説明

植物に於ける組織因子の産生

本発明は、植物に於いて作動可能な第一のプロモーター、核酸配列が前記プロモーターに作動可能に会合する哺乳動物の組織因子タンパク質又はその機能断片をコードする発現可能な核酸配列、及び前記核酸配列に作動可能に会合する終止配列を含んで成る植物を発現するベクターを提供するものである。本発明はさらに、請求の範囲に記載のベクター及び植物を用いて前記組織因子タンパク質又はその機能的な断片を作製する方法、及び対象に組織因子タンパク質を投与することにより、対象に於いて失血を治療又は予防する、創傷治癒を促進させる、血管形成又は血管の再構築を促進させる方法を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2004年6月25日に出願された米国特許出願第60/583187号の部分継続出願であり、米国特許出願第60/583187号の優先権を主張するものである。同米国特許出願第60/583187号に於ける開示を参照して本明細書に取り込む。
【0002】
(発明分野)
本発明は、一般に、植物由来の組織因子及びそのタンパク質の機能断片の産生及び使用に関するものである。組織因子は血液凝固カスケードの主要な構成成分である。本発明は、出血の予防又は治療処置、及び創傷治癒のために高活性の組織因子を提供することを含む幅広く効果的な適用を有するものである。
【背景技術】
【0003】
創傷の治療又は処置に於ける重要な工程が、出血を軽減し、解消させるものであるということは広く認められている。その工程は通常、出血を止めるだけでなく、創縫合及び治癒を開始させるために血液の凝固を要するものである。より一般的には、血液凝固は恒常性(ホメオスタシス)の回復を助け、より迅速且つ効率的な創傷治癒を促進させると考えられている。L.Styer,Biochemistry,3rd Ed,W.H.Freeman Co.,New York; A.G.Gilmanらの、The Pharmacological Basis of Therapeutics,9th Edition, McGraw Hill Inc.,New York,pp.1341〜1359;及びMann,K.G.らの(1992)Semin.Hematol.29:213を参照されたい。
【0004】
血液凝固を促進させる生物学的経路が報告されているが、それらには、内因性経路及び外因性経路が含まれる。S.I.,Rapaport及びL.V.M.Rao(1995) Throm.Haemost.74:7; 及び上記のStryer,L.並びにそれらの引用文献を参照されたい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
組織因子(TF)と呼ばれる血液凝固因子への暴露が、血液凝固の外因性経路を誘発すると考えられている。より具体的には、外因性(TF)経路は血液がTFに接触した時点から始まると考えられている。血流のTFへの暴露が凝固を開始させるのである。カルシウムの存在下では、TF及びFVIIaは、他の「下流」血液因子FX及びFIXの活性化に触媒作用を及ぼすと考えられている複合体(TF−FVIIa)を形成する。FXa及びVa因子は、プロトロンビンをトロンビンに変換すると考えられている「プロトロンビナーゼ」複合体」を形成する。トロンビンは血栓の形成を促進させるものである。例えば、Davie,E.W.らの(1991)Biochem.30:10363; Nemerson,Y.(1988)Blood 71:1,Rand,M.D.らの(1996)Blood 88:1; 及びMonroe,D.M.ら(1994)Brit.J.Haemot.88:364.を参照されたい。
【0006】
組織因子の構造と機能は既に開示されているが、例えば、米国特許第5,110,730号、同5,298,599号及び同5,622,931号を参照されたい。特に、ヒトの組織因子の核酸及びアミノ酸配列が報告されている。核酸データベース登録番号(GenBank Accession Nos.)J02846(遺伝子配列)及びBC011029(cDNA、mRNA及びタンパク質配列)を参照されたい。一般的に、TFの最適活性に達するためには、特定の膜構成成分、通常はリン脂質、との会合(association with)が必要であると考えられている。Williams Hematology,5th Ed.(Beutler,E.ら Eds.)McGraw−Hill,Inc.,Health Professions Div., New York.を参照されたい。
【0007】
血液凝固の速さを決定する幾つかの方法が公知である。それらの方法は、例えば患者に於ける血液因子の欠損を同定するのに役立つものである。ある標準的な方法(プロトロンビン時間(PT)試験と呼ばれる)では、出発試薬としてカルシウム化された血漿を使用する。続いて、血漿をトロンボプラスチン又はTFと混合する。そして、凝固時間を計測する。標準的な方法によれば、Ca++の存在下で脂質化された組み換えヒトTF(rhTF)を加えることにより凝固反応を開始させる。凝固時間の決定には全自動血液凝固時間測定装置を使用する。例えば、Miletich,JP(1995)Prothrombin Time (Chapter L33)Williams Hematology,5th Ed.,上記,L82〜L84頁を参照されたい。
【0008】
一部の微生物がrhTFを製造するために使用されているが、そのような素材が常に有用であるとは限らないことは知られている。例えば、精製されたTFによって血液凝固の最適な活性が得られる又はTFタンパク質調製物がrhTFの「再脂質化」の過程で特定のリン脂質と結合(combine)するということは一般的に認識されている。この追加の調製工程は、多くの状況に於いてrhTFの産生と使用にかかる経費を増大させるものである。TFの一貫した脂質化は、インビトロでの数多くの血液凝固アッセイを首尾良く行う上で重要な要素となっている考えられる。
【0009】
特定の異種タンパク質を製造するために植物を利用する取り組みがなされている。例えば、Bascomb,N.らのPCT/US02/23624;Hall,G.らのPCT/US02/17927;Daniell,H.らの(2001)Trends in Plant Science,Vol.6:219;及びそれらの引用文献を参照されたい。
【0010】
特に、特定の植物が微生物及び動物細胞に基づいたタンパク質の産生システムに代わる魅力的な手段になることが報告されている。植物に於けるタンパク質産生の利点に関する多くの報告もなされている。これらは、単純な精製手順及び伝統的農業慣習を利用して大規模にタンパク質を「養殖」する能力を含むものである。
【0011】
これらの有益性にもかかわらず、全ての異種タンパク質が植物に於いて効率的に産生されるのか否かは必ずしも明確ではない。特に、タンパク質が可溶性及び生物学的な機能を持つように翻訳後に、そのようなタンパク質の全てを折り畳み、修飾する能力が植物にあるのか否かが確実でない。十分な発現のレベルに達するために不可欠なコドンの好ましい使用法が、多くのそのようなタンパク質で知られているわけではない。タンパク質の産生又は機能に影響を与えるであろう植物膜の成分は、通常、完全には理解されていない。時として、植物は、サイレンシングと呼ばれる過程により特定の異種タンパク質の産生を抑制する場合がある。
【0012】
このような困難にもかかわらず、組織因子を発現可能なトランスジェニック植物を得ることが嘱望されている。再脂質化の必要性を最小限に抑え、好ましくは排除する、植物由来の組換え組織因子の獲得は、さらに望ましいものである。患者に於ける創傷の予防又は治療若しくは処置のための植物由来のrhTFを用いる組成物及び方法に加え、前記植物を製造するためのベクターの獲得もまた望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要約)
本発明は、一般に、TFを発現するトランスジェニック植物に関し、また、組織因子(TF)を産生及び使用する方法に関する。より詳細には、本発明は、タンパク質の再脂質化を必要としない、血液凝固を助ける植物由来のTF組成物に関するものである。本発明は、診断分析に於ける使用及び創傷治癒の促進剤としての使用を含む、様々な有益な適用を有するものである。
【0014】
本発明者らは、植物に於いてTFの発現及び要したとしても最小限の脂質化しか要しない機能性TFタンパク質の獲得が可能であることを見出した。つまり、本発明者らは、植物がTF機能を促進させる手助けをする細胞成分を供給できるということを見出したのである。理論に拘束されるのを望むものではないが、植物膜は、TFが天然に会合(associate)する(又は合成的に会合する)ものに代わる成分分子を提供することができると考えられる。植物が、顕著な血液凝固活性を達成するために、要したとしても最小限の脂質化しか要しない機能性TFを発現することが可能であるという国際的な認識がなかった点に於いて、この観察結果は驚くべきものである。
【0015】
