説明

核酸混合物を解析するためのプローブ、ライブラリーおよびキット、並びにその構築方法

本発明は、核酸の複合混合物、例えばトランスクリプトーム、における成分を検出、分類、または定量するための核酸プローブ、核酸プローブライブラリー、およびキット並びにその使用方法に関する。本発明はまた、プローブライブラリーにおいて有用な核酸プローブを同定するための方法および所定の核酸を検出する手段を同定するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸の複合混合物中、例えばトランスクリプトーム中の成分を検出、分類、または定量するための核酸プローブ、核酸プローブライブラリーおよびキット、並びにその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
何千もの遺伝子の発現を示すマイクロアレイ、例えばGeneChip(商標)アレイ (Affymetrix, Inc., Santa Clara, CA)、が出現したことにより、発現遺伝子と細胞表現型の間の相関は、ノザン分析またはドットブロット分析のような伝統的方法に必要とされる費用および労働力の何分の一かで同定可能である。マイクロアレイにより、診断および治療に使用可能な疾患のバイオマーカーや薬物ターゲットを同定かつ確認するための、マルチプルパラレルアッセイの開発が可能となる。遺伝子発現プロファイルはまた、ある物質(例えば、薬物、潜在的毒物、または発癌性物質等)または条件(例えば、温度、pH等)への暴露の代謝的または毒物学的結果を推定および予測するのにも使用可能である。
【0003】
マイクロアレイ実験は、不必要なデータを生じることが多く、実験者にとって価値があるのはそのほんの一部である。さらに、マイクロアレイに基づくアッセイは高度にパラレルな形式であるため、条件が個々の捕捉プローブに最適でない可能性がある。これらの理由により、マイクロアレイ実験は、単一遺伝子の均一系アッセイを用いる確認試験が続けて行われるか、あるいはそれに順次置き換えられることが非常に多い。これらは、通常定量的PCRに基づく方法、例えば5'ヌクレアーゼアッセイまたは他のタイプの二重標識プローブ定量的アッセイである。しかしながら、これらアッセイもまだ、高コストで時間のかかるプローブ設計手順がネックとなっている長時間を要する単一反応のアッセイである。さらに、5'ヌクレアーゼアッセイプローブは比較的大きい(例えば、15〜30ヌクレオチド)。このように、現在知られる均一系アッセイシステムにおける制限から、マイクロアレイ知見の確認および集中的ターゲット確認手法におけるボトルネックが生じている。
【0004】
このボトルネックを回避するアプローチは、5'ヌクレアーゼアッセイ手法およびモレキュラービーコンで使用される高価な二重標識インジケータープローブを省いて、かわりに二本鎖DNAに結合すると蛍光を発するが一本鎖DNAでは蛍光を発しないSYBR Greenのような非配列特異的DNAインターカレート色素を使用することである。このような色素を使用すると、いずれの増幅配列も広くリアルタイムで検出することが可能である。しかしながら、この技術はいくつかの問題が妨げとなっている。例えば、PCR増幅工程中の非特異的プライミングが、定量工程に影響しうる意図しない非ターゲットアンプリコンを形成しうる。さらに、反応においてPCRプライマー同士が相互作用して「プライマーダイマー」を形成することは一般的である。PCR反応に典型的に用いられるプライマーが高濃度なため、同様にインターカレート色素に結合する短い二本鎖非ターゲットアンプリコンがかなりの量でもたらされうる。それゆえ、リアルタイムPCRによってmRNAを定量する好ましい方法は、配列特異的検出プローブを使用するものである。
【0005】
ランダムな増幅およびプライマーダイマーの形成の問題を回避するアプローチの1つは、Simeonov, et al. (Nucleic acid Research 30(17): 91, 2002; 米国特許公開第20020197630号)に記載されるように、いくらか配列特異性を保持しているものの多数の様々なタイプの核酸分子を検出するのに使用することができる一般的検出プローブを使用することであり、それにはまた所定の長さ(1または複数種類)のすべての可能性ある配列の10%より多くに含まれるプローブのライブラリーを使用することが含まれる。ライブラリーは、各種の非天然核酸塩基、およびライブラリー中のプローブ/プライマーのターゲット配列に対する結合を安定化する他の修飾を含むことができる。そうではあるが、ほとんどの配列は、リアルタイムPCRのようなアプリケーションに適する大部分のアッセイ条件に適合する程度の安定性に達するのに、少なくとも8塩基が最低限必要である。すべての可能性ある8merのユニバーサルライブラリーは65,536種類の相異なる配列を含むので、Simeonov, et al. が以前に考えた最小のライブラリーでもすべての可能性の10%を上回り、すわなち少なくとも6554配列を含み、操作するのに実用的でなく、また構築するのが非常に高価である。
【0006】
実用的観点から、同時均一系アッセイのアプリケーションの使用容易性および利用可能性は、幾つかの因子により制限されている。ユーザーが直面している常套的アッセイ技術の問題には以下が含まれる:
各転写物に対するプローブの購入価格が高いため、少数のサンプルにおいて多くの異なる遺伝子を検出しようとする場合のコストが非常に高いこと;
標識プローブの合成に時間がかかり、しばしば注文後製造元から受け取るまでに1週間以上かかること;
ユーザーが設計したキットは最初は機能しない場合があり、確認済みのキットは1アッセイごとが高価であること;
新規ターゲットについて迅速に試験すること、あるいは繰り返しプローブ設計を改良することが難しいこと。
市販の確認済プローブの正確なプローブ配列は顧客にはわからず、そのことが結果の評価および科学文献への適性に問題となること。
アッセイ条件または成分が明確でない場合、別の所から試薬を注文することは不可能であろうこと。
本明細書に記載される発明は、これらの実用上の問題に対処し、遺伝子転写物を定量するための正確かつ特異的なアッセイの迅速かつ安価な開発を保証することを目的とする。
【発明の開示】
【0007】
[発明の概要]
例えばヒトトランスクリプトームにおけるほとんどの遺伝子(例えば>98%)の発現を、限られた数のオリゴヌクレオチド検出プローブを用いて均一系アッセイシステムにて定量できることが望ましい。本発明は、先に概説した均一系アッセイへの現在のアプローチが直面する問題を解決する。これは、ランダムに増幅された配列断片またはプライマーダイマーを検出しないように十分な配列特異性を有し、なおかつ多くの相異なるターゲット配列のそれぞれを検出することができる一般的マルチプローブを構築する方法を提供することによりなされる。このようなプローブは様々なアッセイにおいて使用可能であり、ターゲット特異的プライマーセットと組み合わせた場合に何千もの相異なる核酸から構成される複合混合物中の個々の成分を検出および/または定量するのに(例えば、30,000を上回る相異なる核酸より構成されるヒトトランスクリプトーム中の個々の転写物を検出するのに)使用可能な、小規模なプローブライブラリー (50〜500 プローブ)に組み込まれても良い。
【0008】
各マルチプローブは、二つのエレメントを含む: 1) プローブのターゲットへの結合を検出するための1以上の標識からなる検出エレメントまたは検出部分;および 2) 対象とする特定のターゲットへの結合を保証する認識エレメントまたは認識配列タグ。検出エレメントは、均一系アッセイに使用される各種検出原理のいずれであってもよい。結合は、ターゲットへの結合後の測定可能な1以上の標識の性質の変化により直接的に(例えば、ステム構造を有する、または有さないモレキュラービーコンタイプのアッセイ)、あるいは結合後に続く反応により間接的に(例えば、5'ヌクレアーゼアッセイにおけるDNAポリメラーゼの5'ヌクレアーゼ活性による切断)検出される。
【0009】
各検出エレメントは、欧州特許出願公開第04078170号および03759288号に開示されているクエンチャーから選択されたクエンチャーを含み得る。ここで、これら2つの特許出願に開示されているクエンチャーに関する開示はすべて、必要な変更を加えると、本発明のライブラリーの一部であるオリゴヌクレオチドプローブの一部を形成するクエンチャーと関連しており、両開示は参照により本明細書に含まれる。
【0010】
該クエンチャーは好ましくは以下の式Iを有する:
【化1】


