説明

架橋性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体の製造方法

【課題】 本発明が解決しようとする課題は、複金属シアン化物錯体を含有する、一分子中に不飽和基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体から、触媒や不純物の除去、あるいは精製をほとんど行う必要なく、架橋性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体を簡便に製造する方法を提供することである。
【解決手段】 (a)複金属シアン化物錯体を含有し、一分子中に不飽和基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体に、金属配位性化合物を添加した後、一分子中に水素−ケイ素結合と架橋性ケイ素基とを有する化合物をヒドロシリル化触媒存在下でヒドロシリル化反応させ、(b)(a)で得られる、一分子中に架橋性ケイ素基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体の水酸基を利用してカップリング反応を行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は架橋性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体の製造方法に関する。詳しくは複金属シアン化物錯体を含有し、一分子中に不飽和基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体に、一分子中に水素−ケイ素結合と架橋性ケイ素基とを有する化合物をヒドロシリル化反応させ、得られる一分子中に架橋性ケイ素基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体の水酸基を利用してカップリング反応を行うことを特徴とする、架橋性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体は、建築用あるいは工業用シーリング材、接着剤、コーティング材などの原料ポリマーとして広く用いられている。このような、架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体は特開昭50−156599号公報、特開昭52−73998号公報、特開平3−72527号公報などに例示されるように、主としてポリオキシアルキレン系重合体の末端水酸基を利用して、アリル基やメタリル基などの不飽和基を導入することにより、末端に不飽和基を有するポリオキシアルキレン系重合体を製造した後、一分子中に水素−ケイ素結合と架橋性ケイ素基を有する化合物を用いてヒドロシリル化することにより製造されている。しかしこれらの製造法においては、不飽和基の導入工程において塩などの副生物や不純物が副生するため、これらの除去を目的とした精製工程が必要となり、製造工程が長く煩雑になると共に、多量の廃棄物が発生するという問題があった。
【0003】副生物削減と製造工程短縮の可能性のある架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体の製造方法として、例えば、複金属シアン化物錯体触媒を用いてモノエポキシドを開環重合させる際、不飽和基を有しないモノエポキシドを重合後、不飽和基を有するモノエポキシドを導入することにより一分子中に不飽和基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体を製造し、この不飽和基に対して一分子中に水素−ケイ素結合と架橋性ケイ素基とを有する化合物をヒドロシリル化反応させる方法が挙げられ、特開平3−79627号公報に開示されている。
【0004】この製造法によると不飽和基の導入時には塩などの副生物は発生しないが、モノエポキシドを開環重合させる際使用する複金属シアン化物錯体が、ポリオキシアルキレン系重合体中に残存する。この複金属シアン化物錯体は、一分子中に不飽和基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体中の不飽和基に対する、一分子中に水素−ケイ素結合と架橋性ケイ素基とを有する化合物のヒドロシリル化反応を阻害するとともに、水素−ケイ素結合と水酸基との脱水素縮合反応、水酸基と架橋性ケイ素基との縮合反応、あるいはケイ素上置換基の不均化反応などを促進する。このため、複金属シアン化物錯体を含有し、一分子中に不飽和基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体から複金属シアン化物錯体を除去せずにヒドロシリル化反応を行なっても、ヒドロシリル化収率が低かったり、水素−ケイ素結合と水酸基との縮合反応が進行して増粘したり、あるいは架橋性ケイ素基と水酸基との縮合反応が進行して増粘したりするなどという問題があった。このような水酸基の関与する副反応が進行すると、水酸基を利用したカップリング反応の実施が困難となる。したがって、効率良く架橋性ケイ素基を導入し、かつ水酸基の残存率を高く保つためには複金属シアン化物錯体をヒドロシリル化反応前に除去、もしくは精製する必要があり、製造工程が煩雑となってしまうという問題があった。
【0005】また、複金属シアン化物錯体を用いて製造した一分子中に不飽和基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体と、一分子中に水素−ケイ素結合と架橋性ケイ素基とを有する化合物を反応させることにより、一分子中に架橋性ケイ素基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体の製造法が特開平5−125176号公報に開示されている。しかし該公報に開示されている方法においても、複金属シアン化物錯体を除去せずに実施した場合には、ヒドロシリル化収率が低く、かつ末端水酸基の残存率が低いといった問題があった。末端水酸基の残存率が低いと、水酸基どうしをカップリングしようとする場合に収率が低い、などといった問題がある。さらにこのような問題を解決するために、ポリオキシアルキレン系重合体中より複金属シアン化物錯体を除去、あるいは精製しようとすれば製造工程が長く複雑となり、かつ排水や廃棄物が発生するなどの問題がある。
【0006】末端に架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体を製造する別方法として、2種のアリル出発モノオールを互いにカップリングさせ、次いでアルコキシシランでヒドロシリル化する方法が、特開平5−43679号公報と特開平6−172648号公報に記載されている。しかし該方法では、カップリング反応触媒がヒドロシリル化反応を阻害する場合が多いという問題があった。また、例えばイソシアネート基を有する化合物を用いてカップリングさせた場合、ウレタン結合の存在がヒドロシリル化反応を阻害するために大量のヒドロシリル化触媒が必要となり、経済的に不利であるという問題があった。しかもアリル出発モノオールを複金属シアン化物錯体を触媒として重合した場合には、系内に残存する複金属シアン化物錯体がヒドロシリル化反応を阻害するため、精製工程を必要としたり、あるいは大量のヒドロシリル化触媒を用いる必要があるなどの問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようとする課題は、複金属シアン化物錯体を含有する、一分子中に不飽和基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体から、触媒や不純物の除去、あるいは精製をほとんど行う必要なく、架橋性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体を簡便に製造する方法を提供することである。より詳しくは、本発明が解決しようとする課題は、複金属シアン化物錯体を含有する、一分子中に不飽和基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体から、複金属シアン化物錯体の除去あるいは精製をほとんど行う必要なく、かつ架橋性ケイ素基や水酸基の関与する副反応をほとんど起こさずに、一分子中に架橋性ケイ素基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体を製造し、さらに架橋性ケイ素基や水酸基の関与する縮合などの副反応をほとんど起こすことなく、一分子中に架橋性ケイ素基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体中の水酸基を利用してカップリング反応を行うことにより、架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体を製造する簡便な方法を提供することである。
【0008】すなわち、複金属シアン化物錯体の存在下、水酸基と水素−ケイ素結合との脱水素縮合反応、水酸基と架橋性ケイ素基との縮合反応、水素−ケイ素結合と架橋性ケイ素基との縮合反応、ケイ素上置換基どうしの交換反応、ケイ素上置換基どうしの不均化反応、架橋性ケイ素基を有する化合物どうしの縮合反応などの副反応をほとんど起こすことなく、一分子中に不飽和基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体に、一分子中に水素−ケイ素結合と架橋性ケイ素基とを有する化合物をヒドロシリル化反応させ、さらにこうして得られる一分子中に架橋性ケイ素基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体を、架橋性ケイ素基や水酸基の関与する副反応をほとんど起こすことなく、水酸基を利用してカップリングさせる簡便な方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは鋭意検討の結果、複金属シアン化物錯体を含有し、一分子中に不飽和基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体に、金属配位性化合物を添加することにより、一分子中に水素−ケイ素結合と架橋性ケイ素基とを有する化合物を、ヒドロシリル化触媒存在下で副反応をほとんど起こすことなくヒドロシリル化反応させ、一分子中に架橋性ケイ素基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体を製造でき、さらにこの水酸基を利用してカップリング反応を行うことにより、架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】すなわち、本発明は、(a)複金属シアン化物錯体を含有し、一分子中に不飽和基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体に、金属配位性化合物を添加した後、一分子中に水素−ケイ素結合と架橋性ケイ素基とを有する化合物を、ヒドロシリル化触媒存在下でヒドロシリル化反応させ、(b)(a)で得られる、一分子中に架橋性ケイ素基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体の水酸基を利用してカップリング反応を行うことを特徴とする、架橋性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体の製造方法に関する。
【0011】本発明のより好ましい実施態様を列挙すると、(イ)一分子中に不飽和基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体に金属配位性化合物を添加した後、50℃以上の加熱処理を行うこと、(ロ)一分子中に不飽和基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体が、複金属シアン化物錯体を触媒として重合されたものであること、(ハ)一分子中に不飽和基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体の数平均分子量が3,000以上であること、(ニ)金属配位性化合物が、カルボキシル基を有する化合物、キレート化剤、およびフェノール性水酸基を有する化合物からなる群から選ばれる化合物であること、(ホ)複金属シアン化物錯体が、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛を含有する錯体であること、(ヘ)ヒドロシリル化触媒が白金含有化合物であること、(ト)一分子中に架橋性ケイ素基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体をカップリングさせる際に、一分子中に二つ以上のイソシアネート基を有する化合物を用いること、(チ)一分子中に架橋性ケイ素基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体を、一分子中に二つ以上のイソシアネート基を有する化合物でカップリングさせる際に、硫黄原子を含有するスズ触媒を用いること、(リ)一分子中に二つ以上のイソシアネート基を有する化合物として、脂肪族ジイソシアネート化合物、あるいは脂肪族トリイソシアネート化合物を用いること、(ヌ)一分子中に架橋性ケイ素基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体を、一分子中に二つ以上のイソシアネート基を有する化合物でカップリングさせる際に、(a)ポリオキシアルキレン系重合体中の水酸基に対して過剰量のイソシアネート基を反応させ、(b)過剰のイソシアネート基を、一分子中に二つ以上の活性水素を有する化合物でカップリングさせること、(ル)水酸基を利用したカップリング反応の収率が、ヒドロシリル化反応前の水酸基基準で80%以上であること、となる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。