本発明の、これら及びその他の驚くべき特質は実質的な利益を提供するものである。例えば、本発明により、今や植物に機能性TFを発現させることが可能となり、またそれは微生物にTFを発現させのに発酵又はバイオリアクターシステムを使用する従来の方法よりも経済的である。さらに、本発明により提供される方法により、機能性TFを比較的大規模に“養殖”することが可能となる、すなわち、前記タンパク質を製造するための形質転換、収穫及びトランスジェニック植物の作製のため、標準的な技術を利用するということである。また、そのような方法により得られたTFは、機能性タンパク質の産生のために、再脂質化を要するとしても最小限の脂質化しか要しないということである。本発明は、機能性TFの獲得にかかる費用の削減及びバッチからバッチへのより一定した活性をもつTFの提供を含む様々な具体的な利点を提供するものである。これらの利点は、言い換えると、インビトロで血液凝固をモニターしようとするような既存の診断分析で用いられる、出血の抑制又は創傷治癒などの促進のためのより優れたより効果的な治療又は処置の提供を助けとなるものである。
【0016】
従って、一態様に於いて、本発明は、タンパク質又はその機能断片を発現するトランスジェニック植物から得られる組換え組織因子タンパク質又はその機能断片を提供するものである。好ましくは、前記植物によって発現される組織因子又は断片は、齧歯類又は霊長類のような哺乳動物のものである。より好ましくは、トランスジェニック植物又はそのタンパク質の機能断片により産生される組換えヒト組織因子タンパク質である。通常、好ましい組換え組織因子タンパク質又は断片は、その起源にかかわらず、標準プロトロンビン時間(PT)アッセイに於いて、有効な活性に達するための如何なる顕著な再脂質化も必要としないものである。そのようなPTアッセイの例を以下に記載する。
【0017】
本発明の、より具体的な哺乳動物の組換え組織因子又はその機能的な断片タンパク質は作動可能に連結した植物又は哺乳動物由来のシグナルペプチドを含むものである。
【0018】
本発明で提供される、哺乳動物のその他の具体的な組換え組織因子及び機能断片は、少なくとも何れか一つの植物特異的グリカンを有するタンパク質を含むものである。前記グリカンは、好ましくは一つ又はそれ以上の炭水化物基を介して前記タンパク質に共有結合するものであることが望ましい。そのような植物特異的グリカンの例として、α(1,3)フコース基及びβ(1,2)キシロース基がある。さらに、その他の植物由来の哺乳動物の組換え組織因子タンパク質及びその機能断片は、例えば一つ又はそれ以上の末端ガラクトース又はシアル酸基のような、動物細胞に於いて通常発現する炭水化物は含まないものである。ここで「末端」というのは、動物特有の炭水化物は、通常、タンパク質に結合しているグリカン構造の末端又はその近くに位置しているからである。
【0019】
そのような組換え哺乳動物の組織因子タンパク質又は断片は、必要に応じて、特別な発明目的に適合するように、植物の粗抽出物又はより精製された形態で提供可能である。タンパク質又は断片は実質的に精製された調製物として提供される。
【0020】
前記考察の通り、本発明で提供される組換え哺乳動物の組織因子タンパク質及び断片は、PT試験のような血液凝固をモニターするものを含む多様なアッセイに於いて、最適な生物活性に達するのに顕著な再脂質化を必要としないものである。
【0021】
さらに、本発明は、組換え哺乳動物の組織因子又はその機能断片を発現する形質転換植物細胞を含む様々な好適なトランスジェニック植物を提供する。前記植物に含まれる、一般的な形質転換植物細胞は、本明細書に於いて開示されるように、タンパク質を発現するベクターの少なくとも何れか一つを包含するものである。好適な単子葉植物又は双子葉植物のほとんどのどれもが、以下に記述する代表的な植物のように、本発明の本方法による形質転換が可能である。また、トランスジェニック植物から得られる子孫植物、切り枝(「挿し木」とも呼ばれる)、品種又は種子も検討されている。好ましくは、そのような子孫植物、切り枝、挿し木、品種又は種子が、哺乳動物の組織因子又は断片を発現するベクターを含むものである。
【0022】
本発明のトランスジェニック植物は、通常、組織因子又はその機能断片をコードする、一つ又はそれ以上の最適なベクターを組み込むことによって作出される。従って本発明は、もう一つの態様に於いて、(a)植物に於いて作動可能な第一のプロモーター;(b)哺乳動物の組織因子タンパク質又はその機能断片をコードする発現可能な核酸配列、ここで前記核酸配列はプロモーターに作動可能に会合する;及び(c)前記核酸配列に、作動可能に会合した終止配列を含む発現ベクターを提供するものである。そのようなベクターの作製及び使用方法を以下に記載する。
【0023】
さらに本発明は、組換え組織因子(rhTF)又はその機能断片を含むトランスジェニック植物の粗抽出物を提供するものである。より具体的な抽出物は、植物によって発現され、水性の画分中でけん濁されたタンパク質又は断片を含むものである。前記断片は、以下に記載されるような標準的な抽出若しくは精製手法の一つ又はその組み合わせによって作製することができる。ほとんどの発明の実施態様で、粗抽出物は、水溶液の存在下で植物の細胞(又は、葉や花などのような一部分)を部分的に又は完全に崩壊させて、低速の遠心分離、重力などによって不溶性の成分を取り除くいて粗抽出物とすることにより容易に調製することができる。
【0024】
本発明により調製された粗抽出物は、顕著な利点を提供する。例えば、脂質化又はさらなる精製を要すことなく多様な用途に用いることができる機能性rhTFを含む。つまり、粗抽出物は「独立型」の組成物(凝固剤)として使用可能であり、又は使用目的に合わせて他の組成物(例えば、薬学的に許容される媒体、添加物、賦形剤など)と混合することが可能である。当然のことながら、前記粗抽出物は、比較的大量に調製することが可能であり、その結果、調製物が本質的に一貫した生物活性を示すために大量なrhTFを必要とする広範囲に及ぶ使用が可能になる。
【0025】
従って、別の態様於いて、本発明は前記トランスジェニック植物により産生された組換え組織因子又はその機能的な断片を包含するような作用物質(agent)を含む凝固剤又は組成物を特徴とする。
【0026】
別の態様では、本発明は、本明細書に開示されるトランスジェニック植物を作製する方法を提供するものである。一態様に於いて、前記方法は、以下の工程:
i)(a)植物に於いて作動可能な第一のプロモーター、(b)前記プロモーターに、作動可能に会合した、哺乳動物の組織因子タンパク質又はその機能的な断片をコードする発現可能な核酸配列、及び(c)前記核酸配列に、作動可能に会合した終止配列、を含んで成る、少なくとも何れか一つの発現ベクターを好適な植物又は植物組織に組み込むこと;並びに
ii)哺乳動物の組織因子タンパク質又はその機能断片の発現を促す状況下で、前記植物又は植物組織を培養して、トランスジェニック植物を作製すること、
の少なくとも何れか一つ、そして好ましくは全てを含む。
本発明の態様は、従来型の粒子衝突、ウィスカーの形質転換、エレクトロポレーション及びプロトプラスト形質転換を含む様々な形質転換への適用に好適である。
【0027】
必要であれば、トランスジェニック植物を作製するためのより具体的な戦略を以下の通常の工程に示す。
i)(a)植物に於いて作動可能な第一のプロモーター、(b)前記プロモーターに、作動可能に会合した、哺乳動物の組織因子タンパク質又はその機能的な断片をコードする発現可能な核酸配;及び(c)前記核酸配列に作動可能に会合した終止配列、を含んで成る少なくとも何れか一つの複製(アグロバクテリウムに於いて)可能な発現ベクターを、好適なアグロバクテリウム菌に導入すること;並びに
ii)トランスジェニック植物を作製するために、前記植物又は植物組織を形質転換させることを促す状況下で、前記細菌と好適な植物又は植物細胞を培養すること。この様に、本発明の態様は、アグロバクテリウム媒介の形質転換を使用するのが望ましい適用には好適なものである。
【0028】
さらに本発明は、本明細書に記載の使用に適切な、薬学的に有用である本発明の形態を提供するもので、水溶性懸濁液、凍結乾燥粉末、乾燥粉末又は液状エアゾールスプレー、液体若しくはクリームのような局所用剤を含むものである。また、rhTFが、通常は本明細書で開示されるrhTF又は機能断片を含む吸収剤(又は吸着剤)である固形の支持体として提供されている、形態を含むものである。本発明の態様に於いて、前記吸収剤(又は吸着剤)は、より集中的及び/又は長期的なrhTF又は断片の適用が必要な態様での使用に用いるタンパク質を保持するものである。そのような固形の支持体には、吸収剤(又は吸着剤)を塗布するのに適した粘着性の支持体が含まれる。また、粘着性の支持体を含んだ包装容器、好ましくは実質的には耐水性、耐外気性及び耐汚染性のものが想定される。
【0029】
