説明

架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体

【課題】低温特性に優れ、且つ耐熱性、柔軟性に富み、低圧射出成形による複雑な形状への二次加工が可能な架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を提供する。
【解決手段】架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は、エラストマーを含むポリオレフィン系樹脂組成物からなり、示差走査熱量計(DSC)による吸熱ピークが130℃未満に無く、140〜170℃の範囲に少なくとも一つの吸熱ピークが存在する架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体であって、0℃での引張伸びが30%以上であることを満たす発泡体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温特性に優れ、且つ耐熱性、柔軟性に富み、低圧射出成形による複雑な形状への二次加工が可能な架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は、一般的に柔軟性、軽量性および断熱性に優れており、従来から、天井、ドアおよびインスツルメントパネル等の車両用内装材として用いられている。これらの車両用内装材は、通常、シート状の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を真空成形や圧縮成形等により二次加工して所定の形状に成形されている。また、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は、通常、その発泡体に、ポリ塩化ビニル樹脂のシート、熱可塑性エラストマーのシート、天然の布状物または人造の布状物およびレザー等の表皮材(他素材)を貼り合わせた積層体として使用されている。
【0003】
最近の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の真空成形や、低圧射出成形などの圧縮成形では、生産性向上のために加工温度を120〜200℃の高温条件としたり、複雑な形状に成形加工するため深絞り成形が求められたりしている。そのため、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体には、高温での成形加工性が良好であることが要求されている。
【0004】
特に低圧射出成形では180〜230℃の高温樹脂がゲートと呼ばれる孔から射出され、まず発泡体に衝突・展開する。このとき発泡体が溶融し、表面に凹凸が発生して外観上の欠陥が生じる場合がある。また、樹脂が展開され高剪断がかかる部分でやはり発泡体が溶融する場合がある。
【0005】
そこで解決する方法として融点が高く結晶純度の高いホモポリプロピレンを添加し、高温下での応力を向上させる方法が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、この提案では、添加率が1〜7重量%と低く、これを挙げると0℃近辺での割れが発生する場合があった。
【0006】
そこで割れを解決する方法として石油樹脂を添加する方法が提案されている(特許文献2参照)。この場合、石油樹脂がポリオレフィン系樹脂に比べて安定性が劣るために添加量を増やすと品質的に劣る場合があった。
【特許文献1】特開平10−045975号公報
【特許文献2】特開平01−163225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明の目的は、上記従来技術の背景に鑑み、低温特性に優れ、且つ耐熱性、柔軟性に富み、低圧射出成形による複雑な形状への二次加工が可能な架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、以下である。
(1) エラストマーを含むポリオレフィン系樹脂組成物からなり、
示差走査熱量計(DSC)による吸熱ピークが130℃未満に無く、140〜170℃の範囲に少なくとも一つの吸熱ピークが存在する架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体であって、
0℃での引張伸びが30%以上であることを満たすことを特徴とする架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
(2) エラストマーを含むポリオレフィン系樹脂が、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレンランダムブロック共重合体、およびサーモプラスチックオレフィンからなる群より選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする前記(1)記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
(3) エラストマーを10〜50重量%含有することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
(4) 前記(1)から(3)のいずれかに記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体に、他素材を貼り合わせてなる積層体。
(5) 前記(1)から(3)のいずれかに記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体、もしくは前記(4)記載の積層体を成形して得られる成形体。
(6) 前記(5)記載の成形体を用いた自動車内装材。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、成形不具合を発生させることなく、複雑な形状に成形可能な、耐熱性能に優れ高温での成形加工性が良好で、さらに低温特性に優れた架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体、特に自動車内装材の低圧射出成形用に好適に用いられる架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明者らは、前記課題、すなわち成形不具合を発生させることなく複雑な形状に成形可能な、耐熱性能ならびに低温特性に優れた架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体について、鋭意検討し、特定のポリオレフィン系樹脂組成物を成形し、架橋・発泡させてみたところ、上記の課題を一挙に解決することを究明し、本発明に到達したものである。
【0011】
