核酸の配列決定のためのシステムおよび方法
本発明は、流体液滴中で核酸を配列決定することを含む、核酸を配列決定するためのシステムおよび方法に関する。1セットの実施形態において、本発明は、マイクロ流体液滴などの液滴を使用するハイブリダイゼーションによる配列決定を利用する。いくつかの実施形態において、標的核酸、核酸プローブ、および少なくとも1つの識別要素、たとえば蛍光粒子を含む液滴が形成される。標的核酸にハイブリダイズする核酸プローブは、いくつかの例において、少なくとも1つの識別要素を決定することによって決定される。標的核酸にハイブリダイズする核酸プローブを使用して、標的核酸の配列が決定され得る。ある例において、マイクロ流体液滴は核酸プローブを修飾する試薬と共に提供される。いくつかの場合において、上述のような液滴は、液滴の構成要素が標的区域を個別に通過するように変形される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の資金拠出
本発明は、National Institutes of Healthによって与えられたDMR−0602684の下で、政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0002】
関連出願
この出願は、2007年12月21日に出願された、Weitzらによる表題「Systems and Methods for Nucleic Acid Sequencing」の米国仮特許出願第61/008,862号、および2008年9月19日に出願された、Weitzらによる表題「Systems and Methods for Nucleic Acid Sequencing」の米国仮特許出願第61/098,710号(各々、参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0003】
発明の分野
本発明は、流体液滴中で核酸を配列決定することを含む、核酸を配列決定するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0004】
核酸配列を決定する能力は、遺伝子の機能および制御の理解などの用途のために、または分子生物学の基本的技法の多くを利用するために重要である。ハイブリダイゼーションによる配列決定(SBH)は、最近開発されたDNA配列決定への手法である。ハイブリダイゼーションによる配列決定では、大規模なセットの1本鎖断片またはプローブを基質に付着させる。標識1本鎖標的DNA断片の溶液を基質に曝露する。これらの断片は基質上で相補的断片とハイブリダイズして、ハイブリダイズされた断片は、選択された標識に応じて検出装置または蛍光/リン光染料を使用して識別することができる。次に、チップを用いて、断片のハイブリダイゼーションのパターンに基づいて標的DNAを配列決定する。しかし、現在のSBH技法は、比較的大量の試薬を必要とすること、またはスループットが比較的小さいことなどの、その用途を制限するいくつかの問題を有している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、流体液滴中で核酸を配列決定することを含む、核酸を配列決定するためのシステムおよび方法に関する。本発明の主題は、いくつかの場合において、相関した生成物、特定の問題に対する別の解決策、ならびに/または1つ以上のシステムおよび/もしくは物品の複数の異なる効果を含む。
【0006】
一態様において、本発明は方法に関する。第1のセットの実施形態により、本発明は、核酸プローブおよび少なくとも1つの識別要素を含有する第1のマイクロ流体液滴を提供する行為と、標的核酸を含む第2のマイクロ流体液滴を提供する行為と、第1のマイクロ流体液滴および第2のマイクロ流体液滴を融合して融合液滴を形成する行為とを含む。別のセットの実施形態において、方法は、複数の識別要素を含むマイクロ流体液滴を提供する行為と、液滴を変形させて、複数の識別要素それぞれが標的区域を個別に通過するように液滴に標的区域を通過させる行為と、標的区域を通過する複数の識別要素それぞれを決定する行為とを含む。
【0007】
また別のセットの実施形態による方法は、液滴に第1の識別要素と、第1の識別要素と区別可能な第2の識別要素と、第1の識別要素および第2の識別要素から区別可能な第3の識別要素を添加することによって、核酸プローブを含有する液滴の少なくとも一部を測定する行為を含む。
【0008】
1セットの実施形態において、方法は、識別要素が要素のうち少なくとも2つをそれぞれ有する少なくとも3つの群に分類される、少なくとも6つの識別要素を定義する行為と、少なくとも8つの区別可能な種のそれぞれを、8つの区別可能な種のうち2つが識別要素の同じセットと関連しないように、少なくとも3つの群それぞれから選択される少なくとも1つの識別要素と関連付ける行為と、少なくとも8つの異なる種のうち1つおよび少なくとも3つの群それぞれから得た関連付けた要素をそれぞれ含有する、少なくとも8つの区別可能な液滴を調製する行為とを含む。
【0009】
なお別のセットの実施形態において、方法は、複数の区別可能な核酸プローブおよび複数の区別可能な識別要素を提供する行為と、複数の区別可能な核酸プローブから少なくとも1個の核酸プローブと、複数の区別可能な識別要素から少なくとも3つの区別可能な識別要素を選択する行為と、選択した1個の核酸プローブおよび少なくとも3つの区別可能な識別要素を含有する流体液滴を形成する行為と、少なくとも10の区別可能な流体液滴を含む、流体液滴の集団を形成するために選択工程および形成工程を反復する行為とを含む。いくつかの場合において、各液滴は少なくとも1個の核酸プローブおよび少なくとも3つの区別可能な識別要素を含有する。
【0010】
別の態様において、本発明はキットに関する。いくつかの場合において、キットは、核酸プローブをそれぞれ含有する第1の複数の少なくとも10の区別可能な流体液滴と、少なくとも3つの区別可能な識別要素をそれぞれ含有する第2の複数の少なくとも10の区別可能な流体液滴とを含む。
【0011】
本発明の他の利点および新規の特徴は、添付図面と併せて考慮したときに、本発明の各種の非限定的な実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。本明細書および参考文献に含まれる文書が相反するおよび/または一致しない開示を含む場合、本明細書が優先するものとする。参考文献に含まれる2つ以上の文書が相互に対して相反するおよび/または一致しない開示を含む場合には、発効日が遅いほうの文書が優先するものとする。
【0012】
本発明の非限定的な実施形態は、添付図面を参照して一例として説明され、添付図面は概略的であり、原寸に比例して描かれるものではない。図面において、図解された同一またはほぼ同一の各構成要素は、通例、1つの数字によって表される。明瞭さを期するために、すべての構成要素がすべての図で番号付けされているわけではなく、当業者に本発明を理解させるために図解が必要でない場合には、本発明の各実施形態のすべての構成要素が示されているわけでもない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の一実施形態において標的核酸を配列決定する方法を示す。
【図2】図2A〜図2Fは、核酸プローブの非限定的な例を示す。
【図3】図3は、本発明の別の実施形態において標的核酸を配列決定する方法を示す。
【図4】図4は、本発明の別の実施形態において標的核酸を配列決定するまた別の方法を示す。
【図5】図5は、液滴の集合の調製の例を示す。
【図6A】図6Aは、標的核酸を配列決定する方法の非限定的な例を示す。
【図6B】図6Bは、標的核酸を配列決定する方法の非限定的な例を示す。
【図6C】図6Cは、標的核酸を配列決定する方法の非限定的な例を示す。
【図6D】図6Dは、標的核酸を配列決定する方法の非限定的な例を示す。
【図7A】図7Aは、標的核酸を配列決定する方法の非限定的な例を示す。
【図7B】図7Bは、標的核酸を配列決定する方法の非限定的な例を示す。
【図7C】図7Cは、標的核酸を配列決定する方法の非限定的な例を示す。
【図8A】図8Aは、標的核酸を配列決定する方法の非限定的な例を示す。
【図8B】図8Bは、標的核酸を配列決定する方法の非限定的な例を示す。
【図8C】図8Cは、標的核酸を配列決定する方法の非限定的な例を示す。
【図8D】図8Dは、標的核酸を配列決定する方法の非限定的な例を示す。
【図8E】図8Eは、標的核酸を配列決定する方法の非限定的な例を示す。
【図8F】図8Fは、標的核酸を配列決定する方法の非限定的な例を示す。
【図8G】図8Gは、標的核酸を配列決定する方法の非限定的な例を示す。
【図9】図9A〜図9Cは、本発明のいくつかの実施形態における蛍光偏光(FP)検出に関する情報を表す。
【図10】図10は、本発明の一実施形態における実験装置の非限定的な例を示す。
【図11】図11は、本発明の別の実施形態における実験装置の非限定的な例を示す。
【図12】図12A〜図12Bは、識別要素としての液体標識を利用する例を示す。
【図13】図13A〜図13Bは、ある実施形態において蛍光強度および蛍光偏光が独立して制御され得ることを示す。
【図14】図14は、本発明の一実施形態における、液滴内に発生したDNAの連結の例を示す。
【図15】図15は、別の実施形態による標識核酸プローブを使用する連結アッセイの結果を示す。
【図16】図16A〜図16Eは、本発明の一実施形態における第1および第2の核酸を連結する方法を表す。
【図17A】図17Aは、いくつかの実施形態による、本発明の1つの方法で使用され得る第1の群の核酸プローブおよび第2の群の核酸プローブを表す。
【図17B】図17Bは、一実施形態による、図17Aに表した第1の群の核酸プローブからの第1の核酸プローブおよび第2の群の核酸プローブからの第2の核酸プローブを組み合せることによって形成され得る複数の液滴を表す。
【図18A】図18Aは、単一のマイクロ流体チャネルにおいて、液滴中の信号発信実体(signaling entity)および/または識別要素が1つずつ決定されることを表す。
【図18B】図18Bおよび図18Cは、複数のチャネルまたは封じ込め区域それぞれにおいて、複数の液滴中の信号発信実体および/または識別要素が1つずつ決定されることを表す。
【図18C】図18Bおよび図18Cは、複数のチャネルまたは封じ込め区域それぞれにおいて、複数の液滴中の信号発信実体および/または識別要素が1つずつ決定されることを表す。
【図19】図19は、一実施形態による複数の液滴へと形成される複数の標的核酸を含む溶液を示す。
【図20】図20Aおよび図20Bは、第1および第2のマイクロ流体液滴が融合するようにチャネル内に流入した画像を示す。
【図21】図21は、本発明の一実施形態における、液滴を融合するために使用したプロセスの概略図を示す。
【図22】図22は、遅延ラインにおける融合した複数の液滴のインキュベーションを示す。
【図23】図23は、本発明の一実施形態による、融合液滴の速度の、インキュベーションチャネルに沿った位置に対するグラフを示す。
【図24】図24は、発明の一実施形態による、ハイブリダイゼーションを測定するために使用されるシステムの写真を示す。
【図25】図25Aは、図24に記載したシステムに類似したシステムの概略図を示す。図25Bは、図25Aに示すシステムのようなシステムを使用して液滴を測定するときに、観察され得る蛍光偏光を示す。
【図26】図26は、一実施形態による、測定の間に液滴が変形を受けるシステムの写真を示す。
【図27A】図27A〜図27Dは、一実施形態による、各種の強度の検出に基づく液滴の検出を示す。
【図27B】図27A〜図27Dは、一実施形態による、各種の強度の検出に基づく液滴の検出を示す。
【図27C】図27A〜図27Dは、一実施形態による、各種の強度の検出に基づく液滴の検出を示す。
【図27D】図27A〜図27Dは、一実施形態による、各種の強度の検出に基づく液滴の検出を示す。
【図28】図28は、一実施形態による、本発明の方法を使用して調製および測定した緑色および/または赤色染料を含む複数の液滴のプロットを示す。
【図29】図29は、本発明のいくつかの実施形態による、i)標的核酸が存在しない、ii)ミスマッチ標的核酸が存在する、およびiii)マッチ標的核酸が存在する、3uMテンプレートの結合アッセイの結果を示す。
【図30】図30は、一実施形態による、第1の群の核酸プローブからの第1の核酸プローブおよび第2の群の核酸プローブからの第2の核酸プローブを含むライブラリの概略図を示す。
【図31A】図31Aは、一実施形態による、異なる濃度の異なる染料を含む4つの群の液滴を産生するために使用され得るマイクロ流動装置の概略図を示す。
【図31B】図31Bは、図31Aに示す装置を使用して形成された複数の液滴の産生を示すムービーの最初のフレームの画像を示す。
【図32】図32は、一実施形態による、複数の種類の液滴を混合することにより形成された液滴のエマルジョンの概略図を示す。
【図33】図33Aおよび図33Bは、本発明のいくつかの実施形態による、第1の核酸プローブ、第2の核酸プローブ、および標的核酸を含む複数の液滴の形成を示す。
【図34】図34は、一実施形態による、マイクロ流体液滴を通じた光の屈折および液滴像の表面に出現する生じた液滴のグレアの概略図を示す。
【図35】図35は、一実施形態による、液滴グレアを生成するために使用され得る実験装置の例を表す。
【図36】図36Aは、一実施形態による、2つの3mer核酸プローブの標的核酸へのハイブリダイゼーションを示す。図36Bは、図36Aに示した2つの3mer核酸プローブの連結を示す。
【図37】図37は、一実施形態による、緑色波長フィルタの下での液滴グレアを含む複数のマイクロ流体液滴のCCDカメラ・ビデオ・キャプチャからの静止画像を示す。
【図38】図38は、一実施形態による、液滴グレアを含む複数の液滴のCCDカメラ静止画像の強度閾値を示す。
【図39】図39Aおよび図39Bは、液滴グレアを含む複数の液滴の蛍光強度読み取り値でそれぞれ生成された、マスクおよびマスクオーバーレイを示す。
【図40】図40および図41は、一実施形態による、緑色フィルタカメラおよび赤色フィルタカメラそれぞれからの複数の液滴の画像を示す。
【図41】図40および図41は、一実施形態による、緑色フィルタカメラおよび赤色フィルタカメラそれぞれからの複数の液滴の画像を示す。
【図42】図42は、2つの別個の液滴の集団を示す、図40および41それぞれからの緑色および赤色カメラデータのオーバーレイを含む合成画像を示す。
【図43】図43は、一実施形態による、図42に示すような画像からの秒でサンプリングしたデータ点での強度カウントのヒストグラムを示し、(A)緑色チャネルおよび(B)赤色チャネルは二峰性分布を示す。
【図44】図44は、2つの別個の蛍光強度集団がある、複数のマイクロ流体液滴の蛍光強度のCCDカメラからの静止画像キャプチャを示す。
【図45】図45は、液滴グレアを含む2つの別個の蛍光強度集団がある、複数の液滴の蛍光強度のCCDカメラからの静止画像キャプチャを示す。
【0014】
配列の簡単な説明
配列番号1は、合成DNA配列のACTTCGである;
配列番号2は、合成DNA配列の*GATCCであり、*は信号発信実体である;
配列番号3は、合成DNA配列のGATCTGNNNNであり、Nはユニバーサル塩基である;
配列番号4は、合成DNA配列のCATATCである;
配列番号5は、合成DNA配列のGATCTNGNNNであり、Nはユニバーサル塩基である;
配列番号6は、合成DNA配列のCXACATCであり、Xは、A、C、GまたはTの1つである;
配列番号7は、合成DNA配列のGACTCTGTCCCTCCCTTGTCTACCCTGTGCGTCCCTACTCTACCである;
配列番号8は、合成DNA配列のビオチン−CCTATCCCCTGTGTGCCTTGCCTATCCCCTGTTGCGTGTCTCAGである;
配列番号9は、合成DNA配列のCTAAGTTAである;
配列番号10は、合成DNA配列のCTNAGNTAであり、Nはユニバーサル塩基である;
配列番号11は、合成DNA配列のCTANNTTAであり、Nはユニバーサル塩基である;
配列番号12は、合成DNA配列のCGCCAGGGTTTTCCCAGTCACGACGTTGTAAAACGACGGCCAGTGAATCCGTAATCATGGCCATである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、流体液滴中で核酸を配列決定することを含む、核酸を配列決定するためのシステムおよび方法に関する。1セットの実施形態において、本発明は、マイクロ流体液滴などの液滴を使用するハイブリダイゼーションによる配列決定を利用する。いくつかの実施形態において、標的核酸、核酸プローブ、および少なくとも1つの識別要素、たとえば蛍光粒子を含む液滴が形成される。標的核酸にハイブリダイズする核酸プローブは、いくつかの例において、少なくとも1つの識別要素を決定することによって決定される。標的核酸にハイブリダイズする核酸プローブを使用して、標的核酸の配列が決定され得る。ある例において、マイクロ流体液滴は核酸プローブを修飾する試薬と共に提供される。いくつかの場合において、上述のような液滴は、液滴の構成要素が標的区域を個別に通過するように変形される。
【0016】
一態様において、本発明は、標的核酸を配列決定するためのシステムおよび方法に関する。各種の実施形態において、標的核酸は、複製され、核酸プローブ、識別要素なども含有し得る複数の流体液滴中に含有され得る。以下で詳細に議論するように、流体液滴中の核酸プローブを決定することによって、標的核酸の配列が決定され得る。一実施形態において、本発明は、核酸プローブおよび少なくとも1つの識別要素を含むマイクロ流体液滴を提供する工程と、標的核酸を含む第2のマイクロ流体液滴を提供する工程と、第1のマイクロ流体液滴および第2のマイクロ流体液滴を融合して融合液滴を形成する工程とを含む、マイクロ流体液滴を提供する方法に関する。いくつかの場合において、方法は、核酸プローブおよび標的核酸が共に溶解したままであり、たとえば水素結合、塩基対合などの非共有相互作用を通じて比較的安定な2本鎖を形成して、溶解している間にただちに分離しないように、核酸プローブが標的核酸と結合しているか否かを決定する工程をさらに含む。いくつかの例において、核酸プローブは標的核酸分子にハイブリダイズし得る。さらに、いくつかの場合において、少なくとも1つの識別要素の同一性が決定され得る。
【0017】
非限定的な例として、第1の実施形態を図1に示す。本図において、核酸プローブ11および少なくとも1つの識別要素12を含有する第1の流体液滴10が提供される。さらに、本実施例において、標的核酸14を含有する第2の流体液滴13が提供される。第1の流体液滴は第2の流体液滴と融合して、矢印100によって示すように、融合流体液滴15を形成する。いくつかの場合において、核酸プローブ11は、矢印101によって示すように標的核酸14と結合するようになり得て、標的核酸と核酸プローブとの結合は、矢印102によって示すように決定され得る。たとえば、核酸プローブおよび標的核酸配列は、相補的配列または実質的な相補的配列のために結合16するようになり得る。いくつかの場合において、核酸プローブの配列は、以下で詳細に議論するように、少なくとも1つの識別要素12(矢印103および104によって示される)を決定することによって、標的核酸の少なくとも一部の配列を決定するために決定され得る。
【0018】
いくつかの場合において、液滴の集合が使用され、該液滴は区別可能な核酸プローブおよび/または識別要素を含む。たとえば識別要素を使用することによって、標的核酸と区別可能な核酸プローブとの結合を測定することにより、標的核酸の配列が決定され得る。通例、流体液滴それぞれに含有される標的核酸配列のすべてが核酸プローブのすべてと結合するわけではなく、標的核酸と結合することができる核酸プローブを決定することによって、標的核酸の配列が決定され得る。液滴の集合を調製する方法は、以下でさらに詳細に議論される。
【0019】
言及したように、本発明の各種の実施形態は、流体液滴中に核酸および/または他の種を含有することに関する。本明細書で使用するように、「流体」は、その普通の意味、すなわち流動してその容器の輪郭に従う傾向のある物質を示す。通例、流体は、静的剪断応力に耐えられない物質であり、剪断応力が印加されると、流体は継続的および永久的な歪みを受ける。それゆえ流体は、いくつかの場合において、流体の少なくとも多少の流動を可能にする任意の好適な粘度を有し得る。流体の非限定的な例は液体および気体を含むが、自由流動固体粒子、粘弾性流体なども含み得る。
【0020】
「液滴」は、本明細書で使用するように、第2の流体に完全に包囲されている第1の流体の単離された部分である。液滴は必ずしも球形ではないが、たとえば外部環境に応じて同様の他の形状をとり得ることに注目すべきである。一実施形態において、液滴は、液滴が中に位置する流体流に垂直なチャネルの最大寸法に実質的に等しい最小断面寸法を有する。液滴の直径は、非球形液滴では、非球形液滴と同じ体積を有する完全な数学的球の直径である。
【0021】
流体液滴は、任意の好適な技法を使用して形成され得る。たとえば、液滴は、液体を撹拌または振とうして個々の液滴を形成すること、個々の液滴を含有する懸濁液またはエマルジョンを生成すること、またはピペッティング技法、針などによって液滴を形成することによって形成され得る。液滴の生成の他の非限定的な実施例は、それぞれ参照により本明細書に組み入れられている、Stoneらによる“Method and Apparatus for Fluid Dispersion”という名称の、U.S.Patent Application Publication No.2005/0172476として2005年8月11日に公開され、2004年12月28日に出願されたU.S.Patent Application Serial No.11/024,228;Linkらによる“Formation and Control of Fluidic Species”という名称の、2006年7月27日にU.S.Patent Application Publication No.2006/0163385として公開され、2005年10月7日に出願されたU.S.Patent Application Serial No.11/246,911;またはLinkらによる“Electronic Control of Fluidic Species”という名称の、2007年1月4日にU.S.Patent Application Publication No.2007/0003442として公開され、2006年2月23日に出願されたU.S.Patent Application Serial No.11/360,845、“Methods and Apparatus for Manipulation of Fluidic Species”という名称の、2008年6月26日に公開されたInternational Patent Application No.PCT/US2008/007941に開示されている。
【0022】
本発明の各種の実施形態は、複数または一連の流体液滴を使用する。流体液滴は、多分散系(たとえば一連の異なるサイズを有する)であり得る、またはいくつかの場合では、流体液滴は、たとえば液滴の約10%、約5%、約3%、約1%、約0.03%、または約0.01%以下が、平均直径の約10%、約5%、約3%、約1%、約0.03%、または約0.01%を超える平均直径を有するように、たとえば直径の均質分散を有する単分散系または実質的に単分散系であり得る。液滴の集団の「平均直径」は、本明細書で使用するように、液滴の直径の算術平均である。当業者は、たとえばレーザ光散乱または他の公知の技法を使用して、液滴の集団の平均直径を測定できるであろう。非限定的な例として、液滴の平均直径は、約1mm未満、約500マイクロメートル未満、約200マイクロメートル未満、約100マイクロメートル未満、約75マイクロメートル未満、約50マイクロメートル未満、約25マイクロメートル未満、約10マイクロメートル未満、または約5マイクロメートル未満であり得る。液滴の平均直径は、ある場合では、少なくとも約1マイクロメートル、少なくとも約2マイクロメートル、少なくとも約3マイクロメートル、少なくとも約5マイクロメートル、少なくとも約10マイクロメートル、少なくとも約15マイクロメートル、または少なくとも約20マイクロメートルでもあり得る。
【0023】
流体液滴は、配列決定される標的核酸を含有し得て、標的核酸は任意の好適な核酸であり得る。たとえば、標的核酸は、生物学的実体、たとえばタンパク質、酵素、抗体、受容体、リボザイム、リボソームなど、および/またはその一部をコードする核酸であり得る。別の実施例として、標的核酸は、調節配列または非コード配列、たとえば低分子干渉RNA、マイクロRNA、低分子ヘアピンRNAなどであり得る。標的核酸は、長さが任意の数のヌクレオチド、たとえば長さが約25、約50、約60、約64、約70、約80、約90、約100、約200、約400、約800、約1600、約3200、約6400、またはなおそれ以上のヌクレオチドであり得る。標的核酸(および本明細書に記載するような他の種類の核酸)の非限定的な例は、天然源から単離され得る、組換え産生され得る、人工的に合成され得るなどのリボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、またはその混合物もしくはコポリマーを含む。核酸は、残基、たとえばアデノシンすなわち「A」、チミジンすなわち「T」、グアノシンすなわち「G」、シチジンすなわち「C」、またはウリジンすなわち「U」、または他の残基、たとえば以下で詳細に議論するユニバーサル残基を含有し得る。核酸は、ハイブリダイゼーションを促進するために2本鎖または1本鎖であり得る。さらに、核酸は実質的にいずれの源からも得ることができる。たとえば、核酸は、細胞またはウイルスから単離され得る、在来の化学合成を使用して合成され得る、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して合成され得るなどである。
【0024】
液滴内に含有された標的核酸は次に、核酸プローブおよび/または1つ以上の識別要素に露出され得る。たとえば、先に議論したように、標的核酸を含有する流体液滴は、核酸プローブおよび少なくとも1つの識別要素を含有する第2の流体液滴と融合され得る。液滴を共に融合する各種の技法を下でさらに詳細に議論する。
【0025】
核酸プローブは、ある実施形態において、標的核酸内のある配列を決定するために一般に使用される。しばしば、標的核酸の短い部分は、核酸プローブ、たとえば約20未満の残基の、約15未満の残基の、約10未満の残基の、9未満の残基の、8未満の残基の、7未満の残基の、6未満の残基の、5未満の残基の、4未満の残基などの配列と結合することができる。残基は標的核酸内で通例隣接しているが、下で議論するようにいくつかの場合では、標的核酸内の残基のいくつかは必ずしも隣接していない。いくつかの実施形態において、核酸プローブは、標的核酸配列の少なくとも一部を認識することができ、標的核酸の認識された部分と同じ長さを有することが多い、核酸残基の比較的短い配列を含有し得る。たとえば核酸プローブは、いくつかの場合では約20未満のヌクレオチドもしくは約10ヌクレオチド未満の長さを、または上述のような長さを有する配列を有し得る。1つの場合において、核酸プローブ配列の長さは4残基であり得る(たとえば図2Aを参照)。別の場合では、長さは5残基であり得る(たとえば図2Bを参照)。また別の場合では、長さは6残基であり得る(たとえば図2Cを参照)。核酸プローブ内の核酸プローブ配列は隣接し得るか、または配列は非隣接であり得る。たとえば、ユニバーサル残基またはギャップが存在し得る。いくつかの例において、核酸プローブは、信号発信実体、たとえば放射性同位体によって、または蛍光タグによって(たとえば図2D)などのある方式で標識され得る。各種の信号発信実体および核酸プローブの他の例は、下でさらに詳細に議論されるであろう。
【0026】
核酸プローブは、プローブの少なくとも一部が標的核酸配列に対して相補的または少なくとも相補的な配列を含有するように選択され得る。たとえば、一実施形態において、核酸プローブ配列は、あるサイズまたは数(またはサイズもしくは数の範囲)の核酸残基の各順列が示されて、それによりこれらの核酸プローブ配列の少なくとも1つが標的核酸に対して実質的に相補的であるように選択される。本明細書で使用するように、第2の配列に対して「実質的に相補的」である第1の配列は、第1および第2の配列の少なくとも約75%が相補的である(たとえばワトソン−クリック相補的対形成によって、または場合によりG:Uゆらぎも含む)および/または配列が最大で1または2塩基ミスマッチを含む配列である。いくつかの実施形態において、2つの配列は、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または少なくとも約100%相補的であり得る。
【0027】
いくつかの実施形態において、複数の区別可能なまたは同一でない核酸プローブ、たとえば核酸プローブ内に含有される残基の配列に1つ以上の相違を有する核酸プローブが使用される。たとえば、複数の流体液滴が使用され得て、流体液滴は特異的な核酸プローブ配列をそれぞれ含有し得る。流体液滴は、(核酸プローブの複数のコピーが存在し得るが)各流体液滴が唯一の核酸プローブを含有するように調製され得る。さらにいくつかの場合で、異なる流体液滴は、(たとえば多少の冗長性を持たせて、各流体液滴が液滴の所与の集団または集合において必ずしも唯一ではないようにするために)同じまたは異なる核酸プローブ配列を独立して含有し得る。
【0028】
いくつかの場合で、核酸プローブをたとえば信号発信実体によって標識することができる。信号発信実体は、下で議論する方法などの検出方法を使用していくつかの方式で決定され得る。信号発信実体は核酸内の任意の好適な位置に、たとえば核酸プローブの核酸配列の5’末端部位、3’末端部位に、または核酸プローブ内の内部部位に含まれ得る。いくつかの場合で、信号発信実体は、核酸プローブが標的核酸配列と結合されないときと比較して、核酸プローブが標的核酸と結合されるときに、異なるシグナルを生成する(またはシグナルを生成しない)ように選択することができる。信号発信実体は、これに限定されるわけではないが、蛍光染料、化学発光実体、放射性標識、同位体、たとえば非放射性同位体または質量分析法によって検出可能な同位体(たとえばエレクトロフォア質量標識(EML))、標識抗体への特異的結合パートナーとして作用できるリガンド、酵素、標識リガンドの特異的結合パートナーとして作用できる抗体、抗原、特異的反応性を有する基、および/または電気化学的に検出可能な部分を含むことができる。蛍光信号発信実体の非限定的な例は、フルオレセイン、ローダミン、またはヘキサクロロフルオレセインを含む。当業者は、ただちに商業的に入手できる他の蛍光実体を認識するであろう。信号発信実体のまた他の例は、本明細書で詳細に議論する。
【0029】
たとえば一実施形態において、核酸プローブは、核酸残基の配列、信号発信実体、および消光剤(quencher)または増感剤(enhancer)を含むことができる(たとえば図2Eに示すように、シグナル伝達プローブはSで示し、消光剤はQで示す)。信号発信実体は、たとえば蛍光実体であり得て、核酸プローブの任意の場所に配置され得る、たとえば核酸配列の5’末端に共有結合され得る。各種の実施形態において核酸プローブとして使用するのに潜在的に好適な蛍光実体の非限定的な例は、6−カルボキシフルオレセインおよびテトラクロロフルオレセインを含む。消光剤または増感剤は、ある方式で、たとえば信号発信実体の決定を個別に抑制または促進することによって、信号発信実体に影響を及ぼすことができる任意の実体であり得る。たとえば、核酸プローブ内に蛍光信号発信実体および消光剤が近接していることは、信号発信実体の蛍光が部分的または完全に抑制できるようなことであり得るのに対して、増感剤を信号発信実体に近接して配置すると、増感剤は蛍光信号発信実体の蛍光を増強することが可能であり得る。消光剤または増感剤はまた、核酸プローブの任意の位置に配置され得て、たとえば核酸配列の3’末端に結合され得る。消光剤の非限定的な例は、テトラメチルローダミンおよびジヒドロシクロピロロインドールトリペプチドを含む。
【0030】
非限定的な例として、消光剤(または同様に増感剤)は、核酸プローブ中の信号発信実体内で以下のように使用することができる。標的核酸と結合した核酸プローブは、ある酵素または他の種、たとえばTaqポリメラーゼなどのポリメラーゼの作用によって、標的核酸から除去または解離され得る。たとえば、いくつかの場合で、ポリメラーゼは、核酸プローブ内の核酸配列の分解を引き起こし得て、それにより信号発信実体および/または消光剤もしくは増感剤の放出を生じさせ得て、消光剤または増感剤はもはや、信号発信実体に近接していないか、または信号発信実体に少なくとも実質的に影響を及ぼさない可能性がある。それゆえ核酸プローブの分解は、信号発信実体の変化を決定することによって決定することができる。これに対して、核酸プローブが標的核酸と十分に結合しない系では(たとえば十分な相補的配列が存在しない場合)、ポリメラーゼまたは他の種の作用による核酸プローブの分解は起こらず(たとえば標的核酸と核酸プローブとの間に存在する結合がごく一時的または短期間であるために、酵素作用が発生しない)、それゆえ信号発信実体のシグナルの著しい変化を決定できなかった。したがって、一実施形態において、Taqポリメラーゼなどのポリメラーゼが、核酸プローブおよび標的核酸を含む流体液滴に供給され得る。ポリメラーゼは、本明細書で議論するような任意の好適な技法を使用して流体液滴に供給され得る。
【0031】
いくつかの場合で、核酸プローブは、少なくとも1つのロックド核酸(locked nucleic acid)(LNA)残基を含み得る(たとえば図2Fを参照)。ロックド核酸残基は、天然発生型核酸残基に類似した化学的形状を有する核酸類似体(たとえば相補的残基と2個または3個の水素結合を形成することができる)であるが、天然発生型核酸残基と同数の次元で自由に回転することができない。たとえば、いくつかの場合で、ロックド核酸残基は、2’−O、4’−Cメチレンブリッジを含有し得て、メチレンブリッジは、DNAまたはRNAのある形でよく見出される、3’−エンド構造立体配座にリボースを「ロック」する。ロックされたリボース立体配座は、残基の積み重ねおよび/または主鎖の予備構成を増強し得る。このことは、いくつかの場合で核酸配列の熱安定性(たとえば溶融温度)を著しく上昇させることができる。下で詳細に議論するように、1個以上のロックド核酸残基を含有する核酸プローブがある実施形態で有用であり得るのは、ロックド核酸残基は、たとえば内部で回転するその能力に対する制限のために、標的核酸との結合に対する親和性の上昇を示し得る。
【0032】
ある実施形態において、核酸プローブは、残基対形成関係で2つ以上の天然ヌクレオチドと、いくつかの場合では天然ヌクレオチドすべてと結合し得るユニバーサル残基を含有し得る。例示的なユニバーサル残基は、5−ニトロインドールおよび3−ニトロピロールを含むが、本明細書に記載するシステムおよび方法に有用な他のユニバーサル残基が当業者に公知となるであろう。下で議論するように、1つ以上のユニバーサル塩基を含有する核酸がある実施形態において有用であり得る。核酸プローブは、任意の好適な技法、たとえば固相ホスホラミダイトトリエステル法を使用して合成され得る。いくつかの場合で、複数の核酸プローブが合成され、このようなプローブのライブラリを形成する。ライブラリは、たとえば複数の流体液滴で構成された複数の配列を含み得る。いくつかの(すべてではない)実施形態において、ライブラリは、ほぼ同じ数の残基、たとえば約4残基、約5残基、約6残基、約7残基などを有する配列を含有し得る。核酸プローブのライブラリは、任意の好適な技法を使用して作製され得て、手動技法または自動化を使用して、たとえばロボット装置を使用して産生され得る。
【0033】
一実施形態において、核酸プローブは並行して産生することができる。たとえば、マイクロ流体装置を使用して核酸プローブのライブラリの並行生成が可能になり得る。たとえば、1個のチップ上にマイクロ流体液滴メーカーを何回も複製して、各液滴メーカーを使用して異なる核酸プローブを作製し得る。液体に包囲された流体の液滴を産生する技法の非限定的な例は、それぞれ参照により本明細書に組み入れられている、“Method and Apparatus for Fluid Dispersion”という名称であり、2005年8月11日にU.S.Patent Application Publication No.2005/0172476として公開され、2004年12月28日に出願されたU.S.Patent Application Serial No.11/024,228;“Electronic Control of Fluidic Species”という名称であり、2007年1月4日にU.S.Patent Application Publication No.2007/000342として公開され、2006年2月23日に出願されたU.S.Patent Application Serial No.11/360,845;または“Systems and Methods of Forming Particles”という名称であり、2007年3月8日にU.S.Patent Application Publication No. 2007/0054119として公開され、2006年3月3日に出願されたU.S.Patent Application Serial No.11/368,263に記載されている。たとえば、いくつかの実施形態において、電荷が液体に包囲された流体で生成されて、これにより流体は液体内で個々の液滴に分離され得る。
【0034】
一実施形態において、ライブラリは、ある長さを有する核酸配列のセットのために考えられるあらゆる配列を含み得る。別の実施形態において、ライブラリは、ある長さを有する考えられるすべての配列の少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%を含み得る。ライブラリを調製するためのいくつかの技法を下で議論する。
【0035】
多くの実施形態において、少なくとも1つの識別要素が存在する。「識別要素」とは、本明細書で使用するように、ある方式で決定することができる構成成分を含む種であり、たとえば識別要素は液滴内に含有されているときに識別され得る。識別[スペルチェッカが作動していない?]要素は、液滴内で不溶性(たとえば懸濁)または可溶性であり得る。非限定的な例は、蛍光、化学発光、放射能などによって検出可能な識別要素を含む。具体的な例は、これに限定されるわけではないが、染料を含有する粒子、量子ドット、または、いくつかの実施形態において、他の種、たとえば本明細書に記載するようなオリゴヌクレオチドも結合され得る蛍光粒子を含む。いくつかの場合で、2つ以上の同一の識別要素が所与の液滴内に存在し得る。
【0036】
ある実施形態において、同じでない識別要素が、たとえば液滴内で使用され得る。たとえば、液滴は少なくとも2つの区別可能な識別要素、少なくとも3つの区別可能な識別要素、少なくとも4つの区別可能な識別要素、少なくとも5つの区別可能な識別要素などを含有し得る。識別要素は、任意の好適な方法、たとえば色、蛍光、吸収、強度、サイズ、電荷、放射能、質量などを使用して区別され得る。
【0037】
1セットの実施形態において、粒子または微粒子(たとえばビーズ)は識別要素として使用され得る。粒子は、任意の寸法を有し得て、球形または非球形であり得る。たとえば粒子は、いくつかの場合で直径が約100nm〜約100umに及ぶ平均直径を有し得る。ある実施形態において、粒子は約1マイクロメートル未満の、約300nm未満の、約100nm未満の、約30nm未満の、または約10nm未満の平均直径を有し得る。平均直径は、本明細書で使用するように、液滴内に含有された粒子の直径の算術平均である。非球形粒子の直径は、本明細書で使用するように、粒子と同じ体積を有する完全な数学的球の直径である。
【0038】
いくつかの実施形態において、少なくとも3つの区別可能な識別要素、少なくとも4つの区別可能な識別要素、少なくとも6つの区別可能な識別要素、少なくとも8つの区別可能な識別要素、少なくとも9つのつの区別可能な識別要素、少なくとも10の区別可能な識別要素、少なくとも20の区別可能な識別要素、少なくとも30の区別可能な識別要素、少なくとも40の区別可能な識別要素、少なくとも50の区別可能な識別要素、少なくとも60の区別可能な識別要素、少なくとも70の区別可能な識別要素、少なくとも80の区別可能な識別要素、少なくとも90の区別可能な識別要素、少なくとも100の区別可能な識別要素などがあるように、複数の識別要素が液滴を識別するために選択され得る。複数の区別可能な識別要素の1つの非限定的な例は、Luminex Corp.から市販されているLuminex FlexMAP Microspheresビーズである。これらのようなビーズまたは粒子は、一実施形態により、各ビーズまたは粒子内で独立して変化することができる2つ以上の染料または他の化合物の使用によって区別され得る。したがって、複数の区別可能なビーズは、ある実施形態により、複数の識別要素として使用され得る。別の詳細な非限定的な例として、ポリスチレンおよび1つ以上の染料を含む粒子が識別要素として使用され得る。粒子内で利用される染料はたとえばスクアリン酸ベースの分子またはたとえば近赤外線および/または赤外範囲に及ぶ蛍光を呈する他の蛍光分子を含み得る。いくつかの場合で、濃度が独立して制御できる2つ以上の染料を各粒子内で使用することができる。
【0039】
一態様において、標的核酸は、核酸プローブおよび少なくとも1つの識別要素に曝露され得る。たとえば核酸プローブおよび少なくとも1つの識別要素は、第1の流体液滴内に含有され得て、標的核酸は第2の流体液滴内に含有され得て、次に共に融合されて(たとえば下で議論するように)、それにより標的核酸が核酸プローブに曝露される。標的核酸と核酸プローブとの結合を測定するために、標的核酸プローブの少なくとも一部の配列が決定され得る。いくつかの場合において、複数の異なる核酸プローブを用いてこれを反復することによって、標的核酸プローブ全体の配列が決定され得る。
【0040】
標的核酸を配列決定するための1セットの実施形態は、一般に次のように説明される。核酸プローブおよび少なくとも1つの識別要素を含む第1の流体液滴が提供される。この例では、核酸プローブは信号発信実体に結合した核酸残基の配列および消光剤または増感剤を含む。たとえば、核酸プローブは4、5、6、7、8、または9残基を含有し得る。信号発信実体、消光剤、および増感剤は上で議論した。標的核酸を含む第2の流体液滴も提供される。第1の流体液滴および第2の流体液滴は、本明細書で議論した方法を含む、任意の好適な方法に従って融合され得る。融合した流体液滴もポリメラーゼを含むことができる。ポリメラーゼは、液滴が融合する前にポリメラーゼを第1の流体液滴もしくは第2の流体液滴に、または第1の流体液滴および第2の流体液滴が融合された後に直接第3の流体液滴に供給することによって、融合流体液滴に包含され得る。ある場合において、たとえば核酸プローブおよび標的核酸の各配列が相補的または実質的に相補的である場合、核酸プローブは、第1および第2の液滴の融合後に標的核酸にハイブリダイズし得るか、またはそうでなければ標的核酸と結合し得る。これらの場合において、上で議論したように、信号発信実体および消光剤または増感剤を含む核酸プローブを使用するときに、ポリメラーゼは、核酸プローブが標的核酸にハイブリダイズするまたは標的核酸と結合する際に核酸プローブの分解を引き起こし得る。信号発信実体および/または消光剤または増感剤は次に、ポリメラーゼの作用のために核酸プローブから放出され得て、それゆえ消光剤または増感剤は信号発信実体にもはや実質的に影響を及ぼし得ず、信号発信実体を決定することができる。しかし、核酸プローブが、たとえば十分な相補性がないために標的核酸にハイブリダイズしない、またはそうでなければ標的核酸と結合しない場合には、第1および第2の液滴の融合後に信号発信実体の変化は測定できない。それゆえ、信号発信実体の変化の測定は、核酸プローブが標的核酸にハイブリダイズしたか、またはそうでなければ標的核酸と結合したか否かを決定するために使用され得る。少なくとも1つの識別要素も、核酸プローブの配列決定で決定および/または利用され得る。
【0041】
非限定的な例を図3に示す。本図において、核酸プローブ21および少なくとも1つの識別要素22を含有する第1の流体液滴20が提供される。しかし他の実施形態において、2、3、または4つ以上の識別要素が液滴内で使用され得る。本図において、核酸プローブ21は、信号発信実体24に結合された核酸配列23および消光剤(「Q」)25(他の実施形態において、増感剤が消光剤の代わりに使用され得るが)を含む。さらに、標的核酸27を含有する第2の流体液滴26が提供される。本例では、第1の流体液滴20は第2の流体液滴26と融合して、矢印200によって示すように、融合流体液滴28を形成する。ポリメラーゼ29は融合流体液滴内に存在する(たとえば、それは第1および/または第2流体液滴中に存在していた)。矢印201で示すように核酸プローブ21が標的核酸27と結合する場合、信号発信実体24は矢印202で示すように核酸23および消光剤25から移動される。ある例において、核酸プローブ21および標的核酸27は結合し得て(たとえば核酸プローブおよび標的核酸が相補的または実質的に相補的である場合)、その結合は、矢印203によって示すように信号発信実体24の変化を測定することによって検出することができる。いくつかの場合で、核酸23の配列は次に、識別要素22(矢印204および205によって示す)を決定することによって決定され得る。
【0042】
標的核酸を配列決定するための別のセットの実施形態は、リガーゼを使用して、標的核酸の存在下で核酸プローブを共に結合させる。例は次の通りである。核酸プローブの第1の群および第2の群よりそれぞれ選択された、第1および第2の核酸プローブを含む、第1の流体液滴が提供され得る。しかし、いくつかの場合で、核酸プローブの第1または第2の群からそれぞれ選択される第1または第2の核酸プローブのどちらかを含む、2つの流体液滴が要求され得る。核酸プローブはそれぞれ、本明細書でさらに議論するように、信号発信実体に結合した核酸残基の配列、消光剤および/または増感剤を含む。標的核酸を含む第2の流体液滴も提供される。第1の流体液滴(または2つの別個の流体液滴)および第2の流体液滴は次に、本明細書で議論するように、任意の好適な方法を使用して融合することができる。
【0043】
さらに、リガーゼを融合流体液滴に包含することができる。リガーゼは、液滴が融合する前にリガーゼを第1の流体液滴もしくは第2の流体液滴に、または第1の流体液滴および第2の流体液滴が融合された後に直接融合流体液滴に供給することによって、融合流体液滴に包含させることができる。
【0044】
