架構の補強構造
【課題】梁にスチフナなどの補強部材を設けず、コストも工数も抑えつつ、耐震性の架構の補強構造を実現する。
【解決手段】柱1と大梁2とを接合してなる柱梁接合部Bの近傍に、柱1と梁2とに亘って方杖材5を架設し、大梁2は、一対のフランジ2a、2bと該一対のフランジ2a、2bを連結するウェブ2cとを備える形鋼により形成され、大梁2には、一対のフランジ2a、2b間に無補強領域2pが設けられると共に一方のフランジ2bの無補強領域2pに方杖材との連結部が形成され、方杖材5は、柱1と大梁2とに亘って架設される矩形断面部材5a1を備え、矩形断面部材5a1は、大梁2との関係で所定の式を満足させ、且つ、厚さ方向の中心線を大梁2のウェブ2cの厚さ方向の中心線に一致させた状態で、大梁2の連結部2kに接続されている。
【解決手段】柱1と大梁2とを接合してなる柱梁接合部Bの近傍に、柱1と梁2とに亘って方杖材5を架設し、大梁2は、一対のフランジ2a、2bと該一対のフランジ2a、2bを連結するウェブ2cとを備える形鋼により形成され、大梁2には、一対のフランジ2a、2b間に無補強領域2pが設けられると共に一方のフランジ2bの無補強領域2pに方杖材との連結部が形成され、方杖材5は、柱1と大梁2とに亘って架設される矩形断面部材5a1を備え、矩形断面部材5a1は、大梁2との関係で所定の式を満足させ、且つ、厚さ方向の中心線を大梁2のウェブ2cの厚さ方向の中心線に一致させた状態で、大梁2の連結部2kに接続されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は柱と梁を備える架構の補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉄骨造の架構において柱と梁の接合部の耐力の向上を図るべく、当該接合部や接合部の近傍に補強部材を設け、これにより接合部に地震等の水平力に対し抵抗力を付与することが行われてきた。この種の接合部の構成として、例えば非特許文献1には、スプレットティーを介して柱に梁を連結すると共に、該柱の梁接合部に補強裏板を取り付けた構成が開示されており、これにより梁接合部の強度向上が図られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】日本建築学会構造系論文報告集 第424号 1991年6月 91ページ 「スプリットティー引張接合による角形鋼管柱・H形鋼はり接合部終局耐力に関する実験的研究
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉄骨造の架構における柱には、箱形、円形などの、中空で閉合した断面形状をした部材、いわゆる閉断面部材が多く採用されている。閉断面部材は、安定した断面形状のため、例えば横荷重、曲げ、ねじりなどに対し高い抵抗力を有する。しかしながら、非特許文献1の如き構成においては、図1に示すように、柱の梁接合部と対応する位置に補強裏板(スチフナ)を取り付ける構成であり、当該スチフナの存在によって部品数が増えることなって管理が煩雑となるのみならず、当該スチフナを梁に取り付ける工程を要することで工程数が増大し、作業効率を低下させてしまうという問題がある。また、柱の如き閉断面部材の中間部に補強裏板等を設置し、溶接する作業には、柱の端部から補強部材を差し入れて、その状態を保持しつつ溶接を施すという高い技術が要求され、作業自体も困難であるという問題がある。
【0005】
かかる問題を解決すべく、補強裏板を設けない構成を採用することが考えられるが、そうすると、柱の梁接合部が梁に先んじて塑性変形してしまうことが考えられ、当該梁接合部の変形が建物全体の倒壊につながる虞がある。この様に、単に施工性の向上の観点から補強裏板を取り外してしまうと、梁接合部として必要とされる強度を確保することが困難となるという問題が生じる。また、単に閉断面部材の板厚を大きくすることは、柱の塑性変形の防止につながるが、原材料および製造費用が高くなり、また重量の増加により運搬費用が高くなるという問題があり、さらに許容される板厚の薄さを決定することは困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題を解決し、鉄骨部材同士を接合する接合構造において、接合部に取り付ける部材数の削減を図りつつ、最低限の閉断面部材の板厚で当該接合部の強度の維持することを図ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題解決のための具体的手段として、本願発明は、
平坦なフランジ部を有する筒状の閉断面部材と、
該フランジ部に接合される矩形断面部材との鉄骨部材用接合構造であって、
該矩形断面部材の幅方向を前記閉断面部材の軸心に平行とした状態で、前記矩形断面部材の一の端部を前記フランジ部に溶接接合することで前記閉断面部材と前記矩形断面部材との間で応力の伝達がなされ、
前記矩形断面部材は、前記閉断面部材と以下の式(1)の関係を満たした状態で前記フランジ部に溶接接合され、
前記フランジ部は、補強する補強材が設けられていない無補強領域として形成される
ことを特徴とする鉄骨部材用接合構造。
を提供する。
【0008】
tc×σyf ≧tw×σur ・・・式(1)
ただし、tc:閉断面部材のフランジ部の板厚(mm)
σyf:閉断面部材のフランジ部の降伏点(MPa)
tw:矩形断面部材の板厚(mm)
σur:矩形断面部材の引張強さ(MPa)
【0009】
本発明に係る式(1)は、形状パラメータとして、閉断面部材のフランジの板厚と矩形断面部材の板厚のみを考慮し、他の形状パラメータ、例えば矩形断面部材の幅は考慮されない。そして、閉断面部材のフランジ部の板厚と降伏点の積と、該フランジ部に接合される矩形断面部材の板厚と引張強さの積とが上記式(1)を満たすことにより、少なくとも矩形断面部材の引張強さの限界を超えて破断に至るまで、閉断面部材のフランジ部は降伏耐力に到達しないこととなる。これによって、矩形断面部材の断面が、全て引張強さに達する最大引張耐力、又は全て圧縮強さに達する最大圧縮耐力に達する状態において、仮に応力の不均一により閉断面部材のフランジ部の接合部に局所的に降伏している部分があったとしても、該フランジ部の接合部全体が降伏に至ることはなく、矩形断面部材から閉断面部材のフランジ部への荷重伝達を可能にする。
【0010】
なお、本明細書で「フランジ部」とは、いわゆる配管に用いる管継手のフランジのような構成要素をさすものではなく、主に建築業界で用いる梁、柱などの部材における板状の部材のことをさし、例えばウェブに対して用いられる構成要素を意味する。
【0011】
また、当該式(1)を満たす関係にあって、且つ、少なくとも矩形断面部材の接合部位及びその近傍が、補強材を設けない領域(以下、本明細書において、「無補強領域」と呼ぶ。)として形成されているため、当該矩形断面部材と閉断面部材の接合部廻りの納まり、すなわちフランジ部からの凹凸をなくすことで、接合部の形状をスムーズにすることができる。したがって、接合構造を形成した後の建築工程が容易になる。さらには、当該補強材の取付けを不要とするため、施工の手間を省くことができる。
【0012】
式(1)において、閉断面部材および矩形断面部材の形状パラメータとして、板厚のみが考慮されるだけで、他の形状パラメータ、例えば矩形断面部材の幅は考慮されない。したがって、所定の強度を有する接合構造を製造するにあたり、所定の閉断面部材に対する矩形断面部材の材質や形状の選択、または所定の矩形断面部材に対する閉断面部材の材質や形状の選択を簡便に行うことができる。
【0013】
本発明において、前記閉断面部材を角筒状に形成し、前記フランジ部に対向してさらなるフランジ部を設けることが好ましい。そうすることで、少なくとも対向しあう一対のフランジ部にそれぞれ矩形断面部材を接合させることができる。
【0014】
また本発明によれば、鉄骨部材用接合構造は、
さらに、長尺部材を有し、
前記閉断面部材には、前記フランジ部に平行な面上に形成された受け部が設けられ、
前記長尺部材は、該受け部に接合され、
前記矩形断面部材の他の端部が前記長尺部材に接合されることで、前記矩形断面部材は、方杖材として、前記閉断面部材と前記長尺部材とに架設され、
前記無補強領域は、少なくとも前記フランジ部から前記受け部まで延在して形成される
ことが好ましい。
【0015】
本発明によれば、閉断面部材に長尺部材が接合される接合部の近傍に、矩形断面部材からなる方杖材が架設される。ここで、無補強領域が接合面まで延在して設けられているので、方杖材及び長尺部材は閉断面部材の無補強領域に接合され、かつ、これら3部材の周囲の形状をスムーズなもの、すなわち納まりを良好なものとすることができる。また、閉断面部材と方杖材とが上記式(1)を満たすため、閉断面部材は、方杖材からの荷重によって閉断面部材が降伏する以前の状態を維持することができる。これによって、閉断面部材と長尺部材の接合部について、方杖材による補強効果を充分に発揮させることができる。
【0016】
また、前記閉断面部材は、冷間ロール成形による角形鋼管であることが好ましい。かかる角形鋼管を閉断面部材として採用することにより、同程度の引張強さを有する、熱間成形鋼管、箱形断面鋼管、冷間プレス角形鋼管などより、降伏点が高くなるので、部材としての強度向上を図ることができる。
【0017】