すなわち、本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は、エラストマーを含むポリオレフィン系樹脂組成物からなり、示差走査熱量計(DSC)による吸熱ピークが130℃未満に無く、140〜170℃の範囲に少なくとも一つの吸熱ピークが存在する架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体であって、0℃での引張伸びが50%以上であることを満たすことを特徴としている。
【0012】
本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂であり、更にはアイソタクチックホモポリプロピレン、シンジオタクチックホモポリプロピレンおよびアタクチックホモポリプロピレンなどのプロピレン単独重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体およびエチレン−プロピレンランダムブロック共重合体などに代表されるα−オレフィン−プロピレン共重合体(ここでいうα−オレフィンとは、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンおよび1−ノネンなどのことを言う。)、エラストマー成分を多く含むサーモプラスチックオレフィン(この場合はコンパウンド式でもリアクター式でも良い)、その他に変性ポリプロピレン樹脂、およびエチレン、イソプレン、ブタジエンおよびスチレンなどのブロック部をもつプロピレンブロック共重合体などが挙げられる。その中でも特にエチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレンランダムブロック共重合体、サーモプラスチックオレフィンが好適に用いられる。これらは1種類もしくは2種類以上混合して使用してもよい。
【0013】
本発明ではポリオレフィン系樹脂組成物中のポリオレフィン系樹脂がエラストマーを含んでいても良い。該エラストマーを含むポリオレフィン系樹脂としてはエチレン−プロピレンブロック共重合体やエチレン−プロピレンランダムブロック共重合体、サーモプラスチックオレフィンなどが挙げられる。
【0014】
ここで言うエチレン−プロピレンブロック共重合体は一般的には主鎖としてホモポリプロピレンを重合した後に更にエチレン−プロピレンゴムを重合して得られたものをいう。またエチレン−プロピレンランダムブロック共重合体は一般的に主鎖としてエチレン−プロピレンランダム共重合体を重合した後にエチレン−プロピレンゴムを重合するものである。サーモプラスチックオレフィンにはエチレン−プロピレンゴムを反応炉中で生成するリアクター型と、押出機中で混合する練り込み型があるが一般的には上記エチレン−プロピレンブロック共重合体やエチレン−プロピレンランダムブロック共重合体と同様に主鎖にはホモポリプロピレンやエチレン−プロピレンランダム共重合体のどちらかが選択される。上記エチレン−プロピレンブロック共重合体やエチレン−プロピレンランダムブロック共重合体との違いとしてはエチレン−プロピレンゴム量が比較的多いことが挙げられる。
【0015】
エラストマーを含むポリオレフィン系樹脂のエチレン−プロピレンゴムの含有量(本発明ではこれを「エラストマー比率(a)」とする)に関しては特に規定はしないが、10重量%以上であることが好ましい。10重量%未満の場合は本発明が達成しようとする低温特性が不十分となり、極寒地では「割れ」が発生する恐れがある。ただ、このエラストマー比率(a)の範囲は後に示す熱可塑性エラストマーの後添加を行う場合はこの限りではない。
【0016】
本発明の効果を損なわない範囲で上記ポリオレフィン系樹脂以外のポリオレフィン系樹脂を含んでも構わない。それは例えば、ポリエチレン(超低密度:0.910g/cm未満、低密度:0.910〜0.925g/cm、中密度:0.926〜0.940g/cm、高密度:0.941〜0.965g/cm)、エチレンを主成分とする共重合体、およびこれらの混合物のいずれでもよい。エチレンを主成分とする共重合体としては、例えば、エチレンと炭素数4つ以上のα−オレフィン(例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテンおよび1−オクテン等が挙げられる。)が重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体(線状低密度ポリエチレン)や、エチレン−酢酸ビニル共重合体等を挙げることができる。これらは1種類もしくは2種類以上混合して使用してもよい。
【0017】
本発明におけるポリオレフィン系樹脂の分子量は、一般的な分子量で良く特に規定はしない。例えば、重量平均分子量は100,000〜1,500,000の範囲であり、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は1.5〜10のものを使用すると良い。
【0018】
これらのポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210(1999年)に基づき、ポリプロピレン系樹脂においては温度230℃、荷重2.16kgfポリエチレン系樹脂においては温度190℃、荷重2.16kgfの通常の条件で測定されるもので、特に本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂のMFRは、0.4〜4.0g/10minの範囲にあることが好ましい。より好ましくは0.6〜3.5g/minであり、さらに好ましくは0.6〜2.4g/minである。
【0019】
このMFRが0.4g/10min未満では、シート化する際の剪断によって熱分解型発泡剤が分解するため外観上問題が生じることがあり、また、MFRが4.0g/10minを超えると、発泡シートの耐熱性が不十分となることがある。
【0020】
一般的にMFRは分子量との相関性が強く、分子量が大きければMFRの値は小さくなり、逆に分子量が小さければMFRの値は大きくなる。しかしながら、共重合比率や分子量分布などによって、その値は変化するので一概には規定できない。
