柱状微小突起群を備えた機能性基板とその製造方法
【課題】位置、底面積、高さを制御できる有機ポリマー製の柱状微小突起群を備えた機能性基板を提供すること。
【解決手段】有機ポリマー製の第1の基体と、該基体から伸びた有機ポリマー製の柱状微小突起群を有し、該柱状微小突起群の相当直径が10nmから500μm、高さが50nmから5000μmであって、該柱状微小突起群の高さ(H)に対する相当直径(D)の比(H/D)が4以上であることを特徴とする柱状微小突起群を備えた機能性基板。
【解決手段】有機ポリマー製の第1の基体と、該基体から伸びた有機ポリマー製の柱状微小突起群を有し、該柱状微小突起群の相当直径が10nmから500μm、高さが50nmから5000μmであって、該柱状微小突起群の高さ(H)に対する相当直径(D)の比(H/D)が4以上であることを特徴とする柱状微小突起群を備えた機能性基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機ポリマーの微小突起群を備えた機能性基板又は機能性素子及びその製造方法に関し、またそれを用いたマイクロバイオチップや光デバイス等に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には鉄、金、銀などの金属クラスターをプラズマエッチングマスクの自己形成核として用いて、シリコンのナノ円柱群を形成し、特定の円柱の列を除去してフォトニック結晶(光デバイス)を形成することが開示されている。シリコン基板の表面に形成されるシリコンナノ円柱の直径は50nm,高さ1μmで、クラスターの周期(ピッチ)は500nmである。
【0003】
このようなナノ円柱の周期の、約二倍の波長の光はフォトニックバンドギャップによって円柱の間を通過できないが、円柱の1列を取り除いた部分(線状欠陥)では光は線状欠陥(隙間)を通過することができる。上記線状欠陥を通って入射光が進行することになり、この線状欠陥を適宜レイアウトすることで、極めて狭い空間で光信号を合成したり(ADD)、分割したり(DROP)、あるいは進行方向を変えることができる。信号をDROPさせる場合は、グレーティングを用いるのが良い。従って、この線状欠陥部を形成することにより、極めて小型の光導波路を得ることができる。
【0004】
また、非特許文献2には樹脂製の突起物の形成に関する技術が開示されている。シリコン基板の表面に分子量2、000,厚さ95nmのPMMA(polymethylmethacrylate)膜を塗布する。次に、シリコン基板製のマスクを、スペーサーを介してPMMA膜の上に設置する。PMMA膜とマスクとの距離は例えば0.3μmである。次に、試料を130℃、5分から80分間、加熱するとPMMA膜に突起物が形成される。最後にマスクとスペーサーを試料から外す。突起物の直径は数μm、高さはスペーサーで決まるが0.28μmから0.43μmの突起群が作製できることが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】応用物理,第71巻,第10号,1251ページから1255ページ,2002年
【非特許文献2】ジャーナル オブ バキューム サイエンス アンド テクノロジー B,17巻,6号,3197ページから3202ページ,1999年(Journal of Vacuum Science and Technology B,17(6),3197−3202(1999))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の非特許文献1記載の技術は、ドライエッチング法によってnmレベルの微小突起物群を形成している。ナノ円柱の材質はエッチングガスと反応して揮発性のガスとして除去される必要がある。そこで、金属、酸化シリコン(SiO2),窒化シリコン(Si3N4),シリコン(Si)などの無機材料に限定され、その製造法は上記のようにECRプラズマエッチング法などのドライエッチング法に依らざるを得ない。
【0007】
上記文献によれば、クラスターサイズに関係なく、得られるナノ円柱の直径は、常に15ないし20nmであり(上記非特許文献1の図5参照)、従ってこの方法により得られる光デバイスで用いられる光の波長は特定の範囲に限られる。
【0008】
上記従来技術のうち、非特許文献2に記載された、PMMA製突起物の形成では、ドライエッチング法を用いないために有機材料(PMMA)製の突起物構造が形成可能である。しかし、PMMA膜の自己組織化が突起物形成の駆動力であるため突起物の位置,直径,高さを自由に制御することは困難であった。
【0009】
本発明は、種々の用途に利用可能で、微小突起群の寸法、アスペクト比を容易に制御できる有機材料製の柱状微小突起群を備えた機能性基板又は機能性素子を提供するものである。また、本発明は、簡便で安価な機能性基板又は機能性素子の製造法による柱状微小突起群を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の微小突起群を備えた機能性基板又は機能性素子は、有機ポリマー製の第1の基体と、該基体から伸びた有機ポリマー製の柱状微小突起群を有し、該突起群の突起物の相当直径が10nmから500μm、高さが50nmから5000μmであることを特徴とする。本発明は特にnmレベルの微小突起物群を有する機能性基板に適用するのに適し、従って、上記突起物の相当直径は50nm以上、1μm未満、高さは100nm以上、10μm以下であることが好ましい。
【0011】
なお、本発明の機能性基板又は機能性素子はフィルムやシートも含むものである。本発明において、有機ポリマーは、特に断りがない限り、有機ポリマーのみを意味する他、これに無機フィラーを添加したり、有機ポリマーに化学修飾したりして、物性を変化させたものも含む。
【0012】
該突起物の高さ(H)に対する相当直径(D)の比(H/D、アスペクト比)が4以上であることが望ましい。アスペクト比がある程度大きい方が、機能性基板又は機能性素子としての任意の特性が設計でき、それだけ用途が広がるからである。
【0013】
本発明において、柱状微小突起の相当直径とは、突起の中間位置における相当直径である。なお、相当直径という語を用いたのは、突起の断面が必ずしも円形ではなく、楕円、多角形、非対称形などの場合があるためで、本発明ではこれらを全て包含するために相当直径を用いている。アスペクト比(H/D)としては、4以上が好ましく、8から30がより好ましい。しかし、構造的な強度の点から100以下が好ましい。
【0014】
本発明の微小突起群を備えたフィルムまたは基板は、特定の配列をもつ凹部群(以下、ピット群と称する)を形成した微小成形型(精密金型)を用いて、熱可塑性樹脂又は未硬化の熱硬化性樹脂の薄膜に押し付けて、上記ピット群の型に従ってパターンを形成する。
【0015】
上記成形型はたとえば石英で作られる。上記成形型を上記薄膜から引き離すときに、上記ピットに入り込んだ熱可塑性樹脂又は未硬化の光硬化性樹脂あるいは熱硬化性樹脂が引き伸ばされて、所望の微小突起群ができる。特にモールド(成形型)の凹凸群(ピット群)のアスペクト比によって突起物の高さの調整が可能となり、モールドに形成する凹部の位置と開口面積によって突起物の位置と底面積を調整できる。この製造法に関しては、後に詳細に説明する。
【0016】
前記微小突起群は自己支持性であることが好ましく、上記第1の基体から自立できる形態であることが望ましい。また、前記微小突起群の各微小突起物の先端又は全面を化学メッキなどにより化学修飾し、微小突起物の側面の反射率を制御しても良い。
【0017】
該柱状微小突起群を構成する突起物は、先端部の相当直径よりも底面部の相当直径がわずかに大きい。これにより、樹脂製の微小突起物の自立性、自己支持性を確保する上で有利であり、また、微小突起物は、該第1の基体と接した根元から先端部に向けて細くなる部分を有している。また、該柱状微小突起群と前記第1の基体の材料が同じであることが望ましい。特に、該突起物と該突起物が接続している基板が一体となっていることが好ましい。本発明の微小突起集合体は、微小突起物が密集した構造とすることができるため、これにより個々の微小突起物が潰れにくく、基体から取れにくい性質とすることが可能である。
【0018】
上記の構造は、基体とその基体上に形成した微小突起群を一体化して使用する場合の構造であるが、成形型を使用して形成した小突起群を他の基体に転写して使用することもできる。また、微小突起群を多層に積層した構造体とすることもできる。例えば、本発明による機能性基板を反射防止膜などに利用するときは、微小突起群の相当直径は光デバイスやマイクロバイオチップの場合よりも大きくてよく、また微小突起群を転写法により形成することができる。転写法による時は、微小突起群の先端が基体面に接着剤又は熱圧着等により固定される。転写法による場合は、微小突起群は基体又は樹脂膜と分離されるので、独立した突起となる。
【0019】
従って本発明は、有機ポリマーからなり、アスペクト比が4以上の微小突起群が特定の配列で基体に一体化し、上記微小突起の相当直径が1μm以下で高さが100ミクロン以下であって、上記微小突起群は自己支持性があることを特徴とする機能性基板を提供する。また、上記微小突起群の突起の一端の相当直径が他端の相当直径よりも小であり、相当直径の小さい微小突起群の先端が他の基体に接続している機能性基板を提供する。更に、上記微小突起群が複数層形成され、各層の間に基体が設けられ、かつ基体と微小突起群が一体化されている機能性基板を提供する。
【0020】
上記微小突起物群の製造工程上、前記有機材料が熱可塑性高分子材料又は未硬化の光硬化性樹脂あるいは熱硬化性樹脂であってもよい。前記有機材料が熱可塑性の光硬化性高分子材料を用いても良い。たとえば、柱状微小突起群の主成分がシクロオレフィンポリマー,ポリメチルメタクリレート,ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ガラス強化ポリエチレンテレフタレート、変成ポリフェニレンエーテル、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶性ポリマー、フッ素樹脂、ポリアレート、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアミドビスマレイミド、ポリビスアミドトリアゾール等の熱硬化性樹脂、これらを2種以上混合した材料、あるいは感光性物質を添加した光硬化性の材料などがある。また、これらの材料に酸化防止剤、難燃剤等を添加してもよい。
【0021】
熱可塑性樹脂の薄膜に前述の成形型を押し付け、これを引き剥がす際に、ピット内に圧入された樹脂が引き伸ばされて、突起の相当直径がピットの内径よりもわずかに小さい、しかしピット深さよりも長い微小突起物群が形成される。どの程度の相当直径でどの程度の長さの微小突起になるかは、用いる樹脂の種類、物性(分子量など)、成形条件(ピット深さ、温度、成形圧力など)によって変わるので、予め種々の実験によって、確認しておくのが良い。
【0022】
前記熱硬化性樹脂の薄膜が未硬化の状態にあるときに、所定の配列を持ったピットを形成した精密金型を押し付けて、引き剥がすことにより、目的の形状をもった微小突起物群が形成される。次にこれを熱硬化、光硬化などにより硬化させることにより、機械的強度の高い機能性基板を得ることができる。熱硬化性樹脂の硬化にあたっては、樹脂が溶融して流れたり、変形したりしないような条件を選ぶため、硬化温度や加熱プロファイルを検討する。なお、熱硬化性樹脂に硬化剤や硬化促進剤を添加しても良いことは当然である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、寸法、アスペクト比などが自由に制御できる有機ポリマー製の微小突起物群を備えた機能性基板を提供することができる。また、柱状微小突起群を製造するのに、有機ポリマーを使用するので、プレスという簡便な製造技術で形成でき、安価な機能性基板を提供することができる。
【0024】
アスペクト比の小さい微小突起物を作るのは容易であるが、nm単位の微小突起でしかもアスペクト比が4以上と大きいものを簡単な方法で形成することができる。従って種々の用途に展開できるnmオーダーの機能性基板が得られる。また、突起物の中心位置間の距離(ピッチ、P)を位置によって変え、変化した機能を与えることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例で作製した機能性基板の斜視図。
【図2】実施例で作製した機能性基板の構造を示す側面図。
【図3】実施例で作製した微小突起物群の構造例を示す側面図。
【図4】本発明による機能性基板の製造工程を示すフロー図。
【図5】本発明の実施例による光回路の構成を示す概略平面図。
【図6】図5における光導波路発振部の構造を示す概略平面図。
【図7】本発明によるマイクロ内オチップの構成を示す分解斜視図。
【図8】図7における分子フィルターの構成を示す分解斜視図。
【図9】本発明による細胞培養シートの構造を示す平面図。
【図10】図9における細胞培養を説明する培養シートの側面図。
【図11】本発明による撥水・撥油シートの構成と作用を説明する側面図。
【図12】本発明による無染色発色シートの作用を説明する側面図。
【図13】本発明による反射防止層の作用を説明する概略側面図。
【図14】本発明による他の例による反射防止層の作用を説明する概略側面図。
【図15】本発明による更に他の例による反射防止層の作用を説明する概略側面図。
【図16】本発明による柱状微小突起物表面にニッケル薄膜層を形成する工程を示すフロー図。
【図17】本発明の他の実施例による機能性基板の製造法を説明するフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施例1)
図1は本実施例で作製した突起物群104を備えた機能性基板100の概略斜視図である。突起物群104の材質はPMMAで、分子量は20、000から60万である。微小突起物群104と同じ有機ポリマーからなる基体102は、突起物群と連続していて突起物群を、しっかりと固定している。図1においては、突起物群104は同じ形状で、縦、横方向に整列されているが、ランダムに形成されていても良い。また、突起物群の高さ寸法、アスペクト比が、突起物が形成されている位置によって変化していても良い。このような変化は、本発明の製造法によってなし得る特徴である。
【0027】
更に又、突起物群の一部を欠損して、特定の機能を与えることもできる。本発明の方法によれば、予め金型に突起物群の欠損部分を形成しておくことにより、1工程で欠損部分を有する機能性基体を容易に形成することができる。
【0028】
(実施例2)
図2は他の実施例による機能性基板200の構造を示す斜視図であり、図3は微小突起物204の側面構造を示す図である。図4は図2、図3に示す機能性基板の製造工程を示すフローチャートである。