前記矩形断面部材は、座屈防止部材を備えていることが好ましい。そうすることにより、矩形断面部材が圧縮力を受ける場合、弱軸まわりの面外変形が、座屈防止部材により規制される。その結果、矩形断面部材は引張力とともに圧縮力をも負担することができ、正負方向いずれの水平力に対しても抵抗することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る架構の補強構造によれば、接合部に取り付ける部材数の削減を図りつつ、最低限の閉断面部材の板厚さで当該接合部の強度の維持を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】非特許文献1に開示されている柱の梁接合部の補強裏板を示す正面図(左図)および平面断面図(右図)である。
【図2】本発明の実施形態に係る架構の平面的グリッド構成を示す平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る架構の全体構成を示す斜視図である。
【図4A】本発明の実施形態に係る架構を構成する柱と大梁の接合状態を示す正面図である。
【図4B】本発明の実施形態に係る架構を構成する柱と大梁の接合状態を示す平面図である。
【図4C】本発明の実施形態に係る架構を構成する柱と大梁の接合状態を示す側面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る架構を構成する柱と複数の大梁の接合状態を示す正面図である。
【図6A】本発明の実施形態に係る方杖材の構成を示す正面図である。
【図6B】本発明の実施形態に係る方杖材の座部を示す平面図である。
【図6C】本発明の実施形態に係る方杖材の小口面を示す左側面図である。
【図6D】本発明の実施形態に係る方杖材の座屈防止部材を示す、方杖材の長手方向に垂直な方向に、図6Aの左上から見た側面図である。
【図6E】本発明の実施形態に係る方杖材の座屈防止部材を示す、方杖材の長手方向に垂直な方向に、図6Aの右下から見た側面図である。
【図6F】本発明の実施形態に係る方杖材の、図6AのP−P線断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る方杖材を架設した状態の柱と大梁の接合部を示す正面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る方杖材を架設した状態の柱と大梁の接合部を示す側面図である。
【図9A】本発明の実施形態に係る柱と方杖材の接合部における塑性ヒンジ変形領域を示す側面図である。
【図9B】柱方杖材接合部の、図9AのQ−Q線断面図である。
【図9C】柱方杖材接合部の、図9AのR−R線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の最も好ましい実施形態について図を参照して具体的に説明する。本実施形態は、鉄骨造3階建ての架構を有する工業化住宅における補強構造の例である。図2は、架構の平面的グリッド構成を示す平面図である。図3は、架構の全体構成を示す斜視図である。図4は、架構を構成する柱と大梁の1つの接合部の状態を示す正面図(図4A)、平面図(図4B)および側面図(図4C)である。図5は架構を構成する1つの柱に複数の大梁が接合された状態を示す正面図である。図6は、本発明の実施形態に係る方杖材の構成を示す正面図(図6A)、方杖材の座部を示す平面図(図6B)、方杖材の小口面を示す、図6Aの左から見た側面図(図6C)、方杖材の座屈防止部材を示す、方杖材の長手方向に垂直な方向に、図6Aの左上から見た側面図(図6D)および図6Aの右下から見た側面図(図6E)、方杖材の、図6AのP−P線断面図(図6F)である。図7は、方杖材を取り付けた状態の柱と大梁の接合部を示す正面図である。図8は、方杖材を付加した状態の柱と大梁の接合部を示す側面図である。図9は、柱方杖材接合部における降伏メカニズムを示すための側面図(図9A)、図9AのQ−Q線断面図(図9B)および図9AのR−R線断面図(図9C)である。
【0021】
図2、図3に示すように、本発明の実施形態の一つである住宅用の架構Aは、妻方向が2スパン、桁方向が3スパンで合計6つの平面グリッドからなる3層の架構層からなる。図3に示すように、住宅用の架構Aは、1層から3層まで連続した、通し柱形式の複数の柱(閉断面部材)1と、各階層において隣接する柱1同士を連結する複数の大梁(長尺部材)2と、大梁2の直下に格子状に形成された鉄筋コンクリート造の基礎3とで構成されている。なお、柱脚部1aは特開平01−203522号公報に開示された露出型固定柱脚工法にて基礎3に接合されている。この架構を構築したのち、相対する大梁2の間に小梁を適宜架け渡した上で、ALC(軽量気泡コンクリート)からなる床パネルを梁の上フランジに載置して床が構成され、外周部の大梁2にALCからなる壁パネルを取り付けることによって、外壁が構成されて住宅の躯体が完成する。
【0022】
図5に示すように、本実施形態における柱1は、外形寸法が150mm角の角形鋼管からなる通し柱となっており、該通し柱は、各階に相当する高さを有する3本の柱1を軸方向に接続して形成されている。図4Aに示すように、1階の柱1は、12mmの肉厚を有する、横断面内に溶接による継目が存在しない角形鋼管からなる柱本体の一部に、大梁を受ける梁受け部1eを備えている。
【0023】
図4Bに示すように、柱1は、互いに対向して設けられる一対の平板状のフランジ部1hの2組を互いに直交させた状態に配し、隣り合うフランジ部間を凸円弧状の隅部1iにより連結してなる断面四角筒状を呈している。また、柱1は、冷間ロール成形の角形鋼管であるのが好ましい。これにより、熱間成形鋼管、箱形断面鋼管または冷間プレス角形鋼管で、同程度の引張強さを有するものよりも降伏点が高いので、部材としての性能向上が図られている。また、当該柱本体としては、継ぎ目のないシームレスパイプを採用することも可能である。これにより、いずれのフランジ部も平坦な面として形成されることとなり、当該フランジ部を平坦に均す作業を要することなく、矩形断面部材を取り付けることができる。
【0024】
梁が接合される箇所(梁接合部)は、柱本体よりも肉厚(例えば22mm)に形成される四角筒状を呈し、互いに対向する一対の平板部の2組を互いに直交させた状態で設けると共に、隣り合う平板部間を凸円弧状の角部により連結して形成されており、各平板部を柱本体のフランジ部に平行とした状態で該柱本体の端部に接合されている。
【0025】
また図4Aに示すように、梁接合部の各平板部には、大梁2のエンドプレート2dの孔2eに対応する孔1fが複数個連続して穿たれており、これによって各階の大梁2を受ける梁受け部(受け部)1eが形成されている。なお、各孔1fの内壁には、ネジが切られている。大梁2の孔2eと同様に、各梁受け部1eの上部2段と最下段の計6個の孔1fは、大梁2と接合するボルト4を螺入する孔であり、下から2段目の孔2個は、位置合わせ用の孔である。
【0026】
図4AないしCに示すように、本実施形態の大梁2は、一対のフランジ2a、2bをウェブ2cによって連結して形成されるH形鋼(形鋼)からなる。また、本実施形態の大梁は、梁せい(幅)が250mm、上下のフランジ2a、2bの幅が125mm、厚みが9mm、ウェブ2cの厚みが6mmに統一されている。
【0027】
大梁2の各端部には、柱1に接合されるエンドプレート2dが溶接により取り付けられている。該エンドプレート2dは、所定の厚さを有する厚板状に形成されており、該エンドプレートには、横方向に中心から左右対称に2列、縦方向に等間隔に4段、同一径の孔2eが計8箇所穿たれている。孔2eのうち上部2段と最下段の計6個の孔が、柱1との接合に使用するボルト4を挿通する為の孔である。なお、下から2段目の孔2個は、柱1に大梁2を取り付ける接合作業の際、「シノ」と称する棒状の挿嵌冶具を挿し込んで位置合わせを行うための孔である。当該シノを用いて柱部材1の梁受け部1eに大梁2のエンドプレート2dが重ね合わされ、これらの各孔をボルト締結することにより、柱梁接合部Bが形成される。
【0028】
当該柱梁接合部Bは、大梁2の端部のエンドプレート2dを、柱1の梁接合部1eの梁受け部に高力ボルト4を用いて締結し、剛接合として見做すことができる固定度を有して形成されている。また、当該柱梁接合部Bは、荷重作用時に被接合材である大梁2及び柱1が塑性域に達するまで破断しない、保有耐力接合として構成されている。
【0029】
詳述すると、柱と梁との接合部を剛接合により構成する場合、地震発生時に躯体に作用する地震エネルギーを、梁が塑性変形により吸収することが期待されている。大きな地震動を受けている間に亘って、梁の塑性化によるエネルギーを吸収するためには、当該梁を保持する柱との接合部である、梁両端の柱梁接合部が破断してはならない。このように、梁の塑性変形能を充分に発揮させるべく、梁の塑性変形を充分に生じさせるまで、柱梁接合部を破断させない接合状態を保有耐力接合という。
【0030】
また、大梁2の上下フランジ2a、2bには、各種部材をボルト固定する為の孔群2a1、2b1が、柱1に接合した状態で、柱心を中心にして上下対称に穿たれている。
【0031】
また、図7に示す如く、大梁2の下フランジ2bに設けられた複数の孔群2b1のうち、柱1の配置の基準となる基準線(通り芯)Z1から305mmの位置であって、当該柱1から見てもっとも手前に位置する孔群2b1に、方杖材(ダンパー)5がボルトにより接合される。そして、方杖材5のボルト接合に用いられた孔群2b1及びその周囲は、方杖材5と大梁2との連結部2kを形成する。本実施形態において、方杖材5は、柱1と大梁2とが接合した状態で、方杖材5の中心線Y1と大梁の長手方向の中心線X1とのなす角度θが70度となるように構成されている。