【0013】本発明の第一の特徴は、複金属シアン化物錯体、水酸基、および架橋性ケイ素基が存在する条件で副反応をほとんど起すことなくヒドロシリル化反応を実施することであり、そのために金属配位性化合物を添加することである。これにより、得られる一分子中に架橋性ケイ素基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体中の、水酸基残存率は高く保たれ、また架橋性ケイ素基も縮合反応を起こすことなく保たれる。
【0014】本発明の第二の特徴は、ヒドロシリル化反応により得られた、一分子中に架橋性ケイ素基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体を、水酸基を利用してカップリング反応させることであり、ヒドロシリル化後のポリオキシアルキレン系重合体をほとんど精製する必要なく、かつ架橋性ケイ素基や水酸基の関与する副反応をほとんど起こすことなく、架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体を高収率で製造できることである。
【0015】本発明で使用する複金属シアン化物錯体は、米国特許3278457号公報、米国特許3278458号公報、米国特許3278459号公報、米国特許3427256号公報、米国特許3427334号公報、米国特許3427335号公報、米国特許3829505号公報、米国特許3941849号公報、米国特許3941849号公報、米国特許4355188号公報、米国特許4472560号公報、米国特許4721818号公報、米国特許4843054号公報、米国特許5158922号公報、特開平4−145123号公報、特開平7−196778号公報、特開平8−311171号公報、特開平8−104741号公報、特開平9−59373号公報、WO9740086号公報、WO9723544号公報、Macromolecular Synthesis第5巻9頁1974年刊などに例示され、下記一般式(1)で表される。
p{M’[(CN)q(Y)rst・y(R)・z(H2O) (1)
(式中、MはZn(II)、Fe(II)、Fe(III)、Co(II)、Ni(II)、Al(III)、Sr(II)、Mn(II)、Cr(II)、Cu(II)、Sn(II)、Pb(II)、Mo(IV)、Mo(VI)、W(IV)、およびW(VI)からなる群より選ばれる金属であり、M’はFe(II)、Fe(III)、Co(II)、Co(III)、Cr(II)、Cr(III)、Mn(II)、Mn(III)、Ni(II)、V(IV)、およびV(V)からなる群より選ばれる金属であり、YはCl、Br、I、OH、NO、C24 、SO4、CNS、CNO、NCO、およびNCSからなる群より選ばれる基であり、Rはケトン、エーテル、ポリエーテル、アルデヒド、エステル、アルコール、およびアミドからなる群より選ばれる有機配位子である。これらのM、M’、Y、およびRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、複数の種類を組合せて用いてもよい。p、q、r、s、およびtは金属の原子価と配位数により変わる正の数であり、yとzは金属の配位数あるいは乾燥条件により変わる正の数である。)
【0016】重合触媒として用いた場合の活性が高いという理由から、一般式(1)におけるMはZn(II)が好ましく、M’はFe(II)、Fe(III)、Co(II)、Co(III)が好ましく、有機配位子であるRはエーテル、ポリエーテル、アルコールが好ましく、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシプロピレントリオール、三級水酸基を含有するポリオキシプロピレンポリオール、t−ブタノール、イソプロピルアルコールが特に好ましい。
【0017】複金属シアン化物錯体としては、重合触媒として用いた場合の活性が高いという理由からヘキサシアノコバルト酸亜鉛を含有する錯体が好ましく、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛のジメトキシエタン配位錯体、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛のt−ブタノール配位錯体、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛のt−ブタノールおよびポリオキシプロピレンジオール配位錯体、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛のt−ブタノールおよびポリオキシプロピレントリオール配位錯体がより好ましい。また、重合触媒として用いた場合の活性が高いという理由から、少なくとも70重量%が実質的に非晶質の複金属シアン化物錯体が好ましく、少なくとも90重量%が実質的に非晶質の複金属シアン化物錯体がより好ましい。
【0018】一分子中に不飽和基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体中に含まれる複金属シアン化物錯体の量は、特に限定されないが、通常ポリオキシアルキレン系重合体100重量部に対して、0.0001〜15重量部であり、好ましくは0.0005〜0.1重量部であり、特に好ましくは0.005〜0.05重量部である。0.0001重量部未満では十分な重合活性が得られない場合が多く、また15重量部を超えるとヒドロシリル化反応の際に収率が低かったり、副反応が促進されたり、あるいは重合体中に沈殿が生じたりする場合がある。
【0019】本発明において使用する、複金属シアン化物錯体を含有し、一分子中に不飽和基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体は、例えば、不飽和基を含有する活性水素化合物を重合開始剤として、上述した複金属シアン化物錯体を触媒に用いてエポキシ化合物を開環重合させることにより、または不飽和基を含有しない活性水素化合物を重合開始剤として、上述した複金属シアン化物錯体を触媒に用いて不飽和基を含有しないモノエポキシドと不飽和基を含有するモノエポキシドとを開環重合させることなどにより得られるが、これらに限定されるものではない。一分子中に不飽和基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体を合成するための重合開始剤として用いることのできる活性水素含有化合物としては、複金属シアン化物錯体に適用可能なものであれば特に限定されないが、反応性が高い点でアルコール性水酸基、フェノール性水酸基、カルボキシル基を含有する化合物が好ましく、アルコール性水酸基を含有する化合物が特に好ましい。
【0020】アルコール性水酸基を含有する化合物としては特に限定されないが、アリルアルコール、メタリルアルコール、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンモノアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル;これらのエチレンオキシド付加体、あるいはプロピレンオキシド付加体など、一分子中に不飽和基とアルコール性水酸基とを有する化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの低分子多価アルコール;これら低分子多価アルコールのプロピレンオキシド付加体;ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシプロピレンテトラオールなどのポリエーテルポリオール;水酸基末端ポリブタジエン、水酸基末端の水素添加ポリブタジエンなどの水酸基末端炭化水素系化合物;アルコール性水酸基末端ポリジメチルシロキサンなどのアルコール性水酸基末端シリコーン系化合物などが挙げられる。また、水も活性水素含有化合物として用いることができる。これら重合開始剤としての活性水素含有化合物のうち、重合後に不飽和基を導入する必要がないという理由から、一分子中に不飽和基とアルコール性水酸基とを有する化合物がより好ましく、入手性および反応性の点でアリルアルコール、アリルアルコールのプロピレンオキシド付加体、メタリルアルコール、およびメタリルアルコールのプロピレンオキシド付加体が特に好ましい。このような重合開始剤としての活性水素含有化合物は、単独で用いてもよく、あるいは複数を組み合わせて用いてもよい。
【0021】複金属シアン化物錯体を用いて開環重合させるモノエポキシドは、特に限定されず、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテンオキシド、イソブテンオキシド、エピクロルヒドリン、スチレンオキシドなどの不飽和基を有しないモノエポキシド;アリルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ブタジエンモノオキシド、シクロペンタジエンモノオキシドなどの不飽和基を有するモノエポキシドなどが挙げられる。これらのうち、取扱が容易であるという理由からプロピレンオキシド、アリルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテルが好ましい。これらは単独で用いてもよく、複数を組合わせて用いてもよい。
【0022】本発明で使用する、複金属シアン化物錯体を含有し、一分子中に不飽和基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体の分子量は、特に限定されないが、数平均分子量1,500〜50,000が好ましく、3,000〜30,000がより好ましい。1,500未満では粘度が低く、50,000を超えると粘度が高すぎるため取扱が困難な場合がある。本発明で使用するポリオキシアルキレン系重合体としては、耐熱性や耐候性などの物性が良好であるという理由から、重合体中の50重量%以上がプロピレンオキシド単位であることが好ましく、重合体中の90重量%以上がプロピレンオキシド単位であることがさらに好ましい。本発明で使用する、一分子中に不飽和基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体は、単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
【0023】本発明において使用する金属配位性化合物とは、金属イオンまたは金属原子、特に複金属シアン化物錯体中に含まれる金属イオンまたは金属原子に対して配位することが可能な化合物である。ここで言う配位とは、化学大辞典(第1版;東京化学同人刊)に記されるように、「電子対供与体から電子対受容体への電子対の供与のこと」と定義される。さらに同書には、「通常は金属イオンまたは金属原子が電子対受容体となっている場合に配位という用語を用いる。電子対供与体として働くものを配位子と呼ぶが、配位子となり得るものとしては、NH3、P(C653、S(CH32などの孤立電子対をもつ分子や、Cl-、NCS-などの陰イオンがある。」と記されている。したがって、本発明において使用する金属配位性化合物とは、金属イオンまたは金属原子に対して配位子となり得る化合物、あるいは配位子となり得る構造を含む化合物である。このような金属配位性化合物としては、カルボキシル基含有化合物、キレート化剤、水酸基含有化合物、フェノール性水酸基を有する化合物が配位能力が高い点で好ましい。なお、ここで言うキレート化剤とは、化学大辞典(第1版;東京化学同人刊)に記されているように、「金属イオンに結合してキレート化合物を生成する複数の供与原子をもつ試薬」と定義される。さらにキレート化について同書によれば、「ある配位子に二つの配位原子が存在し、共に一つのイオンまたは原子(通常は金属イオンもしくは金属原子)に配位して環状の化合物(キレート化合物)を形成することをいう。単環状化合物をつくる場合ばかりではなく、配位原子が3個以上のとき(環が二つ以上できる場合)にも使われる。」と記されている。
