棒状物品の入替装置
【目的】穴部の間隔が相違する2種類のケースの間で小径のドリルをはじめとする棒状物品を両端の向きを逆にして移し替えることのできる装置の提供。
【構成】穴部2A,3Aの間隔が相違するケース2,3を配置するテーブル1、その上方に設けられる作業ユニット6,7、その両者を寄り合う方向と離間する方向とに移動させる手段を備える。作業ユニット6,7は、棒状物品の一端を摘む開閉自在な把持部31を形成する複数のフィンガ23、これを保持するフィンガホルダ24、これを揺動させて各フィンガの把持部31を下向きの状態と横向きの状態とに切り替える流体圧シリンダ25を備える。作業ユニット6の各フィンガ23は、把持部31の間隔がケースの穴部2Aの間隔と一致する状態でフィンガホルダ24に固定され、作業ユニット7の各フィンガ23は、把持部31が横向きの状態から下向きの状態に切り替わるとき間隔が変換される。
【構成】穴部2A,3Aの間隔が相違するケース2,3を配置するテーブル1、その上方に設けられる作業ユニット6,7、その両者を寄り合う方向と離間する方向とに移動させる手段を備える。作業ユニット6,7は、棒状物品の一端を摘む開閉自在な把持部31を形成する複数のフィンガ23、これを保持するフィンガホルダ24、これを揺動させて各フィンガの把持部31を下向きの状態と横向きの状態とに切り替える流体圧シリンダ25を備える。作業ユニット6の各フィンガ23は、把持部31の間隔がケースの穴部2Aの間隔と一致する状態でフィンガホルダ24に固定され、作業ユニット7の各フィンガ23は、把持部31が横向きの状態から下向きの状態に切り替わるとき間隔が変換される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密加工に供される小径のドリルをはじめとする棒状物品を2種類のケースの間で移し替える装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工作物に種々の加工を施す装置として、工具の自動交換機能を有した数値制御工作機械が普及している。例えば、NCボール盤において、多種類のドリルを配したツールマガジンを可動式のテーブルにセットし、そのテーブルの移動によりツールマガジンを主軸頭の下方に案内してスピンドルにチャッキングされたドリルをツールマガジンの空き領域に戻した後、次に必要なドリルの配置位置をチャッキング位置に案内して多種類のドリルを適宜に自動交換できるようにしたものが知られる。
【0003】
係るツールマガジン(ケース)は、棒状のドリル用にして例えば図10のように多数の穴部2Aを縦横に整然と配したもので、その各穴部2Aにドリルの一端が挿入されるようになっているが、その種のツールマガジン(図10のケース2)に配すべきドリルは、ツールマガジンの穴部とは間隔が相違する別のケースに配され、少ロット単位で業者から納入される。
【0004】
このため、納入されたドリルを使用するに際しては、その各ドリルを納入されたケースから専用のツールマガジンに移し替えている。又、ドリルが摩耗した場合には、これをツールマガジンから納入時のケースに移し替え、納入業者に研磨を依頼している。
【0005】
上記のような移し替え作業は人手により行われているが、シャンクの直径が数ミリ程度の小径のドリルでは作業効率が上がらず、しかもドリルの先端が非常に鋭利であるため作業中に指先を負傷することがあった。
【0006】
尚、上記のように2種類のケースの間でドリルの移し替えを行うことのできる自動機は実用化されていないが、電子部品を実装するためのプリント基板を支持するバックアップピンと呼ばれる棒状物品の入替装置として、フィンガ状の把持爪を備えたバックアップピン把持装置が前後、左右、及び上下に移動するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0007】
【特許文献1】特開平6−120700号公報(段落0036、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示される装置は、バックアップピンと呼ばれる棒状物品を把持する把持爪が直交する3方向に移動可能とされることから、これを用いて小径のドリルを2種類のケースの間で移し替えることも可能であるが、係る装置は単一の把持爪を有するだけなので移し替えに時間を要するという問題がある。
【0009】
又、把持爪を複数設けたとしても、2種類のケースが互いに間隔の相違する穴部を有するものであれば、一方のケースから複数本のドリルを同時に取り出すことができても、これを他方のケースに装填することはできない。
【0010】
特に、ツールマガジンに配されるドリルは、チャッキングされるべきシャンク部を上向きにして刃部側が穴部に挿入されるのに対し、納入時のケースには移動時の衝撃などで刃部が破損せぬようシャンク部側が穴部に挿入されるが、特許文献1の装置ではドリルの移し替えに際してその向きを反転させることができない。
【0011】
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的は穴部の間隔が相違する2種類のケースの間で小径のドリルをはじめとする棒状物品を両端の向きを逆にして移し替えることのできる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記目的を達成するため、ドリルなどの棒状物品の一端を挿入する穴部の間隔が互いに相違する第1のケースと第2のケースとの一方から他方に前記棒状物品を移し替える装置であって、前記第1、第2のケースを配置するテーブルと、該テーブルの上方で棒状物品の受け渡しを行う2つの作業ユニットと、当該2つの作業ユニットを前記テーブルの上面に沿って互いに寄り合う方向と離間する方向とに移動させるユニット移動手段とを有し、前記2つの作業ユニットは、棒状物品の一端を摘むための開閉自在な把持部を形成する複数のフィンガと、その各フィンガを横列状にして保持する昇降及び揺動が可能なフィンガホルダと、このフィンガホルダを揺動させて各フィンガの把持部を前記テーブルに対向する下向きの状態と前記棒状物品の受け渡しを行う横向きの状態とに切り替えるアクチュエータとを備え、一方の作業ユニットに設けられる各フィンガは、その把持部の間隔が前記第1のケースの穴部の間隔と一致する状態でフィンガホルダに固定され、他方の作業ユニットに設けられる各フィンガは、その把持部の間隔が前記第1のケースの穴部の間隔に一致する第1の配列と前記第2のケースの穴部の間隔に一致する第2の配列とに変換可能とされると共に、該作業ユニットには、各フィンガの把持部が横向きの状態から下向きの状態に切り替わるときに各フィンガを前記第1の配列から第2の配列に変換するフィンガ間隔変換手段が設けられることを特徴とする。
