説明

植毛用パイルおよび植毛製品

【課題】環境に対する負荷が低く、かつ自動車用途等の実用に供し得る植毛製品を提供する。
【解決手段】パイル直径が0.3〜31μmパイル長が0.1〜3mmのポリ乳酸繊維を含んでなることを特徴とする植毛用パイル及び植毛用パイルを含んでなる植毛製品であり、環境に対する負荷が低く、かつ、手触り、立毛感、発色性等において実用に供し得るレベルが得られる。ポリ乳酸繊維としては、単独、或いは他のポリマーを海成分とする海島型、他のポリマーを鞘成分とする芯鞘型のいずれでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植毛用パイルおよび植毛製品に関する。より具体的には、ポリ乳酸を用いた植毛用パイルおよび植毛製品に関する。
【背景技術】
【0002】
植毛製品に使われるパイルには、現在、主としてナイロン繊維が使用されている(例えば特許文献1参照。)。特に、自動車用途では風合いが柔らかいナイロン繊維の使用が多い。
【0003】
しかし近年、石油資源の大量消費によって生じる地球温暖化や、大量消費に伴う石油資源の枯渇が懸念されており、地球規模にて環境に対する意識が高まりつつある。このような背景において、植物由来原料(バイオマス)からなる素材が切望されている。
【0004】
ポリ乳酸は、植物から抽出したでんぷんを発酵することにより得られる乳酸を原料としたポリマーであり、バイオマス利用のポリマーの中では、力学特性、耐熱性およびコストのバランスが最も優れている。そして、これを利用した各種製品の開発が急ピッチで行われている。
【0005】
ポリ乳酸繊維の開発としては、その生分解性を活かした農業資材や土木資材等が先行しているが、未だ自動車用途等に好適に用いられる為の風合いや発色性と、低環境負荷性とを両立した植毛製品は提案されていないのが現状である。
【特許文献1】特開2001−315235号公報
【特許文献2】特開2000−234217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、環境に対する負荷が低く、かつ自動車用途等の実用に供し得る植毛製品を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、直径が0.3〜31μm、パイル長が0.1〜3mmのポリ乳酸繊維を含んでなることを特徴とする植毛用パイルである。
【0008】
また本発明は、本発明の植毛用パイルを含んでなることを特徴とする植毛製品である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、環境に対する負荷が低く、かつ、手触り、立毛感、発色性等において実用に供し得るレベルの植毛製品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を実行するために鋭意検討した結果、上記課題を解決するために、ポリ乳酸繊維を主としてなる直径が0.3〜31μm、パイル長が0.1〜3mmであることを特徴とする植毛用パイルとすることでかかる課題を一挙に解決することを見出した。
【0011】
以下、本発明の自動車内装部材を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
【0012】
まず、本発明の植毛用パイルは、ポリ乳酸繊維を含んでなる。ここで「ポリ乳酸」とは、乳酸やラクチド等の乳酸のオリゴマーを重合してなるポリマーをいう。また「ポリ乳酸繊維」とは、ポリ乳酸を含んでなる繊維をいう。ポリ乳酸繊維は、コスト、紡糸性、カード通過性などの点で他の非石油系ポリマーよりも優れている。また、非石油系素材であることから、その他の石油系素材と比べ、大気中の二酸化炭素を増やさず、地球環境負荷の小さくすることができる。
【0013】
また、ポリ乳酸は優れた抗菌性を発現する。その理由として、繊維断面にポリ乳酸が露出しており、露出したポリ乳酸より析出したラクチドおよび乳酸成分が静菌活性値向上に寄与するものと考えられる。
【0014】