【0024】本発明において使用する金属配位性化合物のうち、カルボキシル基含有化合物としては具体的には、ギ酸、酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、2−エチルヘキサン酸、サリチル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、ステアリン酸、グリコール酸、ラク酸、没食子酸、ケイ皮酸、グリシン、乳酸、チグリン酸、アスパラギン酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸、ナフトエ酸、コハク酸モノメチル、コハク酸モノエチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチルなどの一価のカルボン酸;コハク酸、フタル酸、マロン酸、リンゴ酸、グルタミン酸、イタコン酸、マレイン酸、アジピン酸、アスパラギン酸、クエン酸、酒石酸、セバチン酸、チオジプロピオン酸、チオリンゴ酸、イミノジ酢酸、イソフタル酸、2−カルボキシフェニル酢酸、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、シュウ酸、グルタル酸、ベンゼントリカルボン酸、エチレンジアミン四酢酸などの多価カルボン酸;ポリアクリル酸、アクリル酸共重合体などのカルボキシル基含有高分子などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また系内でカルボキシル基を発生するような化合物、例えば無水コハク酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水プロピオン酸、無水安息香酸などのカルボン酸無水物;ギ酸トリメチルシリル、酢酸トリメチルシリル、プロピオン酸トリエチルシリル、安息香酸トリメチルシリル、トリフルオロ酢酸トリメチルシリル、ジメチルジアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、シリコンテトラベンゾエートなどのカルボン酸シリル化物などを用いることもできるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
【0025】本発明において使用する金属配位性化合物のうち、キレート化剤、あるいはフェノール性水酸基を有する化合物の例としては、アセチルアセトン、ベンゾイルトリフルオロアセトン、ジピバロイルメタン、フロイルトリフルオロアセトン、ヘプタフルオロブタノイルピバロイルメタン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、ピバロイルトリフルオロアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、トリオクチルホスフィンオキシド、チエノイルトリフルオロアセトンなどのキレート滴定用試薬;アゾメチンH、バソクプロイン、バソフェナントロリン、4,4−ビスジメチルアミノジフェニルアミン、ビスムチオール−II、N−ベンゾイル−N−フェニルヒドロキシルアミン、ジブロモピロガロルスルフォンフタレイン、カルシクローム、カルマガイト、クロラニル酸、クロロヒドロキシフェニラゾナフトール、クロロフォスフォナゾ−III、クロモトロープ酸、2,3−ジアミノナフタレン、4,6−ジブチル−3−メトキシカテコール、ジアンチピリルメタン、o,o−ジヒドロキシアゾベンゼン、ジメチルスルフォナゾ−III、2,2−ジピリジル、2−フリルジオキシム、2,2−ジベンゾオキサゾリン、ルモガリオン、ムレキシド、ネオキュプロイン、ネオトリン、ニトロフェロイン、ニトロフェニラゾ−15−クラウン−5、ニトロソアミノフェノール、ピリジルアゾナフトール、ピリジルアゾレゾルシノール、5,6−ジフェニル−3−(2−ピリジル)−1,2,4−トリアジン、o−フェナンスロリン、ポルフィリン、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン、フェニル−2−ピリジルケトオキシム、ピロガロールスルフォンフタレイン、ピロカテコールスルフォンフタレイン、N,N’−ビスサリシリデン−2,3−ジアミノベンゾフラン、サリシルアルデヒド−2−オキシアニル、サリシリデンアミノ−2−チオフェノール、スチルバゾ、1,1,1−トリフルオロ−4−メルカプト−4−(2−チエニル)−3−ブテン−2−オン、スルホアルサゼン、スルホクロロフェノールS、スルフォナゾ−III、4−メチル−2−(2−チアゾリルアゾ)フェノール、5−ジメチルアミノ−2−(2−チアゾリルアゾ)フェノール、1−(2−チアゾリルアゾ)−2−ナフトール、4−(2−チアゾリルアゾ)レゾルシノール、3’−ニトロ−4’−(2,4,6−トリニトロフェニルアミノ)ベンゾ−18−クラウン−6、テトラメチルムレキシド、4’−(2,6−ジニトロ−4−トリフルオロメチルフェニル)アミノベンゾ−15−クラウン−5、4’−(2,4−ジニトロ−6−トリフルオロメチルフェニル)アミノベンゾ−15−クラウン−5、チオオキシン、トリン、チロン、2,4,6−トリス(2−ピリジル)−1,3,5−トリアジン、ウンベリフェロン、バリアミンブルーB、キシリルアゾバイオレット−I、キシリルアゾバイオレット−IIなどの金属指示薬;1,3−ジヒドロキシアセトン、エチレングリコール、グリセリン、グルコノデルタラクトン、エリスリトール、キシリトール、キシロース、ソルビトールなどの多価アルコール化合物;フェノール、p−フェノールスルホン酸、フェノキシフェノール、フェニルフェノール、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、アセチルアルデヒド、2−ヒドロキシプロピオフェノン、4−ヒドロキシプロピオフェノン、p−ヒドロキシフェネチルアルコール、p−ヒドロキシフェニル酢酸メチルエステル、p−ヒドロキシフェニルアセトアミド、ビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ハイドロキノン、ノニルフェノール、o−ニトロフェノール、p−ニトロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、トリニトロフェノール、2,3,5−トリメチルハイドロキノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリクロロフェノール、p−ドデシルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、1,4−ジヒドロキシアントラキノン、o−クレゾール−4−スルホン酸、クレゾール、p−(α−クミル)フェノール、グエトール、グアヤコール、キシレノール、カテコール、p−オクチルフェノール、p−オキシ安息香酸メチル、p−エチルフェノール、アミノフェノール、2−アミノ−4−クロロフェノール、4−t−ブチルカテコール、2−t−ブチルヒドロキノン、p−t−ブチルフェノール、フロログルシノール、ヘプチルパラベン、2−メチル−6−t−ブチルフェノール、メトール、p−(メトキシエチル)フェノール、没食子酸ラウリル、レゾルシン、ロイコ−1,4−ジヒドロキシアントラキノン、アミドール、パラアミノフェノール、アトマール、4−ヒドロキシベンゾニトリル、トリベンジルフェノールなどのフェノール化合物;α−ナフトール、β−ナフトール、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,1’−ビ−2−ナフトールなどのナフトール化合物、8−キノリノールなどの複素芳香環化合物;ポリスチレンに一部水酸基を導入した高分子化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
【0026】本発明において用いることのできる金属配位性化合物としては、ヒドロシリル化反応の際にヒドロシリル化収率が著しく高く、水酸基や架橋性シリル基の関与する副反応がほぼ完全に抑制されるという理由から、サリチル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、コハク酸モノエチル、トリクロロ酢酸、乳酸、リンゴ酸などのカルボキシル基含有化合物、無水コハク酸、アセチルアセトン、ベンゾイルトリフルオロアセトン、ジピバロイルメタン、フロイルトリフルオロアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、ヘキサフルオロブタノイルピバロイルメタン、ピバロイルトリフルオロアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、チエノイルトリフルオロアセトン、カテコール、8−キノリノール、ジニトロフェノール、トリニトロフェノールがさらに好ましい。これらのうち、特に効果が高い点で、アミノ基を含まないカルボキシル基含有化合物、無水コハク酸、ジニトロフェノール、トリニトロフェノールがより好ましく、サリチル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、乳酸、リンゴ酸などのカルボキシル基と水酸基とをあわせもつ化合物が特に好ましい。これらの金属配位性化合物は単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0027】本発明で用いることのできる金属配位性化合物の添加量は、その添加効果が一分子中に不飽和基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体中の複金属シアン化物錯体の量により異なり、特に限定されないが、複金属シアン化物錯体中の金属成分に対して0.01〜100当量が好ましく、0.1〜10当量が特に好ましい。0.01当量未満ではヒドロシリル化収率が低かったり、あるいはヒドロシリル化以外の副反応を十分に抑制できなかったりする場合があり、100当量を超えると得られる架橋性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体の貯蔵安定性などの物性に悪影響を与えたり、着色や沈殿を生じたりする場合がある。
【0028】複金属シアン化物錯体を含有し、一分子中に不飽和基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体への、金属配位性化合物の添加方法は特に限定されないが、そのまま添加してもよく、溶媒に溶解して添加してもよい。固体の場合には融点以上に加熱融解して添加してもよく、また固体で添加した後ポリオキシアルキレン系重合体を加熱して溶解させてもよい。
【0029】また金属配位性化合物を添加後、一分子中に水素−ケイ素結合と架橋性ケイ素基とを有する化合物によるヒドロシリル化反応を行う前に、複金属シアン化物錯体を含有し一分子中に不飽和基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体を加熱することが好ましい。加熱する場合には50〜200℃が好ましく、70〜150℃がより好ましい。加熱温度が50℃未満では、複金属シアン化物錯体によるヒドロシリル化反応の阻害を十分に抑えることができないことがあり、また200℃を越えると、一分子中に不飽和基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体の熱劣化が起こる場合がある。加熱時間は10分〜5時間が好ましく、20分〜2時間がより好ましい。
【0030】本発明において使用する、一分子中に水素−ケイ素結合と架橋性ケイ素基とを有する化合物としては、特に限定されないが、入手性および反応性の点で、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。
H−(Si(R12-b)(Xb)O)mSi(R23-a)Xa (2)
(式中、R1およびR2 は同一または異なる炭素数1から20のアルキル基、炭素数6から20のアリール基、炭素数7から20のアラルキル基、またはR33SiO−で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R1またはR2が二個以上存在するとき、それらはそれぞれ同一であってもよく、あるいは異なっていてもよい。ここでR3は炭素数1から20の一価の炭化水素基であり3個のR3は同一であってもよく、あるいは異なっていてもよい。Xは水酸基または加水分解性基を示し、Xが二個以上存在する時、それらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0、1、2または3を、bは0、1、または2をそれぞれ示す。またm個の−Si(R12-b)(Xb)O−基におけるbについて、それらは互いに同一であってもよく、あるいは異なっていてもよい。mは0から19までの整数を示す。ただし、a+Σb≧1を満足するものとする。)
【0031】上記Xのうちの加水分解性基は特に限定されず、従来公知の加水分解性基であればよい。例えばハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。これらのうち、加水分解性が穏やかで取り扱いやすいという点でメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基などのアルコキシ基が好ましい。これらの加水分解性基は1個のケイ素原子に1〜3個結合することができ、(a+Σb)は1から5であるのが好ましい。加水分解性基が2個以上存在する場合には、それらは同一であってもよく、あるいは異なっていてもよい。架橋性ケイ素基中のケイ素原子の数は特に限定されないが、1〜30個程度が好ましい。
【0032】上記一般式(2)で表される化合物の例としては、入手が容易であるため下記一般式(3)で表される化合物が好ましい。
H−Si(R43-c)Xc (3)
(式中、R4 は炭素数1から20のアルキル基、炭素数6から20のアリール基、炭素数7から20のアラルキル基、またはR33SiO−で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、二個以上存在するとき、それらはそれぞれ同一であってもよく、あるいは異なっていてもよい。ここでR3は炭素数1から20の一価の炭化水素基であり3個のR3は同一であってもよく、あるいは異なっていてもよい。Xは水酸基または加水分解性基を示し、二個以上存在する時、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。cは1、2、または3を示す。)
