説明

架橋グリコペプチドセファロスポリン抗生物質

【課題】本発明は、抗生物質として有用な、架橋されたグリコペプチドセファロスポリン化合物およびその薬学的に受容可能な塩を提供する。
【解決手段】本発明はまた、このような化合物を含有する薬学的組成物;このような化合物を使用する哺乳動物における細菌感染を処置するための方法;ならびにこのような化合物を調製するために有用なプロセスおよび中間体を提供する。この方法としては、さらに、細菌の増殖を阻害する方法および細菌の細胞壁生合成を阻害する方法が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、抗生物質として有用である新規の架橋バンコマイシン−セファロスポリン化合物に関する。本発明はまた、このような化合物を含有する薬学的組成物;このような化合物を抗菌剤として使用する方法;ならびに、このような化合物を調製するためのプロセスおよび中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
(当該分野の状態)
種々のクラスの抗生物質化合物が、当該分野で公知であり、これらの化合物としては、例えば、β−ラクタム抗生物質(例えば、セファロスポリン)、およびグリコペプチド抗生物質(例えば、バンコマイシン)が挙げられる。架橋抗生物質化合物もまた、当該分野で公知である。例えば、W.L.Truettに対して発行された、米国特許第5,693,791号(表題「Antibiotics and Process for Preparation」)およびWO 99/64049 A1(1999年12月16日公開)(表題「Novel Antibacterial Agents」)を参照のこと。
【0003】
このような化合物にかかわらず、改良された特性(例として、グラム陽性細菌に対する増強された効力が挙げられる)を有する新規抗生物質に対する必要性が、存在している。特に、抗生物質耐性の細菌株(例えば、メチシリン耐性Staphylococci aureus(MRSA)およびメチシリン耐性Staphylococci epidermitis(MRSE))に対して非常に有効な新規抗生物質に対する必要性が、存在している。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
本発明は、抗生物質として有用な新規の架橋グリコペプチド−セファロスポリン化合物を提供する。数ある特性の中で、本発明の化合物は、グラム陽性細菌(メチシリン耐性Staphylococci aureus(MRSA)およびメチシリン耐性Staphylococci epidermitis(MRSE)を含む)に対して、驚くべきかつ予測不可能な効力を有することが見出されている。本発明は以下を提供する。
(1)
式I:
【化1】


の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、ここで、
およびXは、水素およびクロロからなる群から独立して選択され;
は、−Y−(W)−Y−であり;
Wは、−O−、−N(R)−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、C3−6シクロアルキレン、C6−10アリーレンおよびC2−9ヘテロアリーレンからなる群から選択され;ここで、各アリーレン基、シクロアルキレン基およびヘテロアリーレン基は、必要に応じて、Rから独立して選択される1〜3個の置換基で置換され;
およびYは、独立してC1−5アルキレンであるか、またはWがシクロアルキレン、アリーレンもしくはヘテロアリーレンである場合、YおよびYは、共有結合およびC1−5アルキレンからなる群から独立して選択され;ここで、各アルキレン基は、必要に応じて、−OR、−NR、−CO、−C(O)NRおよび−S(O)NRから独立して選択される1〜3個の置換基で置換され;
は、水素またはC1−6アルキルであり;
各Rは、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキル、C6−10アリール、C2−9へテロアリール、C3−6複素環式およびRからなる群から独立して選択されるか;または2つの隣接したR基は、結合され、C3−6アルキレンまたは−O−(C1−6アルキレン)−O−を形成し;ここで各アルキル基、アルキレン基、アルケニル基およびアルキニル基は、必要に応じて、RおよびRからなる群から独立して選択された1〜3個の置換基で置換され;そして各アリール基、シクロアルキル基、ヘテロアリール基および複素環式基は、Rからなる群から独立して選択された1〜3個の置換基で置換され;
およびRの1つは、ヒドロキシであり、そしてもう1つは水素であり;
およびRは、独立して水素またはメチルであり;
は、水素または式(i):
【化2】


の基であり;
各Rは、−OR、ハロ、−SR、−S(O)R、−S(O)、−S(O)OR、−S(O)NR、−NR、−CO、−OC(O)R、−C(O)NR、−NRC(O)R、−OC(O)NR、−NRC(O)OR、−NRC(O)NR、−CFおよび−OCFからなる群から独立して選択され;
各Rは、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニルおよびRからなる群から独立して選択され;
各Rは、C3−6シクロアルキル、C6−10アリール、C2−9ヘテロアリールおよびC3−6複素環式からなる群から独立して選択され;ここで各シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基および複素環式基は、必要に応じて、C1−6アルキルおよびRからなる群から独立して選択される1〜3個の置換基で置換され;
各RおよびRは、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキル、C6−10アリール、C2−9へテロアリールおよびC3−6複素環式からなる群から独立して選択されるか;または、RおよびRは、結合され、これらが結合される原子と一緒になって、酸素、窒素または硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有するC3−6の複素環式環を形成し;ここで、各アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基は、必要に応じて、RおよびRからなる群から独立して選択される1〜3個の置換基で置換され;そして各アリール、シクロアルキル、ヘテロアリールおよび複素環式基は、必要に応じて、C1−6アルキルおよびRからなる群から独立して選択される1〜3個の置換基で置換され;
各Rは、−OH、−OC1−6アルキル、−SC1−6アルキル、−F、−Cl、−NH、−NH(C1−6アルキル)、−N(C1−6アルキル)、−OC(O)C1−6アルキル、−C(O)OC1−6アルキル、−NHC(O)C1−6アルキル、−C(O)OH、−C(O)NH、−C(O)NHC1−6アルキル、−C(O)N(C1−6アルキル)、−CFおよび−OCFからなる群から独立して選択され;
mは、0、1、2または3であり;そして
nは、0または1である、化合物またはその薬学的に受容可能な塩。
(2)
項1に記載の化合物であって、ここで、nは0であり、YおよびYは、C1−5アルキレン基から独立して選択され;ここで、各アルキレン基は、必要に応じて、−OR、−NR、−CO、−C(O)NRおよび−S(O)NRから独立して選択される1〜3個の置換基で置換される、化合物。
(3)
項1に記載の化合物であって、ここで、nは0であり、YおよびYは、一緒に結合して、−(CH2−8−基を形成する、化合物。
(4)
項3に記載の化合物であって、ここで、nは0であり、YおよびYは、一緒に結合して、−(CH−基、−(CH−基、−(CH−基、−(CH−基または−(CH−基を形成する、化合物。
(5)
項4に記載の化合物であって、ここで、nは0であり、YおよびYは、一緒に結合して、−(CH−基を形成する、化合物。
(6)
項1に記載の化合物であって、ここで、nは1であり、YおよびYは、同じまたは異なり、各々は、共有結合およびC1−5アルキレン基からなる群から選択され;このC1−5アルキレンは、必要に応じて、−OR、−NR、−CO、−C(O)NRおよび−S(O)NRから選択される1〜3個の置換基で置換される、化合物。
(7)
Wは、C6−10アリーレンまたは−O−である、項6に記載の化合物。
(8)
項1に記載の化合物であって、ここで、nは1であり、YおよびYは、両方−CH−であり、Wは、Rから独立して選択された1〜3個の置換基で必要に応じて置換されたC6−10アリーレンである、化合物。
(9)
Wは、フェニレンである、項8に記載の化合物。
(10)
nは1であり、YおよびYは、両方−CHCH−であり、Wは、−O−である、項1に記載の化合物。
(11)
は、水素である、項1〜10のいずれか1項に記載の化合物。
(12)
mは、0である、項1〜11のいずれか1項に記載の化合物。
(13)
項1〜11のいずれか1項に記載の化合物であって、ここで、mは、1または2であり、各Rは、C1−6アルキル、C3−6シクロアルキル、−OR、−SR、−Fまたは−Clからなる群から独立して選択されるか;または2つの隣接するR基は、結合してC3−6アルキレンを形成する、化合物。
(14)
は、ヒドロキシであり;Rは、水素であり;Rは、水素であり;Rは、メチルであり;Rは、水素であり;そしてXおよびXは、両方クロロである、項1〜13のいずれか1項に記載の化合物。
(15)
項1に記載の化合物であって、ここで、Rは、−Y−(W)−Y−であって、ここでnは、0であり、YおよびYは、一緒になって−(CH−基を形成し;Rは、水素であり;Rは、ヒドロキシであり;Rは、水素であり;Rは、水素であり;Rは、メチルであり;Rは、水素であり;XおよびXは、両方クロロであり;そしてmは0である、化合物。
(16)
項1に記載の化合物であって、ここでRは、水素であり;Rは、水素であり;Rは、水素であり;Rは、メチルであり;Rは、水素であり;XおよびXは、両方クロロであり;そしてR、R、R、およびmは、表Iに定義される通りである、化合物。
(17)
式II:
【化3】


の化合物またはその塩であって、ここで、
およびPは、独立して水素またはアミノ保護基であり;
は、水素またはカルボキシ保護基であり;
Qは、脱離基または式:
【化4】


の基であって、ここで、
は、−Y−(W)−Y−であり;
Wは、−O−、−N(R)−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、C3−6シクロアルキレン、C6−10アリーレンおよびC2−9ヘテロアリーレンであり;ここで、各アリーレン基、シクロアルキレン基およびヘテロアリーレン基は、必要に応じて、Rから独立して選択される1〜3個の置換基で置換され;
およびYは、独立してC1−5アルキレンであるか、またはWがシクロアルキレン、アリーレンもしくはヘテロアリーレンである場合、YおよびYは、共有結合およびC1−5アルキレンからなる群から独立して選択され;ここで、各アルキレン基は、必要に応じて、−OR、−NR、−CO、−C(O)NRおよび−S(O)NRから独立して選択される1〜3個の置換基で置換され;
は、水素またはC1−6アルキルであり;
各Rは、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキル、C6−10アリール、C2−9へテロアリール、C3−6複素環式およびRからなる群から独立して選択されるか;または2つの隣接したR基は、結合され、C3−6アルキレンまたは−O−(C1−6アルキレン)−O−を形成し;ここで各アルキル基、アルキレン基、アルケニル基およびアルキニル基は、必要に応じて、RおよびRからなる群から独立して選択された1〜3個の置換基で置換され;そして各アリール基、シクロアルキル基、ヘテロアリール基および複素環式基は、Rからなる群から独立して選択された1〜3個の置換基で置換され;
各Rは、−OR、ハロ、−SR、−S(O)R、−S(O)、−S(O)OR、−S(O)NR、−NR、−CO、−OC(O)R、−C(O)NR、−NRC(O)R、−OC(O)NR、−NRC(O)OR、−NRC(O)NR、−CFおよび−OCFからなる群から独立して選択され;
各Rは、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニルおよびRから
なる群から独立して選択され;
各Rは、C3−6シクロアルキル、C6−10アリール、C2−9ヘテロアリールおよびC3−6複素環式からなる群から独立して選択され;ここで各シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基および複素環式基は、必要に応じて、C1−6アルキルおよびRからなる群から独立して選択される1〜3個の置換基で置換され;
各RおよびRは、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキル、C6−10アリール、C2−9へテロアリールおよびC3−6複素環式からなる群から独立して選択されるか;または、RおよびRは、結合され、これらが結合される原子と一緒になって、酸素、窒素または硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有するC3−6の複素環式環を形成し;ここで、各アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基は、必要に応じて、RおよびRからなる群から独立して選択される1〜3個の置換基で置換され;そして各アリール、シクロアルキル、ヘテロアリールおよび複素環式基は、必要に応じて、C1−6アルキルおよびRからなる群から独立して選択される1〜3個の置換基で置換され;
各Rは、−OH、−OC1−6アルキル、−SC1−6アルキル、−F、−Cl、−NH、−NH(C1−6アルキル)、−N(C1−6アルキル)、−OC(O)C1−6アルキル、−C(O)OC1−6アルキル、−NHC(O)C1−6アルキル、−C(O)OH、−C(O)NH、−C(O)NHC1−6アルキル、−C(O)N(C1−6アルキル)、−CFおよび−OCFからなる群から独立して選択され;
は、必要に応じて、存在するアニオンであり;
mは、0、1、2または3であり;そして
nは、0または1である、化合物またはその塩。
(18)
式III:
【化5】


の化合物またはその塩であって、ここで、
およびPは、独立して水素またはアミノ保護基であり;
は、水素またはカルボキシ保護基であり;
は、−Y−(W)−Y−であり;
Wは、−O−、−N(R)−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、C3−6シクロアルキレン、C6−10アリーレンおよびC2−9ヘテロアリーレンであり;ここで、各アリーレン基、シクロアルキレン基およびヘテロアリーレン基は、必要に応じて、Rから独立して選択される1〜3個の置換基で置換され;
およびYは、独立してC1−5アルキレンであるか、またはWがシクロアルキレン、アリーレンもしくはヘテロアリーレンである場合、YおよびYは、共有結合およびC1−5アルキレンからなる群から独立して選択され;ここで、各アルキレン基は、必要に応じて、−OR、−NR、−CO、−C(O)NRおよび−S(O)NRから独立して選択される1〜3個の置換基で置換され;
は、水素またはC1−6アルキルであり;
各Rは、−OR、ハロ、−SR、−S(O)R、−S(O)、−S(O)
OR、−S(O)NR、−NR、−CO、−OC(O)R、−C(O)NR、−NRC(O)R、−OC(O)NR、−NRC(O)OR、−NRC(O)NR、−CFおよび−OCFからなる群から独立して選択され;
各Rは、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニルおよびRからなる群から独立して選択され;
各Rは、C3−6シクロアルキル、C6−10アリール、C2−9ヘテロアリールおよびC3−6複素環式からなる群から独立して選択され;ここで各シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基および複素環式基は、必要に応じて、C1−6アルキルおよびRからなる群から独立して選択される1〜3個の置換基で置換され;
各RおよびRは、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキル、C6−10アリール、C2−9へテロアリールおよびC3−6複素環式からなる群から独立して選択されるか;または、RおよびRは、結合され、これらが結合される原子と一緒になって、酸素、窒素または硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有するC3−6の複素環式環を形成し;ここで、各アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基は、必要に応じて、RおよびRからなる群から独立して選択される1〜3個の置換基で置換され;そして各アリール、シクロアルキル、ヘテロアリールおよび複素環式基は、必要に応じて、C1−6アルキルおよびRからなる群から独立して選択される1〜3個の置換基で置換され;
各Rは、−OH、−OC1−6アルキル、−SC1−6アルキル、−F、−Cl、−NH、−NH(C1−6アルキル)、−N(C1−6アルキル)、−OC(O)C1−6アルキル、−C(O)OC1−6アルキル、−NHC(O)C1−6アルキル、−C(O)OH、−C(O)NH、−C(O)NHC1−6アルキル、−C(O)N(C1−6アルキル)、−CFおよび−OCFからなる群から独立して選択され;そして
nは、0または1である、化合物またはその塩。
(19)
薬学的に受容可能なキャリアおよび治療有効量の項1〜16のいずれか1項に記載の化合物を含有する、薬学的組成物。
(20)
哺乳動物において細菌感染を処置するための方法であって、該方法は、薬学的に受容可能なキャリアおよび治療有効量の項1〜16のいずれか1項に記載の化合物を含有する薬学的組成物を、哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
(21)
細菌の増殖を阻害する方法であって、該方法は、細菌を、増殖阻害量の項1〜16のいずれか1項に記載の化合物と接触させる工程を包含する、方法。
(22)
細菌の細胞壁生合成を阻害する方法であって、該方法は、細菌を、細胞壁生合成阻害量の項1〜16のいずれか1項に記載の化合物と接触させる工程を包含する、方法。
(23)
項1〜16のいずれか1項に記載の化合物を調製するためのプロセスであって、該プロセスは、式1:
【化6】


