交する第2端面を押動し、当該押動部が待機位置に退避した後に、第3移動機構部の押動部が基板の第1端面と直交する第3端面を押動することにより、基板の予備位置決めを行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−229470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されているように、単に水平姿勢で平面状に支持された基板の一端面を、押動部により水平方向に押圧して、基準となる位置まで当該基板を押動させる構成であると、以下に示すような問題を招来し得る。
【0007】
すなわち、位置決めの対象物が、既述のように薄肉化されて可撓性を有する板ガラスであると、押動部がそのような板ガラスの一端面を水平方向に押圧しても、押動時における板ガラスには、その可撓性に起因して、下方への押し下げ力と上方への押し上げ力とが、押動方向の随所に作用することになる。
【0008】
そのため、押動時に板ガラスに作用する上下方向の力が一様に定まらず、これに起因して板ガラスに不当に大きな撓みや波形状の撓みが生じる。そのため、押動部が押圧している板ガラスの一端面と平行な他端面が、基準となる位置に適正に到達できないという事態を招く。その結果、板ガラスの位置決めが困難或いは不可能となるばかりでなく、不当な撓みに起因して板ガラスに割れが発生するという問題をも生じ得る。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、薄肉化等により可撓性を有するに至った略矩形の板ガラスを、適切な工夫を講じて支持面上で円滑に支障なく押動させることにより、板ガラスの位置決めの困難化並びに不当な撓みに起因する割れの発生等を的確に回避することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記技術的課題を解決するために創案された本発明に係る装置は、略矩形で可撓性を有する板ガラスの第1端面を押圧部材が押圧することにより、該板ガラスを支持面上で押動させると共に、該板ガラスの前記第1端面と平行な第2端面を基準面に当接させて、該板ガラスの位置決めを行うように構成した板ガラスの位置決め装置であって、前記板ガラスの第1端面側部位を持ち上げ手段が持ち上げることにより、該板ガラスに下方に凸となる撓みを生じさせた状態で、前記押圧部材が該板ガラスの前記第1端面を押圧するように構成したことに特徴づけられる。ここで、上記の「板ガラスの第1端面側部位」とは、第1端面と第2端面との相互間中央部よりも第1端面側に存する何れの部位であってもよいことを意味するが、第1端面の近傍であることが好ましい(以下、同様)。また、ここでいう「第1端面の近傍」とは、第1端面から第2端面までの距離Lに対して、第1端面を始端としてL×1/10〜L×1/3程度の距離の範囲内を意味する(以下、同様)。
【0011】
このような構成によれば、板ガラスの第1端面側部位が持ち上げられ且つ板ガラスに下方に凸となる一方向のみの撓みが生じている状態で、押圧部材が第1端面を押圧して、板ガラスを支持面上で押動させていくことになる。このように、押圧部材が板ガラスの第1端面を第2端面側に向って押圧している間は、板ガラスの第1端面側部位に当初から付与されている撓みの方向性が下方に凸のみとされているため、当該板ガラスの当初から撓みが付与されていない部位には、主として下方への押し付け力が一様に作用することになって、上方への押し上げ力は殆ど作用しなくなる。これにより、板ガラスが可撓性を有しているにも拘らず、押動時における板ガラスには、不当に大きな撓みや波形状の撓みが生じ難くなるため、板ガラスの第2端面は、基準面に適正に到達し且つ正確に当接することになる。この結果、板ガラスの押動が円滑に行われ得ることになって、その位置決め(特に第2端面の位置決め)が容易化並びに正確化されると共に、板ガラスの不当な撓みに起因する割れの発生確率が大幅に低減する。
【0012】
この場合、前記支持面は、前記板ガラスの第1端面と平行な方向に該板ガラスを搬送する主搬送手段の上面とすることができる。
【0013】
このようにすれば、板ガラスを主搬送手段により搬送しながら、当該板ガラスを横滑りするように押動させて位置決めを行うことができるため、作業の連続性が確保されて、作業能率が向上する。しかも、板ガラスの特に第2端面は、基準面との当接により正確に位置決めされているため、当該主搬送手段の下流側で端面研削処理等の端面処理、さらに切断、穴加工処理等を行う場合には、板ガラスの特に第2端面に対して正確な端面研削処理を行うことが可能となる。なお、板ガラスの位置決めは、主搬送手段が板ガラスの搬送を一時的に停止した時に行うようにしてもよく、そのようにした場合であっても、作業の適度な連続性は確保される。