【0033】本発明で使用する、一分子中に水素−ケイ素結合と架橋性ケイ素基とを有する化合物として具体的には、トリクロルシラン、メチルジクロルシラン、ジメチルクロルシラン、フェニルジクロルシラン、トリメチルシロキシメチルクロルシラン、1,1,3,3−テトラメチル−1−ブロモジシロキサンなどのハロゲン化シラン類;トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、トリメチルシロキシメチルメトキシシラン、トリメチルシロキシジエトキシシランなどのアルコキシシラン類;メチルジアセトキシシラン、フェニルジアセトキシシラン、トリアセトキシシラン、トリメチルシロキシメチルアセトキシシラン、トリメチルシロキシジアセトキシシランなどのアシロキシシラン類;ビス(ジメチルケトキシメート)メチルシラン、ビス(シクロヘキシルケトキシメート)メチルシラン、ビス(ジエチルケトキシメート)トリメチルシロキシシラン、ビス(メチルエチルケトキシメート)メチルシラン、トリス(アセトキシメート)シランなどのケトキシメートシラン類;メチルイソプロペニルオキシシランなどのアルケニルオキシシラン類などが挙げられる。中でも反応性が穏やかで取り扱いやすい点でメチルジメトキシシラン、トリメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、トリエトキシシランなどのアルコキシシラン類;トリクロロシラン、メチルジクロロシランなどのハロゲン化シラン類が好ましく、加水分解される際に酸などの有害物が発生しない点でメチルジメトキシシラン、トリメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、トリエトキシシランが特に好ましい。ハロゲン化シラン類のハロゲン原子は不飽和基にヒドロシリル化反応させた後、公知の方法によりカルボン酸、オキシム、アミド、ヒドロキシアミンなどの活性水素化合物やケトン類のアルカリ金属エノラートなどと反応させることにより他の加水分解性基に変換してもよい。
【0034】一分子中に水素−ケイ素結合と架橋性ケイ素基とを有する化合物の添加量は、特に限定されないが、一分子中に不飽和基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体中の不飽和基に対して、通常0.3〜3当量であり、好ましくは0.5〜2当量、より好ましくは0.6〜1.5当量である。0.3当量未満では硬化物にしたときのゴム物性が不十分な場合があり、3当量を超えると経済的に不利となる場合がある。過剰量の一分子中に水素−ケイ素結合と架橋性ケイ素基とを有する化合物は、反応終了後に減圧脱揮などにより除去してもよい。一分子中に水素−ケイ素結合と架橋性ケイ素基とを有する化合物は単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0035】本発明において使用するヒドロシリル化触媒としては、特に限定されないが、白金、ロジウム、コバルト、パラジウム、およびニッケルなどのVIII族遷移金属元素から選ばれた金属錯体などが使用できる。中でもヒドロシリル化の反応性の点から、H2PtCl6・6H2O、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−オレフィン錯体、Ptメタル、RhCl(PPh33、RhCl3、Rh/Al23、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4などが好ましく、H2PtCl6・6H2O、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−オレフィン錯体などの白金含有化合物がより好ましく、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−オレフィン錯体が特に好ましい。ここでいう白金−ビニルシロキサン錯体とは、白金原子に対し、配位子として分子内にビニル基を含有するシロキサン、ポリシロキサン、環状シロキサンなどが配位している化合物の総称であり、上記配位子の具体例としては、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサンなどが挙げられる。白金−オレフィン錯体のオレフィン配位子の具体例としては1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、1,11−ドデカジエン、1,5−シクロオクタジエンなどが挙げられる。上記配位子の中でもヒドロシリル化反応性の点で、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン、1,9−デカジエンが好ましい。本発明で使用するヒドロシリル化触媒は単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0036】ヒドロシリル化触媒の使用量は特に限定されないが、複金属シアン化物錯体を含有し一分子中に不飽和基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体100重量部に対して、触媒中の金属重量換算で通常0.00001から1重量部であり、好ましくは0.00005から0.05重量部であり、より好ましくは0.0001から0.01重量部である。0.00001重量部未満では十分な反応活性が得られない場合があり、1重量部を超えると経済的に不利となったり、重合体が着色したりする場合がある。
【0037】なお白金−ビニルシロキサン錯体、白金−オレフィン錯体については特公平8−9006号公報などに開示されている。
【0038】本発明の製造方法において、ヒドロシリル化反応の際の温度は特に限定されないが、0℃から150℃が好ましく、20℃から120℃がさらに好ましい。0℃未満では反応速度が小さい場合があり、150℃を超えると水酸基、水素−ケイ素結合、あるいは架橋性ケイ素基の関与する副反応が進行する場合がある。
【0039】本発明において、架橋性ケイ素基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体の水酸基を利用してカップリング反応させる際、利用できるカップリング剤としては、水酸基と反応可能な官能基を2個以上有している化合物であれば特に限定されないが、例えば多価イソシアネート化合物、多価カルボン酸化合物、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸誘導体などが挙げられる。また、官能基は1個しか持たない化合物であっても、2個以上の水酸基と反応して結合できる化合物を使用することもできる。このような化合物としては、アルデヒド化合物、カーボネート化合物などを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0040】水酸基を利用したカップリング反応の収率は、硬化物の十分な力学特性を得るため、ヒドロシリル化反応前の水酸基基準で80%以上、好ましくは85%以上である。
【0041】本発明で使用するカップリング剤のうち、多価イソシアネート化合物、すなわち一分子中に二つ以上のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物;1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどのトリイソシアネート化合物;上記化合物を多価アルコール化合物と反応させた多価イソシアネート化合物;上記化合物のイソシアヌレート変性体;上記化合物を多価アミン化合物と反応させた多価イソシアネート化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】本発明で使用するカップリング剤のうち、多価カルボン酸化合物としては、例えばアジピン酸、イタコン酸、イミノジ酢酸、エチレンジアミン四酢酸、グルタル酸、シトラコン酸、シュウ酸、酒石酸、ジパラトルオイル酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、セバシン酸、3,3’−チオジプロピオン酸、チオマレイン酸、ドデカン二酸、1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸、ブラシル酸、マロン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールトリメリテート、イミダゾール−4,5−ジカルボン酸、ケリダム酸、2,3−ピラジンジカルボン酸、葉酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、シスチンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】本発明で使用するカップリング剤のうち、多価カルボン酸無水物としては、例えば無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水マレイン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水フタル酸、マレイン化メチルシクロヘキセン四塩基酸無水物、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0044】本発明で使用するカップリング剤のうち、多価カルボン酸誘導体としては、例えばエトキシメチレンマロン酸ジエチルエステル、コハク酸ジエチル、シュウ酸ジエチル、フマル酸クロライド、ヘキサヒドロフタル酸ジアリル、マロン酸ジエチル、イソフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジメチル、ジメチルテレフタレート、テレフタル酸ジアリル、トリアリルトリメリテート、ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート、o−フタル酸クロライド、フタル酸ジアリル、ブチルフタリルブチルグリコレート、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、ブチルベンジルフタレート、フタル酸ジシクロヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル、アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)、セバシン酸ジブチル、クエン酸アセチルトリエチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、エチレンドデカンジオエート、エチレンブラシレート、アスパルテーム、コハク酸ジクロライド、シュウ酸ジクロライド、o−フタル酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】本発明で使用するカップリング剤のうち、アルデヒド化合物としては、例えばアクロレイン、アセトアルデヒド、オクチルアルデヒド、グリオキサール、グリオキシル酸、クロトンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ホルムアルデヒド、メタクロレイン、メチルグリオキザール、p−アミノベンズアルデヒド、3,4,5−トリメトキシベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ベンズアルデヒド、3−アルデヒドピリジン、フルフラール、クロロベンズアルデヒド、ジクロロベンズアルデヒド、モノクロロアセトアルデヒド、トリフルオロメチルベンズアルデヒド、アニスアルデヒド、アミルシンナミックアルデヒド、ウンデシレンアルデヒド、クミンアルデヒド、けい皮アルデヒド、シクラメンアルデヒド、3,4−ジメトキシベンズアルデヒド、デシルアルデヒド、バニリン、ヒドロキシシトロネラール、フェニルアセトアルデヒド、ヘリオトロピン、p−メチルフェニルアセトアルデヒドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】本発明で使用するカップリング剤のうち、カーボネート化合物としては、例えばエチレンカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジアリルカーボネート、アリルエチルカーボネート、ジフェニルカーボネートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】本発明において架橋性ケイ素基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体の水酸基を利用してカップリング反応させる際、利用できるカップリング剤としては、酸、水、あるいはアルコールなどの副生物が生成せず、架橋性ケイ素基の縮合反応を促進する恐れのある触媒を用いる必要がなく、さらに入手が容易である、といった理由から、一分子中に二つ以上のイソシアネート基を有する化合物を用いることが好ましく、耐候性に優れる点でヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートを反応させて得られるポリイソシアネート化合物などの脂肪族多価イソシアネート化合物がさらに好ましい。本発明で用いる一分子中に二つ以上のイソシアネート基を有する化合物などカップリング剤の量は、一分子中に架橋性ケイ素基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体中の水酸基の量に対して、イソシアネート基やカルボキシル基などの官能基換算で0.5〜3当量が好ましく、0.8〜2当量がさらに好ましく、0.95〜1.5当量が特に好ましい。0.5当量未満ではカップリング収率が不十分なため、得られる架橋性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体の物性が不十分な場合があり、3当量を超えると経済的に不利となる場合がある。本発明において使用できるカップリング剤は、単独で使用してもよく、複数を組合せて使用してもよい。
