説明

棒材の個別送り装置

【課題】断面が円形である複数の棒材を互いに平行に且つ隣接させつつ個別にして、後工程へ確実且つ円滑に送れる個別送り装置を提供する。
【解決手段】断面が円形である複数の棒材Mを互いに平行且つ隣接させて載置部5に支持し、複数の棒材Mをその径方向で且つ水平方向に沿って送る横送り手段2と、横送り手段2にて送り方向の先端に位置する載置部5に支持された複数の棒材Mを、上記横送りのレベルと回転中心がほぼ同じである複数の旋回板21によって、送り方向の先端側が低く且つ基端側が上記横送りのレベルよりも高くなるように傾斜させて支持し、係る傾斜姿勢で揺動させる傾動手段20と、複数の旋回板21上に直交して支持された複数の棒材Mを、送り方向の先端側に位置するものから個別に径方向に沿って受け取り、隣接する搬送式床7上に送る送り出し手段40と、を含む、棒材の個別送り装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断面が円形である複数の棒材を互いに平行に且つ隣接させつつ個別にして後工程に送り出す個別送り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、熱間圧延などにより円形の断面とされた長尺な棒鋼は、エメリソーによって所定長さごとに複数本に切断され、それらの長手方向に送られた後、所定位置で径方向に沿って、順に送られ且つ冷却されつつ、検査工程(後工程)に送られる。
例えば、複数の丸鋼を少量ずつ順次円滑に切り出して払い出すため、束状にされた複数の丸鋼のうち、上方に位置する丸鋼から傾斜角度が一定である傾斜スキッド上を転がし、係る傾斜スキッドの途中に設けられ、当該スキッド上に出没可能に傾動する可動ストッパによって、個々の丸鋼を径方向に沿って順送りさせる長尺丸断面材料の払い出し装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−255752号公報 (第1〜6頁、図1〜6)
【0004】
しかし、前記特許文献1の払い出し装置による場合、個々の丸鋼(棒鋼)に曲がりがあると、前記傾斜スキッド上の途中で転がらなくなつたり、あるいは、前記可動ストッパで順送りされた複数の丸鋼が、傾斜スキッドの下がった送り出し側で団子状に固まってしまう、というおそれがある。このため、一旦前記払い出し装置を停止させ、個々の丸鋼を手作業で、傾斜スキッド上に整列させる必要が生じるため、生産効率が低下してしまう、という問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、背景技術において説明した問題点を解決し、断面が円形である複数の棒材を互いに平行に且つ隣接させつつ個別にして、後工程へ確実且つ円滑に送れる個別送り装置を提供する、ことを課題とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するため、複数ずつの棒材を、上昇する旋回板上に持ち上げつつ径方向に傾斜させ且つ小刻みに揺動させて、送り方向の先端に位置する棒材から個別に送り出すようにする、ことに着想して成されたものである。尚、本明細書中の棒材には、棒鋼や鋼管のほか、非鉄金属の棒材や管も含まれる。
即ち、本発明による棒材の個別送り装置(請求項1)は、断面が円形である複数の棒材を互いに平行で且つ隣接させて載置部に支持し、係る複数の棒材をその径方向で且つ水平方向に沿って送る横送り手段と、係る横送り手段において、上記送り方向の先端に位置する載置部に支持された複数の棒材を、上記横送りのレベルと回転中心がほぼ同じである複数の旋回板によって、送り方向の先端側が低く且つ基端側が上記横送りのレベルよりも高くなるように傾斜させて支持し、係る傾斜姿勢で揺動させる傾動手段と、上記複数の旋回板上に直交して支持された複数の棒材を、上記送り方向の先端側に位置するものから、個別に径方向に沿って受け取りまたは取り出して、隣接する搬送式床上に送る送り出し手段と、を含む、ことを特徴とする。
【0007】