尚、ポリ乳酸を他のポリマーが被覆してなる態様においては、繊維の側表面にポリ乳酸が露出していないものもあるが、その場合にもパイルカット断面にポリ乳酸が露出することで、抗菌性を発現する。
【0015】
ポリ乳酸におけるL体あるいはD体の光学純度としては、融点が高くなり、耐熱性が向上するという点で90%以上が好ましく、97%以上がより好ましい。また、L体の光学純度90%以上のポリ乳酸とD体の光学純度90%以上のポリ乳酸とを70/30〜30/70の比率でブレンドしたものは融点がさらに向上するため好ましい態様である。
【0016】
また、ポリ乳酸の性質を損なわない範囲で、乳酸以外の成分を共重合していてもよい。
【0017】
また、粒子、難燃剤、帯電防止剤、艶消し剤、消臭剤、抗菌剤、抗酸化剤あるいは着色顔料等の添加物を含有していても良い。また、染色等の熱水処理によるポリ乳酸の加水分解の抑制や製品の経時による物性低下の抑制を目的として、カルボジイミド化合物等の末端封鎖剤を含有していても良い。
【0018】
ポリ乳酸の分子量としては、力学特性と成形性とのバランスの点から重量平均分子量で5万〜50万が好ましく、10万〜35万がより好ましい。また、本発明の植毛用パイルは、ポリ乳酸繊維においてポリ乳酸が他のポリマーにより被覆されていることが好ましい。耐摩耗性と耐熱性を向上させることができるからである。
【0019】
ポリ乳酸が他のポリマーにより被覆される態様としては、ポリマーブレンドによる海島型の樹脂分散や、芯鞘型あるいは海島型の複合繊維を採用することができる。
【0020】
ポリマーブレンドによる海島型の樹脂分散においては、ポリ乳酸を島成分、他のポリマーを海成分とすることにより、ポリ乳酸が他のポリマーにより被覆された構造となる。
【0021】
芯鞘型複合繊維においては、ポリ乳酸を芯成分、他のポリマーを鞘成分とすることにより、ポリ乳酸が他のポリマーにより被覆された構造となる。
【0022】
海島型複合繊維においては、ポリ乳酸を島成分、他のポリマーを海成分とすることにより、ポリ乳酸が他のポリマーにより被覆された構造となる。
【0023】
なお、繊維表面に一部の島成分が露出していても良い。
【0024】
他のポリマーとしては例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリアミド、アクリル、ポリオレフィン等を挙げることができる。
【0025】
その中でも、ポリトリメチレンテレフタレートは、その組成成分であるトリメチレングリコールを植物由来成分より製造することができ、低環境負荷の点で好ましい。ポリトリメチレンテレフタレートは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とし、当該単位のポリトリメチレンテレフタレートに対する含有量としては、20重量%以上が好ましい。ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタル酸またはその機能的誘導体、例えばテレフタル酸ジメチルなどと、トリメチレングリコールとを、結合せしめることにより合成することができる。
【0026】
また、溶融複合紡糸の容易さの点からは、熱可塑性ポリアミド、ポリトリメチレンテレフタレート等を好ましく用いることができる。
【0027】
特に、熱可塑性ポリアミドは、ポリ乳酸との親和性が高い点、発色性に優れている点、またポリ乳酸樹脂との組み合わせにおいても、独特の深みのあるシルキー調光沢に特に優れている点、植毛製品としての手触り、風合いに優れている点などから、特に好ましい。
【0028】
熱可塑性ポリアミドは、アミド結合を有するポリマーであり、例えば、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610等を挙げることができる。ポリ乳酸との親和性を高くするという点からは、ポリアミドのメチレン鎖長は長い方が好ましく、その点ではナイロン11、ナイロン12、ナイロン610が好ましい。
【0029】
