説明

板材の搬送システム

【課題】板材の受け渡しの際に、板材が滑ることのない板材の搬送システムを提供する。
【解決手段】第1送出装置10から第2送出装置11へ板材101が受け渡される前においては、第1送出装置10は搬送部20と加圧部40の流体104とによって板材101を挟むように保持しながら搬送するとともに、第2送出装置11の搬送部20は板材101と接触しないようにし、第1送出装置10から第2送出装置11へ板材101が受け渡された後においては、第2送出装置11は搬送部20と加圧部40の流体104とによって板材101を挟むように保持しながら搬送するとともに、第1送出装置10の搬送部20は板材101と接触しないように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材を搬送する板材の搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
板材の搬送システムとしては、板材の両面を狭持部材で挟み、その狭持部材の移動によって板材を搬送するように構成されたものが提案されている(例えば、特許文献1乃至3参照)。しかしながら、例えば、TFT(薄膜トランジスタ)の液晶ディスプレイに使用する板ガラス(板材)の加工ラインなどでは、一方側の面に接触することなく板ガラスを搬送できる搬送システムが求められる。なぜなら、液晶ディスプレイ用の板ガラスは、一方側の面に半導体等の薄膜層が形成されるため、その面では微細な傷さえも許容できないからである(以下では、このように精密な加工が施される面を「精密面」と称す)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−126583号公報
【特許文献2】特開昭53−71396号公報
【特許文献3】特開昭55−129753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、出願人は、搬送する板材のうち精密面の裏側にあたる面(以下、「普通面」と称す。)を搬送用のベルトに接触させる一方、精密面には流体圧を加えるように構成された搬送システムを検討している。かかる構成によれば、板ガラスの精密面に機械類が接触することがないにもかかわらず、板ガラスを安定して搬送することができる。
【0005】
この搬送システムでは、板材の加工を行うステージごと、あるいは同じステージ内で上記のベルトが分割されており、その境界部分では分割された前後のベルトによって板材の受け渡しが行われる。このようなシステムでは、分割されたベルトごとに搬送速度を変えることができれば、加工のサイクルタイムを短縮することができる。しかしながら、受け渡しが行われる前後のベルトの搬送速度が異なれば、受け渡しの際、板材はいずれかのベルト上を滑ることになる。仮に、板材の滑りが発生すると、板材の搬送速度を正確に制御できなくなり、むしろサイクルタイムの短縮には逆効果である。
【0006】
そこで本発明は、板材の受け渡しの際に、板材が滑ることのない板材の搬送システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある形態に係る板材の搬送システムは、第1送出装置と、第2送出装置とを備え、前記第1送出装置から前記第2送出装置へ板材が受け渡される板材の搬送システムであって、前記第1送出装置及び前記第2送出装置はそれぞれ、前記板材の一方の面に接触して前記板材を搬送方向へ送り出す搬送部と、前記板材の他方の面に流体による垂直方向の圧力を加え、前記板材を前記搬送部に向かって加圧することができる加圧部と、を有しており、前記第1送出装置から前記第2送出装置へ前記板材が受け渡される前においては、前記第1送出装置は搬送部と前記加圧部の流体とによって前記板材を挟むように保持しながら搬送するとともに、前記第2送出装置の搬送部は前記板材と接触しないようにし、前記第1送出装置から前記第2送出装置へ前記板材が受け渡された後においては、前記第2送出装置は搬送部と前記加圧部の流体とによって前記板材を挟むように保持しながら搬送するとともに、前記第1送出装置の搬送部は前記板材と接触しないように構成されている。
【0008】
かかる構成によれば、第1送出装置から第2送出装置へ板材が受け渡される前においては、第2送出装置の搬送部は板材と接触せず、第1送出装置から第2送出装置へ板材が受け渡された後においては、第1送出装置の搬送部は板材と接触しないことになる。そのため、板材の受け渡しの前後において、板材が第1送出装置と第2送出装置の両方によって同時に搬送されるようなことはない。
