説明

梯子装置

【課題】 緊急時においてもより安全に利用することができ、しかも、梯子を地面から遠ざけることができる梯子装置を提供すること。
【解決手段】 梯子装置は、建物壁2に設けられる梯子3と、梯子3に対してX方向に離反自在に近接していると共に梯子3に対する離反により梯子3と協働してX方向に直交するZ方向に伸びた避難用の通路4を形成する通路形成部材5と、梯子3と通路形成部材5とを連結している回動自在な複数の連結部材6と、X方向において通路形成部材5が梯子3に近接した状態を解除自在に保持する一方、保持の解除により通路形成部材5の梯子3に対するX方向の離反を許容する保持手段7とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル等の建物の火災等の緊急時に用いられる避難用の梯子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2005−6738号公報
【特許文献2】特開昭51−146798号公報
【特許文献3】特開2003−328670号公報
【0003】
例えば特許文献1においては、回転ドラムに巻き取られた状態のワイヤーを繰り出すことで梯子をその自重により上下方向に伸長させるようになっている梯子装置が提案されている。
【0004】
例えば特許文献2においては、上下方向に伸びた梯子が当該梯子の一方の支柱(縦枠)を中心として回動自在となるように建物壁に設置された梯子装置が提案されている。
【0005】
例えば特許文献3においては、建物に固定される固定梯子体の前面に、背かご状に形成した可動支柱を起倒可能に配設した梯子装置が提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、斯かる特許文献1及び2における梯子装置では、特に火災等の緊急時に、上下方向に伸びた梯子の利用者が当該梯子から不意に手を離してしまい落下する虞があることから、梯子をより安全に利用することができることが望ましい。
【0007】
また、斯かる特許文献3における梯子装置では、当該梯子装置の利用者が地面等に安全に到達することができるように、梯子が地面又は地面近傍まで伸びて形成されることとなるために、不特定多数の者が梯子装置に容易に触れ得る結果、防犯上好ましくない。
【0008】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、緊急時においてもより安全に利用することができ、しかも、梯子を地面から遠ざけることができる梯子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の梯子装置は、建物壁に設けられる梯子と、梯子に対して離反自在に近接していると共に梯子に対する離反により当該梯子と協働して上下方向に伸びた避難用の通路を形成する通路形成部材と、梯子と通路形成部材とを連結している回動自在な連結部材と、通路形成部材が梯子に近接した状態を解除自在に保持する一方、当該保持の解除により通路形成部材の梯子に対する離反を許容する保持手段とを具備しており、梯子は、建物壁に固定される固定梯子体と、この固定梯子体に昇降自在に連結されている可動梯子体とを具備しており、可動梯子体は、保持手段による前記保持の解除に連動して、固定梯子体の下端から突出されるように下降が許容されるようになっている。
【0010】
本発明の梯子装置によれば、保持手段により通路形成部材が近接した状態の保持を解除することで、梯子及び通路形成部材による避難用の通路を形成することができ、通路を通る者を主に梯子及び通路形成部材によって保護することができ、例えば、梯子装置を利用する利用者が梯子から不意に手を離してしまった場合においても、通路形成部材により当該利用者を支えることができ、而して、火災等の緊急時においても梯子をより安全に利用することができ、しかも、通路形成部材が梯子に近接した状態においては、可動梯子体は伸長していないので、不特定多数の者が梯子装置に容易に触れられないように梯子を地面から遠ざけることができ、加えて、保持手段による通路形成部材の梯子に対する近接状態の保持の解除に連動して可動梯子体の下降を許容することで、当該梯子装置を利用する際に簡単な操作で梯子を地面まで伸長させ得る。
【0011】
本発明の梯子装置の好ましい例では、保持手段は、梯子側から当該梯子に近接した状態の通路形成部材まで張り渡された紐部材と、紐部材の一端が固着されている回転自在な回転ドラムと、紐部材を繰り出す繰り出し方向の回転ドラムの回転を解除自在に禁止している禁止手段とを具備している。このような好ましい例によれば、禁止手段による回転ドラムの回転の禁止の解除により紐部材を簡単に繰り出すことができ、簡単な操作で避難用の通路を速やかに形成することができる。
