説明

板状建材の塗装方法

【課題】板状建材のインクジェット表面塗装時における端面へのインクの回り込みを、作業効率を損ねることなく防止できる板状建材の塗装方法を提供する。
【解決手段】上面に平面を有するマスク材1をノズル14にて塗装する板状建材20の表面辺縁部23bの外側に隣設し、マスク材1の下面が板状建材20の表面23の高さを超えない状態で、マスク材1の一側端が板状建材20の端面22の上端部に沿って突き当たるよう配置し、板状建材20の端面22が上方から隠蔽された状態で板状建材20の表面辺縁部23bを塗装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状建材の表面辺縁部を含む表面をインクジェット塗装方式で塗装する板状建材の塗装方法に関するもので、さらに詳しくは、板状建材の各辺縁部の端面をマスクしながら表面をインクジェット塗装する板状建材の塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、外装材や内装材、家具材などに使用される板状建材の表面塗装には、塗装面に向けて、インクジェットノズルからインクを噴射させて模様を施すようにしたインクジェット塗装方式を使用した様々な手法が提案、実施されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
また、このような板状建材には、木口面(端面)の塗装を必要とするものもあり、従来ではそのような木口面の塗装に関する技術も多く提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0004】
木口面の塗装を必要とする板状建材の場合、表面と端面とが同一平面ではないため、同一塗装設備を使用して同一塗装工程によって同時にインクジェット塗装することはきわめて困難であり、そのため、表面の塗装工程と、端面の塗装工程とを別々に実施することが一般的となっている。
【特許文献1】特許3115136号公報
【特許文献2】特開2001−353460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インクジェット塗装による表面塗装工程によって板状建材の表面を塗装する場合、その表面辺縁部に対してノズルより噴出されたインクが飛散して端面側に回り込み、端面、特にその角部近傍にそのようなインク回り込みによる塗装汚れが生じることがあった。また、表面辺縁部に塗装済みのインクが端面に垂れ落ちて端面に汚れを付着させることもあった。
【0006】
また、表面に加えて端面にも塗装を行うものでは、端面の角部近傍に表面塗装によるインクが回り込んでいれば、その後、端面の塗装がなされることによって、インクが回り込んだ箇所は二重に塗装されることとなってしまい、表面に比べて濃色化することがあった。特に、木目などの模様を施すものでは、所望の木口柄が正しく形成されないことがあった。
【0007】
このような端面へのインク付着を防止するためには、マスキングテープを端面に貼り付けてから表面への塗装を行うことも想定できるが、表面塗装工程の前後に、マスキングテープの貼り付け、取り外し作業が必要となるため、塗装工程全体としての作業効率が低下することが予想される。
【0008】
本発明は、上記事情を考慮して提案されたもので、その目的は、板状建材のインクジェット表面塗装時における端面へのインクの回り込みを、作業効率を損ねることなく防止できる板状建材の塗装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の板状建材の塗装方法は、表面を上方に向けて配置した板状建材の表面辺縁部に対して、上方に配置したノズルからインク滴を噴射してインクジェット塗装を行い板状建材を塗装する方法であって、上面に平面を有するマスク材を、ノズルにて塗装する板状建材の表面辺縁部の外側に隣設し、マスク材の下面が板状建材の表面の高さを超えない状態で、マスク材の一側端が板状建材の端面の上端部に沿って突き当たるよう配置し、板状建材の端面が上方から隠蔽された状態で板状建材の表面辺縁部を塗装するようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の板状建材の塗装方法では、請求項1において、ノズルとマスク材とは、塗装すべき板状建材の辺縁部方向に沿って、板状建材に対して同一速度で相対移動する。
