説明

核酸の抽出及び同定方法

本発明はサンプルから核酸を抽出する方法を提供する。前記サンプルは、細胞、ウイルス、又は細胞及びウイルスの双方を含む。前記方法は、界面活性剤を含む溶解溶液を前記サンプルに添加し、細胞又はウイルスを溶解して溶解物を形成し、前記溶解物にアルコールを添加して核酸を凝集又は沈殿させ、さらに前記混合物をガラス繊維フィルターでろ過することによって溶解物-アルコール混合物から核酸を精製することを含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、米国仮特許出願60/645,905号(2005年1月21日出願)(前記明細書は参照により本明細書に含まれる)に対し優先権を主張する。
【0002】
背景技術
公衆衛生分野では、ウイルス、細菌、菌類、寄生虫、又は細胞遺伝子に対する高度に鋭敏なアッセイの要望がますます高まっている。(例えば輸血、蚊のアルボウイルスの)スクリーニング、(例えば鳥の集団の西ナイルウイルスの)監視、水の分析、感染の診断、(例えば血友病、乳癌素因、癌性細胞の)遺伝子による診断などのために高い処理能力をもつサンプルプロセッシングは有益であろう。
血液サンプルの病原性ウイルス(例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)、A、B又はC型肝炎ウイルス、パルボウイルス、サイトメガロウイルス及びエプスタイン・バーウイルス)の汚染、及び細菌感染(例えばライム病)はますます重大な問題になってきている。アメリカ食品医薬局及びその他における主要な意見は、血清学的検査に加えて(又は最終的には前記に代わり)、全ての血液はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)解析を用いてスクリーニングされるべきであるというものである。感染性ウイルスについて血液をスクリーニングすることによって、年間当たり、少なくとも100のB型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)及びHIVの輸血関連症例が予防されると考えられる。
最近まで血清学的検査は血液スクリーニングの最良の方法であった。これらの検査は、ウイルス因子、ウイルス抗原、細菌因子、細菌抗原などに対して生じた血中の抗体の存在を検出する。血清学的なスクリーニング検査は、抗体応答が高まっていない場合は、感染を検出できないという欠点がある。
例えば、血清学的検査は、しばしば感染初期の感染個体を検出することができない。さらにまた、免疫応答が低い個体は一般的には少量のウイルスを保有する。典型的には、少量のウイルスは抗体の産生を刺激しない。そのようなウイルスの例はHIVである。血清学的検査に対する前記及びその他の実際的な制約のために、個体の感染期に関わりなく感染を検出する方法が希求されている。
【0003】
血漿中に存在する核酸を単離し、続いてPCR増幅を実施することによって、抗体の非存在下で病原性因子を検出することができる。病原性因子の検出は、輸血が伝達性病原体を含まないことを担保するために必須である。
医療現場での血液及び関連する生物学的材料のスクリーニングは通常は大規模に実施される。血液センターは、一般的には毎日千以上もの多くの血液ユニットを検査する。現在利用可能な技術を用いて毎日千の血液サンプルから単離核酸を調製するには極めて多くの時間、労力及び試薬を必要とする。したがって、個々のサンプルについての大規模な核酸検査は、技術的制約のために一般的には実施されない。
現在のところ、スクリーニング及び監視のために利用される核酸検査は、全部ではないとしてもサンプルプールとして用いられる。プールされたサンプルは、残念ながら検査の感度を低下させる。プールしたサンプルの検査が陽性であった場合、最終的診断は遅れる。
検査のためのDNA又はRNA抽出は、一般的には、2つの異なる抽出方法の使用を必要とする。1つの方法はDNA抽出のみを許容し、別の方法はRNAの抽出のみを許容する。前記DNA抽出方法の使用は、極めて低いRNA収量をもたらし、逆もまたその通りである。したがって、最近まで、血液スクリーニングは、DNAの単離に1つの方法を、RNA単離に異なる方法を必要とした。
したがって、DNA及びRNAの両者の高度に鋭敏な抽出及び精製を可能にする、単純で効率的で、さらに信頼できる方法が希求されている。そのような方法は特に輸血のスクリーニングのために有用である。前記方法はまた、多数の他の適用、例えば遺伝子による診断、感染病の監視(例えば鳥の集団の西ナイルウイルス、蚊の集団におけるマラリア)、水の分析などのためにも有益である
【0004】
発明の要旨
上記の要求は、サンプルから核酸を抽出する方法を提供する本発明によって満たされた。本発明の方法は、細胞、ウイルス、又は細胞及びウイルスの双方を含むサンプルを入手し;界面活性剤を含む溶解溶液を前記サンプルに添加し、それによって細胞又はウイルスを溶解して溶解物を形成し;核酸を凝集又は沈殿させるために十分な量のアルコールを前記溶解物に添加し;さらに前記混合物をガラス繊維フィルターでろ過することによって溶解物-アルコール混合物から核酸を精製することを含む。
別の実施態様では、本発明はサンプル中の病原体を同定する方法を提供する。前記方法は、細胞、ウイルス、又は細胞及びウイルスの双方を含むサンプルを入手し;界面活性剤を含む溶解溶液を前記サンプルに添加し、それによって細胞又はウイルスを溶解して溶解物を形成し;核酸を凝集又は沈殿させるために十分な量のアルコールを前記溶解物に添加し;前記混合物をガラス繊維フィルターでろ過することによって溶解物-アルコール混合物から核酸を精製し;さらに前記核酸をアッセイして病原体を同定することを含む。
さらに別の実施態様では、本発明は水サンプル中の生物学的汚染物質を同定する方法を提供する。前記方法は、細胞、ウイルス、又は細胞及びウイルスの双方を含む水サンプルを入手し;界面活性剤を含む溶解溶液を前記サンプルに添加し、それによって細胞又はウイルスを溶解して溶解物を形成し;核酸を凝集又は沈殿させるために十分な量のアルコールを前記溶解物に添加し;前記混合物をガラス繊維フィルターでろ過することによって溶解物-アルコール混合物から核酸を精製し;さらに前記核酸をアッセイして汚染物質を同定することを含む。
さらにまた別の実施態様では、本発明は哺乳動物で遺伝的異常(genetic disorder)を同定する方法を提供する。前記方法は、細胞を含む生物学的サンプルを入手し;界面活性剤を含む溶解溶液を前記サンプルに添加し、それによって細胞又はウイルスを溶解して溶解物を形成し;核酸を凝集又は沈殿させるために十分な量のアルコールを前記溶解物に添加し;前記混合物をガラス繊維フィルターでろ過することによって溶解物-アルコール混合物から核酸を精製し;さらに前記核酸をアッセイして遺伝的異常を同定することを含む。
別の実施態様では、本発明はサンプルから核酸を抽出するためのキットを提供する。前記キットは、界面活性剤を含む溶解溶液及びガラス繊維フィルターを含む。
【0005】
発明の詳細な説明
本発明は、DNA及びRNAの両方を同時に含むサンプルからDNA及びRNAの双方を迅速に効率的に(すなわち1つの方法を用いて)抽出する、本発明者らによる驚くべき方法の発見を基にしている。意外にも、サンプルを界面活性剤で溶解し、存在する一切の核酸をアルコールの添加により凝集又は沈殿させ、さらに前記混合物をガラス繊維フィルターからろ過することにより前記溶解物から核酸を分離することによって、サンプルからDNA及びRNAの双方を分離、すなわち精製することができるということが発見された。
本抽出及び精製方法は自動化に適している。抽出された核酸は核酸増幅技術、例えばPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)又はRT-PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)に適合する。
【0006】
核酸の抽出
ある実施態様では、本発明は核酸を抽出する方法を提供する。前記核酸にはデオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)が含まれる。
サンプルから核酸を抽出する方法の第一の工程は、細胞又はウイルスを含むサンプルを入手することである。細胞又はウイルスを含む任意のサンプルを本発明の方法にしたがって利用することができる。細胞又はウイルスを含むサンプルの例には、生物学的サンプル及び非生物学的水性サンプルが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
細胞又はウイルスを含むいずれの生物学的サンプルも本発明の方法で使用するために適切である。本明細書で用いられる生物学的サンプルには、例えば体液、組織及び細胞が含まれる。生物学的サンプルのいくつかの具体的な例には、血液、血漿、尿、唾液、膣液、脳脊髄液、血清、上皮細胞、免疫細胞、頬の切屑、子宮頚管組織の切屑などが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
