説明

椅子型牽引治療装置

【課題】椅子部が起立倒伏に係るリクライニング動作をする際に、椅子部下方に人体や物体等の異物が侵入する現象が発生した場合であっても、その現象を即座に検出し、基台部と椅子部間への異物挟み込みを防止する安全性を向上させた椅子型牽引治療装置を提供すること。
【解決手段】床面に載置される基台部3に対して座部5と背凭れ部6を備えた椅子部2をリクライニング手段21を介して起立倒伏可能に設け、座部5と背凭れ部6のいずれか一方を他方に対して離間移動させることにより被治療者の腰椎を牽引する椅子型牽引治療装置であり、椅子部2が起立倒伏動作する際に椅子部2下方への異物の侵入を検出して、基台部3と椅子部2との間への異物挟み込みを防止する挟み込み防止手段を備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腰椎の牽引治療を行う椅子型の牽引治療装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から椅子型の牽引治療装置として、被治療者が着座する座部と背凭れ部を備えた椅子部を基台部に対して後方向に倒伏させた後、座部を背凭れ部に対して離間する方向に移動させて、腰椎の牽引治療を行うもの等が知られている。(例えば、下記特許文献1参照)
【特許文献1】特開2006−87853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載される牽引治療装置には、基台部に対して椅子部を起立倒伏動作させる際に、椅子部下方に存在する人体や物体等の異物を検出する検出手段は備えられていない為、椅子部の起立倒伏動作中に誤って異物を椅子部と基台部との間に挟み込んでしまう危険性が危惧されていた。
【0004】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、椅子部が起立倒伏に係るリクライニング動作をする際に、椅子部下方に人体や物体等の異物が侵入する現象が発生した場合であっても、その現象を即座に検出し、基台部と椅子部間への異物挟み込みを防止する安全性を向上させた椅子型牽引治療装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を実現する為、請求項1記載の発明は、床面に載置される基台部に対して座部と背凭れ部を備えた椅子部をリクライニング手段を介して起立倒伏可能に設け、前記座部と前記背凭れ部のいずれか一方を他方に対して離間移動させることにより被治療者の腰椎を牽引する椅子型牽引治療装置において、前記椅子部が起立倒伏動作する際に前記椅子部下方への異物の侵入を検出し、前記基台部と前記椅子部との間への異物挟み込みを防止する挟み込み防止手段を備えたことを特徴とする。
従って、本発明によれば、椅子部と基台部との間に物体が挟み込まれ物体が損壊したり、当該物体により装置が傷つき破損故障するという事態に至ることもなく、椅子部の起立倒伏に係るリクライニング動作を安全に行えることになる。また、装置の傍らにいる治療者の足等の人体が椅子部と基台部との間に侵入するような事態が発生した場合であっても、両部で人体が挟み込まれ負傷するという好ましくない事態に至るのを防止できる。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の椅子型牽引治療装置において、前記挟み込み防止手段は、前記椅子部の起立動作中に前記基台部と前記座部が配置される側の前記椅子部との間への異物挟み込みを防止ものであることを特徴とする。
この構成によれば、基台部と座部が配置される側の椅子部の間への異物の挟み込みを防止することができ、椅子部の起立リクライニング動作を安全に行えることになる。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載の椅子型牽引治療装置において、前記挟み込み防止手段は、前記椅子部の倒伏動作中に前記基台部と前記背凭れ部が配置される側の前記椅子部との間への異物挟み込みを防止するものであることを特徴とする。