【0013】
又、以上のように構成される棒状物品の入替装置において、フィンガ間隔変換手段は、第1の配列と第2の配列とに変換可能とされる各フィンガをその並び方向に寄せ合わせる左右一対の弾性部材と、その弾力に抗して各フィンガの間に割り込むスペーサとで構成されることを特徴とする。
【0014】
更に、2つの作業ユニットに設けられる各フィンガは、それぞれフィンガホルダで保持されるフィンガベースと、このフィンガベースにピン接合される揺動自在な作動レバーとで構成され、前記フィンガベースと作動レバーの間には両者の一端に形成される把持部を閉じる方向に付勢するバネが介在され、2つの作業ユニットには前記バネの弾力に抗して各フィンガの把持部を開放するフィンガ操作手段が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第1のケースと第2のケースの穴部の間隔が相違する場合でも、第1のケースに配された棒状物品を一方の作業ユニットで取り出し、これを他方の作業ユニットに引き渡して第2のケースに納めることができ、逆に第2のケースから第1のケースに棒状物品を移し替えることもできる。
【0016】
又、2つの作業ユニットは複数のフィンガを有しているので移し替え作業を効率よく行うことができ、しかも2つの作業ユニットで棒状物品の受け渡しを行う際、一方の作業ユニットの各フィンガで一端を摘まれた棒状物品が他方の作業ユニットの各フィンガで他端を摘まれるようになるので、2種類のケースの間で棒状物品の両端を反転させた状態で移し替えを行うことができる。
【0017】
加えて、請求項2の発明では簡易な構造にしてフィンガの間隔を変えることができ、請求項3のようなヒンジタイプのフィンガでは把持部の開閉操作を容易かつ円滑に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明を詳しく説明する。図1は本発明に係る棒状物品の入替装置を示す側面概略図である。図1において、1は図示せぬ下部台上に形成されるテーブルであり、このテーブル1上には棒状物品を移し替えるための2種類のケース2,3が配される。4,5はテーブル1上に設けたケース台であり、それらケース台4,5によりケース2,3をテーブル1上の定位置に固定できるようにしてある。
【0019】
本例において、一方のケース2(第1のケース)は図10のように穴部2Aを縦横(縦10穴、横20穴)に整然と配したもので、その穴部2Aの間隔は他方のケース3の穴部3Aよりも稍小さく設定されている。又、他方のケース3は、図11のように10個の穴部3Aを直列状に配したもので、これを図1の左右方向に20個連ねて各穴部3Aが縦横(縦20穴、横10穴)に整然と並んだ状態となっている。
【0020】
尚、両ケース2,3の穴部2A,3Aには棒状物品として小径のドリルDの一端が挿入されるが、一方のケース2の穴部2AにはドリルDの一端刃部側が挿入され、他方のケース3の穴部3AにはドリルDの一端刃部側を上向きにしてその逆側の一端シャンク部側が挿入される。又、ケース台4は図1の図示面直角方向に移動可能とされ、これに固定されるケース2の片側半分の領域に対して図1の右側に向かってケース3からドリルDが10本ずつ移されると、ケース台4が移動してケース3からケース2の残る半分の領域に対してドリルDの移し替えが再開されるようになっている。
【0021】
図1において、6,7はケース2,3の一方から他方にドリルDの移し替えを行う作業ユニットであり、その両作業ユニット6,7はテーブル1の上面に沿って互いに寄り合う方向と離間する方向に移動可能に設けられる。8,9は作業ユニット6,7をテーブル1の上面に沿って個別に往復移動させるユニット移動手段であり、このユニット移動手段8,9は上部フレーム10の左右両側にあって、それぞれ上部フレーム10に固定したブラケット11で回転自在に支持したネジ軸12と、このネジ軸を回転駆動するモータ13と、ネジ軸12に平行して上部フレーム10に敷設したガイドレール14とで構成され、作業ユニット8,9にはそれぞれガイドレール14に係合するレール受15と、ネジ軸12を通すナット16が設けられる。尚、上部フレーム10はレール受14を敷設した左右一対の横架材10A(図1には一方の横架材10Aのみ示される)を含み、その横架材10Aが支柱17によりテーブル1上で水平状に支持されるようになっている。
【0022】
ここで、2つの作業ユニット6,7は基本的に同一の構成であり、それらは上記のレール受15及びナット16を取り付けたスライド台18と、その下方に配される昇降台19とを有し、スライド台18には昇降台19を昇降させるための流体圧シリンダ20が搭載され、その伸縮ロッドが昇降台19の中央部に接続されている。一方、昇降台19にはスライド台18を貫通するガイド軸21が直立状に取り付けられ、そのガイド軸21がスライド台に固定したブッシュ22で摺動自在に支持されるようになっている。又、作業ユニット6,7のそれぞれの昇降台19の下方には、後述するフィンガ23を保持したフィンガホルダ24と、このフィンガホルダ24を揺動させるアクチュエータ(流体圧シリンダ25)が設けられる。
【0023】
フィンガホルダ24と流体圧シリンダ25は、昇降台19の下面に取り付けたブラケット26,27により上下方向に揺動可能に支持され、流体圧シリンダ25の伸縮ロッドはフィンガホルダ24の部位に接続されている。
【0024】
そして、係る流体圧シリンダ25の伸縮動作によりフィンガホルダ24の揺動が行われ、その両フィンガホルダ24に保持された各フィンガ23の一端把持部が下向きの状態と横向き状態に変動し、横向きの状態では両作業ユニット6,7のフィンガ23の一端把持部が互いに対向し、その両者間でドリルDの受け渡しを行えるようになっている。
【0025】
