説明

椅子

【課題】フットレスト部と背もたれ部とを揺動可能な椅子において、簡単且つ軽量な構造で、フットレスト部と背もたれ部とをさまざまな姿勢に揺動させる。
【解決手段】本発明の椅子1は、座部2と、座部2の背面に揺動自在に設けられた背もたれ部3と、座部2の前面に揺動自在に設けられたフットレスト部4と、フットレスト部4と背もたれ部3とを座部2に対して揺動させる揺動機構5と、を備えたものである。そして、この揺動機構5が、背もたれ部3がフットレスト部4の揺動に連動して揺動する連動状態と、背もたれ部3が揺動せずフットレスト部4のみが揺動する非連動状態とに切り替える切替機構28を備えていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フットレスト部と背もたれ部とを座部に対して揺動させることのできる椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、椅子型マッサージ機などの椅子には、座部に対してフットレスト部や背もたれ部をリクライニング(揺動)させることができるものがある。
例えば、特許文献1には、座部に対して背もたれ部を揺動させる駆動機構とは別にフットレスト部を揺動させる駆動機構が設けられた椅子が開示されている。この椅子では、走行部材が駆動機構によりガイドレールに沿って走行し、このガイドレールを走行する走行部材にリンク機構を介して連結されたフットレスト部が揺動する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−75590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の椅子型マッサージ機のように背もたれ部を揺動させる駆動機構とフットレスト部を揺動させる駆動機構とが独立に設けられていると、背もたれ部の揺動とフットレスト部の揺動とを個別に行って椅子をさまざまな姿勢に変化させることが可能となる。しかし、その反面で駆動モータなどの駆動装置が複数必要となり、椅子の重量が大きくなりやすいという問題がある。
【0005】
また、軽量化のために1つの駆動機構でフットレスト部と背もたれ部とを揺動させようとすると、フットレスト部と背もたれ部とが連動して揺動するので、調整可能な姿勢が大きく限定されてしまう。特に、椅子型マッサージ機などの椅子ではフットレスト部と背もたれ部とを個別に揺動して、さまざまなリクライニング姿勢を実現させたいというニーズがある。それゆえ、このような調整可能な姿勢が大きく限定されてしまう揺動機構は好ましくはない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、簡単且つ軽量な構造でありながらフットレスト部と背もたれ部とをさまざまな姿勢に揺動させることができる椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明にかかる椅子は、座部と、座部の背面に揺動自在に設けられた背もたれ部と、座部の前面に揺動自在に設けられたフットレスト部と、前記フットレスト部と背もたれ部とを座部に対して揺動させる揺動機構と、を備えた椅子であって、前記揺動機構は、前記背もたれ部がフットレスト部の揺動に連動して揺動する連動状態と、前記背もたれ部が揺動せず前記フットレスト部のみが揺動する非連動状態とに切り替える切替機構を備えていることを特徴とするものである。
【0008】
このようにすれば、背もたれ部の揺動をフットレスト部の揺動に連動して行うことができるので、駆動モータなどの駆動装置を1つだけ設ければ良く、揺動機構を簡単且つ軽量な構造とすることが可能となる。また、切替機構を用いて揺動機構を連動状態から非連動状態に切り替えれば、フットレスト部の揺動と背もたれ部の揺動とを個別に行うことができ、フットレスト部と背もたれ部とをさまざまな姿勢に揺動させることができる。
【0009】
なお、前記揺動機構は、前記フットレスト部を揺動させる第1揺動機構と、当該第1揺動機構を駆動させる駆動部と、前記第1揺動機構に従動して前記背もたれ部を揺動する第2揺動機構と、前記第1揺動機構に対する第2揺動機構の従動動作を一時的に規制する切替機構と、を備えているのが好ましい。
また、前記第1揺動機構は前記フットレスト部に連結されると共に前後方向に移動可能に配備された第1ロッド部材を有しているのが好ましく、また前記第2揺動機構は前記背もたれ部に連結されて当該背もたれ部の自重による後方揺動によって前方に向けて押圧される第2ロッド部材と、前記第1ロッド部材に対する後方移動が許容された状態で第1ロッド部材に後方から当接すると共に、前記第2ロッド部材の前方移動を規制したまま当該第2ロッド部材を前記第1ロッド部材に従動して前方に案内する当接部とを備えているのが好ましい。そして、この場合にあっては、前記切替機構は前記第2ロッド部材の前方移動を規制することで前記揺動機構を連動状態から非連動状態に切り替えるストッパを有しているのがより好ましい。
【0010】
さらに、前記切替機構は、前記フットレスト部が座部に対して垂れ下がった位置にあるときには前記連動状態と非連動状態との切り替えが許容され、前記フットレスト部が前記垂れ下がった状態から前方に揺動すると前記切り替えが規制される構成となっているのが好ましく、前記第2ロッド部材は、前記第1ロッド部材を軸心に沿って前方から挿脱可能な中空の有底筒状に形成されており、その内底部が前記第2揺動機構の当接部とされており、前記ストッパは、前記第2ロッド部材の開口縁に当接する構成とされているのが好ましい。
【0011】
なお、上述の場合にあっては、前記第2ロッド部材は、前記ストッパと当接可能な当接面を前後方向に位置を変えて複数備えており、前記ストッパに複数の当接面のいずれかが当接することにより、前記背もたれ部の揺動角が多段階に切り替えられる構成を採用しても良い。
上述のような構成は、前記背もたれ部とフットレスト部とにマッサージ機構が内蔵されている椅子に設けることができる。
【0012】
また、前記揺動機構は、前記連動状態において背もたれ部の姿勢を当該背もたれ部がたおれた状態のまま固定する姿勢固定機構を備えているのが好ましく、前記非連動状態において背もたれ部の姿勢を当該背もたれ部が起きた状態のまま固定する構成とされていても良い。このような姿勢固定機構としては、前記第2ロッド部材に対する第1ロッド部材の前後位置に応じて第2ロッド部材の外側に向かって突出するロック部材と、前記第2ロッド部材の外側に突出したロック部材と係合して前記背もたれ部の姿勢をたおれた状態に固定する第1ストッパ孔と、当該第1ストッパ孔よりも前後方向の後方に形成されると共に前記非連動状態において前記突端と係合して前記背もたれ部の姿勢を起きた状態に固定する第2ストッパ孔とを備えているものを採用することができる。
【0013】