【0012】
本発明の梯子装置の好ましい例では、紐部材は、固定梯子体から通路形成部材を介して可動梯子体まで張り渡されており、可動梯子体は、紐部材の繰り出しにより下降が許容されるようになっている。このような好ましい例によれば、紐部材の繰り出しに基づく通路形成部材の梯子からの離反と連動して可動梯子体を下降させることができ、簡単な操作で梯子を安全に利用することができる。
【0013】
本発明の梯子装置の好ましい例では、一端が梯子に回動自在に連結されていると共に他端が連結部材に回動自在に連結されており、通路形成部材を梯子から離反させるように連結部材を付勢する付勢部材を更に具備している。
【0014】
本発明の梯子装置の好ましい例では、一端が梯子に回動自在に連結されていると共に他端が連結部材に回動自在に連結されており、通路形成部材が梯子から離反する際の連結部材の回動の増速を抑制する抑制部材を更に具備している。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、緊急時においてもより安全に利用することができ、しかも、梯子を地面から遠ざけることができる梯子装置を提供し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態の例を、図に示す例に基づいて更に詳細に説明する。尚、本発明はこれらの例に何等限定されないのである。
【実施例】
【0017】
図1から図16において、本例の梯子装置1は、建物壁2に設けられる梯子3と、梯子3に対してX方向に離反自在に近接していると共に梯子3に対する離反により当該梯子3と協働してX方向に直交するZ方向(上下方向)に伸びた避難用の通路4を形成する通路形成部材5と、梯子3と通路形成部材5とを連結している回動自在な複数の連結部材6と、X方向において通路形成部材5が梯子3に図15及び図16に示すように近接した状態を解除自在に保持する一方、当該保持の解除により通路形成部材5の梯子3に対するX方向の離反を許容する保持手段7と、一端9が梯子3に回動自在に連結されていると共に他端10が連結部材6に回動自在に連結されており、通路形成部材5を梯子3からX方向に離反させるように連結部材6を付勢する付勢部材11と、一端12が梯子3に回動自在に連結されていると共に他端13が連結部材6に回動自在に連結されており、通路形成部材5が梯子3からX方向に離反する際の連結部材6の回動の増速を抑制する抑制部材14とを具備している。
【0018】
Z方向に伸びて窓31の近傍に配された梯子3は、建物壁2に固定される固定梯子体21と、固定梯子体21にZ方向に昇降自在に連結されている可動梯子体22とを具備している。
【0019】
固定梯子体21は、建物壁2に取り付けられるZ方向に伸びた一対の縦枠25及び26と、X方向及びZ方向に直交するY方向に伸びて縦枠25及び26を夫々橋絡していると共に夫々互いにZ方向に並んでいる複数の横桟27と、複数の横桟27間において縦枠25及び26を橋絡しているY方向に伸びた補強部材28とを具備している。
【0020】
縦枠25及び26には、横桟27の両端が夫々固定されている。縦枠25及び26の下端33は、Z方向において地面34に対して所定の間隔、例えば2m以上、好ましくは2.7m以上の間隔をもって配されており、本例では建物壁2の二階に当たる部分に配されている。縦枠25及び26には、紐部材81が挿通される孔35が適宜設けられている。また、縦枠25及び26には、図6に示すように可動梯子体22をZ方向に案内する案内壁36が夫々設けられている。
【0021】
可動梯子体22は、縦枠25及び26にZ方向に案内されるように連結されたZ方向に伸びた一対の縦枠41及び42と、Y方向に伸びて縦枠41及び42を夫々橋絡していると共に夫々互いにZ方向に並んでいる複数の横桟43とを具備している。縦枠41及び42には、横桟43の両端が夫々固定されている。尚、縦枠41及び42は、転動ローラ等を介して縦枠25及び26にZ方向に案内されるように連結されていてもよい。
【0022】
斯かる可動梯子体22は、図6に示すように縦枠25及び26間に配されており、保持手段7による通路形成部材5の梯子3に対する近接状態の保持の解除に連動して、固定梯子体21の下端33から地面34に向かって突出されるようにZ方向における下降が許容されるようになっている。
【0023】