【0009】
また、上記の板材の搬送システムにおいて、前記第1送出装置及び前記第2送出装置はそれぞれ、前記搬送部側から前記板材の前記一方の面に垂直方向の力を加え、前記板材を浮かすようにして前記搬送部と接触しないようにする浮揚部をさらに備えるように構成してもよい。
【0010】
また、上記の板材の搬送システムにおいて、前記浮揚部は、前記板材の前記一方の面に流体による垂直方向の圧力を加えることができるように構成してもよい。
【0011】
また、上記の板材の搬送システムにおいて、前記浮揚部は、前記板材の前記一方の面との間で流体の膜が形成できるように構成してもよい。
【0012】
また、上記の板材の搬送システムにおいて、前記浮揚部は、前記板材の前記一方の面に接触する支持ローラーと、該支持ローラーを前記板材へ付勢する付勢部材と、を有し、前記支持ローラーを介して前記板材の前記一方の面に垂直方向の力を加えることができるように構成してもよい。
【0013】
また、上記の板材の搬送システムにおいて、前記第1送出装置の搬送部は、前記第2送出装置側の端部がこれとは反対側の端部を支点にして前記板材と接触しないように駆動するよう構成されており、前記第2送出装置の搬送部は、前記第1送出装置側の端部がこれとは反対側の端部を支点にして前記板材と接触しないように駆動するよう構成されていてもよい。
【0014】
また、上記の板材の搬送システムにおいて、前記第1送出装置及び前記第2送出装置の搬送部は、全体が前記板材と接触しないように駆動するよう構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
上記のように、本発明に係る板材の搬送システムによれば、板材の受け渡しの前後において、板材が第1送出装置と第2送出装置によって同時に搬送されるようなことはない。そのため、板材の受け渡しの際に、板材が滑ることはない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る搬送システムの右側面図である。
【図2】図2は、図1のII−II矢視断面図である。
【図3】図3は、図1のIII−III矢視断面図である。
【図4】図4は、図1に示す加圧部の下面図である。
【図5】図5は、図1の搬送システムの板ガラスを搬送する動作を示した、第1送出装置と第2送出装置の境界付近の拡大右側面図である。
【図6】図6は、本発明の第2実施形態に係る搬送システムの縦断面図である。
【図7】図7は、本発明の第3実施形態に係る搬送システムの縦断面図である。
【図8】図8は、本発明の第4実施形態に係る搬送システムの板ガラスを搬送する動作を示した右側面図である。
【図9】図9は、本発明の第5実施形態に係る搬送システムの板ガラスを搬送する動作を示した右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態について図を参照しながら説明する。以下では、全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同じ符号を付して、重複する説明は省略する。なお、以下で説明する板材の搬送システムは、精密面と普通面を有する板ガラス(板材)を搬送することとする。
【0018】
(第1実施形態)
はじめに、図1から図4を参照して、本発明の第1実施形態に係る搬送システム100について説明する。ここで、図1は本実施形態に係る搬送システム100の右側面であり(流体ガイド部60を省略)、図2は図1のII−II矢視断面図である。図1において、紙面左から右に向かう方向が板ガラス101の搬送方向(以下、単に「搬送方向」と称す。)であり、図2において、紙面手前から奥に向かう方向が搬送方向である。なお、以下では「右」というときは搬送方向を向いて右をいい、「左」というときは搬送方向を向いて左をいうこととする。
【0019】
搬送システム100は、板ガラス101を搬送する装置である。図1に示すように、本実施形態に係る搬送システム100は、互いに隣接して配置されている第1送出装置10と、第2送出装置11と、を備えている。搬送対象である板ガラス101は、上流側に位置する第1送出装置10から下流側に位置する第2送出装置11へ受け渡たされる。この第1送出装置10と第2送出装置11は同じ構造を有している。そこで、以下では、第1送出装置10について詳しく説明し、第2送出装置11については必要な範囲で説明する。図2に示すように、第1送出装置10は、搬送部20と、加圧部40と、浮揚部50と、流体ガイド部60と、を有している。
【0020】