これによれば、予め、互いに平行で且つ径方向に沿って隣接する複数の棒材は、横送り手段の各載置部に支持されつつ径方向に沿って送られ、係る載置部が送り方向の先端側に達した際に、傾動手段における複数の旋回板によって斜め上方に持ち上げられ、送り方向の先端側が低く且つ基端側が高くなるような傾斜した姿勢とされる。係る傾斜姿勢とされた複数の棒材は、これらを支持する複数の旋回板が行う比較的小さな傾動角度を伴った小刻みな揺動(微振動)を受けるため、送り方向の先端側である低位置寄りに、それぞれ自転しつつ確実に整列する。その結果、各旋回板における送り方向の先端側に達した棒材から、後述する送り出し手段によって、確実に径方向に沿って個別に受け取りまたは取り出されて、搬送床上に順次送られる。従って、仮に棒材に曲がりあっても、従来のような傾斜した姿勢での停止や、複数の棒鋼が団子状に重なることなく、後工程へ確実且つ円滑にして送り出すことができる。
【0008】
尚、前記横送り手段は、例えば、側面視が長円形を呈するエンドレスとした複数組のチェーンと、各組ごとのチェーンの両端に配置した一対のスプロケットとからなる形態のほか、上記同様にエンドレスとしたメッシュベルトと、その両端に配置した一対のプーリまたはローラとからなる形態などが含まれる。
また、前記横送り手段の載置部上に複数の棒材を供給するため、横送り手段における棒材の送り方向と反対側に隣接して、互いに平行に隣接して整列された複数の棒材を、水平方向の移動および垂直方向の昇降を可能とする給材手段が配置される。係る給材手段は、例えば、複数の棒材を支持し且つレール上を走行可能な台車と、上記レールを有するフレームを昇降させるクランク機構などと、係る機構を作動させる駆動手段(モータまたは流体圧シリンダ)と、を備えている。
【0009】
更に、前記複数の旋回板を含む傾動手段は、複数の旋回板を同期して旋回させるリンク機構と、係るクランク機構を作動させる駆動源と、を備えている。
また、上昇して傾斜姿勢となった旋回板に対し、前記回転中心を中心として小刻みな揺動をさせるため、旋回板の傾動用と共通、あるいは専用のモータなどの駆動源により作動する、クランク機構における先端側のリンクが、係る旋回板の中間に接続される。係る揺動(微細な振動)は、旋回板の上昇直後から一定時間にわたり実行するように、予めモータなどの制御装置に記録されている。因みに、旋回板が上昇した際の水平線に対する傾斜角度は、約10〜30度であり、係る傾斜姿勢に対する揺動角度は、+0.5〜2度、または±約1度である。
加えて、前記搬送式床には、例えば、レツヘン式冷却床が挙げられる。
【0010】
また、本発明には、前記傾動手段における複数の前記旋回板の間には、係る旋回板が傾斜した姿勢で、複数の棒材を支持する上辺の先端側と、側面視にて上辺が重複する固定傾斜板が配置されている、棒材の個別送り装置(請求項2)も含まれる。
これによれば、複数の旋回板の間に、固定傾斜板を配置することで、前記揺動に伴って旋回板の上辺に沿って低い先端側に転動してきた複数の棒材を、径方向に沿って隣接し且つ整列した状態で、上記固定傾斜板の上辺に支持できるため、複数の旋回板を下降させることができる。しかも、係る固定傾斜板と傾斜角度が異なる状態の旋回板上の棒材を一旦停止させることもできるため、複数の棒材を団子状にせずに整列させられる。従って、送り出し手段に対し、先端側の棒材から順次確実に送り出すことができる。
尚、前記固定傾斜板は、前記複数の旋回板ごとに隣接するように複数個を配置しても良い。また、前記固定傾斜板の上辺は、上昇した旋回板の傾斜する上辺と重複するほか、前記揺動時の最上昇位置の上辺と重複する傾斜角度としても良い。
【0011】
更に、本発明には、前記送り出し手段は、側面視で上辺がほぼ三角形の連続する凹・凸部を有する固定板と、係る固定板と上辺が同じ形状を有し、側面視で互いに重複可能にして配置され、且つ固定板に対し平行な面内で円形運動、長円形運動、楕円形運動、または箱形運動を行う可動板とからなる、棒材の個別送り装置(請求項3)も含まれる。
これによれば、揺動する複数の旋回板に沿って、各旋回板における送り方向の先端部に達した棒材から、固定板の凹部によって送り方向に順次受け取り、可動板の凹部による受け取り移動により、係る固定板の各凹部ごとに順送りできる。しかも、係る受け取りおよび送り動作を高速度で行えるので、複数の棒材を、搬送床上に効率良く送り出すことも可能となる。
【0012】
