説明

枠材

【課題】均質で安価であると共に加工性に優れた木質ボードを主要構成材とする一方、その長辺方向において蝶番等の金具を取り付けるための固定具(釘、ネジ、ビス等)を打ち込む部分を補強したドア等の枠材を提供すること。
【解決手段】木質ボードからなる主要構成部2の表面及び/又は裏面に平滑性を有する表面板4を積層一体化して得られた枠基材1において、その長辺方向に点在する蝶番等の金具を取り付けるための所定の位置にカッターやルーターで切削して凹部6を形成し、木ねじ保持力が1000N以上の補強材を埋設して固定部3とした枠基材1に、モールディング加工やラッピング等を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蝶番等を取り付けるための固定具を打ち込む部分を補強したドア等の枠材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ドア等の枠材として合板や製材品が使用されているが、近年の森林資源の枯渇や地球温暖化防止等の環境保護活動に伴って良質で安価な木材の生産量が減少しており問題となっている。
【0003】
一方、木質ボード(パーティクルボード、配向性ストランドボード(OSB)、中質繊維板(MDF)、硬質繊維板(ハードボード)、軟質繊維板(インシュレーションボード)等を含む)は、木材を小片や繊維状に細かく砕いたものを接着剤を用いて製板したもので、良質な木材を使用する必要はなく廃材等も使用することができるので環境への負荷が少ない資材であり、均質で安価であり加工性にも優れるため合板や製材品の代替用の木質材料としての利用が広まってきているが、固定具(釘、ねじ(ビス)等)の引抜強度が弱く、蝶番等の金具を固定する際に問題となる。
【0004】
これを解決する方法として、固定具の引抜強度の弱い材料をドアの芯材に用いた場合に蝶番を取り付ける構成が開示されている(特許文献1)。図6に示すように、ドア20の芯材に予め鬼目ナット(アンカー部材)21を埋め込み固定する。鬼目ナット21は複数の突起部22が芯材に食い込み強固に固定される。一方、蝶番23は羽根板24に設けられた貫通孔を介してビス25を鬼目ナット21にねじ込むことで、ドア20に蝶番23が強固に固定される。
【特許文献1】特開2006−77406公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この構成ではドアに蝶番を強固に固定ができるものの、予め鬼目ナットをドアの芯材に埋め込み固定する必要があり手間がかかると共に、現場で寸法誤差が発生したり、図面通りの施工がされなかったりして、蝶番等の取付場所の急な変更が生じた際には、鬼目ナットを再度所定の埋め込み位置に変更するなど対応が面倒であった。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みなされたもので、均質で安価であると共に加工性に優れ、蝶番等の金具を取り付けるための固定具(釘、ねじ(ビス)等)を打ち込む部分を補強したドア等の枠材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決するために、請求項1に係る発明の枠材は、主要構成部と金具を固定するための固定部とで構成された枠材であって、主要構成部は木質ボードからなり固定部は木ねじ保持力が1000N以上の補強材からなることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の枠材において、枠材の長辺方向に点在して固定部が配置されると共に枠材の表面及び/又は裏面に平滑性を有する表面板が配置されてなることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の枠材において、枠材の長辺方向片側側面に連続して固定部が配置されると共に枠材の表面及び/又は裏面に平滑性を有する表面板が配置されてなることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の枠材において、主要構成部の表面及び/又は裏面に平滑性を有する表面板を積層一体化して得られた枠基材の長辺方向に点在する所定位置に形成された凹部に補強材を埋設した固定部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、主要構成部は木質ボードからなるので、均質で安価であると共に加工性に優れ、廃材等も使用することができ環境への負荷を少なくできる。