尚、一方の作業ユニット6ではそのフィンガホルダ24にフィンガ23が固定されるのに対し、他方の作業ユニット7はフィンガ間隔変換手段を有してフィンガ23の間隔が変換可能とされる点で構成が相違するが、この点については後述する。
【0026】
次に、2つの作業ユニットに設けられるフィンガの構成を説明すれば、係るフィンガ23は図2のようにフィンガベース28と作動レバー29をピン30で接合したヒンジ形の構成であり、そのフィンガベース28と作動レバー29の一端はドリルの一端を摘むための開閉自在な把持部31とされる。図2及び図3から明らかなように、フィンガベース28には2つの取付孔28Aが形成されると共に、その片側中央部にはピン30を通す小孔28Bが穿設される。又、フィンガベース28の側面一端部には掘削穴28Cが形成され、他の一端には把持部31を成す半円状の切欠溝28Dが形成される。更に、フィンガベース28にはその片側両端面を部分的に切削して成る斜面部28Eが形成される。
【0027】
一方、図2及び図4から明らかなように、作動レバー29にもピン30を通す小孔29Aを挟んで側面の一端部に掘削穴29Bが形成されると共に、他の一端には把持部31を成す半円状の切欠溝29Cが形成される。
【0028】
そして、フィンガベース28と作動レバー29の間には両者の掘削穴28C,29Bに格納したバネ32が介在され、そのバネ32の弾力により両者の切欠溝28D,29Cから成る把持部31が閉じる方向に付勢されるようになっている。
【0029】
ここで、一方の作業ユニットの構成を詳しく説明すると、図5は作業ユニット6を図1の矢印Y1方向からみた状態を示す。同図から明らかなように、係る作業ユニット6に設けられるフィンガホルダ24は、左右一対のブラケット26で上下方向に揺動自在に支持される揺動アーム33と、その間に架設される座板34および上下一対の支軸35を備える。このうち、揺動アーム33はブラケット26に取り付けられるストッパ36により、その上端部が図5の手前側に揺動するのを規制されている。尚、ストッパ36には揺動アーム33の端面に突き当たる調整ボルト37が取り付けられ、その調整ボルト37の回転操作によりフィンガホルダ24の角変位量を調整できるようになっている(揺動アーム33の鉛直設定)。
【0030】
一方、座板34上の中央部には流体圧シリンダ25の伸縮ロッドを接続すべきブラケット38が形成される。又、座板34の下に設けられる上下一対の支軸35にはその軸方向に沿って複数のフィンガ23(本例において10個)が横列状に設けられる。尚、支軸35は図2に示したフィンガベース28の取付孔28Aに通されており、これによってフィンガベース28は揺動を阻止され、そのフィンガベース28に対して作動レバー29の揺動が許容されることにより、把持部31の開閉動作が行われるようになっている。
【0031】
特に、一方の作業ユニット6では、フィンガホルダ24を構成する揺動アーム33に支軸35の間でロックボルト39が通され、そのロックボルト39により各フィンガ23が支軸35の中央部分に寄せ合わされた状態で並びに方向(支軸35の方向)への移動を規制されている。この状態で各フィンガ23の把持部31は図1に示したケース2の穴部と間隔(正確には両者の中心間距離)が一致し、そのケース2に対してドリルDの装填あるいは取り出しを行うことができる。
【0032】
次に、他方の作業ユニット7について説明すると、図6は作業ユニット7を図1の矢印Y2方向からみた部分拡大図を示す。尚、一方の作業ユニット6と変更なき部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0033】
ここに、係る作業ユニット7では、フィンガ23(フィンガベース28)が支軸35に対してその軸方向への移動を許容される。特に、支軸35の両端部外周にはフィンガ間隔変換手段として左右一対の弾性部材40(本例において圧縮コイルバネ)が設けられ、それら弾性部材40により各フィンガ23が側面同士を接触させた状態で支軸35の中央部分に寄せ合わされるようになっている。この状態(第1の配列)で各フィンガ23の把持部31は、図1に示したケース2の穴部及びこれに対応する作業ユニット6のフィンガの把持部31と間隔が一致し、作業ユニット6との間でドリルDの受け渡しを行えるようになっている。
【0034】
又、図7のように、作業ユニット7の昇降台19にはフィンガホルダ24の後方でブラケット41が取り付けられ、そのブラケット41の下端に架設した2つの支軸42にフィンガ間隔変換手段として複数のスペーサ43(本例において9つ)が横列状に配されている。係るスペーサ43は、図8のように板状の本体部43Aと該本体部より突出する先細りのアーム部43Bから成り、本端部43Aには図7に示した支軸42を通す取付孔43Cが形成される。
【0035】
そして、係るスペーサ43は、図7のようにアーム部43Bをフィンガ23に向けた状態で支軸42上に横列状に配され、流体圧シリンダ25によるフィンガホルダ24の揺動でこれに保持された各フィンガ23の一端把持部31が横向きの状態から下向きの状態になるとき、その各フィンガ23の間に図9に示すようスペーサ43のアーム部43Bがそれぞれ割り込んで、各フィンガ23の間隔を広げるようになっている。この状態(第2の配列)で、各フィンガ23の一端把持部31の間隔が図1に示したケース3の穴部の間隔に一致し、そのケース3に対してドリルDの装填あるいは取り出しを行えるようになっている。
【0036】
尚、隣り合うフィンガ23の間には図3に示したフィンガベースの斜面部28Eから成る案内溝44(図6、図9参照)が形成され、その案内溝44の位置でフィンガ23の間にスペーサのアーム部43Bが割り込むようになっている。つまり、フィンガベースに形成した斜面部28Eは、スペーサのアーム部43Bを割り込ませる案内溝44を形成するためのものであるから、スペーサ43が配されない作業ユニット6側のフィンガ23では斜面部28Eを省略してもよい。
【0037】