前記生物学的サンプルは当業者に公知の任意の方法によって入手することができる。適切な方法には、例えば血液サンプルを得るための静脈穿刺及び頬のサンプルを得るための頬の細胞の掻きとりが含まれる。
前記サンプルは細胞を含むことができる。前記細胞は当業者に公知のいずれの細胞でもよい。本明細書で用いられる“細胞”という用語には、個々の細胞及び組織の部分である細胞が含まれる。細胞は体液中に存在していてもよい。個々の細胞には、とりわけ、上記に記載した細胞(例えば上皮細胞、免疫細胞など)が含まれる。
【0007】
“細胞”という用語にはまた、完全な又は部分としての微生物が含まれる。前記微生物は典型的には病原性である(すなわち病気を引き起こす)が、非病原性であってもよい。微生物の例には細菌、寄生虫、菌類、藻類などが含まれる。
細菌は当業者に公知の任意の細菌でよい。細菌のいくつかの例にはボレリア、レプトスピラ、マイコバクテリアなどが含まれる。
寄生虫は、種々の生物の体内で成長し養われ又は身を隠すが、典型的にはその宿主の生存に対して悪影響を与える。当業者に公知の任意の寄生虫の核酸も本発明の方法にしたがって抽出することができる。寄生虫のいくつかの例には住血吸虫、リーシュマニア、トリコモナス、プラスモジウム(例えばマラリア)、トキソプラズマ、クリプトスポリジウム、及びエントアメーバなどが含まれる。
菌類は、葉緑素及び脈管組織を欠き、一般的には単細胞から分枝した糸状の菌糸をもつ塊まで形態的に範囲が広い真核生物である。当業者に公知の任意の菌類を本発明の方法にしたがって用いることができる。菌類のいくつかの例には、粘菌及び酵母(例えばカンジダ、サッカロミセスなど)が含まれる。
藻類は、一般的には光合成を行う水生真核生物である。前記藻類は当業者に公知の任意の藻類でもよい。藻類の例には藍色細菌が含まれるが、ただし前記に限定されない。
さらにまた、サンプルにはウイルスを含むことができる。当業者に公知の任意のウイルスの核酸を本発明の方法にしたがって抽出することができる。そのようなウイルスにはDNAウイルス及びRNAウイルスが含まれる。
【0008】
DNAウイルスの例には、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、パポーバウイルス、ヘパドナウイルス(例えばB型肝炎ウイルス)及びパルボウイルス(例えばB19パルボウイルス)が含まれる。RNAウイルスの例には、ピコルナウイルス(例えばA型肝炎ウイルス)、カルシウイルス、トガウイルス、フラビウイルス(例えばC型肝炎ウイルス及び西ナイルウイルス)、コロナウイルス、レオウイルス、ラブドウイルス、フィロウイルス、パラミクソウイルス、オルトミクソウイルス、ブンヤウイルス、アレナウイルス及びレトロウイルス(例えばヒト免疫不全ウイルス)が含まれる。
サンプルは任意の生物から得ることができるが、また、生物が適切に小さなサイズであれば全生物であってもよい。適切な生物の例には、微生物、及び哺乳動物、鳥類、水生動物(例えば魚)又は節足動物由来の組織、体液、及び菌類が含まれる。微生物には上記に記載したものが含まれる。
前記哺乳動物は当業者に公知のいずれの哺乳動物でもよい。哺乳動物には、例えばヒト、ヒヒ及び他の霊長類とともに愛玩動物(例えばイヌ、ネコ)、実験動物(例えばラット及びマウス)及び農場動物(例えばウマ、ヒツジ及び乳牛)が含まれる。
ある実施態様では、前記サンプルは、細胞及び/又はウイルスによる汚染が疑われる非生物学的水性サンプルである。前記サンプルは、例えば飲用水及び水の集まる所(例えば湖、小川、川、海など)から得ることができる。水サンプル中の細胞又はウイルスから核酸を抽出するこことは、例えば下記で考察するように飲用水を汚染について検査するために有用である。
【0009】
種々のタイプのサンプルから核酸を抽出するには、本発明の方法で使用されるサンプルを調製するために種々のタイプのサンプル調製物が要求され得ることは当業者には理解されよう。適切な調製技術のいくつかの例には、種々のタイプの緩衝液系、溶液などの添加が含まれる。
また別の適切な調製技術にはサンプルから細胞を排除することが含まれる。例えば、血清サンプルを調製するためには、細胞は、通常(必ずというわけではないが)サンプルから(例えば全血サンプルから)除去される。細胞は、当業者に公知の任意の方法によってサンプルから除去することができる。例えば、遠心又はろ過を用いて、無細胞サンプルを調製することができる。例えば、血清は、一般的には、細胞成分の除去のために遠心によって凝血から得られる。血漿は、抗凝固剤が血液に添加されるという点を除いて、通常は血清と同様な態様で得られる。
別の実施態様では、前記方法は、場合によってサンプル中の細胞又はウイルスを濃縮する工程をさらに含む。当業者に公知の任意の濃縮方法を用いることができる。適切な濃縮方法には、ポリエチレングリコールの使用が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
典型的には本方法で使用される適切な濃縮は、部分的にはサンプルの性質に左右されるであろう。前記濃縮方法は、例えば、サンプルが細胞、ウイルス又はその両方を含むか否か、又は細胞のタイプなどに左右され得る。
第一の実施態様では、サンプル(ウイルスを含むサンプルを含む)はポリエチレングリコールで濃縮される。ポリエチレングリコールのいずれのポリマーも本発明の方法で有用である。例えばポリエチレングリコールは、約120、好ましくは約5,000、より好ましくは約7,000の最小の分子量を有することができる。ポリエチレングリコールの最大の分子量は約10,000、好ましくは約9,500、より好ましくは約9,000であり得る。上記の最小分子量及び最大分子量を任意に組み合わせて、ポリエチレングリコールの適切な範囲を提供することができる。好ましくは、ポリエチレングリコールは約8,000の分子量を有する。
第二の実施態様では、硫安が細胞又はウイルスの濃縮に用いられる。本発明の方法で使用される硫安の適切な濃度は、例えば約5%から約50%(v/v)であり得る。
第三の実施態様では、遠心及び/又は超遠心がサンプル中の細胞又はウイルスの濃縮に用いられる。適切な遠心条件(例えば時間、速度、温度など)は当業者が決定することができる。典型的には、遠心は細胞を濃縮するためであり、一方、超遠心はウイルスを濃縮するために用いられる。
【0010】
本方法の第二の工程では、界面活性剤を含む溶解溶液をサンプルに添加することにより溶解物が形成される。前記溶解溶液は、前記細胞又はウイルスを溶解するために十分な量で添加される。本明細書で用いられる“溶解する”とは、一般的に細胞又はウイルスの構造成分(例えばウイルスエンベロープ及びキャプシド、細胞膜、凝固タンパク質など)の物理化学的破壊を指す。
本発明の方法で有用な溶解溶液は、脂質を可溶化することができる界面活性剤を含む。界面活性剤には、ドデシル硫酸ナトリウム(すなわちラウリル硫酸ナトリウム)、トリ-N-ブチルホスフェート、ブリジ-35、オクチルβ-グルコシドなどが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
前記溶解溶液は、当業者に公知の方法により前記サンプルと接触させられる。典型的には、溶解溶液は、細胞及び/又はウイルスを破壊するために十分な時間及び温度でサンプルとインキュベートされる。一般的には、溶解溶液はピペットでサンプルに添加される。適切なインキュベーション条件(例えば時間、温度など)は、当業者は容易に決定することができる。一般的には、サンプルは、溶解溶液とともに少なくとも1分以上、通常は4℃から90℃の温度で、攪拌しながら又は攪拌しないでインキュベートされる。攪拌の例には、振盪、かき回し、振動、渦巻き攪拌又は任意のタイプの機械的混ぜ合わせが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
溶解溶液中の界面活性剤の濃度は、種々の因子(例えば界面活性剤の強度、インキュベーションの条件など)に左右される。例えば、界面活性剤の濃度は、一般的に約0.1%から約10%(v/v)の範囲である。
【0011】
ある実施態様では、前記溶解溶液はさらにプロテイナーゼを含む。典型的には、プロテイナーゼはタンパク質の消化のために有用である。プロテイナーゼは特に、核酸がタンパク質と結合している、細胞又はウイルスを含むサンプルについて本発明の方法で有用である。そのようなウイルスの例はB型肝炎である。