[式中、R1、R4、R5およびR8のうち1または2は独立して、結合、または置換または非置換アミノ基から選択され、オリゴヌクレオチドプローブの残り部分とのリンカーを構成し、残っているR1からR8基はそれぞれ独立して、水素、または置換または非置換ヒドロキシ、アミノ、アルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルコキシである。アミノ基の置換はアルキル、アルキルアリールまたはアリール基による置換であり得る。]
【0011】
本明細書において式Iにおける「アルキル」なる用語は、一般に約1-30の炭素、好ましくは1-6の炭素を有する、分枝または非分枝の、飽和または不飽和の、一価の炭化水素ラジカルを指すために用いる。適切なアルキルラジカルには、例えば、1以上のメチレン、メチン(methine)および/またはメチン(methyne)基を含む構造体が含まれる。分枝した構造体は、イソプロピル、t-ブチル、i-ブチル、2-エチルプロピルなどと類似した分枝モチーフを有する。本明細書で用いる場合、該用語は、「置換アルキル」および「環状アルキル」を包含する。「置換アルキル」は、例えばC1-C6-アルキル、アリール、アシル、ハロゲン(すなわち、アルキルハロ、例えばCF3)、ヒドロキシ、アミノ、アルコキシ、アルキルアミノ、アシルアミノ、チオアミド、アシルオキシ、アリールオキシ、アリールオキシアルキル、メルカプト、チア、アザ、オキソ、飽和および不飽和の両方の環状炭化水素、複素環などのような、1以上の置換基を含む上記アルキルを意味する。これらの基はアルキル部分のあらゆる炭素または置換基に結合しうる。さらに、これらの基はアルキル鎖から垂れ下がっているか、またはアルキル鎖に内在し得る。
【0012】
本文脈における「アルキルアリール」なる用語は、アルキル基とアリール基を結合させることにより得られるラジカルを意味する。典型的なアルキルアリール基にはフェネチル、エチルフェニルなどが含まれる。
【0013】
本文脈における「アルキルアミノ」なる用語は、アルキルにより置換されたアミノを意味する。好ましい態様において、該アミノ基はアントラキノン構造体に結合している。
【0014】
本文脈における「アルキルアリールアミノ」なる用語は、アルキルアリールにより置換されたアミノを意味する。好ましい態様において、アミノ基はアントラキノン構造体に結合している。
【0015】
本文脈における「アリールアミノ」なる用語は、アリールにより置換されたアミノを意味する。好ましい態様において、アミノ基はアントラキノン構造体に結合している。
【0016】
本発明において用いられる特に好ましいクエンチャーの例には以下が含まれる:1,4-ビス-(3-ヒドロキシ-プロピルアミノ)-アントラキノン、1-(3-(4,4'-ジメトキシ-トリチルオキシ)プロピルアミノ)-4-(3-ヒドロキシプロピルアミノ)-アントラキノン、1,5-ビス-(3-ヒドロキシ-プロピルアミノ)-アントラキノン、1-(3-ヒドロキシプロピルアミノ)-5-(3-(4,4'-ジメトキシ-トリチルオキシ)プロピルアミノ)-アントラキノン、1,4-ビス-(4-(2-ヒドロキシエチル)フェニルアミノ)-アントラキノン、1-(4-(2-(4,4'-ジメトキシ-トリチルオキシ)エチル)フェニルアミノ)-4-(4-(2-ヒドロエチル)フェニルアミノ)-アントラキノン、1,8-ビス-(3-ヒドロキシ-プロピルアミノ)-アントラキノン、1,4-ビス(3-ヒドロキシプロピルアミノ)-6-メチルアントラキノン、1-(3-(4,4'-ジメトキシ-トリチルオキシ)プロピルアミノ)-4-(3-ヒドロキシプロピルアミノ)-6(7)-メチル-アントラキノン、1,4-ビス(4-(2-ヒドロエチル)フェニルアミノ)-6-メチル-アントラキノン、1,4-ビス(4-メチル-フェニルアミノ)-6-カルボキシ-アントラキノン、1,4-ビス(4-メチル-フェニルアミノ)-6-(N-(6,7-ジヒドロキシ-4-オキソ-ヘプタン-1-イル))カルボキサミド-アントラキノン、1,4-ビス(4-メチル-フェニルアミノ)-6-(N-(7-ジメトキシトリチルオキシ-6-ヒドロキシ-4-オキソ-ヘプタン-1-イル))カルボキサミド-アントラキノン、1,4-ビス(プロピルアミノ)-6-カルボキシ-アントラキノン、1,4-ビス(プロピルアミノ)-6-(N-(6,7-ジヒドロキシ-4-オキソ-ヘプタン-1-イル))カルボキサミド-アントラキノン、1,4-ビス(プロピルアミノ)-6-(N-(7-ジメトキシトリチルオキシ-6-ヒドロキシ-4-オキソ-ヘプタン-1-イル))カルボキサミド-アントラキノン、1,5-ビス(4-(2-ヒドロエチル)フェニルアミノ)-アントラキノン、1-(4-(2-ヒドロエチル)フェニルアミノ)-5-(4-(2-(4,4'-ジメトキシ-トリチルオキシ)エチル)フェニルアミノ)-アントラキノン、1,8-ビス(3-ヒドロキシプロピルアミノ)-アントラキノン、1-(3-ヒドロキシプロピルアミノ)-8-(3-(4,4'-ジメトキシ-トリチルオキシ)プロピルアミノ)-アントラキノン、1,8-ビス(4-(2-ヒドロエチル)フェニルアミノ)-アントラキノンおよび1-(4-(2-ヒドロエチル)フェニルアミノ)-8-(4-(2-(4,4'-ジメトキシ-トリチルオキシ)エチル)フェニルアミノ)-アントラキノン。
【0017】
特に好ましいクエンチャーは、実施例21の化合物11、すなわち1,4-ビス(2-ヒドロキシエチルアミノ)-6-メチルアントラキノンである。
【0018】
認識エレメントはまた、本発明の新規性に貢献している。それは、短いオリゴヌクレオチド部分を含み、その部分の配列は所定の複合サンプル混合物中のターゲットヌクレオチドの大きなサブセットの検出を可能とするよう選択されている。多くの相異なるターゲット分子のそれぞれを検出するため設計された新規プローブを、マルチプローブと呼ぶ。複数のターゲットに対してプローブを設計する概念、および最も頻繁に遭遇する配列を選択することによって短い認識配列の反復を利用する概念は新規であり、単一のターゲット配列に対して可能な限り特異的となるように設計される常套的プローブとは対照的である。隣接プライマーおよびプローブ配列の選択が組み合わされ、その結果マルチプローブの特異性を保証する。最小数のプローブで最大数のターゲットに対処する試みに起因する新規な設計原理も同様に、本発明の一部である。これは、オリゴヌクレオチドプローブを含む非常に短い8〜9merのLNAがPCRに基づくアッセイに適合することを発見したことにより可能となる。本発明のある局面において、修飾またはアナログ核酸塩基、ヌクレオシド塩基、またはヌクレオチドが、場合によりマイナーグルーブバインダー(minor groove binder)その他の修飾とともに、認識エレメントに組み込まれるが、これはすべて最短の可能性あるプローブ配列を最大範囲のターゲットとともに使用できるように、プローブとターゲット分子の間で形成される二本鎖を安定化させることが目的である。本発明の好ましい局面において、修飾はLNA残基の組み込みであり、これは認識エレメントの長さを8または9ヌクレオチドに減らす一方で、通常のアッセイ条件の下で検出するのに十分な、形成された二本鎖の安定性を維持する。典型的には、前記ライブラリーのオリゴヌクレオチドプローブの20%未満が、認識エレメントの5'および/または3'位にグアニジル(guanidyl)(G)残基を有するが、オリゴヌクレオチドプローブの10%未満、例えば5%未満が認識エレメントの5'末端にGを有するのが好ましい。特に好ましいのは、認識エレメントが5'末端にGを持たないライブラリーである。
【0019】
好ましくは、マルチプローブは、プローブのターゲット配列に対する結合親和性を、同じ検出条件、例えばPCR条件またはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件、の下で、修飾されていない同じ配列のプローブと比較して少なくとも二倍増大させるよう修飾される。好ましい修飾には、限定はされないが、化学的部分により修飾されている核酸塩基、ヌクレオシド塩基、またはヌクレオチドの組み込み、またはアナログ(例えば、リボースまたはデオキシリボースアナログを含む)による置換、またはホスホジエステル結合以外のヌクレオチド間結合(例えば非リン酸ヌクレオチド間結合)の使用が含まれ、これらはすべて結合親和性を増大させる。好ましい修飾にはまた、二本鎖安定化物質、例えばマイナーグルーブバインダー(MGB)またはインターカレート核酸(INA)、の連結が含まれる。さらに、好ましい修飾には、識別性のない塩基、例えば5-ニトロインドール、の付加が含まれ、これはターゲット鎖上の反対の位置の核酸塩基によらず、二本鎖形成を安定化することができる。実際に、好ましい態様においては、本発明のライブラリーのすべてのプローブが少なくとも1つの5-ニトロインドール残基を含むことを要する(最も好ましくは:全プローブが1つの単一の5-ニトロインドール残基を含む)。最後に、ターゲット配列に特異的な配列に結合することができる、非糖リン酸骨格、例えばPNA、により構成されるマルチプローブもまた、修飾として考慮される。前述の結合親和性の増大させる各種修飾はすべて、以下において「安定化修飾」と呼ばれ、その結果のマルチプローブはまた以下において「修飾オリゴヌクレオチド」と呼ばれる。より好ましくは、修飾オリゴヌクレオチドの結合親和性は、同じ配列だが安定化修飾を有さないプローブの結合の少なくとも約3倍、4倍、5倍、または20倍を上回る。
【0020】
最も好ましくは、安定化修飾は、1以上のLNAヌクレオチドアナログを含むことである。本発明の6〜12ヌクレオチドのプローブは、1〜8の安定化ヌクレオチド、例えばLNAヌクレオチド、を含んでもよい。少なくとも2つのLNAヌクレオチドが含まれる場合、これらは連続していても、1以上の非LNAヌクレオチドにより隔てられていてもよい。ある局面において、LNAヌクレオチドはアルファおよび/またはキシロLNAヌクレオチドである。
【0021】
本発明はまた、NASBAに基づくアッセイに使用される条件下で有用なオリゴマーマルチプローブライブラリーを提供する。
【0022】
NASBAは、RNAの増幅に適した特異的等温核酸増幅方法である。核酸の単離は、グアニジンチオシアナートおよびTriton X-100による溶解により達成され、最終的に精製核酸は二酸化ケイ素粒子から溶出される。NASBAによる増幅には、3種類の酵素、AMV逆転写酵素、RNase H、およびT7RNAポリメラーゼ、の協調的活性が関与する。定量的検出は、単離時に添加された内部キャリブレータにより達成され、これは一緒に増幅されて、その後野生型RNAとともに電気化学発光により同定される。
【0023】
本発明はまた、前述の安定化修飾を少なくとも1つ含むマルチプローブを含むオリゴマーマルチプローブライブラリーを提供する。好ましくは、プローブの長さは約20ヌクレオチド未満であり、より好ましくは12ヌクレオチド未満であり、最も好ましくは約8または9ヌクレオチドである。また、好ましくは、ライブラリーは約3000未満のプローブを含み、より好ましくはライブラリーは500未満のプローブを含み、最も好ましくは約100のプローブを含む。標識マルチプローブを含むライブラリーは、認識エレメントに連結した検出エレメントのタイプに依存して、様々なアプリケーションに使用可能である。これらアプリケーションには、限定はされないが、二重または一重標識アッセイ、例えば5'ヌクレアーゼアッセイ、モレキュラービーコンアプリケーション(例えば以下を参照:Tyagi and Kramer, Nat. Biotechnol. 14: 303-308, 1996)および他のFRETに基づくアッセイが含まれる。
【0024】
本発明のある局面において、前述のマルチプローブは、最小数のマルチプローブ配列を用いて複合混合物中の最大数の核酸を検出/特徴決定/定量できるように、選択した所定の長さのすべての可能性ある配列のうちの既定のサブセットが一緒になってお互いを補い合うように設計される。これらの事前に設計されたすべての可能性ある配列の小規模なサブセットが、マルチプローブライブラリーを構成する。本発明に記載されるマルチプローブライブラリーは、複合核酸ターゲット集団の最良の可能性あるカバレージ(coverage)を得るための選択を多様化することを試みつつ、最も共通に存在する所定の長さ(1または複数種類)のオリゴマーを意図的に選択することにより、この機能性を非常に簡単に実現する。好ましいある局面において、ライブラリーのプローブは、核酸ターゲット集団、例えばヒトmRNA集団、の約60%より多くとハイブリダイズする。より好ましくは、プローブは、ターゲット分子集団におけるすべてのターゲット核酸分子の70%、80%、90%、95%、および98%より多くとハイブリダイズする(例えば、図1を参照)。
【0025】
本発明の最も好ましい局面において、選択したプローブ長のすべての可能性ある配列の約0.1%を含むプローブライブラリー(すなわち、例えば約100のマルチプローブ)は、いずれかの特定の種、特に哺乳類、より具体的にはヒト、のトランスクリプトームにおけるmRNA転写物の98%より多く (すなわち、>35,000の相異なるmRNA配列)を検出、分類、および/または定量することができる。実際、ターゲット集団中のすべてのターゲット核酸の少なくとも85%が、本発明のマルチプローブライブラリーによりカバーされていることが好ましい。
【0026】
既存の均一系アッセイに伴う前述の問題は、所定の生物に由来する所定の細胞タイプにおけるすべての発現遺伝子の大部分を認識または検出するように選択された、短い検出プローブの最小のセットからなる本発明のマルチプローブライブラリーの使用により解決される。ある局面において、ライブラリーは、約10,000遺伝子、約15,000遺伝子、約20,000遺伝子、約25,000遺伝子、約30,000遺伝子、または約35,000遺伝子、あるいは同等数の相異なるmRNA転写物、を上回るトランスクリプトーム中の各転写物を検出するプローブを含む。ある好ましい局面において、ライブラリーは、哺乳類の転写物配列、例えばマウス、ラット、ウサギ、サル、またはヒト配列、を検出するプローブを含む。
【0027】
本発明は、定量的リアルタイムおよびエンドポイントPCRアッセイの迅速な開発に有用な、費用効率の高いマルチプローブセットを提供することにより、同時均一系アッセイの前述の限界を克服する。本発明のマルチプローブの検出エレメントは、(例えば、プローブの各末端または内部位置に標識を含むことにより)一重または二重に標識されていてよい。したがって、本発明のプローブは、5'ヌクレアーゼアッセイ、モレキュラービーコンアッセイ、FRETアッセイ、および他の同様のアッセイにおける使用に適用可能である。ある局面において、検出マルチプローブには、お互いに相互作用してシグナルを産生するか、またはシグナルを変化させることができる2つの標識が含まれ、そのプローブがターゲット配列にハイブリダイズした時にシグナルまたはシグナルの変化が検出できる。具体的局面は、2つの標識がクエンチャーおよびレポーター分子を含む場合である。
【0028】
別の局面において、プローブは、相補的認識配列を含む複数の相異なる核酸分子に特異的にハイブリダイズすることができる、ターゲット特異的認識セグメントを含む。「ステム領域を有するモレキュラービーコン」と呼ばれる本発明の具体的な検出の局面とは、認識セグメントがアニールしてヘアピンを形成しうる第1および第2の相補的ヘアピン形成配列に挟まれている場合である。レポーター標識が一方の相補的配列の末端に連結し、クエンチング部分が他方の相補的配列の末端に連結する。第1および第2の相補的配列がハイブリダイズする場合(すなわち、プローブ認識セグメントがターゲットにハイブリダイズしていない場合)に形成されるステムは、これら2つの標識が互いに近接した状態を保ち、レポーターにより産生されるシグナルが蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)によってクエンチされるようにする。2つの標識の近接性はプローブがターゲット配列にハイブリダイズすると減少し、そして近接性の変化により標識間の相互作用に変化が生じる。したがって、プローブのハイブリダイゼーションの結果として、検出および/または定量可能なシグナル(例えば蛍光)がレポーター分子により産生される。
【0029】
別の局面において、マルチプローブは、短い認識配列の両端にレポーターおよびクエンチャー分子を含み、これによりこれら部分が互いに十分近接し、クエンチャーが実質的にレポーター分子により産生されるシグナルを減少させる。これは、プローブが溶液中で遊離している場合も、ターゲット核酸に結合している場合もある。「5'ヌクレアーゼアッセイ」と呼ばれる本発明の具体的な検出の局面とは、マルチプローブがDNAポリメラーゼの5'ヌクレアーゼ活性による切断に感受性を有しうる場合である。この反応の結果、クエンチャー分子がレポーター分子から分離し、検出可能なシグナルが産生されうると考えられる。したがって、このようなプローブは、ターゲット核酸についての増幅プロセスを検出および/または定量するための、増幅に基づくアッセイに使用可能である。
【0030】
第1の局面において、本発明は、前述のマルチプローブのライブラリーに関する。そのようなオリゴヌクレオチドプローブライブラリーにおいて、各プローブは、約8-9ヌクレオチドの長さの検出エレメントと認識セグメントを含み、そのオリゴヌクレオチドの核酸塩基の一部またはすべてが天然の核酸塩基と比較して結合親和性を増大させる効果を有する非天然塩基により置換され、および/またはオリゴヌクレオチドプローブのヌクレオチド単位の一部またはすべてが結合親和性を増大させる化学的部分により修飾され、および/またはそのオリゴヌクレオチドが結合親和性を増大させる化学的部分により修飾され、それによりプローブが検出に適した条件下でターゲット配列に結合するのに十分な安定性を有し、かつ相異なる認識セグメントの数が所定の長さのすべての可能性あるセグメントの10%未満に含まれ、かつ90%を上回るプローブが核酸のターゲット集団中の2以上の相補的ターゲットを検出することができ、それによりオリゴヌクレオチドプローブライブラリーは核酸ターゲット集団のすべてのターゲット配列の相当な画分を検出可能である。
【0031】
本発明は、それゆえ、オリゴヌクレオチドプローブライブラリーであって、ライブラリー中の各プローブが認識配列タグおよび検出部分からなり、各オリゴヌクレオチドプローブの少なくとも1つのモノマーが修飾モノマーアナログであることにより対応する非修飾オリゴヌクレオチド(例えば被修飾オリゴデオキシリボヌクレオチドまたはオリゴリボヌクレオチドであり得る)と比較して相補的ターゲット配列に対する結合親和性が増大しており、これによりライブラリープローブがいずれの所定のターゲット集団においても配列特異的結合およびターゲット核酸の相当な画分の検出に十分な安定性を有し、かつ相異なる認識配列の数が所定の長さのすべての可能性あるタグの10%未満に含まれる、オリゴヌクレオチドプローブライブラリーに関する。
【0032】
本発明はさらに、ライブラリー中のプローブの認識配列タグセグメントが以下の少なくとも1つの方法により修飾されている、オリゴヌクレオチドプローブライブラリーに関する:
i) 少なくとも1つの非天然ヌクレオチドによる置換;および、
ii) プローブの安定性を増大させる少なくとも1つの化学的部分による置換。
【0033】
さらに、本発明は、認識配列タグの長さが6〜12ヌクレオチド (すなわち6、7、8、9、10、11または12)であり、かつ好ましい長さが8または9ヌクレオチドである、オリゴヌクレオチドプローブライブラリーに関する。
【0034】
さらに、本発明は、LNAヌクレオチドにより置換された認識配列タグに関する。
【0035】
また、本発明の一部は、式Iのクエンチャーおよび5'-ニトロインドール残基を含むオリゴヌクレオチドプローブである。このような有用なマルチプローブはこれら自体に発明性があると考えられる。このようなプローブの好ましいものは、5'グアニジル残基を含まないもので、概してこのような発明性のプローブは本明細書および特許請求の範囲に開示されている。特に好ましいプローブは、表1、表1A、図13または図14に示すものである。
【0036】
さらに、本発明は、本発明のライブラリーであって、90%を上回るオリゴヌクレオチドプローブが核酸集団中の少なくとも2つのターゲット配列に結合してその配列を検出することができ、それが好ましくは結合したターゲット配列がプローブの認識配列に相補的であることによるライブラリー、に関する。
【0037】
また、好ましくは、プローブは核酸ターゲット集団中の2以上のターゲットを検出でき、例えば、プローブは核酸ターゲット集団に含まれる複数の相異なる核酸分子にハイブリダイズすることができる。
【0038】
本発明はまた、少なくとも1つの安定化核酸塩基を含むマルチプローブを設計するための方法、システム、およびコンピューター読み取り可能媒体に記録されたコンピュータープログラム(「コンピュータープログラムプロダクト」)を提供する。本方法は、ターゲット配列のデータベース(例えば、発現配列(expressed sequense)のデータベース)をクエリー(query)すること、および小規模なプローブのセット(例えば、50、100、200、300または500)を設計することを含み、それらプローブはi) PCR条件下でそれぞれのターゲット配列に結合するのに十分な結合安定性を有し、ii) それ自身で二本鎖構造を形成する傾向が制限されており、かつiii) 所定の配列データベース、例えば発現配列データベース、におけるすべての配列の少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%に結合して検出/定量することができる。
【0039】
プローブは、インシリコ(in silico)で設計され、それには仮想候補プローブのデータベースを形成する所定の長さのヌクレオチドのすべての可能性ある組み合わせが含まれる。これらの仮想プローブは、ターゲット配列のデータベースに対してクエリーされ、データベース中の最大数の相異なるターゲット配列を検出する能力が最大であるプローブ(「最適プローブ」)が同定される。このように同定された最適プローブは、仮想プローブデータベースから除かれる。さらに、先の最適プローブのセットにより同定されたターゲット核酸は、ターゲット核酸データベースから抜き取られる。残りのプローブはその後、残りのターゲット配列に対してクエリーされ、最適プローブの第2のセットが同定される。この工程を、ターゲット配列データベースの所望のカバレージを提供できるプローブのセットが同定されるまで繰り返す。このセットは、トランスクリプトーム解析のための配列のソースとしてデータベースに保存できる。このデータベース中の配列に対応する認識配列を有するマルチプローブを合成すれば、マルチプローブのライブラリーを形成することができる。
【0040】
ある好ましい局面において、ターゲット配列データベースは、ヒトmRNAに対応する核酸配列(例えば、mRNA分子、cDNA等)を含む。
【0041】
別の局面において、本方法はさらに、認識配列が少なくとも1つの安定化ヌクレオチド、例えばLNA分子、を含むとの仮定に基づき、安定性を計算することを含む。ある好ましい局面において、計算された安定性は、ターゲット配列のデータベースに対する最初のクエリーを行い最適なプローブ認識配列の同定を開始する前に、仮想候補プローブのデータベースから不適切な安定性を有するプローブ認識配列を除去するのに使用される。
【0042】
別の局面において、本方法はさらに、認識配列が少なくとも1つの安定化ヌクレオチド、例えばLNA分子、を含むとの仮定に基づき、所定のプローブ認識配列がそれ自身で二本鎖構造を形成する傾向を計算することを含む。ある好ましい局面において、計算された傾向は、ターゲット配列のデータベースに対する最初のクエリーを行い最適なプローブ認識配列の同定を開始する前に、仮想候補プローブのデータベースからプローブ二本鎖を形成しそうなプローブ認識配列を除去するのに使用される。
【0043】
別の局面において、本方法はさらに、残りのターゲット配列に対するクエリーおよびオリジナルターゲット配列のセットに対するクエリーの両方によって、増加中の最適プローブ候補のセットに含めるために所定の候補プローブ認識配列の汎用性を評価することを含む。ある好ましい局面において、残りのターゲット配列およびオリジナルターゲット配列の両方に頻繁に見られるプローブ認識配列のみを増加中の最適プローブ認識配列のセットに加える。最も好ましい局面において、これは、これらクエリーからのスコアの積(product)を計算し、最高の積を有し、なおかつ現在のターゲットに対するクエリーにおいて20%のベストスコアを有するプローブ認識配列に含まれるプローブ配列を選択することにより達成される。
【0044】
本発明はまた、複数の相異なるターゲット配列を含むデータベースを探索するため、およびデータベース中の少なくとも約60%、約70%、約80%、約90%および約95%の配列を同定することができるプローブ認識配列のセットを同定するための指示を含む、コンピューター読み取り可能媒体に記録されたコンピュータープログラムを提供する。ある局面において、プログラムは、上記方法を実行するための指示を提供する。別の局面において、プログラムは、図2に示すアルゴリズムを実施するための指示を提供する。本発明はさらに、複数の相異なるターゲット配列についての配列情報を含むデータベースを保存するメモリーを含み、かつデータベース内の配列の少なくとも約60%、約70%、約80%、約90%および約95%にハイブリダイズすることができるプローブ認識配列のセットについてデータベースを探索するためのプログラムの指示を実行するためのアプリケーションプログラムをも含むシステムを提供する。
【0045】
本発明の別の局面は、各々独立に約1〜8または9ヌクレオチドの長さを有する検出エレメントおよび認識セグメントを含むオリゴヌクレオチドプローブに関し、そのオリゴヌクレオチド中の一部またはすべてのヌクレオチドは天然核酸塩基と比較して結合親和性を増大させる効果を有する非天然塩基または塩基アナログによって置換されており、および/またはオリゴヌクレオチドプローブの一部またはすべてのヌクレオチドユニットが結合親和性を増大させる化学的部分で修飾されているか、あるいはアナログにより置換されており、および/または該オリゴヌクレオチドが結合親和性を増大させる化学的部分によって修飾されているか、またはオリゴヌクレオチドアナログであり、それによりプローブが検出に適した条件下でターゲット配列に結合するのに十分な安定性を有し、さらにそのプローブは核酸のターゲット集団中の2以上の相補性ターゲットを検出することができる。
【0046】
本発明の好ましい態様は、マルチプローブライブラリーのサンプルを含む、ターゲット核酸を特徴決定または検出または定量するためのキットである。ある局面において、キットは、それらを使用するためのインシリコプロトコールを含む。別の局面において、キットは、安価なDNAプライマーを得るための示唆に関する情報を含む。これらキットに含まれるプローブは、上記特徴の一部またはすべてを有することができる。好ましい局面において、複数のプローブは、少なくとも1つの安定化ヌクレオチド、例えばLNAヌクレオチド、を含む。別の局面において、複数のプローブは、プローブの結合安定性を増大させる少なくとも1つの化学的部分と結合した、または安定に結びついたヌクレオチドを含む。さらに好ましい局面において、キットは、約100の相異なるプローブを含む。本発明のキットは、ユーザーが何千もの相異なる核酸ターゲットのアッセイを迅速かつ効率的に開発することを可能とする。
【0047】
本発明はさらに、長さが約8または9ヌクレオチドに減少した、1以上のLNAヌクレオチドを含むマルチプローブを提供する。共通に存在する8および9merをターゲットとして選択することにより、様々な相異なる遺伝子を同じプローブで検出することが可能である。各々の8または9merプローブは、7000を上回る相異なるヒトmRNA配列を検出するのに使用できる。そして、必要とされる特異性は、ターゲット遺伝子に対する安価なDNAプライマーの組み合わせ効果によって、および増幅したDNAをターゲットとする8または9merプローブ配列によって、保証される(図1)。
【0048】
好ましい態様において、本発明は、約1000配列未満、好ましくは約500配列未満、またはより好ましくは約200配列未満のLNA置換オクタマーおよびノナマーを含むオリゴヌクレオチドマルチプローブライブラリーに関し、それは例えばターゲット生物またはターゲット器官のmRNA配列の約90%、より好ましくは約95%、より好ましくは約98%より多くを認識できるように選択された約100の相異なる配列より構成される。
【0049】
ポジティブコントロールサンプル:
複数の遺伝子についてリアルタイムPCR検出アッセイを設計する際に生じる問題は、これら新規設計の成功率が100%に達しないことである。検出プローブの機能性を試験するには、理想的には、ターゲット特異的鋳型が各プローブについて必要になることから、機能しないアッセイの問題解決は煩雑になりうる。さらに、ターゲット特異的鋳型は、ターゲットが被験サンプルにおいて得られるか否かがわからない場合、ポジティブコントロールとして有用となりうる。本発明に記載のようにプローブライブラリーキットにおける限られた数の検出プローブ(例えば90)を用いて操作する場合、PCR増幅可能鋳型の形態でその限られた数のプローブ(例えば90)に対するすべての可能性あるターゲットを含むポジティブコントロールターゲットを提供することも可能である。この特徴は、ユーザーが各プローブの機能を評価することを可能とし、かつ再現性のないプローブに基づくアッセイとはなりにくく、したがって本発明のさらなる利益ある特徴を構成する。図13に挙げる、示唆した好ましいプローブ認識配列に関し、我々はすべてのプローブについてコントロール配列のコンカテマーを設計し、それには最初の40プローブにおける各プローブに対するPCR増幅可能ターゲットが含まれた。
【0050】
プローブ配列の選択
本発明の重要な局面は、ターゲット選択基準を考慮した、可能な限り少ないプローブで可能な限り多くのターゲットを対象とするのに最適なプローブターゲット配列の選択である。これは、ランダムな分布から期待されるよりも高い出現率で存在するであろうターゲット配列を意図的に選択することで達成することができる。
【0051】
本発明はそれゆえ、ある局面において、本発明のマルチプローブライブラリーに有用なオリゴヌクレオチド配列を選択する方法に関し、本方法には以下が含まれる:
a)事前に決定したヌクレオチド数、N (典型的には6、7、8、9、10、11、および12から選択される整数、好ましくは8または9)、のすべての可能性あるオリゴヌクレオチドの第1のリストを提供する、ここで該オリゴヌクレオチドの融解温度、Tm、は少なくとも50℃ (好ましくは少なくとも60℃、例えば少なくとも62℃)である、
b)ターゲット核酸配列の第2のリストを提供する (例えば、本明細書で論じられるターゲット核酸集団のリスト)、
c)該第1のリストの各メンバーについて、該各メンバーに相補的な配列を含む該第2のリストからのメンバーの数を同定し、保存する、
d)工程cにおける同定において該第2のリストの最大数(工程cで同定)のメンバーとマッチする該第1のリストのメンバーを選択する、
e)工程dにおいて選択されたメンバーを、本発明によるライブラリーにおいて有用な選択されたオリゴヌクレオチドからなる第3のリストに加える、
f)工程dにおいて選択されたメンバーを該第1のリストから抜き取り、修正された第1のリストを提供する、
m)該第3のリストが一緒になると工程bからのターゲット核酸配列のリスト上のメンバーの少なくとも30% (通常この割合はもっと高く、例えば少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、またはそれ以上、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、およびさらに高くて少なくとも99%)に相補的となるメンバーから構成されるまで、工程d〜fを繰り返す。さらなる特徴として、それは、第3のリストに5'グアニジル(G)を有するメンバーを含めない傾向を持つ、および/または、第3のリストに3'グアニジル(G)を有するメンバーを含めない傾向を持つ。これは、本発明のプローブは、5'グアニジル残基を含まない場合にアッセイにおいて非常により効果的であるが、3'グアニジルの不在がアッセイ条件下において有利性をもたらすことも示されているという、驚くべき発見からくるものである。
【0052】
従って、該第3のリストのすべてのオリゴヌクレオチド配列において、グアニジルは5'残基としては避けることが好ましい。
【0053】
第1のリストは、その後のプローブの使用の擬陽性が少なくなるように、自己ハイブリダイゼーションすることができないオリゴヌクレオチドのみを含むことが好ましい。
【0054】
本選択方法は、工程fの後、工程mの前に、数多くの工程を含むことができる:
g)工程dにおいて選択されたメンバーに相補的な配列を含むすべてのメンバーを該第2のリストから抜き取り、修正された第2のリストを得る、
h)該修正された第1のリストの各メンバーについて、該各メンバーに相補的な配列を含む該修正された第2のリストからのメンバーの数を同定し、保存する、
i)工程hにおける同定において該第2のリストの最大数(工程hで同定)のメンバーとマッチする該第1のリストのメンバーを選択する、または工程hで同定された数と工程cで同定された数をかけて得られる数が最大である該第一のリストのメンバーを選択する、
j)工程iで選択されたメンバーを該第3のリストに加える、
k)工程iで選択されたメンバーを該修正された第1のリストから抜き取る、および
l)該修正された第2のリストから工程iで選択されたメンバーの配列、または該配列に相補的な配列を含むすべてのメンバーを抜き取る。
【0055】
上記の5'残基としてのグアニジルの回避は、好ましくは以下によって達成する:i)工程aのリストを5'グアニジル残基を含まないもののみを含むまで減少させる、および/または、ii)工程dおよび/またはiにおいて、5'グアニジル残基を含む配列の選択を避ける、および/またはiii) 5'グアニジル残基を含む配列について工程eおよび/またはjを行わない。
【0056】
好都合には、工程cの後、工程dにおける選択の前に、該第2のリストからのメンバーの最大数の選択した割合(60%またはそれ以上、例えば好ましくは80%)より多くにハイブリダイズする該第1のリストのメンバーを同定し、これによりこのように同定されたメンバーのみを工程dにおける選択に供する。
【0057】
本発明の方法はまた、有用なプローブとしてすでに質的に劣っているメンバーがある場合にそのようなメンバーを確実に第3のリストに入れないという特徴を含み得る。または、より簡単に述べると、ライブラリーの設計後、個々のメンバーをその有用性についてテストし、関連するアッセイにおいて働きが最適に至らないことが分かったプローブを「ネガティブリスト」に含め、ネガティブリストをのちの新しいプローブおよびプローブライブラリーの設計時にチェックする。すでに質的に劣っているオリゴヌクレオチド配列が第3のリストに含まれるのを避けるために、以下を行うことができる:i)工程aのリストを質的に劣っていないもののみを含むまで減少させる、および/またはii)工程dまたはiにおいて質的に劣っていない配列の選択を避ける、および/またはiii)質的に劣っていない配列について工程eまたはjを行わない。
【0058】
本選択方法を実際に実施する際、第1、第2および第3のリストは、コンピューターシステムのメモリー、好ましくはデータベース、に保存される。メモリー (「コンピューター読み取り可能媒体」とも呼ばれる)は、揮発性または非揮発性のいずれであってもよく、すなわち、コンピューターシステムにおいて常套的に使用されるいずれのメモリー装置であってもよい: ランダムアクセスメモリー (RAM)、リードオンリーメモリー (ROM) 、データ保存装置、例えばハードディスク、CD-ROM、DVD-ROM、および他の公知のメモリー装置。
【0059】
本発明はまた、本選択方法を実施するための指示を提供する、コンピューター読み取り可能媒体(前述)に記録されたコンピュータープログラムプロダクトを提供する。すなわち、前記コンピュータープログラムは、使用可能な状態のコンピューターメモリーにコンパイルおよびロードしてもよく、あるいは、非揮発性保存装置に(所望により圧縮フォーマットにて)ロードしてもよく、その装置から実行することができる。すなわち、本発明はまた、ターゲット配列のデータベースおよび前記コンピュータープログラムを実行するためのアプリケーションプログラムを含むシステムを含む。そのようなコンピュータープログラムのためのソースコードを図17に示す。
【0060】
ランダムに分布した核酸集団において、選択した所定の長さの配列の存在は、以下によって規定される統計学的分布に従うであろう:
N1 = 所定の核酸集団の完全長(例えば、RefSeqの2003年6月30日リリース1における76.002.917 塩基対)、
N2= 前記核酸集団に含まれる断片の数(例えば、RefSeqの2003年6月30日リリース1における38.556遺伝子)、
N3 = 認識配列の長さ (例えば、9塩基対)、
N4 = 存在頻度、
N4 = (N1-((N3-1) x 2 x N2))/(4N3)、
例えば、
(76.002.917 - 8 x 2 x 38,556)/49 = 9mer配列が約287存在、または
(76.002.917 - 7 x 2 x 38,556)/49 = 8mer配列が約1,151存在。
【0061】
したがって、上記の例に示すように、前述の38,556のmRNA配列のランダムな集団において、ランダムな8merおよび9mer配列は、平均して、それぞれ1,151および287倍存在する。
【0062】
上記例において、38.556遺伝子に由来する76.002.917塩基対は、平均的な転写物の長さ1971 bpと対応し、各々1971-16、すなわち1955の9merターゲット配列を含む。したがって、統計学的な最小値として、各遺伝子を1つのプローブがターゲットとするのに、38.556/1955/287または5671の9merプローブが必要であろう。
【0063】
しかしながら、9mer配列の存在はランダムな分布ではない。事実、小規模な配列のサブセットが驚くほど高い出現率で、ランダムな分布から予想される出現率の最大30倍を上回る程度で存在する。選択したプローブターゲット配列ライブラリーのカバレージを増大させるため、好ましい基準により選択された特定のターゲット集団において、好ましくは最も共通する配列を選択すべきである。前述のように、選択は段階的であるべきであり、それにより最も共通するターゲット配列の選択は、開始時のターゲット集団および各選択工程後の残りの集団において評価される。
【0064】
本発明の好ましい態様において、プローブライブラリーにとってのターゲットは、発現トランスクリプトーム全体である。
【0065】
逆転写酵素反応の成功率が使用したRTプライマーからの距離に伴い減少すること、およびmRNAにおけるポリAトラクトをターゲットとするポリTプライマーを使用することが一般的であることから、前述のターゲットはさらに、各mRNAにおける最も近接する1000の塩基のみを含むように限定することができる。これは結果として、最適なカバレージのため、別の最適プローブターゲット配列のセットを選択することとなりうる。
【0066】
同様に、好ましくはmRNAのみをモニターしてゲノムDNAをモニターしないアッセイを保証するため遺伝子のイントロンを挟む50bpのコード領域配列のみを含むように、またはプローブまたはプライマーが繰り返し結合することを避けるためジ-、トリ-またはテトラ反復配列を含まない領域のみを含むように、またはプライマーまたはプローブがターゲット配列における配列変異によりミスアニーリングしないよう既知のアレル変異を含まない領域のみを含むように、またはPCR増幅の阻害を避けるため非常にGC含量が高い領域のみを含むように、前述のターゲットを限定してもよい。
【0067】
各ターゲット選択に依存して、最適なプローブのセットは様々であってよく、それは各ターゲット選択におけるターゲット配列の出現率に依存する。
【0068】
プローブライブラリーの例
ヒトゲノム:ゲノム配列を500ヌクレオチド長の切片に分割することにより、一連のゲノム配列をゲノム(ヒトであり得る)から抽出することができる。そのようなプローブライブラリーは、調節配列、イントロン、繰り返し配列および他のゲノム配列を含むあらゆるゲノム配列の測定に用いることができる。以下のライブラリーは本明細書に開示の方法により同定した(図17参照)。
【表1】


【表2】

【0069】
細菌:NCBI: ftp.ncbi.nih.govからダウンロードできる199の細菌および古細菌ゲノム。そのゲノムはヌクレオチドの頻度によって分類できる。全ヌクレオチド(a,c,g,t)が25%の回数存在する場合、ヌクレオチドは同等に存在する。例えば3%超が異なるヌクレオチドは同等頻度状態から逸脱すると見なされる。この基準に従うと、199ゲノムは以下に分割される:91 ATリッチ、44 GCリッチ、28 >3%の歪みがない、21 Aリッチ、15 他のカテゴリー。
【0070】
細菌はかなりATリッチであり得る。このことはヒトプローブライブラリーのプローブが良い被覆率を示さない理由を説明している。ATリッチな生物についてプローブを設計するのは、融点が低いので難題である。プローブは融点を達成するためにより長くなくてはならないが、すると被覆率が下がる。主にATリッチなゲノムについてのプローブライブラリーを以下の「細菌の表」(同様に図17のプログラムにより同定された)に示す。
【表3】


