説明

板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物及びその製造方法

【課題】
特に炭化水素系発泡剤を使用した板状押出発泡体の製造において、押出発泡性に優れ、機械的強度に優れた板状押出発泡体を製造することに適したスチレン系樹脂組成物及びその製造方法を提供すること
【解決手段】
特定範囲の流動性(メルトマスフローレイト)及び溶融張力値を有し、かつ特定範囲の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn、Mz/Mw)を有したスチレン系樹脂組成物を用いることにより、機械的強度に優れた板状押出発泡体を製造することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的強度に優れたスチレン系板状押出発泡体の製造が可能で、押出発泡性にも優れた板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物及びその製造方法に関わる。
【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂組成物からなる板状押出発泡体は、優れた断熱性及び機械的強度を有することから、一般建築物等の床材や壁材、天井材、畳の心材など様々な分野で使用されている。
【0003】
スチレン系樹脂組成物の押出発泡体の製造方法としては、従来より様々な方法が用いられているが、一般にはスチレン系樹脂組成物を押出機で加熱溶融混練した後、発泡剤を添加し、冷却させ、これを低圧雰囲気下に押出発泡させて製造する方法が採用されている。また発泡剤としては、従来よりフロン系発泡剤が用いられてきたが(特許文献1)、近年の環境問題から炭化水素系発泡剤を使用する割合が増えており、炭化水素系発泡剤に適したスチレン系樹脂組成物が求められている。
【特許文献1】特開平10−182870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、特に炭化水素系発泡剤を使用した板状押出発泡体の製造において、押出発泡性に優れ、機械的強度に優れた板状押出発泡体を製造することに適したスチレン系樹脂組成物及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するため、鋭意研究を進めたところ、
1.200℃、49N荷重の条件にて測定したメルトマスフローレイト(MFR)が1.0〜6.0g/10分で、200℃で測定した溶融張力値が11〜19gfで、重量平均分子量(Mw)が25万〜40万で、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.5〜8.0、Z平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)の比(Mz/Mw)が2.2〜3.0であることを特徴とする板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物。
2.スチレン系樹脂組成物中の残存スチレンモノマー及び重合溶媒の総量が250μg/g以下であることを特徴とする1項に記載の板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物。
3.重合溶媒としてエチルベンゼンを2〜10質量%使用し、スチレンモノマーの連続ラジカル重合を行うに当たり、重合開始剤として2,2−ビス(4,4−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンをスチレンモノマーに対して質量基準で100〜500ppm添加し、ポリマー濃度が35〜50質量%に達するまでは1〜2基からなる完全混合槽型反応器を直列に接続した工程にて100〜120℃の温度で生成するポリマーの重量平均分子量(Mw)が45万〜65万となるよう重合を行い、次いでポリマー濃度が70〜90%に達するまでは150℃〜210℃の温度でZ平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)の比(Mz/Mw)が2.2〜3.0となるよう重合を行うことを特徴とする1〜2項のいずれか1項に記載の板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物の製造方法。