【0014】
また、前記持ち上げ手段は、前記板ガラスの前記第1端面側部位が前記主搬送手段から乗り上げ可能とされ且つ搬送方向前方が上方傾斜する補助搬送手段とすることができる。
【0015】
このようにすれば、板ガラスの第1端面側部位を持ち上げる動作が、板ガラスの搬送方向前方から徐々に補助搬送手段に乗り移っていくことにより行われるので、板ガラスの持ち上げ時に、板ガラスに衝撃が加わる等の不具合が回避され、衝撃等による板ガラスの割れの発生をも抑止した上で、円滑かつ確実に板ガラスの持ち上げ動作を行い得ることになる。
【0016】
上記の構成において、前記主搬送手段は、複数の搬送部を相互間に隙間を介在させて並列に配列して構成され、該隙間に、前記板ガラスの前記撓みが生じていない部位を裏面側より支持する撓み防止部材が介装されていることが好ましい。
【0017】
このようにすれば、主搬送手段を構成する複数の搬送部が、相互間に隙間を介在させていても、この隙間で板ガラスが自重により撓んで波板形状に変形するという不具合が確実に回避される。これにより、板ガラスの主搬送形態の自由度を大きくした上で、位置決めの困難化並びに割れの発生等を確実に抑制することが可能となる。なお、主搬送手段は、単一の幅広の搬送部で構成することもでき、このようにした場合には、撓み防止部材が不要となる。
【0018】
上記の構成において、前記基準面は、前記主搬送手段と同方向に同速度で同期して駆動される無端状搬送帯の起立した搬送面であることが好ましい。
【0019】
このようにすれば、主搬送手段により搬送されている板ガラスを、横滑りするように押動させた場合には、当該板ガラスの第2端面が、主搬送手段と同方向に同期して同速度で駆動される無端状搬送帯の起立した搬送面である基準面に当接する。したがって、板ガラスの第2端面は、この基準面に当接した後においても、その当接時の状態を維持して搬送方向に移動するため、この両者間に摺動が生じなくなり、板ガラスの位置決め時における損傷等が可及的に回避され得る。
【0020】
この構成においては、前記無端状搬送帯の基準面をなす搬送面の裏面側に、該搬送面を平面に維持させる補強部材が配設されていることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、無端状搬送帯が可撓性を有していることに起因して、板ガラスの第2端面が当接する際に、無端状搬送帯の搬送面に曲がりやうねりが生じ得る状態にあっても、その搬送面は、補強部材により平面に維持されるため、より正確な位置決めが可能となる。
【0022】
以上の構成を備えた位置決め装置において、前記板ガラスは、その厚みが、200〜500μmである場合に特に有用となる。
【0023】
上記技術的課題を解決するために創案された本発明に係る方法は、略矩形で可撓性を有する板ガラスの第1端面を押圧部材が押圧することにより、該板ガラスを支持面上で押動させると共に、該板ガラスの前記第1端面と平行な第2端面を基準面に当接させて、該板ガラスの位置決めを行う方法であって、前記板ガラスの前記第1端面側部位を持ち上げ手段が持ち上げて、該第1端面側部位を前記支持面から離反させることにより、該板ガラスに下方に凸となる撓みを生じさせた状態で、前記押圧部材が該板ガラスの前記第1端面を押圧することに特徴づけられる。
【0024】
この位置決め方法は、本発明について冒頭で説明した位置決め装置と実質的に構成が同一であるため、その作用効果を含む説明事項も、実質的に同一である。したがって、この位置決め方法についての説明は、ここでは省略する。
【発明の効果】
【0025】
以上のように本発明によれば、押圧部材が可撓性を有する板ガラスを押動させる際における当該板ガラスの移動阻害及びこれに起因する不当な板ガラスの撓みの発生が抑制され、板ガラスの位置決めの困難化並びに割れの発生等の不具合が効果的に回避される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る板ガラスの位置決め装置の全体構成を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る板ガラスの位置決め装置の全体構成を示す概略平面図である。
