説明

板型ヒートパイプおよび板型ヒートパイプを備えた電気接続箱

【課題】金属芯入りプリント基板の発熱を筐体外に効率的に放熱する構造を有した板型ヒートパイプを備えた電気接続箱を提供する。
【解決手段】少なくとも2つの金属芯入りプリント基板と、金属芯入りプリント基板の少なくとも一部に当接し、プリント基板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、凸部に対応した凹部を一方の面に有し、他方の面がコンテナの内壁を形成する板材によって形成された、その中に作動液が封入されている密閉されたコンテナからなる板型ヒートパイプとを筐体内に備えた、板型ヒートパイプを備えた電気接続箱。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、板型ヒートパイプ、および、車両等の熱環境に厳しい部位に搭載される電気接続箱、特に板型ヒートパイプを備えた電気接続箱に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、車両の快適性に対するニーズの高まりに伴い、車両に搭載される電装品は増加する傾向にある。具体的には、例えば、オーディオ、ナビゲーション、テレビ、電動アンテナ、エアコン、リヤウインドウヒータ、シートヒータ、パワーシート、サスペンションの硬さ制御装置等の様々な電装品が車両に搭載されるようになっている。
【0003】これらの電装品への電源供給は、エンジンルームのバッテリ近傍等に取り付けられた電気接続箱を経由して供給される。なお、電気接続箱には、ワイヤハーネスのボディとの短絡時やモータ等の負荷の故障時に車両火災の発生を阻止するヒューズや、運転席近傍の操作スイッチ等と連動して電装品への電源供給を制御するリレー等が搭載されている。
【0004】電気接続箱として一般的に知られているものは、例えば、特開昭59−2881号公報に開示されているように、銅板を打ち抜いて折り曲げたバスバーを互いに接触しないようにプラスチック板間にそれぞれ配置し、且つヒューズやリレーを取り付けた構造を有している。しかし、近年、投資コストの削減、製品の小型化や設計変更の容易化等の要請から、例えば、特開平2−17818号公報に開示されているように、バスバーの回路部の大部分を金属芯入りプリント基板で置換えた電気接続箱が提案されている。
【0005】
【発明が解決しょうとする課題】上述した金属芯入りプリント基板の断面構造は、図8に示すように、アルミニウム製のコア材31aと、コア材31aの表面を囲繞した絶縁層31bと、絶縁層上に所定の回路パターンとして形成された導電層31cと、絶縁層31bと導電層31cとに塗布されたレジスト31dからなっている。また、当該プリント基板31の所定位置にはスルーホール31hが形成され、基板の回路密度を向上させている。
【0006】このような金属芯入りプリント基板31は、リレーやヒューズ等の発熱電気部品を実装して実際に電流を流した場合に、従来のプリント基板のように基板上に不均一な熱分布を発生させることはないが、発熱電気部品を多数実装すると、熱が均一化して基板全体に蓄熱されていく。
【0007】即ち、一般的なガラスエポキシ基板と金属芯入りプリント基板の配線パターン幅1mm、導体厚さ0.1mm、長さ100mmに所定電流を流したときの基板配線パターンの温度上昇を比較した。その結果、ガラスエポキシ基板に較べて金属芯入りプリント基板は放熱効果に優れ、配線パターン部の温度上昇を抑えることができるので、大電流を扱うことが可能である。
【0008】一方、通電配線パターンからの距離と温度上昇との関係を両基板について比較した。その結果、金属芯入りプリント基板は均熱効果があるが、基板全体の平均温度が上昇する傾向があり、通電する配線パターンが増える場合には、基板の熱を放熱する手段が必要である。
【0009】なお、金属板の板厚は、製造の容易性、コスト、重量、熱伝導性能の観点から0.5mmから2mmの範囲内で一般的に選択される。このように、金属芯の板厚が限定されると、例えば、プリント基板端部等からの部分的な熱引きでは放熱効果が不十分である。従って、例えばプリント基板のエッジ部に沿ってヒートパイプを密着させても、十分な放熱効果が得られない。