【0011】
請求項3に記載の板状建材の塗装方法では、請求項1において、マスク材は、複数の矩形状のマスク分割材を連設して形成され、該複数のマスク分割材のうちの一部を選択的に塗装すべき板状建材に割り当てて使用する。
【0012】
請求項4に記載の板状建材の塗装方法では、請求項1において、複数のマスク分割材は、エンドレス回転ベルト状に連結されている。
【0013】
請求項5に記載の板状建材の塗装方法では、請求項1において、マスク材は、シート材をエンドレス回転ベルト状に連結してなり、シート材の一部を選択的に塗装すべき板状建材に割り当てて使用する。
【0014】
請求項6に記載の板状建材の塗装方法では、請求項3〜5のいずれか1項において、
インク除去手段を設けて、マスク材の表面に付着したインクを除去させるようにている。
【0015】
請求項7に記載の板状建材の塗装方法では、請求項6において、インク除去手段は、インク拭い取り、インク掻き落とし、洗浄のすくなくともいずれかによってインクを除去する構成とされる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の板状建材の塗装方法によれば、板状建材の端面をマスク材で上方より隠した状態で塗装するようにしているため、インク滴の端面への回り込みが防止でき、その結果、端面のインクによる塗装汚れの発生を阻止できる。また、端面にも塗装を行うものでは、回り込んだインクと本来の端面の塗装と重なり合って、端面が表面に比べて濃色化された塗装となることを防止できる。また、マスキングテープを使用しないため、テープの取り付け、取り外しなどの面倒な作業が塗装工程に付加されず、そのため作業効率が低下するおそれもない。
【0017】
請求項2に記載の塗装方法によれば、ノズルとマスク材とが、塗装すべき板状建材の辺縁部方向に沿って同一速度で相対移動するようにしているため、マスク材の辺縁部の寸法を板状建材の辺縁部の寸法に比べ小さくでき、またマスク材とノズルとを一体として制御できるため、マスク材の移動、搬送設備をおおがかりにすることなく、簡易な構成で、好適に板状建材の塗装マスクを実現できる。
【0018】
請求項3に記載の塗装方法によれば、マスク材を形成する複数の矩形状のマスク分割材のうちの一部を選択的に塗装すべき板状建材に割り当てて使用しているため、マスク材へのインクの付着汚れが複数のマスク分割材へ分散され、そのためマスク材を長期にわたって利用でき、メンテナンスも容易にできる。また、マスク分割材ごとに交換することもでき、経済的である。
【0019】
請求項4に記載の塗装方法によれば、複数のマスク分割材がエンドレス回転ベルト状に連結されており、マスク分割材を立体的に配置できるため、塗装マスク装置設備のために広い空間を準備する必要がない。また、同一の場所で回転できるので、取り扱いが容易で、塗装設備に組み込みやすい。
【0020】
請求項5に記載の塗装方法によれば、シート材をエンドレス回転ベルト状に連結してなるマスク材の一部を、選択的に塗装すべき板状建材に割り当てて使用しているため、マスク材へのインクの付着汚れが分散され、そのためマスク材が長期にわたって利用でき、メンテナンスも容易にできる。また、マスク材を立体的に配置できるため、マスク設備のために広い空間を準備する必要がない。また、塗装設備にも組み込みやすい。
【0021】
また、請求項3〜5の発明によれば、マスク材の一部を選択的に塗装すべき板状建材に割り当てる構成であるため、マスク材のマスクを担わない部分に対し、付着インクの除去作業が行える。
【0022】
請求項6に記載の塗装方法によれば、塗装マスク装置がマスク材の表面に付着したインクを除去するインク除去手段を備えているため、マスクを担わない部分のインクを除去することができ、マスク材を常にインク付着の少ない状態に保持することができる。その結果、マスク材から板状建材へのインク転着を防止できる。
