説明

梱包体

【課題】乾燥剤と共に装置をシートで包んだ状態で、緩衝材を用いて梱包する梱包体に関し、当該シートの破損を防止することにより、シート内部の湿度を適切に保ち得る梱包体を提供する。
【解決手段】梱包体1は、乾燥剤Dとトナーを内部に収納した複合機10を包む包装袋20と、包装袋20で包まれた複合機10上部に掛けられる上部保護シート25Aと、包装袋20で包まれた複合機10の下方に配置される下部保護シート25Bと、包装袋20で包まれた複合機10上部を運搬作業時の衝撃から保護する第1上部緩衝材30A、第2上部緩衝材30Bと、包装袋20で包まれた複合機10下部を運搬作業時の衝撃から保護する下部緩衝材35と、段ボール箱45により構成される。上部保護シート25Aは、包装袋20と上部緩衝材30の間に位置し、下部保護シート25Bは、包装袋20と下部緩衝材35の間に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝材及び梱包箱を用いて、装置を梱包する梱包体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、梱包体の一つとして、特許文献1記載の発明が知られている。当該特許文献1記載の梱包体は、載置台上の所定位置にセットされた装置(画像形成装置)に対して、上方から天板や面板により緩衝材を押し付けることにより構成されている。従って、当該梱包体によれば、緩衝材により、梱包体運搬時の衝撃等から装置を保護することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−137505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
梱包体により梱包される装置においては、大気中の湿度の影響により品質劣化を起こす部品等が使用される場合がある。このような部品等の一例としては、画像形成装置におけるトナーを挙げることができる。そして、湿度の影響を受ける部品等は、梱包体により、当該装置と共に梱包され得る。特許文献1記載の梱包体を用いて、湿度の影響を受ける部品等を前記装置と共に梱包した場合、特許文献1記載の梱包体においては、何等の措置も講じられていないため、湿度の影響をうけ、当該部品の品質劣化を招く可能性がある。
【0005】
湿度の影響による部品の品質劣化を防止するための方策として、当該装置及び部品を乾燥剤と共に気密性の良い状況下におくことが考えられる。より具体的な方策の例としては、装置及び部品を、乾燥剤と共に、気密性の高い材質で袋状に構成されたシートより包むことが考えられる。この場合、乾燥剤により大気中の水蒸気を吸収することにより、袋状のシートに包まれている装置及び部品周辺の湿度を低下させることができ、当該部品の品質を良好な状態に保つことができる。
【0006】
ここで、袋状に構成されたシートで乾燥剤と共に包まれた装置に対して、特許文献1記載の梱包体を適用した場合には、緩衝材と装置表面の間に、袋状のシートが介在することになる。この場合において、運搬作業に伴って、当該梱包体に衝撃が加わると、緩衝材とシートの接触面における大きな摩擦力に起因して、当該シートに破れ等の破損が生じる虞がある。特に、装置の角部近傍において破損が生じる可能性が高い。当該シートの破損により、袋状のシート内の気密性が低下すると、外気が当該シート内に随時流入することになる。この結果、乾燥剤の吸湿性能を超えてしまうので、当該シート内の湿度が上昇し、前記部品の品質劣化を招いてしまう。
【0007】