【0029】
図2及び図3において、柱状微小突起物204の高さは3μmで、相当直径は根元で330nm、中間高さ位置で300nmである。柱状微小突起物204は上部約1μmの部分は平滑な表面状態であり、根元から約2μmの部分の表面は、図3に示すように、横方向の縞模様209を有する。
【0030】
柱状微小突起物群204は一定のピッチPで形成され、底面の相当直径が330nmで、高さが3μmなので、底面におけるアスペクト比は9である。また、突起物204の中間高さ位置の相当直径は300nmであるので、中間高さ位置のアスペクト比は10で、4以上の、十分に大きいアスペクト比である。なお、本発明で単にアスペクト比という場合は、特に断りがない場合は、微小突起物の中間高さ位置における値である。
【0031】
また、柱状微小突起物204は先端部が底面部より小さくなっており、末広がり状であることが分かる。本実施例では、柱状微小突起物の形状は根本から先端にかけて細くなっていく形状であるが、例えば、根本から先端にかけて細くなり先端部が膨らんだ形状でもよい。本発明の柱状微小突起物は、根本から先端部にかけて細くなる部分を有することが特徴の一つである。突起物の先端部が突起物の底面部より小さく末広がり状であるため、突起物が基板から取れにくい。また、突起物が下地の材料と同じであるため突起物が下地から取れにくい。
【0032】
また、後述するが、柱状微小突起物204は下地膜(薄膜)202と同じPMMAでできている。また、柱状微小突起物204は下地膜202に接続されており、一体化している。微小突起物群の特定列を除去することによって、特定幅dの部分を形成する。これによって、特定の機能を与えることができる。第1基体203と第2基体207の間にはスペーサー201が形成され、突起物群を保護する。なお、突起物群の先端の保護と第2基体207との密着性を確保するため、樹脂膜206を形成する。
【0033】
図2は図4の製造法で作製した光の導波路を実現するための光デバイス200の斜視図である。光デバイス200は高さ3μmの窒化シリコン製のスペーサー201,厚さ0.5μmの薄膜202(酸化防止剤、難燃剤を添加したPMMA),厚さ550μmで幅1ミリメートルのシリコン製第1基板203,ポリカーボネート製の第2基板206及びPMMAを主成分とする相当直径300nmの柱状微小突起物204からなる。
【0034】
なお、本実施例では、柱状微小突起物204と下地膜202の材料としてPMMAを用いた。しかし、シクロオレフィンポリマー,ポリスチレン,ポリカーボネート,ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリ乳酸,ポリプロピレンなど、あるいは前述の他の材料を用いても良い。
【0035】
機能性基板の主要部の製造法を図17に示した。基板401には結晶方位(100)を持ち、直径150ミリメートルのシリコンウエハを用いた。基板401の表面にスピンコート法で分子量120、00のPMMAの薄膜404を塗布した。薄膜404の厚さは1.5μmである。次に、表面にピットを形成したモールド405を薄膜404にプレスした。モールド405は基板401と同じ結晶方位(100)を有し、直径150ミリメートルのシリコンウエハである。モールド405を垂直に引き上げ柱状微小突起物406を形成した。図17に示すように、柱状微小突起物406のアスペクト比は、モールド405のピットのアスペクト比(約1)の約4倍である。アスペクト比の大きいnmレベルのピットをモールド405に形成することは一般に困難であるが、本実施例の手法を用いればアスペクト比の大きい柱状微小突起物406を容易に形成することができる。
【0036】
なお、本実施例では、結晶方位が(100)で、直径150ミリメートルのシリコンウエハを基板401として用いたが、基板401はシリコンウエハに限られない。例えばガラスなどの無機物、ポリカーボネートなどの有機物、あるいはこれらの積層構造体を用いてもよい。
【0037】
また、本実施例では、基板401の表面にPMMA製の薄膜404を形成したが、薄膜404はPMMAのほかに、例えばシクロオレフィンポリマー,ポリスチレン,ポリカーボネート,ポリプロピレンなどの有機ポリマー等を用いることができる。またこれらのポリマーにシリカなどの無機物を添加してもよい。
【0038】
また、本実施例では、モールド405に結晶方位が(100)で、直径150ミリメートルのシリコンウエハを用いたが、ニッケルなどの金属薄膜やPDMS(熱硬化性又は光硬化性ポリジメチルシロキサン)などの有機物でもよい。
【0039】
また、モールド405の凹部(ピット)の深さや薄膜404の厚さや粘度を調整することで柱状微小突起物406の直径や高さを制御できる。モールド405の凹部の開口面積を大きくすることで柱状微小突起物406の底部の大きさを制御できる。さらに、モールド405のピットの位置を制御することにより、柱状微小突起物406を形成する位置を制御することができる。
【0040】
また、柱状微小突起物406の材料を熱可塑性樹脂にすることにより、柱状微小突起物406の形成時の温度を調整し、柱状微小突起物406の形状を容易に制御できる。更に、柱状微小突起物406を光硬化性材料とすることにより、柱状微小突起物406の形成時に光照射して柱状微小突起物406の形状を容易に制御できる。
【0041】
次に、光デバイス200の製造方法について詳細に説明する。図4は、図2,3に示した本実施例による光デバイス200の製造方法を示すフロー図である。始めに、図4(a)に示すシリコン製の第1の基板401に図4(b)のようにプラズマCVD法で厚さ3μmの窒化シリコン膜402を堆積した。
【0042】
次にフォトリソグラフィ法によって、図4(c)に示すように、窒化シリコン膜402をパターニングしてスペーサー403を形成した。次に粒径2nmのシリカ超微粒子を5重量%添加したPMMA(溶媒;エチルセロソルブ)をスピンコートして、図4(d)に示すように、スペーサー403及び第1の基板401上に第1の樹脂膜404を形成した。
【0043】
次に、表面に深さ1μm、直径500nmのピットをピッチ1μmで形成した図4(e)に示すモールド(精密金型)405を第1の樹脂膜404にプレスして樹脂膜の一部をピット内に圧入した後、モールド405を剥離した。これにより、図4(f)に示すように、柱状微小突起群406を形成した。なお、モールド405の背面に支持体409を設けて、樹脂膜への押圧力が一定になるようにし、かつ樹脂膜とモールド面が平行に維持されるようにする。
【0044】
柱状微小突起群の形状は、図2に示すように、柱状微小突起物204は、高さ3μmで1μmの周期(ピッチ、P)で配列している。柱状突起の高さ方向の中間位置における相当直径は、300nmで、根元で330nmである。柱状微小突起物204は上部約1μmの部分は、図3に示すように平滑な表面状態であり、根元から約2μmの部分の表面は縞模様209又は膨大部を有する場合がある。
【0045】
また、柱状微小突起物204の中間高さの相当直径が300nmで、高さが3μmなので、高さと一辺の比(アスペクト比)は10となり、4より十分大きいことが分かる。また、柱状微小突起物204の先端部の断面積が、底面部の断面積より小さく、末広がり状であることが分かる。また、柱状微小突起物204は薄膜202と同じPMMAでできている。また、柱状微小突起物204は薄膜202に接続されており、一体化している。
【0046】
理由はまだ解明されていないが、モールドを樹脂膜から引き剥がした場合に、微小突起物の先端部に、その直径方向に拡大した部分が形成されることがある。この膨大部があっても、微小突起物群の機能が損なわれることはない。本発明はこのような構造も包含する。
【0047】
次に樹脂膜404と同じ成分の第2の樹脂膜408を、図4(g)に示すようにポリカーボネート製の第2の基板407にスピンコート法で形成した。次いで、第2の基板407を図4(h)に示すように重ね合わせた。次に第1の基板401と第2の基板407を圧力10MPaを掛けながら150℃で2分間加熱し、図4(i)に示す光デバイス200を得た。なお、図4(h)の工程において、樹脂膜404と樹脂膜408とは接合され一体となっている。
【0048】
図2に示すように、柱状微小突起物204は薄膜202と一体となっている。また、突起物204はフォトニックバンドギャップが出現するように1μmの周期(ピッチ、P)で配置されている。また、光を通す経路205には柱状微小突起物204は設置されておらず、幅dの隙間(光路)205が形成されている。
【0049】
本発明における柱状微小突起が図2に示す形状でなければならないことはないが、以下に説明する熱可塑性樹脂膜のプレスモールド法で柱状微小突起群を作るときは、図2及び図3のようになるのが一般的である。即ち、突起204の上端は下端よりも断面積が小さく、図3に示すように、突起の上部は平滑であるが、下部は横方向に何本かの線209が入る場合がある。この線が生成する理由は解明されていないが、これがプレスモールド法による柱状微小突起の形状的特徴の1つである。
【0050】
図2では簡略化して突起物204を一列に7本しか記入していないが、実際に試作した光デバイス200では、突起物204は一列に80本形成されている。長さ30センチメートルの光デバイス200の端部からレーザー光を入射させ、透過光のスペクトルを調べた結果、波長1.8μmの光が透過することが分かった。透過率は80%であった。
【0051】
本実施例では突起物204、406や薄膜404、408の主成分はPMMAであった。しかし、他の熱可塑性樹脂例えば、シクロオレフィンポリマー,ポリスチレン,ポリカーボネート,ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリ乳酸又はポリプロピレンを含む高分子材料でもよい。また、高分子材料にシリカや金などの超微粒子を添加することで屈折率を変化させてもよい。さらに、形成された柱状微小突起物の表面に他のモノマーを結合させたり、メッキしたりして化学修飾することができる。透過光の波長は柱状微小突起物204の相当直径及び周期で調整可能であり、調整可能である点が前記非特許文献1記載の技術と基本的に異なる点である。
【0052】
通信波長に合わせて微小突起物204の相当直径及び周期を調整することで、種々の通信波長に対応した通信デバイスへ適用できる。さらに光硬化性の樹脂を用いてもよいが、そのときは、プレス成形中ないしは成形後に柱状微小突起物を硬化させる。
【0053】
以上のように、光デバイス200の柱状微小突起物204はプレス成形で形成されており、従来の光デバイスのように、半導体プロセスのようなドライエッチングやフォトリソグラフィを必要とせず、低コストで光デバイス200を製造できる効果がある。
【0054】
また、従来のシリコン系材料製柱状微小突起物では、図4(h)に示す第2の基板407と第1の基板401とを合わせて加圧する際に突起物が破損することが観察された。しかし、本実施例のように突起物204の主成分を高分子材料にすることで、柱状微小突起物406は第2の樹脂膜408と接触しても破損することがなくなった。すなわち、柱状微小突起物204を破損することなく第2の樹脂膜408と密着・固定することが可能となり、入射光が柱状微小突起物204と第2の樹脂膜408との隙間から漏れることがなくなった。この密着性の向上によって、出力光のバックグランドノイズを下げることができた。
【0055】
光デバイスでは、フォトニックバンドギャップが発現するように突起物を周期的に形成する必要がある。フォトニックバンドギャップは、屈折率の異なる領域を光の波長の約半分の周期で形成することで得られる。従って、柱状微小突起物と柱状微小突起物の間隔(ピッチ)を調整することで透過する光の波長を制御できる。それゆえ、短波長の光を選択的に透過させるためには、柱状微小突起物の間隔を狭くし、柱状微小突起物の相当直径あるいは一辺を小さくする必要がある。
【0056】
柱状微小突起物の高さは光デバイスにおいて用いられる入射光を入れる口径に関係するため、少なくとも数μmの高さが好ましい。本実施例の突起物の製法では、柱状微小突起物のアスペクト比を大きくすることができるため、入射光強度を十分確保できるという効果がある。
【0057】
また、本実施例では、柱状微小突起物の先端部が柱状微小突起物の底面部より小さく末広がり状であるため、柱状微小突起群が基板から取れにくい。また、柱状微小突起群が下地の材料と同じであるため、柱状微小突起群が下地から取れにくい。また、突起物が基体と一体化しているため光デバイスが取り扱いやすい。
【0058】
(実施例3)
本実施例では入射光の進行方向が変わる光デバイス200を光情報処理装置に適用した一例を述べる。図5は本発明により作製した光回路500の概略構成図である。光回路500は縦(l)30ミリメートル,横(w)5ミリメートル,厚さ1ミリメートルの窒化アルミニウム製の基板501上に形成した。光回路500は、インジウムリン系の半導体レーザーとドライバ回路からなる10個の発信ユニット502,光導波路503,503’、光コネクタ504、504’から構成されている。
【0059】
なお、10個の半導体レーザーのそれぞれの発信波長を2〜50nmずつ異なるようにした。光回路500は光多重通信系のデバイスの基本部品である。本発明は、導波路503,503’の部分に適用される。この導波路503は、発信ユニット502から入力された光信号を接続部発振部503’によって受信し、これを副導波路506、主導波路505を順次経て、接続部504’から光コネクタ504に送る。この場合入力光信号は、副導波路の各々から合波される。
【0060】
発振部503’の構造は図6に示すようになっていて、接続部504’の構造は図6の左右を反対にした構造となっている。接続部504’の柱状微小突起群は図6とは逆方向に配置されている。
【0061】
図6は光導波路503内部での柱状微小突起物508の概略レイアウト図である。発信ユニット502と光導波路503とのアライメント誤差を許容できるように、光導波路503’の入力部の幅は20μmで、平断面はラッパ状になっている。そして、ストレート部分の中央部には柱状微小突起群が1列分だけ除去されて、フォトニックバンドギャップのない領域を形成し、これによって信号光が幅1μmの領域(w1)に導かれる構造になっている。なお、柱状微小突起物突起508間の間隔(ピッチ)は0.5μmである。図6では簡略化し、実際の本数よりも柱状突起群508を少なく示している。
【0062】
光回路500では10種類の異なる波長の信号光を重ね合わせて出力できるが、光の進行方向を変更できるために光回路500の横幅を5ミリメートルと非常に短くでき、光通信用デバイスを小型化できる。また、モールドのプレスによって柱状微小突起物508を形成できるため、製造コストが下げられる。本実施例では、入力光を重ね合わせるデバイスであったが、光の経路を制御する全ての光デバイスに光導波路503が有用であることは明らかである。
