説明

染毛処理用後処理剤およびその使用方法

【課題】染毛処理後の毛髪を、毛髪の脂質の流出を抑えながら、穏やかに中性付近に戻し、染毛および染毛終了時のシャンプーの際の毛髪の損傷を軽減する。
【解決手段】本発明の染毛処理用後処理剤は、(A)(a−1)有機酸とアルカリ剤とからなるpH緩衝剤、(a−2)有機酸と有機酸塩とからなるpH緩衝剤、および(a−3)有機酸とアルカリ剤と有機酸塩とからなるpH緩衝剤から選ばれるpH緩衝剤、(B)25℃で液状の油剤30〜60重量%、(C)ノニオン界面活性剤20〜30重量%、および(D)水5.0〜20重量%を含む染毛処理用後処理剤であって(ただし、染毛処理用後処理剤全体を100重量%とする)、該染毛処理用後処理剤の10重量%水溶液のpHが4〜6であり、かつ10重量%水溶液の緩衝能が0.002〜0.2グラム等量/lであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染毛後に用いられる毛髪処理剤およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
染毛処理後の毛髪は、アルカリ性であり過度に膨潤している。毛髪がアルカリ性で膨潤している状態は、CMC(細胞膜複合体)等の毛髪の脂質分が抜け易く、また毛髪に吸着されていた染料の脱離による色調の変化を生じていた。
【0003】
そこで、染毛後に毛髪を酸処理することにより、毛髪をアルカリ性から中性付近に戻す方法が提案されているが、急激に毛髪のpHを下げるため、毛髪の過収斂や染料の分解を生じていた。そこで、酸の代わりにpH緩衝剤を含む染毛用後処理剤を用いて、毛髪を中性付近に戻すとともに、毛髪の感触を良くする成分を与えることが行われている(たとえば、特許文献1および2参照)。
【0004】
しかしながら、通常、染毛処理が終了すると、余分な染毛剤を除去するためシャンプーが行われるが、従来の処理剤は、毛髪の脂質の流失や染料の脱離は十分に防ぐことはできない上に、脂質の流出により毛髪に硬さが見られ、シャンプーにより摩擦が起きて毛髪の損傷に結びついてしまっていた。さらには染毛処理により毛髪の油分が不足した状態となるため、毛髪乾燥後の仕上がりにも毛髪に艶が無く、指通りが悪いものとなってしまっていた。
【0005】
一方、美容院によっては、染毛終了時のシャンプー前に行うカラー乳化処理の際に、用いるお湯にたんぱく質や油分を含むトリートメント剤を溶かし、毛髪への栄養分の補給や、シャンプー時の摩擦の軽減を目的とする方法も試みられている(たとえば、非特許文献1参照)。ここで、カラー乳化処理とは、染毛後シャンプー前にお湯を毛髪に揉み込み、お湯と頭皮および毛髪表面に残留した染毛剤とを乳化させることをいい、従来頭皮や地肌に付着した染毛剤を染毛剤同士の作用により取り除くとともに、未染毛部を染毛することを目的として行われてきたものである。
【0006】
しかしながら、トリートメント剤にはアルカリ除去効果が少ないため、確実に毛髪を収斂させることが十分でなかった。またお湯への分散性が悪いため、十分に攪拌する必要があり作業に手間を要している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3797863号
【特許文献2】特許第3801434号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「マルセル」、新美容出版株式会社、No.173号、2008年7月1日、P.36-37
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、染毛処理後の毛髪を、毛髪の脂質の流出を抑えながら、穏やかに中性付近に戻し、染毛および染毛終了時のシャンプーの際の毛髪の損傷を軽減することを目的とする。さらに、染毛された毛髪の手触り、艶、色持ちを改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、特定のpH緩衝剤、特定の油剤、ノニオン界面活性剤および水を含み、pHおよび緩衝能が特定の範囲である染毛処理用後処理剤を用いることにより、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、たとえば以下の[1]〜[8]に関する。
[1](A)(a−1)有機酸とアルカリ剤とからなるpH緩衝剤、
(a−2)有機酸と有機酸塩とからなるpH緩衝剤、および
(a−3)有機酸とアルカリ剤と有機酸塩とからなるpH緩衝剤
から選ばれるpH緩衝剤、
(B)25℃で液状の油剤30〜60重量%、