4.連続ラジカル重合で得られたスチレン系樹脂と未反応スチレンモノマー及び重合溶媒を除去する脱揮工程において、加熱器付きの真空脱揮槽を直列に2段接続したものを用い、1段目の真空脱揮槽での樹脂温度は220〜260℃に調整し出口の未反応スチレンモノマーと重合溶媒の合計量が0.2質量%以下となるよう真空度を6.0kPa以下に調整し、1段目の真空脱揮槽を出たポリマー溶液に対して0.2〜2.0質量%の水を添加し、動的又は静的混合機にて水を分散し、真空度を0.5〜3.0kPaの範囲に調整した2段目の真空脱揮槽に導入し脱揮処理することを特徴とする1〜3項のいずれか1項に記載の板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物の製造方法。
5.1〜2項のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物を発泡押出し、密度が10〜50kg/mであることを特徴とする板状押出発泡体の製造方法。
6.5項に記載の製造方法によって得られる板状押出発泡体。
【発明の効果】
【0006】
本発明のスチレン系樹脂組成物を用いることで、機械的強度に優れた板状押出発泡体を製造することが可能となり、押出発泡性にも優れる。
【0007】
本発明が対象とするスチレン系樹脂組成物の200℃、49N荷重の条件にて測定したメルトマスフローレイト(MFR)は、1.0〜6.0g/10分であり、好ましくは2.0〜4.0g/10分である。6.0g/10分を超えると樹脂粘度の不足により、発泡性が悪くなり、圧縮強度等の機械的強度も低下する。逆に、1.0g/10分未満となるとスチレン系樹脂組成物の樹脂粘度が上がりすぎ、板状押出発泡体の押出し生産性が低下するため好ましくない。スチレン系樹脂組成物の200℃、49N荷重の条件によるメルトマスフローレイトは、JIS K−7210に基づき測定した。スチレン系樹脂組成物のメルトマスフローレイトは溶融時の流動性を表すパラメータであるが、分子量や分子量分布の制御によって調整することができる。また、重合過程や脱揮工程で副生成するスチレンオリゴマー(スチレンダイマー、スチレントリマー)やホワイトオイル等の各種添加剤成分、残存スチレンモノマー及び重合溶媒等の低分子量成分は、可塑剤的な効果があることから、メルトマスフローレイトを高める影響がある。
【0008】
本発明が対象とするスチレン系樹脂組成物の200℃で測定した溶融張力値は11〜19gfで、好ましくは13〜19gfである。溶融張力値が11gf未満であると、板状押出発泡体を製造する際の発泡性が悪化し、連続気泡が増えるなどの悪影響がある。また、板状押出発泡体の圧縮強度が低下する。溶融張力値が19gfを超えるとスチレン系樹脂組成物の生産性が著しく低下する。溶融張力値は、東洋精機製「キャピログラフ1B型」を使用し、バレル温度200℃、バレル径9.55mm、キャピラリー長さ:L=10mm、キャピラリー径:D=1mm(L/D=10)、バレル内の押出し速度10mm/分にて樹脂を押出し、荷重測定部をダイから60cm下方にセットし、キャピラリーより流出してきたストランド状の樹脂を巻き取り器にセットし、巻き取り線速度を4m/分から200m/分まで、1分間に20m/分の割合で巻き取り線速度を上昇していき、ストランドが破断するまでの荷重を測定する。巻き取り線速度を上げていくと荷重は上昇し、一定の変動幅に安定するが、荷重に変動幅があるため、荷重が安定してから破断するまでの範囲を平均化し、溶融張力値とした。また、ストランドが破断したときの巻き取り線速度を糸切れ速度(m/分)とした。溶融張力値は、スチレン系樹脂組成物の溶融時の弾性的な性質を表すパラメータでであるが、分子量や分子量分布の制御によって調整することができ、分子量を高くするほど溶融張力値を高めることができる。しかしながら、単に分子量を上げるだけでは同時にメルトマスフローレイトが下がりすぎてしまい、板状押出発泡体の生産性が低下してしまう。メルトマスフローレイトを維持したまま溶融張力値を高めるには分子量分布を広くする方法があり、具体的には、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.5〜8.0、Z平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)の比(Mz/Mw)が2.2〜3.0の範囲とすることで本発明のメルトマスフローレイトと溶融張力値のバランスを達成することが可能となる。また、重合過程や脱揮工程で副生成するスチレンオリゴマー(スチレンダイマー、スチレントリマー)やホワイトオイル等の各種添加剤成分、残存スチレンモノマー及び重合溶媒等の低分子量成分は、可塑剤的な効果があることから、溶融張力値を下げる効果がある。
【0009】