一方、固定部は木ねじ保持力が1000N以上の補強材からなるため、木ねじ保持力があまり強くない木質ボードを主要構成部とする枠材に蝶番等の金具を固定するための固定具(釘、ねじ(ビス)等)を打ち込む際にも、抜け難く強固に固定することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の発明で得られる効果に加えて、枠材の長辺方向に点在して固定部が配置されるので、蝶番等の金具を枠材の必要な場所に固定することができる。また、枠材の表面及び/又は裏面に平滑性を有する表面板が配置されているので、枠材として使用する際に必要なモールディング加工を行い、平滑なその表面に化粧単板や化粧シートを美麗にラッピングしたり塗装したりすることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1の発明で得られる効果に加えて、枠材の長辺方向片側側面に連続して固定部が配置されるので、枠材の長辺方向どの部分にでも金具を固定でき、現場での急な取付位置の変更にも対応できる。また、枠材の表面及び/又は裏面に平滑性を有する表面板が配置されているので、枠材として使用する際に必要なモールディング加工を行い、平滑なその表面に化粧単板や化粧シートを美麗にラッピングしたり塗装したりすることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1の発明で得られる効果に加えて、主要構成部の表面及び/又は裏面に平滑性を有する表面板を予め積層一体化して枠基材を形成するので、金具の固定が必要な枠材も必要でない枠材も同時にまとめて製造することができ、生産性に優れコストダウンを図ることができる。さらに、金具の固定部が必要な枠材のみ前記枠基材の長辺方向に点在する所定位置に凹部を形成し補強材を埋設することで、必要数だけ簡単に低コストの枠材が得られる。また、本発明も表裏面に平滑性を有する表面板を配置しているので、モールディング加工を行いその表面に化粧単板や化粧シートを美麗にラッピングしたり塗装したりすることができることはもちろんである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の各実施形態の枠材について、それぞれ製造の流れに沿った図面に基づき説明する。何れも幅113mm×長さ2045mm×厚さ24mmのドアの枠材について例示しているが、もちろん本発明は本実施形態の記載内容に限られるものではない。
【0016】
図1は本発明の第1実施形態にかかる枠材Aの製造の流れを示したものである。図1(a)は枠材Aの基本的な構成要素を示すものであり、主要構成部2に挟まれるように所定の位置に固定部3が設けられている。本実施形態において、主要構成部2は木質ボード(パーティクルボード、OSB、MDF、ハードボード等)からなり、好ましくはパーティクルボードが用いられる。固定部3には木ねじ保持力が1000N以上の補強材(合板、集成材、無垢材等の木質材の他、ABS、ポリオレフィン、塩化ビニル等の合成樹脂材)が用いられ、好ましくは合板が用いられる。
【0017】
蝶番を固定するための所定の位置として本実施形態では2箇所の固定部3が設けられる。主要構成部と固定部はその表裏面を平滑性を有する表面板4(MDF、合板、樹脂板等)で挟み、酢酸ビニルやPURホットメルト等の接着剤を用いて固定一体化され枠基材1が得られる。接着剤及びその塗布方法については特に限定するものではなく従来より木質材に適用される一般的なもの及び方法が用いられる。なお、表面板4については本実施形態では表裏両面に配置しているが、施工時に隠れる部分等化粧性を有しない部分については表面板を片面のみに配置する等必要に応じて変更しても良い。
【0018】
枠基材1はその後、化粧シートや突板等をラッピングする際に木口面についても平滑性を必要とする場合は、図1(b)(c)に示すように平滑性を有する木口面板5を木口面に接着する。木口面板5は必要に応じて使用しない場合や片面のみに使用する場合がある。具体的には表面板4(MDF、合板、樹脂板等)と同様なものが用いられ、接着剤及びその塗布方法についても前記表面板4に適用されるものや方法と同様である。
【0019】
図1(d)に示すように、枠基材1は使用用途に応じてモールディング加工されるので、表面板4や木口面板5は平滑性を有するだけでなく加工性に優れたものであることが好ましい。図1(d)ではドアの枠材として使用するために見切りや戸当りを設けるための溝をカッターやルーターで切削している。この後、枠材Aは必要に応じて化粧シートや突板等のラッピング加工や塗装を行われ完成する。
【0020】
2箇所の固定部3は蝶番が固定される位置に設けられており、JIS A 5905に記載の木ねじ保持力試験に準じて試験された木ねじ保持力が1000N以上の補強材であり固定具(釘、ねじ(ビス)等)に対する十分な保持力を有するので、本実施形態のように主要構成部2がパーティクルボードである枠材Aでも蝶番を強固に固定できる。木ねじ保持力が1000N以上であれば、固定具(釘、ねじ(ビス)等)で固定された蝶番が実用上外れ難いということが経験上わかっている。なお、本実施形態では固定部3は主要構成材2に挟まれる位置に2箇所設けているが、固定部3を端部に設けても良いし、固定部3は1箇所でも3箇所以上でも、枠材Aの用途に応じて設けることができる。