【0032】
また、当該大梁2には、両端部間の長さ方向の全体にわたり、無補強領域(すなわち補強材が設けられていない領域)が形成することができ、当該連結部2kを、図7に斜線で示す領域に、当該無補強領域2pに設けてもよい。図7に示す実施形態の場合、無補強領域2pは、柱梁接合部Bを形成する大梁2の一方の梁端部から、上下フランジ2a、2bの当該梁端部に最も近い孔群2a1、2b1まで形成されており、当該下フランジ2bの孔群2b1及びその周囲を連結部2kとすることで、無補強領域2pに連結部2kが設けられている。
【0033】
なお、本実施形態において、図7に示すように、下フランジ2bの連結部2kと当該連結部2kに対向する上フランジ2aとの間の領域を含む領域を無補強領域2pとしているが、大梁2の一方の端部から他方の端部に亘って、スパン方向に長大な無補強領域2pとしても構わない。
【0034】
図6Aに示す方杖材5は、降伏点の低い鋼からなる芯部材5aと、該芯部材5aに圧縮力を作用させた際の座屈を防止するための座屈防止部材5bとからなる。
【0035】
芯部材5aは、矩形断面を有する扁平で長尺な棒板状の矩形断面部材5a1と、該矩形断面部材5a1の一端に溶接された平板状の座部5a2とを備えている。
【0036】
図6Fに示すように、座屈防止部材5bは、一般構造用圧延鋼材からなる一対の平板5b1の間に一対の側板5b2を挟みこんだ断面ロ字形状をしている。座屈防止部材5bの内部に芯部材5aに配置するために、これら一対の平板5b1を、芯部材5aの弱軸まわりの面である、幅方向に平行な面に配置し、ボルト5b3により締結する。したがって、方杖材5の長手方向断面をみると、当該座屈防止部材5bの中央の断面ロ字形状の空隙部分に芯部材5aの矩形断面部材5a1が配されている。座屈防止部材5bの一対の平板5b1の間隔は、芯部材5aの厚さよりも僅かに大きいものとされると共に、一対の側板5b2の間隔は芯部材5aの幅より僅かに大きく形成されている。以上の構成により、座屈防止部材5bによって、芯部材5aの弱軸まわりの面の外曲げが規制され、よって、芯部材5aの座屈が規制される。この結果、方杖材5は引張力とともに圧縮力をも負担することができ、正負いずれの水平力に対しても抵抗することができる。
【0037】
図7に示すように、方杖材(ダンパー)5は、方杖型であり、一方の端部Mに設けられた座部5a2を、大梁2の下フランジ2bにボルト接合し、他端部Nに形成した平坦な小口面5a3を、柱部材の柱本体のフランジ部に溶接接合することによって、大梁2と柱1に亘って架設されている。また、このように方杖材5の他端部Nが、柱のフランジ部1hに溶接接合されることで、柱のフランジ部1hと方杖材5の他端部Nにより柱方杖材接合部Dが形成される。
【0038】
また図8に示すように、方杖材5の他端部Nは、柱本体のフランジ部の幅方向中央の位置で、当該フランジ部に接合されている。これによって、該柱方杖材接合部Dは、柱部材のフランジ部の幅方向中央に設けられている。
【0039】
ここで、柱1のフランジ部1hの板厚と降伏点の積と、矩形断面部材5a1の板厚と引張強さの積とは、式(1)の関係を満たした状態で、柱1のフランジ部1hと矩形断面部材5a1とが接合されている。
【0040】
図9は、柱方杖材接合部における降伏領域を示すための側面図(図9A)、図9AのQ−Q線断面図(図9B)および図9AのR−R線断面図(図9C)である。また、矩形断面部材である方杖材5が溶接接合されるフランジ部1hには、方杖材5から伝達される荷重に伴って形成される降伏領域が存在する(図9)。図9Aは、方杖材5が溶接されているフランジ部の正面図であり、図9Bは、該フランジ部の、図9AのQ−Q線断面図であり、図9Cは、該フランジ部の、図9AのR−R線断面図であり、方杖材5からフランジ部の平坦面に垂直に引張力Pが加わり、当該垂直方向にたわみδの塑性変形が生じた状態を示している。以下では、引張力が作用する場合について説明するが、圧縮力が作用した場合も同様に考えることができる。
【0041】
本実施形態において、該降伏領域は、図9Aに示す如く、当該方杖材5の接合箇所BBB’B’を包囲してフランジ部1hに展開する四角形状の領域AAA’A’に該当する。具体的には、方杖材5は、フランジ部1hの幅方向中心となる位置に設けられて、方杖材5の他端部Nの小口面5a3と同一の形状を有する四角形状の領域BBB’B’で接合されている。そして、当該領域BBB’B’の各辺BB’からaだけフランジ部の幅方向外側に設けられる一対の直線AA’、AA’と、各辺BBからフランジ部の軸方向外側にxだけ離間した位置に設けられる一対の直線AA、A’A’によって形成される領域AAA’A’が、降伏領域となる。
【0042】
図9Bに示す、柱1の一点鎖線で示されたフランジ部1hの外側の隅部1iは、冷間の折り曲げ加工によって湾曲形成されているために、平板部に比べて著しく降伏点が高い。このため、降伏領域を規定するとき、図9Aに示す辺AA’は、図9Bにおいて一点鎖線で示された、当該フランジ部の最外縁に一致し、当該辺AA’よりも外側が隅部1iとなる。また、辺BBから辺AAまでの距離である変数xは(図9C)、後述の降伏機構の検討により一の解に定まる。
【0043】
また、柱における矩形断面部材との接合部位は、当該フランジ部を補強する補強材を設けない、無補強領域として形成されている。さらに、矩形断面部材との接合部位の高さにおける柱の内周面及び外周面が、補強材の設置を許容しない無補強領域として設定されている。
【0044】
またさらに、本実施形態においては、図7に示すように、無補強領域1pは、矩形断面部材である方杖材5との接合部位から、さらに梁接合部まで設けられている。従来、梁と方杖材とが近くに接合される柱の箇所は、ボルト、溶接フランジ、補強材などが設けられて、凹凸が形成されると、柱の軸方向中央部に比べて、著しく柱表面のスムーズさが低下し、いわゆる、納まりが悪くなりえる。しかし、本発明の実施形態において、当該箇所を無補強領域に設定することで、柱表面のスムーズな形状を維持し、すなわち納まりよく、容易に他の部材を配することができる。また、内周面も無補強領域とすることで、当該内周面にスチフナ等、板厚を増やすための板材等を取り付ける必要なく、施工性も向上する。
【0045】
本実施形態の構成によれば、大梁2に設定された無補強領域2pに、方杖材5との連結部2kが形成されているので、方杖材5と大梁2とのボルト接続を、補強部材等に邪魔されることなく、きわめて容易に行うことが可能となる。また、大梁2の連結部2kが無補強領域2pに形成されているため、当該大梁2と方杖材5との連結部2k周りに、大梁2の他の領域と同様に断熱材を敷設することが可能となる。図示はしないが、ウェブ2cの当該接続部2kと対応する位置に、梁貫通孔を形成することが可能となり、配管等の設備設計の自由度が向上する。
【0046】
一方、仮に上記式(1)を満たさない状態で、柱フランジの潜在降伏領域周りにスチフナ等の補強材も設けない構成とすると、柱のフランジ部が矩形断面部材よりも先に降伏に至り、フランジ部が塑性化してしまう。そうすると、柱1のフランジ部1hと方杖材5との接合部で塑性変形が増大し、方杖材5が負担できる力が制限され、外力の増大に伴って方杖材が有効に機能しなくなる。本実施形態において、方杖材5は、架構Aに対し対角線状に、軸力に対して抵抗する、いわゆるブレースとして組み入れられている。しかし、上記のフランジ部1hと方杖材5との接合部が塑性化することにより、水平方向の力により架構が変形することを防ぐ機能、すなわちブレースとしての方杖材5の機能が効かなくなる。その結果、柱梁接合部Bの層間変形角(=水平変位/階高)が大きくなり、架構全体に加え外壁や内装などの損傷が拡大してしまう場合がある。
【0047】
これに対し、上記実施形態では、上記式(1)を満たすことにより、地震時であっても柱のフランジ部1cが方杖材5よりも先に降伏しない。その結果、方杖材5が最大引張耐力または最大圧縮耐力に至るまで、当該方杖材5のブレースとして有効に機能する。また、上記柱部材の降伏領域には、方杖材5が最大引張耐力または最大圧縮耐力に至る前に塑性化が生じないので、柱部材には残留変形が生じない。したがって、例えば地震等が発生して当該架構Aに過大な水平力が加わり、方杖材5の破壊が生じた場合であっても、柱部材自体の損傷は免れることができる。その結果、上記地震後に方杖材5のみを交換し、柱部材をそのまま使用することで、柱梁接合部Bの状態を地震前の初期状態に復帰させることが可能となる。
【0048】
ここで、本実施形態において、閉断面部材のフランジ部の板厚と降伏点の積と、該フランジ部に接合される矩形断面部材の板厚と引張強さの積とが、上記式(1)の関係を満足することにより、矩形断面部材が引張強さに至る前に、フランジ部が降伏することがないことを、降伏線理論に基づいて、以下検証する。
【0049】
(実施例)
図9Cにおいて、柱1は、150mm角で厚さ(tc)を12mmとする角形鋼管である。また、図9Aにおいて、矩形断面部材は、厚さ(tw)6mm、幅80mmの鋼板であって、当該鋼板の端部Nを柱部材のフランジ部の幅方向中央部に溶接接合する。また、柱部材の鋼種はSTKR400であると共に矩形断面部材の鋼種はSS400であり、ゆえに、降伏点(σyf)は235MPa、引張強さ(σur)は400MPaである。