搬送部20は、板ガラス101を搬送方向に送り出す装置である。図1及び図2に示すように、搬送部20は、無端ベルト21と、ベルト受け部材22と、左端ガイド部材23と、右端ガイド部材24とによって主に構成されている。
【0021】
無端ベルト21は、環状に形成されたベルトであって、搬送方向の前後に位置する2台の駆動プーリ25によって駆動される。この無端ベルト21は板ガラス101の普通面103(下面)に接触するように構成されており、板ガラス101に接触した駆動プーリ25が回転駆動することで、板ガラス101を搬送方向に送り出すことができる。なお、本実施形態に係る無端ベルト21は、ゴム製のゴムベルト部26と、金属製の金属ベルト部27によって主に構成されており、二層構造を有している。このうち、ゴムベルト部26は、無端ベルト21の外表面側に位置しており、板ガラス101に接する。また、ゴムベルト部26の外表面には、ベルト幅方向に延びる流体排出溝28が等間隔で形成されている。他方、金属ベルト部27は無端ベルト21の内表面側に位置しており、駆動プーリ25に接する。金属ベルト部27は、図2に示すように、ゴムベルト部26よりもベルト幅(左右方向寸法)がわずかに大きく、右端及び左端がそれぞれゴムベルト部26の右端及び左端よりも左右方向外側に位置している。
【0022】
ベルト受け部材22は、無端ベルト21を支持する部材である。ベルト受け部材22は、搬送方向に延びる板状の形状を有している。ベルト受け部材22は、無端ベルト21の内側に位置しており、板ガラス101が通過する搬送路と平行に配置されている。換言すれば、ベルト受け部材22は、無端ベルト21を挟んで板ガラス101の搬送路と対向するように配置されている。ベルト受け部材22には、無端ベルト21に接する平面状のベルト受け面29が形成されており、このベルト受け面29の表面を無端ベルト21が摺動する。このように、本実施形態のベルト受け部材22によれば、平面状のベルト受け面29で無端ベルト21を支持するため、例えばローラー等で受けた場合などに発生する無端ベルト21がベルト面と垂直方向に波打つような現象の発生を抑えることができる。よって、板ガラス101を安定して搬送することができる。
【0023】
左端ガイド部材23は、無端ベルト21を左方への変位を抑える部材である。左端ガイド部材23は、搬送方向に直行する方向を回転軸の方向として回転するローラーである。左端ガイド部材23は、板ガラス101の搬送路に沿ってその近傍に複数配置されている。そして、左端ガイド部材23は、無端ベルト21の左側に位置し、金属ベルト部27の左端を支持している。なお、本実施形態では左端ガイド部材23はローラーであるが、左端ガイド部材23はこのような構成に限られない。例えば、左端ガイド部材23はローラーに代えて搬送方向に延びる板状の部材であってもよい。
【0024】
右端ガイド部材24は、無端ベルト21の右方への変位を抑える部材である。右端ガイド部材24は、搬送方向に直交する方向を回転軸の方向として回転するローラーである。右端ガイド部材24は、左端ガイド部材23と対をなすようにして、板ガラス101の搬送路の近傍に複数配置されている。そして、右端ガイド部材24は、無端ベルト21の右側に位置し、金属ベルト部27の右端と接触している。さらに、右端ガイド部材24には、ばね30により無端ベルト21に向かう左向きの力が加えられている。この構成により、右端ガイド部材24は、常に無端ベルト21に接した状態となる。右端ガイド部材24は、以上のような構成を備えているため、無端ベルト21を左方に押さえ込み、無端ベルト21の右方への変位を抑えることができる。
【0025】
加圧部40は、板ガラス101に垂直方向の流体圧力を加える装置である。なお、板ガラス101に流体圧力を加える際に用いる流体(以下、「加圧流体」と称す。)104は、本実施形態では水とする。ただし、加圧流体104は、洗浄液であってもよく、他の液体であってもよく、空気などの気体であってもよい。加圧部40は、板ガラス101を介して無端ベルト21に対向するように搬送方向に沿って複数配置されている。ここで、図3は図1のIII−III矢視断面図であり(駆動プーリ25を省略)、図4は加圧部40の下面図である。図3及び図4に示すように、加圧部40は、円柱状の流入側部材41と、矩形板状の流出側部材42とによって主に構成されている。
【0026】