当業者に公知のいずれのプロテイナーゼも用いることができる。適切なプロテイナーゼの例には、プロテイナーゼK、ペプシン、トリプシン、キモトリプシンなどが含まれる。溶解溶液中のプロテイナーゼの最低量は一般的に約0.1mg/mL、好ましくは約0.4mg/mL、より好ましくは約0.7mg/mLである。溶解溶液中のプロテイナーゼの最高量は一般的に約10mg/mL、好ましくは約7mg/mL、より好ましくは約5mg/mLである。上記の最低量及び最高量を任意に組み合わせてプロテイナーゼの範囲を提供することができる。通常は、前記溶解溶液は約1mg/mLのプロテイナーゼを含む。
溶解物を形成した後、核酸を抽出する方法の次の工程は、前記溶解物にアルコール、特に水溶性アルコールを添加することである。当業者に公知のいずれのアルコールも本発明の方法にしたがって用いることができる。アルコールの例には、エタノール、イソプロパノールなどが含まれるが、ただしこれらに限定されない。有用なアルコールのまた別の例はメタノールである。溶解物へのアルコールの添加は、一般的に溶液からの核酸の凝集又は沈殿をもたらす。
溶解物へ添加されるアルコールの濃度及び量は、核酸を凝集又は沈殿させるために十分な任意の濃度及び量であり得る。そのような濃度及び量を当業者は容易に決定することができる。
【0012】
アルコールの実際的な量は、当業者に周知の多様な因子、例えば用いられる個々のアルコール、添加されるアルコールの濃度、溶解溶液の体積、及び溶解に付されるサンプルのタイプ及び調製にしたがって変動するであろう。溶解物に添加されるアルコールは100%アルコールであっても、又はアルコールと水の溶液(例えば50%、70%又は95%アルコール溶液)であってもよい。例えば、100%アルコールの場合、添加されるアルコールの量は、溶解物溶液の体積の約1/10から約2倍、場合によっては溶解物溶液の体積の約1/2である。
核酸を抽出する方法の最終工程は、前記溶解物-アルコール混合物から核酸を精製することを含む。前記核酸は、ガラス繊維フィルターで混合物をろ過することによって、前記溶解物アルコール混合物の非核酸部分から核酸部分を分離させることにより精製される。これらのフィルターは、硼珪酸ガラスから製造された微小繊維フィルターである。前記ガラス繊維フィルターは、高流速及び高結合性能を可能にする。適切なガラス繊維フィルターには、例えばワットマン(Whatman, Clifton, NJ)から市販されているGF/Fタイプが含まれる。
ガラス繊維フィルターの最小孔サイズは約0.4μm、好ましくは約0.6μmである。最大孔サイズは約1.2μm、好ましくは約1.0μm、より好ましくは約0.8μmである。上記の最小値及び最大値を任意に組み合わせて前記フィルターの孔サイズの適切な範囲を提供することができる。好ましくは、孔サイズは約0.7μmである。
前記フィルターは溶解物-アルコール混合物の通過を可能にする。溶解物-アルコール混合物の通過は力を適用することによって促進することができる。例えば、フィルターの下に陰圧を提供するか、フィルターの上に陽圧を提供する装置を用いて、必要な力を提供しアルコール溶液のフィルター通過を促進することができる。
【0013】
ろ過工程では、例えば真空多岐管を取り付けたマルチウェルろ過プレートを利用することができる。前記ろ過プレートは、そのフィルター成分として本発明の方法のガラス繊維フィルターを有している。使用に適したろ過プレートは市場で入手できる。例えば、96ウェルのガラス繊維フィルタープレートGF/Fタイプは、ワットマン(Whatman, Clifton, NJ)から市販されている。96ウェルより多い又は少ないウェルを含むプレートもまた適切で、使用者の必要性に応じて製作し提供することができる。
マルチウェルろ過プレートを収納できるように設計された真空多岐管は市場で入手でき、多数のサンプルを処理するために日常的に使用される。例えば、ミリポア社(Millipore)によって供給される真空多岐管を用いることができる。マルチウェルろ過プレートは、多岐管プレート支持台(その縁の周囲に密閉ガスケットを有する)上に前記プレートが乗るように配置される。
マルチウェルプレート(例えば96又は386ウェルプレート)は同時に多くのサンプルを処理することを可能にする。そのようなプレートが真空多岐管にはめ込まれると、サンプルは全ウェルを同時に通過する。したがって、本発明の方法は実験室ロボット工学を用いる自動化に適応させることができる。
例えば、サンプルは、真空ユニットと結合させた自動液体操作システムを用いて処理され、各ウェルからサンプルを排出させることができる。核酸抽出を自動化しえる能力は、例えば多くのサンプルを迅速に処理する必要があるスクリーニング(例えば血液スクリーニング、又は遺伝的スクリーニング)では重要な利点である。
【0014】
ガラス繊維フィルターを通る溶解物-アルコール混合物の流れ又は通過を促進するために適用することができる他の力には、フィルタープレートの上部の陽圧、遠心又は重力の使用が含まれる。多数のサンプルを同時に処理するためにプレートローターを用いる特別に設計された遠心システムを有するマルチウェルプレートを用いてもよい。
前記混合物をガラス繊維フィルターからろ過することによって前記溶解物-アルコール混合物から核酸を精製した後、ガラス繊維フィルターに結合した核酸を場合によって洗浄緩衝液で洗浄する。加圧装置を用いて、ガラス繊維フィルターを通る前記洗浄緩衝液の流れ又は通過を促進することができる。また別には、真空、遠心又は重力を用いて、洗浄緩衝液の通過を促進することができる。
前記洗浄緩衝液は、当業者に公知の任意の核酸洗浄緩衝液でもよい。好ましい洗浄緩衝液は、約10%から約100%のエタノール、場合によって約50%から約70%のエタノールを含む溶液である。前記洗浄緩衝液はさらに、約10から約1000mMのNaCl、10mMのトリス塩酸及び2mMのEDTA、場合によって100mMのEDTAを含む。当業者に公知の他の塩、緩衝液キレート剤及びアルコールも適切である。洗浄緩衝液は、典型的には前記結合核酸上を少なくとも1回、一般的には2回以上通過する。結合核酸を洗浄する回数は、多数の因子(例えば溶解物-アルコール混合物の組成及び体積)に左右される。
結合核酸を含むガラス繊維フィルターは場合によって乾燥させることができる。ガラス繊維フィルターは当業者に公知の任意の方法によって乾燥させることができる。例えば、前記フィルターは、典型的には90℃未満の温度の熱により通常は1分以上乾燥させることができる。乾燥条件は、核酸を破壊又は変性させないように選択される。フィルターを乾燥させる他の方法には風乾、デシケーターの使用などが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0015】
乾燥後、前記フィルターに適切な溶出溶液を通すことによって核酸をフィルターから溶出させることができる。前記溶出溶液は、好ましくは低イオン強度を有する。したがって、前記溶出溶液中の塩及び他のイオン化合物の濃度は最小限で維持される。そのような溶出溶液の例は無ヌクレアーゼ水であり、前記は、場合によって約0.01%から2.00%のトゥイーン20、場合によって約0.02%から約0.1%のトゥイーン20を含む。
核酸は、前記マルチウェルろ過プレート(上記記載)の下のマルチウェル採集プレートに溶出させることができる。前記マルチウェル採集プレートは真空又は加圧多岐管に、フィルターを通過する液体サンプルを採集することができるような配置ではめ込まれている。マルチウェル採集プレートは市場で入手できる。例えば、96ウェルプレートがBecton Dickison and Company(Franklin Lakes, N.J.)からマイクロテストRTMの名称で販売されている。また別には、組織培養プレートを用いてもよい。
一般的には、採集プレートは、マルチウェルろ過プレートのウェルに適合するウェルを有し、前記ろ過プレートの下に、核酸がガラス繊維フィルターを通過するときにそれら核酸を採集できるような配置ではめ込まれる。これらのプレート(ろ過プレート及び採集プレートの両方)は、嵌合した状態で重ね合わされて真空多岐管にはめ込まれる。
採集プレートは市場で容易に入手できる。しかしながら、上記で考察した96ウェルろ過プレートに関しては、採集プレートもまた、使用者の要請に応じて、より大きな又は小さな体積のより多くの又は少ないウェルを有するように調整することができる。
抽出した核酸は、例えば下記で述べる方法で利用することができる。
上記に記載した抽出方法でDNA及びRNAの双方を意外にも効率的に単離できることが判明した。他の標準的なアッセイは、一般的にはDNAを効率的に単離するために1つの方法を必要とし、さらにRNAを効率的に単離するために別個の方法を必要とする。
【0016】
サンプル中の病原体の同定
ある実施態様では、本発明はサンプル中の病原体を同定する方法を提供する。本方法の第一の工程は、サンプル中の細胞又はウイルスから核酸を抽出することである。核酸は上記に記載した抽出方法にしたがって抽出される。
いったんサンプルから核酸を抽出したら、病原体を同定する本方法の次の工程はこの核酸をアッセイすることである。核酸は当業者に公知の任意の方法によってアッセイすることができる。