【0023】
請求項7に記載の塗装方法によれば、インク除去手段が、インク拭い取り、インク掻き落とし、洗浄のすくなくともいずれかによってインクを除去する構成であるため、インクの液体、固体の状態によらず、好適に除去できる。組み合わせて使用すれば、さらに有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面とともに説明する。
【0025】
図1は、本発明の板状建材の塗装方法の第1の実施形態を説明するための図であり、(a)は概略平面図、(b)は概略縦断面図である。
【0026】
板状建材20は、略矩形に形成され、ローラコンベアなどの搬送手段(不図示)により、表面を上方に向けた状態で塗装台15に搬送され、その塗装台15上で、インクジェット噴射方式による塗装装置10を駆動させて、板状建材20の辺縁部21の方向(塗装走査方向)に沿って上方よりインク滴を噴射させることで表面塗装がなされる。
【0027】
この板状建材20は、外壁、塀などの外装材や、扉、床、階段、框、手摺り、棚、キッチンパネル、天井などの内装材、各種家具の構成材などに使用される。
【0028】
本例では、板状建材20の表面塗装は、上面23のうちの表面中央部23aと、表面辺縁部23bとを個別の塗装工程で塗装するようにしており、図1には4つの辺縁部21のうち1つの表面辺縁部23bに対する塗装を示している。なお本発明は、対向する2表面辺縁部23bを同時に塗装するものにも適用でき、また表面中央部23aと、4表面辺縁部23bとの両方を含む表面全体を1工程で実施するものにも適用でき、すくなくとも表面辺縁部23bを含む表面塗装を行うものが対象とされる。
【0029】
なお、板状建材20に対するインクジェット噴射方式による塗装は、端面(小口面)22に対しても行ってもよく、その場合の端面塗装工程は、表面辺縁部23bを含む表面塗装の後あるいは前に実施される。
【0030】
表面中央部23aの塗装工程は、図3にて後述するが、端面22に対する塗装工程は図示および説明を省略する。
【0031】
また本例では、塗装すべき板状建材20を塗装台15上で停止させて、その状態でノズル14を塗装走査方向に移動させて塗装するものを示しているが、板状建材20を搬送させながら塗装を行ってもよい。その場合、ノズル14は固定させてもよいし、板状建材20の搬送に非同期に動作させてもよく、ノズル14はすくなくとも塗装走査方向に沿って、相対移動されるようにすればよい。
【0032】
図1に示すように、本実施形態に示した板状建材の塗装方法は、板状建材20の表面辺縁部23bに対する塗装を実施する際に、板状建材20の塗装走査方向の辺縁部21よりも十分に長い辺縁部1aを有したマスク材1を、板状建材20の表面23と略面一になるように辺縁部21にあてがって、その状態で塗装装置10を駆動させてインクジェット塗装する方法である。
【0033】
塗装装置10は、CPUなどを搭載した制御ユニット11と、この制御ユニット11に接続され、塗装台15に隣接して配設された装置本体12と、装置本体12に連結され、略垂直下方に向けたインクジェットノズル14を接続したノズル支持アーム13とを有し、図例では、ノズル支持アーム13が板状建材20に対して、矢印Y方向にインク噴射しながら移動可能としている。なお上述するように、ノズル支持アーム13を固定し、板状建材20を移動させる構成にしてもよい。
【0034】
マスク材1は、表面塗装時に、被塗材である板状建材20の端面22を隠すために用いるもので、表面塗装するための噴射インクが端面22へ直接飛散されることを防ぐ作用と、表面23から塗装済みのインクが端面22に垂れ落ちることを防ぐ作用とを有している。そのため、マスク材1の素材は特に限定されないが、上面を平面とし、板面に付着したインク汚れを除去しやすくするために、板面が滑沢面に形成されているほうが望ましい。また、後述する第4の実施形態で記載しているように、親水、親油、撥水、撥油などの表面処理が適宜なされたものでもよい。