本発明が対象とするスチレン系樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)は、25万〜40万であり、好ましくは27万〜37万であり、更に好ましくは30万〜35万である。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は3.5〜8.0、好ましくは4.0〜6.0である。また、Z平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)の比(Mz/Mw)は2.2〜3.0で、好ましくは2.3〜2.8ある。重量平均分子量(Mw)及びMw/Mn、Mz/Mwが上記範囲外であると、本発明のメルトマスフローレイトと溶融張力値のバランスを達成することができない。
本発明における重量平均分子量(Mw)及びZ平均分子量(Mz)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、次の条件で測定した。
GPC機種:昭和電工株式会社製Shodex GPC−101
カラム:ポリマーラボラトリーズ社製 PLgel 10μm MIXED−B
移動相:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2質量%
温度:オーブン40℃、注入口35℃、検出器35℃
検出器:示差屈折計
本発明の分子量は、単分散ポリスチレンの溶出曲線より各溶出時間における分子量を算出し、ポリスチレン換算の分子量として算出したものである。
【0010】
本発明が対象とするスチレン系樹脂組成物の分子量は、スチレンをラジカル重合する際の反応温度、滞留時間、重合開始剤の種類及び添加量、重合時に使用する溶媒の種類及び量等によって制御することができる。分子量については、低温度で重合を行うなど、重合速度を抑えることで高分子量化することができるが、それだけでは効率が悪く、重合開始剤として、多官能の有機過酸化物を使用することが好ましく、2,2−ビス(4,4−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンが好適に使用することができる。また、逆に高温度で重合を行うなど重合速度を高めることで低分子量化することができるが、重合速度をより高めるために単官能の有機過酸化物を使用してもよい。また、連鎖移動剤を添加することにより低分子量化することもできる。重合方法については商業的に連続重合であることが好ましく、スチレンモノマーの濃度が高い重合前半は、分子量を高めるという点で完全混合槽型の反応器を使用したほうが有利である。分子量分布を表す、Mw/Mn及びMz/Mwの制御については、重合前半部分で高分子量成分を生成し、重合後半部分で低分子量成分を生成することによって分子量分布を広めることができる。
【0011】
本発明のスチレン系樹脂組成物の製造方法については、スチレンモノマーの連続ラジカル重合であることが好ましく、重合溶媒としてエチルベンゼンを2〜10質量%使用することが好ましい。また、エチルベンゼンの代わりにトルエンを使用してもよい。また、重合開始剤として4官能タイプの有機過酸化物である2,2−ビス(4,4−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンをスチレンモノマーに対して質量基準で、100〜500ppm添加し、ポリマー濃度が35〜50質量%に達するまでは1〜2基からなる完全混合槽型反応器を直列に接続した工程にて100〜120℃の温度で、生成するポリマーの重量平均分子量(Mw)が45〜60万となるよう重合を行うことが好ましい。次に、ポリマー濃度が70〜90%に達するまでは150℃〜210℃の温度でZ平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)の比(Mz/Mw)が2.2〜3.0となるよう重合を行うことが好ましい。この際、反応器の型式について特に制限はないが、プラグフロー型反応器または完全混合槽型反応器とプラグフロー型反応器の組み合わせなどを使用することができる。また、プラグフロー型反応器の場合、流れ方向に温度勾配がつくので、反応器の中間部分以降で150℃〜210℃となるよう制御すればよく、入口付近は150℃未満でもかまわない。
【0012】
本発明のスチレン系樹脂組成物の残存スチレンモノマー及び重合溶媒の総量は、250μg/g以下であることが好ましく、更に好ましくは150μg/g以下である。スチレン系樹脂組成物中の残存スチレンモノマー及び重合溶媒の総量が多いと、得られる板状押出発泡体に臭気等の問題が生じる場合があり、極力低減することが好ましい。
本発明における残存スチレンモノマー及び重合溶媒の量は、樹脂組成物500mgを、内部標準物質としてシクロペンタノールを含むDMF10mlに溶解し、ガスクロマトグラフィーを用いて以下の条件で測定した。
ガスクロマトグラフ:HP−5890(ヒューレットパッカード社製)
カラム:HP−WAX、0.25mm×30m、膜厚0.5μm
インジェクション温度:220℃
カラム温度:60℃〜150℃、10℃/min
ディテクター温度:220℃
スプリット比:30/1