典型的には、前記核酸は核酸増幅及び/又は他の標準的な分析技術に付される。例えばPCR又はRT-PCR法を利用する核酸増幅系は当業者には公知である。核酸増幅技術及び病原体の診断のためのそれら技術の応用についての概論については、例えば以下を参照されたい:Dieffenbach et al. PCR Primer: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1995);Clewley, The Polymerase Chain Reaction (PCR) for Human Viral Diagnosis, CRC Press, Boca Raton, FLa., Chapter 5 (1995)。
PCR法を利用する核酸増幅系は既に自動化されている。上記で考察したように、核酸の抽出のための本発明の方法もまた自動化することができる。核酸増幅技術の自動化と合体させた核酸の抽出及び精製の自動化は、たとえ極めて低レベルであってもサンプル中に存在し得る病原体(例えばウイルス、細菌、菌類又は寄生虫)について、多数のサンプル(例えば血液)を短時間でスクリーニングするために前記の方法を使用することを可能にする。
核酸増幅の生成物(アンプリコン)及び、したがって前記核酸が由来した病原体の正体は、例えばハイブリダイゼーション技術によって決定できる。一般的には、ハイブリダイゼーション技術は、公知の核酸配列と相補的であり、前記のみとハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを利用する。前記オリゴヌクレオチドプローブはRNAでもDNA分子でもよい。
【0017】
ある核酸とオリゴヌクレオチドプローブとのハイブリダイゼーションのアッセイを目的とする方法を利用することができる。例えば、サザンハイブリダイゼーション(サザンブロッティング)技術は、そのような技術の特によく知られた例である。前記サザンブロット技術は、核酸アンプリコンを制限エンドヌクレアーゼで切断し、切断したフラグメントをゲル電気泳動で分離し、特異的なオリゴヌクレオチドプローブで探査し、ハイブリダイゼーションの存在を検出することを含む。他の関連する方法も当業者には公知である。例えば以下を参照されたい:Sambrook et al. Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor(1989)。
オリゴヌクレオチドの長さは、前記が標的分子とハイブリダイズすることができる限り特に重要ではない。前記オリゴヌクレオチドは、少なくとも6ヌクレオチド、好ましくは少なくとも10ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも15ヌクレオチドを含むべきである。オリゴヌクレオチドプローブの長さに上限はない。しかしながら、長いプローブは調製が困難であり、より長いハイブリダイゼーション時間を必要とする。したがって、プローブは必要以上に長くあるべきではない。通常は、オリゴヌクレオチドプローブは50ヌクレオチド未満、好ましくは40ヌクレオチド未満、より好ましくは30ヌクレオチド未満を含む。
そのようなプローブは、当分野で公知の方法にしたがって検出することができるように、例えば放射能標識、酵素、発色団、蛍光発光団などで標識されていてもよい。標識の検出は、オリゴヌクレオチドと核酸とのハイブリダイゼーションを示す。したがって、標識の検出は、サンプルが前記オリゴヌクレオチドプローブに固有の特定の病原体を含むことを示し、したがってサンプル中の病原体が同定される。
【0018】
また別に、特異的病原体に対する特定のオリゴヌクレオチドプローブとのハイブリダイゼーションが検出できないということは、前記オリゴヌクレオチドプローブが特異性を有する特定の病原体について検出可能な量の核酸を前記サンプルが含まないことを示している。
核酸をアッセイするためのまた別のアプローチは、共通又はユニバーサル分子信号の使用である。そのような方法は、例えば以下の文献に記載されている:Tyagi & Kramer, Nature Biotechnology 1996, 14:303-308;米国特許出願公開第20040053284号(Andrus & Nichols, New York Blood Center, New York, N.Y.)。
簡単に記せば、分子信号は、ステム及びループ構造を形成する一本鎖オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブである。前記ループは標的配列と相補性のプローブ配列を含む。前記ステムは、プローブ配列のどちらかの側の相補性アーム配列とアニーリングすることによって形成される。典型的には、蛍光発光団が一方のアームの末端に共有結合されてあり、クェンチャーが他方のアームの末端に共有結合されている。前記分子信号は、ステム-ループ構造及び蛍光発光団の消光のために溶液中で遊離しているときは蛍光を発しない。しかしながら、分子信号が標的配列を含む核酸とハイブリダイズすると、前記分子信号は蛍光を発することができる構造的変化を受ける。
【0019】
分子信号プローブは、核酸(例えばPCR増幅生成物)の検出を可能にする任意の態様で改変することができる。改変プローブには、例えば米国特許6,037,130号(前記文献は参照により本明細書に含まれる)に記載されている“波長シフト”分子信号プローブが含まれる。特に、これらの改変プローブは、基本的な分子信号プローブ構造、すなわちループ;ステムデュープレックス;一方の末端にクェンチャー;及び他方の端にクェンチャーに向かい合ってレポーター部分(典型的には蛍光発光団)を有する。前記レポーターは“ハーベスターレポーター”と称される。前記プローブの改変は、プローブが“ハーベスターレポーター”を超えて数ヌクレオチドの伸長を含むということである。前記伸長は、“エミッターレポーター”(典型的にはまた別の蛍光発光団)と連結されているヌクレオチド内で終わる。標的核酸分子の存在下では、クェンチャーはレポーターから離れる。この開放構造では、“ハーベスターレポーター”は励起源から発するエネルギーを吸収するが、このエネルギーのかなりの部分(いくつかの構築物ではこのエネルギーの大半)を“エミッターレポーター”に伝達する。前記“エミッターレポーター”はこの伝達されたエネルギーを受け取り、前記エネルギーをその特徴的なより長い波長で放出する。
分子信号は、典型的には、プローブと標的配列との間の少数のヌクレオチドミスマッチに対して鋭敏である(Tyagi et al. 1998, Nat Biotechnol, 16:49-53)。分子信号技術は、例えば極めて多様なウイルス変種の検出にも使用できるように改変することができる。例えば、米国特許出願10/399,843号(Andrus & Nichols)(米国特許出願公開第20040053284号(Andrus & Nichols, New York Blood Center, New York, N.Y.))は、フォワード及びリバースプライマーの使用を開示している。前記プライマーは、標的配列上で“ぴったりと向かいあって”並ぶ(すなわち2つのプライマーのハイブリダイゼーション部位の間には介在ギャップはまったく存在しない)。前記分子信号プローブは、2つのプライマー接合部を超えて非対称的にハイブリダイズするように設計される。PCRプライマーは、ヌクレオチドミスマッチの存在下で標的配列とハイブリダイズし、この標的配列の増幅を開始させる。この“ぴったりと向きあった”プライマーの構造のために、増幅されたPCR生成物は、前記分子信号プローブとヌクレオチド配列同一性を共有する。
【0020】
したがって、例えばユニバーサル信号RT-PCRアッセイは、極めて多様な株(例えばHIV-1の全ての主要遺伝型(例えばOグループ)及びHCVの全てのサブタイプを含む)を検出するように発展させることができる。高度に多様なウイルス株の検出を目的とする適切なユニバーサル信号RT-PCRアッセイの例は、米国特許出願10/399,843号(米国特許出願公開第20040053284号)に記載されている。
好ましい実施態様では、多重PCRが用いられる。このアッセイでは、PCR混合物は、多数の病原体の核酸に対して作成されたプライマー及びプローブを含む。典型的には、ただ1つの蛍光発色団がアッセイで用いられる。したがって、陽性シグナルの検出は、前記病原体のいずれかが存在することを示す。
検出された特異的病原体の正体は、例えば検査されている病原体の各々に対する個々のPCR反応を実施するか、又はアンプリコンを標識し、前記アンプリコンを固定した種々の標的とハイブリダイズさせることによって決定することができる。前記標的は、例えばニトロセルロース、DNAチップ、マイクロビーズなどに固定することができる。