いくつかの実施形態において、第1および第2の核酸プローブは、たとえば標的核酸および核酸プローブが実質的な相補性を有する場合、標的核酸と結合することができる。これらの例において、核酸プローブは(たとえばリガーゼとの連結を介して)共に結合され得て、(下で議論するように)核酸プローブとの結合を測定するために使用することができる。たとえば、いくつかの場合において、第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブは標的核酸と、相互に隣接した位置で結合する(たとえば標的核酸にハイブリダイズする)であろう(たとえば第1の核酸の配列は、標的核酸と実質的に相補的であり、第2の核酸の配列は、第1の核酸プローブと実質的に相補的である配列に隣接した標的核酸と実質的に相補的である)。このような場合、第1および第2の核酸プローブの連結は、リガーゼの存在のために発生することができる。しかし、第1および第2の核酸プローブが標的核酸プローブが標的核酸の隣接した位置で結合しない他の例では、連結は発生することができない。例として、第1および第2の核酸は、標的核酸と実質的に相補的である配列を有し得るが、該配列は相互に隣接していない(たとえば1つ以上の残基は、標的核酸プローブにて第1および第2の核酸プローブに相補的な配列の間に存在し得る)。
【0045】
いくつかの実施形態において、標的核酸を配列決定するために上述のような連結方法を利用することが好都合であり得る。たとえば、本明細書でさらに記載するように、このような方法によって、より小規模のライブラリからの比較的大規模な配列決定ライブラリの形成が可能になり得る。これによりライブラリの合成のための時間および/または費用(たとえば試薬の費用)を低減することができる。さらに連結方法がいくつかの実施形態において、非連結方法と比較して増強されたシグナルを含むことが可能であるのは、連結によってプローブ長が増大されて、次に結合エネルギーを増大することができるためである。いくつかの場合で、このような方法によって、単一塩基対の特異性が上昇して、それにより配列決定プロセスの精度が上昇することがある。これは、より短い核酸プローブが、より長い核酸プローブと比較してより高い単一塩基対特異性を有し得るためである。特異性および結合エネルギーは、いくつかの場合で、たとえば本明細書で議論するように、プローブ構造を改変して、プロセスを最適化するために、ユニバーサル塩基、ロックド核酸、ギャップ、または他の生化学試薬を含む核酸プローブを使用することによっても増強され得る。連結方法はまた、いくつかの場合で長いおよび短い核酸プローブの両方より成るライブラリを使用することの利点を好都合に組み合せ得る。たとえば短いプローブを使用して、一般に核酸プローブにより密接に結合されるであろう、より長いプローブが形成され得る。他方、より長いプローブはプローブの可撓性のために、短いプローブよりも特異性が一般に低い。したがって、ある連結方法は、より短いおよびより長いプローブの利点のいくつかを利用し得る(たとえばより短いプローブの特異的結合、より短いプローブが連結されてより長いプローブを形成し、したがって結合がより密接である)。
【0046】
本発明の連結方法の非限定的な例を図16に示す。図16Aに示すように、標的核酸80は、第1の核酸プローブ82および第2の核酸プローブ84に曝露される。いくつかの場合で、第1および第2の核酸プローブは、図16Bに示し、矢印81で示すように、相互に隣接した標的核酸とハイブリダイズし得る。第1の核酸プローブ82および第2の核酸プローブ84を含む標的核酸80は次に、矢印83によって示すように、リガーゼ86に曝露され得る。図16Cに示すように、第1および第2の核酸プローブは連結されて、核酸オリゴマー88を形成し得る。しかしいくつかの場合で、第1および第2の核酸プローブは、図16Eに示し、矢印87で示すように、標的核酸において相互に隣接してハイブリダイズしない。このような例において、矢印89によって示すように、第1核酸プローブ82および第2の核酸プローブ84を含む標的核酸80のリガーゼ86への曝露時に、核酸プローブの実質的な連結は発生しないであろう。いくつかの場合で、核酸プローブの一方または両方が標的核酸にハイブリダイズせず(たとえば核酸は、実質的に相補的ではない)、第1の核酸プローブと第2の核酸プローブとの間に連結は発生しないであろう。一例として、図16Dに示し、矢印85で示すように、第1の核酸プローブ82のみが標的核酸80とハイブリダイズし、これに対して第2の核酸プローブ84は標的核酸80とハイブリダイズしない。
【0047】
別の非限定的な例として、2個の3mer核酸プローブが相補的であり、隣接して、正しい順序でハイブリダイズする場合、それらは連結されて、図36Aおよび36Bに示すように新たな6merが形成され得る。図36Aは、隣接する相補的3merの標的核酸へのハイブリダイゼーションを示す。図36Bは、核酸プローブのリガーゼとの連結を示す。連結は、2個の3merプローブを共に共有結合して、さらに密接に結合された6merを形成する。連結前に、プローブの結合エネルギーは、3merの結合エネルギーのみであり、このエネルギーは一般に、あまりに低すぎて室温では検出できない。連結後に、2個の3merは6merとなり、6merは3merの2倍の結合エネルギーを有し、それゆえ図53Cに示すように、ハイブリダイズすることができる。それゆえプローブの連結は、短いプローブの非常に特異的であるが過渡的な結合に依存して、密接に結合した複合プローブを産生する。
【0048】
第1および第2の核酸プローブの結合は、たとえば核酸プローブの少なくとも1つと結合した信号発信実体の変化によって測定され得る。第1および第2の核酸プローブが隣接位置にて標的核酸に対して相補的または実質的に相補的である場合、ここで第1および第2の核酸プローブ(信号発信実体を含む)は上で議論したように標的核酸と結合して、連結反応に関与する。したがって、連結された核酸プローブの信号発信実体を決定することにより、核酸プローブの両方の配列に基づいて標的核酸の配列の一部が決定され得る。反対に、第1および第2の核酸プローブが標的核酸配列と結合できない場合(たとえば配列が十分に相補的でない場合)、ここで連結反応は起こり得ず、決定されたシグナル実体は異なる信号を有するであろう。いくつかの場合で、第1の群からの各核酸プローブは第1の信号発信実体または識別要素を含み、第2の群からの各核酸プローブは第2の信号発信実体または識別要素を含む。第1および第2の核酸プローブの連結は、第1および/もしくは第2の信号発信実体ならびに/または識別要素を決定することによって決定され得る。
【0049】
いくつかの場合で、核酸プローブの第1の群および/または核酸プローブの第2の群は、選択した長さの配列すべての少なくとも一部を含み得る。たとえば核酸プローブの第1の群は、3核酸残基を持つすべてのプローブの各部分の少なくとも1つを含み得る。核酸プローブの第1の群および核酸プローブの第2の群は、実質的に類似していてもしていなくてもよい。いくつかの場合で、核酸プローブの第1の群は、核酸プローブの第2の群と本質的に同じプローブを含む。いくつかの場合で、核酸プローブの第1および第2の群は、実質的に考えられるすべての3merを含む。いくつかの場合で、液滴は第1の群からの1個のプローブおよび第2の群からの1個のプローブを含み得る。他の場合では、液滴は第1の群からの第1の種類の複数のプローブおよび第2の群からの第2の種類の複数のプローブを含み得る。
【0050】
核酸プローブの第1の群およびまたは第2の群は、実質的に類似しているか、または異なり得る。たとえば核酸の第1の群および第2の群は、第1の群および第2の群が考えられるすべての3merの少なくとも一部を含む場合に実質的に類似しているが、それらが異なる信号発信実体を含む、または信号発信実体が異なる位置に配置されている(たとえば3’末端対5’末端)という点で異なり得る。区別可能な識別要素の第1の群および区別可能な識別要素の第2の群は、実質的に類似しているか、または異なり得る。いくつかの実施形態において、核酸プローブの第1の群および/または第2の群は、考えられる3mer、4mer、5mer、6mer、7mer、8mer、9mer、10merなどを含む。
【0051】
A、G、C、およびTに加えて、他の核酸残基もいくつかの場合で存在し得る。たとえばいくつかの場合で、核酸プローブの少なくともいくつかは少なくとも1個のユニバーサル残基をさらに含み得る。たとえばさらなるユニバーサル残基を含む3merは、配列NNNXXXを有し得て、ここでNはユニバーサル残基であり、XXXの各残基は独立して、A、G、C、またはTのいずれか1つである(たとえば3mer)。
【0052】
ユニバーサル塩基またはユニバーサル残基(たとえば「N」)は、本明細書で使用するように、核酸塩基(たとえばヌクレオチドまたはPNA)の形でポリマー構造中に包含されたときに、核酸塩基を有する相補的ポリマー構造の塩基を顕著に区別しない。たとえばユニバーサル塩基は、A、T、CおよびGから選択された1を超えるヌクレオチドにハイブリダイズできる。ユニバーサル残基は当業者に公知となるであろう。核酸塩基の非限定的な例は、デオキシイノシン、3−ニトロピロール、4−ニトロインドール、6−ニトロインドール、5−ニトロインドール、6−メチル−7−アザインドール、ピロールピリジン、イミダゾピリジン、イソカルボスチリル、プロピニル−7−アザインドール、プロピニルイソカルボスチリル、アレニル−7−アザインドール、8−アザ−7−デアザ−2’−デオキシグアノシン、8−アザ−7−デアザ−2’−デオキシアデノシン、2’−デオキシシチジン、2’−デオキシウリジン、2’−デオキシアデノシン、2’−デオキシグアノシン、7−デアザ−2’−デオキシイノシン、2’−アザ−2’−デオキシイノシン、3’−ニトロアゾール、4’−ニトロインドール、5’−ニトロインドール、6’−ニトロインドール、4−ニトロベンズイミダゾール、ニトロインダゾール(たとえば5’−ニトロインダゾール)、4−アミノベンズイミダゾール、イミダゾ−4,5−ジカルボキサミド、3’−ニトロイミダゾール、イミダゾール−4−カルボキサミド、3−(4−ニトロアゾール−1−イル)−1,2−プロパンジオール、および8−アザ−7−デアザアデニンを含む。
【0053】
いくつかの場合で、第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブそれぞれの一端のみが相互に連結し得るように、核酸プローブの第1の群は3’末端で連結することが可能であり、核酸プローブの第1の群は5’末端で連結することが可能であり得る。したがって、連結を発生させるためには、プローブは標的核酸に正しい順序でハイブリダイズする必要がある。すなわちプローブは、第1のプローブの3’末端および第2のプローブの5’末端が相互に隣接してプローブが連結できるように、標的核酸にハイブリダイズしなければならない。第1のプローブの5’末端および第2のプローブの3’末端が相互に隣接するように、第1のプローブおよび第2のプローブが標的核酸にハイブリダイズする場合、プローブは結合可能でないことがある(たとえば第1のプローブの5’末端および第2のプローブの3’末端は、その末端でのハイブリダイゼーションを防止する実体(たとえば識別要素、信号発信実体など)を含む)。
【0054】
連結方法によって、比較的より少ない数の液滴が最初に調製され得る。たとえば、考えられるすべての6merの総数を含む複数の液滴が生成される場合、本明細書に記載した技法を使用して4,096種類の液滴が産生されねばならない。しかし、2つの群の3merを用いて上述の連結方法を使用して考えられるすべての6merを調査する場合、わずか128種類の液滴が産生されねばならない(たとえば3merの第1の群(64)および3merの第2の群(64)。第1の群の液滴は、第2の群の液滴と融合して液滴のライブラリを形成し得て、各液滴は第1の群からの液滴および第2の群からの液滴を含む。
【0055】
SBH(ハイブリダイゼーションによる配列決定)バイオインフォマティクスを使用して、シングルパスで配列決定できる標的核酸の長さは、ライブラリ内のプローブ数の約4分の1になると予測できる。たとえば、64要素がある3merのライブラリ(43)の場合、約10〜12塩基の標的核酸を配列決定できる。たとえば、4096要素がある6merのライブラリの場合、約1000塩基の標的核酸を配列決定できる。また別の例として、約1700万のプローブがある12merのライブラリの場合、約400万塩基の標的核酸を配列決定できる。しかしこのように大きなライブラリは、標準方法によって合成するには実用的ではない大きさである。しかし本発明のある方法により、12merは、2個の6merを共に連結することによって形成可能であり、これには6merライブラリの4096+4096=8192プローブが合成されることが必要である。これは、1700万要素のライブラリ全体のプローブ数の0.0005%である。上述のように、12merを作製する6merは3merを連結することによってそれ自体形成できるため、12merは4個の3merプローブを連結することによって形成可能であり、合計256個のプローブを合成することが必要である。この関係は式:
f(n)=(4nl+4n2...)/4(nl+n2..)、式中
nl+n2+...=R、
によって得られ、式中、f(n)は、全ライブラリと比較して合成されねばならないプローブの割合であり、Rは最終連結プローブの長さであり、n1、n2は、共に連結される第1、第2の...プローブ内の塩基の数である。いくつかの場合で、核酸プローブの少なくとも2個の、少なくとも3個の、少なくとも4個の、少なくとも5個の、少なくとも6個などの群が提供され得る。本明細書に記載する連結方法は、核酸プローブの2個を超える群を含むように拡大され得る。連結により形成されたプローブの全長は、長さが少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16残基などである。
【0056】
核酸プローブの第1の群および第2の群の組み合せの非限定的な例を図17に示す。簡単にするために、核酸プローブ246の第1の群および核酸プローブ248の第2の群についての以下の例を示し、図17Aに示すように、プローブの各群は、4個のユニバーサル核酸残基および1個のA、C、G、またはT残基を含む(たとえばNNNNXまたは4個のユニバーサル残基を含むモノマー)。核酸プローブ246の第1の群は、4個のプローブ(250、252、254、256)を含み、ここで各プローブは信号発信実体または識別要素を(表示したように)3’または5’側に含む。核酸プローブ248の第2の群は、4個のプローブ(258、260、262、264)を含み、ここで各プローブは、核酸プローブの第1の群と比較して、信号発信実体または識別要素を(表示したように)5’または3’側に含む。図17Bに示すように、それぞれ第1の群からの少なくとも1個のプローブおよび第2の群からの少なくとも1個のプローブを含む、複数の液滴266が形成される。この例において、第1の群からの各プローブが第2の群からの各液滴を有する液滴中に含有される場合、16個の液滴が形成されるであろう。しかしいくつかの場合では、第1の群からのすべての液滴が、第2の群からの各液滴を有する液滴と組み合されるわけではない。
【0057】
ある例において、第1の群の核酸プローブはそれぞれ少なくとも1個の区別可能な識別要素と組み合わされ、第2の群の核酸プローブはそれぞれ少なくとも1個の区別可能な識別要素と組み合われ得る。たとえば、第1の群の区別可能な核酸プローブおよび第1の群の区別可能な識別要素を含む第1の群の液滴が形成され、第2の群の区別可能な核酸プローブおよび第1の群の区別可能な識別要素を含む第2の群の液滴が形成され得て、流体液滴の第2の集団を形成する。融合液滴に含まれる核酸プローブは次に、核酸プローブを決定することに関連して本明細書で議論するように、区別可能な識別要素を識別することによって識別され得る。識別要素は、標的核酸への液滴の曝露後に各プローブの配列を決定するためにも使用され得る。第1の群の核酸プローブと結合した区別可能な識別要素および第2の群の核酸プローブと結合した区別可能な識別要素は、相互から区別され得るまたはされ得ない。いくつかの場合で、すべて(たとえばすべての第1およびすべての第2の核酸プローブ)が区別可能な識別要素を決定することによって識別できるように、それらが区別可能であろう。いくつかの場合で、第1の群および第2の群からの液滴それぞれは、第1および第2の群からの各プローブの配列が区別可能な識別要素に関連付けられるように、少なくとも区別可能な識別要素を含み得る。
【0058】
第1の群の核酸プローブおよび第2の群の核酸プローブを含むライブラリは、各種の方法を使用して生成され得る。液滴のライブラリは、本明細書に記載するように、非マイクロ流体またはマイクロ流体法を使用して生成され得る。一般に、第1および第2の核酸プローブの連結は、それらが標的核酸に曝露された後まで発生しない。
【0059】
非マイクロ流体法の非限定的な例として、核酸プローブの第1および第2の群からの各核酸プローブが別個の容器に配置され得る。第1の群からの各プローブが第2の群からの各プローブと組み合されるまで、第1の群からの各核酸プローブは、別個の容器内の第2の群からの各核酸プローブと組み合され得る。たとえば図30は、それぞれ3merを含む第1の群からの64プローブおよび第2の群の核酸プローブをそれぞれ含む、ライブラリAおよびライブラリBの概略図を示す。ライブラリAからの各プローブは、ライブラリBからの各プローブと組み合されて、64×64=4096要素の複合ライブラリを形成する。いくつかの実施形態において、このことはアレイを使用して実施され得る。たとえば少なくとも4096の空のウェルを含有する大型ウェルプレートが用意され、各ウェルではライブラリAおよびライブラリBからの核酸プローブの独自の組み合せが混合され得る。たとえばウェルの第1列では、プローブA(1,1)は、プローブB(1,1)、B(1,2)、...、B(2,1)、B(2,2)、...、B(8,7)、およびB(8,8)と混合され得る。次の列において、プローブAおよびプローブBの考えられるすべての組み合せが混合されるまで、プローブA(1,2)はB(1,1)、B(1,2)、...、B(2,l)、B(2,2)、...、B(8,7)、およびB(8,8)などと混合される。これらの2つの小型ライブラリから、合計4096の組み合せが産生される(64×64=4096)。組み合されたA×Bライブラリの各要素は乳化され、エマルジョンはプールされて、各乳化からの少なくとも1個の液滴を含むプールライブラリが形成され得る。プールライブラリは、本明細書に記載して、図33Bに示すように、マイクロ流体装置に再注入され、標的核酸と融合され得る。
【0060】
いくつかのマイクロ流体の実施形態において、第1の群および第2の群からの核酸プローブはマイクロ流体装置で組み合され得る。たとえば、第1の群からの各核酸プローブは個別に乳化され、第1の群からの各プローブのエマルジョンは、核酸プローブの第1の群(たとえばライブラリA)に組み合され得る。ライブラリBを形成するために、このことが第2の群の核酸プローブにも実施され得る。ライブラリAおよびライブラリBは、図33Aに示すように、マイクロ流体装置に注入され得る。いくつかの実施形態において、図33Aの左に示すように、同時に、標的核酸を含む液滴もチャネル中に導入され得る。当業者に公知の技法を使用して、液滴を含む標的核酸および再注入されたライブラリの流量は、標的核酸を含む1個の液滴がライブラリAからの1個の液滴およびライブラリBからの1個の液滴と組み合されるように調整され得る。マイクロ流体液滴を融合するために本明細書に記載した技法を使用して、3個の液滴が融合され得る。
【0061】
別の非限定的な例として、第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブを含む複数の液滴は、第1の核酸プローブを含む複数の液滴を第2の核酸プローブを含む複数の液滴のうち1個と融合させることによって調製され得る。すなわち、第1の群の核酸プローブから選択される少なくとも1個の核酸プローブをそれぞれ含む第1の複数の液滴が調製され、第2の群の核酸プローブから選択される少なくとも1個の核酸プローブをそれぞれ含む第2の複数の液滴が調製され得る。第1の複数の液滴からの液滴は、第2の群の液滴からの液滴と融合され得て、それにより第1の群の核酸プローブから選択される少なくとも1個の核酸プローブおよび第2の群の核酸プローブから選択される少なくとも1個の核酸プローブを含む液滴が形成される。この工程は、第1の群からの核酸プローブの実質的にすべてが第2の群からの核酸プローブの実質的にすべてを含む液滴に含まれるように、複数の融合液滴が形成されるまで反復され得る。形成された融合液滴のライブラリは次に、標的核酸を含む第3の液滴と融合され得る。
【0062】
標的核酸を配列決定するための別のセットの実施形態は、次の通りである。核酸プローブ(信号発信実体を含有し得る)ならびに、少なくとも、第1の識別要素、第1の識別要素から区別可能な第2の識別要素、ならびに第1の識別要素および第2の識別要素から区別可能な第3の識別要素を含む第1の流体液滴が提供され得る。いくつかの場合で、第1、第2および第3の識別要素から区別可能な第4の識別要素も存在し得る。いくつかの実施形態において、各識別要素はオリゴヌクレオチドも含み得て、液滴内のいくつかの識別要素は区別可能なオリゴヌクレオチドをしばしば含み得る。いくつかの場合で、オリゴヌクレオチドはそれぞれ1個以上のユニバーサル核酸残基を含有する。たとえば、所与の液滴内のオリゴヌクレオチドはそれぞれ複数のユニバーサル核酸残基を含有し得て、液滴中の各オリゴヌクレオチドは、ユニバーサル残基ではない残基によって異なり得る。
【0063】
詳細で非限定的な実施例として、流体液滴中に4個の区別可能な識別要素が存在するとき、4個の区別可能な識別要素のオリゴヌクレオチドは、A(N)n−1、C(N)n−1、G(N)n−1、およびT(N)n−1であり得て、式中、Nはユニバーサル核酸残基であり、nはオリゴヌクレオチドの長さである。この例において、オリゴヌクレオチドは1個の残基によってすべて異なる。いくつかの場合で、オリゴヌクレオチドのユニバーサル核酸部分の長さは4残基である。他の場合では5残基である。また他の場合では、6残基である。いくつかの例において、異なる残基は、オリゴヌクレオチドの5’末端位置に位置して、たとえば5’−XN(n−1)−3’である(Xは天然発生型核酸残基である)。しかし他の例において、異なる残基はオリゴヌクレオチドの5’末端からの第2の位置に配置され、たとえば5’−NXN(n−2)−3’である。また他の例において、異なる核酸は他の位置に配置され、たとえば5’−NNXN(n−3)−3’である。
【0064】
この例では、標的核酸を含む第2の流体液滴も提供され得る。流体液滴および第2の流体液滴は次に融合されて、融合流体液滴を形成することができる。いくつかの場合で、標的核酸と結合することができる核酸プローブは、たとえばそれらが相補的および実質的に相補的である場合に存在し得る。さらに、識別要素のオリゴヌクレオチドの1個も標的核酸と結合され得る。
【0065】
核酸プローブおよび識別要素のオリゴヌクレオチドの1個が標的核酸と結合されるようになったいくつかの例において、核酸プローブおよび識別要素のオリゴヌクレオチドは、(たとえば連結より)共に結合され得て、これは結合を測定するために(下で議論するように)使用することができる。識別要素のオリゴヌクレオチドおよび核酸プローブの配列が標的核酸に対して相互に隣接して位置決めされるときに、通例連結が発生して、オリゴヌクレオチドおよび核酸プローブが標的核酸に対して正しく位置決めされていない場合には、実質的な連結は発生しないであろう。いくつかの場合で、オリゴヌクレオチドおよび核酸プローブ配列の連結は、たとえばDNAリガーゼなどの任意の好適な技法を使用して、融合流体液滴中にリガーゼを供給することによって引き起こされ得る。たとえばリガーゼは、液滴が融合流体液滴に直接融合される前に第1の流体液滴または第2の流体液滴にポリメラーゼ供給することによって、融合流体液滴に包含され得る。
【0066】
核酸プローブおよび識別要素のオリゴヌクレオチドの連結はたとえば、識別要素および核酸プローブの信号発信実体の結合を測定することによって決定され得る。核酸プローブが標的核酸に対して相補的または実質的に相補的である場合、ここで(信号発信実体を含む)標的核酸は標的核酸を結合して、連結反応に関与することができる。区別可能な識別要素は、それぞれの結合したオリゴヌクレオチドが1個の位置のみで異なるように選択され(たとえば残りの残基はユニバーサル核酸残基である場合)、ここで区別可能な識別要素の1個のみが連結反応に関与できるであろう。したがって、核酸プローブの信号発信実体と結合した区別可能な識別要素を決定することによって、標的核酸の配列の一部が、核酸プローブの配列および識別要素のオリゴヌクレオチドの配列の両方に基づいて決定され得る。反対に、核酸プローブが標的核酸配列と結合できない場合(たとえば核酸が十分に相補的でない場合)、ここで連結反応は発生することはなく、識別要素のいずれも核酸プローブの信号発信実体と結合することが見出されないであろう。
【0067】
上の方法の非限定的な例を図4に示す。この例において、核酸プローブ31、第1の識別要素32、第1の識別要素から区別可能な第2の識別要素33、第1の識別要素および第2の識別要素から区別可能な第3の識別要素34、および第1、第2および第3の識別要素から区別可能な第4の識別要素35を含有する、第1の流体液滴30が提供される。もちろん、1コピーを超える識別要素が液滴内に存在し得る。区別可能な識別要素はそれぞれ、結合されたオリゴヌクレオチドを含むことができる。これらの核酸オリゴヌクレオチド配列はそれぞれ他の識別要素と結合した他の核酸オリゴヌクレオチドと1個の残基が異なるが、残りの残基がユニバーサル核酸残基であり得るように選択され得る。たとえば4個の区別可能な識別要素と結合した4個のオリゴヌクレオチドはNANNNN、NTNNNN、NGNNNN)、およびNCNNNN(または本明細書で記載するような、他の任意の組み合せ)であり得る。この実施例において、標的核酸37を含む第2の流体液滴36も提供される。第1の流体液滴および第2の流体液滴は、矢印300によって示すように、本明細書に記載する任意の好適な技法を使用して融合され、流体液滴38を形成する。いくつかの場合で、核酸プローブ31は標的核酸37と結合するようになり、矢印301によって示すように、識別要素のオリゴヌクレオチドの1つ(32、33、34、または35)も標的核酸37と結合するようになり得る。図に示すように、それぞれのオリゴヌクレオチドおよび核酸プローブ配列が標的核酸37と適正に結合する場合に、識別要素のオリゴヌクレオチドを核酸プローブの核酸配列に結合することができるリガーゼ39が融合流体液滴に供給される。いくつかの場合で、リガーゼは配列間に任意のギャップまたはインタリング配列がある場合には連結しないであろう。核酸プローブの信号発信実体と結合した識別要素は次に、矢印302によって示すように決定され得る。このような決定の技法は下で議論する。
【0068】
本発明の複数の詳細な例を上で議論したが、上の工程および/またはさらなる工程の任意の組み合せも標的核酸を配列決定するために使用され得ることに注意すべきである。
【0069】
標的核酸の配列は、複数の区別可能な核酸プローブの1個への標的核酸の結合(または非結合)を決定することによって決定され得る。標的核酸は、それらが実験条件下で水素結合によって比較的安定な2本鎖を形成するときに、核酸プローブと結合され得る。比較的安定な水素結合は、本明細書で議論するように、ワトソン−クリック相補性(たとえばAはTに対応するが、GまたはCには対応せず、GはCに対応するが、AまたはTには対応しない)および/またはGCゆらぎなどの他の効果、もしくはロックド核酸またはユニバーサル塩基によって引き起こされる他の結合のために形成され得る標的核酸の配列を決定するための好適な方法の非限定的な例は、当業者に公知であるハイブリダイゼーション技法による配列決定を含む。
【0070】
ハイブリダイゼーションによる配列決定は(SBH)、たとえば米国特許第5,202,231号で以前に記載された、標的核酸中の核酸残基配列を調べる方法である。一般にSBHは、定義された配列の核酸配列プローブのセットを使用して、標的配列のより長い標的鎖で相補的配列を探す。標的にハイブリダイズする定義された配列は、標的核酸の配列を構築するために、コンピュータアルゴリズムを使用して整列させることができる。
【0071】
それゆえ本発明の一実施形態において、標的核酸は核酸プローブのある組み合せと結合して、特徴的な「ハイブリダイゼーション」パターンをもたらし得る。所与の試料における正の結合(またはハイブリダイゼーション)イベントはそれぞれ、標的核酸に関する不連続な情報を与える。いくつかの場合で、標的核酸は、任意の特定の核酸プローブが標的核酸と結合する場所を正確に決定せずにサンプリングされ得る。標的核酸再構築のためのアルゴリズムおよびソフトウェアが、ハイブリダイゼーションパターンに基づいて開発されており、当業者に公知である。しかし他の場合では、本明細書に記載するようなハイブリダイゼーションパターンの分析は、標的核酸配列自体を特異的に決定せずに、標的核酸配列の「指紋」識別を与え得る。ハイブリダイゼーションのパターンも手動またはコンピュータによって分析され得る。
【0072】
本発明の別の態様は一般に、液滴が区別可能な核酸プローブおよびまたは識別要素を含有する、液滴の集合を生成するシステムおよび技法に関する。いくつかの実施形態において、複数の区別可能な識別要素を使用して複数の流体液滴を識別することができ、いくつかの場合では、区別可能な識別要素を使用して、各液滴内に存在する(たとえば核酸プローブの)核酸配列を決定する。たとえば、一実施形態において、少なくとも64、少なくとも256、少なくとも1024、少なくとも4096、または少なくとも約16,384またはそれ以上の流体液滴が調製され得て、各流体液滴は核酸プローブ(核酸プローブの複数のコピーを含む)および組み合されてその核酸プローブを識別して、別の核酸プローブは識別しない1つ以上の識別要素を含有する。本発明は、1セットの実施形態において、流体液滴のこのような集合を調製するためのシステムおよび方法を提供する。
【0073】
一実施形態において、複数の区別可能な識別要素を使用して、複数の流体液滴または核酸プローブまたは他の好適な試料を識別する。たとえば蛍光粒子を使用する場合、たとえば少なくとも5個の区別可能な粒子、少なくとも約10個の区別可能な粒子、少なくとも約20個の区別可能な粒子、少なくとも約30個の区別可能な粒子、少なくとも約40個の区別可能な粒子、少なくとも約50個の区別可能な粒子、少なくとも約75個の区別可能な粒子、または少なくとも100個以上の区別可能な粒子を有する区別可能な粒子のセットが最初に決定される。このようなセットの非限定的な例はLuminexから入手できる。区別可能な識別要素は、複数の群(たとえば、2、3、4、5、6、7、またはそれ以上)に分割され得て、ここで各群は区別可能な識別要素のセットのうち少なくとも2つの構成要素を含有し得る。
【0074】
試料は次に区別可能な識別要素の群のそれぞれから選択した1つの構成要素と結合され得る。たとえば、第1の試料は、第1の群から選択された第1の要素、第2の群から選択された第1の要素、および第3の群から選択された第1の要素の組み合せによって、これらの要素が相互から区別可能であるために識別され得る;第2の試料は、第1の群から選択された第1の要素、第2の群から選択された第1の要素と、ただし第3の群から選択された第2の要素との組み合せによって識別され得る。独自の組み合せの数は、この例では、各群の構成要素の数の単なる積である;それゆえ多数の識別要素の区別可能なセットが調製できる。それゆえ、たとえば少なくとも6つの識別要素を定義することによって、識別要素が少なくとも3つの群に配置され、各群が少なくとも2つの識別要素を有する場合、少なくとも8つの試料のそれぞれを、少なくとも3つの各群から1つの識別要素が存在するように選択された少なくとも3つの識別要素と結合させることによって、少なくとも8つの異なる試料を決定することができる。各群の構成要素の数および/または存在する群の数を増加させることによって、なお多くの数が得られる。さらに、各群の構成要素の数はいくつかの場合で同じでもまたは異なっていてもよい。
【0075】
他の実施形態において、他のコード化方法も可能であることに注意すべきである。たとえば、核酸プローブおよび他の試料が任意に番号付けされ、存在する区別可能な識別要素に対応する2進数字を加算することによって識別されるように、区別可能な要素を使用して2進数字を表し得る。
【0076】
したがっていくつかの実施形態において、流体液滴は、流体液滴にこのような方式で配置された1つ以上の識別要素を導入することによって識別され得る。比較的多数の流体液滴が識別され得る。たとえば異なる核酸プローブを含有する数10、数100、または数1000の流体液滴の集合は、各液滴にこのような方法で決定された3つまたは4つの識別要素を添加することによって識別され得る。
【0077】
非限定的な例として、1セットの実施形態において、40の区別可能な識別要素を使用して、最大約10,000の区別可能な核酸プローブを以下のようにコードし得る。40の区別可能な識別要素は、それぞれ10要素の4つの群に分割される。各群の各要素は番号1〜0であり、4つの群はA、B、C、およびDと呼ばれる。各群からの1つの要素を(たとえば核酸プローブを含有する)流体液滴に添加して、識別要素をABCD順に読み取る。それゆえたとえば、群Aからの要素2、群Bからの要素1、群Cからの要素7、および群Dからの要素6は、流体液滴内に含有されていることが見いだされ、ここで液滴はA2−B1−C7−D6、すなわち液滴番号2176であろう。液滴の同一性、および/または液滴に含有されている種は、この液滴番号に基づいて、たとえば任意のルックアップテーブルによって、または何らかのコード方法によって決定できる。たとえば別の非限定的な例として、各要素が異なる塩基(たとえばA、C、T、またはG)を表すのに対して、各群が位置を表すように、4要素をそれぞれ含有する6つの群に識別要素を分割することによって、24の区別可能な識別要素のセットを使用して(たとえば核酸プローブ内に含有された)6merをコードすることができる。6merを含有する流体液滴内に6つの群それぞれからの1つの要素を含めることによって、6merは液滴内に存在する識別要素のセットによって識別され得る。それゆえ一例として、群1からの要素A、群2からの要素C、群3からの要素T、群4からの要素T、群5からの要素C、および群6からの要素Gが存在する場合、液滴内に含有された6merは1A2C3T4T5C6Gであり、配列はACTTCG(配列番号1)を表す。
【0078】
液滴の集合の生成の非限定的な例を図5に示す。複数の8個の流体液滴50が提供され、液滴はそれぞれ核酸プローブ(番号51〜58)を含有する。(1および2は群1、3および4は群2、ならびに5および6は群3として)3つの群に分類されている、6つの区別可能な識別要素60も提供される。区別可能な識別要素および核酸プローブは、液滴61中で組み合され、8個の核酸プローブのうち2個が同一の3つの区別可能な識別要素のセットと関連しないように、8個の液滴のそれぞれに、各群から1つずつ選択された3つの区別可能な識別要素が存在している。したがって、この詳細な例では、核酸プローブをそれぞれ含有する8個の各流体液滴は、3つの区別可能な識別要素によって識別される。
【0079】
詳細な実施形態での識別要素および/または信号発信実体の決定方法は、流体液滴内に存在する構成成分に依存するであろう。上述のように、決定は、放射能、蛍光、リン光、光散乱、光吸収、蛍光偏光などの技法を使用して行われ得る。このような原理を使用して動作する多くの検出装置が市販されている。検出装置を使用して液滴内に存在し得る信号発信実体および/または識別要素の少なくとも1つが決定され、いくつかの場合では、2個以上の検出装置が使用され得る。
【0080】
いくつかの実施形態において、液滴内に含有された信号発信実体および/または識別要素が検出装置の単一のファイルを通過するように、液滴が変形される。液滴は、液滴がたとえば図6Cに示すように遊離溶解状態にあるときに、狭窄部の断面積が液滴の断面積よりも小さくなるように、狭窄部を有するチャネルを介してそれを通過することによって変形され得る。いくつかの場合において、信号発信実体および/または識別要素の実質的にすべてが液滴内に配置されて、2つの液滴が液滴の移動方向に垂直である仮想面を同時に通過しないように、液滴が変形される。
【0081】
いくつかの実施形態において、検出は並行化され得る、すなわちいくつかの信号発信実体および/または識別要素は、1つのチャネル内でおよび/または複数のチャネル内で同時に決定され得る。たとえば、計時装置を使用して並列パスの検出を同期し得る。並列化検出の別の非限定的な例は、2つ以上のチャネルを、たとえば同時に撮像できるように位置決めされたカメラまたは他の撮像装置を使用することである。カメラはたとえば、ラインスキャナカメラ、2D CCDカメラなどであり得る。一実施形態において、少なくとも1個の水銀灯が選択した数のチャネルを照明して、(個別のフィルタを有し得る)複数のカメラを使用して特定の色スペクトルを取り込み得る。画像は、連続的に、または同時に取り込まれ得るので、各液滴の位置はすべてのカメラ画像で同じである。
【0082】
いくつかの場合で、単一の液滴の信号発信実体および/または識別要素はある時点で決定され得る。たとえば、図18Aに示すように、複数の液滴272がマイクロ流体チャネル270を貫流する。検出装置274はチャネル270に対して、単一の液滴278(または液滴278の一部)がある時点で決定されるように位置決めされ得る。>検出装置274は、信号発信実体および/または識別要素を断面276にて決定し得る。他の場合では、複数の液滴からの信号発信実体および/または識別要素はある時に決定され得る。たとえば、図18Bに示すように、複数の液滴282が複数のマイクロ流体チャネル280を貫流する(この非限定的な例では、4個のチャネルが示されている)。検出装置286はチャネル280に対して、検出装置をマイクロ流体チャネル282の断面287で通過する複数の液滴284からの信号発信実体および/または識別要素が決定されるように位置決めされる。別の非限定的な例として、図18Cに示すように、複数の流体液滴295は、入口291を通じて封じ込め区域290に流入し得る。検出装置294は封じ込め区域290に対して、複数の流体液滴295からの信号発信実体および/または識別要素が断面296にて決定され得るように位置決めされる。いくつかの場合で、封じ込め区域290は、ゲート293(たとえば弁)を含み得る出口292を有して複数の流体液滴の流れを制御し得る。いくつかの例では、ゲート293によって、流体の流れは可能になるが、流体液滴の流れは可能になり得ない。いくつかの場合で、1秒間に少なくとも約100個の、少なくとも約1000個の、少なくとも約10000個の、少なくとも約100000個の、少なくとも約500000個の、少なくとも約100万個の、少なくとも約500万個の、少なくとも1000万個の液滴が決定され得る。
【0083】
1回に複数の液滴が測定され得る例では、複数の液滴の測定を補助する方法および/またはシステムが使用され得る。いくつかの場合で、液滴のアレイを同時に撮影するために、検出装置は、液滴1個当りシグナルが1つのみ決定されるように、隣接する液滴の境界を決定する必要があり得る。1セットの実施形態により、光源を利用して液滴グレアを生成する以下の方法および/またはシステムは、封じ込め区域に収集される複数の液滴を測定するときに好都合であり得るのは、液滴を測定するために液滴の境界(たとえば縁)を決定することが困難であり得るためである。
【0084】
いくつかの場合で、液滴は基準スポットに対する位置のシグナルを測定することによって測定され得る。すなわち各液滴は基準スポットに関連付けられて、液滴のシグナルの測定は基準スポットとの関係によって測定され得る。基準スポットの生成は、たとえば液滴グレアが各液滴に生成されるように、液滴表面に光を当てることによって実施され得る。このことにより、本明細書でさらに記載するように、検出装置は各液滴の相対位置を決定して、それにより各液滴のシグナルを測定することができる。
【0085】
いくつかの場合で、複数の液滴を測定するときに、蛍光を調べるために使用した光源に加えて、第2の光源(たとえばランプ、LEDアレイ)が利用され得る。第2の光源は、測定される(たとえば顕微鏡下で描出される)液滴に対してある角度(たとえば直交しない角度)で照射され得る。球状液滴内での光および屈折の向きのために(本明細書で議論するように)、散乱光はカメラのレンズによって取り込まれて、各液滴の画像上に比較的集中した明るいグレア(たとえば液滴グレア)が生成され、これは容易に観察可能であり、バックグラウンドシグナルから区別可能である。それゆえ実質的に集束されたグレアは、液滴内の光の散乱のために液滴によって生成され得る。たとえば図44は、2つの別個の蛍光強度集団でのマイクロ流体液滴の蛍光強度のCCDカメラからの静止画像取り込みを示す。液滴の密充填によって、液滴の境界の決定に問題が発生し得る。図45は、液滴に対して斜角で照射する第2の光源を利用する、図44での上と同様の環境のCCDカメラからの静止画像取り込みを示す。液滴グレアは、各液滴について描出され、各液滴にて見ることができる。
【0086】
いくつかの場合で、液滴内の光散乱のために液滴グレアが実質的にすべての複数の液滴で生成されるように、光源は複数のマイクロ流体液滴の表面に向けられ得る。液滴に形成された液滴グレアが利用されて液滴の位置が決定され得る。いくつかの例において、液滴グレアが定量され得る。いくつかの場合で、ソフトウェアを使用して液滴に関連する液滴グレアが測定および/または定量され得る。たとえば液滴グレアは、液滴の中心からほぼ同じ角度および距離に位置決めされて、したがって各液滴の基準点として作用し得る。いくつかの場合で、液滴グレアは各液滴の中心から外れることがあり、したがって液滴を使用して蛍光データの収集に使用されるのと同じフレームにて、各液滴の基準点を識別することができる。それゆえ、いくつかの例において、(たとえば光源を点灯および消灯することによって)液滴グレアを作用および停止させたり、ならびに/または液滴識別およびデータ取り込みプロセスを分離したりする必要はない。
【0087】
図34は、マイクロ流体液滴を通じた照明の屈折および液滴の画像に出現するであろう発生したグレアについて詳説する、この例で説明した方法の概略図を示す。この非限定的な例において、光は55°の角度で照射される(しかし他の場合では、直交角度以外のほぼいずれも使用できる)。液滴に対する対物レンズのサイズおよび距離は、縮尺通りに描かれていない。この図では、照明500(たとえば斜角照明)は、顕微鏡ステージ上で撮像されている505マイクロ流体液滴502に対して55°の角度で示されている。屈折光線504は、液滴を介した屈折経路を追跡して、対物レンズ506によって収集される散乱光504のごく小さい領域と、焦点面の屈折光507があることがわかる。これより、顕微鏡を通じて観察したときに、粒子の画像上に液滴グレアが生じる。焦点面にない散乱光508の領域が多数ある。
【0088】
いくつかの実施形態において、斜角照明が十分に離れた(たとえば液滴から約1フィート)光源から発生する場合、ここで顕微鏡ステージの表面に密充填された液滴のアレイには、各液滴を同じ入射角でステージに接近させる平行照明が見えるはずである。これにより各液滴に同じ屈折パターンが生じるであろう;それゆえ液滴グレアは各液滴の画像で同じ位置に発生して、それにより各液滴の中心からほぼ同じ角度および距離にある、各液滴の基準点が生成される。
【0089】
液滴グレアは斜角照明を各種の角度で使用することによって生成され得るが、最良の結果を与えるであろう角度に対する範囲に制限があり得る。たとえば、照明が急角度で行われる場合、ここで生じた液滴グレアは液滴画像の中心に接近して発生し得て、このことにより蛍光強度などの液滴からの他の光学情報の収集が妨害され得る。他方、いくつかの実施形態において、照明があまりに浅い角度で照射される場合、いくつかの場合で、屈折光線のいずれも対物レンズによって収集されず、したがって液滴画像には液滴グレアが見られないであろう。所与の実験装置に好適である角度は実験的に決定され得る。
【0090】
液滴グレアの存在および/または位置は画像を観察することによって決定され得て、光源の角度はそれに従って調整されて液滴グレアを所望の存在および/または位置で産生し得る。いくつかの実施形態において、第2の光源の角度は、約30°未満、約30〜約80°、約80°超、約40°〜約70°、約20°、約30°、約40°、約50°、約60°、約70°、約80°などである。
【0091】
いくつかの場合で、第2の光源を利用する実験装置は、図35に表す通りであり得る。たとえば発光フィルタ520、二色性ミラー522、アーク灯524、励起フィルタ526、および対物レンズ528を備えた蛍光顕微鏡が提供され得る。測定される複数の液滴は顕微鏡ステージ530に位置決めされ得る。斜角照明532(たとえば第2の光源)は、ある角度(たとえば約55°)で提供され得る。顕微鏡534の光励起は、検出装置または撮像装置(たとえばCCDカメラなど)によって記録され得る。上の実験装置は、決して制限的ではなく、当業者は、追加の構成要素および/または日常的な技能のみで使用可能である他の機構を決定できるであろう。
【0092】
複数の液滴の画像は、検出装置またはCCDカメラなどの撮像装置によって取り込まれ得る。いくつかの実施形態において、規定の蛍光画像が得られるように、CCDカメラは狭いスペクトルの光(たとえば赤色光、緑色光など)のみにカメラまで通過させるフィルタを含み得る。2個以上のカメラが利用される例では、画像の取り込みは同期されても、されなくてもよい。詳細な実施形態において、画像の取り込みが同期されて、第1および第2の波長での蛍光情報の同時取り込みが可能となる。いくつかの実施形態において、第2の光源は、液滴グレアが少なくとも2つの画像の一方のみで観察される(たとえば緑色LED光源からの光は、緑色波長取り込みを有するカメラによって取り込まれた画像でのみ観察され得る)ように選択され得る。
【0093】
いくつかの実施形態において、形成された液滴グレアがバックグラウンドよりも明らかに強力である場合、液滴の位置のソフトウェア識別は簡単な方法を使用して完了され得る。液滴グレアは一般に各液滴の中心からの方向および距離の両方に関して常に出現するため、液滴グレアを基準点として使用できる。斜角照明の装置に応じて、液滴グレアを液滴の中心から外して配置して、液滴識別およびデータ取り込みの両方に同じ画像フレームを与えることができる。したがって、斜角照明は点灯および消灯していてもいなくてもよく、ならびに/または画像をわずかに異なる時点で撮像してもしなくてもよい。
【0094】