残存スチレンモノマー及び重合溶媒は、脱揮工程の構成及び脱揮工程の運転条件により、低減することができる。
【0013】
連続ラジカル重合でスチレン系樹脂の製造を行った場合、得られたスチレン系樹脂と未反応スチレンモノマー及び重合溶媒を除去する脱揮工程が必要であるが、加熱器付きの真空脱揮槽を直列に2段接続したものを用いることが好ましい。また、1段目の真空脱揮槽での樹脂温度は220〜260℃に調整し出口の未反応スチレンモノマーと重合溶媒の合計量が0.2質量%以下となるよう真空度を6.0kPa以下に調整し、1段目の真空脱揮槽を出たポリマー溶液に対して0.2〜2.0質量%の水を添加し、動的又は静的混合機にて水を分散し、真空度0.5〜3.0kPaの範囲に調整した2段目の真空脱揮槽に導入し、脱揮処理することが好ましい。なお、1段目の真空脱揮槽出口で添加する水は2段目の真空脱揮槽に入ったところでガス化するが、この際、発泡により脱揮界面が増え、脱揮効率が上がると考えられる。1段目の真空脱揮槽出口の未反応スチレンモノマーと重合溶媒の合計量(A)と1段目出口で添加する水の濃度(B)について、BとAの比、B/Aは1〜30であることが好ましく、4〜20であることがより好ましい。
【0014】
脱揮工程を経た溶融樹脂は、ギヤーポンプ等で造流工程へ移送される。造粒工程では、多孔ダイよりストランド状に溶融樹脂を押出し、コールドカット方式や空中ホットカット方式、水中ホットカット方式にてペレット形状に加工される。
【0015】
本発明の重合方法では、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン以外に、必要に応じて重合開始剤、連鎖移動剤を使用することができる。重合開始剤として、有機化酸化物、例えば過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシベンゾネート、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ポリエーテルテトラキス(t−ブチルパーオキシカーボネート)、エチル−3,3−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブチレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等が挙げられる。連鎖移動剤としては、例えば、脂肪族メルカプタン、芳香族メルカプタン、ペンタフェニルエタン、α−メチルスチレンダイマー及びテルピノーレン等を使用できる。
【0016】
本発明が対象とするスチレン系樹脂組成物には、必要に応じて、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸類、ステアリン酸、エチレンビスステアリルアミド等を内部潤滑剤或いは外部潤滑剤として使用してもよい。また、ホワイトオイル等の可塑剤成分を添加することもできるが、耐熱性が低下する。また、押出機内での熱劣化抑制のため、酸化防止剤を添加することもできる。
【0017】
本発明のスチレン系樹脂組成物は、特に押出成形にて板状押出発泡体を製造することに適している。板状押出発泡体は、スチレン系樹脂組成物を加熱溶融した後、発泡剤を注入して混錬した後、発泡最適温度に調整して低圧雰囲気下(通常大気圧)に押出発泡させることにより製造することができる。発泡剤を注入する際の圧力は特に制限するものではなく、押出機などの内圧より高い圧力でガス化しなければよい。また、本発明が対象とする板状押出発泡体は、建築用断熱材や保冷庫用または保冷車用断熱材としての断熱性、曲げ強度及び圧縮強度の観点から、密度は10〜50kg/mの範囲であり、厚みは10〜150mmであることが好ましい。
【0018】
また、板状押出発泡体を製造する際には、難燃剤を使用することができ、発泡核剤としてシリカ、タルクや炭酸カルシウム等の無機充填剤を必要に応じて用いることができる。発泡体の密度、発泡倍率や平均気泡径は発泡剤量や発泡核剤量を調整することで変化させることができる。さらに、本発明の効果を阻害しない範囲で、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、染顔料、帯電防止剤などを添加することもできる。発泡剤としては公知のもの、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の低級炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどのエーテル類、ジメチルケトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、プロピルアルコールなどのアルコール類、トリクロロモノフルオルメタンや塩化メチル等のハロゲン化炭化水素、炭酸ガス、水等の無機ガスなど任意の発泡剤を単独または混合して用いることができるが、低級炭化水素を主成分とすることが好ましい。難燃剤としては公知のものが使用でき、ヘキサブロモシクロドデカン、ジブロモネオペンチルグリコール、デカブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモフタル酸ジオール、テトラブロモフェノール、ポリペンタブロモベンジルアクリレート等の臭素系難燃剤、リン酸グアニール尿素、ポリフォスファゼン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、赤リン等のリン系難燃剤が挙げられる。