【0021】
図2は第2実施形態にかかる枠材Aの製造の流れを示したものである。本実施形態では主要構成部2(パーティクルボード)の長辺方向片側側面に連続的に固定部3(合板)を接着剤を用いて固定一体化した枠基材1が得られる(図2(b))。前記実施形態1と同様に枠基材1に必要に応じて表面板4や木口面板5を接着したり、モールディング加工やラッピング等を施して枠材Aを得る。(図2(c))
【0022】
本実施形態では、枠材Aの長辺方向片側側面全面に固定部3(合板)が連続的に設けられているので、蝶番等の金具の取り付け位置を自由に選択することができ、現場での急な取付位置の変更にも対応することができる。
【0023】
図3は第3実施形態にかかる枠材Aの製造の流れを示したものである。本実施形態では主要構成部2(パーティクルボード)の表裏面に表面板4(MDF)を予め接着一体化して枠基材1を形成した後、図3(a)に示すような所定位置をカッターやルーターで切削して凹部6を設け、図3(b)に示すように凹部6に合板を埋設させて固定部3とした。図4は固定部3の部分で切断したX−X線断面図である。その後、必要に応じて、モールディング加工やラッピング等を施して枠材Aを得る。(図3(c))
【0024】
本実施形態では、予め補強の必要な枠材も不要な枠材もまとめて製造し、補強の必要なもののみ補強材の埋設作業をすれば良いので、工業製品として効率的に製造することができ、補強位置の特注対応も容易に行うことができる。
【0025】
本発明品の枠材Aは、例えば図5に示すようにドアの枠材として使用する。図5の枠材Aは第1実施形態にかかるものであり、その施工状態について説明する。枠材Aを壁下地(柱)に固定した後、壁材14の端部を見切り材13で被覆し納める。また枠材Aの中央部分には戸当り12を設け、蝶番11の一方をドア10の端部に固定し他方を枠材Aの固定部3に木ネジで固定する。固定部3は合板からなるので木ねじの保持力を十分確保することができる。なお、本実施例は本発明の枠材の利用方法の一例でありこれに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の枠材は、均質で安価であると共に加工性に優れた木質ボードを主要構成材として用いると共に、部分的に補強材を用いて補強されており金具等を強固に固定できるので、極めて有用で産業上の利用可能性が高い。

【図面の簡単な説明】
【0027】

【図1】本発明の第1実施形態にかかる枠材Aの製造の流れを示す図。
【図2】本発明の第2実施形態にかかる枠材Aの製造の流れを示す図。
【図3】本発明の第3実施形態にかかる枠材Aの製造の流れを示す図。
【図4】図3のX−X線断面図。
【図5】本発明の枠材を用いたドア枠材の構造を示す横断面図。
【図6】ドアに蝶番を取り付ける場合の従来例を示す図。
【符号の説明】
【0028】
A 枠材
1 枠基材
2 主要構成部
3 固定部
4 表面板
5 木口面板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主要構成部と金具を固定するための固定部とで構成された枠材であって、主要構成部は木質ボードからなり固定部は木ねじ保持力が1000N以上の補強材からなることを特徴とする枠材。
【請求項2】
枠材の長辺方向に点在して固定部が配置されると共に枠材の表面及び/又は裏面に平滑性を有する表面板が配置されてなることを特徴とする請求項1に記載の枠材。
【請求項3】
枠材の長辺方向片側側面に連続して固定部が配置されると共に枠材の表面及び/又は裏面に平滑性を有する表面板が配置されてなることを特徴とする請求項1に記載の枠材。
【請求項4】
主要構成部の表面及び/又は裏面に平滑性を有する表面板を積層一体化して得られた枠基材の長辺方向に点在する所定位置に形成された凹部に補強材を埋設した固定部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の枠材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−144354(P2009−144354A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320452(P2007−320452)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】