なお、前記第1ロッド部材の先端側には、当該第1ロッド部材に対し前後移動が可能で且つ第1ロッド部材とフットレスト部とを連結する連結部材が設けられており、前記連結部材は、第1ロッド部材内に配設された弾性部材により第1ロッド部材の基端側に向かって付勢されているのが良い。
また、前記ストッパは、上下方向を向く移動経路を通って移動可能な突出片を備えており、当該突出片が前記移動経路の下端側に移動して前記第2ロッド部材に当接することにより当該第2ロッド部材の前方移動を規制する構成とされており、前記突出片が移動経路の上側に位置するときに当該突出片を上方に向かって付勢する付勢状態と、突出片が移動経路の下側に移動するときに当該突出片を下方に向かって付勢する付勢状態とを互いに切り換える切り換え付勢機構が設けられていると良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る椅子によれば、簡単且つ軽量な構造でありながらフットレスト部と背もたれ部とをさまざまな姿勢に揺動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の椅子(椅子型マッサージ機)の斜視図である。
【図2】連動状態の場合における椅子の姿勢の変化を示す説明図である。
【図3】非連動状態の場合における椅子の姿勢の変化を示す説明図である。
【図4】連動状態の場合における揺動機構の動作を示す説明図である。
【図5】非連動状態の場合における揺動機構の動作を示す説明図である。
【図6】第2実施形態の揺動機構の説明図である。
【図7】第3実施形態の切替機構の説明図である。
【図8】第4実施形態の切替機構の説明図である。
【図9】第5実施形態の揺動機構の斜視分解図である。
【図10】第5実施形態の揺動機構の底面図である。
【図11】連動状態における第5実施形態の揺動機構の動作を示す説明図である。
【図12】非連動状態における第5実施形態の揺動機構の動作を示す説明図である。
【図13】切り換え付勢機構の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
「第1実施形態」
以下、本発明の椅子1を図面に基づき説明する。
本発明の椅子1は、椅子型マッサージ機、美容室や理髪室などで洗髪時にリクライニング可能な椅子、居間などでくつろぐ際にリクライニング可能な椅子やソファ、あるいは飛行機や列車などの乗り物において乗客が着座するシートなどに用いられるものである。以下では、本発明の椅子1をこれらの用途の中でも椅子型マッサージ機に適用した例を挙げて、本発明の椅子1を説明する。
【0017】
図1に示されるように、椅子型マッサージ機1(椅子)は、座部2と、座部2の背面に揺動自在に設けられた背もたれ部3と、座部2の前面に揺動自在に設けられたフットレスト部4と、フットレスト部4と背もたれ部3とを座部2に対して揺動させる揺動機構5と、を備えている。
以下、図1においてUの符号で示される方向を椅子型マッサージ機1を説明する際の上方、Dで示される方向を下方とする。また、図1のFで示される方向を前方、Bで示される方向を後方と呼ぶ。さらに、図1のRで示される方向を右方向、Lで示される方向を左方向と呼ぶ。これは椅子型マッサージ機1に座った人から見た方向と一致する。
【0018】
図1〜図3に示されるように、座部2は、角材を前後、左右、上下に複数組み合わせたフレーム体で構成されており、このフレーム体の上部には人が着座しやすいようにクッション材Cが設けられている。フレーム体の後部の下側には車輪6が左右方向を向く軸回りに回転自在に設けられており、椅子型マッサージ機1の搬送を容易にしている。
座部2のフレーム体の前部上側には、フットレスト部4が左右方向を向く軸回りに揺動自在に取り付けられている。また、座部2の後部上側には、背もたれ部3が左右方向を向く軸回りに揺動自在に取り付けられている。さらに、フレーム体の左右方向の中央側には、フットレスト部4の揺動に連動して背もたれ部3を揺動させる揺動機構5が前後方向に沿って設けられている。なお、この揺動機構5については後で詳しく説明する。
【0019】
背もたれ部3は、座部2と同様に棒材を組み合わせたフレーム体で構成されており、このフレーム体の内側には着座した人の肩、背中、又は腰をマッサージするマッサージ機構(図示略)が内蔵されている。背もたれ部3は、座部2に対してその下端側で枢支されており、この下端側を中心として背もたれ部3の前面がほぼ垂直に立ち上がった姿勢とほぼ水平になるように後方に倒れ込んだ姿勢との間で揺動可能となっている。
【0020】
フットレスト部4は、座部2や背もたれ部3と同様に棒材を組み合わせたフレーム体で構成されている。先端側のフレーム体の内部には、フットマッサージ機構(図示略)が内蔵されており、椅子型マッサージ機1に着座した人の脚部をマッサージできるようになっている。フットレスト部4は、座部2に対してその上端側で枢支されており、この上端側を中心としてフットレスト部4の底面が床面と平行になるまで垂れ下がった姿勢とフットレスト部4の前面が座部2とほぼ水平になるまで起きあがった姿勢との間で揺動可能となっている。
【0021】
フットレスト部4は、揺動中心に近い側(上端側)の第1スライド部材7と、遠い側(下端側)の第2スライド部材8とに、2つに分割されている。第2スライド部材8は、前端下側に向かってまっすぐ伸びると共に下端で前側上方に向かって略L字状に曲げられたフレーム体を備えている。この第2スライド部材8のL字状に曲がった部分には上述したフットマッサージ機構がフレーム体に沿って設けられている。第2スライド部材8は、第1スライド部材7に対してスライド自在に取り付けられており、フットレスト部4は座部2に対して近接したり離間したりできるようになっている。
【0022】
図2または図3に示されるように、揺動機構5は、フットレスト部4を揺動させる第1揺動機構9と、第1揺動機構9を駆動させる駆動部10と、第1揺動機構9に対して当接部12を介して従動して背もたれ部3を揺動する第2揺動機構11と、を備えている。
第1揺動機構9は、前後方向に移動可能に配備された第1ロッド部材13を備えている。この第1ロッド部材13の先端はフットレスト部4の第2スライド部材8に対して枢支ピン14を用いて揺動自在に連結されており、第1ロッド部材13を前後方向に移動させることでフットレスト部4を揺動できるようになっている。
【0023】
第1ロッド部材13は、角棒状に形成されており、その底面側に設けられた案内車輪15によって水平な姿勢を維持したまま前後方向に移動可能とされている。第1ロッド部材13の後端側は後述する第2揺動機構11の第2ロッド部材22に挿入されている。