のグリコペプチドまたはその塩を、式2:
【化7】


の化合物またはその塩と反応させ、式Iの化合物またはその塩を提供する工程を包含する、プロセス。
(24)
項1〜16のいずれか1項に記載の化合物を調製するためのプロセスであって、該プロセスは、式10:
【化8】


の化合物またはその塩を、式11:
【化9】


の化合物またはその塩と反応させ、式Iの化合物またはその塩を提供する工程を包含する、プロセス。
(25)
項1〜16のいずれか1項に記載の化合物を調製するためのプロセスであって、該プロセスは、式9:
【化10】


の化合物またはその塩を、式13:
【化11】


の化合物またはその塩と反応させ、式Iの化合物またはその塩を提供する工程を包含する、プロセス。
(26)
項23〜25のいずれか1項に記載のプロセスによって調製される、生成物。
(27)
治療における使用のための、項1〜16のいずれか1項に記載の化合物。
(28)
哺乳動物における細菌感染の処置のための医薬の製造のための、項1〜16のいずれか1項に記載の化合物。
【0005】
従って、この組成物の局面の1つにおいて、本発明は、以下の式Iの化合物:
【0006】
【化12】

またはその薬学的に受容可能な塩を提供する。ここで、
およびXは、独立して、水素およびクロロからなる群より選択され;
は、−Y−(W)−Y−であり;
Wは、−O−、−N(R)−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、C3〜6シクロアルキレン、C6〜10アリーレンおよびC2〜9ヘテロアリーレンからなる群より選択され;ここで、各アリーレン基、シクロアルキレン基およびへテロアリーレン基は、必要に応じて、Rから独立して選択される1〜3個の置換基で置換されており;
およびYは、独立して、C1〜5アルキレンであるか、またはWがシクロアルキレン、アリーレンもしくはヘテロアリーレンである場合、YおよびYは、独立して、共有結合およびC1〜5アルキレンからなる群より選択され;ここで、各アルキレン基は、−OR、−NR、−CO、−C(O)NRおよび−S(O)NRから独立して選択される1〜3個の置換基で、必要に応じて置換されており;
は、水素またはC1〜6アルキルであり;
各Rは、独立して、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C3〜6シクロアルキル、C6〜10アリール、C2〜9ヘテロアリール、C3〜6複素環式およびRからなる群より選択されるか;または、2個の隣接するR基が結合して、C3〜6アルキレンもしくは−O−(C1〜6アルキレン)−O−を形成し;ここで、各アルキル基、アルキレン基、アルケニル基およびアルキニル基は、RおよびRからなる群より独立して選択される1〜3個の置換基で、必要に応じて置換されており;そして、各アリール基、シクロアルキル基、ヘテロアリール基および複素環式基は、Rからなる群より独立して選択される1〜3個の置換基で、必要に応じて置換されており;
およびRのうちの一方は、ヒドロキシであり、そして他方は、水素であり;
およびRは、独立して、水素またはメチルであり;
は、水素または以下の式(i)の基:
【0007】
【化13】

であり:
各Rは、独立して、−OR、ハロ、−SR、−S(O)R、−S(O)、−S(O)OR、−S(O)NR、−NR、−CO、−OC(O)R、−C(O)NR、−NRC(O)R、−OC(O)NR、−NRC(O)OR、−NRC(O)NR、−CFおよび−OCFからなる群より選択され;
各Rは、独立して、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニルおよびRからなる群より選択され;
各Rは、独立して、C3〜6シクロアルキル、C6〜10アリール、C2〜9ヘテロアリールおよびC3〜4複素環式からなる群より選択され;ここで、各シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基および複素環式基は、C1〜6アルキルおよびRからなる群より独立して選択される1〜3個の置換基で、必要に応じて置換されており;
各RおよびRは、独立して、水素、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C3〜6シクロアルキル、C6〜10アリール、C2〜9ヘテロアリールおよびC3〜6複素環式からなる群より選択されるか;あるいは、RおよびRは、それらが結合する原子と一緒になって結合して、酸素、窒素または硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有するC3〜6複素環式環を形成し;ここで、各アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基は、RおよびRからなる群より独立して選択される1〜3個の置換基で、必要に応じて置換されており;そして、各アリール基、シクロアルキル基、ヘテロアリール基および複素環式基は、C1〜6アルキルおよびRからなる群より独立して選択される1〜3個の置換基で、必要に応じて置換されており;
各Rは、独立して、−OH、−OC1〜6アルキル、−SC1〜6アルキル、−F、−Cl、−NH、−NH(C1〜6アルキル)、−N(C1〜6アルキル)、−OC(O)C1〜6アルキル、−C(O)OC1〜6アルキル、−NHC(O)C1〜6アルキル、−C(O)OH、−C(O)NH、−C(O)NHC1〜6アルキル、−C(O)N(C1〜6アルキル)、−CFおよび−OCFからなる群より選択され;
mは、0、1、2または3であり;そして、
nは、0または1である。
【0008】
本発明はまた、式Iの化合物、およびその塩を調製するために有用な中間体に関する。従って、この組成物の別の局面において、本発明は、以下の式IIの化合物:
【0009】
【化14】

またはその塩を提供し;ここで、
およびRは、本明細書中で定義されるとおりであり;
およびPは、独立して、水素またはアミノ保護基であり;
は、水素またはカルボキシ保護基であり;
Qは、脱離基または以下の式の基:
【0010】
【化15】

であり、ここで、
およびmは、本明細書中で定義されるとおりであり;そしてXは、必要に応じて存在するアニオンであり;この化合物は、式Iの化合物を調製するための中間体および/または抗生物質として有用である。
【0011】
この組成物のさらに別の局面において、本発明は、以下の式IIIの化合物:
【0012】
【化16】

またはその塩を提供し;ここで、
、R、PおよびPは、本明細書中で定義されるとおりであり、そしてPは、水素またはカルボキシ保護基であり;この化合物は、式Iまたは式IIの化合物を調製するための中間体として有用である。
【0013】
別個の組成物および異なる組成物の局面において、本発明はまた、本明細書中に定義さ
れるような、式2、式5b、式7、式8、式10、式11および式13の化合物、またはその塩もしくはその保護された誘導体を提供し;この化合物は、式Iの化合物を調製するための中間体および/または抗生物質として有用である。
【0014】
この組成物の別の局面において、本発明は、薬学的組成物またはその薬学的に受容可能な塩を提供し、この薬学的組成物は、薬学的に受容可能なキャリアおよび治療有効量の式Iの化合物を含有する。
【0015】
理論によって制限されることを意図しないが、式Iの化合物は、細菌細胞壁の生合成を阻害し、それによって細菌の増殖を阻害するかまたは細菌の溶解を引き起こすと考えられる。従って、数ある特性の中で、式Iの化合物は、抗生物質として有用である。
【0016】
従って、この方法の1つの局面において、本発明は、哺乳動物における細菌感染を処置する方法を提供する。この方法は、薬学的に受容可能なキャリアおよび治療有効量の式Iの化合物を含有する薬学的組成物、またはその薬学的に受容可能な塩を、哺乳動物に投与する工程を包含する。
【0017】
さらに、この方法の別の局面において、本発明は、細菌の増殖を阻害する方法を提供する。この方法は、増殖を阻害する量の式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩と、細菌とを接触させる工程を包含する。
【0018】
この方法のなお別の局面において、本発明は、細菌細胞壁の生合成を阻害する方法を提供する。この方法は、細胞壁の生合成を阻害する量の式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩と、細菌とを接触させる工程を包含する。
【0019】
本発明はまた、式Iの化合物またはその塩を調製するためのプロセスに関する。従って、この方法の別の局面において、本発明は、式Iの化合物またはその塩を調製するためのプロセスを提供し、このプロセスは、以下の工程を包含する:
(a)本明細書中で定義される式1のグリコペプチドを、本明細書中で定義される式2の化合物と反応させるか;
(b)本明細書中で定義される式10の化合物を、本明細書中で定義される式11の化合物と反応させるか;または、
(c)本明細書中で定義される式9の化合物を、本明細書中で定義される式13の化合物と反応させて、
式Iの化合物またはその塩を提供する、工程。1つの好ましい実施形態において、上記プロセスは、式Iの化合物の薬学的に受容可能な塩を形成する工程をさらに包含する。本発明はまた、これらのプロセスのいずれかによって調製される生成物に関する。
【0020】
本発明はまた、治療用途のための、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩に関する。さらに、本発明は、哺乳動物における細菌感染の処置のための医薬の製造のための、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩の使用に関する。
【0021】
(発明の詳細な説明)
本発明は、式Iの新規のグリコペプチド−セファロスポリン化合物、またはその薬学的に受容可能な塩を提供する。これらの化合物は、複数のキラル中心を有し、この点に関して、これらの化合物は、示される立体化学を有することが意図される。特に、この化合物のグリコペプチド部分は、対応する天然に存在するグリコペプチド(すなわち、バンコマイシン、クロロオリエントマイシンA(chloroorienticin A)など)の立体化学を有することが意図される。この分子のセファロスポリン部分は、既知のセファロスポリン化合物の立体化学を有することが意図される。しかし、示された立体化学と
は異なる立体化学を有する微小量の異性体が、本発明の組成物中に存在し得、但し、全体として、この組成物の有用性は、このような異性体の存在によって有意に減退しないことが、当業者によって理解される。
【0022】
さらに、本発明の化合物の連結部分(すなわち、R)は、1つ以上のキラル中心を含み得る。代表的には、その分子の一部は、ラセミ混合物として調製される。しかし、所望ならば、純粋な異性体(すなわち、個々のエナンチオマーまたはジアステレオマー)が使用され得るか、または立体異性体富化混合物が、用いられ得る。全てのこのような立体異性体および富化混合物は、本発明の範囲内に含まれる。
【0023】
さらに、本発明の化合物は、数種の酸性基(すなわち、カルボン酸基)および数種の塩基性基(すなわち、第一級アミン基または第二級アミン基)を含み、それによって、式Iの化合物は、種々の塩形態で存在し得る。全てのこのような塩形態は、本発明の範囲内に含まれる。また、式Iの化合物がピリジニウム環を含む場合、このピリジニウム基に対するアニオン性対イオンが、必要に応じて存在し得る。これらとしては、ハライド(例えば、クロリド);カルボキシレート(例えば、アセテート);などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0024】
さらに、それらの不安定性に起因していかなる有用性をも損失した、不安定な化合物または化学的に不安定な化合物は、本発明の範囲内に含まれないことが、当業者によって理解される。例えば、式Iの化合物が、−O−R−N(R)−部分において、酸素原子(−O−)、窒素原子(−N<)または硫黄原子(−S−)のいずれかの間に、少なくとも2個の炭素原子を含むことが、好ましい。なぜなら、これらの原子が1個の炭素原子によって分けられる場合、得られる化合物(すなわち、アセタール基、ヘミアセタール基、ケタール基、ヘミケタール基、アミナール(aminal)基、ヘミアミナール(hemiamial)基またはチオケタール基などを含む)は、酸性条件下において、加水分解的に不安定であり得るからである。
【0025】
(好ましい実施形態)
式Iの化合物において、以下の置換基および値が好ましい。
【0026】
好ましい実施形態において、本発明は、以下の式Iaの化合物:
【0027】
【化17】