【図3】図3(a)は、本発明の実施形態に係る板ガラスの位置決め装置の全体構成を示す概略縦断正面図、図3(b)は、その一部の変形例を示す拡大概略正面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る板ガラスの位置決め装置の構成要素である補強部材を示す概略斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る板ガラスの位置決め装置の構成要素である持ち上げ手段の変形例を示す概略側面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る板ガラスの位置決め装置及びその周辺部の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態に係る板ガラスの位置決め装置を添付図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態では、略矩形で板厚が200〜500μmの可撓性を有するFPD用の板ガラスに本発明を適用した場合を例示する。また、この板ガラスは、搬送方向(図1に示す矢印A方向)と平行な方向の寸法が、500〜3000mmであり、且つ、搬送方向Aと直交する方向の寸法も、500〜3000mmである。
【0028】
図1は、本実施形態に係る位置決め装置1の全体構成を模式的に示す概略斜視図である。同図に示すように、この位置決め装置1は、板ガラス2を下方より支持する支持面が、主搬送手段3を構成する複数の主コンベヤベルト3aの上面として構成されている。詳述すると、主搬送手段3は、板ガラス2を矢印A方向に搬送する複数の搬送部としての主コンベヤベルト3aを、相互間に隙間を介在させて並列に配列して構成されている。そして、複数の主コンベヤベルト3aは、図外のプーリに巻き掛けられて回転駆動源によりそれぞれが同速度で駆動される構成とされている。
【0029】
また、主搬送手段3の一側方には、搬送方向Aと平行な方向に沿って複数個の円筒コロ4aが配列され、これらの円筒コロ4aが、板ガラス2の第1端面2aを押圧する押圧部材4とされている。一方、主搬送手段3の他側方には、一対のタイミングプーリ5bに巻き掛けられて搬送方向Aと平行な方向に沿って駆動されるタイミングベルト5aからなる無端状搬送帯が配設されている。このタイミングベルト5aの搬送面は、起立した面(鉛直面)であって、当該タイミングベルト5aの主搬送手段3側の搬送面が、板ガラス2の第1端面2aと平行な第2端面2bが当接する基準面5xとされている。
【0030】
さらに、主搬送手段3の一側方における押圧部材4の近傍には、主搬送手段3により搬送される板ガラス2の第1端面側部位2cを持ち上げる持ち上げ手段6が配列されている。この持ち上げ手段6は、板ガラス2の第1端面側部位2cが主搬送手段3から乗り上げ可能とされ且つ搬送方向Aの前方側が上方傾斜する補助搬送手段6xで構成されている。この補助搬送手段6xは、高低差のある一対のプーリ6bに補助コンベヤベルト6aが巻き掛けられて構成され、この補助コンベヤベルト6aの上面は、搬送方向Aの前方側に移行するに連れて、主搬送手段3を構成する主コンベヤベルト3aの上面と同一高さまたはそれよりも低い位置から漸次高い位置に移行するように傾斜している。なお、この補助コンベヤベルト6aの水平面とのなす角度αは、1〜30度とされている。
【0031】
また、主搬送手段3を構成する複数の主コンベヤベルト3aの隣接相互間に設けられた隙間には、板ガラス2の平面状となっている部位を裏面側より支持する平板状の撓み防止部材7がそれぞれ介装されている。
【0032】
以上の構成を更に詳述すると、図2に示すように、押圧部材4を構成する複数個の円筒コロ4aはそれぞれ、中心軸4z廻りに回転可能に保持され、エアシリンダ等の流体圧シリンダ或いはボールネジ機構等からなる出退駆動手段4xにより搬送方向Aと直交する方向に突出動及び後退動可能とされている。さらに、これらの円筒コロ4aは、出退駆動手段4xの先端に、バネ等の弾性体4yを介してそれぞれ弾性支持されている。
【0033】
この場合、これらの円筒コロ4aは、図3(a)に示すように、それぞれの中心軸4zが鉛直方向に沿うように配列されていてもよく、または、図3(b)に示すように、それぞれの中心軸4zと、板ガラス2の第1端面2aの指向方向2z(第1端面2aに連なる表面の縁部の接線)とが、直交するように配列されていてもよい。そして、これらの円筒コロ4aは、その配列位置に板ガラス2が搬入されてきた時点で、出退駆動手段4xの動作により突出動して、板ガラス2の第1端面2aを押圧するのに対して、その配列位置から板ガラス2が搬出された時点で、出退駆動手段4xの動作により後退動して、待機位置に退避するように構成されている。
【0034】
また、図2に示すように、板ガラス2の第2端面2bを受ける役割を果たすタイミングベルト5aは、その主搬送手段3側の搬送面、つまり歯が刻設されていない面が基準面5xとされている。そして、一対のタイミングプーリ5bのそれぞれの中心軸5zは、鉛直方向に沿うように配列され、タイミングベルト5aを主コンベヤベルト3aと同速度で同期して駆動させる構成とされている。さらに、タイミングベルト5aの基準面5xの裏面側には、基準面5xの曲がりやうねりを矯正して平面に維持するための補強部材8が配設されている。
【0035】