梯子3に沿ってZ方向に伸びた通路形成部材5は、Y方向において幅広の板状本体51と、板状本体51のZ方向に伸びた両縁部に夫々一体的に設けられていると共にX方向において幅狭の板状体52及び53とを具備しており、X方向で梯子3に対向している。通路形成部材5は、板状本体51の梯子3側の面54で連結部材6に連結されている。板状本体51のY方向における幅は、固定梯子体21のY方向における幅よりも長い。板状体52及び53のX方向における幅は、縦枠25及び26のX方向における幅と同等であるか又は当該幅よりも短い。通路形成部材5は、梯子3に近接した状態においては、図15に示すように固定梯子体21を覆うように形成されている。斯かる通路形成部材5によれば、主に板状本体51により通路4を通る者(避難者等)の視界を遮ることができて、斯かる者の不安感を軽減し得る。また、避難時以外のとき侵入者が屋上等を伝って他の階へ進入しようとする場合も、板状本体51が固定梯子体21および通路形成部材5を覆蔽するので本梯子装置1の使用を阻止でき防犯上からも好ましい。
【0024】
複数の連結部材6は、夫々互いに同様に形成されており、Z方向において並んでいる。
【0025】
平面視において略コ字状の連結部材6は、一端61で固定梯子体21の縦枠25及び26に回動自在に夫々連結された一対の連結アーム62及び63と、連結アーム62及び63の夫々の他端64を橋絡しているY方向に伸びた橋絡アーム65とを具備しており、橋絡アーム65は、通路形成部材5の面54に固着されている。
【0026】
連結アーム62は、一端61と縦枠25とを連結する連結軸66を中心としてR3方向に回動自在である。連結アーム62は、図3に示すように通路4が形成された状態においては、X方向に伸びた状態となる。連結アーム62の一端61は、図3に示すように略L字状であり、一端61の図3に示す部位67が縦枠25に装着された支持部材68に当接することで、他端64が一端61よりも下方に位置しないように当該支持部材68に支持されるようになっている。連結アーム63は、連結アーム62と同様に形成されているので、その詳細な説明を省略する。
【0027】
橋絡アーム65の両端69は、連結アーム62及び63の他端64に夫々連結されている。橋絡アーム65は、当該橋絡アーム65の両端69と連結アーム62及び63の他端64とを連結する連結軸70を中心としてA方向に回転自在となっている。
【0028】
複数の連結部材6の連結アーム62は、Z方向に伸びた縦フレーム71を介して夫々互いに連結されており、複数の連結部材6の連結アーム63は、Z方向に伸びた縦フレーム72を介して夫々互いに連結されており、複数の連結部材6の橋絡アーム65は、Z方向に伸びた二本の縦フレーム73及び74を介して夫々互いに連結されている。縦フレーム71、72、73及び74によって夫々互いに連結された複数の連結部材6は、夫々互いに同期的に梯子3に対してR3方向に回動されるようになっている。
【0029】
保持手段7は、例えば図4から図7並びに図11から図14の(a)及び(b)に示すように、梯子3側から当該梯子3に近接した状態の通路形成部材5まで張り渡された紐部材81と、紐部材81が走行自在となるように当該紐部材81を通路形成部材5及び梯子3に連結する連結手段83と、ハウジング101と、ハウジング101にR1方向及びR2方向に回転自在に支持されていると共に紐部材81の一端が固着されている回転ドラム102と、紐部材81を繰り出すR1方向(繰り出し方向)の回転ドラム102の回転を解除自在に禁止している禁止手段103と、回転ドラム102のR1方向の回転に抗する抵抗力を発生する抵抗力発生手段104とを具備している。回転ドラム102の回転軸105の一端には、回転ドラム102をR2方向(巻き取り方向)に回転させるためのハンドル(図示せず)が着脱されるようになっている。
【0030】
ワイヤー等からなる紐部材81は、一端(図示せず)で回転ドラム102に固着されていると共に他端85で固定梯子体21に固着されており、紐部材81の一端及び他端85間において固定梯子体21から通路形成部材5を介して可動梯子体22まで走行自在に張り渡されている。斯かる紐部材81は、回転ドラム102から繰り出されることによって張り渡し部91及び92を弛めることができる。
【0031】