流入側部材41は、加圧流体104の入口となる部材である。図3に示すように、流入側部材41の内部には、流出側部材42とは反対側の端面に開口する入口流路43が形成されている。この入口流路43には図示しない流体供給装置が接続されており、この入口流路43を介して流入側部材41の内部に加圧流体104が供給される。さらに、流入側部材41の内部には、流出側部材42側の端面に開口する流体溜44が形成されている。この流体溜44は、入口流路43から流入した加圧流体104を一旦溜めることができる。そのため、例えば入口流路43に供給される加圧流体104の圧力が変動するような場合であっても、この流体溜44を介することにより、圧力の変動量を低減した状態で加圧流体104を流出側部材42へと供給することができる。つまり、流体溜44はダンパとして機能している。
【0027】
流出側部材42は、加圧流体104を板ガラス101に放出する部材である。流出側部材42は、流入側部材41よりも板ガラス101の搬送路に近い部分に位置し、流入側部材41に連結されている。流出側部材42の内部には、流入側部材41側の面に開口する中間流路45が形成されている。中間流路45は、小径部46と、小径部46よりも径の大きい大径部47とによって構成されている。これにより、流入側部材41の流体溜44を通過した加圧流体104は、小径部46、大径部47の順にこれらの内部を流れる。流出側部材42には、板ガラス101の搬送路側に開口する放出開口部48が形成されている。放出開口部48は、図4に示すように、板ガラス101の搬送路側から見て略矩形状に形成されている。中間流路45を通過した加圧流体104は、この放出開口部48へ流入し、板ガラス101の精密面102へと放出される。なお、本実施形態に係る流出側部材42は加圧部40ごとにそれぞれ独立して構成されているが、これらを一体に形成してもよい。
【0028】
上記の構成を備える加圧部40は、搬送される板ガラス101との間にわずかな隙間が生じるように配置されている(図3では発明が理解されやすいように、隙間を大きく描いている)。このように配置することで、加圧部40から放出された加圧流体104が、加圧部40と板ガラス101の間のわずかな隙間を通って、加圧部40の外へと流出することになる。これにより、加圧部40と板ガラス101との間に加圧流体104の膜が生じる。そのため、加圧部40は板ガラス101に接触することなく、この加圧流体104の圧力によって、板ガラス101を無端ベルト21に向かって垂直方向に押すことができる。なお、加圧部40による板ガラス101への下方の力は、加圧部40から放出する加圧流体104の流量を増減させることで、調整することができる。
【0029】
浮揚部50は、板ガラス101を無端ベルト21から浮かせ、両者が接触しないようにするための部材である。図1に示すように、浮揚部50は、板ガラス101の普通面103側であって、無端ベルト21の左右両側に位置し、搬送方向に沿って複数配置されている。各浮揚部50は、入口流路51、流体溜52、中間流路53、及び放出開口部54が形成されている。これらは、それぞれ加圧部40の入口流路43、流体溜44、中間流路45、及び放出開口部48に対応しており、同じ機能を果たす。このように、浮揚部50は、加圧部40に近い構造を有しており、加圧部40と同様に、板ガラス101との間に流体の膜を形成し、また、板ガラス101の普通面103に垂直方向の流体圧力を加えることができる。
【0030】
なお、加圧部40の場合と異なり、浮揚部50から放出される加圧流体104の流量は一定である。そのため、板ガラス101を無端ベルト21と接触しないようにするかは浮揚部50ではなく加圧部40の制御による。つまり、加圧部40から放出される加圧流体104の流量を増やして板ガラス101へ加える下方の力を大きくすると、加圧部40からの力が浮揚部50からの力よりも大きくなり、その結果、板ガラス101が無端ベルト21に押し付けられる。これに対し、加圧部40から放出される加圧流体104の流量を減らして板ガラス101へ加える下方の力を小さくすると、加圧部40からの力が浮揚部50からの力よりも小さくなり、その結果、板ガラス101が上方に押し上げられて無端ベルト21から離れる。
【0031】
流体ガイド部60は、板ガラス101の両面に垂直方向の流体圧力を加えて板ガラス101の縦揺れを抑える装置である。この流体ガイド部60は、6つの流路管61によって構成されている。これら6つの流路管61は、板ガラス101の左右両端近傍であって精密面102側及び普通面103側と、これらよりの左右方向中央側であって普通面103側に配置されている。そして、これらの流路管61は、板ガラス101の搬送方向に延びるように配置されている。また、流路管61のうち板ガラス101に対向する部分には、所定の間隔をおいて噴射口62が複数形成されている。さらに、各流路管61の内部には加圧流体である水が流れており、その加圧流体の圧力を上げると噴射口62から板ガラス101に向かって垂直方向に加圧流体が噴射される。よって、流体ガイド部60によれば、板ガラス101に機械類が触れることなく、その両面に加圧流体による垂直方向の圧力を加えることができ、板ガラス101の縦揺れを防止することができる。また、本実施形態に係る流体ガイド部60は加圧流体を用いているため、板ガラス101に異物が付着するのを防止する役割も果たしている。