本発明の目的は、血液凝固を必要とする対象に、rhTF又はその機能断片を送達可能な植物の粗抽出物及び実質的に精製された調製物を提供することである。つまり、人工的な顕著な脂質化を伴わない凝固剤としてrhTFを使用することが可能であるということは見出されていたが、一方で、rhTFの殆どの商業的供給源は、優れた活性に達するために実質的な再脂質化が必要なように産生されている。
【0030】
従って、本発明の目的はさらに、対象に於ける創傷治癒を促進させる方法を提供することである。一態様に於いて、本発明の方法は、対象を治療有効量の凝固剤と接触させることを含む。本発明のさらなる目的は、対象に於ける血管新生を促進させる方法を提供することである。好ましくは、当該方法は、本明細書に開示される治療有効量の凝固剤を前記対象に接触させることを含むものである。また、別の発明の目的は、対象に於いて血管壁再構築(血管リモデリング)を促進させる方法を提供することである。一態様に於いて、当該方法は、本明細書に開示される治療有効量の凝固剤を対象に接触させることを含むものである。
【0031】
前述の発明方法に於いて、対象は、哺乳動物、通常はそのような治療を必要とするヒト患者であることが好ましい。本発明のこれらの方法は多様な設定にその用途が見いだされるものであるが、早急な止血が有益である状況を伴う場合に実施されることが多く、そのような状況とは、医療、公衆衛生又は緊急治療室、被災地若しくは戦場のような軍事救急に関係するもの、また、獣医の処置も含むものである。
【0032】
本発明の他の態様及び効果を以下に記載する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
(発明の詳細な説明)
前述したように、本発明は、組換え組織因子(rhTF)を作製及び使用する方法に加え、哺乳動物及び好ましくはヒトのrhTFを発現するトランスジェニック植物に関するものである。そのような植物由来のタンパク質が、再脂質化の工程を何ら要することなく、血液凝固に大きく役立つということが見出されてきた。本発明は、創傷治癒及びそれに関連した血管新生のような機能を促進させるため並びに診断アッセイ(例、PT、aPPアッセイ)に於いての、凝固剤としての使用を含む、幅広く効果的な適用を有するものである。
【0034】
また、前述したように、本発明は、一態様に於いて、タンパク質又は断片を発現するトランスジェニック植物から獲得されるrhTF又はその機能断片を提供するものである。「組織因子タンパク質」という用語は、下に示す表1Aのアミノ酸配列により代表されるような哺乳動物の組織因子タンパク質、好ましくはヒト組織因子の成熟タンパク質を意味するもので、それに関する情報は核酸データベース登録番号BC011029で検索可能である。全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)−遺伝子配列データバンク(Genetic Sequence Data Bank、GenBank)、国立医学図書館、38A、8N05、ロックビル・パイク、ベテスダ、20894 メリーランド州で照会可能。GenBankについては、一般には、Benson,D.A.ら(1997)Nucl.Acids.Res.25:1を参照されたい。
【0035】
【表1】


【0036】
また図1A(ヒト組織因子の未成熟なアミノ酸配列(配列番号: )を示す)を参照されたい、すなわち、シグナルペプチド(表1B)をもつ成熟配列(表1A)である。本明細書に於けるヒト組織因子タンパク質のアミノ酸の配置に関しては、特に定めのない限り、表1Aに示される成熟タンパク質を参照されたい。
【0037】
「組換え」という用語は、植物培養及び形質転換(例、エレクトロポレーション法、リポフェクション法)に加え、一般的な組換え核酸の作製方法に関連するものを含む、植物由来の組織因子タンパク質又は断片を作製するための技法を意味する。酵素反応及び精製工程は、通常、製造仕様書に準じて又は公認のプロトコルに従って実施するものである。前記技法及び手段は、当該技術分野に於いて伝統的な方法及び様々な一般的参考文献に従って実施する。一般的には、Sambrookらの、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd.edition(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.を参照されたい。
【0038】
より植物特異的な組換え方法は、例えば、Roger P.らの(2000)Plant Mol.Biol.42:819; Gartland K.M.A.及びDavey M.R.の(1995)Methods in Molecular−44中のAgrobacterium Protocols,Humana Press, Totowa, N.J.; Hellens,R.らの(2000)Trends in Plant Science,5:10:446; 及びChristou,P.(1996)Trends Plant Sci.1:423,及び文中で引用された文献を参照されたい。
【0039】
さらに、「rhTF」を含む「ヒト組織因子」という用語は、表1(配列番号: )に示されるヒト成熟配列の対立遺伝子多型、また、その配列とタンパク質レベルで少なくとも約70%の相同性を有する、好ましくは少なくとも約80%の相同性を有する、より好ましくは少なくとも約90%の相同性を有する、そしてさらに好ましくは少なくとも約95%、約99%又は100%の相同性を有する配列を意味するものである。アミノ酸配列の相同性を決定する方法は、当該技術分野で公知であり、WU−BLASTソフトウェア(ワシントン大学BLAST)バージョン2.0の使用により決定されるものを含む。前記プログラムは、WU−BLASTバージョン1.4に基づいており、それは公有のNCBI−BLASTバージョン1.4(Altschul及びGish (1996) Doolittle編 Methods in Enzymology 266:460〜480; Altschulら (1990) Journal of Molecular Biology 215:403〜410; Gish及びStates (1993) Proc.Natl.Acad.Sci. USA 90:5873〜5877)に基づいたものであると報告されている。幾つかのUNIX(登録商標)のコンピューター・システムのためのWU−BLASTバージョン2.0実行可能プログラムは、例えば、ワシントン大学BLASTウェブサイトからダウンロードすることが可能である。
【0040】
特定の配列に対する相同性が100%未満であるヒト組織因子配列の例は、ギャップ(例えば1つ又は2つといった約5つ未満のアミノ酸の連続的及び/又は非連続的ギャップ)を有する配列、及び同類アミノ酸置換(例えば、アラニンがロイシンに代わるといった)を特徴とする配列である。また、N−又はC−末端の一方若しくは両方に、約10個のアミノ酸を追加された又はそれより少ないアミノ酸を追加されたヒト組織因子の配列も想定される。
【0041】
ヒト組織因子の「機能断片」とは、完全長のヒト組織因子配列の断片、特にrhTF成熟配列の最初の243個又は219個のアミノ酸を有する断片を含む、表1(配列番号: )に示された成熟配列を意味するものである。この様な配列を有する機能断片は、従来のプロトロンビン時間(PT)又はaPPT試験に於いて、優れた血液凝固活性を示すであろう。より具体的な機能断片は、標準プロトロンビン時間(PT)アッセイに於いて表1(配列番号: )に示すヒト組織因子の成熟配列と較べて少なくともその70%の血液凝固活性を示すであろう。より好ましいヒト組織因子配列及び断片は、前記配列の血液凝固活性の少なくとも80%、より好ましくは少なくとも約90%、約95%又は約100%までの活性を有するであろう。好適な断片の例は、当該技術分野公知であり、例えば、米国特許第6,001,978号; 5,110,730号; 及び5,110,730号にて開示されている。「rhTF」という用語は組換えヒト組織因子を意味するものである。
【0042】
特に好ましい組換えヒト組織因子タンパク質の配列は、(植物由来のシグナルペプチドをもった)図1B(配列番号: )の1〜263番目のアミノ酸位に示されている。また、この配列を作製する好ましい方法としては、以下の実施例1〜3を参照されたい。植物由来のシグナルペプチドをもつ、1〜243番目のアミノ酸からなる配列もまた好ましいヒト組織因子タンパク質の配列である。
【0043】
哺乳動物の細胞に於いて、TFは、血液凝固のための外因性経路を活性化させる哺乳動物の細胞表面の膜貫通タンパク質として見出された。TFは第VIIa因子に結合する受容体として機能する。TF−FVIIa複合体はタンパクを限定分解することにより、第IX因子又は第X因子を結合及び活性化させるように作用する。TF−FVIIa複合体が膜に会合したときに、第IX因子又は第X因子の変換に対して著しく効果的である(Kalafatisら (1997)Critical Reviews in Eukaryotic Gene Expression 7:241〜280)。哺乳動物から精製された又は(E.coliのような異種の宿主から生成され、精製された)組換えタンパク質であるTFタンパク質は、最適な活性を発揮するための人工膜を形成するために再脂質化が必要となってくる。TFタンパク質の精製は費用のかかる工程であり、再脂質化も使用する人工脂質及び追加の加工のために多額の費用がかかる。TFタンパク質の精製又は再脂質化を必要としない機能活性有するTFを生産する方法は商業的にも重要な意味をもっている。