本発明は、乾燥剤と共に装置をシートで包んだ状態で、緩衝材を用いて梱包する梱包体に関し、当該シートの破損を防止することにより、シート内部の湿度を適切に保ち得る梱包体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る梱包体は、第1シートと、緩衝材と、第2シートと、梱包箱により構成される。第1シートは、気密性の高い材料で袋状に形成されており、乾燥剤と共に梱包される装置の外表面全体を包む。緩衝材は、装置の外表面の内、少なくとも当該装置の角部分に配置される。第2シートは、角部分において、第1シートと緩衝材の間に配置される。梱包箱は、緩衝材の外側から装置全体(即ち、当該装置、乾燥剤、第1シート、第2シート、緩衝材)を覆う。従って、当該装置は、袋状の第1シートにより、乾燥剤と共に包まれているため、当該乾燥剤の吸湿効果により、湿度の低い環境で梱包されることとなる。又、当該梱包体において、装置の角部分に配置される第2シートは、前記緩衝材との間に生じる摩擦力よりも、前記第1シートの間に生じる摩擦力が小さくなる材料により構成されている。ここで、当該梱包体を運搬する際に、衝撃が加わった場合、当該梱包体によれば、第2シートには、緩衝材との間に生じる摩擦力に起因して、裂けや破れが生じる可能性がある。しかしながら、第2シートと第1シートの間に生じる摩擦力は小さいため、当該梱包体によれば、第1シートは、第2シートと共に裂けたり、破れたりすることはない。即ち、当該梱包体は、運搬作業時に衝撃が加わった場合であっても、装置を直接包んでいる袋状の第1シート内を湿度の低い環境に維持しておくことができ、湿度による当該装置の品質低下を防止し得る。
【0009】
そして、請求項2記載の梱包体において、請求項1記載の梱包体であって、前記緩衝材は、装置の上方に配置される上部緩衝材と、前記装置の下方に配置される下部緩衝材と、を有する。そして、第2シートは、前記上部緩衝材と前記第1シートの間に配置される上部第2シートと、前記下部緩衝材と前記第1シートの間に配置される下部第2シートと、により構成されている。従って、当該梱包体によれば、下部第2シートを載せた下部緩衝材に対して、乾燥剤と共に袋状の第1シートで包まれた装置を載せ、当該装置の上部に上部第2シートを掛けた後、上部緩衝材を上部第2シートの上に配置し、梱包箱で梱包し得る。即ち、当該梱包体によれば、上記のような簡単な工程を経ることで、装置における複数の角部を含む広範囲において、緩衝材と第1シートの間に第2シートを介在させることができる。これにより、搬送作業時に衝撃が加わった場合であっても、第1シートの破損を防止することができ、袋状の第1シート内を湿度の低い環境に維持可能な状態にし得る。
【0010】
又、請求項3記載の梱包体において、請求項1記載の梱包体であって、前記緩衝材は、前記装置の上方に配置される上部緩衝材と、前記装置の下方に配置される下部緩衝材と、を有する。そして、前記第2シートは、前記上部緩衝材と前記第1シートの間に配置される部分と、前記下部緩衝材と前記第1シートの間に配置される部分が連続して構成されている。即ち、第2シートは、一枚のシート状に構成されている。従って、当該梱包体によれば、装置の角部に限らず、装置表面のほぼ全体において、第1シートと緩衝材の間に、第2シートを容易に配置することができる。これにより、搬送作業時に衝撃が加わった場合であっても、第1シートの破損を防止することができ、袋状の第1シート内を湿度の低い環境に維持可能な状態にし得る。
【0011】
そして、請求項4記載の梱包体において、請求項2又は請求項3記載の梱包体であって、前記上部緩衝材は、前記装置の上部における一端側に配置される第1上部緩衝材と、前記装置の上部における他端側に配置される第2上部緩衝材と、により構成される。そして、第2シートは、前記第1上部緩衝材と前記第2上部緩衝材を、前記装置の上部に押さえつけることにより、前記第1上部緩衝材及び前記第2上部緩衝材と、前記第1シートの間に配置される。従って、当該梱包体によれば、上部緩衝材と第1シートの間に第2シートを配置する際に、第1上部緩衝材を装置上部に配置する作業と、第2上部緩衝材を装置上部に配置する作業を個別に行うことができる。この結果、当該梱包体によれば、第1上部緩衝材と第1シートの間、及び、第2上部緩衝材と第1シートの間に対して、第2シートを精度よく配置することができる。これにより、装置上部の角部に第2シートを確実に配置することができ、当該角部における第1シートの破損を確実に防止し得る。
【0012】