【0019】
本発明のスチレン系樹脂組成物は発泡押出性に優れ、得られる板状押出発泡体用の機械的強度も優れるため、特に押出成形による板状押出発泡体の製造に好適である。
【実施例】
【0020】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0021】
(スチレン系樹脂組成物PS−1〜PS−8の製造方法)
完全混合型撹拌槽である第1反応器と第2反応器及び静的混合器付プラグフロー型反応器である第3反応器を直列に接続して重合工程を構成した。各反応器の容量は、第1反応器を39リットル、第2反応器を39リットル、第3反応器を16リットルとした。表1に記載の原料組成にて、原料溶液を作成し、第1反応器に原料溶液を表1に記載の流量にて連続的に供給した。重合開始剤は、第1反応器の入口で表1に記載の添加濃度(原料スチレンに対する質量基準の濃度)となるように原料溶液に添加混合した。表1に記載の重合開始剤はそれぞれ次の通りである。
重合開始剤−1 :2,2−ビス(4,4−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン(日本油脂株式会社製パーテトラAを使用した。)
なお、第3反応器では、流れの方向に沿って温度勾配をつけ、中間部分、出口部分で表1の温度となるよう調整した。
続いて、第3反応器より連続的に取り出した重合体を含む溶液を直列に2段より構成される予熱器付き真空脱揮槽に導入し、表1に記載の樹脂温度となるよう予熱器の温度を調整し、表1に記載の圧力に調整することで、未反応スチレン及びエチルベンゼンを分離した後、多孔ダイよりストランド状に押し出しして、コールドカット方式にて、ストランドを冷却および切断しペレット化した。なお、PS−1〜4は実施例に使用し、PS−5〜8は比較例に使用した。
【0022】
【表1】

【0023】
得られたスチレン系樹脂組成物の特性を表2に示す。また、実施例における測定方法を以下に示す。
【0024】
メタノール可溶分は質量Pの樹脂組成物をメチルエチルケトンに溶解し、該溶液をメチルエチルケトンに対し30倍量のメタノール中に投入してメタノール不溶分を沈殿させ、ろ過してメタノール不溶分を取り出した後、70℃で15時間乾燥し、20分間デシケータ中で冷却した後、乾燥した沈殿物の質量Nを測定し、次式によって求めることができる。
メタノール可溶分(質量%)=(P−N)/P×100
【0025】
発泡体密度(kg/m)は、発泡体の重量(kg)と発泡体の体積(m)より算出した(発泡体密度=発泡体重量/発泡体体積)。
【0026】
発泡体の気泡径は、板状押出発泡体の断面を顕微鏡により観察し、気泡径の測定を行った。また、同時に次の基準に従い発泡性の判定を行った。
○:気泡のサイズが均一で独立している。
△:気泡のサイズがやや不均一で、一部連続した気泡が存在する。
×:気泡のサイズが不均一で、一部連続した気泡がやや多く存在する。
【0027】
発泡体の圧縮強度は、製造後2週間経過した発泡体より、JIS K 7220に準じた方法で測定した。
【0028】
(実施例1〜4、比較例1〜4)
表2に記載されたスチレン系樹脂組成物100質量部に対して、ヘキサブロモシクロヘキサンを4質量部、気泡調整剤としてタルクを0.5質量部添加した後ブレンドし、得られた混合物を40mm径の単軸押出機(シリンダー温度200℃)に供給し、溶融混合した後、発泡剤としてブタンガス5質量部を圧入した。その後、65mm径の単軸押出機に移送し、出口の樹脂温度が130℃となるよう冷却し、押出機の先端に厚さ2mm、幅方向40mmの長方形断面のスリットを有するダイより押出して、厚さ約40mmの板状の発泡体を製造した。それぞれの組成物について、表2の発泡体密度及び気泡径となるよう、発泡剤量や気泡調整剤の量を調整した。得られた発泡体の発泡性、圧縮強度を表2に示す。
【0029】
【表2】

【0030】