【0044】
タンパク質分解により膜貫通成熟タンパク質と分離したリーダー又はシグナル配列により、TFタンパク質は細胞膜に指向するようになる。植物から組換えタンパク質を産生する場合、哺乳動物のシグナル配列によってもタンパク質を膜に指向させることができるが(Schillbergら (1999)Transgenic Research 8:255〜263)、植物由来のシグナル配列の方がより優れた効果を奏することが示されている。そのような植物性のシグナル配列として、トマトサブチラーゼ(subtilase)のシグナル配列(Janzikらの(2000)J.Biol.Chem.275:5193〜5199)、米α−アミラーゼのシグナル配列(McCormickら(1999)PNAS 96:703〜708)、及びニコチアナ カルレティキュリン(Nicotiana calreticulin)(Komarnytskyらの(2000)PlantPhysiology 124:927〜933)のシグナル配列が含まれる。
【0045】
前記考察のように、本発明は、作動可能に連結した植物由来のシグナルペプチドをもつ哺乳動物の組換え組織因子又はその機能断片を特徴とする。シグナル配列は、好ましくは、トマト、米、タバコ、カラシナ、綿、トウモロコシ又はアルファルファのような何れか適切な植物由来のものである。
【0046】
TFが膜へと移動する間、TFタンパク質は、通常、グリコシル化のような翻訳後修飾を受ける。完全長の組織因子タンパク質は、4つの潜在的なN−グリコシル化部位を有し、243アミノ酸からなるTFの形態は、3つの潜在的なN−グリコシル化部位を有する。連結は実質的には異なるものであるが、植物性及び哺乳動物性細胞による翻訳後のグリコシル化の本質は、N−アセチルグルコサミン、フコース及びマンノースを包含するという点で類似している。しかし、植物のグリコシル化が哺乳動物の細胞には見つからないキシロースを含む点、及び哺乳動物のグリコシル化が植物のグリカン構造には見つからない末端ガラクトース及びシアリン酸残基を有することができる点に於いては相違している(Maらの(2003)Nature Reviews/Genetics 4:794〜805)。
【0047】
植物特異的グリカンは公知であり、そして報告もなされている。一般的に、グリカンは長鎖グリカン構造を形成するため、翻訳後に追加される。「長鎖」とは、非分岐鎖又は好ましくは分岐鎖グリカン構造として、約10未満の炭水化物単位(例えば、マンノース、キシロース、シアリン酸等)を意味するものである。より具体的には、それぞれのグリカンは、タンパク質が分泌経路を通る際に、タンパク質上の適切なグリコシル化部位の一つ若しくはそれ以上に追加される。本明細書で開示されるものを含む植物発現タンパク質のほとんどは、哺乳動物に於いて通常発見される末端ガラクトース及びシアリン酸残基のうちの少なくとも何れか一方を、好ましくは両方を欠くものである。「末端」とは、炭水化物が長鎖グリカン構造の末端に存在する(哺乳動物に於いて)ことを意味する。しかしながら哺乳動物とは異なって、植物の発現タンパク質は、α(1,3)フコース及びβ(1,2)キシロース基の少なくとも何れか一方を、好ましくは両方を含むものである。一般には、Warner,T.G.の(2000)Carbohydrates in Chemistry and Biol.(Ernst,Bら編)pp.1043〜1064(Wiley,NY)を参照されたい。
【0048】
従って、一態様に於いて、本発明は、少なくとも何れか一つの植物特異的グリカン、好ましくはα(1,3)フコース及びβ(1,2)キシロース基の少なくとも何れか一方を、又は両方を含む組換え哺乳動物の組織因子タンパク質を提供するものである。一態様に於いて、α(1,3)フコースはN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)基に融合(共有結合)する、そしてGlcNAc基は、一態様に於いては、タンパク質のグリコシル化部位に直接的に結合することができる。例えば、選択される植物によっては、GlcNac基は、さらに第二のGlcNac基に長鎖グリカン構造の一部として結合することができる。第二のGlcNac基は、一態様に於いて、マンノース又はGlcNacを含むグリカン構造の他の炭水化物基に結合することができる。
【0049】
別の態様に於いて、β(1,2)キシロース基は、例えば上述したように、一つ又はそれ以上の他のGlcNac基に結合可能であるマンノース基に共有結合している。マンノース基はさらに、分岐構造にある他のマンノース基(通常2つ)と共有結合することが可能であり、その基はさらにGlcNacに結合できる。植物由来のrhTFはまた、翻訳後のグリコシル化の本質を変換するように遺伝子操作された植物により産生することも可能である。
【0050】
模範的な長鎖グリカンは次の構造:

を有し、式中、GlcNacはN−アセチルグルコサミンであり、Manはマンノースである。植物により生成される長鎖グリカン構造の例となる追加資料として、Ma.,JKらのNatureReviews Vol.4:794(2003)を参照されたい。
【0051】
また、本発明は、本明細書に於いて開示される組換え哺乳動物の組織因子の、実質的に精製された調製物を提供する。「実質的に精製された」という用語は、天然物から単離又は分離されたものであり、天然に会合しているその他の成分が取り除かれた純度が少なくとも60%、好ましくは75%、より好ましくは90%である、核酸又はアミノ酸配列を有する分子を意味するものである。実質的に精製されたタンパク質を製造する方法を本明細書に開示するが、一般的には、遠心分離、クロマトグラフィー及び関連の標準工程を含むものである。「単離されたタンパク質」とは、つまり、実質的に精製されたタンパク質のことである。
【0052】
本発明を実施する上では必要ないが、本明細書に於いて開示される植物由来の組織因子タンパク質は、例えばホスファチジルコリン及びホスファチジルセリンの少なくとも何れか一つ、好ましくは両方で「脂質化」することができる。組織因子の脂質化の方法は、当該分野で公知であり、本発明のタンパク質を脂質化する場合に必要に応じて適用できる。
【0053】
本発明に於いて、TFタンパク質は植物から産生され、植物の細胞膜に会合(associated with)又は結合(bound)する。「植物細胞に於ける脂肪酸及びグリセロ脂質合成の生化学及び細胞構成は、動物のパラダイムとはきわめて異なっている」ということは周知である(Miquel及びBrowseの(1992)J Biochem 267:1502〜1509;及びその引用文献)。植物と動物の細胞膜の組成を比較すると、類似点もあるが、また多くの相違点もあるということことがわかる(植物の細胞膜についての概説は、J.B.Mudd(1980)P.K. Stumpf編のThe Biochemistry of Plantsに於ける「リン脂質生合成」pp.249〜282 Academic Press, New York; 動物の細胞膜については、H.Hauser及びG.Poupart(1992)P.Yeagle編のThe Structure of Biological Membranesに於ける「脂質構造」pp.3〜71 CRC Press, Boca Raton,FLを参照されたい)。特に、哺乳動物及び植物の細胞膜のどちらにも十分な量のホスファチジルコリン(PC)及びホスファチジルエタノールアミン(PE)が含まれるが、一方で、ホスファチジルセリン(PS)については、哺乳動物の細胞膜にはより高い割合(約7〜17%)で含まれるが、植物の細胞膜には極少量(1%又はそれ未満)しか含まれない。
【0054】
さらに、炭素数18以上の脂肪酸炭素鎖を有することは植物の細胞膜に於いてはまれであるが、哺乳動物の細胞膜に於ける脂肪酸はより長い炭素鎖を有することができる。植物の細胞膜に於いては脂肪酸は18:3(18炭素鎖長:3個の二重結合)という不飽和な傾向が顕著であるが、哺乳動物の膜に於いてはその傾向は殆ど見られない。
【0055】
膜及びグリコシル化に於いて、哺乳動物と植物の細胞を比較した相違点から判断すると、興味深いことに、本発明に於いて、TFタンパク質が植物の細胞膜と会合しているTF調製物は、TFを発現する植物から精製し、PC(75%)及びPS(25%)で再脂質化したTFタンパク質と少なくとも同程度の活性をもつことがわかった(vant’Veerらの(1997)J.Biol.Chem.272:7983〜7994)。これは、インビトロでのプロトロンビン時間アッセイで、TF調製物を使用して血液凝固を促進させることにより証明された(実施例5に示す)。