付言すれば、本発明には、前記送り出し手段は、前記旋回板上に支持され且つ前記送り方向の先端側に移動する棒材を係る旋回板の上辺の先端部で停止させる停止片と、上記旋回板に隣接する搬送式床における固定枠の下方に回転中心を有し、旋回板寄りの上端部に係止片を有する回転可能な取出しレバーと、からなる、棒材の個別送り装置も含まれ得る。
これによる場合、旋回板上における送り方向の先端側に位置する棒材から、上記停止片と取出しレバーの係止片とによって、径方向に沿って挟みつつ順次取り出して、搬送床上に順送りすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下において、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、本発明の一形態である棒材の個別送り装置(以下、単に送り装置と称する)1の概略を示す斜視図である。尚、図1中において、白抜きの矢印は、棒材(M)の送り方向を示し、以下において、係る矢印の穂先側を先端側、当該矢印の根元側を基端側と称する。
送り装置1は、図1に示すように、断面が円形を呈し互いに平行で且つ径方向に隣接する複数の棒鋼(棒材)Mを水平方向に沿って送る横送り手段2と、複数の棒鋼Mを支持しつつ傾斜させる複数の旋回板21を含む傾動手段20と、旋回板21,21間に配置された複数の固定傾斜板34と、旋回板21ごとの先端側に隣接する複数の送り出し手段40と、を備えている。
尚、送り出し手段40の先端側には、棒鋼Mを次工程に順次搬送するレツヘン式冷却床(搬送式床)7が隣接している。
【0014】
棒鋼Mは、各種の鋼材を熱間圧延などにより、断面円形に成形された後、複数本が同時に所望の長さに切断されたもので、直径が約15〜50mmで、且つ長さが約3〜8mで、図示しないコンベア上を長手方向に沿って送られた後、所定位置のストッパで停止され、順次径方向に沿って複数本が隣接して平行とされる。係る複数の棒鋼Mは、後述する給材手段10により、横送り手段2の各載置部5に支持される。
横送り手段2は、図1に示すように、送り方向に沿って配置された側面視が長円形を呈するエンドレスとした複数組のチェーン4と、各組ごとのチェーン4の両端部に配置した一対のスプロケット3とからなる。一部のチェーン4の外側には、爪片6が一体に突設され、係る爪片6を有するチェーン4は、等間隔に配置され、これらの間に複数の棒鋼Mを支持する複数の載置部5が位置している。
【0015】
図2に示すように、横送り手段2の送り方向と反対の基端側には、各載置部5に複数の棒鋼Mを供給する給材手段10が配置されている。係る給材手段10は、横長のフレーム11と、その上に敷設されたレール12上を車輪17を介して送り方向に沿って走行可能とされた台車16と、フレーム11とフロアFとの間に配置され、当該フレーム11を昇降させるリンク14,15とを備えている。上記台車16は、複数の棒鋼Mを載置する荷台の送り方向の前後にストッパ18を有し、フレーム11の前・後端に一端を巻き取り可能にそれぞれ取り付けたロープ19が前・後面に接続されている。尚、図2中の符号13は、フロアF上に固定され、L字形リンク14を回転可能に支持する縦板である。
予め、図2の右側に示すように、図示しないコンベア上を図2の奥行き方向に沿って搬送された複数の棒鋼Mは、図示しないストッパによって径方向に隣接して整列されている。この際、フレーム11および台車16は、上記整列された複数の棒鋼Mよりも低い位置にある。フレーム11は、これに固定された上リンク15およびこれにピン結合するL字形リンク14を介して、昇降可能に支持されている。
【0016】
次に、L字形リンク14における上リンク15と反対側に位置する連結ピンに、図示しないクランク機構の横行ロッド14aの一端を連結し、図2中の矢印で示すように、係るロッド14aを右側に引っ張る。その結果、図2の左側に示すように、L字形リンク14における上リンク15側が斜め上向きとなり、これによって上昇した上リンク15とフレーム11とにより、台車16上に上記複数の棒鋼Mが載置される。係る上昇した際に、複数の棒鋼Mの最低部は、前記チェーン4の載置部5のレベル(横送りのレベル)よりも高くなっている。
係る状態で、台車16上に移された複数の棒鋼Mは、ロープ19を巻き取り操作により、台車16と共に送り方向(図2中の左側)に移動される。