連結手段83は、特に図4から図7に示すように、紐部材81の部位90aが掛け回されていると共に縦枠25に装着された連結部材83aと、部位90aに続く部位90bが掛け回されていると共に縦フレーム73に装着された連結部材83bと、部位90bに続く部位90cが掛け回されていると共に縦フレーム74に装着された連結部材83cと、部位90cに続く部位90dが掛け回されていると共に縦枠26に装着された連結部材83dと、部位90dに続く部位90eが掛け回されていると共に縦枠26に取り付けられているケース93の上部に装着された連結部材83eと、部位90eに続く部位90fが掛け回されていると共にケース93の下部に装着された連結部材83fと、部位90fに続く部位90gが掛け回されていると共に補強部材28の縦枠25側の部位に装着された連結部材83gと、部位90gに続く部位90hが掛け回されていると共に縦フレーム73に装着された連結部材83hと、部位90hに続く部位90iが掛け回されていると共に縦フレーム74に装着された連結部材83iと、部位90iに続く部位90jが掛け回されていると共に補強部材28の縦枠26側の部位に装着された連結部材83jと、部位90jに続く部位90kが掛け回されていると共に縦枠25に取り付けられているケース94の上部に装着された連結部材83kと、部位90kに続く部位90lが掛け回されていると共にケース94の下部に装着された連結部材83lと、部位90lに続く部位90mが掛け回されていると共に横桟27の縦枠25側の部位に装着された連結部材83mと、部位90mに続く部位90nが掛け回されていると共に可動梯子体22の最上部の横桟43の縦枠41側の部位に装着された連結部材83nと、部位90nに続く部位90oが掛け回されていると共に可動梯子体22の最上部の横桟43の縦枠42側の部位に装着された連結部材83oと、部位90oに続く部位90pが掛け回されていると共に横桟27の縦枠26側の部位に装着された連結部材83pとを具備している。紐部材81の他端85は、連結部材83pに掛け回されている部位90pの近傍に配されていると共に固定梯子体21に固定されたブロック体95に固着されている。連結部材83aから83pの夫々は、紐部材81が走行自在に掛け回された滑車からなる。連結部材83b、83c、83h及び83iは、縦フレーム73及び74並びに橋絡アーム65を介して通路形成部材5に連結されている。
【0032】
連結部材83a及び83dの下方には、連結部材83g及び83jが配されており、連結部材83g及び83jの下方には、連結部材83m及び83pが配されている。連結部材83b及び83cの下方には、連結部材83h及び83iが配されている。梯子装置1が通路4を形成している場合には、連結部材83a及び83dは、連結部材83b及び83cよりも上方に配されており、連結部材83g及び83jは、連結部材83h及び83iよりも上方に配されており、連結部材83m及び83pは、連結部材83n及び83oよりも上方に配されている。尚、連結部材83a、83d、83e、83f、83g、83j、83k、83l、83m及び83pは、本例では固定梯子体21に装着されているが、例えば建物壁2に装着されていてもよい。
【0033】
紐部材81の部位90a及び90b間、部位90d及び90c間、部位90g及び90h間並びに部位90j及び90i間には、固定梯子体21から通路形成部材5まで張り渡された紐部材81の張り渡し部91が存在している。紐部材81の部位90m及び90n間並びに90p及び90o間には、固定梯子体21から可動梯子体22まで張り渡された張り渡し部92が存在している。
【0034】
ハウジング101は、例えば図1、図2及び図8に示すように建物の屋上98に設置された架台99に取り付けられており、回転ドラム102、禁止手段103(操作紐123を除く)及び抵抗力発生手段104が収容されている。尚、ハウジング101の設置は、屋上98以外でもよく、例えば建物壁2に設置されてもよい。
【0035】
回転ドラム102は、上述の回転軸105と、内周面で回転軸105に固定された小径円筒部106と、小径円筒部106の一端に一体的に取り付けられた大径円盤部107と、大径円盤部107と同径であると共に小径円筒部106の他端に着脱自在に取り付けられた大径円盤部108とを具備している。紐部材81は、小径円筒部106に繰り出し自在に巻き回されている。
【0036】
禁止手段103は、図11から図14の(a)及び(b)に示すように、ハウジング101内に配設されていると共に回転ドラム102を回転自在に支持しているケース111と、ケース111内に配されており、回転ドラム102の大径円盤部107に固定されていると共に外周にラチェット歯113を有した環状のラチェット歯車114と、ケース111にピン115を介してR4方向に回動自在に支持されていると共にラチェット歯車114のR1方向の回転を禁止するようにラチェット歯113に係合する爪部材116と、爪部材116をラチェット歯113から離反させるように付勢する付勢手段としての圧縮コイルばね117と、ケース111にピン118を介してR5方向に揺動自在であると共に爪部材116とラチェット歯113との係合状態を圧縮コイルばね117の付勢に抗して維持するように爪部材116に当接している当接部119を有している揺動部材120と、操作により揺動部材120の爪部材116に対する当接を解除するように、ピン118から離れた揺動部材120の端部121に連結機構122を介して連結されている操作紐123とを具備している。