実施例のスチレン系樹脂組成物を用いることで、圧縮強度に優れた板状押出発泡体を得ることができる。また、押出時の発泡性にも優れることから、安定した板状押出発泡体の製造が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のスチレン系樹脂組成物を用いることで、圧縮強度に優れた板状押出発泡体を得ることでき、発泡性にも優れることから、板状押出発泡体の用途に適している。また、本発明のスチレン系樹脂組成物の製造方法により、低コストで板状押出発泡体用途に適したスチレン系樹脂組成物を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例で用いたスチレン系樹脂組成物PS−1及びPS−3、比較例で用いたスチレン系樹脂組成物PS−6及びPS−8のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって得られた分子量分布を比較する図である。
【0033】
【図2】重合工程の1構成例を説明する図である。
【0034】
【図3】重合工程の1構成例を説明する図である。
【0035】
【図4】重合工程の1構成例を説明する図である。
【0036】
【図5】脱揮工程の1構成例を説明する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
200℃、49N荷重の条件にて測定したメルトマスフローレイト(MFR)が1.0〜6.0g/10分で、200℃で測定した溶融張力値が11〜19gfで、重量平均分子量(Mw)が25万〜40万で、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.5〜8.0、Z平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)の比(Mz/Mw)が2.2〜3.0であることを特徴とする板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
スチレン系樹脂組成物中の残存スチレンモノマー及び重合溶媒の総量が250μg/g以下であることを特徴とする請求項1に記載の板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物。
【請求項3】
重合溶媒としてエチルベンゼンを2〜10質量%使用し、スチレンモノマーの連続ラジカル重合を行うに当たり、重合開始剤として2,2−ビス(4,4−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンをスチレンモノマーに対して質量基準で100〜500ppm添加し、ポリマー濃度が35〜50質量%に達するまでは1〜2基からなる完全混合槽型反応器を直列に接続した工程にて100〜120℃の温度で生成するポリマーの重量平均分子量(Mw)が45万〜65万となるよう重合を行い、次いでポリマー濃度が70〜90%に達するまでは150℃〜210℃の温度でZ平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)の比(Mz/Mw)が2.2〜3.0となるよう重合を行うことを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
連続ラジカル重合で得られたスチレン系樹脂と未反応スチレンモノマー及び重合溶媒を除去する脱揮工程において、加熱器付きの真空脱揮槽を直列に2段接続したものを用い、1段目の真空脱揮槽での樹脂温度は220〜260℃に調整し出口の未反応スチレンモノマーと重合溶媒の合計量が0.2質量%以下となるよう真空度を6.0kPa以下に調整し、1段目の真空脱揮槽を出たポリマー溶液に対して0.2〜2.0質量%の水を添加し、動的又は静的混合機にて水を分散し、真空度を0.5〜3.0kPaの範囲に調整した2段目の真空脱揮槽に導入し脱揮処理することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜2のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物を発泡押出し、密度が10〜50kg/mであることを特徴とする板状押出発泡体の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の製造方法によって得られる板状押出発泡体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−275184(P2009−275184A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130052(P2008−130052)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(399051593)東洋スチレン株式会社 (37)
【Fターム(参考)】