【0021】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物はエラストマーを含むことに特徴がある。それはポリオレフィン系樹脂に含まれているものでも良く、また後添加でも構わない。また、その併用でも良い。後添加の場合は熱可塑性エラストマーが好適に用いられる。熱可塑性エラストマーであれば従来より公知の如何なるものでも良いが、例示するならば以下の群より選ばれるものをいう。ポリメチレン型の飽和主鎖をもつゴムとして、アクリルゴム(ACM)、アクリル酸エチル又は他のアクリル酸エステル類とエチレンとのゴム状共重合体(AEM)、アクリル酸エチル又は他のアクリル酸エステル類とアクリロニトニルとのゴム状共重合体(ANM)、塩素化ポリエチレン(CPE)、クロロスルフォン化ポリエチレン(CSM)、エチレンとプロピレンとジエンとのゴム状共重合体(EPDM)、エチレンとプロピレンとのゴム状共重合体(EPM)、エチレンと酢酸ビニルとのゴム状共重合体(EVM)、四フッ化エチレンとプロピレンとのゴム状共重合体(FEPM)、すべての側鎖がフルオロおよびパーフルオロアルキル又はパーフルオロアルコキシ基であるゴム状共重合体(FFKM)、フルオロおよびパーフルオロアルキル又はパーフルオロアルコキシ基を側鎖にもつゴム状共重合体(FKM)、ポリイソブテン又はポリイソブチレン(IM)、主鎖が完全水素化されたアクリロニトリルとブタジエンとのゴム状共重合体(NBM)、スチレンとエチレンとブテンとのゴム状共重合体(SEBM)、スチレンとエチレンとプロピレンとのゴム状共重合体(SEPM)などが挙げられる。主鎖に炭素と酸素をもつゴムとしてエピクロロヒドリンゴム ポリクロロメチルオキシラン(CO)、エチレンオキシドとエピクロロヒドリンとのゴム状共重合体(ECO)、エピクロロヒドリンとアリルグリシジルエーテルとのゴム状共重合体(GCO)、エチレンオキシドとエピクロロヒドリンとアリルグリシジルエーテルとのゴム状共重合体(GECO)、プロピレンオキシドとアリルグリシジルエーテルとのゴム状共重合体(GPO)などが挙げられる。主鎖に不飽和炭素結合をもつゴムとして、アクリレートブタジエンゴム(ABR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化ニトリルゴム 水素化されたアクリロニトリルとブタジエンとのゴム状共重合体(HNBR)、ブチルゴム イソブテンとイソプレンとのゴム状共重合体(IIR)、合成天然ゴム イソプレンゴム(IR)、α‐メチルスチレンとブタジエンとのゴム状共重合体(MSBR)、アクリロニトリルとブタジエンとイソプレンとのゴム状共重合体(NBIR)、ニトリルゴム アクリロニトリルとブタジエンとのゴム状共重合体(NBR)、アクリロニトリルとイソプレンとのゴム状共重合体(NIR)、天然ゴム(NR)、ノルボルネンゴム(NOR)、ビニルピリジンとブタジエンとのゴム状共重合体(PBR)、ビニルピリジンとスチレンとブタジエンとのゴム状共重合体(PSBR)、スチレンとブタジエンとのゴム状共重合体(SBR)、乳化重合で合成されたスチレンとブタジエンとのゴム状共重合体(E-SBR)、溶液重合で合成されたスチレンとブタジエンとのゴム状共重合体(S-SBR)、スチレンとイソプレンとブタジエンとのゴム状共重合体(SIBR)、カルボキシル化されたブタジエンゴム(XBR)、カルボキシル化されたクロロプレンゴム(XCR)、カルボキシル化されたアクリロニトリルとブタジエンとのゴム状共重合体(XNBR)、カルボキシル化されたスチレンとブタジエンとのゴム状共重合体(XSBR)、臭素化ブチルゴム 臭素化されたイソブテンとイソプレンとのゴム状共重合体(BIIR)、塩素化ブチルゴム 塩素化されたイソブテンとイソプレンとのゴム状共重合体(CIIR)などが挙げられる。主鎖にけい素と酸素をもつゴムとして、ポリマー鎖にメチル置換基とフルオロ置換基とをもつシリコーンゴム(FMQ)、フロロシリコーンゴム ポリマー鎖にメチル置換基とビニルとフルオロ置換基とをもつシリコーンゴム(FVMQ)、ポリジメチルシロキサン ポリマー鎖にメチル置換基をもつシリコーンゴム(MQ)、ポリマー鎖にメチル置換基とフェニル置換基とをもつシリコーンゴム(PMQ)、ポリマー鎖にメチル置換基とビニル置換基とフェニル置換基とをもつシリコーンゴム(PVMQ)、シリコーンゴム ポリマー鎖にメチル置換基とビニル置換基とをもつシリコーンゴム(VMQ)などが挙げられる。主鎖に炭素と酸素および窒素をもつゴムとしては、四フッ化エチレンと三フッ化ニトロソメタンとニトロソパーフルオロ酪酸とのゴム状共重合体(AFMU)、ポリエステルウレタン(AU)、ポリエーテルウレタン(EU)などが挙げられる。主鎖に硫黄と酸素および炭素をもつゴムとしては、ポリマー鎖のポリスルフィド結合の間に-CH2-CH2-O-CH2-O-CH2-CH2-基か又はR基(Rは脂肪族炭化水素)のいずれかをもつゴム(OT)、ポリマー鎖のポリスルフィド結合の間に-CH2-CH2-O-CH2-O-CH2-CH2-基および通常-CH2-CH2-基(場合によっては他の脂肪族基)をもつゴム(EOT)などが挙げられる。主鎖にリンと窒素をもつゴムとしては-P=N-鎖をもち連鎖中のリン原子に結合したフルオロアルコキシ基をもつゴム(FZ)-P=N-鎖をもち連鎖中のリン原子に結合したアルコキシ(フェノキシおよび置換フェノキシ)をもつゴム(PZ)等が挙げられる。また、水素添加されたブロック共重合体、特に水添スチレン・ブタジエンゴム(HSBR)、スチレン−エチレン・ブチレン−エチレンブロック共重合体(SEBC)、エチレン−エチレン・ブチレン−エチレンブロック共重合体(CEBC)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)などの特殊なエラストマーも挙げられる。これらを1種類もしくは2種類以上混合して使用しても構わない。
【0022】
好ましくはエチレンとプロピレンとジエンとのゴム状共重合体(EPDM)、エチレンとプロピレンとのゴム状共重合体(EPM)、ポリイソブテン又はポリイソブチレン(IM)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム イソブテンとイソプレンとのゴム状共重合体(IIR)、水添スチレン・ブタジエンゴム(HSBR)、スチレン−エチレン・ブチレン−エチレンブロック共重合体(SEBC)、エチレン−エチレン・ブチレン−エチレンブロック共重合体(CEBC)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)であり、特に好ましくはエチレンとプロピレンとジエンとのゴム状共重合体(EPDM)、エチレンとプロピレンとのゴム状共重合体(EPM)、水添スチレン・ブタジエンゴム(HSBR)、スチレン−エチレン・ブチレン−エチレンブロック共重合体(SEBC)、エチレン−エチレン・ブチレン−エチレンブロック共重合体(CEBC)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)である。更に好ましくは水添スチレン・ブタジエンゴム(HSBR)、スチレン−エチレン・ブチレン−エチレンブロック共重合体(SEBC)、エチレン−エチレン・ブチレン−エチレンブロック共重合体(CEBC)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)である。
【0023】
