説明

架橋可能なフッ化ビニルコポリマー被覆膜およびその製造方法

本発明は、
ポリマー基材膜と、
ポリマー基材膜上のフルオロポリマー被膜とを含み、フルオロポリマー被膜は、フッ化ビニルから誘導される約40〜約90モル%の繰り返し単位と、以下の(a)と(b)およびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマーから誘導される約10〜約60モル%の繰り返し単位とを含むフッ化ビニルコポリマーを、コポリマーの約0.1モル%〜50モル%の繰り返し単位が、(b)から選択されるモノマーから誘導されるという条件で含み、
(a)は、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマーであり、
(b)は、ヒドロキシル、チオール、カルボニル、カルボン酸、カルボン酸エステル、酸無水物、スルホニル、スルホン酸、スルホン酸エステル、リン酸、リン酸エステル、ホウ酸、ホウ酸エステル、エポキシ、イソシアネート、チオシアネート、アミン、アミド、ニトリルならびに臭素およびヨウ素から選択されるハロゲンからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を含有するビニルモノマーであり、
ポリマー基材膜が、フッ化ビニルコポリマーの官能基と相互作用する官能基を含み、フルオロポリマー被膜の、ポリマー基材膜への結合を促進する、フルオロポリマー被覆膜を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋可能なフッ化ビニルコポリマー被覆膜および架橋可能なフッ化ビニルコポリマー被覆膜を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光起電(PV)電池は、日光から電気エネルギーを生成するために用いられており、従来の発電方法の、より環境に優しい代替手段を提供している。光起電(PV)電池は、様々な半導体システムから構築されるが、これは、水分、酸素およびUV光等の環境影響から保護されなければならない。電池は、通常、ガラスおよび/またはプラスチック膜のカプセル化層により両側が覆われていて、光起電モジュールとして知られている多層構造を成している。フルオロポリマー膜は、その優れた強度、耐候性、耐UV性および防湿特性のために、光起電モジュールにおいて重要なコンポーネントと認識されている。これらのモジュールにおいて特に有用なのは、モジュールのバックシートとして機能するフルオロポリマー膜およびポリマー基材膜の膜複合体である。かかる複合体は、従来から、ポリエステル基材膜、具体的にはポリエチレンテレフタレートに接着したフルオロポリマー、具体的にはポリフッ化ビニル(PVF)の予備成形された膜から製造されている。PVF等のフルオロポリマーを、PVモジュールのバックシートとして用いると、その特性により、モジュール寿命を大幅に改善し、最長で25年のモジュール保証が可能となる。フルオロポリマーバックシートは、ポリエチレンテレフタレート(PET)膜、典型的に、2枚のPVF膜間に挟まれたPETとのラミネートの形態で用いられることが多い。
【0003】
しかしながら、何年にもわたる屋外暴露でも剥離しないボンドを有するポリマー基材上に予備形成されたフルオロポリマー膜のラミネートを作製するのは難しい。Simmsによる特許文献1、Kimらによる特許文献2およびSchmidtらによる特許文献3のような先行技術のシステムには、耐久性のあるラミネート構造を作製する予備形成された膜のためのプライマーと接着剤が記載されている。しかしながら、これらのプロセスでは、少なくとも1つの接着層またはプライマーと接着層の両方を、実際のラミネーション工程の前に、適用する必要がある。ラミネーション工程では、ラミネートを形成するのに熱と圧力の印加を必要とする。従って、先行技術の予備形成されたフルオロポリマー膜を用いるラミネートは、製造に費用がかかり、かつ/または大きな資本を要する設備を必要とする。予備形成されたフルオロポリマー膜は、製造中および後の処理での取扱いのための強度を提供するのに十分な厚さを有していなければならないため、得られるラミネートにまた、フルオロポリマーの厚い層、すなわち、有効な保護層に必要なよりもさらに厚い層を組み込むこともある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3,133,854号明細書
【特許文献2】米国特許第5,139,878号明細書
【特許文献3】米国特許第6,632,518号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
ポリマー基材膜と、
ポリマー基材膜上のフルオロポリマー被膜とを含み、フルオロポリマー被膜は、フッ化ビニルから誘導される約40〜約90モル%の繰り返し単位と、以下の(a)と(b)およびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマーから誘導される約10〜約60モル%の繰り返し単位とを含むフッ化ビニルコポリマーを、コポリマーの約0.1モル%〜50モル%の繰り返し単位が、(b)から選択されるモノマーから誘導されるという条件で含み、
(a)は、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマーであり、
(b)は、ヒドロキシル、チオール、カルボニル、カルボン酸、カルボン酸エステル、酸無水物、スルホニル、スルホン酸、スルホン酸エステル、リン酸、リン酸エステル、ホウ酸、ホウ酸エステル、エポキシ、イソシアネート、チオシアネート、アミン、アミド、ニトリルならびに臭素およびヨウ素から選択されるハロゲンからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を含有するビニルモノマーであり、
ポリマー基材膜が、フッ化ビニルコポリマーの官能基と相互作用する官能基を含み、フルオロポリマー被膜の、ポリマー基材膜への結合を促進する、フルオロポリマー被覆膜を提供する。
【0006】
好ましくは、本発明によるフルオロポリマー被覆膜において、フッ化ビニルコポリマー被覆膜は架橋されている。
【0007】