またはその薬学的に受容可能な塩に関し、ここで、R、R、Rおよびmは、本明細書中(好ましい実施形態を含む)で定義されるとおりである。
【0028】
好ましい実施形態において、Rは、−Y−Y−(すなわち、nが0場合)である。この実施形態において、YおよびYは、独立して、C1〜5アルキレン基であり、ここで、各アルキレン基は、本明細書中で定義されるように、−OR、−NR、−CO、−C(O)NRおよび−S(O)NRから独立して選択される1〜3個の置換基で、必要に応じて置換されている。好ましくは、YおよびYは、独立して、C1〜3アルキレン;およびより好ましくは、C1〜2アルキレンから選択される。より好ましくは、YおよびYは、一緒に結合して(すなわち、R)、−(CH2〜8−基を形成する。なおより好ましくは、YおよびYは、一緒に結合して、−(CH−基、−(CH−基、−(CH−基、−(CH−基または−(CH−基を形成する。特に好ましい実施形態において、YおよびYは、一緒に結合して、−(CH−基を形成する。
【0029】
別の好ましい実施形態において、Rは、−Y−W−Y−(すなわち、nが1の場合)である。この実施形態において、YおよびYは、独立して、C1〜5アルキレンであるか、またはWがシクロアルキレン、アリーレンもしくはヘテロアリーレンである場合、YおよびYは、独立して、共有結合およびC1〜5アルキレンからなる群より独立して選択される。この実施形態において、各アルキレン基は、本明細書中で定義されるように、−OR、−NR、−CO、−C(O)NRおよび−S(O)NRから選択される1〜3個の置換基で、必要に応じて置換されている。YまたはYがアルキレン基である場合、このアルキレン基は、好ましくは、C1〜3アルキレン基;より好ましくは、C1〜2アルキレン基;なおより好ましくは、−(CH
1〜2−基である。特に好ましい実施形態において、YおよびYの両方が、−CH−であり、そしてWは、本明細書中で定義されるように、Rから独立して選択される1〜3個の置換基で必要に応じて置換されたC6〜10アリーレンであり;より好ましくは、Wは、フェニレンである。別の好ましい実施形態において、YおよびYの両方が、−CHCH−であり、Wは、−O−である。
【0030】
存在する場合、Wは、好ましくは、C6〜10アリーレンまたは−O−である。より好ましくは、Wは、フェニレンまたは−O−である。
【0031】
好ましくは、Rは、水素またはC1〜3アルキルである。より好ましくは、Rは、水素である。
【0032】
存在する場合、各Rは、好ましくは、C1〜6アルキル、C3〜6シクロアルキル、−OR、−SR、−Fまたは−Clから独立して選択されるか;あるいは2個の隣接するR基が結合して、C3〜6アルキレンを形成する。
【0033】
好ましい実施形態において、Rは、ヒドロキシであり、そしてRは、水素である。別の好ましい実施形態において、Rは、水素であり、そしてRは、ヒドロキシである。
【0034】
好ましくは、Rは、水素であり、そしてRは、メチルである。
【0035】
好ましくは、Rは、水素である。
【0036】
好ましくは、XおよびXのうちの一方は、クロロであり、他方は、水素であるか;または両方がクロロである。より好ましくは、XおよびXは、両方クロロである。
【0037】
好ましい実施形態において、Rは、ヒドロキシであり;Rは、水素であり;Rは、水素であり;Rは、メチルであり;Rは、水素であり;そしてXおよびXは、ともにクロロである(すなわち、糖ペプチド部分がバンコマイシンである)。
【0038】
別の好ましい実施形態において、Rは、水素であり;Rは、ヒドロキシであり;Rは、水素であり;Rは、メチルであり;Rは、式(i)の基であり;そしてXおよびXは、ともにクロロである(すなわち、糖ペプチド部分がクロロオリエニチシン(chloroorieniticinまたはA82846Bである)。
【0039】
好ましい実施形態において、mは、0である。別の好ましい実施形態において、mは、1または2であり;より好ましくは、1である。なお別の好ましい実施形態において、mは、2であり、そして2つのR基は、結合されて、C3−5アルキレン基を形成し;より好ましくは、C3−4アルキレン基を形成する。
【0040】
式Iの化合物の好ましい群は、式Iaの化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩であり、ここで、Rは、−Y−(W)−Y−であり、ここで、nは、0であり、そしてYおよびYは、一緒に結合されて、−(CH2−8−基を形成し;Rは、水素であり、そしてmは、0である。この実施形態において、R(すなわち、YおよびYは、一緒になる)は、好ましくは、−(CH−基、−(CH−基、−(CH−基、−(CH−基、または−(CH−基であり;より好ましくは、−(CH−である。
【0041】
式Iの化合物の別の好ましい基は、R、R、Rおよびmが、表Iに規定される式
Iaの化合物、またはその薬学的に受容可能な塩である。
【0042】
【表1】


Ph=フェニル
1,4−(−Ph−)=1,4−フェニレン
式IIの中間体において、
Qは、好ましくは、ハロまたは規定されたピリジニウム基である。
【0043】
は、好ましくは、水素またはtert−ブトキシカルボニルである。
【0044】
は、好ましくは、水素またはトリフェニルメチルである。
【0045】
は、好ましくは、水素またはp−メトキシベンジルである。
【0046】
、R、Rおよびmは、好ましくは、本明細書中に規定される通りであり、任意の好ましい実施形態、置換基または値を含む。
【0047】
式IIIの中間体において、
は、好ましくは、水素またはtert−ブトキシカルボニルである。
【0048】
は、好ましくは、水素、ホルミルまたはトリフェニルメチルである。
【0049】
は、好ましくは、水素、C1−4アルキルまたはp−メトキシベンジルである。
【0050】
およびRは、好ましくは、本明細書中に規定される通りであり、任意の好ましい実施形態、置換基または値を含む。
【0051】
(定義)
本発明の化合物、組成物、方法およびプロセスを説明する場合、以下の用語は、他に示さない限り、以下の意味を有する。
【0052】
用語「アルキル」とは、直鎖または分枝であり得る一価の飽和炭化水素基をいう。他に規定しない限り、このようなアルキル基は、代表的に、1〜10個の炭素原子を含む。代表的なアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシ
ル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシルなどが挙げられる。
【0053】
用語「アルキレン」とは、直鎖または分枝であり得る二価の飽和炭化水素基をいう。他に規定しない限り、このようなアルキレン基は、代表的に、1〜10個の炭素原子を含む。代表的なアルキレン基としては、例として、メチレン、エタン−1,2−ジイル(「エチレン」)、プロパン−1,2−ジイル、プロパン−1,3−ジイル、ブタン−1,4−ジイル、ペンタン−1,5−ジイルなどが挙げられる。
【0054】
用語「アルケニル」とは、直鎖または分枝であり得、そして少なくとも1個、代表的には、1、2、または3個の炭素−炭素二重結合を有する、一価の不飽和炭化水素基をいう。他に規定しない限り、このようなアルケニル基は、代表的に、2〜10個の炭素原子を含む。代表的なアルケニル基としては、例として、エテニル、n−プロペニル、イソプロペニル、n−ブト−2−エニル、n−ヘキサ−3−エニルなどが挙げられる。
【0055】
用語「アルキニル」とは、直鎖または分枝であり得、そして少なくとも1個、代表的には、1、2、または3個の炭素−炭素三重結合を有する、一価の不飽和炭化水素基をいう。他に規定しない限り、このようなアルキニル基は、代表的に、2〜10個の炭素原子を含む。代表的なアルキニル基としては、例として、エチニル、n−プロピニル、n−ブト−2−イニル、n−ヘキサ−3−イニルなどが挙げられる。
【0056】
用語「アリール」とは、1個の環(すなわち、フェニル)または縮合環(すなわち、ナフタレン)を有する一価の芳香族炭化水素をいう。他に規定しない限り、このようなアリール基は、代表的に、6〜10個の環炭素原子を含む。代表的なアリール基としては、例として、フェニルおよびナフタレン−1−イル、ナフタレン−2−イルなどが挙げられる。
【0057】
用語「アリーレン」とは、1個の環(すなわち、フェニレン)または縮合環(すなわち、ナフタレンジイル)を有する二価の芳香族炭化水素をいう。他に規定しない限り、このようなアリーレン基は、代表的に、6〜10個の環炭素原子を含む。代表的なアリーレン基としては、例として、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−2,7−ジイルなどが挙げられる。
【0058】
用語「シクロアルキル」とは、一価飽和炭素環式炭化水素基をいう。他に規定しない限り、このようなシクロアルキル基は、代表的に、3〜10個の炭素原子を含む。代表的なシクロアルキル基としては、例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。
【0059】
用語「シクロアルキレン」とは、二価飽和炭素環式炭化水素基をいう。他に規定しない限り、このようなシクロアルキレン基は、代表的に、3〜10個の炭素原子を含む。代表的なシクロアルキレン基としては、例として、シクロプロパン−1,2−ジイル、シクロブチル−1,2−ジイル、シクロブチル−1,3−ジイル、シクロペンチル−1,2−ジイル、シクロペンチル−1,3−ジイル、シクロヘキシル−1,2−ジイル、シクロヘキシル−1,3−ジイル、シクロヘキシル−1,4−ジイルなどが挙げられる。
【0060】
用語「ハロ」とは、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードをいう。
【0061】
用語「ヘテロアリール」とは、1個の環または2個の縮合環を有し、そして窒素、酸素または硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子(代表的には、1〜3個のヘテロ原子)を環中に含む一価芳香族基をいう。他に規定されない場合、このようなヘテロアリール基は、代表的に、合計5〜10個の環原子を含む。代表的なヘテロアリール基として
は、例として、ピロール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、フラン、チオフェン、トリアゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、トリアジン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンズイミダゾール、ベンズチアゾール、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリンなどの一価種が挙げられ、ここで、結合点は、任意の利用可能な炭素または窒素の環原子においてである。
【0062】
用語「ヘテロアリーレン」とは、1個の環または2個の縮合環を有し、そしてその環中に窒素、酸素または硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子(代表的には、1〜3個のヘテロ原子)を含む二価芳香族基をいう。他に規定されない場合、このようなヘテロアリール基は、代表的に、合計5〜10個の環原子を含む。代表的なヘテロアリーレン基としては、例として、ピロール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、フラン、チオフェン、トリアゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、トリアジン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンズイミダゾール、ベンズチアゾール、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリンなどの二価種が挙げられ、ここで、結合点は、任意の利用可能な炭素または窒素の環原子においてである。
【0063】
用語「ヘテロシクリル」または「ヘテロ環式」とは、1個の環または複数の縮合環を有し、そして窒素、酸素または硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子(代表的には、1〜3個のヘテロ原子)を環中に含む一価の飽和または不飽和(非芳香族)基をいう。他に規定されない場合、このようなヘテロ環式基は、代表的に、合計2〜9個の環原子を含む。代表的なヘテロ環式基としては、例として、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピペリジン、1,4−ジオキサン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、3−ピロリンなどの一価種が挙げられ、ここで、結合点は、任意の利用可能な炭素または窒素の環原子においてである。
【0064】
用語「セファロスポリン」は、以下の一般式および番号付けシステムを有するβ−ラクタム環系をいうための当該分野で認められた様式で本明細書中において使用される:
【0065】
【化18】

用語「糖ペプチド抗生物質」または「糖ペプチド」は、糖ペプチドまたはダルバペプチド(dalbahpeptide)として公知の抗生物質のクラスをいうために、当該分野において認識された様式で、本明細書中において使用される。例えば、R.Nagarajan,「Glycopeptide Anitibiotics」、Marcel Dekker,Inc.(1994)およびそこに引用される参考文献を参照のこと。代表的な糖ペプチドとしては、バンコマイシン、A82846A(エレモマイシン(eremomycin))、A82846B(クロロオリエンチシンA)、A82846C、PA−42867−A(オリエンチシンA)、PA−42867−C、PA−42867−Dなどが挙げられる。
【0066】
用語「バンコマイシン」は、バンコマイシンとして公知の糖ペプチド抗生物質をいうた
めに、当該分野で認識される様式で本明細書中において使用される。本発明の化合物において、連結部分の結合点は、バンコマイシンの「C末端」である。
【0067】
用語「薬学的に受容可能な塩」とは、患者(例えば、哺乳動物)への投与に受容可能な塩(例えば、所定の投薬レジメンについて、受容可能な哺乳動物安全性を有する塩)をいう。このような塩は、薬学的に受容可能な無機塩基または有機塩基由来、および薬学的に受容可能な無機酸または有機酸由来であり得る。薬学的に受容可能な無機塩基由来の塩としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン(III)、マンガン(II)、カリウム、およびナトリウム、亜鉛などが挙げられる。アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムの塩が特に好ましい。薬学的に受容可能な有機塩基由来の塩としては、第一級アミン、第二級アミン、および第三級アミンの塩が挙げられ、これらは、置換アミン、環式アミン、天然に存在するアミンなどを含む、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどが挙げられる。薬学的に受容可能な酸由来の塩としては、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルコロン酸(glucoronic)、グルタミン酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸(lactobionic)、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸、硝酸、パモ酸(pamoic)、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸などが挙げられる。クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸および酒石酸が特に好ましい。
【0068】
用語「その塩」とは、酸の水素が、カチオン(例えば、金属カチオンまたは有機カチオンなど(例えば、NHカチオンなど)によって置換された場合に形成される化合物をいう。好ましくは、この塩は、患者への投与を意図されない中間体化合物の塩については必要ではないが、薬学的に受容可能な塩である。
【0069】
用語「治療的有効量」とは、処置の必要な患者に投与される場合、処置をもたらすのに十分な量をいう。
【0070】
用語「処置する」または「処置」とは、本明細書中で使用される場合、患者(例えば、哺乳動物(特に、ヒトまたは比較動物))における疾患または医学的状態(例えば、細菌感染)を処置することまたは処置をいい、これは、以下を包含する:
(a)疾患または医学的状態が生じることを妨げること(すなわち、患者の予防的処置);
(b)疾患または医学的状態を改善すること(すなわち、患者における疾患または医学的状態を除去するかまたは後退を引き起こすこと);
(c)疾患または医学的状態を抑制すること(すなわち、患者における疾患または医学的状態の進展を遅延または阻止すること);あるいは
(d)患者における疾患または医学的状態の症状を改善すること。
【0071】
用語「増殖阻害量」とは、微生物の増殖または繁殖を阻害するのに十分な量、または微生物(グラム陽性細菌を含む)の死または溶解を引き起こすのに十分な量をいう。
【0072】
用語「細胞壁生合成阻害量」とは、微生物(グラム陽性細菌を含む)の細胞壁生合成を阻害するのに十分な量をいう。
【0073】
用語「脱離基」とは、置換反応(例えば、求核置換反応)において、別の官能基または原子によって置換され得る官能基または原子をいう。例として、代表的な脱離基としては、クロロ基、ブロモ基、およびヨード基;スルホンエステル基(例えば、メシレート、トシレート、ブロシレート(brosylate)、ノシレート(nosylate)など);活性化エステル基(例えば、7−アザベンゾトリアゾール−1−オキシなど);アシルオキシ基(例えば、アセトキシ、トリフルオロアセトキシなど)が挙げられる。
【0074】
用語「その保護化誘導体」とは、その化合物の1つ以上の官能基が、保護基またはブロッキング基を用いて、所望でない反応から保護される特定の化合物の誘導体をいう。保護され得る官能基としては、例として、カルボン酸基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボニル基などが挙げられる。カルボン酸の代表的な保護基としては、エステル(例えば、p−メトキシベンジルエステル)、アミドおよびヒドラジドが挙げられ;アミノ基については、カルバメート(例えば、tert−ブトキシカルボニル)およびアミドが挙げられ;ヒドロキシル基については、エーテルおよびエステルが挙げられ;チオール基については、チオエーテルおよびチオエステルが挙げられ;カルボニル基については、アセタールおよびケタールが挙げられる。このような保護基は、当業者に周知であり、例えば、T.W.GreeneおよびG.M.Wuts,Protecting Groups in Organic Synthesis,Third Edition,Wiley,New York,1999、およびそこに引用される参考文献に記載される。
【0075】
用語「アミノ保護基」とは、アミノ基における所望でない反応を妨げるために適切な保護基をいう。代表的なアミノ保護基としては、限定しないが、tert−ブトキシカルボニル(BOC)、トリチル(Tr)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、ホルミル、トリメチルシリル(TMS)、tert−ブチルジメチルシリル(TBS)などが挙げられる。
【0076】
用語「カルボキシ−保護基」とは、カルボキシ基における所望でない反応を妨げるために適切な保護基をいう。代表的なカルボキシ保護基としては、限定しないが、エステル(例えば、メチル、エチル、tert−ブチル、ベンジル(Bn)、p−メトキシベンジル(PMB)、9−フルオレニルメチル(Fm)、トリメチルシリル(TMS)、tert−ブチルジメチルシリル(TBS)、ジフェニルメチル(ベンズヒドリル、DPM)などが挙げられる。
【0077】
(一般的な合成手順)
本発明の架橋糖ペプチド−セファロスポリン化合物は、以下の一般的な方法および手順を使用して、容易に入手可能な開始物質から調製され得る。代表的または好ましいプロセス条件(すなわち、反応温度、時間、反応物のモル比、溶媒、圧力など)が与えられる場合、他に記載されない限り、他のプロセス条件もまた、使用され得ることが理解される。最適な反応条件は、使用される特定の反応物または溶媒とともに変化し得るが、このような条件は、慣用的な最適化手順によって、当業者によって容易に決定され得る。
【0078】
さらに、当業者に理解されるように、従来の保護基は、特定の官能基が、所望でない反応を進行することを妨げるために必要であり得るかまたは所望され得る。特定の官能基についての適切な保護基、ならびにこのような官能基の保護および脱保護に適切な条件の選択は、当該分野において周知である。本明細書中に記載される手順に示される保護基以外の保護基は、所望される場合、使用され得る。例えば、多くの保護基、ならびにそれらの導入および除去は、T.W.GreeneおよびG.M.Wuts,Protectin
g Groups in Organic Synthesis,Third Edition,Wiley,New York,1999、およびそこに引用される参考文献に記載される。
【0079】
合成の好ましい方法において、式Iの化合物は、式1の糖ペプチド:
【0080】
【化19】