ポリマーブレンドによる海島型の樹脂分散におけるポリ乳酸のポリ乳酸繊維に対する質量分率としては、低環境負荷、発色性の観点から、5質量%以上が好ましく、より好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。一方、ポリ乳酸樹脂が島構造、他の熱可塑性樹脂が海構造という関係の構造を安定して形成させる上で、また耐摩耗性の点では、55質量%以下が好ましく、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0030】
ポリ乳酸が他のポリマーにより被覆されている形態のポリ乳酸繊維におけるポリ乳酸の質量分率としては、低環境負荷、生産性、発色性等の観点から、30質量%以上が好ましく、より好ましくは50質量%以上である。一方、耐摩耗性の点では、70質量%以下が好ましい。
【0031】
本発明の植毛用パイルは、ポリ乳酸繊維の未延伸糸トウを延伸し、延伸糸を束ねて数キロテックスから数十キロテックスのトウとし、これをギロチンカッターにてカットすることにより得ることができる。
【0032】
ポリ乳酸繊維の直径としては、0.3〜31μmとすることが、表面品位、手触りの点で重要であり、10〜20μmがコスト、表面品位の点から好ましい。ポリ乳酸繊維の直径を31μm以下とすることで手触りの良好なものとして、品位の優れた植毛製品を得ることができる。また0.3μm以上とすることで耐摩耗性を維持できる。
【0033】
また、ポリ乳酸繊維の繊度としては、0.001〜8dtexが表面品位、手触りの点で好ましく、0.9〜3.3dtexがコスト、表面品位の点からより好ましい。8dtex以下とすることで手触りの良好なものとして、品位の優れた植毛製品を得ることができる。また0.001dtex以上とすることで耐摩耗性を維持できる。
【0034】
本発明の植毛用パイルのパイル長は、0.1〜3mmとする。パイル長を0.1mm以上とすることで植毛製品の手触り、表面品位の良好なものとすることができ、3mm以下とすることで植毛製品としての耐毛倒れ性の悪化や手触りの悪化を防ぐことができる。さらに、パイル長を2mm以下とすることで、自動車内装用として好適な表面品位の植毛製品を得ることができる。
【0035】
本発明の植毛用パイルは、特に静電植毛に用いる上で、表面抵抗値が10〜1010Ω・cmの範囲にあることが好ましい。当該範囲内の表面抵抗値とすることで、集合している短繊維の分散性、飛翔性を良好なものとすることができる。当該範囲内の表面抵抗値は例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ素化合物や、ギ酸カリウム、酢酸カリウム等の相溶性カリウム化合物の処理液での電着処理により達成することができる。
【0036】
電着処理とは、繊維表面の抵抗値を静電植毛を行う上で適切な抵抗値に処理する工程である。
【0037】
ポリ乳酸繊維に電着処理を行う場合、ケイ酸ナトリウムや、ケイ酸カリウム等のケイ素化合物をもちいること、ポリ乳酸の加水分解を起こさずに、加工でき、好ましい。
【0038】
また、タンニン化合物を表面に処理を行うことで、ポリ乳酸を加水分解させることなく、風合いが良好な植毛パイルを得ることができる。
本発明の植毛用パイルを植毛加工に供するに先立って、短繊維をメッシュに入れて通過させ、紡糸工程にて糸が融着した繊維や規定長よりも長い繊維を取り除くことが、均一な植毛により植毛製品の表面品位を向上させる上で好ましい。
【0039】
本発明の植毛用パイルは、静電植毛、散布植毛、吹き付け植毛等の各種植毛加工に用いることができる。
【0040】
静電植毛は、電極間に高電圧の静電界を発生させ、一方の電極側に接着剤を塗布した基材を配置し、植毛用パイルに電荷を与えて反対側の電極から基布に向かって飛ばして植毛するものである。
【0041】
植毛対象となる基材の材料や形状としては例えば、樹脂材料、木質材料、紙、金属材料、セラミックスまたはこれらの複合材料を用いた成型体、布状体等を挙げることができる。上記樹脂材料としては例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AAS樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、メタクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂等を用いることができる。