【0032】
以上が、第1送出装置10の各構成要素の説明である。第1送出装置10は、以上のような構成要素を備えており、搬送部20の無端ベルト21と加圧部40の加圧流体104とによって板ガラス101を挟むように保持しながら搬送方向へ搬送することができる。また、第1送出装置10は、上述したように、加圧部40から放出される加圧流体104の流量を調整することで、板ガラス101を無端ベルト21に押し付けたり、無端ベルト21と接触しないようにしたりすることができる。そして、第2送出装置11も第1送出装置10と同じ構成を有していることは上述したとおりであり、加圧部40から放出される加圧流体104の流量を調整することで、板ガラス101を無端ベルト21に押し付けたり、無端ベルト21と接触しないようにしたりすることができる。
【0033】
次に、図5を参照して、本実施形態に係る搬送システム100の動作について説明する。図5は、第1送出装置10と第2送出装置11の境界付近の拡大右側面図であり、搬送システム100が板ガラス101を搬送する動作を示している。搬送システム100では、第1送出装置10から第2送出装置11へ板ガラス101を受け渡しできるように構成されていることは上述したとおりである。
【0034】
まず、図5の上段の図に示すように、第1送出装置10から第2送出装置11へ板ガラス101が受け渡される前においては、第2送出装置11は板ガラス101のうち第2送出装置11内に位置する部分を浮かせ、無端ベルト21と接触しないようにしている。これにより、板ガラス101の一部が第2送出装置11内に位置しているにもかかわらず、板ガラス101は第1送出装置10の搬送部20のみによって搬送される。
【0035】
続いて、図5の中段の図に示すように、板ガラス101の重心位置が、第1送出装置10と第2送出装置11の境界に達すると、板ガラス101は第1送出装置10から第2送出装置11へ受け渡される(図5の中段の図は、板ガラス101は第1送出装置10から第2送出装置11へ受け渡される直前の状態を示している。図8の中段の図及び図9の中段の図も同様である)。図5の中段の図では、板ガラス101を支持している部分が少ないようにも見えるが、実際には板ガラス101の左右両端部等を流体ガイド部60が支持しているため、自重によって撓むようなことはない。なお、板ガラス101が第1送出装置10から第2送出装置11へ受け渡されるタイミングは上記のような場合に限られない。例えば、板ガラス101の重心位置が第1送出装置10内や第2送出装置11内にあるときに板ガラス101を第1送出装置10から第2送出装置11へ受け渡すようにしてもよい。
【0036】
続いて、図5の下段の図に示すように、第1送出装置10から第2送出装置11へ板ガラス101が受け渡された後においては、第1送出装置10は板ガラス101のうち第1送出装置10内に位置する部分を浮かせ、無端ベルト21から離す。これにより、板ガラス101の一部が第1送出装置10内に位置しているにもかかわらず、板ガラス101は第2送出装置11の搬送部20のみによって搬送される。
【0037】
以上のように、本実施形態に係る搬送システム100によれば、板ガラス101を第1送出装置10から第2送出装置11に受け渡す際、板ガラス101が両装置の無端ベルト21に同時に接することはないため、仮に第1送出装置10の無端ベルト21と第2送出装置11の無端ベルトの搬送速度が異なっていたとしても、板ガラス101がいずれかの装置上を滑るようなことはない。なお、本実施形態では、板ガラス101を受け渡す際、板ガラス101の一部を浮かすことになるため、板ガラス101は部分的に湾曲する。そのため、板ガラス101がある程度撓む場合には本実施形態の搬送方法は有効である。例えば、板ガラス101の厚みが1mm以下程度あれば、本実施形態に係る搬送システム100は有効である。
【0038】