本発明では低温特性に優れた架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を提供することを目的としている。低温特性を向上させるためにエラストマーを含有していることを特徴としている。そこで本発明ではエラストマー含有率(C)が効果を表す一つ指標としての挙げられる。このエラストマー含有率はポリオレフィン系樹脂組成物の量に対するエラストマーの量で求めるものであるが、エラストマーの含有方法はベース樹脂であるポリオレフィン系樹脂に含まれているものを用いてもよいし、また上記のような熱可塑性エラストマーを後添加してもよいし、またその併用でも構わない。その範囲は10〜60重量%が好ましく、より好ましくは15〜50重量%であり、更に好ましくは20〜40重量%である。ここで言うエラストマー含有率の求め方はポリオレフィン系樹脂と熱可塑性エラストマーを含めたポリオレフィン系樹脂組成物の総量を100重量%としたときの中に含まれるエラストマーの比率を言う。つまり、ポリオレフィン系樹脂にエラストマーが含まれていた場合、ポリオレフィン系樹脂の添加量(A)、含まれるエラストマーの比率をエラストマー比率(a)とし、熱可塑性エラストマーを添加する場合、この添加量(B)とから以下の式で算出されるものをいう。
【0024】
エラストマー含有率:C=(a×A/100+B)/(A+B)×100
もし10重量部未満であれば、本発明が達成しようとする十分な低温特性が得られず「割れ」が発生する恐れがあり、50重量部より多い場合は成形、特に低圧射出成形に十分な耐熱性が得られず、成形時に表面上のダメージが大きく外観を損なう恐れがある。
【0025】
本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の見掛け密度は特に規定はしないが、低圧射出成形に好適に使用されるためには見かけ密度が50〜150kg/mの範囲であることが好ましい。50kg/mを下回ると耐熱性が不十分で低圧射出成形時に発泡体が溶ける場合がある。150kg/m3を越えると本来発泡体が持ちうる柔軟性を損なうため好ましくない。より好ましくは60〜120kg/mであり、更に好ましくは70〜100kg/mである。
【0026】
また、本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体においては、本発明の特性を著しく損なわない範囲であれば、上記指定したもの以外の熱可塑性樹脂を加えても良い。
【0027】
本発明でいう他の熱可塑性樹脂としては、ハロゲンを含まないものにあっては、例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートやスチレン−アクリル酸共重合体などのアクリル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、石油樹脂、セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、飽和アルキルポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレート、ポリアリテートのような芳香族ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、およびビニル重合性モノマーや含窒素ビニルモノマーを有する共重合体などが挙げられる。
【0028】
また、ハロゲンを含む他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化三フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン樹脂、フルオロカーボン樹脂、パーフルオロカーボン樹脂、および溶剤可溶性パーフルオロカーボン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は一種類でも良く、もしくは複数種含まれていても良い。本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体で所望される物性に合わせて、他の熱可塑性樹脂の種類と添加量が選択される。
【0029】
本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は、示差走査熱量計による吸熱ピークが130℃未満に無く、140〜170℃の範囲に少なくとも一つの吸熱ピークが存在することが特徴である。これは130℃未満に吸熱ピークがあると、例えば低圧射出成形時に高温に熱せられた溶融樹脂と接触した際に発泡体が溶融し外観を損なう場合がある。130〜140℃の範囲のみに吸熱ピークが存在し、140〜170℃の範囲に存在しない場合は同じく耐熱性が不十分で成形時に外観上の問題を起こす場合がある。また、170℃以上の温度範囲にのみ吸熱ピークが存在し、140〜170℃の範囲に存在しない場合は、押出シート成形時に吸熱ピーク(融点)以上の温度をかける必要があり、その場合熱分解型発泡剤の分解温度を超え、外観上の不具合が生じる場合がある。
【0030】
本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は示差走査熱量計による吸熱ピークが130℃未満に無く、140〜170℃の範囲に少なくとも一つの吸熱ピークが存在することに特徴があるが、これを達成するためには130℃未満に吸熱ピークをもつ樹脂を含まないもしくは吸熱ピークが出てこない範囲に添加量を抑えることが必要である。
【0031】
示差走査熱量計による吸熱ピークが130℃未満に無く、140〜170℃の範囲に少なくとも一つの吸熱ピークが存在するポリオレフィン系樹脂発泡体とするために好ましく用いられるエラストマーを含むポリオレフィン系樹脂としては、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレンランダムブロック共重合体、およびサーモプラスチックオレフィンが挙げられる。よって本発明の発泡体に用いられるエラストマーを含むポリオレフィン系樹脂としては、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレンランダムブロック共重合体、およびサーモプラスチックオレフィンからなる群より選ばれる少なくとも一つである。
【0032】
また、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体100重量%中に、エラストマーを10〜50重量%含有することも、示差走査熱量計による吸熱ピークが130℃未満に無く、140〜170℃の範囲に少なくとも一つの吸熱ピークが存在するポリオレフィン系樹脂発泡体とするために好ましい方法である。
【0033】
ここでいう吸熱ピークとは、結晶性ポリマーの結晶が融解する際に起こる吸熱反応を示差走査差熱量計により測定し、一般的に融点として扱われるものを言う。この吸熱ピークが高ければ、高いほど融解しにくく、耐熱性が高いと言える。
【0034】
本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は、0℃での引張伸びが30%以上である事が特徴的である。これは特に極寒地において保管された発泡体が成形前に「割れ」を起こすことがあるが、それを表す指標として用いられる。つまり30%未満の場合、極寒地において保管された発泡体に「割れ」が発生する場合がある。好ましくは50%以上である。