またはその塩(ここで、R、R、R、R、R、XおよびXは、本明細書中で規定された通りである)と、式2の化合物:
【0081】
【化20】

またはその塩もしくは保護化誘導体(ここで、R、R、Rおよびmは、本明細書中で提供された通りである)とを反応させて、式Iの化合物、またはその塩もしくは保護化誘導体を提供することによって調製される。
【0082】
代表的には、この反応は、従来のカルボン酸−アミン(ペプチド)カップリング試薬を使用して、不活性希釈剤(例えば、DMF)中で、グリコペプチド1またはその塩と、約0.5〜約1.5当量、好ましくは約0.9〜約1.1当量の式2の化合物とをカップリングすることによって、実施される。この反応において、グリコペプチド1またはその塩を、代表的には、最初に、過剰の(好ましくは約1.8〜約2.2当量の)アミン(例え
ば、ジイソプロピルエチルアミン)の存在下で、約−20℃〜約25℃の範囲の温度、好ましくは周囲温度で、約0.25〜約3時間にわたって、このカップリング試薬と接触させる。好ましくは、次いで、過剰のトリフルオロ酢酸(代表的には、約2当量)を添加して、任意の過剰なジイソプロイルエチルアミンのTFA塩を形成する。次いで、この反応物を、一般的に、約−20℃〜約10℃、好ましくは約0℃の温度まで冷却し、そして中間体2を添加し、続いて、過剰の2,4,6−コリジンを添加する。代表的には、この反応物を、約1〜約6時間にわたって、またはこの反応が実質的に完了するまで、約0℃で維持する。
【0083】
本発明における使用に好ましいカップリング試薬は、約0.5〜約1.5当量、好ましくは約0.9〜約1.1当量のベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、および0.5〜約1.5当量、好ましくは約0.9〜約1.1当量の1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)または1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAT)を含む。他の適切なカップリング試薬としては、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU);ビス(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)ホスフィン酸クロリド(BOP−Cl);ジフェニルホスホリルアジド(DPPA);ジフェニルホスフィン酸クロリド;ジフェニルクロロホスフェート(DPCP)およびHOAT;ペンタフルオロフェニルジフェニルホスフィネートなどが挙げられる。
【0084】
このカップリング反応が完了した後、次いで、生成物中に存在する任意の保護基を、従来の手順および試薬を使用して除去する。この反応が完了すると、この反応生成物(すなわち、式Iの化合物)を、従来の手順(例えば、カラムクロマトグラフィー、HPLC、再結晶など)を使用して、単離および精製する。
【0085】
上記の手順における使用に適切な式1のグリコペプチドは、市販されているか、またはこれらは適切なグリコペプチド産生生物の発酵に続き、このグリコペプチドを、当該分野で認められた手順および機器を使用して得られた発酵ブロスから単離することによって調製され得るかのいずれかである。
【0086】
上記の手順で使用されるセファロスポリン中間体2は、市販の出発物質および試薬から、従来の手順を使用して容易に調製される。例として、中間体2は、スキームAで示されるようにして調製され得る。
(スキームA)
【0087】
【化21】

スキームAで例示されるように、トリアゾール中間体3(ここで、Rは、アミノ保護基(例えば、トリチル基)であり、R10は、カルボキシ保護基(例えば、エチル基)である)を、最初に、式4のω−官能化アミン(ここで、RおよびRは、本明細書中で定義される通りであり、R11は、アミノ保護基(例えば、tert−ブトキシカルボニル(BOC)基であり、Zは、脱離基(例えば、クロロ、ブロモ、ヨード、メシレート、トシレートなど)である)と反応させて、カルボキシ保護基(すなわち、R10)を除去した後に、式5aの中間体を得る。
【0088】
この反応を、代表的には、最初に、不活性希釈剤(例えば、DMF)中で、約0℃〜約50℃の範囲の温度で、好ましくは周囲温度で、約0.5〜約6時間にわたって、またはこの反応が実質的に完了するまで、3を、約1.0〜約1.1当量、好ましくは約1.02〜約1.06当量の式4の化合物と接触させることによって、実施する。この反応を、代表的に、過剰の(好ましくは、約1.1〜約5当量の)塩基(例えば、炭酸セシウム)の存在下で実施する。さらに、Zが、クロロまたはブロモである場合、触媒量(好ましくは、約0.2〜約0.5当量)のトリアルキルアンモニウムヨージド(例えば、テトラブチルアンモニウムヨージド)を必要に応じて添加して、インサイチュで4のヨード誘導体を生成することにより、この反応を促進する。
【0089】
次いで、カルボキシ保護基(すなわち、R10)を除去して、中間体5aを得る。例えば、このカルボキシ保護基がアルキルエステル(例えば、エチル基)である場合、エステルと、過剰の(好ましくは、約1.1〜約2.5当量の)アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム)とを接触させることによって、このエステルは、容易に加水分解されてカルボン酸になる。この反応を、代表的には、不活性希釈剤(
例えば、エタノール)中、約0℃〜約100℃の範囲の温度で、約0.5〜約6時間にわたって、またはこの反応が実質的に完了するまで実施して、中間体5aを得る。
【0090】
式3のチアゾール化合物は、例えば、Aldrich,Milwaukee,WIから市販されているか、または従来の手順を使用して、市販の出発物質および試薬から調製され得る。
【0091】
同様に、式4のω−官能化アミンは、従来の手順を使用して、市販の出発物質および試薬から容易に調製される。式4の好ましい化合物としては、例示として、N−BOC−3−ブロモプロピルアミン;N−BOC−6−ヨードヘキシルアミン;N−BOC−2−(2−ヨードエトキシ)−エチルアミン;N−BOC−4−(ヨードメチル)ベンジルアミンなどが挙げられる。これらの化合物は、周知の試薬および反応条件を使用して、市販の出発物質から容易に調製される。
【0092】
次いで、中間体5aを、塩素化して、中間体5bを得る。この反応は、代表的には、不活性希釈剤(例えば、クロロホルムまたはDMF)中、周囲温度で、約6〜約24時間にわたって、またはこの反応が実質的に完了するまで、5aと、約1.0〜約1.2当量の塩素化試薬(例えば、N−クロロスクシンイミド)とを接触させることによって、実施される。
【0093】
次いで、5−クロロ−1,3−チアゾール中間体5bを、中間体6(ここで、R12は、水素または適切なカルボキシル保護基(例えば、p−メトキシベンジル基)である)とカップリングして、中間体7を得る。R12が、p−メトキシベンジルである場合、中間体6は、Otshuka、Japanから市販されている。代表的には、この反応は、従来のカップリング反応条件下で、カップリング試薬の存在下で、5bと、約0.8〜約1当量の6とを接触させることによって実施される。この反応に好ましいカップリング試薬は、亜リン酸オキシクロリド(代表的には、約1.1〜約1.2当量)および過剰量のアミン(例えば、2,4,6−コリジンまたはジイソプロピルエチルアミン)である。このカップリング反応を、代表的には、不活性希釈剤(例えば、THF)中で、約−50℃〜約25℃の範囲の温度で、約0.5〜約6時間にわたって、またはこの反応が実質的に完了するまで実施して、中間体7を得る。異性化を回避するために、この反応は、好ましくは、2,4,6−コリジンを塩基として使用して、−35℃で実施される。
【0094】
次いで、中間体7を、ピリジンまたは置換ピリジンと反応させて、中間体8(ここで、Rおよびnは、本明細書中で定義される通りである)を得る。この反応を、代表的には、最初に、アセトン(Finkelstein反応)またはDMF中で、周囲温度で、約0.25〜約2時間にわたって、7と約1当量のヨウ化ナトリウムとを接触させることにより、7中のクロロ基をヨード基で置換することによって実施する。得られたヨード中間体は、代表的には、単離しないが、インサイチュで、約1.1〜約1.6当量のピリジンまたは置換ピリジンと反応させて、8を得る。代表的には、この反応を、周囲温度で、約1〜約12時間にわたって、またはこの反応が実質的に完了するまで、実施する。この反応で使用されるピリジンまたは置換ピリジンは、市販されているか、または従来の手順を使用して、市販の出発物質または試薬から調製され得る。この反応で使用するための代表的なピリジン誘導体としては、以下が挙げられる:ピリジン、2−ピコリン、3−ピコリン、4−ピコリン、2−メトキシピリジン、3−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−チオメトキシピリジン、3−チオメトキシピリジン、4−チオメトキシピリジン、4−カルボキシチオメトキシピリジン、2−フルオロピリジン、3−フルオロピリジン、4−フルオロピリジン、2−クロロピリジン、3−クロロピリジン、4−クロロピリジン、2−フェニルピリジン、3−フェニルピリジン、4−フェニルピリジン、4−シクロプロピルピリジン、ニコチン酸、イソニコチン酸、ニコチンアミド、イソニコチンアミド
、2,3−ルチジン、3,4−ルチジン、3,5−ルチジン、3,4−ジメトキシピリジン、4−メトキシ−3−メチルピリジン、4−フルオロ−3−メトキシピリジン、2,3−シクロペンテノピリジン、2,3−シクロヘキセノピリジンなど。
【0095】
あるいは、中間体5bを、以下の式9の化合物とカップリングして、中間体8を得ることができる:
【0096】
【化22】

ここで、R、R12およびmは、本明細書に定義される通りである。この反応は、代表的には、不活性希釈剤(例えば、DMF)中、カップリング試薬(例えば、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(EDC);PyBOPおよびHOATまたはHOBT;HATU;BOP−Cl;DPPA;DPCPおよびHOATなど)の存在下で、5bと、約0.9〜約1.1当量の中間体9またはその塩とを接触させることによって、実施される。一般的に、このカップリング反応は、約−40℃〜約25℃の範囲の温度で、約1〜約12時間にわたって、またはこの反応が実質的に完了するまで、実施される。式9の化合物は、6と、ピリジンまたは置換ピリジンとを、上記の反応条件と類似の反応条件下で反応させることによって、中間体6から容易に調製される。
【0097】
次いで、従来の手順および試薬を使用して、中間体8から保護基を除去して、セファロスポリン中間体2を得る。例えば、Rがトリチルであり、R11がtert−ブトキシカルボニルであり、そしてR12がパラ−メトキシベンジルである場合、この保護基は、不活性希釈剤(例えば、ジクロロメタンまたはヘプタン)中、周囲温度で、約1〜約12時間にわたって、またはこの反応が完了するまで、8を過剰のトリフルオロ酢酸および過剰のアニソールまたはトリエチルシランで処理することによって、簡単に除去される。得られた保護セファロスポリン2を、代表的に、従来の手順(例えば、沈殿、凍結乾燥および逆相HPLC)を使用して、単離および精製する。
【0098】
あるいは、式Iの化合物は、以下の式10のグリコペプチド誘導体:
【0099】
【化23】

またはその塩(ここで、R、R、R、R、R、R、R、XおよびXは、本明細書中で定義される通りである)と、以下の式11のセファロスポリン誘導体:
【0100】
【化24】

またはその塩もしくは保護された誘導体(ここで、Rおよびmは、本明細書中で定義される通りである)とを反応させて調製され得、式Iの化合物またはその塩を得る。
【0101】
この反応を、代表的には、不活性希釈剤(例えば、水、メタノールまたはそれらの混合物)中、約4〜約6.5の範囲のpHで、10と、約1〜約1.5当量の11とを接触させることによって実施する。この反応は、一般的には、約−20℃〜約40℃の範囲の温度で、約1〜約6時間にわたって、またはこの反応が実質的に完了するまで、実施される。
【0102】
この反応で使用される式10のバンコマイシンは、バンコマイシンまたはその塩を、以下の式のフタルイミド誘導体(ここで、Rは、本明細書中で定義される通りである)と、従来のカップリング条件下でカップリングすることによって、容易に調製される:
【0103】
【化25】