なお、第1送出装置10及び第2送出装置11の搬送速度はそれぞれ一定である必要はない。例えば、第1送出装置10から第2送出装置11へ板ガラス101が受け渡される際には、両者の搬送速度を同じにし、板ガラス101が第2送出装置11へ受け渡された後に第2送出装置11の搬送速度を大きくしても良い。この場合、第2送出装置11の搬送速度を大きくしたとき、板ガラス101の一部が第1送出装置10の内側に残っていたとしても、その部分が第1送出装置10上を滑るようなことはない。
【0039】
また、以上では、浮揚部50から放出される加圧流体104の流量が一定であり、加圧部40から放出される加圧流体104の流量が可変である場合について説明したが、このような構成に限られない。例えば、浮揚部50から放出される加圧流体104の流量を可変とするとともに、加圧部40から放出される加圧流体104の流量を一定とし、浮揚部50側の調整によって板ガラス101を無端ベルト21と接触させるか否かを制御できるように構成してもよい。
【0040】
(第2実施形態)
次に、図6を参照して、本発明の第2実施形態に係る搬送システム200について説明する。図6は、第2実施形態に係る搬送システム200を構成する第1送出装置210(第2送出装置211)の断面図であって、第1実施形態の図3に対応する図である。図6に示すように、本実施形態に係る搬送システム200は、図3に示す浮揚部50に代えて浮揚部250を備えている点で、第1実施形態に係る搬送システム100と構成が異なる。本実施形態の浮揚部250は、いわゆるジェットノズルであって、先端からは高圧の加圧流体104が板ガラス101の普通面103に向かって垂直に噴射されるように構成されている。これにより板ガラス101は上方への力が加えられて上方に押し上げられ、無端ベルト21から離す。本実施形態によれば、浮揚部250としてジェットノズルを採用しているため、浮揚部250と板ガラス101の距離が比較的大きな場合であっても、板ガラス101に上方への力を加えることができる。そのため、浮揚部250と板ガラス101との距離の設定を広い範囲で行うことができる。
【0041】
(第3実施形態)
次に、図7を参照して、本発明の第3実施形態に係る搬送システム300について説明する。図7は、第2実施形態に係る搬送システム300を構成する第1送出装置310(第2送出装置311)の断面図であって、第1実施形態の図3に対応する図である。図7に示すように、本実施形態に係る搬送システム300は、図3に示す浮揚部50に代えて浮揚部350を備えている点で、第1実施形態に係る搬送システム100と構成が異なる。本実施形態の浮揚部350は、板ガラス101に接触する支持ローラー351と、左右方向を回転軸としてこの支持ローラーを回転可能に保持する保持部材352と、この保持部材352を介して支持ローラー351を板ガラス101の普通面103へ垂直方向に付勢する付勢部材353によって主に構成されている。本実施形態の構成によれば、加圧流体104(図1等参照)を用いなくとも、板ガラス101に上方への力を加え、板ガラス101を浮かすようにして搬送部20と接触しないようにすることができる。
【0042】
(第4実施形態)
次に、図8を参照して、本発明の第4実施形態に係る搬送システム400について説明する。図8は、第4実施形態に係る搬送システム400の板ガラス101を搬送する動作を示した右側面図である。図8に示すように、本実施形態に係る搬送システム400は、板ガラス101を押し上げるための浮揚部50(図1等参照)を備えておらず、第1送出装置410及び第2送出装置411が変位する点で、第1実施形態に係る搬送システム100と構成が異なる。具体的には次のとおりである。
【0043】
本実施形態に係る搬送システム400では、第1送出装置410は下流側が下方になるよう傾斜可能に構成されており、第1送出装置411は上流側が下方になるよう傾斜可能に構成されている。より具体的には、第1送出装置410の下流側の駆動プーリ25Bが上流側の駆動プーリ25Aを支点にして元の水平位置よりも下方に移動可能に構成されており、第2送出装置411の上流側の駆動プーリ25Cが下流側の駆動プーリ25Dを支点にして元の水平位置よりも下方に移動可能に構成されている。なお、駆動プーリ25B、Cを上下させる手段は特に限定されてないが、例えばエアシリンダ等のアクチュエータを用いて駆動プーリ25B、Cを支持している部材を上下するように構成してもよい。
【0044】
以上のように構成された搬送システム400によれば、次のようにして第1送出装置410から第2送出装置411へと板ガラス101が受け渡される。まず、図8の上段の図に示すように、第1送出装置410から第2送出装置411へ板ガラス101が受け渡される前においては、第2送出装置411の上流側の駆動プーリ25Cを下げ、第2送出装置411内の無端ベルト21から板ガラス101を離す。これにより、板ガラス101の一部が第2送出装置411内に位置しているにもかかわらず、板ガラス101は第1送出装置410の搬送部20のみによって搬送される。