【0035】
マスク材1は、板状建材20の塗装すべき表面辺縁部23b側の端面22に当接された状態に隣設、保持され、その結果、端面22は上方より隠され、遮蔽された状態となる。なお、本塗装方法は板状建材20の表面23(表面辺縁部23b)を塗装するためのものであるため、板状建材20の表面23をマスク材1によって隠さないようにすることはいうまでもない。
【0036】
その状態で、塗装装置10が駆動され、ノズル14が塗装走査方向に沿って移動しながら、板状建材20の表面辺縁部23bに向けてインクを噴射させると、表面辺縁部23bに木目などの所定の模様が塗装される。表面辺縁部23bへのインクジェット塗装であるため、噴出されたインクが端面側22にも飛散し、あるいは表面辺縁部23bに付着したインクが端面側22に垂れ落ちようとするが、マスク材1で端面22を隠しているため、このようなインクの回り込みによって端面22にインクが付着することを防止できる。
【0037】
マスク材1による好適な端面22の遮蔽の態様としては、図1(b)のように、端面22が露出されないように端面同士を当接させることが望ましいが、5mm以内の隙間が形成されるように近接させるようにしてもよい。
【0038】
また、マスク材1は、その下面が板状建材20の表面の高さを超えないように、辺縁部1aの側端が板状建材20の端面22の上端部(表面角部23cまたはその近傍)に沿って突き当たるよう配置することが望ましい。
【0039】
図2(a)、(b)はマスク材1による遮蔽態様の他例を示す概略縦断面図である。図2(a)は、板状建材20の塗装対象である表面辺縁部23b側の表面角部23cと、マスク材1の辺縁部1aの下端角部を当接または近接させてマスクする例を示している。また図2(b)では、表面角部23cが傾斜面状に面取り形成され、マスク材1は、その面取りされた面をマスクできるように辺縁部1aが傾斜面状に形成されている。
【0040】
図2(a)、(b)いずれの態様も、マスク材1でもって板状建材20の端面22を隠して表面塗装できる構成としているため、表面塗装時の端面22へのインク回り込みを好適に防止できる。
【0041】
なお、マスク材1による端面22の遮蔽の形態は、以上のものに限定されず種々の形態が想定できる。たとえば、板状建材20に対しマスク材1を傾斜させるようにして、板状建材20とマスク材1の上端角部同士を当接または近接させて、板状建材20の端面22を隠すようにしてもよい。また、表面角部23cをアール状に形成したものにも対応できる。
【0042】
このように、板状建材20の端面22をマスク材1で隠した状態で表面塗装する構成としているため、インクの端面22への回り込みが防止でき、その結果、端面22のインク付着による汚れの発生を阻止でき、また、端面22に塗装を行うものでは、回り込んだインクと本来の端面の塗装と合わせて二重塗装がされて、端面22が表面に比べて濃色化された塗装となることを防止できる。
【0043】
特に、図2(b)で示したような面取り面は、上方からも側方からもインクを受けやすい状態にあるため、マスクせずに表面塗装と端面塗装とを行えば二重塗装される可能性は高いが、マスク材1で面取り面を隠して表面塗装を行えば、面取り面にはインクが付着しないため、その後に端面22をインクジェット塗装しても、面取り面が濃色化することはない。
【0044】
図3は、図1に示した板状建材20の表面中央部23aの塗装方法を説明するための図であり、(a)は概略平面図、(b)は概略縦断面図である。
【0045】
板状建材20は、ローラコンベアなどの搬送手段(不図示)によって、前工程(たとえばインク受理層形成工程)設備より塗装台55に搬送され、インクジェット噴射方式による塗装装置50を駆動させて、塗装走査方向に沿って表面塗装される。なお、この表面中央部23aの塗装工程についても、板状建材20を搬送させながら塗装を行う態様でもよい。
【0046】
塗装装置50は、制御ユニット51に接続され、塗装台55に隣接して配設された装置本体52と、装置本体52に連結され、下方に向けたインクジェットノズル54を接続したノズル支持アーム53と、塗装台55を挟んで装置本体52の対向位置に配置されたアーム保持部56とを有し、ノズル支持アーム53が板状建材20に対して、矢印Y方向に移動可能な構成とされる。