又、図7に示すように、スペーサ43を支持する支軸42にも弾性部材45(圧縮コイルバネ)が配され、その弾性部材45により各スペーサ43がフィンガ23と同じく支軸42の中央部分に寄せ合わされるようになっている。そして、フィンガ23の間隔が広げられるとき、流体圧シリンダ25による操作力で各スペーサ43の間隔も広げられ、そのアーム部43Bがフィンガ23の間から抜かれるとき、すなわちフィンガホルダ24の揺動により各フィンガ23の一端把持部31が下向きの状態から横向きの状態になるとき、フィンガ23とスペーサ43のそれぞれが弾性部材40,45による弾力によって支軸35,42の中央部分に寄せ合わされるようになっている。
【0038】
尚、図7において、46は流体圧シリンダなどから成るフィンガ操作手段であり、このフィンガ操作手段46は、フィンガ23を構成する作動レバー29の各一端を連結した連結板47に対向して揺動アーム33に取り付けられ、この作動により連結板47が押圧操作されたときに各フィンガ23の一端把持部31が開放するようになっている。これは、一方の作業ユニット6においても同様である。
【0039】
ここで、以上のように構成される本願入替装置の作用を説明すると、図1においてケース3に配されたドリルDは作業ユニット7により順次取り出され、これが作業ユニット6を介してケース2に移し替えられる。ケース3からドリルDを取り出すとき、作業ユニット7のフィンガ23はその一端把持部31が下向きの状態にあり、その間隔はスペーサ43によってケース3の穴部の間隔に一致するよう広げられている。この状態で作業ユニット7の昇降台19が降下し、その各フィンガ23によりケース3に配されたドリルDの一端が摘まれると、昇降台19が上昇復帰し、次いで流体圧シリンダ25の作動によりフィンガホルダ24の揺動が行われる。
【0040】
これにより、作業ユニット7側で各フィンガ23の一端把持部31が横向き状態に転換しつつ、その各フィンガ23が弾性部材40の作用で支軸35の中央部分に寄せ合わされる。このとき、作業ユニット6の各フィンガ23も一端把持部31を横向きの状態にして待機している。そして、両者の把持部31が対向すると、両作業ユニット6,7が寄り合う方向に移動してドリルDの受け渡しを行った後、互いに離間する方向に移動する。
【0041】
ドリルDを受け取った作業ユニット6では、その各フィンガ23の把持部31が下向きの状態になるようフィンガホルダ24の揺動が行われ、次いで昇降台19が降下して作業ユニット7から受け取ったドリルDをケース2に装填する。
【0042】
一方、ドリルDを引き渡した作業ユニット7でも、所定位置まで移動された後にその各フィンガ23の把持部31が下向きの状態になるようフィンガホルダ24の揺動が行われる。そして、以上のような動作の繰り返しにより、ケース3に配されたドリルDは順次ケース2側に移し替えられる。
【0043】
尚、上記例ではケース3からケース2にドリルDを移し替える場合について説明したが、逆にケース2からケース3にドリルDを移し替えることもできる。又、上記例では一方の作業ユニット6に対応するケース2の穴部よりも他方の作業ユニット7に対応するケース3の穴部の間隔が大きい場合を例にしたが、作業ユニット7に対応するケース3の穴部の方が小さい間隔とされていてもよく、この場合にはスペーサ43の配置位置を変えて作業ユニット7側のフィンガ23が横向きの状態のときにスペーサ43がフィンガ23の間に割り込むようにすることで対応できる。更に、上記例では棒状物品を小径のドリルとしたが、本発明はドリルに限らず種々の棒状物品の移し替えを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る入替装置を示した側面概略図
【図2】フィンガを部分的に破断して示した側面図
【図3】フィンガを構成するフィンガベースの側面図
【図4】フィンガを構成する作動レバーの側面図
【図5】一方の作業ユニットを示した正面概略図
【図6】他方の作業ユニットを部分的に拡大して示した正面概略図
【図7】スペーサの配置例を示した部分拡大図
【図8】スペーサの斜視図
【図9】フィンガの間にスペーサが割り込んだ状態を示す説明図
【図10】ケース(第1のケース)の一例を示す斜視図
【図11】ケース(第2のケース)の一例を示す斜視図
【符号の説明】
【0045】
1 テーブル
2 ケース(第1のケース)
3 ケース(第2のケース)
6,7 作業ユニット
8,9 ユニット移動手段
23 フィンガ
24 フィンガホルダ
25 流体圧シリンダ
28 フィンガベース
29 作動レバー
31 把持部
32 バネ
40 弾性部材
43 スペーサ
46 フィンガ操作手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密加工に供される小径のドリルをはじめとする棒状物品を2種類のケースの間で移し替える装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工作物に種々の加工を施す装置として、工具の自動交換機能を有した数値制御工作機械が普及している。例えば、NCボール盤において、多種類のドリルを配したツールマガジンを可動式のテーブルにセットし、そのテーブルの移動によりツールマガジンを主軸頭の下方に案内してスピンドルにチャッキングされたドリルをツールマガジンの空き領域に戻した後、次に必要なドリルの配置位置をチャッキング位置に案内して多種類のドリルを適宜に自動交換できるようにしたものが知られる。
【0003】
係るツールマガジン(ケース)は、棒状のドリル用にして例えば図10のように多数の穴部2Aを縦横に整然と配したもので、その各穴部2Aにドリルの一端が挿入されるようになっているが、その種のツールマガジン(図10のケース2)に配すべきドリルは、ツールマガジンの穴部とは間隔が相違する別のケースに配され、少ロット単位で業者から納入される。
【0004】
このため、納入されたドリルを使用するに際しては、その各ドリルを納入されたケースから専用のツールマガジンに移し替えている。又、ドリルが摩耗した場合には、これをツールマガジンから納入時のケースに移し替え、納入業者に研磨を依頼している。
【0005】
上記のような移し替え作業は人手により行われているが、シャンクの直径が数ミリ程度の小径のドリルでは作業効率が上がらず、しかもドリルの先端が非常に鋭利であるため作業中に指先を負傷することがあった。
【0006】