【表4】

【0071】
検出手段の選択および単一の核酸の同定
本発明の別の部分は、ターゲット核酸の検出のための手段の同定に関し、本方法は以下を含む:
A)該ターゲット核酸の核酸配列を1つに特定するデータをコンピューターシステムにインプットする、ここで該コンピューターシステムは、少なくとも1つの本発明の核酸プローブライブラリーの構成の情報を保有するデータベースを含み、かつ該コンピューターシステムはさらに該少なくとも1つのライブラリーの各プローブに対するターゲット核酸配列のデータベースを含み、および/またはさらに核酸配列データを取得し比較するための手段を含む、
B)該コンピューターシステムにおいて、該少なくとも1つのライブラリーからプローブを同定する、ここでプローブの配列は該ターゲット核酸配列に存在する、または該ターゲット核酸配列に相補的な配列である、
C)該コンピューターシステムにおいて、該ターゲット核酸配列を増幅するプライマーを同定する、および
D)検出のための具体的手段の同定として、工程Bにおいて同定されたプローブおよび工程Cにおいて同定されたプライマーの配列を明らかにするアウトプットを提供する。
【0072】
上記で概説した方法は、迅速かつ特異的に特定の核酸を同定することが望まれる事象において、幾つかの利点を有する。研究者がすでに好適な本発明のマルチプローブライブラリーを入手している場合、本方法により、ライブラリー中のどのプローブを次のアッセイに使用すべきか、およびどのプライマーを合成すべきか、に関する情報が数秒で得られる。プローブの合成は通常非常に時間がかかり煩雑なのに対して、プライマーペアの合成は一晩で達成できるため、時間ファクターは重要である。
【0073】
本方法の使用を容易にするため、(例えば、プローブライブラリーを組み立てる方法をコンピューターシステムに実質的に伝えるプロダクトコードによって)プローブライブラリーを同定することができる。工程Aは、したがって、検出のための具体的手段に使用するためのメンバーが選択されることが望まれる該少なくとも1つの核酸ライブラリーを同定するデータをコンピューターシステムにインプットすることを含む。
【0074】
好ましいインプットインターフェースはインターネットに基づくウェブインターフェースであり、なぜなら本発明のプローブライブラリーを入手したユーザーがアクセスできるように、本方法がウェブサーバー上に都合よく保存されるからである。しかしながら、本方法はインストール可能なコンピューターアプリケーションの一部としてもまた有用であり、単一のコンピューター上またはローカルエリアネットワーク上にインストールすることができるであろう。
【0075】
この方法の好ましい態様において、工程Cで同定されたプライマーは、PCR反応においてゲノム核酸を増幅する可能性を最小限にするよう選択される。これは無論、サンプルがゲノム物質を含むと思われる場合のみ該当する。ゲノム核酸の増幅の可能性を最小限にする簡単な方法の1つは、プライマーの少なくとも1つに、ゲノムDNAにおいてイントロンに割り込まれているヌクレオチド配列を含ませることである。この方法では、プライマーはイントロンがスプライスアウトされた転写物の増幅のみを開始させる。
【0076】
あるいは、ゲノムDNAまたは他の転写物を増幅できないプライマーの組を選択することができる。そのようなプライマーは、そのプライマーについて、ゲノムおよびトランスクリプトームに対しコンピューター検索を行って、すなわちインシリコPCRを行って同定することができる。そのような検索により、左と右のプライマーが典型的なアンプリコン長の距離内(600ヌクレオチドまたは数千ヌクレオチドであり得る)でDNAにマッチするプライマーの組を発見し、選別しなければならない。その左と右のプライマーは以下の4通りでマッチさせることができる:1:左のプライマーと、右のプライマーのリバース相補体。2:左のプライマーと、左のプライマーのリバース相補体。3:右のプライマーと、左のプライマーのリバース相補体。4:右のプライマーと、右のプライマーのリバース相補体。
【0077】
本方法のさらなる最適化は、ターゲット核酸配列に対して行われるPCRから得られるアンプリコンの長さを最小とするよう工程Cにおいてプライマーを選択することであり、さらに、次のPCRを行うためGC含量が最適となるようプライマーを選択することもまた好ましい。
【0078】
プローブ選択方法のように、検出手段の選択方法は、コンピューター読み取り可能媒体に記録された本方法を実施するための指示を提供するコンピュータープログラムプロダクトとして、エンドユーザーに提供することができる。すなわち、本発明はまた、本発明の核酸プローブのデータベースおよびこのコンピュータープログラムを実行するためのアプリケーションプログラムを含むシステムを提供する。
【0079】
本方法およびコンピュータープログラムおよびシステムにより、サンプル中のターゲット核酸の存在を定量的または定性的に調べることが可能となり、これには以下が含まれる:
i)本発明の検出手段選択方法によりターゲット核酸の検出のための具体的手段を同定する、ここで該検出のための具体的手段には、オリゴヌクレオチドプローブおよびプライマーのセットが含まれる、
ii)工程iで同定されたプライマーおよびオリゴヌクレオチドプローブを得る、
iii)工程ii)からのプライマーおよびオリゴヌクレオチドプローブの存在下、サンプルを分子増幅手法に供する、および
iv)工程iii)の結果に基づきターゲット核酸の存在を調べる。
【0080】
好都合には、工程ii)で得られるプライマーは合成により得られ、またオリゴヌクレオチドプローブは本発明のライブラリーから得られることが好ましい。
【0081】
分子増幅方法は、典型的にはPCRまたはNASBA手法であるが、核酸の特異的増幅(および、場合により、検出)のためのインビトロ方法はいずれも有用である。好ましいPCR手法は、qPCR (リアルタイム逆転写PCRまたはキネティクスRT-PCRとしても知られる)である。
【0082】
本発明の他の局面を以下に述べる。
【0083】
[詳細な説明]
本発明は、多くの相異なるターゲット核酸分子を検出、分類、または特徴決定、および/または定量するために選択され設計された、短いオリゴヌクレオチドプローブまたはマルチプローブに関する。これらのマルチプローブは、ターゲット核酸分子の配列の一部である認識配列に対するプローブの結合親和性を増大するための、少なくとも1つの非天然修飾(例えばLNAヌクレオチド) を含む。ターゲット核酸分子は、認識配列以外は互いに異なる。
【0084】
ある局面において、マルチプローブは、ターゲット核酸配列の配列の一部である認識配列に対するプローブの結合親和性を増大させる化学的部分により修飾された少なくとも1つのヌクレオチドを含む。別の局面において、プローブは、少なくとも1つの非天然ヌクレオチドおよび化学的部分により修飾された少なくとも1つのヌクレオチドの両方を含む。さらなる局面において、少なくとも1つの非天然ヌクレオチドは、化学的部分によって修飾されている。本発明はまた、前記プローブを含むキット、ライブラリーその他の構成物を提供する。
【0085】
本発明はさらに、所定のターゲット配列の混合物に適したオリゴヌクレオチドプローブを選択および設計するための方法、 ii)これら能力を有する個々のプローブ、およびiii) 最大数のターゲットヌクレオチドを最小数のプローブ配列により検出、分類、および/または定量することができるように選択および設計されたそのようなプローブのライブラリー、を提供する。本発明の各プローブは、したがって、多くの相異なるターゲットに結合することができるが、PCRアッセイにおいて特異的プライマーのセットと組み合わせた場合、特異的なアッセイを創出するのに使用することができる。
【0086】
本発明の好ましいオリゴヌクレオチドは、大部分に安定化ヌクレオチド、例えばLNAヌクレオチド、が含まれる約8〜9ヌクレオチドユニットから構成される。好ましいライブラリーは、特定の核酸プール、例えばmRNA、cDNAまたはゲノムDNA、を特徴決定するため選択および設計された、約100のこれらプローブを含む。このようなライブラリーは、様々なアプリケーションに使用することができ、それは例えば遺伝子発現解析、SNP検出等である。(例えば、図1を参照)。
【0087】
定義
本発明の開示において使用される特定の用語について、以下の定義を提供する:
【0088】
本明細書で用いる場合、特記無き限り、単数形は複数を包含する。例えば、「細胞」なる用語は、それらの混合物を含む複数の細胞を包含する。「核酸分子」なる用語は、複数の核酸分子を包含する。
【0089】
本明細書で用いる場合、「トランスクリプトーム」なる用語は、いずれかの種のゲノムの転写された要素の完全コレクションを意味する。
【0090】
mRNAに加えて、それは構造および調節目的で使用される非コードRNAをも表す。
【0091】
本明細書で用いる場合、「アンプリコン」なる用語は、小さな複製DNA断片を意味する。
【0092】
本明細書で用いる場合、「サンプル」は、1または複数の生物から単離された組織または体液のサンプルを意味し、限定はされないが、例えば皮膚、血漿、血清、髄液、リンパ液、滑液、尿、涙液、血液細胞、器官、腫瘍が含まれ、またインビトロ細胞培養の構成成分のサンプル (限定はされないが、細胞培養培地における細胞の成長の結果得られた培養上清、組換え細胞、および細胞成分を含む)をも意味する。
【0093】
本明細書で用いる場合、「生物」は生命体を意味し、限定はされないが、例えばヒト、マウス、ラット、ショウジョウバエ(例えばキイロショウジョウバエ(D. melanogaster))、線虫(C. elegans)、酵母、シロイヌナズナ(例えばA. thaliana)、ゼブラフィッシュ、霊長類(例えばチンパンジー)、家畜などが含まれる。
【0094】
「SBC核酸塩基」なる用語は、「選択的に結合する相補的(Selective Binding Complementary)」核酸塩基を意味し、すわなち、それらの相補的核酸塩基とは安定な水素結合を形成できるが、他のSBC核酸塩基とは安定な水素結合を形成することができない修飾核酸塩基を意味する。例えば、SBC核酸塩基 A'は、その相補的非修飾核酸塩基 Tと安定な水素結合対を形成できる。同様に、 SBC核酸塩基 T'は、その相補的非修飾核酸塩基 Aと安定な水素結合対を形成できる。しかしながら、SBC核酸塩基 A'およびT'が形成する水素結合対は、塩基対A'-TおよびA-T'と比較して不安定であろう。同様に、CのSBC核酸塩基はC'と表され、その相補的非修飾核酸塩基 Gと安定な水素結合対を形成でき、またGのSBC核酸塩基はG'と表され、その相補的非修飾核酸塩基 Cと安定な水素結合対を形成できるが、C'およびG'が形成する水素結合対は、塩基対C'-GおよびC-G'と比較して不安定であろう。安定な水素結合対は、2以上の水素結合が形成される場合に得られ、例えばA'とT、AとT'、CとG'、およびC'とGのペアである。不安定な水素結合対は、水素結合が1つまたは形成されない場合に得られ、例えばA'とT'およびC'とG'のペアである。
【0095】
特に興味深いSBC核酸塩基は、2,6-ジアミノプリン (A'、Dともいう)、および 2-チオ-ウラシル (U'、2SUともいう)(2-チオ-4-オキソ-ピリミジン)および2-チオ-チミン (T'、2STともいう)(2-チオ-4-オキソ-5-メチル-ピリミジン)である。図4は、A-2STおよびD-Tペアは2以上の水素結合を有するが、D-2STペアは単一の(不安定な)水素結合を形成することを示す。同様にSBC核酸塩基のピロロ-[2,3-d]ピリミジン-2(3H)-オン(C'、PyrroloPyrともいう)およびヒポキサンチン (G'、Iともいう)(6-オキソ-プリン)を図9に示し、ここでPyrroloPyr-GおよびC-Iのペアはそれぞれ2つの水素結合を有するが、PyrroloPyr-Iペアは単一の水素結合を形成する。
【0096】
「SBC LNAオリゴマー」は、核酸塩基が「SBC核酸塩基」である少なくとも1つの「LNAユニット」を含む「LNAオリゴマー」を意味する。「SBC核酸塩基を有するLNAユニット」は、「SBC LNAモノマー」を意味する。一般的に、SBC LNAオリゴマーは、1または複数のSBC LNAモノマーに加えて他の修飾または天然ヌクレオチドまたはヌクレオシドを含むオリゴマーを包含する。「SBC モノマー」は、SBC核酸塩基を有する非LNAモノマーを意味する。「等配列(isosequential)オリゴヌクレオチド」は、対応する修飾オリゴヌクレオチドとWatson-Crickの意味において同じ配列を有するオリゴヌクレオチドを意味し、例えば配列 agTtcATg は agTscD2SUg と同じであり、ここでsはSBC DNAモノマーの2-チオ-tまたは2-チオ-uと同じ、DはSBC LNAモノマーのLNA-Dと同じ、2SUはSBC LNAモノマーのLNA 2SUと同じである。
【0097】
本明細書で用いる場合、「核酸」、「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」なる用語は、プライマー、プローブ、検出すべきオリゴマー断片、オリゴマーコントロースおよび非標識ブロッキングオリゴマーを意味し、ポリデオキシリボヌクレオチド(2-デオキシ-D-リボースを含む)、ポリリボヌクレオチド (D-リボースを含む)、およびプリンまたはピリミジン塩基、または修飾プリンまたはピリミジン塩基のN グリコシドであるいずれかの他のタイプのポリヌクレオチドの総称である。「核酸」、「ポリヌクレオチド」、および「オリゴヌクレオチド」の用語間で長さを区別する意図はなく、これら用語は互換的に使用される。これら用語は、分子の一次構造を意味するにすぎない。したがって、これら用語には、二本鎖および一本鎖DNAが含まれ、また二本鎖および一本鎖RNAも含まれる。オリゴヌクレオチドは、指定のヌクレオチド配列のある領域に対応する、少なくとも約3ヌクレオチド、好ましくは少なくとも約6ヌクレオチド、およびより好ましくは少なくとも約8〜30ヌクレオチドの配列より構成される。「対応する」とは、指定の配列と同一または相補的であることを意味する。
【0098】
オリゴヌクレオチドは、いずれかの既存または天然の配列に物理的に由来する必要はなく、いずれの方法でも形成することができ、それには化学合成、DNA複製、逆転写またはそれらの組み合わせが含まれる。「オリゴヌクレオチド」または「核酸」なる用語は、ゲノムDNAまたはRNA、cDNA、半合成または合成起源のポリヌクレオチドであって、その起源または操作に基づいて: (1)それが天然において結合しているポリヌクレオチドのすべてまたは一部と結合していない; および/または (2) それが天然において連鎖しているポリヌクレオチド以外のポリヌクレオチドと連鎖している; および (3) 天然に見られないものである。
【0099】
モノヌクレオチドは、1つのモノヌクレオチドペントース環の5'リン酸がその隣の3'酸素にホスホジエステル結合を介して一方向に結合するように反応してオリゴヌクレオチドを形成するので、オリゴヌクレオチドの末端は、その5'リン酸がモノヌクレオチドペントース環の3'酸素に結合していない場合「5'末端」と呼ばれ、その3'酸素が次のモノヌクレオチドペントース環の5'リン酸に結合していない場合「3'末端」と呼ばれる。本明細書で用いる場合、核酸配列はまた、より大きなオリゴヌクレオチドの内部であっても、5'および3'末端を有すると言われうる。
【0100】
2つの相異なる重複のないオリゴヌクレオチドが同じ直鎖相補的核酸配列の相異なる領域にアニールする場合、一方のオリゴヌクレオチドの3'末端は他方の5'末端の方に向く;前者は「上流」オリゴヌクレオチドと呼ばれ、後者は「下流」オリゴヌクレオチドと呼ばれうる。
【0101】
「プライマー」なる用語は2以上のプライマーを意味する場合があり、核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成が触媒される条件下に置かれた場合に相補鎖に沿った合成開始点として機能することができるオリゴヌクレオチドであって、天然に、例えば精製された制限酵素消化物として生じる場合も、合成により製造される場合もある。そのような条件には、4種類の相異なるデオキシリボヌクレオシド三リン酸およびDNAポリメラーゼまたは逆転写酵素のような重合誘導物質が、適したバッファー (「バッファー」には、補助因子である、またはpH、イオン強度等に影響する置換分(substituents)が含まれる)中に、適した温度で存在すること、が含まれる。増幅効率を最大とするため、プライマーは、好ましくは一本鎖である。
【0102】
本明細書で用いる場合、「PCR反応」、「PCR増幅」、「PCR」および「リアルタイムPCR」なる用語は、検出されるターゲット核酸を倍化する核酸増幅システムの使用を表すのに使用される互換的用語である。そのようなシステムの例には、ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) システムおよび リガーゼ連鎖反応 (LCR) システムが含まれる。当業者に知られる最近記載された他の方法は、核酸配列に基づく増幅法 (NASBATM, Cangene, Mississauga, Ontario) および Q Beta Replicase システムである。この増幅反応によって形成された産物は、リアルタイムにモニターしてもよく、あるいはそうせずに、すなわちエンドポイント測定として反応後にのみモニターしてもよい。
【0103】
本明細書で用いる核酸配列の相補体は、一方の配列の5'末端が他方の3'末端とペアになるようにその核酸配列と並んだ場合に、「逆平行関係」にあるオリゴヌクレオチドである。本発明の核酸には、通常天然核酸に見られない塩基が含まれていても良く、それには例えばイノシンおよび7-デアザグアニン(deazaguanine)が含まれる。相補性は完全でなくてもよい;安定な二本鎖は、ミスマッチ(mismathched)塩基対またはアンマッチ(unmatched)塩基を含みうる。核酸技術の当業者は、例えばオリゴヌクレオチドの長さ、オリゴヌクレオチド中のシトシンおよびグアニン塩基の含有率、イオン強度、およびミスマッチ塩基対の出現率を含む多くの変動要素を考慮して、実験的に二本鎖の安定性を決定することができる。
【0104】
核酸二本鎖の安定性は、融解温度、すなわち「Tm」により測定される。特定の条件下における特定の核酸二本鎖のTm は、その塩基対の半分が解離した温度である。
【0105】
本明細書で用いる場合、「プローブ」なる用語は、ターゲット領域における配列とプローブ中の少なくとも1つの配列との相補性により、ターゲット核酸中の配列と二本鎖構造を形成する標識オリゴヌクレオチドを意味する。プローブは、ポリメラーゼ連鎖反応を開始させるのに使用される配列に相補的な配列を含まないことが好ましい。通常、プローブの3'末端は、プライマー伸長産物にプローブが組み込まれるのを妨げるため「ブロック」されている。「ブロッキング」は、非相補的塩基を使用することにより、またはビオチンのような化学的部分または単にリン酸基を最後のヌクレオチドの3'ヒドロキシル基に付加することにより(選択した部分に依存して、標識としても機能することで2つの目的を果たしうる)達成することができる。
【0106】
本明細書で用いる「標識」なる用語は、検出可能な (好ましくは定量可能な)シグナルを提供するために使用でき、かつ核酸またはタンパク質に連結できるいずれかの原子または分子を意味する。標識は、蛍光、放射活性、比色分析、X 線回折または吸収、磁性、酵素活性等により検出可能なシグナルを提供することができる。
【0107】
本明細書で規定するように、「5'→3' ヌクレアーゼ活性」または「5'-3' ヌクレアーゼ活性」は、鋳型特異的核酸ポリメラーゼの活性を意味し、それには、従来から一部のDNAポリメラーゼが伴う、オリゴヌクレオチドの5'末端から連続的にヌクレオチドを除く5' →3' エキソヌクレアーゼ活性(すなわち、大腸菌DNAポリメラーゼ Iはこの活性を有するが、クレノー断片は有さない)、または5'末端から2以上のヌクレオチドが切断される5' →3' エンドヌクレアーゼ活性のいずれか、または両方が含まれる。
【0108】
本明細書で用いる場合、「耐熱性核酸ポリメラーゼ」なる用語は、例えば大腸菌由来のヌクレオチドポリメラーゼと比較した場合に比較的熱に安定な、ヌクレオシドの重合を触媒する酵素を意味する。通常この酵素は、ターゲット配列にアニールしたプライマーの3'末端で合成を開始し、鋳型にそって5'方向に進み、5'-3' ヌクレアーゼ活性を有する場合は介在しているアニールしたプローブを加水分解して、または取り除いて標識および非標識両方のプローブ断片またはインタクトなプローブを放出させ、合成の終了に至る。サーマス・アクアチクス (Thermus aquaticus, Tag)より単離された代表的耐熱性酵素は米国特許第4889818号に記載され、それを常套的PCRに使用する方法はSaiki et al., (1988), Science 239:487に記載されている。
【0109】
「核酸塩基」なる用語は、天然核酸塩基のアデニン (A)、グアニン (G)、シトシン (C)、チミン (T) およびウラシル (U) と同時に、非天然核酸塩基、例えばキサンチン、ジアミノプリン、8-オキソ-N6-メチルアデニン、7-デアザキサンチン(deazaxanthine)、7-デアザグアニン(deazaguanine)、N4,N4-エタノシトシン(ethanocytosin)、N6,N6-エタノ-2,6-ジアミノプリン、5-メチルシトシン、5-(C3-C6)-アルキニル-シトシン、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、偽イソシトシン(pseudoisocytosine)、2-ヒドロキシ-5-メチル-4-トリアゾロピリジン(2-hydroxy-5-methyl-4-triazolopyridin)、イソシトシン、イソグアニン、イノシンを包含し、「非天然」核酸塩基は、Benner et al., 米国特許第5432272号およびSusan M. Freier and Karl-Heinz Altmann, Nucleic Acid Research,25: 4429-4443, 1997に記載される。「核酸塩基」なる用語は、したがって、既知のプリンおよびピリミジン複素環のみならず、複素環アナログおよびその互変異性体を包含する。さらに、天然および非天然核酸塩基には、以下に記載のものが含まれる:米国特許第3687808号; chapter 15 by Sanghvi, Antisense Research and Application, Ed. S. T. Crooke and B. Lebleu, CRC Press, 1993; Englisch, et al., Angewandte Chemie, International Edition, 30: 613-722, 1991 (特に622および623頁を参照)、およびConcise Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, J. I. Kroschwitz Ed., John Wiley & Sons, pages 858-859, 1990、Cook, Anti-Cancer DrugDesign 6: 585-607, 1991(これらは全体が引用により本明細書に含まれる)。
【0110】
「ヌクレオシド塩基」または「核酸塩基アナログ」なる用語には、さらに、ヌクレオシド塩基として機能しうる複素環化合物が含まれることが意図され、それには最も古典的な意味ではヌクレオシド塩基ではないがヌクレオシド塩基として機能する、ある種の「ユニバーサル(universal)塩基」が含まれる。ユニバーサル塩基として特に挙げられるのは、3-ニトロピロールおよび5-ニトロインドールである。他の好ましい化合物には、ピレンおよびピリジルオキサゾール誘導体、ピレニル、ピレニルメチルグリセロール誘導体等が含まれる。他の好ましいユニバーサル塩基には、ピロール、ジアゾールまたはトリアゾール誘導体が含まれ、さらに当業界で公知のユニバーサル塩基も含まれる。
【0111】
「ユニバーサル塩基」は、天然塩基(例えば、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、および/またはチミン)とペアになることができ、かつ本明細書に記載のようにTm の差が15、12、10、8、6、4、または2℃またはそれ未満である、天然または望ましくは非天然の化合物または部分を意味する。
【0112】
「オリゴヌクレオチド」、「オリゴマー」または「オリゴ」は、ヌクレオシド間結合を介して接続したモノマー(例えば、複素環塩基のグリコシド)の連続鎖を意味する。オリゴ中の2つの連続モノマー間の結合は、以下より選択される2〜4、望ましくは3の基/原子よりなる:-CH2-、-O-、-S-、NRH-、>C=O、>C=NRH、>C=S、-Si(R'')2-、-SO-、-S(O)2-、-P(O)2-、-PO(BH3)-、-P(O,S)-、-P(S)2-、-PO(R'')-、-PO(OCH3)-、および-PO(NHRH)-(ここで、 RHは水素およびC1-4-アルキルから選択され、R''はC1-6-アルキルおよびフェニルから選択される)。そのような結合の代表例は、-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CO-CH2-、-CH2-CHOH-CH2-、-O-CH2-O-、-O-CH2-CH2-、-O-CH2-CH= (後続モノマーへの結合として使用される場合R5を含む)、-CH2-CH2-O-、-NRH-CH2-CH2-、-CH2-CH2-NRH-、-CH2-NRH-CH2-、-O-CH2-CH2-NRH-、-NRH-CO-O-、-NRH-CO-NRH-、-NRH-CS-NRH-、-NRH-C(=NRH)-NRH-、-NRH-CO-CH2-NRH-、-O-CO-O-、-O-CO-CH2-O-、-O-CH2-CO-O-、CH2-CO-NRH-、-O-CO-NRH-、-NRH-CO-CH2-、-O-CH2-CO-NRH-、-O-CH2-CH2-NRH-、-CH=N-O-、-CH2-NRH-O-、-CH2-O-N= (後続モノマーへの結合として使用される場合R5を含む)、-CH2-O-NRH-、-CO-NRH-CH2-、-CH2-NRH-O-、-CH2-NRH-CO-、-O-NRH-CH2-、-O-NRH-、-O-CH2-S-、-S-CH2-O-、-CH2-CH2-S-、-O-CH2-CH2-S-、-S-CH2-CH= (後続モノマーへの結合として使用される場合R5を含む)、-S-CH2-CH2-、-S-CH2-CH2-O-、-S-CH2-CH2-S-、-CH2-S-CH2-、-CH2-SO-CH2-、-CH2-SO2-CH2-、-O-SO-O-、-O-S(O)2-O-、-O-S(O)2-CH2-、-O-S(O)2-NRH-、-NRH-S(O)2-CH2-、-O-S(O)2-CH2-、-O-P(O)2-O-、-O-P(O,S)-O-、-O-P(S)2-O-、-S-P(O)2-O-、-S-P(O,S)-O-、-S-P(S)2-O-、-O-P(O)2-S-、-O-P(O,S)-S-、-O-P(S)2-S-、-S-P(O)2-S-、-S-P(O,S)-S-、-S-P(S)2-S-、-O-PO(R'')-O-、-O-PO(OCH3)-O-、-O-PO(OCH2CH3)-O-、-O-PO(OCH2CH2S-R)-O-、-O-PO(BH3)-O-、-O-PO(NHRN)-O-、-O-P(O)2-NRH-、-NRH-P(O)2-O-、-O-P(O,NRH)-O-、-CH2-P(O)2-O-、-O-P(O)2-CH2-、および-O-Si(R'')2-O-; これらのうち、-CH2-CO-NRH-、-CH2-NRH-O-、-S-CH2-O-、-O-P(O)2-O-、-O-P(O,S)-O-、-O-P(S)2-O-、-NRH-P(O)2-O-、-O-P(O,NRH)-O-、-O-PO(R'') -O-、-O-PO(CH3)-O-、および-O-PO(NHRN)-O-(RHは水素およびC1-4-アルキルから選択され、R''はC1-6-アルキルおよびフェニルから選択される)が特に好ましい。さらなる代表例は、Mesmaeker et. al., Current Opinion in Structural Biology 1995, 5, 343-355およびSusan M. Freier and Karl-Heinz Altmann, Nucleic Acids Research, 1997, vol 25, pp 4429-4443に示される。ヌクレオシド間結合の左側が、置換基P*として3'位で5員環に結合しており、その右側が先行モノマーの5'位に結合している。
【0113】
「LNAユニット」は、個々のLNAモノマー (例えば、LNAヌクレオシドまたはLNAヌクレオチド)または少なくとも1つのLNAモノマーを含むオリゴマー (例えば、オリゴヌクレオチドまたは核酸)を意味する。WO 99/14226に記載のLNAユニットが、通常本発明のオリゴヌクレオチドに組み込むのに特に望ましい修飾核酸である。さらに、核酸は、3'および/または5'末端のいずれかが当業界で公知のいずれかのタイプの修飾により修飾されていてもよい。例えば、いずれかまたは両方の末端が保護基により覆われている、可動性の結合基に連結している、基体表面への連結を助ける反応基に連結していることなどが許容される。望ましいLNAユニットおよびそれらの合成方法はまた以下に記載される:WO 00/47599、US 6,043,060、US 6,268,490、PCT/JP98/00945、WO 0107455、WO 0100641、WO 9839352、WO 0056746、WO 0056748、WO 0066604、Morita et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 12(1):73-76, 2002; Hakansson et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 11(7):935-938, 2001; Koshkin et al., J. Org. Chem. 66(25):8504-8512, 2001; Kvaerno et al., J. Org. Chem. 66(16):5498-5503, 2001; Hakansson et al., J. Org. Chem. 65(17):5161-5166, 2000; Kvaerno et al., J. Org. Chem. 65(17):5167-5176, 2000; Pfundheller et al., Nucleosides Nucleotides 18(9):2017-2030, 1999;およびKumar et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 8(16):2219-2222, 1998。
【0114】
「オキシ-LNA」と呼ばれる好ましいLNAモノマーは、PCT公開公報WO 03/020739に開示される二環化合物を包含するLNAモノマーであり、ここで以下の式(I)のR4'およびR2'の間の架橋は一緒になって-CH2-O- (メチルオキシLNA)または-CH2-CH2-O- (エチルオキシLNA、ENAとも呼ばれる)である。
【0115】
さらに好ましいLNAモノマーは、WO 99/14226に開示される二環構造を含む「チオ-LNA」または「アミノ-LNA」であり、ここで以下の式(I)のR4'およびR2'の間の架橋中のヘテロ原子は、一緒になって、-CH2-S-、-CH2-CH2-S-、-CH2-NH-または-CH2-CH2-NH-である。
【0116】
「LNA修飾オリゴヌクレオチド」は、以下に例示される修飾を有する、以下の式(I)のLNAモノマーユニットを少なくとも1つ含むオリゴヌクレオチドである:
【化2】