【0063】
以上の実施例で説明したように、本発明の柱状微小突起群を備えたフィルムを適用することにより、光信号として用いる光の波長を任意に選択することができる光デバイスを提供することができる。本実施例では、ナノ柱状突起群を有機ポリマー又はそれを主体とする材料で成形することにより、フォトニックバンドギャップ及びマイクロサイズ又はナノサイズの光路が容易に形成することができる。
【0064】
本発明の光デバイスは、有機ポリマーを主成分とする柱状微小突起群が所定の配列法に従って配列されて、フォトニックバンドギャップに従って光路を構成して光信号を入出力させることを特徴とするものである。また、対向する二枚の基板と、該基板に挟まれた空間に有機ポリマーからなる微小突起物群が所定の配列法に従って配列されフォトニックバンドギャップによる光路を構成していることを特徴とする光デバイスである。該突起物が該基板の表面に形成された薄膜と接続されていることが望ましく、特に基板表面に形成されている薄膜の材料が突起物と同一であることが望ましい。上記有機ポリマーに、酸化物,窒化物及び金属の微粒子からなる群から選ばれた少なくとも1種類を添加して、所定の屈折率を与えることができる。また、対向する二枚の基板と、該基板を隔てるスペーサーを設け、微小突起物群を支えるのが望ましい。
【0065】
ここで、微小突起物の相当直径(直径あるいは一辺)の大きさは、半導体レーザー等に用いる光源の波長との関係から、10nmから10μmの間で任意に調整することができる。また、微小突起物の高さは、50nmから10μmが好ましい。微小突起物間の距離(ピッチ)は、用いる信号波長の約半分となる。
【0066】
(実施例4)
本実施例では実施例1で示した突起物集合体100をマイクロバイオチップ900へ適用した。図7はバイオチップ900の概略平面図である。ガラス製の基板901には深さ3μm,幅20μmの流路902が形成されており、DNA(デオキシリボ核酸),血液,蛋白質などが含まれる検体を導入孔903から導入し、流路902を流した後、排出孔904へ流す構造になっている。
【0067】
流路902には分子フィルター905が設置されている。分子フィルター905には直径250nmから300nm,高さ3μmの突起物群1000(図8)が形成されている。図8は分子フィルター905の斜視図である。基板901には流路902が形成されており、流路902の一部には突起物群1000が形成されている。
【0068】
基板901は上部基板1001によって蓋をされ、検体は流路902の内部を移動することになる。例えばDNAの鎖長解析の場合、DNAを含む検体が電気泳動によって流路902にある分子フィルター905を通過する際に、DNAの鎖長に応じて分離される。即ち、鎖長の短いDNAは、鎖長の長いDNAよりも分子フィルターを通過するのが早いので、鎖長に応じたDNAの分離ができる。
【0069】
分子フィルター905を通過した検体に対し、基板901の表面に実装された半導体レーザー906からレーザー光が照射される。DNAが通過する際に光検出器907への入射光は約4%低下するため、光検出器907からの出力信号によって検体中のDNAの鎖長を解析することができる。
【0070】
光検出器907で検出された信号は信号配線908を介して信号処理チップ909に入力される。信号処理チップ909には信号配線910が結線されており、信号配線910は出力パッド911に結線され、外部からの端子に接続される。なお、電源は基板901の表面に設置された電源パッド912から各部品へ供給した。
【0071】
本実施例の分子フィルター905は、凹部を有する基板901と、基板901の凹部に形成された多数の突起物1000と、基板の凹部を覆うように形成された上部基板1001から構成されている。ここで、突起物の先端部は上部基板と接触するように形成されている。
【0072】
突起物群1000の主成分は有機ポリマーであるため、変形することが可能であり、よって上部基板1001を流路902に被せる際に突起物群1000が破損することはない。従って、上部基板1001と突起物群1000を密着させることが可能となる。このような構成とすることにより、検体が突起物群1000と上部基板1001との隙間から漏れることがなく、高感度な分析が可能となる。
【0073】
実際にDNAの鎖長解析を実施した結果、ガラス製の突起物群では塩基対の分解能が半値幅で10塩基対であったのに対し、有機ポリマー製の突起物集合体1000では塩基対の分解能が半値幅で3塩基対に改善できることが分かった。本実施例の分子フィルターでは、突起物群と上部基板が直接接触する構造であるが、例えば、上部基板に突起物群と同じ材料の膜を形成し、突起物群とこの膜が接触する構造とすれば密着性の向上を図ることができる。
【0074】
なお、本実施例では流路902は一本であったが、異なる大きさの突起物を設置した複数の流路902を配置することで同時に複数の分析を行うことも可能である。また、本実施例では検体としてDNAを調べたが、突起物群1000の表面に糖鎖,蛋白質又は抗原と反応する分子を予め修飾することにより、特定の糖鎖,蛋白質,抗原を分析することができる。このように、突起物の表面に抗体を修飾させることにより、免疫分析の感度を向上させることができる。
【0075】
本実施例によれば、直径がナノスケールの有機ポリマー製の分析用突起物群を簡便に形成できる。また、モールド表面の凹凸や有機材料薄膜の粘度などを制御することにより有機材料製突起物の位置,直径,高さ、アスペクト比などを制御できる。従って、本発明によれば、高感度の分析用マイクロバイオチップを提供することができる。
【0076】
本実施例のマイクロバイオチップは、検体の検出部に複数の突起物が存在し、該突起物の材質が有機ポリマーで、該突起物の直径が10nmから100μm、高さが0.5μmから500μmであることが好ましい。突起物の直径あるいは一辺は、生体高分子や細胞と同等のサイズである10nmから100μmとすることが好ましい。また、突起物の高さは、マイクロチップの流路の高さに合わせて調整されている。マイクロチップの検出部に多数の突起物を設けて反応表面積を増加させることで、生体分子(特に生体高分子)や細胞との相互作用により、高感度の分析用マイクロチップとすることができる。
【0077】
また、本実施例の突起物では、突起物の高さと直径あるいは一辺の比が1より十分大きいため、深さ数μm以上のマイクロ流路内に微小突起物群を設けることができる。
【0078】
(実施例5)(細胞培養シート)
図9は細胞培養シート600の平面図である。細胞培養シート600は、厚さ0.5μmのPMMAを主成分とした薄膜(シート)602,薄膜から伸びたPMMAを主成分とする相当直径2μmの柱状微小突起群604からなる。
【0079】
柱状微小突起物群の一部を除去して、隙間605を形成する。この細胞培養シート600を、ガラスシャーレなどの容器に細胞培養シートを入れ、容器内に培養液を浸して培養を行う。図10のように、細胞培養シート600の柱状微小突起群604上に、例えば皮膚、骨、血液等の細胞(組織)及び培地、栄養素などの培養液603を載せることで細胞等の培養を行う。
【0080】
柱状微小突起群にはその一部を除去した一定の隙間605を設けて配置することが好ましく、本実施例では図9に示したように、十字形状に隙間を設けている。このように隙間を形成することで培養液が流れやすくなり細胞に対して効率良く栄養素を供給することができる。また、細胞培養時の細胞の老廃物を効率良く排出することができる。
【0081】
本細胞培養シートを使用することにより、通常のガラスシャーレを使用するときに生じていたシャーレからの剥離によるシート状の表皮細胞への損傷を大幅に軽減することができ、シート状の表皮細胞を皮膚に移植する際の定着率を高めることができる。また、細胞培養シート上の柱状微小突起物により形成されるシート状の表皮細胞の下部にできる隙間を通して、シート状の表皮細胞全体に培養液が流れやすくなる。その結果、細胞への栄養素の供給や細胞の老廃物の排出を効率良く行うことができ、従来生じていた細胞培養中の表皮細胞の死滅を抑えることができる。
【0082】
次に、細胞培養シートの製造方法について述べる。プレス装置のステージのモールド側にPMMA(溶媒;エチルセロソルブ)を塗付して樹脂膜を形成した。次に、表面に深さ1μm、直径500nmのピットを1μmのピッチで直径2cmの領域に形成したモールドを樹脂膜にプレスして樹脂膜の一部をピット内に圧入した後、モールドを樹脂膜より剥離する。これにより柱状微小突起群を形成し、薄膜上に柱状微小突起群が形成された細胞培養シートを得た。なお、本実施例では、直接ステージ上に樹脂膜を塗布したが、シリコンなどの基板上に樹脂膜を塗布して細胞培養シートを形成することも可能である。
【0083】
柱状微小突起群の形状は、高さ3μmで、1μmの周期(ピッチ)で配列している。柱状微小突起物の高さ方向の中間位置における相当直径は、300nmで、根元で330nmである。従って微小突起物のアスペクト比は10である。柱状微小突起物の上部約1μmの部分は、図3に示すように平滑な表面状態であり、根元から約2μmの部分の表面は縞模様209を有する。また、柱状微小突起物の先端部の断面積が、底面部の断面積より小さく、末広がり状である。
【0084】
本実施例で形成した細胞培養シートをガラスシャーレに培養液を浸した状態で入れ、細胞培養シート上において、常法により正常ヒト表皮角化細胞を培養した(使用培地:HuMedia−KB2(クラボウ(株)製)、37℃、5%CO2流下で培養)。その結果、細胞培養シート上において表皮角化細胞は正常に付着し、シート形状に増殖した。
【0085】
培養開始の14日後、培養した細胞の上に直径2cmのポリビニリデンジフルオライド(PVDF)膜を被せて、培地を吸引することによって、ナノピラーシート上に成長したシート状の表皮角化細胞を、PVDF膜と共に細胞培養シートから剥離した。このシート状の表皮角化細胞を、被せたPVDF膜から容易に剥がすことができた。細胞培養シートからの剥離によるこのシート状の表皮角化細胞への損傷は通常のガラスシャーレなどを使用した場合に比べて大幅に軽減することができた。
【0086】
高分子材料にプラズマ処理等により親水化処理を施してもよい。また、高分子材料は特に限定されるものではないが、培養する細胞(組織)に対して影響の少ない材料を選択することが好ましく、例えば、ポリスチレン、PMMA、ポリ乳酸等が望ましい。
【0087】
また、本実施例では、柱状微小突起物の先端部が柱状微小突起物の底面部より小さく末広がり状であるため、柱状微小突起群が基板から取れにくい。また、柱状微小突起群が下地の材料と同じであるため、柱状微小突起群が下地から取れにくい。シリコンなどの基板上に細胞培養シートを形成すれば、細胞培養シートが取り扱い易くなる。
【0088】
(実施例6)(撥水表面)
本実施例では、表面に柱状微小突起群を形成した薄膜(シート)を撥水膜として適用した例を説明する。本実施例の撥水膜は、図11に示したように、シート606上に柱状微小突起群607が形成された構成を有する。本実施例の柱状微小突起物は、突起物間のピッチ(間隔)を20nmから10μm、高さを数μmから数十μm、突起物先端部の相当直径を50nm〜500nmとすることが好ましい。また、柱状微小突起物の材料としては特に限定はないが、PMMAなどの撥水性を有する材料とすることが好ましい。あるいは、微小突起物群の表面を撥水又は撥油剤で処理することができる。
【0089】
本実施例の撥水膜では、図11に示したように撥水性のシート606単体に比べて、表面に柱状微小突起群607を形成することにより、水滴609の接触角を大きくすることができる。従って、材質がもつ撥水性を柱状微小突起群607形成により得られる蓮の葉効果により増幅することが可能である。また、本実施例の撥水膜の柱状微小突起群はnmサイズの間隔で密集した構造にできるので、潰れにくく、取れにくいという性質があり、撥水・撥油効果の持続性にも優れている。
【0090】
本実施例の撥水・撥油膜は、例えば傘、衣類、壁などの表面に適用することが可能である。この場合、撥水膜の形成方法としては、実施例5と同様の方法により微小突起群を形成したシートを作製し、それを粘着材で貼り付ける方法や、傘、衣類、壁などの撥水・撥油膜を形成したい基材の表面に直接転写する方法が挙げられる。
【0091】
本実施例の撥水膜によれば、従来一般的に用いられている撥水コート処理などの必要がなく、材料表面そのものの改質を1転写で簡便に行うことができる。
【0092】
(実施例7)(無染色発色シート)
本実施例では、シート上に形成した柱状微小突起群を無染色発色シートとして適用した例を説明する。本実施例の無染色発色シートの発色原理を図12に示す。柱状微小突起物へ入射した可視光は、柱状微小突起群において干渉を起こしながら反射し,あたかもシート表面が発色したかのように見せることができる。図12に示したように、突起物の間隔(ピッチ)P1,P2を変えることで、可視光の干渉度が変化し、見える色調を変えることが可能である。
【0093】
例えば、波長λ1、λ2、・・・の成分を含む白色光をシート700の微小突起群704に入射すると、小さいピッチP1からの反射光はλ1(青色)の光となり、大きいピッチP2からの反射光はλ2(黄色)となる。
【0094】
突起物の間隔を広げるにつれて、長波長色の干渉が強まり、青、緑、黄、赤の順に色を変化させることができる。このように、突起物の間隔を調整することにより、染料や顔料を使用しなくとも、シートを色付けしたかのように見せることができる。また、場所ごとに色彩を変化させることも可能である。また、本実施例の無染色着色シートでは、干渉光を利用しているため、見る角度によって色調を変化させることができる。
【0095】
また、突起物の直径、高さを変化させることでも同様に可視光の干渉度を変化させることができ、突起物の直径や高さを調整することでもシートの色彩を変化させることが可能である。
【0096】
本実施例の無染色着色シートでは、可視光の干渉が起きるように、用いる柱状微小突起物の直径は100nmから2、000nm、突起物の間隔は100nmから2、000nm、突起物の高さは1μmから5μmが好ましい。
【0097】
本実施例の無染色無着色シートは、衣服、車載シート、アクセサリー、壁紙やホログラフィーなどへ適用することが可能である。
【0098】
(実施例8)(反射防止層)