又、請求項5記載の梱包体において、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の梱包体であって、前記装置は、トナーによって被記録媒体に画像を形成する画像形成装置である。画像形成装置に使用されるトナーは、湿気の影響を強く受け、容易に品質劣化を起こす。当該梱包体によれば、トナーを含む画像形成装置は、袋状の第1シートにより、乾燥剤と共に包まれているため、当該乾燥剤の吸湿効果により、湿度の低い環境で梱包されることとなる。更に、当該梱包体によれば、第2シートと第1シートの間に生じる摩擦力は小さいため、第1シートは、第2シートと共に裂けたり、破れたりすることはない。即ち、当該梱包体は、運搬作業時に衝撃が加わった場合であっても、袋状の第1シート内を湿度の低い環境に維持しておくことができ、トナーを含む画像形成装置の湿気による品質低下を防止し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係る梱包体の構成を示す説明図である。
【図2】梱包体により梱包される複合機の外観斜視図である。
【図3】梱包体により梱包される複合機に関する説明図である。
【図4】第1実施形態における梱包手順の説明図(1)である。
【図5】第1実施形態における梱包手順の説明図(2)である。
【図6】梱包体における複合機の第1角部近傍の状態を示す説明図である。
【図7】第2実施形態に係る梱包体の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る梱包体を、梱包対象装置である複合機10を梱包する梱包体1に具体化した実施形態(第1実施形態)について、図1〜図6を参照しつつ説明する。尚、以下の説明では、複合機10使用時のユーザの位置を基準にした方向を用いて説明する。即ち、図1において、紙面に向かって左下側を「前側」、紙面に向かって右上側を「後側」とし、紙面に向かって左上側を「左側」、紙面に向かって右下側を「右側」とする。又、紙面に向かって上下方向を「上下方向」とする。
【0015】
図1に示すように、第1実施形態に係る梱包体1は、梱包対象である複合機10と、包装袋20と、保護シート25と、上部緩衝材30と、下部緩衝材35と、背面緩衝材40と、段ボール箱45により構成される。
【0016】
複合機10は、トナーを用いて用紙等の被記録媒体に画像を形成可能な印刷機能や、スキャナ機能、コピー機能、ファクシミリ機能を有しており、第1実施形態に係る梱包体1の梱包対象装置である。当該複合機10は、複数のプロセスカートリッジ16が装着されたドロア15を、本体筐体11内に収納している(図3参照)。そして、各プロセスカートリッジ16には、用紙に対する画像形成に用いられるトナーが格納されている。又、本体筐体11は、第1角部11A、第2角部11B、第3角部11Cに例示される角部を有している。これらの角部については、後に図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
包装袋20は、高密度ポリエチレン(High Density Polyethylene:HDPE)製のシートを袋状に加工して形成されており、上述した複合機10を乾燥剤Dと共に包む際に用いられる。尚、当該包装袋20は、本発明における「第1シート」に相当する。
【0018】
保護シート25は、高密度ポリエチレン(High Density Polyethylene:HDPE)製のシートであり、複合機10を梱包する際に、緩衝材(上部緩衝材30、下部緩衝材35)と、包装袋20との間に配置される。尚、保護シートは、本発明における「第2シート」に相当する。
【0019】
又、第1実施形態においては、保護シート25は、上部保護シート25Aと、下部保護シート25Bにより構成される。上部保護シート25Aは、複合機10を梱包する際に、上部緩衝材30と、包装袋20との間に配置される。そして、下部保護シート25Bは、複合機10を梱包する際に、下部緩衝材35と、包装袋20の間に配置される。尚、上部保護シート25Aは、本発明における「上部第2シート」に相当し、下部保護シート25Bは、本発明における「下部第2シート」に相当する。
【0020】