【0047】
図示するように、この塗装工程では、表面のうち表面辺縁部23bを除く表面中央部23aが、ライン状のインクジェットノズル54によってラインごとに塗装される。こうして表面中央部23aが塗装された板状建材20は、表面辺縁部23bの塗装設備へと搬送される。
【0048】
また、以上の表面中央部23a、4辺の表面辺縁部23b、およびそれら4辺に対応した端面22を含む表面塗装工程が完了した板状建材20は、その後、塗装検査、塗装補修などの各工程を経て、表面保護層の形成工程設備へと移送される。
【0049】
図4は、本発明の板状建材の塗装方法、装置の第2の実施形態を説明するための図であり、(a)は概略平面図、(b)は概略縦断面図である。
【0050】
同塗装方法では、マスク材1Aとして、ノズル14と同期して移動するものを使用する。すなわち、マスク材1Aは、板状建材20の辺縁部21よりも小さい寸法としており、ノズル14ととともに、同一速度で、ノズル14の板状建材20の塗装走査方向に沿って相対移動する。マスク材1Aに対する移動制御は、ノズル14とは個別に行ってもよいが、ノズル14やノズル支持アーム13、装置本体12をマスク材1Aに固定させて一体化させ、それらを一体として移動させるようにしてもよい
【0051】
このような構成によれば、マスク材1Aは、ノズル14からの噴射インクの飛散を受ける箇所が変化することなく、塗装すべき板状建材20の1辺縁部21に対して相対移動する。そのためマスク材1Aは、図示するように、板状建材20の辺縁部21に対して寸法の小さいもので対応でき、すくなくともノズル14からの飛散による端面22へのインク回り込みが防止できる。
【0052】
塗装装置10Aは、制御ユニット11が、装置本体12とマスク材1A(の搬送装置)とを同時に移動制御する構成となっている。なお、塗装装置10Aのノズル14などの他の構成部分については、図1のものと同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
また、マスク材1Aによる板状建材20の端面22のマスクの態様は、図1、2に示した実施形態と同様のものが適用できる。
【0054】
このように、同塗装方法、装置によれば、板状建材20の辺縁部21の寸法に比べマスク材1Aの辺縁部の寸法を小さくすることができ、またマスク材1Aとノズル14とを一体として制御できるため、マスク材1Aの移動、搬送設備をおおがかりにすることなく、簡易かつコンパクトな構成で、好適に板状建材20の塗装マスクを実現できる。
【0055】
ついで、本発明の板状建材の塗装方法の第3の実施形態について説明する。同実施形態は、マスク材が複数のマスク分割材からなるものを示している。
【0056】
図5は、第3の実施形態の塗装方法、装置の一例を説明するための説明図である。
【0057】
マスク材41Aは、複数の矩形状のマスク分割材41aをベルトコンベアやローラコンベアなどの移動手段32の上に固定載置して、連設して形成され、塗装台15に載せられた板状建材20の辺縁部21に沿って、塗装走査方向を往復移動可能となるように配設されている。マスク分割材41aは、隣接するもの同士が連結具(不図示)で連結され、あるいは連結具を使用せず一定間隔でコンベア32上に固着され、塗装走査方向に配列されている。
【0058】
同塗装装置10は、このようなマスク材41Aの一部を選択的に板状建材20に割り当てて板状建材20の端面を遮蔽するために、マスク材41Aを塗装走査方向に沿って移動させるようにした塗装マスク装置30Aを備えている。
【0059】
同塗装マスク装置30Aは、マスク材41A、移動手段32を備えるほか、マスクを担っていない(板状建材20に割り当てられていない)マスク分割材41aの表面に付着したインクを拭い取り除去するワイパー33b(インク除去手段33)、および移動手段32やインク除去手段33を制御する制御手段31を備えている。