PCRをベースにした他の方法もまた、サンプル中の病原体を同定するための核酸アッセイに利用することができる。そのような方法の例には、ゲル分析、タクマン(Taqman(商標))などが含まれる。
【0021】
水性の非生物学的サンプル中の汚染物質の同定
別の実施態様では、本発明は、細胞、ウイルス又は細胞及びウイルスの双方を含むことが疑われる、又は前記を含むことが判明している水性の非生物学的(すなわち水)サンプル中の生物学的汚染物質を同定する方法を提供する。したがって、水(例えば飲用水、湖など)を生物学的汚染物質について検査し、飲用又はレクリエーション(例えば水泳)のための水の安全性を確認することができる。生物学的汚染物質には細胞又はウイルスが含まれ得る。水の生物学的汚染物質の例には、細菌(例えば大腸菌、大腸菌型など)、藻類(例えば藍色植物、藍色細菌など)、菌類(フィアロフォラ(Phialophora sp.)、エキソフィアラ(Exophiala sp.)及びアクレモニウム(Acremonium sp.))、寄生虫(例えばクリプトスポリジウム、リーシュマニア、ランベル鞭毛虫(Giardia lamblia)、アメーバ、鞭毛虫など)及びウイルスが含まれる。
本方法の第一の工程は、サンプル中の細胞又はウイルスから核酸を抽出することである。前記核酸は、上記に記載した抽出方法にしたがって抽出される。
汚染物質を同定するために、核酸は、例えば当業者に公知のPCRをベースにした方法によってアッセイすることができる。適切なアッセイ方法には上記に記載した方法が含まれる。
【0022】
遺伝的異常の同定
別の実施態様では、本発明は、哺乳動物で遺伝的異常を同定する方法を提供する。本方法の第一の工程は、サンプル中の細胞から核酸を抽出することである。核酸は上記に記載した抽出方法にしたがって抽出される。好ましくは、細胞は哺乳動物(通常はヒト)から入手される。
遺伝的異常を同定するために、核酸は、当業者に公知の任意の方法によってアッセイされる。適切なアッセイ方法には上記に記載した方法が含まれる。
いずれの遺伝的異常も、本発明の方法にしたがって同定することができる。遺伝的異常の例には、血友病、鎌状赤血球貧血、ダウン症候群、癌、癌の素因(例えばBRCA1遺伝子のアッセイ)、テイ-サックス(tay-sachs)、嚢胞性線維症、脳性麻痺、マルファン症候群などが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
キット
また別の実施態様では、本発明は、サンプルから核酸を抽出するためのキットを提供する。前記キットは溶解溶液及びガラス繊維フィルターを含む。前記溶解溶液は界面活性剤を含む。前記キットは場合によって以下の1つ以上を含む:アルコール、プロテイナーゼ、洗浄緩衝液、溶出緩衝液及び容器(例えば試験管、マルチウェルプレートなど)。
前記溶解溶液、界面活性剤、ガラス繊維フィルター、アルコール、プロテイナーゼ、洗浄緩衝液、溶出緩衝液、及び容器は上記に記載されている。
【0023】
実施例
実施例1:材料
西ナイルウイルス(ハワイ株)を以下の機関(New York State Department of Health)から入手し、Vero細胞で培養した。感染性ウイルス粒子の量は、通常のプラークアッセイで決定した(Beaty et al. Arboviruses, p.797-856.(In N.J. Schmidt and R.W. Emmoms (ed.), Diagnostic procedeures for viral, rickettsial and chlamydial infections. American Public Health Association, Washington, D.C. 1989))ウイルスゲノム等価物の量は、定量標準としてWNV RNA定量パネル、QWN702(BBI Diagnostics, West Bridgewater, MA)を用いて定量的RT-PCRによって確認した。
ニューヨーク血液センターからHBV感染血漿及びHCV慢性感染血液ドナーの血漿が提供された。HIVストックは、HIV感染ヒト末梢血のリンパ球培養の無細胞上清であった。
予め血液媒介病原体について検査した正常なヒト血漿を、陽性サンプル又は補填(spiked)サンプルの段階希釈に用いた。
実施例2:血漿中の多数のウイルスゲノムの抽出
96ウェル2.2mLの保存用プレート(ABgene, Surrey, KT, UK)に種々の体積のHBV-、HCV-、HIV-及びWNV-サンプルのアリコットをピペットで移した。直接抽出に用いる血漿の体積は150から450μLの範囲であった。
プロテイナーゼK(Qiagen, Chatsworth, CA)及びAL溶解緩衝液(Qiagen, Chatsworth, CA)を最適化量(表1)で加え、簡単に混合した。プレートを振盪水浴で58℃にて25分間インキュベートした後、予め定めた量の無水エタノール(表1)を溶解物とともに穏やかに混合した。上記調製物を0.7μmのガラス繊維フィルタープレート(GF/F, Whatman, Clifton, NJ)に移し、-450mm Hgの真空でろ過した。前記移動は、前記溶解調製物の全体積に応じて1回から3回のピペット操作で完了させた。前記充填フィルタープレートを続いてAW2洗浄緩衝液(Qiagen, Chatsworth, CA)で同じ真空設定で洗浄した。洗浄体積及び洗浄の繰り返しは最初のサンプルの体積に左右される(表1)。洗浄後、-350mm Hgの真空を前記フィルタープレートに10分間適用し、残留する洗浄溶液を除去した。続いて、真空を適用せずにプレートを10分間室温で維持し、最後の風乾に付した。0.05%トゥイーン20を含む無ヌクレアーゼ水(65−100μL)を-350mm Hgの真空でろ過することによって、精製核酸をU-底の96ウェルプレート又はPCRプレートに溶出させた。











【0024】
表1:GF/F方法で種々の体積の血漿を抽出するための条件

【0025】
ピペット操作及びろ過は手動で実施するか、又はGenesis RSP120及びGenesisワークステーション200(Tecan, Maennedorf, Switzerland)を用いて自動化した。
核酸の増幅及び検出は、Leeら(Stabilized viral nucleic acids in plasma as an alternative shipping method for NAT. Transfusion 42:409-413, 2002)が記載したように、所内のPCR反応およびサイクル条件にしたがって実施した。
分子信号技術(Tyagi and Kramer, Molecular beacons:probes that fluoresce upon hybridization. Nature Biotechnology 14:303-308, 1996)を利用して、PCRアンプリコンを検出及び定量した。プライマー及び分子信号は、HCV、HIV及びWNVの一般的な株の全ての検出に適切なように設計した。プライマーの標的は、HCV及び西ナイルウイルス(WNV)の5'-UTR非翻訳領域、HIVのgag-及びpol-遺伝子、並びにHBVの表面抗原をコードする遺伝子内に存在していた。
光の放出は、アニーリング工程の温度サイクル毎にモニターした。配列検出v1.63ソフトウェアプログラム(PE-Biosystems, Foster City, CA)は、PCR中の鋳型の増幅の結果であるサイクル間の蛍光シグナルにおける変化を解析し、段階希釈した公知の合成RNA又はプラスミドDNA標準物サンプルから作成した曲線と未知物質を比較することによって標的の鋳型のコピー数を決定する。全ての標準物について、コピー数決定用EUROHEPパネル(CLB, Netherlands)を用いて目盛り定めを実施した。
保護キャプシド及びエンベロープからのウイルスRNA及びDNAの遊離は、プロテイナーゼKと一緒にAL緩衝液を用いることによって達成された。AL緩衝液中のRNAの安定性を判定し、グアニジンチオシアネートに匹敵することが見出された(データは示されていない)。核酸の捕捉、洗浄及び溶出は、ガラス繊維フィルターの真空ろ過によって達成された。結果は表2に示されている。






【0026】
表2:GF/FプロトコルとQiagenキットを用いて決定した血漿ウイルス量の比較

1正常血漿中の陽性サンプルの希釈。各ウイルスの10倍段階希釈は103から108コピー/mLを含むように選択した。
2150μLの血漿を、プロテイナーゼK/AL緩衝液溶解及びワットマン96ウェルガラス繊維フィルタープレートによるろ過によって抽出した(n=8)。
3140μLのHCV及びHIV血漿をQiaAmp RNAキットを用いて抽出した。200μLのHBV血漿をQiaAmp DNAキットに適用した(n=8)。
4ゲノム量は定量的リアルタイムPCRによって決定し、log10コピー/mLで表した。