次いで、横方向に移動した台車16が、送り方向の先端側に達した際に、前記と逆にL字形リンク14のリング15側を斜め下向き姿勢とし、台車16およびフレーム11を下降させる。その途中で、図1に示すように、複数の棒鋼Mは、チェーン4,4の隣接する載置部5,5に移行し且つこれらに跨って支持される。
【0017】
図1に示すように、横送り手段2におけるチェーン4,4の載置部5,5に支持されつつ、送り方向の先端側に送られた複数の棒鋼Mは、傾動手段20における複数の旋回板21,21によって、送り方向の斜め前方に向かって傾斜するように持ち上げられる。
傾動手段20は、図1,図3に示すように、横送り手段2のチェーン4上の棒鋼Mの横送りレベルと回転中心がほぼ同じレベルの回転軸(回転中心)25を中心に回転する複数の旋回板21と、係る旋回板21を昇降および揺動させる昇降ロッド27とを含む。旋回板21は、全体が側面視でほぼL字形を呈し、棒鋼Mを支持する直線状の上辺22、その後端から上向きに突出するストッパ24、上辺22の後端側からカーブして垂下し、下向きの尖った下端23aを有する縦片23、および、回転軸25と縦片23との中間の下辺側において昇降ロッド27と結合するピン26を有している。
【0018】
図3に示すように、昇降ロッド27は、フロアF上に立設された下リンク30にピン結合された横リンク28の先端とピン結合されている。また、係る横リンク28は、これとほぼ直角の異なる方向に先端が突出する縦リンク29と一体に回転可能とされている。係る縦リンク29の先端には、横行ロッド32が連結され、係るロッド32を含むクランク機構を介して、モータ(何れも図示せず)に連結されている。尚、係るモータには、後述する揺動の駆動源としても適したステッピングモータあるいはサーボモータが用いられる。
予め、図3中の一点鎖線で示すように、横行ロッド32は、図3で左側に延びており、これによりに左側に押された横リンク28の先端が斜め下向きとなる。このため、ロッド27が下降し、旋回板21は、その縦片23が送り方向と反対側に下降するので、その上辺22がチェーン4の載置部5(横送りのレベル)よりも低くなっている。
【0019】
次に、前記モータを駆動させ且つクランク機構を介して、図3中の実線で示すように、横行ロッド32を右側に引っ張ると、縦リンク29が図3で右側に傾くと共に、横リンク28の先端が斜め上向きとなり、且つ昇降ロッド27が上昇する。
その結果、図1,図3の実線で示すように、旋回板21は回転軸25を中心に回転し、上辺22の送り方向の先端側が低く且つ基端側がチェーン4の載置部5よりも高くなるような傾斜姿勢となる。係る傾斜した旋回板21の上辺22の傾斜角度は、水平線(仮想線)に対し、上方に向かって約10〜30度である。
【0020】
更に、旋回板21は、上記傾斜姿勢において、回転軸25を中心に上下に約1度の小刻みな連続した揺動(小さい角度で連続する正・逆回転による微振動)を行う。即ち、正・逆回転手段(図示せず)を介して横行ロッド32を左右に短い距離で反復して横行することで、縦リンク29・横リンク28および昇降ロッド27を介して、図3中の二点鎖線で示すように、旋回板21の上辺22を、上下に約1度(上向きに1度)で連続して揺動させる。係る揺動を行うことで、上辺22に支持された複数の棒鋼Mを、確実に自転させながら、低い先端側に送れる。
このため、図4の模式的なグラフで示すように、横行ロッド32を駆動する前記モータを制御する制御装置の記録部(何れも図示せず)は、旋回板21を所定角度まで上昇させた後、前記角度で揺動するように、予めプログラムされている。
【0021】
また、固定傾斜板34は、図1に示すように、旋回板21ごとに隣接(旋回板21,21間)して複数個が配置され、図3に示すように、側面視でほぼく字形を呈し、上昇した旋回板21の上辺22と、重複する斜め上向きの上辺36と、図示しない構造物に固定するために斜め下向きの固定部38と、を有している。
更に、送り出し手段40は、図1,図3に示すように、互いに平行な一点鎖線で示す固定板42と、実線で示す可動板44とを複数組含んでいる。係る固定板42および可動板44は、側面視で上辺がほぼ三角形の連続する同じ形状の複数の凹部v・凸部mを、送り方向に沿って直線状に有している。