【0056】
上述の通り、本発明は組織因子又はその機能断片、好ましくはヒト組織因子又はその機能断片を発現するトランスジェニック植物を提供するものである。組織因子タンパク質又は断片を発現させるために、植物に於いて異種タンパク質を発現する標準的な方法を、必要に応じて、一つ又は組み合わせて使用することができる。
【0057】
例えば、特定の植物生産システムが数多く開発されている。それらは、油体に於いて(Rooijenらの(1995)Plant Physiology 109:1353〜61;Liuら,(1997)Molecular Breeding 3:463〜70)、根からの分泌物(rhizosecretion)より(Borisjukらの(1999)Nature Biotechnology 17:466〜69)、種子に於いて(Hoodらの(1997)Molecular Breeding 3:291〜306; Hoodらの(1999)In Chemicals via Higher Plant Bioengineering (Shahidiら編)Plenum Publishing Corp.pp.127〜148; Kusnadiらの(1997)Biotechnology and Bioengineering 56:473〜84; Kusnadiらの(1998)Biotechnology and Bioengineering 60:44〜52; Kusnadiらの(1998)Biotechnology Progress 14:149〜55; Witcherらの(1998)Molecular Bleeding 4:301〜12)、ウィルスの表面上のエピトープとして(Verchらの(1998)J.Immunological Methods 220:69〜75; Brennanらの(1999)J.Virology 73:930〜38; Brennanらの(1999)Microbiology 145:211〜20)、及びジャガイモ塊茎に於けるタンパク質の安定した発現により(Arakawaらの(1997)Transgenic Research 6:403〜13; Arakawaら,(1998)Nature Biotechnology 16:292〜97; Tacketらの(1998)Nature Medicine 4:607〜09)、タンパク質を発現させることを含むものである。また、組換えタンパク質を、種子、葉緑体に標的化とすることにより、又は分泌して、タンパク質が最も多量に蓄積されている部位を同定することが可能である。これらのそれぞれを適応して、好適な植物の宿主に於いて組織因子又は断片を発現させることもできる。
【0058】
植物に於いてタンパク質を発現させるための更なる常法が報告されている。Bascomb,N.らによるPCT/US02/23624;及びHall,G.らによるPCT/US02/17927を参照されたい。これらは、例えば、シロイヌナズナ及びその他の様々な植物に於いて組織因子タンパク質又は断片を発現させるために、容易に適応することができる。
【0059】
さらに、異種タンパク質を単子葉植物及び双子葉植物に於いて発現させるための方法も報告されている。目的のタンパク質の安定した構成性の発現へのアプローチとして次の方法が挙げられる。1)アグロバクテリウムを介する遺伝子導入法;2)DNAをプロトプラストに直接取り込む方法を含むDNAの直接導入法;3)植物細胞に短時間の電気的な刺激を与えることにより誘発されるDNA導入法;4)粒子衝突(particle bombardment)、マイクロピペットシステムの使用又はDNAと発芽花粉との直接培養による、植物細胞又は組織へのDNA注入法;5)遺伝子ベクターとしての植物ウィルスの使用。これらの方法を一つ又は組み合わせて使用することにより、組織因子及びその機能断片を発現する植物を作製することができる。
【0060】
例えば、Paszkowski,J.らの(1989)Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants,Vol.6,Molecular Biology of Plant Nuclear Genes eds.Schell,J.及びVasil,L.K.,Academic Publishers, San Diego,Calif.p.52〜68;Klein,T.M.らのin Progress in Plant Cellular and Molecular Biology,eds.Nijkamp,H.J.J.,Van der Plas,J.H.W.及びVan Aartrijik,J.(1998)Kluwer Academic Publishers,Dordrecht,p.56〜66; DeWet,J.M.J.らの(1985)In Experimental Manipulation of Ovule Tissue,eds.Chapman,G.P.及びMantell,S.H.及びDaniels,W.Longman,London,p.197〜209; Zhang,H.M.らの(1988)Plant Cell Rep.7:379〜384; Frornn,M.E.らの(1986)Nature 319:791〜793; Hess,D.(1987)Int.Rev.Cyto.107:367〜395; Klein,T.M.らの(1988)Bio/Technology 6:559〜563; Neuhaus G.らの(1987)Theor.Appl.Genet.75:30〜36; Neuhaus,G.及びSpangenberg,G.(1990)Physiol.Plant.79:213〜217; Ohta,Y.(1986)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:715〜719;及び米国特許出願第2003/0138456号公報を参照されたい。
【0061】
アグロバクテリウム媒介の遺伝子導入
遺伝子操作されたアグロバクテリウム菌株を用いた遺伝子導入は、大部分の双子葉植物及び一部の単子葉植物にとって慣例の手法となってきている。例えば、Fraleyらの(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:4803; Watsonらの(1985)EMBO J 4:277; Horschらの(1985)Science 227:1229; Hernalsteensらの(1984)EMBO J 3:3039; Comaiらの(1984)Nature(London)317:741; Shahらの(1986)Science 233:478; Bytebierらの(1987)Pro.Natl.Acad.Sci.USA 84:5345; Schafewらの(1987)Nature 327:529; Potrykus,I.(1990)Biotechnol 8:535; Grimsleyらの(1987)Nature 325:177; Gouldらの(1991)Plant Physiol 95:426; Ishidaらの(1996)Nature Biotechnology 14:745; 及び米国特許第5,591,616号、及びそれらで引用された文献を参照されたい。
【0062】
本発明の方法で用いる好適なアグロバクテリウム菌株を、目的の遺伝子又は形質転換された細胞にて発現させる核酸を含むように修飾する。導入する核酸を、T領域に組み込むが、T−DNAの境界配列の少なくとも一つの側に組み込むようにする。アグロバクテリウムの多様な種が、特に双子葉植物の形質転換法で知られている。そのようなアグロバクテリウムは、本発明の方法に於いて使用することが可能である。例えば、Hooykaas,P.J.(1989)Plant Mol.Biol. 13:327; Smithらの(1995)Crop Science 35:301; Chilton,M.O.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci. USA 90:3119; MollonyらのN:Monograph Theor Appl Genet NY, Springer verlag 19:148,1993;及びIshidaらの(1996)Nature Biotechnol. 14:745; Komari,T.らの(1996)The Plant Journal 10:165を参照されたい。
【0063】
Tiプラスミドに於いて、T領域は、その機能が転移と組込みに関与するvir領域とは異なるものである。操作された、外来のDNA及びvir機能を有する武装解除されたT−DNAが、別のプラスミド上に存在するような、バイナリーベクターシステムが開発された。このように、外来のDNA(導入される核酸)を含む修飾されたT−DNA領域は、E.coliに於いて複製する小さなプラスミドに組み込まれる。このプラスミドは、3親交配(tri−parental)にて接合的に又は毒性遺伝子をもつ互換性プラスミドを有するアグロバクテリウム・テュメファシエンス(A.tumefaciens)に転換して導入する。vir遺伝子の機能は、in transで植物ゲノムにT−DNAを組み込むために提供された。そのようなバイナリーベクターは、本発明を実施するうえで役に立つものである。開示されるTiベクターの様々な製造及び使用方法が公開されている。本発明で使用する好適なTiベクターの例として米国特許第5,276,268号;第5,283,184号;及び第5,286,635号を参照されたい。