【0035】
0℃での引張伸びの評価方法としては、JIS K6767(1999年)「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」の引張伸びの測定方法に準拠して測定されたものである。具体的に、得られたシート状の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体をダンベル状1号形に打ち抜き、株式会社オリエンテック製テンシロン万能試験機UCT−500によって測定するものをいい、破断が起こった標線間の長さと元の標線間の長さの差を、元の標線間の長さで割り返し、百分率で表したものをいう。これを0℃で測定するのであるがその方法としては、株式会社オリエンテック製高低温度恒温槽TLF2−U2−J−Fを所望の温度(ここでは0℃)に合わせて、テンシロン万能試験機の平行締付型ジョウ部分(測定部分)を囲み冷却しておく。サンプルをセットし、6分間予熱した後測定をするものをいう。
【0036】
本発明でいうゲルとは、架橋され高分子化された樹脂のことで、通常成形される温度、例えば180℃の温度では可塑化しない部分のものをいう。この部分が多くなれば耐熱性は向上するが、成形性が低下する。そのため、成形工法に応じてこの比率(本発明では、以下、これをゲル分率と呼ぶ。)任意に選択される。
【0037】
本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体のゲル分率は、45%以上である必要がある。45%より低い場合は低圧射出成形を実施したときに射出された溶融樹脂の熱や剪断力により発泡体が溶け、外観状の欠陥が生じる場合がある。より好ましくは50%以上である。
本発明でいうゲル分率は、算出した値のことである。具体的に、ゲル分率は、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を約50mg精密に秤量し、120℃の温度のキシレン25mlに24時間浸漬した後、200メッシュのステンレス製金網で濾過して、金網状の不溶解分を真空乾燥する。次いで、この不溶解分の重量を精密に秤量する。ゲル分率とは、溶解前の発泡体の重量に対するこの不溶解分の重量の百分率のことを云い、次式で表される。
ゲル分率(%)=(不溶解分の重量/溶解前の発泡体の重量)×100
本発明では、熱分解型発泡剤が好ましく用いられる。
【0038】
熱分解型発泡剤としては、上記のポリオレフィン系樹脂組成物の溶融温度よりも高い分解温度を有するものであればよい。好ましい熱分解型発泡剤としては、アゾジカルボンアミドがあり、更に、アゾジカルボンアミドと同等もしくはそれより高い分解温度を有するヒドラゾシカルボンアミド、アゾジカルボン酸バリウム塩、ジニトロソペンタエチレンテトラミン、ニトロソグアニジン、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジド、トリヒドラジンシンメトリックトリアジン、ビスベンゼンスルホニルヒドラジド、バリウムアゾジカルバキシレート、アゾビスイソブチロニトリル、およびトルエンスルホニルヒドラジド等が挙げられる。これらの熱分解型発泡剤は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。熱分解型発泡剤の配合量は、樹脂成分の合計量100重量部に対して、一般に2〜40重量部程度であり、所望の発泡倍率に応じて設定される。
【0039】
また、本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を製造するに際し、架橋助剤を用いることができる。
【0040】
本発明では、架橋助剤として多官能モノマーを使用することができる。多官能モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ジアリルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、ジビニルカルバゾール、ジビニルピリジンおよびこれらの核置換化合物や近縁同族体、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、および1,10−デカンジオールジメタクリレート等のアクリル酸系化合物またはメタクリル酸系化合物、ジビニルフタレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレートおよびビスアクリロイルオキシエチルテレフタレート等の脂肪族2価カルボン酸または芳香族2価カルボン酸のビニルエステル、アリルエステル、アクリロイルオキシアルキルエステル、メタクリロイルオキシアルキルエステル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、ヒドロキノンジビニルエーテルおよびビスフェノールAジアリルエーテル等の脂肪族2価アルコールまたは芳香族2価アルコールのビニルエーテルやアリルエーテル、N−フェニルマレイミドやN,N’−m−フェニレンビスマレイミド等のマレイミド系化合物、フタル酸ジプロパギル、およびマレイン酸ジプロパギル等の2個の三重結合を有する化合物などのモノマーを使用することができる。
【0041】
さらに、本発明では、その他の架橋助剤として、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレートおよびテトラメチロールメタンテトラメタクリレート等のアクリル酸系化合物またはメタクリル酸系化合物、トリメリット酸トリアリルエステル、ピロメリット酸トリアリルエステルおよびピロメリット酸テトラアリルエステル等の芳香族多価カルボン酸または脂肪族多価カルボン酸のポリビニルエステル、ポリアリルエステル、ポリアクリロイルオキシアルキルエステル、ポリメタクリロイルオキシアルキルエステル、トリアリルシアヌレートおよびトリアリルイソシアヌレート等のシアヌール酸またはイソシアヌール酸のアリルエステル、トリアリルホスフェート、およびトリスアクリルオキシエチルホスフェート等の多官能性のモノマーについても使用することができる。
【0042】
上記の架橋助剤は単独で使用しても良いし、2種類以上混合しても良い。架橋助剤の配合量は、樹脂成分の合計量100重量部に対して、好ましくは0.1〜30重量部であり、より好ましくは0.5〜15重量部であり、所望のゲル分率に応じて設定される。
【0043】
また、架橋助剤と有機過酸化物を組み合わせて、ポリオレフィン系樹脂組成物を架橋させることもできる。この有機過酸化物としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイドおよびジクミルパーオキサイド等が用いられる。有機過酸化物の配合量は、樹脂成分の合計量100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部であり、より好ましくは0.05〜5重量部であり、所望のゲル分率に応じて設定される。