【0060】
塗装装置10は、塗装すべき板状建材20に対し、ノズル14を動作させて、塗装走査方向に沿って、板状建材20の表面辺縁部23bの上方をノズル14が移動しながら垂直下方に向けてインクを噴射させるとともに、塗装マスク装置30Aも駆動させて、板状建材20の端面22を隠しながらマスク材41Aを移動させる。
【0061】
マスク材41Aは、ノズル14の塗装走査方向への相対移動に対して、同期して移動してもよいし、非同期に移動してもよい。
【0062】
ノズル14の塗装走査方向への相対移動に対して同期して同一速度で移動する場合として、たとえば、1枚の板状建材20の塗装中では、1〜複数枚のマスク分割材41aでノズル14からの噴射インクを受けるようさせ、塗装すべき板状建材20ごとにマスク分割材41aをずらすように移動すれば、マスク材41へのインク付着による汚れを、マスク分割材41aごとに均一に分散させることができる。
【0063】
また、1枚のマスク分割材41aの辺縁部の寸法を、ノズル14からの噴射インクの飛散を十分に受ける程度の長さに形成すれば、1枚のマスク分割材41aだけでインクの飛散によるマスクに対応させることができ、マスク分割材41a同士を連結した隙間からインクが飛散して回り込むことを防止できる。
【0064】
また、マスク材41Aを、ノズル14の塗装走査方向への相対移動に対して非同期に、たとえば塗装すべき板状建材20に対して往復移動させて、板状建材20に対するマスクを交互に繰り返すような動作にすれば、いったんインクが付着したマスク分割材41aでも、移動によって板状建材20より離れてマスクを担わないようになるため、その間にマスク分割材41aに付着したインクを乾燥、硬化させたり、インクを除去したりでき、そのため再度のマスクによってマスク材41Aから板状建材20へインクが転着することを防止できる。
【0065】
また、マスク材41Aの移動の形態にかかわらず、マスク材41Aへのインクの付着汚れが複数のマスク分割材41aへ分散され、そのためマスク材41Aを長期にわたって利用でき、メンテナンスも容易に行える。また、汚れの分散の程度によって、マスク分割材41aごとの交換、マスク分割材41a間の位置変更、幅方向の位置変更なども可能である。
【0066】
また図例のように、連設されたマスク材41Aの全体を、板状建材20の塗装走査方向の寸法よりも十分に長く形成しておけば、塗装すべき板状建材20の1辺縁部21の端面全体を同時にマスクでき、そのため、ノズル14からの噴射インクを直接受けない箇所においても、板状建材20の表面に塗装されたインクの垂れ落ちによる端面22への回り込みを防止できる。
【0067】
インク除去手段33であるワイパー33bは、ゴム、布あるいはスポンジ材料などの吸水性材料よりなり、マスク材41Aのうちのマスクを担わない部分の板面に対して摺動させることで、付着した液状のインクを除去する。またワイパー33bは、図示するように、摺動によって板状建材20の辺縁部21にインクが流れ落ちないように、マスク分割材41aに対し平行にせず、少しの角度をもうけることが望ましい。
【0068】
このように、インク除去手段33を備えているため、マスク材41Aのマスクを担わない部分に付着したインクを除去することができ、マスク材41Aを常にインク付着の少ない状態に保持することができる。その結果、マスク材41Aから板状建材20へのインク転着を防止できる。
【0069】
図6は、同実施形態の塗装方法、装置の他例を説明するための説明図である。
【0070】
本図例では、マスク材41Bは、複数の矩形状のマスク分割材41aを連設して形成され、さらにそれらがエンドレス回転ベルト状に連結されている。
【0071】
同塗装装置10は、このようなマスク材41Bの一部を選択的に板状建材20に割り当てて板状建材20の端面を遮蔽するために、マスク材41Bを塗装走査方向に沿って相対移動させるようにした塗装マスク装置30Bを備えている。
【0072】