駆動部10は、第1ロッド部材13の下側に隣接して設けられており、第1ロッド部材13を前後方向に動かすことでフットレスト部4を揺動するものである。駆動部10は、前後方向に沿って設けられたねじ軸16と、ねじ軸16を正逆双方に駆動回転させる駆動モータ17と、ねじ軸16に螺合する螺合部材18とを有している。ねじ軸16の外周面には雄ねじ部19が前後方向に亘って螺旋状に形成されている。螺合部材18は、第1ロッド部材13の前後方向の中途側に取り付けられた部材であり、上方に伸びると共に上端側で第1ロッド部材13に連結されており、その下端側はねじ軸16を挿通できるように前後方向を向く筒状に形成されている。この筒状に形成された部分の内周側にはねじ軸16の雄ねじ部19と螺合する雌ねじ部20が形成されており、ねじ軸16を正逆いずれかの方向に回転させることで螺合部材18は前後方向に移動可能となっている。
【0024】
第2揺動機構11は、座部2に設けられたハウジング21に前後方向に沿って水平に移動可能に支持された第2ロッド部材22を備えている。この第2ロッド部材22の後端には背もたれ部3のフレーム体に設けられた係合ピン23と遊動自在に係合する係合穴24が形成されており、背もたれ部3の揺動に合わせて第2ロッド部材22は前後方向に移動できるようになっている。
【0025】
第2ロッド部材22は、前後方向に沿って内部が中空とされた角筒状であり、開口を先方に向けて配備されており、その内部には第1ロッド部材13の後端側が前方から挿入されている。第2ロッド部材22の下端面には前後方向に沿って溝部25が形成されている。この溝部25は、前方に向かって開口するスリット状に形成されており、第1ロッド部材13の下端側に設けられた螺合部材18を前後方向に案内できるようになっている。それゆえ、第2ロッド部材22に対して第1ロッド部材13は前後方向に移動自在に挿入される。
【0026】
第2ロッド部材22の後端側には第2ロッド部材22の内部に挿入された第1ロッド部材13の後端に当接して挿入位置を位置決めする内底部26が設けられており、この内底部26が本実施形態における第1揺動機構9の動作に連動して第2揺動機構11を動作させる当接部12とされている。また、第2ロッド部材22の下端面には下方に向かって突出した段差27が後端側に形成されており、この段差27がハウジング21の後端面に当接することで第2ロッド部材22の前方移動が規制されるようになっている。
【0027】
当接部12は、後方移動が許容された状態で第1ロッド部材13にその後方から当接すると共に、第2ロッド部材22の前方移動を規制したまま第2ロッド部材22を第1ロッド部材13に従動して前方に案内するものである。
すなわち、背もたれ部3は後側上方に向かって傾斜した姿勢となっているため、背もたれ部3には後方に揺動する方向に自重が加わっている。それゆえ、第2ロッド部材22に対しては背もたれ部3の自重による後方揺動によって前方に向けて押圧する力が加わることになり、第2ロッド部材22は前方に向けて絶えず押圧された状態とされる。
【0028】
その結果、第2ロッド部材22が絶えず前方に向けて押圧され、当接部12には第1ロッド部材13の後端が接触する。この状態で、第1ロッド部材13が前進すると第1ロッド部材13の後端も前方に移動し、当接部12が前進した第1ロッド部材13の後端に当接するまで第2ロッド部材22も前方に移動する。一方、第1ロッド部材13が後進すると、当接部12も後方に移動し、第1ロッド部材13の後進に合わせて第2ロッド部材22も後方に移動する。それゆえ、このような当接部12を設ければ第2ロッド部材22を第1ロッド部材13に従動して前後に案内することができ、第1揺動機構9の動作に連動して第2揺動機構11を動作させることが可能となる。
【0029】
一方、第2ロッド部材22は第1ロッド部材13の後端に対して後方から嵌め込まれているだけであるため、第2ロッド部材22を第1ロッド部材13に対して後方に移動させることは許容されている。それゆえ、第2ロッド部材22の前進を一時的に規制すれば、第2ロッド部材22の前進が停止したまま第1ロッド部材13のみが前進し、背もたれ部3の揺動(傾動)を一時的に停止させたままフットレスト部4のみを揺動させることができる。
【0030】
そこで、本発明の揺動機構5には、第1揺動機構9に対する第2揺動機構11の従動動作を一時的に規制する切替機構28が備えられており、この切替機構28を用いて第1揺動機構9に対する第2揺動機構11の従動動作を一時的に規制することで、背もたれ部3がフットレスト部4の揺動に連動して揺動する連動状態と、背もたれ部3が揺動せずフットレスト部4のみが揺動する非連動状態とに切り替えられるようになっている。
【0031】
切替機構28は第1揺動機構9に対する第2揺動機構11の従動動作を一時的に規制するものであり、本実施形態では第1ロッド部材13の前方移動を許容したまま第2ロッド部材22の前方移動だけを規制するストッパが切替機構28として用いられている。
ストッパ28は、第2ロッド部材22の前後方向に沿った移動経路上に、具体的には第1ロッド部材13が前後方向のほぼ中間まで移動した際に第2ロッド部材22の前進を規制する位置に設けられている。ストッパ28は、第2ロッド部材22側に上方から突出自在な板状の突出片29を備えており、突出した突出片29が第2ロッド部材22の開口縁(前端)に当接することで第2ロッド部材22の前方移動を規制するようになっている。
【0032】
突出片29は、第2ロッド部材22の開口縁には当接するが、第1ロッド部材13には接触しない突出量に突出するようになっており、第1ロッド部材13の前方移動を妨げないように取り付けられている。突出片29は左右方向に向かって設けられた揺動軸30に取り付けられており、揺動軸30を回動させると揺動軸30の軸心回りに回動して突出したり後退したりするようになっている。そして、この揺動軸30には揺動軸30を回動させるレバー31が設けられており、このレバー31を前方に向けて揺動させると揺動軸30が一方向に回動して突出片29が突出し、またレバー31を後方に向けて揺動させると揺動軸30が他方向に回動して突出片29が後退するようになっている。
【0033】
次に、揺動機構5の動作を、連動状態と非連動状態とに分けて説明する。
揺動機構5を連動状態のまま動作させる場合においては、椅子型マッサージ機1は図4(a)に示されるような状態から図4(c)に示されるような状態に変化する。
図4(a)に示される椅子型マッサージ機1では、フットレスト部4が座部2に対して下方に垂れ下がり、背もたれ部3が座部2に対して垂直からやや後方に倒れている。そして、レバー31は後方に揺動されており、ストッパ28の突出片29は第2ロッド部材22側からハウジング21側に後退している。
【0034】
この状態で、駆動部10の駆動モータ17を用いてねじ軸16を正転方向に回転させると螺合部材18が前進し、第1ロッド部材13の前方移動に合わせてフットレスト部4が前方に(図4では時計回りの方向に)向かって揺動する。
一方、第1ロッド部材13が前進すると、内底部26(当接部12)を介して前方移動が規制されていた第2ロッド部材22も前方に移動する。第2ロッド部材22が前進すると、第2ロッド部材22の後端側の係合穴24に連結された係合ピン23が前方に向かってスライドし、背もたれ部3が後方に(図4では時計回りの方向に)向かって揺動する。