収集した画像は以下のように処理され得る。いくつかの場合で、(たとえば液滴グレアを含む)少なくとも1つの画像は、各液滴の液滴グレアを測定する簡単な強度閾値プログラムを使用することによって処理され得る。ソフトウェアが計算して、または人間の入力を使用して、液滴グレアと液滴の中心との間の角度および/または距離を決定することができる。いくつかの実施形態において、液滴グレアと液滴の中心との間の角度および/または距離は1回記録され得る(たとえば実験装置が変更されない場合)。ソフトウェアを使用して、(たとえば対応する液滴グレアに対する各液滴の位置を決定するために)各液滴グレアに対するサンプリングマスクが生成され得る。サンプリングマスクは、対応する時点で取り込んだ各画像(たとえば第1および第2のカメラによって取り込まれた第1および第2の画像)に重ねることができる。これにより、シグナル(たとえば蛍光強度読み取り値)が取り込まれる場合に液滴内に境界を定義する各液滴のためのマーキングシステムの生成が可能となる。この方法の詳細な例を実施例12に記載する。
【0095】
いくつかの場合で、複数のマイクロ流体液滴を表面(たとえばマイクロ流体チャネルまたは封じ込め区域)に撮像するために使用され得る撮像システムが提供され得る。該撮像システムは、表面上に配置された複数のマイクロ流体液滴に向かって直交するように光を集束させることができる第1の光源と、表面上に配置された複数のマイクロ流体液滴に向かって実質的に非直交角度で光を集束させることができる第2の光源を含み得る。たとえば第1の光源は顕微鏡からの光源であり、第2の光源はランプ、LEDなどであり得る。撮像システムは、表面に配置された複数のマイクロ流体液滴から生じる散乱(たとえば液滴グレア)および非散乱光(たとえば蛍光)を撮像できる撮像装置も含み得る。非散乱光は、第1の光源から発生し得て、散乱光は第2の光源から発生し得る。いくつかの場合で、撮像装置は、表面に配置された複数のマイクロ流体液滴から生じる散乱および非散乱光を同時に撮像することが可能であり得る。たとえば撮像装置は、カメラ、たとえばCCDカメラであり得る。いくつかの場合で、撮像システムは2個以上の撮像装置、少なくとも2個の撮像装置、少なくとも3個の撮像装置、少なくとも4個の撮像装置などを含み得る。当業者は、記載した撮像システムに付随し得るさらなる機構および構成要素(たとえば第3の光源、フィルタ)を決定することができるであろう。撮像システムは、少なくとも1000個の、少なくとも5000個の、少なくとも10000個の、少なくとも20000個の、少なくとも30000個の、少なくとも40000個の、少なくとも50000個の、少なくとも100000個などの液滴を同時に撮像することが可能であり得る。
【0096】
すべてではなく、いくつかの実施形態において、本明細書に記載したシステムおよび方法のすべての構成要素はマイクロ流体性である。「マイクロ流体性」は本明細書で使用するように、1mm未満の断面寸法、および少なくとも約3:1の長さの、チャネルに垂直な最大断面寸法に対する比を有する少なくとも1つの流体チャネルを含む装置、器具またはシステムを指す。「マイクロ流体チャネル」は本明細書で使用するように、この基準を満たすチャネルである。
【0097】
2個以上の液滴が当業者に公知であるように、たとえば組成物、表面張力、液滴サイズなどのために普通は融合または合体できない場合に、2個以上の液滴を融合または合体させて1個の液滴にすることができるマイクロ流体システムが提供され得る。2個以上の液滴が融合される実施形態の例は、本明細書で上述されている。流体液滴は、たとえばそれぞれ参照により本明細書に組み入れられている、Linkらによる“Formation and Control of Fluidic Species”という名称の、2006年7月27日U.S.Patent Application Publication No.2006/0163385として公開され、2005年10月7日に出願されたU.S.Patent Application Serial No.11/246,911;またはLinkらによる“Electronic Control of Fluidic Species”という名称の、2007年1月4日にU.S. Patent Application Publication No.2007/0003442として公開され、2006年2月23日に出願されたU.S.Patent Application Serial No.11/360,845で議論されているような任意の好適な技法を使用して共に融合され得る。一例として、マイクロ流体システムにおいて、液滴のサイズに対する液滴の表面張力によって、液滴の融合または合体の発生が防止され得る。一実施形態において、2個の液滴は、液滴の融合または合体を発生させるように2個の液滴の電気的相互作用を上昇させ得る、反対の電荷(すなわち必ずしも同じ大きさではない、正および負の電荷)を与えられ得る。電荷(正または負)は、テイラーコーンの使用によって、またはその他の好適な技法によって液滴に印加され得る。たとえば電場は液滴を含有する反応装置に印加され、液滴はコンデンサを貫流して、化学反応が起こって液滴を帯電させて、該液滴を反対の湿潤特性などを持つ領域上を流動させ得る。
【0098】
チャネルの「断面寸法」は、流体流の向きに対して垂直に測定される。本発明の構成要素の大半の流体チャネルは、約2mm未満の、いくつかの場合では約1mm未満の最大断面寸法を有する。1セットの実施形態において、本発明の実施形態を含有するすべての流体チャネルはマイクロ流体性であるか、または約2mmまたは約1mmを超えない最大断面寸法を有し得る。別の実施形態では、流体チャネルは一部は単一の構成要素(たとえばエッチングされた基材または成形ユニット)によって形成され得る。もちろん、より大きいチャネル、チューブ、チャンバ、リザーバなどを使用して、流体を大量に収容して、流体を本発明の構成要素に送達することができる。1セットの実施形態において、本発明の実施形態を含有するチャネルの最大断面寸法は、約500ミクロン未満、約200ミクロン未満、約100ミクロン未満、約50ミクロン未満、または約25ミクロン未満である。
【0099】
「チャネル」は本明細書で使用するように、流体流を少なくとも部分的に方向付ける物品(基材)の上または中の機構を意味する。チャネルは任意の断面形状(円形、楕円形、三角形、不規則、正方形または長方形など)を有することができ、被覆することもしないこともできる。チャネルが完全に被覆される実施形態において、チャネルの少なくとも一部は、完全に包囲された断面を有することができるか、またはチャネル全体はその入口および出口を除いて、その全長に沿って完全に包囲され得る。チャネルは、少なくとも約2:1、より通例には少なくとも約3:1、少なくとも約5:1、または少なくとも約10:1またはそれ以上の縦横比(平均断面寸法に対する長さ)も有し得る。開チャネルは一般に、流体輸送に対する制御を促進する特徴、たとえば構造的特徴(細長いくぼみ)および/または物理的もしくは化学的特徴(疎水性対親水性)または流体に力(たとえば含有力)を及ぼすことができる他の特徴を含むであろう。チャネル内の流体は、チャネルを部分的または完全に充填し得る。開チャネルが使用されるいくつかの場合で、流体は、たとえば表面張力(たとえば凹または凸メニスカス)を使用してチャネル内に保持され得る。
【0100】
チャネルは、たとえば少なくとも約5mmもしくは約2mm未満の、または約1mm未満の、または約500ミクロンの、約200ミクロン未満の、約100ミクロン未満の、約60ミクロン未満の、約50ミクロン未満の、約40ミクロン未満の、約30ミクロン未満の、約25ミクロン未満の、約10ミクロン未満の、約3ミクロン未満の、約1ミクロン未満の、約300nm未満の、約100nm未満の、約30nm未満の、または約10nm未満の流体流に対して垂直な最大寸法を有する任意のサイズであり得る。いくつかの場合で、チャネルの寸法は、流体が物品または基板を自由に貫流できるように選択され得る。チャネルの寸法も、たとえばチャネルである体積流量または線流量を与えるように選択され得る。もちろんチャネルの数およびチャネルの形状は、当業者に公知の任意の方法によって変更され得る。いくつかの場合で、2個以上のチャネルまたは毛管が使用され得る。たとえば、2つ以上のチャネルが使用され得るのは、それが相互の内側に位置決めされる、相互に隣接して位置決めされる、相互に交差して位置決めされるなどの場合である。
【0101】
本発明で使用され得るマイクロ流体システムの非限定的な例は、たとえばその全体がそれぞれ参照により本明細書に組み入れられている、“Formation and Control of Fluidic Species”という名称の、2006年7月27日にU.S. Patent Application Publication No.2006/0163385として公開され、2005年10月7日に出願されたU.S.Patent Application Serial No.11/246,911;“Method and Apparatus for Fluid Dispersion”という名称の、2005年8月11日U.S.Patent Application Publication No.2005/0172476として公開され、2004年12月28日に出願されたU.S.Patent Application Serial No.11/024,228;“Electronic Control of Fluidic Species”という名称の、2007年1月4日にU.S.Patent Application Publication No.2007/000342として公開され、2006年2月23日に出願されたU.S.Patent Application Serial No.11/360,845;“Method and Apparatus for Forming Multiple Emulsions”という名称の、2006年9月14日にWO 2006/096571として公開され、2006年3月3日に出願されたInternational Patent Application No.PCT/US2006/007772;“Systems and Methods of Forming Particles”という名称の、2007年3月8日にU.S.Patent Application Publication No.2007/0054119として公開され、2006年3月3日に出願されたU.S.Patent Application Serial No.11/368,263;“Multiple Emulsions and Techniques for Formation”という名称の、2007年3月28日に出願されたU.S.Provisional Patent Application Serial No.60/920,574;ならびに“Systems and Methods for Forming Fluidic Droplets Encapsulated in Particles Such as Colloidal Particles”という名称の、2006年の7月27日にWO 2006/078841として公開され、2006年1月20日に出願されたInternational Patent Application No.PCT/US2006/001938に開示されている。
【0102】
いくつかの実施形態において、本発明のシステムは、非マイクロ流体装置であり得る。たとえば2個以上の液滴は、クエット剪断破断試験セル、振とうエマルジョン、および/または膜乳化を使用して融合、操作および/または合体され得る。いくつかの実施形態において、2個以上の液滴は、基板に含有された1個以上の場発生構成要素からの電場および/または磁場を使用して1個の液滴に融合、操作および/または合体され得る。試料との相互作用および/または試料の操作ができるように配置された複数の電場および/または磁場発生構成要素を含むシステムの非限定的な例は、それぞれ参照により本明細書に組み入れられている、Hamらによる“Methods and Apparatus for Manipulation and/or Detection of Biological Samples and Other Objects”という名称の、2006年1月26日にU.S.Patent Application Publication No.2006/0020371として公開され、2005年4月13日に出願されたU.S.Patent Application Serial No.11/105,322、および“Methods and Apparatus for Manipulation of Droplets”という名称の、2008年6月26日に出願されたInternational Patent Application No.PCT/US2008/007941に開示されている。
【0103】
いくつかの場合で、磁場発生構成要素はアレイとして配列され得る。1個以上の電場および/または磁場発生構成要素を使用して構成要素を特定の順序で作動させて電場および/または磁場を発生させることによって、流体液滴または他の試料を基板に対して移動させることができる。たとえば2個の液滴は、その反対の電荷のために液滴の融合または合体を発生させるように2個の液滴の電気的相互作用を上昇させ得る、反対の電荷(すなわち必ずしも同じ大きさではない、正および負の電荷)を与えられることができる。たとえば電場は、1個以上の電場発生構成要素を使用して液滴に印加され得る。
【0104】
一実施形態において、上の組成物の1つ以上を含有するキットが提供され得る。「キット」は本明細書で使用するように、本発明の組成物の、および/またはたとえば先に記載したような本発明に関連する他の組成物の1つ以上を含むパッケージまたはアセンブリを通例定義する。キットの各組成物は液体形(たとえば溶液で)、固体形(たとえば乾燥粉末)などで提供され得る。本発明のキットは、いくつかの場合で、説明書が本発明の組成物と関連していることを当業者が認識するような方式で、本発明の組成物と関連して提供される任意の形式の説明書を含み得る。たとえば説明書は、組成物および/またはキットに関連する他の組成物の使用、修飾、混合、希釈、保存、投与、構築、貯蔵、包装、および/または調製のための説明書を含み得る。説明書は、任意の方式で提供されるこのような説明を含有する好適な媒体、たとえば記載または印刷、言葉、音声(たとえば電話)、デジタル、光学、視覚(たとえばビデオテープ、DVDなど)または電子コミュニケーション(たとえばインターネットまたはウェブベースのコミュニケーション)として、当業者によって認識可能な任意の形式で提供され得る。
【0105】
それぞれ参照により本明細書に組み入れられている、以下の参考文献:Weitzらによる“Systems and Methods for Nucleic Acid Sequencing”という名称の、2007年12月21日に出願されたU.S. Provisional Patent Application Serial No.61/008,862およびWeitzらによる“Systems and Methods for Nucleic Acid Sequencing”という名称の、2008年9月19日に出願されたU.S.Provisional Patent Application Serial No.61/098,710は、参照により本明細書に組み入れられている。またWeitzらによる“Creation of Libraries of Droplets and Related Species”という名称の、同日付に出願されたU.S.provisional patentが参照により本明細書に組み入れられている。
【0106】
以下の実施例は、本発明の各種の実施形態を示すために含まれている。当業者は、本開示に照らして開示され、なお同様または類似の結果を得る具体的な実施形態において、本発明の精神および範囲から逸脱せずに多くの変更を行えることを認識するであろう。したがって、以下の実施例は本発明のある実施形態を例証するためであって、本発明の全範囲を例示するものではない。
【実施例】
【0107】
(実施例1)
DNA配列決定方法の非限定的な例を、以下の予言的な実施例に記載する。図は、例証目的のためだけに5merを使用して表示する。他の長さも使用され得る。さらに、ロックド核酸残基、および/またはユニバーサル残基などの修飾残基もいくつかの場合で使用され得る。
図6を参照して方法例を議論する。特にこの方法は、ビーズに基づく標識方法、修飾ヌクレオチド、および蛍光を使用する例である。図6Aは、識別要素として使用される複数の色分けビーズ、たとえばLuminex Corporationが製造したようなビーズを示す。この実施例のビーズは、たとえば2つの別の染料の蛍光強度に基づいて100の区別可能な種類に分類できる直径5μmのビーズである(150)。これらのビーズに任意に1〜100の番号を付ける。
【0108】
ビーズは次のように識別のために使用され得る。これらの区別可能なビーズ40個を、図6Bに示すように、10個の構成要素をそれぞれ含有する4つのビーズ群に分割することができる(この実施例ではビーズ41〜100は使用しない)。この詳細な実施例では、すべての液滴は、(存在する各種類のビーズには、2個以上の同一のコピーがあり得るが)4つのビーズセットそれぞれから得た区別可能なビーズ1個を有する(図6B)。この実施例では簡単にするために、各ビーズは、(他の実施例では他の方法が使用され得るが)基数(10)系で桁数値を表す。たとえばビーズ1、11、21、および31が選択されて値1を表し得て、ビーズ10、20、30および40は値0を表す。詳細な例として、2176番目の溶液または標識は、ビーズ6(151)、17(152)、21(153)、および32(154)(図6C)を含有する。
【0109】
示した例において、この液滴は、いくつかの場合で1個以上のロックヌクレオチドおよび/またはユニバーサル残基を包含するように修飾され得る、標識核酸プローブ5’−*GATCT−3’(155)(配列番号2)(ここで*は、蛍光実体などの信号発信実体である)も含有する。核酸プローブおよびビーズを含有する溶液はそれぞれ個別に乳化およびプールされて、核酸プローブおよび少なくとも4つの区別可能なビーズを含有する分析用液滴の集合158を生成することができる(図6D)。標的核酸156がマイクロ流体装置(図示せず)に供給され、それぞれ核酸を含有する複数の液滴157がたとえば液滴−液滴融合技法によって形成される。液滴157は次に液滴158と融合されて、標的核酸、核酸プローブおよび対応する識別要素をそれぞれ含有する複数の融合液滴159を形成する。
【0110】
標的核酸および核酸プローブの結合はこの例では次のように測定されるが、他の場合では他の技法も使用され得る。複数の融合液滴159は矢印160で示すようにチャネル167内へ通過して、液滴は液滴内の各ビーズが検出装置161の単一のファイルを通過するように変形を受ける。示した実施例において、核酸プローブが液滴内の核酸に結合する場合、ここでは検出装置を使用して測定可能である核酸プローブの蛍光スペクトルの変化があるであろう。液体内のビーズおよび信号発信実体は、検出装置161の単一のファイルをそれらが通過するときに測定され、生じた蛍光量が記録される。この実施例では、標的核酸および核酸プローブの結合を示す(たとえば核酸プローブからの消光剤の放出によって引き起こされる)信号発信実体の蛍光の変化がある場合、ここで液滴の同一性は液滴内に含有される4個の区別可能なビーズを決定することによって決定される。たとえば、検出装置によって測定されたビーズがビーズ6、17、21、および32(プローブ標識核酸プローブ5’−*GATCT−3’(配列番号2)に相当)として識別される場合、ここで標的核酸に5’−GATCT−3’(配列番号2)の補体が発生することが決定できる。
【0111】
(実施例2)
この実施例は、ビーズベースの標識方法、Taqmanプローブ、および蛍光を利用する。実施例1と同様に、液滴は、4セットの識別要素ビーズタイプそれぞれから得た1個の構成要素を有する。図7Aは、図6に示したように、1個の液滴171中の考えられる構成要素の例を示す。この実施例の液滴ではTaqman分析が使用されるであろう。
【0112】
核酸プローブ169は、オリゴヌクレオチド174、信号発信実体172、および消光剤173を含み、消光剤は、光子の放出なしで別の染料により引き起こされた1つの染料の阻害である、蛍光(またはFoerster)共鳴エネルギー移動(FRET)の使用により信号発信実体172からの蛍光を低減(または増強)する。この詳細な実施例で、信号発信実体はオリゴヌクレオチドの5’末端に、消光剤は3’末端に見出される。
【0113】
Taqmanプローブは、図7Bの175によって示すように標的核酸にアニーリングする。次にTaqポリメラーゼは、176によって示すようにTaqmanプローブに達するまでヌクレオチドを付加する。非相補的Taqmanプローブは置換される。相補的Taqmanプローブは、Taqポリメラーゼ5’→3’エキソ活性によって標的核酸から分解される。それゆえ177に示すように、核酸プローブが標的核酸と結合する場合、消光剤173は信号発信実体172から分離して、178に示すように信号発信実体172を測定できるようにする。
【0114】
実施例1と同様に、標的核酸と核酸プローブの結合はここで任意の好適な技法を使用して測定できる。この実施例では、複数の核酸プローブ(この場合、信号発信実体および消光剤に結合されている)および1つ以上の識別要素が組み合されて分析的液滴の集合179が形成されて、図7Cに示すように標的核酸と、この実施例ではTaqポリメラーゼを含有する複数の液滴180と融合される。液滴179は次に液滴180と融合されて、複数の融合液滴181を形成する。液滴181は矢印182によって示すように、チャネル167を通過して、検出装置161によって測定される。核酸プローブが標的核酸に結合する場合、ここで信号発信実体が放出され得る。したがって信号発信実体の蛍光の差を使用して、核酸プローブと標的核酸との結合を測定できる。
【0115】
(実施例3)
この詳細な実施例は、DNA連結、ビーズ標識および蛍光を利用する。Luminex Corporationは、図8Aに示すように、100個の区別可能なビーズ210に分離できるビーズを提供している。各ビーズタイプは特定のバイオアッセイに特異的な試薬でコーティングすることが可能であり、試料からの特異的検体の捕捉および検出が可能となる。レーザは、各ビーズ粒子を識別する内部染料、およびアッセイ中に捕捉された任意のレポータ染料も励起する。
【0116】
図8Bおよび8Cは、以下を示す:40個のビーズを区別可能なビーズ10個をそれぞれ含む4つの群に分けて、各ビーズは、第1のセットの10個のビーズが「A」型セットおよび各種のユニバーサル残基214(すなわちビーズ1〜10はそれぞれオリゴヌクレオチドプローブセット5’−ANNNN−3’がそれらに結合されている)を有し、第2のセットの10個のビーズタイプ(すなわちビーズ11〜20)は、「C」型オリゴヌクレオチド213(すなわち5’−CNNNN−3’)がそれらに結合され、第3のセットの10個のビーズタイプ(すなわちビーズ21〜30)は、「G」型オリゴヌクレオチド212(すなわち5’−GNNNN−3’)がそれらに結合され、第4のセットの10個のビーズタイプ(すなわちビーズ31〜40)は、「T」型オリゴヌクレオチド211(すなわち5’−TNNNN−3’)がそれらに結合されるように、結合されたプライマを有するであろう。
【0117】
各ビーズタイプは、先に議論した系に類似した基数(10)系の数値も表す。たとえばビーズ1、11、21、および31は値1を表す(簡単にするために、ビーズ10、20、30および40は値0を表す)。第1の10個のビーズタイプ(A型セット)は、1の位の値(0〜9の数値)を表す。第2の桁は「C桁」であり、10の位の値を表す。第3の桁は「G桁」であり、最後の桁は「T桁」である。4桁数は、この詳細な例では、40個のビーズタイプによってTGCAの順でコードされる(図8D)。たとえば、2176番目の液滴タイプ219は、Luminexビーズタイプ6−A(215)、17−C(217)、21−G(216)、および32−T(218)を含有する(図8Cおよび7D)。図において、一例として、液滴219は、核酸プローブ、たとえばプローブ5’−*GATCT−3’(配列番号2)(226)も(その配列プローブの複数のコピーが液滴内に存在し得るが)含有する。
【0118】
標的核酸および核酸プローブの結合はこの例では次のように測定されるが、他の場合では他の技法も使用され得る。核酸プローブおよびビーズを含有する溶液はそれぞれ個別に乳化することが可能であり、次にエマルジョンはプールされて分析用液滴220の集合が生成される。すべての液滴は、4セットそれぞれから得た1個のビーズを有するであろう(しかしそのビーズの複数のコピーが存在し得る)。核酸プローブおよびビーズは次に、液滴中に共にカプセル化されることができる。標的核酸およびDNAリガーゼを含有する複数の液滴221も提供される。プールされたエマルジョンライブラリ液滴は、複数の221の液滴と(矢印222によって示すように)融合されて(図8E)、複数の融合液滴223を形成する。融合液滴223は、矢印224によって示すように、検出装置225を通過する。核酸プローブのテンプレートで方向付けされた結合によって、ビーズ上で核酸プローブおよびオリゴヌクレオチドの両方が相互に隣接しており、標的核酸に相補的である場合、ビーズは標的核酸と結合されるようになる。4個のビーズが1つを除くすべての位置でユニバーサル核酸残基を含有するため、図8Fに示すように、ビーズ上のオリゴヌクレオチドの核酸プローブへの結合が起こるように、4個のビーズのうち1個のみが標的核酸および核酸プローブに隣接して位置決めされる。
【0119】
ビーズ、標的核酸、および核酸プローブの結合はここで任意の好適な技法を使用して測定できる。たとえば図8Fに示すように、上述の4個のビーズ(215、216、217、および218)はもちろんのこと、核酸プローブ226および標的核酸227も含有する液滴が提供される。核酸プローブの配列が標的核酸の配列に相補的である場合、核酸プローブは標的核酸と結合するであろう。4個のビーズのうち1個は、図8Fに示すように(この図の216)、隣接して位置決めされている場合に核酸プローブの配列に連結可能であるオリゴヌクレオチドも含む;他の配列(215、217、および218)は、配列のヌクレオチドミスマッチのために隣接して位置決めできない。核酸プローブ216は、標的核酸プローブと結合したビーズのオリゴヌクレオチドに連結されるようになり、それゆえビーズ216のオリゴヌクレオチドは、核酸プローブ226に隣接する標的核酸227と結合できるようになる。ビーズは、それらが単一のファイルのチャネル狭窄部を通過する通過するときにデコードされて、ビーズに連結(すなわち結合)された標識核酸プローブの量が定量される。この実施例で示すように、「G」桁ビーズ(ビーズ21)216は核酸プローブ226と結合され、このことは標的核酸に相補的な配列が5’−GATCTGNNNN−3’(配列番号3であり、それゆえ標的核酸配列は配列5’−CATATC−3’(配列番号4)を含有することを示す。
【0120】
上で議論したように、ビーズと結合したオリゴヌクレオチドの異なる残基は、他の実施形態と同様に他の位置、たとえばオリゴヌクレオチドの5’末端からの第2の位置、たとえば5’−NXN(n−2)−3’に配置され得る。この実施例を図8Gに示す。この実施例において、識別要素229は、ビーズおよび配列5’−NGNNN−3’を有するオリゴヌクレオチドを含む。区別可能なビーズに結合するオリゴヌクレオチドを含む3つの他の識別要素(5’−NCNNN−3’、5’−NANNN−3’、5’−NTNNN−3’)も、液滴中に存在する。この実施例において、識別要素229は、核酸プローブ226の標的核酸227と結合される。識別要素および核酸プローブは、上述の実施形態と同様に連結することができる。ビーズは上で議論したようにデコードされて、標的核酸に相補的な配列が5’−GATCTNGNNN−3’(配列番号5)であり、標的核酸が配列5’−CXACATC(配列番号6)(Nはユニバーサル塩基であり、XはA、C、GまたはTのいずれか1つである)を含有することを示し得る。
【0121】
(実施例4)
いくつかの、しかしすべてではない実施形態において、本明細書に記載したシステムおよび方法のすべての構成要素がマイクロ流体性である。検出のための機器装置をここで示す。
【0122】
機器は、本実施例では、蛍光強度および蛍光偏光の両方を測定するように構成され得る光学縦列を含む。図9は、蛍光偏光(FP)検出に関する情報を表す。光学縦列は、光学機器内の一連のミラー、レンズおよびプリズムなどである。いくつかの実施形態において、光学縦列は、3個のレーザ、約5個の検出装置を含み得て、30μm液滴内の約1000個以上のフルオロフォアを測定することができる。蛍光分子が偏光によって励起される場合、分子がその発光寿命の間に著しく回転しないと仮定すると、蛍光分子は実質的に同じ偏光の光を放出するであろう。偏光解消、すなわち同じ偏光方向で放出される光の低減は、分子がその発光寿命の間に回転するときに起こる。より大型の分子311に結合した(そしてより長い転動時間を示す)染料は、溶解した遊離染料よりも低速で光を偏光解消し、したがって光は図9Aに示すように、偏光を維持するであろう313。他方、より小型の分子312に結合した染料は、溶解した遊離染料よりも高速で光を偏光解消し、したがって光314はもはや偏光されないであろう。図9Bは、異なる染料がその蛍光寿命に応じて異なる偏光を呈するであろうことを示す。FPは、染料が結合する分子の分子量によっても影響される。図9Cはこのことを表し、遊離フルオレセイン染料315、フルオレセイン標識20merオリゴヌクレオチド316、および第2のDNA分子にハイブリダイズしたフルオレセイン標識20merオリゴヌクレオチド317のFPを示す。この詳細な場合では、転動速度は残基スタッキングのために低下し得る。
【0123】
(実施例5)
この実施例は、本発明の一実施形態において、単一の液滴内中の少なくとも4個の異なる着色ビーズならびに蛍光偏光(FP)および/または蛍光強度(FI)を、液滴がチャネルを通過するときに分析およびデコードする装置を示す。レーザは、Power Technology,Inc.(Alexander,AR)を含む複数の製造者から購入され得る。光学縦列例を図10に示す。この光学縦列はモジュール式であり、フィルタおよびレーザは必要なときに交換できる。検出装置を5個備えたこの構成例は、2つの異なる発光波長にてFPを読み取ることができる。該装置は、FPを3つのチャネルで測定できるであろう。PDMSチップが上に設置されるステージは加熱される。
【0124】
この図では、使用される励起源はレーザであり、平行光線として照射される各種の色の複数のレーザを含むことができる。励起は、レーザ波長は反射するが、他のすべての波長は通過させる2色性レーザ線ミラーから反射される。レーザは、組み合されたテレスコープ型レンズを通過することによって拡大することができるか、または円柱レンズを通過することによってレーザ線に変わることができる。それらは次に、開口数の高いレンズを通じて集束されて小さいスポットとなる。高い開口数によって、試料により放出された蛍光の大きい立体角が対物レンズによって逆方向に取り込まれるようになる。蛍光は次に2色性ミラーを通過して、図に示すように、使用される特定のフルオロフォアおよびフィルタによって、各種の波長が検出装置アセンブリ中に反射される。蛍光偏光の測定には、偏光ビームスプリッタが必要である。偏光ビームスプリッタは一方の偏光(S)を反射して、他方(P)を通過させる。それぞれの強度は次に、別個のPMTを使用して測定される。次に値を組み合せて、GがG因子であり、通常は1である、式(S−G*P)/(S+G*P)に従って、蛍光極性を計算する。[mP]の単位で数値を生成するために、上の計算の数に1000を掛ける。代表的なFP値は、約20〜約1000mPの範囲に及ぶ。検出装置アセンブリは、PMT、ダイオード、またはアバランシェダイオードであり得る。シグナルは、LabVIEWで記載されたNI FPGAカード実行カスタムコードによって、コンピュータを使用しても監視される。図11のアセンブリは同様であるが、光学テーブル上に配置されている。この実施形態では、FPを最適化するために温度勾配が必要であり得る。これは装置ステージの下にペルチェ素子を配置して温度を制御することによって実施される。一実施形態において、実験は1kHzの周波数(1秒当り1,000液滴)で実行され、GHz周波数でデータを収集するであろう。別の実施形態において、検出感度は、異なるPMTの選択、より高い染料濃度を持つビーズの選択、および/または液滴中の染料標識の量の増加によって上昇され得る。いくつかの例において、装置は、ビーズの目詰まりを防止するために、幅広チャネルを備え得る、および/または流体力学的集束を使用し得る。いくつかの例では、一方の狭窄部が目詰まりした場合に、第2の狭窄部が作動可能となるように、チップ上で狭窄部を重複させることもできる。
【0125】
蛍光スタンドおよび液滴モニタを表す詳細な装置構成を図11に示す。レーザは左上に配置される。赤色レーザ400(30mW、635nm)を使用してCy5蛍光を作用させる。緑色レーザ401(125mW、532nm)を使用してHEX蛍光を作用させる。ビームは、562nm以下すべてを反射する562 2色性ミラー402(Semrock Brightline FF562−Di02−25×36)を使用して平行される。ビームは、左下のミラー403から右下の光学機器404中に反射する。光は、488/532/638レーザ線2色性ミラー405(Semrock Brightline Di01T488/532/638−25×36×5.0)を通過するが、このミラーはこれらに近い波長は通過させて、他の波長はすべて反射する。ビームは次に、IRを反射して、他の波長は通過させるIRホットミラー406(Edmund Optics NT43−955)を通過する。次にビームは対物レンズ(Mitotuyo Plan APO、5×、10×、20×、または50×)の背面に入り、試料上に集束される。いくつかの場合で、倍率が大きければ大きいほど、検出がより高感度となる。このことは、より高倍率の対物レンズがより高い開口数を有し、したがって試料から放出された光のより大きい立体角を取り込むためであると考えられている。試料407を、2インチ(50.8mm)移動するXYZ平行移動ステージ(Thorlabs)上に載せる。逆方向に移動する2つの撮像経路がある。蛍光撮像は、光源としてレーザを使用する。直接撮像は、蛍光データを取り込む間に画像が取り込まれるようにする赤外照明を使用して実施する。IR光源408は、15mmレンズ(Thorlabs,LA 1222)を通じて集束されるIR−ダイオード(Digikey)である。IRおよび蛍光ビームは次に、対物レンズを通じて逆戻りする。IRはIRミラー406からCCDカメラ(Sony XCD−V50、右上)内へ反射される。蛍光はIRミラーを介してレーザ線2色性ミラーまで通過して、そこで検出PMT(Hamamatsu H5784−20、図の中心)内へ反射される。緑色FP PMT 410および赤色PMT411の両方が存在する。IP検出装置およびカメラを使用して液滴を描出する。IP検出装置およびカメラを使用して、各種のテンプレート液滴の開始と収量を監視することもできる。HEXシグナルをFP検出装置内に反射する593nmハイパス2色性ミラー412(Semrock Brightline FF593−Di02−25x36)がある。これはCy5シグナル(約680nm)をCy5チャネルPMT内に通過させる。FP検出装置(画像の中心のT形の物体)は、50−50ビームスプリッタ(Thorlabs CM1−BS1)内に、互いに垂直に取り付けられたPMTを2個含む。ビームスプリッタの前には560/25バンドパスフィルタ(Semrock Brightline FF01−560/25−25)が取り付けられている。各PMTの前には偏光子(Meadowlark Optics DPM−100−VIS1)およびf=25mmレンズ(Thorlabs LA1951)が取り付けられている。PMTは回転ケージマウント(Thorlabs CRM1)に取り付けられているので、それらは相互に対して90度で回転することができる。
【0126】
この詳細な実施例において、該装置は、信号発信実体を励起させるために532nm緑色レーザを、ビーズを色分けするために使用した染料からの赤色および近赤外蛍光を励起させるためには635nmダイオードレーザを使用する。別の実施例において、識別要素としてのLuminexビーズおよびヘキサクロロフルオレセイン(HEX)で標識した核酸プローブを利用するとき、装置は、HEXチャネル(約560nm)でFPを読み取って核酸プローブが標的核酸に結合しているか否かを決定するように構成され得て、FIもHEXおよびCy5両方のチャネル(約690nm)によって読み取られ得る。
【0127】
PMTデータはデジタル処理され得て、デジタルシグナルはNational Instrumentフィールドプログラマブル・ゲート・アレイ(NI−FPGA)カードによって解析される。このゲートアレイは、数百キロヘルツ同時におよび/または複数のチャネルのデータを取り込みおよび解析するようにプログラムされ得る。FPGAカードは、液滴が流れてレーザを通過するためにピークとして出現するときに、液滴を測定するようにプログラムされ得る。液滴が検出装置の前にある期間にわたって液滴が測定されるときに、いくつかの場合では各色チャネルの最大強度、および/またはその時間積分を監視することができる。次にこのような測定値を組み合せて、標的核酸と関連する識別要素および核酸プローブの蛍光偏光(たとえば信号発信実体により)を測定することができる。
【0128】
複数の区域を加熱するマイクロ流体チップは加熱ステージ上に配置され得る。チップ上の高温区域(たとえば95℃)と温区域(たとえば65〜72℃)との間を蛇行するチャネルを下る水性液滴中の反応をサイクルすることによって、2温度サイクルPCRがチップ上で実施され得る。
【0129】
PMTシグナルは、CA−1000接続アセンブリの内部に取り付けられたNational Instrumentコネクタブロックに入力される。コネクタブロックは、National Instrument小型FPGAカードに差し込まれている1本のケーブル内にPMTシグナルをまとめる。カードはWindows(登録商標) XPを実行中のPCにインストールされ得る。データは、Lab VIEWプログラミング環境で開発されたソフトウェアを使用して取り込みおよび解析することができる。
【0130】
ミクロスフェア蛍光はバルクで、Luminex Lab MAPハードウェアおよびソフトウェア(Luminex Corp.,Austin,TX)を使用して測定され得る。緑色蛍光測定値は、FITC校正粒子のMESFユニット用のQuantum Fluorescence KitおよびQuickCalソフトウェア(すべてSigma,St.Louis,MOより)を使用して、同等の溶解性蛍光色素の分子(molecules of equivalent soluble fluorochrome、MESF)に変換され得る。ミクロスフェアのみが寄与する緑色蛍光は、すべてのデータ点から引かれるであろう。ビーズ蛍光およびプローブ結合の液滴内測定は上述の装置を使用するであろう。
【0131】
(実施例6)
この実施例は、市販のLuminexビーズ(直径5.6um)に似た、複数の区別可能な蛍光ビーズの調製について説明する。FPは、染料濃度とは無関係であり得て(たとえばフルオレセインの1M濃度は、同じFPを0.01Mとして有する)、標識の際に独立変数として処理され得る。したがって、1つの染料が2次元において10単位で変化する場合、それは100の染料標識を生成するために使用できる。したがって2つの染料によって、10,000の標識が生成され得る。図12は、染料をより大きい分子に結合することによって、染料のFPを変更できることを示す。図12Aは、フルオレセイン330、ビオチン331およびビオチン+ストレプトアビジン332のFPを示す。図12Bは、2つの異なる化合物の相対濃度を変化させることによって、総FP値を制御自在に変更できることを示す。FPがフルオロフォアの濃度とは無関係に制御され得ることに注意することが重要である。
【0132】
図13は、蛍光強度(FI)およびFPが無関係に制御できることを示す。したがって、染料濃度および液滴FP値の範囲を拡大することによって、多くの識別要素を生成することができる。図13Aは、発光スペクトルが重複して、それぞれ異なるFPを有する2つの染料を混合したときの結果を示す。2つの染料を各種の比で混合すると各種のFP値が得られ、染料の総濃度を変更すると各種のFIが得られる。図13Bは、総FIを変更するための広いスパンを表す、比較的広範な濃度範囲を示す。この図は、図13Aに示した染料の総濃度の10倍の上昇も含む。
【0133】
(実施例7)
識別要素はいくつかの場合で、直径約10nm〜100umに及ぶサイズのポリスチレンビーズであり得て、ビーズは染色され得る。一例として、利用される染料は、近赤外および/または赤外領域にまで及ぶ蛍光を呈するスクアリン酸ベースの分子であることが可能である。これにより独立した濃度の2つ以上の染料が各ビーズに均一に吸収されて、ビーズ中に存在する染料の数それぞれについて複数の蛍光シグナルが生じる、再現プロセスが可能となる。異なる蛍光特徴を備えたビーズの集団を作製するために、この実施例では、得られた集団が前の集団と光学的に重複しないように、染料の割合を十分に増大することによって、赤色:オレンジ色染料の比を変更することができる。たとえば、ビーズの所与の集団の2つの染料の濃度と前記集団のX−Yマップの位置との間に関係があり得る。各位置は、線形蛍光チャネルユニットで表されるような第1の色(FL3)または第2の色(FL2)の染料の強度によって割り当てられ得る。ビーズがカラムを垂直に上昇するとき、ビーズ内の第1の色および第2の色の染料の量はどちらも増加させることができる。このことは、一方の染料から他方の染料へのエネルギー移動のためであり得る。列を左から右へ水平に移動するとき、定常のFL3値を維持するために、一方の染料を減少させることができる。これは、一方の染料のスペクトルが他方の染料の領域に重複するためであり得る。この方法を使用して、ビーズの複数の重複しない集合を構築することができる。2つのパラメータ、すなわち蛍光色および色強度または輝度(蛍光チャネル単位トで表される)を利用してビーズを分類することができる。
【0134】
(実施例8)
この実施例は、一実施形態によるDNAテンプレート調製について説明する。この実施例では、改良Aeromist Nebulizer(Alliance Medical,Russellville,MO)を使用して、DNA断片化を実施する。噴霧された断片のサイズ分布は、DNA 1000 LabChipを使用してAgilent 2100 BioAnalyzer(Agilent,Palo Alto,CA)で、噴霧物質の分割量2uLを分析することによって決定できる。
【0135】
DNA噴霧によって、圧倒的多数の摩滅末端を持つ断片が生成された。断片は、平滑末端であり、各種の酵素、たとえばT4 DNAポリメラーゼ、E.coli DNAポリメラーゼ(クレノウ断片)(NEB,Beverly,MA)およびT4ポリヌクレオチドキナーゼ(NEB)の活性によってホスホリル化され得る。研磨反応物は、Qiaquick PCR Purificationカラムで精製され得る。
【0136】
ゲノムDNAライブラリの断片化および研磨の後に、プライマ配列をDNA断片の各末端に付加することができる。44塩基プライマ配列(「アダプタ」)は、5’20塩基PCR増幅プライマと、続く20塩基配列決定プライマを含む2本鎖オリゴヌクレオチドである。アダプタの2つのクラスである、アダプタAおよびアダプタBを各反応で使用することができる。AアダプタとBアダプタは、両方のヌクレオチド配列およびBアダプタでの5’ビオチンタグの存在で異なる。アダプタ対は、平滑末端の断片化ゲノムDNAへの定方向連結を可能にするように設計される。たとえば、アダプタAはCCATCTCATCCCTGCGTGTCCCATCTGTTCCCTCCCTGTCTCAG(配列番号7)であり、アダプタBは5ビオチンTEG/CCTATCCCCTGTGTGCCTTGCCTATCCCCTGTTGCGTGTCTCAG(配列番号8)である。各アダプタ対で、PCRプライミング領域は、5’4塩基突出および平滑末端3’領域を含有する。方向性は、平滑末端ゲノムDNA断片に連結されたアダプタの3’平滑末端側として達成されるであろうが、5’突出はアダプタのPCRプライマ領域への連結を防止する。2%アガロース(Invitrogen,Carlsbad,CA)/TBEスラブゲルは、臭化エチジウム10mg/mLストック(Fisher Scientific,Pittsburgh,PA)4.5uLと共にゲル精製に使用することができる。3’接合部における2つの切れ目は、Bst DNAポリメラーゼ、大型断片の鎖置換作用によって修復できる。ストックM−270ストレプトアビジンビーズ(Dynal,Oslo,Norway)を使用すると、ABリンカー連結断片が単離され得る。1本鎖ライブラリは、使用前に室温まで加温しておいたMinElute PCR精製キット(Qiagen)の1個のカラムで濃縮されるであろう。
【0137】
(実施例9)
この実施例は、本発明の一実施形態において、液滴の集合の調製について説明する。この実施例では、Luminexビーズは特定のバイオアッセイに特異的な試薬でコーティングされ、試料からの特異的検体の捕捉および検出が可能となる。レーザは、各ビーズを識別する内部染料、およびアッセイ中に捕捉された任意の信号発信実体も励起した。
【0138】
カルボキシル化ミクロスフェア(5×106、400uL)は、Luminex(ビーズ製造者)の勧告に従って核酸プローブに結合される。結合反応の成否は、結合されたミクロスフェアを、ビーズ結合配列に相補的なモル過剰のビオチン化オリゴヌクレオチドによってハイブリダイズすることによって評価され得る。有効な結合によって、2000〜4000Uまでの平均蛍光強度(MFI)を持つミクロスフェアが産生される。1000未満のMFIを持つミクロスフェアは、いくつかの場合で、使用されるミクロスフェアが良好な強度を有するように置換することができる。
【0139】
分析用液滴の集合を調製する一例として、適切に標識されたビーズを96ウェルプレートで、各ウェルが4個のビーズのセットを含有し、(各ビーズの複数の同一のコピーが存在し得るが)各ビーズが他のビーズから区別できるように懸濁させることができる。各ウェルは、核酸プローブのライブラリから選択される核酸プローブがそのウェルに添加されるであろう。核酸プローブは標識され得る。各ウェルの内容を別々に使用して、30ミクロン液滴のエマルジョンが作製されるであろう。各エマルジョン中で得られた水性液滴はそれぞれ、4つの区別可能なビーズそれぞれのうちビーズ3〜4個および各種の濃度、たとえば10〜100uMの標識核酸プローブを含有するであろう。乳化は各個別のウェルで完了され得る。ウェルの集合全体が乳化されたときに、液滴を共にプールして分析用液滴の集合を生成する。集合をたとえば1時間未満から数ヶ月間に及ぶ任意の好適な期間にわたって貯蔵できる。
【0140】
(実施例10)