【0010】また、プリント基板のハンダ面には、スルーホールにハンダ凸部が形成されたり、電気部品のリード端子が多数突出しているので、基板面にヒートパイプを密着させる方法では、密着面が極めて限定され放熱効果が不十分となる。従って、この発明の目的は、上述した従来の問題点を解決して、金属芯入りプリント基板の発熱を筐体外に効率的に放熱する構造を有した電気接続箱を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上述した従来の問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、金属芯入りプリント基板のリード線の凸部との接触を避けるために、凸部に対応した凹部を密閉されたコンテナのそれぞれの面にプレス加工等によって形成した、板型ヒートパイプを用いることによって、金属芯入りプリント基板の発熱を筐体外に効率的に放熱する構造を有した電気接続箱を得ることができることを知見した。即ち、例えば、ヒートパイプの上下の両主面に、リード線の凸部との接触を避けるための、凸部に対応した凹部を形成することによって、ヒートパイプの両主面に金属芯入りプリント基板を当接させて、金属芯入りプリント基板の発熱をヒートパイプによって所定位置に移動し、効率的に放熱することができる。
【0012】更に、金属芯入りプリント基板に当接される、プリント基板のリード線の凸部との接触を避けるための、凸部に対応した凹部を有する板材を、コンテナの少なくとも1つの主面に金属接合して、一体的に形成された、板型ヒートパイプを用いることによって、金属芯入りプリント基板の発熱をヒートパイプによって所定位置に移動し、効率的に放熱することができることを知見した。
【0013】この発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、この発明の板型ヒートパイプの第1の態様は、金属芯入りプリント基板の少なくとも一部に当接し、前記プリント基板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、前記凸部に対応した凹部を一方の面に有し、他方の面がコンテナの内壁を形成する板材によって形成された、その中に作動液が封入されている密閉されたコンテナからなる板型ヒートパイプである。
【0014】この発明の板型ヒートパイプの第2の態様は、前記凹部を一方の面に有し、他方の面がコンテナの内壁を形成する前記板材が、それぞれ、前記コンテナを形成する上板材および下板材である、板型ヒートパイプである。
【0015】この発明の板型ヒートパイプの第3の態様は、金属芯入りプリント基板の少なくとも一部に当接される、前記プリント基板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、前記凸部に対応した凹部を一方の面に有する板材を、コンテナの少なくとも1つの主面に金属接合して、一体的に形成された、その中に作動液が封入されている密閉されたコンテナからなる板型ヒートパイプである。
【0016】この発明の板型ヒートパイプの第4の態様は、前記コンテナに、所定のエンボス加工が施されている、板型ヒートパイプである。
【0017】この発明の板型ヒートパイプの第5の態様は、前記コンテナ内にウイックが設けられている、板型ヒートパイプである。
【0018】この発明の板型ヒートパイプを備えた電気接続箱の第1の態様は、少なくとも2つの金属芯入りプリント基板と、前記金属芯入りプリント基板の少なくとも一部に当接し、前記プリント基板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、前記凸部に対応した凹部を一方の面に有し、他方の面がコンテナの内壁を形成する板材によって形成された、その中に作動液が封入されている密閉されたコンテナからなる板型ヒートパイプとを筐体内に備えた、板型ヒートパイプを備えた電気接続箱である。
【0019】この発明の板型ヒートパイプを備えた電気接続箱の第2の態様は、前記板型ヒートパイプの前記コンテナには、所定のエンボス加工が施されている、板型ヒートパイプを備えた電気接続箱である。
【0020】この発明の板型ヒートパイプを備えた電気接続箱の第3の態様は、前記板型ヒートパイプが、金属芯入りプリント基板の少なくとも一部に当接し、前記プリント基板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、前記凸部に対応した凹部を一方の面に有する板材を、コンテナの少なくとも1つの主面に金属接合して、一体的に形成された、その中に作動液が封入されている密閉されたコンテナからなる板型ヒートパイプである、板型ヒートパイプを備えた電気接続箱である。
【0021】この発明の板型ヒートパイプを備えた電気接続箱の第4の態様は、前記板材と前記ヒートパイプの前記コンテナが概ね同一幅および長さを有している、板型ヒートパイプを備えた電気接続箱である。
【0022】