この構成によれば、基台部と椅子部の間への異物の挟み込みを防止することができ、椅子部の倒伏リクライニング動作を安全に行えることになる。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の椅子型牽引治療装置において、前記椅子部のメインフレーム周囲の少なくとも一部に外装カバーが前記メインフレームに対して接近離間する方向に変位可能に被装され、前記挟み込み防止手段は前記外装カバーの少なくとも一部の前記メインフレーム方向への変位を検出することにより異物侵入を検出し、当該検出信号を受信した制御部により前記リクライニング手段の動作停止がなされることを特徴とする。
この構成によれば、椅子部の外装カバー下方に異物が侵入する現象が発生した場合であっても、外装カバーのメインフレーム方向への変位を検出することでその異物侵入現象を即座に検出しリクライニング手段の動作を停止できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、治療者の足等の人体が椅子部と基台部との間に挟み込まれ負傷するという好ましくない事態に至るのを未然に防止でき、椅子部の起立倒伏に係るリクライニング動作を安全に行えることになる。また、椅子部と基台部との間に挟み込まれた物体が損壊したり、当該物体により装置が傷ついたり破損故障するという事態に至ることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図1乃至10を参照しつつ本発明に係る一実施形態について説明する。図1は椅子部2が倒伏状態にある椅子型牽引治療装置1を示す平面図、図2は同正面図、図3は同右側面図、図4は図2のA−A矢視方向で切断した挟み込み防止手段45を示す部分断面図、図5は図3のB−B矢視方向で切断した挟み込み防止手段45を示す部分断面図、図6は図5におけるC円部の拡大図、図7は挟み込み防止手段45の動作を説明するフローチャート図、図8は椅子型牽引治療装置1の動作を説明する断面図、図9は座部5とメインフレーム7の関連を示す部分斜視図、図10は椅子型牽引治療装置1の主要電気的構成を示すブロック図である。
【0011】
以下の説明においては、図1における下方向(座部5側)を椅子型牽引治療装置1の前方向、上方向(背凭れ部6側)を後方向と位置づけて称呼する。図3に示すように椅子型牽引治療装置1は、床面にアジャスターを介して載置される基台部3と、基台部3により支持され被治療者が着座する椅子部2等から構成される。図1、3に示すように椅子部2は被治療者の腰部から下肢におよぶ下半身を支持する座部5と、背中部から頭部におよぶ上半身を受け止める背凭れ部6とから構成され、図8、9に示す略前後方向に延在し前後端面が略C字形状に形成される第一のフレーム8と中空角パイプ材よりなる第二のフレーム9が略X字状に交差し、両フレーム8・9前後方向における上下間をそれぞれ連結固定具46・46を介して連結固定した左右一対のX字状フレーム11・11が断面視略コ字形状の連結金具10・16を介在して相互連結されたメインフレーム7によって支持されている。
【0012】
左右の第一のフレーム8・8は開口部が互いに内向きに対向するように並列配設され、第二のフレーム9・9の内側面に対して溶着されている(図5、9参照)。座部5は、メインフレーム7のうち第一のフレーム8・8に支持されるとともに当該フレーム8・8に対して図8における両矢印E方向に往復移動可能に設けられ、背凭れ部6は第二のフレーム9・9上に固設されている。
【0013】
図8に示すように椅子部2は基台部3に支軸4で軸着されており、リクライニング手段21としてのリクライニング用アクチュエータ22により図8中両矢印Dに示す前後方向に起立倒伏可能に設けられている。リクライニング用アクチュエータ22のシリンダ部22aは底面部が基台部3の底板20上に軸着されており、ロッド部22b先端は連結金具16にブラケット23を介して軸着されている。ロッド部22bの伸長収縮に係る作動は装置1の制御部31(図10参照)により制御される。図8において収縮状態のロッド部22bを伸長方向に作動させると椅子部2全体が起立する方向(前方向)へリクライニング動作する。椅子部2は、図2、8に示す基台部3の左右にわたり水平横架される水平ロッド29に、後述する座面支持フレーム13が配置される方向(前方向)の第二のフレーム9先端近傍の下面に固着されるストッパー30が当接する所定起立位置(図8中、一点鎖線で示す椅子部2の位置)でそのリクライニング動作が自動停止するよう制御が行われる。