(C)ノニオン界面活性剤20〜30重量%、および
(D)水5.0〜20重量%
を含む染毛処理用後処理剤であって(ただし、染毛処理用後処理剤全体を100重量%とする)、
該染毛処理用後処理剤の10重量%水溶液のpHが4〜6であり、かつ10重量%水溶液の緩衝能が0.002〜0.2グラム等量/lであることを特徴とする染毛処理用後処理剤。
[2]25℃で液状の油剤(B)が炭化水素(b−1)を含むことを特徴とする[1]に記載の染毛処理用後処理剤。
[3]25℃で液状の油剤(B)が炭化水素(b−1)および炭化水素以外の液状油(b−2)を含み、(b−1)および(b−2)の重量比が(b−1)/(b−2)=3/1〜20/1であることを特徴とする[1]に記載の染毛処理用後処理剤。
[4]さらに、ジオール(E)2.0〜8.0重量%(ただし、染毛処理用後処理剤全体を100重量%とする)を含むことを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の染毛処理用後処理剤。
[5]前記有機酸がクエン酸、乳酸およびグリコール酸の中から選ばれることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の染毛処理用後処理剤。
[6][1]〜[5]のいずれかに記載の染毛処理用後処理剤を、水またはお湯で100〜200倍に希釈し、該希釈液を染毛後の毛髪に塗布する工程を含むことを特徴とする染毛後毛髪処理の方法。
[7]さらに、該希釈液を用いて頭皮および毛髪の残留染毛剤を除去する工程を含むことを特徴とする[6]に記載の染毛後毛髪処理の方法。
[8]さらに、前記塗布工程または前記除去工程の後に、水またはお湯を用いて毛髪をシャンプー処理する工程を含むことを特徴とする[6]または[7]に記載の染毛後毛髪処理の方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の処理剤は、染毛および染毛終了時のシャンプーの際の毛髪の損傷を軽減することが可能である。すなわち、染毛処理後の毛髪を中性付近とすることで、穏やかに確実に収斂させて、毛髪の脂質の流出を防止し、また毛髪に油分を与えることで、染毛された毛髪の手触り、艶、色持ちを良好にすることができる。
【0013】
また、本発明の方法は、本発明の処理剤を水またはお湯で希釈し、染毛処理後でシャンプー前の毛髪に用いることで、穏やかでありながら確実に染毛後の毛髪を収斂させることができるため、脂質ばかりでなく、色素やタンパク質の流出も防ぐ。また、毛髪に油分を与えるため染毛処理後のシャンプーによる摩擦を軽減し、キューティクルの剥離を防ぐことができる。さらに、カラー乳化も同時に行うことになるため、頭皮等に残留した染料の除去や、毛髪への不十分な染色の補足も併せておこなうことができ、染毛後の毛髪の処理
の作業効率が上がる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について具体的に説明する。
<染毛処理用後処理剤>
本発明の染毛処理用後処理剤(以下単に「処理剤」ともいう)は、(A)(a−1)有機酸とアルカリ剤とからなるpH緩衝剤、(a−2)有機酸と有機酸塩とからなるpH緩衝剤、および(a−3)有機酸とアルカリ剤と有機酸塩とからなるpH緩衝剤から選ばれるpH緩衝剤、(B)25℃で液状の油剤30〜60重量%、
(C)ノニオン界面活性剤20〜30重量%、および(D)水5.0〜20重量%
を含む染毛処理用後処理剤であって(ただし、染毛処理用後処理剤全体を100重量%とする)、該染毛処理用後処理剤の10重量%水溶液のpHが4〜6であり、かつ10重量%水溶液の緩衝能が0.002〜0.2グラム等量/lであることを特徴とする。なお、本発明の処理剤は、通常の染毛剤で染毛した毛髪であれば、染毛剤の種類を選ばず用いることができる。
【0015】
(A)pH緩衝剤
本発明で用いられる(A)成分は、(a−1)有機酸とアルカリ剤とからなるpH緩衝剤、(a−2)有機酸と有機酸塩とからなるpH緩衝剤、および(a−3)有機酸とアルカリ剤と有機酸塩とからなるpH緩衝剤から選ばれる。
【0016】
上記(A)成分の有機酸としては、例えばクエン酸、酢酸、グリコール酸、ギ酸、レブリン酸、シュウ酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、L−グルタミン酸、L−アスパラギン酸、ピロリドンカルボン酸等が挙げられ、これらの中でpKa=2〜5である有機酸が好ましく、特にクエン酸、乳酸およびグリコール酸が好ましい。
【0017】