上部緩衝材30は、ポリスチレンを微細な泡で発泡させて硬化させた発泡スチロールにより形成されており、複合機10上部に位置する角部(例えば、後述する第1角部11A等)と、段ボール箱45の間のスペースを充填することで、梱包体1の運搬作業時における衝撃から複合機10を保護する。
【0021】
そして、上部緩衝材30は、第1上部緩衝材30Aと、第2上部緩衝材30Bにより構成される。第1上部緩衝材30Aは、複合機10の左上部分から左側面にかけて配設され、複合機10の左上部や前面左側に位置する角部と、段ボール箱45の間を充填することで、梱包体1の運搬作業時における衝撃から複合機10を保護する。第1上部緩衝材30Aにおいて、複合機10と対向する部分には、複合機10の形状に基づいて成形された装置接触面を有している。
【0022】
第2上部緩衝材30Bは、複合機10の右上部分から右側面にかけて配設され、複合機10の右上部や前面左側に位置する角部と、段ボール箱45の間を充填することで、梱包体1の運搬作業時における衝撃から複合機10を保護する。第2上部緩衝材30Bにおいて、複合機10と対向する部分には、複合機10の形状に基づいて成形された装置接触面を有している。
【0023】
尚、第1上部緩衝材30A、第2上部緩衝材30Bは、本発明における「第1上部緩衝材」「第2上部緩衝材」に相当する。
【0024】
下部緩衝材35は、ポリスチレンを微細な泡で発泡させて硬化させた発泡スチロールにより形成されており、複合機10下部に位置する角部(例えば、後述する第3角部11C等)と、段ボール箱45の間のスペースを充填することで、梱包体1の運搬作業時における衝撃から複合機10を保護する。又、下部緩衝材35の上面には、複合機10の底面近傍の形状に基づいて形成された載置部が形成されている。従って、当該載置部に複合機10等を載置することにより、複合機10等は、下部緩衝材35上の所定位置に位置決めされた状態で梱包され得る。尚、下部緩衝材35は、本発明における「下部緩衝材」に相当する。
【0025】
背面緩衝材40は、ポリスチレンを微細な泡で発泡させて硬化させた発泡スチロールにより形成されており、下部緩衝材35に取り付けられることで、梱包体1の運搬作業時における衝撃から複合機10の背面下部を保護する。又、梱包体1構成時においては、背面緩衝材40の上端部分は、上部緩衝材30の下端よりも複合機10側に位置する。従って、背面緩衝材40は、上部緩衝材30によって位置固定されるため、複合機10の背面側に開閉自在に設けられたドア部(図示せず)が梱包体1の運搬作業時に加わった衝撃によって開放してしまうことを防止し得る。
【0026】
段ボール箱45は、梱包体1の外表面を構成し、上部緩衝材30、下部緩衝材35、背面緩衝材40の外側から、複合機10、包装袋20、保護シート25を覆う。当該段ボール箱45は、上部段ボール箱45Aと、下部段ボール箱45Bにより構成されている。上部段ボール箱45Aは、段ボール箱45の上側部分を構成し、複合機10等の主要な部分を覆う。又、当該上部段ボール箱45Aは、内面により上部緩衝材30、背面緩衝材40と接触し、上部緩衝材30等を複合機10方向に押し付ける。下部段ボール箱45Bは、段ボール箱45の底面部分を構成し、その内部に下部緩衝材35を収容する。尚、段ボール箱45は、本発明における「梱包箱」に相当する。
【0027】
次に、第1実施形態に係る梱包体1による複合機10の梱包作業の流れについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0028】
初めに、第1実施形態に係る梱包体1による梱包対象である複合機10の構成と、梱包作業を行う際の複合機10に対する作業内容について、図2を参照しつつ説明する。複合機10は、本体筐体11の上面にスキャナユニット(図示せず)を有しており、当該本体筐体11内部に、プリンタユニット等の種々の構成部品を格納している。
【0029】