【0048】ただし、カップリング剤として一分子中に二つ以上のイソシアネート基を有する化合物を用いる場合には、ポリオキシアルキレン系重合体中の水酸基に対して5当量程度までのイソシアネート基を反応させることができる。このような場合、過剰のイソシアネート基に対して、一分子中に二つ以上の活性水素を有する化合物を反応させることにより、カップリングさせることが可能である。このような一分子中に二つ以上の活性水素を有する化合物としては、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、窒素原子上に水素を有するアミノ基からなる群から選ばれる基を一分子中に二つ以上有する化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0049】このような化合物としては、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、N−メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、オクタンジオール、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グルコン酸、グリセロール−α−モノクロロヒドリン、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−ジヒドロキシアセトン、1,4−ジヒドロキシ−1,4−ブタンジスルホン酸二ナトリウム、酒石酸ジイソプロピル、チオジグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ヘキシレングリコール、ペンタエリスリトール、1,5−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、カテコール、1,4−ジヒドロキシアントラキノン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、水素化ビスフェノールA、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,5−トリメチルハイドロキノン、ハイドロキノン、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビスフェノールA、p−ヒドロキシフェネチルアルコール、4−t−ブチルカテコール、2−t−ブチルヒドロキノン、プロトカテキュ酸、フロログルシノール、没食子酸、没食子酸ラウリル、レゾルシン、ロイコ−1,4−ジヒドロキシアントラキノン、1,1’−ビ−2−ナフトール、2−フェニル−4,5−ビス(ヒドロキシメチル)イミダゾール、コウジ酸、シトラジン酸、スピログリコール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、5−フルオロウラシル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル−2−ヒドロキシプロピルテトラブロモフタレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、両末端水酸基ポリシロキサン、ポリパラビニルフェノール、ポリビニルアルコール、β−1,4−グルコーズ、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ポリ(オキシエチレン)アルキルアミン、ポリ(オキシエチレン)アルキルアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、エリソルビン酸、ノルジヒドログアヤレチック酸、没食子酸プロピル、リボフラビン、ピリドキシン、パントテン酸、アスコルビン酸、グリセロリン酸、グルコン酸、グルコノデルタラクトン、エリスリトール、キシリトール、キシロース、ソルビトール、イノシン、アラビノシルシトシンなどの多価アルコール化合物;トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、トリグリコールジメルカプタン、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールなどの多価チオール化合物;アジピン酸、アゾビスシアノ吉草酸、イタコン酸、イミノジ酢酸、エチレンジアミン四酢酸、グルタル酸、コハク酸、シトラコン酸、シュウ酸、酒石酸、ジパラトルオイル酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、セバシン酸、3,3’−チオジプロピオン酸、チオマレイン酸、ドデカン二酸、トランス−1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸、ブラシル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸4−ヒドロキシブチル、ポリアクリル酸2−ヒドロキシエチル、ポリアクリル酸2−ヒドロキシプロピル、ポリメタクリル酸2−ヒドロキシエチル、ポリメタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、マロン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、フタル酸、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールトリメリテート、イミダゾール−4,5−ジカルボン酸、ケリダム酸、2,3−ピラジンジカルボン酸、クロレンド酸、葉酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸、グリチルリチン酸などの多価カルボン酸化合物;アジピン酸ジヒドラジド、1級アミン変性アクリルポリマー、3,3’−イミノビス(プロピルアミン)、3−(メチルアミノ)プロピルアミン、N−メチル−3,3’−イミノビス(プロピルアミン)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、カルボヒドラジド、グアニジン、グアニルチオ尿素、1,4−ジアミノブタン、ジアミノプロパン、ジアミノマレオニトリル、ジシアンジアミド、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオクサスピロ[5.5]ウンデカン、チオカルボヒドラジド、チオセミカルバジド、チオ尿素、ドデカン二酸ジヒドラジド、ヘキサメチレンジアミン、ホルムアミジン、m−キシリレンジアミン、ジアニシジン、4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、1,4−ジアミノアントラキノン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、トリジンベース、m−トルイレンジアミン、フェニレンジアミン、アミドール、パラミン、アセトグアナミン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、2,4−ジアミノ−6−(2−メチル−1−イミダゾリル)−エチル−1,3,5−トリアジン、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、ピペラジン、ベンゾグアナミン、メラミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、アミノポリアクリルアミド、ポリアリルアミン、ビスベンチアミンなどの多価アミン化合物;N−(2−アミノエチル)エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、12−アミノドデカン酸、3−アミノ−1−プロパノール、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−カルボキシ−4,4’−メチレンビスシクロヘキシルアミン、グリオキシル酸、グリシルグリシン、システアミン、チオグリコール酸、1−チオグリセロール、乳酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、ホルムアミドオキシム、2−メルカプトエタノール、β−メルカプトプロピオン酸、p−アミノ安息香酸、2−アミノ−4−クロロフェノール、2−アミノチオフェノール、アミノフェノール、アントラニル酸、β−オキシナフトエ酸、サリチル酸、2−アミノ−5−ナフトール−7−スルホン酸、チオサリチル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、p−ヒドロキシフェニル酢酸、p−ヒドロキシフェニルアセトアミド、p−ヒドロキシフェニルプロピオン酸、ベンジル酸、マンデル酸、ロイコ−1,4−ジアミノアントラキノン、p−ヒドロキシフェニルグリシン、3−カルバモイル−ピラジンカルボン酸、(ヒドロキシエチル)ピペラジン、2−アミノ−4−クロロ安息香酸、イソロイシン、トレオニン、トリプトファン、バリン、ヒスチジン、フェニルアラニン、メチオニン、リシン、アスパルテーム、アラニン、グリシン、テアニンなどの種類の異なる活性水素をあわせもつ化合物;水;アンモニアなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いても、複数を組合せて用いてもよい。これらのうち、反応性の点で水酸基含有化合物およびアミノ基含有化合物が好ましく、得られる重合体の強度が大きくなる点でトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、1,2,6−ヘキサントリオール、メラミンなどのように、一分子中に3つ以上の水酸基、あるいはアミノ基を有する化合物がより好ましい。
【0050】また、過剰のイソシアネート基をイソシアヌレート環形成反応によりカップリングさせてもよい。
【0051】本発明の実施において、一分子中に架橋性ケイ素基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体と、一分子中に二つ以上のイソシアネート基を有する化合物などのカップリング剤を反応させる際、特に触媒を使用しなくてもよいが、反応速度を向上させたり反応率を向上させる目的で使用してもよい。例えば多価イソシアネート化合物を用いてカップリング反応を実施する場合に用いることのできるウレタン化反応触媒としては、例えばPolyurethanes: Chemistry and Technology, Part I, Table 30, Chapter 4, Saunders and Frisch, Interscience Publishers, New York, 1963に列挙されている触媒が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0052】多価イソシアネート化合物を用いてカップリング反応する場合に用いることのできるウレタン化反応触媒としては、オクチル酸スズ、ステアリン酸スズ、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジオレイルマレート、ジブチルスズジブチルマレート、ジブチルスズジラウレート、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジラウリルオキシカルボニルジスタノキサン、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジアセチルアセトナート、ジブチルスズビス(o−フェニルフェノキサイド)、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズビストリエトキシシリケート、ジブチルスズジステアレート、ジブチルスズビスイソノニル−3−メルカプトプロピオネート、ジブチルスズビスイソオクチルチオグリコレート、ジオクチルスズオキサイド、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクチルスズジバーサテートなどのスズ触媒が活性が高い点で好ましい。さらに架橋性ケイ素基に対して活性の低い触媒を用いることが好ましく、例えばジブチルスズビスイソノニル−3−メルカプトプロピオネート、ジブチルスズビスイソオクチルチオグリコレートなどの硫黄原子を含有するスズ触媒が特に好ましい。