【0064】
さらに、本発明で使用するベクターは、例えば、米国特許第5,591,616号及び欧州特許0604662A1にて開示されている「スーパーバイナリー」も包含するものである。Hoodらの(1984)Biotechnol. 2:702〜709; Hoodらの(1986)J.Bacteriol. 168:1283〜1290; Komariらの(1986)J.Bacteriol. 166:88〜94; Jinらの(1987)J.Bacteriol.169:4417〜4425; Komari T.の(1989)Plant Science 60:223〜229;ATCC No.37394もまた参照されたい。
【0065】
その他の好適なベクターとして、deFramond,A.らの(1983)Bio/Technology 1:263;An,G.らの(1985)EMBO J. 4:277;及びRothestein,S.J.らの(1987)Gene 53:153、に記載されているようなベクターも使用可能である。
【0066】
部位特異的なゲノムの融合を助けるための他の配列及び/又は制御された切断及び/又はゲノムへの再挿入も提供するものである。例えば、Cre/loxシステムは、シロイヌナズナのゲノムに於けるlox部位でのアグロバクテリウムT−DNAによる融合に用いられる。部位特異的な組換え(無作為のものではなく)、サイレントlox−ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(nptII)標的遺伝子の活性化により優先的に選択される。Creリコンビナーゼは、同時形質転換アプローチにより一過性に提供される。例えば、Vergunstら,(1998)Plant Mol Biol 38(3):393〜406の記載を参照されたい。
【0067】
葉緑体の形質転換に好適なベクターも同様に、本発明で使用することが可能である。葉緑体は真核生物細胞内の原核生物構成要素である。葉緑体の転写及び翻訳装置がE.coliに類似しているので(Brixeyらの(1997)Biotechnology Letters 19:395〜400)、核よりむしろ植物葉緑体で非常に高いレベルで原核細胞遺伝子を発現させることが可能である(Daniellらの(2002)Trends in Plant Science 7:84〜91; TregoningらのNucleic Acid Res.31:1174〜1179)。さらに、植物細胞は50,000コピーまでの円形色素体ゲノムを収容しているが(Bendichの(1987)Bioessays 6:279〜282)、それは発現のレベルを増大させ、プラスミドのように、組換え遺伝子を増幅させるものである。発明のいくつかの態様に於いて、葉緑体の発現率は、トランスジェニック植物に於ける核の発現率に比べて100倍も高いものである(DaniellのWO 99/10513)。
【0068】
さらに本発明での使用に好適なベクターは、好ましくはバクテリア(例えば、E.coli)のような微生物宿主での複製が可能であり、以下の要素を含むものである:a)植物に於いて機能する第一のオペレーター;b)プロモーターに作動可能に会合している、哺乳動物の組織因子タンパク質又はその機能断片をコードする発現可能な核酸配列;及びc)前記核酸配列に作動可能に会合する終止配列。
【0069】
「プロモーター」とは、転写の開始を指揮する構造遺伝子の5’末端のヌクレオチド配列を表す。一般的に、プロモーター配列は、下流遺伝子の発現を促すのに不可欠ではあるが、必ずしも十分なものではない。異種プロモーター/構造遺伝子の組合せの構成に於いて、構造遺伝子は、プロモーター配列により遺伝子の発現が制御されるようにプロモーターの調節管理下に置かれる。プロモーターは選択的に、構造遺伝子の上流に、転写開始部位からの間隔がおよそ自然界でプロモーターと遺伝子が取り得るような間隔で配置される。当該技術分野で公知のように、この間隔が多少変化しても、プロモーターの機能が無くなるというものではない。本明細書に於いて使用されるように、「作動可能に連結した」という用語は、コーディング領域の転写がプロモーターによって制御及び調節されるような方法で、プロモーターがコーディング領域に連結していることを意味するものである。プロモーターをコーディング領域に作動可能に連結させる手段は、当該技術分野に於いて周知である。
【0070】
植物のプロモーターの例
使用される遺伝子構築物は、遺伝物質及びプロモーター、IRES要素等のようなもの全てを含む。これらの発現カセットは、特定の栄養素若しくは作用物質の添加、温度変化等のような、発現を誘発する外因性の刺激を必要とすること、又はコードされたタンパク質を、直ちに及び/又は成育中に自発的に発現するように設計することが可能である。
【0071】
従って、望ましいタンパク質をコードする遺伝子の発現は、構成性の又は調節されたプロモーターにより制御されるであろう。調節されたプロモーターは、植物細胞に於いて機能的であるならば、組織特異的であり、発生的に調節されており、又はその反対に誘導的若しくは抑制的であろう。調節は、時間的、空間的若しくは発達上の指示に基づくであろうし、環境によって合図される又は化学的誘導物質若しくは抑制体を用いて調節されるであろう、そしてそのような物質は天然若しくは合成起源であってもよく、またプロモーターは天然起源若しくは遺伝子操作によるものであってもよい。プロモーターは、キメラ、つまり二つ又はそれ以上の異なる天然又は合成のプロモーターからの配列因子由来のものであってもよい。
【0072】
好ましくは、構築物にて用いるプロモーターは高いレベルで遺伝子を発現させ、総可溶性タンパク質の少なくとも約0.1〜1%、少なくとも約1〜5%、より好ましくは、少なくとも約5%といったタンパク質の蓄積を可能にするものであり、そして/又は、総ての細胞内液(ICF)抽出タンパク質の少なくとも約0.1%、好ましくは少なくとも約0.5%、そして最も好ましくは少なくとも約1%を産出するものである。
【0073】
プロモーターは、全ての植物組織に於いて、しかし最も好ましくは、葉、茎及び根の組織の全てに於いて、選択的に発現可能であるべきである。さらに、又はその代わりに、プロモーターは、花及び/又は種子の組織に於ける発現が可能である。本発明に於いては、シロイヌナズナのアクチン2(Actin 2)プロモーター、(OCS)3MASプロモーター及びそれらの多様な形態、CaMV 35S並びにゴマノハグサモザイクウィルス 34Sプロモーターが好ましい。しかしながら、他の構成性のプロモーターを使用することも可能である。例えば、ユビキチンプロモーターは、トランスジェニック植物に於ける使用のためにいくつもの種からクローン化されている(例えば、ヒマワリ(Binetらの(1991)Plant Science 79:87〜94; 及びトウモロコシ(Christensenらの(1989)Plant Molec.Biol.12:619〜632)。さらに有用なプロモーターは、トウモロコシからのU2及びU5 snRNAプロモーターである(Brownらの(1989)Nucleic Acids Res.17:8991)及びアルコールデヒドロゲナーゼからのプロモーター(Dennisらの(1984)Nucleic AcidsRes.12:3983)である。
【0074】
別の態様に於いて、調節されたプロモーターは遺伝子に作動可能に連結されている。調節されたプロモーターは、外的影響(例えば、化学物質、光、温度などの外部物質の使用によるような)により調節されたプロモーター、又は植物の発育の変化を調節するような内的合図により調節されたプロモーターを含むが、それらに限定されるものではない。調節されたプロモーターは、特に収穫期又はそれに近い時期に、望ましい遺伝子の高いレベルの発現を誘発するのに有用である。特に、望ましいタンパク質が、植物の成育を制限する若しくは逆に強要する場合、又は何らかの意味で不安定な場合に有用であろう。
【0075】