【0042】
またこのような基材にパイルを固定するための接着剤としては、エポキシ系、メラミン系、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、酢酸ビニル系、合成ゴム系等の接着剤を用いることができる。
【0043】
特に、アクリル系、ポリエステル系接着剤は、乾燥温度が低いこと、接着強力の観点から好ましく用いることができる。
【0044】
本発明の植毛製品は、ピラーガニッシュやピラーヒーターガード等の自動車内装材、トレー、シート、サンバイザー、ルーバー、カーペット、玩具、エアコンの風向板等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0045】
[測定方法]
(1)パイル長
カット後のパイルを拡大鏡(Nikon社製PROFILE PROJECTOR V−12)にて拡大し、その長さを測定し、200本の平均値を算出した。
【0046】
(2)パイル繊度
JIS L 1015:1999 8.5.1 b)(B法)に準じて繊度を測定した。
パイル200本を一組とし、その質量を量り、上記で測定した平均パイル長から、次の式によって繊度(dtex)を求め、5回の平均値を算出した。
F=10000×m÷(200×L)
ここに、F:繊度(dtex)
m:試料の質量(mg)
L:平均パイル長。
【0047】
(3)パイル直径
植毛製品の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察して、500倍に拡大し、縦150μm、横200μmの視野の中から、面内のパイル本数が30を超える場合にはn数30を無作為に抽出し、パイル一つ一つの横断を画像解析ソフトウェアにて測定し、当該面積から、真円換算にて直径を算出した。
【0048】
(4)手触り
官能評価により4段階で測定し、特に優れるものを◎、優れるものを○、やや劣るものを△、劣るものを×とした。
【0049】
(5)立毛感
官能評価により4段階で測定し、特に優れるものを◎、優れるものを○、やや劣るものを△、劣るものを×とした。
【0050】
(6)発色性
官能評価により4段階で測定し、特に優れるものを◎、優れるものを○、やや劣るものを△、劣るものを×とした。
【0051】
(7)静菌活性値
JIS Z 2801に従い、試験片表面に1/500普通ブイヨンで調製した菌液を滴下し、フィルムで密着させ35℃で保存した後、24時間後の試験片上の菌液について生菌数を測定した。
【0052】
測定した、生菌数から次式で、静菌活性値を求めた
静菌活性値=log(A/B)
ここで、A:無加工試験片24時間後の生菌数
B:試験片24時間後の生菌数。
【0053】
[実施例1]
(紡糸)
ポリ乳酸チップ(カーギルダウ社製6201D)を紡糸機ホッパーに仕込み、エクストルーダー型紡糸機で220℃にて溶融し、600ホールを有する口金から吐出量505g/分で紡出し、紡糸速度1000m/分で引き取った。同様に紡糸した複数の糸条を合糸し、キャンに受けた。
【0054】
(延伸)
そして、この未延伸糸をさらに合糸して27.7ktexのトウとし、80℃の水槽中で3.1倍に延伸した後、スタッフィングボックスでけん縮を付与した。次いで、90℃でリラックス熱処理を行い、油剤を付与し、単繊維繊度3.3dtexの延伸トウを得た。
【0055】
(パイルカット)
得られた延伸トウをギロチンカッターにて0.8mmにカットした。
【0056】
(電着処理)
得られた短繊維を分散染料で110℃、30分間処理し、湯洗い後、コロイダルシリカ分散液で処理し、パイル長0.8mm、パイル繊度3.3dtex、パイル直径18.3μmの植毛用パイルを得た。
【0057】
(植毛)
ポリオレフィン基材(トヨタTSOPプラ)にプライマ(トルエン92%、塩素化PP2%、アクリル樹脂5%含有)を処理し、80℃、30分間乾燥させた。その後、当該基材にアクリル系エマルジョン接着剤を塗布し、上記で得られたパイルに3万Vの電圧をかけ、アップ法にて静電植毛し、80℃、30分間乾燥させた。