【0014】
逆に、伸長状態のロッド部22bを収縮方向へ作動させると、椅子部2全体が倒伏する方向(後方向)へリクライニング動作を開始する。ロッド部22bが所定量だけ収縮すると制御部31によりその収縮作動が停止され、図8中実線で示す所定倒伏位置で倒伏方向へのリクライニング動作が完了するよう制御される。
【0015】
図3に示すように、座部5は被治療者が腰をおろす座面部12と、座面部12の裏側に固着され座面部12を支持する座面支持フレーム13を有しており、図9に示すように座面支持フレーム13右側面にはそれぞれ前後二箇所位置に転動ローラ14・14が配設され、転動ローラ14・14は第一のフレーム8の前後方向に沿って滑動可能に該第一のフレーム8に対して嵌合している。図示は省略するが座面支持フレーム13の左側面の前後二箇所位置にも同様にローラが配設されている。
【0016】
図8に示すように連結金具10の下部には牽引手段24としての牽引用アクチュエータ25の推力値(牽引力値)を検出する牽引荷重検出部26としてのロードセル27の一端側が固着され、ロードセル27他端側には牽引用アクチュエータ25のシリンダ部25aの底部が軸着され、ロッド部25bは第一のフレーム8の延在方向と略平行状に前後方向に延在し、先端部が座面支持フレーム13内部に固着される取付具28に軸着されている。牽引用アクチュエータ25のロッド部25bを伸長・収縮させると、前記転動ローラ14・14が第一のフレーム8内周に沿って転動し座部5が滑らかに図8に示す両矢印E方向に往復移動する。
【0017】
前記ロードセル27にて検出される前記牽引力値に係る情報は制御部31に逐次入力される(図10参照)。尚、本発明と直接は関係無いため、詳細な説明は省略するが、前記ロードセル27は所定起立位置にある椅子部2に被治療者が着座した際に、被治療者の体重値を検出する役割も果たしている。即ち、ロードセル27によって検出される当該検出体重値は制御部31内に具備される不図示の牽引力演算設定部に入力され、この牽引力演算設定部において後述する操作パネル部に配備される牽引力切替設定部から適宜に切替設定入力される比率、具体的には20、30、40、50%のうちのいずれかの一つの比率が前記検出体重値に乗算され、当該乗算値が牽引力値として自動設定される。例えば、ロードセル27による被治療者の検出体重値が60kgfであって、牽引力切替設定部において選択設定された比率が20%の場合は、60kgf×20%=12kgfの牽引力値が自動設定されることになる。
【0018】
自動設定された牽引力値は制御部31に入力され、制御部31はロードセル27の検出する牽引用アクチュエータ25の推力値と自動設定された前記牽引力値とを逐次比較し、前記推力値が前記牽引力値に合致するよう牽引時のロッド部25bの伸長作動に係る制御を行う。基台部3内の下方には、椅子部2に着座した被治療者の荷重によるロードセル27の撓みによって下方変位する座面支持フレーム13を受け止める水平ロッド32が左右方向へ水平に延在して設けられている(図2、8参照)。
【0019】
また、椅子型牽引治療装置1には、前述したリクライニング手段21による椅子部2の起立倒伏動作中に椅子部2下方へ侵入した異物の侵入を検出し椅子部2と基台部3間の挟み込みを防止する挟み込み防止手段45が設けられている。尚、異物とは装置1の傍らにいる治療者の手足や装置1近傍に存在する物体等を指す。挟み込み防止手段45は、椅子部2の起立動作中において基台部3と座部5が配置される側の椅子部2との間への異物挟み込みを防止する第一の挟み込み防止手段47と、椅子部2の倒伏動作中において基台部3と背凭れ部6が配置される側の椅子部2との間への挟み込みを防止する第二の挟み込み防止手段を備えている。
【0020】