好ましいフルオロポリマー被覆膜において、フッ化ビニルコポリマーは、フッ素化ビニルエーテル、フッ素化アルキル(メタ)アクリレート、3〜10個の炭素原子を有するパーフルオロオレフィン、パーフルオロC1〜C8アルキルエチレン、フッ素化ジオキソールおよびこれらの混合物から選択されるモノマー(c)から誘導される約0.1〜約10モル%の繰り返し単位をさらに含む。
【0008】
本発明の好ましい形態によれば、モノマー(a)は、テトラフルオロエチレンを含む。本発明のこの形態の好ましい実施形態において、フッ化ビニルコポリマーは、高フッ素化ビニルエーテルおよびパーフルオロC1〜C8アルキルエチレンから選択される少なくとも1つのモノマーから誘導される約0.1〜約10モル%の単位をさらに含む。
【0009】
本発明のフルオロポリマー被覆膜の好ましい形態によれば、ポリマー基材膜は、ポリエステル、ポリアミドおよびポリイミドから選択され、より好ましくは、ポリエステルである。
【0010】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明のフルオロポリマー被覆膜をバックシートとして含む光起電モジュールが提供される。
【0011】
本発明はまた、フルオロポリマー被覆膜を製造する方法であって、
ポリマー基材膜を、液体フルオロポリマー被膜組成物で被覆することを含み、液体フルオロポリマー被膜組成物は、フッ化ビニルから誘導される約40〜約90モル%の繰り返し単位と、以下の(a)と(b)およびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマーから誘導される約10〜約60モル%の繰り返し単位とを含む液体媒体と分散または分解フッ化ビニルコポリマーとを、コポリマーの約0.1モル%〜50モル%の繰り返し単位が、(b)から選択されるモノマーから誘導されるという条件で含み、
(a)は、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマーであり、
(b)は、ヒドロキシル、チオール、カルボニル、カルボン酸、カルボン酸エステル、酸無水物、スルホニル、スルホン酸、スルホン酸エステル、リン酸、リン酸エステル、ホウ酸、ホウ酸エステル、エポキシ、イソシアネート、チオシアネート、アミン、アミド、ニトリルならびに臭素およびヨウ素から選択されるハロゲンからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を含有するビニルモノマーであり、
液体媒体からフルオロポリマー被膜を除去することを含む方法も提供する。
【0012】
本発明の好ましい方法において、液体フルオロポリマー被膜組成物は、架橋剤をさらに含み、本方法は、フッ化ビニルコポリマーを架橋することをさらに含む。
【発明を実施するための形態】
【0013】
フッ化ビニルコポリマー
本発明で用いるフッ化ビニルコポリマーは、
フッ化ビニルから誘導される約40〜約90モル%の繰り返し単位と、
以下の(a)と(b)およびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマーから誘導される約10〜約60モル%の繰り返し単位とを含むフッ化ビニルコポリマーを、コポリマーの約0.1モル%〜50モル%の繰り返し単位が、(b)から選択されるモノマーから誘導されるという条件で含み、
(a)は、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマーであり、
(b)は、ヒドロキシル、チオール、カルボニル、カルボン酸、カルボン酸エステル、酸無水物、スルホニル、スルホン酸、スルホン酸エステル、リン酸、リン酸エステル、ホウ酸、ホウ酸エステル、エポキシ、イソシアネート、チオシアネート、アミン、アミド、ニトリルならびに臭素およびヨウ素から選択されるハロゲンからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を含有するビニルモノマーである。
【0014】
好ましいフッ化ビニルコポリマーは、フッ素化ビニルエーテル、フッ素化アルキル(メタ)アクリレート、3〜10個の炭素原子を有するパーフルオロオレフィン、パーフルオロC1〜C8アルキルエチレン、フッ素化ジオキソールおよびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマー(c)から誘導される約0.1〜約10モル%の繰り返し単位をさらに含む。
【0015】
ポリマーの特性を必要に応じて調節するために、指定した範囲内のモノマー単位の量を変えることができる。フッ化ビニル(VF)は、ポリマーの特性を調節するために、約40〜約90モル%の範囲内で変えることができる。例えば、VFは、VdFを含有する以外は同じポリマーよりも、通常、有機溶剤に対しより低い溶解性のコポリマーを提供する。耐候性、耐化学性および熱安定性を改善するのが望ましいときは、通常、VF含量を減らし、VFよりフッ素含量の多いモノマーの量を増やすのが望ましい。好ましくは、本発明の実施に用いるフッ化ビニルベースのコポリマーは、フッ化ビニル(VF)から誘導される50〜80モル%の構造単位を含む。
【0016】
本発明で用いるコポリマーは、(a)と(b)およびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマーから誘導される約10〜約60モル%、好ましくは約20〜約50モル%の繰り返し単位を含む。好ましくは、モノマー(b)および/またはモノマー(c)は、用いる場合には、少なくとも1つの炭素原子の側鎖でポリマーに導入される。少なくとも1つの炭素原子の側鎖を提供するモノマーは、コポリマーの有機溶剤における溶解度を改善する。
【0017】
モノマー(a)は、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびこれらの混合物からなる群から選択される。選択したモノマーおよび用いる量によって、ポリマーのフッ素含量を増大し、かつ、ポリマーの有機溶剤における溶解度にも影響し得る。例えば、好ましいモノマー(a)は、テトラフルオロエチレン(TFE)であり、本発明の好ましいフッ化ビニルコポリマーは、好ましくは、テトラフルオロエチレンから誘導される少なくとも約30モル%の単位を含む。テトラフルオロエチレンは、低コストかつ高フッ素含量であるため、好ましいモノマーである。コポリマーにおける−CFCF−セグメントが高含量だと、改善された耐候性、耐化学性および熱安定性を提供するが、有機溶剤における溶解度は減少する。