尚、上記のように2種類のケースの間でドリルの移し替えを行うことのできる自動機は実用化されていないが、電子部品を実装するためのプリント基板を支持するバックアップピンと呼ばれる棒状物品の入替装置として、フィンガ状の把持爪を備えたバックアップピン把持装置が前後、左右、及び上下に移動するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0007】
【特許文献1】特開平6−120700号公報(段落0036、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示される装置は、バックアップピンと呼ばれる棒状物品を把持する把持爪が直交する3方向に移動可能とされることから、これを用いて小径のドリルを2種類のケースの間で移し替えることも可能であるが、係る装置は単一の把持爪を有するだけなので移し替えに時間を要するという問題がある。
【0009】
又、把持爪を複数設けたとしても、2種類のケースが互いに間隔の相違する穴部を有するものであれば、一方のケースから複数本のドリルを同時に取り出すことができても、これを他方のケースに装填することはできない。
【0010】
特に、ツールマガジンに配されるドリルは、チャッキングされるべきシャンク部を上向きにして刃部側が穴部に挿入されるのに対し、納入時のケースには移動時の衝撃などで刃部が破損せぬようシャンク部側が穴部に挿入されるが、特許文献1の装置ではドリルの移し替えに際してその向きを反転させることができない。
【0011】
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的は穴部の間隔が相違する2種類のケースの間で小径のドリルをはじめとする棒状物品を両端の向きを逆にして移し替えることのできる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記目的を達成するため、ドリルなどの棒状物品の一端を挿入する穴部の間隔が互いに相違する第1のケースと第2のケースとの一方から他方に前記棒状物品を移し替える装置であって、前記第1、第2のケースを配置するテーブルと、該テーブルの上方で棒状物品の受け渡しを行う2つの作業ユニットと、当該2つの作業ユニットを前記テーブルの上面に沿って互いに寄り合う方向と離間する方向とに移動させるユニット移動手段とを有し、前記2つの作業ユニットは、棒状物品の一端を摘むための開閉自在な把持部を形成する複数のフィンガと、その各フィンガを横列状にして保持する昇降及び揺動が可能なフィンガホルダと、このフィンガホルダを揺動させて各フィンガの把持部を前記テーブルに対向する下向きの状態と前記棒状物品の受け渡しを行う横向きの状態とに切り替えるアクチュエータとを備え、一方の作業ユニットに設けられる各フィンガは、その把持部の間隔が前記第1のケースの穴部の間隔と一致する状態でフィンガホルダに固定され、他方の作業ユニットに設けられる各フィンガは、その把持部の間隔が前記第1のケースの穴部の間隔に一致する第1の配列と前記第2のケースの穴部の間隔に一致する第2の配列とに変換可能とされると共に、該作業ユニットには、各フィンガの把持部が横向きの状態から下向きの状態に切り替わるときに各フィンガを前記第1の配列から第2の配列に変換するフィンガ間隔変換手段が設けられることを特徴とする。
【0013】
又、以上のように構成される棒状物品の入替装置において、フィンガ間隔変換手段は、第1の配列と第2の配列とに変換可能とされる各フィンガをその並び方向に寄せ合わせる左右一対の弾性部材と、その弾力に抗して各フィンガの間に割り込むスペーサとで構成されることを特徴とする。
【0014】
更に、2つの作業ユニットに設けられる各フィンガは、それぞれフィンガホルダで保持されるフィンガベースと、このフィンガベースにピン接合される揺動自在な作動レバーとで構成され、前記フィンガベースと作動レバーの間には両者の一端に形成される把持部を閉じる方向に付勢するバネが介在され、2つの作業ユニットには前記バネの弾力に抗して各フィンガの把持部を開放するフィンガ操作手段が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第1のケースと第2のケースの穴部の間隔が相違する場合でも、第1のケースに配された棒状物品を一方の作業ユニットで取り出し、これを他方の作業ユニットに引き渡して第2のケースに納めることができ、逆に第2のケースから第1のケースに棒状物品を移し替えることもできる。
【0016】
又、2つの作業ユニットは複数のフィンガを有しているので移し替え作業を効率よく行うことができ、しかも2つの作業ユニットで棒状物品の受け渡しを行う際、一方の作業ユニットの各フィンガで一端を摘まれた棒状物品が他方の作業ユニットの各フィンガで他端を摘まれるようになるので、2種類のケースの間で棒状物品の両端を反転させた状態で移し替えを行うことができる。
【0017】
加えて、請求項2の発明では簡易な構造にしてフィンガの間隔を変えることができ、請求項3のようなヒンジタイプのフィンガでは把持部の開閉操作を容易かつ円滑に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明を詳しく説明する。図1は本発明に係る棒状物品の入替装置を示す側面概略図である。図1において、1は図示せぬ下部台上に形成されるテーブルであり、このテーブル1上には棒状物品を移し替えるための2種類のケース2,3が配される。4,5はテーブル1上に設けたケース台であり、それらケース台4,5によりケース2,3をテーブル1上の定位置に固定できるようにしてある。
【0019】
本例において、一方のケース2(第1のケース)は図10のように穴部2Aを縦横(縦10穴、横20穴)に整然と配したもので、その穴部2Aの間隔は他方のケース3の穴部3Aよりも稍小さく設定されている。又、他方のケース3は、図11のように10個の穴部3Aを直列状に配したもので、これを図1の左右方向に20個連ねて各穴部3Aが縦横(縦20穴、横10穴)に整然と並んだ状態となっている。
【0020】
尚、両ケース2,3の穴部2A,3Aには棒状物品として小径のドリルDの一端が挿入されるが、一方のケース2の穴部2AにはドリルDの一端刃部側が挿入され、他方のケース3の穴部3AにはドリルDの一端刃部側を上向きにしてその逆側の一端シャンク部側が挿入される。又、ケース台4は図1の図示面直角方向に移動可能とされ、これに固定されるケース2の片側半分の領域に対して図1の右側に向かってケース3からドリルDが10本ずつ移されると、ケース台4が移動してケース3からケース2の残る半分の領域に対してドリルDの移し替えが再開されるようになっている。