【0035】
図4(b)に示されるように、連動状態の揺動機構5においては、ストッパ28の突出片29は後退しておりストッパ28で第2ロッド部材22の前方移動が規制されることはない。それゆえ、第2ロッド部材22の前端がストッパ28まで前進しても、第2ロッド部材22の前方移動は妨げられない。そのため、第2ロッド部材22は第1ロッド部材13の前方移動に追従して前進し続ける。
【0036】
図4(c)に示されるように、第1ロッド部材13が移動経路の前端まで移動すると、第1ロッド部材13の下側に設けられた螺合部材18が座部2の前端側のフレーム体に当接し、また第2ロッド部材22の後端側に形成された段差27がハウジング21の後端面に当接して、第1ロッド部材13及び第2ロッド部材22の前方移動が規制される。このとき、第1ロッド部材13の前端側は座部2から前方に向かって大きく突出しており、この第1ロッド部材13の前端側に連結されたフットレスト部4は座部2と水平に並ぶ位置まで起きあがっている。また、第2ロッド部材22の後端側に連結された係合ピン23は背もたれ部3の枢支点より前方にまで移動しており、背もたれ部3は座部2と水平に並ぶ位置まで倒れ込んでいる。椅子型マッサージ機1の背もたれ部3をこのように座部2と水平に並ぶまで揺動させることができれば、例えば全身を略水平に伸ばして(仰向けになって)マッサージを受けることができて便利である。
【0037】
一方、揺動機構5を非連動状態のまま動作させる場合においては、椅子型マッサージ機1は図5(a)に示されるような状態から図5(c)に示されるような状態に変化する。
図5(a)に示される椅子型マッサージ機1では、レバー31は前方に揺動されており、ストッパ28の突出片29はハウジング21側から第2ロッド部材22側に突出している。しかし、フットレスト部4と背もたれ部3との傾動状態は図4(a)と同じである。そこで、図5(a)についての説明は省略する。
【0038】
図5(b)に示されるように、第2ロッド部材22がある程度まで前進すると、やがて第2ロッド部材22の開口縁がストッパ28の突出片29に当接し、第2ロッド部材22の前方移動が規制される。この第2ロッド部材22は、第1ロッド部材13に対する前方移動は規制されているが、後方への移動は許容されている。それゆえ、第2ロッド部材22の前方移動がストッパ28で規制されたまま第1ロッド部材13だけが前方に移動する。そして、第2ロッド部材22を残したまま第1ロッド部材13だけが前進して、背もたれ部3とフットレスト部4とが双方揺動する連動状態から背もたれ部3が揺動せずフットレスト部4のみが揺動する非連動状態に切り替わる。それゆえ、図5(a)の状態において第2ロッド部材22の前端とストッパ28の突出片29との間に設けられていた距離ぶんだけ、第2ロッド部材22が前方に移動して背もたれ部3が揺動する。そして、図5(b)の状態で第2ロッド部材22の前方移動が停止すると背もたれ部3の揺動も停止したままとなる。
【0039】
図5(c)に示されるように、第1ロッド部材13が移動経路の前端まで移動すると、第1ロッド部材13の下側に設けられた螺合部材18が座部2の前端側のフレーム体に当接する。そして、第1ロッド部材13の前端側が座部2から前方に向かって大きく突出し、この第1ロッド部材13の前端側に連結されたフットレスト部4が座部2と水平に並ぶ位置まで起きあがる。
【0040】
一方、第2ロッド部材22はストッパ28の突出片29に当接したままであるため、第2ロッド部材22は図5(b)の状態のままであり、背もたれ部3は斜め後方に倒れ込んだ状態に保持される。椅子型マッサージ機1の背もたれ部3をこのように座部2に対して起立した状態のまま保持できれば、例えば上半身だけを起こしてテレビを見ながら下半身を水平に伸ばしてフットマッサージを行うことができて便利である。
【0041】
なお、図4(c)の状態から図4(a)の状態に戻す場合や図5(c)の状態から図5(a)の状態に戻す場合には、駆動モータ17を逆転方向に回転させて第1ロッド部材13を後方に移動させる。第1ロッド部材13を後方に移動させると、第1ロッド部材13の後端が第2ロッド部材22の内底部26に当接し、第1ロッド部材13の後方移動に合わせて第2ロッド部材22も後方に移動する。その結果、フットレスト部4が下方に向かって揺動し、また背もたれ部3が起きあがる方向に揺動して、椅子型マッサージ機1は元の状態に復帰する。
【0042】
上述のように切替機構28を用いて揺動機構5を連動状態から非連動状態に切り替えれば、背もたれ部3の揺動をフットレスト部4の揺動に連動して行うことができるので、駆動モータ17などの駆動装置が1つだけの簡単且つ軽量な揺動機構5でフットレスト部4と背もたれ部3との双方の揺動が可能となる。
また、切替機構28を用いて揺動機構5を連動状態から非連動状態に切り替えれば、フットレスト部4の揺動と背もたれ部3の揺動とを個別に行うことができ、フットレスト部4と背もたれ部3とをさまざまな姿勢に揺動させることができる。
「第2実施形態」
次に、第2実施形態の椅子型マッサージ機1について説明する。
【0043】
第2実施形態の椅子型マッサージ機1は、第2ロッド部材22がストッパ28と当接可能な当接面32を前後方向に位置を変えて複数備えており、ストッパ28に複数の当接面32のいずれかが当接することにより背もたれ部3の揺動角が多段階に切り替えられる点で第1実施形態と異なっている。
第2実施形態の第2ロッド部材22は、ストッパ28に対応した上側の外周面に前後方向に沿って形成された段部33を備えている。段部33は、突出片29の進入を許容するように前方に向かって開口している。また、段部33は後方から前方に向かうに連れて階段状に深くなるように形成されており、垂直に切り立った垂直面を前後方向に位置を変えて複数備えている。これらの複数の垂直面は上述の当接面32とされており、本実施形態では第2ロッド部材22の開口端を含めて3つの当接面32が設けられている。
【0044】
また、ストッパ28は、一定の揺動角ごとに多段階にレバー31が揺動するようになっており、また突出片29はレバー31の揺動角を段階的に大きくするに従って第2ロッド部材22側に向かって突出量が段階的に大きくなるように突出する構成されている。
それゆえ、第2実施形態では、レバー31を後方に向かって第1段階分だけ揺動させると、ストッパ28の突出片29が第2ロッド部材22側に向かって最大突出量の1/3程度の突出量だけ突出し、突出片29が3つの当接面32のうち最も後側に位置する当接面32に当接するようになる。それゆえ、当接面32が突出片29に当接するまでに必要な第2ロッド部材22の移動距離が短くなり、背もたれ部3の揺動角も小さくなる。
【0045】