この場合、図4に示すように、補強部材8は、タイミングベルト5aの歯付き面を案内する主ガイド板部8aと、タイミングベルト5aの両側面をそれぞれ案内する一対の補助ガイド板部5bとから構成されている。したがって、タイミングベルト5aは、補強部材8により直線状に案内されつつ、搬送面が平面をなす基準面5xに維持されるようになっている。
【0036】
さらに、図3に示すように、持ち上げ手段6は、板ガラス2が補助コンベヤベルト6aに乗り上がって所定の高さ位置(例えば、5〜10mmだけ持ち上げられた位置)に達した時点で、板ガラス2の第1端面2aの近傍に、下方に凸となる撓み2dを生じさせるように構成されている。この補助コンベヤベルト6aは、主コンベヤベルト3aと協働して、板ガラス2の第1端面2a及び第2端面2bを、搬送方向Aに対して同速度で移動させる構成とされている。
【0037】
なお、図3(a)には、補助コンベヤベルト6aのプーリ中心軸6zが傾斜した状態を図示しているが、補助コンベヤベルト6aの幅が小さい場合や、補助コンベヤベルト6aの搬送面の断面輪郭形状が中央部で凸となっている場合などにおいては、補助コンベヤベルト6aのプーリ中心軸6zを傾斜させなくてもよい。
【0038】
加えて、図3(a)に示すように、複数の主コンベヤベルト3aの隣接相互間にはそれぞれ、撓み防止部材7が介装されているが、この撓み防止部材7の上面は、主コンベヤベルト3aの上面よりも僅かに低くなっている。そして、この撓み防止部材7の上面と、板ガラス2の裏面との間には、水(または水に準じる液体)が供給されて、水の層または水の膜が形成されている。なお、主コンベヤベルト3aの上面と、板ガラス2の裏面との間にも、同様にして、水の層または水の膜が形成されている。
【0039】
次に、以上の構成を備えた位置決め装置1の作用効果を説明する。
【0040】
主搬送手段3の複数の主コンベヤベルト3a、補助搬送手段6xの補助コンベヤベルト6a、及び基準面5xを有するタイミングベルト5aが、それぞれ駆動されている状態の下で、主コンベヤベルト3aによってA方向に搬送されてきた板ガラス2は、位置決めエリア周辺に到達した時点で、その第1端面側部位2cが、補助コンベヤベルト6aに乗り上がっていく。そして、板ガラス2の第1端面側部位2cが所定の高さ位置に達した時点で、板ガラス2の第1端面2aの近傍に、下方に凸となる一方向のみの撓み2dが生じる。
【0041】
この時点で、押圧部材4を構成する複数個の円筒コロ4aが突出動して、板ガラス2の第1端面2aを押圧することにより、板ガラス2における撓みの生じていない部位が、複数の主コンベヤベルト3aの上面を、搬送方向Aと交差する方向に横滑りして移動する。この板ガラス2の押動時においては、板ガラス2の第1端面側部位2cに当初から付与されている撓み2dの方向性が下方に凸のみとされているため、板ガラス2の撓みが付与されていない部位には、主として下方への押し下げ力が一様に作用することになり、上方への押し上げ力は殆ど作用しなくなる。これにより、板ガラス2は、不当に大きな撓みを生じることなく且つ波形状の撓みも生じることなく、複数の主コンベヤベルト3a上を円滑に横切って移動できることになる。
【0042】
しかも、板ガラス2の裏面は、複数の撓み防止部材7により水の層または水の膜を介して支持されている事と、複数の主コンベヤベルト3aとの間にも水の層または水の膜が介在している事とによって、板ガラス2は、より一層複数の主コンベヤベルト3a上を円滑に横切って移動できることになる。
【0043】
以上のような態様で板ガラス2が押動されることに伴って、板ガラス2の第2端面2bは、駆動されているタイミングベルト5aの基準面5xに適正に到達し且つ正確に当接する。この結果、板ガラス2の第2端面2bは、正確に位置決めされる。
【0044】
なお、図5は、上述の位置決め装置1の構成要素である持ち上げ手段6の変形例を示す概略側面図である。この持ち上げ手段6は、主コンベヤベルト6aの搬送方向Aと平行であって水平方向に延びる支持部材6cに、複数のローラ(または球状体)6dを、中心軸6w廻りに回動自在に保持し、支持部材6cをエアシリンダ等の流体圧シリンダ等からなる昇降駆動手段6eにより上下動するように構成したものである。
【0045】
このような構成によれば、主搬送手段3により搬送されて位置決めエリアに板ガラス2が到達した時点で、昇降駆動手段6eにより支持部材6cを上動させて、板ガラス2の第1端面側部位2cを複数のローラ6dで持ち上げた後、既述の場合と同様に、押圧部材4が板ガラス2の第1端面2aを押圧して、第2端面2bを基準面5xに当接させることで、該第2端面2bの位置決めが正確に行われる。
【0046】