又、当該複合機10は、上部カバー12と、操作パネル13と、前面カバー14と、を有している、上部カバー12は、本体筐体11上部において、上下方向に開閉自在に配設されており、閉じた場合に、スキャナユニットのコンタクトガラス上に、読取対象である原稿を固定する。操作パネル13は、複数の入力キーやディスプレイ等により構成されており、本体筐体11前面側において、前下がり方向に傾斜した傾斜面に配設されている。そして、前面カバー14は、本体筐体11前面下部において、開閉自在に配設されており、当該前面カバー14を開放した場合に、本体筐体11内部にドロア15を取りつけることができる。
【0030】
ここで、当該複合機10における角部について、第1角部11A、第2角部11B、第3角部11Cを例として挙げつつ説明する。尚、本発明における本体筐体11の角部とは、3つの面により構成されており、その内の少なくとも2つの面が直角(又は鋭角)に交わっている部分を意味する。
【0031】
第1角部11Aは、上部カバー12前側の右上部分に位置する角部分である。図2に示すように、当該第1角部11Aは、概略、上部カバー12上面、前面及び右側面により形成され、少なくとも、上部カバー12の前面に対して、上部カバー12の上面及び右側面は略直角に交わっている。
【0032】
第2角部11Bは、概略、操作パネル13が配設された傾斜面と、本体筐体11の前面と、本体筐体11の右側面により構成される。図2に示すように、第2角部11Bは、本体筐体11の右側面に対して、前記傾斜面、及び、本体筐体11の前面が略直角に交わることで構成されている。
【0033】
第3角部11Cは、本体筐体11前側の右下部分に位置する角部分である。図2に示すように、当該第3角部11Cは、本体筐体11の前面、右側面、底面により構成される。第3角部11Cは、本体筐体11の前面に対して、本体筐体11の底面、及び、本体筐体11の右側面が略直角に交わることで構成されている。尚、詳細な説明は省略するが、複合機10における左側にも、第1角部11A〜第3角部11Cと同様に、3つの面により構成され、その内の少なくとも2つの面が直角(又は鋭角)に交わって構成される角部が複数存在している。
【0034】
続いて、第1実施形態に係る梱包体1により複合機10を梱包する際の作業内容について、図3〜図5を参照しつつ詳細に説明する。先ず、図3に示すように、梱包作業者は、先ず、前面カバー14を開放し、プロセスカートリッジ16が装着されたドロア15を、本体筐体11内部の所定位置に装着する。尚、各プロセスカートリッジ16は、当該複合機10における画像形成に用いられるトナーを格納している。尚、当該トナーは、湿度の影響を受けて、品質劣化を生じる。又、梱包作業者は、前面カバー14内壁面に形成された取付部に対して、シリカゲル等で構成された乾燥剤Dを取り付け、前面カバー14を閉じる。このように、梱包時において、予め、複合機10内にプロセスカートリッジ16(トナー)を装着した状態にしておくことで、梱包対象を小さくしている。
【0035】
複合機10の本体筐体11内部に、ドロア15及び乾燥剤Dを装着した後、梱包作業者は、包装袋20により、当該複合機10を包む。この時、梱包作業者は、包装袋20内部の気密性を高めるべく、粘着テープ等を用いて、包装袋20により複合機10を密封する(図4参照)。この結果、当該包装袋20内部は、乾燥剤Dの吸湿効果により、湿度の低い環境となる。
【0036】
包装袋20により複合機10を包んだ後、梱包作業者は、下部緩衝材35背面側の所定位置に対して、背面緩衝材40を取り付けると共に、下部緩衝材35の載置部上に、下部保護シート25Bを拡げて載置する(図4参照)。そして、梱包作業者は、包装袋20で包まれた複合機10を、下部保護シート25Bの上から下部緩衝材35の載置部に載置する(図4参照)。これにより、複合機10の下部においては、下部緩衝材35と包装袋20の間に、下部保護シート25Bが配置された状態となる。尚、下部保護シート25Bは、複合機10が載置された場合に、装置右側に或る第3角部11C、更に、装置左側に或る同様の角部に届くサイズに形成されている。
【0037】