5GF/Fの結果をQiagen抽出キットで得られた結果で割り、参照方法と比較したガラス繊維法の相対的抽出効率を決定した。
【0027】
実施例3:核酸抽出の再現性
これらの定量的検査結果の再現性をアッセイ内及びアッセイ間変動について評価した。表3は、例としてHCVについて、GF/F及びQiagen抽出後に得られたPCRに対して算出した変動係数を示す。アッセイ内変動は両方法について類似していた。しかしながら、アッセイ間でのPCRの結果はQiagen法ではきわめて低い一定性を示した。自動抽出と同様に手動抽出後の核酸の回収も一定しており、信頼できることが証明された。
表3:GF/F抽出及びQiagen抽出後に得られたHCVのPCRの結果に対して決定したアッセイ内及びアッセイ間変動

(1)変動係数は、各セットの8つの値について算出した。検査は、同じHCV感染血漿(正常ヒト血漿で1/100に希釈)のアリコットを使用し、4人の別個の技術者によって異なる時に実施された。
【0028】
実施例4:核酸の回収に対するPEGの影響
WNVサンプルのアリコットを96ウェルの2.2mL保存用プレート(ABgene, Surrey, KT, UK)にピペットで加え、種々の量の37% PEG8000ストック溶液と混合した。血漿-PEG調製物の全体積は抽出当たり2.0mLであった。PEGをサンプルと混合した後、RTで10−30分接触させ、その後1500gで3分遠心した。続いて情勢の1.8mLを廃棄して体積を200μLに減らして、ある程度の残留液を含む眼に見えるペレットを残した(体積は10倍減少)。
40μLのプロテイナーゼK(Qiagen, Chatsworth, CA)及び270μLのAL溶解緩衝液(Qiagen, Chatsworth, CA)を添加し混合した。続いて、加熱消化のためにプレートを58℃、25分水浴中でインキュベートした。その後、穏やかに270μLの無水エタノールを溶解物と混合した。全体積が780μLの抽出調製物を0.7μmのガラス繊維フィルタープレート(GF/F, Whatman, Clifton, NJ)に移し、-450mm Hgでろ過した。前記充填フィルタープレートを600μLのAW2洗浄緩衝液(Qiagen, Chatsworth, CA)を用いて同じ真空設定で1回洗浄した。洗浄後、-350mm Hgの真空を前記フィルタープレートに10分間適用して、残留する洗浄溶液を除去した。その後、真空を適用せずに室温でプレートを維持して、最後の風乾を実施した。0.05%のトゥイーン20を含む無ヌクレアーゼ水(100μL)を有するU-底の96ウェルプレートに、精製核酸を-350mm Hgの真空ろ過によって溶出させた。また別には、溶出は、MicroAmp光学96ウェル反応プレート(PE Applied Biosystems, Foster City, CA)へ75μLのトゥイーン-水とともに直接ろ過することにより実施された。
ピペット操作及びろ過は、手動で実施するか、又はGenesis RSP150及びGenesisワークステーション200(Tecan, Maennedorf, Switzerland)を用いて自動化した。
最大の感度を達成するために、“高体積”PCR反応は、100μLの溶出物の50μLを用いて実施するか、又はそれぞれ75μLの溶出物の全体積を用いて実施した。cDNA合成のためには、30μLの逆転写(RT)ミックスを添加した(表4)。反応は、42℃で45分、続いて95℃で2分実施した。その後で40μLのPCRマスター-ミックス(表3)を添加した。Taqポリメラーゼは95℃で10分間活性化させ、標的cDNAは、それぞれ30秒の3温度工程(95℃、58℃及び72℃)の45サイクルで増幅させた。RTミックス及びPCRマスターミックスは、特に120μLの全反応体積用に最適化した。
【0029】
表4:高体積増幅用RTミックス及びPCRミックス
30μL RTミックス/反応

【0030】
40μL PCRミックス/反応

【0031】
分子信号技術(Tiyagi and Kramer, Molecular beacons:probes that fluoresce upon hybridization. Nature Biotechnology 14:303-308, 1996)を利用して、PCRアンプリコンを明らかにした。プライマーの標的は5'UTR領域に存在していた。WNVの一般的な全株の検出に適するリバースプライマー(5'-gct ctt ggg ccc tcc tg-3')、フォワードプライマー(5'-bca cga aga tct cga tgt cta aga aac-3')及び分子信号(5'-FAM cgcacg atc tcg atg tct aag aaa cc cgtgcg DABCYL-3')を設計した。
ABI Prism7700及び7900配列検出システム(PE Applied Biosystems, Foster City, CA)を増幅及び検出に用いた。増幅生成物は、定量的リアルタイムPCR又は定性的ポストPCR解析によって決定した。リアルタイムPCRの場合、配列検出v1.6.3ソフトウェアプログラム(PE-Biosystems, Foster City, CA)は、PCR時の鋳型の増幅の結果としてのサイクル間の蛍光シグナルにおける変化を解析することによって、標的の鋳型のコピー数を決定する。ポストPCR解析では、増幅前後に放出される相対的光ユニットが測定される。定性的なポスト-ラン解析のためのカットオフ値は陰性コントロールの平均シグナル+3標準偏差から算出した。
種々の量のPEG8000を血漿に添加し、ウイルス又はウイルス成分を濃縮した。PEG-血漿沈殿物を沈降させるために、我々は、溶解緩衝液中で容易に再懸濁することができる一定サイズのペレットが緩やかに形成される条件を選択した。前記沈殿物をペレットにした後、体積を200μLに減少させてサンプルを処理した。AL溶解緩衝液/プロテイナーゼK、エタノール沈殿、ろ過、洗浄及び溶出操作を、PEG-血漿沈降物から核酸を抽出するために適合させ最適化した。
溶出は、精製RNAの収量を最大にするために、それぞれ100μL又は75μLのトゥイーン-水で実施した。50μLの抽出核酸をPCR反応に利用した。
PEG8000は、ヒトの血漿サンプル中のWNVの検出を高めるために効率的な濃縮方法であることが判明した。図1は、最大量のウイルスRNAが、3%PEG8000で濃縮されたサンプルで測定されたことを示している。
最適条件を用いて、濃縮及び最初のPEG-血漿体積の1/10にサンプル体積を減少させることにより、検出可能なRNA分子の10倍の増加が測定された(図2)。HBV陽性サンプルに応用したとき、PEGはHBV DNAに対して同様な濃縮効果を与えた。
【0032】
実施例5:検出限界
検出の下方限界を判定するために、培養WNVを補填した血漿サンプルの終末点力価測定を実施した。WNV調製物のRNA分子及び感染性ビリオンの量は、BBIパネルとの比較による定量的PCR及びプラークアッセイによってそれぞれ以前に決定された。我々のストックウイルス調製物の量は、プラーク形成ウイルス粒子の数よりも740から1500倍高いことが見出された。
WNVアッセイの感度を決定するために、BBIストック(Uganda, 7.33x104コピー/mL、ロット番号101702C)を希釈し検査した。BBIストックは、陰性血漿で12.5、6.3、3.2、1.6及び0.8コピー/mLに希釈した。各希釈につき80の複製物を検査し、プロビット解析によって解析し、95%及び50%検出限界(LOD)を決定した。
典型的な結果は、下記の表5、6、7及び8に示されている。
【0033】
表5:FAM(WNV)

ウェル1A−H:内部コントロール(IC)陰性
WNVカットオフ:ウェル2A−2D(陰性血漿)の平均+5SD=1197
ウェルE2:WNV陽性コントロール〜300コピー/mL(概数)
ウェルF2:WNV陽性コントロール〜60コピー/mL(概数)
陽性WNVの結果は下線で示されている
【0034】
表6:5つのWNV希釈物を用いた感度データの要旨

*希釈物はBBIストック(Uganda, 7.33E+04コピー/mL、ロット番号101702C)から作成された。
【0035】
表7:個々のプロビット解析(SPSS 11.5)及びこれらの実験の変動係数は下記に示される:

*WNVコピー/mL
LOD=検出限界
【0036】
表8:別々の日に5枚のプレートで検査した各希釈について80複製物から計算した総合プロビット解析

【0037】
実施例6:西ナイルウイルスアッセイの具体的な説明