本実施例では、柱状微小突起群を反射防止層として適用した例を説明する。本実施例の反射防止層705は、図13に示したように、厚さ0.1μm以下のPMMAを主成分とした薄膜(シート)707,薄膜707から伸びたPMMAを主成分とする相当直径1μm以下の柱状微小突起群708で構成される。この反射防止膜はディスプレイのカバーガラスや光通信用光学基板の表面に形成し、反射防止層として用いられる。なお、シート707と転写法により形成された微小突起群708は接着剤により、あるいは熱圧着法などにより一体化される。
【0099】
ディスプレイのカバーガラスや光通信用光学基板などへの反射防止層の形成方法としては、例えば以下の方法がある。即ち、薄膜上に柱状微小突起群が形成されたシートを粘着材で貼り付ける方法、カバーガラスや光学基板などの基板上に直接樹脂を塗布し、転写により柱状微小突起物を形成し反射防止層とする方法である。シートを粘着材で貼り付ける方法の場合には、粘着材としては、アクリル系粘着材のように光学的透明性に優れた材料を用いることが好ましい。
【0100】
本実施例の反射防止層においては、突起物の直径、間隔、高さ、あるいは断面形状を調整し、突起群で構成される層内の突起部の誘電体領域と突起部の存在しない空気領域との比率を変えることができる。そのため、突起群で構成される層内の実効的な屈折率(以下,屈折率と略す)を任意に調整でき、基板表面での反射光を抑制することができる。
【0101】
本反射防止層における屈折率(nAR)及び厚さ(tAR)の理想条件は以下の式で表わされる。
屈折率:nAR=(nsub・nair)1/2
厚さ:tAR=λ/(4nAR)
nsub:基板の屈折率、nair:空気の屈折率、λ:設計波長
例えば、基体(ガラスを想定)の屈折率が1.5、λが1550nmの場合には、上式より反射防止層の屈折率は1.22、厚さは約320nmとなる。このように、反射防止層として必要とされるパラメータを算出し、突起部の形状、配置を調整することにより、ディスプレイのカバーガラスや光通信用光学基板などの反射防止層とすることができる。
【0102】
図13に示す反射防止層の構造、作用を説明する。基板706側に発光素子が配置されている。反射防止層705は,基板706側から入射した光が基板706と空気との境界で生じる反射光を抑制するために付けられている。反射防止層705の動作原理を説明する。まず,基板706と反射防止層705の境界では屈折率差があるため,基板706側に戻る反射光#1が生じる。さらに,反射防止層705と空気の境界でも反射光が生じ,その反射光は反射防止層705内での多重反射及び反射防止層705からの透過を繰り返したのち,基板706に戻る反射光#2を形成する。このとき,反射光#1と反射光#2の振幅が等振幅かつ逆位相関係になるとき,2つの反射光が打ち消し合うため,基体706側に戻る反射光が無くなる。
【0103】
空気側への透過光に関しては,反射防止層705を直接通過した透過光#1と,反射防止層705内での多重反射及び反射防止層705からの透過を繰り返したのち形成される透過光#2とが,同位相関係になるとき100%の透過率が得られる。
【0104】
上記の無反射条件(全透過条件)を満たす反射防止層の条件が前述の式で表される。なお,光が空気側から入射した場合も,基板706側から入射した場合と同じ反射防止効果が得られる。図13の構造は,光の位相干渉を利用した反射防止層であるため,設計波長からずれた入射光では,反射防止効果が弱まる。
【0105】
図14、図15の構造を説明する。図13の構造とは動作原理が以下のように異なる。反射防止層内での屈折率を,基体706の屈折率から空気の屈折率へと緩やかに変化させることで,屈折率差による不連続面を無くすことができ,反射を抑制することが可能になる。また光の位相干渉を利用していないため,反射率の波長依存性も緩和される。
【0106】
本実施例によれば、突起群で構成される層内の空気領域を広げることで、ガラス基板の反射防止層に用いられるMgF2の連続膜で構成される反射防止層では困難な、屈折率1.3以下の低屈折率層を実現することができる。従って、例えば屈折率が1.5程度のガラス基板表面からの反射光を抑制する反射防止層を単層で構成することができる。具体的には、従来のMgF2連続膜では屈折率は小さくても1.3程度であるが、本実施例の反射防止層では、突起物の直径や間隔を最適化することによって屈折率を理想条件に近い1.2程度に調整することができる。
【0107】
次に本実施例による他の反射防止層の例を図14を用いて説明する。この例では、柱状微小突起群708の突起物の形状を根本から先端に向けて細くなるテーパー形状とした。このような形状とすることにより、波長300nmから700nmの領域において、反射率を反射防止層無しの場合に比べて、1/50以下に抑えることができた。このように、突起物の形状をテーパー状とすることにより、層内の屈折率を厚さ方向に変化させることができ、広波長帯域での反射防止効果を得ることができる。
【0108】
他の反射防止層の形態を図15を用いて説明する。この例では、基板上に屈折率の異なる柱状微小突起群708が形成されたシート705を積層した例である。ここで、シート705の積層方法としては、単層で形成したシートを粘着材を用いて積層する方法、単層で形成したシートを圧着(例えば、300kg/cm2荷重、100℃加熱)する方法により積層することが可能である。
【0109】
本例のように、実効的な屈折率が異なるシートを積み重ねることで、図14のテーパー構造と同様に厚さ方向の屈折率を変化させることができ、広波長帯域での反射防止効果を得ることができる。
【0110】
また、以上説明した形態以外にも、基板上の特定の領域毎に、突起物の直径や間隔を変えることで、同一基板上に異なる波長特性をもつ反射防止層を単層又は複層で任意の領域に配置することも可能である。
【0111】
(実施例9)(高感度電極基板)
本実施例では、柱状微小突起物表面に無電解メッキ法によりニッケル薄膜層を形成し、微量金属イオンの分析手法であるアノードストリッピング法の高感度電極として適用した例を図16を用いて説明する。
【0112】
まず、実施例1に開示した方法と同等に方法により、縦30ミリメートル、横30ミリメートル、厚み1ミリメートルのガラス基板上にポリスチレン樹脂層801を製膜した。その後、精密金型803を用いてポリスチレン樹脂層801表面にポリスチレン樹脂の柱状微小突起物804を形成し、柱状微小突起物804を表面に有する基板を作製した。ここで、形成した柱状微小突起物804の形状は底部直径240nm、上部直径200nm、高さ1μmであり、柱状微小突起物804の中心間のピッチは500nmであった。
【0113】
次に、ポリスチレン樹脂柱状微小突起物を表面に有する基板の表面を無電解メッキ法により厚み20nmのニッケル層で被覆した。以下、本実施例で適用した無電解メッキ法について詳述する。まず、ポリスチレン樹脂柱状微小突起物を表面に有する基板の表面に無電解メッキ析出の核となるパラジュームをアトテックジャパン社製のネオガント処理液を用いて付着した。この過程は一般に触媒付与活性化プロセスと呼ばれるものである。次に、得られた基板を奥野製薬社製のトップケミアロイ66無電解ニッケルメッキ液に3分間浸漬し、柱状微小突起物を表面に有する基板表面にニッケル層を形成した。得られた基板表面は金属光沢を有した。また、走査型電子顕微鏡により観察したところ、微小突起物の上部直径は240nm、下部直径は280nmとなり、柱状微小突起物表面に均一に20nmのニッケル層が形成されていることが確認された。
【0114】
上記方法により作成したニッケル層で被覆した柱状微小突起物を表面に有する基板を電極として水溶液中に含まれる微量銅イオンをアノードストリッピング法により分析する方法を以下に示す。アノードストリッピング法は電極上に溶液中に含まれる金属イオンを還元濃縮し、次に電極をアノード分極して酸化溶出させ、その際の電位や流れる電気量から溶液中のイオンを同定する方法である。まず、銅イオン濃度が1×10−8mol/l、1×10−9mol/l、1×10−10mol/l、1×10−11mol/lの4種類の硫酸銅水溶液を、超純水を用いて調製した。
【0115】
次に、各々の硫酸銅水溶液についてニッケル層で被覆した柱状微小突起物を表面に有する基板と、比較例基板を比較した。比較例基板は、微小突起物を形成するプロセス以外は上記方法と同手法により作製し、ニッケル層で被覆した柱状微小突起物を表面に有さない基板である。これらを電極として用いて、アノードストリッピング法による測定を行った。測定にはガラス製のビーカーを用い、電極の大きさは5ミリメートル角とした。また、対極には白金電極、参照電極には飽和カロメル電極を用いた。ビーカーに硫酸銅水溶液を30cc導入し、電極、対極および参照電極を浸漬した後、アルゴンガスでパージした。
【0116】
次に、電極に−0.4Vvs.SCEの電位を15分間印加し、電極表面に銅を析出させた後、電極の電位を−0.1Vvs.SCEから+1.0Vvs.SCEまで0.1V/分で掃引した。これにより電極表面に析出した銅を溶解し、その際の電位、電流を記録した。得られた結果を表1に示す。本発明による高感度電極基板(微小突起物を有する電極)の銅溶解電荷量に対する、平板電極(微小突起物を有さない電極)の銅溶解電荷量の比は、銅イオン濃度によらず10〜15となった。微小突起物を有する電極を用いた場合、微小突起物を有さない電極を用いた場合と比較して高精度・高感度に測定を行うことができることが判明した。
【0117】
この原因としては電極表面に微小突起物を形成することにより、本発明の高感度電極基板の表面積が、平滑電極(電極表面に微小突起物を有さないもの)と比較して飛躍的に増大し、電極表面に析出する銅の量が増大したためであると考えられる。表1はアノードストリッピング測定結果を示す。
【0118】
【表1】
以下に本発明の具体的実施態様を示す。
【0119】
(1)有機物ポリマーからなる微小突起群の突起の先端が他の基体面に固定されている機能性基板。
【0120】
(2)有機ポリマーからなる微小突起群が複数層形成され、基体に固定されている機能性基板。
【0121】
(3)有機物を主成分とする柱状微小突起群が所定の配列法に従って配列されて、フォトニックバンドギャップ及び光路を構成して光信号を入出力することを特徴とする請求項のいずれかに記載の光デバイス。
【0122】
(4)対向する二枚の基板と、該基板に挟まれた空間に有機ポリマーからなる柱状微小突起群が所定の配列法に従って配列されている。これによりフォトニックバンドギャップ及び該微小柱状突起群が存在しない特定領域を形成して光路を構成することを特徴とする請求項のいずれかに記載の光デバイス。
【0123】
(5)該柱状微小突起群が該基板の表面に形成された薄膜と接続されていることを特徴とする請求項のいずれかに記載の光デバイス。
【0124】
(6)該有機ポリマーが酸化物,窒化物及び金属の微粒子からなる群から選ばれた少なくとも1種類を含むことを特徴とする請求項のいずれかに記載の光デバイス。
【0125】
(7)光信号入力装置と受光装置を備えた請求項のいずれかに記載の光信号処理装置。
【0126】
(8)該突起物と該突起物が接続している基板が一体となっていることを特徴とする柱状微小突起群を備えた請求項のいずれかに記載の機能性基板。
【0127】
(9)前記有機材料が熱可塑性高分子材料を主体とした材料であることを特徴とする柱状微小突起群を備えた請求項のいずれかに記載の機能性基板。
【0128】
(10)前記有機材料が光硬化性高分子材料であることを特徴とする柱状微小突起群を備えた請求項のいずれかに記載の機能性基板。
【0129】
(11)前記柱状突起群の主成分がシクロオレフィンポリマー,ポリメチルメタクリレート,ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸及びポリプロピレンの1種以上である。
【0130】
(12)前記第1の基体上にスペーサーを介して第2の基体を有することを特徴とする柱状微小突起群を備えた請求項のいずれかに記載の機能性基板。
【0131】
(13)光コネクタと、該コネクタと光学的に接続された複数の光出力ユニットとが1つの基板に搭載され、上記光コネクタ及び光出力ユニットの少なくとも一方が、有機材料製の第1の基体と、該基体から伸びた有機材料製の柱状微小突起群を有する。そして、該微小突起群の先端は第2の基体に接しており、該突起物の相当直径が10nmから10μm、高さが50nmから10μmであり、上記微小突起のアスペクト比は4以上である。上記微小突起群は少なくとも1つの光路を構成するように配置され1つ以上の入光部と1つ以上の出光部を有する光デバイスであることを特徴とする光回路。
【0132】
(14)第1の有機ポリマー面と、該第1の有機ポリマー面から伸びた有ポリマー製の柱状微小突起群を有し、該微柱状小突起群の先端は第2の有機ポリマー面に接しており、該突起物の相当直径が10nmから10μm、高さが50nmから10μmである。また上記柱状微小突起のアスペクト比は4以上で、上記柱状微小突起群は少なくとも1つの光路を構成するように配置され、1つ以上の入光部と1つ以上の出光部を有する光デバイスを2個以上光学的に結合した光信号処理装置。
【符号の説明】
【0133】
200…光デバイス、201…スペーサー、202…薄膜、203…第1の基板、204…突起物、205…光路、206…第2の基板、401…シリコン基板、402…窒化シリコン膜、404…第1の樹脂膜、405…モールド、408…第2の樹脂膜、500…光回路、501…AlN基板、502…発信ユニット、503…光導波路、504…光コネクタ。
【技術分野】
【0001】
本発明は有機ポリマーの微小突起群を備えた機能性基板又は機能性素子及びその製造方法に関し、またそれを用いたマイクロバイオチップや光デバイス等に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には鉄、金、銀などの金属クラスターをプラズマエッチングマスクの自己形成核として用いて、シリコンのナノ円柱群を形成し、特定の円柱の列を除去してフォトニック結晶(光デバイス)を形成することが開示されている。シリコン基板の表面に形成されるシリコンナノ円柱の直径は50nm,高さ1μmで、クラスターの周期(ピッチ)は500nmである。
【0003】
このようなナノ円柱の周期の、約二倍の波長の光はフォトニックバンドギャップによって円柱の間を通過できないが、円柱の1列を取り除いた部分(線状欠陥)では光は線状欠陥(隙間)を通過することができる。上記線状欠陥を通って入射光が進行することになり、この線状欠陥を適宜レイアウトすることで、極めて狭い空間で光信号を合成したり(ADD)、分割したり(DROP)、あるいは進行方向を変えることができる。信号をDROPさせる場合は、グレーティングを用いるのが良い。従って、この線状欠陥部を形成することにより、極めて小型の光導波路を得ることができる。
【0004】