最初に、図2乃至6を参照して第一の挟み込み防止手段47の構成について説明する。図5に示すように第一の挟み込み防止手段47に係る構成要素は椅子部2の左右幅方向の両側にそれぞれ配設されるが、互いに同一構成である為、以下、一方の構成(図5中右側方向に図示される構成)に基づいて説明を行うこととする。図3に示すように椅子部2を支持するメインフレーム7外周囲は上側カバー43と下側カバー44が上下嵌合状に配置構成される外装カバー42で被装されている。上側カバー43は一体成型物とされるが、下側カバー44は図3に示すように該カバー44の前後中央位置より前方向寄りの位置において前後二分割された前方向下側カバー44aと後方向下側カバー44bとで構成されている。
【0021】
上側カバー43は、図示は省略するが、その前方左右部及び後方左右部がそれぞれ第一のフレーム8・8上面及び第二のフレーム9・9上面にボルト等で螺着されることによりメインフレーム7に対して固定されている。また、図5、6に示すように前方向下側カバー44a側面の上方寄りの一部分において第二のフレーム9下面方向に向かって該下面と略並行状の水平面を有する平坦部44aaが形成されている。図4乃至6に示すように平坦部44aaに穿設された穿孔53には平坦部44aa面と直交方向にボルト19が遊貫挿通され、ボルト19一方部(図6では上方部)は第二のフレーム9下面にナットや平ワッシャ等よりなるボルト止具18を介して固定され、反対側のボルト19他方部(図6では下方部)は、ボルト19に挿嵌され平坦部44aa上下面にそれぞれ押し当てられる上下二枚の座金39・39のうち、下側に配設される座金39に対して二個のナットよりなるボルト止具37で固定されている。
【0022】
そして、第二のフレーム9下面と平坦部44aaとの間に存在するボルト19には、一端が第二のフレーム9下面側に固着されるとともに、他端が上側の座金39上に載設されボルト19周囲に挿嵌装着されるブッシュ35に固定される圧縮バネ38が挿通介装されていて、この圧縮バネ38伸長力により前方向下側カバー44aは第二のフレーム9から離間する方向(図6では下方向)へ通常付勢されている。前記ブッシュ35はボルト19への圧縮バネ38の引っ掛かり現象を抑制し、該圧縮バネ38がスムーズに伸長収縮できるよう補助するものである。
【0023】
また、図3、5に示すように平坦部44aa面の下方に突出するボルト19周辺の前方向下側カバー44a側面は、ボルト19との当接干渉を回避する為、装置1内方に向かって窪む窪み部52がボルト19の軸心方向に沿って縦長に形成されている。窪み部52は前方向下側カバー44aの左右側面にそれぞれ二箇所づつ設けられ、この窪み部52に対応する各位置において配設されたボルト19等により前方向下側カバー44aは第二のフレーム9に対して接近離間方向へ変位可能に支持されている。図6中、36は平坦部44aa下面に対して下方突出するボルト19及びボルト止具37のナットを被覆するキャップである。
【0024】
第二のフレーム9の前方(座部5)側端寄り位置(図4参照)であって装置1内側方向(図6中、左側方向)の鉛直側面にはブラケット34を介してローラーレバー形のリミットスイッチ(座部側リミットスイッチ33)が固着されている(図5、6参照)。この座部側リミットスイッチ33のローラーレバー33aは座部5の下方に人体や物体等の異物が侵入し前方向下側カバー44aが第二のフレーム9に対して所定距離(5〜10mm程度)接近する方向(図6では上方向)へ変位した時点で前方向下側カバー44aの内表面44abに当接し上方へ押し上げられ、この押し上げにより座部側リミットスイッチ33が押下されONからOFFへ信号が切り替わるようになっている。
【0025】
座部側リミットスイッチ33がONからOFFへ切り替わった旨の信号は制御部31に伝送され、この信号を受信した制御部31によってリクライニング用アクチュエータ22のロッド部22bの伸長作動が停止される結果、リクライニング動作が停止する。尚、ローラーレバー33aによって座部側リミットスイッチ33が押下された時、OFFからONへ信号が切り替わるように構成しても勿論よい。
【0026】