【0053】また同様に、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸誘導体、アルデヒド化合物、カーボネート化合物などを用いてカップリング反応を行う場合にも、それぞれの反応に対して公知の触媒を用いることができる。このような触媒の添加量は特に限定されないが、ポリオキシアルキレン系重合体100重量部に対して、0.0001〜3重量部が好ましく、0.001〜0.5重量部がさらに好ましく、0.003〜0.1重量部が特に好ましい。0.0001重量部未満では十分な反応活性が得られない場合があり、3重量部を超えると得られる架橋性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体の耐熱性、耐候性、耐加水分解性などの物性を悪化させる場合がある。
【0054】本発明の製造方法においては、本質的には溶媒を用いる必要はないが、触媒、あるいは基質を均一に溶解させる目的で、また反応系の温度制御、あるいは触媒成分の添加を容易にするため溶媒を用いることができる。これらの目的のために適当な溶媒としては、例えばヘキサン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ドデシルベンゼンなどの炭化水素化合物類;クロロホルム、塩化メチレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素化合物類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0055】本発明は、複金属シアン化物錯体を含有し一分子中に不飽和基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体に、金属配位性化合物を添加した後、一分子中に水素−ケイ素結合と架橋性ケイ素基とを有する化合物をヒドロシリル化触媒存在下でヒドロシリル化反応させ、さらにこうして得られる一分子中に架橋性ケイ素基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体の、水酸基を利用してカップリング反応させることを特徴とする、架橋性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体を製造する方法であるが、ヒドロシリル化反応前後、および水酸基を利用したカップリング反応前後に何ら処理工程、あるいは精製工程を必要としない。ただし、特別な理由により何らかの処理工程、あるいは精製工程を適用することについては、これを排除するものではない。
【0056】なお、本発明の製造法においては精製工程を必要としないため、重合によるポリオキシアルキレン系重合体の製造から、カップリング反応まで、単一の反応槽で連続して実施することが可能である。
【0057】本発明の製造法により得られる架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体は、水分あるいは大気中の湿分と反応することにより架橋硬化物を与える、建築用あるいは工業用シーリング材、接着剤、コーティング材などの原料あるいは原料中間体として有用である。
【0058】
【実施例】以下に本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0059】(製造例1)オートクレーブに、エポキシド重合触媒としてヘキサシアノコバルト酸亜鉛グライム錯体0.56g、重合開始剤として数平均分子量1,500の一分子中にアリル基と水酸基とを有するポリオキシプロピレン(日本油脂株式会社製ユニセーフPKA−5014 0.676mmol−OH/g)2016g、触媒活性化のためのプロピレンオキシド256gを仕込み、100℃に加熱することにより重合反応を行った。誘導期を経た後、反応液温は急激に上昇し、その後に降下した。反応液温の降下を確認した後、追加のプロピレンオキシド4760gを約5時間かけて滴下し、内温を100〜110℃に保った。滴下終了後さらに1時間加熱を続け、続いて減圧脱揮により微量の未反応モノマーを除去した。これにより約80ppmのヘキサシアノコバルト酸亜鉛グライム錯体を含有する、一分子中にアリル基と水酸基とを含するポリオキシプロピレン(数平均分子量約5,000)を得た。得られた重合体のヨウ素価滴定で求めたアリル基当量は0.183mmol/g、水酸基価滴定により求めた水酸基当量は0.225mmol/gであった。
【0060】(製造例2)オートクレーブに、エポキシド重合触媒としてヘキサシアノコバルト酸亜鉛グライム錯体0.56g、重合開始剤として数平均分子量1,500の一分子中にアリル基と水酸基とを有するポリオキシプロピレン(日本油脂株式会社製ユニセーフPKA−5014 0.676mmol−OH/g)2024g、触媒活性化のためのプロピレンオキシド263gを仕込み、100℃に加熱することにより重合反応を行った。誘導期を経た後、反応液温は急激に上昇し、その後に降下した。反応液温の降下を確認した後、追加のプロピレンオキシド4709gを約5時間かけて滴下し、内温を100〜110℃に保った。滴下終了後さらに1時間加熱を続け、続いて減圧脱揮により微量の未反応モノマーを除去した。これにより約80ppmのヘキサシアノコバルト酸亜鉛グライム錯体を含有する、一分子中にアリル基と水酸基とを含するポリオキシプロピレン(数平均分子量約5,000)を得た。得られた重合体のヨウ素価滴定で求めたアリル基当量は0.172mmol/g、水酸基価滴定により求めた水酸基当量は0.233mmol/gであった。
【0061】(実施例1)製造例1で得られた、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛グライム錯体を含有し、一分子中にアリル基と水酸基とを含有するポリオキシプロピレン49.4gをガラス製反応器に秤取し、トルエンを用いて共沸脱水した後、無水コハク酸3.9mgを添加した(水酸基に対して0.0035当量、亜鉛に対して2.5当量)。窒素雰囲気で130℃/1時間加熱した後、室温まで冷却し、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金重量で2.3ppm)、ジメトキシメチルシラン0.771g(ポリオキシプロピレン中のアリル基に対して0.803当量)を順に添加した。60℃で2時間、90℃で1時間反応を行ったところ、ヒドロシリル化収率が78%(アリル基基準)に達し、しかも水酸基の関与する縮合や架橋性ケイ素基の関与する縮合などの副反応はほとんど起こっていなかった。
【0062】続いて、ヘキサメチレンジイソシアネート1.07g(イソシアネート基12.7mmol;水酸基に対して1.14当量)、ジブチルスズジラウレート11.6mg(235ppm)を室温で添加し、120℃で3時間加熱することにより、カップリング反応を完結させた。メタノール2gを添加して0.5時間攪拌し、IR分析によりイソシアネート基がほとんど残存していないことを確認し、減圧脱揮した。GPC分析によりカップリング率を見積もると、93%であった。
【0063】こうして得られた、末端に架橋性ケイ素基を有するポリオキシプロピレンからシート状硬化物を作成し、力学特性を測定した。モジュラス(100%伸長時)=0.153MPa、引張破断強度0.245MPa、引張破断時伸び=197%(JIS3号ダンベル;引張速度200mm/min)と、満足できる物性を示した。
【0064】(実施例2)製造例1で得られた、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛グライム錯体を含有し、一分子中にアリル基と水酸基とを含有するポリオキシプロピレン103.7gをガラス製反応器に秤取し、トルエンを用いて共沸脱水した後、サリチル酸6.5mgを添加した(水酸基に対して0.0020当量、亜鉛に対して1.4当量)。窒素雰囲気で130℃/30分間加熱した後、室温まで冷却し、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金重量で2.1ppm)、ジメトキシメチルシラン1.637g(アリル基に対して0.813当量)を順に添加した。80℃で3時間反応を行ったところ、ヒドロシリル化収率が77%(アリル基基準)に達し、しかも水酸基の関与する縮合や架橋性ケイ素基の関与する縮合などの副反応はほとんど起こっていなかった。
【0065】続いて、ヘキサメチレンジイソシアネート2.16g(イソシアネート基25.4mmol;水酸基に対して1.092当量)、ジブチルスズビスイソオクチルチオグリコレート11.3mg(109ppm)を室温で添加し、100℃で3時間加熱することにより、カップリング反応を完結させた。メタノール5gを添加して0.5時間攪拌し、IR分析によりイソシアネート基がほとんど残存していないことを確認し、減圧脱揮した。GPC分析によりカップリング率を見積もると、97%であった。
【0066】こうして得られた架橋性ケイ素基含有ポリオキシプロピレンに、ジブチルスズビスアセチルアセトナート1.06g(1.02重量部)を硬化触媒として添加し、密閉した容器に入れて23℃、および50℃における貯蔵安定性を評価した。硬化時間と粘度について5週間まで追跡したが、23℃保存サンプル、50℃保存サンプル共に問題はなく、安定的に長期保存できることを確認した。この架橋性ケイ素基含有ポリオキシプロピレンから作成したシート状硬化物の力学特性は、モジュラス(100%伸長時)=0.180MPa、引張破断強度=0.281MPa、引張破断時伸び=186%(JIS3号ダンベル;引張速度200mm/min)と、満足できるものであった。
【0067】(実施例3)製造例2で得られた、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛グライム錯体を含有し、一分子中にアリル基と水酸基とを含有するポリオキシプロピレン109.1gをガラス製反応器に秤取し、トルエンを用いて共沸脱水した後、チエノイルトリフルオロアセトン1.6×10-2mmol(亜鉛に対して0.48当量)とp−ヒドロキシ安息香酸0.12mmol(亜鉛に対して3.6当量)を添加した。窒素雰囲気で100℃/1時間加熱した後、室温まで冷却し、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金重量で5.1ppm)、ジメトキシメチルシラン1.729g(アリル基に対して0.799当量)を順に添加した。80℃で4時間反応を行ったところ、ヒドロシリル化収率が73%(アリル基基準)に達し、しかも水酸基の関与する縮合や架橋性ケイ素基の関与する縮合などの副反応は起こっていなかった。
【0068】続いて、ヘキサメチレンジイソシアネート2.13g(イソシアネート基25.1mmol;水酸基に対して1.00当量)、ジブチルスズビスイソオクチルチオグリコレート11mg(101ppm)を室温で添加し、100℃で11時間加熱することにより、カップリング反応を完結させた。メタノール4gを添加して0.5時間攪拌し、IR分析によりイソシアネート基がほとんど残存していないことを確認し、減圧脱揮した。GPC分析によりカップリング率を見積もると、99%であった。
【0069】こうして得られた、末端に架橋性ケイ素基を有するポリオキシプロピレンからシート状硬化物を作成し、力学特性を測定した。モジュラス(100%伸長時)=0.179MPa、引張破断強度0.274MPa、引張破断時伸び=188%(JIS3号ダンベル;引張速度200mm/min)と、満足できる物性を示した。
【0070】(実施例4)製造例2で得られた、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛グライム錯体を含有し、一分子中にアリル基と水酸基とを含有するポリオキシプロピレン106.6gをガラス製反応器に秤取し、トルエンを用いて共沸脱水した後、コハク酸モノエチル7.62×10-2mmol(亜鉛に対して2.3当量)を添加した。窒素雰囲気で100℃/1時間加熱した後、室温まで冷却し、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金重量で2.2ppm)、ジメトキシメチルシラン1.698g(アリル基に対して0.803当量)を順に添加した。80℃で8時間反応を行ったところ、ヒドロシリル化収率が72%(アリル基基準)に達し、水酸基の残存率は92%であった。
【0071】続いて、ヘキサメチレンジイソシアネート1.93g(イソシアネート基22.7mmol;水酸基に対して0.923当量)、ジブチルスズビスイソオクチルチオグリコレート11.3mg(106ppm)を室温で添加し、100℃で6時間加熱することにより、カップリング反応を完結させた。メタノール5gを添加して0.5時間攪拌し、減圧脱揮した。IR分析によるとイソシアネート基はほとんど残存しておらず、GPC分析によるとカップリング収率は92%であった。
【0072】こうして得られた、末端に架橋性ケイ素基を有するポリオキシプロピレンからシート状硬化物を作成し、力学特性を測定した。モジュラス(100%伸長時)=0.131MPa、引張破断強度0.185MPa、引張破断時伸び=170%(JIS3号ダンベル;引張速度200mm/min)と、満足できる物性を示した。
【0073】(実施例5)製造例2で得られた、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛グライム錯体を含有し、一分子中にアリル基と水酸基とを含有するポリオキシプロピレン107.6gをガラス製反応器に秤取し、トルエンを用いて共沸脱水した後、サリチル酸14.5mg(0.105mmol;亜鉛に対して3.13当量)を添加した。窒素雰囲気で100℃/1時間加熱した後、室温まで冷却し、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金重量で5.1ppm)、ジメトキシメチルシラン1.708g(アリル基に対して0.800当量)を順に添加した。80℃で2時間反応を行ったところ、ヒドロシリル化収率が74%(アリル基基準)に達し、水酸基の残存率は97%であった。こうして得られた、架橋性ケイ素基と水酸基を有するポリオキシプロピレンを、室温で20日間放置したが、ヒドロシリル化率、および水酸基残存率にほとんど変化は認められなかった。