【0018】
好ましいフッ化ビニルコポリマーは、フッ素化ビニルエーテル、フッ素化アルキル(メタ)アクリレート、3〜10個の炭素原子を有するパーフルオロオレフィン、パーフルオロC1〜C8アルキルエチレン、フッ素化ジオキソールおよびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマー(c)から誘導される約0.1〜約10モル%の繰り返し単位をさらに含む。コポリマーの少なくとも1つの炭素原子の側鎖に導入されるこの種のモノマーは、通常、コポリマーの有機溶剤における溶解度を改善する。モノマー(c)に特に好ましいのは、3〜10個の炭素原子を有するパーフルオロオレフィン、パーフルオロC1〜C8アルキルエチレンおよびフッ素化ビニルエーテルであり、最も好ましくは、高フッ素化ビニルエーテルおよびパーフルオロC1〜C8アルキルエチレンを用いる。
【0019】
モノマー(b)は、ヒドロキシル、チオール、カルボニル、カルボン酸、カルボン酸エステル、酸無水物、スルホニル、スルホン酸、スルホン酸エステル、リン酸、リン酸エステル、ホウ酸、ホウ酸エステル、エポキシ、イソシアネート、チオシアネート、アミン、アミド、ニトリルならびに臭素およびヨウ素から選択されるハロゲンからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を含有するビニルモノマーである。好ましくは、モノマー(b)はまた、少なくとも1つの炭素原子のコポリマーに側鎖も導入する。モノマー(b)の官能基は、架橋可能な反応部位を提供し、導入された官能基(および存在する場合は、側鎖)も、有機溶剤におけるコポリマーの溶解度を改善して、本発明の実施に用いるフッ化ビニルコポリマーの処理性を改善する。本発明によるコポリマーにおいて、モノマー(b)から誘導される単位は、約0.1モル%〜50モル%、好ましくは約0.1モル%〜約40モル%、より好ましくは約0.2モル%〜30モル%、最も好ましくは約0.2モル%〜約20モル%の量で存在する。官能基を有する様々なビニルモノマーが、架橋を形成し、溶解度特性を調節する能力は、用いる特定のモノマーで異なり、所望の効果を与えるためには、かかるモノマーの十分量を用いなければならない。
【0020】
好ましくは、コポリマーのフッ素含量を増大するために、モノマー(b)は、少なくとも1つの官能基を含有するフッ素化ビニルモノマーを含む。より好ましくは、モノマー(b)は、少なくとも1つの官能基を含むフッ素化ビニルエーテルモノマーである。この種のフッ素化ビニルエーテルモノマーは、Hungによる米国特許第5,059,720号明細書、Brothersらによる米国特許第5,969,067号明細書およびBrothersらによる米国特許第6,177,196号明細書に開示されている。Hungによる米国特許第5,059,720号明細書に開示されているある特定の有用なモノマーは、9,9−ジヒドロ−9−ヒドロキシ−パーフルオロ(3,6−ジオキサ−5−メチル−1−ノネン)であり、以降(EVE−OH)と呼ぶ。
【0021】
本発明で用いるのにある好ましいコポリマーにおいて、コポリマーは、約40〜約70モル%のVFから誘導される単位、(a)から選択される約15〜約29.9モル%のモノマー、少なくとも1つの官能基を含有する少なくとも1つの約0.1〜約15モル%の(b)ビニルモノマーおよび約0.1〜約10モル%の少なくとも1つのモノマー(c)を含む。例えば、ヒドロキシ官能基を有する好ましいフッ化ビニルコポリマーは、VF、TFEであるモノマー(a)、EVE−OHであるモノマー(b)およびフッ素化ビニルエーテルおよび/またはパーフルオロブチルエチレン(PFBE)であるモノマー(c)を、上述した範囲内で共重合することにより得られる。
【0022】
フッ化ビニルコポリマーは、乳化重合、懸濁重合、溶液重合およびバルク重合等の様々な好適な重合方法のいずれかにより製造してよい。高度の重合であり、低コストであるため、かつ分散したポリマーが生成され多くの最終用途にとって利点があるため、乳化重合が望ましい。乳化重合は、好適な界面活性剤、Berryによる米国特許第2,559,752号明細書に記載されているパーフルオロオクタン酸アンモニウム等のフルオロ界面活性剤、またはBakerらによる米国特許第5,688,884号明細書に記載されている6,2TBS、またはその他の好適な界面活性剤を存在させて、水溶性フリーラジカル重合開始剤を用いて、水中で実施することができる。約40℃〜150℃、好ましくは60℃〜100℃の重合温度が好適であり、約1MPa〜12MPa(145psi〜1,760psi)の圧力を用いてよい。必要に応じて、リン酸塩、炭酸塩および酢酸塩等の緩衝剤を、ラテックスのpHを調整するために用いることができる。
【0023】
本発明により用いるフッ化ビニルコポリマーを生成するために、様々な重合開始剤を用いてよい。好ましい開始剤としては、有機アゾ型開始剤、例えば、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩および2,2’−アゾビス(N,N−ジメチレンイソブチロアミジン)二塩酸塩と、無機過酸の水溶性塩、例えば、過硫酸のアルカリ金属またはアンモニウム塩が挙げられる。さらに、連鎖移動剤を、重合反応に必要であれば、任意で用いて、フッ化ビニルベースのコポリマーの分子量を調節する。好ましい連鎖移動剤としては、エタン、シクロヘキサン、メタノール、イソプロパノール、マロン酸エチルおよびアセトン等が挙げられる。
【0024】