ところが、レバー31を後方に向かってもう1段階分(第2段階まで)揺動させると、突出片29の突出量がさらに最大突出量の1/3程度大きくなり、突出片29が3つの当接面32のうち中途側に位置する当接面32にも当接するようになる。その結果、当接面32が突出片29に当接するまでに必要な第2ロッド部材22の移動距離がレバー31を第1段階分揺動させたときより長くなり、背もたれ部3の揺動角が大きくなる。
【0046】
さらに、レバー31を後方に向かってさらにもう1段階分揺動させると、突出片29が3つの当接面32のうち前側に位置する当接面32に当接するようになる。そうすると、当接面32が突出片29に当接するまでに必要な第2ロッド部材22の移動距離がさらに長くなり、背もたれ部3の揺動角が上述の場合よりさらに大きくなる。
このように第2実施形態の切替機構28では、レバー31の揺動角を段階的に大きくするに従って、突出片29に当接する当接面32が第2ロッド部材22の中で後端側に位置するものから前端側に位置するものへと変化し、前方移動が規制されるのに必要な第2ロッド部材22の移動距離が段階的に長くなり、背もたれ部3の揺動角度を多段階に大きくすることができる。
【0047】
このように背もたれ部3の揺動角度を多段階に変化させることができれば、椅子型マッサージ機1を着座する人のニーズに合わせた様々な状態に変化させることができ、椅子型マッサージ機1の利便性を高めることや設計時のバリエーションを増やすことができる。
「第3実施形態」
次に、第3実施形態の椅子型マッサージ機1について説明する。
【0048】
第3実施形態の椅子型マッサージ機1は、切替機構28がフットレスト部4が座部2に対して垂れ下がった位置にあるときには連動状態と非連動状態との切り替えが許容され、フットレスト部4が垂れ下がった状態から前方に揺動すると切り替えが規制される構成となっており、この点で第1実施形態及び第2実施形態と異なっている。
具体的には、第3実施形態の椅子型マッサージ機1は、第1ロッド部材13の外周面に係合リブ34が形成され、またストッパ28の突出片29にはリブ係合部36が形成されており、この係合リブ34がリブ係合部36に対して軸心方向に移動自在に係合することで突出片29の上下動が規制できるようになっている。
【0049】
係合リブ34は、第1ロッド部材13の一方の側面に径外側に向かって突出状に形成されており、軸心方向に沿って水平に形成されている。係合リブ34は、第1ロッド部材13の前後方向(軸心方向)の中途側から後端側にかけて形成されている。
係合リブ34の前端側には、前方に向かって尖った先端部材35が設けられている。この先端部材35は上側と下側とに傾斜面を備えており、突出片29の上下位置が多少ずれていてもリブ係合部36に対して挿入し易いようになっている。
【0050】
リブ係合部36は、突出片29の内周側に係合リブ34に対応して切欠状に形成されて、係合リブ34とこの係合リブ34の前端側に設けられた先端部材35とを挿入できるようになっており、このリブ係合部36に挿入された係合リブ34に対して軸心方向に移動自在に係合できるようになっている。リブ係合部36は、後方に向かうに連れて開口面積が広がるように下側の内周面が傾斜状に形成されており、係合リブ34の先端部材35が挿脱し易いようになっている。
【0051】
それゆえ、図7(a)に示されるように、第1ロッド部材13が後端側にあるとき、言い替えればフットレスト部4が座部2に対して垂れ下がった位置にあるときには、突出片29に対して係合リブ34は軸心方向に離れていて、リブ係合部36に係合リブ34が挿入されておらず、突出片29は係合リブ34によって何ら規制を受けない。それゆえ、突出片29は自由に上下動させることができ、レバー31を用いて突出片29を上下に移動させることで切替機構28における連動状態と非連動状態との切り替えが容易に行える。
【0052】
ところが、図7(b)に示されるように、第1ロッド部材13が前端側に向かって少しでも移動すると、言い替えればフットレスト部4が垂れ下がった状態から前方に揺動すると、係合リブ34がリブ係合部36に挿入されて係合し、突出片29の上下動が規制される。その結果、突出片29は上下動が規制され、切替機構28における連動状態と非連動状態との切り替えができなくなる。
【0053】
切替機構28を非連動状態としてフットレスト部4を揺動させた後、もし切替機構28を非連動状態から連動状態に切り替えることができるようにしてしまうと、第1ロッド部材13に対して第2ロッド部材22は軸心方向に離れた位置にあるので、第1ロッド部材13に係合するまで第2ロッド部材22が背もたれ部3の自重により前方に移動し、背もたれ部3が後方に勢い良く倒れるので好ましくない。しかし、このようにフットレスト部4が垂れ下がった状態から少しでも前方に揺動すると切替機構28の切り替えが規制される構成とすれば、切替機構28を非連動状態から連動状態に切り替えることができなくなるので、このような背もたれ部3の後方への急激な揺動を防止することができる。
「第4実施形態」
次に、第4実施形態の椅子型マッサージ機1について説明する。
【0054】
第4実施形態の椅子型マッサージ機1は、第3実施形態の変形例であり、第2ロッド部材22の内周面に前方に向かって凹んだ突起係合孔38が形成され、またストッパ28の突出片29には後方に向かって突出した抜止め突起37が形成されており、この抜止め突起37が突起係合孔38に対して軸心方向に移動自在に係合することで突出片29の上下動が規制できるようになっている。
【0055】
突起係合孔38は、第2ロッド部材22の上側の内周面に凹状に形成されており、軸心方向に沿って形成されている。突起係合孔38の前端は、前方に向かって開口しており、前方から抜止め突起37を挿入できるようになっている。
抜止め突起37は、突出片29の上下方向の中途側に突出状に形成されており、突出片29から後方に向かって伸びている。この抜止め突起37は、突起係合孔38に対応した位置に形成されており、突起係合孔38に対して前方から挿入されて係合し、突出片29の上下動を規制するようになっている。
【0056】
それゆえ、図8(a)に示されるように、第1ロッド部材13が後端側にあるとき、言い替えればフットレスト部4が座部2に対して垂れ下がった位置にあるときには、突出片29に対して第2ロッド部材22は軸心方向に離れており、突出片29の抜止め突起37も突起係合孔38に挿入されていない。それゆえ、突出片29は自由に上下動させることができ、突出片29を上下に移動させることで切替機構28における連動状態と非連動状態との切り替えが容易に行える。
【0057】
ところが、図8(b)に示されるように、第1ロッド部材13に伴って第2ロッド部材22が前端側に向かって少しでも移動すると、言い替えればフットレスト部4が垂れ下がった状態から前方に揺動すると、突出片29の抜止め突起37が第2ロッド部材22の突起係合孔38に係合し、突出片29の上下動が規制される。その結果、突出片29は上下動が規制され、切替機構28における連動状態と非連動状態との切り替えができなくなる。
【0058】