【0058】
得られた植毛製品は、手触り、立毛感、発色性、静菌活性値に優れたものであった。
【0059】
[実施例2]
(紡糸・延伸・パイルカット・電着処理)
パイルカットにおいてカット長を1.2mmとした以外は実施例1と同様にして、パイル長1.2mm、パイル繊度3.3dtex、パイル直径18.3μmの植毛用パイルを得た。
【0060】
(植毛)
上記で得られた植毛用パイルを用いた以外は実施例1と同様にして、植毛製品を得た。
【0061】
[実施例3]
(紡糸)
ポリ乳酸チップ(カーギルダウ社製6201D)を紡糸機ホッパーに仕込み、エクストルーダー型紡糸機で220℃にて溶融し、600ホールを有する口金から吐出量390g/分で紡出し、紡糸速度1000m/分で引き取った。同様に紡糸した複数の糸条を合糸し、キャンに受けた。
【0062】
(延伸)
そして、この未延伸糸をさらに合糸して28ktexのトウとし、80℃の水槽中で3.6倍に延伸した後、スタッフィングボックスでけん縮を付与した。次いで、90℃でリラックス熱処理を行い、油剤を付与し、単繊維繊度6.6dtexの延伸トウを得た。
【0063】
(パイルカット)
得られた延伸トウをギロチンカッターにて1.0mmにカットした。
【0064】
(電着処理)
カットして得られたパイルに対して電着処理を実施例1と同様にして行い、パイル長1.0mm、パイル繊度6.6dtex、パイル直径28.9μmの植毛用パイルを得た。
【0065】
(植毛)
上記で得られた植毛用パイルを用いた以外は実施例1と同様にして、植毛製品を得た。
【0066】
[実施例4]
(紡糸)
ポリ乳酸チップ(カーギルダウ社製6201D)を紡糸機ホッパーに仕込み、エクストルーダー型紡糸機で220℃にて溶融し、600ホールを有する口金から吐出量290g/分で紡出し、紡糸速度1000m/分で引き取った。同様に紡糸した複数の糸条を合糸し、キャンに受けた。
【0067】
(延伸)
そして、この未延伸糸をさらに合糸して28ktexのトウとし、80℃の水槽中で3.1倍に延伸した後、スタッフィングボックスでけん縮を付与した。次いで、90℃でリラックス熱処理を行い、油剤を付与し、単繊維繊度1.5dtexの延伸トウを得た。
【0068】
(パイルカット)
得られた延伸トウをギロチンカッターにて1.0mmにカットした。
【0069】
(電着処理)
カットして得られたパイルに対して電着処理を実施例1と同様にして行い、パイル長1.0mm、パイル繊度1.5dtex、パイル直径12.3μmの植毛用パイルを得た。
【0070】
(植毛)
上記で得られた植毛用パイルを用いた以外は実施例1と同様にして、植毛製品を得た。
【0071】
[実施例5]
(紡糸)
ポリ乳酸チップ(カーギルダウ社製6201D)とナイロン6チップを紡糸機ホッパーに仕込み、エクストルーダー型紡糸機で255℃にて溶融し、437ホールを有する口金から吐出量350g/分で紡出し、紡糸速度800m/分で引き取った。同様に紡糸した複数の糸条を合糸し、キャンに受けた。
【0072】
(延伸)
そして、この未延伸糸をさらに合糸して42ktexのトウとし、90℃のスチームボックス内で3.5倍に延伸した後、油剤を付与した。次いで、スタッフィングボックスでけん縮を付与し、90℃でリラックス熱処理を行い、単繊維繊度3.3dtexの延伸トウを得た。
【0073】
(パイルカット)
得られた延伸トウをギロチンカッターにて1.0mmにカットした。
【0074】
(電着処理)
カットして得られたパイルに対して電着処理を実施例1と同様にして行い、パイル長1.0mm、パイル繊度3.3dtex、パイル直径18.7μmの植毛用パイルを得た。
【0075】
(植毛)
上記で得られた植毛用パイルを用いた以外は実施例1と同様にして、植毛製品を得た。
【0076】
[実施例6]
(紡糸)
ポリ乳酸チップ(カーギルダウ社製6400D)(溶融粘度1210poise)とナイロン6チップ(溶融粘度580poise)とをエクストルーダーにて混練質量比(ポリ乳酸:ナイロン)70:30、混練温度230℃で混練し、紡糸機に供給した。