水性乳化重合を用いて、フッ化ビニルコポリマーを生成するときは、コポリマーの水分散液を生成する。必要に応じて、乳化重合により生成される水分散液は、後に、界面活性剤、典型的には、ノニオン界面活性剤を添加することにより安定化し、任意で濃縮して、固体含量を増大することができる。本発明による水性液体フルオロポリマー被膜組成物をかかる分散液から生成することができる。あるいは、コポリマーは、分散液から単離して、様々な公知の技術、例えば、強攪拌、イオン強度の増大、冷凍と解凍およびこれらの組み合わせのいずれかにより、コポリマー樹脂を生成することができる。本発明による非水性液体フルオロポリマー被膜組成物は、コポリマー樹脂を、好適な有機液体に分散または溶解することにより生成することができる。コポリマーの有機液体分散液および溶液を生成するのに有用な有機液体は、例えば、極性有機溶剤、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)および炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン(MEK)およびテトラヒドロフラン(THF)である。分散液の生成について、用途に好適な分散液を生成するために、分散液のグラインディングまたはミリングが必要な場合がある。
【0025】
本発明の実施において、好ましくは、架橋剤を用いる。架橋剤は、水性または非水性液体フルオロポリマー被膜組成物に好ましくは添加される。架橋剤としては、アルコール、フェノール、チオール、過酸化物、アミン、アゾ化合物、カルボン酸、カルボン酸エステル、酸無水物、スルホン酸、スルホン酸エステル、リン酸、リン酸エステル、ホウ酸、ホウ酸エステル、エポキシ、イソシアネート、チオシアネート、ニトリル、メラミン、アルデヒド、スルフィド化合物、シラン化合物、金属酸化物、ハロゲン化合物および有機金属化合物が挙げられる。
【0026】
通常、本発明による架橋可能なフルオロポリマー被膜組成物は、当該技術分野において公知の他の架橋可能な組成物と同様に用い、本発明によるフルオロポリマー被覆膜生成に特に有用である。組成物に用いる架橋剤は、被膜組成物媒体に好ましくは可溶であり、コポリマーモノマー(b)にある官能基の種類と反応性がある。典型的に、組成物は、ポリマーフィルム基材に適用し、加熱して、液体媒体を除去する。コポリマーが分散液形態にある場合には、コポリマーを凝集するにも、加熱が必要である。加熱を続けて、架橋剤と本発明によるコポリマーとの間の反応を促進して、架橋ポリマーを生成することができる。ある架橋剤と共に、可視またはUV光を用いて、架橋剤とコポリマーとの間の反応性を促進する。
【0027】
本発明により提供される架橋したフッ化ビニルコポリマーは、典型的に、異なるポリマー鎖にある官能基および同じポリマー鎖にある他の官能基と反応する架橋剤により形成される三次元網目構造を有する。
【0028】
本発明はまた、(b)互いに架橋可能な官能基を与えるものから選択される少なくとも2つのモノマーから誘導される単位を有する架橋可能なフッ化ビニルコポリマー、すなわち、自己架橋コポリマーも用いる。例えば、ヒドロキシ基とカルボン酸基の両方を有するコポリマーは、熱処理することにより自己架橋して、縮合反応においてエステル基を形成する。同様に、ヒドロキシル基とブロックイソシアネート基の両方を有するコポリマーは、熱処理により自己架橋する。
【0029】
顔料およびフィラー
必要に応じて、顔料およびフィラーを、製造中に、フルオロポリマー被膜組成物に組み込むことにより、様々な色、不透明性および/またはその他の特性効果を得ることができる。一実施形態において、顔料は、フルオロポリマー固体に基づいて、約1〜約35wt%の量で用いる。用いることのできる典型的な顔料としては、無機ケイ質顔料(例えば、シリカ顔料)等の透明な顔料と従来の顔料の両方が挙げられる。用いることのできる従来の顔料としては、金属酸化物、例えば、二酸化チタンや酸化鉄、金属水酸化物、金属フレーク、例えば、アルミニウムフレーク、クロム酸塩、例えば、クロム酸鉛、スルフィド、硫酸塩、炭酸塩、カーボンブラック、シリカ、タルク、陶土、フタロシアニンブルーおよびグリーン、オルガノレッド、オルガノマローンならびにその他の有機顔料および染料が挙げられる。好ましくは、顔料の種類および量は、フルオロポリマー被膜の所望の特性、例えば、耐候性に与える大きな副作用を防ぐように選択し、かつ、膜形成中に用いられる高温処理での安定性のために選択される。
【0030】
顔料を組み込むべきフルオロポリマー組成物と同じまたは相溶性のある分散樹脂と顔料を混合することにより、顔料をミルベースへ処方することができる。顔料分散液は、従来の手段、例えば、サンドグラインディング、ボールミリング、アトライターグラインディングまたは二本ロールミリングにより形成することができる。通常は必要とされず使用されないが、その他の添加剤、例えば、ファイバーガラスや鉱物フィラー、滑り防止剤、可塑剤、核剤等を組み込むことができる。
【0031】
UV添加剤および熱安定剤
フルオロポリマー被膜組成物は、1つ以上の光安定剤を添加剤として含有していてもよい。光安定添加剤としては、ヒドロキシベンゾフェノンやヒドロキシベンゾトリアゾール等の紫外線を吸収する化合物が挙げられる。その他の可能な光安定添加剤としては、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)および酸化防止剤が挙げられる。必要に応じて、熱安定剤も用いることができる。
【0032】
バリア粒子
必要に応じて、フルオロポリマー被膜組成物は、水、溶剤およびガスがフッ化ビニルコポリマー被膜へ透過するのを低下させるバリア粒子を含んでいてもよい。特定の実施形態において、粒子は、血小板形粒子である。かかる粒子は、被膜適用中に並ぶ傾向があり、水、溶剤および酸素などのガスは粒子自体を容易に通過できないため、得られる被膜に機械的なバリアが形成されて、水、溶剤およびガスの透過が低下する。例えば、光起電モジュールにおいて、バリア粒子は、フルオロポリマーの水分バリア特性を大幅に増大し、かつ、太陽電池与えられる保護を強化する。ある実施形態において、バリア粒子は、被膜中のフルオロポリマー組成物の合計乾燥重量に基づいて、約0.5〜約10重量%の量で存在する。
【0033】