【0037】
爪部材116は、特に図14の(a)に示すように、本体131と、本体131に回動自在に支持されていると共に付勢ばね134によりラチェット歯113に向かって付勢される爪部132と、爪部132に当接して当該爪部132の所定量以上のR6方向(反時計回り)の回動を制止する制止部133とを具備している。爪部132は、ラチェット歯車114のR2方向の回転を許容すべく、付勢ばね134の付勢に抗してR6方向とは逆の方向(時計回り)にも回動されるようになっている。
【0038】
連結機構122は、ハウジング101にピン135を介してC方向に回転自在に装着された回転部材136と、回転部材136を揺動部材120の端部121に連結している連結アーム137と、一端がハウジング101に支持されていると共に他端が回転部材136に取り付けられた引っ張りばね138とを具備しており、回転部材136には、操作紐123の一端139が固着されている。連結機構122は、操作紐123の操作により回転部材136が引っ張りばね138の引張力に抗してC方向(反時計回り)に回転され、この回転により連結アーム137を介して揺動部材120を揺動させるようになっている。
【0039】
複数の操作グリップ141が装着されたワイヤー等からなる操作紐123は、ハウジング101から突出して縦枠25に沿ってZ方向に伸びている。操作紐123の他端140は、固定梯子体21の下部に配されている。
【0040】
斯かる禁止手段103は、爪部材116とラチェット歯車114との係合により回転ドラム102のR1方向の回転を禁止している一方、操作紐123の操作による揺動部材120のR5方向の揺動により爪部材116とラチェット歯車114との係合を解除することで、回転ドラム102のR1方向の回転の禁止を解除するようになっている。
【0041】
抵抗力発生手段104は、図12及び図13に示すように、ケース111にD方向に回転自在に支持された回転軸152と、回転ドラム102の大径円盤部108の外周縁に設けられた歯153に中間ギヤ154を介して歯合していると共に回転軸152に固着されており、回転ドラム102の回転によってD方向に回転される芯部材155と、回転軸152の軸方向に直交する方向において芯部材155に対して接近及び離反自在となるように当該芯部材155に夫々嵌着されていると共に円弧状のブレーキパッド156が夫々装着された複数の可動部材157と、複数の可動部材157を芯部材155に向かって弾性的に付勢するゴム等からなる付勢部材158と、複数の可動部材157を収容していると共にブレーキパッド156に対して隙間をもって配された内周面159を有している収容ケース160とを具備しており、芯部材155のD方向の回転に基づく遠心力により付勢部材158の付勢に抗して芯部材155から離反される複数の可動部材157のブレーキパッド156と収容ケース160の内周面159とを互いに摺接させることで、回転ドラム102のR1方向の回転に抗する摩擦抵抗力を当該回転ドラム102の回転速度に依存して発生させるようになっている。斯かる抵抗力発生手段によれば、回転ドラム102の回転速度に依存した抵抗力を発生させることができて、過度に急速な作動をより抑えることができる。
【0042】
スプリング等からなる伸縮自在な付勢部材11の一端9は、通路形成部材5が図3に示すように梯子3から離反した状態において他端10よりも上方に配される。また、付勢部材11の一端9は、通路形成部材5が図3に示すように梯子3から離反した状態及び図16に示すように梯子3に近接した状態において、他端10よりも梯子3側に配される。付勢部材11は、スプリング等の弾性力によって伸びながら連結部材6を梯子3に対してR3方向に回動させて、通路形成部材5を梯子3からX方向に離反させるようになっている。
【0043】
オイルダンパ等からなる伸縮自在な抑制部材14の一端12は、通路形成部材5が図3に示すように梯子3から離反した状態及び図16に示すように梯子3に近接した状態において他端13よりも下方に配されている。抑制部材14は、通路形成部材5が梯子3から離反する際に生じる連結部材6の梯子3に対するR3方向(時計回り)の回動によって縮められながら連結部材6の回動速度の増速を抑えて、通路形成部材5の梯子3からの過度に急速な離反を抑制するようになっている。
【0044】