それゆえ、第4実施形態の切替機構28では、第3実施形態と同様に、切替機構28を非連動状態から連動状態に切り替えることができなくなるので、背もたれ部3が後方に向かって勢い良く揺動することがない。また、第4実施形態の切替機構28では、第3実施形態に比べてより簡単な構造で切替機構28の切り替えを規制でき、製造コストも低減できる。
【0059】
なお、第3実施形態又は第4実施形態で示したフットレスト部4が揺動を開始するとその切り替えが規制される切替機構28は、第1実施形態又は第2実施形態で示した椅子1にも適用することができる。
「第5実施形態」
次に、第5実施形態の椅子型マッサージ機1について説明する。
【0060】
第1実施形態から第4実施形態の椅子型マッサージ機1では、揺動機構5が連動状態にある場合は、第2ロッド部材22は第1ロッド部材13に後方から当接しているだけであり、第1ロッド部材13に対する後方移動が許容されていた。つまり、何らかの拍子に揺動した背もたれ部3を元の起立した姿勢に戻すように力を加えると、背もたれ部3がガタついて座った人に不快感を与える虞がある。
【0061】
そこで、第5実施形態の椅子型マッサージ機1には、連動状態において背もたれ部3の姿勢を揺動された状態のまま固定する姿勢固定機構40が備えられている。この姿勢固定機構40は、連動状態において背もたれ部3の姿勢を背もたれ部3が倒れた状態のまま固定するものであり、背もたれ部3の姿勢が元の起立した姿勢に戻らないようにするものである。なお、姿勢固定機構40は、非連動状態において、背もたれ部3の姿勢を起きあがったままで固定する機能も備えている。そこで、以下の説明においては、連動状態と非連動状態との双方において背もたれ部3の姿勢を固定するものを例に挙げて、第5実施形態の椅子型マッサージ機1を説明する。
【0062】
図9及び図10に示すように、姿勢固定機構40は、第1ロッド部材13に取り付けられた跳ね上げ部材41と、この跳ね上げ部材41により第2ロッド部材22から出退するロック部材42と、出退したロック部材42の突端42aを嵌め込むことができるようにハウジング21に形成されたストッパ孔43とを有しており、ロック部材42の突端42aがストッパ孔43に嵌り込んで第2ロッド部材22とハウジング21との相対移動が規制されることで背もたれ部3の姿勢を固定する構成となっている。
【0063】
跳ね上げ部材41は、第1ロッド部材13の側面にボルトなどを用いて取り付けられた板状の部材であり、第1ロッド部材13の前後に移動する際には第1ロッド部材13と一体に移動できるようになっている。跳ね上げ部材41は、後述するロック部材42を載せられる程度の厚みに形成されており、また側方から見ると前後方向の中央が両端側より厚く(高く)なるような形状(略台形形状)となっている。つまり、跳ね上げ部材41の上面はいずれも平坦面であるが前側、中央側、後側の3箇所に分かれており、中央側の上面は前側及び後側より高くなっている。そして、中央側の上面は水平であって、前側及び後側の上面は中央側の上面に向かって傾斜したものとなっており、この上面に載せられたロック部材42を支障なくスライドしつつ上下に移動できるようになっている。
【0064】
ロック部材42は、水平方向に沿って切断した断面が略長方形状とされた板状の部材であって、第1ロッド部材13と第2ロッド部材22との間に前後方向を向いて配備されている。ロック部材42は、第2ロッド部材22に形成された案内孔44に出退自在に収容されており、この案内孔44は第2ロッド部材22の内部と外部とを上下方向に沿って貫通するように形成されている。それゆえ、案内孔44に収容されたロック部材42は案内孔44に沿って上下方向に移動できる構成となっている。
【0065】
ロック部材42の下側の隅は、前側と後側とが2か所に亘って面取りされている。この面取りされた部分は、上述した跳ね上げ部材41の傾斜面に対応して同じ傾斜角に形成されており、跳ね上げ部材41が前方または後方に移動した際にロック部材42をスムーズに上方または下方に案内することを可能としている。
ロック部材42の表面(板面)には、第2ロッド部材22を向く側とは反対側にガイドピン45が形成されている。このガイドピン45は案内孔44の内周面に上下方向に沿って形成されたガイド溝46に嵌り込むようになっている。このガイド溝46の上端と下端とはロック部材42が移動できる範囲の上限と下限とを位置決めするものであり、ガイドピン45がガイド溝46の上端に位置するときはロック部材42の突端42aが第2ロッド部材22の上面から突出し、ガイドピン45がガイド溝46の下端に位置するときはロック部材42の下端が跳ね上げ部材41の傾斜面に接する位置まで下降することを許容している。
【0066】
ストッパ孔43は、跳ね上げ部材41により上方に移動したロック部材42の突端42aを挿入できるようにハウジング21の上側に形成された穴であり、連動状態のときにロック部材42の突端42aを挿入する第1ストッパ孔47と非連動状態のときにロック部材42の突端42aを挿入する第2ストッパ孔48とが設けられている。第1ストッパ孔47と第2ストッパ孔48とは前後方向に距離(第1ロッド部材22の段差27とハウジング21の後端面との距離)をあけて且つ互いに左右方向の位置が同じになるようにそれぞれ形成されており、ハウジング21の前側に形成された第1ストッパ孔47と後側に形成された第2ストッパ孔48との2箇所でロック部材42と係合できるようになっている。このロック部材42を挿入するストッパ孔43を第1ストッパ孔47にするか第2ストッパ孔48にするかは、上述したストッパ28を連動状態と非連動状態とのいずれにするかで選択することができる。
【0067】
次に、図11及び図12を用いて、姿勢固定機構40の動作を説明する。
図11(a)に示すように、ストッパ28を上方に移動させた連動状態では、駆動モータ17を正転方向に回転させて第1ロッド部材13を前方に移動させると、図11(b)に示すように第2ロッド部材22はハウジング21に固定されていないので、第1ロッド部材13と第2ロッド部材22とが一体に前方に移動する。そして、図11(c)に示すように段差27がハウジング21の後端面に当接すると、第2ロッド部材22だけが前方への移動を規制され、第1ロッド部材13だけが前方に移動するようになる。
【0068】
そうすると、跳ね上げ部材41の前側に形成された傾斜面がロック部材42の後側の面取り部分を押し上げ、傾斜面に沿ってロック部材42が上方にスライドし、ガイドピン45が挿し込まれたガイド溝46に案内されてロック部材42が上方に移動する。そして、ロック部材42の突端42aが第2ロッド部材22の上面から突出し、ハウジング21の前側に形成された第1ストッパ孔47に嵌り込んで、第2ロッド部材22がハウジング21に対して前方にも後方にも移動しない固定状態となる。
【0069】
図11(d)に示すように、ロック部材42の下面が跳ね上げ部材41の上面に沿って水平に移動する間は、ロック部材42の突出状態が維持され、第2ロッド部材22の前後移動に合わせて揺動する背もたれ部3の姿勢も固定状態に維持される。