次に、椅子部2の倒伏動作中において基台部3と背凭れ部6が配置される側の椅子部2との間への挟み込みを防止する第二の挟み込み防止手段について説明する。第二の挟み込み防止手段は、基本的には上述した第一の挟み込み防止手段47と略同等の構成部材よりなるので、詳細な説明及び図示は省略するが、この第二の挟み込み防止手段は、後方向下側カバー44bの左右両側のそれぞれ二箇所位置、具体的には図3に示される後方向下側カバー44b側面に形成される窪み部52・52に対応する位置においてボルト19や圧縮バネ38等の構成部材によって後方向下側カバー44bが第二のフレーム9に対して接近離間する方向へ変位可能に支持されている。図10のブロック図に示す背凭れ部側リミットスイッチ51は、その他の図における図示は省略するが、左右の第二のフレーム9後端寄り位置であって装置1の内側方向の鉛直側面にそれぞれ配設されており、座部側リミットスイッチ33同様に、後方向下側カバー44bが第二のフレーム9に対して所定距離(5〜10mm程度)接近する方向に変位した時点で押下され、ONからOFFへ信号が切り替わるように構成されている。
【0027】
従って、後方向下側カバー44b下面の下方空間に異物が侵入した状態で椅子部2の倒伏方向へのリクライニング動作を継続すると、この異物により後方向下側カバー44bが第二のフレーム9に対して所定距離、接近する方向(図3中、略上方向)へ押し上げられ、この押し上げによりローラーレバー形の背凭れ部側リミットスイッチ51が押下されONからOFFへ信号が切り替わるように構成されている。背凭れ部側リミットスイッチ51がONからOFFへ切り替わった旨の信号が制御部31に伝送されると、制御部31によってリクライニング用アクチュエータ22のロッド部22bの収縮作動が停止される結果、リクライニング動作が停止する。
【0028】
図9に示すように、座面部12の上方の座面支持フレーム13には被治療者の腰部の裏側から左右側にかけての部位をサポートするよう略U字形状の腰部サポート部材15が設けられ、腰部サポート部材15は左側・中間・右側の各位置に配置される三個の左側・中間・右側部材15a・15b・15cから構成されており、左側部材15aと中間部材15bの間及び中間部材15bと右側部材15cの間にはそれぞれ僅かな空隙が設けられている。この各空隙内に被治療者の腰部に巻き付ける帯状部材17a・17bの基端側が挿通され、各基端が座面支持フレーム13に固着されている。帯状部材17a・17bは被治療者の腰部を座部5に固定する腰装具17を形成する。尚、図示は省略するが、帯状部材17a・17b先端側にはマジックテープ(登録商標)の面ファスナーが添着されており、図1に示すように帯状部材17a・17bは先端側において重ね合わせて結合できるように構成されている。
【0029】
また、装置1には、図2に示すように基台部3の右側面から右方向へ略水平方向に突出した後上方へ曲折された支持アーム41に対して回転自在に支持される操作パネル部40が設けられている。操作パネル部40には、前述した牽引力切替設定部の他、牽引治療時間を設定する治療時間設定部、牽引の持続時間を設定する持続時間設定部、牽引の休止時間を設定する休止時間設定部、リクライニング動作の開始・一時停止スイッチ等の各種スイッチや各種表示部が配備されている。
【0030】
図1中、49・49は基部が第二のフレーム9・9に回転可能に取着され基部の先端に略円柱状の脇パッドが固着される脇当て具、50は背凭れ部6上面にマジックテープ(登録商標)の面ファスナー等の適宜な手段により着脱自在に設けられる枕で、図3中、48・48は第二のフレーム9・9に固着された肘置き具である。
【0031】
次に、本発明の一実施形態に係る椅子型牽引治療装置1の挟み込み防止手段45の動作について図7のフローチャート図を主として参照しつつ説明する。尚、椅子部2は図8の一点鎖線で示す所定起立位置の状態にあるものとする。医師等の治療者は、被治療者を椅子部2に着座させた後、腰部に腰装具17を巻き回し先端部同士を重ね合わせ結合し被治療者を座部5へ固定保持する。上腕を持ち上げ両脇下に脇当て具49・49を位置させる。リクライニング動作の開始スイッチを押下し、傾動用アクチュエータ22のロッド部22bを収縮作動させて椅子部2全体を倒伏するリクライニング動作を開始する(S1)。この動作の際、背凭れ部6下面の下方位置に異物が存在しない場合は、先述の第二の挟み込み検出手段は作用せず、椅子部2は倒伏動作を継続し(S3)、所定倒伏位置に至ると同時に自動的に動作停止し倒伏動作が完了する(S4)。