(式中、Xは-O-、-S-、-N(RN)-、-C(R6R6*)-、-O-C(R7R7*)-、-C(R6R6*)-O-、-S-C(R7R7*)-、-C(R6R6*)-S-、-N(RN*)-C(R7R7*)-、-C(R6R6*)-N(RN*)-、および-C(R6R6*)-C(R7R7*)から選択される)。
【0117】
Bは、前述の修飾塩基から選択され、例えば以下である:置換されていてもよい炭素環アリール、例えば置換されていてもよいピレンもしくは置換されていてもよいピレニルメチルグリセロール、または置換されていてもよいヘテロ脂環もしくは置換されていてもよいヘテロ芳香族環、例えば置換されていてもよいピリジルオキサゾール、置換されていてもよいピロール、置換されていてもよいジアゾール、もしくは置換されていてもよいトリアゾール部分; 水素、ヒドロキシ、置換されていてもよいC1-4-アルコキシ、置換されていてもよいC1-4-アルキル、置換されていてもよいC1-4-アシルオキシ、核酸塩基、DNA インターカレーター、光化学的活性基、熱化学的活性基、キレート基、レポーター基およびリガンド。
【0118】
Pは、後続モノマーへのヌクレオシド間結合のためのラジカル位置、または5'末端基、を表し、そのようなヌクレオシド間結合または5' 末端基は所望により置換基R5を含む。置換基R2、R2*、R3、およびR3* の1つはP*基であり、これは先行モノマーへのヌクレオシド間結合、または2'/3'末端基を表す。置換基R1*、R4*、R5、R5*、R6、R6*、R7、R7*、RN、およびP*を表さないR2、R2*、R3、およびR3*は、それぞれ以下: -C(RaRb)-、-C(Ra)=C(Ra)-、-C(Ra)=N-、-C(Ra)-O-、-O-、-Si(Ra)2-、-C(Ra)-S、-S-、-SO2-、-C(Ra)-N(Rb)-、-N(Ra)-、および>C=Q(ここで、Qは、-O-、-S-、および-N(Ra)-より選択され、RaおよびRbは、それぞれ独立に以下より選択される:水素、置換されていてもよいC1-12-アルキル、置換されていてもよいC2-12-アルケニル、置換されていてもよいC2-12-アルキニル、ヒドロキシ、C1-12-アルコキシ、C2-12-アルケニルオキシ、カルボキシ、C1-12-アルコキシカルボニル、C1-12-アルキルカルボニル、ホルミル、アリール、アリールオキシ-カルボニル、アリールオキシ、アリールカルボニル、ヘテロアリール、ヘテロ-アリールオキシ-カルボニル、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールカルボニル、アミノ、モノおよびジ(C1-6-アルキル)アミノ、カルバモイル、モノおよびジ(C1-6-アルキル)-アミノ-カルボニル、アミノ-C1-6-アルキル-アミノカルボニル、モノおよびジ(C1-6-アルキル)アミノ-C1-6-アルキル-アミノカルボニル、C1-6-アルキル-カルボニルアミノ、カルバミド、C1-6-アルカノイルオキシ、スルホノ(sulphono)、C1-6-アルキルスルホニルオキシ、ニトロ、アジド、スルファニル、C1-6-アルキルチオ、ハロゲン、DNAインターカレーター、光化学活性基、熱化学活性基、キレート基、レポーター基およびリガンド(ここで、アリールおよびヘテロアリールは任意で置換されていても良く、2つのジェミナル置換基 RaおよびRb は一緒になって置換されていてもよいメチレン (=CH2)を表しても良い)から選択される約1-8基/原子を含むビラジカルを表し、Ra、Rb、および、存在していてP、P*、またはビラジカルに含まれない置換基R1*、R2、R2*、R3、R3*、R4*、R5、R5*、R6およびR6*、R7およびR7*のいずれかから選択される2つの非ジェミナルまたはジェミナル置換基は一緒になって上記規定と同種のビラジカルから選択される結合ビラジカルを形成してもよい;非ジェミナル置換基のペアはそれにより(i)該非ジェミナル置換基が結合する原子および (ii) いずれかの介在原子と一緒になって単環または二環式構造を形成する。
【0119】
存在していてP、P*またはビラジカルに含まれない置換基 R1*、R2、R2*、R3、R4*、R5、R5*、R6およびR6*、R7およびR7*は、各々独立に以下:水素、置換されていてもよいC1-12-アルキル、置換されていてもよいC2-12-アルケニル、置換されていてもよいC2-12-アルキニル、ヒドロキシ、C1-12-アルコキシ、C2-12-アルケニルオキシ、カルボキシ、C1-12-アルコキシカルボニル、C1-12-アルキルカルボニル、ホルミル、アリール、アリールオキシ-カルボニル、アリールオキシ、アリールカルボニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ-カルボニル、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールカルボニル、アミノ、モノおよびジ(C1-6-アルキル)アミノ、カルバモイル、モノおよびジ(C1-6-アルキル)-アミノ-カルボニル、アミノ-C1-6-アルキル-アミノカルボニル、モノおよびジ(C1-6-アルキル)アミノ-C1-6-アルキル-アミノカルボニル、C1-6-アルキル-カルボニルアミノ、カルバミド、C1-6-アルカノイルオキシ、スルホノ、C1-6-アルキルスルホニルオキシ、ニトロ、アジド、スルファニル、C1-6-アルキルチオ、ハロゲン、DNA インターカレーター、光化学活性基、熱化学活性基、キレート基、レポーター基およびリガンド(ここで、アリールおよびヘテロアリールは任意で置換されていても良い)から選択され、2つのジェミナル置換基は一緒になってオキソ、チオキソ、イミノ、または置換されていてもよいメチレンを意味してもよく、あるいは一緒になって、任意で-O-、-S-、および-(NRN)-(式中、RNは水素およびC1-4-アルキルから選択される)から選択される1以上のヘテロ原子/基が介在する、および/または末尾である1-5炭素原子アルキレン鎖からなるスピロビラジカルを形成してもよく、2つの隣接する (非ジェミナル) 置換基は二重結合を生じるさらなる結合を意味してもよい; RN*は、存在するがビラジカルに含まれない場合、水素およびC1-4-アルキルから選択される; およびその塩基性塩および酸付加塩。
【0120】
5'、3'、および/または 2'末端基の例には以下のものが含まれる:-H、-OH、ハロ (例えば、クロロ、フルオロ、ヨード、またはブロモ)、置換されていてもよいアリール(例えば、フェニルまたはベンジル)、アルキル (例えば、メチルまたはエチル)、アルコキシ (例えば、メトキシ)、アシル(例えば、アセチルまたはベンゾイル)、アロイル、アラルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アラルコキシ(aralkoxy)、ニトロ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アラルコキシカルボニル、アシルアミノ、アロイルアミノ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、ヘテロアリールスルフィニル、アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、アラルキルチオ、ヘテロアラルキルチオ、アミジノ、アミノ、カルバモイル、スルファモイル、アルケン、アルキン、保護基 (例えば、シリル、4,4'-ジメトキシトリチル、モノメトキシトリチル、またはトリチル(トリフェニルメチル))、リンカー(例えば、アミン、エチレングリコール、キノン、例えばアントラキノン、を含むリンカー)、検出可能な標識 (例えば、放射性標識または蛍光標識)、およびビオチン。
【0121】
核酸ユニット、核酸残基、LNAユニット、または同様の用語についての本明細書における言及には、個々のヌクレオシドユニットおよびヌクレオチドユニット、並びにオリゴヌクレオチド内のヌクレオシドユニットおよびヌクレオチドユニットの両方が含まれることは理解される。
【0122】
「修飾塩基」または他の同様の用語は、天然塩基(例えば、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、および/またはチミン)とペアになりうる、および/または非天然核酸塩基またはヌクレオシド塩基とペアになりうる成分(例えば、非天然核酸塩基またはヌクレオシド塩基)を意味する。望ましくは、修飾塩基は、本明細書に記載のように、15、12、10、8、6、4、もしくは2℃、またはそれ未満の Tm の差を提供する。修飾塩基の例は、EP 1 072 679およびWO 97/12896に記載されている。
【0123】
「化学的部分」なる用語は、分子の一部を意味する。「化学的部分により修飾された」は、したがって、通常と異なる化学構造の包含による標準的分子構造の修飾を意味する。前記構造の連結は、共有結合であっても、非共有結合であってもよい。
【0124】
オリゴヌクレオチドプローブにおける「化学的部分の組み込み」なる用語は、したがって、分子構造の連結を意味する。そのような化学的部分には、限定はされないが、共有および/または非共有結合したマイナーグルーブバインダー (MGB)、および/または不斉シアニン色素、DAPI、SYBR Green I、SYBR Green II、SYBR Gold、PicoGreen、チアゾールオレンジ、Hoechst 33342、エチジウムブロマイド、1-O-(1-ピレニルメチル)グリセロールおよびHoechst 33258からなる群より選択されるインターカレート核酸 (INA)が含まれる。他の化学的部分には、修飾核酸塩基、ヌクレオシド塩基またはLNA修飾オリゴヌクレオチドが含まれる。
【0125】
「二重標識プローブ」なる用語は、2つの標識が連結したオリゴヌクレオチドを意味する。ある局面において、1つの標識がプローブ分子の5'末端に連結し、他方の標識がその分子の3'末端に連結する。本発明の具体的局面には、一方の末端に連結する蛍光分子、および、他方の末端に連結し、蛍光共鳴エネルギー転移 (FRET)によりそのフルオロフォアをクエンチすることができる分子が含まれる。5'ヌクレアーゼアッセイプローブおよび一部のモレキュラービーコンが、二重標識プローブの例である。
【0126】
「5'ヌクレアーゼアッセイプローブ」なる用語は、DNAポリメラーゼの5'-3' エキソヌクレアーゼ活性により加水分解されうる二重標識プローブを意味する。5'ヌクレアーゼアッセイプローブは、必ずしも特定のPCRアッセイにおいて用いた条件下でDNAポリメラーゼの5'-3' エキソヌクレアーゼ活性によって加水分解される必要はない。「5'ヌクレアーゼアッセイ」という名称は、観察される加水分解の程度に関係なく使用され、実験者のためになんらかの予想を示すものではない。「5'ヌクレアーゼアッセイプローブ」および「5'ヌクレアーゼアッセイ」なる用語は、単に、関与するプローブの加水分解を避けるように特別の注意が払われていないアッセイを意味する。「5'ヌクレアーゼアッセイプローブ」は、しばしば「TaqManアッセイプローブ」と呼ばれ、また「5'ヌクレアーゼアッセイ」は「TaqManアッセイ」と呼ばれる。これらの名称は、本出願において互換的に使用される。
【0127】
「オリゴヌクレオチドアナログ」なる用語は、特定のターゲットヌクレオチド配列を認識することができる核酸結合分子を意味する。具体的オリゴヌクレオチドアナログは、オリゴヌクレオチドの糖リン酸骨格がタンパク質様骨格で置換されたペプチド核酸 (PNA)である。PNAにおいて、核酸塩基は非荷電ポリアミド骨格に連結し、核酸の形態と類似形(homomorphous)のキメラ偽ペプチド-核酸構造を生じる。
【0128】
「モレキュラービーコン」なる用語は、DNAポリメラーゼの5'-3' エキソヌクレアーゼ活性に影響されないと思われる、一重または二重標識プローブを意味する。DNAポリメラーゼの5'-3' エキソヌクレアーゼ活性による標識または構成ヌクレオチドの分離を避けるよう、プローブ、ポリメラーゼまたはアッセイ条件の特定の改変がなされている。したがって、検出原理は、モレキュラービーコンがそのターゲット配列へ結合した際の標識誘発シグナルにおける検出可能な差に依存する。本発明のある局面において、オリゴヌクレオチドプローブは、選択したアッセイ温度で、オリゴヌクレオチドの5'-および3'-末端の相補的配列を介する分子内ヘアピン構造を形成する。オリゴヌクレオチドは、一方の末端に蛍光分子が連結し、ヘアピン構造にて互いに近接する配置となったときにそのフルオロフォアをクエンチすることができる分子が他方に連結していてもよい。本発明の別の局面において、結合に際して検出されるシグナルの変化が、プローブ配列の末端の相補的構造に基づいてヘアピン構造が形成されるかわりに、一方または両方の標識および形成される二本鎖構造の間の相互作用に起因してもよく、あるいは結合の際のプローブの空間的構造の全体的変化に起因してもよく、あるいは結合後の標識間の相互作用の減少に起因してもよい。モレキュラービーコンのある具体的局面には、DNAポリメラーゼの5'-3' エキソヌクレアーゼ活性による加水分解を阻害するため、数多くのLNA残基が含まれる。
【0129】
本明細書で用いる「マルチプローブ」なる用語は、適度なストリンジェント条件および/またはPCR、5'ヌクレアーゼアッセイおよび/またはモレキュラービーコン解析(または一般的にはいずれかのFRETに基づく方法)に適した条件下で、ターゲット核酸分子中の認識配列に結合するのに十分な程度にその配列に相補的なプローブ配列である認識セグメントを含むプローブを意味する。そのような条件は、当業者に周知である。好ましくは、認識配列は、トランスクリプトームのような評価しようとする複数の配列中に見られる。本発明のマルチプローブは、非天然ヌクレオチド (「安定化ヌクレオチド」)を含んでも良く、同一の配列を含むが安定化修飾を有さないプローブよりも認識配列に対する結合親和性が高くても良い。好ましくは、マルチプローブの少なくとも1つのヌクレオチドは、認識配列に対する認識セグメントの結合親和性を増大させるために、(例えば共有結合による、さもなければ少なくともPCR反応のハイブリダイゼーション工程中は安定に結びつく)化学的部分により修飾されている。
【0130】
本明細書で用いる場合、同一の配列を含むが安定化ヌクレオチドを有さないプローブよりも認識配列に対する「結合親和性」が増大したマルチプローブとは、プローブの認識セグメントの結合定数 (Ka)が二本鎖分子の相補鎖の結合定数よりも高いプローブを意味する。別の好ましい態様において、プローブの認識セグメントの結合定数は、二本鎖分子におけるターゲット配列中の認識配列の相補鎖の解離定数(Kd)より高い。
【0131】
「マルチプローブライブラリー」または「マルチプローブのライブラリー」には、ライブラリー中のプローブの合計により、非常に豊富な配列を含むトランスクリプトームの大部分を認識することができるように複数のマルチプローブが含まれ、それによりトランスクリプトーム中のターゲット核酸の約60%、約70%、約80%、約85%、より好ましくは約90%、およびより一層好ましくは95%がそれらプローブによって検出される。
【0132】
モノマーは、それらがWatson-Crick の塩基対形成ルールに従い水素結合を形成できる核酸塩基を含む場合(例えば、GとC、AとT、またはAとU)、または他の水素結合モチーフを含む場合(例えばジアミノプリンとT、イノシンとC、偽イソシトシンとGなど)に、「相補的」と言われる。
【0133】
「後続モノマー」なる用語は、5'末方向の隣のモノマーに関し、「先行モノマー」は、3'末方向のとなりのモノマーに関する。
【0134】
本明細書で用いる場合、「ターゲット集団」なる用語は、複数の相異なる核酸の配列を意味し、例えばゲノムまたはその他の特定の種由来の核酸、例えばゲノムのトランスクリプトーム、を意味し、ここでトランスクリプトームとは、いずれかの種のゲノムの転写された要素の完全コレクションを意味する。通常、核酸集団中の相異なるターゲット配列の数は少なくとも100であるが、その数がそれより高い場合も多いことは明らかである(ターゲット集団が真核生物トランスクリプトームの場合200、500、1000、および10000を上回る)。
【0135】
本明細書で用いる場合、「ターゲット核酸」なる用語は、単一の特定の配列を有するいずれかの適当な核酸、例えば、生物学的核酸(例えば患者、動物(ヒトまたは非ヒト動物)、植物、細菌、真菌、古細菌、細胞、組織、生物などに由来する)を意味する。例えば、ターゲット核酸が細菌、古細菌、植物、非ヒト動物、細胞、真菌、または非ヒト生物に由来する場合、本発明の方法は、所望によりさらに、ターゲット核酸の検出に基づき細菌、古細菌、植物、非ヒト動物、細胞、真菌、または非ヒト生物を選択することを含む。ある態様において、ターゲット核酸は、患者、例えばヒト患者に由来する。本態様において、本発明は、所望によりさらに、ターゲット核酸の検出に基づき治療を選択すること、疾患を診断すること、または疾患に対する遺伝的素因を診断することを含む。
【0136】
本明細書で用いる場合、「ターゲット配列」なる用語は、ターゲット核酸内の特定の核酸配列を意味する。
【0137】
「ストリンジェント条件」なる用語は、本明細書で用いる場合、約Tm-5℃ (プローブの融解温度 (Tm)より5℃下)からTmより約20℃〜25℃下の範囲内で生じる「ストリンジェンシー」である。当業者が理解するように、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、同一または関連するポリヌクレオチド配列を同定または検出するために変更することができる。ハイブリダイゼーション技術は、一般的に、Nucleic Acid Hybridization, A Practical Approach, Ed. Hames, B. D. and Higgins, S. J., IRL Press, 1985; Gall and Pardue, Proc. Natl. Acad. Sci., USA 63: 378-383, 1969; およびJohn, et al. Nature 223: 582-587, 1969に記載される。
【0138】
マルチプローブ
ここで、図1Bを参照すると、本発明のマルチプローブは、好ましくは複数の相異なるターゲット核酸中に見られる認識配列に結合する短い配列のプローブであり、それによりマルチプローブはターゲット核酸に特異的にハイブリダイズするが、認識配列を含まない核酸分子には検出可能なレベルでは全くハイブリダイズしない。好ましくは、マルチプローブのコレクション、すなわちマルチプローブライブラリーは、非常に豊富な配列を含むトランスクリプトームの大部分を認識することができ、例えばトランスクリプトーム中のターゲット核酸の約60%、約70%、約80%、約85%、より好ましくは約90%、より一層好ましくは95%がこのプローブにより検出される。本発明のマルチプローブは、非天然ヌクレオチド (「安定化ヌクレオチド」)のような「安定化修飾」を含み、同一の配列を含むが安定化配列を有さないプローブより認識配列に対する結合親和性が高い。好ましくは、マルチプローブの少なくとも1つのヌクレオチドは、認識配列に対する認識セグメントの結合親和性を増大させるために、(例えば共有結合による、さもなければ少なくともPCR反応のハイブリダイゼーション工程中は安定にプローブに結びつく)化学的部分に修飾されている。
【0139】
ある局面において、6〜12ヌクレオチドのマルチプローブは、1〜6または最大12の安定化ヌクレオチド、例えばLNAヌクレオチドを含む。LNA強化プローブライブラリーは、短い認識配列 (例えば、8-9 ヌクレオチド)を認識する短いプローブを含む。LNA核酸塩基には、α-LNA 分子 (例えばWO 00/66604を参照)またはキシロ-LNA分子(例えばWO 00/56748を参照)が含まれうる。
【0140】
ある局面において、その認識配列に結合したときのマルチプローブのTmは、約55℃〜約70℃であることが好ましい。
【0141】
別の局面において、マルチプローブは、1以上の修飾核酸塩基を含む。修飾塩基ユニットは、核ユニットに、例えばフラソニル(furasonyl)環の1'位にリンカー、例えば直鎖または分岐のアルキレンまたはアルケニレン基、を介してつながった環状ユニット(例えばピレニルのような炭素環ユニット)を含んでよい。アルキレン基は、好適には1 (すなわち、-CH2-)から約12の炭素原子、より典型的には1から約8の炭素原子、より一層典型的には1から約6の炭素原子を有する。アルケニレン基は、好適には1、2または3の炭素-炭素二重結合を有し、また2から約12の炭素原子、より典型的には2から約8の炭素原子、より一層典型的には2から約6の炭素原子を有する。
【0142】
本発明のマルチプローブは、好ましくは約25ヌクレオチド未満、約15ヌクレオチド未満、約10ヌクレオチド未満、例えば8または9ヌクレオチドであることから、リアルタイムPCRのようなアッセイを行うのに理想的である。1つのマルチプローブは、PCR条件下で、あるターゲット配列内のある認識配列に特異的にハイブリダイズできることが好ましく、またその認識配列が少なくとも約50、少なくとも約100、少なくとも約200、少なくとも約500の相異なるターゲット核酸分子に見られることが好ましい。本発明のマルチプローブのライブラリーは、いずれの2つのマルチプローブもターゲット核酸分子の相異なるセットにハイブリダイズするように、同一でない認識配列を含むマルチプロープを含むであろう。ある局面において、ターゲット核酸分子のそれらセットには、いくつかの同一のターゲット核酸分子が含まれ、すなわち対象とする遺伝子配列を含むターゲット核酸分子には2以上のマルチプローブが結合しうる。そのようなターゲット核酸分子は、x ヌクレオチドを含む認識配列の1以上x未満のヌクレオチドが重複しうる少なくとも2つの相異なる認識配列を含むであろう。
【0143】
ある局面において、マルチプローブライブラリーは複数の相異なるマルチプローブを含み、ここで相異なる各プローブは固体基体上の別々の位置に局在する。本明細書で用いる場合、「局在する」とは、その位置で検出されるハイブリダイゼーションイベントから既知の配列実体のプローブにたどりつけるような位置に限定される、または指定されることを意味する。局在するプローブは、基体と安定に連結していても、していなくてもよい。例えば、プローブは、マイクロタイタープレートのウェルにおいて溶液中に存在し、これによりウェルに局在しうる、または位置を指定されうる。あるいは、またはさらに、プローブは、基体をバッファーで1または複数回洗浄した後にそれが基体上の規定の位置に残るよう、基体と安定に連結しうる。例えば、プローブは、基体と化学的に、直接またはリンカー分子を介して連結してもよく、ここでリンカー分子は基体上の分子に親和性を有する核酸配列、ペプチド、または他のタイプの分子であってよい。
【0144】
あるいは、ターゲット核酸分子は、(例えば基体上に点在する細胞もしくは細胞溶解物または核酸として)基体上に局在してもよい。
【0145】
適当な配列を決定後、マルチLNAプローブは、好ましくは化学的に、当業界で記載される市販の方法および装置を用いて合成される (Tetrahedron 54: 3607-30, 1998)。例えば、固相ホスホラミダイト(phosphoramidite)法を使用して短いLNAプローブを生産することができる (Caruthers, et al., Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 47:411-418, 1982, Adams, et al., J. Am. Chem. Soc. 105: 661 (1983))。
【0146】
マルチプローブライブラリー由来のマルチプローブの、1以上のターゲット配列(好ましくは複数のターゲット配列)へのハイブリダイゼーションの程度の決定は、当業界で周知のいずれの方法によっても行うことができる。検出可能なハイブリダイゼーションが存在しない場合、ハイブリダイゼーションの程度は0である。典型的には、標識シグナル核酸がハイブリダイゼーションを検出するのに使用される。相補的核酸またはシグナル核酸は、ハイブリダイズしたポリヌクレオチドの存在を検出するのに使用されるいくつかの典型的方法のいずれによっても標識可能である。最も一般的な検出方法は、標識抗体、フルオロフォアまたは化学発光物質に結合したリガンドを使用するものである。他の標識には、標識リガンドに対する特異的結合ペアのメンバーとして機能しうる抗体が含まれる。標識の選択は、所望の感度、プローブとの結合容易性、安定性要求、および利用可能な装置に依存する。
【0147】
LNA含有プローブは、典型的には合成中に標識される。ホスホラミダイト合成アプローチの柔軟性が、あらゆる市販のリンカー、フルオロフォアおよびこの標準的化学反応に利用可能な標識用分子を持つLNAの簡易な生産をより容易にする。LNAはまた、酵素反応、例えばキネージング(kinasing)によって標識してもよい。
【0148】
本発明のマルチプローブは、単一の標識または複数の標識を含むことができる。ある局面において、複数の標識には、マルチプローブのターゲット配列へのハイブリダイゼーションが起こったときに互いに相互作用してシグナルを産生する、またはシグナルに変化を生じさせる標識のペアが含まれる。
【0149】
別の局面において、マルチプローブは、フルオロフォア部分およびクエンチャー部分を含み、それらは、ヌクレオチドからの蛍光シグナルの増加によりプローブのハイブリダイズ状態がプローブの非ハイブリダイズ状態と区別できるように位置づけられる。ある局面において、マルチプローブは、認識エレメントに加えて、第1および第2の相補的配列を含み、それらはプローブがターゲット分子中の認識配列にハイブリダイズしていない場合に互いに特異的にハイブリダイズし、そのクエンチャー分子をレポーター分子と十分に近接させ、レポーター分子の蛍光をクエンチする。ターゲット分子のハイブリダイゼーションはクエンチャーをレポーター分子を遠ざけ、その結果ハイブリダイゼーションの量に比例するシグナルが産生される。
【0150】
別の局面において、核酸の鎖の重合は、5'ヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼを用いて検出できる。フルオロフォアおよびクエンチャー分子は、プローブがその認識配列にハイブリダイズしたときにクエンチャーがフルオロフォア分子のシグナルをクエンチするよう十分に近接してプローブに組み込まれる。プローブが5'ヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼにより切断されると、クエンチャーとフルオロフォア分子が分離し、シグナル量が増加して核酸配列を示す。
【0151】
この内容において、「標識」なる用語は、それ自身、またはある検出シリーズの一部として検出可能なレポーター基を意味する。レポーター基の機能的部分の例は、ビオチン、ジゴキシゲニン、蛍光基 (電磁気放射、例えば一定の波長の光またはX線、を吸収可能であり、続いて吸収したエネルギーをより長い波長の放射として再び放つ基;代表例は、DANSYL (5-ジメチルアミノ)-1-ナフタレンスルホニル)、DOXYL (N-オキシル-4,4-ジメチルオキサロリジン)、PROXYL (N-オキシル-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン)、TEMPO (N-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン)、ジニトロフェニル、アクリジン、クマリン、Cy3およびCy5 (Biological Detection Systems, Inc.の商標)、エリスロシン、クマリン酸、ウンベリフェロン、テキサスレッド、ローダミン、テトラメチルローダミン、Rox、7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1-ジアゾール (NBD)、ピレン、フルオレセイン、ユーロピウム、ルテニウム、サマリウムおよび他の希土類金属)、放射性同位体標識、化学発光標識 (化学反応中の光の放射を介して検出可能な標識)、スピン標識 (フリーラジカル (例えば、置換有機窒素酸化物)または電子スピン共鳴分光法を使用して検出可能な生物分子に結合した他の常磁性プローブ (例えばCu2+、Mg2+))である。特に興味深い例は、ビオチン、フルオレセイン、テキサスレッド、ローダミン、ジニトロフェニル、ジゴキシゲニン、ルテニウム、ユーロピウム、Cy5、Cy3等である。
【0152】
好適なターゲット核酸分子のサンプルには、ターゲット核酸を内部にもちうる、プロトプラストを含む広範な原核および真核細胞、または他の生物材料が含まれうる。したがって、本方法は、以下のものに適用可能である:組織培養動物細胞、動物細胞 (例えば、血液、血清、血漿、網赤血球、リンパ球、尿、骨髄組織、脳脊髄液、または血液もしくはリンパより調製されるいずれかの産物) またはいずれかのタイプの組織生検 (例えば、筋生検、肝生検、腎生検、膀胱生検、骨生検、軟骨生検、皮膚生検、膵臓生検、腸管生検、胸腺生検、乳房生検、子宮生検、精巣生検、眼生検、または脳生検、例えば溶解バッファーにホモジナイズされたもの)、保存(archival)組織核酸、植物細胞または浸透圧ショックに感受性のある他の細胞、および細菌、酵母、ウィルス、マイコプラズマ、原生生物、リケッチア、真菌細胞および他の小微生物細胞など。
【0153】
複数のマルチプローブにより認識されるターゲット核酸をアッセイして、ターゲット核酸分子の集団の10%未満、約5%未満、約1%未満、約0.1%未満、および約0.01%未満に存在する配列(例えば、特定の遺伝子配列)を検出することができる。そのような配列を検出するのに使用されるアッセイのタイプは、本発明の非限定的特徴であり、PCR、あるいはターゲット核酸分子の集団の10%未満に見られる認識配列を検出するのに好適な他の当業界で知られる、または開発されるアッセイが含まれうる。
【0154】
ある局面において、豊富でない認識配列を検出するアッセイには、認識配列に特異的にハイブリダイズできるが、集団中の約50、約25、約10、約5、約2のターゲット核酸分子(例えば、そのプローブがホモ接合性遺伝子配列の両コピーを認識する)または1のターゲット核酸(例えば、サンプルに存在するシングルコピーのヘテロ接合性遺伝子配列のアレル)より多くに実質的にハイブリダイズすることができない、少なくとも1つのプライマーをハイブリダイズさせることが含まれる。好ましい局面において、そのようなプライマーのペアが提供され、マルチプローブによって同定される認識配列をはさむ、言い換えれば、約40-5000塩基のアンプリコンを形成できるように、好ましくは50-500またはより好ましくは60-100塩基のアンプリコンが形成されるように、認識配列の増幅可能な距離内にある。プライマーの1以上は、標識されていてもよい。
【0155】
各種増幅反応は当業者に周知であり、それには、限定はされないが、PCR、RT-PCR、LCR、インビトロ転写、ローリングサークルPCR、OLAなどが含まれる。特定のターゲット分子のセットを検出するため、多数のプライマーをマルチプルPCRにおいて使用することもできる。
【0156】
本発明はさらに、 本発明の方法およびキットに使用するためのマルチプローブ配列を設計するための方法を提供する。本方法の工程を概説するフローチャートを図2に示す。
【0157】
ある局面において、複数のn-merのnヌクレオチドはインシリコにて形成され、それにはすべての可能性あるn-merが含まれる。Tm≧60℃を有するn-merのサブセットが選択される。別の局面において、自己ハイブリダイズしないプローブのサブセットが選択され、候補n-merのリストまたはデータベースが提供される。各n-merの配列は、複数のターゲット配列を含むデータベースをクエリーするために使用される。好ましくは、ターゲット配列データベースは、発現配列、例えばヒトmRNA配列を含む。
【0158】
データベースのクエリーに使用される候補n-merのリストから、最大数のターゲット配列を同定するn-mer(例えば、ターゲットデータベース中の最大数のターゲット配列の配列の一部に相補的な認識セグメントを含むn-mer)が選択され、n-mer/ターゲット配列マトリクスが形成される。最大数のターゲット配列に結合するn-merの配列は最適プローブ配列のデータベースに保存され、これらは候補n-merのデータベースから抜き取られる。最適プローブの第1のセットにより同定されたターゲット配列は、ターゲット配列データベースから除かれる。このプロセスを、約60%、約80%、約90%および約95%を上回るターゲット配列をカバーするn-merを含むマルチプローブのセットが同定されるまで、残りの候補プローブについて繰り返す。各工程で同定された最適配列は、仮想マルチプローブ配列のデータベースを形成するのに使用できる。その後、マルチプローブデータベース由来の配列を含むマルチプローブを合成することができる。
【0159】
別の局面において、本方法はさらに、増加中の最適プローブ候補のセットに含めるため、残りのターゲット配列に対するクエリーおよびオリジナルのターゲット配列のセットに対するクエリーの両方によって所定の候補プローブ認識配列の汎用性を評価することを含む。好ましい局面において、残りのターゲット配列およびオリジナルのターゲット配列の両方に頻繁に見られるプローブ認識配列のみが、増加中の最適プローブ認識配列のセットに加えられる。最も好ましい局面において、これは、これらのクエリーからのスコアの積を計算し、最高の積を有するがなお現在のターゲットに対するクエリーにおいて20%のベストスコアを有するプローブ認識配列に含まれるプローブ認識配列を選択することにより達成される。
【0160】
本発明はまた、上記方法(例えば図2を参照)を容易にするコンピュータープログラムプロダクトを提供する。ある局面において、コンピュータープログラムプロダクトはプログラムの指示を含み、これはコンピューターにより、またはネットワークに接続可能なメモリーと通信するユーザーの装置により、実行することができる。
【0161】
本発明はさらに、コンピュータープログラムプロダクトにより提供される指示を実行するためのターゲット配列のデータベースおよびアプリケーションシステムを含むコンピューターメモリーを含むシステムを提供する。
【0162】
マルチプローブを含むキット
本発明の好ましい態様は、マルチプローブのライブラリーのサンプルを含む、ターゲット核酸を特徴決定または検出または定量するためのキットである。ある局面において、キットは、それらを使用するためのインシリコプロトコールを含む。別の局面において、キットは、安価なDNAプライマーを入手するための示唆に関する情報を含む。これらキットに含まれるプローブは、前述の特徴のいずれか、またはすべてを有しうる。好ましい局面において、複数のプローブは、少なくとも1つの安定化核酸塩基、例えばLNA核酸塩基を含む。
【0163】
別の局面において、複数のプローブは、プローブの結合安定性を増大するため、少なくとも1つの化学的部分と結合または安定に結びついたヌクレオチドを含む。さらに好ましい局面において、キットは、トランスクリプトームのような相異なるターゲット配列の集団の少なくとも60%をカバーする多くの相異なるプローブを含む。好ましい局面において、トランスクリプトームはヒトトランスクリプトームである。
【0164】
別の局面において、キットは、1以上の標識で標識された少なくとも1つのプローブを含む。さらに別の局面において、1以上のプローブは、FRETに基づくアッセイにおいて互いに相互作用しうる標識を含み、すなわちプローブは、5'ヌクレアーゼまたはモレキュラービーコンに基づくアッセイを行うために設計できる。
【0165】
本発明のキットは、ユーザーが迅速かつ効率的に多くの相異なる核酸ターゲットに対するアッセイを開発することを可能とする。キットはさらに、増幅反応、例えばPCRを行うための1以上の試薬を含んでも良い。
【実施例】
【0166】
本発明を以下の実施例との関連でさらに説明する。以下は単なる例示であり、本発明の範囲内において細部を改変しうることは理解されるであろう。
【0167】
以下の実施例において、プローブリファレンス番号は、後述の合成例に示すLNAオリゴヌクレオチド配列を指す。
【0168】
実施例1
トランスクリプトームデータのソース
ヒトトランスクリプトームmRNA配列は、ENSEMBLより得た。ENSEMBLは、真核生物ゲノム上の自動アノテーションを形成および維持するソフトウェアシステムを開発するための、EMBL - EBIとSanger Instituteの共同プロジェクトである(例えば、 Butler, Nature 406 (6794): 333, 2000)を参照)。ENSEMBLは、当初、Wellcome Trustから資金供給を受けた。配列データはいずれのタイプの発現配列を含むデータベースからでも得ることができるが、ENSEMBLは最新の配列データおよび後生動物ゲノムについて最も可能性の高いアノテーションを提示するので、特に魅力的であることに注目すべきである。「Homo_sapiens.cdna.fa」のファイルは、2003年5月14日に、ENSEMBL ftp サイト: ftp://ftp.ensembl.org/pub/current_human/data/からダウンロードした。そのファイルは、すべてのENSEMBL 転写物予測 (すなわち、37347の相異なる配列)を含む。各配列から、3'末端の50ヌクレオチド上流からはじまり、3'末端の1050ヌクレオチド上流までの領域を抽出した。選択したプローブ配列のセット(以下の最良の形態参照)を、さらにNCBIからのReference Sequence (RefSeq) コレクション中のヒトmRNA配列に対して評価した。RefSeq スタンダードは、医学的、機能的、および多様性研究の基礎として役立つ;それらは、遺伝子の同定および特徴決定、突然変異解析、発現研究、多型発見、および比較解析のための安定なリファレンスを提供する。RefSeq コレクションは、網羅的で、統一された、重複のない配列のセットを提供することを目的とし、それには主要な研究生物についてのゲノムDNA、転写物 (RNA)およびタンパク質産物が含まれる。ENSEMBLからの37347 配列およびRefSeq コレクションにおける19567 配列の両方で同様のカバレージが見られ、すなわち、このことはデータベースのタイプは本発明の限定的特徴ではないことを示す。
【0169】
実施例2
マルチプローブデータセットの計算 (アルファライブラリー)
ライブラリーにおける最適なプローブのセットを計算するため、UNIX コンピューターで作動する特別なソフトウェアを設計した。そのアルゴリズムは、図2に示すフローチャートで説明する。
【0170】
トランスクリプトームの最適カバレージは、2工程にてわかる。第1の工程では、所定のn-merを含む遺伝子の数が容易にわかるように、n-merおよび遺伝子の疎(sparse)マトリクスが決定される。これは、-p オプションおよびインプットとしてFASTAフォーマットの配列ファイルを用いてgetcoverプログラムを作動させることにより行われる。
【0171】
第2の工程は、第1の工程で決定したマトリクスに基づき、アルゴリズムを用いて最適なカバーを決定することである。この目的のため、プログラム、例えばgetcoverプログラム、は、インプットとしてのマトリクスを用いて作動させる。しかしながら、当業者は、同様の機能を発揮するプログラムおよび同様の工程を実行するためのプログラムを容易に設計することができる。
【0172】
オリゴヌクレオチドよるトランスクリプトームの良好なカバーの獲得
1.すべての4n n-merを形成させ、予想融解温度を計算する。60℃未満の融解温度を有するn-merまたは高い自己ハイブリダイセーションエネルギーを有するn-merをそのセットから取り除く。これにより、許容される物理的性質を有するn-merのリストが生じる。
2.ヒトトランスクリプトームを表す遺伝子配列のリストをENSEMBL データベースから抽出する。
3.メインループの開始: n-merおよび遺伝子リストを考慮して、所定の遺伝子中のすべてのn-merを同定し、その結果をマトリクスに保存することにより、n-mer対遺伝子の疎マトリクスを形成させる。
4.これが第1回目の繰り返しの場合、マトリクスのコピーをおいておき、「total n-mer/gene matrix」と名付ける。
5. 最大数の遺伝子をカバーするn-merを同定し、それがカバーする遺伝子の数を「max_gene」として保存する。
6.マトリクス中の残りの遺伝子のカバレージを決定し、max_geneの少なくとも80%のカバレージを有する遺伝子を「n-mer list with good coverage」に保存する。
7.その現在のカバレージと全体のカバレージとの積が最大のものが最適n-merである。
8.最適n-merを前記n-merリスト(工程1)から削除する。
9.このn-merによりカバーされる遺伝子を前記遺伝子リスト(工程2)から削除する。
10.このn-merを最適n-merリストに加え、n-merが見つからなくなるまで、工程3からこのプロセスを続ける。
【0173】
マルチプローブデータセットを計算するためのプログラムコード (”getcover” version 1.0、Niels Tolstrup (2003)による)を、図17に挙げる。それは、3つの特許モジュールにより構成される: getcover.c、dyp.c、dyp.h。
【0174】
そのプログラムはまた、GNU Lesser General Public Licenceにより保護されるモジュールを含む:
getopt.c、getopt.h、getopt1.c、getopt_init.c
/* 著作権 (C) 1987,88,89,90,91,92,93,94,95,96,98,99,2000,2001
Free Software Foundation, Inc.
これらファイルは、GNU C ライブラリーの一部である。GNU C ライブラリーはフリーソフトウェアである; これは、Free Software Foundationにより公表されるGNU Lesser General Public Licenseの契約のもとに再配布および/または改変することができる */
【0175】
そのソフトウェアは、aapを用いてコンパイルされる。そのプログラムを作成するために使用される「main.aap」ファイルは、図17にあげるようなものである。
【0176】
コンパイルされたプログラムを作動させるため、以下のコマンドを使用する:
getcover -l 8,9 -b bad.lst -p -f < h_sap_cdna_50_1050.fasta > h_sap_cdna_50_1050_l9.stat getcover -l 8,9 -b bad.lst -s < h_sap_cdna_50_1050_l9.stat >
h_sap_cdna_50_1050_l9.cover。
【0177】
このコンピュータープログラムを上記アルゴリズムを実施するための指示とともに使用し、以下のパラメーターセッティングを用いて、ヒトトランスクリプトームを解析した:
L89: プローブの長さ = 8または9ヌクレオチド
i1: 包含画分(inclusion fraction) = 100%
d15: 自己二本鎖に対してターゲット二本鎖が必要とするΔTm = 15℃
t62: ターゲット二本鎖についての最低Tm = 62 ℃
c: 同様に使用する相補的ターゲット配列
m80:前記の積ルールおよび80%ルールにより残りのターゲットについて対処する最も共通するプローブの中から選択された最適プローブ
n: LNAヌクレオチドは、好ましくは認識セグメントの中央部分に含まれた
b: bad.lstは、実験的に悪質であることが分かっており、除外しなければならないオリゴヌクレオチドのリストである;
そして、その結果、マルチプローブターゲット配列のデータベースを同定した。
【0178】
このデータベース中のターゲット配列は、マルチプローブライブラリーの最適なターゲットの例である。これらの最適マルチプローブは以下の表1に挙げられ、これらは5' フルオレセインフルオロフォアおよび 3' Eclipse または他のクエンチャーを含む(以下参照)。
【表5】