WNV検出のためのユニバーサル信号RT-PCR:プライマー及びプローブは、WNVゲノムの5'非翻訳領域とヌクレオキャプシド開始部位との間に広がる47ヌクレオチド長領域を標的としていた。プライマー設計及びヌクレオチドの番号付与のために用いた参照配列は、Lanciottiら(Science 286:2333-2337, 1999;Genbank AF196835)が報告したニューヨーク1999-ウマ単離株であった。前記47ヌクレオチド標的領域は、97%を超える部分が、それについてのGenbank配列情報が入手可能な系列1の全ての単離株で保存されており、さらに94%がWNV Uganda 1937(Genbank M12294)と同一である。プライマー及びプローブ配列は以下のとおりである:フォワードプライマー、5'-GCACGAAGATCTCGATGTCTAAGAAAC-3'(27量体、83−109位;G/C 44%;Tm 77℃);及びリバースプライマー、5'-GCTCTTGCCGGGCCCTCCTG-3'(20量体、110−129位;G/C 75%;Tm 84℃)。分子信号プローブ:5'6-FAM-cgcacgATCTCGATGTCTAAGAAACCcgtgcg-DABCYL-3'(WNVプローブ領域は大文字で、ステムヌクレオチドは小文字で示されている)。
デングウイルス1型内部コントロールRNAのRT-PCR:プライマーは、67bp領域(デング1型のRNA(参照配列Genbank AF513110)の3'非コード領域のヌクレオチド10632−10698)を増幅するために設計された。VIC-標識TaqmanプローブをコントロールRNA PCR生成物検出のために用いて、ABI PRISM7900HTでのIC及びWNV蛍光シグナル間の効率的な識別を可能にした。プライマー及びプローブ配列は以下のとおりであった:フォワードプライマー、5'-GCATATTGACGCTGGGAGAGA-3'(20量体、10632−10652位;G/C %;Tm 73℃);及びリバースプライマー、5'-GCGTTCTGTGCCT-3'(13量体、1686−10698位;G/C 52%;Tm 51℃)。Taqmanプローブ、5'-VIC-AGATCCTGCTGTCTCTACA-MGB-3'(19量体、10657−10675位;G/C 47%;Tm 59℃)。
サンプル源:凍結血漿サンプルを検査した。サンプルは、血液ドナーからCPDA-1抗凝固剤中に採集した全血から得た。前記を遠心し、続いて96ディープウェルプレートで-80℃で保存した。保存血漿サンプルを使用前に4℃で40−48時間融解させた。この方法で全てのWNV RNAが維持されることが見出された。
サンプル調製:サンプルの抽出は2つの液体操作系(Tecan, Genesis RSP150及びGenesisワークステーション200)で実施した。400μLの血漿サンプルを自動操作でアーカイブプレートから新しい96ディープウェルプレートに移した。4つのWNV陰性コントロール、1つのWNV陽性コントロール、及び3つの内部コントロール標的RNAを使用前に溶解緩衝液と混合する。全工程を通して抽出の間、前記をWNVサンプルと同じ態様で処理した。プロテイナーゼK及びAL溶解緩衝液をGenesisi RSP150で血漿サンプルと混合する。
前記混合物を振盪水浴中で、58℃でインキュベートする。インキュベーション後に、Genesisワークステーション200でエタノールを前記溶解物に添加する。続いて、この混合物を96ウェルガラス繊維フィルタープレートに移し、核酸結合物のために真空ろ過する。フィルターを連続して2回ろ過することにより洗浄する。前記フィルターを真空乾燥させ、さらに風乾する。無ヌクレアーゼ水を用いてWNV RNAをろ過により溶出させる。前記溶出液を、逆転写(RT)ミックスを含むPCRプレートの対応するウェルに直接採集する。
【0038】
増幅:逆転写(RT)及びPCR:RTマスターミックス及び溶出サンプルを含む上記で作成したPCRプレートを、逆転写のためにApplied Biosystemsモデル2700サーモサイクラー上でインキュベートする。RT工程の終了時に、逆転写酵素を加熱不活性化し、PCRミックスを各ウェルに添加する。前記PCR反応混合物を最初に加熱してAmpliTaqゴールドを活性化し、続いてPCRを45サイクル実施した。
検出:蛍光の読み取り及び計算:45PCRサイクルの終了時に終末点検出のために、蛍光測定サーモサイクラー(ABI PRISM 7900HT, PE-Biosystems, Foster City, CA)を用いる。WNVシグナルはFAM標識プローブで検出される。前記標識は522nmで読み取り、ICシグナルはVICで標識され、前記は554nmで読み取る。試し検査は、陰性及び陽性コントロール値が予め定められた範囲内に入る場合は有効と考えられる。検査は、陽性及び陰性サンプルが許容可能な範囲である場合は有効である。個々のサンプルについての結果は、内部コントロール(VIC)RFU値がICカットオフを超える場合は有効であると考えられる。ICカットオフは、IC陰性コントロールの平均相対蛍光ユニット(RFU)+3SDから算出される(n=3)。WNV反応カットオフは、WNV陰性コントロール平均RFU+5SDから算出される(n=4)。ICカットオフより低いRFUを有するサンプルは、WNV PCRが陽性でなければICは失敗であると考えられるであろう。陽性サンプルは、IC RFUに関系なくRFUがWNVカットオフより大きいか又は等しいサンプルである。
陽性コントロール試薬:WNV陽性コントロールWNV組織培養上清は、60℃で1時間加熱することにより不活化し、陰性ヒト血漿で希釈し(1000倍)、既知量のWNV RNAを含むパネルサンプルを用いてRT-PCRによって定量した。陽性コントロールサンプルは60RNAコピー/mLを含むように調節し、迅速凍結して単回使用のためのアリコットとして-80℃以下で保存した。アリコットは、使用当日に37℃の水浴中で振盪して融解する。
内部コントロール試薬:デング(ハワイ株)培養上清を60℃で1時間加熱して不活化し、PBS、10%ヒト陰性血漿で107pfu/mLに希釈し、1枚又は複数枚のプレートのための内部コントロールとして使用するために十分な80μLの量で分注した。アリコットは迅速に凍結して-80℃以下で保存し、使用当日に37℃の水浴中で振盪して融解する。
方法の要旨:アッセイは、400μLの血漿を用い、AL溶解緩衝液/プロテイナーゼK溶解溶液でビリオンを溶解することによって実施する。デングウイルスは、内部PCRコントロールとして用いられる。続いて、溶解物を真空下でガラス繊維プレートに真空下で吸収させ、前記を洗浄し、さらに逆転写及びPCRのために核酸を溶出させる前に乾燥させる。全てのピペット操作はTecan Genesis RFP150及び200ワークステーションで実施する。PCR増幅はABIモデル2700サーモサイクラーで実施する。増幅核酸はABI7900蛍光リーダーで検出する。内部コントロールの他に、アッセイコントロールは、陰性コントロール及び既知数のRNAコピーを含むWNV RNA陽性コントロールを含む。WNV RNA陽性は、テストサンプルの蛍光が陰性コントロールの蛍光と比較される終末点計算を用いて確認される。
【0039】
サンプル源及び調製:CODA-1抗凝固剤添加血液由来の血漿(-80℃で保存されてあった)が、この実験の供給源材料である。サンプルは4℃で40−48時間融解させ、使用前に4℃で保存することができる。
陽性、陰性及び内部コントロール:スクリーニングアッセイのために、300WNV RNAコピー/mLに一致する熱不活化WNVウイルスを含む1つの陽性コントロールウェルが用いられるであろう。4つのウェルはWNV陰性コントロール血漿を含み、さらに3つのウェルはIC陰性コントロール血漿のために用意される。前記は、溶解緩衝液で処理されるがデング内部コントロール標的を欠く。WNVのための陽性カットオフは、4つのWNV陰性コントロール平均+5SDとして算出される。デング内部コントロールのための陽性カットオフは、デングウイルスを欠く3つのIC陰性コントロールの平均+3SDとして算出される。
ビリオンの溶解:血漿サンプルに含まれるビリオンは、プロテイナーゼK及びAL溶解緩衝液の添加によって溶解され、放出された核酸は、水浴中で58℃、25分インキュベートされている間溶解緩衝液で保護される。デングウイルス内部コントロールは、この方法の全工程のための内部コントロールとして供するために、使用直前に前記溶解緩衝液に添加される。
WNV RNAの単離:無水エタノールを前記溶解物に添加し、このサンプルを自動操作によりガラス繊維フィルタープレートに移し、真空下でろ過する。続いて前記フィルターを洗浄溶液で洗浄してタンパク質及びPCRの潜在的阻害物質を除去し、乾燥させ、ヌクレアーゼを含まない水で直接96ウェルPCR反応プレートに溶出させる。
逆転写:全核酸溶出物を逆転写及びPCR増幅に付す。5xの第一鎖緩衝液、DTT、dNTP、RNase阻害物質、WNVリバース(WNV R)プライマー、デングリバース(DR)プライマー及びM-MLV逆転写酵素を含む逆転写ミックスを抽出溶出液と一緒にし、45分間42℃、続いて95℃で2分インキュベートする。