【0032】
次に、背凭れ部6下面の下方空間への異物侵入が第二の挟み込み防止手段により検出された場合の動作について説明する。倒伏方向へのリクライニング動作中に例えば、後方向下側カバー44bと基台部3の間の空間へ異物が侵入し、この異物が後方向下側カバー44bに接触することにより後方向下側カバー44bが第二のフレーム9に対して接近する方向へ変位すると、背凭れ部側リミットスイッチ51が押下されONからOFF状態へ切り替わる。制御部31は、椅子部2のリクライニング動作中、2個の背凭れ部側リミットスイッチ51について押下がなされたか否かを常に監視しており(S2)、背凭れ部側リミットスイッチ51の少なくとも一つがONからOFF状態へ信号が切り替わったことにより異物侵入があった旨を検出した時点で即座に椅子部2の倒伏動作を停止する(S10)。
【0033】
尚、倒伏方向へのリクライニング動作中に、例えば、治療者が無意識のうちに前方向下側カバー44aに接触し該カバー44aの変位により座部側リミットスイッチ33が押下されるような事態が発生しても、倒伏動作は停止しない。
【0034】
この構成によれば、例えば、後方向下側カバー44bと基台部3の間の空間に異物が侵入する現象が発生した場合であっても、その現象を即座に検出しリクライニング用アクチュエータ22の動作を停止できるので、基台部3と後方向下側カバー44bの間へ異物が侵入したままの状態でリクライニング動作を継続した結果、基台部3と後方向下側カバー44bとの間に異物が挟み込まれ損壊したり、当該異物により装置が傷つき破損故障するという事態に至ることはない。また、この第二の挟み込み手段は上述した後方向下側カバー44bと基台部3との間への異物挟み込み現象を防止する作用を奏する他、基台部3から後方向へ少し離れた位置(図3中の右方向)における後方向下側カバー44b下面の下方空間に存在する異物、例えば倒伏方向へのリクライニング動作を開始する際に注意を怠り移動し忘れ床面に載置されたままの状態にある物体等の異物存在を即座に検出し、この異物の損壊等を防止する作用も奏する。
【0035】
第二の挟み込み防止手段により後方向下側カバー44bと基台部3の間の空間、又は上述した後方向下側カバー44b下面の下方空間への異物侵入が検出され、倒伏方向へのリクライニング動作が中途停止した場合、このリクライニング動作を再開するには異物を前記空間内から除去すればよい。この異物除去に伴って後方向下側カバー44bが圧縮バネ38の伸長力によって第二のフレーム9から離間する方向へ押し下げられる結果、背凭れ部側リミットスイッチ51の押下が解除され(S11)、OFFからON状態へ背凭れ部側リミットスイッチの信号が切り替わり、この切り替わり信号を受信した制御部31によってロッド部22bの収縮作動が再開され、リクライニングによる倒伏動作が再開される(S3)。
【0036】
倒伏動作が終了(S4)した後、牽引治療動作(S5)に移行する。椅子部2が前記所定倒伏位置において倒伏動作終了したときの座部5の位置を以下、倒伏時停止位置と呼称する。まず、牽引用アクチュエータ25が、その推力値が所定力(5kgf)に至ったことをロードセル27が検出するまでロッド部25bが伸長作動する。このロッド部25bの伸長作動により座部5が第一のフレーム8・8に沿って背凭れ部6から離間する方向へ移動し、脇当て具49・49の脇パッドが被治療者の両脇部に当接する。以下、両脇部に脇当て具49・49が当接する座部5の位置を牽引開始位置と呼称する。制御部31内蔵のタイマ手段により牽引治療の開始が指示されると、牽引用アクチュエータ25のロッド部25bが伸長作動し牽引開始位置にある座部5は背凭れ部6から離間する方向に更に移動を開始し、腰椎の牽引が開始される(牽引開始動作)。
【0037】
制御部31は、ロードセル27の検出値が設定牽引力値を示すと同時にロッド部25bの伸長作動を停止する。以下、このロッド部25bの停止位置を牽引位置と呼称する。牽引の持続時間中は制御部31により前記設定牽引力値に維持された状態で牽引治療が行われる。タイマ手段により牽引の持続時間が終了したことが検出されると、制御部31によりロッド部25bが収縮作動を開始し、牽引の一時休止動作が開始する。ロッド部25bは、座部5が前記牽引位置と前記牽引開始位置の略中間位置に復元移動するまで収縮作動する。尚、ロッド部25bを収縮作動し座部5を復元移動させる位置は前述した中間位置に限定されるものではない。