例えば、この反応は、代表的には、カップリング試薬(例えば、PyBOPおよびHOATなど)および適切な塩基(例えば、ジイソプロピルエチルアミン)の存在下で、バンコマイシンと約1.1〜約1.2当量のフタルアミド化合物とを接触させることによって、実施される。一般的には、この反応は、不活性希釈剤(例えば、DMF)中で、約−20℃〜約40℃の範囲の温度で、約0.5〜約6時間にわたって、またはこの反応が実質的に完了するまで、実施される。この反応で使用されるフタルイミド化合物は、従来の手順および試薬を使用して、容易に調製される。
【0104】
式11のセファロスポリン誘導体は、例えば、上記の式9の化合物を、以下の式12のチアゾール化合物またはその塩(ここで、R13は、水素またはアミノ保護基(例えば、ホルミル基またはトリチル基)である)とカップリングすることによって、調製され得る:
【0105】
【化26】

このカップリング反応は、代表的には、不活性希釈剤(例えば、DMF)中で、カップリング試薬(例えば、EDCおよびHOAT)および適切な塩基(例えば、2,4,6−コリジン)の存在下で、9と、約0.9〜約1.1当量の12とを接触させることによって実施される。一般的には、この反応は、約−20℃〜約20℃の範囲の温度で、約0.5〜約6時間にわたって、またはこの反応が実質的に完了するまで、実施される。
【0106】
さらに、式Iの化合物は、以下の式13のグリコペプチド誘導体またはその塩(ここで、R、R、R、R、R、R、R、XおよびXは、本明細書中で定義される通りである)と、上記の式9の化合物とを反応させて調製され得、式Iの化合物またはその塩を得る:
【0107】
【化27】

このカップリング反応は、代表的に、不活性希釈剤(例えば、DMF)中、適切な塩基(例えば、2,4,6−コリジン)の存在下で、13と、カップリング試薬(例えば、DIPCおよびHOAT)、および約0.5〜約2当量の9とを接触させることによって、実施される。一般的には、この反応は、約−20℃〜約40℃の範囲の温度で、約1〜約6時間にわたって、またはこの反応が実質的に完了するまで、実施される。
【0108】
この反応で使用される式13の化合物は、本明細書中で記載される従来のカップリング手順を使用して、バンコマイシンを上記の中間体5bとカップリングすることによって、容易に調製される。
【0109】
本発明の例示的な化合物またはその中間体を調製するための特定の反応条件および手順に関するさらなる詳細は、下記の実施例に記載される。
【0110】
(薬学的組成物)
本発明の架橋された糖ペプチド−セファロスポリン化合物は、代表的には、薬学的組成物の形態にて患者に投与される。従って、その組成物の局面の1つにおいて、本発明は、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤および治療有効量の式Iの化合物もしくはその薬学的に受容可能な塩を含有する薬学的組成物に関する。
【0111】
任意の従来のキャリアまたは賦形剤が、本発明の薬学的組成物において使用され得る。特定のキャリアもしくは賦形剤の選択、またはキャリアもしくは賦形剤の組み合わせは、特定の患者を処置するために使用される投与様式または細菌感染の型に依存する。この点において、特定の投与様式(例えば、経口投与、局所的投与、吸入、または非経口投与)に適した薬学的組成物の調製は、薬学分野の当業者の技術範囲内である。従って、このような組成物の成分は、例えば、Sigma,P.O.Box 14508,St.Louis,MO 63178から市販されている。さらなる例示によって、従来の処方技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mace Publishing Co.,Philadelphia,PA 第17版(1985)および「Modern Pharmaceutics」Marcel Dekke
r,Inc.第3版(G.S.Banker & C.T.Rhodes編)に記載される。
【0112】
本発明の薬学的組成物は、代表的には、治療有効量の式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩を含有する。代表的には、このような薬学的組成物は、約0.1重量%〜約90重量%の活性薬剤、およびより一般的には、約10重量%〜約30重量%の活性薬剤を含有する。
【0113】
本発明の好ましい薬学的組成物は、非経口投与、特に、静脈内投与に適切なものである。このような薬学的組成物は、代表的には、治療有効量の式Iの化合物または薬学的に受容可能なその塩を含有する滅菌の生理学的に受容可能な水溶液を含む。
【0114】
活性薬剤の静脈内投与に適した生理学的に受容可能なキャリア水溶液は、当該分野で周知である。このような水溶液としては、例示として、5% デキストロース、リンゲル溶液(乳酸添加(lactated)リンゲル注射液、乳酸添加Ringer溶液+5% デキストロース注射液、アシル化リンゲル注射液)、Normosol−M、Isolyte Eなどが挙げられる。
【0115】
必要に応じて、このような水溶液は、共溶媒(例えば、ポリエチレングリコール);キレート化剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸);可溶化剤(例えば、シクロデキストリン);抗酸化剤(例えば、メタ重亜硫酸ナトリウム);などを含有し得る。
【0116】
所望であれば、本発明の水性薬学的組成物は、凍結乾燥され得、続いて、投与前に適切なキャリアで再構成され得る。好ましい実施形態において、その薬学的組成物は、薬学的に受容可能なキャリアおよび治療有効量の式Iの化合物、またはその薬学的に受容可能な塩を含有する凍結乾燥組成物である。好ましくは、この組成物中のキャリアは、スクロース、マンニトール、デキストロース、デキストラン、ラクトース、またはこれらの組み合わせを含む。より好ましくは、このキャリアは、スクロース、マンニトール、またはこれらの組み合わせを含む。
【0117】
1つの実施形態において、本発明の薬学的組成物は、シクロデキストリンを含む。本発明の薬学的組成物において使用される場合、そのシクロデキストリンは、好ましくは、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンまたはスルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンである。このような処方物において、そのシクロデキストリンは、処方物の約1〜25重量%、好ましくは、約2〜10重量%を含む。さらに、シクロデキストリン 対
活性薬剤の重量比は、代表的には、約1:1〜約10:1の範囲である。
【0118】
本発明の薬学的組成物は、好ましくは、単位投薬形態にてパッケージされる。用語「単位投薬形態」とは、患者に投薬するために適した物理的に別個の単位(すなわち、各単位が、単独か、または1つ以上のさらなる単位と組み合わせてかのいずれかで、所望の治療的効果を生成するように計算された所定の量の活性薬剤を含む)をいう。例えば、このような単位投薬形態は、滅菌の、密封アンプルなどにパッケージされ得る。
【0119】
以下の処方物は、本発明の代表的な薬学的組成物を例示する:
(処方実施例A)
注射用溶液を調製するに適した凍結乾燥溶液は、以下のように調製される:
【0120】
【表2】

代表的手順:賦形剤(存在する場合)を、約80%の注射用水に溶解し、活性化合物を添加し、溶解する。そのpHを、1M 水酸化ナトリウムで、3〜4.5に調節し、次いで、容量を、注射用水で最終容量の95%に調節する。そのpHをチェックし、必要であれば調節する。その容量を、注射用水で最終容量まで調節する。次いで、この処方物は、0.22ミクロンフィルターを通して滅菌濾過され、特定の条件下で、滅菌バイアル中に入れられる。そのバイアルは、ふたが閉じられ、表示され、そして凍結して保存され得る。
【0121】
(処方実施例B)
注射用溶液を調製するために適した凍結乾燥散剤を、以下のように調製する:
【0122】
【表3】