【0077】
紡糸機における紡糸温度は230℃とし、紡糸パック中でメッシュサイズ20μmの金属不織布フィルターで濾過した後、600ホールを有する口金から吐出量505g/分で紡出し、紡糸速度1000m/分で引き取った。同様に紡糸した複数の糸条を合糸し、キャンに受けた。
【0078】
(延伸)
そして、この未延伸糸をさらに合糸して28ktexのトウとし、90℃の水槽中で3.11倍に延伸した後、スタッフィングボックスでけん縮を付与し、油剤を付与した後、90℃でリラックス熱処理を行い、単繊維繊度3.3dtexの延伸トウを得た。
【0079】
(パイルカット)
得られた延伸トウをギロチンカッターにて1.0mmにカットした。
【0080】
(電着処理)
カットして得られたパイルに対して電着処理を実施例1と同様にして行い、パイル長1.0mm、パイル繊度3.3dtex、パイル直径19.0μmの植毛用パイルを得た。
【0081】
(植毛)
上記で得られた植毛用パイルを用いた以外は実施例1と同様にして、植毛製品を得た。
【0082】
[比較例1]
(紡糸)
ポリ乳酸チップ(カーギルダウ社製6201D)を紡糸機ホッパーに仕込み、エクストルーダー型紡糸機で220℃にて溶融し、200ホールを有する口金から吐出量484g/分で紡出し、紡糸速度1000m/分で引き取った。同様に紡糸した複数の糸条を合糸し、キャンに受けた。
【0083】
(延伸)
そして、この未延伸糸をさらに合糸して28.8ktexのトウとし、80℃の水槽中で3.6倍に延伸した後、スタッフィングボックスでけん縮を付与した。次いで、110℃でリラックス熱処理を行い、油剤を付与し、単繊維繊度9dtexの延伸トウを得た。
【0084】
(パイルカット)
得られた延伸トウをギロチンカッターにて0.8mmにカットした。
【0085】
(電着処理)
カットして得られたパイルに対して電着処理を実施例1と同様にして行い、パイル長0.8mm、パイル繊度9dtex、パイル直径31.7μmの植毛用パイルを得た。
【0086】
(植毛)
上記で得られた植毛用パイルを用いた以外は実施例1と同様にして、植毛製品を得た。
【0087】
比較例1の植毛製品は、実施例1,2と比べ、手触り、立毛感が劣るものであった。
【0088】
[参考例1,2]
ポリ乳酸繊維にかえて、ナイロン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維を用い、それぞれ参考例1,2とした。
【0089】
ポリ乳酸繊維を用いた実施例の植毛用パイルは、従来の石油系素材と比べても手触り、立毛感そして発色性において遜色ないものであった。
【0090】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の植毛用パイルおよび植毛製品は、自動車用途の他、家電製品におけるエアコン風向板、コピー機部品、家具用途における滑り止め、傷防止カバー、オーディオ機器用途における吸音、制振材、または生活雑貨用途における装飾材等に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径が0.3〜31μm、パイル長が0.1〜3mmのポリ乳酸繊維を含んでなることを特徴とする植毛用パイル。
【請求項2】
ポリ乳酸繊維においてポリ乳酸が他のポリマーにより被覆されている、請求項1に記載の植毛用パイル。
【請求項3】
請求項1または2に記載の植毛用パイルを含んでなることを特徴とする植毛製品。
【請求項4】
自動車内装材用途に用いられる請求項3に記載の植毛製品。
【請求項5】
エアコンの風向板用途に用いられる請求項3に記載の植毛製品。

【公開番号】特開2007−2395(P2007−2395A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−143745(P2006−143745)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】