そして、複合機10上部側に対しては、梱包作業者は、先ず、包装袋20で包まれた複合機10の上部に対して、上部保護シート25Aを掛ける(図4参照)。その後、梱包作業者は、上部保護シート25Aの上から、包装袋20に包まれた複合機10上部に対して、上部緩衝材30(第1上部緩衝材30A、第2上部緩衝材30B)を取り付ける。これにより、複合機10の上部においては、上部緩衝材30と包装袋20の間に、上部保護シート25Aが配置された状態となる(図6参照)。尚、上部保護シート25Aは、複合機10の上部側に掛けた場合に、装置右側にある第1角部11A、第2角部11B、更に、装置左側にある同様の角部に届くサイズに形成されている。
【0038】
又、この時、梱包作業者は、第1上部緩衝材30A、第2上部緩衝材30Bの何れか一方を、包装袋20に包まれた複合機10上部の一端側に取り付けた後、他方を、包装袋20に包まれた複合機10上部の他端側に取り付ける。このように、上部緩衝材30の配設作業を、第1上部緩衝材30Aの配設作業と、第2上部緩衝材30Bの配設作業に分割して行うことにより、梱包作業者は、第1上部緩衝材30Aと包装袋20の間と、第2上部緩衝材30Bと包装袋20の間の何れについても、上部保護シート25Aを精度よく配置することができる。つまり上部緩衝材30を分割することで、第1上部緩衝材30A、第2上部緩衝材30Bの個々のサイズを小さくすることができ、梱包作業者による上部緩衝材30の取り扱いが行いやすくなる。これにより、複合機10上部に第1上部緩衝材30A、及び第2上部緩衝材30Bを取り付ける際に、上部保護シート25Aを適切な位置に押さえながら作業することが可能となり、上部保護シート25Aのズレを防止しつつ、上部緩衝材30の取付作業を行い得る。
【0039】
包装袋20で包まれた複合機10に対して、上部緩衝材30、下部緩衝材35、背面緩衝材40を取り付けた後、梱包作業者は、先ず、下部段ボール箱45B内に下部緩衝材35部分を収納し、上方から上部段ボール箱45Aをかぶせる。これにより、梱包作業者は、第1実施形態に係る梱包体1による複合機10の梱包作業を終了する。このように、第1実施形態に係る梱包体1によれば、上述した簡単な作業内容で、複合機10の角部近傍において、包装袋20と緩衝材(上部緩衝材30、背面緩衝材40)の間に、保護シート25を配置し得る。
【0040】
続いて、第1実施形態に係る梱包体1における角部近傍の構成について、図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下の説明においては、複合機10の角部のうち、第1角部11A近傍を例に挙げて説明する。この点、第2角部11B、第3角部11Cを含む他の角部においても、その構成や効果等は同様である。
【0041】
図6に示すように、第1実施形態に係る梱包体1によれば、第1角部11A近傍においても、上部保護シート25Aが、包装袋20と第2上部緩衝材30Bの間に位置する。ここで、第2上部緩衝材30Bは、所謂「発泡スチロール」で形成されており、包装袋20及び上部保護シート25Aは、高密度ポリエチレン製のシートにより構成されている。又、第2上部緩衝材30Bは、複合機10の第1角部11Aの角形状に沿うように装置接触面が形成されており、梱包が完了した状態では、第1角部11Aに対して、第2上部緩衝材30Bは、包装袋20及び上部保護シート25Aを間に挟んで、押圧された状態になっている。従って、当該梱包体1の運搬作業時に衝撃が加わった場合、上部保護シート25Aは、当該上部保護シート25Aと第2上部緩衝材30Bの間に生じた摩擦力に起因して、裂けたり破れたりする虞がある。しかし、上部保護シート25Aと包装袋20の間に生じる摩擦力は小さい為、上部保護シート25Aと包装袋20とが相対的に滑り、包装袋20は、上部保護シート25Aと共に、裂けたり、破れたりすることはない。
【0042】
即ち、第1実施形態に係る梱包体1によれば、当該梱包体1の運搬作業時に衝撃が加わった場合、包装袋20や保護シート25の破損が最も生じやすい装置の角部であっても、包装袋20に、裂けや破れ等の破損を生じることはない。つまり、第1実施形態に係る梱包体1によれば、運搬作業時に衝撃が加わった場合であっても、包装袋20内を湿度の低い環境に維持しておくことができる。これにより、当該梱包体1は、複合機10及び乾燥剤Dと共に包装袋20内に存在するトナーの品質劣化を防止し得る。