【表6】

【0179】
これらの非常に豊富な9merおよび8merの配列は、図2に示す選択基準を満たし、すなわち、
・各プローブターゲットが、ヒトトランスクリプトーム中の配列の少なくとも6%に存在する(すなわち、各々2200を上回るターゲット配列があり、800を上回る配列はその転写物の3'末端に近接する1000nt以内にてターゲットとされる)。
・それらは自己相補的でない(すなわち、プローブ二本鎖を形成しそうにない)。
自己スコアが、ターゲットと形成される二本鎖についての見積Tmより少なくとも10下回る。
・それらのターゲット配列と形成される二本鎖が、60℃以上のTmを有する。
【0180】
それらは、組み合わせると、ヒトトランスクリプトーム中のmRNAの> 98 %をカバーする。
【0181】
表1のマルチプローブの特に好ましいバージョンを、以下の表1aに示す:
【表7】


【表8】

【0182】
mRNA 配列の> 95.0 %が、それらの3'末端付近の1000nt以内 (3'末端から50〜1050の位置)でターゲットとされ、mRNA 配列の> 95.0 %が、ライブラリー中の2以上のプローブにとってのターゲット配列を含む。これら100のマルチプローブについて、650,000を上回るターゲット部位が、37,347の核酸配列を含むヒトトランスクリプトームにおいて同定された。前記トランスクリプトーム中の各転写物について対処するマルチプローブの平均数は17.4であり、中央値は、14の相異なるプローブに対するターゲット部位である。
【0183】
上記の配列はまた、特定の生物に対して最適化されるように選択されたのではないが、他のトランスクリプトームについても優れたプローブの選択である。我々は、したがって、上記プローブはヒトトランスクリプトーム中の転写物を検出/特徴決定/定量するためにのみ設計されたが、上記ライブラリーのカバレージをマウスおよびラットゲノムについて評価した。例えば、表2を参照。
【表9】