上記(A)成分の有機酸塩としては、上述の有機酸のナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。
【0018】
上記(A)成分のアルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
【0019】
上記pH緩衝剤(A)を用いることで、染毛処理によりアルカリ性に傾き膨潤している毛髪を穏やかにpHを下げ中性付近とすることができ、穏やかに収斂させることができる。
【0020】
上記pH緩衝剤(A)の使用量は、本発明の染毛処理用後処理剤の10重量%水溶液のpHが4〜6となる量であり、好ましくは4〜5.5より好ましくは4〜5となる量である。本発明の染毛処理用後処理剤の10重量%水溶液のpHが上記範囲にあると、染毛した色が変色する恐れがなく、十分なアルカリ除去機能を得ることができるため色持ちがよい。
【0021】
また、上記pH緩衝剤(A)の使用量は、本発明の染毛処理用後処理剤の10重量%水溶液の緩衝能が、0.002〜0.2グラム等量/lであり、0.0025〜0.15グラム等量/lであることが好ましい。本発明の染毛処理用後処理剤の10重量%水溶液の緩衝能が上記範囲にあると、アルカリ除去能力が十分得られるために色持ちが良く、毛髪が硬くなることもない。本明細書における緩衝能とは、25℃における対象物質の10重量%水溶液のpHを初期の値から1上昇させるのに関する塩基の濃度を尺度として次式により求められる値である。
緩衝能= | dCB/dpH |
(式中、CBは塩基のイオン濃度(グラム当量/l)を示す)
(B)25℃で液状の油剤
本発明で用いられる油剤(B)は、25℃で液状のものである。
【0022】
上記(B)成分としては、(b−1)炭化水素が好ましい。前記炭化水素(b−1)は、直鎖、分岐鎖、および環状のいずれの構造でもよく、たとえば流動パラフィン、スクワレン、パラフィン、セレシン、スクワランなどが挙げられ、直鎖の炭化水素である流動パラフィン、分岐鎖を有する飽和炭化水素化合物である流動イソパラフィンが特に好ましい。
【0023】
上記(B)成分としては、(b−1)成分に加えて、(b−2)炭化水素以外の液状油を用いることが好ましい。炭化水素以外の液状油(b−2)としては、たとえば液状油脂、エステル油、シリコーンなどが挙げられる。液状油脂としては例えば動物由来のミンク油、植物由来のアボガド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、オリーブ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、コメサラダ油が挙げられる。エステル油としては、パルミチン酸2−エチル
ヘキシル、トリ2−エチルへキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセ
リル、セバシン酸ジエチル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル、ジデカン酸ネオペンチルグリコールが挙げられる。シリコーンとしては、メチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロペンタシロキサンなどがあげられる。
【0024】
上記(B)成分は、染毛処理後の膨潤した毛髪内部に浸透しまたは毛髪の表面をコーティングし、その後の本処理剤による収斂後毛髪にとどまり、毛髪に潤いや艶を与える。
【0025】
上記(B)成分の含有量は、30〜60重量%、好ましくは40〜60重量%である(ただし、染毛処理用後処理剤全体を100重量%とする)。(B)成分の含有量が上記範囲内にあると、毛髪の修復効果が十分得られるとともに、毛髪に油性成分が付着しすぎることによる硬さやキシミ感を生じることもない。
【0026】
上記(B)成分としては、(b−1)炭化水素単独で用いてもよく、(b−1)炭化水素と(b−2)炭化水素以外の液状油とを組み合わせて用いてもよく、(b−1)成分および(b−2)成分は、それぞれ1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(b−1)成分と(b−2)成分とを組み合わせる場合は、(b−1)および(b−2)の重量比が(b−1)/(b−2)=3/1〜20/1、好ましくは5/1〜20/1であり、より好ましくは8/1〜20/1である。(b−1)および(b−2)の重量比が上記範囲にあると、使用時および使用後の毛髪の手触りが良好となる。
【0027】
(C)ノニオン界面活性剤