したがって、
tc×σyf=12mm×235MPa=2820N/mm
tw×σur=6mm×400MPa=2400N/mm 式(2)
であるから、上記式(1)tc×σyf≧tw×σurの関係を満たす。したがって、矩形断面部材が引張強さに至ってもフランジ部が降伏しないことなり、これによって、当該方杖材の引張力および圧縮力に対する性能を充分に発揮させることができる。
【0050】
ここで、当該降伏線理論による塑性解析により、上記式(1)を満たす部材を採用することにより、フランジ部が矩形断面部材の破壊よりも先に降伏することを免れることを検証する。
【0051】
矩形断面部材に導入される引張力jPpにより、柱部材のフランジ部には、図9Cに示す降伏線が形成され、当該降伏線に基づいてδだけたわみが生じるものと仮定する。なお、柱の板厚をtcとし、矩形断面部材の厚さをtw、長さをtfとし、さらに、柱の方杖材受け部(フランジ部)の幅を2a+twとする。また、フランジ部の降伏ラインは図9AのAAA’A’の如く形成されると仮定する。
【0052】
上記前提にもとづき、該フランジ部の内力仕事E1を導出すると、以下の通りとなる。
【数1】
式(3)
なお、当該フランジ部の単位長さあたりの全塑性モーメントcM0は以下の通りとなる。
【数2】
式(4)
【0053】
ここで、当該フランジ部の内力仕事E1と該方杖材による外力仕事jPpδを等値とすると、次式が得られる。
【数3】
式(5)
これにより、当該フランジ部の降伏耐力は次式となる。
【数4】
式(6)
ところで、未知数xは、上界定理、すなわち、すべての可能な降伏機構のうち、外力による仕事に対して最小の降伏荷重を与える機構が真の降伏機構であるとする定理に基づいて、以下の解として得られる。
【数5】
式(7)
したがって、変数xはaにより一義的に以下のように表される。
【数6】
式(8)
または、
【数7】
式(9)
【0054】
次に、当該フランジ部の降伏荷重を計算する。本実施例における以下の各数値
tc=12mm
tw=6mm
a=36mm
cσy=235N/m2
を、式(6)および式(9)に代入することにより、当該フランジ部の降伏荷重は、以下の通り計算される。
jPp=216kN 式(10)
一方、矩形断面部材の最大引張耐力は、以下の式より定まる。
tf×tw×部材の引張強さ=192kN 式(11)
【0055】
以上、降伏線理論による解析の結果、フランジ部の降伏荷重は216kNであるのに対し、矩形断面部材の最大引張耐力は192kNである。これは、フランジ部が矩形断面部材の破壊よりも先に降伏しないことを示している。
【0056】
すなわち、上記式(1)を満足すれば、フランジ部の降伏荷重は矩形断面部材の最大引張耐力を上回ることとなり、これにより、矩形断面部材の耐力が余すところ無くすべて発揮される。
【0057】
(比較例)
上記実施例に対する比較例を以下に示す。
柱は、150mm角で厚さ(tc)を9mmとする角形鋼管である。また、矩形断面部材は、厚さ(tw)6mm、長さ80mmの鋼板であって、当該鋼板の端部を柱部材のフランジ部の幅方向中央部に溶接接合する。また、柱部材の鋼種はSTKR400であると共に矩形断面部材の鋼種はSS400であり、ゆえに、降伏点は235MPa、引張強さは400MPaである。
したがって、
tc×σyf = 9mm×235MPa=2115N/mm
tw×σur = 6mm×400MPa=2400N/mm 式(12)
であるので、
tc×σyf <tw×σur 式(13)
となり、上記式(1)の関係を満たしていない。
【0058】
次に、本比較例において、閉断面部材のフランジ部の板厚と降伏点の積と、該フランジ部に接合される矩形断面部材の板厚と引張強さの積とが、上記式(1)の関係を満たさない場合、矩形断面部材が引張強さに至る前に、フランジ部が降伏することがないか否かを、降伏線理論に基づいて検証する。
【0059】
まず、降伏線理論を採用して当該方杖材受け部の降伏耐力を算出する。本比較例における以下の各数値
tc=9mm
tw=6mm
a=45mm
cσy=235N/m2
を、式(6)および式(9)に代入することにより、当該フランジ部の降伏耐力は、以下の通り計算される。
jPp=113kN 式(14)
【0060】
また、矩形断面部材の最大引張耐力は、上記実施例の式(11)より定まる。
tf×tw×部材の引張強さ=192kN 式(11)
【0061】
当該比較例においては、降伏線理論に基づいて得られた式(14)と式(11)より、矩形断面部材が引張強さに至る前によりも先に、フランジ部が降伏することになる。
【0062】
以上の検証は、閉断面部材のフランジ部の板厚と降伏点の積と、該フランジ部に接合される矩形断面部材の板厚と引張強さの積とが、上記式(1)の関係を満たさない場合、フランジ部の降伏耐力は矩形断面部材の最大引張耐力を下回り、矩形断面部材の耐力がすべて発揮される前にフランジ部が降伏することを示している。
【0063】
本発明を上記実施形態に基づいて説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0064】
例えば、方杖(ダンパー)が大梁となす角度θを70度としたが、この角度は70度に限定されるものではなく、例えば20度、30度や45度としてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、閉断面部材として柱を例示し、矩形断面部材として方杖材(ダンパー)を採用した構成を示しているが、これに限らない。例えば、本発明に係る矩形断面材を方杖材とせず、梁とし、当該閉断面部材を柱とした場合でも、上記実施形態と同様の効果を奏する。また、これは柱を矩形断面部材とし、梁を閉断面部材とした場合でも、上記実施形態と同様の効果を発揮する。さらに、閉断面部材と長尺材を梁として、矩形断面部材を火打ち材としても良い。
【0066】
また、閉断面部材として、正方形断面、長方形断面部材はもちろん、三角形、五角形、六角形等の多角形断面部材であっても、本発明と同様の効果を奏する。また、円筒状の柱の一部に、平板状のフランジ部を設ける構成であっても、本実施形態と同様の効果を奏する。
【0067】
また、本発明においては、鉄骨構造という用語を一般的な意味で用いている。閉断面部材や矩形断面部材の材質としては、鋼材のみでなく、アルミニウム等の建築構造材料でも良い。
【0068】
さらに、本発明は、梁と柱を共に形鋼とする構成や、柱のみを形鋼とする構成にも採用することができる。また、純鉄骨造以外に鋼管柱にセメントミルクを充填したCFT造や鉄骨鉄筋コンクリート造にも採用可能である。
【0069】
さらにまた、上記実施形態においては、住宅用建物の架構における構成で本発明を説明したが、これに限定されるものではない。本発明は、例えば高層建築物、橋、電波塔、ダムその他の土木、建築に係る種々の構造物の接合構造にも採用することができる。
【符号の説明】
【0070】
A 架構
B 柱梁接合部
1 柱
1a 柱脚部
1e 梁受け部
1f 孔
1h フランジ部
1i 隅部
2 大梁(梁)
2a 上フランジ
2a1 孔群
2b 下フランジ
2b1 孔群
2c ウェブ
2d エンドプレート
2e 孔
2k 連結部
2p 無補強領域
3 基礎
4 ボルト
5 方杖材
5a 矩形断面部材
5a1 矩形断面部材
5a2 座部
5a3 小口面
5b 座屈防止部材
5b1 平板
5b2 側板
5b3 ボルト
M 方杖材の一方の端部
N 方杖材の他端部
【技術分野】
【0001】
本発明は柱と梁を備える架構の補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉄骨造の架構において柱と梁の接合部の耐力の向上を図るべく、当該接合部や接合部の近傍に補強部材を設け、これにより接合部に地震等の水平力に対し抵抗力を付与することが行われてきた。この種の接合部の構成として、例えば非特許文献1には、スプレットティーを介して柱に梁を連結すると共に、該柱の梁接合部に補強裏板を取り付けた構成が開示されており、これにより梁接合部の強度向上が図られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】日本建築学会構造系論文報告集 第424号 1991年6月 91ページ 「スプリットティー引張接合による角形鋼管柱・H形鋼はり接合部終局耐力に関する実験的研究
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉄骨造の架構における柱には、箱形、円形などの、中空で閉合した断面形状をした部材、いわゆる閉断面部材が多く採用されている。閉断面部材は、安定した断面形状のため、例えば横荷重、曲げ、ねじりなどに対し高い抵抗力を有する。しかしながら、非特許文献1の如き構成においては、図1に示すように、柱の梁接合部と対応する位置に補強裏板(スチフナ)を取り付ける構成であり、当該スチフナの存在によって部品数が増えることなって管理が煩雑となるのみならず、当該スチフナを梁に取り付ける工程を要することで工程数が増大し、作業効率を低下させてしまうという問題がある。また、柱の如き閉断面部材の中間部に補強裏板等を設置し、溶接する作業には、柱の端部から補強部材を差し入れて、その状態を保持しつつ溶接を施すという高い技術が要求され、作業自体も困難であるという問題がある。