代表的手順:賦形剤および/または緩衝化剤(もしあれば)を、約60%の注射用水に溶解する。活性化合物を添加および溶解し、そのpHを、1M 水酸化ナトリウムで3〜4.5に調節し、容量を、最終容量の95%まで注射用水で調節する。そのpHをチェックし、必要であれば調節し、その容量を、注射用水で最終容量に調節する。次いで、処方物を、0.22ミクロンフィルターを通して滅菌濾過し、無菌条件下で滅菌バイアルに入れる。次いで、その処方物を、適切な凍結乾燥サイクルを使用して凍結乾燥する。そのバイアルのキャップを閉め(必要に応じて、部分的真空または乾燥窒素下で)、ラベルを貼り、冷蔵下で保存する。
【0123】
(処方実施例C)
患者に静脈内投与するための注射用溶液を、以下のように、上記の処方例Bから調製する:
代表的手順:処方例Bの凍結乾燥粉末(例えば、10〜1000mgの活性化合物を含有する)を、20mLの滅菌水で再構成し、得られた溶液を、100mLの注入バッグ中にて80mLの滅菌生理食塩水でさらに希釈する。希釈した溶液を、次いで、30〜120分にわたって、患者に静脈内投与する。
【0124】
(有用性)
本発明の架橋された糖ペプチド−セファロスポリン化合物は、抗生物質として有用である。例えば、本発明の化合物は、ヒトおよび彼らのコンパニオンアニマル(すなわち、イヌ、ネコなど)を含む哺乳動物における、本発明の化合物に感受性の微生物により引き起こされる細菌感染および他の細菌関連の医学的状態を処置または予防するために有用である。
【0125】
従って、その方法の局面の1つにおいて、本発明は、哺乳動物における細菌感染を処置
する方法を提供し、この方法は、処置の必要な哺乳動物に、薬学的に受容可能なキャリアおよび治療有効量の式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩を含有する薬学的組成物を投与する工程を包含する。
【0126】
例示によって、本発明の化合物は、グラム陽性細菌および関連微生物により引き起こされる感染を処置または予防するために特に有用である。例えば、本発明の化合物は、特定のEnterococcus spp.;Staphylococcus spp.(コアグラーゼ陰性staphylococci(CNS)を含む);Streptococcus spp.;Listeria spp.;Clostridium ssp.;Bacillus spp.;などにより引き起こされる感染を処置または予防するために有効である。本発明の化合物を用いて有効に処置される細菌種の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA);メチシリン感受性Staphylococcus aureus(MSSA);糖ペプチド中間感受性Staphylococcus aureus(GISA);メチシリン耐性Staphylococcus epidermitis(MRSE);メチシリン感受性Staphylococcus epidermitis(MSSE);バンコマイシン感受性Enterococcus faecalis(EFSVS);バンコマイシン感受性Enterococcus faecium(EFMVS);ペニシリン耐性Streptococcus pneumoniae(PRSP);Streptococcus pyogenes;など。本発明の化合物は、バンコマイシンおよびセファロスポリンの両方に耐性の細菌株により引き起こされる感染を処置または予防するためにはあまり有効でないか、または有効でない。
【0127】
本発明の化合物で処置または予防され得る感染または細菌関連の医学的状態の代表的な型としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:皮膚および皮膚構造感染、尿路感染、肺炎、心内膜炎、カテーテル関連血流感染、骨髄炎など。このような状態を処置するにおいて、患者は、処置される微生物に既に感染していてもよく、活性薬剤が、予防的に投与される、感染を受けやすい状態に過ぎなくてもよい。
【0128】
本発明の化合物は、代表的には、任意の受容可能な投与経路によって、治療有効量にて投与される。好ましくは、これらの化合物は、非経口投与される。それらの化合物は、単一の1日用量または1日あたり複数の用量にて投与され得る。処置レジメンは、長期(例えば、数日間または1〜6週間以上)にわたる投与を必要とし得る。1用量あたりに投与される活性薬剤の量または投与される総量は、代表的には、患者の主治医により決定され、感染の性質および重篤度、患者の年齢および全身の健康状態、患者の活性薬剤に対する耐性、感染を引き起こす微生物、投与経路などのような要因に依存する。
【0129】
一般に、適切な用量は、約0.25〜約10.0mg/kg/日の活性薬剤の範囲であり、好ましくは、約0.5〜約2mg/kg/日の範囲である。平均70kgのヒトについては、これは、約15〜約700mg/日、好ましくは、約35〜約150mg/日の活性薬剤に相当する。
【0130】
さらに、本発明の化合物は、細菌の増殖を阻害するために有用である。この実施形態において、細菌は、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩の増殖阻害量と、インビトロまたはインビボのいずれかで接触される。代表的には、増殖阻害量は、約0.008μg/mL〜約50μg/mL;好ましくは、約0.008μg/mL〜約25μg/mL;およびより好ましくは、約0.008μg/mL〜約10μg/mLの範囲である。細菌増殖の阻害は、代表的には、処置されていない細菌と比較して、細菌の繁殖の低下または欠如によって、および/または細菌の溶解によって(すなわち、所定の期間(すなわち、1時間あたり)にわたる所定の容量(すなわち、1mLあたり)中のコロニー形成単
位の減少によって)実証される。
【0131】
本発明の化合物はまた、細菌における細胞壁生合成を阻害するために有用である。この実施形態において、細菌は、細胞壁生合成阻害量の式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩と、インビトロまたはインビボのいずれかで接触される。代表的には、細胞壁生合成阻害量は、約0.04μg/mL〜約50μg/mL;好ましくは、約0.04μg/mL〜約25μg/mL;およびより好ましくは、約0.04μg/mL〜約10μg/mLの範囲である。細菌における細胞壁生合成の阻害は、代表的には、細菌の溶解を含む、細菌の増殖の阻害または欠如により実証される。
【0132】
驚くべきでありかつ予測外の抗細菌特性に加えて、本発明の化合物はまた、受容可能な哺乳動物の安全性および受容可能な水溶性を有することが見いだされた。さらに、本発明の化合物は、特定の細菌(メチシリン耐性Staphylococci aureus(MRSA)およびメチシリン耐性Staphylococci epidermitis(MRSE)を含む)に対する驚くべきかつ予測外に迅速な死滅性を有することが見いだされた。これらの特性、ならびに本発明の化合物の抗生物質的有用性は、当業者に周知の種々のインビトロまたはインビボでのアッセイを使用して実証され得る。例えば、代表的なアッセイは、以下の実施例にさらに詳細に記載される。
【0133】
(実施例)
以下の合成実施例および生物学的実施例は、本発明を例示するために提供されるのであって、本発明の範囲を限定するものとしては如何様にも解釈されるべきではない。以下の実施例において、以下の略語は、別段示されない限り、以下の意味を有する。以下に規定されていない略語は、それらの一般に受け入れられている意味を有する:
BOC=tert−ブトキシカルボニル
CFU=コロニー形成単位
DCM=ジクロロメタン
DIPEA=ジイソプロピルエチルアミン
DMF=N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO=ジメチルスルホキシド
EtOAc=酢酸エチル
HOAT=1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール
HPLC=高速液体クロマトグラフィー
MIC=最小阻害濃度
MS=質量分析法
PMB=p−メトキシベンジル
PyBOP=ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート
THF=テトラヒドロフラン
TLC=薄層クロマトグラフィー
TFA=トリフルオロ酢酸。
【0134】
以下の実施例にて報告される全ての温度は、別段示されない限り、摂氏(℃)で示される。また、別段示されない限り、試薬、出発物質および溶媒は、化学薬品業者(例えば、Aldrich、Fluka、Sigmaなど)から購入し、さらに精製することなく使用した。塩酸バンコマイシン半水和物(semi−hydrate)を、Alpharma,Inc.,Fort Lee,NJ 07024(Alpharma AS,Oslo,Norway)から購入した。
【0135】
逆相HPLCを、代表的には、別段示されない限り、C18カラムおよび(A)98%
水、2% アセトニトリル、0.1% TFAを使用し、(B)10% 水、90% アセトニトリル、0.1% TFAの過度の勾配(例えば、0〜約70%)を用いて、行った。
【0136】
(実施例A)
(7R)−7−[((Z)−2−(2−アミノ−5−クロロチアゾール−4−イル)−2−(3−アミノプロポキシイミノ)アセトアミド]−3−[(1−ピリジニオ)メチル]−3−セフェム−4−カルボキシレートビス−トリフルオロ酢酸塩の合成
以下の合成を、上記のスキームAにおいて一部例示する。
【0137】
工程1− N−(tert−ブトキシカルボニル)−3−ブロモプロピルアミン(すなわち、Rが−(CH−であり、Rが水素であり、R11がBOCであり、Zがブロモである化合物4)の調製。
【0138】
3−ブロモプロピルアミンヒドロブロミド(100g、457mmol)を、1.6Lの無水THF中に懸濁した。この混合物を、氷/水浴中で0℃に冷却し、190mLのトリエチルアミンを添加しながら激しく攪拌した。この混合物に、200mL THF中のtert−ブトキシカルボニル無水物(112.6g、516mmol)を滴下した。この氷浴を、周囲温度まで温め、その混合物を、一晩攪拌し、その時点で、TLCにより反応が完全に完了したことが示された。次いで、その混合物を濾過し、その濾液を減圧下で濃縮した。残渣の油を、1500mL ヘキサンで希釈し、−20℃にて3日間保存した。次いで、この混合物をデカントし、残渣の固体を、減圧下で乾燥させて、101g(94% 収率)の標題中間体を結晶性白色固体として得た。
【0139】
H NMR(DMSO−d,300MHz):δ1.35−1.39(s,9H),1.91−1.95(m,2H),2.99−3.04(t,2H),3.43−3.52(t,2H),6.95−6.99(t,1H)。
【0140】
工程2− エチル(Z)−2−(2−トリフェニルメチルアミノチアゾール−4−イル)−2−(3−N−BOC−アミノプロポキシイミノ)アセテート(すなわち、Rが−(CH−であり、Rが水素であり、Rがトリフェニルメチルであり、R11がBOCであり、Aが水素である化合物5aのエチルエステル)の調製
エチル(Z)−2−(2−トリフェニルメチルアミノ)チアゾール−4−イル)−2−(ヒドロキシイミノ)アセテートヒドロクロリド(100g、202.4mmol)を、700mLの無水DMF中に溶解した。この攪拌混合物に、炭酸セシウム(230.8g,708.5mmol)、続いてヨウ化テトラブチルアンモニウム(18.7g、50.6mmol)を添加した。次いで、DMF(100mL)中のN−BOC−3−ブロモプロピルアミン(50.6g、212.5mmol)を、30分にわたって滴下した。この混合物を2時間攪拌し、その時点で、HPLCにより、反応が完了したことが示された。次いで、この混合物を濾過し、その濾過ケーキを、200mLのDMFで洗浄した。その濾液を、2Lの酢酸エチルに溶解し、700mLの1N HCl、続いて700mLの飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、最後に500mLのブラインで洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣のオイルを、250mLの沸騰エタノールに溶解し、ビーカーに注いだ。一旦物質が完全に冷却された後に、残渣の粘土状固体を、ブフナー漏斗に入れ、予め−20℃に冷却しておいた50mLのエタノールで洗浄した(注:この生成物は、エタノール中に中程度に可溶性であり、より多量の使用は、最終生成物の収量全体を減少させる)。風乾した後、残渣の固体を、乳鉢および乳棒で微細な粉末にすりつぶし、減圧下で乾燥して、117g(94%収量)の標題中間体を微細な乳白色の粉末として得た。
【0141】
H NMR(DMSO−d,300MHz):δ1.01−1.1(t,3H),1.31(s,9H),1.60−1.70(t,2H),2.94−2.99(m,2H),3.95−4.04(m,4H),6.77−6.81(t,1H),6.95(s,1H),7.16−7.38(m,15H),8.80(s,1H)。
【0142】
MS m/z:615.4[M+H]
【0143】
工程3− (Z)−2−(2−トリフェニルメチルアミノチアゾール−4−イル)−2−(3−N−BOC−アミノプロポキシイミノ)アセテート(すなわち、Rが−(CH−であり、Rが水素であり、Rがトリフェニルメチルであり、R11がBOCであり、Aは水素である化合物5a)の調製
上記工程2からのエチルエステル(84.2g、137mmol)を、400mLの無水エタノール中に懸濁し、攪拌しながら、油浴中で80℃に加熱した。全ての物質が溶解した後に、150mLのエタノール中の水酸化カリウム(23.1g,411mmol)を、20分にわたりその溶液に滴下した。沈殿物が、塩基の添加が完了した10分後に形成し始め、さらに10分以内に混合物は、固体であった。混合物を油浴から取り出し、氷浴中で冷却した。酢酸エチルおよび水を、冷却した混合物に添加し、次いで、これを、分離漏斗に注いだ。混合物を1N リン酸で洗浄し、これにより、白色固体の形成が生じた(注:生成物を、1N HClのような強酸で洗浄すると、生成物の分解が生じる)。分離漏斗に水を添加して、この固体を溶解し、次いで、この有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液およびブラインで洗浄した。この有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮して、暗褐色固体として標題中間体を得た(80g、99%収量)。
【0144】
(工程4− (Z)−2−(2−トリフェニルメチルアミノ−5−クロロチアゾール−4−イル)−2−(3−N−BOC−アミノプロポキシイミノ)アセテート)(すなわち、化合物5b、ここでRは−(CH−であり、Rは水素であり、Rはトリフェニルメチルであり、R11はBOCであり、そしてAはクロロである)の調製)
上記の工程3からの中間体(10g、17.04mmol)を、70mLのクロロホルムに溶解し、そして固体N−クロロスクシンイミド(2.28g、17.04mmol)を添加しながら、撹拌した(注意:実験は、過剰のNCSが所望でない副生成物を生成し得ると示唆する)。この混合物を、一晩(最低15時間)撹拌し、この時点でHPLCは、反応が完了したことを示した。次いで、この混合物を、真空下で濃縮し、そしてこの残渣を最少量のDMFに溶解した。この混合物を、激しく撹拌した水に添加し、沈殿物を形成し、この沈殿物を次いで濾過によって回収した。この固体を、空気乾燥し、9.5g(90%収率)の黄褐色の固体として表題の中間体を得た。HNMRは、最少量のスクシンイミドのみが残存していることを示した(注意:塩素化生成物の単離は、次の工程において首尾よいカップリングを必要としないが、実験は、残渣のスクシンイミドが引き続くピリジン置換を妨害し得ることを示唆する)。あるいは、塩素化反応が完了した後、反応混合物を、水(3×)、ブラインで洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウムで乾燥した。次いで、この溶液を濾過し、そして真空下で濃縮し、黄褐色の固体として表題の中間体(90%)を得た。
【0145】
【化28】

(工程5− (7R)−7−(Z)−2−(2−トリフェニルメチルアミノ−5−クロロチアゾール−4−イル)−2−(3−N−BOC−アミノプロポキシイミノ)アセトア
ミド]−3−クロロメチル−3−セフェム−4−カルボキシレートp−メトキシベンジルエステル(すなわち、化合物7、ここでRは、−(CHであり、Rは水素であり、Rはトリフェニルメチルであり、R11はBOCであり、そしてR12はp−メトキシベンジルである)の調製)
工程4からの中間体(0.62g、1mmol)を、6mLの無水THFに溶解し、そしてこの混合物に、4mLの無水THF中の0.34g(0.83mmol)の7−アミノ−3−クロロメチルセファロスポロニン酸p−メトキシベンジルエステルヒドロクロリド(すなわち化合物6、ここでR12はPMBである;Otsuka,Japanから入手した)を添加した。得られた混合物を窒素下で撹拌し、−35℃まで冷却した。この冷却した混合物に、ジイソプロピルエチルアミン(0.52mL、3mmol)、次いで亜リン酸オキシクロリド(0.11mL、1.2mmol)を添加した。この混合物を−20℃で30分間撹拌し、次いで湿潤THFでクエンチし、そして酢酸エチルで希釈した。この混合物を、水、1N HCl、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そして濃縮し、赤茶色の固体として0.88g(100%収率)の表題の中間体を得た。HNMRは、所望でない異性化および残りのスクシンイミドを示さなかった。
【0146】
【化29】

(注意:実験は、上記の反応が大きなスケールで行なわれる場合、DIPEAが異性化を引き起こすことを示唆する。塩基として2,4,6−コリジン(collidine)を使用し、そして反応全体の過程(約10分)の間に、−35℃の温度を維持する変更した手順は、この問題を回避する。)
(工程6− (7R)−7−[(Z)−2−(2−トリフェニルメチルアミノ−5−クロロチアゾール−4−イル)−2−(3−N−BOC−アミノプロポキシイミノ)アセトアミド]−3−[(1−ピリジニオ)メチル]−3−セフェム−4−カルボキシレートp−メトキシベンジルエステル(すなわち、化合物8、ここでRは−(CH−であり、Rは水素であり、Rはトリフェニルメチルであり、R11はBOCであり、R12はp−メトキシベンジルであり、そしてmは0である)の調製)
工程5からの中間体(500mg、0.514mmol)を2mLの無水アセトンに溶解し、そしてホイルを使用して光から保護した。この溶液を窒素雰囲気下で撹拌し、そして77mg(0.514mmol)のヨウ化ナトリウムを添加し、そしてこの得られた混合物を1時間撹拌した。ピリジン(63μL、0.772mmol)を添加し、そして90分後、この混合物を25mLのエチルエーテルに添加した。この混合物を遠心分離し、そして得られたペレットをエチルエーテルで洗浄し、そして再び遠心分離した。このエーテルをデカントし、そしてペレットを真空下で乾燥し、黄褐色の固体として定量的な収率で表題の中間体を得、これをさらに精製することなく使用した。
【0147】
【化30】

(工程7− (7R)−7−[(Z)−2−(2−アミノ−5−クロロチアゾール−4−イル)−2−(3−アミノプロポキシイミノ)アセトアミド]−3−[(1−ピリジニオ)メチル]−3−セフェム−4−カルボキシレートビス−トリフルオロ酢酸塩(すなわち、化合物2、ここでRは−(CH−であり、Rは水素であり、そしてmは0である)の調製)
工程6からの中間体(14.4g)を、トリフルオロ酢酸およびジクロロメタンの1:1の混合物(120mL)に溶解した。この撹拌している混合物中に、6.2mLのアニソールを添加し、そしてこの得られた混合物を室温にて3時間撹拌した。次いで、この混合物を濃縮し、そして残渣を酢酸エチルに溶解し、そして水で抽出した。この水層を凍結乾燥し、そして得られた粉末を水に溶解し、そして逆相分取用(prep)HPLCを使用して精製した。次いで、この得られた精製水溶液を凍結乾燥し、3.3g(30%収率)の表題の中間体を得た。
【0148】
【化31】

(注意:上記の反応をまた、アニソールの代わりにトリエチルシランを使用して行い得る。さらに、生成物を、エチルエーテル粉砕を使用して単離し得る。)
(実施例B)
((7R)−7−[(Z)−2−(2−アミノ−5−クロロチアゾール−4−イル)−2−(3−アミノプロポキシイミノ)アセトアミド]−3−[(2,3−シクロペンテノ−1−ピリジニオ)メチル]−3−セフェム−4−カルボキシレートビス−トリフルオロ酢酸塩の合成)
実施例Aに記載の手順を使用して、そして工程6のピリジンを2,3−シクロペンテノピリジン(Koei,Japanから入手した)に置換して、表題の中間体を得た。
【0149】
【化32】

(実施例C)
((7R)−7−[(Z)−2−(2−アミノ−5−クロロチアゾール−4−イル)−2−(6−アミノヒドロキシイミノ)アセトアミド]−3−[(1−ピリジニオ)メチル]−3−セフェム−4−カルボキシレートビス−トリフルオロ酢酸塩の合成)
実施例Aに記載の手順を使用して、そして工程2のN−BOC−3−ブロモプロピルアミンをN−BOC−6−ヨードヘキシルアミンに置換して(そしてヨウ化テトラブチルアンモニウムを除去して)、表題の中間体を得た。
【0150】
【化33】

(実施例D)
((7R)−7−[(Z)−2−(2−アミノ−5−クロロチアゾール−4−イル)−2−(2−(2−アミノエトキシ)エトキシイミノ)アセトアミド]−3−[(1−ピリジニオ)メチル]−3−セフェム−4−カルボキシレートビス−トリフルオロ酢酸塩の合成)
以下の手順を工程2と置換したことを除いて、実施例Aの手順を使用した:
(工程2− エチル(Z)−2−(2−トリフェニルメチルアミノチアゾール−4−イル)−2−[2−(2−N−BOC−アミノエチル)エトキシイミノ]アセテート(すなわち、化合物5aのエチルエステル、ここで、Rは−(CH−O−(CH−であり、Rは水素であり、Rはトリフェニルメチルであり、R11はBOCであり、そしてAは水素である)の調製)
実施例Aの工程1からの中間体(42.5g、86mmol)を、N−BOC−2−(2−ヨードエトキシ)−エチルアミン(28.5g、90mmol)(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エタノールから3工程で調製した、すなわち(i)BOCO、KOH、(ii)MsCl、EtNおよび(iii)NaI))およびDMF(300mL)中の炭酸セシウム(81.4g、258mmol)の撹拌した懸濁液に添加した。この懸濁液を16時間、室温にて撹拌し、この時点でHPLCは、反応が完了したことを示した。次いで、この反応混合物を濾過し、そしてこのフィルターケーキ(filter cake)をDMF(100mL)で洗浄した。この濾液を酢酸エチル(1L)で希釈し、そして水(300mL)、1N HCl(200mL)、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(200mL)およびブライン(200mL)で洗浄した。この有機層を、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、そして真空中で濃縮した。この残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン、1:1)で精製し、オフホワイトの固体として49.7g(90%収率)の表題の中間体を得た。
【0151】
【化34】