【0022】
図3に示すように、可動板44は、台車46上から立設する縦板45に支持されている。係る台車46は、フレーム49に敷設したレール48上に配置され、フレーム49の先端側に取り付けたエアシリンダ47のピストンロッドを介して、送り方向に沿ってを走行可能とされている。また、フレーム49は、フロアFとの間に設けた前記同様のクランク機構Kによって昇降可能とされている。係るクランク機構Kによる昇降動作と、上記エアシリンダ47による送り方向に沿った往復移動とが併用されることで、可動板44は、図1,図3中の矢印で示すように、固定板42と平行な面(仮想面)内において側面視で円形運動を行う。
その結果、可動板44が円形運動の上側で且つ送り方向に沿って移動する際、その凹部v・凸部mは、固定板42の凹部vおよび凸部mと重複する状態と、互いに1ピッチずつずれた状態と、を交互に繰り返す。
【0023】
図3に示すように、固定板42における基端側は、前記固定傾斜板34の先端側に隣接して位置するため、前記傾斜姿勢で揺動を受けつつ自転した棒鋼Mを、両者の間で停止させることができる。この際、固定傾斜板34の上辺36における先端側の棒鋼Mは、円形運動する可動板44における基端側の凹部vに、支持されて先端側に移動するため、固定板42における基端側の凹部vに確実に送られる。次いで、固定板42における基端側の各凹部vに支持された棒鋼Mは、可動板44の凸部mが、径方向で且つ前記円形運動のうち上側を送り方向に沿って移動する際に、固定板42の凸部mに沿ってほぼ逆U字形の軌跡を経て、該固定板42の送り方向に隣接する凹部vに1ピッチ分送られる。
以上の動作を連続させることで、旋回板21および固定傾斜板34の上辺22,36に沿って先端側に自転した複数の棒鋼Mは、固定板42の送り方向における基端側の凹部vから先端側の凹部vへと、順次1ピッチずつ送られる。
【0024】
図1,図3に示すように、固定板42の送り方向における先端側の凸部mに隣接して配置されるレツヘン式冷却床(搬送式床)7は、一点鎖線で示す固定枠8と、実線で示す可動枠9とを平行に複数組有している。係る固定枠8および可動枠9の上辺は、側面視で上辺がほぼ三角形の連続する同じ形状の複数の凹部v・凸部mを直線状に有している。また、可動枠9は、図1中の矢印で示すように、前記取り出し手段40の可動板44と同様な円形運動が可能とされている。
前記送り出し手段40の可動板44によって、固定枠8における送り方向の基端側の凹部vごとに支持された棒鋼Mは、可動枠9を円形運動させることで、固定枠8の送り方向における基端側の凹部vから先端側の凹部vへと、順次1ピッチずつ送られる。
【0025】
以上において、説明した複数の棒鋼M全体の送り動作を以下にて説明する。
図5の上側に示すように、横送り手段2におけるチェーン4の各載置部5に支持された複数の棒鋼Mは、送り方向の先端側に送られた際、傾動手段20の上昇する旋回板21によって、図5の下側に示すように、送り方向の先端側が低く且つ基端側が載置部5(横送りのレベル)よりも高くなるように傾斜した姿勢とされる。この際、各旋回板21の縦片23の尖った下端部23aは、先端側の載置部5およびこれに隣接する載置部5との間の爪片6付近に位置し、チェーン4上における棒鋼Mの不用意な横移動を阻止している。
次に、傾斜姿勢とされた複数の棒鋼Mは、各旋回板21の揺動を受けることで、図5の下側中の二点鎖線で示すように、旋回板21の上辺22を低い先端側に自転しつ順次移動する。次いで、旋回板21の上辺22の先端部に達し、且つ固定傾斜板34の上辺36上に整列した棒鋼Mのうち、先端側の棒鋼Mが固定板42に当たって停止する。係る先端側の棒鋼Mから、可動板44の凹部vに受け取られ、送り出し手段40の固定板42における基端側の凹部vに順次受け入れられた後、前記円形運動を行う可動板44の凸部mに押されて、固定板42の送り方向における基端側の凹部vから先端側の凹部vへと、順次1ピッチずつ送られる。
【0026】
更に、図5の下側に示すように、送り出し手段40の固定板42における送り方向先端側の凹部vに順送りされた棒鋼Mから、可動板44に順次押されて、レツヘン式冷却床7の固定枠8における送り方向の基端側の凹部vに支持される。そして、上記複数の棒鋼Mは、円形運動を行う可動枠9の凸部mに押されて、固定枠8の送り方向における先端側の凹部vへと、順次1ピッチずつ送られる。