本発明に用いられる(C)ノニオン界面活性剤としては、特に制限はないが、エステル系のノニオン界面活性剤を用いることが好ましい。エステル系のノニオン界面活性剤としては、例えば、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリルエーテル脂肪酸エステル等が挙げられる。これらは1種単独で用いても2種以上を用いても良い。特に
、ポリオキシエチレングリセリルとイソステアリン酸のエステルによって得られるエーテルエステル化物が好ましい。また、モノエステル化物とトリエステル化物を併用することが安定性や水分散性の点からもより好ましい。
【0028】
上記(C)成分は、本発明の処理剤を水またはお湯に溶かす際に、本発明の(B)成分を水溶液中に良好に分散させる。
【0029】
上記(C)成分の含有量は20〜30重量%である(ただし、染毛処理用後処理剤全体を100重量%とする)。(C)成分の含有量が上記範囲内にあると、安定性や水への分散性が良好であり、一度毛髪に与えた(B)成分を除去しすぎることもない。
【0030】
(D)水
本発明に用いられる水としては、特に限定されなく、たとえば精製水、イオン交換水、水道水、天然水などが挙げられる。
【0031】
上記(D)成分は、本発明の処理剤を水またはお湯に溶かす際に、本発明の処理剤の水への分散性を良好にする。
【0032】
上記(D)成分の含有量は5.0〜20重量%、好ましくは8.0〜15.0重量%である(ただし、染毛処理用後処理剤全体を100重量%とする)。上記(D)成分の含有量が、上記範囲内にあると、水への分散性および処理剤の透明性が良好であり、また安定性も良好である。
【0033】
(E)ジオール
本発明の染毛処理用後処理剤は、さらに(E)ジオールを含んでいてもよい。前記(E)成分を含有することにより、処理剤の保存安定性が向上する。
【0034】
上記ジオールとしては特に限定されないが、1,3-ブチレングリコールやプロピレング
リコールなどは本発明の処理剤の曇点を上昇させる効果が得られるため、好ましい。これらは1種単独で用いても2種以上を用いてもよい。
【0035】
本発明の(E)成分の含有量は好ましくは2.0〜8.0重量%、より好ましくは4.0〜8.0重量%(ただし、染毛処理用後処理剤全体を100重量%とする)である。(E)成分の含有量が上記範囲内にあると、他の成分の効果を減じることなく良好な保存安定性を得ることができる。
【0036】
(F)任意成分
本発明の染毛処理用後処理剤には、必要に応じて、一般的な毛髪処理剤に用いられている各種成分を、任意成分(F)として配合することができる。たとえば、このような任意成分(F)としては、高級アルコール、グリセリン、香料等が挙げられる。これらは、本発明の目的を損なわない範囲内の量で、本発明の処理剤に適宜、配合できる。
<油性毛髪処理剤>
本発明の処理剤は、上述した各成分を、公知の方法で適宜、撹拌、混合、加熱、冷却、溶解することによって製造できる。
【0037】
本発明の処理剤の剤型としては、水溶液、エマルジョン、オイル状、スプレー状等が挙げられる。
【0038】
<染毛処理用後処理剤の使用方法>
本発明の染毛処理用後処理剤の使用方法は、特に限定されないが、以下の使用方法が好ましい。
【0039】
まず、本発明の処理剤を水またはお湯で、100〜200倍に希釈する。このように希
釈することによって、後述の毛髪の処理に十分な体積とすることができる。本発明の処理剤の希釈率が上記範囲内にあると、毛髪の処理に十分な体積としても本処理剤のアルカリ除去効果および摩擦低減効果が適切であり、他の効果も損なわないため好ましい。本発明の処理剤は、ノニオン界面活性剤(C)成分を含むため、水またはお湯に良好に分散する。
【0040】
希釈に用いる水またはお湯の温度は、好ましくは20〜50℃、より好ましくは25〜45℃である。希釈に用いる水またはお湯の温度を上記範囲とすると、油剤が液状の状態で水またはお湯に均一に分散する。次に、染毛後であって、シャンプー前の毛髪に、上記希釈した本発明の処理剤を含むお湯をゆっくり揉み込むことにより塗布する。揉む込む順としては、毛先から始めて中間から根元方向に向かって行うことが好ましい。シャンプーボール等に本発明の処理剤を含むお湯を溜めて使用する場合は、毛髪の処理の進行に従い、上記希釈率を満たす範囲でシャンプーボールに水またはお湯を足したり、新たな本発明の処理剤を含む水またはお湯に交換することも好ましい。ここで、処理剤を含む水またはお湯を一度に大量に毛髪にかけるのではなく、毛髪に揉み込むように作業を行うのは、染毛剤と水またはお湯とを乳化させることができるからである。