【0021】
図1において、6,7はケース2,3の一方から他方にドリルDの移し替えを行う作業ユニットであり、その両作業ユニット6,7はテーブル1の上面に沿って互いに寄り合う方向と離間する方向に移動可能に設けられる。8,9は作業ユニット6,7をテーブル1の上面に沿って個別に往復移動させるユニット移動手段であり、このユニット移動手段8,9は上部フレーム10の左右両側にあって、それぞれ上部フレーム10に固定したブラケット11で回転自在に支持したネジ軸12と、このネジ軸を回転駆動するモータ13と、ネジ軸12に平行して上部フレーム10に敷設したガイドレール14とで構成され、作業ユニット8,9にはそれぞれガイドレール14に係合するレール受15と、ネジ軸12を通すナット16が設けられる。尚、上部フレーム10はレール受14を敷設した左右一対の横架材10A(図1には一方の横架材10Aのみ示される)を含み、その横架材10Aが支柱17によりテーブル1上で水平状に支持されるようになっている。
【0022】
ここで、2つの作業ユニット6,7は基本的に同一の構成であり、それらは上記のレール受15及びナット16を取り付けたスライド台18と、その下方に配される昇降台19とを有し、スライド台18には昇降台19を昇降させるための流体圧シリンダ20が搭載され、その伸縮ロッドが昇降台19の中央部に接続されている。一方、昇降台19にはスライド台18を貫通するガイド軸21が直立状に取り付けられ、そのガイド軸21がスライド台に固定したブッシュ22で摺動自在に支持されるようになっている。又、作業ユニット6,7のそれぞれの昇降台19の下方には、後述するフィンガ23を保持したフィンガホルダ24と、このフィンガホルダ24を揺動させるアクチュエータ(流体圧シリンダ25)が設けられる。
【0023】
フィンガホルダ24と流体圧シリンダ25は、昇降台19の下面に取り付けたブラケット26,27により上下方向に揺動可能に支持され、流体圧シリンダ25の伸縮ロッドはフィンガホルダ24の部位に接続されている。
【0024】
そして、係る流体圧シリンダ25の伸縮動作によりフィンガホルダ24の揺動が行われ、その両フィンガホルダ24に保持された各フィンガ23の一端把持部が下向きの状態と横向き状態に変動し、横向きの状態では両作業ユニット6,7のフィンガ23の一端把持部が互いに対向し、その両者間でドリルDの受け渡しを行えるようになっている。
【0025】
尚、一方の作業ユニット6ではそのフィンガホルダ24にフィンガ23が固定されるのに対し、他方の作業ユニット7はフィンガ間隔変換手段を有してフィンガ23の間隔が変換可能とされる点で構成が相違するが、この点については後述する。
【0026】
次に、2つの作業ユニットに設けられるフィンガの構成を説明すれば、係るフィンガ23は図2のようにフィンガベース28と作動レバー29をピン30で接合したヒンジ形の構成であり、そのフィンガベース28と作動レバー29の一端はドリルの一端を摘むための開閉自在な把持部31とされる。図2及び図3から明らかなように、フィンガベース28には2つの取付孔28Aが形成されると共に、その片側中央部にはピン30を通す小孔28Bが穿設される。又、フィンガベース28の側面一端部には掘削穴28Cが形成され、他の一端には把持部31を成す半円状の切欠溝28Dが形成される。更に、フィンガベース28にはその片側両端面を部分的に切削して成る斜面部28Eが形成される。
【0027】
一方、図2及び図4から明らかなように、作動レバー29にもピン30を通す小孔29Aを挟んで側面の一端部に掘削穴29Bが形成されると共に、他の一端には把持部31を成す半円状の切欠溝29Cが形成される。
【0028】
そして、フィンガベース28と作動レバー29の間には両者の掘削穴28C,29Bに格納したバネ32が介在され、そのバネ32の弾力により両者の切欠溝28D,29Cから成る把持部31が閉じる方向に付勢されるようになっている。
【0029】
ここで、一方の作業ユニットの構成を詳しく説明すると、図5は作業ユニット6を図1の矢印Y1方向からみた状態を示す。同図から明らかなように、係る作業ユニット6に設けられるフィンガホルダ24は、左右一対のブラケット26で上下方向に揺動自在に支持される揺動アーム33と、その間に架設される座板34および上下一対の支軸35を備える。このうち、揺動アーム33はブラケット26に取り付けられるストッパ36により、その上端部が図5の手前側に揺動するのを規制されている。尚、ストッパ36には揺動アーム33の端面に突き当たる調整ボルト37が取り付けられ、その調整ボルト37の回転操作によりフィンガホルダ24の角変位量を調整できるようになっている(揺動アーム33の鉛直設定)。
【0030】
一方、座板34上の中央部には流体圧シリンダ25の伸縮ロッドを接続すべきブラケット38が形成される。又、座板34の下に設けられる上下一対の支軸35にはその軸方向に沿って複数のフィンガ23(本例において10個)が横列状に設けられる。尚、支軸35は図2に示したフィンガベース28の取付孔28Aに通されており、これによってフィンガベース28は揺動を阻止され、そのフィンガベース28に対して作動レバー29の揺動が許容されることにより、把持部31の開閉動作が行われるようになっている。
【0031】
特に、一方の作業ユニット6では、フィンガホルダ24を構成する揺動アーム33に支軸35の間でロックボルト39が通され、そのロックボルト39により各フィンガ23が支軸35の中央部分に寄せ合わされた状態で並びに方向(支軸35の方向)への移動を規制されている。この状態で各フィンガ23の把持部31は図1に示したケース2の穴部と間隔(正確には両者の中心間距離)が一致し、そのケース2に対してドリルDの装填あるいは取り出しを行うことができる。
【0032】
次に、他方の作業ユニット7について説明すると、図6は作業ユニット7を図1の矢印Y2方向からみた部分拡大図を示す。尚、一方の作業ユニット6と変更なき部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0033】