本発明のいくつかの実施形態において、DNAの連結は液滴中で行うことができる。これはこのような連結の説明例である。この実施例において、T4 DNAリガーゼの存在時(レーン3)および非存在時(レーン4)のテンプレートDNA+33mer+ホスホリル化7merの同時流を図14に表す。水相をポリアクリルアミドゲルに添加した。40merを生じる7merの33merへの連結は液滴内で起こった。
【0141】
液滴融合前にリガーゼ活性を防止する前に、ATP補酵素は活性酵素から隔離され得る。連結反応のためのATPは、テンプレート液滴に含まれ得る。T4 DNAリガーゼは分析用液滴の集合に含まれ得る。したがって、DNAテンプレートおよび分析用液滴の集合が融合されるときにのみ、リガーゼは活性になるであろう。
【0142】
テンプレート(2本鎖PCR生成物、長さ250〜450塩基対)は、3〜20ng/ml濃度で使用することができる。緑色蛍光シグナルは、この濃度範囲を通じて観察されている。核酸オリゴヌクレオチドを含む識別要素は10nM範囲で使用可能であり、これらの要素の核酸プローブに対する比は1:50であり得る。核酸オリゴヌクレオチドを含む識別要素のDNA結合ミクロスフェアへの連結は、最低30分間のインキュベーションを有し得る。
【0143】
連結されていないジップコードハイブリダイズ錯体であるサンドイッチ錯体から生成される潜在的なバックグラウンド蛍光源を避けるために、バックグラウンド蛍光はリガーゼの非存在下で測定され得る。流れ分析の直前にミクロスフェア懸濁物を45℃にて最低15分間インキュベートすると、バックグラウンド蛍光が最小化される。
【0144】
連結アッセイは標識核酸プローブを使用して試験されている。変性部位を0個または2個のどちらか含有した8塩基配列を試験した。標準連結アッセイ反応を使用する一塩基多型(SNP)分析のために、短い8塩基ポリヌクレオチド(CTAAGTTA(配列番号9)を設計した。SNPは、ゲノム中の1個のヌクレオチドが種の構成要素間で異なるときに発生するDNA配列多様性である。連結アッセイは、SNP1(A、G多型性)について、PCR増幅されたホモ接合標的DNA(RFLP分析によって以前にGGと遺伝子型決定された)を使用して実施した。対応条件のために、連結プローブは、標的DNAの25塩基に問合せされる1個の塩基まで相補的であるように設計された。図15Aに示すように、8塩基核酸プローブ(CTAAGTTA(配列番号9))は、GCホモ接合標的DNAによって正しく識別された。8塩基プローブからのシグナル強度は、18塩基プローブで観察されるシグナル強度の65%であった。図15Bおよび15Cに示すように、どちらの変性オリゴヌクレオチド(CTNAGNTA(配列番号10)およびCTANNTTA(配列番号11)もそれぞれ(Nがユニバーサル塩基である場合)、標的DNAのSNP遺伝子型を正しく識別した。各プローブは5’PO4および3’フルオレセインを含有していた。連結プローブの核酸プローブに対する比は、連結アッセイ前に添加された2つのプローブのモル比を指す。正しい5’−CTAAGTTA−3’(配列番号9)核酸プローブの濃度の16倍の低下を補正するために、変性核酸プローブを非変性配列の16倍高い濃度で使用した。
【0145】
(実施例11)
以下の実施例は、区別可能な核酸プローブおよび区別可能な識別要素を含む液滴のライブラリを使用する、核酸プローブの標的核酸へのハイブリダイゼーションの測定について記載する。
【0146】
第1の実施例において、それぞれ少なくとも1つの染料を含有する4つのエマルジョンを生成および混合した。この実施例を使用して複数の液滴からのシグナルを測定した。エマルジョンは次のように生成した。4個のリザーバに蛍光染料およびDNA分子の4つの組み合せを充填することによって、最初に4つの流体を調製した。第1のリザーバにはCy5染料20uMを供給した。第2のリザーバにはCy5染料15uMを供給した。第3のリザーバには、Cy5染料10uMを、未連結核酸プローブA(カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)結合6−mer)および核酸プローブB(6−カルボキシフルオレセイン(FAM)結合9−mer)2uMと共に供給した。第4のリザーバには、連結核酸プローブA(TAMRA結合6−mer)および核酸プローブB(FAM結合9−mer)のCy5 2uMを供給した。第4のリザーバにはCy5染料は供給しなかった。この実施例では、4つの濃度のCy5染料は標識として作用したが、同じ濃度の連結および未連結核酸プローブAおよび核酸プローブBは液滴中のFRETの検出性の検査のために供給された。
【0147】
4つのリザーバからの流体を乳化させた。4つの異なる溶液をフローフォーカス液滴生成装置に注入することによって、4つの異なるエマルジョンを生成した。フッ化炭素油も各液滴生成装置に注入した。利用した4つの装置はすべて実質的に同じであり、フローフォーカス寸法は約25×25ミクロンであった。内部相は約500マイクロリットル/時、外部相は約1000マイクロリットル/時のほぼ同じ速度で、4つの液体すべてを装置に注入した。結果として、すべての液滴生成装置は、ほぼ同じ速度およびほぼ同じサイズの液滴を産生した。
【0148】
各液滴生成装置で産生された液滴は次に、出口に接続された管を通じて流出する。4個の液滴生成装置および4個の出口管があった。管はまとめて束ねられ、共用注射器内に配置された。液滴が管から滴下したときに、液滴を注射器中にプールした。この液滴形成を約30分間進行させて、その後、液滴約1mLを収集した。すべての液滴が同時に乳化されるため、液滴は収集注射器内でランダムに混合された。図32は、区別可能な核酸プローブと、少なくとも1つの独自の識別要素をそれぞれ含む複数の種類の液滴342を混合することによって形成された、液滴の340エマルジョンの概略図を示す。
【0149】
図31Aは、1〜4つの異なる染料の組み合せをそれぞれ含有する4つの群の液滴を並行して産生するために使用した、マイクロ流体装置の概略図を示す。上入口600によって、油が装置に供給される。内部入口602によって、4つの異なる組み合せの染料が装置に注入される。フローフォーカス接合部604は、それぞれ独自の染料の組み合せを有する4種類の液滴が形成される箇所である。液滴は次にチャネル内を流れて、収集チャンバ606に収集される。液滴は装置を出る前に、収集チャンバ内で撮像される。図31Bは、ムービーの最初のフレームの、および液滴が産生された後に、しかし装置を出る前に流入する収集チャンバの拡大図の画像を示す。このフレームでは、液滴はまだ形成されておらず、チャネルは蛍光染料水およびフッ化炭素油の同時流で充填されていた。
【0150】
標的核酸を含む複数の液滴が形成された。標的核酸は、5’−CGCCAGGGTTTTCCCAGTCACGACGTTGTAAAACGACGGCCAGTGAATCCGTAATCATGGCCAT−3’(配列番号12)であった。図19に示すように、複数の標的核酸を含む溶液344が、少なくとも1つの標的核酸をそれぞれ含む複数の液滴346へとマイクロ流体装置348が形成される。
【0151】
標的核酸を含む複数の液滴および核酸プローブを含む液滴のライブラリは、マイクロ流体技法、たとえば“Formation and Control of Fluidic Species”という名称の2004年4月9日に出願されたInternational Patent Application No.PCT/US2004/010903、および“Electronic Control of Fluidic Species”という名称の2004年8月27日に出願されたInternational Patent Application No.PCT/US2004/027912に記載された技法を使用して融合され得る。図20Aに示すように、核酸プローブを含む液滴は、標的核酸を含む液滴354が核酸プローブを含む液滴356に隣接するように、マイクロ流体チャネル352内に流入した。図20Bは、電気融合を使用する液滴の融合を示す。図21は、図20A〜20Bに記載するプロセスの概略図を示す。図22は、融合液滴が遅延ラインでインキュベートされることを示す。この実施例では、融合液滴は約5分間インキュベートされた。
【0152】
図23は、融合液滴の速度(um/秒)の、インキュベーションチャネルに沿った位置に対するグラフを示す。さらに詳細には、図23は、チャネルにわたる液滴の速度プロフィールを示す。y軸はpiv(粒子画像速度測定)を使用して測定した速度を示すが、x軸は位置を示す。いくつかの実施形態において、円形断面チャネルにおけるポアズイユ流れの場合、流れの速度プロフィールは、チャネル壁での滑りのない境界条件のために、放物線状であることが予想されるかもしれない。しかしいくつかの場合で、エマルジョンのチャネル中への流れによって、流体は非ニュートン流で流れ得て、流れプロフィールは放物線状でないことがある。流れプロフィールは、チャネルにわたる流れ速度が壁付近を除いてほぼ一定であったことを示す。理論に縛られたくはないが、このことが発生し得るのは、液滴が非常に高い体積分率で産生されたためであった(たとえば水体積の油体積に対するパーセンテージが高い)。したがって、液滴は、液滴がチャネル内をほぼ同じ速度で流れるように、液滴がチャネル内を流れるときに相互に対して残存することができた。これを使用して異なる液滴間のインキュベーション時間の変動を低減することができる。
【0153】
非限定的な例として、いくつかの場合で、液滴がインキュベートする必要がある時間は、液滴がインキュベーションチャネル内で費やす時間である。液滴が希薄である場合、ここで流体はニュートニアン流体のように挙動することができ、流れは放物線状になるであろう。液滴がチャネル内を移動する速度はそれゆえ、チャネルの幅での液滴の位置に依存し得る(たとえば、チャネルの中央にある液滴は、チャネル端付近の液滴よりも高い速度を有し得る)。したがって、流れの速度が実質的に非放物線状でない場合には、2個の液滴のインキュベーション時間が異なり得る。しかし流れプロフィールが一定である場合、液滴の速度はほぼ等しくなり、したがってインキュベーション時間はほぼ等しくなるであろう。いくつかの場合で、非放物線状の流れプロフィールは低い体積分率のエマルジョンで達成され得る。たとえば、縦横比の小さいチャネルの場合、流れ場の空間的勾配は最も短い寸法によって支配され得る。いくつかの例において、チャネルがそれが幅広であるよりも著しく短い場合、ここで最も短い寸法がその高さとなるであろう。このことにより派生する流れプロフィールは非常に鋭くなり得て、これにより壁付近に大きな勾配が生じる。
【0154】
図24は、ハイブリダイゼーション結果が測定された、本実施例で使用したシステムの区域を示す。このシステムでは、融合液滴380がマイクロ流体チャネル381中に放出され、光源384(たとえばレーザ線)を1度に1個ずつ(たとえば液滴382)通過して、ハイブリダイゼーション結果が測定される。測定の後に、液滴(たとえば液滴386)は流れ続けて、マイクロ流体チャネルから出る。図25Aは、上述の装置の概略図を示す。液滴はたとえば図26に示すように、測定中にも変形させることができる。
【0155】
図27A〜27Dは、速度/利得対時間(ms)を示す定量的結果のグラフ((i)緑色、(ii)赤色))である。これらの図は、蛍光を使用する各種の標的の検出を表している。さらに詳細には、図27は4つの異なる液滴の種類の赤色および緑色蛍光信号を示す。この実施例の実験手順は、上述の実験手順と類似していた。この実施例では、検出にはCCD検出装置の代わりに光電子増倍管(PMT)を使用した。4個のプロットは、調製した4つの異なる種類の液滴の赤色および緑色PMTシグナルを示した。信号の各スパイクは、検出装置を流れ過ぎた液滴に相当した。液滴が検出装置を通過するときに、赤色および緑色レーザは蛍光を励起して、蛍光は対物レンズによって撮像されPMTに戻された。
【0156】
図28は、赤色および緑色強度の検出に基づく液滴の検出を示す。個々の液滴の赤色および緑色蛍光強度を測定した。プロットの各スポットは、検出された液滴を表す。このプロットを生成するために、(上述した)赤色および緑色蛍光染料の独自の組み合せをそれぞれ含有する4種類の液滴を最初に調製した。たとえばスポット610は、少量の緑色染料および大量の赤色染料を含んだ液滴を表すのに対して、スポット616は、大量の緑色染料および少量の染料を含んだ液滴を表す。プロットの各位置の複数のプロット(たとえば610、612、614、616)は、赤色および緑色染料をほぼ同じ比で有した複数の液滴を表した。液滴を測定するために、緑色および赤色レーザを液滴に集束させた。レーザ光により液滴内に含有された染料は蛍光を放出して、放出光は顕微鏡の対物レンズにより取り込まれた。光は、赤色光を通過させて、緑色光を反射する2色性ビームスプリッタを通過した。次に赤色および緑色フィルタによってさらにフィルタリングされて、さらにPMTセンサ上に集束された光路。赤色フィルタ後ろのPMTは赤色光の強度を測定したが、緑色フィルタ後ろのPMTは緑色光の強度を測定した(たとえば図11に示す装置)。測定は同時に実施して、結果はコンピュータで記憶および処理した。コンピュータは測定値を処理して、各液滴からの赤色および緑色蛍光の量を決定した。次に結果を図28に示すグラフにプロットした。
【0157】
図29は、3uMテンプレートの結合アッセイの結果を示す。プロットは、ここでi)標的核酸は存在しなかった(たとえばテンプレート)、ii)ミスマッチ標的核酸が存在した、およびiii)マッチ標的核酸が存在した、核酸プローブの蛍光偏光対長さを示す。
【0158】
いくつかの場合で、液滴の検出および/または定量にコンピュータを利用した。検出装置がPMT検出装置である例では、Lab View FPGAを使用した。液滴を3個のPMTで監視して、各PMTには異なるフィルタおよび/偏光子が組み合されていた。各PMTには数字が割り当てられた。PMT1は、平行偏光で緑色光を監視した。PMT2は、垂直偏光で緑色光を監視した。PMT3は、偏光なしで赤色光を監視した。これら3個のPMTはそれぞれ、それらが時間の関数として検出した光の強度に比例する、時間の関数としての電圧を出力した。これらの電圧時間追跡は、それらが解析されるコンピュータに送信された。
【0159】
コンピュータプログラムは、液滴を検出するためにユーザが指定したシグナルの1つを検索した。図27に示すように、各液滴は時間の関数としての電圧のピークに相当するように見える。ピークの立ち上りは、液滴がレーザビームの経路中に移動するときの液滴の立ち上りであった。ピークは、液滴がピークの中心にあったときの液滴に相当する。立ち下りは、液滴がビームから移動するときの液滴の立ち下りであった。液滴がレーザを流れ過ぎるときに時間の関数として電圧が変化するシーケンスは、液滴が検出されたか否かを決定するために使用した。
【0160】
コンピュータはシグナルを監視して、シグナルがユーザ指定の閾値レベルを超えて上昇した時点を決定する。シグナルが閾値レベルより上であった場合、このサイクルと前のサイクルとの間の電圧差を計算した。差が正であった場合、シグナルは上昇しており、これが液滴の立ち上りであることが示された。コンピュータは、液滴のシグナルの測定を継続して、液滴に関連する最高電圧を記憶する。シグナルが閾値より下に降下するとき、液滴の立ち下りが観察される。液滴の最高電圧が決定され、3つすべてのPMTからのシグナルは相関している。各液滴と関連付けられた測定値は、立ち上りが検出された時間、ピーク電圧の値、立ち下りが検出された時間、電圧が閾値を超えた期間(たとえば一定の流速である場合に、流速が液滴の長さに比例している、ピークの幅)、および電圧が閾値を超えている間の積分シグナルであった。同時に収集された3つすべてのPMTシグナルについて、これらの測定値を収集した。測定値は次にさらに組み合されて、ユーザが選択した少なくとも1個の値を決定した。たとえば、蛍光偏光測定値が望ましい場合、次に緑色平行および垂直ピークの比または積分強度が計算可能であった。これらの数値はまた、ユーザの指定と比較して、液滴が決定および/または定量に有用な液滴であることをさらに確認するための基準を満足しているか否かを決定することも可能であった。いくつかの例において、液滴情報(たとえば測定値)は記憶され得る、および/または液滴は選別のために選択され得る。
【0161】
(実施例12)
以下の実施例は、エマルジョンベースのマイクロ流体アッセイからのリアルタイム高スループットデータ取り込みを可能にする液滴検出のためのシステムおよび方法について説明する。
【0162】
この実施例に記載する方法を使用して、マイクロ流体液滴、たとえば蛍光シグナルを含むマイクロ流体液滴(たとえば少なくとも2つの蛍光染料集団を含むマイクロ流体液滴)を撮像した。マイクロ流体液滴の2つの群、すなわち液滴がフルオレセイン誘導体染料(緑色波長にて可視)を含む液滴の第1の群およびCy5染料(赤色波長にて可視)を含む液滴の第2の群を調製した。液滴を同じ容器内で共に混合すると、サイズまたは形態に基づく区別は不可能であった。液滴を混合集団として容器チャネルに流入させて、蛍光顕微鏡装置で描出した。この例では、緑色LEDアレイを斜角照明を液滴に当てるために使用して、ほぼ55°の角度および顕微鏡ステージから約1フィート離して配置し、液滴グレアを生成させた。図35は、実験装置の例を表す。発光フィルタ520、2色性ミラー522、アーク灯524、励起フィルタ526、および対物レンズ528を含む蛍光顕微鏡を用意した。複数の液滴を顕微鏡ステージ530に位置決めした。斜角照明532は約55°の角度で当てられた。顕微鏡534を励起させる光は検出装置または撮像装置(たとえばCCDカメラなど)によって記録した。
【0163】
この実施例では、一方は緑色波長の狭いスペクトル内の光のみ通過させるフィルタの下に配置されたのに対して、他方のカメラは赤色波長の狭いスペクトル内の光のみ通過させるフィルタの下に配置された2個のCCDカメラによって、画像を取り込んだ。両方のカメラでのフレームの取り込みを同期させて、緑色波長および赤色波長両方の蛍光情報の同時取り込みを可能とした。斜角照明は緑色LED源からであったため、液滴グレアは緑色波長取り込みのみで観察された。
【0164】
緑色波長取り込みからの画像フレームは、各液滴の液滴グレアを選抜する簡単な強度閾値プログラムを使用して処理した。この場合、人による入力でソフトウェアに液滴グレアと液滴中心との間の角度および距離を指示する;しかしいくつかの場合では、これはソフトウェアプログラムを使用して自動化され得る。いくつかの実施形態において、液滴グレアと液滴中心との間の角度および距離は、機器装置を変更しないという条件で、1回記録する必要があるだろう。ソフトウェアを使用して、各液滴グレアに対するサンプリングマスクを生成した。サンプリングマスクを赤色および緑色波長カメラ画像フレームと重ねて、蛍光強度読み取り値が得られる液滴の境界内の同じ範囲を定義する、各液滴のマーキングシステムを生成する。コンピュータは緑色波長画像と対応する赤色波長画像をマージして、両方のカメラからの情報を持つ合成画像を形成した。液滴グレアから生成されたマスクを使用して、蛍光強度情報を合成画像から収集した。この実施形態において、液滴からの強度を測定する正確度の程度は高く、隣接する液滴をサンプリングリスクはほとんどなかった。
図37は、緑色波長フィルタ下のマイクロ流体液滴のCCDカメラビデオ取り込みからの静止フレームを示す。この画像では、密充填液滴の間の境界は区別が困難であるが、液滴グレアは容易に目視できる。この画像では、フルオレセインを含む液滴はは色がより明るく見えるが、Cy5を含む液滴は画像ではより暗く見える。図38は、CCDカメラ静止画像の強度閾値を示す。図39Aおよび39Bは、蛍光強度読み取り値のためのマスクおよびマスクオーバーレイをそれぞれ示す。図40および図41は、緑色フィルタカメラおよび赤色フィルタカメラそれぞれからの画像を示す。図42は、フルオレセイン(暗い灰色)およびCy5(明るい灰色)を含む液滴の2つの別個の集団を示す、緑色および赤色カメラデータのオーバーレイを含む合成画像を示す。図43は、秒でサンプリングした50,000のデータ点の強度カウントのヒストグラムを示し、(a)緑色チャネルおよび(b)赤色チャネルは予想された二峰性分布を示している。
【0165】
この実施例に記載する方法は、強度を計算せずに完了することが可能であり、データ取り込みに使用した同じ画像フレームで実施され得る。このことにより、液滴ベースアッセイにおけるボトルネックとしてのデータ取り込みが不要となり得る。たとえば、上述のような実験を実行するコンピュータは、12ビット320×240データストリームから1秒当り数百フレームの速度で強度データを取り込んだ。約2,000液滴/フレームの充填アレイを用いると、これは200,000液滴/秒からのデータの処理の取り込みに変換される。
【0166】
いくつかの実施形態において、この実施例で記載したような方法は、複数の液滴を測定するときに好都合であり得る。液滴グレアはバックグラウンドよりも強いことがあり、液滴の位置の容易な識別を可能にし得るので、これにより液滴グレアを利用しない方法と比較して液滴の簡単な測定を可能にする。いくつかの実施形態において、液滴グレアのソフトウェアによる識別は簡単な方法を使用して完了され得る。液滴グレアは各液滴の中心からの方向および距離の両方に関して一般に一貫して出現するため、液滴グレアは基準点として使用することができる。さらに、第2の光源によって各種の角度で液滴を照明することができ、実質的に集束したグレアを生じる特定の角度が(たとえば目視検出に基づいて)選択され得る。角度は、液滴グレアが液滴の中心に関して外れるようにも選択され得る。液滴の中心から外れている液滴グレアによって、液滴識別およびデータ取り込みの両方に同じ画像フレームが与えられることがある。したがって、斜角照明は点灯および消灯する必要はなく、ならびに/またはわずかに異なる時点で合成画像を撮像する必要はない。
【0167】
本発明の複数の実施形態を本明細書で記載および例証したが、当業者は機能を実施するためのならびに/または本明細書に記載した結果および/もしくは利点の1つ以上を得るための、多種多様の他の手段および/または構造を想定するであろうし、このような変更形態または修飾形態はそれぞれ本発明の範囲内であると見なされる。さらに一般的には、当業者は、本明細書に記載したすべてのパラメータ、寸法、材料、および構成が例示であるとされることと、実際のパラメータ、寸法、材料、および構成が、本発明の教示が使用される特定の利用または複数の利用に応じて変わるであろうこととをただちに認識するであろう。当業者は、せいぜい日常的な実験を用いて、本明細書に記載した本発明の具体的な実施形態の多くの等価物を認識する、またはそれを確認できるであろう。したがって、上述の実施形態が例示のためのみに与えられていることと、添付請求項およびその等価物の範囲内で、本発明が、特に記載および/または請求されているのと違うふうに実施され得ることとが理解されるであろう。本発明は、本明細書に記載したそれぞれ個別の特徴、システム、材料および/または方法に関する。さらに、このような特徴、システム、物品、材料および/または方法の2つ以上の任意の組み合せは、このような特徴、システム、物品、材料および/または方法が相互に矛盾するわけではない場合、本発明の範囲内に含まれる。
【0168】
本明細書で使用するようなすべての定義は、本開示の目的のためのみである。これらの定義は、この開示に関連するまたは関連しないにかかわらず、同一出願人による他の特許および/または特許出願に必ずしも帰するべきではない。定義は、本明細書に記載するように、辞書の定義、参考文献に組み入れられている文書での定義、および/または定義した用語の普通の意味に優先することを理解すべきである。
【0169】
明らかにそれとは反対に指摘されない限り、1つ以上の行為を含む本明細書で請求するいずれの方法においても、方法の行為の順序は、本発明の行為が列挙される順序に必ずしも限定されないことも理解されるべきである。
【0170】
請求項においては、上の明細書においてと同様に、「備える(comprising)」、「含む(including)」、「担持する」、「有する」、「含有する」、「包含する」、「保持する」などのすべての移行句は、オープンエンドである、すなわち含むが、限定されないことを意味することが理解されるべきである。「成る(consisting of)」および「本質的に成る(consisting essentially of)」という移行句のみが、United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedure,Section 2111.03で述べられているように、クローズまたはセミクローズ移行句であるものとする。
【技術分野】
【0001】
政府の資金拠出
本発明は、National Institutes of Healthによって与えられたDMR−0602684の下で、政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0002】
関連出願
この出願は、2007年12月21日に出願された、Weitzらによる表題「Systems and Methods for Nucleic Acid Sequencing」の米国仮特許出願第61/008,862号、および2008年9月19日に出願された、Weitzらによる表題「Systems and Methods for Nucleic Acid Sequencing」の米国仮特許出願第61/098,710号(各々、参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0003】
発明の分野
本発明は、流体液滴中で核酸を配列決定することを含む、核酸を配列決定するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0004】
核酸配列を決定する能力は、遺伝子の機能および制御の理解などの用途のために、または分子生物学の基本的技法の多くを利用するために重要である。ハイブリダイゼーションによる配列決定(SBH)は、最近開発されたDNA配列決定への手法である。ハイブリダイゼーションによる配列決定では、大規模なセットの1本鎖断片またはプローブを基質に付着させる。標識1本鎖標的DNA断片の溶液を基質に曝露する。これらの断片は基質上で相補的断片とハイブリダイズして、ハイブリダイズされた断片は、選択された標識に応じて検出装置または蛍光/リン光染料を使用して識別することができる。次に、チップを用いて、断片のハイブリダイゼーションのパターンに基づいて標的DNAを配列決定する。しかし、現在のSBH技法は、比較的大量の試薬を必要とすること、またはスループットが比較的小さいことなどの、その用途を制限するいくつかの問題を有している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、流体液滴中で核酸を配列決定することを含む、核酸を配列決定するためのシステムおよび方法に関する。本発明の主題は、いくつかの場合において、相関した生成物、特定の問題に対する別の解決策、ならびに/または1つ以上のシステムおよび/もしくは物品の複数の異なる効果を含む。
【0006】
一態様において、本発明は方法に関する。第1のセットの実施形態により、本発明は、核酸プローブおよび少なくとも1つの識別要素を含有する第1のマイクロ流体液滴を提供する行為と、標的核酸を含む第2のマイクロ流体液滴を提供する行為と、第1のマイクロ流体液滴および第2のマイクロ流体液滴を融合して融合液滴を形成する行為とを含む。別のセットの実施形態において、方法は、複数の識別要素を含むマイクロ流体液滴を提供する行為と、液滴を変形させて、複数の識別要素それぞれが標的区域を個別に通過するように液滴に標的区域を通過させる行為と、標的区域を通過する複数の識別要素それぞれを決定する行為とを含む。
【0007】
また別のセットの実施形態による方法は、液滴に第1の識別要素と、第1の識別要素と区別可能な第2の識別要素と、第1の識別要素および第2の識別要素から区別可能な第3の識別要素を添加することによって、核酸プローブを含有する液滴の少なくとも一部を測定する行為を含む。
【0008】
1セットの実施形態において、方法は、識別要素が要素のうち少なくとも2つをそれぞれ有する少なくとも3つの群に分類される、少なくとも6つの識別要素を定義する行為と、少なくとも8つの区別可能な種のそれぞれを、8つの区別可能な種のうち2つが識別要素の同じセットと関連しないように、少なくとも3つの群それぞれから選択される少なくとも1つの識別要素と関連付ける行為と、少なくとも8つの異なる種のうち1つおよび少なくとも3つの群それぞれから得た関連付けた要素をそれぞれ含有する、少なくとも8つの区別可能な液滴を調製する行為とを含む。
【0009】
なお別のセットの実施形態において、方法は、複数の区別可能な核酸プローブおよび複数の区別可能な識別要素を提供する行為と、複数の区別可能な核酸プローブから少なくとも1個の核酸プローブと、複数の区別可能な識別要素から少なくとも3つの区別可能な識別要素を選択する行為と、選択した1個の核酸プローブおよび少なくとも3つの区別可能な識別要素を含有する流体液滴を形成する行為と、少なくとも10の区別可能な流体液滴を含む、流体液滴の集団を形成するために選択工程および形成工程を反復する行為とを含む。いくつかの場合において、各液滴は少なくとも1個の核酸プローブおよび少なくとも3つの区別可能な識別要素を含有する。
【0010】
別の態様において、本発明はキットに関する。いくつかの場合において、キットは、核酸プローブをそれぞれ含有する第1の複数の少なくとも10の区別可能な流体液滴と、少なくとも3つの区別可能な識別要素をそれぞれ含有する第2の複数の少なくとも10の区別可能な流体液滴とを含む。
【0011】
本発明の他の利点および新規の特徴は、添付図面と併せて考慮したときに、本発明の各種の非限定的な実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。本明細書および参考文献に含まれる文書が相反するおよび/または一致しない開示を含む場合、本明細書が優先するものとする。参考文献に含まれる2つ以上の文書が相互に対して相反するおよび/または一致しない開示を含む場合には、発効日が遅いほうの文書が優先するものとする。
【0012】
本発明の非限定的な実施形態は、添付図面を参照して一例として説明され、添付図面は概略的であり、原寸に比例して描かれるものではない。図面において、図解された同一またはほぼ同一の各構成要素は、通例、1つの数字によって表される。明瞭さを期するために、すべての構成要素がすべての図で番号付けされているわけではなく、当業者に本発明を理解させるために図解が必要でない場合には、本発明の各実施形態のすべての構成要素が示されているわけでもない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の一実施形態において標的核酸を配列決定する方法を示す。
【図2】図2A〜図2Fは、核酸プローブの非限定的な例を示す。
【図3】図3は、本発明の別の実施形態において標的核酸を配列決定する方法を示す。
【図4】図4は、本発明の別の実施形態において標的核酸を配列決定するまた別の方法を示す。
【図5】図5は、液滴の集合の調製の例を示す。
【図6A】図6Aは、標的核酸を配列決定する方法の非限定的な例を示す。
【図6B】図6Bは、標的核酸を配列決定する方法の非限定的な例を示す。
【図6C】図6Cは、標的核酸を配列決定する方法の非限定的な例を示す。
【図6D】図6Dは、標的核酸を配列決定する方法の非限定的な例を示す。
【図7A】図7Aは、標的核酸を配列決定する方法の非限定的な例を示す。
【図7B】図7Bは、標的核酸を配列決定する方法の非限定的な例を示す。
【図7C】図7Cは、標的核酸を配列決定する方法の非限定的な例を示す。
【図8A】図8Aは、標的核酸を配列決定する方法の非限定的な例を示す。
【図8B】図8Bは、標的核酸を配列決定する方法の非限定的な例を示す。
【図8C】図8Cは、標的核酸を配列決定する方法の非限定的な例を示す。
【図8D】図8Dは、標的核酸を配列決定する方法の非限定的な例を示す。
【図8E】図8Eは、標的核酸を配列決定する方法の非限定的な例を示す。
【図8F】図8Fは、標的核酸を配列決定する方法の非限定的な例を示す。
【図8G】図8Gは、標的核酸を配列決定する方法の非限定的な例を示す。
【図9】図9A〜図9Cは、本発明のいくつかの実施形態における蛍光偏光(FP)検出に関する情報を表す。
【図10】図10は、本発明の一実施形態における実験装置の非限定的な例を示す。
【図11】図11は、本発明の別の実施形態における実験装置の非限定的な例を示す。
【図12】図12A〜図12Bは、識別要素としての液体標識を利用する例を示す。
【図13】図13A〜図13Bは、ある実施形態において蛍光強度および蛍光偏光が独立して制御され得ることを示す。
【図14】図14は、本発明の一実施形態における、液滴内に発生したDNAの連結の例を示す。
【図15】図15は、別の実施形態による標識核酸プローブを使用する連結アッセイの結果を示す。
【図16】図16A〜図16Eは、本発明の一実施形態における第1および第2の核酸を連結する方法を表す。
【図17A】図17Aは、いくつかの実施形態による、本発明の1つの方法で使用され得る第1の群の核酸プローブおよび第2の群の核酸プローブを表す。
【図17B】図17Bは、一実施形態による、図17Aに表した第1の群の核酸プローブからの第1の核酸プローブおよび第2の群の核酸プローブからの第2の核酸プローブを組み合せることによって形成され得る複数の液滴を表す。
【図18A】図18Aは、単一のマイクロ流体チャネルにおいて、液滴中の信号発信実体(signaling entity)および/または識別要素が1つずつ決定されることを表す。
【図18B】図18Bおよび図18Cは、複数のチャネルまたは封じ込め区域それぞれにおいて、複数の液滴中の信号発信実体および/または識別要素が1つずつ決定されることを表す。
【図18C】図18Bおよび図18Cは、複数のチャネルまたは封じ込め区域それぞれにおいて、複数の液滴中の信号発信実体および/または識別要素が1つずつ決定されることを表す。
【図19】図19は、一実施形態による複数の液滴へと形成される複数の標的核酸を含む溶液を示す。
【図20】図20Aおよび図20Bは、第1および第2のマイクロ流体液滴が融合するようにチャネル内に流入した画像を示す。
【図21】図21は、本発明の一実施形態における、液滴を融合するために使用したプロセスの概略図を示す。
【図22】図22は、遅延ラインにおける融合した複数の液滴のインキュベーションを示す。
【図23】図23は、本発明の一実施形態による、融合液滴の速度の、インキュベーションチャネルに沿った位置に対するグラフを示す。
【図24】図24は、発明の一実施形態による、ハイブリダイゼーションを測定するために使用されるシステムの写真を示す。
【図25】図25Aは、図24に記載したシステムに類似したシステムの概略図を示す。図25Bは、図25Aに示すシステムのようなシステムを使用して液滴を測定するときに、観察され得る蛍光偏光を示す。
【図26】図26は、一実施形態による、測定の間に液滴が変形を受けるシステムの写真を示す。
【図27A】図27A〜図27Dは、一実施形態による、各種の強度の検出に基づく液滴の検出を示す。
【図27B】図27A〜図27Dは、一実施形態による、各種の強度の検出に基づく液滴の検出を示す。
【図27C】図27A〜図27Dは、一実施形態による、各種の強度の検出に基づく液滴の検出を示す。
【図27D】図27A〜図27Dは、一実施形態による、各種の強度の検出に基づく液滴の検出を示す。
【図28】図28は、一実施形態による、本発明の方法を使用して調製および測定した緑色および/または赤色染料を含む複数の液滴のプロットを示す。
【図29】図29は、本発明のいくつかの実施形態による、i)標的核酸が存在しない、ii)ミスマッチ標的核酸が存在する、およびiii)マッチ標的核酸が存在する、3uMテンプレートの結合アッセイの結果を示す。
【図30】図30は、一実施形態による、第1の群の核酸プローブからの第1の核酸プローブおよび第2の群の核酸プローブからの第2の核酸プローブを含むライブラリの概略図を示す。
【図31A】図31Aは、一実施形態による、異なる濃度の異なる染料を含む4つの群の液滴を産生するために使用され得るマイクロ流動装置の概略図を示す。
【図31B】図31Bは、図31Aに示す装置を使用して形成された複数の液滴の産生を示すムービーの最初のフレームの画像を示す。
【図32】図32は、一実施形態による、複数の種類の液滴を混合することにより形成された液滴のエマルジョンの概略図を示す。
【図33】図33Aおよび図33Bは、本発明のいくつかの実施形態による、第1の核酸プローブ、第2の核酸プローブ、および標的核酸を含む複数の液滴の形成を示す。
【図34】図34は、一実施形態による、マイクロ流体液滴を通じた光の屈折および液滴像の表面に出現する生じた液滴のグレアの概略図を示す。
【図35】図35は、一実施形態による、液滴グレアを生成するために使用され得る実験装置の例を表す。
【図36】図36Aは、一実施形態による、2つの3mer核酸プローブの標的核酸へのハイブリダイゼーションを示す。図36Bは、図36Aに示した2つの3mer核酸プローブの連結を示す。
【図37】図37は、一実施形態による、緑色波長フィルタの下での液滴グレアを含む複数のマイクロ流体液滴のCCDカメラ・ビデオ・キャプチャからの静止画像を示す。
【図38】図38は、一実施形態による、液滴グレアを含む複数の液滴のCCDカメラ静止画像の強度閾値を示す。
【図39】図39Aおよび図39Bは、液滴グレアを含む複数の液滴の蛍光強度読み取り値でそれぞれ生成された、マスクおよびマスクオーバーレイを示す。
【図40】図40および図41は、一実施形態による、緑色フィルタカメラおよび赤色フィルタカメラそれぞれからの複数の液滴の画像を示す。
【図41】図40および図41は、一実施形態による、緑色フィルタカメラおよび赤色フィルタカメラそれぞれからの複数の液滴の画像を示す。
【図42】図42は、2つの別個の液滴の集団を示す、図40および41それぞれからの緑色および赤色カメラデータのオーバーレイを含む合成画像を示す。
【図43】図43は、一実施形態による、図42に示すような画像からの秒でサンプリングしたデータ点での強度カウントのヒストグラムを示し、(A)緑色チャネルおよび(B)赤色チャネルは二峰性分布を示す。
【図44】図44は、2つの別個の蛍光強度集団がある、複数のマイクロ流体液滴の蛍光強度のCCDカメラからの静止画像キャプチャを示す。
【図45】図45は、液滴グレアを含む2つの別個の蛍光強度集団がある、複数の液滴の蛍光強度のCCDカメラからの静止画像キャプチャを示す。
【0014】
配列の簡単な説明
配列番号1は、合成DNA配列のACTTCGである;
配列番号2は、合成DNA配列の*GATCCであり、*は信号発信実体である;
配列番号3は、合成DNA配列のGATCTGNNNNであり、Nはユニバーサル塩基である;
配列番号4は、合成DNA配列のCATATCである;
配列番号5は、合成DNA配列のGATCTNGNNNであり、Nはユニバーサル塩基である;
配列番号6は、合成DNA配列のCXACATCであり、Xは、A、C、GまたはTの1つである;
配列番号7は、合成DNA配列のGACTCTGTCCCTCCCTTGTCTACCCTGTGCGTCCCTACTCTACCである;
配列番号8は、合成DNA配列のビオチン−CCTATCCCCTGTGTGCCTTGCCTATCCCCTGTTGCGTGTCTCAGである;
配列番号9は、合成DNA配列のCTAAGTTAである;
配列番号10は、合成DNA配列のCTNAGNTAであり、Nはユニバーサル塩基である;
配列番号11は、合成DNA配列のCTANNTTAであり、Nはユニバーサル塩基である;
配列番号12は、合成DNA配列のCGCCAGGGTTTTCCCAGTCACGACGTTGTAAAACGACGGCCAGTGAATCCGTAATCATGGCCATである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、流体液滴中で核酸を配列決定することを含む、核酸を配列決定するためのシステムおよび方法に関する。1セットの実施形態において、本発明は、マイクロ流体液滴などの液滴を使用するハイブリダイゼーションによる配列決定を利用する。いくつかの実施形態において、標的核酸、核酸プローブ、および少なくとも1つの識別要素、たとえば蛍光粒子を含む液滴が形成される。標的核酸にハイブリダイズする核酸プローブは、いくつかの例において、少なくとも1つの識別要素を決定することによって決定される。標的核酸にハイブリダイズする核酸プローブを使用して、標的核酸の配列が決定され得る。ある例において、マイクロ流体液滴は核酸プローブを修飾する試薬と共に提供される。いくつかの場合において、上述のような液滴は、液滴の構成要素が標的区域を個別に通過するように変形される。
【0016】
一態様において、本発明は、標的核酸を配列決定するためのシステムおよび方法に関する。各種の実施形態において、標的核酸は、複製され、核酸プローブ、識別要素なども含有し得る複数の流体液滴中に含有され得る。以下で詳細に議論するように、流体液滴中の核酸プローブを決定することによって、標的核酸の配列が決定され得る。一実施形態において、本発明は、核酸プローブおよび少なくとも1つの識別要素を含むマイクロ流体液滴を提供する工程と、標的核酸を含む第2のマイクロ流体液滴を提供する工程と、第1のマイクロ流体液滴および第2のマイクロ流体液滴を融合して融合液滴を形成する工程とを含む、マイクロ流体液滴を提供する方法に関する。いくつかの場合において、方法は、核酸プローブおよび標的核酸が共に溶解したままであり、たとえば水素結合、塩基対合などの非共有相互作用を通じて比較的安定な2本鎖を形成して、溶解している間にただちに分離しないように、核酸プローブが標的核酸と結合しているか否かを決定する工程をさらに含む。いくつかの例において、核酸プローブは標的核酸分子にハイブリダイズし得る。さらに、いくつかの場合において、少なくとも1つの識別要素の同一性が決定され得る。
【0017】
非限定的な例として、第1の実施形態を図1に示す。本図において、核酸プローブ11および少なくとも1つの識別要素12を含有する第1の流体液滴10が提供される。さらに、本実施例において、標的核酸14を含有する第2の流体液滴13が提供される。第1の流体液滴は第2の流体液滴と融合して、矢印100によって示すように、融合流体液滴15を形成する。いくつかの場合において、核酸プローブ11は、矢印101によって示すように標的核酸14と結合するようになり得て、標的核酸と核酸プローブとの結合は、矢印102によって示すように決定され得る。たとえば、核酸プローブおよび標的核酸配列は、相補的配列または実質的な相補的配列のために結合16するようになり得る。いくつかの場合において、核酸プローブの配列は、以下で詳細に議論するように、少なくとも1つの識別要素12(矢印103および104によって示される)を決定することによって、標的核酸の少なくとも一部の配列を決定するために決定され得る。
【0018】
いくつかの場合において、液滴の集合が使用され、該液滴は区別可能な核酸プローブおよび/または識別要素を含む。たとえば識別要素を使用することによって、標的核酸と区別可能な核酸プローブとの結合を測定することにより、標的核酸の配列が決定され得る。通例、流体液滴それぞれに含有される標的核酸配列のすべてが核酸プローブのすべてと結合するわけではなく、標的核酸と結合することができる核酸プローブを決定することによって、標的核酸の配列が決定され得る。液滴の集合を調製する方法は、以下でさらに詳細に議論される。
【0019】
言及したように、本発明の各種の実施形態は、流体液滴中に核酸および/または他の種を含有することに関する。本明細書で使用するように、「流体」は、その普通の意味、すなわち流動してその容器の輪郭に従う傾向のある物質を示す。通例、流体は、静的剪断応力に耐えられない物質であり、剪断応力が印加されると、流体は継続的および永久的な歪みを受ける。それゆえ流体は、いくつかの場合において、流体の少なくとも多少の流動を可能にする任意の好適な粘度を有し得る。流体の非限定的な例は液体および気体を含むが、自由流動固体粒子、粘弾性流体なども含み得る。
【0020】
「液滴」は、本明細書で使用するように、第2の流体に完全に包囲されている第1の流体の単離された部分である。液滴は必ずしも球形ではないが、たとえば外部環境に応じて同様の他の形状をとり得ることに注目すべきである。一実施形態において、液滴は、液滴が中に位置する流体流に垂直なチャネルの最大寸法に実質的に等しい最小断面寸法を有する。液滴の直径は、非球形液滴では、非球形液滴と同じ体積を有する完全な数学的球の直径である。
【0021】
流体液滴は、任意の好適な技法を使用して形成され得る。たとえば、液滴は、液体を撹拌または振とうして個々の液滴を形成すること、個々の液滴を含有する懸濁液またはエマルジョンを生成すること、またはピペッティング技法、針などによって液滴を形成することによって形成され得る。液滴の生成の他の非限定的な実施例は、それぞれ参照により本明細書に組み入れられている、Stoneらによる“Method and Apparatus for Fluid Dispersion”という名称の、U.S.Patent Application Publication No.2005/0172476として2005年8月11日に公開され、2004年12月28日に出願されたU.S.Patent Application Serial No.11/024,228;Linkらによる“Formation and Control of Fluidic Species”という名称の、2006年7月27日にU.S.Patent Application Publication No.2006/0163385として公開され、2005年10月7日に出願されたU.S.Patent Application Serial No.11/246,911;またはLinkらによる“Electronic Control of Fluidic Species”という名称の、2007年1月4日にU.S.Patent Application Publication No.2007/0003442として公開され、2006年2月23日に出願されたU.S.Patent Application Serial No.11/360,845、“Methods and Apparatus for Manipulation of Fluidic Species”という名称の、2008年6月26日に公開されたInternational Patent Application No.PCT/US2008/007941に開示されている。
【0022】