また、非特許文献2には樹脂製の突起物の形成に関する技術が開示されている。シリコン基板の表面に分子量2、000,厚さ95nmのPMMA(polymethylmethacrylate)膜を塗布する。次に、シリコン基板製のマスクを、スペーサーを介してPMMA膜の上に設置する。PMMA膜とマスクとの距離は例えば0.3μmである。次に、試料を130℃、5分から80分間、加熱するとPMMA膜に突起物が形成される。最後にマスクとスペーサーを試料から外す。突起物の直径は数μm、高さはスペーサーで決まるが0.28μmから0.43μmの突起群が作製できることが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】応用物理,第71巻,第10号,1251ページから1255ページ,2002年
【非特許文献2】ジャーナル オブ バキューム サイエンス アンド テクノロジー B,17巻,6号,3197ページから3202ページ,1999年(Journal of Vacuum Science and Technology B,17(6),3197−3202(1999))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の非特許文献1記載の技術は、ドライエッチング法によってnmレベルの微小突起物群を形成している。ナノ円柱の材質はエッチングガスと反応して揮発性のガスとして除去される必要がある。そこで、金属、酸化シリコン(SiO2),窒化シリコン(Si3N4),シリコン(Si)などの無機材料に限定され、その製造法は上記のようにECRプラズマエッチング法などのドライエッチング法に依らざるを得ない。
【0007】
上記文献によれば、クラスターサイズに関係なく、得られるナノ円柱の直径は、常に15ないし20nmであり(上記非特許文献1の図5参照)、従ってこの方法により得られる光デバイスで用いられる光の波長は特定の範囲に限られる。
【0008】
上記従来技術のうち、非特許文献2に記載された、PMMA製突起物の形成では、ドライエッチング法を用いないために有機材料(PMMA)製の突起物構造が形成可能である。しかし、PMMA膜の自己組織化が突起物形成の駆動力であるため突起物の位置,直径,高さを自由に制御することは困難であった。
【0009】
本発明は、種々の用途に利用可能で、微小突起群の寸法、アスペクト比を容易に制御できる有機材料製の柱状微小突起群を備えた機能性基板又は機能性素子を提供するものである。また、本発明は、簡便で安価な機能性基板又は機能性素子の製造法による柱状微小突起群を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の微小突起群を備えた機能性基板又は機能性素子は、有機ポリマー製の第1の基体と、該基体から伸びた有機ポリマー製の柱状微小突起群を有し、該突起群の突起物の相当直径が10nmから500μm、高さが50nmから5000μmであることを特徴とする。本発明は特にnmレベルの微小突起物群を有する機能性基板に適用するのに適し、従って、上記突起物の相当直径は50nm以上、1μm未満、高さは100nm以上、10μm以下であることが好ましい。
【0011】
なお、本発明の機能性基板又は機能性素子はフィルムやシートも含むものである。本発明において、有機ポリマーは、特に断りがない限り、有機ポリマーのみを意味する他、これに無機フィラーを添加したり、有機ポリマーに化学修飾したりして、物性を変化させたものも含む。
【0012】
該突起物の高さ(H)に対する相当直径(D)の比(H/D、アスペクト比)が4以上であることが望ましい。アスペクト比がある程度大きい方が、機能性基板又は機能性素子としての任意の特性が設計でき、それだけ用途が広がるからである。
【0013】
本発明において、柱状微小突起の相当直径とは、突起の中間位置における相当直径である。なお、相当直径という語を用いたのは、突起の断面が必ずしも円形ではなく、楕円、多角形、非対称形などの場合があるためで、本発明ではこれらを全て包含するために相当直径を用いている。アスペクト比(H/D)としては、4以上が好ましく、8から30がより好ましい。しかし、構造的な強度の点から100以下が好ましい。
【0014】
本発明の微小突起群を備えたフィルムまたは基板は、特定の配列をもつ凹部群(以下、ピット群と称する)を形成した微小成形型(精密金型)を用いて、熱可塑性樹脂又は未硬化の熱硬化性樹脂の薄膜に押し付けて、上記ピット群の型に従ってパターンを形成する。
【0015】
上記成形型はたとえば石英で作られる。上記成形型を上記薄膜から引き離すときに、上記ピットに入り込んだ熱可塑性樹脂又は未硬化の光硬化性樹脂あるいは熱硬化性樹脂が引き伸ばされて、所望の微小突起群ができる。特にモールド(成形型)の凹凸群(ピット群)のアスペクト比によって突起物の高さの調整が可能となり、モールドに形成する凹部の位置と開口面積によって突起物の位置と底面積を調整できる。この製造法に関しては、後に詳細に説明する。
【0016】
前記微小突起群は自己支持性であることが好ましく、上記第1の基体から自立できる形態であることが望ましい。また、前記微小突起群の各微小突起物の先端又は全面を化学メッキなどにより化学修飾し、微小突起物の側面の反射率を制御しても良い。
【0017】
該柱状微小突起群を構成する突起物は、先端部の相当直径よりも底面部の相当直径がわずかに大きい。これにより、樹脂製の微小突起物の自立性、自己支持性を確保する上で有利であり、また、微小突起物は、該第1の基体と接した根元から先端部に向けて細くなる部分を有している。また、該柱状微小突起群と前記第1の基体の材料が同じであることが望ましい。特に、該突起物と該突起物が接続している基板が一体となっていることが好ましい。本発明の微小突起集合体は、微小突起物が密集した構造とすることができるため、これにより個々の微小突起物が潰れにくく、基体から取れにくい性質とすることが可能である。
【0018】
上記の構造は、基体とその基体上に形成した微小突起群を一体化して使用する場合の構造であるが、成形型を使用して形成した小突起群を他の基体に転写して使用することもできる。また、微小突起群を多層に積層した構造体とすることもできる。例えば、本発明による機能性基板を反射防止膜などに利用するときは、微小突起群の相当直径は光デバイスやマイクロバイオチップの場合よりも大きくてよく、また微小突起群を転写法により形成することができる。転写法による時は、微小突起群の先端が基体面に接着剤又は熱圧着等により固定される。転写法による場合は、微小突起群は基体又は樹脂膜と分離されるので、独立した突起となる。
【0019】
従って本発明は、有機ポリマーからなり、アスペクト比が4以上の微小突起群が特定の配列で基体に一体化し、上記微小突起の相当直径が1μm以下で高さが100ミクロン以下であって、上記微小突起群は自己支持性があることを特徴とする機能性基板を提供する。また、上記微小突起群の突起の一端の相当直径が他端の相当直径よりも小であり、相当直径の小さい微小突起群の先端が他の基体に接続している機能性基板を提供する。更に、上記微小突起群が複数層形成され、各層の間に基体が設けられ、かつ基体と微小突起群が一体化されている機能性基板を提供する。
【0020】
上記微小突起物群の製造工程上、前記有機材料が熱可塑性高分子材料又は未硬化の光硬化性樹脂あるいは熱硬化性樹脂であってもよい。前記有機材料が熱可塑性の光硬化性高分子材料を用いても良い。たとえば、柱状微小突起群の主成分がシクロオレフィンポリマー,ポリメチルメタクリレート,ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ガラス強化ポリエチレンテレフタレート、変成ポリフェニレンエーテル、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶性ポリマー、フッ素樹脂、ポリアレート、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアミドビスマレイミド、ポリビスアミドトリアゾール等の熱硬化性樹脂、これらを2種以上混合した材料、あるいは感光性物質を添加した光硬化性の材料などがある。また、これらの材料に酸化防止剤、難燃剤等を添加してもよい。
【0021】
熱可塑性樹脂の薄膜に前述の成形型を押し付け、これを引き剥がす際に、ピット内に圧入された樹脂が引き伸ばされて、突起の相当直径がピットの内径よりもわずかに小さい、しかしピット深さよりも長い微小突起物群が形成される。どの程度の相当直径でどの程度の長さの微小突起になるかは、用いる樹脂の種類、物性(分子量など)、成形条件(ピット深さ、温度、成形圧力など)によって変わるので、予め種々の実験によって、確認しておくのが良い。
【0022】
前記熱硬化性樹脂の薄膜が未硬化の状態にあるときに、所定の配列を持ったピットを形成した精密金型を押し付けて、引き剥がすことにより、目的の形状をもった微小突起物群が形成される。次にこれを熱硬化、光硬化などにより硬化させることにより、機械的強度の高い機能性基板を得ることができる。熱硬化性樹脂の硬化にあたっては、樹脂が溶融して流れたり、変形したりしないような条件を選ぶため、硬化温度や加熱プロファイルを検討する。なお、熱硬化性樹脂に硬化剤や硬化促進剤を添加しても良いことは当然である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、寸法、アスペクト比などが自由に制御できる有機ポリマー製の微小突起物群を備えた機能性基板を提供することができる。また、柱状微小突起群を製造するのに、有機ポリマーを使用するので、プレスという簡便な製造技術で形成でき、安価な機能性基板を提供することができる。
【0024】
アスペクト比の小さい微小突起物を作るのは容易であるが、nm単位の微小突起でしかもアスペクト比が4以上と大きいものを簡単な方法で形成することができる。従って種々の用途に展開できるnmオーダーの機能性基板が得られる。また、突起物の中心位置間の距離(ピッチ、P)を位置によって変え、変化した機能を与えることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例で作製した機能性基板の斜視図。
【図2】実施例で作製した機能性基板の構造を示す側面図。
【図3】実施例で作製した微小突起物群の構造例を示す側面図。
【図4】本発明による機能性基板の製造工程を示すフロー図。
【図5】本発明の実施例による光回路の構成を示す概略平面図。
【図6】図5における光導波路発振部の構造を示す概略平面図。
【図7】本発明によるマイクロ内オチップの構成を示す分解斜視図。
【図8】図7における分子フィルターの構成を示す分解斜視図。
【図9】本発明による細胞培養シートの構造を示す平面図。
【図10】図9における細胞培養を説明する培養シートの側面図。
【図11】本発明による撥水・撥油シートの構成と作用を説明する側面図。
【図12】本発明による無染色発色シートの作用を説明する側面図。
【図13】本発明による反射防止層の作用を説明する概略側面図。
【図14】本発明による他の例による反射防止層の作用を説明する概略側面図。
【図15】本発明による更に他の例による反射防止層の作用を説明する概略側面図。
【図16】本発明による柱状微小突起物表面にニッケル薄膜層を形成する工程を示すフロー図。
【図17】本発明の他の実施例による機能性基板の製造法を説明するフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施例1)
図1は本実施例で作製した突起物群104を備えた機能性基板100の概略斜視図である。突起物群104の材質はPMMAで、分子量は20、000から60万である。微小突起物群104と同じ有機ポリマーからなる基体102は、突起物群と連続していて突起物群を、しっかりと固定している。図1においては、突起物群104は同じ形状で、縦、横方向に整列されているが、ランダムに形成されていても良い。また、突起物群の高さ寸法、アスペクト比が、突起物が形成されている位置によって変化していても良い。このような変化は、本発明の製造法によってなし得る特徴である。
【0027】
更に又、突起物群の一部を欠損して、特定の機能を与えることもできる。本発明の方法によれば、予め金型に突起物群の欠損部分を形成しておくことにより、1工程で欠損部分を有する機能性基体を容易に形成することができる。
【0028】
(実施例2)
図2は他の実施例による機能性基板200の構造を示す斜視図であり、図3は微小突起物204の側面構造を示す図である。図4は図2、図3に示す機能性基板の製造工程を示すフローチャートである。
【0029】
図2及び図3において、柱状微小突起物204の高さは3μmで、相当直径は根元で330nm、中間高さ位置で300nmである。柱状微小突起物204は上部約1μmの部分は平滑な表面状態であり、根元から約2μmの部分の表面は、図3に示すように、横方向の縞模様209を有する。
【0030】
柱状微小突起物群204は一定のピッチPで形成され、底面の相当直径が330nmで、高さが3μmなので、底面におけるアスペクト比は9である。また、突起物204の中間高さ位置の相当直径は300nmであるので、中間高さ位置のアスペクト比は10で、4以上の、十分に大きいアスペクト比である。なお、本発明で単にアスペクト比という場合は、特に断りがない場合は、微小突起物の中間高さ位置における値である。
【0031】
また、柱状微小突起物204は先端部が底面部より小さくなっており、末広がり状であることが分かる。本実施例では、柱状微小突起物の形状は根本から先端にかけて細くなっていく形状であるが、例えば、根本から先端にかけて細くなり先端部が膨らんだ形状でもよい。本発明の柱状微小突起物は、根本から先端部にかけて細くなる部分を有することが特徴の一つである。突起物の先端部が突起物の底面部より小さく末広がり状であるため、突起物が基板から取れにくい。また、突起物が下地の材料と同じであるため突起物が下地から取れにくい。
【0032】
また、後述するが、柱状微小突起物204は下地膜(薄膜)202と同じPMMAでできている。また、柱状微小突起物204は下地膜202に接続されており、一体化している。微小突起物群の特定列を除去することによって、特定幅dの部分を形成する。これによって、特定の機能を与えることができる。第1基体203と第2基体207の間にはスペーサー201が形成され、突起物群を保護する。なお、突起物群の先端の保護と第2基体207との密着性を確保するため、樹脂膜206を形成する。
【0033】
図2は図4の製造法で作製した光の導波路を実現するための光デバイス200の斜視図である。光デバイス200は高さ3μmの窒化シリコン製のスペーサー201,厚さ0.5μmの薄膜202(酸化防止剤、難燃剤を添加したPMMA),厚さ550μmで幅1ミリメートルのシリコン製第1基板203,ポリカーボネート製の第2基板206及びPMMAを主成分とする相当直径300nmの柱状微小突起物204からなる。