異なった植物組織に於いて、トランス遺伝子の発現を制御する植物プロモーターは、当業者には公知である(Gasser及びFraleyの(1989)Science 244:1293〜99)。カリフラワーモザイクウィルス35Sプロモーター(CaMV)及びCaMvプロモーターの活性化された誘導体(Odellらの(1985)Nature 3(13):810)、アクチンプロモーター(McElroyらの(1990)Plant Cell 2:163〜71)、AdhIプロモーター(Frommらの(1990)Bio/Technology 8:833〜39, Kyozukaらの(1991)Mol.Gen.Genet. 228:40〜48)、ユビキチン・プロモーター、ゴマノハグサ・モザイク・ウィルス・プロモーター、マンノピン合成酵素プロモーター、ノパリン合成酵素プロモーター及びオクトピン合成酵素プロモーター並びにその誘導体が、構成性のプロモーターであると考えられる。調節されたプロモーターは、光誘導性(例えば、リブロース二リン酸カルボキシラーゼの小サブユニット)、熱ショックプロモーター、硝酸塩及びその他の化学的に誘導したプロモーター(例えば、米国特許第5,364,780号;第5,364,780号;及び第5,777,200号を参照されたい。)とされている。
【0076】
組織特異的なプロモーターは、植物の特定の部分に於いてタンパク質を発現させる必要がある場合に使用される。葉に特異的なプロモーターは、35Sエンハンサーにより先導されるC4PPDKプロモーター(Sheenの(1993)EMBO,12:3497〜505)又は葉に於ける発現に対して特異的な他の何れのプロモーターも含むだろう。種子に於けるタンパク質の発現では、ナピン遺伝子プロモーター(米国特許第5,420,034号及び第5,608,152号)、アセチル補酵素Aカルボキシラーゼプロモーター(米国特許第5,420,034号及び第5,608,152号)、2Sアルブミンプロモーター、種子貯蔵タンパク質プロモーター、ファセオリンプロモーター(Slightomらの(1983)Proc.Natl.Acad Sci. USA 80:1897〜1901)、オレオシンプロモーター(Plantらの(1994)Plant Mol.Bio.25:193〜205;Rowleyらの(1997)Biochim.Biophys.Acta.1345:1〜4; 米国特許第5,650,554号;国際公開WO93/20216号公報)、ゼインプロモーター、グルテリンプロモーター、スターチシンターゼプロモーター及びスターチ枝作り酵素プロモーターが、全て有用である。
【0077】
植物プロモーターは、必要に応じて、意図した発明結果を達成するために、誘導性プロモーター又は構成性のプロモーターとして選択できる。
【0078】
一般的に、植物に於いて発現可能な遺伝子構築物は何れも、本発明の方法に使用するのに好適である。発現させる組み換えタンパク質の種類によって、プロモーターを選択する。
【0079】
さらに、エンハンサー配列等のその他の調節要素も提供される。例えば、一態様に於いては、カリフラワーモザイクウィルス(CaMV)35S遺伝子のマルチマー化された転写エンハンサーを含む発現カセットが使用される。例えば、Weigelら,(2000)Plant Physiol 122(4):1003〜13を参照されたい。
【0080】
さらに、本発明で使用される好適なベクターは、必要に応じて、植物に於いて遺伝子サイレンシングを抑制する配列を含むものである。そのような配列として、通常、植物ウィルスに由来するものが開示されている。Anandalakshimi,R.らの(1998)PNAS(USA)95:13079を参照されたい。
【0081】
終止配列の例
本発明のベクターとして、ノパリン合成酵素遺伝子(Nos)のターミネーターを使用する。その他のターミネーター、例えば、オクトピン合成酵素遺伝子(OCS)のターミネーター(Halfterらの(1992)Mol Gen Genet 231:186〜193)又はクルシフェリンA(cruA)のターミネーター(Rodinらの(1992)Plant Mol Bio 20:559〜563)も使用できる。
【0082】
選択可能なマーカー及び/又はレポーター遺伝子
抗生物質(例えば、カナマイシン(nptII)及びハイグロマイシン(hpt))耐性、除草剤(グルホシネート、イミダゾリノン、グリホサート、AHAS、EPSPS)抵抗性又は生理学的マーカー(可視的若しくは生化学的)のような選択可能なマーカーは、核酸構築物で形質転換された細胞の選別に使用される。一方、非遺伝子組み換え細胞(つまり、非形質転換細胞)は、殺されるか又は選別的状況下では成育しないようにされる。一態様に於いて、選択可能なマーカー遺伝子は、抵抗性の又は生理学的マーカーを提供するタンパク質をコードする遺伝子である。しかしながら、別の態様に於いては、選択可能なマーカー遺伝子は、アンチセンス核酸をコードする遺伝子でもある。
【0083】
レポーター遺伝子は、前記構築物に含まれているか、又はその構築物を最終的に植物細胞に輸送するベクターに収容されている。本明細書で用いられる、「レポーター遺伝子」という用語は、その遺伝子が観察可能な又は測定可能な表現型として発現される細胞を提供できる任意の遺伝子である。
【0084】
レポーター遺伝子の発現により、例えば、比色性、蛍光性、発光性又は生化学的にアッセイ可能な産物といった検出可能な結果や、生理学及び生育上の差異に基づいた形質転換細胞を選別するための選択可能なマーカーが得られ、また、視覚生理学的又は生化学的形質が示される。一般的なレポーター遺伝子として、lacZ(βガラクトシダーゼ)、GUS(βグルクロニダーゼ)、GFP(緑色蛍光タンパク質及びその変異体若しくは修飾体)、ルシフェラーゼ又はCAT(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ)が挙げられるが、それらは容易に視覚化でき又はアッセイ可能である。そのような遺伝子は、目的のクローンを容易に選出できるように、組み合わせて又は選択可能なマーカーの代わりに使用される。一態様に於いて、選択マーカー遺伝子はタンパク質産物をコードする遺伝子である。
【0085】
さらに、選択可能なマーカーは、マーカーを発現する細胞の単離を容易にする分子を含む。例えば、選択可能なマーカーは、抗体による認識が可能な抗原をコードでき、親和性に基づいた精製技術又はフローサイトメトリー法により形質転換細胞を単離するために使用できる。さらに、レポーター遺伝子も、植物細胞とは異質な細胞であるから検出できる配列(例えば、PCRにより検出可能な)を含むものである。この態様では、レポーター遺伝子は、タンパク質を発現する必要はなく、表現型に目に見える変化をきたす必要もない。
【0086】
前記の複製可能なベクターのより特別な態様に於いて、ベクターはさらに、d)植物に於いて作動可能な第二のプロモーター、(e)第二のプロモーターに作動可能に会合する選択可能なマーカー遺伝子、(f)アグロバクテリウムのTR配列、及び(g)哺乳動物の組織因子タンパク質又は断片をコードする発現可能な核酸配列が、さらに作動可能に組織因子タンパク質又は断片に連結した植物特異的シグナルペプチドをコードするものである、アグロバクテリウムTL配列、を含む。哺乳動物の組織因子又は断片をコードする発現可能な核酸配列は、一般的に、配列番号: として、表1に示されるヒトTFの成熟配列に少なくとも約70%の相同性を有し、好ましくは少なくとも約80%、約90%、又は少なくとも約99%若しくは100%の相同性を有する。更に一方では、コードされた哺乳動物の組織因子又は断片は、標準プロトロンビン時間(PT)アッセイに於いてモニターされたように、配列番号: として表1に示されるヒトTFの成熟配列のプロトロンビン時間の少なくとも約70%を示すものである。
【0087】
「標準プロトロンビン時間」アッセイは、一般的に、Miletich,JP(1995)Prothrombin Time(Chapter L33)Williams Hematology,5th Ed.(Beutler,Eら,Eds.)McGraw−Hill,Inc.,Health Professions Div.,New York,L82〜84ページに記載されるアッセイを意味する。
【0088】
一般的に、標準プロトロンビン時間アッセイは、許容される緩衝液中で組織因子サンプル(例えば、TFを含む植物の粗抽出物)を希釈する段階希釈(全体でおよそ0.2mL)の工程を含む。好ましい緩衝液はPTバッファーである(実施例5を参照)。アッセイは、好ましくはそのバッファーであらかじめインキュベートして、0.1mLの血漿を加えることにより開始することができる。凝固は、オートメーション化した凝固タイマーの使用のような異なった技法の一つ又は組み合わせによりモニターすることができる。そのような装置の例は、通常、業務用ベンダーから入手可能である。
【0089】
標準プロトロンビン時間アッセイの特定の例は、実施例5で示す。
【0090】