ここに、係る作業ユニット7では、フィンガ23(フィンガベース28)が支軸35に対してその軸方向への移動を許容される。特に、支軸35の両端部外周にはフィンガ間隔変換手段として左右一対の弾性部材40(本例において圧縮コイルバネ)が設けられ、それら弾性部材40により各フィンガ23が側面同士を接触させた状態で支軸35の中央部分に寄せ合わされるようになっている。この状態(第1の配列)で各フィンガ23の把持部31は、図1に示したケース2の穴部及びこれに対応する作業ユニット6のフィンガの把持部31と間隔が一致し、作業ユニット6との間でドリルDの受け渡しを行えるようになっている。
【0034】
又、図7のように、作業ユニット7の昇降台19にはフィンガホルダ24の後方でブラケット41が取り付けられ、そのブラケット41の下端に架設した2つの支軸42にフィンガ間隔変換手段として複数のスペーサ43(本例において9つ)が横列状に配されている。係るスペーサ43は、図8のように板状の本体部43Aと該本体部より突出する先細りのアーム部43Bから成り、本端部43Aには図7に示した支軸42を通す取付孔43Cが形成される。
【0035】
そして、係るスペーサ43は、図7のようにアーム部43Bをフィンガ23に向けた状態で支軸42上に横列状に配され、流体圧シリンダ25によるフィンガホルダ24の揺動でこれに保持された各フィンガ23の一端把持部31が横向きの状態から下向きの状態になるとき、その各フィンガ23の間に図9に示すようスペーサ43のアーム部43Bがそれぞれ割り込んで、各フィンガ23の間隔を広げるようになっている。この状態(第2の配列)で、各フィンガ23の一端把持部31の間隔が図1に示したケース3の穴部の間隔に一致し、そのケース3に対してドリルDの装填あるいは取り出しを行えるようになっている。
【0036】
尚、隣り合うフィンガ23の間には図3に示したフィンガベースの斜面部28Eから成る案内溝44(図6、図9参照)が形成され、その案内溝44の位置でフィンガ23の間にスペーサのアーム部43Bが割り込むようになっている。つまり、フィンガベースに形成した斜面部28Eは、スペーサのアーム部43Bを割り込ませる案内溝44を形成するためのものであるから、スペーサ43が配されない作業ユニット6側のフィンガ23では斜面部28Eを省略してもよい。
【0037】
又、図7に示すように、スペーサ43を支持する支軸42にも弾性部材45(圧縮コイルバネ)が配され、その弾性部材45により各スペーサ43がフィンガ23と同じく支軸42の中央部分に寄せ合わされるようになっている。そして、フィンガ23の間隔が広げられるとき、流体圧シリンダ25による操作力で各スペーサ43の間隔も広げられ、そのアーム部43Bがフィンガ23の間から抜かれるとき、すなわちフィンガホルダ24の揺動により各フィンガ23の一端把持部31が下向きの状態から横向きの状態になるとき、フィンガ23とスペーサ43のそれぞれが弾性部材40,45による弾力によって支軸35,42の中央部分に寄せ合わされるようになっている。
【0038】
尚、図7において、46は流体圧シリンダなどから成るフィンガ操作手段であり、このフィンガ操作手段46は、フィンガ23を構成する作動レバー29の各一端を連結した連結板47に対向して揺動アーム33に取り付けられ、この作動により連結板47が押圧操作されたときに各フィンガ23の一端把持部31が開放するようになっている。これは、一方の作業ユニット6においても同様である。
【0039】
ここで、以上のように構成される本願入替装置の作用を説明すると、図1においてケース3に配されたドリルDは作業ユニット7により順次取り出され、これが作業ユニット6を介してケース2に移し替えられる。ケース3からドリルDを取り出すとき、作業ユニット7のフィンガ23はその一端把持部31が下向きの状態にあり、その間隔はスペーサ43によってケース3の穴部の間隔に一致するよう広げられている。この状態で作業ユニット7の昇降台19が降下し、その各フィンガ23によりケース3に配されたドリルDの一端が摘まれると、昇降台19が上昇復帰し、次いで流体圧シリンダ25の作動によりフィンガホルダ24の揺動が行われる。
【0040】
これにより、作業ユニット7側で各フィンガ23の一端把持部31が横向き状態に転換しつつ、その各フィンガ23が弾性部材40の作用で支軸35の中央部分に寄せ合わされる。このとき、作業ユニット6の各フィンガ23も一端把持部31を横向きの状態にして待機している。そして、両者の把持部31が対向すると、両作業ユニット6,7が寄り合う方向に移動してドリルDの受け渡しを行った後、互いに離間する方向に移動する。
【0041】
ドリルDを受け取った作業ユニット6では、その各フィンガ23の把持部31が下向きの状態になるようフィンガホルダ24の揺動が行われ、次いで昇降台19が降下して作業ユニット7から受け取ったドリルDをケース2に装填する。
【0042】
一方、ドリルDを引き渡した作業ユニット7でも、所定位置まで移動された後にその各フィンガ23の把持部31が下向きの状態になるようフィンガホルダ24の揺動が行われる。そして、以上のような動作の繰り返しにより、ケース3に配されたドリルDは順次ケース2側に移し替えられる。
【0043】
尚、上記例ではケース3からケース2にドリルDを移し替える場合について説明したが、逆にケース2からケース3にドリルDを移し替えることもできる。又、上記例では一方の作業ユニット6に対応するケース2の穴部よりも他方の作業ユニット7に対応するケース3の穴部の間隔が大きい場合を例にしたが、作業ユニット7に対応するケース3の穴部の方が小さい間隔とされていてもよく、この場合にはスペーサ43の配置位置を変えて作業ユニット7側のフィンガ23が横向きの状態のときにスペーサ43がフィンガ23の間に割り込むようにすることで対応できる。更に、上記例では棒状物品を小径のドリルとしたが、本発明はドリルに限らず種々の棒状物品の移し替えを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る入替装置を示した側面概略図
【図2】フィンガを部分的に破断して示した側面図
【図3】フィンガを構成するフィンガベースの側面図