なお、上記の変形例では、支持部材6cに複数の6dを保持する構成としたが、これに代えて、支持部材6cに相当する部材に、主搬送手段3の搬送方向Aと平行な方向に駆動される無端状搬送帯を有する持ち上げ搬送手段を保持させるようにしてもよい。そして、上記と同様の時期に、持ち上げ搬送手段を上下動させればよい。
【0047】
以上述べた本発明の実施形態に係る位置決め装置1によって板ガラス2の第2端面2bの位置決めが行われた後は、図6に示すように、主搬送手段3における位置決めエリア9の下流側に存する端面処理エリア39で、位置決め後の板ガラス2の第2端面2bに対して、研磨装置39a等による端面加工処理が施される。この場合、端面処理エリア39では、位置決め後の板ガラス2を、主搬送手段3と、その上方に設置された上部搬送手段31とによって挟持して搬送しながら、端面加工処理が実行される。
【0048】
なお、上記実施形態では、板ガラス2の第2端面2bのみを位置決めする場合に本発明を適用したが、第2端面2bが正確に位置決めされるという事は、必然的に第1端面2aも正確に位置決めされていることになる。したがって、既述のように板ガラス2の第2端面2bの位置決めを行った後に、持ち上げ手段6を下方に退避させて、位置決め後の板ガラス2を主搬送手段3と上部搬送手段31とによって挟持して搬送しながら、第1端面2aと第2端面2bとに対して、端面加工処理を施すことも可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 位置決め装置
2 板ガラス
2a 板ガラスの第1端面
2b 板ガラスの第2端面
2c 板ガラスの第1端面側部位
2d 板ガラスの撓み
3 主搬送手段
3a 主コンベヤベルト
4 押圧部材
4a 円筒コロ
5a タイミングベルト(無端状搬送帯)
5x 基準面
6 持ち上げ手段
6x 補助搬送手段
6a 補助コンベヤベルト
7 撓み防止部材
8 補強部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略矩形で可撓性を有する板ガラスの第1端面を押圧部材が押圧することにより、該板ガラスを支持面上で押動させると共に、該板ガラスの前記第1端面と平行な第2端面を基準面に当接させて、該板ガラスの位置決めを行うように構成した板ガラスの位置決め装置であって、
前記板ガラスの第1端面側部位を持ち上げ手段が持ち上げることにより、該板ガラスに下方に凸となる撓みを生じさせた状態で、前記押圧部材が該板ガラスの前記第1端面を押圧するように構成したことを特徴とする板ガラスの位置決め装置。
【請求項2】
前記支持面は、前記板ガラスの第1端面と平行な方向に該板ガラスを搬送する主搬送手段の上面であることを特徴とする請求項1に記載の板ガラスの位置決め装置。
【請求項3】
前記持ち上げ手段は、前記板ガラスの前記第1端面側部位が前記主搬送手段から乗り上げ可能とされ且つ搬送方向前方が上方傾斜する補助搬送手段であることを特徴とする請求項2に記載の板ガラスの位置決め装置。
【請求項4】
前記主搬送手段は、複数の搬送部を相互間に隙間を介在させて並列に配列して構成され、該隙間に、前記板ガラスの前記撓みが生じていない部位を裏面側より支持する撓み防止部材が介装されていることを特徴とする請求項2または3に記載の板ガラスの位置決め装置。
【請求項5】
前記基準面は、前記主搬送手段と同方向に同速度で同期して駆動される無端状搬送帯の起立した搬送面であることを特徴とする請求項2〜4の何れかに記載の板ガラスの位置決め載置。
【請求項6】
前記無端状搬送帯の基準面をなす搬送面の裏面側に、該搬送面を平面に維持させる補強部材が配設されていることを特徴とする請求項5に記載の板ガラスの位置決め装置。
【請求項7】
前記板ガラスの厚みは、200〜500μm以下であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の板ガラスの位置決め装置。
【請求項8】
略矩形で可撓性を有する板ガラスの第1端面を押圧部材が押圧することにより、該板ガラスを支持面上で押動させると共に、該板ガラスの前記第1端面と平行な第2端面を基準面に当接させて、該板ガラスの位置決めを行う方法であって、
前記板ガラスの前記第1端面側部位を持ち上げ手段が持ち上げて、該第1端面側部位を前記支持面から離反させることにより、該板ガラスに下方に凸となる撓みを生じさせた状態で、前記押圧部材が該板ガラスの前記第1端面を押圧することを特徴とする板ガラスの位置決め方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−58546(P2013−58546A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195050(P2011−195050)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】