【0005】
かかる問題を解決すべく、補強裏板を設けない構成を採用することが考えられるが、そうすると、柱の梁接合部が梁に先んじて塑性変形してしまうことが考えられ、当該梁接合部の変形が建物全体の倒壊につながる虞がある。この様に、単に施工性の向上の観点から補強裏板を取り外してしまうと、梁接合部として必要とされる強度を確保することが困難となるという問題が生じる。また、単に閉断面部材の板厚を大きくすることは、柱の塑性変形の防止につながるが、原材料および製造費用が高くなり、また重量の増加により運搬費用が高くなるという問題があり、さらに許容される板厚の薄さを決定することは困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題を解決し、鉄骨部材同士を接合する接合構造において、接合部に取り付ける部材数の削減を図りつつ、最低限の閉断面部材の板厚で当該接合部の強度の維持することを図ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題解決のための具体的手段として、本願発明は、
平坦なフランジ部を有する筒状の閉断面部材と、
該フランジ部に接合される矩形断面部材との鉄骨部材用接合構造であって、
該矩形断面部材の幅方向を前記閉断面部材の軸心に平行とした状態で、前記矩形断面部材の一の端部を前記フランジ部に溶接接合することで前記閉断面部材と前記矩形断面部材との間で応力の伝達がなされ、
前記矩形断面部材は、前記閉断面部材と以下の式(1)の関係を満たした状態で前記フランジ部に溶接接合され、
前記フランジ部は、補強する補強材が設けられていない無補強領域として形成される
ことを特徴とする鉄骨部材用接合構造。
を提供する。
【0008】
tc×σyf ≧tw×σur ・・・式(1)
ただし、tc:閉断面部材のフランジ部の板厚(mm)
σyf:閉断面部材のフランジ部の降伏点(MPa)
tw:矩形断面部材の板厚(mm)
σur:矩形断面部材の引張強さ(MPa)
【0009】
本発明に係る式(1)は、形状パラメータとして、閉断面部材のフランジの板厚と矩形断面部材の板厚のみを考慮し、他の形状パラメータ、例えば矩形断面部材の幅は考慮されない。そして、閉断面部材のフランジ部の板厚と降伏点の積と、該フランジ部に接合される矩形断面部材の板厚と引張強さの積とが上記式(1)を満たすことにより、少なくとも矩形断面部材の引張強さの限界を超えて破断に至るまで、閉断面部材のフランジ部は降伏耐力に到達しないこととなる。これによって、矩形断面部材の断面が、全て引張強さに達する最大引張耐力、又は全て圧縮強さに達する最大圧縮耐力に達する状態において、仮に応力の不均一により閉断面部材のフランジ部の接合部に局所的に降伏している部分があったとしても、該フランジ部の接合部全体が降伏に至ることはなく、矩形断面部材から閉断面部材のフランジ部への荷重伝達を可能にする。
【0010】
なお、本明細書で「フランジ部」とは、いわゆる配管に用いる管継手のフランジのような構成要素をさすものではなく、主に建築業界で用いる梁、柱などの部材における板状の部材のことをさし、例えばウェブに対して用いられる構成要素を意味する。
【0011】
また、当該式(1)を満たす関係にあって、且つ、少なくとも矩形断面部材の接合部位及びその近傍が、補強材を設けない領域(以下、本明細書において、「無補強領域」と呼ぶ。)として形成されているため、当該矩形断面部材と閉断面部材の接合部廻りの納まり、すなわちフランジ部からの凹凸をなくすことで、接合部の形状をスムーズにすることができる。したがって、接合構造を形成した後の建築工程が容易になる。さらには、当該補強材の取付けを不要とするため、施工の手間を省くことができる。
【0012】
式(1)において、閉断面部材および矩形断面部材の形状パラメータとして、板厚のみが考慮されるだけで、他の形状パラメータ、例えば矩形断面部材の幅は考慮されない。したがって、所定の強度を有する接合構造を製造するにあたり、所定の閉断面部材に対する矩形断面部材の材質や形状の選択、または所定の矩形断面部材に対する閉断面部材の材質や形状の選択を簡便に行うことができる。
【0013】
本発明において、前記閉断面部材を角筒状に形成し、前記フランジ部に対向してさらなるフランジ部を設けることが好ましい。そうすることで、少なくとも対向しあう一対のフランジ部にそれぞれ矩形断面部材を接合させることができる。
【0014】
また本発明によれば、鉄骨部材用接合構造は、
さらに、長尺部材を有し、
前記閉断面部材には、前記フランジ部に平行な面上に形成された受け部が設けられ、
前記長尺部材は、該受け部に接合され、
前記矩形断面部材の他の端部が前記長尺部材に接合されることで、前記矩形断面部材は、方杖材として、前記閉断面部材と前記長尺部材とに架設され、
前記無補強領域は、少なくとも前記フランジ部から前記受け部まで延在して形成される
ことが好ましい。
【0015】
本発明によれば、閉断面部材に長尺部材が接合される接合部の近傍に、矩形断面部材からなる方杖材が架設される。ここで、無補強領域が接合面まで延在して設けられているので、方杖材及び長尺部材は閉断面部材の無補強領域に接合され、かつ、これら3部材の周囲の形状をスムーズなもの、すなわち納まりを良好なものとすることができる。また、閉断面部材と方杖材とが上記式(1)を満たすため、閉断面部材は、方杖材からの荷重によって閉断面部材が降伏する以前の状態を維持することができる。これによって、閉断面部材と長尺部材の接合部について、方杖材による補強効果を充分に発揮させることができる。
【0016】
また、前記閉断面部材は、冷間ロール成形による角形鋼管であることが好ましい。かかる角形鋼管を閉断面部材として採用することにより、同程度の引張強さを有する、熱間成形鋼管、箱形断面鋼管、冷間プレス角形鋼管などより、降伏点が高くなるので、部材としての強度向上を図ることができる。
【0017】
前記矩形断面部材は、座屈防止部材を備えていることが好ましい。そうすることにより、矩形断面部材が圧縮力を受ける場合、弱軸まわりの面外変形が、座屈防止部材により規制される。その結果、矩形断面部材は引張力とともに圧縮力をも負担することができ、正負方向いずれの水平力に対しても抵抗することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る架構の補強構造によれば、接合部に取り付ける部材数の削減を図りつつ、最低限の閉断面部材の板厚さで当該接合部の強度の維持を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】非特許文献1に開示されている柱の梁接合部の補強裏板を示す正面図(左図)および平面断面図(右図)である。
【図2】本発明の実施形態に係る架構の平面的グリッド構成を示す平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る架構の全体構成を示す斜視図である。
【図4A】本発明の実施形態に係る架構を構成する柱と大梁の接合状態を示す正面図である。
【図4B】本発明の実施形態に係る架構を構成する柱と大梁の接合状態を示す平面図である。
【図4C】本発明の実施形態に係る架構を構成する柱と大梁の接合状態を示す側面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る架構を構成する柱と複数の大梁の接合状態を示す正面図である。
【図6A】本発明の実施形態に係る方杖材の構成を示す正面図である。
【図6B】本発明の実施形態に係る方杖材の座部を示す平面図である。
【図6C】本発明の実施形態に係る方杖材の小口面を示す左側面図である。
【図6D】本発明の実施形態に係る方杖材の座屈防止部材を示す、方杖材の長手方向に垂直な方向に、図6Aの左上から見た側面図である。
【図6E】本発明の実施形態に係る方杖材の座屈防止部材を示す、方杖材の長手方向に垂直な方向に、図6Aの右下から見た側面図である。
【図6F】本発明の実施形態に係る方杖材の、図6AのP−P線断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る方杖材を架設した状態の柱と大梁の接合部を示す正面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る方杖材を架設した状態の柱と大梁の接合部を示す側面図である。
【図9A】本発明の実施形態に係る柱と方杖材の接合部における塑性ヒンジ変形領域を示す側面図である。
【図9B】柱方杖材接合部の、図9AのQ−Q線断面図である。
【図9C】柱方杖材接合部の、図9AのR−R線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の最も好ましい実施形態について図を参照して具体的に説明する。本実施形態は、鉄骨造3階建ての架構を有する工業化住宅における補強構造の例である。図2は、架構の平面的グリッド構成を示す平面図である。図3は、架構の全体構成を示す斜視図である。図4は、架構を構成する柱と大梁の1つの接合部の状態を示す正面図(図4A)、平面図(図4B)および側面図(図4C)である。図5は架構を構成する1つの柱に複数の大梁が接合された状態を示す正面図である。図6は、本発明の実施形態に係る方杖材の構成を示す正面図(図6A)、方杖材の座部を示す平面図(図6B)、方杖材の小口面を示す、図6Aの左から見た側面図(図6C)、方杖材の座屈防止部材を示す、方杖材の長手方向に垂直な方向に、図6Aの左上から見た側面図(図6D)および図6Aの右下から見た側面図(図6E)、方杖材の、図6AのP−P線断面図(図6F)である。図7は、方杖材を取り付けた状態の柱と大梁の接合部を示す正面図である。図8は、方杖材を付加した状態の柱と大梁の接合部を示す側面図である。図9は、柱方杖材接合部における降伏メカニズムを示すための側面図(図9A)、図9AのQ−Q線断面図(図9B)および図9AのR−R線断面図(図9C)である。