【0038】
上述した牽引持続動作と一時休止動作を設定した治療時間の範囲内において繰り返した後、タイマ手段により治療時間が完了したことが指示されると、制御部31が牽引用アクチュエータ25のロッド部25bの収縮作動を開始する(牽引終了動作の開始)。制御部31はロッド部25bの収縮作動の制御を行い、座部5を前記倒伏時停止位置(図8中実線で示す位置)まで復元移動させる。その後、リクライニング動作の開始スイッチを押下し傾動用アクチュエータ22のロッド部22bを伸長させ、椅子部2全体を起立させるリクライニング動作を開始する(S6)。
【0039】
制御部31は、椅子部2の起立動作中、計2個の座部側リミットスイッチ33について押下がなされたか否かを常に監視している(S7)。この起立動作中に座部5下面の下方空間に侵入した異物が前方向下側カバー44aに当接し、前方向下側カバー44aが持ち上げられ第二のフレーム9に接近する方向へ変位すると、ローラーレバー33aにより座部側リミットスイッチ33が押下される。この押下によってリミットスイッチ33がONからOFF状態に切り替わった旨の信号を受信した制御部31は即座にリクライニング用アクチュエータ22のロッド部22bの伸長作動を停止し椅子部2の起立動作を停止する(S12)。
【0040】
第一の挟み込み防止手段47の構成によれば、例えば、前方向下側カバー44aと基台部3の間の空間(例えば、図3中、F円部の空間)に異物が侵入したままの状態で椅子部2の起立動作を継続した結果、その異物が前方向下側カバー44aと基台部3の間に挟み込まれてしまうという好ましくない事態に至ることを防止できる。また、第一の挟み込み検出手段47の有する座部側リミットスイッチ33は左右の第二のフレーム9側面にそれぞれ配設されている(図5参照)ので、異物が前方向下側カバー44a下面の下方空間における左右側のいずれかの側に偏って侵入した場合であっても、各側に配設される座部側リミットスイッチ33の押下により異物の侵入を即座に且つ確実に検出できることになる。
【0041】
異物が検出され椅子部2の起立動作が中途停止した場合は異物を前方向下側カバー44aの下方から取り除けばよい。これにより座部側リミットスイッチ33の押下が解除され(S13)、ロッド部22bの伸長作動が再開し椅子部2の起立動作が再開される(S8)。起立方向へのリクライニング動作を継続し、椅子部2が所定起立位置に至ると起立動作が終了する(S9)。被治療者の腰部に巻き回している腰装具17の結合を解放し、被治療者を椅子部2から降ろし牽引治療を終了する。
【0042】
尚、前記起立動作中に、治療者が無意識のうちに後方向下側カバー44bに接触し該カバー44bの変位により背凭れ部側リミットスイッチ51が押下されるような事態が発生しても、リクライニング動作は停止しないように構成されている。
【0043】
本発明は、上述した一実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更が可能であることはいうまでもない。例えば、座部をメインフレームに対して固定とし、この座部から背凭れ部を離間する方向へメインフレームに沿って移動させることにより腰椎を牽引する椅子型牽引治療装置にも適用できるものである。また、上述した一実施形態においては、異物侵入により下側カバーが第二のフレームに対して接近する方向へ変位する現象をリミットスイッチにて検出する構成例を説明したが、例えば、リミットスイッチを近接センサ等の検出手段に置換することによっても本発明は実現できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、床面に載置される基台部に対して座部と背凭れ部を備えた椅子部をリクライニング手段を介して起立倒伏可能に設け、前記座部と前記背凭れ部のいずれか一方を他方に対して離間移動させることにより被治療者の腰椎を牽引する椅子型牽引治療装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態に係る椅子部が倒伏した状態の椅子型牽引治療装置の平面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る椅子型牽引治療装置の正面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る椅子型牽引治療装置の右側面図である。