【発明の実施の形態】この発明の板型ヒートパイプおよび板型ヒートパイプを備えた電気接続箱の態様について図面を参照しながら詳細に説明する。この発明の板型ヒートパイプの1つの態様は、金属芯入りプリント基板の少なくとも一部に当接し、前記プリント基板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、前記凸部に対応した凹部を一方の面に有する板材を、コンテナの少なくとも1つの主面に金属接合して、一体的に形成された、その中に作動液が封入されている密閉されたコンテナからなる板型ヒートパイプである。
【0023】図1は、この発明の板型ヒートパイプの1つの態様の側面図である。図2は、図1に示すこの発明の板型ヒートパイプの平面図である。図3は、図1に○で示す部分の拡大図である。図3の拡大図で示すように、平面型ヒートパイプの上板材1にスペーサ上材3がろう付け等によって接合され、更に、平面型ヒートパイプの下板材2にスペーサ下材4がろう付け等によって接合されている。平面型ヒートパイプの上板材1および下板材2はろう付け等によって接合され、その中に作動液が封入された密閉された空洞部を形成している。
【0024】従って、スペーサ上材3、平面型ヒートパイプの上板材1、平面型ヒートパイプの下板材2、スペーサ下材4が一体的に形成され、スペーサ上材3と、平面型ヒートパイプの上板材1との間の熱抵抗を小さくすることができ、更に、平面型ヒートパイプの下板材2とスペーサ下材4との間の熱抵抗を小さくすることができる。
【0025】図1に示すように、ヒートパイプと一体的に形成されたスペーサ上材3の上方には、基板5が当接され、固定される。基板5の下方には、複数の電極(リード端子)6が下方に向かって突き出している。スペーサ上材3の厚さtは、電極の高さLよりも大きい(t>L)ことが必要である。
【0026】図2に示すように、スペーサ上材3には、プリント基板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、凸部に対応した凹部(または開口部)8が設けられている。この態様においては、スペーサ上材3に打ち抜き加工を施して、所定形状の凹部(または開口部)を形成している。なお、ヒートパイプには、耐圧強度を高めるためのエンボス加工7が施されている。スペーサ上材および下材は、熱伝導性に優れた部材、例えば、アルミニウム、その他の金属材料からなっている。スペーサ上材および下材の材質は、ヒートパイプの上板材、下板材と同一材質が好ましい。
【0027】更に、この発明の板型ヒートパイプの他の1つの態様は、金属芯入りプリント基板の少なくとも一部に当接し、前記プリント基板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、前記凸部に対応した凹部を一方の面に有し、他方の面がコンテナの内壁を形成する板材によって形成された、その中に作動液が封入されている密閉されたコンテナからなる板型ヒートパイプである。
【0028】即ち、前記凹部を一方の面に有し、他方の面がコンテナの内壁を形成する前記板材が、それぞれ、前記コンテナを形成する上板材および下板材である、板型ヒートパイプである。図4は、この発明の板型ヒートパイプの他の1つの態様を示す図である。この態様においては、板型ヒートパイプの上板材および/または下板材に、金属芯入り基板に実装されたリード部品の端子を避けるための窪みと、耐圧力を確保するためのエンボス形状とを、直接設けて、スペースレス構造を実現し、軽量化と低コストを実現している。
【0029】図5は、リード部品の端子を避けるための窪みと、耐圧力を確保するためのエンボス形状を示す拡大図である。図5(a)は平面図を示す。図5(b)は断面図を示す。図5(a)および図5(b)に示すように、例えば、板型ヒートパイプの上板材11にプレス加工等によって、リード部品の端子を避けるための所定形状の窪み18が形成され、窪み18の中心部にエンボス加工17が施されている。エンボス加工が施された中心部17は、板型ヒートパイプの下板材12と、ろう付け等によって接合されている。従って、リード部品の端子との接触を回避し、そして、作動液の蒸発に伴う圧力に対してヒートパイプの強度を高めることができる。
【0030】図4に示すように、上述したリード部品の端子を避けるための窪み18およびエンボス加工17が、金属芯入り基板に実装されたリード部品の端子の数および形状に対応して、板型ヒートパイプの上板材に形成される。なお、図1から図3を参照して説明したこの発明の板型ヒートパイプにおいては、両面に、スペーサ材を接合する態様について述べたが、何れか一方のみにスペーサ材を接合してもよい。