典型的な血小板形フィラー粒子としては、マイカ、ガラスフレークおよびステンレス鋼フレークおよびアルミニウムフレークが例示される。一実施形態において、血小板形粒子は、マイカ粒子であり、酸化鉄やチタン等の酸化物層で被覆されたマイカ粒子が含まれる。ある実施形態において、これらの粒子の平均粒径は、約10〜200μm、より具体的な実施形態において、20〜100μmであり、フレークの粒子の50%以下の平均粒径が、約300μmを超える。酸化物層で被覆されたマイカ粒子は、米国特許第3,087,827号明細書(KlenkeおよびStratton)、米国特許第3,087,828号明細書(Linton)および米国特許第3,087,829号明細書(Linton)に記載されている。これらの特許に記載されたマイカは、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、亜鉛、アンチモン、錫、鉄、銅、ニッケル、コバルト、クロムまたはバナジウムの酸化物または水和酸化物で被覆されている。被覆されたマイカの混合物を用いることもできる。
【0034】
液体フルオロポリマー被膜組成物処方
フルオロポリマー液体被膜組成物は、溶液か分散液のいずれかの形態でフッ化ビニルコポリマーを含有していてもよい。フッ化ビニルコポリマーの典型的な溶液または分散液は、成膜/乾燥プロセス中、発泡を防ぐために十分に高い沸点を有する溶剤を用いて調製される。分散液形態におけるコポリマーについては、フッ化ビニルコポリマーの凝集を補助する溶剤が望ましい。これらの水溶液または分散液中のフッ化ビニルコポリマー濃度を調節して、溶液の有効な粘度が達成される。これは、特定のポリマー、組成物の他の成分および用いるプロセス設備および条件によって異なる。一実施形態において、溶液について、フッ化ビニルコポリマーは、組成物の合計重量に基づいて、約10wt%〜約25wt%の量で存在する。他の実施形態において、分散液について、フッ化ビニルコポリマーは、液体組成物の合計重量に基づいて、約25wt%〜約50wt%の量で存在する。
【0035】
分散液形態のフルオロポリマー液体被膜組成物を調製するには、フッ化ビニルコポリマー、架橋剤および任意で1つ以上の分散剤および/または顔料を、好適な溶剤と一緒にミリングしてよい。あるいは、様々な成分をミリングする、または別個に適切に混合する。溶剤に可溶な成分は、ミリングの必要がない。
【0036】
分散液の調製には、様々なミルを用いることができる。典型的に、ミルとしては、濃密な攪拌グラインディング媒体、例えば、サンド、鋼ショット、ガラスビーズ、セラミックショット、ジルコニアまたはペブル、ボールミル、Union Process,Akron,Ohioより入手可能なATTRITOR(登録商標)、または攪拌媒体ミル、例えば、Netzsch,Inc.,Exton,Pennsylvaniaより入手可能な「Netzsch」ミルを用いる。分散液は、PVFの解凝集を起こすのに十分な時間にわたってミリングする。Netzschミルの分散液の典型的な滞留時間は、30秒から10分の範囲である。
【0037】
用いる場合、架橋剤は、フッ化ビニルコポリマーの所望の架橋を行うのに十分なレベルで液体被膜組成物に用いる。本発明の一実施形態において、液体被膜組成物は、架橋可能なフッ化ビニルコポリマーのモル等量当たり、約50〜約400モル%の架橋剤を含有する。
【0038】
ポリマー基材膜
本発明に用いるポリマー基材膜は、多数のポリマーから選択してよく、より高温の処理温度に耐える能力から、熱可塑材が望ましい。ポリマー基材膜は、フッ化ビニルコポリマー、架橋する場合には、架橋剤または両方と相互作用する官能基をその表面に含んでいて、フルオロポリマー被膜の基材膜への結合が促進される。好ましいポリマー基材膜は、ポリエステル、ポリアミドまたはポリイミドである。特定の実施形態において、ポリマー基材膜用のポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよびポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンナフタレートの共押出し物から選択される。
【0039】
フィラーも基材膜に含まれていてもよく、存在することで、基材の物理特性、例えば、より高モジュラスおよび引張強さを改善する。それらはまた、フルオロポリマーの基材膜への接着も改善する。1つの例示されるフィラーは、硫酸バリウムである。ただし、他の物を用いてもよい。
【0040】
被覆すべきポリマー基材膜の表面は、ポリエステル膜においては、ヒドロキシルおよび/またはカルボン酸基、ポリアミド膜においては、アミンおよび/または酸官能基のように、結合に好適な官能基を元々有していてもよい。ポリマー基材膜の表面にこれら元々ある官能基の存在によって、被膜をポリマー基材膜に結合して、多層膜を形成するプロセスが単純化され、明らかに商業上の利点が与えられる。フルオロポリマー被膜組成物中のフッ化ビニルコポリマーは、ポリマー基材膜の元々の機能を利用する。このようにして、未変性ポリマー基材膜は、フルオロポリマー被膜に化学的に結合されて(すなわち、別個のプライマーまたは接着剤を用いることなく)、良好な接着力を有するフルオロポリマー膜を形成することができる。ポリマー基材膜を、基材上に別個のプライマーまたは接着層なしで用いるときは、好ましくは、架橋剤を用いて、フッ化ビニルコポリマーを架橋する。
【0041】
多くのポリマー基材膜は、フルオロポリマー被膜に結合するのに好適な追加の官能基の形成を必要とする、またはこれによりさらに利点が得られる。これは、表面処理または表面活性化により達成される。すなわち、表面は、カルボン酸、スルホン酸、アジリジン、アミン、イソシアネート、メラミン、エポキシ、ヒドロキシ、無水物および/またはこれらの組み合わせの官能基を表面に形成することにより、活性とすることができる。一実施形態において、表面活性化は、化学的暴露、例えば、BF等のガス状ルイス酸または硫酸あるいは熱水酸化ナトリウムへの暴露によりなされる。あるいは、こうした表面は、片面または両面を、対向する面を冷却しながら、直火に暴露することによって得ることもできる。表面活性化はまた、フィルムに、高周波数、火花、例えば、コロナ処理または大気窒素プラズマ処理を行うことによってもなされる。さらに、表面活性化は、相溶性のあるコモノマーを、フィルム形成時に、ポリマー基材に組み込むことによっても行うことができる。当業者であれば、相溶性のある官能基を、ポリマー基材膜の表面に形成するのに用いる様々なプロセスが分かるであろう。
【0042】