【0184】
実施例3
高頻度に存在する9merのオリゴヌクレオチドによる、ヒトトランスクリプトームの予想カバレージ
実験上の試験的データ(図6と同様)は、リアルタイムPCRアッセイのための二重標識プローブの認識配列の長さを、そのプローブがLNAにより強化されたなら、配列に依存して8または9ヌクレオチドまで減らすことが可能であることを示唆した。LNA独特の二本鎖安定化性は、そのような短い二本鎖に適当な安定性(すなわち、Tm >60℃)を保証するために必要である。機能的リアルタイムPCRプローブは、その認識配列に6〜10のLNAヌクレオチドを有するほぼ純粋のLNAであろう。しかしながら、短い認識配列により、同じLNAプローブを使用して多数の相異なる遺伝子を検出および定量することが可能となる。図2に示すアルゴリズムにしたがい、最良の(すなわち、最も共通する)8または9merの認識配列を適切に選択することにより、約37347 mRNAを含むヒトトランスクリプトームのカバレージを得ることが可能となる(図3)。
【0185】
図3は、様々な長さの最適化プローブによりそれぞれの配列の3'末端付近のひと続きの1000ntの長さ以内(すなわち、3'末端から50nt〜1050ntの配列)にて検出可能な予想カバレージを、ヒトトランスクリプトーム中のmRNAの全数に対する割合として示す。プローブは、十分に安定で(Tm >60 ℃)、かつ自己二本鎖を形成する傾向が低くなければならず、これにより多くの9mer、およびより多くの8merのプローブ配列が除かれる。
【0186】
所定の長さのすべてのプローブ配列がプローブとして使用できるならば、我々は明らかに、可能性ある最も短いプロープ配列によってトランスクリプトームの最良のカバレージを得るであろう。実際、限定数(< 55)のプローブしかライブラリーに含まれない場合にはそのようになりうる (図4)。しかしながら、GC含量の低い多くの短いプローブは、熱安定性が不適当なのでライブラリーから除外される。この許容される8merプローブの多様性の限定は、低GC含量の遺伝子を検出するのに効率的でなく、結果として100の相異なる9merプローブから構成されるライブラリーのトランスクリプトームのカバレージの方が、8merの同様のライブラリーよりも良い。しかしながら、最良の選択は、上記で提案した最良の形態のライブラリーのように、様々な長さの配列から構成される混合ライブラリーである。このライブラリーのカバレージは図4には示していない。
【0187】
最も共通して存在する100の9merおよび8merを含む、設計したプローブライブラリー、すなわち「ヒト mRNA プローブライブラリー」は、都合の良いボックスにて、またはマイクロタイタープレートフォーマットにて操作することができる。
【0188】
ヒト mRNA についての100プローブの第1のセットを改変して、他の生物(マウス、ラット、ショウジョウバエ、線虫、酵母、シロイヌナズナ、ゼブラフィッシュ、霊長類、家畜等)由来のトランスクリプトームについて同様のライブラリーキットを形成することができる。ヒト mRNA プローブのほとんどがその新規ライブラリーキットにおいて再度使用できるので、これら新規のプローブライブラリーの構築はそれほど労力を要しない(表2)。
【0189】
実施例4
各遺伝子をターゲットとするライブラリー中のプローブ数
提案のライブラリーにおける限られた数のプローブがヒトトランスクリプトームの大きな画分(>98%)をターゲットとするだけでなく、重複性の程度も大きく、ほとんどの遺伝子(約95%)は2以上のプローブにより検出することができる。上記の最良の形態のライブラリー中の100プローブについて、ヒトトランスクリプトーム (37347 遺伝子)において650,000を上回るターゲット部位が同定されている。これにより、1プローブあたりのターゲット部位の平均数は6782 (すなわち前記トランスクリプトームの18 %)となり、各プローブにつき2527〜12066 配列の範囲である。特定の遺伝子を検出できるプローブの平均数は、17.4であり、中央値は14である。したがって、たった100プローブのライブラリー内で、我々は全ヒトmRNA配列の50%より多くについて少なくとも14プローブを有する。
【0190】
ライブラリー中の所定の数のプローブによってターゲットとされる遺伝子の数を図4に示す。
【0191】
実施例5
実行可能性を示すための9merプローブの設計
遺伝子転写レベルを熱ショックによって誘導することができ、また発現がノックアウトされた変異体が利用可能であることから、酵母 (Saccharomyces cerevisiae)由来のSSA4遺伝子を発現アッセイのため選択した。ヒトトランスクリプトーム内に共通に存在する9mer配列のうち、3つの相異なる9mer配列を選択した(表3)。これら配列は、ヒトトランスクリプトーム内の全mRNA配列の1.8〜6.4 %の3'末端付近に存在した。さらなる選択基準は、中程度レベルの自己相補性および60℃以上のTmであった。3つの配列はすべて、SSA4 ORF末端の1000塩基以内に存在した。5'末端にFITCH フルオロフォアおよび3'末端にEclipse クエンチャー (Epoch Biosciences)を用いてこれら3つの配列を合成し、3つの5'ヌクレアーゼアッセイプローブを構築した。これらプローブは、ORF YER103W (SSA4)内でのそれらの位置にしたがい命名され、ここでは位置1201を位置1とした。3つのプライマーペアのセットは、各々前記3つのプローブ配列のうち1つを含む3つの重複のないアンプリコンが形成されるように設計した。アンプリコンは、それらが包含するプローブ配列にしたがい命名した。
【表10】

【0192】
SSA4 469-およびSSA4 570 配列を検出するため、2つのモレキュラービーコンも設計し、それぞれビーコン-469およびビーコン-570と命名した。SSA4 469 ビーコンの配列はCAAGGAGAAGTTG (配列番号7、10mer認識部位)であり、これが、このオリゴヌクレオチドが5'-CAAとTTG-3'の間でLNA-LNA相互作用により形成されるステムを伴う分子内ビーコン構造を形成することを可能とするはずである。SSA4 570 ビーコンの配列はCAAGGAAAGttG (9mer認識部位)であり、分子内ビーコン構造は5'-CAA とttG-3'の間で形成可能である。いずれの配列も、5'末端にフルオレセインフルオロフォアおよび3'末端にDabcyl クエンチャーを用いて合成された。
【0193】
SSA4 570 配列を検出するため1つのSYBR Green標識プローブも設計し、SYBR-プローブ-570と命名した。このプローブの配列は、CAAGGAAaGであった。このプローブは、5'末端にアミノ-C6リンカーを用い、そこにフルオロフォア SYBR Green 101 (Molecular Probes)を製造元の説明にしたがい連結して合成した。ターゲット配列へのハイブリダイゼーションの際、リンカーに連結したフルオロフォアが形成されたLNA-DNA二本鎖領域にインターカレートし、SYBR Green 101からの蛍光を増大させるはずである。
【表11】

【0194】
実施例6
二重標識オリゴヌクレオチドの合成、脱保護、および精製
二重標識オリゴヌクレオチドEQ13992〜EQ14148 (表4)は、ホスホラミダイト法(Beaucage and Caruthers, Tetrahedron Lett. 22: 1859-1862, 1981)により、2-シアノエチル保護LNAおよびDNAホスホラミダイト(Sinha, et al., Tetrahedron Lett.24: 5843-5846, 1983)を使用して、自動化DNA合成装置 (Expedite 8909 DNA synthesizer, PerSeptive Biosystems, 0.2 μmolスケール)にて調製した。CPG固体支持体は、eclipseクエンチャー (EQ13992-EQ13996)またはdabcyl (EQ13997-EQ14148)のいずれか、および5'-フルオレセインホスホラミダイト (GLEN Research, Sterling, Virginia, USA)により誘導体化した。LNAホスホラミダイトについては、DNAホスホラミダイトと比較して合成サイクルを改変した(カップリング時間250秒)。1H-テトラゾールまたは4,5-ジシアノイミダゾール (Proligo, Hamburg, Germany)を、カップリング工程においてアクチベーターとして使用した。
【0195】
このオリゴヌクレオチドを、32%アンモニア水溶液を用いて脱保護し(室温1時間、その後60℃で2時間)、HPLC (Shimadzu-SpectraChrom series; XterraTM RP18 column, 10?m 7.8 x 150 mm (Waters))により精製した。バッファー: A: 0.05M トリエチルアンモニウムアセタート pH 7.4、B: 50% アセトニトリル(水中)。溶出液: 0-25 分: 10-80% B; 25-30 分: 80% B)。オリゴヌクレオチドの組成および純度は、MALDI-MS (PerSeptive Biosystem, Voyager DE-PRO)解析により確認した(表5を参照)。図5は、EQ13992のMALDI-MS スペクトルであり、[M-H]- = 4121,3 Daであることを示す。これは、本発明の9merプローブの典型的MALDI-MS スペクトルである。
【表12】

【0196】
大文字はLNAモノマーを意味し(A、G、mC、T)、mCはLNAメチルシトシンである。小文字はDNAモノマーを意味する(a、g、c、t)。Fitc = フルオレセイン; EQL = Eclipse クエンチャー; Dabcyl = Dabcyl クエンチャー。MW = 分子量。
【0197】
実施例7
9merプローブによる検出のためのSSA4のcDNAスタンダードの製造
構築した9merプローブの機能性を、様々なSSA4 PCRアンプリコンを検出するプローブの能力が問題とされるPCRアッセイにおいて分析した。PCR反応のための鋳型は、発現ベクター pTRIamp18 (Ambion)中のSSA4遺伝子の下流領域のインビトロ転写により産生されたcRNAの逆転写により得られたcDNAであった。SSA4遺伝子の下流領域は、以下のようにクローン化した:
【0198】
PCR増幅
部分的酵母遺伝子の増幅は、酵母ゲノムDNAを鋳型として使用して標準的PCRにより行った。ゲノムDNAは、野生型標準的実験室株のSaccharomyces cerevisiaeから、Nucleon MiY DNA 抽出キット(Amersham Biosciences)を用いて供給元の説明にしたがい調製した。PCR増幅の第1工程において、制限酵素切断部位を含むフォワードプライマーおよびユニバーサルリンカー配列を含むリバースプライマーを使用した。この工程において、アンプリコンの3'末端でストップコドンのとなりに20 bpを付加した。増幅の第2工程において、リバースプライマーをポリ-T20 テイルおよび制限酵素切断部位を含むネステッドプライマーと交換した。このSSA4 アンプリコンは、SSA4 ORFの729 bp+20 bpのユニバーサルリンカー配列、およびポリ-A20 テイルを含む。
使用したPCR プライマーは以下であった:
YER103W-For-SacI: acgtgagctcattgaaactgcaggtggtattatga (配列番号23)
YER103W-Rev-Uni: gatccccgggaattgccatgctaatcaacctcttcaaccgttgg (配列番号24)
Uni-polyT-BamHI: acgtggatccttttttttttttttttttttgatccccgggaattgccatg (配列番号25)。
【0199】
プラスミドDNAコンストラクト
前記PCRアンプリコンを制限酵素EcoRI + BamHIで切断した。そのDNA 断片を、Quick Ligation Kit (New England Biolabs)を用いて供給元の説明に従いpTRIamp18 ベクター (Ambion)にライゲートし、そして標準的方法にて大腸菌 DH-5を形質転換した。
【0200】
DNAシークエンス
PCRアンプリコンのクローニングを確認するため、M13 フォワードおよびM13 リバースプライマーを用いてプラスミドDNAをシークエンスし、ABI 377で解析した。
【0201】
インビトロ転写
Megascript T7 kit (Ambion)を用いて供給元の説明にしたがいインビトロ転写を行い、SSA4 cRNAを得た。
【0202】
逆転写
逆転写は、20 UのSuperase-In (RNAse阻害剤- Ambion) を添加したことを除き、1μgのcRNAおよび0.2 Uの逆転写酵素 Superscript II RT (Invitrogen)を用いて供給元の説明にしたがい行った。生成したcDNAは、QiaQuick PCR purification column (Qiagen)を用いて、供給元の説明にしたがい、供給されたEB-バッファーを溶出に使用して精製した。溶出したcDNAのDNA濃度を測定し、SSA4 cDNA コピーの濃度が2 x 107 コピー/μLとなるまで希釈した。
【0203】
実施例8
二重標識プローブアッセイのプロトコール
二重標識プローブPCRのための試薬を以下のスキームにしたがい混合した(表6):
【表13】

【0204】
この実験では、2 x 107 コピーのSSA4 cDNA を鋳型として添加した。アッセイは、DNA Engine Opticon(登録商標) (MJ Research)において、以下のPCRサイクルプロトコールを用いて行った:
【表14】

【0205】
表6に示すPCR反応の構成は、表7に挙げるPCRサイクルプロトコールとともに、標準的5'ヌクレアーゼアッセイまたは標準的ビーコンアッセイ条件と見なされるであろう。
【0206】
実施例9
9mer 5'ヌクレアーゼアッセイプローブの特異性
5'ヌクレアーゼアッセイプローブの特異性を、各々相異なるSSA4 PCRアンプリコンを形成する3つの相異なるPCR反応に各プローブを加えたアッセイにおいて示した。図6に示すように、各プローブは、検出されるように設計されたアンプリコンと共にのみ蛍光シグナルを産生した(図10、11、および12も参照)。重要なことに、相異なるプローブが非常によく似たサイクル閾値Ct値(23.2〜23.7)を有し、このことは、これらアッセイおよびプローブがほぼ同等の効率を有することを示す。さらに、これらアッセイが実際の発現アッセイに使用された場合、同様の発現レベルを検出するはずであることが示される。相異なるプローブの性能が様々であることは望ましくないので、これは重要な知見である。
【0207】
実施例10
9および10mer モレキュラービーコンプローブの特異性
新たに形成されたPCRアンプリコンをリアルタイムで検出する能力は、モレキュラービーコンの設計コンセプトについても示された。10merの認識配列を有する469アンプリコンに対して設計されたモレキュラービーコンは、SSA4 cDNA鋳型と469アンプリコンを形成するためのプライマーとがPCRに存在する場合に、はっきりとしたシグナルを産生した(図7A)。観察されたCt値は24.0で、5'ヌクレアーゼアッセイプローブにより得られた値と非常に似ており、このことは再び、相異なるプローブの感度が非常によく似ていることを示唆する。SSA4 鋳型を添加しなかった場合は、シグナルは産生されなかった。同様の結果が、9merの認識配列を有する570アンプリコンに対して設計されたモレキュラービーコンによっても得られた(図7B)。
【0208】
実施例11
9merSYBR-プローブの特異性
新たに形成されたPCRアンプリコンを検出する能力は、SYBR-プローブの設計コンセプトについても示された。SSA4 cDNAの570アンプリコンに対して設計された9merSYBR-プローブは、SSA4 cDNA鋳型と570アンプリコンを形成するためのプライマーとがPCRに存在する場合に、はっきりとしたシグナルを産生した(図8)。SSA4 鋳型を添加しなかった場合には、シグナルは産生されなかった。
【0209】
実施例12
転写物コピー数の定量
様々なレベルの遺伝子転写物を検出する能力は、実際の発現アッセイを行うプローブにとって必須の要件である。この要件を満たすことは、あるアッセイにおける3つの5'ヌクレアーゼアッセイプローブにより示され、ここでは様々なレベルの発現ベクター由来SSA4 cDNAが、5'ヌクレアーゼアッセイプローブの1つと共に各種PCR反応に添加された(図9)。組成およびサイクル条件は、標準的5'ヌクレアーゼアッセイ条件にしたがった。
【0210】
サイクリング開始前のPCRにおけるcDNAコピー数は、サイクル閾値 Ct、すなわち、シグナルが最初に検出されたサイクル数、に反映される。シグナルは、ここでは、蛍光がPCR3〜10サイクルにおいて検出される蛍光の標準偏差の5倍を上回る場合のみ、シグナルと規定した。結果は、開始時のcDNAコピー数の対数とCt値とは全体的に良い相関があることを示す (図9)。この相関は、直線として現れ、傾斜はプローブに依存して-3.456と-3.499の間であり、相関係数は0.9981〜0.9999である。曲線の傾斜はPCRの効率を反映し、100%の効率は-3.322の傾斜に対応して、各PCRサイクルにおけるアンプリコンの二倍化が想定される。現在のPCRの傾斜は、PCR効率が94%〜100%であることを示す。相関係数およびPCR効率は、同じSSA4 cDNAレベルの検出アッセイにおいて17〜26ヌクレオチドの長さのDNA 5'ヌクレアーゼアッセイプローブにより得られる値と同じか、それより高かった(結果非提示)。それゆえ、これらの結果は、この3つの9mer 5'ヌクレアーゼアッセイプローブが実際の発現プローブとしての要件を満たすことを示し、発現プロファイリングアッセイにおいて機能するはずであることを示す。
【0211】
実施例13
酵母におけるSSA4 転写レベルの検出
SSA4 転写物の発現レベルを、相異なる培養条件(±熱ショック)で培養した各種酵母株において検出した。ここに記載する実験では、Saccharomyces cerevisiaeの標準的実験室株を野生型酵母として使用した。SSA4ノックアウト変異体は、EUROSCARF (アクセション番号 Y06101)より入手した。ここでは、この株をSSA4変異体と呼ぶ。両酵母株を、YPD培地にて30℃でOD600 0.8 Aまで培養した。熱ショックをかける酵母培養物を40℃に30分間移し、その後遠心により細胞を回収し、ペレットを−80℃で冷凍した。非熱ショック細胞は、その間30℃のまま30 分間培養し、その後上記のように回収した。
【0212】
RNAは、回収した酵母から、FastRNA Kit (Bio 101)およびFastPrep 装置を用いて供給元の説明にしたがい単離した。
【0213】
逆転写は、1μgの全RNA上で反応を開始させる5μgのアンカー型オリゴ(dT)プライマーおよび0.2 Uの逆転写酵素 Superscript II RT (Invitrogen)を用いて、20 U Superase-In (RNAse 阻害剤 - Ambion) を添加したこと以外は供給元の説明にしたがい行った。2時間インキュベートした後、70℃5分にて酵素を不活化した。cDNA反応物を10 mM Tris バッファー pH 8.5にて5倍希釈し、オリゴヌクレオチドおよび酵素をMicroSpin(商標) S-400 HR カラム (Amersham Pharmacia Biotech)で精製することにより除去した。発現アッセイを行う前に、cDNAを20希釈した。発現アッセイは、二重標識-570プローブを用いて、2μLの鋳型を添加したこと以外は標準的5'ヌクレアーゼアッセイ条件にて行った。鋳型は、もとの逆転写反応の100希釈であった。使用した4つの相異なるcDNA鋳型は、熱ショックあり、またはなしの野生型または変異体に由来した。アッセイは、期待通りの結果をもたらし (図10)、熱ショック野生型酵母におけるSSA4転写物のレベル(Ct =26.1)が、上昇させた温度にかけなかった野生型酵母(Ct =30.3)と比較して増加したことを示した。変異体酵母においては、培養条件に関係なく、転写物は検出されなかった。Ct値の3.5の差は、非熱ショック野生型酵母に対する熱ショック野生型酵母の発現レベルにおける17倍の誘導に相当し、この値は文献に報告される約19の値に近い(Causton, et al. 2001)。これら値は、二重標識-570 プローブについて既知量のSSA4転写物を用いた定量的実験において得られた検量線を使用して得た(図9参照)。この実験は、9mer プローブが、公知の結果と良く一致する発現レベルを検出できることを示す。
【0214】
実施例14
個々の9mer プローブによる複数の転写物の検出
これら3つの5'ヌクレアーゼアッセイプローブが、他の遺伝子の発現レベルを同様に検出する能力を示すため、これらプローブ配列のうち1つが存在する3つの相異なる酵母遺伝子を選択した。プライマーは、プローブ配列付近の60-100 塩基対の領域を増幅するよう設計した。3つの選択した酵母遺伝子および対応するプライマーは表に示す。
【表15】

【0215】
非熱ショック野生型酵母由来の全cDNAを発現アッセイの鋳型として使用し、2μLの鋳型を添加した以外は標準的5'ヌクレアーゼアッセイ条件を使用して行った。図11に示すように、3つのプローブはすべて、表8に概説したアッセイ設計にしたがい、遺伝子の発現を検出することができた。発現は、表8に概説したものを除き、他のいずれのプローブおよびプライマーの組み合わせによっても検出されなかった。発現データは、SSA4、POL5、HSP82、およびAPG9についての文献から入手可能である (Holstege, et al. 1998)。非熱ショック酵母について、これらデータは、SSA4 (1細胞につき0.8 転写物コピー)、POL5 (1細胞につき0.8 転写物コピー)およびHSP82 (1細胞につき1.3転写物コピー) について同様の発現レベルを示し、一方でAPG9 転写物レベルは幾分低かった(1細胞につき0.1 転写物コピー)。
【0216】
このデータはここで得られた結果と良く一致し、なぜならこれら遺伝子がHSP82(Ct値25.6を有する)を除きすべてよく似たCt値を有するからである。これは、HSP82 転写物が、これら実験において使用した株において前記文献に示されるより豊富であったことを示唆する。図11aに示すPCRに伴い、二重標識-469プローブについて、アガロースゲル電気泳動を行った。アガロースゲル (図12)は、シグナルが得られなかった反応において本当にPCR産物が形成されており、それゆえこれら反応からの蛍光シグナルの欠如はPCRの失敗によるものではないことを示す。さらに、相異なる遺伝子についての発現アッセイにおいて形成されたアンプリコンの長さが異なることは、相異なる遺伝子についての発現アッセイにおいて産生されたシグナルが本当に問題の遺伝子に特異的であることを示唆する。
【0217】
実施例15
ターゲットの選択
EnsMart ソフトウェアリリース 16.1(http://www.ensembl.org/EnsMart より)を使用して、Homo Sapiens NCBI 33 dbSNP115 Ensembl Genes 由来のすべてのエクソンの各末端から50塩基を抽出し、Human Exon50 ターゲットセットを形成した。Getcoverプログラムを使用して(図17を参照)、すべてのプローブターゲット配列の存在割合を計算し、過剰な自己相補性、過剰なGC含量等により選択基準を通過しなかったプローブターゲット配列を除去した。残りの配列のうち、最も豊富なプローブターゲット配列を選択し(No.1、3200ターゲットをカバー)、次いで、最も豊富なものの0.8倍(3200 x 0.8)を上回る出現率、すなわち2560ターゲットを上回る出現率を有するすべてのプローブターゲットを選択した。残りのサンプルから、各プローブについて新規ヒット数をコンピューターで計算し、1プローブターゲットの既存の選択と比較した新規ヒット数と同じプローブターゲットの全体における出現率の積をコンピューターで計算し、これを使用して最高の積の数を選択することにより次に最も豊富なプローブターゲット配列を選択した。プローブターゲットの長さ(n)、配列 (n-mer)および全ターゲットにおける存在(cover)、および各プローブターゲット選択の新規ヒット数 (Newhit)、 Newhitおよびcoverの積 (newhit x cover) およびすべての蓄積プローブによるターゲット集団おける蓄積ヒット数(sum)を、以下の表に例示する。
【表16】


【表17】


【表18】

【0218】
実施例16
ヒト遺伝子のためのqPCR
プローブライブラリーの使用は、以下のようなリアルタイムPCR設計ソフトウェアの使用と組み合わせる:
・インプット配列を、独自の識別子を介して、またはサブミットされている核酸配列を登録することにより認識できる、
・その核酸をターゲットとできるすべてのプローブを同定できる、
・ターゲット配列の選択基準、例えば3’'末端への近接性またはイントロン-エクソンの境界への近接性、にしたがいプローブをソートできる、
・可能であれば、その核酸配列をターゲットとするプローブを挟むPCRプライマーをPCR設計ルールにしたがい設計できる、
・利用可能なリアルタイムPCRアッセイを上記手順に基づき示唆できる。
【0219】
ヒト遺伝子に対する効率的かつ信頼できるqPCRアッセイの設計は、www.probelibrary.comに見られるソフトウェアにより行う。
【0220】
このProbeFinderソフトウェアは、所定のヒト遺伝子について、最適なqPCR プローブおよびプライマーを迅速かつ信頼可能に設計する。
【0221】
設計は、以下の工程を含む:
1)イントロン位置の決定
イントロンをまたがる(intron spanning)qPCRのものを選択することにより、染色体DNAに由来するノイズを除去する。イントロンは、ヒトゲノムに対するBlastサーチにより決定される。DNA上に見られるが転写物には見られない領域が、イントロンと考えられる;
2)プローブライブラリーの遺伝子へのマッチ
事実上すべてのヒト転写物がその90プローブの少なくとも1つによりカバーされ、この高いカバレージは認識配列タグのLNA修飾により可能である;
3)プライマーの設計および最適なqPCRアッセイの選択
プライマーは、「Primer 3」(Whitehead Inst. For Biomedical Research, S. Rozen and H.J. Skaletsky)により設計する。最後に、プローブを、可能性ある最良のqPCRを保証する選択したルールにしたがいランク付けする。このルールは、DNAコンタミネーションに起因する偽シグナルを取り除くようイントロンをまたがるアンプリコン、インシリコPCR検索により見つけられるようなオフターゲットゲノム配列または他の転写物を増幅しないアンプリコン、再現および比較可能なアッセイのための小さいアンプリコンサイズ、およびPCRに最適化されたGC含量に有利に働く。
【0222】
実施例17
Ena-モノマーおよびオリゴマーの調製
ENA-T モノマーを調製し、本発明の二重標識プローブの調製に使用した。
以下の配列において、Xは2'-O,4'-C-エチレン-5-メチルウリジン (ENA-T)を表す。このモノマーの合成は、WO 00/47599に記載されている。5'-O-ジメトキシトリチル-2'-O,4'-C-エチレン-5-メチルウリジン-3'-O-(2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピル)ホスホラミダイトを組み込みむための反応条件は、実施例6に記載のLNAオリゴマーの調製のための反応条件と一致する。
【0223】
以下の3つの二重標識プローブを調製した:
【表19】