【0031】更に図4および図5を参照して説明したこの発明の板型ヒートパイプにおいては、板型ヒートパイプの上板材に、リード部品の端子を避けるための窪みおよびエンボス加工を形成する態様について述べたが、板型ヒートパイプの下板材にも、上板材と同様に、リード部品の端子を避けるための窪みおよびエンボス加工を形成してもよい。
【0032】ヒートパイプは、密封された空洞部を備えており、その空洞部に収容された作動流体の相変態と移動により熱の輸送が行われる。熱の一部は、ヒートパイプを構成する容器(コンテナ)を直接伝わって運ばれるが、大部分の熱は、作動流体による相変態と移動によって移動される。
【0033】ヒートパイプの吸熱側において、発熱電子部品から伝わった熱は、ヒートパイプを構成する容器(コンテナ)の材質中を熱伝導して伝わってきた熱により、作動流体が蒸発し、その蒸気がヒートパイプの放熱側に移動する。放熱側では、作動流体の蒸気は冷却され再び液相状態に戻る。そして、液相に戻った作動流体は再び吸熱側に移動(還流)する。このような作動流体の相変態や移動によって、熱の移動がなされる。
【0034】ヒートパイプ内の作動流体としては通常、水や水溶液、アルコール、その他有機溶剤等が使用される。特殊な用途としては水銀を作動流体に用いる場合もある。前述したようにヒートパイプは内部の作動流体の相変態等の作用を利用するものであるので、密封された内部への作動流体以外のガス等の混入をなるべく避けるように製造されることになる。このような混入物は、通常、製造途中に混入する大気(空気)や作動流体中に溶在している炭酸ガス等である。ヒートパイプの形状は、使用目的に応じて、板型、平面型、偏平型、丸パイプ型等を選択する。更に、ヒートパイプで移動した熱をファン等を使用して強制的に冷却してもよい。
【0035】この発明のヒートパイプのコンテナの材質は、銅またはアルミニウム等の熱伝導の良好な金属を使用することができる。偏平状に加工するため、加工性に優れたアルミニウム材が好ましい。ウイックは偏平状ヒートパイプのコンテナと同一材質の部材を使用することができる。作動液は、ヒートパイプのコンテナの材質との適合性に応じて、水、代替フロン、フロリナートを使用する。更に、この発明の板型ヒートパイプにおいて、コンテナ内にウイックが設けられていてもよい。
【0036】次に、この発明の板型ヒートパイプを備えた電気接続箱について説明する。この発明の板型ヒートパイプを備えた電気接続箱の1つの態様は、少なくとも2つの金属芯入りプリント基板と、前記金属芯入りプリント基板の少なくとも一部に当接し、前記プリント基板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、前記凸部に対応した凹部を一方の面に有し、他方の面がコンテナの内壁を形成する板材によって形成された、その中に作動液が封入されている密閉されたコンテナからなる板型ヒートパイプとを筐体内に備えた、板型ヒートパイプを備えた電気接続箱である。
【0037】この発明の板型ヒートパイプを備えた電気接続箱において、板型ヒートパイプのコンテナには、所定のエンボス加工が施されている。
【0038】更に、この発明の板型ヒートパイプを備えた電気接続箱の他の1つの態様は、前記板型ヒートパイプが、金属芯入りプリント基板の少なくとも一部に当接し、前記プリント基板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、前記凸部に対応した凹部を一方の面に有する板材を、コンテナの少なくとも1つの主面に金属接合して、一体的に形成された、その中に作動液が封入されている密閉されたコンテナからなる板型ヒートパイプである、板型ヒートパイプを備えた電気接続箱である。
【0039】この発明の板型ヒートパイプを備えた電気接続箱において、板材とヒートパイプのコンテナが概ね同一幅および長さを有していてもよい。図6は、この発明の板型ヒートパイプを備えた電気接続箱の1つの態様を示す図である。図6に示すように、この発明の板型ヒートパイプを備えた電気接続箱においては、アッパーケース21、ロアケース22、アッパーカバー23、ロアカバー24からなる筐体に電気部品が実装された金属芯入りプリント基板5、15、25および板型ヒートパイプ10が収容されている。
【0040】即ち、筐体は、アッパーケース21、ロアケース22、アッパーカバー23、ロアカバー24からなる。アッパケース21には、リレーRLやコントロールユニットCUが取り付けられている。なお、筐体を構成するケースやカバーは、ポリプロピレン等の樹脂材からなっており、軽量化を図っている。