本発明の各種の実施形態は、複数または一連の流体液滴を使用する。流体液滴は、多分散系(たとえば一連の異なるサイズを有する)であり得る、またはいくつかの場合では、流体液滴は、たとえば液滴の約10%、約5%、約3%、約1%、約0.03%、または約0.01%以下が、平均直径の約10%、約5%、約3%、約1%、約0.03%、または約0.01%を超える平均直径を有するように、たとえば直径の均質分散を有する単分散系または実質的に単分散系であり得る。液滴の集団の「平均直径」は、本明細書で使用するように、液滴の直径の算術平均である。当業者は、たとえばレーザ光散乱または他の公知の技法を使用して、液滴の集団の平均直径を測定できるであろう。非限定的な例として、液滴の平均直径は、約1mm未満、約500マイクロメートル未満、約200マイクロメートル未満、約100マイクロメートル未満、約75マイクロメートル未満、約50マイクロメートル未満、約25マイクロメートル未満、約10マイクロメートル未満、または約5マイクロメートル未満であり得る。液滴の平均直径は、ある場合では、少なくとも約1マイクロメートル、少なくとも約2マイクロメートル、少なくとも約3マイクロメートル、少なくとも約5マイクロメートル、少なくとも約10マイクロメートル、少なくとも約15マイクロメートル、または少なくとも約20マイクロメートルでもあり得る。
【0023】
流体液滴は、配列決定される標的核酸を含有し得て、標的核酸は任意の好適な核酸であり得る。たとえば、標的核酸は、生物学的実体、たとえばタンパク質、酵素、抗体、受容体、リボザイム、リボソームなど、および/またはその一部をコードする核酸であり得る。別の実施例として、標的核酸は、調節配列または非コード配列、たとえば低分子干渉RNA、マイクロRNA、低分子ヘアピンRNAなどであり得る。標的核酸は、長さが任意の数のヌクレオチド、たとえば長さが約25、約50、約60、約64、約70、約80、約90、約100、約200、約400、約800、約1600、約3200、約6400、またはなおそれ以上のヌクレオチドであり得る。標的核酸(および本明細書に記載するような他の種類の核酸)の非限定的な例は、天然源から単離され得る、組換え産生され得る、人工的に合成され得るなどのリボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、またはその混合物もしくはコポリマーを含む。核酸は、残基、たとえばアデノシンすなわち「A」、チミジンすなわち「T」、グアノシンすなわち「G」、シチジンすなわち「C」、またはウリジンすなわち「U」、または他の残基、たとえば以下で詳細に議論するユニバーサル残基を含有し得る。核酸は、ハイブリダイゼーションを促進するために2本鎖または1本鎖であり得る。さらに、核酸は実質的にいずれの源からも得ることができる。たとえば、核酸は、細胞またはウイルスから単離され得る、在来の化学合成を使用して合成され得る、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して合成され得るなどである。
【0024】
液滴内に含有された標的核酸は次に、核酸プローブおよび/または1つ以上の識別要素に露出され得る。たとえば、先に議論したように、標的核酸を含有する流体液滴は、核酸プローブおよび少なくとも1つの識別要素を含有する第2の流体液滴と融合され得る。液滴を共に融合する各種の技法を下でさらに詳細に議論する。
【0025】
核酸プローブは、ある実施形態において、標的核酸内のある配列を決定するために一般に使用される。しばしば、標的核酸の短い部分は、核酸プローブ、たとえば約20未満の残基の、約15未満の残基の、約10未満の残基の、9未満の残基の、8未満の残基の、7未満の残基の、6未満の残基の、5未満の残基の、4未満の残基などの配列と結合することができる。残基は標的核酸内で通例隣接しているが、下で議論するようにいくつかの場合では、標的核酸内の残基のいくつかは必ずしも隣接していない。いくつかの実施形態において、核酸プローブは、標的核酸配列の少なくとも一部を認識することができ、標的核酸の認識された部分と同じ長さを有することが多い、核酸残基の比較的短い配列を含有し得る。たとえば核酸プローブは、いくつかの場合では約20未満のヌクレオチドもしくは約10ヌクレオチド未満の長さを、または上述のような長さを有する配列を有し得る。1つの場合において、核酸プローブ配列の長さは4残基であり得る(たとえば図2Aを参照)。別の場合では、長さは5残基であり得る(たとえば図2Bを参照)。また別の場合では、長さは6残基であり得る(たとえば図2Cを参照)。核酸プローブ内の核酸プローブ配列は隣接し得るか、または配列は非隣接であり得る。たとえば、ユニバーサル残基またはギャップが存在し得る。いくつかの例において、核酸プローブは、信号発信実体、たとえば放射性同位体によって、または蛍光タグによって(たとえば図2D)などのある方式で標識され得る。各種の信号発信実体および核酸プローブの他の例は、下でさらに詳細に議論されるであろう。
【0026】
核酸プローブは、プローブの少なくとも一部が標的核酸配列に対して相補的または少なくとも相補的な配列を含有するように選択され得る。たとえば、一実施形態において、核酸プローブ配列は、あるサイズまたは数(またはサイズもしくは数の範囲)の核酸残基の各順列が示されて、それによりこれらの核酸プローブ配列の少なくとも1つが標的核酸に対して実質的に相補的であるように選択される。本明細書で使用するように、第2の配列に対して「実質的に相補的」である第1の配列は、第1および第2の配列の少なくとも約75%が相補的である(たとえばワトソン−クリック相補的対形成によって、または場合によりG:Uゆらぎも含む)および/または配列が最大で1または2塩基ミスマッチを含む配列である。いくつかの実施形態において、2つの配列は、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または少なくとも約100%相補的であり得る。
【0027】
いくつかの実施形態において、複数の区別可能なまたは同一でない核酸プローブ、たとえば核酸プローブ内に含有される残基の配列に1つ以上の相違を有する核酸プローブが使用される。たとえば、複数の流体液滴が使用され得て、流体液滴は特異的な核酸プローブ配列をそれぞれ含有し得る。流体液滴は、(核酸プローブの複数のコピーが存在し得るが)各流体液滴が唯一の核酸プローブを含有するように調製され得る。さらにいくつかの場合で、異なる流体液滴は、(たとえば多少の冗長性を持たせて、各流体液滴が液滴の所与の集団または集合において必ずしも唯一ではないようにするために)同じまたは異なる核酸プローブ配列を独立して含有し得る。
【0028】
いくつかの場合で、核酸プローブをたとえば信号発信実体によって標識することができる。信号発信実体は、下で議論する方法などの検出方法を使用していくつかの方式で決定され得る。信号発信実体は核酸内の任意の好適な位置に、たとえば核酸プローブの核酸配列の5’末端部位、3’末端部位に、または核酸プローブ内の内部部位に含まれ得る。いくつかの場合で、信号発信実体は、核酸プローブが標的核酸配列と結合されないときと比較して、核酸プローブが標的核酸と結合されるときに、異なるシグナルを生成する(またはシグナルを生成しない)ように選択することができる。信号発信実体は、これに限定されるわけではないが、蛍光染料、化学発光実体、放射性標識、同位体、たとえば非放射性同位体または質量分析法によって検出可能な同位体(たとえばエレクトロフォア質量標識(EML))、標識抗体への特異的結合パートナーとして作用できるリガンド、酵素、標識リガンドの特異的結合パートナーとして作用できる抗体、抗原、特異的反応性を有する基、および/または電気化学的に検出可能な部分を含むことができる。蛍光信号発信実体の非限定的な例は、フルオレセイン、ローダミン、またはヘキサクロロフルオレセインを含む。当業者は、ただちに商業的に入手できる他の蛍光実体を認識するであろう。信号発信実体のまた他の例は、本明細書で詳細に議論する。
【0029】
たとえば一実施形態において、核酸プローブは、核酸残基の配列、信号発信実体、および消光剤(quencher)または増感剤(enhancer)を含むことができる(たとえば図2Eに示すように、シグナル伝達プローブはSで示し、消光剤はQで示す)。信号発信実体は、たとえば蛍光実体であり得て、核酸プローブの任意の場所に配置され得る、たとえば核酸配列の5’末端に共有結合され得る。各種の実施形態において核酸プローブとして使用するのに潜在的に好適な蛍光実体の非限定的な例は、6−カルボキシフルオレセインおよびテトラクロロフルオレセインを含む。消光剤または増感剤は、ある方式で、たとえば信号発信実体の決定を個別に抑制または促進することによって、信号発信実体に影響を及ぼすことができる任意の実体であり得る。たとえば、核酸プローブ内に蛍光信号発信実体および消光剤が近接していることは、信号発信実体の蛍光が部分的または完全に抑制できるようなことであり得るのに対して、増感剤を信号発信実体に近接して配置すると、増感剤は蛍光信号発信実体の蛍光を増強することが可能であり得る。消光剤または増感剤はまた、核酸プローブの任意の位置に配置され得て、たとえば核酸配列の3’末端に結合され得る。消光剤の非限定的な例は、テトラメチルローダミンおよびジヒドロシクロピロロインドールトリペプチドを含む。
【0030】
非限定的な例として、消光剤(または同様に増感剤)は、核酸プローブ中の信号発信実体内で以下のように使用することができる。標的核酸と結合した核酸プローブは、ある酵素または他の種、たとえばTaqポリメラーゼなどのポリメラーゼの作用によって、標的核酸から除去または解離され得る。たとえば、いくつかの場合で、ポリメラーゼは、核酸プローブ内の核酸配列の分解を引き起こし得て、それにより信号発信実体および/または消光剤もしくは増感剤の放出を生じさせ得て、消光剤または増感剤はもはや、信号発信実体に近接していないか、または信号発信実体に少なくとも実質的に影響を及ぼさない可能性がある。それゆえ核酸プローブの分解は、信号発信実体の変化を決定することによって決定することができる。これに対して、核酸プローブが標的核酸と十分に結合しない系では(たとえば十分な相補的配列が存在しない場合)、ポリメラーゼまたは他の種の作用による核酸プローブの分解は起こらず(たとえば標的核酸と核酸プローブとの間に存在する結合がごく一時的または短期間であるために、酵素作用が発生しない)、それゆえ信号発信実体のシグナルの著しい変化を決定できなかった。したがって、一実施形態において、Taqポリメラーゼなどのポリメラーゼが、核酸プローブおよび標的核酸を含む流体液滴に供給され得る。ポリメラーゼは、本明細書で議論するような任意の好適な技法を使用して流体液滴に供給され得る。
【0031】
いくつかの場合で、核酸プローブは、少なくとも1つのロックド核酸(locked nucleic acid)(LNA)残基を含み得る(たとえば図2Fを参照)。ロックド核酸残基は、天然発生型核酸残基に類似した化学的形状を有する核酸類似体(たとえば相補的残基と2個または3個の水素結合を形成することができる)であるが、天然発生型核酸残基と同数の次元で自由に回転することができない。たとえば、いくつかの場合で、ロックド核酸残基は、2’−O、4’−Cメチレンブリッジを含有し得て、メチレンブリッジは、DNAまたはRNAのある形でよく見出される、3’−エンド構造立体配座にリボースを「ロック」する。ロックされたリボース立体配座は、残基の積み重ねおよび/または主鎖の予備構成を増強し得る。このことは、いくつかの場合で核酸配列の熱安定性(たとえば溶融温度)を著しく上昇させることができる。下で詳細に議論するように、1個以上のロックド核酸残基を含有する核酸プローブがある実施形態で有用であり得るのは、ロックド核酸残基は、たとえば内部で回転するその能力に対する制限のために、標的核酸との結合に対する親和性の上昇を示し得る。
【0032】
ある実施形態において、核酸プローブは、残基対形成関係で2つ以上の天然ヌクレオチドと、いくつかの場合では天然ヌクレオチドすべてと結合し得るユニバーサル残基を含有し得る。例示的なユニバーサル残基は、5−ニトロインドールおよび3−ニトロピロールを含むが、本明細書に記載するシステムおよび方法に有用な他のユニバーサル残基が当業者に公知となるであろう。下で議論するように、1つ以上のユニバーサル塩基を含有する核酸がある実施形態において有用であり得る。核酸プローブは、任意の好適な技法、たとえば固相ホスホラミダイトトリエステル法を使用して合成され得る。いくつかの場合で、複数の核酸プローブが合成され、このようなプローブのライブラリを形成する。ライブラリは、たとえば複数の流体液滴で構成された複数の配列を含み得る。いくつかの(すべてではない)実施形態において、ライブラリは、ほぼ同じ数の残基、たとえば約4残基、約5残基、約6残基、約7残基などを有する配列を含有し得る。核酸プローブのライブラリは、任意の好適な技法を使用して作製され得て、手動技法または自動化を使用して、たとえばロボット装置を使用して産生され得る。
【0033】
一実施形態において、核酸プローブは並行して産生することができる。たとえば、マイクロ流体装置を使用して核酸プローブのライブラリの並行生成が可能になり得る。たとえば、1個のチップ上にマイクロ流体液滴メーカーを何回も複製して、各液滴メーカーを使用して異なる核酸プローブを作製し得る。液体に包囲された流体の液滴を産生する技法の非限定的な例は、それぞれ参照により本明細書に組み入れられている、“Method and Apparatus for Fluid Dispersion”という名称であり、2005年8月11日にU.S.Patent Application Publication No.2005/0172476として公開され、2004年12月28日に出願されたU.S.Patent Application Serial No.11/024,228;“Electronic Control of Fluidic Species”という名称であり、2007年1月4日にU.S.Patent Application Publication No.2007/000342として公開され、2006年2月23日に出願されたU.S.Patent Application Serial No.11/360,845;または“Systems and Methods of Forming Particles”という名称であり、2007年3月8日にU.S.Patent Application Publication No. 2007/0054119として公開され、2006年3月3日に出願されたU.S.Patent Application Serial No.11/368,263に記載されている。たとえば、いくつかの実施形態において、電荷が液体に包囲された流体で生成されて、これにより流体は液体内で個々の液滴に分離され得る。
【0034】
一実施形態において、ライブラリは、ある長さを有する核酸配列のセットのために考えられるあらゆる配列を含み得る。別の実施形態において、ライブラリは、ある長さを有する考えられるすべての配列の少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%を含み得る。ライブラリを調製するためのいくつかの技法を下で議論する。
【0035】
多くの実施形態において、少なくとも1つの識別要素が存在する。「識別要素」とは、本明細書で使用するように、ある方式で決定することができる構成成分を含む種であり、たとえば識別要素は液滴内に含有されているときに識別され得る。識別[スペルチェッカが作動していない?]要素は、液滴内で不溶性(たとえば懸濁)または可溶性であり得る。非限定的な例は、蛍光、化学発光、放射能などによって検出可能な識別要素を含む。具体的な例は、これに限定されるわけではないが、染料を含有する粒子、量子ドット、または、いくつかの実施形態において、他の種、たとえば本明細書に記載するようなオリゴヌクレオチドも結合され得る蛍光粒子を含む。いくつかの場合で、2つ以上の同一の識別要素が所与の液滴内に存在し得る。
【0036】
ある実施形態において、同じでない識別要素が、たとえば液滴内で使用され得る。たとえば、液滴は少なくとも2つの区別可能な識別要素、少なくとも3つの区別可能な識別要素、少なくとも4つの区別可能な識別要素、少なくとも5つの区別可能な識別要素などを含有し得る。識別要素は、任意の好適な方法、たとえば色、蛍光、吸収、強度、サイズ、電荷、放射能、質量などを使用して区別され得る。
【0037】
1セットの実施形態において、粒子または微粒子(たとえばビーズ)は識別要素として使用され得る。粒子は、任意の寸法を有し得て、球形または非球形であり得る。たとえば粒子は、いくつかの場合で直径が約100nm〜約100umに及ぶ平均直径を有し得る。ある実施形態において、粒子は約1マイクロメートル未満の、約300nm未満の、約100nm未満の、約30nm未満の、または約10nm未満の平均直径を有し得る。平均直径は、本明細書で使用するように、液滴内に含有された粒子の直径の算術平均である。非球形粒子の直径は、本明細書で使用するように、粒子と同じ体積を有する完全な数学的球の直径である。
【0038】
いくつかの実施形態において、少なくとも3つの区別可能な識別要素、少なくとも4つの区別可能な識別要素、少なくとも6つの区別可能な識別要素、少なくとも8つの区別可能な識別要素、少なくとも9つのつの区別可能な識別要素、少なくとも10の区別可能な識別要素、少なくとも20の区別可能な識別要素、少なくとも30の区別可能な識別要素、少なくとも40の区別可能な識別要素、少なくとも50の区別可能な識別要素、少なくとも60の区別可能な識別要素、少なくとも70の区別可能な識別要素、少なくとも80の区別可能な識別要素、少なくとも90の区別可能な識別要素、少なくとも100の区別可能な識別要素などがあるように、複数の識別要素が液滴を識別するために選択され得る。複数の区別可能な識別要素の1つの非限定的な例は、Luminex Corp.から市販されているLuminex FlexMAP Microspheresビーズである。これらのようなビーズまたは粒子は、一実施形態により、各ビーズまたは粒子内で独立して変化することができる2つ以上の染料または他の化合物の使用によって区別され得る。したがって、複数の区別可能なビーズは、ある実施形態により、複数の識別要素として使用され得る。別の詳細な非限定的な例として、ポリスチレンおよび1つ以上の染料を含む粒子が識別要素として使用され得る。粒子内で利用される染料はたとえばスクアリン酸ベースの分子またはたとえば近赤外線および/または赤外範囲に及ぶ蛍光を呈する他の蛍光分子を含み得る。いくつかの場合で、濃度が独立して制御できる2つ以上の染料を各粒子内で使用することができる。
【0039】
一態様において、標的核酸は、核酸プローブおよび少なくとも1つの識別要素に曝露され得る。たとえば核酸プローブおよび少なくとも1つの識別要素は、第1の流体液滴内に含有され得て、標的核酸は第2の流体液滴内に含有され得て、次に共に融合されて(たとえば下で議論するように)、それにより標的核酸が核酸プローブに曝露される。標的核酸と核酸プローブとの結合を測定するために、標的核酸プローブの少なくとも一部の配列が決定され得る。いくつかの場合において、複数の異なる核酸プローブを用いてこれを反復することによって、標的核酸プローブ全体の配列が決定され得る。
【0040】
標的核酸を配列決定するための1セットの実施形態は、一般に次のように説明される。核酸プローブおよび少なくとも1つの識別要素を含む第1の流体液滴が提供される。この例では、核酸プローブは信号発信実体に結合した核酸残基の配列および消光剤または増感剤を含む。たとえば、核酸プローブは4、5、6、7、8、または9残基を含有し得る。信号発信実体、消光剤、および増感剤は上で議論した。標的核酸を含む第2の流体液滴も提供される。第1の流体液滴および第2の流体液滴は、本明細書で議論した方法を含む、任意の好適な方法に従って融合され得る。融合した流体液滴もポリメラーゼを含むことができる。ポリメラーゼは、液滴が融合する前にポリメラーゼを第1の流体液滴もしくは第2の流体液滴に、または第1の流体液滴および第2の流体液滴が融合された後に直接第3の流体液滴に供給することによって、融合流体液滴に包含され得る。ある場合において、たとえば核酸プローブおよび標的核酸の各配列が相補的または実質的に相補的である場合、核酸プローブは、第1および第2の液滴の融合後に標的核酸にハイブリダイズし得るか、またはそうでなければ標的核酸と結合し得る。これらの場合において、上で議論したように、信号発信実体および消光剤または増感剤を含む核酸プローブを使用するときに、ポリメラーゼは、核酸プローブが標的核酸にハイブリダイズするまたは標的核酸と結合する際に核酸プローブの分解を引き起こし得る。信号発信実体および/または消光剤または増感剤は次に、ポリメラーゼの作用のために核酸プローブから放出され得て、それゆえ消光剤または増感剤は信号発信実体にもはや実質的に影響を及ぼし得ず、信号発信実体を決定することができる。しかし、核酸プローブが、たとえば十分な相補性がないために標的核酸にハイブリダイズしない、またはそうでなければ標的核酸と結合しない場合には、第1および第2の液滴の融合後に信号発信実体の変化は測定できない。それゆえ、信号発信実体の変化の測定は、核酸プローブが標的核酸にハイブリダイズしたか、またはそうでなければ標的核酸と結合したか否かを決定するために使用され得る。少なくとも1つの識別要素も、核酸プローブの配列決定で決定および/または利用され得る。
【0041】
非限定的な例を図3に示す。本図において、核酸プローブ21および少なくとも1つの識別要素22を含有する第1の流体液滴20が提供される。しかし他の実施形態において、2、3、または4つ以上の識別要素が液滴内で使用され得る。本図において、核酸プローブ21は、信号発信実体24に結合された核酸配列23および消光剤(「Q」)25(他の実施形態において、増感剤が消光剤の代わりに使用され得るが)を含む。さらに、標的核酸27を含有する第2の流体液滴26が提供される。本例では、第1の流体液滴20は第2の流体液滴26と融合して、矢印200によって示すように、融合流体液滴28を形成する。ポリメラーゼ29は融合流体液滴内に存在する(たとえば、それは第1および/または第2流体液滴中に存在していた)。矢印201で示すように核酸プローブ21が標的核酸27と結合する場合、信号発信実体24は矢印202で示すように核酸23および消光剤25から移動される。ある例において、核酸プローブ21および標的核酸27は結合し得て(たとえば核酸プローブおよび標的核酸が相補的または実質的に相補的である場合)、その結合は、矢印203によって示すように信号発信実体24の変化を測定することによって検出することができる。いくつかの場合で、核酸23の配列は次に、識別要素22(矢印204および205によって示す)を決定することによって決定され得る。
【0042】
標的核酸を配列決定するための別のセットの実施形態は、リガーゼを使用して、標的核酸の存在下で核酸プローブを共に結合させる。例は次の通りである。核酸プローブの第1の群および第2の群よりそれぞれ選択された、第1および第2の核酸プローブを含む、第1の流体液滴が提供され得る。しかし、いくつかの場合で、核酸プローブの第1または第2の群からそれぞれ選択される第1または第2の核酸プローブのどちらかを含む、2つの流体液滴が要求され得る。核酸プローブはそれぞれ、本明細書でさらに議論するように、信号発信実体に結合した核酸残基の配列、消光剤および/または増感剤を含む。標的核酸を含む第2の流体液滴も提供される。第1の流体液滴(または2つの別個の流体液滴)および第2の流体液滴は次に、本明細書で議論するように、任意の好適な方法を使用して融合することができる。
【0043】
さらに、リガーゼを融合流体液滴に包含することができる。リガーゼは、液滴が融合する前にリガーゼを第1の流体液滴もしくは第2の流体液滴に、または第1の流体液滴および第2の流体液滴が融合された後に直接融合流体液滴に供給することによって、融合流体液滴に包含させることができる。
【0044】
いくつかの実施形態において、第1および第2の核酸プローブは、たとえば標的核酸および核酸プローブが実質的な相補性を有する場合、標的核酸と結合することができる。これらの例において、核酸プローブは(たとえばリガーゼとの連結を介して)共に結合され得て、(下で議論するように)核酸プローブとの結合を測定するために使用することができる。たとえば、いくつかの場合において、第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブは標的核酸と、相互に隣接した位置で結合する(たとえば標的核酸にハイブリダイズする)であろう(たとえば第1の核酸の配列は、標的核酸と実質的に相補的であり、第2の核酸の配列は、第1の核酸プローブと実質的に相補的である配列に隣接した標的核酸と実質的に相補的である)。このような場合、第1および第2の核酸プローブの連結は、リガーゼの存在のために発生することができる。しかし、第1および第2の核酸プローブが標的核酸プローブが標的核酸の隣接した位置で結合しない他の例では、連結は発生することができない。例として、第1および第2の核酸は、標的核酸と実質的に相補的である配列を有し得るが、該配列は相互に隣接していない(たとえば1つ以上の残基は、標的核酸プローブにて第1および第2の核酸プローブに相補的な配列の間に存在し得る)。
【0045】
いくつかの実施形態において、標的核酸を配列決定するために上述のような連結方法を利用することが好都合であり得る。たとえば、本明細書でさらに記載するように、このような方法によって、より小規模のライブラリからの比較的大規模な配列決定ライブラリの形成が可能になり得る。これによりライブラリの合成のための時間および/または費用(たとえば試薬の費用)を低減することができる。さらに連結方法がいくつかの実施形態において、非連結方法と比較して増強されたシグナルを含むことが可能であるのは、連結によってプローブ長が増大されて、次に結合エネルギーを増大することができるためである。いくつかの場合で、このような方法によって、単一塩基対の特異性が上昇して、それにより配列決定プロセスの精度が上昇することがある。これは、より短い核酸プローブが、より長い核酸プローブと比較してより高い単一塩基対特異性を有し得るためである。特異性および結合エネルギーは、いくつかの場合で、たとえば本明細書で議論するように、プローブ構造を改変して、プロセスを最適化するために、ユニバーサル塩基、ロックド核酸、ギャップ、または他の生化学試薬を含む核酸プローブを使用することによっても増強され得る。連結方法はまた、いくつかの場合で長いおよび短い核酸プローブの両方より成るライブラリを使用することの利点を好都合に組み合せ得る。たとえば短いプローブを使用して、一般に核酸プローブにより密接に結合されるであろう、より長いプローブが形成され得る。他方、より長いプローブはプローブの可撓性のために、短いプローブよりも特異性が一般に低い。したがって、ある連結方法は、より短いおよびより長いプローブの利点のいくつかを利用し得る(たとえばより短いプローブの特異的結合、より短いプローブが連結されてより長いプローブを形成し、したがって結合がより密接である)。
【0046】
本発明の連結方法の非限定的な例を図16に示す。図16Aに示すように、標的核酸80は、第1の核酸プローブ82および第2の核酸プローブ84に曝露される。いくつかの場合で、第1および第2の核酸プローブは、図16Bに示し、矢印81で示すように、相互に隣接した標的核酸とハイブリダイズし得る。第1の核酸プローブ82および第2の核酸プローブ84を含む標的核酸80は次に、矢印83によって示すように、リガーゼ86に曝露され得る。図16Cに示すように、第1および第2の核酸プローブは連結されて、核酸オリゴマー88を形成し得る。しかしいくつかの場合で、第1および第2の核酸プローブは、図16Eに示し、矢印87で示すように、標的核酸において相互に隣接してハイブリダイズしない。このような例において、矢印89によって示すように、第1核酸プローブ82および第2の核酸プローブ84を含む標的核酸80のリガーゼ86への曝露時に、核酸プローブの実質的な連結は発生しないであろう。いくつかの場合で、核酸プローブの一方または両方が標的核酸にハイブリダイズせず(たとえば核酸は、実質的に相補的ではない)、第1の核酸プローブと第2の核酸プローブとの間に連結は発生しないであろう。一例として、図16Dに示し、矢印85で示すように、第1の核酸プローブ82のみが標的核酸80とハイブリダイズし、これに対して第2の核酸プローブ84は標的核酸80とハイブリダイズしない。
【0047】
別の非限定的な例として、2個の3mer核酸プローブが相補的であり、隣接して、正しい順序でハイブリダイズする場合、それらは連結されて、図36Aおよび36Bに示すように新たな6merが形成され得る。図36Aは、隣接する相補的3merの標的核酸へのハイブリダイゼーションを示す。図36Bは、核酸プローブのリガーゼとの連結を示す。連結は、2個の3merプローブを共に共有結合して、さらに密接に結合された6merを形成する。連結前に、プローブの結合エネルギーは、3merの結合エネルギーのみであり、このエネルギーは一般に、あまりに低すぎて室温では検出できない。連結後に、2個の3merは6merとなり、6merは3merの2倍の結合エネルギーを有し、それゆえ図53Cに示すように、ハイブリダイズすることができる。それゆえプローブの連結は、短いプローブの非常に特異的であるが過渡的な結合に依存して、密接に結合した複合プローブを産生する。
【0048】
第1および第2の核酸プローブの結合は、たとえば核酸プローブの少なくとも1つと結合した信号発信実体の変化によって測定され得る。第1および第2の核酸プローブが隣接位置にて標的核酸に対して相補的または実質的に相補的である場合、ここで第1および第2の核酸プローブ(信号発信実体を含む)は上で議論したように標的核酸と結合して、連結反応に関与する。したがって、連結された核酸プローブの信号発信実体を決定することにより、核酸プローブの両方の配列に基づいて標的核酸の配列の一部が決定され得る。反対に、第1および第2の核酸プローブが標的核酸配列と結合できない場合(たとえば配列が十分に相補的でない場合)、ここで連結反応は起こり得ず、決定されたシグナル実体は異なる信号を有するであろう。いくつかの場合で、第1の群からの各核酸プローブは第1の信号発信実体または識別要素を含み、第2の群からの各核酸プローブは第2の信号発信実体または識別要素を含む。第1および第2の核酸プローブの連結は、第1および/もしくは第2の信号発信実体ならびに/または識別要素を決定することによって決定され得る。
【0049】
いくつかの場合で、核酸プローブの第1の群および/または核酸プローブの第2の群は、選択した長さの配列すべての少なくとも一部を含み得る。たとえば核酸プローブの第1の群は、3核酸残基を持つすべてのプローブの各部分の少なくとも1つを含み得る。核酸プローブの第1の群および核酸プローブの第2の群は、実質的に類似していてもしていなくてもよい。いくつかの場合で、核酸プローブの第1の群は、核酸プローブの第2の群と本質的に同じプローブを含む。いくつかの場合で、核酸プローブの第1および第2の群は、実質的に考えられるすべての3merを含む。いくつかの場合で、液滴は第1の群からの1個のプローブおよび第2の群からの1個のプローブを含み得る。他の場合では、液滴は第1の群からの第1の種類の複数のプローブおよび第2の群からの第2の種類の複数のプローブを含み得る。
【0050】
核酸プローブの第1の群およびまたは第2の群は、実質的に類似しているか、または異なり得る。たとえば核酸の第1の群および第2の群は、第1の群および第2の群が考えられるすべての3merの少なくとも一部を含む場合に実質的に類似しているが、それらが異なる信号発信実体を含む、または信号発信実体が異なる位置に配置されている(たとえば3’末端対5’末端)という点で異なり得る。区別可能な識別要素の第1の群および区別可能な識別要素の第2の群は、実質的に類似しているか、または異なり得る。いくつかの実施形態において、核酸プローブの第1の群および/または第2の群は、考えられる3mer、4mer、5mer、6mer、7mer、8mer、9mer、10merなどを含む。
【0051】
A、G、C、およびTに加えて、他の核酸残基もいくつかの場合で存在し得る。たとえばいくつかの場合で、核酸プローブの少なくともいくつかは少なくとも1個のユニバーサル残基をさらに含み得る。たとえばさらなるユニバーサル残基を含む3merは、配列NNNXXXを有し得て、ここでNはユニバーサル残基であり、XXXの各残基は独立して、A、G、C、またはTのいずれか1つである(たとえば3mer)。
【0052】
ユニバーサル塩基またはユニバーサル残基(たとえば「N」)は、本明細書で使用するように、核酸塩基(たとえばヌクレオチドまたはPNA)の形でポリマー構造中に包含されたときに、核酸塩基を有する相補的ポリマー構造の塩基を顕著に区別しない。たとえばユニバーサル塩基は、A、T、CおよびGから選択された1を超えるヌクレオチドにハイブリダイズできる。ユニバーサル残基は当業者に公知となるであろう。核酸塩基の非限定的な例は、デオキシイノシン、3−ニトロピロール、4−ニトロインドール、6−ニトロインドール、5−ニトロインドール、6−メチル−7−アザインドール、ピロールピリジン、イミダゾピリジン、イソカルボスチリル、プロピニル−7−アザインドール、プロピニルイソカルボスチリル、アレニル−7−アザインドール、8−アザ−7−デアザ−2’−デオキシグアノシン、8−アザ−7−デアザ−2’−デオキシアデノシン、2’−デオキシシチジン、2’−デオキシウリジン、2’−デオキシアデノシン、2’−デオキシグアノシン、7−デアザ−2’−デオキシイノシン、2’−アザ−2’−デオキシイノシン、3’−ニトロアゾール、4’−ニトロインドール、5’−ニトロインドール、6’−ニトロインドール、4−ニトロベンズイミダゾール、ニトロインダゾール(たとえば5’−ニトロインダゾール)、4−アミノベンズイミダゾール、イミダゾ−4,5−ジカルボキサミド、3’−ニトロイミダゾール、イミダゾール−4−カルボキサミド、3−(4−ニトロアゾール−1−イル)−1,2−プロパンジオール、および8−アザ−7−デアザアデニンを含む。
【0053】
いくつかの場合で、第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブそれぞれの一端のみが相互に連結し得るように、核酸プローブの第1の群は3’末端で連結することが可能であり、核酸プローブの第1の群は5’末端で連結することが可能であり得る。したがって、連結を発生させるためには、プローブは標的核酸に正しい順序でハイブリダイズする必要がある。すなわちプローブは、第1のプローブの3’末端および第2のプローブの5’末端が相互に隣接してプローブが連結できるように、標的核酸にハイブリダイズしなければならない。第1のプローブの5’末端および第2のプローブの3’末端が相互に隣接するように、第1のプローブおよび第2のプローブが標的核酸にハイブリダイズする場合、プローブは結合可能でないことがある(たとえば第1のプローブの5’末端および第2のプローブの3’末端は、その末端でのハイブリダイゼーションを防止する実体(たとえば識別要素、信号発信実体など)を含む)。
【0054】
連結方法によって、比較的より少ない数の液滴が最初に調製され得る。たとえば、考えられるすべての6merの総数を含む複数の液滴が生成される場合、本明細書に記載した技法を使用して4,096種類の液滴が産生されねばならない。しかし、2つの群の3merを用いて上述の連結方法を使用して考えられるすべての6merを調査する場合、わずか128種類の液滴が産生されねばならない(たとえば3merの第1の群(64)および3merの第2の群(64)。第1の群の液滴は、第2の群の液滴と融合して液滴のライブラリを形成し得て、各液滴は第1の群からの液滴および第2の群からの液滴を含む。
【0055】
SBH(ハイブリダイゼーションによる配列決定)バイオインフォマティクスを使用して、シングルパスで配列決定できる標的核酸の長さは、ライブラリ内のプローブ数の約4分の1になると予測できる。たとえば、64要素がある3merのライブラリ(43)の場合、約10〜12塩基の標的核酸を配列決定できる。たとえば、4096要素がある6merのライブラリの場合、約1000塩基の標的核酸を配列決定できる。また別の例として、約1700万のプローブがある12merのライブラリの場合、約400万塩基の標的核酸を配列決定できる。しかしこのように大きなライブラリは、標準方法によって合成するには実用的ではない大きさである。しかし本発明のある方法により、12merは、2個の6merを共に連結することによって形成可能であり、これには6merライブラリの4096+4096=8192プローブが合成されることが必要である。これは、1700万要素のライブラリ全体のプローブ数の0.0005%である。上述のように、12merを作製する6merは3merを連結することによってそれ自体形成できるため、12merは4個の3merプローブを連結することによって形成可能であり、合計256個のプローブを合成することが必要である。この関係は式:
f(n)=(4nl+4n2...)/4(nl+n2..)、式中
nl+n2+...=R、
によって得られ、式中、f(n)は、全ライブラリと比較して合成されねばならないプローブの割合であり、Rは最終連結プローブの長さであり、n1、n2は、共に連結される第1、第2の...プローブ内の塩基の数である。いくつかの場合で、核酸プローブの少なくとも2個の、少なくとも3個の、少なくとも4個の、少なくとも5個の、少なくとも6個などの群が提供され得る。本明細書に記載する連結方法は、核酸プローブの2個を超える群を含むように拡大され得る。連結により形成されたプローブの全長は、長さが少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16残基などである。
【0056】
核酸プローブの第1の群および第2の群の組み合せの非限定的な例を図17に示す。簡単にするために、核酸プローブ246の第1の群および核酸プローブ248の第2の群についての以下の例を示し、図17Aに示すように、プローブの各群は、4個のユニバーサル核酸残基および1個のA、C、G、またはT残基を含む(たとえばNNNNXまたは4個のユニバーサル残基を含むモノマー)。核酸プローブ246の第1の群は、4個のプローブ(250、252、254、256)を含み、ここで各プローブは信号発信実体または識別要素を(表示したように)3’または5’側に含む。核酸プローブ248の第2の群は、4個のプローブ(258、260、262、264)を含み、ここで各プローブは、核酸プローブの第1の群と比較して、信号発信実体または識別要素を(表示したように)5’または3’側に含む。図17Bに示すように、それぞれ第1の群からの少なくとも1個のプローブおよび第2の群からの少なくとも1個のプローブを含む、複数の液滴266が形成される。この例において、第1の群からの各プローブが第2の群からの各液滴を有する液滴中に含有される場合、16個の液滴が形成されるであろう。しかしいくつかの場合では、第1の群からのすべての液滴が、第2の群からの各液滴を有する液滴と組み合されるわけではない。
【0057】
ある例において、第1の群の核酸プローブはそれぞれ少なくとも1個の区別可能な識別要素と組み合わされ、第2の群の核酸プローブはそれぞれ少なくとも1個の区別可能な識別要素と組み合われ得る。たとえば、第1の群の区別可能な核酸プローブおよび第1の群の区別可能な識別要素を含む第1の群の液滴が形成され、第2の群の区別可能な核酸プローブおよび第1の群の区別可能な識別要素を含む第2の群の液滴が形成され得て、流体液滴の第2の集団を形成する。融合液滴に含まれる核酸プローブは次に、核酸プローブを決定することに関連して本明細書で議論するように、区別可能な識別要素を識別することによって識別され得る。識別要素は、標的核酸への液滴の曝露後に各プローブの配列を決定するためにも使用され得る。第1の群の核酸プローブと結合した区別可能な識別要素および第2の群の核酸プローブと結合した区別可能な識別要素は、相互から区別され得るまたはされ得ない。いくつかの場合で、すべて(たとえばすべての第1およびすべての第2の核酸プローブ)が区別可能な識別要素を決定することによって識別できるように、それらが区別可能であろう。いくつかの場合で、第1の群および第2の群からの液滴それぞれは、第1および第2の群からの各プローブの配列が区別可能な識別要素に関連付けられるように、少なくとも区別可能な識別要素を含み得る。
【0058】
第1の群の核酸プローブおよび第2の群の核酸プローブを含むライブラリは、各種の方法を使用して生成され得る。液滴のライブラリは、本明細書に記載するように、非マイクロ流体またはマイクロ流体法を使用して生成され得る。一般に、第1および第2の核酸プローブの連結は、それらが標的核酸に曝露された後まで発生しない。
【0059】
非マイクロ流体法の非限定的な例として、核酸プローブの第1および第2の群からの各核酸プローブが別個の容器に配置され得る。第1の群からの各プローブが第2の群からの各プローブと組み合されるまで、第1の群からの各核酸プローブは、別個の容器内の第2の群からの各核酸プローブと組み合され得る。たとえば図30は、それぞれ3merを含む第1の群からの64プローブおよび第2の群の核酸プローブをそれぞれ含む、ライブラリAおよびライブラリBの概略図を示す。ライブラリAからの各プローブは、ライブラリBからの各プローブと組み合されて、64×64=4096要素の複合ライブラリを形成する。いくつかの実施形態において、このことはアレイを使用して実施され得る。たとえば少なくとも4096の空のウェルを含有する大型ウェルプレートが用意され、各ウェルではライブラリAおよびライブラリBからの核酸プローブの独自の組み合せが混合され得る。たとえばウェルの第1列では、プローブA(1,1)は、プローブB(1,1)、B(1,2)、...、B(2,1)、B(2,2)、...、B(8,7)、およびB(8,8)と混合され得る。次の列において、プローブAおよびプローブBの考えられるすべての組み合せが混合されるまで、プローブA(1,2)はB(1,1)、B(1,2)、...、B(2,l)、B(2,2)、...、B(8,7)、およびB(8,8)などと混合される。これらの2つの小型ライブラリから、合計4096の組み合せが産生される(64×64=4096)。組み合されたA×Bライブラリの各要素は乳化され、エマルジョンはプールされて、各乳化からの少なくとも1個の液滴を含むプールライブラリが形成され得る。プールライブラリは、本明細書に記載して、図33Bに示すように、マイクロ流体装置に再注入され、標的核酸と融合され得る。
【0060】
いくつかのマイクロ流体の実施形態において、第1の群および第2の群からの核酸プローブはマイクロ流体装置で組み合され得る。たとえば、第1の群からの各核酸プローブは個別に乳化され、第1の群からの各プローブのエマルジョンは、核酸プローブの第1の群(たとえばライブラリA)に組み合され得る。ライブラリBを形成するために、このことが第2の群の核酸プローブにも実施され得る。ライブラリAおよびライブラリBは、図33Aに示すように、マイクロ流体装置に注入され得る。いくつかの実施形態において、図33Aの左に示すように、同時に、標的核酸を含む液滴もチャネル中に導入され得る。当業者に公知の技法を使用して、液滴を含む標的核酸および再注入されたライブラリの流量は、標的核酸を含む1個の液滴がライブラリAからの1個の液滴およびライブラリBからの1個の液滴と組み合されるように調整され得る。マイクロ流体液滴を融合するために本明細書に記載した技法を使用して、3個の液滴が融合され得る。
【0061】
別の非限定的な例として、第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブを含む複数の液滴は、第1の核酸プローブを含む複数の液滴を第2の核酸プローブを含む複数の液滴のうち1個と融合させることによって調製され得る。すなわち、第1の群の核酸プローブから選択される少なくとも1個の核酸プローブをそれぞれ含む第1の複数の液滴が調製され、第2の群の核酸プローブから選択される少なくとも1個の核酸プローブをそれぞれ含む第2の複数の液滴が調製され得る。第1の複数の液滴からの液滴は、第2の群の液滴からの液滴と融合され得て、それにより第1の群の核酸プローブから選択される少なくとも1個の核酸プローブおよび第2の群の核酸プローブから選択される少なくとも1個の核酸プローブを含む液滴が形成される。この工程は、第1の群からの核酸プローブの実質的にすべてが第2の群からの核酸プローブの実質的にすべてを含む液滴に含まれるように、複数の融合液滴が形成されるまで反復され得る。形成された融合液滴のライブラリは次に、標的核酸を含む第3の液滴と融合され得る。
【0062】
標的核酸を配列決定するための別のセットの実施形態は、次の通りである。核酸プローブ(信号発信実体を含有し得る)ならびに、少なくとも、第1の識別要素、第1の識別要素から区別可能な第2の識別要素、ならびに第1の識別要素および第2の識別要素から区別可能な第3の識別要素を含む第1の流体液滴が提供され得る。いくつかの場合で、第1、第2および第3の識別要素から区別可能な第4の識別要素も存在し得る。いくつかの実施形態において、各識別要素はオリゴヌクレオチドも含み得て、液滴内のいくつかの識別要素は区別可能なオリゴヌクレオチドをしばしば含み得る。いくつかの場合で、オリゴヌクレオチドはそれぞれ1個以上のユニバーサル核酸残基を含有する。たとえば、所与の液滴内のオリゴヌクレオチドはそれぞれ複数のユニバーサル核酸残基を含有し得て、液滴中の各オリゴヌクレオチドは、ユニバーサル残基ではない残基によって異なり得る。
【0063】
詳細で非限定的な実施例として、流体液滴中に4個の区別可能な識別要素が存在するとき、4個の区別可能な識別要素のオリゴヌクレオチドは、A(N)n−1、C(N)n−1、G(N)n−1、およびT(N)n−1であり得て、式中、Nはユニバーサル核酸残基であり、nはオリゴヌクレオチドの長さである。この例において、オリゴヌクレオチドは1個の残基によってすべて異なる。いくつかの場合で、オリゴヌクレオチドのユニバーサル核酸部分の長さは4残基である。他の場合では5残基である。また他の場合では、6残基である。いくつかの例において、異なる残基は、オリゴヌクレオチドの5’末端位置に位置して、たとえば5’−XN(n−1)−3’である(Xは天然発生型核酸残基である)。しかし他の例において、異なる残基はオリゴヌクレオチドの5’末端からの第2の位置に配置され、たとえば5’−NXN(n−2)−3’である。また他の例において、異なる核酸は他の位置に配置され、たとえば5’−NNXN(n−3)−3’である。
【0064】
この例では、標的核酸を含む第2の流体液滴も提供され得る。流体液滴および第2の流体液滴は次に融合されて、融合流体液滴を形成することができる。いくつかの場合で、標的核酸と結合することができる核酸プローブは、たとえばそれらが相補的および実質的に相補的である場合に存在し得る。さらに、識別要素のオリゴヌクレオチドの1個も標的核酸と結合され得る。
【0065】
核酸プローブおよび識別要素のオリゴヌクレオチドの1個が標的核酸と結合されるようになったいくつかの例において、核酸プローブおよび識別要素のオリゴヌクレオチドは、(たとえば連結より)共に結合され得て、これは結合を測定するために(下で議論するように)使用することができる。識別要素のオリゴヌクレオチドおよび核酸プローブの配列が標的核酸に対して相互に隣接して位置決めされるときに、通例連結が発生して、オリゴヌクレオチドおよび核酸プローブが標的核酸に対して正しく位置決めされていない場合には、実質的な連結は発生しないであろう。いくつかの場合で、オリゴヌクレオチドおよび核酸プローブ配列の連結は、たとえばDNAリガーゼなどの任意の好適な技法を使用して、融合流体液滴中にリガーゼを供給することによって引き起こされ得る。たとえばリガーゼは、液滴が融合流体液滴に直接融合される前に第1の流体液滴または第2の流体液滴にポリメラーゼ供給することによって、融合流体液滴に包含され得る。