背もたれ部3及びフットレスト部4の姿勢を元に戻す場合は、駆動モータ17を逆転方向に回転させると第1ロッド部材13が後方に移動し、上述した動作と逆の動作が起こって揺動前の状態に戻すことができる。
【0070】
一方、図12(a)に示すようにストッパを下方に移動させた非連動状態では、駆動モータ17を正転方向に回転させて第1ロッド部材13を前方に移動させると、第2ロッド部材22はストッパ28によりハウジング21に固定されているので、第2ロッド部材22を残したまま第1ロッド部材13だけが前方に移動する。
そうすると、図12(b)及び図12(c)に示すように連動状態のときと同様に跳ね上げ部材41がロック部材42を押し上げるので、ロック部材42の突端42aがハウジング21の後側に形成された第2ストッパ孔48に嵌り込んで、第2ロッド部材22がハウジング21に対して前方にも後方にも移動しない固定状態となり、背もたれ部3の姿勢が固定される。
【0071】
さらに、跳ね上げ部材41が前方に移動すると、跳ね上げ部材41の後側に形成された傾斜面に案内されてロック部材42が下方に移動する。そして、ガイドピン45がガイド溝46の下端に位置するまでロック部材42が降下すると、ガイドピン45がガイド溝46の下端に位置決めされてロック部材42の降下が停止し、ロック部材42はそれ以上降下することはない。
【0072】
背もたれ部3及びフットレスト部4の姿勢を元に戻す場合も、跳ね上げ部材41の後側にも傾斜面が形成されているので、下降した位置にあるロック部材42であっても容易に上方に移動することができる。
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、発明の本質を変更しない範囲で各部材の形状、構造、材質、組み合わせなどを適宜変更可能である。
【0073】
上記実施形態では、椅子型マッサージ機を例に挙げて本発明の椅子1を説明した。しかし、本発明の椅子1は、美容室や理髪室などで洗髪時にリクライニング可能な椅子、居間などでくつろぐ際にリクライニング可能な椅子やソファ、あるいは飛行機や列車などの乗り物において乗客が着座するシートなどに用いることができる。
上記実施形態では、ストッパ28が第2ロッド部材22の上面側に備えられたものを例示した。しかし、ストッパ28は第2ロッド部材22の側面側や下面側に設けられていても良い。
【0074】
上記実施形態では、第2ロッド部材22側に突出して第2ロッド部材22の開口縁にストッパ28が当接することで連動状態から非連動状態に切り替わる切替機構28を例に挙げた。しかし、本発明の椅子1に設けられる切替機構28としては、例えばストッパ28として電気式で出退するロックピンを設けると共に、このロックピンに係合する穴を第2ロッド部材22の外周面に1箇所又は複数形成し、ロックピンが第2ロッド部材22の穴に係合することで連動状態から非連動状態に切り替わる切替機構28を採用することもできる。
【0075】
上記実施形態では、第1ロッド部材13が第2ロッド部材22に挿入され、第2ロッド部材22の内底部26に当接することで第2ロッド部材22に対する第1ロッド部材13の相対移動が規制される揺動機構5を例示した。しかし、例えば第2ロッド部材22に第1ロッド部材13側に向かって突出する突起を設け、この突起に第1ロッド部材13が当接することで第2ロッド部材22に対する第1ロッド部材13の相対移動が規制される揺動機構5を採用しても良い。
【0076】
上記実施形態では、ストッパ28の突出片29が第2ロッド部材22の前端側に設けられた当接面32に当接する切替機構28を例示した。しかし、当接面32を第2ロッド部材22の後端側に設けて、背もたれ部3を水平近くにまで揺動させることもできる。
上記第2実施形態では、ストッパ28の突出片29と当接可能な当接面32が第2ロッド部材22の外周面に前後方向に位置を変えて複数備えられ、ストッパ28がこれら複数の当接面32のいずれかに当接することで背もたれ部3の揺動角を多段階に変更できる椅子1を例示した。しかし、ストッパ28を前後方向に位置を変えて複数設け、第2ロッド部材22の前端縁が複数のストッパ28のいずれかに当接することで、背もたれ部3の揺動角を多段階に変更できるようにしても良い。
【0077】
なお、図13に示すように、フットレスト部4が揺動する際にフットレスト部4と座部2との間に異物などが挟まるのを防ぐために、第1ロッド部材13の先端側に第1ロッド部材13に対し前後移動が可能で且つ第1ロッド部材13とフットレスト部4とを連結する連結部材50を設けておき、この連結部材50を第1ロッド部材13内に配設された弾性部材51により第1ロッド部材21の基端側に向かって付勢しても良い。例えば、連結部材50を角棒状に形成し、この棒状の連結部材50を第1ロッド部材21の内部に前後方向に自由に出入りできるように収容しておく。そして、その上で連結部材50の後端(基端)と第1ロッド部材21との間につっぱりバネ51(弾性部材51)を設ければ、連結部材50は後方に向かって付勢されることになる。このようにすれば、フットレスト部4と座部との間に物が挟まっても、つっぱりバネ51に抗して連結部材50が第1ロッド部材21から伸びるように動くので、挟まった物に駆動モータ17の力が直接及ぶことがなくなり、挟まった物の破損を防止することができる。また、弾性部材51の付勢力に抗してフットレスト部4を手で反揺動方向に引き離せば、挟まった物を取り除くことも容易である。
【0078】
また、例えばストッパの突出片29が上下方向の中途位置に引っ掛かるなどすると、連動状態と非連動状態との切替が確実に行えなくなる可能性がある。このような場合は、図13に示すように、突出片29の上下方向に沿った移動経路において、突出片29が移動経路の上側に位置するときに突出片29を上方に向かって付勢する付勢状態と、突出片29が移動経路の下側に移動するときに突出片29を下方に向かって付勢する付勢状態とを互いに切り換える切り換え付勢機構52を設けることもできる。
【0079】
具体的には、切り換え付勢機構52としては、図13のように突出片29とこの突出片29の揺動中心Pとを結ぶ線L上にバネなどの付勢手段53の基端側を固定し、付勢手段53の先端側を突出片29に連結して突出片29に付勢力を作用させるものなどを採用することができる。このようにすれば、突出片29の位置が上述した線L上の中立位置より上方にあるときは、突出片29を支持する部材にその揺動中心Pを中心として上方に回転する方向に付勢力が作用し、突出片29は移動経路に沿って上方に付勢される。また、突出片29が中立位置より下方にあるときは、上述した動作とは逆方向に付勢力が働いて突出片29が下方に付勢される。その結果、突出片29が移動経路の中途位置に留まることがなくなり、突出片29が必ず移動経路の上端または下端のいずれかに位置するようになって連動状態と非連動状態との切替が確実に行えるようになる。