【0043】
(第2実施形態)
続いて、上述した第1実施形態と異なる実施形態について、図7を参照しつつ説明する。当該第2実施形態においては、複合機10、包装袋20、上部緩衝材30、下部緩衝材35、背面緩衝材40、及び段ボール箱45の基本的構成は、上述した第1実施形態と同一であるため、その説明は省略する。
【0044】
図7に示すように、第2実施形態においては、第1実施形態における保護シート25(上部保護シート25A、下部保護シート25B)に換えて、保護用包装袋50を用いている。ここで、保護用包装袋50は、第1実施形態に係る保護シート25と同様に、高密度ポリエチレン(High Density Polyethylene:HDPE)製のシートで袋状に形成されており、複合機10を梱包する際に、緩衝材(上部緩衝材30、下部緩衝材35)と、包装袋20との間に配置される。尚、保護用包装袋50は、本発明における「前記上部緩衝材と前記第1シートの間に配置される部分と、前記下部緩衝材と前記第1シートの間に配置される部分が連続して構成された第2シート」に相当する。
【0045】
続いて、第2実施形態に係る梱包体1による梱包作業の内容について、第1実施形態との相違点に着目して説明する。第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、梱包作業者は、先ず、乾燥剤Dと、プロセスカートリッジ16が装着されたドロア15を、複合機10の本体筐体11内部に格納する。その後、梱包作業者は、包装袋20により、複合機10を包み、粘着テープ等により、包装袋20内部を密封する。
【0046】
上述したように、第2実施形態においては、第1実施形態における保護シート25に換えて、保護用包装袋50を用いる。つまり、第2実施形態に係る梱包体1においては、第1実施形態における「下部緩衝材35上に下部保護シート25Bを拡げて載置する作業」と、「包装袋20で包まれた複合機10の上部に上部保護シート25Aを掛ける作業」に換えて、梱包作業者は、「包装袋20で包まれた複合機10を、更に、保護用包装袋50で包む作業」を行う。
【0047】
従って、梱包作業者は、包装袋20で包まれた複合機10に対して、保護用包装袋50を被せ、粘着テープ等により密封する。即ち、複合機10は、包装袋20及び保護用包装袋50によって2重に袋詰めされることとなる。これにより、複合機10を包む包装袋20の外側には、どの部分においても、保護用包装袋50が位置することとなる。
【0048】
その後、梱包作業者は、包装袋20及び保護用包装袋50で包まれた複合機10を、下部緩衝材35の載置部に載置する。これにより、下部緩衝材35と包装袋20の間には、確実に、保護用包装袋50が配置される。又、梱包作業者は、包装袋20及び保護用包装袋50で包まれた複合機10の上部に対して、第1上部緩衝材30A、第2上部緩衝材30Bを取り付ける。上述したように、包装袋20で包まれた複合機10は、保護用包装袋50で表面全体が包まれているため、保護用包装袋50は、確実に、上部緩衝材30(第1上部緩衝材30A、第2上部緩衝材30B)と、包装袋20との間に位置する。
【0049】
以上説明したように、第2実施形態に係る梱包体1によれば、上述した第1実施形態と同様の効果を奏する。更に、第2実施形態に係る梱包体1によれば、梱包作業者は、包装袋20で包まれた複合機10を、更に保護用包装袋50で包み、その外側から上部緩衝材30、下部緩衝材35を取り付ける。従って、第2実施形態に係る梱包体1によれば、複合機10の角部近傍において、保護用包装袋50は、確実に、包装袋20と緩衝材(上部緩衝材30、下部緩衝材35)の間に位置する。この結果、当該第2実施形態に係る梱包体1は、運搬作業時に衝撃が加わった場合であっても、包装袋20の破損を確実に防止することができ、包装袋20内を湿度の低い環境に維持し得る。これにより、当該梱包体1は、複合機10及び乾燥剤Dと共に包装袋20内に存在するトナーの品質劣化を防止し得る。