【0066】
核酸プローブおよび識別要素のオリゴヌクレオチドの連結はたとえば、識別要素および核酸プローブの信号発信実体の結合を測定することによって決定され得る。核酸プローブが標的核酸に対して相補的または実質的に相補的である場合、ここで(信号発信実体を含む)標的核酸は標的核酸を結合して、連結反応に関与することができる。区別可能な識別要素は、それぞれの結合したオリゴヌクレオチドが1個の位置のみで異なるように選択され(たとえば残りの残基はユニバーサル核酸残基である場合)、ここで区別可能な識別要素の1個のみが連結反応に関与できるであろう。したがって、核酸プローブの信号発信実体と結合した区別可能な識別要素を決定することによって、標的核酸の配列の一部が、核酸プローブの配列および識別要素のオリゴヌクレオチドの配列の両方に基づいて決定され得る。反対に、核酸プローブが標的核酸配列と結合できない場合(たとえば核酸が十分に相補的でない場合)、ここで連結反応は発生することはなく、識別要素のいずれも核酸プローブの信号発信実体と結合することが見出されないであろう。
【0067】
上の方法の非限定的な例を図4に示す。この例において、核酸プローブ31、第1の識別要素32、第1の識別要素から区別可能な第2の識別要素33、第1の識別要素および第2の識別要素から区別可能な第3の識別要素34、および第1、第2および第3の識別要素から区別可能な第4の識別要素35を含有する、第1の流体液滴30が提供される。もちろん、1コピーを超える識別要素が液滴内に存在し得る。区別可能な識別要素はそれぞれ、結合されたオリゴヌクレオチドを含むことができる。これらの核酸オリゴヌクレオチド配列はそれぞれ他の識別要素と結合した他の核酸オリゴヌクレオチドと1個の残基が異なるが、残りの残基がユニバーサル核酸残基であり得るように選択され得る。たとえば4個の区別可能な識別要素と結合した4個のオリゴヌクレオチドはNANNNN、NTNNNN、NGNNNN)、およびNCNNNN(または本明細書で記載するような、他の任意の組み合せ)であり得る。この実施例において、標的核酸37を含む第2の流体液滴36も提供される。第1の流体液滴および第2の流体液滴は、矢印300によって示すように、本明細書に記載する任意の好適な技法を使用して融合され、流体液滴38を形成する。いくつかの場合で、核酸プローブ31は標的核酸37と結合するようになり、矢印301によって示すように、識別要素のオリゴヌクレオチドの1つ(32、33、34、または35)も標的核酸37と結合するようになり得る。図に示すように、それぞれのオリゴヌクレオチドおよび核酸プローブ配列が標的核酸37と適正に結合する場合に、識別要素のオリゴヌクレオチドを核酸プローブの核酸配列に結合することができるリガーゼ39が融合流体液滴に供給される。いくつかの場合で、リガーゼは配列間に任意のギャップまたはインタリング配列がある場合には連結しないであろう。核酸プローブの信号発信実体と結合した識別要素は次に、矢印302によって示すように決定され得る。このような決定の技法は下で議論する。
【0068】
本発明の複数の詳細な例を上で議論したが、上の工程および/またはさらなる工程の任意の組み合せも標的核酸を配列決定するために使用され得ることに注意すべきである。
【0069】
標的核酸の配列は、複数の区別可能な核酸プローブの1個への標的核酸の結合(または非結合)を決定することによって決定され得る。標的核酸は、それらが実験条件下で水素結合によって比較的安定な2本鎖を形成するときに、核酸プローブと結合され得る。比較的安定な水素結合は、本明細書で議論するように、ワトソン−クリック相補性(たとえばAはTに対応するが、GまたはCには対応せず、GはCに対応するが、AまたはTには対応しない)および/またはGCゆらぎなどの他の効果、もしくはロックド核酸またはユニバーサル塩基によって引き起こされる他の結合のために形成され得る標的核酸の配列を決定するための好適な方法の非限定的な例は、当業者に公知であるハイブリダイゼーション技法による配列決定を含む。
【0070】
ハイブリダイゼーションによる配列決定は(SBH)、たとえば米国特許第5,202,231号で以前に記載された、標的核酸中の核酸残基配列を調べる方法である。一般にSBHは、定義された配列の核酸配列プローブのセットを使用して、標的配列のより長い標的鎖で相補的配列を探す。標的にハイブリダイズする定義された配列は、標的核酸の配列を構築するために、コンピュータアルゴリズムを使用して整列させることができる。
【0071】
それゆえ本発明の一実施形態において、標的核酸は核酸プローブのある組み合せと結合して、特徴的な「ハイブリダイゼーション」パターンをもたらし得る。所与の試料における正の結合(またはハイブリダイゼーション)イベントはそれぞれ、標的核酸に関する不連続な情報を与える。いくつかの場合で、標的核酸は、任意の特定の核酸プローブが標的核酸と結合する場所を正確に決定せずにサンプリングされ得る。標的核酸再構築のためのアルゴリズムおよびソフトウェアが、ハイブリダイゼーションパターンに基づいて開発されており、当業者に公知である。しかし他の場合では、本明細書に記載するようなハイブリダイゼーションパターンの分析は、標的核酸配列自体を特異的に決定せずに、標的核酸配列の「指紋」識別を与え得る。ハイブリダイゼーションのパターンも手動またはコンピュータによって分析され得る。
【0072】
本発明の別の態様は一般に、液滴が区別可能な核酸プローブおよびまたは識別要素を含有する、液滴の集合を生成するシステムおよび技法に関する。いくつかの実施形態において、複数の区別可能な識別要素を使用して複数の流体液滴を識別することができ、いくつかの場合では、区別可能な識別要素を使用して、各液滴内に存在する(たとえば核酸プローブの)核酸配列を決定する。たとえば、一実施形態において、少なくとも64、少なくとも256、少なくとも1024、少なくとも4096、または少なくとも約16,384またはそれ以上の流体液滴が調製され得て、各流体液滴は核酸プローブ(核酸プローブの複数のコピーを含む)および組み合されてその核酸プローブを識別して、別の核酸プローブは識別しない1つ以上の識別要素を含有する。本発明は、1セットの実施形態において、流体液滴のこのような集合を調製するためのシステムおよび方法を提供する。
【0073】
一実施形態において、複数の区別可能な識別要素を使用して、複数の流体液滴または核酸プローブまたは他の好適な試料を識別する。たとえば蛍光粒子を使用する場合、たとえば少なくとも5個の区別可能な粒子、少なくとも約10個の区別可能な粒子、少なくとも約20個の区別可能な粒子、少なくとも約30個の区別可能な粒子、少なくとも約40個の区別可能な粒子、少なくとも約50個の区別可能な粒子、少なくとも約75個の区別可能な粒子、または少なくとも100個以上の区別可能な粒子を有する区別可能な粒子のセットが最初に決定される。このようなセットの非限定的な例はLuminexから入手できる。区別可能な識別要素は、複数の群(たとえば、2、3、4、5、6、7、またはそれ以上)に分割され得て、ここで各群は区別可能な識別要素のセットのうち少なくとも2つの構成要素を含有し得る。
【0074】
試料は次に区別可能な識別要素の群のそれぞれから選択した1つの構成要素と結合され得る。たとえば、第1の試料は、第1の群から選択された第1の要素、第2の群から選択された第1の要素、および第3の群から選択された第1の要素の組み合せによって、これらの要素が相互から区別可能であるために識別され得る;第2の試料は、第1の群から選択された第1の要素、第2の群から選択された第1の要素と、ただし第3の群から選択された第2の要素との組み合せによって識別され得る。独自の組み合せの数は、この例では、各群の構成要素の数の単なる積である;それゆえ多数の識別要素の区別可能なセットが調製できる。それゆえ、たとえば少なくとも6つの識別要素を定義することによって、識別要素が少なくとも3つの群に配置され、各群が少なくとも2つの識別要素を有する場合、少なくとも8つの試料のそれぞれを、少なくとも3つの各群から1つの識別要素が存在するように選択された少なくとも3つの識別要素と結合させることによって、少なくとも8つの異なる試料を決定することができる。各群の構成要素の数および/または存在する群の数を増加させることによって、なお多くの数が得られる。さらに、各群の構成要素の数はいくつかの場合で同じでもまたは異なっていてもよい。
【0075】
他の実施形態において、他のコード化方法も可能であることに注意すべきである。たとえば、核酸プローブおよび他の試料が任意に番号付けされ、存在する区別可能な識別要素に対応する2進数字を加算することによって識別されるように、区別可能な要素を使用して2進数字を表し得る。
【0076】
したがっていくつかの実施形態において、流体液滴は、流体液滴にこのような方式で配置された1つ以上の識別要素を導入することによって識別され得る。比較的多数の流体液滴が識別され得る。たとえば異なる核酸プローブを含有する数10、数100、または数1000の流体液滴の集合は、各液滴にこのような方法で決定された3つまたは4つの識別要素を添加することによって識別され得る。
【0077】
非限定的な例として、1セットの実施形態において、40の区別可能な識別要素を使用して、最大約10,000の区別可能な核酸プローブを以下のようにコードし得る。40の区別可能な識別要素は、それぞれ10要素の4つの群に分割される。各群の各要素は番号1〜0であり、4つの群はA、B、C、およびDと呼ばれる。各群からの1つの要素を(たとえば核酸プローブを含有する)流体液滴に添加して、識別要素をABCD順に読み取る。それゆえたとえば、群Aからの要素2、群Bからの要素1、群Cからの要素7、および群Dからの要素6は、流体液滴内に含有されていることが見いだされ、ここで液滴はA2−B1−C7−D6、すなわち液滴番号2176であろう。液滴の同一性、および/または液滴に含有されている種は、この液滴番号に基づいて、たとえば任意のルックアップテーブルによって、または何らかのコード方法によって決定できる。たとえば別の非限定的な例として、各要素が異なる塩基(たとえばA、C、T、またはG)を表すのに対して、各群が位置を表すように、4要素をそれぞれ含有する6つの群に識別要素を分割することによって、24の区別可能な識別要素のセットを使用して(たとえば核酸プローブ内に含有された)6merをコードすることができる。6merを含有する流体液滴内に6つの群それぞれからの1つの要素を含めることによって、6merは液滴内に存在する識別要素のセットによって識別され得る。それゆえ一例として、群1からの要素A、群2からの要素C、群3からの要素T、群4からの要素T、群5からの要素C、および群6からの要素Gが存在する場合、液滴内に含有された6merは1A2C3T4T5C6Gであり、配列はACTTCG(配列番号1)を表す。
【0078】
液滴の集合の生成の非限定的な例を図5に示す。複数の8個の流体液滴50が提供され、液滴はそれぞれ核酸プローブ(番号51〜58)を含有する。(1および2は群1、3および4は群2、ならびに5および6は群3として)3つの群に分類されている、6つの区別可能な識別要素60も提供される。区別可能な識別要素および核酸プローブは、液滴61中で組み合され、8個の核酸プローブのうち2個が同一の3つの区別可能な識別要素のセットと関連しないように、8個の液滴のそれぞれに、各群から1つずつ選択された3つの区別可能な識別要素が存在している。したがって、この詳細な例では、核酸プローブをそれぞれ含有する8個の各流体液滴は、3つの区別可能な識別要素によって識別される。
【0079】
詳細な実施形態での識別要素および/または信号発信実体の決定方法は、流体液滴内に存在する構成成分に依存するであろう。上述のように、決定は、放射能、蛍光、リン光、光散乱、光吸収、蛍光偏光などの技法を使用して行われ得る。このような原理を使用して動作する多くの検出装置が市販されている。検出装置を使用して液滴内に存在し得る信号発信実体および/または識別要素の少なくとも1つが決定され、いくつかの場合では、2個以上の検出装置が使用され得る。
【0080】
いくつかの実施形態において、液滴内に含有された信号発信実体および/または識別要素が検出装置の単一のファイルを通過するように、液滴が変形される。液滴は、液滴がたとえば図6Cに示すように遊離溶解状態にあるときに、狭窄部の断面積が液滴の断面積よりも小さくなるように、狭窄部を有するチャネルを介してそれを通過することによって変形され得る。いくつかの場合において、信号発信実体および/または識別要素の実質的にすべてが液滴内に配置されて、2つの液滴が液滴の移動方向に垂直である仮想面を同時に通過しないように、液滴が変形される。
【0081】
いくつかの実施形態において、検出は並行化され得る、すなわちいくつかの信号発信実体および/または識別要素は、1つのチャネル内でおよび/または複数のチャネル内で同時に決定され得る。たとえば、計時装置を使用して並列パスの検出を同期し得る。並列化検出の別の非限定的な例は、2つ以上のチャネルを、たとえば同時に撮像できるように位置決めされたカメラまたは他の撮像装置を使用することである。カメラはたとえば、ラインスキャナカメラ、2D CCDカメラなどであり得る。一実施形態において、少なくとも1個の水銀灯が選択した数のチャネルを照明して、(個別のフィルタを有し得る)複数のカメラを使用して特定の色スペクトルを取り込み得る。画像は、連続的に、または同時に取り込まれ得るので、各液滴の位置はすべてのカメラ画像で同じである。
【0082】
いくつかの場合で、単一の液滴の信号発信実体および/または識別要素はある時点で決定され得る。たとえば、図18Aに示すように、複数の液滴272がマイクロ流体チャネル270を貫流する。検出装置274はチャネル270に対して、単一の液滴278(または液滴278の一部)がある時点で決定されるように位置決めされ得る。>検出装置274は、信号発信実体および/または識別要素を断面276にて決定し得る。他の場合では、複数の液滴からの信号発信実体および/または識別要素はある時に決定され得る。たとえば、図18Bに示すように、複数の液滴282が複数のマイクロ流体チャネル280を貫流する(この非限定的な例では、4個のチャネルが示されている)。検出装置286はチャネル280に対して、検出装置をマイクロ流体チャネル282の断面287で通過する複数の液滴284からの信号発信実体および/または識別要素が決定されるように位置決めされる。別の非限定的な例として、図18Cに示すように、複数の流体液滴295は、入口291を通じて封じ込め区域290に流入し得る。検出装置294は封じ込め区域290に対して、複数の流体液滴295からの信号発信実体および/または識別要素が断面296にて決定され得るように位置決めされる。いくつかの場合で、封じ込め区域290は、ゲート293(たとえば弁)を含み得る出口292を有して複数の流体液滴の流れを制御し得る。いくつかの例では、ゲート293によって、流体の流れは可能になるが、流体液滴の流れは可能になり得ない。いくつかの場合で、1秒間に少なくとも約100個の、少なくとも約1000個の、少なくとも約10000個の、少なくとも約100000個の、少なくとも約500000個の、少なくとも約100万個の、少なくとも約500万個の、少なくとも1000万個の液滴が決定され得る。
【0083】
1回に複数の液滴が測定され得る例では、複数の液滴の測定を補助する方法および/またはシステムが使用され得る。いくつかの場合で、液滴のアレイを同時に撮影するために、検出装置は、液滴1個当りシグナルが1つのみ決定されるように、隣接する液滴の境界を決定する必要があり得る。1セットの実施形態により、光源を利用して液滴グレアを生成する以下の方法および/またはシステムは、封じ込め区域に収集される複数の液滴を測定するときに好都合であり得るのは、液滴を測定するために液滴の境界(たとえば縁)を決定することが困難であり得るためである。
【0084】
いくつかの場合で、液滴は基準スポットに対する位置のシグナルを測定することによって測定され得る。すなわち各液滴は基準スポットに関連付けられて、液滴のシグナルの測定は基準スポットとの関係によって測定され得る。基準スポットの生成は、たとえば液滴グレアが各液滴に生成されるように、液滴表面に光を当てることによって実施され得る。このことにより、本明細書でさらに記載するように、検出装置は各液滴の相対位置を決定して、それにより各液滴のシグナルを測定することができる。
【0085】
いくつかの場合で、複数の液滴を測定するときに、蛍光を調べるために使用した光源に加えて、第2の光源(たとえばランプ、LEDアレイ)が利用され得る。第2の光源は、測定される(たとえば顕微鏡下で描出される)液滴に対してある角度(たとえば直交しない角度)で照射され得る。球状液滴内での光および屈折の向きのために(本明細書で議論するように)、散乱光はカメラのレンズによって取り込まれて、各液滴の画像上に比較的集中した明るいグレア(たとえば液滴グレア)が生成され、これは容易に観察可能であり、バックグラウンドシグナルから区別可能である。それゆえ実質的に集束されたグレアは、液滴内の光の散乱のために液滴によって生成され得る。たとえば図44は、2つの別個の蛍光強度集団でのマイクロ流体液滴の蛍光強度のCCDカメラからの静止画像取り込みを示す。液滴の密充填によって、液滴の境界の決定に問題が発生し得る。図45は、液滴に対して斜角で照射する第2の光源を利用する、図44での上と同様の環境のCCDカメラからの静止画像取り込みを示す。液滴グレアは、各液滴について描出され、各液滴にて見ることができる。
【0086】
いくつかの場合で、液滴内の光散乱のために液滴グレアが実質的にすべての複数の液滴で生成されるように、光源は複数のマイクロ流体液滴の表面に向けられ得る。液滴に形成された液滴グレアが利用されて液滴の位置が決定され得る。いくつかの例において、液滴グレアが定量され得る。いくつかの場合で、ソフトウェアを使用して液滴に関連する液滴グレアが測定および/または定量され得る。たとえば液滴グレアは、液滴の中心からほぼ同じ角度および距離に位置決めされて、したがって各液滴の基準点として作用し得る。いくつかの場合で、液滴グレアは各液滴の中心から外れることがあり、したがって液滴を使用して蛍光データの収集に使用されるのと同じフレームにて、各液滴の基準点を識別することができる。それゆえ、いくつかの例において、(たとえば光源を点灯および消灯することによって)液滴グレアを作用および停止させたり、ならびに/または液滴識別およびデータ取り込みプロセスを分離したりする必要はない。
【0087】
図34は、マイクロ流体液滴を通じた照明の屈折および液滴の画像に出現するであろう発生したグレアについて詳説する、この例で説明した方法の概略図を示す。この非限定的な例において、光は55°の角度で照射される(しかし他の場合では、直交角度以外のほぼいずれも使用できる)。液滴に対する対物レンズのサイズおよび距離は、縮尺通りに描かれていない。この図では、照明500(たとえば斜角照明)は、顕微鏡ステージ上で撮像されている505マイクロ流体液滴502に対して55°の角度で示されている。屈折光線504は、液滴を介した屈折経路を追跡して、対物レンズ506によって収集される散乱光504のごく小さい領域と、焦点面の屈折光507があることがわかる。これより、顕微鏡を通じて観察したときに、粒子の画像上に液滴グレアが生じる。焦点面にない散乱光508の領域が多数ある。
【0088】
いくつかの実施形態において、斜角照明が十分に離れた(たとえば液滴から約1フィート)光源から発生する場合、ここで顕微鏡ステージの表面に密充填された液滴のアレイには、各液滴を同じ入射角でステージに接近させる平行照明が見えるはずである。これにより各液滴に同じ屈折パターンが生じるであろう;それゆえ液滴グレアは各液滴の画像で同じ位置に発生して、それにより各液滴の中心からほぼ同じ角度および距離にある、各液滴の基準点が生成される。
【0089】
液滴グレアは斜角照明を各種の角度で使用することによって生成され得るが、最良の結果を与えるであろう角度に対する範囲に制限があり得る。たとえば、照明が急角度で行われる場合、ここで生じた液滴グレアは液滴画像の中心に接近して発生し得て、このことにより蛍光強度などの液滴からの他の光学情報の収集が妨害され得る。他方、いくつかの実施形態において、照明があまりに浅い角度で照射される場合、いくつかの場合で、屈折光線のいずれも対物レンズによって収集されず、したがって液滴画像には液滴グレアが見られないであろう。所与の実験装置に好適である角度は実験的に決定され得る。
【0090】
液滴グレアの存在および/または位置は画像を観察することによって決定され得て、光源の角度はそれに従って調整されて液滴グレアを所望の存在および/または位置で産生し得る。いくつかの実施形態において、第2の光源の角度は、約30°未満、約30〜約80°、約80°超、約40°〜約70°、約20°、約30°、約40°、約50°、約60°、約70°、約80°などである。
【0091】
いくつかの場合で、第2の光源を利用する実験装置は、図35に表す通りであり得る。たとえば発光フィルタ520、二色性ミラー522、アーク灯524、励起フィルタ526、および対物レンズ528を備えた蛍光顕微鏡が提供され得る。測定される複数の液滴は顕微鏡ステージ530に位置決めされ得る。斜角照明532(たとえば第2の光源)は、ある角度(たとえば約55°)で提供され得る。顕微鏡534の光励起は、検出装置または撮像装置(たとえばCCDカメラなど)によって記録され得る。上の実験装置は、決して制限的ではなく、当業者は、追加の構成要素および/または日常的な技能のみで使用可能である他の機構を決定できるであろう。
【0092】
複数の液滴の画像は、検出装置またはCCDカメラなどの撮像装置によって取り込まれ得る。いくつかの実施形態において、規定の蛍光画像が得られるように、CCDカメラは狭いスペクトルの光(たとえば赤色光、緑色光など)のみにカメラまで通過させるフィルタを含み得る。2個以上のカメラが利用される例では、画像の取り込みは同期されても、されなくてもよい。詳細な実施形態において、画像の取り込みが同期されて、第1および第2の波長での蛍光情報の同時取り込みが可能となる。いくつかの実施形態において、第2の光源は、液滴グレアが少なくとも2つの画像の一方のみで観察される(たとえば緑色LED光源からの光は、緑色波長取り込みを有するカメラによって取り込まれた画像でのみ観察され得る)ように選択され得る。
【0093】
いくつかの実施形態において、形成された液滴グレアがバックグラウンドよりも明らかに強力である場合、液滴の位置のソフトウェア識別は簡単な方法を使用して完了され得る。液滴グレアは一般に各液滴の中心からの方向および距離の両方に関して常に出現するため、液滴グレアを基準点として使用できる。斜角照明の装置に応じて、液滴グレアを液滴の中心から外して配置して、液滴識別およびデータ取り込みの両方に同じ画像フレームを与えることができる。したがって、斜角照明は点灯および消灯していてもいなくてもよく、ならびに/または画像をわずかに異なる時点で撮像してもしなくてもよい。
【0094】
収集した画像は以下のように処理され得る。いくつかの場合で、(たとえば液滴グレアを含む)少なくとも1つの画像は、各液滴の液滴グレアを測定する簡単な強度閾値プログラムを使用することによって処理され得る。ソフトウェアが計算して、または人間の入力を使用して、液滴グレアと液滴の中心との間の角度および/または距離を決定することができる。いくつかの実施形態において、液滴グレアと液滴の中心との間の角度および/または距離は1回記録され得る(たとえば実験装置が変更されない場合)。ソフトウェアを使用して、(たとえば対応する液滴グレアに対する各液滴の位置を決定するために)各液滴グレアに対するサンプリングマスクが生成され得る。サンプリングマスクは、対応する時点で取り込んだ各画像(たとえば第1および第2のカメラによって取り込まれた第1および第2の画像)に重ねることができる。これにより、シグナル(たとえば蛍光強度読み取り値)が取り込まれる場合に液滴内に境界を定義する各液滴のためのマーキングシステムの生成が可能となる。この方法の詳細な例を実施例12に記載する。
【0095】
いくつかの場合で、複数のマイクロ流体液滴を表面(たとえばマイクロ流体チャネルまたは封じ込め区域)に撮像するために使用され得る撮像システムが提供され得る。該撮像システムは、表面上に配置された複数のマイクロ流体液滴に向かって直交するように光を集束させることができる第1の光源と、表面上に配置された複数のマイクロ流体液滴に向かって実質的に非直交角度で光を集束させることができる第2の光源を含み得る。たとえば第1の光源は顕微鏡からの光源であり、第2の光源はランプ、LEDなどであり得る。撮像システムは、表面に配置された複数のマイクロ流体液滴から生じる散乱(たとえば液滴グレア)および非散乱光(たとえば蛍光)を撮像できる撮像装置も含み得る。非散乱光は、第1の光源から発生し得て、散乱光は第2の光源から発生し得る。いくつかの場合で、撮像装置は、表面に配置された複数のマイクロ流体液滴から生じる散乱および非散乱光を同時に撮像することが可能であり得る。たとえば撮像装置は、カメラ、たとえばCCDカメラであり得る。いくつかの場合で、撮像システムは2個以上の撮像装置、少なくとも2個の撮像装置、少なくとも3個の撮像装置、少なくとも4個の撮像装置などを含み得る。当業者は、記載した撮像システムに付随し得るさらなる機構および構成要素(たとえば第3の光源、フィルタ)を決定することができるであろう。撮像システムは、少なくとも1000個の、少なくとも5000個の、少なくとも10000個の、少なくとも20000個の、少なくとも30000個の、少なくとも40000個の、少なくとも50000個の、少なくとも100000個などの液滴を同時に撮像することが可能であり得る。
【0096】
すべてではなく、いくつかの実施形態において、本明細書に記載したシステムおよび方法のすべての構成要素はマイクロ流体性である。「マイクロ流体性」は本明細書で使用するように、1mm未満の断面寸法、および少なくとも約3:1の長さの、チャネルに垂直な最大断面寸法に対する比を有する少なくとも1つの流体チャネルを含む装置、器具またはシステムを指す。「マイクロ流体チャネル」は本明細書で使用するように、この基準を満たすチャネルである。
【0097】
2個以上の液滴が当業者に公知であるように、たとえば組成物、表面張力、液滴サイズなどのために普通は融合または合体できない場合に、2個以上の液滴を融合または合体させて1個の液滴にすることができるマイクロ流体システムが提供され得る。2個以上の液滴が融合される実施形態の例は、本明細書で上述されている。流体液滴は、たとえばそれぞれ参照により本明細書に組み入れられている、Linkらによる“Formation and Control of Fluidic Species”という名称の、2006年7月27日U.S.Patent Application Publication No.2006/0163385として公開され、2005年10月7日に出願されたU.S.Patent Application Serial No.11/246,911;またはLinkらによる“Electronic Control of Fluidic Species”という名称の、2007年1月4日にU.S. Patent Application Publication No.2007/0003442として公開され、2006年2月23日に出願されたU.S.Patent Application Serial No.11/360,845で議論されているような任意の好適な技法を使用して共に融合され得る。一例として、マイクロ流体システムにおいて、液滴のサイズに対する液滴の表面張力によって、液滴の融合または合体の発生が防止され得る。一実施形態において、2個の液滴は、液滴の融合または合体を発生させるように2個の液滴の電気的相互作用を上昇させ得る、反対の電荷(すなわち必ずしも同じ大きさではない、正および負の電荷)を与えられ得る。電荷(正または負)は、テイラーコーンの使用によって、またはその他の好適な技法によって液滴に印加され得る。たとえば電場は液滴を含有する反応装置に印加され、液滴はコンデンサを貫流して、化学反応が起こって液滴を帯電させて、該液滴を反対の湿潤特性などを持つ領域上を流動させ得る。
【0098】
チャネルの「断面寸法」は、流体流の向きに対して垂直に測定される。本発明の構成要素の大半の流体チャネルは、約2mm未満の、いくつかの場合では約1mm未満の最大断面寸法を有する。1セットの実施形態において、本発明の実施形態を含有するすべての流体チャネルはマイクロ流体性であるか、または約2mmまたは約1mmを超えない最大断面寸法を有し得る。別の実施形態では、流体チャネルは一部は単一の構成要素(たとえばエッチングされた基材または成形ユニット)によって形成され得る。もちろん、より大きいチャネル、チューブ、チャンバ、リザーバなどを使用して、流体を大量に収容して、流体を本発明の構成要素に送達することができる。1セットの実施形態において、本発明の実施形態を含有するチャネルの最大断面寸法は、約500ミクロン未満、約200ミクロン未満、約100ミクロン未満、約50ミクロン未満、または約25ミクロン未満である。
【0099】
「チャネル」は本明細書で使用するように、流体流を少なくとも部分的に方向付ける物品(基材)の上または中の機構を意味する。チャネルは任意の断面形状(円形、楕円形、三角形、不規則、正方形または長方形など)を有することができ、被覆することもしないこともできる。チャネルが完全に被覆される実施形態において、チャネルの少なくとも一部は、完全に包囲された断面を有することができるか、またはチャネル全体はその入口および出口を除いて、その全長に沿って完全に包囲され得る。チャネルは、少なくとも約2:1、より通例には少なくとも約3:1、少なくとも約5:1、または少なくとも約10:1またはそれ以上の縦横比(平均断面寸法に対する長さ)も有し得る。開チャネルは一般に、流体輸送に対する制御を促進する特徴、たとえば構造的特徴(細長いくぼみ)および/または物理的もしくは化学的特徴(疎水性対親水性)または流体に力(たとえば含有力)を及ぼすことができる他の特徴を含むであろう。チャネル内の流体は、チャネルを部分的または完全に充填し得る。開チャネルが使用されるいくつかの場合で、流体は、たとえば表面張力(たとえば凹または凸メニスカス)を使用してチャネル内に保持され得る。
【0100】
チャネルは、たとえば少なくとも約5mmもしくは約2mm未満の、または約1mm未満の、または約500ミクロンの、約200ミクロン未満の、約100ミクロン未満の、約60ミクロン未満の、約50ミクロン未満の、約40ミクロン未満の、約30ミクロン未満の、約25ミクロン未満の、約10ミクロン未満の、約3ミクロン未満の、約1ミクロン未満の、約300nm未満の、約100nm未満の、約30nm未満の、または約10nm未満の流体流に対して垂直な最大寸法を有する任意のサイズであり得る。いくつかの場合で、チャネルの寸法は、流体が物品または基板を自由に貫流できるように選択され得る。チャネルの寸法も、たとえばチャネルである体積流量または線流量を与えるように選択され得る。もちろんチャネルの数およびチャネルの形状は、当業者に公知の任意の方法によって変更され得る。いくつかの場合で、2個以上のチャネルまたは毛管が使用され得る。たとえば、2つ以上のチャネルが使用され得るのは、それが相互の内側に位置決めされる、相互に隣接して位置決めされる、相互に交差して位置決めされるなどの場合である。
【0101】
本発明で使用され得るマイクロ流体システムの非限定的な例は、たとえばその全体がそれぞれ参照により本明細書に組み入れられている、“Formation and Control of Fluidic Species”という名称の、2006年7月27日にU.S. Patent Application Publication No.2006/0163385として公開され、2005年10月7日に出願されたU.S.Patent Application Serial No.11/246,911;“Method and Apparatus for Fluid Dispersion”という名称の、2005年8月11日U.S.Patent Application Publication No.2005/0172476として公開され、2004年12月28日に出願されたU.S.Patent Application Serial No.11/024,228;“Electronic Control of Fluidic Species”という名称の、2007年1月4日にU.S.Patent Application Publication No.2007/000342として公開され、2006年2月23日に出願されたU.S.Patent Application Serial No.11/360,845;“Method and Apparatus for Forming Multiple Emulsions”という名称の、2006年9月14日にWO 2006/096571として公開され、2006年3月3日に出願されたInternational Patent Application No.PCT/US2006/007772;“Systems and Methods of Forming Particles”という名称の、2007年3月8日にU.S.Patent Application Publication No.2007/0054119として公開され、2006年3月3日に出願されたU.S.Patent Application Serial No.11/368,263;“Multiple Emulsions and Techniques for Formation”という名称の、2007年3月28日に出願されたU.S.Provisional Patent Application Serial No.60/920,574;ならびに“Systems and Methods for Forming Fluidic Droplets Encapsulated in Particles Such as Colloidal Particles”という名称の、2006年の7月27日にWO 2006/078841として公開され、2006年1月20日に出願されたInternational Patent Application No.PCT/US2006/001938に開示されている。
【0102】
いくつかの実施形態において、本発明のシステムは、非マイクロ流体装置であり得る。たとえば2個以上の液滴は、クエット剪断破断試験セル、振とうエマルジョン、および/または膜乳化を使用して融合、操作および/または合体され得る。いくつかの実施形態において、2個以上の液滴は、基板に含有された1個以上の場発生構成要素からの電場および/または磁場を使用して1個の液滴に融合、操作および/または合体され得る。試料との相互作用および/または試料の操作ができるように配置された複数の電場および/または磁場発生構成要素を含むシステムの非限定的な例は、それぞれ参照により本明細書に組み入れられている、Hamらによる“Methods and Apparatus for Manipulation and/or Detection of Biological Samples and Other Objects”という名称の、2006年1月26日にU.S.Patent Application Publication No.2006/0020371として公開され、2005年4月13日に出願されたU.S.Patent Application Serial No.11/105,322、および“Methods and Apparatus for Manipulation of Droplets”という名称の、2008年6月26日に出願されたInternational Patent Application No.PCT/US2008/007941に開示されている。
【0103】
いくつかの場合で、磁場発生構成要素はアレイとして配列され得る。1個以上の電場および/または磁場発生構成要素を使用して構成要素を特定の順序で作動させて電場および/または磁場を発生させることによって、流体液滴または他の試料を基板に対して移動させることができる。たとえば2個の液滴は、その反対の電荷のために液滴の融合または合体を発生させるように2個の液滴の電気的相互作用を上昇させ得る、反対の電荷(すなわち必ずしも同じ大きさではない、正および負の電荷)を与えられることができる。たとえば電場は、1個以上の電場発生構成要素を使用して液滴に印加され得る。
【0104】
一実施形態において、上の組成物の1つ以上を含有するキットが提供され得る。「キット」は本明細書で使用するように、本発明の組成物の、および/またはたとえば先に記載したような本発明に関連する他の組成物の1つ以上を含むパッケージまたはアセンブリを通例定義する。キットの各組成物は液体形(たとえば溶液で)、固体形(たとえば乾燥粉末)などで提供され得る。本発明のキットは、いくつかの場合で、説明書が本発明の組成物と関連していることを当業者が認識するような方式で、本発明の組成物と関連して提供される任意の形式の説明書を含み得る。たとえば説明書は、組成物および/またはキットに関連する他の組成物の使用、修飾、混合、希釈、保存、投与、構築、貯蔵、包装、および/または調製のための説明書を含み得る。説明書は、任意の方式で提供されるこのような説明を含有する好適な媒体、たとえば記載または印刷、言葉、音声(たとえば電話)、デジタル、光学、視覚(たとえばビデオテープ、DVDなど)または電子コミュニケーション(たとえばインターネットまたはウェブベースのコミュニケーション)として、当業者によって認識可能な任意の形式で提供され得る。
【0105】
それぞれ参照により本明細書に組み入れられている、以下の参考文献:Weitzらによる“Systems and Methods for Nucleic Acid Sequencing”という名称の、2007年12月21日に出願されたU.S. Provisional Patent Application Serial No.61/008,862およびWeitzらによる“Systems and Methods for Nucleic Acid Sequencing”という名称の、2008年9月19日に出願されたU.S.Provisional Patent Application Serial No.61/098,710は、参照により本明細書に組み入れられている。またWeitzらによる“Creation of Libraries of Droplets and Related Species”という名称の、同日付に出願されたU.S.provisional patentが参照により本明細書に組み入れられている。
【0106】
以下の実施例は、本発明の各種の実施形態を示すために含まれている。当業者は、本開示に照らして開示され、なお同様または類似の結果を得る具体的な実施形態において、本発明の精神および範囲から逸脱せずに多くの変更を行えることを認識するであろう。したがって、以下の実施例は本発明のある実施形態を例証するためであって、本発明の全範囲を例示するものではない。
【実施例】
【0107】
(実施例1)
DNA配列決定方法の非限定的な例を、以下の予言的な実施例に記載する。図は、例証目的のためだけに5merを使用して表示する。他の長さも使用され得る。さらに、ロックド核酸残基、および/またはユニバーサル残基などの修飾残基もいくつかの場合で使用され得る。
図6を参照して方法例を議論する。特にこの方法は、ビーズに基づく標識方法、修飾ヌクレオチド、および蛍光を使用する例である。図6Aは、識別要素として使用される複数の色分けビーズ、たとえばLuminex Corporationが製造したようなビーズを示す。この実施例のビーズは、たとえば2つの別の染料の蛍光強度に基づいて100の区別可能な種類に分類できる直径5μmのビーズである(150)。これらのビーズに任意に1〜100の番号を付ける。
【0108】
ビーズは次のように識別のために使用され得る。これらの区別可能なビーズ40個を、図6Bに示すように、10個の構成要素をそれぞれ含有する4つのビーズ群に分割することができる(この実施例ではビーズ41〜100は使用しない)。この詳細な実施例では、すべての液滴は、(存在する各種類のビーズには、2個以上の同一のコピーがあり得るが)4つのビーズセットそれぞれから得た区別可能なビーズ1個を有する(図6B)。この実施例では簡単にするために、各ビーズは、(他の実施例では他の方法が使用され得るが)基数(10)系で桁数値を表す。たとえばビーズ1、11、21、および31が選択されて値1を表し得て、ビーズ10、20、30および40は値0を表す。詳細な例として、2176番目の溶液または標識は、ビーズ6(151)、17(152)、21(153)、および32(154)(図6C)を含有する。
【0109】
示した例において、この液滴は、いくつかの場合で1個以上のロックヌクレオチドおよび/またはユニバーサル残基を包含するように修飾され得る、標識核酸プローブ5’−*GATCT−3’(155)(配列番号2)(ここで*は、蛍光実体などの信号発信実体である)も含有する。核酸プローブおよびビーズを含有する溶液はそれぞれ個別に乳化およびプールされて、核酸プローブおよび少なくとも4つの区別可能なビーズを含有する分析用液滴の集合158を生成することができる(図6D)。標的核酸156がマイクロ流体装置(図示せず)に供給され、それぞれ核酸を含有する複数の液滴157がたとえば液滴−液滴融合技法によって形成される。液滴157は次に液滴158と融合されて、標的核酸、核酸プローブおよび対応する識別要素をそれぞれ含有する複数の融合液滴159を形成する。
【0110】
標的核酸および核酸プローブの結合はこの例では次のように測定されるが、他の場合では他の技法も使用され得る。複数の融合液滴159は矢印160で示すようにチャネル167内へ通過して、液滴は液滴内の各ビーズが検出装置161の単一のファイルを通過するように変形を受ける。示した実施例において、核酸プローブが液滴内の核酸に結合する場合、ここでは検出装置を使用して測定可能である核酸プローブの蛍光スペクトルの変化があるであろう。液体内のビーズおよび信号発信実体は、検出装置161の単一のファイルをそれらが通過するときに測定され、生じた蛍光量が記録される。この実施例では、標的核酸および核酸プローブの結合を示す(たとえば核酸プローブからの消光剤の放出によって引き起こされる)信号発信実体の蛍光の変化がある場合、ここで液滴の同一性は液滴内に含有される4個の区別可能なビーズを決定することによって決定される。たとえば、検出装置によって測定されたビーズがビーズ6、17、21、および32(プローブ標識核酸プローブ5’−*GATCT−3’(配列番号2)に相当)として識別される場合、ここで標的核酸に5’−GATCT−3’(配列番号2)の補体が発生することが決定できる。
【0111】
(実施例2)
この実施例は、ビーズベースの標識方法、Taqmanプローブ、および蛍光を利用する。実施例1と同様に、液滴は、4セットの識別要素ビーズタイプそれぞれから得た1個の構成要素を有する。図7Aは、図6に示したように、1個の液滴171中の考えられる構成要素の例を示す。この実施例の液滴ではTaqman分析が使用されるであろう。
【0112】
核酸プローブ169は、オリゴヌクレオチド174、信号発信実体172、および消光剤173を含み、消光剤は、光子の放出なしで別の染料により引き起こされた1つの染料の阻害である、蛍光(またはFoerster)共鳴エネルギー移動(FRET)の使用により信号発信実体172からの蛍光を低減(または増強)する。この詳細な実施例で、信号発信実体はオリゴヌクレオチドの5’末端に、消光剤は3’末端に見出される。
【0113】
Taqmanプローブは、図7Bの175によって示すように標的核酸にアニーリングする。次にTaqポリメラーゼは、176によって示すようにTaqmanプローブに達するまでヌクレオチドを付加する。非相補的Taqmanプローブは置換される。相補的Taqmanプローブは、Taqポリメラーゼ5’→3’エキソ活性によって標的核酸から分解される。それゆえ177に示すように、核酸プローブが標的核酸と結合する場合、消光剤173は信号発信実体172から分離して、178に示すように信号発信実体172を測定できるようにする。
【0114】
実施例1と同様に、標的核酸と核酸プローブの結合はここで任意の好適な技法を使用して測定できる。この実施例では、複数の核酸プローブ(この場合、信号発信実体および消光剤に結合されている)および1つ以上の識別要素が組み合されて分析的液滴の集合179が形成されて、図7Cに示すように標的核酸と、この実施例ではTaqポリメラーゼを含有する複数の液滴180と融合される。液滴179は次に液滴180と融合されて、複数の融合液滴181を形成する。液滴181は矢印182によって示すように、チャネル167を通過して、検出装置161によって測定される。核酸プローブが標的核酸に結合する場合、ここで信号発信実体が放出され得る。したがって信号発信実体の蛍光の差を使用して、核酸プローブと標的核酸との結合を測定できる。
【0115】
(実施例3)
この詳細な実施例は、DNA連結、ビーズ標識および蛍光を利用する。Luminex Corporationは、図8Aに示すように、100個の区別可能なビーズ210に分離できるビーズを提供している。各ビーズタイプは特定のバイオアッセイに特異的な試薬でコーティングすることが可能であり、試料からの特異的検体の捕捉および検出が可能となる。レーザは、各ビーズ粒子を識別する内部染料、およびアッセイ中に捕捉された任意のレポータ染料も励起する。
【0116】
図8Bおよび8Cは、以下を示す:40個のビーズを区別可能なビーズ10個をそれぞれ含む4つの群に分けて、各ビーズは、第1のセットの10個のビーズが「A」型セットおよび各種のユニバーサル残基214(すなわちビーズ1〜10はそれぞれオリゴヌクレオチドプローブセット5’−ANNNN−3’がそれらに結合されている)を有し、第2のセットの10個のビーズタイプ(すなわちビーズ11〜20)は、「C」型オリゴヌクレオチド213(すなわち5’−CNNNN−3’)がそれらに結合され、第3のセットの10個のビーズタイプ(すなわちビーズ21〜30)は、「G」型オリゴヌクレオチド212(すなわち5’−GNNNN−3’)がそれらに結合され、第4のセットの10個のビーズタイプ(すなわちビーズ31〜40)は、「T」型オリゴヌクレオチド211(すなわち5’−TNNNN−3’)がそれらに結合されるように、結合されたプライマを有するであろう。
【0117】