(実施例E)
((7R)−7−[(Z)−2−(2−アミノ−5−クロロチアゾール−4−イル)−2−(4−アミノメチルベンジルオキシイミノ)アセトアミド]−3−[(1−ピリジニオ)メチル]−3−セフェム−4−カルボキシレートビス−トリフルオロ酢酸塩の合成)
実施例Aおよび実施例Dの工程2に記載の手順を使用して、そして工程2のN−BOC−2−(2−ヨードエトキシ)−エチルアミン3−ブロモプロピルアミン臭化水素をN−BOC−4−(ヨードメチル)ベニルアミン(4−(アミノメチル)安息香酸から4工程で調製した、すなわち、(i)BOCO、KOH、(ii)LiAlH、(iii)MsCl、EtNおよび(iv)NaI)に置換して、表題の中間体を得た。
【0152】
【化35】

(実施例F(比較))
((7R)−7−[(Z)(−2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−2−(3−アミノプロポキシアミノ)アセトアミド]−3−[(1−ピリジニオ)メチル]−3−セフェム−4−カルボキシレートビス−トリフルオロ酢酸塩の合成)
上記の実施例Aの工程4を除いて、実施例Aの中間体のdes−クロロ誘導体を調製した。
【0153】
【化36】

(実施例G)
(バンコマイシン3−(アミノオキシ)プロピルアミノの合成)
(工程1− N−(3−アミノプロポキシ)フタルイミドの調製)
N−(tert−ブトキシカルボニル)−3−ブロモプロピルアミン(上記の実施例Aの工程1から)(9.58g、40.23mmol)およびN−ヒドロキシフタルイミド(6.36g、39mmol)を、70mLの無水DMFに溶解した。この溶液にジイソプロピルエチルアミン(7.01mL、40.23mmol)を添加し、深紅色を生じた。この反応物を室温にて16時間撹拌し、この時間の後に、この反応混合物を500mLのジエチルエーテルに注いだ。この得られた白色沈殿物を濾過し、そして捨てた。この有機溶液を、2×200mLの飽和重炭酸ナトリウムおよび2×200mLの水で洗浄した
。この有機溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、そして濃縮し、白色固体を得た。次いで、この固体を50mLのDCMおよび50mLのTFAに溶解した。1時間の撹拌後、この溶液を、300mLのジエチルエーテルに注いだ。この得られた沈殿物を濾過し、ジエチルエーテルで洗浄し、そして真空下で乾燥し、そのトリフルオロ酢酸塩として表題の中間体を得た。
【0154】
【化37】

(工程2− バンコマイシン3−(フタルイミドオキシ)プロピルアミドの調製)
バンコマイシンヒドロクロリド(10.0g、6.74mmol)および工程1からの中間体(2.70g、8.09mmol)を、100mLの無水DMF中でスラリーにした。ジイソプロピルエチルアミン(4.70mL、26.98mmol)を添加し、そしてこの得られた混合物を、室温にて10分間撹拌した。次いで、DMF(20mL)中のPyBOP(5.61g、10.78mmol)およびHOAt(1.65g、10.78mmol)を添加し、そしてこの反応物を室温にて撹拌した。1時間後、この反応混合物を、ジエチルエーテル(500mL)に添加した。この得られた沈殿物を濾過し、ジエチルエーテルで洗浄し、そして真空下で乾燥し、オフホワイトの固体として表題の中間体を得た。
【0155】
MS m/z=1651.8(M+H)
【0156】
(工程3− バンコマイシン3−アミノオキシ)プロピルアミドの調製)
工程2からの中間体(11.2g、6.74mmol)を80mLの無水DMF中でスラリーにし、そしてヒドラジン一水和物(0.65mL、13.48mmol)を添加した。この反応物を室温にて4.5時間撹拌し、次いで1mLのトリフルオロ酢酸、次いで300mLのジエチルエーテルをこの反応混合物に添加した。激しい撹拌の後、この得られた沈殿物を濾過し、ジエチルエーテルで洗浄し、そして真空下で乾燥した。この表題の化合物を、水/メタノールの勾配を使用する逆相HPLCで精製し、凍結乾燥した粉末として表題の中間体を得た。
【0157】
MS m/z=1522.9(M+H)
【0158】
(実施例H)
((7R)−7−[2−(2−アミノ−5−クロロチアゾール−4−イル)−2−オキソアセトアミド]−3−(1−ピリジニオ)メチル−3−セフェム−4−カルボキシレートビス−トリフルオロアセテートの合成)
(工程1− エチル2−(2−ホルミルアミノ−5−クロロチアゾール−4−イル)−2−オキソアセテートの調製)
エチル2−(ホルミルアミノチアゾール−4−イル)−2−オキソアセテート(9.1g、39.87mmol)(Aldrich,Milwaukee,WIから入手した)を、50mLの無水DMF中でスラリーにした。N−クロロスクシンイミド(5.6g、41.86mmol)を、固体として添加し、そしてこの懸濁液を室温にて撹拌した。18時間後、この反応混合物を、500mLの水を注いだ。この得られた白色沈殿物を濾過し、水で洗浄し、そして空気乾燥し、白色固体として表題の中間体を得た。
【0159】
【化38】

(工程2− 2−(2−ホルミルアミノ−5−クロロチアゾール−4−イル)−2−オキソ酢酸の調製)
工程1からの中間体(3.6g、13.7mmol)に、1M NaOH(30mL、30mmol)を添加した。この得られた懸濁液を、室温にて2時間撹拌し(この時点で溶液は透明である)、次いで1M HCl(30mL、30mmol)次いで100mLの水を添加した。激しい撹拌の後、この得られた沈殿物を濾過し、最少量の冷水で洗浄し、そして空気乾燥し、オフホワイトの固体として表題の中間体を得た。
【0160】
【化39】

(工程3− (7R)−7−[2−(2−ホルミルアミノ−5−クロロチアゾール−4−イル)−2−オキソアセトアミド]−3−クロロメチル−3−セフェム−4−カルボキシレートp−メトキシベンジルエステルの調製)
工程2からの中間体(1.03g、4.37mmol)、7−アミノ−3−クロロメチルセファロスポロニン酸p−メトキシベンジルエステルヒドロクロリド(1.95g、4.81mmol)およびHOAt(0.74g、4.81mmol)を、15mLの無水DMF中でスラリーにした。この反応容器を窒素でパージし、次いで、外付けの氷浴で0℃まで冷却した。1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミドヒドロクロリド(0.92g、4.81mmol)、次いで2,4,6−コリジン(0.64mL、4.81mmol)を、冷却した反応混合物に添加した。この反応物を0℃にて2時間撹拌し、次いで200mLの0.5M HClに注いだ。この得られた沈殿物を濾過し、水で洗浄し、そして空気乾燥し、赤色固体として表題の中間体を得た。この化合物をさらに精製することなく使用した。
【0161】
MS m/z=607(M+Na)
【0162】
(工程4− (7R)−7−[2−(2−ホルミルアミノ−5−クロロチアゾール−4−イル)−2−オキソアセトアミド]−3−(1−ピリジニオ)メチル−3−セフェム−4−カルボキシレートp−メトキシベンジルエステルの調製)
工程3からの中間体(2.5g、4.27mmol)およびヨウ化ナトリウム(0.64g、4.27mmol)を、アセトンに溶解し、そしてホイルで光から保護した。この反応物を10分間撹拌し、次いで、ピリジン(0.42mL、5.12mmol)を添加した。次いで、この反応物を、室温にて1時間撹拌し、次いで300mLの水を添加した。この得られた沈殿物を濾過し、水で洗浄し、そして空気乾燥し、赤色固体として得た。この固体を、逆相HPLCで精製し、そして得られた水溶液を凍結乾燥し、凍結乾燥した粉末として表題の中間体を得た。
【0163】
MS m/z=628.1(M)
【0164】
(工程5− (7R)−7−[2−(2−アミノ−5−クロロチアゾール−4−イル)−2−オキソアセトアミド]−3−(1−ピリジニオ)メチル−3−セフェム−4−カルボキシレートビス−トリフルオロアセテートの調製)
工程4からの中間体(0.11g、0.18mmol)を、5mLのメタノールに溶解し、そして濃塩酸(0.5mL)を添加した。この得られた溶液を、室温にて1.5時間撹拌した。このメタノールを真空下で除去し、そしてアセトニトリル(10mL)を添加
した。次いで、この溶液を真空下で濃縮し、そしてこの残渣にDCM(2mL)およびTFA(2mL)を添加し、そして得られた混合物を室温にて1.5時間撹拌した。次いで、ジエチルエーテル(50mL)を添加し、表題の中間体を遠心分離によって単離した。この中間体をさらに精製することなく使用した。
【0165】
MS m/z=479.9(M)
【0166】
(実施例I)
(Rは−(CH−であり、R、R、R、Rは水素であり、Rはヒドロキシであり、Rはメチルであり、XおよびXはクロロであり、そしてmは0である、化合物13の合成)
(工程1− (Z)−2−(2−アミノ−5−クロロチアゾール−4−イル)−2−(3−アミノプロポキシイミノ)アセテートの調製)
実施例Aの工程4からの中間体(0.75g、1.21mmol)を、DCM(5mL)およびトリフルオロ酢酸(5mL)中に溶解した。室温で1時間攪拌した後、ジエチルエーテル(100mL)を添加した。得られた沈殿物を濾過し、ジエチルエーテルで洗浄し、減圧下で乾燥させ、茶色固体として表題中間体を得た。
【0167】
(工程2− 化合物13の調製、ここで、Rは−(CH−であり、R、R、R、Rは水素であり、Rはヒドロキシであり、Rはメチルであり、XおよびXはクロロであり、そしてmは0である)
塩酸バンコマイシン(1.3g、0.88mmol)およびHOAt(0.14g、0.088mmol)を、3.5mLの無水DMSO中でスラリーにした。無水DMF(3.5mL)中のPyBOP(0.46g、0.88mmol)の溶液を添加し、次いでDIPEA(154μL、0.88mmol)を添加した。20分間の攪拌後、DMF(1mL)中、工程1からの中間体(0.22g、0.44mmol)の溶液を添加し、次いでDIEA(0.54mL、3.08mmol)を迅速に添加した。この反応混合物を、室温で1時間攪拌し、次いでトリフルオロ酢酸(0.5mL)を添加し、次いでEtO(100mL)を迅速に添加した。得られた沈殿物を濾過し、EtOで洗浄し、そして減圧下で乾燥させた。粗生成物を、逆相−HPLCによって精製し、そして得られた水溶液を凍結乾燥させて、凍結粉末として表題中間体を得た。
【0168】
MS m/z=1711.0(M+H)
【0169】
(実施例1)
(Rは−(CH−であり、R、R、R、Rは水素であり、Rはヒドロキシであり、Rはメチルであり、XおよびXはクロロであり、そしてmは0である、式Iの化合物の合成(表Iにおける化合物1))
塩酸バンコマイシン(4.2g、2.8mmol)を、40mLのDMSO中に溶解した。この溶液に、DMF(40mL)中のPyBOP(1.3g、2.6mmol)およびHOAT(0.35g、2.6mmol)の溶液を添加し、次いでジイソプロピルエチルアミン(0.98mL、5.68mmol)を添加した。この混合物を、室温で30分間攪拌し、次いでトリフルオロ酢酸(0.44mL、5.7mmol)でクエンチした。次いでこの混合物を、0℃に冷却し、そしてDMF(20mL)中、上記実施例Aからの中間体(1.3g、2.6mmol)の溶液を0℃で添加した後、2,4,6−コリジン(2,4,6−collidine)(1.5mL、11.4mmol)を添加した。この混合物を、0℃で4時間維持し、次いでトリフルオロ酢酸(1.1mL)でクエンチした。次いで、この混合物にエチルエーテルを添加し、沈殿物を形成し、遠心分離し、エーテルで洗浄し、デカントし、そして減圧下で乾燥させた。得られた粉末を、水に溶解し、分取用HPLCを用いて精製した。所望の生成物を含む画分を凍結乾燥させ、表題化合物
のトリ−トリフルオロ酢酸塩を得た。次いで、この塩のアニオンを、Amberlyte樹脂を用いて交換し、表題化合物のトリ−塩酸塩(1.4g、27%収率)を白色粉末として得た。
【0170】
MS m/z 953.3[[M+H]−ピリジン]/2;992.0[M+H]/2。
【0171】
さらに、表1に示す化合物2〜30を、実施例Aおよび実施例1の手順を用いて、実施例Aの工程6のピリジンの代わりに、以下の代用ピリジンを用いて調製する(調製した):
実施例2− 2−ピコリン
実施例3− 3−ピコリン
実施例4− 4−ピコリン
実施例5− 2−メトキシピリジン
実施例6− 3−メトキシピリジン
実施例7− 4−メトキシピリジン
実施例8− 2−チオメトキシピリジン
実施例9− 3−チオメトキシピリジン
実施例10− 4−チオメトキシピリジン
実施例11− 2−フルオロピリジン
実施例12− 3−フルオロピリジン
実施例13− 4−フルオロピリジン
実施例14− 2−クロロピリジン
実施例15− 3−クロロピリジン
実施例16− 4−クロロピリジン
実施例17− 2−フェニルピリジン
実施例18− 3−フェニルピリジン
実施例19− 4−フェニルピリジン
実施例20− 4−クロロプロピルピリジン
実施例21− 4− (カルボキシチオメトキシ)ピリジン
実施例22− イソニコチンアミド
実施例23− 2,3−ルチジン
実施例24− 3,4−ルチジン
実施例25− 3,5−ルチジン
実施例26− 3,4−ジメトキシピリジン
実施例27− 4−メトキシ−3−メチルピリジン
実施例28− 4−フルオロ−3−メトキシピリジン
実施例29− 2,3−シクロヘキセノピリジン(cyclohexenopyridine)
実施例30− 2,3−シクロペンテノピリジン(cyclopentenopyridine)
上記代用ピリジンは、市販されているか、または文献の手順によって調製され得るかのいずれかである。
【0172】
(実施例31)
(Rは−(CH−であり、R、R、R、Rは水素であり、Rはヒドロキシであり、Rはメチルであり、XおよびXはクロロであり、そしてmは0である、式Iの化合物の合成(表Iにおける化合物31))
実施例1の手順を使用し実施例Aの中間体の代わりに実施例Cの中間体を用いて、表題化合物を調製した。
【0173】
MS m/z 2026.5(M+)。
【0174】
(実施例32)
(Rは−(CH−O−(CH−であり、R、R、R、Rは水素であり、Rはヒドロキシであり、Rはメチルであり、XおよびXはクロロであり、そしてmは0である、式Iの化合物の合成(表Iにおける化合物32))
実施例1の手順を使用し実施例Aの中間体の代わりに実施例Dの中間体を用いて、表題化合物を調製した。
【0175】
MS m/z 967.9[(M−ピリジン)/2]
【0176】
(実施例33)
(Rは−CH−1,4−Ph−CH−であり、R、R、R、Rは水素であり、Rはヒドロキシであり、Rはメチルであり、XおよびXはクロロであり、そしてmは0である、式Iの化合物の合成(表Iにおける化合物33))
実施例1の手順を使用し実施例Aの中間体の代わりに実施例Eの中間体を用いて、表題化合物を調製した。
【0177】
MS m/z 1967.0[M+H],984.2[(M−ピリジン)/2]
【0178】
(実施例34(比較))
(Rは−(CH−であり、R、R、R、Rは水素であり、Rはヒドロキシであり、Rはメチルであり、XおよびXはクロロであり、そしてmは0である、式Iのdes−クロロ化合物の合成(化合物34))
実施例1の手順を使用し実施例Aの中間体の代わりに実施例Fのdes−クロロセファロスポリン中間体を用いて、表題化合物を調製した。
【0179】
MS m/z 935.3[[M+H]−ピリジン]/2;974.9[M+H]/2。
【0180】
(実施例35)
(最小発育阻止濃度(MIC)の決定)
最小発育阻止濃度(MIC)アッセイを、NCCLSガイドラインに記載の微量液体希釈法(broth microdilution method)(NCCLS.2000.Methods for Dilution Antimicrobial Susceptibility Tests for Bacteria That Grow
Aerobically;Approved Standard−第5編、第20巻、No.2を参照のこと)を用いて実施した。細菌株を、American Type Tissue Culture Collection(ATCC)、Stanford University Hospital(SU)、Kaiser Permanente Regional Laboratory in Berkeley(KPB)、Massachusetts General Hospital(MGH)、the Centers for Disease Control(CDC)、the San Francisco Veterans’Administration Hospital(SFVA)またはthe University of California San Francisco Hospital(UCSF)から入手した。バンコマイシン耐性腸球菌は、それらのテイコプラニン(teicoplanin)に対する感受性に基づいて、Van AまたはVan Bとして表現型分類した。Van A、Van B、Van C1またはVan C2として遺伝子型分類した、いくつかのバンコマイシ
ン耐性腸球菌をまた、Mayo Clinicから入手した。
【0181】
このアッセイにおいて、低温保温した参照の細菌培養物および臨床株を、適切な寒天培地(すなわち、Trypticase Soy Agar、脱繊維化ヒツジ赤血球(erthrocyte)含有トリプティケースソイ寒天、ブレインハートインフュージョン寒天、チョコレート寒天)での単離のために線画した。コロニー形成を可能にするためのインキュベーション後、これらのプレートをパラフィルムで密閉し、そして2週間まで冷蔵保存した。アッセイの接種材料を調製し、低い可変性を確実にするために、寒天プレートに培養した細菌単離物からのいくつかのコロニーを、接種ループを用いてつつき、そして無菌的にMueller−Hinton Broth (製造業者の認証に基づいて、必要とされるレベルの二価のカチオンを補充した)に移した。ブロス培養物を、35℃で一晩増殖させ、新鮮な、予め温めたブロスに希釈し、そして対数期まで増殖させた;これは、0.5 MacFarland standardまたは1mlあたり1×10コロニー形成単位(CFU/mL)に等しい。懸度がMacFarland standardに等しい場合、種可変性に起因して、全ての細胞懸濁物で1×10 CFU/mLを含むとは限らない。従って、受容可能な調節(NCCLSガイドラインに基づく)を、異なる細菌株の希釈物において作製した。96ウェルマイクロタイタープレートにおいて、2倍連続希釈した抗生物質濃度シリーズ(やはり、対応する培地(100μL)中)に希釈した場合に、Mueller−Hinton Broth、補充したMueller−Hinton Broth、またはHaemophilus試験培地中で培養物(100μL)が最初の細菌濃度(5×10CFU/mL)を得るように、接種材料を希釈した。次いで、プレートを、35℃で18〜24時間インキュベートした。MICを、細菌の増殖を伴わない最低濃度のウェルとして目視で読み取った。細菌の増殖を、3つより多くのピンポイントコロニー、直径が2mmより大きな沈殿した細胞のボタン(button)、または明確な懸度として規定する。
【0182】
最初のスクリーニングにおいて慣用的に試験される株としては、以下が挙げられる:メチシリン感受性Staphylococcus aureus(MSSA)、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)、ペニシリナーゼを生成するStaphylococcus aureus、メチシリン感受性Staphylococcus epidermidis(MSSE)、メチシリン耐性Staphylococcus epidermidis(MRSE)、バンコマイシン感受性Enterococcus faecium(EFMVS)、バンコマイシン感受性Enterococcus faecalis(EFSVS)、テイコプラニンにも耐性のバンコマイシン耐性Enterococcus faecium(EFMVR Van A)、テイコプラニンに感受性のバンコマイシン耐性Enterococcus faecium(EFMVR Van B)、テイコプラニンにも耐性のバンコマイシン耐性Enterococcus faecalis(EFSVR Van A)、テイコプラニンに感受性のバンコマイシン耐性Enterococcus faecalis(EFSVR Van
B)、ペニシリン感受性Streptococcus pneumoniae (PSSP)およびペニシリン耐性Streptococcus pneumoniae(PSRP)。Mueller−Hinton brothにおける十分な増殖についての、PSSPおよびPSRPの無能性に起因して、これらの株についてのMICを、脱線維素血液を補充したTSブロスまたはHaemophilus試験培地のいずれかを補充したTSブロスを用いて決定した。
【0183】
次いで、上記の株に対して十分な活性を有する試験化合物を、臨床単離物(上に列挙した種、ならびに種分化していない(non−speciated)コアグラーゼ陰性の、メチシリンに対して感受性Staphylococcus(MS−CNS)および耐性Staphylococcus(MR−CNS)の両方を含む)のより多くのパネルにおけ
るMIC値について試験した。さらに、これらの試験化合物をまた、グラム陰性微生物(例えば、Escherichia coli、Pseudomonas aeruginosa、Klebsiella pneumoniae、Enterobacter cloacae、Acinetobacter baumannii、Haemophilius influenzaeおよびMoraxella catarrhalis)に対してMICについてアッセイした。
【0184】
表IIは、既知の抗生物質であるバンコマイシンと比較して、メチシリン耐性S.aureus(MRSA)およびメチシリン耐性S.epidermitis(MRSE)に対する本発明の化合物についてMIC90データを示す。
【0185】
(表II)
(最小発育阻止濃度(MIC))
【0186】
【表4】