同塗装マスク装置30Bは、マスク材41B、ローラによる移動手段32を備えるほか、マスクを担っていないマスク分割材41aの表面に付着したインクを除去する洗浄手段33a、スクレーパ33cからなるインク除去手段33、および移動手段32やインク除去手段33を制御する制御手段31を備えている。
【0073】
マスク材41Bの移動手段32による回転機構は、正回転のみならず逆回転も可能とし、周期的に正、逆を繰り返す構成としてもよい。
【0074】
このような構成によれば、図5のものと同様の効果が得られるほか、マスク材41Bを立体的に配置できるため、省スペースに塗装マスク装置30Bを設置でき、取り扱いも容易であり、塗装設備にも組み込みやすく、インク除去手段33も組み入れやすい。
【0075】
また本例では、インク除去手段33として、インク掻き落としや洗浄などの複数の手段を組み合わせているため、マスク材41Bへの付着インクを好適に除去できる。インク除去手段33は種々の組み合わせが想定でき、インクの乾性、硬化性などを考慮して、適宜選択すればよい。たとえば、硬化していない箇所ではワイパー33b(図5参照)を使用してインクを拭い取り、硬化し始めた箇所ではスクレーパ33cを使用してインクを掻き落とし、最後に洗浄水で洗い落とすようにして、段階的にインクを除去するようにしてもよい。なお、インク除去手段として、インクの転着を可能としたローラも使用できる。
【0076】
分割マスク材41aを連設したマスク材としては、上記の例に限られず、たとえば、回転寿司の搬送コンベアのごとく、平面的にマスク分割材を循環連設させたものも使用できる。
【0077】
図7は、本発明の板状建材の塗装方法の第4の実施形態を説明するための図である。
【0078】
本実施形態では、マスク材45は、シート材をエンドレス回転ベルト状に連結して構成され、シート材45の一部を選択的に塗装すべき板状建材20に割り当てて使用する。
【0079】
シート材45は、柔軟樹脂材などで製することが望ましく、表面には、水性インクを使用する場合には撥水処理を施してもよい。各種の汚れに対して、フッ素コートなどの表面処理を施してもよい。その他の条件、たとえばインクの種類、シート材の材料などに応じて、親水、親油、撥油などの表面処理を適宜行ってもよい。
【0080】
同塗装装置は、塗装中に、このようなマスク材45の一部を選択的に板状建材20に割り当てて板状建材20の端面を遮蔽するために、マスク材45を塗装走査方向に沿って移動させるようにした塗装マスク装置30Cを備えている。
【0081】
同塗装マスク装置30Cは、マスク材45、ローラによる移動手段32を備えるほか、マスク材45のマスクを担っていない部分の表面に付着したインクを除去する洗浄手段33a、回転ブラシ33dよりなるインク除去手段33、および、移動手段32やインク除去手段33を制御する制御手段31を備えている。
【0082】
このような構成によれば、図6のものと同様の効果が得られるほか、マスク材45が連続したシート材であるため隙間は形成されず、そのため端面を隙間なくマスクすることができる。
【0083】
以上に示した第1〜4の実施形態では、1つのマスク材1、41A、41Bで、板状建材20の1辺縁部21のみに割り当てて端面をマスクするようにしているが、対向する2辺縁部21のそれぞれの端面を、対応する2つのマスク材1、41A、41Bでマスクしながら、つまり板状建材20を2つのマスク材で挟むようにしながら、2辺縁部21に対応した2表面辺縁部23bを同時に並行して塗装するようにしてもよい。
【0084】
図8は、本発明の板状建材の塗装方法の第5の実施形態を説明するための図であり、(a)、(b)は板状建材に対するマスク材のマスク動作を示した概略平面図である。
【0085】
同実施形態は、板状建材20の上面23を、表面中央部と表面辺縁部とに分けることなく、同一塗装設備で同時にインクジェット塗装するものに適用される。
【0086】