【0074】次に、ヘキサメチレンジイソシアネート1.965g(イソシアネート基23.16mmol;水酸基に対して0.935当量)、ジブチルスズビスイソオクチルチオグリコレート10.2mg(95ppm)を室温で添加し、100℃で5時間加熱することにより、カップリング反応を完結させた。メタノール5gを添加して0.5時間攪拌し、減圧脱揮した。IR分析によりイソシアネート基はほとんど残存していないことを確認し、GPC分析より見積もったカップリング収率は93%であった。
【0075】こうして得られた、末端に架橋性ケイ素基を有するポリオキシプロピレンからシート状硬化物を作成し、力学特性を測定した。モジュラス(100%伸長時)=0.159MPa、引張破断強度0.237MPa、引張破断時伸び=180%(JIS3号ダンベル;引張速度200mm/min)と、満足できる物性を示した。
【0076】(実施例6)製造例2で得られた、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛グライム錯体を含有し、一分子中にアリル基と水酸基とを含有するポリオキシプロピレン79.50gをガラス製反応器に秤取し、トルエンを用いて共沸脱水した後、無水コハク酸7.9mgを添加した。窒素雰囲気で100℃/1時間加熱した後、室温まで冷却し、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金重量で5.0ppm)、ジメトキシメチルシラン1.354g(アリル基に対して0.873当量)を順に添加した。80℃で4時間反応を行ったところ、ヒドロシリル化収率が78%(アリル基基準)に達した。
【0077】続いて、ヘキサメチレンジイソシアネート0.622g(水酸基に対してイソシアネート基0.404当量)、スミジュールHT(ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンのアダクト;酢酸エチル溶液)(住友バイエルウレタン(株)製)3.598g(水酸基に対してイソシアネート基0.609当量)、ジブチルスズビスイソオクチルチオグリコレート4.0mg(52ppm)を添加し、80℃で3時間、100℃で2時間加熱し、カップリング反応を完結させた。メタノール3gを添加して0.5時間攪拌し、減圧脱揮した。IR分析よりイソシアネート基が残存していないことを確認した。GPC分析より見積もったカップリング率は96%であった。
【0078】こうして得られた、末端に架橋性ケイ素基を有するポリオキシプロピレンからシート状硬化物を作成し、力学特性を測定した。モジュラス(100%伸長時)=0.389MPa、引張破断強度0.490MPa、引張破断時伸び=147%(JIS3号ダンベル;引張速度200mm/min)と、満足できる物性を示した。
【0079】(実施例7)製造例2で得られた、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛グライム錯体を含有し、一分子中にアリル基と水酸基とを含有するポリオキシプロピレン80.5gをガラス製反応器に秤取し、トルエンを用いて共沸脱水した後、無水コハク酸7.9mgを添加した。窒素雰囲気で100℃/1時間加熱した後、室温まで冷却し、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金重量で5.0ppm)、ジメトキシメチルシラン1.253g(アリル基に対して0.799当量)を順に添加した。80℃で4時間反応を行ったところ、ヒドロシリル化収率が73%(アリル基基準)に達した。
【0080】続いて、ヘキサメチレンジイソシアネート0.755g(水酸基に対してイソシアネート基0.498当量)、スミジュールHT(ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンのアダクト;酢酸エチル溶液)(住友バイエルウレタン(株)製)2.996g(水酸基に対してイソシアネート基0.501当量)、ジブチルスズビスイソノニル−3−メルカプトプロピオネート4.0mg(53ppm)を添加し、80℃で3時間、100℃で2時間加熱し、カップリング反応を完結させた。メタノール3gを添加して0.5時間攪拌し、減圧脱揮した。GPC分析より見積もったカップリング率は97%であった。
【0081】こうして得られた、末端に架橋性ケイ素基を有するポリオキシプロピレンからシート状硬化物を作成し、力学特性を測定した。モジュラス(100%伸長時)=0.313MPa、引張破断強度0.317MPa、引張破断時伸び=109%(JIS3号ダンベル;引張速度200mm/min)と、満足できる物性を示した。
【0082】(実施例8)製造例1で得られた、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛グライム錯体を含有し、一分子中にアリル基と水酸基とを含有するポリオキシプロピレン100.5gをガラス製反応器に秤取し、トルエンを用いて共沸脱水した後、8−キノリノール4.7mgを添加した(水酸基に対して0.0014当量、亜鉛に対して1.0当量)。窒素雰囲気で100℃/1時間加熱した後、室温まで冷却し、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金重量で8.6ppm)、ジメトキシメチルシラン1.563g(ポリオキシプロピレン中のアリル基に対して0.800当量)を順に添加した。60℃で6時間反応を行ったところ、ヒドロシリル化収率が72%(アリル基基準)に達し、しかも水酸基の関与する縮合や架橋性ケイ素基の関与する縮合などの副反応はほとんど起こっていなかった。
【0083】続いて、トルエンジイソシアネート1.97g(イソシアネート基22.6mmol;水酸基に対して1.0当量)、ジブチルスズビスイソノニル−3−メルカプトプロピオネート8mg(80ppm)を室温で添加し、100℃で3時間加熱することにより、カップリング反応を完結させた。メタノール3gを添加して0.5時間攪拌し、減圧脱揮した。IR分析によりイソシアネート基がほとんど残存していないことを確認した。GPC分析によりカップリング率を見積もると、95%であった。
【0084】こうして得られた、末端に架橋性ケイ素基を有するポリオキシプロピレンからシート状硬化物を作成し、力学特性を測定した。モジュラス(100%伸長時)=0.133MPa、引張破断強度0.215MPa、引張破断時伸び=245%(JIS3号ダンベル;引張速度200mm/min)と、満足できる物性を示した。
【0085】(実施例9)製造例1で得られた、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛グライム錯体を含有し、一分子中にアリル基と水酸基とを含有するポリオキシプロピレン89.6gをガラス製反応器に秤取し、トルエンを用いて共沸脱水した後、8−キノリノール4.2mgを添加した(水酸基に対して0.0014当量、亜鉛に対して1.0当量)。窒素雰囲気で100℃/1時間加熱した後、室温まで冷却し、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金重量で10.0ppm)、ジメトキシメチルシラン1.393g(ポリオキシプロピレン中のアリル基に対して0.800当量)を順に添加した。80℃で2時間反応を行ったところ、ヒドロシリル化収率が76%(アリル基基準)に達し、しかも水酸基の関与する縮合や架橋性ケイ素基の関与する縮合などの副反応はほとんど起こっていなかった。
【0086】続いて、シュウ酸ジメチル1.19g(エステル基10.1mmol;水酸基に対して1.0当量)、チタントリスイソプロポキシド2.7mg(ポリオキシプロピレンに対して30ppm)を添加し、5〜2mmHgに減圧しながら100℃で10時間加熱し、メタノールを留去した。GPC分析より見積もったカップリング収率は91%であった。
【0087】こうして得られた、末端に架橋性ケイ素基を有するポリオキシプロピレンからシート状硬化物を作成し、力学特性を測定した。モジュラス(100%伸長時)=0.121MPa、引張破断強度0.219MPa、引張破断時伸び=283%(JIS3号ダンベル;引張速度200mm/min)と、満足できる物性を示した。
【0088】(実施例10)製造例1で得られた、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛グライム錯体を含有し、一分子中にアリル基と水酸基とを含有するポリオキシプロピレン104.2gをガラス製反応器に秤取し、トルエンを用いて共沸脱水した後、2,4,6−トリニトロフェノール15.3mgを添加した(水酸基に対して0.0028当量、亜鉛に対して2.0当量)。窒素雰囲気で100℃/1時間加熱した後、室温まで冷却し、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金重量で9.9ppm)、ジメトキシメチルシラン1.641g(ポリオキシプロピレン中のアリル基に対して0.810当量)を順に添加した。80℃で4時間反応を行ったところ、ヒドロシリル化収率が77%(アリル基基準)に達し、しかも水酸基の関与する縮合や架橋性ケイ素基の関与する縮合などの副反応はほとんど起こっていなかった。
【0089】続いて、イソホロンジイソシアネート2.61g(イソシアネート基23.5mmol;水酸基に対して1.0当量)、ジブチルスズジラウレート5mg(50ppm)を室温で添加し、100℃で3時間加熱することにより、カップリング反応を完結させた。メタノール3gを添加して0.5時間攪拌し、減圧脱揮した。IR分析によりイソシアネート基がほとんど残存していないことを確認した。GPC分析によりカップリング率を見積もると、96%であった。
【0090】こうして得られた、末端に架橋性ケイ素基を有するポリオキシプロピレンからシート状硬化物を作成し、力学特性を測定した。モジュラス(100%伸長時)=0.179MPa、引張破断強度0.255MPa、引張破断時伸び=162%(JIS3号ダンベル;引張速度200mm/min)と、満足できる物性を示した。
【0091】(実施例11)製造例1で得られた、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛グライム錯体を含有し、一分子中にアリル基と水酸基とを含有するポリオキシプロピレン98.5gをガラス製反応器に秤取し、トルエンを用いて共沸脱水した後、2,4,6−トリニトロフェノール10.9mgを添加した(水酸基に対して0.0021当量、亜鉛に対して1.5当量)。窒素雰囲気で100℃/1時間加熱した後、室温まで冷却し、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金重量で14.1ppm)、ジメトキシメチルシラン1.532g(ポリオキシプロピレン中のアリル基に対して0.800当量)を順に添加した。80℃で5時間反応を行ったところ、ヒドロシリル化収率が74%(アリル基基準)に達し、しかも水酸基の関与する縮合や架橋性ケイ素基の関与する縮合などの副反応はほとんど起こっていなかった。
【0092】続いて、ジメチルカーボネート0.998g(水酸基に対して0.50当量)、炭酸カリウム9.9mgを添加し、90℃に加熱した。副生するメタノールを留去するためにゆっくりと反応系内を減圧にして行き、10時間でカップリング収率85%に達した。なお反応の際、減圧度と還流比を調節してジメチルカーボネートが反応系内に戻る条件で行った。
【0093】こうして得られた、末端に架橋性ケイ素基を有するポリオキシプロピレンからシート状硬化物を作成し、力学特性を測定した。モジュラス(100%伸長時)=0.112MPa、引張破断強度0.203MPa、引張破断時伸び=325%(JIS3号ダンベル;引張速度200mm/min)と、満足できる物性を示した。
【0094】(実施例12)製造例1で得られた、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛グライム錯体を含有し、一分子中にアリル基と水酸基とを含有するポリオキシプロピレン103.9gをガラス製反応器に秤取し、トルエンを用いて共沸脱水した後、サリチル酸6.5mgを添加した(水酸基に対して0.0020当量、亜鉛に対して1.4当量)。窒素雰囲気で100℃/30分間加熱した後、室温まで冷却し、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金重量で4.1ppm)、ジメトキシメチルシラン1.63g(アリル基に対して0.81当量)を順に添加した。80℃で2時間反応を行ったところ、ヒドロシリル化収率が78%(アリル基基準)に達し、しかも水酸基の関与する縮合や架橋性ケイ素基の関与する縮合などの副反応はほとんど起こっていなかった。
【0095】続いて、ヘキサメチレンジイソシアネート2.97g(イソシアネート基34.9mmol;水酸基に対して1.50当量)、ジブチルスズビスイソオクチルチオグリコレート11.2mg(109ppm)を室温で添加し、100℃で3時間加熱することにより、ウレタン化反応を完了した。