【0044】
本発明において、ゲル分率は、耐熱性とクッション性を考慮して設定され、また、本発明において、上記ポリオレフィン系樹脂組成物を架橋させる際に、所謂化学架橋方法と電離性放射線による架橋方法を併用してもよい。
【0045】
本発明でいう25%圧縮硬さはJIS K6767(1999年)「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」に基づいて測定されたものをいう。具体的には、発泡体をカッターで5cm×5cmに切り抜き、厚さ25mm以上になるように重ねる。測定方法は平面板にサンプルを置き、初めの厚さの25%だけ10mm/minの速度で圧縮して停止し、20秒後の荷重を量り、下記式により計算された値をいう。装置はJIS K6767(1999年)附属書1(規定)の中の3.2装置、附属書1図2 圧縮硬さ試験機の一例に準じたものを使用する。本発明では株式会社オリエンテック製テンシロン万能試験機UCT−500に平面板を具備した治具を取り付け使用した。
【0046】
25%圧縮硬さ(kPa)=
25%圧縮し、20秒後の荷重(N)/25(cm)/10
本発明では25%圧縮硬さと見かけ密度の関係が下記式を満たすことが好ましい。これを満たさない場合は本発明が達成しようとする柔軟性に対して、不十分であると考えられる。
【0047】
25%圧縮硬さ(kPa)<3.5×見かけ密度(kg/m)−90
本発明の特徴を損なわない範囲で、ポリオレフィン系樹脂組成物には、発泡剤の分解促進剤、気泡核調整剤、酸化防止剤、熱安定剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤および無機充填剤等の各種添加剤を配合することができる。
【0048】
本発明では、前記の各成分を配合してなるポリオレフィン系樹脂組成物を所定形状に成形した後、架橋・発泡して架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を製造することができる。
【0049】
架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を製造する方法として、具体的には、例えば、下記の製造方法が挙げられる。前記のポリオレフィン系樹脂組成物の所定量を、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサーおよびミキシングロール等の混練装置を用いて、熱分解型発泡剤の分解温度未満で均一に溶融混練し、これをシート状に成形する。
【0050】
次いで、得られたシート状物に電離性放射線を所定線量照射して、樹脂を架橋させ、この架橋シート状物を熱分解型発泡剤の分解温度以上に加熱して発泡させる。電離性放射線としては、電子線、X線、β線およびγ線等が使用される。照射線量は、一般に1〜300kGy程度であり、所望のゲル分率に応じて線量が設定される。また、電離性放射線照射による架橋に代えて、過酸化物による架橋や、シラン架橋を行っても良い。
【0051】
樹脂が架橋された発泡性のシート状物は、例えば、熱風、赤外線、メタルバス、オイルバスおよびソルトバス等により、熱分解型発泡剤の分解温度以上でかつ樹脂の融点以上の温度、例えば、190〜290℃の温度に加熱し、発泡剤の分解ガスによって樹脂を発泡させ、本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を得る。
【0052】
このようにして、気泡が独立であり、発泡剤量により任意に50〜150kg/m3の範囲の見かけ密度を示す、かつ外観美麗な架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体が得られる。
【0053】
また、これまで述べてきた方法により得られた架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を用いて、より成形時の加熱に対して優れた耐熱性を示す積層体を得ることができる。積層体は、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体に他素材を従来より公知の方法で積層し貼合わせて製造することができる。
【0054】
本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体に積層させる他素材としては、天然繊維や人造繊維を用いた布帛状物、ポリ塩化ビニル樹脂からなるシート状物、サーモプラスチックオレフィン(TPO)からなるシート状物、熱可塑性エラストマーシート状物、レザー等の表皮材、熱可塑性樹脂繊維を用いた不織布、ポリオレフィン系樹脂無架橋発泡シート状物、例えば、ポリウレタンなどを用いた連続気泡発泡体、ポリエステルフィルムやポリアクリルフィルム等に代表されるフィルム類、ダンボールプラスチック、発泡紙、および銅、銀およびニッケルなどに代表される金属層などの公知のものから少なくとも一種類から選ばれるものが挙げられる。本発明では、これらの他素材を複数積層しても良いし、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の表裏面両方に積層させても良いし、二種類以上複合しても良い。
【0055】
本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体と上記の他素材を貼り合わせる方法としては、例えば、熱可塑性樹脂を溶融させる押出ラミネート法、接着剤を塗布した後張り合わせる接着ラミネート法、表皮材等と必要ならば架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体も加熱して張り合わせる熱ラミネート法(融着ともいう)、ホットメルト法、高周波ウェルダー法、金属等では無電解メッキ法、電解メッキ法および蒸着法等が挙げられるが、これらに規定されるものではなくいかなる方法でも両者が接着されればよい。
【0056】
これまで述べてきた方法により得られた架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体もしくは積層体は、これらを任意の形状に成形することによって、成形体を得ることができる。その成形方法としては、本発明が達成しようとする耐熱性が必要な低圧射出成形以外にも、例えば、高圧射出成形、雄引き真空成形、雌引き真空成形および圧縮成形等が挙げられる。
【0057】
上記の成形方法では通常、熱可塑性樹脂が基材として用いられる。本発明でいう基材とはその成形体の骨格となるものであり、その形状は板状もしくは棒状など所望の成形体の形状に合わせて選択される。
【0058】