各ビーズタイプは、先に議論した系に類似した基数(10)系の数値も表す。たとえばビーズ1、11、21、および31は値1を表す(簡単にするために、ビーズ10、20、30および40は値0を表す)。第1の10個のビーズタイプ(A型セット)は、1の位の値(0〜9の数値)を表す。第2の桁は「C桁」であり、10の位の値を表す。第3の桁は「G桁」であり、最後の桁は「T桁」である。4桁数は、この詳細な例では、40個のビーズタイプによってTGCAの順でコードされる(図8D)。たとえば、2176番目の液滴タイプ219は、Luminexビーズタイプ6−A(215)、17−C(217)、21−G(216)、および32−T(218)を含有する(図8Cおよび7D)。図において、一例として、液滴219は、核酸プローブ、たとえばプローブ5’−*GATCT−3’(配列番号2)(226)も(その配列プローブの複数のコピーが液滴内に存在し得るが)含有する。
【0118】
標的核酸および核酸プローブの結合はこの例では次のように測定されるが、他の場合では他の技法も使用され得る。核酸プローブおよびビーズを含有する溶液はそれぞれ個別に乳化することが可能であり、次にエマルジョンはプールされて分析用液滴220の集合が生成される。すべての液滴は、4セットそれぞれから得た1個のビーズを有するであろう(しかしそのビーズの複数のコピーが存在し得る)。核酸プローブおよびビーズは次に、液滴中に共にカプセル化されることができる。標的核酸およびDNAリガーゼを含有する複数の液滴221も提供される。プールされたエマルジョンライブラリ液滴は、複数の221の液滴と(矢印222によって示すように)融合されて(図8E)、複数の融合液滴223を形成する。融合液滴223は、矢印224によって示すように、検出装置225を通過する。核酸プローブのテンプレートで方向付けされた結合によって、ビーズ上で核酸プローブおよびオリゴヌクレオチドの両方が相互に隣接しており、標的核酸に相補的である場合、ビーズは標的核酸と結合されるようになる。4個のビーズが1つを除くすべての位置でユニバーサル核酸残基を含有するため、図8Fに示すように、ビーズ上のオリゴヌクレオチドの核酸プローブへの結合が起こるように、4個のビーズのうち1個のみが標的核酸および核酸プローブに隣接して位置決めされる。
【0119】
ビーズ、標的核酸、および核酸プローブの結合はここで任意の好適な技法を使用して測定できる。たとえば図8Fに示すように、上述の4個のビーズ(215、216、217、および218)はもちろんのこと、核酸プローブ226および標的核酸227も含有する液滴が提供される。核酸プローブの配列が標的核酸の配列に相補的である場合、核酸プローブは標的核酸と結合するであろう。4個のビーズのうち1個は、図8Fに示すように(この図の216)、隣接して位置決めされている場合に核酸プローブの配列に連結可能であるオリゴヌクレオチドも含む;他の配列(215、217、および218)は、配列のヌクレオチドミスマッチのために隣接して位置決めできない。核酸プローブ216は、標的核酸プローブと結合したビーズのオリゴヌクレオチドに連結されるようになり、それゆえビーズ216のオリゴヌクレオチドは、核酸プローブ226に隣接する標的核酸227と結合できるようになる。ビーズは、それらが単一のファイルのチャネル狭窄部を通過する通過するときにデコードされて、ビーズに連結(すなわち結合)された標識核酸プローブの量が定量される。この実施例で示すように、「G」桁ビーズ(ビーズ21)216は核酸プローブ226と結合され、このことは標的核酸に相補的な配列が5’−GATCTGNNNN−3’(配列番号3であり、それゆえ標的核酸配列は配列5’−CATATC−3’(配列番号4)を含有することを示す。
【0120】
上で議論したように、ビーズと結合したオリゴヌクレオチドの異なる残基は、他の実施形態と同様に他の位置、たとえばオリゴヌクレオチドの5’末端からの第2の位置、たとえば5’−NXN(n−2)−3’に配置され得る。この実施例を図8Gに示す。この実施例において、識別要素229は、ビーズおよび配列5’−NGNNN−3’を有するオリゴヌクレオチドを含む。区別可能なビーズに結合するオリゴヌクレオチドを含む3つの他の識別要素(5’−NCNNN−3’、5’−NANNN−3’、5’−NTNNN−3’)も、液滴中に存在する。この実施例において、識別要素229は、核酸プローブ226の標的核酸227と結合される。識別要素および核酸プローブは、上述の実施形態と同様に連結することができる。ビーズは上で議論したようにデコードされて、標的核酸に相補的な配列が5’−GATCTNGNNN−3’(配列番号5)であり、標的核酸が配列5’−CXACATC(配列番号6)(Nはユニバーサル塩基であり、XはA、C、GまたはTのいずれか1つである)を含有することを示し得る。
【0121】
(実施例4)
いくつかの、しかしすべてではない実施形態において、本明細書に記載したシステムおよび方法のすべての構成要素がマイクロ流体性である。検出のための機器装置をここで示す。
【0122】
機器は、本実施例では、蛍光強度および蛍光偏光の両方を測定するように構成され得る光学縦列を含む。図9は、蛍光偏光(FP)検出に関する情報を表す。光学縦列は、光学機器内の一連のミラー、レンズおよびプリズムなどである。いくつかの実施形態において、光学縦列は、3個のレーザ、約5個の検出装置を含み得て、30μm液滴内の約1000個以上のフルオロフォアを測定することができる。蛍光分子が偏光によって励起される場合、分子がその発光寿命の間に著しく回転しないと仮定すると、蛍光分子は実質的に同じ偏光の光を放出するであろう。偏光解消、すなわち同じ偏光方向で放出される光の低減は、分子がその発光寿命の間に回転するときに起こる。より大型の分子311に結合した(そしてより長い転動時間を示す)染料は、溶解した遊離染料よりも低速で光を偏光解消し、したがって光は図9Aに示すように、偏光を維持するであろう313。他方、より小型の分子312に結合した染料は、溶解した遊離染料よりも高速で光を偏光解消し、したがって光314はもはや偏光されないであろう。図9Bは、異なる染料がその蛍光寿命に応じて異なる偏光を呈するであろうことを示す。FPは、染料が結合する分子の分子量によっても影響される。図9Cはこのことを表し、遊離フルオレセイン染料315、フルオレセイン標識20merオリゴヌクレオチド316、および第2のDNA分子にハイブリダイズしたフルオレセイン標識20merオリゴヌクレオチド317のFPを示す。この詳細な場合では、転動速度は残基スタッキングのために低下し得る。
【0123】
(実施例5)
この実施例は、本発明の一実施形態において、単一の液滴内中の少なくとも4個の異なる着色ビーズならびに蛍光偏光(FP)および/または蛍光強度(FI)を、液滴がチャネルを通過するときに分析およびデコードする装置を示す。レーザは、Power Technology,Inc.(Alexander,AR)を含む複数の製造者から購入され得る。光学縦列例を図10に示す。この光学縦列はモジュール式であり、フィルタおよびレーザは必要なときに交換できる。検出装置を5個備えたこの構成例は、2つの異なる発光波長にてFPを読み取ることができる。該装置は、FPを3つのチャネルで測定できるであろう。PDMSチップが上に設置されるステージは加熱される。
【0124】
この図では、使用される励起源はレーザであり、平行光線として照射される各種の色の複数のレーザを含むことができる。励起は、レーザ波長は反射するが、他のすべての波長は通過させる2色性レーザ線ミラーから反射される。レーザは、組み合されたテレスコープ型レンズを通過することによって拡大することができるか、または円柱レンズを通過することによってレーザ線に変わることができる。それらは次に、開口数の高いレンズを通じて集束されて小さいスポットとなる。高い開口数によって、試料により放出された蛍光の大きい立体角が対物レンズによって逆方向に取り込まれるようになる。蛍光は次に2色性ミラーを通過して、図に示すように、使用される特定のフルオロフォアおよびフィルタによって、各種の波長が検出装置アセンブリ中に反射される。蛍光偏光の測定には、偏光ビームスプリッタが必要である。偏光ビームスプリッタは一方の偏光(S)を反射して、他方(P)を通過させる。それぞれの強度は次に、別個のPMTを使用して測定される。次に値を組み合せて、GがG因子であり、通常は1である、式(S−G*P)/(S+G*P)に従って、蛍光極性を計算する。[mP]の単位で数値を生成するために、上の計算の数に1000を掛ける。代表的なFP値は、約20〜約1000mPの範囲に及ぶ。検出装置アセンブリは、PMT、ダイオード、またはアバランシェダイオードであり得る。シグナルは、LabVIEWで記載されたNI FPGAカード実行カスタムコードによって、コンピュータを使用しても監視される。図11のアセンブリは同様であるが、光学テーブル上に配置されている。この実施形態では、FPを最適化するために温度勾配が必要であり得る。これは装置ステージの下にペルチェ素子を配置して温度を制御することによって実施される。一実施形態において、実験は1kHzの周波数(1秒当り1,000液滴)で実行され、GHz周波数でデータを収集するであろう。別の実施形態において、検出感度は、異なるPMTの選択、より高い染料濃度を持つビーズの選択、および/または液滴中の染料標識の量の増加によって上昇され得る。いくつかの例において、装置は、ビーズの目詰まりを防止するために、幅広チャネルを備え得る、および/または流体力学的集束を使用し得る。いくつかの例では、一方の狭窄部が目詰まりした場合に、第2の狭窄部が作動可能となるように、チップ上で狭窄部を重複させることもできる。
【0125】
蛍光スタンドおよび液滴モニタを表す詳細な装置構成を図11に示す。レーザは左上に配置される。赤色レーザ400(30mW、635nm)を使用してCy5蛍光を作用させる。緑色レーザ401(125mW、532nm)を使用してHEX蛍光を作用させる。ビームは、562nm以下すべてを反射する562 2色性ミラー402(Semrock Brightline FF562−Di02−25×36)を使用して平行される。ビームは、左下のミラー403から右下の光学機器404中に反射する。光は、488/532/638レーザ線2色性ミラー405(Semrock Brightline Di01T488/532/638−25×36×5.0)を通過するが、このミラーはこれらに近い波長は通過させて、他の波長はすべて反射する。ビームは次に、IRを反射して、他の波長は通過させるIRホットミラー406(Edmund Optics NT43−955)を通過する。次にビームは対物レンズ(Mitotuyo Plan APO、5×、10×、20×、または50×)の背面に入り、試料上に集束される。いくつかの場合で、倍率が大きければ大きいほど、検出がより高感度となる。このことは、より高倍率の対物レンズがより高い開口数を有し、したがって試料から放出された光のより大きい立体角を取り込むためであると考えられている。試料407を、2インチ(50.8mm)移動するXYZ平行移動ステージ(Thorlabs)上に載せる。逆方向に移動する2つの撮像経路がある。蛍光撮像は、光源としてレーザを使用する。直接撮像は、蛍光データを取り込む間に画像が取り込まれるようにする赤外照明を使用して実施する。IR光源408は、15mmレンズ(Thorlabs,LA 1222)を通じて集束されるIR−ダイオード(Digikey)である。IRおよび蛍光ビームは次に、対物レンズを通じて逆戻りする。IRはIRミラー406からCCDカメラ(Sony XCD−V50、右上)内へ反射される。蛍光はIRミラーを介してレーザ線2色性ミラーまで通過して、そこで検出PMT(Hamamatsu H5784−20、図の中心)内へ反射される。緑色FP PMT 410および赤色PMT411の両方が存在する。IP検出装置およびカメラを使用して液滴を描出する。IP検出装置およびカメラを使用して、各種のテンプレート液滴の開始と収量を監視することもできる。HEXシグナルをFP検出装置内に反射する593nmハイパス2色性ミラー412(Semrock Brightline FF593−Di02−25x36)がある。これはCy5シグナル(約680nm)をCy5チャネルPMT内に通過させる。FP検出装置(画像の中心のT形の物体)は、50−50ビームスプリッタ(Thorlabs CM1−BS1)内に、互いに垂直に取り付けられたPMTを2個含む。ビームスプリッタの前には560/25バンドパスフィルタ(Semrock Brightline FF01−560/25−25)が取り付けられている。各PMTの前には偏光子(Meadowlark Optics DPM−100−VIS1)およびf=25mmレンズ(Thorlabs LA1951)が取り付けられている。PMTは回転ケージマウント(Thorlabs CRM1)に取り付けられているので、それらは相互に対して90度で回転することができる。
【0126】
この詳細な実施例において、該装置は、信号発信実体を励起させるために532nm緑色レーザを、ビーズを色分けするために使用した染料からの赤色および近赤外蛍光を励起させるためには635nmダイオードレーザを使用する。別の実施例において、識別要素としてのLuminexビーズおよびヘキサクロロフルオレセイン(HEX)で標識した核酸プローブを利用するとき、装置は、HEXチャネル(約560nm)でFPを読み取って核酸プローブが標的核酸に結合しているか否かを決定するように構成され得て、FIもHEXおよびCy5両方のチャネル(約690nm)によって読み取られ得る。
【0127】
PMTデータはデジタル処理され得て、デジタルシグナルはNational Instrumentフィールドプログラマブル・ゲート・アレイ(NI−FPGA)カードによって解析される。このゲートアレイは、数百キロヘルツ同時におよび/または複数のチャネルのデータを取り込みおよび解析するようにプログラムされ得る。FPGAカードは、液滴が流れてレーザを通過するためにピークとして出現するときに、液滴を測定するようにプログラムされ得る。液滴が検出装置の前にある期間にわたって液滴が測定されるときに、いくつかの場合では各色チャネルの最大強度、および/またはその時間積分を監視することができる。次にこのような測定値を組み合せて、標的核酸と関連する識別要素および核酸プローブの蛍光偏光(たとえば信号発信実体により)を測定することができる。
【0128】
複数の区域を加熱するマイクロ流体チップは加熱ステージ上に配置され得る。チップ上の高温区域(たとえば95℃)と温区域(たとえば65〜72℃)との間を蛇行するチャネルを下る水性液滴中の反応をサイクルすることによって、2温度サイクルPCRがチップ上で実施され得る。
【0129】
PMTシグナルは、CA−1000接続アセンブリの内部に取り付けられたNational Instrumentコネクタブロックに入力される。コネクタブロックは、National Instrument小型FPGAカードに差し込まれている1本のケーブル内にPMTシグナルをまとめる。カードはWindows(登録商標) XPを実行中のPCにインストールされ得る。データは、Lab VIEWプログラミング環境で開発されたソフトウェアを使用して取り込みおよび解析することができる。
【0130】
ミクロスフェア蛍光はバルクで、Luminex Lab MAPハードウェアおよびソフトウェア(Luminex Corp.,Austin,TX)を使用して測定され得る。緑色蛍光測定値は、FITC校正粒子のMESFユニット用のQuantum Fluorescence KitおよびQuickCalソフトウェア(すべてSigma,St.Louis,MOより)を使用して、同等の溶解性蛍光色素の分子(molecules of equivalent soluble fluorochrome、MESF)に変換され得る。ミクロスフェアのみが寄与する緑色蛍光は、すべてのデータ点から引かれるであろう。ビーズ蛍光およびプローブ結合の液滴内測定は上述の装置を使用するであろう。
【0131】
(実施例6)
この実施例は、市販のLuminexビーズ(直径5.6um)に似た、複数の区別可能な蛍光ビーズの調製について説明する。FPは、染料濃度とは無関係であり得て(たとえばフルオレセインの1M濃度は、同じFPを0.01Mとして有する)、標識の際に独立変数として処理され得る。したがって、1つの染料が2次元において10単位で変化する場合、それは100の染料標識を生成するために使用できる。したがって2つの染料によって、10,000の標識が生成され得る。図12は、染料をより大きい分子に結合することによって、染料のFPを変更できることを示す。図12Aは、フルオレセイン330、ビオチン331およびビオチン+ストレプトアビジン332のFPを示す。図12Bは、2つの異なる化合物の相対濃度を変化させることによって、総FP値を制御自在に変更できることを示す。FPがフルオロフォアの濃度とは無関係に制御され得ることに注意することが重要である。
【0132】
図13は、蛍光強度(FI)およびFPが無関係に制御できることを示す。したがって、染料濃度および液滴FP値の範囲を拡大することによって、多くの識別要素を生成することができる。図13Aは、発光スペクトルが重複して、それぞれ異なるFPを有する2つの染料を混合したときの結果を示す。2つの染料を各種の比で混合すると各種のFP値が得られ、染料の総濃度を変更すると各種のFIが得られる。図13Bは、総FIを変更するための広いスパンを表す、比較的広範な濃度範囲を示す。この図は、図13Aに示した染料の総濃度の10倍の上昇も含む。
【0133】
(実施例7)
識別要素はいくつかの場合で、直径約10nm〜100umに及ぶサイズのポリスチレンビーズであり得て、ビーズは染色され得る。一例として、利用される染料は、近赤外および/または赤外領域にまで及ぶ蛍光を呈するスクアリン酸ベースの分子であることが可能である。これにより独立した濃度の2つ以上の染料が各ビーズに均一に吸収されて、ビーズ中に存在する染料の数それぞれについて複数の蛍光シグナルが生じる、再現プロセスが可能となる。異なる蛍光特徴を備えたビーズの集団を作製するために、この実施例では、得られた集団が前の集団と光学的に重複しないように、染料の割合を十分に増大することによって、赤色:オレンジ色染料の比を変更することができる。たとえば、ビーズの所与の集団の2つの染料の濃度と前記集団のX−Yマップの位置との間に関係があり得る。各位置は、線形蛍光チャネルユニットで表されるような第1の色(FL3)または第2の色(FL2)の染料の強度によって割り当てられ得る。ビーズがカラムを垂直に上昇するとき、ビーズ内の第1の色および第2の色の染料の量はどちらも増加させることができる。このことは、一方の染料から他方の染料へのエネルギー移動のためであり得る。列を左から右へ水平に移動するとき、定常のFL3値を維持するために、一方の染料を減少させることができる。これは、一方の染料のスペクトルが他方の染料の領域に重複するためであり得る。この方法を使用して、ビーズの複数の重複しない集合を構築することができる。2つのパラメータ、すなわち蛍光色および色強度または輝度(蛍光チャネル単位トで表される)を利用してビーズを分類することができる。
【0134】
(実施例8)
この実施例は、一実施形態によるDNAテンプレート調製について説明する。この実施例では、改良Aeromist Nebulizer(Alliance Medical,Russellville,MO)を使用して、DNA断片化を実施する。噴霧された断片のサイズ分布は、DNA 1000 LabChipを使用してAgilent 2100 BioAnalyzer(Agilent,Palo Alto,CA)で、噴霧物質の分割量2uLを分析することによって決定できる。
【0135】
DNA噴霧によって、圧倒的多数の摩滅末端を持つ断片が生成された。断片は、平滑末端であり、各種の酵素、たとえばT4 DNAポリメラーゼ、E.coli DNAポリメラーゼ(クレノウ断片)(NEB,Beverly,MA)およびT4ポリヌクレオチドキナーゼ(NEB)の活性によってホスホリル化され得る。研磨反応物は、Qiaquick PCR Purificationカラムで精製され得る。
【0136】
ゲノムDNAライブラリの断片化および研磨の後に、プライマ配列をDNA断片の各末端に付加することができる。44塩基プライマ配列(「アダプタ」)は、5’20塩基PCR増幅プライマと、続く20塩基配列決定プライマを含む2本鎖オリゴヌクレオチドである。アダプタの2つのクラスである、アダプタAおよびアダプタBを各反応で使用することができる。AアダプタとBアダプタは、両方のヌクレオチド配列およびBアダプタでの5’ビオチンタグの存在で異なる。アダプタ対は、平滑末端の断片化ゲノムDNAへの定方向連結を可能にするように設計される。たとえば、アダプタAはCCATCTCATCCCTGCGTGTCCCATCTGTTCCCTCCCTGTCTCAG(配列番号7)であり、アダプタBは5ビオチンTEG/CCTATCCCCTGTGTGCCTTGCCTATCCCCTGTTGCGTGTCTCAG(配列番号8)である。各アダプタ対で、PCRプライミング領域は、5’4塩基突出および平滑末端3’領域を含有する。方向性は、平滑末端ゲノムDNA断片に連結されたアダプタの3’平滑末端側として達成されるであろうが、5’突出はアダプタのPCRプライマ領域への連結を防止する。2%アガロース(Invitrogen,Carlsbad,CA)/TBEスラブゲルは、臭化エチジウム10mg/mLストック(Fisher Scientific,Pittsburgh,PA)4.5uLと共にゲル精製に使用することができる。3’接合部における2つの切れ目は、Bst DNAポリメラーゼ、大型断片の鎖置換作用によって修復できる。ストックM−270ストレプトアビジンビーズ(Dynal,Oslo,Norway)を使用すると、ABリンカー連結断片が単離され得る。1本鎖ライブラリは、使用前に室温まで加温しておいたMinElute PCR精製キット(Qiagen)の1個のカラムで濃縮されるであろう。
【0137】
(実施例9)
この実施例は、本発明の一実施形態において、液滴の集合の調製について説明する。この実施例では、Luminexビーズは特定のバイオアッセイに特異的な試薬でコーティングされ、試料からの特異的検体の捕捉および検出が可能となる。レーザは、各ビーズを識別する内部染料、およびアッセイ中に捕捉された任意の信号発信実体も励起した。
【0138】
カルボキシル化ミクロスフェア(5×106、400uL)は、Luminex(ビーズ製造者)の勧告に従って核酸プローブに結合される。結合反応の成否は、結合されたミクロスフェアを、ビーズ結合配列に相補的なモル過剰のビオチン化オリゴヌクレオチドによってハイブリダイズすることによって評価され得る。有効な結合によって、2000〜4000Uまでの平均蛍光強度(MFI)を持つミクロスフェアが産生される。1000未満のMFIを持つミクロスフェアは、いくつかの場合で、使用されるミクロスフェアが良好な強度を有するように置換することができる。
【0139】
分析用液滴の集合を調製する一例として、適切に標識されたビーズを96ウェルプレートで、各ウェルが4個のビーズのセットを含有し、(各ビーズの複数の同一のコピーが存在し得るが)各ビーズが他のビーズから区別できるように懸濁させることができる。各ウェルは、核酸プローブのライブラリから選択される核酸プローブがそのウェルに添加されるであろう。核酸プローブは標識され得る。各ウェルの内容を別々に使用して、30ミクロン液滴のエマルジョンが作製されるであろう。各エマルジョン中で得られた水性液滴はそれぞれ、4つの区別可能なビーズそれぞれのうちビーズ3〜4個および各種の濃度、たとえば10〜100uMの標識核酸プローブを含有するであろう。乳化は各個別のウェルで完了され得る。ウェルの集合全体が乳化されたときに、液滴を共にプールして分析用液滴の集合を生成する。集合をたとえば1時間未満から数ヶ月間に及ぶ任意の好適な期間にわたって貯蔵できる。
【0140】
(実施例10)
本発明のいくつかの実施形態において、DNAの連結は液滴中で行うことができる。これはこのような連結の説明例である。この実施例において、T4 DNAリガーゼの存在時(レーン3)および非存在時(レーン4)のテンプレートDNA+33mer+ホスホリル化7merの同時流を図14に表す。水相をポリアクリルアミドゲルに添加した。40merを生じる7merの33merへの連結は液滴内で起こった。
【0141】
液滴融合前にリガーゼ活性を防止する前に、ATP補酵素は活性酵素から隔離され得る。連結反応のためのATPは、テンプレート液滴に含まれ得る。T4 DNAリガーゼは分析用液滴の集合に含まれ得る。したがって、DNAテンプレートおよび分析用液滴の集合が融合されるときにのみ、リガーゼは活性になるであろう。
【0142】
テンプレート(2本鎖PCR生成物、長さ250〜450塩基対)は、3〜20ng/ml濃度で使用することができる。緑色蛍光シグナルは、この濃度範囲を通じて観察されている。核酸オリゴヌクレオチドを含む識別要素は10nM範囲で使用可能であり、これらの要素の核酸プローブに対する比は1:50であり得る。核酸オリゴヌクレオチドを含む識別要素のDNA結合ミクロスフェアへの連結は、最低30分間のインキュベーションを有し得る。
【0143】
連結されていないジップコードハイブリダイズ錯体であるサンドイッチ錯体から生成される潜在的なバックグラウンド蛍光源を避けるために、バックグラウンド蛍光はリガーゼの非存在下で測定され得る。流れ分析の直前にミクロスフェア懸濁物を45℃にて最低15分間インキュベートすると、バックグラウンド蛍光が最小化される。
【0144】
連結アッセイは標識核酸プローブを使用して試験されている。変性部位を0個または2個のどちらか含有した8塩基配列を試験した。標準連結アッセイ反応を使用する一塩基多型(SNP)分析のために、短い8塩基ポリヌクレオチド(CTAAGTTA(配列番号9)を設計した。SNPは、ゲノム中の1個のヌクレオチドが種の構成要素間で異なるときに発生するDNA配列多様性である。連結アッセイは、SNP1(A、G多型性)について、PCR増幅されたホモ接合標的DNA(RFLP分析によって以前にGGと遺伝子型決定された)を使用して実施した。対応条件のために、連結プローブは、標的DNAの25塩基に問合せされる1個の塩基まで相補的であるように設計された。図15Aに示すように、8塩基核酸プローブ(CTAAGTTA(配列番号9))は、GCホモ接合標的DNAによって正しく識別された。8塩基プローブからのシグナル強度は、18塩基プローブで観察されるシグナル強度の65%であった。図15Bおよび15Cに示すように、どちらの変性オリゴヌクレオチド(CTNAGNTA(配列番号10)およびCTANNTTA(配列番号11)もそれぞれ(Nがユニバーサル塩基である場合)、標的DNAのSNP遺伝子型を正しく識別した。各プローブは5’PO4および3’フルオレセインを含有していた。連結プローブの核酸プローブに対する比は、連結アッセイ前に添加された2つのプローブのモル比を指す。正しい5’−CTAAGTTA−3’(配列番号9)核酸プローブの濃度の16倍の低下を補正するために、変性核酸プローブを非変性配列の16倍高い濃度で使用した。
【0145】
(実施例11)
以下の実施例は、区別可能な核酸プローブおよび区別可能な識別要素を含む液滴のライブラリを使用する、核酸プローブの標的核酸へのハイブリダイゼーションの測定について記載する。
【0146】
第1の実施例において、それぞれ少なくとも1つの染料を含有する4つのエマルジョンを生成および混合した。この実施例を使用して複数の液滴からのシグナルを測定した。エマルジョンは次のように生成した。4個のリザーバに蛍光染料およびDNA分子の4つの組み合せを充填することによって、最初に4つの流体を調製した。第1のリザーバにはCy5染料20uMを供給した。第2のリザーバにはCy5染料15uMを供給した。第3のリザーバには、Cy5染料10uMを、未連結核酸プローブA(カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)結合6−mer)および核酸プローブB(6−カルボキシフルオレセイン(FAM)結合9−mer)2uMと共に供給した。第4のリザーバには、連結核酸プローブA(TAMRA結合6−mer)および核酸プローブB(FAM結合9−mer)のCy5 2uMを供給した。第4のリザーバにはCy5染料は供給しなかった。この実施例では、4つの濃度のCy5染料は標識として作用したが、同じ濃度の連結および未連結核酸プローブAおよび核酸プローブBは液滴中のFRETの検出性の検査のために供給された。
【0147】
4つのリザーバからの流体を乳化させた。4つの異なる溶液をフローフォーカス液滴生成装置に注入することによって、4つの異なるエマルジョンを生成した。フッ化炭素油も各液滴生成装置に注入した。利用した4つの装置はすべて実質的に同じであり、フローフォーカス寸法は約25×25ミクロンであった。内部相は約500マイクロリットル/時、外部相は約1000マイクロリットル/時のほぼ同じ速度で、4つの液体すべてを装置に注入した。結果として、すべての液滴生成装置は、ほぼ同じ速度およびほぼ同じサイズの液滴を産生した。
【0148】
各液滴生成装置で産生された液滴は次に、出口に接続された管を通じて流出する。4個の液滴生成装置および4個の出口管があった。管はまとめて束ねられ、共用注射器内に配置された。液滴が管から滴下したときに、液滴を注射器中にプールした。この液滴形成を約30分間進行させて、その後、液滴約1mLを収集した。すべての液滴が同時に乳化されるため、液滴は収集注射器内でランダムに混合された。図32は、区別可能な核酸プローブと、少なくとも1つの独自の識別要素をそれぞれ含む複数の種類の液滴342を混合することによって形成された、液滴の340エマルジョンの概略図を示す。
【0149】
図31Aは、1〜4つの異なる染料の組み合せをそれぞれ含有する4つの群の液滴を並行して産生するために使用した、マイクロ流体装置の概略図を示す。上入口600によって、油が装置に供給される。内部入口602によって、4つの異なる組み合せの染料が装置に注入される。フローフォーカス接合部604は、それぞれ独自の染料の組み合せを有する4種類の液滴が形成される箇所である。液滴は次にチャネル内を流れて、収集チャンバ606に収集される。液滴は装置を出る前に、収集チャンバ内で撮像される。図31Bは、ムービーの最初のフレームの、および液滴が産生された後に、しかし装置を出る前に流入する収集チャンバの拡大図の画像を示す。このフレームでは、液滴はまだ形成されておらず、チャネルは蛍光染料水およびフッ化炭素油の同時流で充填されていた。
【0150】
標的核酸を含む複数の液滴が形成された。標的核酸は、5’−CGCCAGGGTTTTCCCAGTCACGACGTTGTAAAACGACGGCCAGTGAATCCGTAATCATGGCCAT−3’(配列番号12)であった。図19に示すように、複数の標的核酸を含む溶液344が、少なくとも1つの標的核酸をそれぞれ含む複数の液滴346へとマイクロ流体装置348が形成される。
【0151】
標的核酸を含む複数の液滴および核酸プローブを含む液滴のライブラリは、マイクロ流体技法、たとえば“Formation and Control of Fluidic Species”という名称の2004年4月9日に出願されたInternational Patent Application No.PCT/US2004/010903、および“Electronic Control of Fluidic Species”という名称の2004年8月27日に出願されたInternational Patent Application No.PCT/US2004/027912に記載された技法を使用して融合され得る。図20Aに示すように、核酸プローブを含む液滴は、標的核酸を含む液滴354が核酸プローブを含む液滴356に隣接するように、マイクロ流体チャネル352内に流入した。図20Bは、電気融合を使用する液滴の融合を示す。図21は、図20A〜20Bに記載するプロセスの概略図を示す。図22は、融合液滴が遅延ラインでインキュベートされることを示す。この実施例では、融合液滴は約5分間インキュベートされた。
【0152】
図23は、融合液滴の速度(um/秒)の、インキュベーションチャネルに沿った位置に対するグラフを示す。さらに詳細には、図23は、チャネルにわたる液滴の速度プロフィールを示す。y軸はpiv(粒子画像速度測定)を使用して測定した速度を示すが、x軸は位置を示す。いくつかの実施形態において、円形断面チャネルにおけるポアズイユ流れの場合、流れの速度プロフィールは、チャネル壁での滑りのない境界条件のために、放物線状であることが予想されるかもしれない。しかしいくつかの場合で、エマルジョンのチャネル中への流れによって、流体は非ニュートン流で流れ得て、流れプロフィールは放物線状でないことがある。流れプロフィールは、チャネルにわたる流れ速度が壁付近を除いてほぼ一定であったことを示す。理論に縛られたくはないが、このことが発生し得るのは、液滴が非常に高い体積分率で産生されたためであった(たとえば水体積の油体積に対するパーセンテージが高い)。したがって、液滴は、液滴がチャネル内をほぼ同じ速度で流れるように、液滴がチャネル内を流れるときに相互に対して残存することができた。これを使用して異なる液滴間のインキュベーション時間の変動を低減することができる。
【0153】
非限定的な例として、いくつかの場合で、液滴がインキュベートする必要がある時間は、液滴がインキュベーションチャネル内で費やす時間である。液滴が希薄である場合、ここで流体はニュートニアン流体のように挙動することができ、流れは放物線状になるであろう。液滴がチャネル内を移動する速度はそれゆえ、チャネルの幅での液滴の位置に依存し得る(たとえば、チャネルの中央にある液滴は、チャネル端付近の液滴よりも高い速度を有し得る)。したがって、流れの速度が実質的に非放物線状でない場合には、2個の液滴のインキュベーション時間が異なり得る。しかし流れプロフィールが一定である場合、液滴の速度はほぼ等しくなり、したがってインキュベーション時間はほぼ等しくなるであろう。いくつかの場合で、非放物線状の流れプロフィールは低い体積分率のエマルジョンで達成され得る。たとえば、縦横比の小さいチャネルの場合、流れ場の空間的勾配は最も短い寸法によって支配され得る。いくつかの例において、チャネルがそれが幅広であるよりも著しく短い場合、ここで最も短い寸法がその高さとなるであろう。このことにより派生する流れプロフィールは非常に鋭くなり得て、これにより壁付近に大きな勾配が生じる。
【0154】
図24は、ハイブリダイゼーション結果が測定された、本実施例で使用したシステムの区域を示す。このシステムでは、融合液滴380がマイクロ流体チャネル381中に放出され、光源384(たとえばレーザ線)を1度に1個ずつ(たとえば液滴382)通過して、ハイブリダイゼーション結果が測定される。測定の後に、液滴(たとえば液滴386)は流れ続けて、マイクロ流体チャネルから出る。図25Aは、上述の装置の概略図を示す。液滴はたとえば図26に示すように、測定中にも変形させることができる。
【0155】
図27A〜27Dは、速度/利得対時間(ms)を示す定量的結果のグラフ((i)緑色、(ii)赤色))である。これらの図は、蛍光を使用する各種の標的の検出を表している。さらに詳細には、図27は4つの異なる液滴の種類の赤色および緑色蛍光信号を示す。この実施例の実験手順は、上述の実験手順と類似していた。この実施例では、検出にはCCD検出装置の代わりに光電子増倍管(PMT)を使用した。4個のプロットは、調製した4つの異なる種類の液滴の赤色および緑色PMTシグナルを示した。信号の各スパイクは、検出装置を流れ過ぎた液滴に相当した。液滴が検出装置を通過するときに、赤色および緑色レーザは蛍光を励起して、蛍光は対物レンズによって撮像されPMTに戻された。
【0156】
図28は、赤色および緑色強度の検出に基づく液滴の検出を示す。個々の液滴の赤色および緑色蛍光強度を測定した。プロットの各スポットは、検出された液滴を表す。このプロットを生成するために、(上述した)赤色および緑色蛍光染料の独自の組み合せをそれぞれ含有する4種類の液滴を最初に調製した。たとえばスポット610は、少量の緑色染料および大量の赤色染料を含んだ液滴を表すのに対して、スポット616は、大量の緑色染料および少量の染料を含んだ液滴を表す。プロットの各位置の複数のプロット(たとえば610、612、614、616)は、赤色および緑色染料をほぼ同じ比で有した複数の液滴を表した。液滴を測定するために、緑色および赤色レーザを液滴に集束させた。レーザ光により液滴内に含有された染料は蛍光を放出して、放出光は顕微鏡の対物レンズにより取り込まれた。光は、赤色光を通過させて、緑色光を反射する2色性ビームスプリッタを通過した。次に赤色および緑色フィルタによってさらにフィルタリングされて、さらにPMTセンサ上に集束された光路。赤色フィルタ後ろのPMTは赤色光の強度を測定したが、緑色フィルタ後ろのPMTは緑色光の強度を測定した(たとえば図11に示す装置)。測定は同時に実施して、結果はコンピュータで記憶および処理した。コンピュータは測定値を処理して、各液滴からの赤色および緑色蛍光の量を決定した。次に結果を図28に示すグラフにプロットした。
【0157】
図29は、3uMテンプレートの結合アッセイの結果を示す。プロットは、ここでi)標的核酸は存在しなかった(たとえばテンプレート)、ii)ミスマッチ標的核酸が存在した、およびiii)マッチ標的核酸が存在した、核酸プローブの蛍光偏光対長さを示す。
【0158】
いくつかの場合で、液滴の検出および/または定量にコンピュータを利用した。検出装置がPMT検出装置である例では、Lab View FPGAを使用した。液滴を3個のPMTで監視して、各PMTには異なるフィルタおよび/偏光子が組み合されていた。各PMTには数字が割り当てられた。PMT1は、平行偏光で緑色光を監視した。PMT2は、垂直偏光で緑色光を監視した。PMT3は、偏光なしで赤色光を監視した。これら3個のPMTはそれぞれ、それらが時間の関数として検出した光の強度に比例する、時間の関数としての電圧を出力した。これらの電圧時間追跡は、それらが解析されるコンピュータに送信された。
【0159】
コンピュータプログラムは、液滴を検出するためにユーザが指定したシグナルの1つを検索した。図27に示すように、各液滴は時間の関数としての電圧のピークに相当するように見える。ピークの立ち上りは、液滴がレーザビームの経路中に移動するときの液滴の立ち上りであった。ピークは、液滴がピークの中心にあったときの液滴に相当する。立ち下りは、液滴がビームから移動するときの液滴の立ち下りであった。液滴がレーザを流れ過ぎるときに時間の関数として電圧が変化するシーケンスは、液滴が検出されたか否かを決定するために使用した。
【0160】
コンピュータはシグナルを監視して、シグナルがユーザ指定の閾値レベルを超えて上昇した時点を決定する。シグナルが閾値レベルより上であった場合、このサイクルと前のサイクルとの間の電圧差を計算した。差が正であった場合、シグナルは上昇しており、これが液滴の立ち上りであることが示された。コンピュータは、液滴のシグナルの測定を継続して、液滴に関連する最高電圧を記憶する。シグナルが閾値より下に降下するとき、液滴の立ち下りが観察される。液滴の最高電圧が決定され、3つすべてのPMTからのシグナルは相関している。各液滴と関連付けられた測定値は、立ち上りが検出された時間、ピーク電圧の値、立ち下りが検出された時間、電圧が閾値を超えた期間(たとえば一定の流速である場合に、流速が液滴の長さに比例している、ピークの幅)、および電圧が閾値を超えている間の積分シグナルであった。同時に収集された3つすべてのPMTシグナルについて、これらの測定値を収集した。測定値は次にさらに組み合されて、ユーザが選択した少なくとも1個の値を決定した。たとえば、蛍光偏光測定値が望ましい場合、次に緑色平行および垂直ピークの比または積分強度が計算可能であった。これらの数値はまた、ユーザの指定と比較して、液滴が決定および/または定量に有用な液滴であることをさらに確認するための基準を満足しているか否かを決定することも可能であった。いくつかの例において、液滴情報(たとえば測定値)は記憶され得る、および/または液滴は選別のために選択され得る。
【0161】
(実施例12)
以下の実施例は、エマルジョンベースのマイクロ流体アッセイからのリアルタイム高スループットデータ取り込みを可能にする液滴検出のためのシステムおよび方法について説明する。
【0162】
この実施例に記載する方法を使用して、マイクロ流体液滴、たとえば蛍光シグナルを含むマイクロ流体液滴(たとえば少なくとも2つの蛍光染料集団を含むマイクロ流体液滴)を撮像した。マイクロ流体液滴の2つの群、すなわち液滴がフルオレセイン誘導体染料(緑色波長にて可視)を含む液滴の第1の群およびCy5染料(赤色波長にて可視)を含む液滴の第2の群を調製した。液滴を同じ容器内で共に混合すると、サイズまたは形態に基づく区別は不可能であった。液滴を混合集団として容器チャネルに流入させて、蛍光顕微鏡装置で描出した。この例では、緑色LEDアレイを斜角照明を液滴に当てるために使用して、ほぼ55°の角度および顕微鏡ステージから約1フィート離して配置し、液滴グレアを生成させた。図35は、実験装置の例を表す。発光フィルタ520、2色性ミラー522、アーク灯524、励起フィルタ526、および対物レンズ528を含む蛍光顕微鏡を用意した。複数の液滴を顕微鏡ステージ530に位置決めした。斜角照明532は約55°の角度で当てられた。顕微鏡534を励起させる光は検出装置または撮像装置(たとえばCCDカメラなど)によって記録した。
【0163】
この実施例では、一方は緑色波長の狭いスペクトル内の光のみ通過させるフィルタの下に配置されたのに対して、他方のカメラは赤色波長の狭いスペクトル内の光のみ通過させるフィルタの下に配置された2個のCCDカメラによって、画像を取り込んだ。両方のカメラでのフレームの取り込みを同期させて、緑色波長および赤色波長両方の蛍光情報の同時取り込みを可能とした。斜角照明は緑色LED源からであったため、液滴グレアは緑色波長取り込みのみで観察された。
【0164】
緑色波長取り込みからの画像フレームは、各液滴の液滴グレアを選抜する簡単な強度閾値プログラムを使用して処理した。この場合、人による入力でソフトウェアに液滴グレアと液滴中心との間の角度および距離を指示する;しかしいくつかの場合では、これはソフトウェアプログラムを使用して自動化され得る。いくつかの実施形態において、液滴グレアと液滴中心との間の角度および距離は、機器装置を変更しないという条件で、1回記録する必要があるだろう。ソフトウェアを使用して、各液滴グレアに対するサンプリングマスクを生成した。サンプリングマスクを赤色および緑色波長カメラ画像フレームと重ねて、蛍光強度読み取り値が得られる液滴の境界内の同じ範囲を定義する、各液滴のマーキングシステムを生成する。コンピュータは緑色波長画像と対応する赤色波長画像をマージして、両方のカメラからの情報を持つ合成画像を形成した。液滴グレアから生成されたマスクを使用して、蛍光強度情報を合成画像から収集した。この実施形態において、液滴からの強度を測定する正確度の程度は高く、隣接する液滴をサンプリングリスクはほとんどなかった。
図37は、緑色波長フィルタ下のマイクロ流体液滴のCCDカメラビデオ取り込みからの静止フレームを示す。この画像では、密充填液滴の間の境界は区別が困難であるが、液滴グレアは容易に目視できる。この画像では、フルオレセインを含む液滴はは色がより明るく見えるが、Cy5を含む液滴は画像ではより暗く見える。図38は、CCDカメラ静止画像の強度閾値を示す。図39Aおよび39Bは、蛍光強度読み取り値のためのマスクおよびマスクオーバーレイをそれぞれ示す。図40および図41は、緑色フィルタカメラおよび赤色フィルタカメラそれぞれからの画像を示す。図42は、フルオレセイン(暗い灰色)およびCy5(明るい灰色)を含む液滴の2つの別個の集団を示す、緑色および赤色カメラデータのオーバーレイを含む合成画像を示す。図43は、秒でサンプリングした50,000のデータ点の強度カウントのヒストグラムを示し、(a)緑色チャネルおよび(b)赤色チャネルは予想された二峰性分布を示している。
【0165】
この実施例に記載する方法は、強度を計算せずに完了することが可能であり、データ取り込みに使用した同じ画像フレームで実施され得る。このことにより、液滴ベースアッセイにおけるボトルネックとしてのデータ取り込みが不要となり得る。たとえば、上述のような実験を実行するコンピュータは、12ビット320×240データストリームから1秒当り数百フレームの速度で強度データを取り込んだ。約2,000液滴/フレームの充填アレイを用いると、これは200,000液滴/秒からのデータの処理の取り込みに変換される。
【0166】
いくつかの実施形態において、この実施例で記載したような方法は、複数の液滴を測定するときに好都合であり得る。液滴グレアはバックグラウンドよりも強いことがあり、液滴の位置の容易な識別を可能にし得るので、これにより液滴グレアを利用しない方法と比較して液滴の簡単な測定を可能にする。いくつかの実施形態において、液滴グレアのソフトウェアによる識別は簡単な方法を使用して完了され得る。液滴グレアは各液滴の中心からの方向および距離の両方に関して一般に一貫して出現するため、液滴グレアは基準点として使用することができる。さらに、第2の光源によって各種の角度で液滴を照明することができ、実質的に集束したグレアを生じる特定の角度が(たとえば目視検出に基づいて)選択され得る。角度は、液滴グレアが液滴の中心に関して外れるようにも選択され得る。液滴の中心から外れている液滴グレアによって、液滴識別およびデータ取り込みの両方に同じ画像フレームが与えられることがある。したがって、斜角照明は点灯および消灯する必要はなく、ならびに/またはわずかに異なる時点で合成画像を撮像する必要はない。
【0167】
本発明の複数の実施形態を本明細書で記載および例証したが、当業者は機能を実施するためのならびに/または本明細書に記載した結果および/もしくは利点の1つ以上を得るための、多種多様の他の手段および/または構造を想定するであろうし、このような変更形態または修飾形態はそれぞれ本発明の範囲内であると見なされる。さらに一般的には、当業者は、本明細書に記載したすべてのパラメータ、寸法、材料、および構成が例示であるとされることと、実際のパラメータ、寸法、材料、および構成が、本発明の教示が使用される特定の利用または複数の利用に応じて変わるであろうこととをただちに認識するであろう。当業者は、せいぜい日常的な実験を用いて、本明細書に記載した本発明の具体的な実施形態の多くの等価物を認識する、またはそれを確認できるであろう。したがって、上述の実施形態が例示のためのみに与えられていることと、添付請求項およびその等価物の範囲内で、本発明が、特に記載および/または請求されているのと違うふうに実施され得ることとが理解されるであろう。本発明は、本明細書に記載したそれぞれ個別の特徴、システム、材料および/または方法に関する。さらに、このような特徴、システム、物品、材料および/または方法の2つ以上の任意の組み合せは、このような特徴、システム、物品、材料および/または方法が相互に矛盾するわけではない場合、本発明の範囲内に含まれる。
【0168】
本明細書で使用するようなすべての定義は、本開示の目的のためのみである。これらの定義は、この開示に関連するまたは関連しないにかかわらず、同一出願人による他の特許および/または特許出願に必ずしも帰するべきではない。定義は、本明細書に記載するように、辞書の定義、参考文献に組み入れられている文書での定義、および/または定義した用語の普通の意味に優先することを理解すべきである。