【0021】
図2、図3に示すように、本発明の実施形態の一つである住宅用の架構Aは、妻方向が2スパン、桁方向が3スパンで合計6つの平面グリッドからなる3層の架構層からなる。図3に示すように、住宅用の架構Aは、1層から3層まで連続した、通し柱形式の複数の柱(閉断面部材)1と、各階層において隣接する柱1同士を連結する複数の大梁(長尺部材)2と、大梁2の直下に格子状に形成された鉄筋コンクリート造の基礎3とで構成されている。なお、柱脚部1aは特開平01−203522号公報に開示された露出型固定柱脚工法にて基礎3に接合されている。この架構を構築したのち、相対する大梁2の間に小梁を適宜架け渡した上で、ALC(軽量気泡コンクリート)からなる床パネルを梁の上フランジに載置して床が構成され、外周部の大梁2にALCからなる壁パネルを取り付けることによって、外壁が構成されて住宅の躯体が完成する。
【0022】
図5に示すように、本実施形態における柱1は、外形寸法が150mm角の角形鋼管からなる通し柱となっており、該通し柱は、各階に相当する高さを有する3本の柱1を軸方向に接続して形成されている。図4Aに示すように、1階の柱1は、12mmの肉厚を有する、横断面内に溶接による継目が存在しない角形鋼管からなる柱本体の一部に、大梁を受ける梁受け部1eを備えている。
【0023】
図4Bに示すように、柱1は、互いに対向して設けられる一対の平板状のフランジ部1hの2組を互いに直交させた状態に配し、隣り合うフランジ部間を凸円弧状の隅部1iにより連結してなる断面四角筒状を呈している。また、柱1は、冷間ロール成形の角形鋼管であるのが好ましい。これにより、熱間成形鋼管、箱形断面鋼管または冷間プレス角形鋼管で、同程度の引張強さを有するものよりも降伏点が高いので、部材としての性能向上が図られている。また、当該柱本体としては、継ぎ目のないシームレスパイプを採用することも可能である。これにより、いずれのフランジ部も平坦な面として形成されることとなり、当該フランジ部を平坦に均す作業を要することなく、矩形断面部材を取り付けることができる。
【0024】
梁が接合される箇所(梁接合部)は、柱本体よりも肉厚(例えば22mm)に形成される四角筒状を呈し、互いに対向する一対の平板部の2組を互いに直交させた状態で設けると共に、隣り合う平板部間を凸円弧状の角部により連結して形成されており、各平板部を柱本体のフランジ部に平行とした状態で該柱本体の端部に接合されている。
【0025】
また図4Aに示すように、梁接合部の各平板部には、大梁2のエンドプレート2dの孔2eに対応する孔1fが複数個連続して穿たれており、これによって各階の大梁2を受ける梁受け部(受け部)1eが形成されている。なお、各孔1fの内壁には、ネジが切られている。大梁2の孔2eと同様に、各梁受け部1eの上部2段と最下段の計6個の孔1fは、大梁2と接合するボルト4を螺入する孔であり、下から2段目の孔2個は、位置合わせ用の孔である。
【0026】
図4AないしCに示すように、本実施形態の大梁2は、一対のフランジ2a、2bをウェブ2cによって連結して形成されるH形鋼(形鋼)からなる。また、本実施形態の大梁は、梁せい(幅)が250mm、上下のフランジ2a、2bの幅が125mm、厚みが9mm、ウェブ2cの厚みが6mmに統一されている。
【0027】
大梁2の各端部には、柱1に接合されるエンドプレート2dが溶接により取り付けられている。該エンドプレート2dは、所定の厚さを有する厚板状に形成されており、該エンドプレートには、横方向に中心から左右対称に2列、縦方向に等間隔に4段、同一径の孔2eが計8箇所穿たれている。孔2eのうち上部2段と最下段の計6個の孔が、柱1との接合に使用するボルト4を挿通する為の孔である。なお、下から2段目の孔2個は、柱1に大梁2を取り付ける接合作業の際、「シノ」と称する棒状の挿嵌冶具を挿し込んで位置合わせを行うための孔である。当該シノを用いて柱部材1の梁受け部1eに大梁2のエンドプレート2dが重ね合わされ、これらの各孔をボルト締結することにより、柱梁接合部Bが形成される。
【0028】
当該柱梁接合部Bは、大梁2の端部のエンドプレート2dを、柱1の梁接合部1eの梁受け部に高力ボルト4を用いて締結し、剛接合として見做すことができる固定度を有して形成されている。また、当該柱梁接合部Bは、荷重作用時に被接合材である大梁2及び柱1が塑性域に達するまで破断しない、保有耐力接合として構成されている。
【0029】
詳述すると、柱と梁との接合部を剛接合により構成する場合、地震発生時に躯体に作用する地震エネルギーを、梁が塑性変形により吸収することが期待されている。大きな地震動を受けている間に亘って、梁の塑性化によるエネルギーを吸収するためには、当該梁を保持する柱との接合部である、梁両端の柱梁接合部が破断してはならない。このように、梁の塑性変形能を充分に発揮させるべく、梁の塑性変形を充分に生じさせるまで、柱梁接合部を破断させない接合状態を保有耐力接合という。
【0030】
また、大梁2の上下フランジ2a、2bには、各種部材をボルト固定する為の孔群2a1、2b1が、柱1に接合した状態で、柱心を中心にして上下対称に穿たれている。
【0031】
また、図7に示す如く、大梁2の下フランジ2bに設けられた複数の孔群2b1のうち、柱1の配置の基準となる基準線(通り芯)Z1から305mmの位置であって、当該柱1から見てもっとも手前に位置する孔群2b1に、方杖材(ダンパー)5がボルトにより接合される。そして、方杖材5のボルト接合に用いられた孔群2b1及びその周囲は、方杖材5と大梁2との連結部2kを形成する。本実施形態において、方杖材5は、柱1と大梁2とが接合した状態で、方杖材5の中心線Y1と大梁の長手方向の中心線X1とのなす角度θが70度となるように構成されている。
【0032】
また、当該大梁2には、両端部間の長さ方向の全体にわたり、無補強領域(すなわち補強材が設けられていない領域)が形成することができ、当該連結部2kを、図7に斜線で示す領域に、当該無補強領域2pに設けてもよい。図7に示す実施形態の場合、無補強領域2pは、柱梁接合部Bを形成する大梁2の一方の梁端部から、上下フランジ2a、2bの当該梁端部に最も近い孔群2a1、2b1まで形成されており、当該下フランジ2bの孔群2b1及びその周囲を連結部2kとすることで、無補強領域2pに連結部2kが設けられている。
【0033】
なお、本実施形態において、図7に示すように、下フランジ2bの連結部2kと当該連結部2kに対向する上フランジ2aとの間の領域を含む領域を無補強領域2pとしているが、大梁2の一方の端部から他方の端部に亘って、スパン方向に長大な無補強領域2pとしても構わない。
【0034】
図6Aに示す方杖材5は、降伏点の低い鋼からなる芯部材5aと、該芯部材5aに圧縮力を作用させた際の座屈を防止するための座屈防止部材5bとからなる。
【0035】
芯部材5aは、矩形断面を有する扁平で長尺な棒板状の矩形断面部材5a1と、該矩形断面部材5a1の一端に溶接された平板状の座部5a2とを備えている。
【0036】
図6Fに示すように、座屈防止部材5bは、一般構造用圧延鋼材からなる一対の平板5b1の間に一対の側板5b2を挟みこんだ断面ロ字形状をしている。座屈防止部材5bの内部に芯部材5aに配置するために、これら一対の平板5b1を、芯部材5aの弱軸まわりの面である、幅方向に平行な面に配置し、ボルト5b3により締結する。したがって、方杖材5の長手方向断面をみると、当該座屈防止部材5bの中央の断面ロ字形状の空隙部分に芯部材5aの矩形断面部材5a1が配されている。座屈防止部材5bの一対の平板5b1の間隔は、芯部材5aの厚さよりも僅かに大きいものとされると共に、一対の側板5b2の間隔は芯部材5aの幅より僅かに大きく形成されている。以上の構成により、座屈防止部材5bによって、芯部材5aの弱軸まわりの面の外曲げが規制され、よって、芯部材5aの座屈が規制される。この結果、方杖材5は引張力とともに圧縮力をも負担することができ、正負いずれの水平力に対しても抵抗することができる。
【0037】
図7に示すように、方杖材(ダンパー)5は、方杖型であり、一方の端部Mに設けられた座部5a2を、大梁2の下フランジ2bにボルト接合し、他端部Nに形成した平坦な小口面5a3を、柱部材の柱本体のフランジ部に溶接接合することによって、大梁2と柱1に亘って架設されている。また、このように方杖材5の他端部Nが、柱のフランジ部1hに溶接接合されることで、柱のフランジ部1hと方杖材5の他端部Nにより柱方杖材接合部Dが形成される。
【0038】
また図8に示すように、方杖材5の他端部Nは、柱本体のフランジ部の幅方向中央の位置で、当該フランジ部に接合されている。これによって、該柱方杖材接合部Dは、柱部材のフランジ部の幅方向中央に設けられている。
【0039】
ここで、柱1のフランジ部1hの板厚と降伏点の積と、矩形断面部材5a1の板厚と引張強さの積とは、式(1)の関係を満たした状態で、柱1のフランジ部1hと矩形断面部材5a1とが接合されている。