付勢部材11の一端9と抑制部材14の一端12との間には、連結アーム62及び63の一端61が配されている。付勢部材11の他端10は、抑制部材14の他端13よりも通路形成部材5側に配されている。付勢部材11及び抑制部材14の個数は、一個又は複数個であってもよく、複数の連結部材6のうちから適宜選択した連結部材6に連結される。
【0045】
以下、梯子装置1の動作について詳細に説明する。まず、操作紐123が操作グリップ141を介して引っ張られることにより連結機構122を介して揺動部材120を揺動させて爪部材116とラチェット歯車114との係合を図14の(b)に示すように解除して、回転ドラム102のR1方向の回転の禁止を解除し、このようにして、回転ドラム102に巻き回された紐部材81の繰り出しを許容する。
【0046】
次に、図15及び図16に示すように梯子3に近接した状態の通路形成部材5が、当該通路形成部材5の自重及び付勢部材11の付勢によりX方向において梯子3から離反して、例えば図1に示すように梯子3と協働して通路4を形成する。紐部材81は、通路形成部材5の梯子3からの離反と共に回転ドラム102から繰り出されて、通路形成部材5から梯子3側まで張り渡された張り渡し部91を弛めるようになっている。抑制部材14は、通路形成部材5の梯子3からの離反の際にR3方向(時計回り)に回動される連結部材6の回動速度の増速を抑える。
【0047】
紐部材81の回転ドラム102からの繰り出しにより、張り渡し部91と共に、固定梯子体21から可動梯子体22までの張り渡し部92も弛められて、自重により可動梯子体22が固定梯子体21に対して下降する。このように、可動梯子体22は、紐部材81の繰り出しにより通路形成部材5の梯子3からの離反と連動して固定梯子体21に対して下降する。
【0048】
また、図1に示すように通路4を形成した状態の梯子装置1を再び図15に示す状態に戻す場合には、まず、爪部材116とラチェット歯車114とを係合させ、次に、回転軸105の一端にハンドルを装着し、回転ドラム102をR2方向に回転させて、紐部材81を巻き取ることで、当該巻き取られる紐部材81の張り渡し部91及び92を再び緊張させて、可動梯子体22を固定梯子体21に対して上昇させ且つ通路形成部材5をX方向において梯子3に近接させる。
【0049】
本例の梯子装置1によれば、建物壁2に設けられる梯子3と、梯子3に対して離反自在に近接していると共に梯子3に対する離反により当該梯子3と協働してZ方向に伸びた通路4を形成する通路形成部材5と、梯子3と通路形成部材5とを連結させている回動自在な連結部材6と、通路形成部材5が梯子3に近接した状態を解除自在に保持する一方、当該保持の解除により通路形成部材5の梯子3に対する離反を許容する保持手段7とを具備しており、梯子3は、建物壁2に固定される固定梯子体21と、固定梯子体21に昇降自在に連結されている可動梯子体22とを具備しており、可動梯子体22は、保持手段7による前記保持の解除に連動して、固定梯子体21の下端33から突出されるように下降が許容されるようになっているために、保持手段7により通路形成部材5が近接した状態の保持を解除することで、梯子3及び通路形成部材5による通路4を形成することができ、通路4を通る者を主に梯子3及び通路形成部材5によって保護することができ、例えば、梯子装置1を利用する利用者が梯子3から不意に手を離してしまった場合においても、通路形成部材5により当該利用者を支えることができ、而して、火災等の緊急時においても梯子3をより安全に利用することができ、しかも、通路形成部材5が梯子3に近接した状態においては、可動梯子体22は伸長していないので、不特定多数の者が梯子装置1に容易に触れられないように梯子3を地面34から遠ざけることができ、加えて、保持手段7による通路形成部材5の梯子3に対する近接状態の保持の解除に連動して可動梯子体22の下降を許容することで、当該梯子装置1を利用する際に簡単な操作で梯子3を地面まで伸長させ得る。
【0050】
梯子装置1によれば、保持手段7は、梯子3側から当該梯子3に近接した状態の通路形成部材5まで張り渡された紐部材81と、紐部材81の一端が固着されている回転自在な回転ドラム102と、紐部材81を繰り出すR1方向の回転ドラム102の回転を解除自在に禁止している禁止手段103とを具備しているために、禁止手段103による回転ドラム102のR1方向の回転の禁止の解除により紐部材81を簡単に繰り出すことができ、簡単な操作で避難用の通路4を速やかに形成することができる。
【0051】