【0045】
続いて、図8の中段の図に示すように、板ガラス101の重心位置が、第1送出装置410と第2送出装置411の境界に達すると、搬送システム400は、板ガラス101は第1送出装置410から第2送出装置411へ受け渡される。
【0046】
続いて、図8の下段の図に示すように、第1送出装置410から第2送出装置411へ板ガラス101が受け渡された後においては、第1送出装置410の下流側の駆動プーリ25Bを下げ、第1送出装置410内の無端ベルト21から板ガラス101を離す。これにより、板ガラス101の一部が第1送出装置410内に位置しているにもかかわらず、板ガラス101は第2送出装置411の搬送部20のみによって搬送される。
【0047】
以上のように、本実施形態に係る搬送システム400によれば、第1実施形態に係る搬送システム100と同様に、第1送出装置410の無端ベルト21と第2送出装置411の無端ベルトの搬送速度が異なっていたとしても、板ガラス101が滑るようなことはない。なお、第1実施形態では板ガラス101がある程度撓む場合には有効であると説明したが、本実施形態では板ガラス101を撓ませるようなことはないため、例えば厚みが1mm以上の比較的厚みのある歪みにくい板ガラスを搬送する場合には本実施形態に係る搬送システム400が有効である。
【0048】
(第5実施形態)
次に、図9を参照して、本発明の第5実施形態に係る搬送システム500について説明する。図9は、第5実施形態に係る搬送システム500が板ガラス101を搬送する動作を示した右側面図である。図9に示すように、本実施形態に係る搬送システム400は、第1送出装置510及び第2送出装置511が一方の端部のみならず全体が上下に移動する点で第4実施形態に係る搬送システム400と構成が異なる。
【0049】
本実施形態に係る搬送システム500の第1送出装置510及び第2送出装置511は、無端ベルト21全体が元の位置よりも下方に移動可能に構成されている。より具体的には、各無端ベルト21の両端の駆動プーリ25A、B、C、Dが同時に下方に移動できるように構成されている。駆動プーリ25A、B、C、Dを上下させる手段は特に限定されてないが、例えばエアシリンダ等のアクチュエータを用いて前後の駆動プーリ25A、B、C、Dを支持している部材を上下するように構成してもよい。
【0050】
以上のように構成された搬送システム500によれば、次のようにして第1送出装置510から第2送出装置511へと板ガラス101が受け渡される。まず、第1送出装置510から第2送出装置511へ板ガラス101が受け渡される前においては、第2送出装置511の両側の駆動プーリ25C、Dを下げ、第2送出装置511内の無端ベルト21から板ガラス101を離す。これにより、板ガラス101の一部が第2送出装置511内に位置しているにもかかわらず、板ガラス101は第1送出装置510の搬送部20のみによって搬送される。
【0051】
続いて、図9の中段の図に示すように、板ガラス101の重心位置が、第1送出装置510と第2送出装置511の境界に達すると、搬送システム500は、板ガラス101は第1送出装置510から第2送出装置511へ受け渡される。
【0052】
続いて、図9の下段の図に示すように、第1送出装置510から第2送出装置511へ板ガラス101が受け渡された後においては、第1送出装置510の両側の駆動プーリ25A、Bを下げ、第1送出装置510内の無端ベルト21から板ガラス101を離す。これにより、板ガラス101の一部が第1送出装置510内に位置しているにもかかわらず、板ガラス101は第2送出装置511の搬送部20のみによって搬送される。
【0053】
以上、本発明の実施形態について図を参照して説明したが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。なお、以上では、搬送される板ガラス101が精密面102と普通面103を有する場合について説明したが、例えば、搬送する板ガラス101の両面が普通面であってもよい。このような場合でも、板ガラスの表面を清浄に保つべきことに変わりなく、本発明に係る板材の搬送システムは有効である。
【0054】
また、以上では搬送システムが、板ガラスを搬送する場合について説明したが、仮にある装置が板ガラス以外の板材を搬送するものであったとしても、そのことをもって、その装置が本発明に含まれなくなる理由にはなりえない。