さらに、プライマー層を、ポリマー基材膜の表面に適用して、その表面官能性を増大してもよい。好適なプライマーとしては、ポリアミン、ポリアミド、アクリルアミドポリマー(特にアモルファスアクリルアミド)、ポリエチレンイミン、エチレンコポリマーまたはターポリマー、酸変性ポリオレフィン(例えば、マレイン化ポリオレフィン)、アクリレートまたはメタクリレートポリマー(例えば、エマルジョンポリマー)、ポリエステル(例えば、分散液)、ポリウレタン(例えば、分散液)、エポキシポリマー、エポキシアクリルオリゴマーおよびこれらの混合物が挙げられる。この一例を挙げると、ポリエチレンイミンプライマーコーティングの適用によるアミン官能基の導入である。第2の例を挙げると、酸または無水物官能性熱可塑性ポリマー、例えば、DuPont CompanyよりBYNEL(登録商標)という商品名で販売されているポリマーの、ベースPET基材との共押出しである。プライマーを、例えば、製造中に伸長されるPET膜基材に用いるときは、プライマーは、膜基材が伸長される前か後のいずれかに適用することができる。
【0043】
被膜適用
本発明の一態様によるフルオロポリマー被覆膜を製造するための液体フルオロポリマー組成物は、従来の被覆手段により、予備形成された膜を必要とすることなく、好適なポリマー基材膜に直接、液体として適用することができる。かかる被膜を製造する技術としては、成型、浸漬、スプレーおよび塗装の従来の方法が挙げられる。フルオロポリマー被膜が、分散液形態のフルオロポリマーを含有するときは、従来の手段、例えば、スプレー、ロール、ナイフ、カーテン、グラビアコーター等、または筋あるいはその他の欠陥なしで均一な被膜を適用できるその他の方法を用いて、分散液を基材膜に成型することにより典型的に適用される。一実施形態において、成型分散液の乾燥被膜厚さは、約2.5μm(0.1ミル)〜約250μm(10ミル)の間、より具体的な実施形態においては、約12.5μm(0.5ミル)〜約125μm(5ミル)の間である。
【0044】
適用後、溶剤を除去すると、フルオロポリマー被膜がポリマー基材膜に接着する。架橋剤を用いる場合には、フッ化ビニルコポリマーが架橋する。フルオロポリマーが溶液形態にある、ある実施形態では、液体フルオロポリマー被膜組成物は、ポリマー基材膜に被覆されて、周囲温度で空気乾燥される。凝集膜を製造する必要は通常ないが、架橋剤を用いて、フッ化ビニルコポリマーを架橋し、フルオロポリマー被膜をより迅速に乾燥するには、通常加熱が望ましい。溶剤の除去およびフッ化ビニルコポリマーの架橋(架橋剤を用いる場合)は、1回の加熱で、または多数回の加熱によりなされる。乾燥温度は、約25℃(周囲条件)〜約200℃(オーブン温度−膜温度はこれより低い)の範囲である。用いる温度は、官能基フッ化ビニルコポリマーおよび/または、用いる場合は、架橋剤の、ポリマー基材膜の官能基との相互作用を促進して、フルオロポリマー被膜を、ポリマー基材膜の官能基との相互作用を促進して、フルオロポリマーをポリマー基材膜に確実に結合するのに十分なものでなければならない。この温度は、用いるフッ化ビニルコポリマーおよび架橋剤、基材膜の官能基により大きく異なる。乾燥温度は、室温から、後述するとおり、分散液形態でのフルオロポリマーの凝集に必要とされるより高いオーブン温度まで及ぶ。
【0045】
組成物中のフッ化ビニルコポリマーが分散液形態にあるときは、溶剤を除去し、また、フルオロポリマー粒子が連続した膜へと凝集するのに十分に高い温度までフルオロポリマーを加熱することが必要である。一実施形態において、被膜中のフルオロポリマーは、約150℃〜約250℃の温度まで加熱される。用いる溶剤は、凝集を補助するのが望ましく、すなわち、溶剤を存在させず、フルオロポリマー被膜の凝集に用いる温度を、必要とされるよりも低くすることが可能となる。このように、フルオロポリマーを凝集するのに用いる条件は、用いるフルオロポリマー、成型分散液と基材膜の厚さ、およびその他の操作条件により異なる。
【0046】
フルオロポリマー被膜組成物は、ポリマー基材膜の一表面または基材膜の両表面に適用することができる。両側の被覆は、ポリマー基材膜の両側に同時に行うか、あるいは、被覆した基材膜を乾燥し、未被覆側にして、同じ被覆ヘッドを再度向けて、膜の反対側に被膜を適用すると、膜の両側に被膜を得ることができる。
【0047】
光起電モジュール
本発明によるフルオロポリマー被覆膜は、光起電モジュールに特に有用である。光起電モジュールの典型的な構造には、グレージング材料としてのガラスの厚層が含まれる。ガラスは、架橋エチレン酢酸ビニル等の耐湿性プラスチックシーリング化合物に埋め込まれた結晶シリコンウェハおよびワイヤを含む太陽電池を保護する。あるいは、薄膜太陽電池を、様々な半導体材料、例えば、CISG(銅−インジウム−ガリウム−セレン化物)、CTS(カドミウム−テルル−スルフィド)、a−Si(アモルファスシリコン)およびカプセル材料で両側が覆われているキャリアシートにあるその他のものから適用することができる。カプセル材に接着しているのはバックシートである。本発明によるフルオロポリマー被覆膜は、かかるバックシートに有用であり、優れた強度、耐候性、耐UV性および防湿特性を与える。本発明による両側フルオロポリマー被覆膜が特に有用であり、予備形成されたPVFホモポリマー膜で作製されたラミネート、例えば、2枚のPVF膜間に挟まれたポリエチレンテレフタレート膜で作製されたものの代わりに用いてよい。
【0048】
試験方法
以下の試験を用いて、本発明において試料の特性を求める。
【0049】
融点
フッ化ビニルコポリマーの融点は、示差走査熱量計(Pyris1、Perkin Elmer Inc.製)を用いて測定される。
【0050】
溶解度
コポリマーは、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に、50℃〜70℃で、水浴インキュベータ(モデルBT−31、Yamato Scientific Co.Ltd.製)を用いて溶解する。
【0051】
引張り特性
NMP中フッ化ビニルコポリマー10%溶液を用いて、膜を生成し、引張り特性を、TENSILON(UTM−1T、TOYO BALDWIN Co.Ltd.製)を用いて測定する。
【実施例】
【0052】