【0040】
図9は、柱方杖材接合部における降伏領域を示すための側面図(図9A)、図9AのQ−Q線断面図(図9B)および図9AのR−R線断面図(図9C)である。また、矩形断面部材である方杖材5が溶接接合されるフランジ部1hには、方杖材5から伝達される荷重に伴って形成される降伏領域が存在する(図9)。図9Aは、方杖材5が溶接されているフランジ部の正面図であり、図9Bは、該フランジ部の、図9AのQ−Q線断面図であり、図9Cは、該フランジ部の、図9AのR−R線断面図であり、方杖材5からフランジ部の平坦面に垂直に引張力Pが加わり、当該垂直方向にたわみδの塑性変形が生じた状態を示している。以下では、引張力が作用する場合について説明するが、圧縮力が作用した場合も同様に考えることができる。
【0041】
本実施形態において、該降伏領域は、図9Aに示す如く、当該方杖材5の接合箇所BBB’B’を包囲してフランジ部1hに展開する四角形状の領域AAA’A’に該当する。具体的には、方杖材5は、フランジ部1hの幅方向中心となる位置に設けられて、方杖材5の他端部Nの小口面5a3と同一の形状を有する四角形状の領域BBB’B’で接合されている。そして、当該領域BBB’B’の各辺BB’からaだけフランジ部の幅方向外側に設けられる一対の直線AA’、AA’と、各辺BBからフランジ部の軸方向外側にxだけ離間した位置に設けられる一対の直線AA、A’A’によって形成される領域AAA’A’が、降伏領域となる。
【0042】
図9Bに示す、柱1の一点鎖線で示されたフランジ部1hの外側の隅部1iは、冷間の折り曲げ加工によって湾曲形成されているために、平板部に比べて著しく降伏点が高い。このため、降伏領域を規定するとき、図9Aに示す辺AA’は、図9Bにおいて一点鎖線で示された、当該フランジ部の最外縁に一致し、当該辺AA’よりも外側が隅部1iとなる。また、辺BBから辺AAまでの距離である変数xは(図9C)、後述の降伏機構の検討により一の解に定まる。
【0043】
また、柱における矩形断面部材との接合部位は、当該フランジ部を補強する補強材を設けない、無補強領域として形成されている。さらに、矩形断面部材との接合部位の高さにおける柱の内周面及び外周面が、補強材の設置を許容しない無補強領域として設定されている。
【0044】
またさらに、本実施形態においては、図7に示すように、無補強領域1pは、矩形断面部材である方杖材5との接合部位から、さらに梁接合部まで設けられている。従来、梁と方杖材とが近くに接合される柱の箇所は、ボルト、溶接フランジ、補強材などが設けられて、凹凸が形成されると、柱の軸方向中央部に比べて、著しく柱表面のスムーズさが低下し、いわゆる、納まりが悪くなりえる。しかし、本発明の実施形態において、当該箇所を無補強領域に設定することで、柱表面のスムーズな形状を維持し、すなわち納まりよく、容易に他の部材を配することができる。また、内周面も無補強領域とすることで、当該内周面にスチフナ等、板厚を増やすための板材等を取り付ける必要なく、施工性も向上する。
【0045】
本実施形態の構成によれば、大梁2に設定された無補強領域2pに、方杖材5との連結部2kが形成されているので、方杖材5と大梁2とのボルト接続を、補強部材等に邪魔されることなく、きわめて容易に行うことが可能となる。また、大梁2の連結部2kが無補強領域2pに形成されているため、当該大梁2と方杖材5との連結部2k周りに、大梁2の他の領域と同様に断熱材を敷設することが可能となる。図示はしないが、ウェブ2cの当該接続部2kと対応する位置に、梁貫通孔を形成することが可能となり、配管等の設備設計の自由度が向上する。
【0046】
一方、仮に上記式(1)を満たさない状態で、柱フランジの潜在降伏領域周りにスチフナ等の補強材も設けない構成とすると、柱のフランジ部が矩形断面部材よりも先に降伏に至り、フランジ部が塑性化してしまう。そうすると、柱1のフランジ部1hと方杖材5との接合部で塑性変形が増大し、方杖材5が負担できる力が制限され、外力の増大に伴って方杖材が有効に機能しなくなる。本実施形態において、方杖材5は、架構Aに対し対角線状に、軸力に対して抵抗する、いわゆるブレースとして組み入れられている。しかし、上記のフランジ部1hと方杖材5との接合部が塑性化することにより、水平方向の力により架構が変形することを防ぐ機能、すなわちブレースとしての方杖材5の機能が効かなくなる。その結果、柱梁接合部Bの層間変形角(=水平変位/階高)が大きくなり、架構全体に加え外壁や内装などの損傷が拡大してしまう場合がある。
【0047】
これに対し、上記実施形態では、上記式(1)を満たすことにより、地震時であっても柱のフランジ部1cが方杖材5よりも先に降伏しない。その結果、方杖材5が最大引張耐力または最大圧縮耐力に至るまで、当該方杖材5のブレースとして有効に機能する。また、上記柱部材の降伏領域には、方杖材5が最大引張耐力または最大圧縮耐力に至る前に塑性化が生じないので、柱部材には残留変形が生じない。したがって、例えば地震等が発生して当該架構Aに過大な水平力が加わり、方杖材5の破壊が生じた場合であっても、柱部材自体の損傷は免れることができる。その結果、上記地震後に方杖材5のみを交換し、柱部材をそのまま使用することで、柱梁接合部Bの状態を地震前の初期状態に復帰させることが可能となる。
【0048】
ここで、本実施形態において、閉断面部材のフランジ部の板厚と降伏点の積と、該フランジ部に接合される矩形断面部材の板厚と引張強さの積とが、上記式(1)の関係を満足することにより、矩形断面部材が引張強さに至る前に、フランジ部が降伏することがないことを、降伏線理論に基づいて、以下検証する。
【0049】
(実施例)
図9Cにおいて、柱1は、150mm角で厚さ(tc)を12mmとする角形鋼管である。また、図9Aにおいて、矩形断面部材は、厚さ(tw)6mm、幅80mmの鋼板であって、当該鋼板の端部Nを柱部材のフランジ部の幅方向中央部に溶接接合する。また、柱部材の鋼種はSTKR400であると共に矩形断面部材の鋼種はSS400であり、ゆえに、降伏点(σyf)は235MPa、引張強さ(σur)は400MPaである。
したがって、
tc×σyf=12mm×235MPa=2820N/mm
tw×σur=6mm×400MPa=2400N/mm 式(2)
であるから、上記式(1)tc×σyf≧tw×σurの関係を満たす。したがって、矩形断面部材が引張強さに至ってもフランジ部が降伏しないことなり、これによって、当該方杖材の引張力および圧縮力に対する性能を充分に発揮させることができる。
【0050】
ここで、当該降伏線理論による塑性解析により、上記式(1)を満たす部材を採用することにより、フランジ部が矩形断面部材の破壊よりも先に降伏することを免れることを検証する。
【0051】
矩形断面部材に導入される引張力jPpにより、柱部材のフランジ部には、図9Cに示す降伏線が形成され、当該降伏線に基づいてδだけたわみが生じるものと仮定する。なお、柱の板厚をtcとし、矩形断面部材の厚さをtw、長さをtfとし、さらに、柱の方杖材受け部(フランジ部)の幅を2a+twとする。また、フランジ部の降伏ラインは図9AのAAA’A’の如く形成されると仮定する。
【0052】
上記前提にもとづき、該フランジ部の内力仕事E1を導出すると、以下の通りとなる。
【数1】
式(3)
なお、当該フランジ部の単位長さあたりの全塑性モーメントcM0は以下の通りとなる。
【数2】
式(4)
【0053】
ここで、当該フランジ部の内力仕事E1と該方杖材による外力仕事jPpδを等値とすると、次式が得られる。
【数3】
式(5)
これにより、当該フランジ部の降伏耐力は次式となる。
【数4】
式(6)
ところで、未知数xは、上界定理、すなわち、すべての可能な降伏機構のうち、外力による仕事に対して最小の降伏荷重を与える機構が真の降伏機構であるとする定理に基づいて、以下の解として得られる。
【数5】
式(7)
したがって、変数xはaにより一義的に以下のように表される。
【数6】
式(8)
または、
【数7】
式(9)
【0054】
次に、当該フランジ部の降伏荷重を計算する。本実施例における以下の各数値
tc=12mm
tw=6mm
a=36mm
cσy=235N/m2
を、式(6)および式(9)に代入することにより、当該フランジ部の降伏荷重は、以下の通り計算される。
jPp=216kN 式(10)
一方、矩形断面部材の最大引張耐力は、以下の式より定まる。
tf×tw×部材の引張強さ=192kN 式(11)
【0055】
以上、降伏線理論による解析の結果、フランジ部の降伏荷重は216kNであるのに対し、矩形断面部材の最大引張耐力は192kNである。これは、フランジ部が矩形断面部材の破壊よりも先に降伏しないことを示している。
【0056】
すなわち、上記式(1)を満足すれば、フランジ部の降伏荷重は矩形断面部材の最大引張耐力を上回ることとなり、これにより、矩形断面部材の耐力が余すところ無くすべて発揮される。
【0057】
(比較例)
上記実施例に対する比較例を以下に示す。
柱は、150mm角で厚さ(tc)を9mmとする角形鋼管である。また、矩形断面部材は、厚さ(tw)6mm、長さ80mmの鋼板であって、当該鋼板の端部を柱部材のフランジ部の幅方向中央部に溶接接合する。また、柱部材の鋼種はSTKR400であると共に矩形断面部材の鋼種はSS400であり、ゆえに、降伏点は235MPa、引張強さは400MPaである。
したがって、