【0041】金属芯入りプリント基板として、基板5、基板15、基板25の3つの基板を備え、例えば、基板15には、ヒューズホルダFHやリレーRL、基板コネクタCN等の電気部品が実装されている。なお、ヒューズホルダFHに装着されるヒューズは、ワイヤハーネスのボディとの短絡時やモータ等の負荷の故障時に車両火災の発生を阻止する役目を果たし、リレーRLは、運転席近傍の操作スイッチ等と連動して電装品への電源供給を制御する役目を果たす。なお、電気部品としてこれら以外にCPUやサイリスタ等の発熱電気(電子)部品を実装してもよい。これら電気部品の多くは大電流が流れるので、電気部品自体やこれに電気的に導通した回路パターンが発熱する。なお、基板5や基板25にも同様の電気部品が実装されている。
【0042】図7は、金属芯入りプリント基板に取り付けた板型ヒートパイプの部分拡大図である。金属芯入りプリント基板15は、従来例で説明したプリント基板31と同様な構成を有し、図7に示すように、厚さ1mmのアルミニウム製コア材15a、コア材の表面を囲繞した絶縁層15b、絶縁層上に所定の回路パターンとして形成された導電層(図示せず)、絶縁層に塗布されたレジスト(図示せず)から構成されている。
【0043】なお、金属芯入りプリント基板15には、所定箇所にスルーホール15hが形成され、このスルーホール15hには実装時にハンダが固着しており、基板表面から約0.2mm程突出したハンダ部Hが形成されている。更に、金属芯入りプリント基板15には、上述の通りリレーRL等の電気部品が実装されているが、これらの実装部品は主としてリードタイプなので、リード端子Tが実装面と反対側のハンダ面から約2mm程突出している。なお、他の2つの金属芯入りプリント基板5、25も同様の構造を有している。
【0044】板型ヒートパイプの上板材11は、金属芯入りプリント基板15の、電気部品実装側と反対側、即ち、リード線突出側(ハンダ面側)に密着されている。板型ヒートパイプの上板材11は、図7に示すように、金属芯入りプリント基板15と略同等の外形を有し、金属芯入りプリント基板15から突出したリード線に干渉しないように窪み部18を有している。窪み部の中央はエンボス加工が施されて、板型ヒートパイプの下板材とろう付け等によって接合されている。
【0045】板型ヒートパイプの上板材11は、上述したように窪みが形成されているので、板型ヒートパイプの上板材11を金属芯入りプリント基板15に当接したとき、図7に示すように、リード端子Tと干渉することはない。なお、板型ヒートパイプの上板材に、スルーホールに形成されたハンダ凸部に対応する大きさの凹部を設けることによって、金属芯入りプリント基板15と板型ヒートパイプの上板材が広い面積にわたって密着する。その結果、金属芯入りプリント基板15の熱によってヒートパイプ内に収容された作動液が蒸発し、所定の位置に速やかに移動される。更に、凝縮した作動液が速やかに還流して、再度、金属芯入りプリント基板15の熱を極めて効率的に放熱する。
【0046】なお、板型ヒートパイプの上板材11と金属芯入りプリント基板15との間に熱伝導性絶縁シートを設けてもよい。この場合には、スルーホールに形成されたハンダ凸部は、熱伝導性絶縁シートが変形して吸収するので、板型ヒートパイプに対応する凹部を設ける必要はない。更に、板型ヒートパイプの上板材11と金属芯入りプリント基板15との間に熱伝導性絶縁シートを設けることによって、板型ヒートパイプの上板材11と金属芯入りプリント基板15との間の絶縁が確保される。
【0047】上述した態様においては、板型ヒートパイプの上板材に窪み部、エンボス加工を形成しているが、板型ヒートパイプの上板材および下板材の両方に、窪み部およびエンボス加工を施すことによって、板型ヒートパイプの両面に金属芯入りプリント基板を熱的に接続させ、効率的に放熱を行うことができる。板型ヒートパイプの他端部には、放熱フィン等を設けてもよい。更に、板型ヒートパイプの他端部を、金属等の所定の部材に接触させて、放熱させてもよい。
【0048】
【発明の効果】上述したように、この発明によると、金属スペーサと板型ヒートパイプが一体的に形成されるので、耐振性に優れ、ろう付け等によって一体化されているので、組立てが容易であり、部品数を減少することができる。更に、ヒートパイプによって高集積化、高性能化された基板の発熱量の増加にも対応して、安定的に速やかに放熱することができる。従って、この発明によると、金属芯入りプリント基板の発熱を筐体外に効率的に放熱することができる板型ヒートパイプを備えた電気接続箱を提供することができ、産業上利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明の板型ヒートパイプの1つの態様の側面図である。