本発明で用いられる基材用の熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン樹脂、プロピレンとα−オレフィン(α−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテンおよび1−オクテン等が挙げられる。)がランダム、ランダム/ブロックまたはブロック状に共重合されたポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレンとα−オレフィンとの共重合樹脂、酢酸ビニルやアクリル酸エステルとの共重合樹脂、これらが任意に混合されたポリオレフィン系樹脂やABS樹脂、およびポリスチレン樹脂等を適用することができる。
【0059】
架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体に対して、例えば、ポリアミド系樹脂やポリブチレンテレフタレート系樹脂などのように融点が相当高い樹脂を基材用として用いると、基材層の溶融温度が高くなるから、その温度によって加圧成形時に架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の気泡が破壊されるという不都合を生じることもある。そのため、基材層用の樹脂は、成形方法などを加味し適宜選択する必要がある。
【0060】
本発明でいう基材層とは、前記成形体のうち、基材と架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体もしくは積層体の表皮材とは別に、成形時に積層される点で区別するためにいうものである。
【0061】
本発明では、これまで述べてきた方法により得られた架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体もしくは積層体もしくは成形体を使用した、天井、ドアおよびインスツルメントパネル等の自動車内装材を得ることを可能にした。成形時の加工、例えば、低圧射出成形の加熱に対して優れた耐熱性を示すことで不良率を低下させるなどの効果が期待される。
【実施例】
【0062】
本発明では、各物性等を下記の方法によって測定評価した。
【0063】
(メルトフローレートの測定方法)
JIS K7210(1999年)「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR) およびメルトボリュームフローレイト (MVR) の試験方法」に準ずる。上記規格の附属書B(参考)「熱可塑性プラスチック材料の規格と指定とその試験条件」に基づきポリプロピレン系樹脂(A)は温度230℃、荷重2.16kgf、ポリエチレン系樹脂は温度190℃、荷重2.16kgfの条件で行った。本発明におけるメルトフローレートは、株式会社東洋精機製作所製メルトインデックサ型式F−B01を使用し、手動切り取り法を採用し、ダイから10分間にでてきた樹脂の重量を測定することによって得られるものをいう。
【0064】
(示差走査熱量計による吸熱ピークの分析方法)
本発明における示差走査熱量計による吸熱ピークの分析は、下記の方法で行った。約10mgのポリオレフィン系樹脂(本発明でいうポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂など)もしくは架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の気泡をロールなどで潰したものを、白金パンにいれ、示差走査熱量計(DSC:セイコー電子工業株式会社製RDC220−ロボットDSC)を用いて吸熱ピークを測定した。吸熱ピークの測定条件は、サンプルを一度溶融させた後、10℃/分の速度で−50℃の温度まで冷却させ、それから5℃/分の速度で昇温して、吸熱ピークを測定した。
【0065】
(分子量分布の測定方法)
本発明のおける分子量分布の測定方法には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定法を採用した。その方法としては、試料(ここでは、ポリオレフィン系樹脂)5mgにオルトジクロロベンゼン(ODCB)5mLを加え、140℃の温度で2時間以上加熱溶解後、0.5μmフィルターで濾過し、そのろ液を供試液とした。装置には150C ALC/GPC(ウォーターズ社製)を使用し、カラムにはShodex AT−806MS 8mmφ×250mm(2本)を使用し、検出器には示差屈折を採用した。移動相は前述のオルトジクロロベンゼンであり、条件面では速度1.0mL/min、温度140℃下で行った。測定値としては、ポリスチレン換算値を採用した。
【0066】
(ゲル分率の測定方法)
ゲル分率とは、算出した値のことである。架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を約50mg精密に秤量し、それを120℃の温度のキシレン25mlに24時間浸漬した後、200メッシュのステンレス製金網で濾過して、金網状の不溶解分を真空乾燥する。次いで、この不溶解分の重量を精密に秤量し、下記の式(3)に従ってゲル分率を百分率で算出した。
・ゲル分率(%)={不溶解分の重量(mg)/秤量したポリオレフィン樹脂発泡体の重量(mg)}×100
(見掛け密度の測定方法)
JIS K6767(1999年)「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」に基づいて測定されたものである。具体的に、得られたシート状の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を15cm以上になるようなサンプルサイズに打ち抜き、その厚みと重量を測定し、下記の式(4)により見掛け密度を算出した。
・見掛け密度(kg/m)=サンプル重量(kg)/{サンプル厚み(m)×サンプル面積(m)}
(エラストマー含有率(C)の計算方法)
ポリオレフィン系樹脂と熱可塑性エラストマーを含めたポリオレフィン系樹脂組成物の総量を100重量%としたときの中に含まれるエラストマーの比率を言う。つまり、ポリオレフィン系樹脂にエラストマーが含まれていた場合、ポリオレフィン系樹脂の添加量(A)、含まれるエラストマーの比率をエラストマー比率(a)とし、熱可塑性エラストマーを添加する場合、この添加量(B)とから以下の式で算出されるものをいう。
【0067】
エラストマー含有率:C=(a×A/100+B)/(A+B)×100
(25%圧縮硬さの測定方法)
JIS K6767(1999年)「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」に基づいて測定されたものである。具体的には、発泡体をカッターで5cm×5cmに切り抜き、厚さ25mm以上になるように重ねる。測定方法は平面板にサンプルを置き、初めの厚さの25%だけ10mm/minの速度で圧縮して停止し、20秒後の荷重を量り下記式により計算したものをいう。装置としてはJIS K6767(1999年)附属書1(規定)の中の3.2装置、附属書1図2 圧縮硬さ試験機の一例に準じたものを使用する。本発明では株式会社オリエンテック製テンシロン万能試験機UCT−500に平面板を具備した治具を取り付け使用した。