【0034】
なお、本実施例では、柱状微小突起物204と下地膜202の材料としてPMMAを用いた。しかし、シクロオレフィンポリマー,ポリスチレン,ポリカーボネート,ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリ乳酸,ポリプロピレンなど、あるいは前述の他の材料を用いても良い。
【0035】
機能性基板の主要部の製造法を図17に示した。基板401には結晶方位(100)を持ち、直径150ミリメートルのシリコンウエハを用いた。基板401の表面にスピンコート法で分子量120、00のPMMAの薄膜404を塗布した。薄膜404の厚さは1.5μmである。次に、表面にピットを形成したモールド405を薄膜404にプレスした。モールド405は基板401と同じ結晶方位(100)を有し、直径150ミリメートルのシリコンウエハである。モールド405を垂直に引き上げ柱状微小突起物406を形成した。図17に示すように、柱状微小突起物406のアスペクト比は、モールド405のピットのアスペクト比(約1)の約4倍である。アスペクト比の大きいnmレベルのピットをモールド405に形成することは一般に困難であるが、本実施例の手法を用いればアスペクト比の大きい柱状微小突起物406を容易に形成することができる。
【0036】
なお、本実施例では、結晶方位が(100)で、直径150ミリメートルのシリコンウエハを基板401として用いたが、基板401はシリコンウエハに限られない。例えばガラスなどの無機物、ポリカーボネートなどの有機物、あるいはこれらの積層構造体を用いてもよい。
【0037】
また、本実施例では、基板401の表面にPMMA製の薄膜404を形成したが、薄膜404はPMMAのほかに、例えばシクロオレフィンポリマー,ポリスチレン,ポリカーボネート,ポリプロピレンなどの有機ポリマー等を用いることができる。またこれらのポリマーにシリカなどの無機物を添加してもよい。
【0038】
また、本実施例では、モールド405に結晶方位が(100)で、直径150ミリメートルのシリコンウエハを用いたが、ニッケルなどの金属薄膜やPDMS(熱硬化性又は光硬化性ポリジメチルシロキサン)などの有機物でもよい。
【0039】
また、モールド405の凹部(ピット)の深さや薄膜404の厚さや粘度を調整することで柱状微小突起物406の直径や高さを制御できる。モールド405の凹部の開口面積を大きくすることで柱状微小突起物406の底部の大きさを制御できる。さらに、モールド405のピットの位置を制御することにより、柱状微小突起物406を形成する位置を制御することができる。
【0040】
また、柱状微小突起物406の材料を熱可塑性樹脂にすることにより、柱状微小突起物406の形成時の温度を調整し、柱状微小突起物406の形状を容易に制御できる。更に、柱状微小突起物406を光硬化性材料とすることにより、柱状微小突起物406の形成時に光照射して柱状微小突起物406の形状を容易に制御できる。
【0041】
次に、光デバイス200の製造方法について詳細に説明する。図4は、図2,3に示した本実施例による光デバイス200の製造方法を示すフロー図である。始めに、図4(a)に示すシリコン製の第1の基板401に図4(b)のようにプラズマCVD法で厚さ3μmの窒化シリコン膜402を堆積した。
【0042】
次にフォトリソグラフィ法によって、図4(c)に示すように、窒化シリコン膜402をパターニングしてスペーサー403を形成した。次に粒径2nmのシリカ超微粒子を5重量%添加したPMMA(溶媒;エチルセロソルブ)をスピンコートして、図4(d)に示すように、スペーサー403及び第1の基板401上に第1の樹脂膜404を形成した。
【0043】
次に、表面に深さ1μm、直径500nmのピットをピッチ1μmで形成した図4(e)に示すモールド(精密金型)405を第1の樹脂膜404にプレスして樹脂膜の一部をピット内に圧入した後、モールド405を剥離した。これにより、図4(f)に示すように、柱状微小突起群406を形成した。なお、モールド405の背面に支持体409を設けて、樹脂膜への押圧力が一定になるようにし、かつ樹脂膜とモールド面が平行に維持されるようにする。
【0044】
柱状微小突起群の形状は、図2に示すように、柱状微小突起物204は、高さ3μmで1μmの周期(ピッチ、P)で配列している。柱状突起の高さ方向の中間位置における相当直径は、300nmで、根元で330nmである。柱状微小突起物204は上部約1μmの部分は、図3に示すように平滑な表面状態であり、根元から約2μmの部分の表面は縞模様209又は膨大部を有する場合がある。
【0045】
また、柱状微小突起物204の中間高さの相当直径が300nmで、高さが3μmなので、高さと一辺の比(アスペクト比)は10となり、4より十分大きいことが分かる。また、柱状微小突起物204の先端部の断面積が、底面部の断面積より小さく、末広がり状であることが分かる。また、柱状微小突起物204は薄膜202と同じPMMAでできている。また、柱状微小突起物204は薄膜202に接続されており、一体化している。
【0046】
理由はまだ解明されていないが、モールドを樹脂膜から引き剥がした場合に、微小突起物の先端部に、その直径方向に拡大した部分が形成されることがある。この膨大部があっても、微小突起物群の機能が損なわれることはない。本発明はこのような構造も包含する。
【0047】
次に樹脂膜404と同じ成分の第2の樹脂膜408を、図4(g)に示すようにポリカーボネート製の第2の基板407にスピンコート法で形成した。次いで、第2の基板407を図4(h)に示すように重ね合わせた。次に第1の基板401と第2の基板407を圧力10MPaを掛けながら150℃で2分間加熱し、図4(i)に示す光デバイス200を得た。なお、図4(h)の工程において、樹脂膜404と樹脂膜408とは接合され一体となっている。
【0048】
図2に示すように、柱状微小突起物204は薄膜202と一体となっている。また、突起物204はフォトニックバンドギャップが出現するように1μmの周期(ピッチ、P)で配置されている。また、光を通す経路205には柱状微小突起物204は設置されておらず、幅dの隙間(光路)205が形成されている。
【0049】
本発明における柱状微小突起が図2に示す形状でなければならないことはないが、以下に説明する熱可塑性樹脂膜のプレスモールド法で柱状微小突起群を作るときは、図2及び図3のようになるのが一般的である。即ち、突起204の上端は下端よりも断面積が小さく、図3に示すように、突起の上部は平滑であるが、下部は横方向に何本かの線209が入る場合がある。この線が生成する理由は解明されていないが、これがプレスモールド法による柱状微小突起の形状的特徴の1つである。
【0050】
図2では簡略化して突起物204を一列に7本しか記入していないが、実際に試作した光デバイス200では、突起物204は一列に80本形成されている。長さ30センチメートルの光デバイス200の端部からレーザー光を入射させ、透過光のスペクトルを調べた結果、波長1.8μmの光が透過することが分かった。透過率は80%であった。
【0051】
本実施例では突起物204、406や薄膜404、408の主成分はPMMAであった。しかし、他の熱可塑性樹脂例えば、シクロオレフィンポリマー,ポリスチレン,ポリカーボネート,ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリ乳酸又はポリプロピレンを含む高分子材料でもよい。また、高分子材料にシリカや金などの超微粒子を添加することで屈折率を変化させてもよい。さらに、形成された柱状微小突起物の表面に他のモノマーを結合させたり、メッキしたりして化学修飾することができる。透過光の波長は柱状微小突起物204の相当直径及び周期で調整可能であり、調整可能である点が前記非特許文献1記載の技術と基本的に異なる点である。
【0052】
通信波長に合わせて微小突起物204の相当直径及び周期を調整することで、種々の通信波長に対応した通信デバイスへ適用できる。さらに光硬化性の樹脂を用いてもよいが、そのときは、プレス成形中ないしは成形後に柱状微小突起物を硬化させる。
【0053】
以上のように、光デバイス200の柱状微小突起物204はプレス成形で形成されており、従来の光デバイスのように、半導体プロセスのようなドライエッチングやフォトリソグラフィを必要とせず、低コストで光デバイス200を製造できる効果がある。
【0054】
また、従来のシリコン系材料製柱状微小突起物では、図4(h)に示す第2の基板407と第1の基板401とを合わせて加圧する際に突起物が破損することが観察された。しかし、本実施例のように突起物204の主成分を高分子材料にすることで、柱状微小突起物406は第2の樹脂膜408と接触しても破損することがなくなった。すなわち、柱状微小突起物204を破損することなく第2の樹脂膜408と密着・固定することが可能となり、入射光が柱状微小突起物204と第2の樹脂膜408との隙間から漏れることがなくなった。この密着性の向上によって、出力光のバックグランドノイズを下げることができた。
【0055】
光デバイスでは、フォトニックバンドギャップが発現するように突起物を周期的に形成する必要がある。フォトニックバンドギャップは、屈折率の異なる領域を光の波長の約半分の周期で形成することで得られる。従って、柱状微小突起物と柱状微小突起物の間隔(ピッチ)を調整することで透過する光の波長を制御できる。それゆえ、短波長の光を選択的に透過させるためには、柱状微小突起物の間隔を狭くし、柱状微小突起物の相当直径あるいは一辺を小さくする必要がある。
【0056】
柱状微小突起物の高さは光デバイスにおいて用いられる入射光を入れる口径に関係するため、少なくとも数μmの高さが好ましい。本実施例の突起物の製法では、柱状微小突起物のアスペクト比を大きくすることができるため、入射光強度を十分確保できるという効果がある。
【0057】
また、本実施例では、柱状微小突起物の先端部が柱状微小突起物の底面部より小さく末広がり状であるため、柱状微小突起群が基板から取れにくい。また、柱状微小突起群が下地の材料と同じであるため、柱状微小突起群が下地から取れにくい。また、突起物が基体と一体化しているため光デバイスが取り扱いやすい。
【0058】
(実施例3)
本実施例では入射光の進行方向が変わる光デバイス200を光情報処理装置に適用した一例を述べる。図5は本発明により作製した光回路500の概略構成図である。光回路500は縦(l)30ミリメートル,横(w)5ミリメートル,厚さ1ミリメートルの窒化アルミニウム製の基板501上に形成した。光回路500は、インジウムリン系の半導体レーザーとドライバ回路からなる10個の発信ユニット502,光導波路503,503’、光コネクタ504、504’から構成されている。
【0059】
なお、10個の半導体レーザーのそれぞれの発信波長を2〜50nmずつ異なるようにした。光回路500は光多重通信系のデバイスの基本部品である。本発明は、導波路503,503’の部分に適用される。この導波路503は、発信ユニット502から入力された光信号を接続部発振部503’によって受信し、これを副導波路506、主導波路505を順次経て、接続部504’から光コネクタ504に送る。この場合入力光信号は、副導波路の各々から合波される。
【0060】
発振部503’の構造は図6に示すようになっていて、接続部504’の構造は図6の左右を反対にした構造となっている。接続部504’の柱状微小突起群は図6とは逆方向に配置されている。
【0061】
図6は光導波路503内部での柱状微小突起物508の概略レイアウト図である。発信ユニット502と光導波路503とのアライメント誤差を許容できるように、光導波路503’の入力部の幅は20μmで、平断面はラッパ状になっている。そして、ストレート部分の中央部には柱状微小突起群が1列分だけ除去されて、フォトニックバンドギャップのない領域を形成し、これによって信号光が幅1μmの領域(w1)に導かれる構造になっている。なお、柱状微小突起物突起508間の間隔(ピッチ)は0.5μmである。図6では簡略化し、実際の本数よりも柱状突起群508を少なく示している。
【0062】
光回路500では10種類の異なる波長の信号光を重ね合わせて出力できるが、光の進行方向を変更できるために光回路500の横幅を5ミリメートルと非常に短くでき、光通信用デバイスを小型化できる。また、モールドのプレスによって柱状微小突起物508を形成できるため、製造コストが下げられる。本実施例では、入力光を重ね合わせるデバイスであったが、光の経路を制御する全ての光デバイスに光導波路503が有用であることは明らかである。
【0063】
以上の実施例で説明したように、本発明の柱状微小突起群を備えたフィルムを適用することにより、光信号として用いる光の波長を任意に選択することができる光デバイスを提供することができる。本実施例では、ナノ柱状突起群を有機ポリマー又はそれを主体とする材料で成形することにより、フォトニックバンドギャップ及びマイクロサイズ又はナノサイズの光路が容易に形成することができる。
【0064】
本発明の光デバイスは、有機ポリマーを主成分とする柱状微小突起群が所定の配列法に従って配列されて、フォトニックバンドギャップに従って光路を構成して光信号を入出力させることを特徴とするものである。また、対向する二枚の基板と、該基板に挟まれた空間に有機ポリマーからなる微小突起物群が所定の配列法に従って配列されフォトニックバンドギャップによる光路を構成していることを特徴とする光デバイスである。該突起物が該基板の表面に形成された薄膜と接続されていることが望ましく、特に基板表面に形成されている薄膜の材料が突起物と同一であることが望ましい。上記有機ポリマーに、酸化物,窒化物及び金属の微粒子からなる群から選ばれた少なくとも1種類を添加して、所定の屈折率を与えることができる。また、対向する二枚の基板と、該基板を隔てるスペーサーを設け、微小突起物群を支えるのが望ましい。
【0065】
ここで、微小突起物の相当直径(直径あるいは一辺)の大きさは、半導体レーザー等に用いる光源の波長との関係から、10nmから10μmの間で任意に調整することができる。また、微小突起物の高さは、50nmから10μmが好ましい。微小突起物間の距離(ピッチ)は、用いる信号波長の約半分となる。
【0066】
(実施例4)
本実施例では実施例1で示した突起物集合体100をマイクロバイオチップ900へ適用した。図7はバイオチップ900の概略平面図である。ガラス製の基板901には深さ3μm,幅20μmの流路902が形成されており、DNA(デオキシリボ核酸),血液,蛋白質などが含まれる検体を導入孔903から導入し、流路902を流した後、排出孔904へ流す構造になっている。
【0067】