【0096】次にトリメチロールプロパン(20重量%/THF溶液)2.60g(過剰のイソシアネート基に対して、水酸基換算で1.0当量)を添加し、100℃で3時間加熱した。メタノール5gを添加して1時間撹拌し、IR分析でイソシアネート基が残存していないことを確認した後、減圧脱揮した。GPC分析により、原料のポリオキシプロピレンの3量体と2量体の生成を確認し、また未カップリング体の残存率が4%であることを確認した。
【0097】こうして得られた、末端に架橋性ケイ素基を有するポリオキシプロピレンからシート状硬化物を作成し、力学特性を測定した。モジュラス(100%伸長時)=0.267MPa、引張破断強度0.305MPa、引張破断時伸び=115%(JIS3号ダンベル;引張速度200mm/min)と、満足できる物性を示した。
【0098】(実施例13)重合からカップリングまでの一連の反応を、以下に示すように同一の反応槽で連続して実施した。
【0099】オートクレーブに、エポキシド重合触媒としてヘキサシアノコバルト酸亜鉛グライム錯体0.40g、重合開始剤として数平均分子量1,500の一分子中にアリル基と水酸基とを有するポリオキシプロピレン(日本油脂株式会社製ユニセーフPKA−5014 0.706mmol−OH/g)1503g、プロピレンオキシド189gを仕込み、100℃に加熱することにより重合反応を行った。誘導期を経た後、反応液温は急激に上昇し、その後に降下した。反応液温の降下を確認した後、追加のプロピレンオキシド3204gを約5時間かけて滴下し、内温を100〜110℃に保った。滴下終了後さらに1時間加熱を続け、続いて減圧脱揮により微量の未反応モノマーを除去した。これにより約80ppmのヘキサシアノコバルト酸亜鉛グライム錯体を含有する、一分子中にアリル基と水酸基とを有するポリオキシプロピレンを得た。得られた重合体のヨウ素価滴定で求めたアリル基当量は0.186mmol/g、水酸基価滴定により求めた水酸基当量は0.239mmol/g、数平均分子量は約5,000であった。
【0100】上記で得られたヘキサシアノコバルト酸亜鉛グライム錯体を含有し、一分子中にアリル基と水酸基を含有するポリオキシプロピレン系重合体4662g(アリル基量867mmol)に、サリチル酸0.4gを添加し、窒素雰囲気で100℃/0.5時間加熱した後、80℃まで冷却し、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金重量で10ppm)、ジメトキシメチルシラン74g(ポリオキシプロピレン中のアリル基に対して0.80当量)を順に添加した。80℃で2時間反応を行ない、減圧脱揮することにより一分子中に架橋性ケイ素基と水酸基を有するポリオキシプロピレンを得た。1H−NMRから求めたヒドロシリル化収率は75%(アリル基基準)であり、水酸基の関与する縮合や架橋性ケイ素基の関与する縮合などの副反応はほとんど起こっていなかった。GPC分析ではヒドロシリル化反応の前後で分子量分布はほとんど変化なかった。
【0101】上記で得られた一分子中に架橋性ケイ素基と水酸基とを有するポリオキシプロピレン3964g(水酸基量950mmol)に対して、ヘキサメチレンジイソシアネート78.8g(イソシアネート基930mmol;水酸基に対して0.98当量)、ジブチルスズビスオクチルチオグリコレート0.42mg(110ppm)を室温で添加し、100℃で6時間加熱した。IR分析より求めたイソシアネート基残存率は4%であった。メタノール59gを添加して0.5時間攪拌し、IR分析でイソシアネートの吸収のないことを確認し、減圧脱揮した。GPC分析よりカップリング率を見積もると、92%であった。
【0102】こうして得られた、末端に架橋性ケイ素基を有するポリオキシプロピレン100重量部に対して、オクチル酸スズ3重量部とラウリルアミン0.5重量部の混合物を触媒として添加してシート状硬化物を作成し、力学特性を測定した。モジュラス(100%伸長時)=0.167MPa、引張破断強度0.267MPa、引張破断時伸び=207%(JIS3号ダンベル;引張速度200mm/min)と、満足できる物性を示した。
【0103】(比較例1)製造例1で得られた、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛グライム錯体を含有し、一分子中にアリル基と水酸基とを含有するポリオキシプロピレン76.5gをガラス製反応器に秤取し、トルエンを用いて共沸脱水した後、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金重量で2.6ppm)、ジメトキシメチルシラン1.14g(アリル基に対して0.80当量)を室温で添加した。80℃で3時間反応を行ったが、ヒドロシリル化収率は20%(アリル基基準)にしかならず、しかも水酸基残存率は60%まで低下しており、水酸基と架橋性ケイ素基との縮合反応が進行してしまっていた。
【0104】ヘキサメチレンジイソシアネートによるウレタンカップリング反応を試みたが、残存水酸基量が少ないために満足なカップリング生成物を得ることができなかった。
【0105】(比較例2)反応の順序を逆にし、カップリング反応を行った後にヒドロシリル化反応を試みた。製造例2で得られた、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛グライム錯体を含有し、一分子中にアリル基と水酸基とを含有するポリオキシプロピレン640.3gをガラス製反応基に秤取し、トルエンを用いて共沸脱水した後、ヘキサメチレンジイソシアネート12.40g(イソシアネート基147.4mmol;水酸基に対して1.00当量)とジブチルスズビスイソオクチルチオグリコレート69.6mg(109ppm)を添加した。窒素雰囲気で100℃/3時間加熱することにより、98%の収率でカップリングが完結した。
【0106】続いて、無水コハク酸64mg(100ppm)を添加して100℃/1時間加熱し、室温まで冷却して後、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金重量で3.1ppm)、ジメトキシメチルシラン10.16g(アリル基に対して0.800当量)を添加し、80℃で3時間加熱した。ところがヒドロシリル化反応は34%(アリル基基準)しか進行せず、ジメトキシメチルシランの分解物や縮合物の生成が観察された。系内に存在するカルバメート基、およびジブチルスズビスイソオクチルチオグリコレートがヒドロシリル化反応を阻害し、副反応を促進したと考えられる。
【0107】
【発明の効果】本発明の製造方法によれば、複金属シアン化物錯体を含有し、一分子中に不飽和基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体から、複金属シアン化物錯体を除去、あるいは精製する必要なく、架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体を得ることができる。本発明の製造方法においては、不都合な副反応がほとんど起こらず、かつ精製が必要な触媒残渣や不純物がほとんど残存しない。したがって、製造工程の大幅な簡略化が可能となり、単一の反応槽で製造することも可能である。しかも得られる架橋性ポリオキシアルキレン系重合体は、シーリング材や接着剤の原料として満足できる物性を示し、かつ安定的に長期保存が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (a)複金属シアン化物錯体を含有し、一分子中に不飽和基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体に、金属配位性化合物を添加した後、一分子中に水素−ケイ素結合と架橋性ケイ素基とを有する化合物を、ヒドロシリル化触媒存在下でヒドロシリル化反応させ、(b)(a)で得られる、一分子中に架橋性ケイ素基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体の、水酸基を利用してカップリング反応を行うことを特徴とする、架橋性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体の製造方法。
【請求項2】 複金属シアン化物錯体を含有し、一分子中に不飽和基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体に、金属配位性化合物を添加した後、50℃以上の加熱処理を行なうことを特徴とする、請求項1に記載の、架橋性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体の製造方法。
【請求項3】 複金属シアン化物錯体を含有し、一分子中に不飽和基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体が、複金属シアン化物錯体を触媒として重合されたものであることを特徴とする、請求項1または2に記載の、架橋性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体の製造方法。
【請求項4】 一分子中に不飽和基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体の数平均分子量が3,000以上であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の、架橋性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体の製造方法。
【請求項5】 金属配位性化合物が、カルボキシル基を有する化合物、キレート化剤、およびフェノール性水酸基を有する化合物からなる群から選ばれる化合物であることを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の、架橋性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体の製造方法。
【請求項6】 複金属シアン化物錯体が、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛を含有する錯体であることを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の、架橋性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体の製造方法。
【請求項7】 ヒドロシリル化触媒が白金含有化合物であることを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の、架橋性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体の製造方法。
【請求項8】 一分子中に架橋性ケイ素基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体を、一分子中に二つ以上のイソシアネート基を有する化合物でカップリングさせることを特徴とする、請求項1〜7の何れか1項に記載の、架橋性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体の製造方法。
【請求項9】 一分子中に架橋性ケイ素基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体を、一分子中に二つ以上のイソシアネート基を有する化合物でカップリングさせる際に、硫黄原子を含有するスズ触媒を用いることを特徴とする、請求項8に記載の、架橋性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体の製造方法。
【請求項10】 一分子中に二つ以上のイソシアネート基を有する化合物として、脂肪族ジイソシアネート化合物、あるいは脂肪族トリイソシアネート化合物を用いることを特徴とする、請求項8または9に記載の、架橋性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体の製造方法。
【請求項11】 一分子中に架橋性ケイ素基と水酸基とを有するポリオキシアルキレン系重合体を、一分子中に二つ以上のイソシアネート基を有する化合物でカップリングさせる際に、(a)ポリオキシアルキレン系重合体中の水酸基に対して過剰量のイソシアネート基を反応させ、(b)過剰のイソシアネート基を、一分子中に二つ以上の活性水素を有する化合物でカップリングさせることを特徴とする、請求項8〜10の何れか1項に記載の、架橋性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体の製造方法。
【請求項12】 水酸基を利用したカップリング反応の収率が、ヒドロシリル化反応前の水酸基基準で80%以上であることを特徴とする、請求項1〜11の何れか1項に記載の、架橋性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体の製造方法。

【公開番号】特開2002−80584(P2002−80584A)
【公開日】平成14年3月19日(2002.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−266509(P2000−266509)
【出願日】平成12年9月4日(2000.9.4)
【出願人】(000000941)鐘淵化学工業株式会社 (3,932)
【Fターム(参考)】