【0224】
Xは、ENA-T モノマーである。小文字は、DNAモノマー(a, g, c, t)を意味する。 Fitc = フルオレセイン; EQL = Eclipse クエンチャー; Dabcyl = Dabcyl クエンチャー。MW = 分子量。「X」以外の大文字は、メチルオキシLNAヌクレオチドを意味する。
【0225】
実施例18
二重標識プローブアッセイのためのプロトコール
リアルタイム二重標識プローブPCR用の試薬は以下のスキームに従って混合した(表9):
【表20】

【0226】
表10の以下のプライマー、プローブおよびオリゴ鋳型は、表9の上記PCRミックスに含まれるものである;
【表21】

【0227】
アッセイは、DNA Engine Opticon(登録商標) (MJ Research)において、以下のPCRサイクルプロトコールを用いて行った(表11):
【表22】


リアルタイムPCRの結果を図18に示す。クエンチャーQ4を有する二重標識プローブは、リアルタイムPCRプローブとして完全に機能性であることが示されている。
【0228】
実施例19
リアルタイムPCRにおける二重標識プローブの機能性
二重標識プローブアッセイのプロトコール
リアルタイム二重標識プローブPCR用の試薬を以下のスキームに従って混合した(表12):
【表23】

【0229】
表13の以下のプライマー、プローブおよびオリゴ鋳型を、表12の上記PCRミックスに含まれるものである。
【表24】

【0230】
アッセイは、DNA Engine Opticon(登録商標) (MJ Research)において、以下のPCRサイクルプロトコールを用いて行った:
【表25】

リアルタイムPCRの結果を図19に示す。3'-ニトロインドールを有する二重標識プローブはリアルタイムPCRプローブとして完全に機能性であることが示されている。
【0231】
実施例20
1-(3-(2-シアノエトキシ(ジイソプロピルアミノ)ホスフィンオキシ)プロピルアミノ)-4-(3-(4,4'-ジメトキシ-トリチルオキシ)プロピルアミノ)-アントラキノン (3)の調製
【化3】


1,4-ビス(3-ヒドロキシプロピルアミノ)-アントラキノン (1)
ロイコキニザリン(Leucoquinizarin)(9.9 g; 0.04 mol) を3-アミノ-1-プロパノール (10 mL)およびエタノール(200 mL)と混合し、6時間加熱還流する。混合物を室温まで冷まし、大気条件下で一晩攪拌する。混合物を水(500 mL)に注ぎ入れ、沈殿物をろ過し、水(200 mL)で洗浄し、乾燥させる。固体をエチルアセテート(300 mL)中で煮沸し、室温まで冷まし、ろ過してその固体を回収する。
収量: 8.2 g (56%)
【0232】
1-(3-(4,4'-ジメトキシ-トリチルオキシ)プロピルアミノ)-4-(3-ヒドロキシプロピルアミノ)-アントラキノン (2)
1,4-ビス(3-ヒドロキシプロピルアミノ)-アントラキノン (7.08 g; 0.02 mol)を無水 N,N-ジメチルホルムアミド (150 mL)および無水ピリジン (50 mL)の混合物に溶解させる。ジメトキシトリチルクロライド (3.4 g; 0.01 mol)を加え、混合物を2時間攪拌する。さらにジメトキシトリチルクロライド (3.4 g; 0.01 mol)を加え、混合物を3時間攪拌する。混合物を真空下で濃縮し、残留物をジクロロメタン(400 mL)に再溶解させ、水で洗浄し(2 x 200 ml)乾燥させる(Na2SO4)。得られた溶液をシリカゲルパッド(直径10 cm;高さ10 cm)を通してろ過し、モノ-DMT-アントラキノン生成物がパッドから出始めるまでジクロロメタンで溶出させ、その後溶媒を2%メタノール/ジクロロメタンに変える。得られた純粋な画分を合わせて濃縮すると、青色の泡状物が生じる。
収量: 7.1 g (54%)
1H-NMR(CDCl3): 10.8 (2H, 2xt, J = 5.3 Hz, NH), 8.31 (2H, m, AqH), 7.67 (2H, dt, J = 3.8 および 9.4, AqH), 7.4-7.1 (9H, m, ArH + AqH), 6.76 (4H, m, ArH) 3.86 (2H, q, J = 5.5Hz, CH2OH), 3.71 (6H, s, CH3), 3.54 (4H, m, NCH2), 3.26 (2H, t, J = 5.7 Hz, CH2ODMT), 2.05 (4H, m, CCH2C), 1.74 (1H, t, J = 5 Hz, OH)。
【0233】
1-(3-(2-シアノエトキシ(ジイソプロピルアミノ)ホスフィンオキシ)プロピルアミノ)-4-(3-(4,4'-ジメトキシ-トリチルオキシ)プロピルアミノ)-アントラキノン (3)
1-(3-(4,4'-ジメトキシ-トリチルオキシ)プロピルアミノ)-4-(3-ヒドロキシプロピルアミノ)-アントラキノン (0.66 g; 1.0 mmol)を無水ジクロロメタン(100 mL)に溶解させ、3Åモレキュラーシーブを加える。混合物を3時間攪拌した後、2-シアノエチル-N,N,N',N'-テトライソプロピルホスホールジアミダイト(phosphordiamidite)(335 mg; 1.1 mmol)および4,5-ジシアノイミダゾール (105 mg; 0.9 mmol)を加える。混合物を5時間攪拌した後、飽和NaHCO3 (50 mL)を加え、10分間攪拌する。生じた相を分離し、有機相を飽和NaHCO3 (50 mL)、ブライン(50 mL)で洗浄し、乾燥させる(Na2SO4)。濃縮後、ホスホラミダイトが青色の発泡体として得られ、さらなる精製は行わずにオリゴヌクレオチド合成に用いる。
収量: 705 mg (82 %)
31P-NMR (CDCl3): 150.0
1H-NMR(CDCl3): 10.8 (2H, 2xt, J = 5.3 Hz, NH), 8.32 (2H, m, AqH), 7.67 (2H, m, AqH), 7.5-7.1 (9H, m, ArH + AqH), 6.77 (4H, m, ArH) 3.9-3.75 (4H, m), 3.71 (6H, s, OCH3), 3.64-3.52 (3.54 (6H, m), 3.26 (2H, t, J = 5.8 Hz, CH2ODMT), 2.63 (2H, t, J = 6.4 Hz, CH2CN) 2.05 (4H, m, CCH2C), 1.18 (12H, dd, J = 3.1 Hz, CCH3)。
【0234】
実施例21
1-(4-(2-(2-シアノエトキシ(ジイソプロピルアミノ)ホスフィンオキシ)エチル)フェニルアミノ)-4-(4-(2-(4,4'-ジメトキシ-トリチルオキシ)エチル)フェニルアミノ)-6(7)-メチル-アントラキノン (13)の調製
【化4】


6-メチル-キニザリン(Quinizarin) (10)
4-メチル-フタル酸無水物(10 g, 62 mmol)、p-クロロフェノール (3.6 g, 28 mmol)およびホウ酸(1.6 g)を濃H2SO4 (34 ml)に溶解させ、その混合物をガラス板で蓋をしたフラスコ内で200℃で6時間攪拌した。反応完了後、混合物を放冷した後、水(160 ml)に注ぎ入れ、ろ過により沈殿物を回収した。その固体を沸騰水(320 ml)に懸濁し、5分間沸騰させ、すぐにその固体をろ過により回収した。生成物は乾燥後、暗赤色の固体として得られた(5 g, 19.7 mmol)。MALDI-MS: m/z 255.7 (M+H)。
【0235】
1,4-ビス(4-(2-ヒドロキシエチル)フェニルアミノ)-6-メチル-アントラキノン (11)
6-メチル-キニザリン (10, 2.5g)を酢酸(30ml)に懸濁し、亜鉛ダスト(2g)を加え、その混合物を90℃で1時間攪拌する。その後混合物をセライトのパッドを通してろ過し、室温まで冷まし、水(90ml)を加えると、ろ過によりアントラキノン還元誘導体を回収することができる。次いでその固体をホウ酸 (1.9 g; 0.03 mol)およびエタノール(100 mL)と混合し、1時間還流する。混合物を室温に冷まし、4-アミノフェネチルアルコール(4.1 g; 0.03 mol)を加え、その後混合物を3日間加熱還流する。濃縮された混合物をジクロロメタン (300 mL)に再溶解させ、水で洗浄し(3 x 100 mL)、乾燥させ(Na2SO4)濃縮する。残留物をシリカゲルカラム上でMeOH/ジクロロメタンを用いて精製する。収量: 1.5 g (30%)。
【0236】
1-(4-(2-(4,4'-ジメトキシ-トリチルオキシ)エチル)フェニルアミノ)-4-(4-(2-ヒドロエチル)フェニルアミノ)-6(7)-メチル-アントラキノン (12)
1,4-ビス(4-(2-ヒドロエチル)フェニルアミノ)-6-メチル-アントラキノン (0.95 g; 1.9 mmol)を無水ピリジン (30 mL)に溶解させる。ジメトキシトリチルクロライド (0.34g; 1 mmol)を加え、その混合物を2時間攪拌する。さらにジメトキシトリチルクロライド (0.34g; 1 mmol)を加え、その混合物を4時間攪拌する。混合物を真空下で濃縮し、残留物をジクロロメタン (200 mL)に再溶解させ、水で洗浄し(2 x 100 ml)乾燥させる(Na2SO4)。生成物をカラムクロマトグラフィー(トルエン/EtoAc)により精製する。収量: 0.81 g (54%)。
【0237】
1-(4-(2-(2-シアノエトキシ(ジイソプロピルアミノ)ホスフィンオキシ)エチル)フェニルアミノ)-4-(4-(2-(4,4'-ジメトキシ-トリチルオキシ)エチル)フェニルアミノ)-6(7)-メチル-アントラキノン (13)
1-(4-(2-(4,4'-ジメトキシ-トリチルオキシ)エチル)フェニルアミノ)-4-(4-(2-ヒドロエチル)フェニルアミノ)-6(7)-メチル-アントラキノン (0.50 g; 0.63 mmol)を無水ジクロロメタン (50 mL)に溶解させ、3Åのモレキュラーシーブを加える。混合物を3時間攪拌した後、2-シアノエチル-N,N,N',N'-テトライソプロピルホスホールジアミダイト (215 mg; 0.72 mmol)および4,5-ジシアノイミダゾール (64 mg; 0.55 mmol)を加える。混合物を4時間攪拌した後、飽和NaHCO3 (25 mL)を加え、10分間攪拌する。相を分離し、有機相を飽和NaHCO3 (25 mL)、ブライン(25 mL)で洗浄し、乾燥させる(Na2SO4)。次いで生じたホスホラミダイトを乾燥するまで蒸発させ、さらなる精製は行わずにオリゴヌクレオチド合成に用いる。収量: 0.59 g (94%)。
【0238】
実施例22
プローブライブラリーを用いたSnp検出
一塩基多型 (SNP)は、ヒトおよび他のゲノムにおける最も一般的なタイプの遺伝的変異である。二重標識プローブを用いたSNPの検出は、それぞれ1つのSNPアレルに特異的にハイブリダイズする、異なる標識をした2つのプローブを同時に用いることにより可能である。従って、リアルタイムPCRの結果は、サンプル中の1つまたは他方または両方のアレルの存在を示す。サンプルとして、ゲノムDNAまたはRNAのいずれかを用いることができる。
【0239】
SNPはほとんど無作為に起こり、ほぼすべての配列内容にはSNPの結果として多くの順列が存在することが予想され、最近は200万を超えるSNPが知られている。従って、SNP検出アッセイを行うためにすべての関連プローブを用意しておくには、何百万ものプローブが必要となる。
【0240】
本発明に関しては、LNAの使用により短いプローブが可能となったので、LNA-含有8または9-merプローブを用いることによりこの数を減少させることができる。理論的には、49すなわち262144の可能性ある9-merプローブおよび48すなわち65536の8-merプローブが存在するはずであり、すべての可能性あるSNP配列をカバーするのに必要である。しかしやはりLNA含有オリゴプローブの利点は増加した特異性にあり、これがプローブのSNP位置がプローブ上のいずれの位置にあってもよい所以である。従って、各プローブは9の相異なるSNP位置をカバーし、8-mer配列に対する必要数を65536から65536/9= 7281へ減じている。両方の鎖に検出が現れる可能性もあるので、7281/2=3640プローブのみが必要となる。
【0241】
SNP識別例−リアルタイムPCRにおける二重標識プローブによる1ミスマッチの識別を示す
二重標識プローブアッセイのプロトコール
リアルタイム二重標識プローブPCR用の試薬を以下のスキームに従って混合した(表15):
【表26】

【0242】
以下のプライマー、プローブおよびオリゴ鋳型は上記PCRミックス(表15)に含まれるものである。
【表27】

【0243】
アッセイは、DNA Engine Opticon(登録商標)(MJ Research)において、以下のPCRサイクルプロトコールを用いて行った:
【表28】

【0244】
リアルタイムPCRの結果を図20に示す。図20は、二重標識プローブが、該プローブに対して完全マッチのターゲットと、1ミスマッチを有するターゲットとを識別することができることを示している。
【0245】
文献および注
1.Helen C. Causton, Bing Ren, Sang Seok Koh, Christopher T. Harbison, Elenita Kanin, Ezra G. Jennings, Tong Ihn Lee, Heather L. True, Eric S. Lander, and Richard A. Young (2001). Remodelling of Nucleic Acid Genome Expression in Response to Environmental Changes. Mol. Biol. Cell 12:323-337 (2001).
2.Frank C. P. Holstege, Ezra G. Jennings, John J. Wyrick, Tong Ihn Lee, Christoph J. Hengartner, Michael R. Green, Todd R. Golub, Eric S. Lander, and Richard A. Young (1998). Dissecting the Regulatory Circuitry of a Eukaryotic Genome. Cell 1998 95: 717-728.
3.Simeonov, Anton and Theo T. Nikiforov, Single nucleotide polymorphism genotyping using short, fluorescently labelled locked nucleic acid (LNA) probes and fluorescence polarization detection, Nucleic Acid Research, 2002, Vol.30 No 17 e 91.
【0246】
本明細書および特許請求の範囲に記載およびクレームされるものの変更、改変、その他の実施は、本発明の精神および範囲を逸脱することなく当業者が考えつき、そのような変更、改変、および実施は、本発明の範囲に包含される。
【0247】
以上に開示される文献、特許、特許出願、および国際出願は、全体として、引用により本明細書に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0248】
【図1】図1は、常套的な長いプローブの使用をパネル(A)に、本発明に従い構築されたライブラリーに由来する短いマルチプローブの性質および使用を(B)に示す。短いマルチプローブは認識セグメントを含み、認識セグメントはそれに相補的な認識配列を含む幾つかの相異なるターゲット配列を各プローブ配列を使用して検出および/または定量できるように選択されている。図1Aは、従来技術による方法を示す。図1Bは、本発明のある局面による方法を示す。
【図2】図2は、本発明のある局面によるライブラリーのためのマルチプローブ配列を設計する方法を示すフローチャートである。この方法は、コンピューター読み取り可能媒体に記録されたコンピュータープログラムによって提供される指示を実行することによって使用できる。ある局面において、プログラムの指示は、配列、例えば発現配列、のデータベースを含むシステムによって実行される。
【図3】図3は、本発明のある局面の100プローブライブラリー内の、各遺伝子をターゲットとするプローブの重複性を示すグラフである。Y軸は、ライブラリー中の様々な数のプローブのターゲットとなる、ヒトトランスクリプトーム中の遺伝子の数を示す。全遺伝子の大部分が幾つかのプローブのターゲットとなることは明らかである。遺伝子あたりのプローブの平均数は17.4である。
【図4】図4は、所定の長さの非常に豊富なオリゴヌクレオチドを選択することによる、ヒトトランスクリプトームの理論的カバレージを示す。グラフは、うまく選択した異なる長さの短いマルチプローブの数を増加することによって検出できる約38.000のヒトmRNA配列の割合を示す。グラフは、最適に選択された(すなわち、非常に豊富であり、非自己相補的であり、かつ熱耐性である)異なる長さの短いマルチプローブによる、ヒトトランスクリプトームの理論的カバレージを示す。ヒトトランスクリプトーム配列は、European Bioinformatics Institute (EMBL-EBI)より入手した。各mRNA配列の3'末端に近接する1000ntの領域を解析に使用した(3'末端から50 ntから1050 nt上流)。各配列の増幅はPCRによるので、増幅された二本鎖の両方の鎖がプローブライブラリー中のマルチプローブにとって有効なターゲットと考えられた。LNAで置換されているが不適当なTmを有するプローブ配列、および自己相補的なプローブ配列は除外した。
【図5】図5は、オリゴヌクレオチドプローブ EQ13992のMALDI-MSスペクトルを示し、 [M-H]- = 4121,3 Daである。
【図6】図6は、二重標識プローブアッセイにおいてターゲット配列を検出する9merマルチプローブについての代表的リアルタイムPCR曲線を示す。結果は、同じ遺伝子内の相異なる9mer配列をターゲットとする長さ9 ntのLNA強化二重標識プローブによるリアルタイムPCR反応のものである。 3種類の相異なる二重標識プローブの各々は、469、570、または671 SSA4 アンプリコン(それぞれ長さ81〜95 nt)を形成するPCRにおいて解析した。二重標識プローブ 469、570、および671は、パネルa、b、およびcにそれぞれ示す。各プローブは、検出するよう設計されたアンプリコンのみを検出する。Ct値は、二重標識プローブ469、570、および671について、それぞれ23.7、23.2、および23.4であった。SSA4 cDNAの2 x 107コピーを鋳型として添加した。プローブ配列および個々のプライマーペアの両方が相違するにもかかわらず結果同士が非常に似ていることは、このアッセイがとても強力であることを意味する。
【図7】図7は、9merおよび10merの認識部位によるモレキュラービーコンについてのリアルタイムPCR曲線の例を示す。パネル(A): 469 SSA4 アンプリコンを検出する10merの認識部位を有するモレキュラービーコンプローブ。シグナルは、SSA4 cDNA (2 x 107 コピー) を添加したサンプルにおいてのみ得られた。Ct値は24.0であった。570 SSA4 アンプリコンを検出する9merの認識部位を有するモレキュラービーコンによる同様の実験をパネル(B)に示す。シグナルは、SSA4 cDNA (2 x 107 コピー) を添加した場合のみ得られた。
【図8】図8は、570 SSA4 アンプリコンをターゲットとする9merの認識部位を有するSYBRプローブについてのリアルタイムPCR曲線の例を示す。シグナルは、SSA4 cDNA (2 x 107 コピー) を添加したサンプルにおいてのみ得られ、鋳型を添加しなかった場合にはシグナルは検出されなかった。
【図9】図9は、二重標識プローブアッセイ原理を使用した3種類の相異なる9merマルチプローブについての検量線(calibration curve )を示す。3種類の二重標識プローブによるSSA4 cDNAの様々なコピー数レベルの検出である。閾値サイクル(threshold cycle) nr は、それぞれのPCRで最初にシグナルが検出されたサイクル数と規定する。3つの直線回帰線の傾斜 (α)および相関係数 (R2) は以下の通りである:α= -3.456 & R2 = 0.9999 (二重標識-469)、α= -3.468 & R2 = 0.9981 (二重標識-570)、およびα= -3.499 & R2 = 0.9993 (二重標識-671)。
【図10】図10は、熱ショックタンパク質を野生型酵母株および対応遺伝子が欠失している変異株において熱ショック暴露前および暴露後に定量する9mer二重標識マルチプローブの使用を示す。二重標識-570プローブによる野生型(wt)酵母およびSSA4ノックアウト変異体におけるSSA4 転写物レベルのリアルタイム検出を示す。それぞれの株は、回収まで30℃で培養するか(- HS)、あるいは回収前に30分間40℃にさらした。二重標識-570 プローブを本実験に使用した。転写物は、野生型株でのみ検出され、その+ HS培養物において最も豊富であった。Ct値は、+ HSおよび- HS培養物についてそれぞれ26,1および30.3であった。
【図11】図11は、どのように2以上の遺伝子が同じ9merプローブにより検出可能である一方プローブターゲット配列(すなわちその認識配列に相補的な配列)を有さない核酸分子は検出されないか、の例を示す。(a)において、二重標識-469は、SSA4 (469 アンプリコン)およびPOL5 転写物の両方を、それぞれCt値29.7および30.1で検出する。APG9およびHSP82 転写物からはシグナルは検出されなかった。(b)において、二重標識-570は、SSA4 (570 アンプリコン)およびAPG9 転写物の両方を、それぞれCt値31.3および29.2にて検出する。POL5およびHSP82 転写物からはシグナルは検出されない。(c)において、プローブである二重標識-671は、SSA4 (671 アンプリコン)およびHSP82 転写物の両方を、それぞれCt値29.8および25.6にて検出した。POL5およびAPG9 転写物からはシグナルは検出されなかった。各種PCRにおいて形成されたアンプリコンをレジェンドに示す。図10に示す実験と同じ量のcDNAを使用した。熱ショックをかけていない野生型酵母由来のcDNAのみを使用した。
【図12】図12は、図11の例に示すPCR反応において形成されたアンプリコンの一画分のアガロースゲル電気泳動を示し、そのプローブが認識配列を含むターゲット配列には特異的であるがターゲット配列を含まない核酸分子にはハイブリダイズしないことを示している。レーン1はSSA4-469 アンプリコン (81 bp)を含み、レーン2はPOL5 アンプリコン (94 bp)を含み、レーン3はAPG9 アンプリコン (97 bp)を含み、そしてレーン4はHSP82 アンプリコン (88 bp)を含む。レーンMはサイズインジケーターの50 bp ラダーを含む。4つのケースすべてにおいて産物が形成されたことは明らかである;しかしながら、正しいマルチプローブターゲット配列を含む増幅物(すなわちSSA4-467およびPOL5)のみが二重標識プローブ 467により検出された。この2つの相異なる増幅物が実際に形成され検出されたことは、レーン1および2から検出された断片におけるサイズの相違から明らかである。
【図13】好ましいターゲット配列。
【図14】さらに好ましいターゲット配列。
【図15】ロングマー(longmer) (ポジティブコントロール)。その配列は配列番号32−46に示す。
【図16】プローブの選択およびqPCRのためのプライマーの設計の手順。
【図17】マルチプローブデータセットの計算に使用されるプログラムのためのソースコード。
【図18】フルオレセイン色素とともにQ4クエンチャーを担持するプローブによるリアルタイムPCRの実行結果。
【図19】3'-ニトロインドールを担持する二重標識プローブによるリアルタイムPCRの実行結果。
【図20】増幅したターゲット配列に対して完全にマッチするかまたは1ミスマッチを有するプローブによるリアルタイムPCRの実行結果。コントロールとして、鋳型を加えないPCRを本実験に含めた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライブラリー中の各プローブが認識配列タグおよび検出部分から構成され、各オリゴヌクレオチドプローブの少なくとも1つのモノマーが修飾モノマーアナログであることにより各プローブは対応する非修飾オリゴヌクレオチドと比較して相補的ターゲット配列に対する結合親和性が増大しており、これにより該ライブラリープローブが配列特異的結合およびいずれかの所定のターゲット集団中のターゲット核酸の相当な画分の検出に十分な安定性を有し、かつ相異なる認識配列の数が所定の長さのすべての可能性ある配列タグの10%未満に含まれる、オリゴヌクレオチドプローブライブラリーであって、
各プローブが検出のためのフルオロフォア−クエンチャーペアを含み、該クエンチャーは以下の式(I)を有し:
【化1】