【0041】
すなわち、上記のように本発明の処理剤を水またはお湯に希釈し、毛髪の処理に用いると、同時にカラー乳化も行うことになる。したがって、頭皮に付着した染料を取り除き、また染毛を完全にするとともに、穏やかに確実に毛髪をアルカリ性の膨潤した状態から収斂させることができ、さらに毛髪に油分を与えることが単一の工程で得ることができる。
【0042】
上記洗浄工程の後、水またはお湯と通常のシャンプー剤、または染毛処理後用のシャンプー剤を用いて、毛髪をシャンプー処理する。
【実施例】
【0043】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1〜33および比較例1〜10]
下記染毛剤の第1剤と第2剤を同量混合し、毛髪に適量塗布した後、室温(25℃)にて20分間放置し、毛髪を染毛した。その後、表1の実施例及び比較例に記載の染毛用後処理剤をお湯40℃で、100倍に希釈した処理液2リットルを、通常のシャンプーボールに溜め、毛髪の毛先から根元方向に向け前記処理液を揉み込み、処理剤を含むお湯と染毛剤を乳化させた。続いて毛髪を通常のシャンプーにて洗浄し、毛髪表面や頭皮に残留したカラー剤を十分に洗い流した。最後にドライヤーにて毛髪を乾燥させて仕上げとした。
【0044】
〔染毛剤〕
第1剤(第1剤全体を100重量%とする。)
重量%
流動パラフィン 2.0
トルエン−2,5−ジアミン 0.50
p−アミノフェノール 0.40
m−アミノフェノール 0.40
レゾルシン 0.30
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 0.12
ポリオキシエチレン(2)セチルエーテル 1.00
ポリオキシエチレン(40)セチルエーテル 2.30
ベヘニルアルコール 1.40
ステアリルアルコール 6.00
オレイルアルコール 1.00
エデト酸四ナトリウムニ水塩 0.10
無水亜硫酸ナトリウム 0.30
アスコルビン酸 0.20
強アンモニア水(28%) 6.00
モノエタノールアミン 1.00
精製水 残量

第2剤 (第2剤全体を100重量%とする。)
重量%
過酸化水素水(35%) 15.0
セタノール 2.0
ラウリル硫酸ナトリウム 0.50
フェナセチン 0.10
エデト酸2ナトリウム 0.50
精製水 残量。
【0045】
[評価]
下記(1)〜(3)の評価は20〜50代のモデル50人に対して、専門のテスターが
評価した。下記(4)および(5)の評価は、発明者が評価した。
【0046】
下記(1)〜(4)の全ての評価について◎もしくは○を満たすものを実施例としての必須条件とし、さらに下記(5)の評価について○を満たすものはより良い実施例である。
【0047】
(1)変色度合い
上記染毛剤を用いて染毛した後、頭髪を頭頂部から左右に分け、一方を上記の通り処理し、もう一方を染毛用処理剤を用いずに2リットルの精製水を用いた以外は上記の通り処理し、両者を比較し、下記基準:
○:ほとんど変色していない
△:変色が認められる
×:かなり変色している
で評価し、判定した。
【0048】
(2)色落ち
染色直後の色調を基準として、染毛後14日間経過後の毛髪の退色の程度を調べ、下記基準:
○:ほとんど退色していない
△:退色が認められる
×:かなり退色している
で評価し、判定した。
【0049】
(3)毛髪の仕上がり
(i)染毛後の毛髪に本発明の処理剤を含むお湯を揉み込む際の毛髪の手触りの良さ(ii)
染毛後のシャンプー時の手触りの良さ(iii)毛髪乾燥後の仕上がりの良さの3つの工程時
で下記基準:
(i) 染毛後の毛髪に本発明の処理剤を含むお湯を揉み込む際の毛髪の手触りの良さ
◎:非常に滑らかで、指通りが良い
○:滑らかで、指通りが良い
△:髪がすべらず、やや指通りが悪い
×:きしみがあり、かなりざらつく
(ii)染毛後のシャンプー時の手触りの良さ
◎:非常に柔らかく、指通りが良い
○:柔らかく、指通りが良い
△:髪が硬く、やや指通りが悪い
×:きしみがあり、かなり指通りが悪い
(iii)毛髪乾燥後の仕上がりの良さ
◎:艶があり、手触りが非常に良い
○:やや艶があり、手触りが良い
△:艶があまり無く、やや手触りが悪い
×:艶が無く、かなり手触りが悪い
で評価し、判定した。
【0050】
(4)水への分散性
本発明の処理剤10mLを2Lのお湯に添加した際の水へのなじみ易さを下記基準:
◎:瞬時に水へ溶解し、白濁する
○:少し攪拌すると溶解し、白濁する
△:十分攪拌すると溶解し、白濁する
×:十分に攪拌しても溶解せず、白濁しない