【0055】
また、以上では、搬送システムが環状の無端ベルト21を用いる場合について説明したが、例えば無端ベルト21に代えて環状型以外のベルトを用いても良い。
【0056】
また、以上では、搬送システムが板材(板ガラス101)を水平にした状態で搬送する場合について説明したが、板材を鉛直にした状態で搬送するように構成されていてもよい。つまり、例えば、搬送システムが、図2や図3に示す構成を反時計回りに90°回転させたような構成であっても良い。
【0057】
また、以上では、板ガラスを浮かせる搬送システム100、200、300と第1送出装置及び第2送出装置自体を変位させる搬送システム400、500について説明したが、これらを合わせても良い。つまり、板ガラスを浮かせるとともに、第1送出装置及び第2送出装置を変位させることができる搬送システムとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る板材の搬送システムによれば、板材の受け渡しの際に、板材が滑ることがないため、板材の搬送システムの技術分野において有益である。
【符号の説明】
【0059】
10、210、310、410、510 第1送出装置
11、211、311、411、511 第2送出装置
20 搬送部
21 無端ベルト(ベルト)
40 加圧部
50 浮揚部
100、200、300、400、500 搬送システム
101 板ガラス(板材)
104 加圧流体(流体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1送出装置と、第2送出装置とを備え、前記第1送出装置から前記第2送出装置へ板材が受け渡される板材の搬送システムであって、
前記第1送出装置及び前記第2送出装置はそれぞれ、
前記板材の一方の面に接触して前記板材を搬送方向へ送り出す搬送部と、
前記板材の他方の面に流体による垂直方向の圧力を加え、前記板材を前記搬送部に向かって加圧することができる加圧部と、を有しており、
前記第1送出装置から前記第2送出装置へ前記板材が受け渡される前においては、前記第1送出装置は搬送部と前記加圧部の流体とによって前記板材を挟むように保持しながら搬送するとともに、前記第2送出装置の搬送部は前記板材と接触しないようにし、
前記第1送出装置から前記第2送出装置へ前記板材が受け渡された後においては、前記第2送出装置は搬送部と前記加圧部の流体とによって前記板材を挟むように保持しながら搬送するとともに、前記第1送出装置の搬送部は前記板材と接触しないように構成された、板材の搬送システム。
【請求項2】
前記第1送出装置及び前記第2送出装置はそれぞれ、前記搬送部側から前記板材の前記一方の面に垂直方向の力を加え、前記板材を浮かすようにして前記搬送部と接触しないようにする浮揚部をさらに備えている、請求項1に記載の板材の搬送システム。
【請求項3】
前記浮揚部は、前記板材の前記一方の面に流体による垂直方向の圧力を加えることができるように構成されている、請求項2に記載の板材の搬送システム。
【請求項4】
前記浮揚部は、前記板材の前記一方の面との間で流体の膜が形成できるように構成されている、請求項3に記載の板材の搬送システム。
【請求項5】
前記浮揚部は、前記板材の前記一方の面に接触する支持ローラーと、該支持ローラーを前記板材へ付勢する付勢部材と、を有し、前記支持ローラーを介して前記板材の前記一方の面に垂直方向の力を加えることができるように構成されている、請求項2に記載の板材の搬送システム。
【請求項6】
前記第1送出装置の搬送部は、前記第2送出装置側の端部がこれとは反対側の端部を支点にして前記板材と接触しないように駆動するよう構成されており、
前記第2送出装置の搬送部は、前記第1送出装置側の端部がこれとは反対側の端部を支点にして前記板材と接触しないように駆動するよう構成されている、請求項1に記載の板材の搬送システム。
【請求項7】
前記第1送出装置及び前記第2送出装置の搬送部は、全体が前記板材と接触しないように駆動するよう構成されている、請求項1に記載の板材の搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−103797(P2013−103797A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248753(P2011−248753)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】