【図2】図2は、図1に示すこの発明の板型ヒートパイプの平面図である。
【図3】図3は、図1に○で示す部分の拡大図である。
【図4】図4は、この発明の板型ヒートパイプの他の1つの態様を示す図である。
【図5】図5は、リード部品の端子を避けるための窪みと、耐圧力を確保するためのエンボス形状を示す拡大図である。
【図6】図6は、この発明の板型ヒートパイプを備えた電気接続箱の1つの態様を示す図である。
【図7】図7は、金属芯入りプリント基板に取り付けた板型ヒートパイプの部分拡大図である。
【図8】図8は、従来の金属芯入りプリント基板の部分拡大図である。
【符号の説明】
1.板型ヒートパイプの上板材
2.板型ヒートパイプの下板材
3.スペーサ上材
4.スペーサ下材
5.プリント基板
6.電極(リード端子)
7.エンボス加工
8.凹部
10.板型ヒートパイプ
11.板型ヒートパイプの上板材
12.板型ヒートパイプの下板材
15.プリント基板
17.エンボス加工
18.窪み部
21.アッパーケース
22.ロアケース
23.アッパーカバー
24.ロアカバー
25.プリント基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】金属芯入りプリント基板の少なくとも一部に当接し、前記プリント基板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、前記凸部に対応した凹部を一方の面に有し、他方の面がコンテナの内壁を形成する板材によって形成された、その中に作動液が封入されている密閉されたコンテナからなる板型ヒートパイプ。
【請求項2】前記凹部を一方の面に有し、他方の面がコンテナの内壁を形成する前記板材が、それぞれ、前記コンテナを形成する上板材および下板材である、請求項1に記載の板型ヒートパイプ。
【請求項3】金属芯入りプリント基板の少なくとも一部に当接される、前記プリント基板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、前記凸部に対応した凹部を一方の面に有する板材を、コンテナの少なくとも1つの主面に金属接合して、一体的に形成された、その中に作動液が封入されている密閉されたコンテナからなる板型ヒートパイプ。
【請求項4】前記コンテナに、所定のエンボス加工が施されている、請求項1から3の何れか1項に記載の板型ヒートパイプ。
【請求項5】前記コンテナ内にウイックが設けられている、請求項1から4の何れか1項に記載の板型ヒートパイプ。
【請求項6】少なくとも2つの金属芯入りプリント基板と、前記金属芯入りプリント基板の少なくとも一部に当接し、前記プリント基板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、前記凸部に対応した凹部を一方の面に有し、他方の面がコンテナの内壁を形成する板材によって形成された、その中に作動液が封入されている密閉されたコンテナからなる板型ヒートパイプとを筐体内に備えた、板型ヒートパイプを備えた電気接続箱。
【請求項7】前記板型ヒートパイプの前記コンテナには、所定のエンボス加工が施されている、請求項6に記載の板型ヒートパイプを備えた電気接続箱。
【請求項8】前記板型ヒートパイプが、金属芯入りプリント基板の少なくとも一部に当接される、前記プリント基板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、前記凸部に対応した凹部を一方の面に有する板材を、コンテナの少なくとも1つの主面に金属接合して、一体的に形成された、その中に作動液が封入されている密閉されたコンテナからなる板型ヒートパイプである、請求項6または7に記載の板型ヒートパイプを備えた電気接続箱。
【請求項9】前記板材と前記ヒートパイプの前記コンテナが概ね同一幅および長さを有している、請求項8に記載の板型ヒートパイプを備えた電気接続箱。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図8】
image rotate


【公開番号】特開2003−75082(P2003−75082A)
【公開日】平成15年3月12日(2003.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−261813(P2001−261813)
【出願日】平成13年8月30日(2001.8.30)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】