尚、レツヘン式冷却床7の固定枠8における送り方向の凹部vに送られた棒鋼Mは、図示しない移送手段によって、検査工程などの後工程に順次移送される。
【0027】
以上のような個別送り装置1によれば、横送り手段2の載置部5に支持されつつ径方向に沿って横送りされた複数の棒鋼Mは、送り方向の先端側に達した際に、傾動手段20の旋回板21によって斜め上方に持ち上げられ、先端側が低く且つ基端側が高くなるような傾斜した姿勢とされる。次に、複数の棒鋼Mは、旋回板21が行う小刻みな揺動を受けるため、送り方向の先端側である低位置寄りに、それぞれ自転しつつ確実に移動する。その結果、旋回板21の先端側に達した棒鋼Mから、送り出し手段40の固定板42により停止し、更に可動板44によって、固定板42の凹部vに確実に個別に受け取られ、且つ径方向に沿ってレツヘン式冷却床7上に順次送られる。従って、棒鋼Mに曲りがあっても、旋回板21の上辺22上での傾斜姿勢での停止や、複数の棒鋼Mが団子状に重なりを生じることなく、冷却や検査などの後工程へ確実且つ円滑に送り出すことができる。
【0028】
図6,図7は、前記個別送り装置1の変形形態である個別送り装置1aの要部を示す側面図である。
送り装置1aも、前記同様の横送り手段2、傾動手段20、およびレツヘン式冷却床(搬送式床)7を備えている。係る個別送り装置1aが前記送り装置1と相違しているのは、前記送り出し手段40に替えて、図6に示すような送り出し手段50を有する点である。
送り出し手段50は、図6に示すように、前記旋回板21の上辺22の先端部付近で立設する停止片60と、前記レツヘン式冷却床7における固定枠8の下方に回転中心のピン53を有し、その上辺52における旋回板21寄りの上端部に逆V字形の係止片54を有する回転可能な取出しレバー51と、を備えている。
【0029】
図6に示すように、上記停止片60は、各旋回板21ごとに隣接して配置される固定片62の上方に一体に立設している。
一方、取出しレバー51は、冷却床7寄りの下端部で、昇降ロッド55とピン結合され、係るロッド55は、その下端とピン結合した縦リンク56、およびこれと同軸で回転する斜めリンク57を介して、当該リンク57の先端部にピン結合した横行ロッド58と連動可能とされている。尚、上記リンク56,57は、フロアF上に立設する下リンク59に回転可能に支持されている。
図6に示すように、傾斜姿勢のまま揺動する各旋回板21の上辺22に沿って複数の棒鋼Mが、上辺22における送り方向の先端側に自転しつつ移動すると、断面をハッチングで示す最先端の棒鋼Mは、複数の停止片60によって、それらの右側で停止される。
【0030】
係る状態で、図7に示すように、図示しないモータおよびクランク機構によって、横行ロッド58の図示で右側に横移動させると、斜めリンク57および上リンク56が右側に回転するため、昇降ロッド55が下降する。係る昇降ロッド55の下降に伴って、取出しレバー51は、ピン53を回転中心として、その係止片54側が上昇するように回転する。係る係止片54が上昇すると、その逆V字形の上端部が、停止片60で停止している最先端の棒鋼Mと隣接する棒鋼Mとの間に進入し、係る棒鋼Mを係止片54と停止片60との間に位置させる。
係る最先端の棒鋼Mは、取出しレバー51の回転に伴って、その上辺52上に取り出され、図7中の矢印で示すように、上辺52上を送り方向の先端側に移動した後、固定枠8における基端側の凹部vに支持される。
【0031】
これ以降は、前述したように、レツヘン式冷却床7の固定枠8および可動枠9作用によって、固定枠8の各凹部vを送り方向に沿って順送りされる。
以上のような動作を連続して繰り返す個別送り装置1aによっても、横送り手段2により横送りされた複数の棒鋼Mは、傾動手段20の旋回板21によって斜め上方に持ち上げられ、先端側が低く且つ基端側が高くなるような傾斜した姿勢とされた後に、複数の棒材Mは、各旋回板21の前記揺動を受けて、送り方向の先端側である低位置寄りに、それぞれ自転しつつ確実に移動する。次いで、旋回板21の先端側で停止片60により停止した先端側の棒材Mから、当該停止片60と回転する取り出しレバー51の上昇した係止片54との間に挟まれて順次取り出され、隣接するレツヘン式冷却床7側に確実且つ円滑に個別送りされる。