流路902には分子フィルター905が設置されている。分子フィルター905には直径250nmから300nm,高さ3μmの突起物群1000(図8)が形成されている。図8は分子フィルター905の斜視図である。基板901には流路902が形成されており、流路902の一部には突起物群1000が形成されている。
【0068】
基板901は上部基板1001によって蓋をされ、検体は流路902の内部を移動することになる。例えばDNAの鎖長解析の場合、DNAを含む検体が電気泳動によって流路902にある分子フィルター905を通過する際に、DNAの鎖長に応じて分離される。即ち、鎖長の短いDNAは、鎖長の長いDNAよりも分子フィルターを通過するのが早いので、鎖長に応じたDNAの分離ができる。
【0069】
分子フィルター905を通過した検体に対し、基板901の表面に実装された半導体レーザー906からレーザー光が照射される。DNAが通過する際に光検出器907への入射光は約4%低下するため、光検出器907からの出力信号によって検体中のDNAの鎖長を解析することができる。
【0070】
光検出器907で検出された信号は信号配線908を介して信号処理チップ909に入力される。信号処理チップ909には信号配線910が結線されており、信号配線910は出力パッド911に結線され、外部からの端子に接続される。なお、電源は基板901の表面に設置された電源パッド912から各部品へ供給した。
【0071】
本実施例の分子フィルター905は、凹部を有する基板901と、基板901の凹部に形成された多数の突起物1000と、基板の凹部を覆うように形成された上部基板1001から構成されている。ここで、突起物の先端部は上部基板と接触するように形成されている。
【0072】
突起物群1000の主成分は有機ポリマーであるため、変形することが可能であり、よって上部基板1001を流路902に被せる際に突起物群1000が破損することはない。従って、上部基板1001と突起物群1000を密着させることが可能となる。このような構成とすることにより、検体が突起物群1000と上部基板1001との隙間から漏れることがなく、高感度な分析が可能となる。
【0073】
実際にDNAの鎖長解析を実施した結果、ガラス製の突起物群では塩基対の分解能が半値幅で10塩基対であったのに対し、有機ポリマー製の突起物集合体1000では塩基対の分解能が半値幅で3塩基対に改善できることが分かった。本実施例の分子フィルターでは、突起物群と上部基板が直接接触する構造であるが、例えば、上部基板に突起物群と同じ材料の膜を形成し、突起物群とこの膜が接触する構造とすれば密着性の向上を図ることができる。
【0074】
なお、本実施例では流路902は一本であったが、異なる大きさの突起物を設置した複数の流路902を配置することで同時に複数の分析を行うことも可能である。また、本実施例では検体としてDNAを調べたが、突起物群1000の表面に糖鎖,蛋白質又は抗原と反応する分子を予め修飾することにより、特定の糖鎖,蛋白質,抗原を分析することができる。このように、突起物の表面に抗体を修飾させることにより、免疫分析の感度を向上させることができる。
【0075】
本実施例によれば、直径がナノスケールの有機ポリマー製の分析用突起物群を簡便に形成できる。また、モールド表面の凹凸や有機材料薄膜の粘度などを制御することにより有機材料製突起物の位置,直径,高さ、アスペクト比などを制御できる。従って、本発明によれば、高感度の分析用マイクロバイオチップを提供することができる。
【0076】
本実施例のマイクロバイオチップは、検体の検出部に複数の突起物が存在し、該突起物の材質が有機ポリマーで、該突起物の直径が10nmから100μm、高さが0.5μmから500μmであることが好ましい。突起物の直径あるいは一辺は、生体高分子や細胞と同等のサイズである10nmから100μmとすることが好ましい。また、突起物の高さは、マイクロチップの流路の高さに合わせて調整されている。マイクロチップの検出部に多数の突起物を設けて反応表面積を増加させることで、生体分子(特に生体高分子)や細胞との相互作用により、高感度の分析用マイクロチップとすることができる。
【0077】
また、本実施例の突起物では、突起物の高さと直径あるいは一辺の比が1より十分大きいため、深さ数μm以上のマイクロ流路内に微小突起物群を設けることができる。
【0078】
(実施例5)(細胞培養シート)
図9は細胞培養シート600の平面図である。細胞培養シート600は、厚さ0.5μmのPMMAを主成分とした薄膜(シート)602,薄膜から伸びたPMMAを主成分とする相当直径2μmの柱状微小突起群604からなる。
【0079】
柱状微小突起物群の一部を除去して、隙間605を形成する。この細胞培養シート600を、ガラスシャーレなどの容器に細胞培養シートを入れ、容器内に培養液を浸して培養を行う。図10のように、細胞培養シート600の柱状微小突起群604上に、例えば皮膚、骨、血液等の細胞(組織)及び培地、栄養素などの培養液603を載せることで細胞等の培養を行う。
【0080】
柱状微小突起群にはその一部を除去した一定の隙間605を設けて配置することが好ましく、本実施例では図9に示したように、十字形状に隙間を設けている。このように隙間を形成することで培養液が流れやすくなり細胞に対して効率良く栄養素を供給することができる。また、細胞培養時の細胞の老廃物を効率良く排出することができる。
【0081】
本細胞培養シートを使用することにより、通常のガラスシャーレを使用するときに生じていたシャーレからの剥離によるシート状の表皮細胞への損傷を大幅に軽減することができ、シート状の表皮細胞を皮膚に移植する際の定着率を高めることができる。また、細胞培養シート上の柱状微小突起物により形成されるシート状の表皮細胞の下部にできる隙間を通して、シート状の表皮細胞全体に培養液が流れやすくなる。その結果、細胞への栄養素の供給や細胞の老廃物の排出を効率良く行うことができ、従来生じていた細胞培養中の表皮細胞の死滅を抑えることができる。
【0082】
次に、細胞培養シートの製造方法について述べる。プレス装置のステージのモールド側にPMMA(溶媒;エチルセロソルブ)を塗付して樹脂膜を形成した。次に、表面に深さ1μm、直径500nmのピットを1μmのピッチで直径2cmの領域に形成したモールドを樹脂膜にプレスして樹脂膜の一部をピット内に圧入した後、モールドを樹脂膜より剥離する。これにより柱状微小突起群を形成し、薄膜上に柱状微小突起群が形成された細胞培養シートを得た。なお、本実施例では、直接ステージ上に樹脂膜を塗布したが、シリコンなどの基板上に樹脂膜を塗布して細胞培養シートを形成することも可能である。
【0083】
柱状微小突起群の形状は、高さ3μmで、1μmの周期(ピッチ)で配列している。柱状微小突起物の高さ方向の中間位置における相当直径は、300nmで、根元で330nmである。従って微小突起物のアスペクト比は10である。柱状微小突起物の上部約1μmの部分は、図3に示すように平滑な表面状態であり、根元から約2μmの部分の表面は縞模様209を有する。また、柱状微小突起物の先端部の断面積が、底面部の断面積より小さく、末広がり状である。
【0084】
本実施例で形成した細胞培養シートをガラスシャーレに培養液を浸した状態で入れ、細胞培養シート上において、常法により正常ヒト表皮角化細胞を培養した(使用培地:HuMedia−KB2(クラボウ(株)製)、37℃、5%CO2流下で培養)。その結果、細胞培養シート上において表皮角化細胞は正常に付着し、シート形状に増殖した。
【0085】
培養開始の14日後、培養した細胞の上に直径2cmのポリビニリデンジフルオライド(PVDF)膜を被せて、培地を吸引することによって、ナノピラーシート上に成長したシート状の表皮角化細胞を、PVDF膜と共に細胞培養シートから剥離した。このシート状の表皮角化細胞を、被せたPVDF膜から容易に剥がすことができた。細胞培養シートからの剥離によるこのシート状の表皮角化細胞への損傷は通常のガラスシャーレなどを使用した場合に比べて大幅に軽減することができた。
【0086】
高分子材料にプラズマ処理等により親水化処理を施してもよい。また、高分子材料は特に限定されるものではないが、培養する細胞(組織)に対して影響の少ない材料を選択することが好ましく、例えば、ポリスチレン、PMMA、ポリ乳酸等が望ましい。
【0087】
また、本実施例では、柱状微小突起物の先端部が柱状微小突起物の底面部より小さく末広がり状であるため、柱状微小突起群が基板から取れにくい。また、柱状微小突起群が下地の材料と同じであるため、柱状微小突起群が下地から取れにくい。シリコンなどの基板上に細胞培養シートを形成すれば、細胞培養シートが取り扱い易くなる。
【0088】
(実施例6)(撥水表面)
本実施例では、表面に柱状微小突起群を形成した薄膜(シート)を撥水膜として適用した例を説明する。本実施例の撥水膜は、図11に示したように、シート606上に柱状微小突起群607が形成された構成を有する。本実施例の柱状微小突起物は、突起物間のピッチ(間隔)を20nmから10μm、高さを数μmから数十μm、突起物先端部の相当直径を50nm〜500nmとすることが好ましい。また、柱状微小突起物の材料としては特に限定はないが、PMMAなどの撥水性を有する材料とすることが好ましい。あるいは、微小突起物群の表面を撥水又は撥油剤で処理することができる。
【0089】
本実施例の撥水膜では、図11に示したように撥水性のシート606単体に比べて、表面に柱状微小突起群607を形成することにより、水滴609の接触角を大きくすることができる。従って、材質がもつ撥水性を柱状微小突起群607形成により得られる蓮の葉効果により増幅することが可能である。また、本実施例の撥水膜の柱状微小突起群はnmサイズの間隔で密集した構造にできるので、潰れにくく、取れにくいという性質があり、撥水・撥油効果の持続性にも優れている。
【0090】
本実施例の撥水・撥油膜は、例えば傘、衣類、壁などの表面に適用することが可能である。この場合、撥水膜の形成方法としては、実施例5と同様の方法により微小突起群を形成したシートを作製し、それを粘着材で貼り付ける方法や、傘、衣類、壁などの撥水・撥油膜を形成したい基材の表面に直接転写する方法が挙げられる。
【0091】
本実施例の撥水膜によれば、従来一般的に用いられている撥水コート処理などの必要がなく、材料表面そのものの改質を1転写で簡便に行うことができる。
【0092】
(実施例7)(無染色発色シート)
本実施例では、シート上に形成した柱状微小突起群を無染色発色シートとして適用した例を説明する。本実施例の無染色発色シートの発色原理を図12に示す。柱状微小突起物へ入射した可視光は、柱状微小突起群において干渉を起こしながら反射し,あたかもシート表面が発色したかのように見せることができる。図12に示したように、突起物の間隔(ピッチ)P1,P2を変えることで、可視光の干渉度が変化し、見える色調を変えることが可能である。
【0093】
例えば、波長λ1、λ2、・・・の成分を含む白色光をシート700の微小突起群704に入射すると、小さいピッチP1からの反射光はλ1(青色)の光となり、大きいピッチP2からの反射光はλ2(黄色)となる。
【0094】
突起物の間隔を広げるにつれて、長波長色の干渉が強まり、青、緑、黄、赤の順に色を変化させることができる。このように、突起物の間隔を調整することにより、染料や顔料を使用しなくとも、シートを色付けしたかのように見せることができる。また、場所ごとに色彩を変化させることも可能である。また、本実施例の無染色着色シートでは、干渉光を利用しているため、見る角度によって色調を変化させることができる。
【0095】
また、突起物の直径、高さを変化させることでも同様に可視光の干渉度を変化させることができ、突起物の直径や高さを調整することでもシートの色彩を変化させることが可能である。
【0096】
本実施例の無染色着色シートでは、可視光の干渉が起きるように、用いる柱状微小突起物の直径は100nmから2、000nm、突起物の間隔は100nmから2、000nm、突起物の高さは1μmから5μmが好ましい。
【0097】
本実施例の無染色無着色シートは、衣服、車載シート、アクセサリー、壁紙やホログラフィーなどへ適用することが可能である。
【0098】
(実施例8)(反射防止層)
本実施例では、柱状微小突起群を反射防止層として適用した例を説明する。本実施例の反射防止層705は、図13に示したように、厚さ0.1μm以下のPMMAを主成分とした薄膜(シート)707,薄膜707から伸びたPMMAを主成分とする相当直径1μm以下の柱状微小突起群708で構成される。この反射防止膜はディスプレイのカバーガラスや光通信用光学基板の表面に形成し、反射防止層として用いられる。なお、シート707と転写法により形成された微小突起群708は接着剤により、あるいは熱圧着法などにより一体化される。
【0099】
ディスプレイのカバーガラスや光通信用光学基板などへの反射防止層の形成方法としては、例えば以下の方法がある。即ち、薄膜上に柱状微小突起群が形成されたシートを粘着材で貼り付ける方法、カバーガラスや光学基板などの基板上に直接樹脂を塗布し、転写により柱状微小突起物を形成し反射防止層とする方法である。シートを粘着材で貼り付ける方法の場合には、粘着材としては、アクリル系粘着材のように光学的透明性に優れた材料を用いることが好ましい。
【0100】
本実施例の反射防止層においては、突起物の直径、間隔、高さ、あるいは断面形状を調整し、突起群で構成される層内の突起部の誘電体領域と突起部の存在しない空気領域との比率を変えることができる。そのため、突起群で構成される層内の実効的な屈折率(以下,屈折率と略す)を任意に調整でき、基板表面での反射光を抑制することができる。
【0101】
本反射防止層における屈折率(nAR)及び厚さ(tAR)の理想条件は以下の式で表わされる。
屈折率:nAR=(nsub・nair)1/2
厚さ:tAR=λ/(4nAR)
nsub:基板の屈折率、nair:空気の屈折率、λ:設計波長
例えば、基体(ガラスを想定)の屈折率が1.5、λが1550nmの場合には、上式より反射防止層の屈折率は1.22、厚さは約320nmとなる。このように、反射防止層として必要とされるパラメータを算出し、突起部の形状、配置を調整することにより、ディスプレイのカバーガラスや光通信用光学基板などの反射防止層とすることができる。
【0102】
図13に示す反射防止層の構造、作用を説明する。基板706側に発光素子が配置されている。反射防止層705は,基板706側から入射した光が基板706と空気との境界で生じる反射光を抑制するために付けられている。反射防止層705の動作原理を説明する。まず,基板706と反射防止層705の境界では屈折率差があるため,基板706側に戻る反射光#1が生じる。さらに,反射防止層705と空気の境界でも反射光が生じ,その反射光は反射防止層705内での多重反射及び反射防止層705からの透過を繰り返したのち,基板706に戻る反射光#2を形成する。このとき,反射光#1と反射光#2の振幅が等振幅かつ逆位相関係になるとき,2つの反射光が打ち消し合うため,基体706側に戻る反射光が無くなる。