[式中、R1、R4、R5およびR8のうち1または2は独立して、結合、または、置換または非置換アミノ基から選択され、オリゴヌクレオチドプローブの残り部分とのリンカーを構成し、残っているR1からR8基はそれぞれ独立して、水素、または、置換または非置換ヒドロキシ、アミノ、アルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルコキシである]、
および/またはライブラリー中のオリゴヌクレオチドプローブの20%未満が、5'および/または3'位にグアニジル(G)残基を有するライブラリー。
【請求項2】
クエンチャーが以下から選択される、請求項1に記載のライブラリー:
1,4-ビス-(3-ヒドロキシ-プロピルアミノ)-アントラキノン、1-(3-(4,4'-ジメトキシ-トリチルオキシ)プロピルアミノ)-4-(3-ヒドロキシプロピルアミノ)-アントラキノン、1,5-ビス-(3-ヒドロキシ-プロピルアミノ)-アントラキノン、1-(3-ヒドロキシプロピルアミノ)-5-(3-(4,4'-ジメトキシ-トリチルオキシ)プロピルアミノ)-アントラキノン、1,4-ビス-(4-(2-ヒドロキシエチル)フェニルアミノ)-アントラキノン、1-(4-(2-(4,4'-ジメトキシ-トリチルオキシ)エチル)フェニルアミノ)-4-(4-(2-ヒドロエチル)フェニルアミノ)-アントラキノン、1,8-ビス-(3-ヒドロキシ-プロピルアミノ)-アントラキノン、1,4-ビス(3-ヒドロキシプロピルアミノ)-6-メチルアントラキノン、1-(3-(4,4'-ジメトキシ-トリチルオキシ)プロピルアミノ)-4-(3-ヒドロキシプロピルアミノ)-6(7)-メチル-アントラキノン、1,4-ビス(4-(2-ヒドロエチル)フェニルアミノ)-6-メチル-アントラキノン、1,4-ビス(4-メチル-フェニルアミノ)-6-カルボキシ-アントラキノン、1,4-ビス(4-メチル-フェニルアミノ)-6-(N-(6,7-ジヒドロキシ-4-オキソ-ヘプタン-1-イル))カルボキサミド-アントラキノン、1,4-ビス(4-メチル-フェニルアミノ)-6-(N-(7-ジメトキシトリチルオキシ-6-ヒドロキシ-4-オキソ-ヘプタン-1-イル))カルボキサミド-アントラキノン、1,4-ビス(プロピルアミノ)-6-カルボキシ-アントラキノン、1,4-ビス(プロピルアミノ)-6-(N-(6,7-ジヒドロキシ-4-オキソ-ヘプタン-1-イル))カルボキサミド-アントラキノン、1,4-ビス(プロピルアミノ)-6-(N-(7-ジメトキシトリチルオキシ-6-ヒドロキシ-4-オキソ-ヘプタン-1-イル))カルボキサミド-アントラキノン、1,5-ビス(4-(2-ヒドロエチル)フェニルアミノ)-アントラキノン、1-(4-(2-ヒドロエチル)フェニルアミノ)-5-(4-(2-(4,4'-ジメトキシ-トリチルオキシ)エチル)フェニルアミノ)-アントラキノン、1,8-ビス(3-ヒドロキシプロピルアミノ)-アントラキノン、1-(3-ヒドロキシプロピルアミノ)-8-(3-(4,4'-ジメトキシ-トリチルオキシ)プロピルアミノ)-アントラキノン、1,8-ビス(4-(2-ヒドロエチル)フェニルアミノ)-アントラキノンおよび1-(4-(2-ヒドロエチル)フェニルアミノ)-8-(4-(2-(4,4'-ジメトキシ-トリチルオキシ)エチル)フェニルアミノ)-アントラキノン。
【請求項3】
クエンチャーが、l,4-ビス(2-ヒドロキシ-エチルアミノ)-6-メチルアントラキノンである、請求項1に記載のライブラリー。
【請求項4】
オリゴヌクレオチドプローブの10%未満、例えば5%未満が、5'末端にGを有する、前記いずれかの請求項に記載のライブラリー。
【請求項5】
ライブラリー中のいずれのオリゴヌクレオチドも、5'末端にGを有さない、請求項4に記載のライブラリー。
【請求項6】
ライブラリー中のプローブの認識配列タグセグメントが以下の方法の少なくとも1つにより修飾されている、前記いずれかの請求項に記載のオリゴヌクレオチドプローブライブラリー:
i) 少なくとも1つの非天然ヌクレオチドによる置換;
ii)プローブの安定性を増大させる少なくとも1つの化学的部分による置換。
【請求項7】
認識配列タグの長さが6〜12ヌクレオチドである、記載のオリゴヌクレオチドプローブライブラリー。
【請求項8】
認識配列タグの長さが8または9ヌクレオチドである、請求項7記載のオリゴヌクレオチドプローブライブラリー。
【請求項9】
認識配列タグがLNAヌクレオチドにより置換されている、請求項8記載のオリゴヌクレオチドプローブライブラリー。
【請求項10】
90%を上回るオリゴヌクレオチドプローブが、核酸集団中の少なくとも2つのターゲット配列に結合してそれらを検出することができる、前記いずれかの請求項に記載のオリゴヌクレオチドプローブライブラリー。
【請求項11】
認識配列タグが核酸集団中の少なくとも2つのターゲット配列に相補的である、請求項10記載のライブラリー。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに規定するオリゴヌクレオチドプローブのサブセットの混合物を含む、長さ8および9ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドプローブライブラリー。
【請求項13】
核酸集団中の相異なるターゲット配列の数が少なくとも100である、前記いずれかの請求項に記載のオリゴヌクレオチドプローブライブラリー。
【請求項14】
各オリゴヌクレオチドプローブにおける少なくとも1つのヌクレオチドが、非天然ヌクレオチドアナログ、デオキシリボースもしくはリボースアナログ、またはホスホジエステル結合以外のヌクレオチド間結合により置換されている、前記いずれかの請求項に記載のオリゴヌクレオチドプローブライブラリー。
【請求項15】
検出部分が共有または非共有結合したマイナーグルーブバインダーまたは以下を含む群から選択されるインターカレーターである、前記いずれかの請求項に記載のオリゴヌクレオチドプローブライブラリー:不斉シアニン色素、DAPI、SYBR Green I、SYBR Green II、SYBR Gold、PicoGreen、チアゾールオレンジ、Hoechst 33342、エチジウムブロマイド、1-O-(1-ピレニルメチル)グリセロール、およびHoechst 33258。
【請求項16】
ホスホジエステル結合以外のヌクレオチド間結合が非リン酸ヌクレオチド間結合である、請求項14または15に記載のオリゴヌクレオチドプローブライブラリー。
【請求項17】
ヌクレオチド間結合が以下からなる群より選択される、請求項16記載のオリゴヌクレオチドプローブライブラリー:アルキルホスホネート、ホスホラミダイト、アルキル-ホスホトリエステル、ホスホロチオエート、およびホスホロジチオエート結合。
【請求項18】
オリゴヌクレオチドプローブが、相補的核酸配列へのそれらの結合を増強する以下のような非天然ヌクレオチドを含む、前記いずれかの請求項に記載のオリゴヌクレオチドプローブライブラリー:2'-O-メチル、ジアミンプリン、2-チオウラシル、5-ニトロインドール、ユニバーサルまたはディジェネレート塩基、インターカレート核酸、またはマイナーグルーブバインダー。
【請求項19】
すべてのオリゴヌクレオチドプローブが少なくとも1つの5-ニトロインドール残基を含む、請求項18に記載のライブラリー。
【請求項20】
相異なる認識配列が所定の長さのすべての可能性あるオリゴヌクレオチドの1%未満に含まれる、前記いずれかの請求項に記載のオリゴヌクレオチドプローブライブラリー。
【請求項21】
各プローブが二重標識を用いてモレキュラービーコンアッセイ原理により検出可能である、前記いずれかの請求項に記載のオリゴヌクレオチドプローブライブラリー。
【請求項22】
各プローブが二重標識を用いて5'ヌクレアーゼアッセイ原理により検出可能である、請求項1から20のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドプローブライブラリー。
【請求項23】
各プローブがモレキュラービーコンアッセイ原理により検出可能な検出部分を1つ含む、前記いずれかの請求項に記載のライブラリー。
【請求項24】
ターゲット核酸集団がmRNAサンプル、cDNAサンプル、またはゲノムDNAサンプルである、前記いずれかの請求項に記載のオリゴヌクレオチドプローブライブラリー。
【請求項25】
ターゲットmRNAまたはターゲットcDNA集団がヒト、マウス、ラット、シロイヌナズナ、キイロショウジョウバエ、チンパンジーまたは線虫のトランスクリプトームに由来する、請求項24記載のオリゴヌクレオチドプローブライブラリー。
【請求項26】
プローブターゲット配列がターゲット核酸集団中の4%を上回る相異なるターゲット核酸に少なくとも1つ存在する、前記いずれかの請求項に記載のオリゴヌクレオチドプローブライブラリー。
【請求項27】
自己相補的プローブ配列が除かれている、前記いずれかの請求項に記載のオリゴヌクレオチドプローブライブラリー。
【請求項28】
自己相補的配列が選択により除かれている、請求項27記載のオリゴヌクレオチドプローブライブラリー。
【請求項29】
自己相補的配列が以下のような配列特異的修飾により除かれている、請求項27記載のオリゴヌクレオチドプローブライブラリー:非標準ヌクレオチド、SBC核酸塩基を有するヌクレオチド、2'-O-メチル、ジアミンプリン、2-チオウラシル、ユニバーサルまたはディジェネレート塩基、またはマイナーグルーブバインダー。
【請求項30】
各プローブの融解温度 (Tm) が非天然修飾、例えばLNA、による置換によってPCRに基づくアッセイに好適なように調節されており、所望により相補的核酸配列に対するそれらの結合を増大させるSBC核酸塩基、2'-O-メチル、ジアミンプリン、2-チオウラシル、5-ニトロインドール、ユニバーサルまたはディジェネレート塩基、インターカレート核酸またはマイナーグルーブバインダーにより修飾されている、前記いずれかの請求項に記載のオリゴヌクレオチドプローブライブラリー。
【請求項31】
各プローブの融解温度 (Tm) が少なくとも50℃である、前記いずれかの請求項に記載のオリゴヌクレオチドプローブライブラリー。
【請求項32】
各プローブがDNAヌクレオチドを5'末端に有する、および/またはDNAヌクレオチドを3'末端に有する、前記いずれかの請求項に記載のオリゴヌクレオチドプローブライブラリー。
【請求項33】
各プローブがモレキュラービーコン原理により検出できる、前記いずれかの請求項に記載のオリゴヌクレオチドプローブライブラリー。
【請求項34】
ターゲット集団がヒトトランスクリプトームである、前記いずれかの請求項に記載のオリゴヌクレオチドプローブライブラリー。
【請求項35】
各オリゴヌクレオチドプローブが、可能性ある最大数の相異なるターゲット核酸を検出し、その結果該ライブラリーによる所定のターゲット核酸集団のカバレージが最大となる、前記いずれかの請求項に記載のオリゴヌクレオチドプローブライブラリー。
【請求項36】
オリゴヌクレオチドプローブが、最大級の検出を得るため核酸ターゲット集団内に可能な限り多くのターゲット配列または結合部位を有するように選択される、前記いずれかの請求項に記載のオリゴヌクレオチドプローブライブラリー。
【請求項37】
オリゴヌクレオチドプローブが、最大級の検出を得るため核酸ターゲット集団内の可能な限り多くのターゲット核酸において少なくとも1つのターゲット配列を有するように選択される、前記いずれかの請求項に記載のオリゴヌクレオチドプローブライブラリー。
【請求項38】
いずれかの所定の核酸集団において相補的配列を検出することができる、表1または表1aまたは図13または図14のオリゴヌクレオチドプローブライブラリー。
【請求項39】
各々が明細書の表1または表1aに挙げる認識エレメントを有するプローブを含み、および/または各々が該表1に挙げる認識エレメントに相補的な認識エレメントを有するプローブを含む、前記いずれかの請求項に記載のライブラリー。
【請求項40】
式Iのクエンチャーおよび5'-ニトロインドール残基を含むオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項41】
5'グアニジル残基を含まない、請求項40記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項42】
請求項1から9、14から18、21から23、および31から1のいずれかに規定する、請求項40または41記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項43】
表1、表1A、図13、または図14に示す配列と相補的または同一なプローブから選択される、請求項40から42のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項44】
表1または表1Aから選択されるヌクレオチド配列そのものを有する、請求項40から43のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項45】
前記いずれかの請求項に記載のライブラリーにおいて有用なオリゴヌクレオチド配列を選択する、以下の工程を含む方法であって、第3のリストに5'グアニジル(G)を有するメンバーを含めない傾向がある、および/または第3のリストに3'グアニジル(G)を有するメンバーを含めない傾向がある方法:
a) 事前に決定したヌクレオチド数、N、の、すべての可能性あるオリゴヌクレオチドの第1のリストを提供する、ここで該オリゴヌクレオチドの融解温度、Tm、は少なくとも50℃である、
b) ターゲット核酸配列の第2のリストを提供する、
c) 該第1のリストの各メンバーについて、該各メンバーに相補的な配列を含む該第2のリストからのメンバーの数を同定し、保存する、
d) 工程cの同定において該第2のリストからの工程cで同定された最大数のメンバーとマッチする該第1のリストのメンバーを選択する、
e) 工程dにおいて選択されたメンバーを、前記いずれかの請求項に記載のライブラリーにおいて有用な選択されたオリゴヌクレオチドからなる第3のリストに加える、
f) 工程dにおいて選択されたメンバーを該第1のリストから抜き取り、修正された第1のリストを提供する、
m) 該第3のリストが一緒になると工程bからのターゲット核酸配列のリスト上のメンバーの少なくとも30%に相補的となるメンバーから構成されるまで、工程d〜fを繰り返す。
【請求項46】
第3のリストにおけるすべてのオリゴヌクレオチド配列において、5'残基としてのグアニジルを回避する、請求項45記載の方法。
【請求項47】
5'残基としてのグアニジルの回避を以下によって達成する、請求項46記載の方法:i)工程aのリストを5'グアニジル残基を含まないオリゴヌクレオチド配列のみを含むまで減少させる、および/または、ii)工程dにおいて、5'グアニジル残基を含むオリゴヌクレオチド配列の選択を避ける、および/またはiii) 5'グアニジル残基を含むオリゴヌクレオチド配列について工程eを行わない。
【請求項48】
Tm が少なくとも60℃である、請求項45から47のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
オリゴヌクレオチドの第1のリストが自己ハイブリダイゼーションできないオリゴヌクレオチドのみを含む、請求項45から48のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
工程fの後、工程mの前に以下の工程を含む、請求項45から49のいずれかに記載の方法:
g) 該第2のリストから工程dにおいて選択されたメンバーに相補的な配列を含むすべてのメンバーを抜き取り、修正された第2のリストを得る、
h) 該修正された第1のリストの各メンバーについて、該各メンバーに相補的な配列を含む該修正された第2のリストからのメンバーの数を同定し、保存する、
i) 工程hの同定において該第2のリストからの工程hで同定された最大数のメンバーとマッチする該第1のリストのメンバーを選択する、または工程hで同定された数と工程cで同定された数をかけて得られる数が最大である該第1のリストのメンバーを選択する、
j) 工程iにおいて選択されたメンバーを該第3のリストに加える、
k) 工程iにおいて選択されたメンバーを該修正された第1のリストから抜き取る、および
l) 該修正された第2のリストから、工程iにおいて選択されたメンバーに相補的な配列を含むすべてのメンバーを抜き取る。
【請求項51】
請求項46に従属する場合において、5'残基としてのグアニジルの回避を、工程iにおいて5'グアニジル残基を含む配列の選択を避ける、および/または5'グアニジル残基を含むオリゴヌクレオチド配列について工程jを行わないことによって達成する、請求項50記載の方法。
【請求項52】
工程mにおける繰り返しを、該第3のリストが一緒になると工程bからのターゲット核酸配列のリスト上のメンバーの少なくとも85%に相補的となるメンバーから構成されるまで継続する、請求項45から51のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
該第3のリストの最初のメンバーの選択の後、工程c後の工程dにおける選択の前に、該第2のリストからのメンバーの最大数の選択した割合より多くにハイブリダイスする該第1のリストのメンバーを同定し、このように同定されたメンバーのみを工程dにおける選択にかけるようにする、請求項45から52のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
選択した割合が80%である、請求項53記載の方法。
【請求項55】
有用なプローブとしてすでに質的に劣っているメンバーがある場合にそのようなメンバーが第3のリストに入らないことが保証される、請求項45から54のいずれかに記載の方法。
【請求項56】
すでに質的に劣っているオリゴヌクレオチド配列を以下によって第3のリストに含めない、請求項55記載の方法:
i) 工程aのリストを質的に劣っていないメンバーのみを含むまで減少させる、および/または、
ii)工程dまたはiにおいて質的に劣っていない配列の選択を避ける、および/または、
iii)質的に劣っていない配列について工程eまたはjを行わない。
【請求項57】
Nが6、7、8、9、10、11、および12から選択される整数である、請求項45から56のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
Nが8または9である、請求項57記載の方法。
【請求項59】
工程bの該第2のリストが請求項24または25に規定するターゲット核酸配列を含む、請求項45から58のいずれかに記載の方法。
【請求項60】
基本的に図2に示すように行われる、請求項45から59のいずれかに記載の方法。
【請求項61】
該第1、第2、および第3のリストがコンピューターシステムのメモリー、好ましくはデータベースに保存されている、請求項45から60のいずれかに記載の方法。
【請求項62】
請求項45から61のいずれかに記載の方法を実施するための指示を提供する、コンピューター読み取り可能媒体に記録されたコンピュータープログラムプロダクト。
【請求項63】
ターゲット配列のデータベースおよび請求項62のコンピュータープログラムを実行するためのアプリケーションプログラムを含むシステム。
【請求項64】
ターゲット核酸の検出のための具体的手段を同定するための方法であって、以下を含む方法:
A) 該ターゲット核酸の核酸配列を1つに特定するデータをコンピューターシステムにインプットする、ここで該コンピューターシステムは請求項1から39のいずれかに記載の核酸プローブライブラリーの少なくとも1つの構成の情報を保有するデータベースを含み、かつ該コンピューターシステムはさらに該少なくとも1つのライブラリーの各プローブについてのターゲット核酸配列のデータベースを含み、および/またはさらに核酸配列データを取得し比較するための手段を含む、
B) 該コンピューターシステムにおいて、該少なくとも1つのライブラリーからプローブを同定する、ここで該プローブの配列は該ターゲット核酸配列に存在する、すなわち該ターゲット核酸配列に相補的な配列である、
C) 該コンピューターシステムにおいて、該ターゲット核酸配列を増幅するプライマーを同定する、および、
D) 検出のための具体的手段の同定として、工程Bにおいて同定されたプローブおよび工程Cにおいて同定されたプライマーの配列を明示するアウトプットを提供する。
【請求項65】
工程Aが、そこから検出のための具体的手段に使用するためのメンバーを選択することが望まれる少なくとも1つの核酸ライブラリーを特定するデータをコンピューターシステムにインプットすることをも含む、請求項64記載の方法。
【請求項66】
少なくとも1つのライブラリーの構成を特定するデータがプロダクトコードである、請求項65記載の方法。
【請求項67】
工程Aにおけるインプットがインターネットウェブインターフェースを介して行われる、請求項64から66のいずれかに記載の方法。
【請求項68】
工程Cにおいて同定されるプライマーが、PCR反応においてゲノム核酸を増幅する可能性が最小となるように選択される、請求項64から66のいずれかに記載の方法。
【請求項69】
プライマーの少なくとも1つが、ゲノムDNAにおいてイントロンに割り込まれているヌクレオチド配列を含むように選択される、請求項68記載の方法。
【請求項70】
工程Cにおいて選択されるプライマーが、ターゲット核酸配列上で行われるPCRから得られるアンプリコンの長さが最小となるように選択される、請求項64から69のいずれかに記載の方法。
【請求項71】
工程Cにおいて選択されるプライマーが、PCRを行うのに最適なGC含量となるように選択される、請求項64から70のいずれかに記載の方法。
【請求項72】
請求項64から71のいずれかに記載の方法を実施するための指示を提供する、コンピューター読み取り可能媒体に記録されたコンピュータープログラムプロダクト。
【請求項73】
請求項1から39のいずれかに規定する核酸プローブのデータベースおよび請求項72のコンピュータープログラムを実行するためのアプリケーションプログラムを含むシステム。
【請求項74】
ターゲット配列のサンプルを請求項1から39のいずれかに記載のライブラリーと接触させること、および該ターゲット配列に結合するプローブ配列を検出、特徴決定、または定量することを含む、複数のターゲット配列のプロファイルを調べるための方法。
【請求項75】
存在が複数の配列の10%未満であるマルチプローブ配列が結合した核酸配列の検出を提供する、請求項74記載の方法。
【請求項76】
ターゲットmRNA配列またはcDNA配列がトランスクリプトームを構成する、請求項75記載の方法。
【請求項77】
トランスクリプトームがヒトトランスクリプトームである、請求項76記載の方法。
【請求項78】
プローブライブラリーが固体支持体に共有結合している、請求項74から77のいずれかに記載の方法。
【請求項79】
固体支持体がマイクロタイタープレートを含み、該マイクロタイタープレートの各ウェルが相異なるライブラリープローブを含む、請求項78記載の方法。
【請求項80】
検出工程がライブラリープローブに相補的な認識配列を含むターゲット核酸配列を増幅することにより行われる、請求項74から79のいずれかに記載の方法。
【請求項81】
ターゲット核酸の増幅がライブラリープローブに相補的な認識配列を挟むオリゴヌクレオチドプライマーのペアを用いて行われる、請求項80記載の方法。
【請求項82】
1以上のターゲット核酸配列の存在または発現レベルがある種の表現型と相関する、請求項74から81の方法。
【請求項83】
表現型が疾患である、請求項82記載の方法。
【請求項84】
請求項1から39のいずれかに記載のライブラリーを用いて核酸混合物を解析する方法であって、以下の工程を含む方法:
(a) ターゲットオリゴヌクレオチドを標識オリゴヌクレオチドプローブのライブラリーと接触させ、該ターゲットオリゴヌクレオチドを少なくとも1つの該プローブライブラリーのメンバーにハイブリダイズさせ、それによりハイブリダイズ済ライブラリーを形成する、ここで該オリゴヌクレオチドプローブは各々既知の配列を有し、かつ固体支持体に既知の位置で連結している;
(b) 該ハイブリダイズ済ライブラリーを二本鎖オリゴヌクレオチドを切断可能なヌクレアーゼと接触させ、該ハイブリダイズ済ライブラリーから該標識オリゴヌクレオチドプローブまたはその断片の一部を解離させる;
(c) 標識プローブまたはその断片が除去された該ハイブリダイズ済ライブラリーの該位置を同定し、該非標識ターゲットオリゴヌクレオチドの配列を決定する。
【請求項85】
請求項1から39のいずれかに記載のライブラリーを用いて核酸混合物を解析する方法であって、以下の工程を含む方法:
(a) ターゲットオリゴヌクレオチドを標識オリゴヌクレオチドプローブのライブラリーと接触させ、該ターゲットオリゴヌクレオチドを少なくとも1つの該プローブライブラリーのメンバーにハイブリダイズさせ、それによりハイブリダイズ済ライブラリーを形成する、ここで該オリゴヌクレオチドプローブは各々既知の配列を有し、かつ固体支持体に既知の位置で連結している;
(b) 標識プローブまたはその断片がハイブリダイズした該ハイブリダイズ済ライブラリーの該位置を同定し、該ターゲットオリゴヌクレオチドの配列を決定する;および
(c) 標識プローブまたはその断片が除去された該ハイブリダイズ済ライブラリーの該位置を同定し、該非標識ターゲットオリゴヌクレオチドの配列を決定する。
【請求項86】
サンプル中のターゲット核酸の存在を定量的または定性的に決定する方法であって、以下を含む方法:
i) 請求項64から71のいずれかに記載の方法により、ターゲット核酸の検出のための具体的手段を同定する、ここで検出のための具体的手段はオリゴヌクレオチドプローブおよびプライマーのセットを含む、
ii) 工程i)において同定したプライマーおよびオリゴヌクレオチドプローブを得る、
iii) 工程ii)からのプライマーおよびオリゴヌクレオチドプローブの存在下でサンプルを分子増幅手法に供する、および、
iv) 工程iii)の結果に基づきターゲット核酸の存在を決定する。
【請求項87】
工程ii)で得られるプライマーが合成により得られる、請求項86記載の方法。
【請求項88】
オリゴヌクレオチドプローブが請求項1から39のいずれかに記載のライブリラリーから得られる、請求項86または87記載の方法。
【請求項89】
工程iii)における手法がPCRまたはNASBA手法である、請求項86から88のいずれかに記載の方法。
【請求項90】
PCR手法がqPCRである、請求項89記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2008−523828(P2008−523828A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547182(P2007−547182)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【国際出願番号】PCT/DK2005/000815
【国際公開番号】WO2006/066592
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
【出願人】(504412325)エクシコン・アクティーゼルスカブ (3)
【氏名又は名称原語表記】Exiqon A/S
【Fターム(参考)】