尚、取り出しレバー51の回転中心であるピン53の位置は、棒鋼Mの直径に応じて変更可能としても良い。
【0032】
本発明は、前述した各形態に限定されるものではない。
例えば、前記横送り手段は、対象となる棒材が常温付近であれば、硬質ゴムや硬質樹脂などのベルトコンベアを用いても良い。
また、傾動手段20における複数の前記旋回板21は、一部が傾動および揺動可能であり、残りは傾動のみが可能としたものを併用する形態としても良い。
更に、前記旋回板21の傾動および揺動や、送り出し手段40の可動板44の円形運動などを行わしめる駆動源には、磁気アクュエータ、あるいはエアシリンダなどの流体圧シリンダを用いても良い。
加えて、搬送式床は、前記レツヘン式冷却床7に限らず、前記同様のチェーンコンベア2やメッシュコンベアとし、これらのベルト上面に、個々の棒材を挟む複数の爪片を突設したものとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明による棒材の個別送り装置の一形態を示す概略斜視図。
【図2】上記個別送り装置の横送り手段付近の概略を示す側面図。
【図3】上記個別送り装置の傾動手段付近の概略を示す側面図。
【図4】上記傾動手段付近の旋回板の挙動を示す模式的グラフ。
【図5】上記個別送り装置の作用を示す概略図。
【図6】上記個別送り装置の変形形態の要部を示す概略図。
【図7】異なる状態における変形形態の要部を示す概略図。
【符号の説明】
【0034】
1,1a……個別送り装置
2……………横送り手段
5……………載置部(横送りのレベル)
7……………レツヘン式冷却床(搬送式床)
20…………傾動手段
21…………旋回板
22,36…上辺
25…………回転軸(回転中心)
34…………固定傾斜板
40,50…送り出し手段
42…………固定板
44…………可動板
M……………棒鋼(棒材)
m……………凸部
v……………凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が円形である複数の棒材を互いに平行で且つ隣接させて載置部に支持し、係る複数の棒材をその径方向で且つ水平方向に沿って送る横送り手段と、
上記横送り手段において、上記送り方向の先端に位置する載置部に支持された複数の棒材を、上記横送りのレベルと回転中心がほぼ同じである複数の旋回板によって、送り方向の先端側が低く且つ基端側が上記横送りのレベルよりも高くなるように傾斜させて支持し、係る傾斜姿勢で揺動させる傾動手段と、
上記複数の旋回板上に直交して支持された複数の棒材を、上記送り方向の先端側に位置するものから、個別に径方向に沿って受け取りまたは取り出して、隣接する搬送式床上に送る送り出し手段と、を含む、
ことを特徴とする棒材の個別送り装置。
【請求項2】
前記傾動手段における複数の前記旋回板の間には、係る旋回板が傾斜した姿勢で、複数の棒材を支持する上辺の先端側と、側面視覚で上辺が重複する固定傾斜板が配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の棒材の個別送り装置。
【請求項3】
前記送り出し手段は、側面視で上辺がほぼ三角形の連続する凹・凸部を有する固定板と、係る固定板と上辺が同じ形状を有し、側面視で互いに重複可能にして配置され、且つ固定板に対し平行な面内で円形運動、長円形運動、楕円形運動、または箱形運動を行う可動板とからなる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の棒材の個別送り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−297088(P2008−297088A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−146566(P2007−146566)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【Fターム(参考)】