実施例1〜7、比較例1
フッ化ビニルベースのコポリマーの合成
攪拌器とジャケットとを備えた7.6L(2USガロン)の容量の水平ステンレス鋼オートクレーブを、重合反応器として用いる。温度および圧力を測定するための機器、ならびにモノマー混合物をオートクレーブへ、所望の圧力で供給するための圧縮器が、オートクレーブに取り付けられている。
【0053】
オートクレーブは、15gの6,2−TBS(Bakerら、米国特許第5,688,884号明細書に記載されたようにして調製したもの)を含有する脱イオン水で、その容量の70〜80%まで充填した後、内部温度を90℃まで上げる。次に、オートクレーブを、窒素を用いて、3回、3.1MPa(450psig)まで加圧することにより、空気でパージする。パージ後、内圧が3.1MPa(450psig)に達するまで、以下の表1に示す組成を有するモノマー混合物により、オートクレーブを充填する。
【0054】
【表1】

【0055】
20gの過硫酸アンモニウムを、1Lの脱イオン水に溶解することにより、開始剤溶液を調製する。この開始剤溶液を、25ml/分の速度で、5分間にわたって、反応器に供給し、その後、速度を下げ、反応中、1ml/分に維持する。内圧が3.0MPaに低下したら、表2に示すメークアップモノマー混合物を供給して、圧力を一定に保つ。
【0056】
【表2】

【0057】
このメークアップ供給物の組成は、各モノマーの反応性が異なるために、予備充填混合物とは異なる。その組成は、反応器中のモノマー組成物が一定に保たれて、均一な組成の生成物が得られるようなものを選択する。
【0058】
モノマーは、生成したラテックス中の固体含量が約20%に達するまで、オートクレーブに供給される。固体含量が、所定の値に達したら、モノマーの供給を即時に停止し、その後、オートクレーブの中身を冷却し、オートクレーブ中の未反応のガスをパージして出す。
【0059】
得られたラテックスに、高速で攪拌しながら、ラテックス1L当たり、水に溶解した炭酸アンモニウム15g、次に、ラテックス1L当たり70mLのHFC−4310(1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロペンタン)を添加した後、ろ過により、ポリマーを単離する。ポリマーを水で洗い、温風乾燥機にて、90〜100℃で乾燥する。生成されたポリマーの組成および融点を表3に示す。
【0060】
得られたVFコポリマーを、NMPに、55〜60℃で、水浴インキュベータを用いて溶解し、その後、室温(25℃)まで冷やし、安定な透明溶液が得られる樹脂の溶解度を測定する。結果を表3に示す。
【0061】
【表3】

【0062】
実施例8〜22
架橋剤を含有する非水性フルオロポリマー被膜組成物
実施例1〜7で合成したフッ化ビニルベースのコポリマーを、50〜70℃で、N−メチル−2−ピロリドンに溶解することにより、樹脂溶液を調製する。チタンアセチルアセトネート(TYZOR(登録商標)AA75、DuPont Co.製)を架橋剤として選択する。この架橋剤をN−メチル−2−ピロリドンに溶解して、10%溶液とする。
【0063】
架橋剤、チタンアセチルアセトネートの上記溶液を、1%、3%および5%(%は、フッ化ビニルベースのコポリマー樹脂に対する重量による)の量で樹脂溶液に添加し、均一に混合する。組成を表4に示す。
【0064】
【表4】

【0065】
実施例23〜25
フッ化ビニルベースのコポリマー膜の引張り特性
実施例23〜25に、実施例12、17および22の被膜組成から生成したVFコポリマー膜のTENSILONにより測定された引張り強度および破断時伸びを例示する。
【0066】
架橋剤と共に、被膜組成物を、アルミニウムカップ(No.107、AS ONE Corp.製)に入れ、150℃で2時間、真空乾燥機(LCV−232、TABAI ESPEC Corp.製)で乾燥および架橋する。室温まで冷却した後、得られた樹脂膜の接着物を、アルミニウム基材から剥がす。引張り試験結果を表5に示す。
【0067】
【表5】

【0068】
表5に示すとおり、本発明の架橋樹脂は、高最大応力や破断時伸び値等良好な機械的特性を有することが分かった。
【0069】
実施例26〜28
架橋剤を含有する水性フルオロポリマー被膜組成物
実施例1〜7と同じまたは同様の条件を用いて、表6に示すポリマー組成物を有する架橋可能なフッ化ビニルベースのコポリマーの水分散液をいくつか調製して試験する。水分散液と架橋剤(メラミン樹脂、Cymel350、CYTEC INDUSTRIES INC.)を均一に混合する。混合物をアルミニウムカップ(No.107、AS ONE Corp.製)に入れ、190℃で5時間、真空乾燥機で乾燥および架橋する。室温まで冷却した後、得られた被膜を目視観察により評価する。結果を表6に示す。
【0070】
【表6】

【0071】
実施例29〜33
フルオロポリマー被覆PET膜
実施例18〜22の非水性フルオロポリマー被膜組成物を、未変性ポリマー基材膜に被覆することにより、片側フルオロポリマー被覆ポリエチレンテレフタレートを生成する。被覆組成物を、未変性の3ミルMelinex(登録商標)442PET膜(DuPont Teijin Films)に、12ミルのドローダウンナイフを用いてドローダウンし、220℃のオーブンで焼成することにより、フルオロポリマー被膜を生成する。フルオロポリマー被覆膜を目視検査したところ、良好な品質の被膜となった。
【0072】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー基板薄膜と、
該ポリマー基板薄膜上のフルオロポリマーコーティングとを含み、該フルオロポリマーコーティングは、フッ化ビニルから誘導される約40〜約90モル%の繰り返し単位と、以下の(a)と(b)およびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマーから誘導される約10〜約60モル%の繰り返し単位で構成されるフッ化ビニルコポリマーを含み、但し上記コポリマーの約0.1モル%〜50モル%の繰り返し単位が、(b)から選択されるモノマーから誘導され、
(a)は、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマーであり、