で評価し、判定した。
【0051】
(5)保存安定性
45℃、25℃、5℃のそれぞれの温度にて1ヵ月での本発明の処理剤の系の安定性を
下記基準:
○:どの保存温度でもまったく分離・沈殿が見られない
△:いずれかの保存温度で1ヵ月以内に分離・沈殿が見られる
×:いずれかの保存温度で1日以内に分離・沈殿が見られる
で評価し、判定した。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【0055】
【表4】

【0056】
【表5】

【0057】
【表6】

【0058】
表1および表2の実施例1〜14および比較例1〜4より、本発明の処理剤のpHおよび緩衝能が本発明の範囲内にあると、毛髪の色持ちおよび手触りが良好であることから、毛髪が確実に収斂されていることがわかる。
【0059】
表3の実施例15〜22および比較例5〜6より、本発明の処理剤に25℃で液状の油剤が本発明の範囲内で含まれると、染毛後のシャンプー時以降は手触りが良好であることから、染毛後のシャンプー時に、毛髪が摩擦により傷むことが抑えられて、また毛髪に油分が与えられていることがわかる。
【0060】
表4の実施例23〜24および比較例7〜8より、本発明の処理剤にノニオン界面活性剤が本発明の範囲内で含まれると、本発明の処理剤が希釈に用いられるお湯に良好に分散することがわかる。
【0061】
表5の実施例25〜28および比較例9〜10より、本発明の処理剤に水が本発明の範囲内で含まれると、本発明の処理剤が希釈に用いられるお湯に良好に分散することがわかる。
【0062】
表6の実施例29〜33より、本発明の処理剤にジオールが本発明の範囲内で含まれると、本発明の処理剤のその他の成分の効果を妨げることなく、良好な保存安定性が得られることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(a−1)有機酸とアルカリ剤とからなるpH緩衝剤、
(a−2)有機酸と有機酸塩とからなるpH緩衝剤、および
(a−3)有機酸とアルカリ剤と有機酸塩とからなるpH緩衝剤
から選ばれるpH緩衝剤、
(B)25℃で液状の油剤30〜60重量%、
(C)ノニオン界面活性剤20〜30重量%、および
(D)水5.0〜20重量%
を含む染毛処理用後処理剤であって(ただし、染毛処理用後処理剤全体を100重量%とする)、
該染毛処理用後処理剤の10重量%水溶液のpHが4〜6であり、かつ10重量%水溶液の緩衝能が0.002〜0.2グラム等量/lであることを特徴とする染毛処理用後処理剤。
【請求項2】
25℃で液状の油剤(B)が炭化水素(b−1)を含むことを特徴とする請求項1に記載の染毛処理用後処理剤。
【請求項3】
25℃で液状の油剤(B)が炭化水素(b−1)および炭化水素以外の液状油(b−2)を含み、(b−1)および(b−2)の重量比が(b−1)/(b−2)=3/1〜20/1であることを特徴とする請求項1に記載の染毛処理用後処理剤。
【請求項4】
さらに、ジオール(E)2.0〜8.0重量%(ただし、染毛処理用後処理剤全体を100重量%とする)を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の染毛処理用後処理剤。
【請求項5】
前記有機酸がクエン酸、乳酸およびグリコール酸の中から選ばれることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の染毛処理用後処理剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の染毛処理用後処理剤を、水またはお湯で100〜200倍に希釈し、該希釈液を染毛後の毛髪に塗布する工程を含むことを特徴とする染毛後毛髪処理の方法。
【請求項7】
さらに、該希釈液を用いて頭皮および毛髪の残留染毛剤を除去する工程を含むことを特徴とする請求項6に記載の染毛後毛髪処理の方法。
【請求項8】
さらに、前記塗布工程または前記除去工程の後に、水またはお湯を用いて毛髪をシャンプー処理する工程を含むことを特徴とする請求項6または7に記載の染毛後毛髪処理の方法。

【公開番号】特開2010−195707(P2010−195707A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41459(P2009−41459)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(595082283)株式会社アリミノ (38)
【Fターム(参考)】