板状建材20は、所定の塗装位置に搬送されると、図8(a)のように、4つのマスク材1が外方より4辺に対してあてがわれるように移動し、図8(b)のようにマスク材1で囲まれ、4辺縁部21の各端面が遮蔽された状態で、塗装装置が駆動して、ライン状にノズルを配設したインクジェットノズル54Aを塗装走査方向に移動させながら、板状建材20の表面全体が塗装される。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の板状建材の塗装方法の第1の実施形態を説明するための図で、(a)は概略平面図、(b)は概略縦断面図である。
【図2】(a)、(b)はマスク材による遮蔽態様の他例を示す概略縦断面図である。
【図3】板状建材の表面中央部の塗装方法を説明するための図であり、(a)は概略平面図、(b)は概略縦断面図である。
【図4】本発明の板状建材の塗装方法の第2の実施形態を説明するための概略縦断面図である。
【図5】本発明の板状建材の塗装方法の第3の実施形態の一例を説明するための説明図である。
【図6】第3の実施形態の他例を説明するための説明図である。
【図7】本発明の板状建材の塗装方法の第4の実施形態を説明するための説明図である。
【図8】本発明の板状建材の塗装方法の第5の実施形態を説明するための説明図で、(a)、(b)は板状建材に対するマスク材のマスク動作を示した概略平面図である。
【符号の説明】
【0088】
10、10A 板状建材の塗装装置
11 制御ユニット
12 辺縁部塗装装置本体
13 ノズルアーム支持部
14 ノズル
15 塗装台
20 板状建材
21 辺縁部
22 端面
23 上面(表面)
23a 表面中央部
23b 表面辺縁部
23c 表面角部
1、1A マスク材
1a 辺縁部
30A、30B、30C 塗装マスク装置
31 制御手段
32 移動手段
33 インク除去手段
33a 洗浄手段
33b ワイパー
33c スクレーパ
41A、41B マスク材
41a マスク分割材
45 マスク材(シート材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を上方に向けて配置した板状建材の表面辺縁部に対して、上方に配置したノズルからインク滴を噴射してインクジェット塗装を行い板状建材を塗装する方法であって、
上面に平面を有するマスク材を、上記ノズルにて塗装する上記板状建材の表面辺縁部の外側に隣設し、上記マスク材の下面が上記板状建材の表面の高さを超えない状態で、上記マスク材の一側端が上記板状建材の端面の上端部に沿って突き当たるよう配置し、板状建材の端面が上方から隠蔽された状態で板状建材の表面辺縁部を塗装するようにしたことを特徴とする板状建材の塗装方法。
【請求項2】
請求項1において、
上記ノズルと上記マスク材とは、塗装すべき板状建材の辺縁部方向に沿って、該板状建材に対して同一速度で相対移動する、板状建材の塗装方法。
【請求項3】
請求項1において、
上記マスク材は、複数の矩形状のマスク分割材を連設して形成され、該複数のマスク分割材のうちの一部を選択的に塗装すべき板状建材に割り当てて使用する、板状建材の塗装方法。
【請求項4】
請求項3において、
上記複数のマスク分割材は、エンドレス回転ベルト状に連結されている、板状建材の塗装方法。
【請求項5】
請求項1において、
上記マスク材は、シート材をエンドレス回転ベルト状に連結してなり、該シート材の一部を選択的に塗装すべき板状建材に割り当てて使用する、板状建材の塗装方法。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか1項において、
インク除去手段を設けて、上記マスク材の表面に付着したインクを除去させるようにている、板状建材の塗装方法。
【請求項7】
請求項6において、
上記インク除去手段は、インク拭い取り、インク掻き落とし、洗浄のすくなくともいずれかによってインクを除去する構成とされる、板状建材の塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−56412(P2009−56412A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−226986(P2007−226986)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】