【図4】フィンガを構成する作動レバーの側面図
【図5】一方の作業ユニットを示した正面概略図
【図6】他方の作業ユニットを部分的に拡大して示した正面概略図
【図7】スペーサの配置例を示した部分拡大図
【図8】スペーサの斜視図
【図9】フィンガの間にスペーサが割り込んだ状態を示す説明図
【図10】ケース(第1のケース)の一例を示す斜視図
【図11】ケース(第2のケース)の一例を示す斜視図
【符号の説明】
【0045】
1 テーブル
2 ケース(第1のケース)
3 ケース(第2のケース)
6,7 作業ユニット
8,9 ユニット移動手段
23 フィンガ
24 フィンガホルダ
25 流体圧シリンダ
28 フィンガベース
29 作動レバー
31 把持部
32 バネ
40 弾性部材
43 スペーサ
46 フィンガ操作手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドリルなどの棒状物品の一端を挿入する穴部の間隔が互いに相違する第1のケースと第2のケースとの一方から他方に前記棒状物品を移し替える装置であって、
前記第1、第2のケースを配置するテーブルと、該テーブルの上方で棒状物品の受け渡しを行う2つの作業ユニットと、当該2つの作業ユニットを前記テーブルの上面に沿って互いに寄り合う方向と離間する方向とに移動させるユニット移動手段とを有し、
前記2つの作業ユニットは、棒状物品の一端を摘むための開閉自在な把持部を形成する複数のフィンガと、その各フィンガを横列状にして保持する昇降及び揺動が可能なフィンガホルダと、このフィンガホルダを揺動させて各フィンガの把持部を前記テーブルに対向する下向きの状態と前記棒状物品の受け渡しを行う横向きの状態とに切り替えるアクチュエータとを備え、
一方の作業ユニットに設けられる各フィンガは、その把持部の間隔が前記第1のケースの穴部の間隔と一致する状態でフィンガホルダに固定され、
他方の作業ユニットに設けられる各フィンガは、その把持部の間隔が前記第1のケースの穴部の間隔に一致する第1の配列と前記第2のケースの穴部の間隔に一致する第2の配列とに変換可能とされると共に、該作業ユニットには、各フィンガの把持部が横向きの状態から下向きの状態に切り替わるときに各フィンガを前記第1の配列から第2の配列に変換するフィンガ間隔変換手段が設けられることを特徴とする棒状物品の入替装置。
【請求項2】
フィンガ間隔変換手段は、第1の配列と第2の配列とに変換可能とされる各フィンガをその並び方向に寄せ合わせる左右一対の弾性部材と、その弾力に抗して各フィンガの間に割り込むスペーサとで構成される請求項1記載の棒状物品の入替装置。
【請求項3】
2つの作業ユニットに設けられる各フィンガは、それぞれフィンガホルダで保持されるフィンガベースと、このフィンガベースにピン接合される揺動自在な作動レバーとで構成され、前記フィンガベースと作動レバーの間には両者の一端に形成される把持部を閉じる方向に付勢するバネが介在され、2つの作業ユニットには前記バネの弾力に抗して各フィンガの把持部を開放するフィンガ操作手段が設けられる請求項1記載の棒状物品の入替装置。
【請求項1】
ドリルなどの棒状物品の一端を挿入する穴部の間隔が互いに相違する第1のケースと第2のケースとの一方から他方に前記棒状物品を移し替える装置であって、
前記第1、第2のケースを配置するテーブルと、該テーブルの上方で棒状物品の受け渡しを行う2つの作業ユニットと、当該2つの作業ユニットを前記テーブルの上面に沿って互いに寄り合う方向と離間する方向とに移動させるユニット移動手段とを有し、
前記2つの作業ユニットは、棒状物品の一端を摘むための開閉自在な把持部を形成する複数のフィンガと、その各フィンガを横列状にして保持する昇降及び揺動が可能なフィンガホルダと、このフィンガホルダを揺動させて各フィンガの把持部を前記テーブルに対向する下向きの状態と前記棒状物品の受け渡しを行う横向きの状態とに切り替えるアクチュエータとを備え、
一方の作業ユニットに設けられる各フィンガは、その把持部の間隔が前記第1のケースの穴部の間隔と一致する状態でフィンガホルダに固定され、
他方の作業ユニットに設けられる各フィンガは、その把持部の間隔が前記第1のケースの穴部の間隔に一致する第1の配列と前記第2のケースの穴部の間隔に一致する第2の配列とに変換可能とされると共に、該作業ユニットには、各フィンガの把持部が横向きの状態から下向きの状態に切り替わるときに各フィンガを前記第1の配列から第2の配列に変換するフィンガ間隔変換手段が設けられることを特徴とする棒状物品の入替装置。
【請求項2】
フィンガ間隔変換手段は、第1の配列と第2の配列とに変換可能とされる各フィンガをその並び方向に寄せ合わせる左右一対の弾性部材と、その弾力に抗して各フィンガの間に割り込むスペーサとで構成される請求項1記載の棒状物品の入替装置。
【請求項3】
2つの作業ユニットに設けられる各フィンガは、それぞれフィンガホルダで保持されるフィンガベースと、このフィンガベースにピン接合される揺動自在な作動レバーとで構成され、前記フィンガベースと作動レバーの間には両者の一端に形成される把持部を閉じる方向に付勢するバネが介在され、2つの作業ユニットには前記バネの弾力に抗して各フィンガの把持部を開放するフィンガ操作手段が設けられる請求項1記載の棒状物品の入替装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−27708(P2006−27708A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−212383(P2004−212383)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(304034842)有限会社アイ・ティー・シー (1)
【出願人】(504278709)有限会社共進パーツ (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(304034842)有限会社アイ・ティー・シー (1)
【出願人】(504278709)有限会社共進パーツ (2)
【Fターム(参考)】
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