梯子装置1によれば、紐部材81は、固定梯子体21から通路形成部材5を介して可動梯子体22まで張り渡されており、可動梯子体22は、紐部材81の繰り出しにより下降が許容されるようになっているために、紐部材81の繰り出しに基づく通路形成部材5の梯子3からの離反と連動して可動梯子体22を下降させることができ、簡単な操作で梯子3を安全に利用することができる。
【0052】
なお、本梯子装置1の使用時の操作グリップ141を下方向に引く動作に、蓄電池で作動する蛍光灯やスポットライト等の照明手段、回転灯、点滅ランプ等の表示手段、警報、報知器等の報知手段のうち少なくとも一の手段を連動させておいてもよい。そうすることにより、本梯子装置1の不使用時(平時)には、侵入者の侵入・逃亡を阻止でき、本梯子装置1の使用時(避難時)には、より安全な避難、近隣等への喚起、避難・通報を早めることに加え、二次災害の防止が期待できることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態の例の斜視説明図である。
【図2】(a)は、図1に示す例の正面説明図であり、(b)は、図1に示す例の側面説明図である。
【図3】図1に示す例の一部拡大側面説明図である。
【図4】図2の(a)に示す例のIV−IV線断面矢視説明図である。
【図5】図2の(a)に示す例のV−V線断面矢視説明図である。
【図6】図2の(a)に示す例のVI−VI線断面矢視説明図である。
【図7】図1に示す例の主に紐部材及び連結手段に関する説明図である。
【図8】図1に示す例の一部拡大斜視説明図である。
【図9】図1に示す例の一部拡大斜視説明図である。
【図10】図1に示す例の一部拡大斜視説明図である。
【図11】図1に示す例の主に保持手段の拡大説明図である。
【図12】図11に示す例の一部拡大説明図である。
【図13】図12に示す例の側断面説明図である。
【図14】(a)及び(b)は、図12に示す例の動作説明図である。
【図15】図1に示す例の動作説明図である。
【図16】図1に示す例の一部拡大動作説明図である。
【符号の説明】
【0054】
1 梯子装置
2 建物壁
3 梯子
4 通路
5 通路形成部材
6 連結部材
7 保持手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物壁に設けられる梯子と、梯子に対して離反自在に近接していると共に梯子に対する離反により当該梯子と協働して上下方向に伸びた避難用の通路を形成する通路形成部材と、梯子と通路形成部材とを連結している回動自在な連結部材と、通路形成部材が梯子に近接した状態を解除自在に保持する一方、当該保持の解除により通路形成部材の梯子に対する離反を許容する保持手段とを具備しており、梯子は、建物壁に固定される固定梯子体と、この固定梯子体に昇降自在に連結されている可動梯子体とを具備しており、可動梯子体は、保持手段による前記保持の解除に連動して、固定梯子体の下端から突出されるように下降が許容されるようになっている梯子装置。
【請求項2】
保持手段は、梯子側から当該梯子に近接した状態の通路形成部材まで張り渡された紐部材と、紐部材の一端が固着されている回転自在な回転ドラムと、紐部材を繰り出す繰り出し方向の回転ドラムの回転を解除自在に禁止している禁止手段とを具備している請求項1に記載の梯子装置。
【請求項3】
紐部材は、固定梯子体から通路形成部材を介して可動梯子体まで張り渡されており、可動梯子体は、紐部材の繰り出しにより下降が許容されるようになっている請求項2に記載の梯子装置。
【請求項4】
一端が梯子に回動自在に連結されていると共に他端が連結部材に回動自在に連結されており、通路形成部材を梯子から離反させるように連結部材を付勢する付勢部材を更に具備している請求項1から3のいずれか一項に記載の梯子装置。
【請求項5】
一端が梯子に回動自在に連結されていると共に他端が連結部材に回動自在に連結されており、通路形成部材が梯子から離反する際の連結部材の回動の増速を抑制する抑制部材を更に具備している請求項1から4のいずれか一項に記載の梯子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−342530(P2006−342530A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−167574(P2005−167574)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(000230869)日本金属株式会社 (29)
【出願人】(000210986)中央発條株式会社 (173)
【出願人】(503428703)オイレスECO株式会社 (69)
【Fターム(参考)】