【符号の説明】
【0080】
1 椅子(椅子型マッサージ機)
2 座部
3 背もたれ部
4 フットレスト部
5 揺動機構
6 車輪
7 第1スライド部材
8 第2スライド部材
9 第1揺動機構
10 駆動部
11 第2揺動機構
12 当接部
13 第1ロッド部材
14 枢支ピン
15 案内車輪
16 ねじ軸
17 駆動モータ
18 螺合部材
19 雄ねじ部
20 雌ねじ部
21 ハウジング
22 第2ロッド部材
23 係合ピン
24 係合穴
25 溝部
26 内底部
27 段差
28 切替機構(ストッパ)
29 突出片
30 揺動軸
31 レバー
32 当接面
33 段部
34 係合リブ
35 先端部材
36 リブ係合部
37 抜止め突起
38 突起係合孔
40 姿勢固定機構
41 跳ね上げ部材
42 ロック部材
42aロック部材の突端
43 ストッパ孔
44 案内孔
45 ガイドピン
46 ガイド溝
47 第1ストッパ孔
48 第2ストッパ孔
50 連結部材
51 弾性部材(つっぱりバネ)
52 切り換え付勢機構
53 付勢手段
C クッション材
P 突出片の揺動中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部と、座部の背面に揺動自在に設けられた背もたれ部と、座部の前面に揺動自在に設けられたフットレスト部と、前記フットレスト部と背もたれ部とを座部に対して揺動させる揺動機構と、を備えた椅子であって、
前記揺動機構は、前記背もたれ部がフットレスト部の揺動に連動して揺動する連動状態と、前記背もたれ部が揺動せず前記フットレスト部のみが揺動する非連動状態とに切り替える切替機構を備えていることを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記揺動機構は、前記フットレスト部を揺動させる第1揺動機構と、当該第1揺動機構を駆動させる駆動部と、前記第1揺動機構に従動して前記背もたれ部を揺動する第2揺動機構と、前記第1揺動機構に対する第2揺動機構の従動動作を一時的に規制する切替機構と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の椅子。
【請求項3】
前記第1揺動機構は、前記フットレスト部に連結されると共に前後方向に移動可能に配備された第1ロッド部材を有しており、
前記第2揺動機構は、前記背もたれ部に連結されて当該背もたれ部の自重による後方揺動によって前方に向けて押圧される第2ロッド部材と、前記第1ロッド部材に対する後方移動が許容された状態で第1ロッド部材に後方から当接すると共に、前記第2ロッド部材の前方移動を規制したまま当該第2ロッド部材を前記第1ロッド部材に従動して前方に案内する当接部とを備え、
前記切替機構は、前記第2ロッド部材の前方移動を規制することで前記揺動機構を連動状態から非連動状態に切り替えるストッパを有していることを特徴とする請求項2に記載の椅子。
【請求項4】
前記切替機構は、前記フットレスト部が座部に対して垂れ下がった位置にあるときには前記連動状態と非連動状態との切り替えが許容され、前記フットレスト部が前記垂れ下がった状態から前方に揺動すると前記切り替えが規制される構成となっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の椅子。
【請求項5】
前記第2ロッド部材は、前記第1ロッド部材を軸心に沿って前方から挿脱可能な中空の有底筒状に形成されており、その内底部が前記第2揺動機構の当接部とされており、
前記ストッパは、前記第2ロッド部材の開口縁に当接する構成とされていることを特徴とする請求項3又は4に記載の椅子。
【請求項6】
前記第2ロッド部材は、前記ストッパと当接可能な当接面を前後方向に位置を変えて複数備えており、
前記ストッパに複数の当接面のいずれかが当接することにより、前記背もたれ部の揺動角が多段階に切り替えられることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の椅子。
【請求項7】
前記背もたれ部とフットレスト部とにマッサージ機構が内蔵されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の椅子。
【請求項8】
前記揺動機構は、前記連動状態において背もたれ部の姿勢を当該背もたれ部がたおれた状態のまま固定する姿勢固定機構を備えていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の椅子。
【請求項9】
前記姿勢固定機構は、前記非連動状態において背もたれ部の姿勢を当該背もたれ部が起きた状態のまま固定する構成とされていることを特徴とする請求項8に記載の椅子。
【請求項10】
前記姿勢固定機構は、
前記第2ロッド部材に対する第1ロッド部材の前後位置に応じて第2ロッド部材の外側に向かって突出するロック部材と、前記第2ロッド部材の外側に突出したロック部材と係合して前記背もたれ部の姿勢をたおれた状態に固定する第1ストッパ孔と、当該第1ストッパ孔よりも前後方向の後方に形成されると共に前記非連動状態において前記突端と係合して前記背もたれ部の姿勢を起きた状態に固定する第2ストッパ孔とを備えていることを特徴とする請求項8または9に記載の椅子。
【請求項11】
前記第1ロッド部材の先端側には、当該第1ロッド部材に対し前後移動が可能で且つ第1ロッド部材とフットレスト部とを連結する連結部材が設けられており、
前記連結部材は、第1ロッド部材内に配設された弾性部材により第1ロッド部材の基端側に向かって付勢されていることを特徴とする請求項3〜10のいずれかに記載の椅子。
【請求項12】
前記ストッパは、上下方向を向く移動経路を通って移動可能な突出片を備えており、当該突出片が前記移動経路の下端側に移動して前記第2ロッド部材に当接することにより当該第2ロッド部材の前方移動を規制する構成とされており、
前記突出片が移動経路の上側に位置するときに当該突出片を上方に向かって付勢する付勢状態と、突出片が移動経路の下側に移動するときに当該突出片を下方に向かって付勢する付勢状態とを互いに切り換える切り換え付勢機構が設けられていることを特徴とする請求項3〜11のいずれかに記載の椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図13】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−162337(P2010−162337A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275637(P2009−275637)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(592009214)大東電機工業株式会社 (106)
【Fターム(参考)】