1 試験した株の数。
2 試験した株の90%についての最小発育阻止濃度。
【0187】
さらに、表IIIに示すように、本発明の化合物はまた、des−クロロ誘導体(すなわち、化合物34)と比較した場合、種々のメチシリン耐性S.aureus株に対して驚くべき、そして予測外のMICを有した。
【0188】
(表III)
(最小発育阻止濃度)
【0189】
【表5】

(実施例36)
(時間−殺傷アッセイ(time−kill assay))
この時間−殺傷アッセイは、試験化合物の細菌活性の速度を測定するための方法である。これらの手順は、V.Lorian、「Antibiotics in Laboratory Medicine」、第4版、WilliamsおよびWilkins(1996)、104〜105頁に記載されるのと類似の手順である。迅速な時間−殺傷は、細菌コロニー形成の迅速な防護および宿主組織損傷を減少させることが所望される。
【0190】
細菌性接種材料を、MICの決定について実施例35に記載されるように調製した。細菌を、振盪フラスコ中の予め温めた培地に希釈し、そして振盪しながらインキュベート(200rpm、35℃)した。0時間、1時間、4時間、および24時間で、サンプルをフラスコから取り出し、細菌を、プレート計数によって数えた。最初のサンプリングに続いて、アッセイされるべき化合物を振盪フラスコ培地に添加した。化合物の添加の前および添加後、これらの間隔でのプレート計数を、時間−殺傷曲線に図式的に表した。細菌活性は、24時間まで、細菌細胞数において3対数以上の減少(同程度〜99.9%より多くの減少)として規定される。
【0191】
このアッセイにおいて、式Iの化合物(すなわち、化合物1)は、4時間において1μg/mL以下の濃度で、MSSA 13709およびMRSA 33591に対して殺菌性であった。比較によって、バンコマイシンは、24時間において4μg/mLの濃度で、MSSA 13709およびMRSA 33591に対して殺菌性であった。
(実施例37)
(好中球減少マウスにおけるインビボでの有効性研究)
動物(雄性CD−1マウス、20−30g)を、Charles Rivers Laboratories(Gilroy、CA)から入手し、そして餌および水を自由に摂取させた。好中球減少症を、細菌接種の4日前および2日前にシクロホスファミドの腹腔内(IP)注射(200mg/kg)を介して誘導した。
【0192】
使用した生物は、診療的に関連のあるグラム陽性病原体の感受性株または耐性株(例え
ば、メチシリン感受性Staphylococcus aureus(MSSA 13709)およびメチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA 33591))のいずれかであった。細菌接種材料の濃度は約10CFU/mLである。動物を、イソフルランで軽く麻酔し、そして50mLの細菌接種材料を前太腿に注射した。接種の1時間後、動物に、ビヒクルまたは試験化合物の適切な用量を静脈内投与した。処置の0時間後および24時間後に、これらの動物を安楽死させ(CO窒息)、そして前太腿および後太腿を無菌的に収集した。この太腿を、10mLの滅菌生理食塩水に入れ、ホモジナイズした。ホモジネートの希釈物を、トリプティクソイ(triptic soy)寒天プレート上にプレートし、これを一晩インキュベートした。所定のプレート上の細菌コロニーの数は、希釈係数を乗じ、太腿重量(グラム)で除算し、対数CFU/gとして表した。ED50(太腿力価において最大限小の50%を生成するために必要とした容量)を、各試験化合物について評価した。
【0193】
MRSA 33591を使用したこのアッセイにおいて、式Iの化合物(すなわち、化合物1)は、バンコマイシンについて、ivで9mg/kgのED50と比べて、ivで0.20mg/kg未満のED50を有した。
(実施例38)
(水溶性の決定)
本発明の化合物の水溶性を、以下の手順を用いて決定した。pH2.2での5重量%デキストロース緩衝溶液を、5重量%デキストロース水溶液(99mL)(Baxter)に1N塩酸(1mL)(Aldrich)を添加することによって調製した。
【0194】
次いで、較正標準のための1mg/mlストック溶液を、DMSO(1mL)に試験化合物(1mg)を溶解することによって調製した。この溶液を30秒間、ボルテックスにかけ、次いで10分間超音波処理した。次いで、この溶液を以下の濃度:50μg/mL、125μg/mL、250μg/mL、375μg/mLおよび500μg/mLを有する較正標準を調製するために水で希釈した。
【0195】
各試験化合物(30mg)を、Millipore non−sterile,Ultrafree−MC 0.1μmフィルターユニット(Millipore UFC30VVOO)に秤量して入れ、電磁攪拌子を各ユニットに加えた。次いで、5重量%のデキストロース緩衝溶液(750μL)を各ユニットに加え、そしてこれらの混合物を5分間ボルテックスにかけた。次いでフィルターユニットをエッペンドルフチューブラックに入れ、そしてチューブラックを電磁攪拌機の上に置いた。次いで各ユニットを、1N NaOH(VWR)を用いてpH3に滴定し、得られた溶液を5分間、7000rpmで遠心分離した。次いで、各ユニットを5%デキストロース緩衝溶液で200倍に希釈し、希釈したサンプルを分析のための自動化サンプラーバイアルに移した。
【0196】
較正標準および試験サンプルを、以下の条件を用いる逆相HPLCによって分析した:
カラム: Luna 150×4.6mm;C18;5u
移動相: A=5/95、B=95/5、両方=MeCN/HO;0.1%TFA
方法: 10m Lido 100(6分で、0〜100% B)
注入容量: 20μL
波長: 214nm

【0197】
各試験サンプルの溶解性を、較正曲線と試験サンプルのピーク領域を比較し、そして希釈係数を乗じることによって算出した。二連のサンプル調製物で上記の手順を用いることによって、化合物1は47.9mg/mLより高い溶解度を有することが分かった。
【0198】
本発明は、その特定の実施形態を参照して記載されているものの、種々の変更がなされ得、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなしに等価物で置換され得ることは、当業者によって理解されるべきである。さらに、多くの改変は、特定の状況、物質、組成物、プロセス、プロセス工程または工程を、本発明の目的、精神および範囲に適応させるためになされ得る。全てのこのような改変は、本明細書に添付される特許請求の範囲内であることが意図される。さらに、本明細書中で引用された全ての刊行物、特許および特許書類は、それらが参考として個々に援用されるかのような程度で、本明細書中にその全体が参考として援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【公開番号】特開2009−40795(P2009−40795A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267993(P2008−267993)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【分割の表示】特願2003−534432(P2003−534432)の分割
【原出願日】平成14年10月11日(2002.10.11)
【出願人】(500154711)セラヴァンス, インコーポレーテッド (129)
【Fターム(参考)】