【0103】
空気側への透過光に関しては,反射防止層705を直接通過した透過光#1と,反射防止層705内での多重反射及び反射防止層705からの透過を繰り返したのち形成される透過光#2とが,同位相関係になるとき100%の透過率が得られる。
【0104】
上記の無反射条件(全透過条件)を満たす反射防止層の条件が前述の式で表される。なお,光が空気側から入射した場合も,基板706側から入射した場合と同じ反射防止効果が得られる。図13の構造は,光の位相干渉を利用した反射防止層であるため,設計波長からずれた入射光では,反射防止効果が弱まる。
【0105】
図14、図15の構造を説明する。図13の構造とは動作原理が以下のように異なる。反射防止層内での屈折率を,基体706の屈折率から空気の屈折率へと緩やかに変化させることで,屈折率差による不連続面を無くすことができ,反射を抑制することが可能になる。また光の位相干渉を利用していないため,反射率の波長依存性も緩和される。
【0106】
本実施例によれば、突起群で構成される層内の空気領域を広げることで、ガラス基板の反射防止層に用いられるMgF2の連続膜で構成される反射防止層では困難な、屈折率1.3以下の低屈折率層を実現することができる。従って、例えば屈折率が1.5程度のガラス基板表面からの反射光を抑制する反射防止層を単層で構成することができる。具体的には、従来のMgF2連続膜では屈折率は小さくても1.3程度であるが、本実施例の反射防止層では、突起物の直径や間隔を最適化することによって屈折率を理想条件に近い1.2程度に調整することができる。
【0107】
次に本実施例による他の反射防止層の例を図14を用いて説明する。この例では、柱状微小突起群708の突起物の形状を根本から先端に向けて細くなるテーパー形状とした。このような形状とすることにより、波長300nmから700nmの領域において、反射率を反射防止層無しの場合に比べて、1/50以下に抑えることができた。このように、突起物の形状をテーパー状とすることにより、層内の屈折率を厚さ方向に変化させることができ、広波長帯域での反射防止効果を得ることができる。
【0108】
他の反射防止層の形態を図15を用いて説明する。この例では、基板上に屈折率の異なる柱状微小突起群708が形成されたシート705を積層した例である。ここで、シート705の積層方法としては、単層で形成したシートを粘着材を用いて積層する方法、単層で形成したシートを圧着(例えば、300kg/cm2荷重、100℃加熱)する方法により積層することが可能である。
【0109】
本例のように、実効的な屈折率が異なるシートを積み重ねることで、図14のテーパー構造と同様に厚さ方向の屈折率を変化させることができ、広波長帯域での反射防止効果を得ることができる。
【0110】
また、以上説明した形態以外にも、基板上の特定の領域毎に、突起物の直径や間隔を変えることで、同一基板上に異なる波長特性をもつ反射防止層を単層又は複層で任意の領域に配置することも可能である。
【0111】
(実施例9)(高感度電極基板)
本実施例では、柱状微小突起物表面に無電解メッキ法によりニッケル薄膜層を形成し、微量金属イオンの分析手法であるアノードストリッピング法の高感度電極として適用した例を図16を用いて説明する。
【0112】
まず、実施例1に開示した方法と同等に方法により、縦30ミリメートル、横30ミリメートル、厚み1ミリメートルのガラス基板上にポリスチレン樹脂層801を製膜した。その後、精密金型803を用いてポリスチレン樹脂層801表面にポリスチレン樹脂の柱状微小突起物804を形成し、柱状微小突起物804を表面に有する基板を作製した。ここで、形成した柱状微小突起物804の形状は底部直径240nm、上部直径200nm、高さ1μmであり、柱状微小突起物804の中心間のピッチは500nmであった。
【0113】
次に、ポリスチレン樹脂柱状微小突起物を表面に有する基板の表面を無電解メッキ法により厚み20nmのニッケル層で被覆した。以下、本実施例で適用した無電解メッキ法について詳述する。まず、ポリスチレン樹脂柱状微小突起物を表面に有する基板の表面に無電解メッキ析出の核となるパラジュームをアトテックジャパン社製のネオガント処理液を用いて付着した。この過程は一般に触媒付与活性化プロセスと呼ばれるものである。次に、得られた基板を奥野製薬社製のトップケミアロイ66無電解ニッケルメッキ液に3分間浸漬し、柱状微小突起物を表面に有する基板表面にニッケル層を形成した。得られた基板表面は金属光沢を有した。また、走査型電子顕微鏡により観察したところ、微小突起物の上部直径は240nm、下部直径は280nmとなり、柱状微小突起物表面に均一に20nmのニッケル層が形成されていることが確認された。
【0114】
上記方法により作成したニッケル層で被覆した柱状微小突起物を表面に有する基板を電極として水溶液中に含まれる微量銅イオンをアノードストリッピング法により分析する方法を以下に示す。アノードストリッピング法は電極上に溶液中に含まれる金属イオンを還元濃縮し、次に電極をアノード分極して酸化溶出させ、その際の電位や流れる電気量から溶液中のイオンを同定する方法である。まず、銅イオン濃度が1×10−8mol/l、1×10−9mol/l、1×10−10mol/l、1×10−11mol/lの4種類の硫酸銅水溶液を、超純水を用いて調製した。
【0115】
次に、各々の硫酸銅水溶液についてニッケル層で被覆した柱状微小突起物を表面に有する基板と、比較例基板を比較した。比較例基板は、微小突起物を形成するプロセス以外は上記方法と同手法により作製し、ニッケル層で被覆した柱状微小突起物を表面に有さない基板である。これらを電極として用いて、アノードストリッピング法による測定を行った。測定にはガラス製のビーカーを用い、電極の大きさは5ミリメートル角とした。また、対極には白金電極、参照電極には飽和カロメル電極を用いた。ビーカーに硫酸銅水溶液を30cc導入し、電極、対極および参照電極を浸漬した後、アルゴンガスでパージした。
【0116】
次に、電極に−0.4Vvs.SCEの電位を15分間印加し、電極表面に銅を析出させた後、電極の電位を−0.1Vvs.SCEから+1.0Vvs.SCEまで0.1V/分で掃引した。これにより電極表面に析出した銅を溶解し、その際の電位、電流を記録した。得られた結果を表1に示す。本発明による高感度電極基板(微小突起物を有する電極)の銅溶解電荷量に対する、平板電極(微小突起物を有さない電極)の銅溶解電荷量の比は、銅イオン濃度によらず10〜15となった。微小突起物を有する電極を用いた場合、微小突起物を有さない電極を用いた場合と比較して高精度・高感度に測定を行うことができることが判明した。
【0117】
この原因としては電極表面に微小突起物を形成することにより、本発明の高感度電極基板の表面積が、平滑電極(電極表面に微小突起物を有さないもの)と比較して飛躍的に増大し、電極表面に析出する銅の量が増大したためであると考えられる。表1はアノードストリッピング測定結果を示す。
【0118】
【表1】
以下に本発明の具体的実施態様を示す。
【0119】
(1)有機物ポリマーからなる微小突起群の突起の先端が他の基体面に固定されている機能性基板。
【0120】
(2)有機ポリマーからなる微小突起群が複数層形成され、基体に固定されている機能性基板。
【0121】
(3)有機物を主成分とする柱状微小突起群が所定の配列法に従って配列されて、フォトニックバンドギャップ及び光路を構成して光信号を入出力することを特徴とする請求項のいずれかに記載の光デバイス。
【0122】
(4)対向する二枚の基板と、該基板に挟まれた空間に有機ポリマーからなる柱状微小突起群が所定の配列法に従って配列されている。これによりフォトニックバンドギャップ及び該微小柱状突起群が存在しない特定領域を形成して光路を構成することを特徴とする請求項のいずれかに記載の光デバイス。
【0123】
(5)該柱状微小突起群が該基板の表面に形成された薄膜と接続されていることを特徴とする請求項のいずれかに記載の光デバイス。
【0124】
(6)該有機ポリマーが酸化物,窒化物及び金属の微粒子からなる群から選ばれた少なくとも1種類を含むことを特徴とする請求項のいずれかに記載の光デバイス。
【0125】
(7)光信号入力装置と受光装置を備えた請求項のいずれかに記載の光信号処理装置。
【0126】
(8)該突起物と該突起物が接続している基板が一体となっていることを特徴とする柱状微小突起群を備えた請求項のいずれかに記載の機能性基板。
【0127】
(9)前記有機材料が熱可塑性高分子材料を主体とした材料であることを特徴とする柱状微小突起群を備えた請求項のいずれかに記載の機能性基板。
【0128】
(10)前記有機材料が光硬化性高分子材料であることを特徴とする柱状微小突起群を備えた請求項のいずれかに記載の機能性基板。
【0129】
(11)前記柱状突起群の主成分がシクロオレフィンポリマー,ポリメチルメタクリレート,ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸及びポリプロピレンの1種以上である。
【0130】
(12)前記第1の基体上にスペーサーを介して第2の基体を有することを特徴とする柱状微小突起群を備えた請求項のいずれかに記載の機能性基板。
【0131】
(13)光コネクタと、該コネクタと光学的に接続された複数の光出力ユニットとが1つの基板に搭載され、上記光コネクタ及び光出力ユニットの少なくとも一方が、有機材料製の第1の基体と、該基体から伸びた有機材料製の柱状微小突起群を有する。そして、該微小突起群の先端は第2の基体に接しており、該突起物の相当直径が10nmから10μm、高さが50nmから10μmであり、上記微小突起のアスペクト比は4以上である。上記微小突起群は少なくとも1つの光路を構成するように配置され1つ以上の入光部と1つ以上の出光部を有する光デバイスであることを特徴とする光回路。
【0132】
(14)第1の有機ポリマー面と、該第1の有機ポリマー面から伸びた有ポリマー製の柱状微小突起群を有し、該微柱状小突起群の先端は第2の有機ポリマー面に接しており、該突起物の相当直径が10nmから10μm、高さが50nmから10μmである。また上記柱状微小突起のアスペクト比は4以上で、上記柱状微小突起群は少なくとも1つの光路を構成するように配置され、1つ以上の入光部と1つ以上の出光部を有する光デバイスを2個以上光学的に結合した光信号処理装置。
【符号の説明】
【0133】
200…光デバイス、201…スペーサー、202…薄膜、203…第1の基板、204…突起物、205…光路、206…第2の基板、401…シリコン基板、402…窒化シリコン膜、404…第1の樹脂膜、405…モールド、408…第2の樹脂膜、500…光回路、501…AlN基板、502…発信ユニット、503…光導波路、504…光コネクタ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ポリマーを主体とする材料の基体に、所定のパターンを構成するように配列され、相当直径10ミクロン以下の多数のピットを有し、該材料よりも高度の高い材料からなる成形型を押圧し、該材料の一部を該ピット内に圧入し、ついで該成形型を該材料から引き剥がし、該ピット内の材料が引き伸ばされた柱状微小突起群を形成する工程を含む柱状微小突起群を備えた機能性基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、前記柱状微小突起群の突起の高さ(H)に対する突起の相当直径(D)の比(H/D)が4以上であることを特徴とする機能性基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1において、第1基板表面に無機材料からなるスペーサーを形成し、該スペーサーを含む面上に材料膜を形成し、該材料膜に上記成形型を押圧し、該成形型を引き剥がした後、第2の基体を、該スペーサを介して前記柱状微小突起群の先端に接触・固定することを特徴とする機能性基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法で製造されたことを特徴とする機能性基板。
【請求項5】
請求項3に記載の方法で製造されたことを特徴とする機能性基板。
【請求項1】
有機ポリマーを主体とする材料の基体に、所定のパターンを構成するように配列され、相当直径10ミクロン以下の多数のピットを有し、該材料よりも高度の高い材料からなる成形型を押圧し、該材料の一部を該ピット内に圧入し、ついで該成形型を該材料から引き剥がし、該ピット内の材料が引き伸ばされた柱状微小突起群を形成する工程を含む柱状微小突起群を備えた機能性基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、前記柱状微小突起群の突起の高さ(H)に対する突起の相当直径(D)の比(H/D)が4以上であることを特徴とする機能性基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1において、第1基板表面に無機材料からなるスペーサーを形成し、該スペーサーを含む面上に材料膜を形成し、該材料膜に上記成形型を押圧し、該成形型を引き剥がした後、第2の基体を、該スペーサを介して前記柱状微小突起群の先端に接触・固定することを特徴とする機能性基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法で製造されたことを特徴とする機能性基板。
【請求項5】
請求項3に記載の方法で製造されたことを特徴とする機能性基板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−187025(P2009−187025A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96876(P2009−96876)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【分割の表示】特願2003−353633(P2003−353633)の分割
【原出願日】平成15年10月14日(2003.10.14)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【分割の表示】特願2003−353633(P2003−353633)の分割
【原出願日】平成15年10月14日(2003.10.14)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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