(b)は、ヒドロキシル、チオール、カルボニル、カルボン酸、カルボン酸エステル、酸無水物、スルホニル、スルホン酸、スルホン酸エステル、リン酸、リン酸エステル、ホウ酸、ホウ酸エステル、エポキシ、イソシアネート、チオシアネート、アミン、アミド、ニトリル、および臭素およびヨウ素から選択されるハロゲンからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を含有するビニルモノマーであり、
ここで上記ポリマー基板薄膜が、フッ化ビニルコポリマーの官能基と相互作用する官能基を含み、フルオロポリマーコーティングの、ポリマー基板薄膜への結合を促進する、フルオロポリマー被覆薄膜。
【請求項2】
フッ化ビニルコポリマーコーティングが、架橋されている請求項1に記載のフルオロポリマー被覆薄膜。
【請求項3】
フッ化ビニルコポリマーが、フッ素化ビニルエーテル、フッ素化アルキル(メタ)アクリレート、3〜10個の炭素原子を有するパーフルオロオレフィン、パーフルオロC1〜C8アルキルエチレン、フッ素化ジオキソールおよびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマー(c)から誘導される約0.1〜約10モル%の繰り返し単位をさらに含む請求項1に記載のフルオロポリマー被覆薄膜。
【請求項4】
モノマー(b)が、少なくとも1つの官能基を含有するフッ素化ビニルモノマーを含む請求項1に記載のフルオロポリマー被覆薄膜。
【請求項5】
モノマー(b)が、少なくとも1つの官能基を含有するフッ素化ビニルエーテルモノマーを含む請求項1に記載のフルオロポリマー被覆薄膜。
【請求項6】
モノマー(a)が、テトラフルオロエチレンを含む請求項1に記載のフルオロポリマー被覆薄膜。
【請求項7】
フッ化ビニルコポリマーが、テトラフルオロエチレンから誘導される少なくとも約30モル%の単位を含む請求項6に記載のフルオロポリマー被覆薄膜。
【請求項8】
フッ化ビニルコポリマーが、高フッ素化ビニルエーテルおよびパーフルオロC1〜C8アルキルエチレンから選択される少なくとも1つのモノマーから誘導される約0.1〜約10モル%の単位をさらに含む請求項6に記載のフルオロポリマー被覆薄膜。
【請求項9】
フルオロポリマー被膜が、さらに顔料を含む請求項1に記載のフルオロポリマー被覆薄膜。
【請求項10】
フルオロポリマーコーティングが、ポリマー基板薄膜の両側にある請求項1に記載のフルオロポリマー被覆薄膜。
【請求項11】
ポリマー基板薄膜が、ポリエステル、ポリアミドおよびポリイミドから選択される請求項1に記載のフルオロポリマー被覆薄膜。
【請求項12】
基板薄膜が、ポリエステルである請求項1に記載のフルオロポリマー被覆薄膜。
【請求項13】
基板薄膜が、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートからなる群から選択される請求項1に記載のフルオロポリマー被覆薄膜。
【請求項14】
フルオロポリマーコーティングの厚さは、約2.5μm〜約250μm(約0.1〜約10.0ミル)である請求項1に記載のフルオロポリマー被覆薄膜。
【請求項15】
ポリマー基板薄膜の厚さは、約12.5μm〜約250μm(約0.5〜約10ミル)である請求項1に記載のフルオロポリマー被覆薄膜。
【請求項16】
ポリマー基板薄膜が、充填剤をさらに含む請求項1に記載のフルオロポリマー被覆薄膜。
【請求項17】
ポリマー基板薄膜が、その表面に、フッ化ビニルコポリマーの官能基と相互作用して、フルオロポリマーコーティングの基板薄膜への結合を促進する官能基を与えるプライマー層を含む、請求項1に記載のフルオロポリマー被覆薄膜。
【請求項18】
ポリマー基板薄膜の表面が活性化されている請求項1に記載のフルオロポリマー被覆薄膜。
【請求項19】
請求項1に記載のフルオロポリマー被覆薄膜をバックシートとして含む光起電モジュール。
【請求項20】
フルオロポリマー被覆薄膜を製造する方法であって、
ポリマー基板薄膜を、液体フルオロポリマーコーティング組成物で被覆することを含み、ここで該液体フルオロポリマーコーティング組成物は、液体媒体、およびフッ化ビニルから誘導される約40〜約90モル%の繰り返し単位と、以下の(a)と(b)およびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマーから誘導される約10〜約60モル%の繰り返し単位で構成される分散したまたは溶解したフッ化ビニルコポリマーを含み、但し該コポリマーの約0.1モル%〜50モル%の繰り返し単位が、(b)から選択されるモノマーから誘導され、
(a)は、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマーであり、
(b)は、ヒドロキシル、チオール、カルボニル、カルボン酸、カルボン酸エステル、酸無水物、スルホニル、スルホン酸、スルホン酸エステル、リン酸、リン酸エステル、ホウ酸、ホウ酸エステル、エポキシ、イソシアネート、チオシアネート、アミン、アミド、ニトリル、および臭素およびヨウ素から選択されるハロゲンからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を含有するビニルモノマーであり、
液体媒体をフルオロポリマーコーティングから除去することを含む方法。
【請求項21】
液体フルオロポリマーコーティング組成物が、架橋剤をさらに含み、方法が、フッ化ビニルコポリマーを架橋させることをさらに含む請求項20に記載の方法。

【公表番号】特表2010−513681(P2010−513681A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542966(P2009−542966)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/026287
【国際公開番号】WO2008/079395
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【出願人】(000174851)三井・デュポンフロロケミカル株式会社 (59)
【Fターム(参考)】