PCR増幅:WNVフォワード(WNV F)プライマー、FAM標識“ユニバーサル信号”WNVプローブ(WMV P)、デングフォワード(DF)プライマー、及びVIC標識デング内部コントロールプローブ(DP)、MgCl2、PCR緩衝液及びTaqポリメラーゼ(AmpliTaq gold)を含むPCRミックスをRTウェルに添加する。PCR反応混合物を最初に95℃10分加熱してAmpliTaq goldを活性化し、続いて45PCRサイクルを95℃、58℃及び72℃で、ABI2700サーモサイクラーで実施した。
PCR生成物の検出:標識配列が増幅されると、PCR生成物はFAM標識WNV信号プローブのループ構造と結合し、前記ステムがハイブリダイズするのを阻止し、したがってFAM(レポーター)とDABCYL(クェンチャー)が遠く離れ、蛍光が得られる。FAMは490nmで励起され、522nmで読み取られる。デング内部コントロールに関しては、VIC標識プローブは前記プライマー部位の1つの下流でアニールし、VIC分子は、プライマーが伸長するときにTaq DNAポリメラーゼの5'ヌクレアーゼ活性によって切断される。VICシグナルは、前記プローブが、切断されたVICレポーターをプローブから標的増幅中に遊離させるので増加する。VICは490nmで励起され、554nmで読み取られる。
【0040】
実施例7:4℃保存血漿中のWNVの安定性
WNVサンプルの段階希釈(1000、50、250、125、62.5 GE/mL)を、前記を急速に凍結/融解する前に、0、7及び14日間4℃で保存した。サンプルの体積は各抽出につき350μLで、各サンプルについて5複製を作成した。各サンプルについて4複製を検査した。RNA抽出は、ガラス繊維フィルタープレートをTecan Roboticsで使用して実施した。WNV RNAの終末点RT-PCRを実施した。
RT-PCRの結果は図3に示されている。データの統計的解析は表6に提示されている。4℃で7から14日間保存したサンプルは、4℃で0日保存したコントロールサンプルの蛍光シグナルレベルと等価のWNV蛍光シグナルレベルを示した(表9)。したがって、WNV RNAは、4℃で保存されたとき、少なくとも14日間は正常ヒト血漿中で安定である。
【0041】
表9:図3に提示したデータの統計的解析

*全ての希釈のデータは1000GE/mLに対して逆算した(図3参照)。
**データは0日目のコントロールに対してスチューデントのT検定によって解析した。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】ウイルス検出に対するPEGの影響。正常なヒトの血漿に1mL当たり104.5WNVゲノム等価物(GE)を加えた。PEG8000を種々の濃度で添加した。2.0mLのPEG-血漿を混合し遠心した。各200μL(沈殿物及び上清)を抽出及び定量的RT-PCRに付した。
【図2】ウイルス検出に対するPEGの影響。非濃縮及びPEG濃縮血漿の200μLを抽出し、PCRに付した。0%PEGと比較して、ほぼ10倍のRNAが3%PEGで検出できた。
【図3】4℃の血漿におけるWNVの安定性。WNVサンプルから抽出したRNAでエンドポイントRT-PCRを実施した。前記サンプルは4℃で0、7又は14日保存されていた。結果は、4複製サンプルの相対的平均蛍光ユニット(RFU)±標準偏差として表されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、サンプルから核酸を抽出する方法:
a)細胞、ウイルス、又は細胞及びウイルスの双方を含むサンプルを入手する工程;
b)界面活性剤を含む溶解溶液を前記サンプルに添加し、それによって細胞又はウイルスを溶解して溶解物を形成する工程;
c)核酸を凝集又は沈殿させるために十分な量のアルコールを前記溶解物に添加する工程;及び
d)前記混合物をガラス繊維フィルターでろ過することによって溶解物-アルコール混合物から核酸を精製する工程。
【請求項2】
さらにサンプル中の細胞又はウイルスを濃縮する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞又はウイルスがポリエチレングリコールで濃縮される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記サンプルが生物学的サンプルである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記サンプルが水性サンプルである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記サンプルがウイルスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞が微生物である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記溶解溶液がさらにプロテイナーゼを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記プロテイナーゼがプロテイナーゼKである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記界面活性剤がドデシル硫酸ナトリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記界面活性剤が、トリ-N-ブチルホスフェートである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記サンプルが哺乳動物から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記哺乳動物がヒトである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記サンプルが鳥から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記サンプルが節足動物から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
以下の工程を含む、サンプル中の病原体を同定する方法:
a)細胞、ウイルス、又は細胞及びウイルスの双方を含むサンプルを入手する工程;
b)界面活性剤を含む溶解溶液を前記サンプルに添加し、それによって細胞又はウイルスを溶解して溶解物を形成する工程;
c)核酸を凝集又は沈殿させるために十分な量のアルコールを前記溶解物に添加する工程;
d)前記混合物をガラス繊維フィルターでろ過することによって溶解物-アルコール混合物から核酸を精製する工程;及び
e)前記核酸をアッセイして病原体を同定する工程。
【請求項17】
以下の工程を含む、水サンプル中の生物学的汚染物質を同定する方法:
a)細胞、ウイルス、又は細胞及びウイルスの双方を含む水サンプルを入手する工程;
b)界面活性剤を含む溶解溶液を前記サンプルに添加し、それによって細胞又はウイルスを溶解して溶解物を形成する工程;
c)核酸を凝集又は沈殿させるために十分な量のアルコールを前記溶解物に添加する工程;
d)前記混合物をガラス繊維フィルターでろ過することによって溶解物-アルコール混合物から核酸を精製する工程;及び
e)前記核酸をアッセイして汚染物質を同定する工程。
【請求項18】
以下の工程を含む、哺乳動物で遺伝的異常を同定する方法:
a)細胞を含む生物学的サンプルを入手する工程;
b)界面活性剤を含む溶解溶液を前記サンプルに添加し、それによって細胞又はウイルスを溶解して溶解物を形成する工程;
c)核酸を凝集又は沈殿させるために十分な量のアルコールを前記溶解物に添加する工程;
d)前記混合物をガラス繊維フィルターでろ過することによって溶解物-アルコール混合物から核酸を精製する工程;及び
e)前記核酸をアッセイして遺伝的異常を同定する工程。
【請求項19】
以下を含む、サンプルから核酸を抽出するためのキット:
a)界面活性剤を含む溶解溶液;及び
b)ガラス繊維フィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−527997(P2008−527997A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552263(P2007−552263)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/001905
【国際公開番号】WO2006/088601
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(593059795)ザ ニューヨーク ブラッド センター インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】