【0169】
明らかにそれとは反対に指摘されない限り、1つ以上の行為を含む本明細書で請求するいずれの方法においても、方法の行為の順序は、本発明の行為が列挙される順序に必ずしも限定されないことも理解されるべきである。
【0170】
請求項においては、上の明細書においてと同様に、「備える(comprising)」、「含む(including)」、「担持する」、「有する」、「含有する」、「包含する」、「保持する」などのすべての移行句は、オープンエンドである、すなわち含むが、限定されないことを意味することが理解されるべきである。「成る(consisting of)」および「本質的に成る(consisting essentially of)」という移行句のみが、United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedure,Section 2111.03で述べられているように、クローズまたはセミクローズ移行句であるものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸プローブおよび少なくとも1つの識別要素を含有する第1のマイクロ流体液滴を提供する工程、
標的核酸を含む第2のマイクロ流体液滴を提供する工程、ならびに、
該第1のマイクロ流体液滴および該第2のマイクロ流体液滴を融合して融合液滴を形成する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記融合液滴内に含有された前記標的核酸を決定する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標的核酸の少なくとも一部の配列を決定する工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記標的核酸を表面に接触させずに該標的核酸を決定する工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記融合液滴内に含有された前記少なくとも1つの識別要素を決定することによって、前記標的核酸の少なくとも一部を決定する工程をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記液滴が少なくとも3つの区別可能な識別要素を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記液滴が少なくとも4つの区別可能な識別要素を含有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの識別要素を決定する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
蛍光を使用して前記少なくとも1つの識別要素を決定する工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの識別要素が粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの識別要素が蛍光性である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記核酸プローブが少なくとも4個の残基を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記核酸プローブが少なくとも5個の残基を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記核酸プローブが少なくとも6個の残基を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記核酸プローブが少なくとも1個のロックド核酸残基を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記核酸プローブが少なくとも1個のユニバーサル残基を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記核酸プローブが信号発信実体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記標的核酸および前記核酸プローブの結合を測定する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記標的核酸および前記少なくとも1つの識別要素の結合を測定する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記標的核酸および前記核酸プローブの結合を測定する工程が前記信号発信実体の変化を測定する工程を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記標的核酸および前記核酸プローブの結合を決定する工程が該核酸プローブの少なくとも一部の蛍光の変化を測定する工程を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記核酸プローブが消光剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記核酸プローブが増感剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
ポリメラーゼを前記融合液滴に提供する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の流体液滴および前記第2の流体液滴の少なくとも1つがポリメラーゼをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記ポリメラーゼがTaqポリメラーゼである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記標的核酸および前記核酸プローブの結合時に、前記ポリメラーゼが前記消光剤を該核酸プローブから解離させる、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記核酸プローブが少なくとも1つの識別要素に対して固定される、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記核酸プローブが核酸配列を含み、前記少なくとも1つの識別要素がオリゴヌクレオチドを含み、該核酸配列が該オリゴヌクレオチドに連結されている、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも1つの識別要素がそれに対して固定された少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記液滴が4つの区別可能な識別要素を含有し、各区別可能な識別要素がそれに対して固定された少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記4つの区別可能な識別要素のそれぞれに対して固定された前記オリゴヌクレオチドそれぞれが、他のオリゴヌクレオチドに対して1つの位置でのみ異なる配列を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
それぞれの前記オリゴヌクレオチドが複数のユニバーサル残基を含有する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
それぞれの前記オリゴヌクレオチドが1つの位置を除いて全ての位置においてユニバーサル残基より成る、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
複数の識別要素を含むマイクロ流体液滴を提供する工程;
該液滴を変形させて、該複数の識別要素それぞれが標的区域を個別に通過するように該液滴に該標的区域を通過させる工程;ならびに
該標的区域を通過する該複数の識別要素それぞれを測定する工程;
を含む、方法。
【請求項36】
前記マイクロ流体液滴が核酸および核酸プローブをさらに含有する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記核酸が前記複数の識別要素を決定することによって決定される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記複数の識別要素の少なくともいくつかが粒子である、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記複数の識別要素の少なくともいくつかがナノ粒子である、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記複数の識別要素の少なくともいくつかが蛍光性である、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
液滴に、第1の識別要素と、該第1の識別要素と区別可能な第2の識別要素と、該第1の識別要素および該第2の識別要素から区別可能な第3の識別要素を添加することによって、核酸プローブを含有する該液滴の少なくとも一部を測定する工程を含む、方法。
【請求項42】
前記液滴に前記第1、前記第2、および前記第3の識別要素それぞれから区別可能な第4の識別要素を添加する工程をさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記液滴に含有された核酸を決定する工程を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記核酸および前記核酸プローブの結合を測定する工程をさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記第1、前記第2、および前記第3の識別要素がそれぞれ粒子である、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
少なくとも6つの識別要素を定義する工程であって、該識別要素が少なくとも3つの群に分類され、各群は該要素のうちの少なくとも2つを有する、工程;
少なくとも8つの区別可能な種のそれぞれを、該8つの区別可能な種のうち2つが識別要素の同じセットと関連しないように、該少なくとも3つの群それぞれから選択される少なくとも1つの識別要素と関連付ける工程;ならびに
少なくとも8つの区別可能な液滴を調製する工程であって、各液滴は、該少なくとも8つの異なる種のうち1つおよび該少なくとも3つの群それぞれから得た関連付けた要素を含有する、工程;
を含む、方法。
【請求項47】
少なくとも約10の区別可能な識別要素を定義する工程を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
少なくとも約40の区別可能な識別要素を定義する工程を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
少なくとも約100の区別可能な識別要素を定義する工程を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記要素を少なくとも4つの群に分類する工程を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
各群が少なくとも約5つの要素を有する、請求項46に記載の方法。
【請求項52】
各群が少なくとも約10の要素を有する、請求項46に記載の方法。
【請求項53】
少なくとも約10の区別可能な種のそれぞれを関連付ける工程を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項54】
少なくとも約30の区別可能な種のそれぞれを関連付ける工程を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項55】
少なくとも約100の区別可能な種のそれぞれを関連付ける工程を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項56】
少なくとも約300の区別可能な種のそれぞれを関連付ける工程を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項57】
少なくとも約1,000の区別可能な種のそれぞれを関連付ける工程を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項58】
少なくとも約4,000の区別可能な種のそれぞれを関連付ける工程を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項59】
前記種が核酸プローブである、請求項46に記載の方法。
【請求項60】
少なくとも約100個の区別可能な液滴を調製する工程を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項61】
少なくとも約1000個の区別可能な液滴を調製する工程を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項62】
標的核酸を前記少なくとも8個の区別可能な液滴それぞれに添加する工程をさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項63】
前記液滴の少なくともいくつかがマイクロ流体性である、請求項46に記載の方法。
【請求項64】
複数の区別可能な核酸プローブおよび複数の区別可能な識別要素を提供する工程;
該複数の区別可能な核酸プローブから少なくとも1個の核酸プローブと、該複数の区別可能な識別要素から少なくとも3つの区別可能な識別要素を選択する工程;
該選択した1個の核酸プローブおよび該少なくとも3つの区別可能な識別要素を含有する流体液滴を形成する工程;ならびに
1個の核酸プローブおよび該少なくとも3つの区別可能な識別要素をそれぞれ含有する少なくとも10の区別可能な流体液滴を含む、流体液滴の集団を形成するために該選択工程および該形成工程を反復する工程;
を含む、方法。
【請求項65】
前記複数の区別可能な識別要素から少なくとも4つの区別可能な識別要素を選択する工程を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
少なくとも約10の区別可能な識別要素を提供する工程を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
少なくとも約20の区別可能な識別要素を提供する工程を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
少なくとも約40の区別可能な識別要素を提供する工程を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
少なくとも約10の区別可能な核酸プローブを提供する工程を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項70】
少なくとも約100の区別可能な核酸プローブを提供する工程を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項71】
少なくとも約1,000の区別可能な核酸プローブを提供する工程を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項72】
少なくとも約100個の区別可能な流体液滴を含む流体液滴の集団を形成するために前記選択工程および前記形成工程を反復する工程を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項73】
少なくとも約1,000個の区別可能な流体液滴を含む流体液滴の集団を形成するために前記選択工程および前記形成工程を反復する工程を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項74】
1個の核酸プローブおよび少なくとも3つの区別可能な識別要素を選択する行為が:
前記複数の区別可能な識別要素を少なくとも3つの群に分類する工程;ならびに
該少なくとも3つの群それぞれから1つの識別要素を選択する工程;
を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項75】
核酸プローブをそれぞれ含有する第1の複数の少なくとも10個の区別可能な流体液滴;ならびに
少なくとも3つの区別可能な識別要素をそれぞれ含有する第2の複数の少なくとも10個の区別可能な流体液滴;
を含む、キット。
【請求項76】
前記第1の流体液滴が少なくとも第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項77】
前記第1のマイクロ流体液滴が、前記第1の核酸プローブを含むマイクロ流体液滴および第2の核酸プローブを含むマイクロ流体液滴を融合することによって形成される、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
リガーゼを前記融合した液滴に供給する工程をさらに含む、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
前記第1の核酸プローブが前記第2の核酸プローブに連結される、請求項76に記載の方法。
【請求項80】
前記第1の核酸プローブおよび前記第2の核酸プローブの配列を決定する工程をさらに含む、請求項76に記載の方法。
【請求項81】
前記液滴が第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブを含有する、請求項41に記載の方法。
【請求項82】
前記第1および前記第2の核酸プローブと前記液滴内に含有された標的核酸との関連を決定する工程をさらに含む、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
流体液滴の第1の集団を形成するための区別可能な核酸プローブの第1の群および区別可能な識別要素の第1の群、ならびに流体液滴の第2の集団を形成するための区別可能な核酸プローブの第2の群および区別可能な識別要素の第2の群に対する提供、選択、形成および反復工程を完了させる工程を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項84】
前記核酸プローブの第1の群が前記核酸プローブの第2の群と実質的に同様である、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記核酸プローブの第1の群が前記核酸プローブの第2の群とは異なる、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記識別要素の第1の群が前記識別要素の第2の群と実質的に同様である、請求項83に記載の方法。
【請求項87】
前記識別要素の第1の群が前記識別要素の第2の群とは異なる、請求項84に記載の方法。
【請求項88】
前記核酸プローブの少なくともいくつかが少なくとも3個の核酸残基を含む、請求項83に記載の方法。
【請求項89】
前記核酸プローブの少なくともいくつかが少なくとも1つのユニバーサル残基をさらに含む、請求項83に記載の方法。
【請求項90】
核酸プローブの少なくとも1つの群が3個の残基を含む考えられるすべての配列の少なくとも一部を含む、請求項83に記載の方法。
【請求項91】
核酸プローブの少なくとも1つの群が4個の残基を含む考えられるすべての配列の少なくとも一部を含む、請求項83に記載の方法。
【請求項92】
前記第1の集団からの少なくとも1個の流体液滴を前記第2の集団からの少なくとも1個の流体液滴と融合して第3の流体液滴とする工程を含む、請求項83に記載の方法。
【請求項93】
液滴の第3の集団を形成するために、前記第1の集団からの実質的にすべての液滴を前記第2の集団からの実質的にすべての液滴と融合する工程を反復する工程を含む、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
液滴グレアが液滴内の光散乱のために複数の液滴の実質的にすべてで生成されるように、表面上の該複数のマイクロ流体液滴に光を向ける工程;ならびに
該液滴グレアの位置に基づいて液滴の位置を決定する工程;
を含む方法。
【請求項95】
前記光が前記複数のマイクロ流体液滴に非直交角度で向けられる、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記マイクロ流体液滴から生じる非散乱光を測定する工程をさらに含む、請求項94に記載の方法。
【請求項97】
非散乱光を測定する行為と、液滴グレアを定量する行為が実質的に同時である、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記液滴グレアが前記液滴による散乱光の実質的な集束によって生成される、請求項94に記載の方法。
【請求項99】
前記液滴が実質的に単分散である、請求項94に記載の方法。
【請求項100】
前記非散乱光が蛍光により生成される、請求項94に記載の方法。
【請求項101】
前記複数のマイクロ流体液滴から生じる前記液滴グレアを定量する工程をさらに含む、請求項94に記載の方法。
【請求項102】
表面上の複数のマイクロ流体液滴;
該表面上に配置された該複数のマイクロ流体液滴に対して直交して光を集束させることができる第1の光源;
該表面上に配置された該複数のマイクロ流体液滴に対して実質的に非直交の角度で光を集束させることができる第2の光源;ならびに
該表面上に配置された該複数のマイクロ流体液滴から生じた、該第2の光源から生じる散乱光および該第1の光源から生じる非散乱光を撮像することができる撮像装置;
を備えた、撮像システム。
【請求項103】
前記撮像装置が、前記表面上に配置された前記複数のマイクロ流体液滴から生じた前記散乱光および前記非散乱光を同時に撮像することができる、請求項102に記載の撮像システム。
【請求項104】
前記撮像装置がカメラである、請求項102に記載の撮像システム。
【請求項105】
前記カメラがCCDカメラである、請求項104に記載の撮像システム。
【請求項106】
前記第1の光源がLEDである、請求項102に記載の撮像システム。
【請求項107】
撮像システムが少なくとも1,000個のマイクロ流体液滴を同時に撮像することができる、請求項103に記載の撮像システム。
【請求項108】
撮像システムが少なくとも5,000個のマイクロ流体液滴を同時に撮像することができる、請求項107に記載の撮像システム。
【請求項109】
撮像システムが少なくとも10,000個のマイクロ流体液滴を同時に撮像することができる、請求項108に記載の撮像システム。
【請求項1】
核酸プローブおよび少なくとも1つの識別要素を含有する第1のマイクロ流体液滴を提供する工程、
標的核酸を含む第2のマイクロ流体液滴を提供する工程、ならびに、
該第1のマイクロ流体液滴および該第2のマイクロ流体液滴を融合して融合液滴を形成する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記融合液滴内に含有された前記標的核酸を決定する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標的核酸の少なくとも一部の配列を決定する工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記標的核酸を表面に接触させずに該標的核酸を決定する工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記融合液滴内に含有された前記少なくとも1つの識別要素を決定することによって、前記標的核酸の少なくとも一部を決定する工程をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記液滴が少なくとも3つの区別可能な識別要素を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記液滴が少なくとも4つの区別可能な識別要素を含有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの識別要素を決定する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
蛍光を使用して前記少なくとも1つの識別要素を決定する工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの識別要素が粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの識別要素が蛍光性である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記核酸プローブが少なくとも4個の残基を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記核酸プローブが少なくとも5個の残基を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記核酸プローブが少なくとも6個の残基を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記核酸プローブが少なくとも1個のロックド核酸残基を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記核酸プローブが少なくとも1個のユニバーサル残基を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記核酸プローブが信号発信実体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記標的核酸および前記核酸プローブの結合を測定する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記標的核酸および前記少なくとも1つの識別要素の結合を測定する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記標的核酸および前記核酸プローブの結合を測定する工程が前記信号発信実体の変化を測定する工程を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記標的核酸および前記核酸プローブの結合を決定する工程が該核酸プローブの少なくとも一部の蛍光の変化を測定する工程を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記核酸プローブが消光剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記核酸プローブが増感剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
ポリメラーゼを前記融合液滴に提供する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の流体液滴および前記第2の流体液滴の少なくとも1つがポリメラーゼをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記ポリメラーゼがTaqポリメラーゼである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記標的核酸および前記核酸プローブの結合時に、前記ポリメラーゼが前記消光剤を該核酸プローブから解離させる、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記核酸プローブが少なくとも1つの識別要素に対して固定される、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記核酸プローブが核酸配列を含み、前記少なくとも1つの識別要素がオリゴヌクレオチドを含み、該核酸配列が該オリゴヌクレオチドに連結されている、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも1つの識別要素がそれに対して固定された少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記液滴が4つの区別可能な識別要素を含有し、各区別可能な識別要素がそれに対して固定された少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記4つの区別可能な識別要素のそれぞれに対して固定された前記オリゴヌクレオチドそれぞれが、他のオリゴヌクレオチドに対して1つの位置でのみ異なる配列を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
それぞれの前記オリゴヌクレオチドが複数のユニバーサル残基を含有する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
それぞれの前記オリゴヌクレオチドが1つの位置を除いて全ての位置においてユニバーサル残基より成る、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
複数の識別要素を含むマイクロ流体液滴を提供する工程;
該液滴を変形させて、該複数の識別要素それぞれが標的区域を個別に通過するように該液滴に該標的区域を通過させる工程;ならびに
該標的区域を通過する該複数の識別要素それぞれを測定する工程;
を含む、方法。
【請求項36】
前記マイクロ流体液滴が核酸および核酸プローブをさらに含有する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記核酸が前記複数の識別要素を決定することによって決定される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記複数の識別要素の少なくともいくつかが粒子である、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記複数の識別要素の少なくともいくつかがナノ粒子である、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記複数の識別要素の少なくともいくつかが蛍光性である、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
液滴に、第1の識別要素と、該第1の識別要素と区別可能な第2の識別要素と、該第1の識別要素および該第2の識別要素から区別可能な第3の識別要素を添加することによって、核酸プローブを含有する該液滴の少なくとも一部を測定する工程を含む、方法。
【請求項42】
前記液滴に前記第1、前記第2、および前記第3の識別要素それぞれから区別可能な第4の識別要素を添加する工程をさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記液滴に含有された核酸を決定する工程を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記核酸および前記核酸プローブの結合を測定する工程をさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記第1、前記第2、および前記第3の識別要素がそれぞれ粒子である、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
少なくとも6つの識別要素を定義する工程であって、該識別要素が少なくとも3つの群に分類され、各群は該要素のうちの少なくとも2つを有する、工程;
少なくとも8つの区別可能な種のそれぞれを、該8つの区別可能な種のうち2つが識別要素の同じセットと関連しないように、該少なくとも3つの群それぞれから選択される少なくとも1つの識別要素と関連付ける工程;ならびに
少なくとも8つの区別可能な液滴を調製する工程であって、各液滴は、該少なくとも8つの異なる種のうち1つおよび該少なくとも3つの群それぞれから得た関連付けた要素を含有する、工程;
を含む、方法。
【請求項47】
少なくとも約10の区別可能な識別要素を定義する工程を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
少なくとも約40の区別可能な識別要素を定義する工程を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
少なくとも約100の区別可能な識別要素を定義する工程を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記要素を少なくとも4つの群に分類する工程を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
各群が少なくとも約5つの要素を有する、請求項46に記載の方法。
【請求項52】
各群が少なくとも約10の要素を有する、請求項46に記載の方法。
【請求項53】
少なくとも約10の区別可能な種のそれぞれを関連付ける工程を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項54】
少なくとも約30の区別可能な種のそれぞれを関連付ける工程を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項55】
少なくとも約100の区別可能な種のそれぞれを関連付ける工程を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項56】
少なくとも約300の区別可能な種のそれぞれを関連付ける工程を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項57】
少なくとも約1,000の区別可能な種のそれぞれを関連付ける工程を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項58】
少なくとも約4,000の区別可能な種のそれぞれを関連付ける工程を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項59】
前記種が核酸プローブである、請求項46に記載の方法。
【請求項60】
少なくとも約100個の区別可能な液滴を調製する工程を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項61】
少なくとも約1000個の区別可能な液滴を調製する工程を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項62】
標的核酸を前記少なくとも8個の区別可能な液滴それぞれに添加する工程をさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項63】
前記液滴の少なくともいくつかがマイクロ流体性である、請求項46に記載の方法。
【請求項64】
複数の区別可能な核酸プローブおよび複数の区別可能な識別要素を提供する工程;
該複数の区別可能な核酸プローブから少なくとも1個の核酸プローブと、該複数の区別可能な識別要素から少なくとも3つの区別可能な識別要素を選択する工程;
該選択した1個の核酸プローブおよび該少なくとも3つの区別可能な識別要素を含有する流体液滴を形成する工程;ならびに
1個の核酸プローブおよび該少なくとも3つの区別可能な識別要素をそれぞれ含有する少なくとも10の区別可能な流体液滴を含む、流体液滴の集団を形成するために該選択工程および該形成工程を反復する工程;
を含む、方法。
【請求項65】
前記複数の区別可能な識別要素から少なくとも4つの区別可能な識別要素を選択する工程を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
少なくとも約10の区別可能な識別要素を提供する工程を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
少なくとも約20の区別可能な識別要素を提供する工程を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
少なくとも約40の区別可能な識別要素を提供する工程を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
少なくとも約10の区別可能な核酸プローブを提供する工程を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項70】
少なくとも約100の区別可能な核酸プローブを提供する工程を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項71】
少なくとも約1,000の区別可能な核酸プローブを提供する工程を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項72】
少なくとも約100個の区別可能な流体液滴を含む流体液滴の集団を形成するために前記選択工程および前記形成工程を反復する工程を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項73】
少なくとも約1,000個の区別可能な流体液滴を含む流体液滴の集団を形成するために前記選択工程および前記形成工程を反復する工程を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項74】
1個の核酸プローブおよび少なくとも3つの区別可能な識別要素を選択する行為が:
前記複数の区別可能な識別要素を少なくとも3つの群に分類する工程;ならびに
該少なくとも3つの群それぞれから1つの識別要素を選択する工程;
を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項75】
核酸プローブをそれぞれ含有する第1の複数の少なくとも10個の区別可能な流体液滴;ならびに
少なくとも3つの区別可能な識別要素をそれぞれ含有する第2の複数の少なくとも10個の区別可能な流体液滴;
を含む、キット。
【請求項76】
前記第1の流体液滴が少なくとも第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項77】
前記第1のマイクロ流体液滴が、前記第1の核酸プローブを含むマイクロ流体液滴および第2の核酸プローブを含むマイクロ流体液滴を融合することによって形成される、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
リガーゼを前記融合した液滴に供給する工程をさらに含む、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
前記第1の核酸プローブが前記第2の核酸プローブに連結される、請求項76に記載の方法。
【請求項80】
前記第1の核酸プローブおよび前記第2の核酸プローブの配列を決定する工程をさらに含む、請求項76に記載の方法。
【請求項81】
前記液滴が第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブを含有する、請求項41に記載の方法。
【請求項82】
前記第1および前記第2の核酸プローブと前記液滴内に含有された標的核酸との関連を決定する工程をさらに含む、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
流体液滴の第1の集団を形成するための区別可能な核酸プローブの第1の群および区別可能な識別要素の第1の群、ならびに流体液滴の第2の集団を形成するための区別可能な核酸プローブの第2の群および区別可能な識別要素の第2の群に対する提供、選択、形成および反復工程を完了させる工程を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項84】
前記核酸プローブの第1の群が前記核酸プローブの第2の群と実質的に同様である、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記核酸プローブの第1の群が前記核酸プローブの第2の群とは異なる、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記識別要素の第1の群が前記識別要素の第2の群と実質的に同様である、請求項83に記載の方法。
【請求項87】
前記識別要素の第1の群が前記識別要素の第2の群とは異なる、請求項84に記載の方法。
【請求項88】
前記核酸プローブの少なくともいくつかが少なくとも3個の核酸残基を含む、請求項83に記載の方法。
【請求項89】
前記核酸プローブの少なくともいくつかが少なくとも1つのユニバーサル残基をさらに含む、請求項83に記載の方法。
【請求項90】
核酸プローブの少なくとも1つの群が3個の残基を含む考えられるすべての配列の少なくとも一部を含む、請求項83に記載の方法。
【請求項91】
核酸プローブの少なくとも1つの群が4個の残基を含む考えられるすべての配列の少なくとも一部を含む、請求項83に記載の方法。
【請求項92】
前記第1の集団からの少なくとも1個の流体液滴を前記第2の集団からの少なくとも1個の流体液滴と融合して第3の流体液滴とする工程を含む、請求項83に記載の方法。
【請求項93】
液滴の第3の集団を形成するために、前記第1の集団からの実質的にすべての液滴を前記第2の集団からの実質的にすべての液滴と融合する工程を反復する工程を含む、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
液滴グレアが液滴内の光散乱のために複数の液滴の実質的にすべてで生成されるように、表面上の該複数のマイクロ流体液滴に光を向ける工程;ならびに
該液滴グレアの位置に基づいて液滴の位置を決定する工程;
を含む方法。
【請求項95】
前記光が前記複数のマイクロ流体液滴に非直交角度で向けられる、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記マイクロ流体液滴から生じる非散乱光を測定する工程をさらに含む、請求項94に記載の方法。
【請求項97】
非散乱光を測定する行為と、液滴グレアを定量する行為が実質的に同時である、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記液滴グレアが前記液滴による散乱光の実質的な集束によって生成される、請求項94に記載の方法。
【請求項99】
前記液滴が実質的に単分散である、請求項94に記載の方法。
【請求項100】
前記非散乱光が蛍光により生成される、請求項94に記載の方法。
【請求項101】
前記複数のマイクロ流体液滴から生じる前記液滴グレアを定量する工程をさらに含む、請求項94に記載の方法。
【請求項102】
表面上の複数のマイクロ流体液滴;
該表面上に配置された該複数のマイクロ流体液滴に対して直交して光を集束させることができる第1の光源;
該表面上に配置された該複数のマイクロ流体液滴に対して実質的に非直交の角度で光を集束させることができる第2の光源;ならびに
該表面上に配置された該複数のマイクロ流体液滴から生じた、該第2の光源から生じる散乱光および該第1の光源から生じる非散乱光を撮像することができる撮像装置;
を備えた、撮像システム。
【請求項103】
前記撮像装置が、前記表面上に配置された前記複数のマイクロ流体液滴から生じた前記散乱光および前記非散乱光を同時に撮像することができる、請求項102に記載の撮像システム。
【請求項104】
前記撮像装置がカメラである、請求項102に記載の撮像システム。
【請求項105】
前記カメラがCCDカメラである、請求項104に記載の撮像システム。
【請求項106】
前記第1の光源がLEDである、請求項102に記載の撮像システム。
【請求項107】
撮像システムが少なくとも1,000個のマイクロ流体液滴を同時に撮像することができる、請求項103に記載の撮像システム。
【請求項108】
撮像システムが少なくとも5,000個のマイクロ流体液滴を同時に撮像することができる、請求項107に記載の撮像システム。
【請求項109】
撮像システムが少なくとも10,000個のマイクロ流体液滴を同時に撮像することができる、請求項108に記載の撮像システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図8F】
【図8G】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27A】
【図27B】
【図27C】
【図27D】
【図28】
【図29】
【図31A】
【図31B】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39A】
【図39B】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図6D】
【図11】
【図14】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図8F】
【図8G】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27A】
【図27B】
【図27C】
【図27D】
【図28】
【図29】
【図31A】
【図31B】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39A】
【図39B】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図6D】
【図11】
【図14】
【図30】
【公表番号】特表2011−509075(P2011−509075A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539498(P2010−539498)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/013912
【国際公開番号】WO2009/085215
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(502072134)プレジデント アンド フェロウズ オブ ハーバード カレッジ (92)
【氏名又は名称原語表記】President and Fellows of Harvard College
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/013912
【国際公開番号】WO2009/085215
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(502072134)プレジデント アンド フェロウズ オブ ハーバード カレッジ (92)
【氏名又は名称原語表記】President and Fellows of Harvard College
【Fターム(参考)】
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