【0068】
25%圧縮硬さ(kPa)=
25%圧縮し、20秒後の荷重(N)/25(cm)/10
(0℃での引張伸びの測定方法)
JIS K6767(1999年)「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」の引張伸びの測定方法に準拠して測定されたものである。具体的に、得られたシート状の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体をダンベル状1号形に打ち抜き、株式会社オリエンテック製テンシロン万能試験機UCT−500によって測定するものをいい、破断が起こった標線間の長さと元の標線間の長さの差を、元の標線間の長さで割り返し、百分率で表したものをいう。これを0℃下で測定するのであるがその方法としては、株式会社オリエンテック製高低温度恒温槽TLF2−U2−J−Fを所望の温度(ここでは0℃)に合わせて、テンシロン万能試験機の平行締付型ジョウ部分(測定部分)を囲み冷却しておく。サンプルをセットし、6分間予熱した後測定をするものをいう。
【0069】
(低温特性の評価方法)
上記「0℃での引張伸びの測定方法」により得られた値から以下の基準で評価を行った。
低温特性◎:50%以上
低温特性○:30%以上50%未満
低温特性×:30%未満
(成形性の評価方法)
得られた架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を真空成形し、それぞれ外観およびよび成形絞り比を評価した。外観は目視で膨れや皺が生じないこと、成形絞り比は直径D、深さHの垂直円筒状の雌型上において、発泡体を加熱し、真空成形機を用いてストレート成形したときに、発泡体が破れることなく、円筒状に展開、伸長される限界でのH/Dの値のことである。なお、ここにおいて直径Dは50mmである。発泡体の表面温度が180℃おでの成形絞り比を測定し、その値について下記の評価基準で判断した。
成形性○:0.50以上かつ外観良好。
成形性×:0.50未満あるいは外観不良。
(耐熱劣化性の評価方法)
得られた架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を表面温度が200℃となるようにシーズヒータを用いて両側から加熱し、両側の面状態を目視確認して判断する。もし、少なくとも片側の面状態が不良な場合は「不良」と判断する。面状態の判断基準としては一部もしくは全体に斑状の凹凸が見られた場合は不良とする。
面状態良○、面状態不良(荒れている等)△、穴あき(溶けている等)×
(総合評価)
上記の「低温特性の評価方法」、「成形性の評価方法」および「耐熱劣化性の評価方法」における評価結果から、下記の評価基準で総合評価を行った。
総合評価○:×印評価が1つもない場合。
総合評価×:×印評価が1つ以上の場合。
【0070】
それぞれの評価結果は、○は優れている、×は不良とする。
(実施例1)
ポリオレフィン系樹脂(エチレン−プロピレンブロック共重合体:MFR=3.1g/10min、DSCピーク温度162℃、エラストマー比率15%、Mw=600,000)100重量%と、ポリオレフィン系樹脂を100重量部としたとき、発泡剤としてアゾジカルボンアミド8重量部と、架橋助剤としてジビニルベンゼン5重量部、熱安定剤としてフェノール型酸化防止剤1重量部を、ヘンシェルミキサーで混合し得られた混合物を、ベント付き60mmφ一軸押出機で押出し1mmの厚さのシートに成形した。
【0071】
このようにして得られたシートに、電子線照射器を用いて110kGyの電子線を照射し樹脂を架橋させた。これを240℃の温度に加熱したソルトバスに浸積させることにより、厚さが2.1mm、見掛け密度が67kg/mで、ゲル分率が55%の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を得た。
【0072】
得られた架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体について、0℃での引張伸びを測定したところ35%であった。25%圧縮硬さを測定したところ140kPaであった。また、得られた架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体をミキシングロールで押圧して気泡を潰し、示差走査熱量計により吸熱ピーク温度を確認したところ、130℃以下には無く最大の吸熱ピークは161℃であった。さらに成形絞り比を測定したところ0.54であった。
【0073】
(実施例2〜6、比較例1、2)
ポリオレフィン系樹脂組成物(ポリオレフィン系樹脂+熱可塑性エラストマー)がそれぞれ異なるだけで、製造方法は実施例1と同様に行った。評価結果を表1、2に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0076】
自動車内装材、特に低圧射出成形を用いるものに好適に利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマーを含むポリオレフィン系樹脂組成物からなり、
示差走査熱量計(DSC)による吸熱ピークが130℃未満に無く、140〜170℃の範囲に少なくとも一つの吸熱ピークが存在する架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体であって、
0℃での引張伸びが30%以上であることを特徴とする架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項2】
エラストマーを含むポリオレフィン系樹脂が、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレンランダムブロック共重合体、およびサーモプラスチックオレフィンからなる群より選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項3】
エラストマーを10〜50重量%含有することを特徴とする請求項1または2に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体に、他素材を貼り合わせてなる積層体。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体、もしくは請求項4記載の積層体を成形して得られる成形体。
【請求項6】
請求項5記載の成形体を用いた自動車内装材。

【公開番号】特開2009−227756(P2009−227756A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72849(P2008−72849)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】