【図4】図2のA−A矢視方向で切断した挟み込み防止手段を示す部分断面図である。
【図5】図3のB−B矢視方向で切断した挟み込み防止手段を示す部分断面図である。
【図6】図5におけるC円部の拡大図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る挟み込み防止手段の動作を説明するフローチャート図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る椅子型牽引治療装置の動作を説明する断面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る椅子型牽引治療装置における座部とメインフレームの関連を示す部分斜視図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る椅子型牽引治療装置の主要電気的構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0046】
1 椅子型牽引治療装置
2 椅子部
3 基台部
6 背凭れ部
7 メインフレーム
8 第一のフレーム
9 第二のフレーム
21 リクライニング手段
22 リクライニング用アクチュエータ
31 制御部
33 座部側リミットスイッチ
38 圧縮バネ
42 外装カバー
43 上側カバー
44 下側カバー
44a 前方向下側カバー
44aa 平坦部
44ab 内表面
44b 後方向下側カバー
45 挟み込み防止手段
47 第一の挟み込み防止手段
51 背凭れ部側リミットスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に載置される基台部に対して座部と背凭れ部を備えた椅子部をリクライニング手段を介して起立倒伏可能に設け、前記座部と前記背凭れ部のいずれか一方を他方に対して離間移動させることにより被治療者の腰椎を牽引する椅子型牽引治療装置において、
前記椅子部が起立倒伏動作する際に前記椅子部下方への異物の侵入を検出し、前記基台部と前記椅子部との間への異物挟み込みを防止する挟み込み防止手段を備えたことを特徴とする椅子型牽引治療装置。

【請求項2】
請求項1に記載の椅子型牽引治療装置において、
前記挟み込み防止手段は、前記椅子部の起立動作中に前記基台部と前記座部が配置される側の前記椅子部との間への異物挟み込みを防止するものであることを特徴とする椅子型牽引治療装置。

【請求項3】
請求項1に記載の椅子型牽引治療装置において、
前記挟み込み防止手段は、前記椅子部の倒伏動作中に前記基台部と前記背凭れ部が配置される側の前記椅子部との間への異物挟み込みを防止するものであることを特徴とする椅子型牽引治療装置。

【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の椅子型牽引治療装置において、
前記椅子部のメインフレーム周囲の少なくとも一部に外装カバーが前記メインフレームに対して接近離間する方向に変位可能に被装され、前記挟み込み防止手段は前記外装カバーの少なくとも一部の前記メインフレーム方向への変位を検出することにより異物侵入を検出し、当該検出信号を受信した制御部により前記リクライニング手段の動作停止がなされることを特徴とする椅子型牽引治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−212407(P2008−212407A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−54205(P2007−54205)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(000103471)オージー技研株式会社 (109)
【Fターム(参考)】