tc×σyf = 9mm×235MPa=2115N/mm
tw×σur = 6mm×400MPa=2400N/mm 式(12)
であるので、
tc×σyf <tw×σur 式(13)
となり、上記式(1)の関係を満たしていない。
【0058】
次に、本比較例において、閉断面部材のフランジ部の板厚と降伏点の積と、該フランジ部に接合される矩形断面部材の板厚と引張強さの積とが、上記式(1)の関係を満たさない場合、矩形断面部材が引張強さに至る前に、フランジ部が降伏することがないか否かを、降伏線理論に基づいて検証する。
【0059】
まず、降伏線理論を採用して当該方杖材受け部の降伏耐力を算出する。本比較例における以下の各数値
tc=9mm
tw=6mm
a=45mm
cσy=235N/m2
を、式(6)および式(9)に代入することにより、当該フランジ部の降伏耐力は、以下の通り計算される。
jPp=113kN 式(14)
【0060】
また、矩形断面部材の最大引張耐力は、上記実施例の式(11)より定まる。
tf×tw×部材の引張強さ=192kN 式(11)
【0061】
当該比較例においては、降伏線理論に基づいて得られた式(14)と式(11)より、矩形断面部材が引張強さに至る前によりも先に、フランジ部が降伏することになる。
【0062】
以上の検証は、閉断面部材のフランジ部の板厚と降伏点の積と、該フランジ部に接合される矩形断面部材の板厚と引張強さの積とが、上記式(1)の関係を満たさない場合、フランジ部の降伏耐力は矩形断面部材の最大引張耐力を下回り、矩形断面部材の耐力がすべて発揮される前にフランジ部が降伏することを示している。
【0063】
本発明を上記実施形態に基づいて説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0064】
例えば、方杖(ダンパー)が大梁となす角度θを70度としたが、この角度は70度に限定されるものではなく、例えば20度、30度や45度としてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、閉断面部材として柱を例示し、矩形断面部材として方杖材(ダンパー)を採用した構成を示しているが、これに限らない。例えば、本発明に係る矩形断面材を方杖材とせず、梁とし、当該閉断面部材を柱とした場合でも、上記実施形態と同様の効果を奏する。また、これは柱を矩形断面部材とし、梁を閉断面部材とした場合でも、上記実施形態と同様の効果を発揮する。さらに、閉断面部材と長尺材を梁として、矩形断面部材を火打ち材としても良い。
【0066】
また、閉断面部材として、正方形断面、長方形断面部材はもちろん、三角形、五角形、六角形等の多角形断面部材であっても、本発明と同様の効果を奏する。また、円筒状の柱の一部に、平板状のフランジ部を設ける構成であっても、本実施形態と同様の効果を奏する。
【0067】
また、本発明においては、鉄骨構造という用語を一般的な意味で用いている。閉断面部材や矩形断面部材の材質としては、鋼材のみでなく、アルミニウム等の建築構造材料でも良い。
【0068】
さらに、本発明は、梁と柱を共に形鋼とする構成や、柱のみを形鋼とする構成にも採用することができる。また、純鉄骨造以外に鋼管柱にセメントミルクを充填したCFT造や鉄骨鉄筋コンクリート造にも採用可能である。
【0069】
さらにまた、上記実施形態においては、住宅用建物の架構における構成で本発明を説明したが、これに限定されるものではない。本発明は、例えば高層建築物、橋、電波塔、ダムその他の土木、建築に係る種々の構造物の接合構造にも採用することができる。
【符号の説明】
【0070】
A 架構
B 柱梁接合部
1 柱
1a 柱脚部
1e 梁受け部
1f 孔
1h フランジ部
1i 隅部
2 大梁(梁)
2a 上フランジ
2a1 孔群
2b 下フランジ
2b1 孔群
2c ウェブ
2d エンドプレート
2e 孔
2k 連結部
2p 無補強領域
3 基礎
4 ボルト
5 方杖材
5a 矩形断面部材
5a1 矩形断面部材
5a2 座部
5a3 小口面
5b 座屈防止部材
5b1 平板
5b2 側板
5b3 ボルト
M 方杖材の一方の端部
N 方杖材の他端部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦なフランジ部を有する筒状の閉断面部材と、
該フランジ部に接合される矩形断面部材との鉄骨部材用接合構造であって、
該矩形断面部材の幅方向を前記閉断面部材の軸心に平行とした状態で、前記矩形断面部材の一の端部を前記フランジ部に溶接接合することで前記閉断面部材と前記矩形断面部材との間で応力の伝達がなされ、
前記矩形断面部材は、前記閉断面部材と以下の式(1)の関係を満たした状態で、前記フランジ部に溶接接合され、
前記フランジ部は、補強する補強材が設けられていない無補強領域として形成される
ことを特徴とする鉄骨部材用接合構造。
tc×σyf≧tw×σur ・・・式(1)
ただし、tc:閉断面部材のフランジ部の板厚
σyf:閉断面部材のフランジ部の降伏点
tw:矩形断面部材の板厚
σur:矩形断面部材の引張強さ
【請求項2】
前記閉断面部材は、前記フランジ部に対向して設けられるフランジ部をさらに有する角筒状に形成されることを特徴とする請求項1に記載の鉄骨部材用接合構造。
【請求項3】
さらに、長尺部材を有し、
前記閉断面部材には、前記フランジ部に平行な面上に形成された受け部が設けられ、
前記長尺部材は、該受け部に接合され、
前記矩形断面部材の他の端部が前記長尺部材に接合されることで、前記矩形断面部材は、方杖材として、前記閉断面部材と前記長尺部材とに架設され、
前記無補強領域は、少なくとも前記フランジ部から前記受け部まで延在して形成される
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鉄骨部材用接合構造。
【請求項4】
前記閉断面部材は、冷間ロール成形による角形鋼管であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の鉄骨部材用接合構造。
【請求項5】
前記閉断面部材の断面形状は、三角形、五角形、六角形、または円筒状であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の鉄骨部材用接合構造。
【請求項6】
前記矩形断面部材は、少なくとも弱軸まわりの面に座屈防止部材を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の鉄骨部材用接合構造。
【請求項1】
平坦なフランジ部を有する筒状の閉断面部材と、
該フランジ部に接合される矩形断面部材との鉄骨部材用接合構造であって、
該矩形断面部材の幅方向を前記閉断面部材の軸心に平行とした状態で、前記矩形断面部材の一の端部を前記フランジ部に溶接接合することで前記閉断面部材と前記矩形断面部材との間で応力の伝達がなされ、
前記矩形断面部材は、前記閉断面部材と以下の式(1)の関係を満たした状態で、前記フランジ部に溶接接合され、
前記フランジ部は、補強する補強材が設けられていない無補強領域として形成される
ことを特徴とする鉄骨部材用接合構造。
tc×σyf≧tw×σur ・・・式(1)
ただし、tc:閉断面部材のフランジ部の板厚
σyf:閉断面部材のフランジ部の降伏点
tw:矩形断面部材の板厚
σur:矩形断面部材の引張強さ
【請求項2】
前記閉断面部材は、前記フランジ部に対向して設けられるフランジ部をさらに有する角筒状に形成されることを特徴とする請求項1に記載の鉄骨部材用接合構造。
【請求項3】
さらに、長尺部材を有し、
前記閉断面部材には、前記フランジ部に平行な面上に形成された受け部が設けられ、
前記長尺部材は、該受け部に接合され、
前記矩形断面部材の他の端部が前記長尺部材に接合されることで、前記矩形断面部材は、方杖材として、前記閉断面部材と前記長尺部材とに架設され、
前記無補強領域は、少なくとも前記フランジ部から前記受け部まで延在して形成される
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鉄骨部材用接合構造。
【請求項4】
前記閉断面部材は、冷間ロール成形による角形鋼管であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の鉄骨部材用接合構造。
【請求項5】
前記閉断面部材の断面形状は、三角形、五角形、六角形、または円筒状であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の鉄骨部材用接合構造。
【請求項6】
前記矩形断面部材は、少なくとも弱軸まわりの面に座屈防止部材を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の鉄骨部材用接合構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【公開番号】特開2012−188908(P2012−188908A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55780(P2011−55780)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【Fターム(参考)】
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