【0050】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、上述した実施形態においては、梱包体1により梱包される装置として、複合機10を挙げていたが、この態様に限定されるものではない。即ち、梱包体1により梱包される装置としては、湿度の影響により品質低下が生じ得る部品等と同梱される装置であればよい。例えば、トナーカートリッジ等と同梱されるレーザープリンタ等であっても良い。
【0051】
又、上述した実施形態においては、上部緩衝材30は、第1上部緩衝材30Aと、第2上部緩衝材30Bによって構成していたが、この態様に限定されるものではない。例えば、装置上部全体を保護する一の上部緩衝材により構成することも可能である。更に、保護シート25は、梱包対象の角部に配置されればよく、その形状、大きさ、枚数は、上述した実施形態に係る態様に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0052】
1 梱包体
10 複合機
15 ドロア
16 プロセスカートリッジ
20 包装袋
25 保護シート
25A 上部保護シート
25B 下部保護シート
30 上部緩衝材
30A 第1上部緩衝材
30B 第2上部緩衝材
25B 下部保護シート
30 上部緩衝材
30A 第1上部緩衝材
30B 第2上部緩衝材
35 下部緩衝材
45 段ボール箱
D 乾燥剤


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥剤と共に梱包される装置の外表面全体を包み、気密性の高い材料で袋状に形成された第1シートと、
前記装置の外表面のうち、少なくとも当該装置の角部分に配置される緩衝材と、
前記角部分において、前記第1シートと前記緩衝材の間に配置される第2シートと、
前記緩衝材の外側から前記装置全体を覆う梱包箱と、から構成される梱包体であって、
前記第2シートは、
前記緩衝材との間に生じる摩擦力よりも、前記第1シートの間に生じる摩擦力が小さくなる材料により構成されている
ことを特徴とする梱包体。
【請求項2】
請求項1記載の梱包体であって、
前記緩衝材は、
前記装置の上方に配置される上部緩衝材と、
前記装置の下方に配置される下部緩衝材と、を有し、
前記第2シートは、
前記上部緩衝材と前記第1シートの間に配置される上部第2シートと、
前記下部緩衝材と前記第1シートの間に配置される下部第2シートと、により構成されている
ことを特徴とする梱包体。
【請求項3】
請求項1記載の梱包体であって、
前記緩衝材は、
前記装置の上方に配置される上部緩衝材と、
前記装置の下方に配置される下部緩衝材と、を有し、
前記第2シートは、
前記上部緩衝材と前記第1シートの間に配置される部分と、前記下部緩衝材と前記第1シートの間に配置される部分が連続して構成されている
ことを特徴とする梱包体。
【請求項4】
請求項2又は請求項3記載の梱包体であって、
前記上部緩衝材は、
前記装置の上部における一端側に配置される第1上部緩衝材と、
前記装置の上部における他端側に配置される第2上部緩衝材と、により構成され、
前記第2シートは、
前記第1上部緩衝材と前記第2上部緩衝材を、前記装置の上部に押さえつけることにより、前記第1上部緩衝材及び前記第2上部緩衝材と、前記第1シートの間に配置される
ことを特徴とする梱包体。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れかに記載の梱包体であって、
前記装置は、
トナーによって被記録媒体に画像を形成する画像形成装置である
ことを特徴とする梱包体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−91798(P2012−91798A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238466(P2010−238466)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】