考察のように、本発明は、適宜、哺乳動物の組織因子(又は機能断片)を発現する一つ又は様々なトランスジェニック植物(双子葉植物及び特定の単子葉植物)の調製に使用することができる。植物の例としては、マメ科、ナス科、アブラナ科、バラ科、又はキク科のものが挙げられる。より具体的には、ウキクサ、タバコ(Nicotiana tabacum)、カラシナ(シロイヌナズナ、Arabidopsis)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、大豆(glycine max)、トマト(Lycopersicon esculentum)、カサバ(Manihot esculenta)、ビート、ラッカセイ(Arachis hypogaea)、綿(Gossypium hirsutum)、柑橘類の植物(Citrus spp.)、トウモロコシ(Zea mays)、豆(例、緑豆(Phaseolus vulgaris)及びライマメ(Phaseolus limensis))、エンドウ豆(Lathyrus spp.)、甜菜、ヒマワリ、ニンジン、セロリ、亜麻、キャベツ(及び他のアブラナ科の植物)、コショウ、マンゴー、桃、リンゴ、西洋ナシ、バナナ、ヒマワリ、タマネギ、イチゴ、アルファルファ、オートムギ、小麦、ライムギ、米、大麦、ソルガム及びカノーラである。
【0091】
追加の植物には、Lactucua属の植物、特にL.sativa(レタス)が含まれる。また、好適な穀草類植物も、本発明で使用することができる。
【0092】
さらに、哺乳動物の組織因子タンパク質又はその機能断片をコードする発現可能な核酸配列もまた含んだ前述の遺伝子組み換え植物の切り枝、挿し木、品種又は種子から得られる組換え植物の子孫も想定される。
【0093】
実施例で考察されるが、哺乳動物の組織因子又は断片の発現に最適な植物としてL.sativa(レタス)が頻繁に使用される。本発明の態様に於いて、所望の結果を得るために、必要に応じて、タンパク質を安定的又は一過性に発現させることが可能である。レタスは、特にタンパク質の大規模な産生が望まれる態様には、最適な植物である。肉厚で、大きな葉及び比較的シンプルな生育条件及びその他の特質が目的に合致している。次により詳細に考察するように、レタスが組織因子の一過性発現に特に適しているということが見出されてきた。また、必要とあらば、例えば本明細書に記載される好適な形質転換方法を用いて、レタスは組織因子又は機能断片の安定した発現のためにも使用することができる。
【0094】
従って、一態様に於いて、本発明は、次に示すうちの少なくとも1つ及び好ましくは全てを含む形質転換植物細胞を有する遺伝子組み換えレタス(L.sativa)を提供するものである:
(a)植物に於いて作動可能な第一のプロモーター、
(b)哺乳動物の組織因子タンパク質又はその機能断片をコードする発現可能な、プロモーターに作動可能に会合している核酸配列;及び
(c)核酸配列に作動可能に会合している終止配列。
(d)植物に於いて作動可能な第二のプロモーター、
(e)第二のプロモーターに作動可能に会合している選択可能なマーカー遺伝子、
(f)アグロバクテリウムのTR配列、及び
(g)アグロバクテリウムのTL配列。
【0095】
好ましくは、哺乳動物の組織因子タンパク質又は断片をコードする発現可能な核酸配列が、さらに組織因子タンパク質又は断片に作動可能に連結している植物特異的シグナルペプチドをコードする。遺伝子組み換えレタスのより特別な態様に於いて:i)第一のプロモーターが誘導性又は構成性である;ii)発現可能な核酸配列が、配列番号: として表1に示されるヒト組織因子の成熟配列、その断片、又は配列番号: として表1に示されたヒト組織因子の成熟配列に少なくとも約70%(好ましくは少なくとも約80%若しくは90%)の相同性を有し、標準PTアッセイにより決定したヒト組織因子の成熟タンパク質として表1に表された、組織因子タンパク質のプロトロンビン時間アッセイ(PT)の少なくとも約70%(好ましくは少なくとも約80%又は90%)を示す配列、をコードする;iii)終止配列がNos−3’である;iv)第二のプロモーターが35Sプロモーターである;及びv)選択可能なマーカー遺伝子がNPTIIである。
【0096】
本発明の態様で使用するより好ましい発現可能な核酸配列は、PTアッセイに於いて、配列番号: として表1に例示されるヒト組織因子の成熟配列とほとんど同じ活性であるヒト組織因子配列をコードするものである。
【0097】
レタスの形質転換
レタスの使用が好まれる態様に於いて、本明細書で提供する形質転換方法のほとんど何れもが組織因子を発現するトランスジェニック植物を作製するために使用可能である。発現は、必要に応じて、安定的なものであっても、一過性のものであってもよい。減圧浸潤(vacuum infiltration)法及びアグロバクテリウムで処理された植物組織のインキュベーションに関連するものを含め、PCT/US02/17927に記載の方法の一つを又は組み合わせて使用することができる。レタスの球を一過性に形質転換するための手法は実施例にて提供する。
【0098】
TFを含む植物の粗抽出物
考察のように本発明の目的は、本明細書に開示する哺乳動物の組織因子、好ましくはヒト組織因子、又はその機能断片を含むトランスジェニック植物の粗抽出物を提供することである。さらに、考察されるように、生物学的に活性な組織因子を発現できる植物を見出したことは驚くべきことである。従って、本発明の具体的な目的は、例えば、機能的な組織因子を純度に関わらず素早く及び/又は大量に必要とする医学上、獣医学上又は闘病上の状況に於いて、活性化した組織因子を粗形態で提供することである。
【0099】
「粗抽出物」という用語は、植物組織を薬学的に許容される溶液(水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)等)に接触させ、約1〜約10体積の溶液の存在下で十分に組織を崩壊させて(例えば、乳鉢と乳棒、加圧型細胞破壊装置、ミキサーなどにより)、それから破片を濾過又は通常1,000×gで約30分間未満、好ましくは約5分〜約20分の穏やかな遠心分離により取り除くことにより調製された、植物組織(葉、枝茎、花、根、塊茎、球根、果実、種子等)の抽出物又は溶解物を意味する。当然のことながら、加えられる溶液の正確な量は、選択される植物及び抽出物中に望まれる組織因子の濃度といった認識されるパラメーターによって変わる。前記破片を除いた残留溶液を「粗抽出物」とする。殆ど全ての態様に於いて、組織因子を完全な状態で保存し、さらに医学上の利用可能性を最大限にするために、薬学的に許容される緩衝液の一つ又はその組み合わせ(例えば、PBS等)が好まれる。様々な薬学的に許容される溶液が開示されている。Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co.,Easton PA,(1980))を参照されたい。
【0100】
前述のように、本発明の粗抽出物は、哺乳動物の組織因子又はその機能断片を、比較的低い経費で、また、時間のかかる再脂質化を要することなく提供することができる。粗抽出物は比較的安定しており、必要な時まで低温(氷点下、例えば−70℃)で保存可能である。
【0101】
本発明の一般的な粗抽出物は、約1ng/mL〜1μg/mL、又は、好ましくは1μg/mL〜100μg/mLの哺乳動物の組織因子タンパク質若しくは機能断片を含有する。
【0102】
粗抽出物からの組織因子の単離
粗抽出物中の哺乳動物の組織因子は生物学的に活性であり、すなわち、標準PTアッセイで再脂質化もなく優れた活性を示すが、より精製された組織因子調製物が必要とされる場合がある。実質的に純粋な調製物が有用な場合があるのである。
【0103】
これらの態様に於いて及び培養の後で、トランスジェニック植物は、産生されたマルチ・サブユニットタンパク質又は加工タンパク質(及び/又は本発明により構造遺伝子によって産生された他のタンパク質)を回収するために収穫される。この収穫工程には、植物全体、又は植物の葉若しくは根のみ、若しくは植物の細胞の収穫が含まれる。この工程は、植物を刈り取って枯死させてもよいし、又はトランスジェニック植物の一部分のみを収穫した場合は、その残部を引き続き成育させてもよい。
【0104】
回収後、当該技術分野での通常の方法を用いてタンパク質を単離してもよい。例えば、少なくとも植物の一部分をホモジナイズし、タンパク質を抽出して更に精製してもよい。抽出は、適切な溶液中にホモジネートを浸す又は沈めることを含むものである。上記考察の通り、タンパク質はまた植物の間質液から、例えば、米国特許第6,284,875号に開示されるように、減圧浸潤法により単離してもよい。精製方法には、イムノアフィニティー精製法及びタンパク質/タンパク質複合体のサイズ、単離すべき多量体タンパク質の電気泳動易動度、生物活性、及び/又は正味荷電に基づいた精製手順が含まれるがそれらに限定されるものではない。従って、許容される精製方法は、クロマトグラフ法、遠心分離法及び免疫沈降法のうちの少なくとも一つを含む(抗組織因子抗体の例として、米国特許第5,986,065号及び第6,555,319号を参照されたい。)
【0105】
より具体的な方法に於いて、粗抽出物は、約20,000×gで遠心分離後、1ミクロンのフィルターを通して穏やかにろ過して上清を得る。その上清をクロマトグラフ法で(好ましくは、Qセファロースファストフロー樹脂)処理する。フロースルーはアフィニティークロマトグラフ法(好ましくは、I47アフィニティー)で処理し、許容される洗浄用緩衝液で洗浄する。フロースルーは、直接、低温で保存するか又は標準的な緩衝液交換の手順により処理する。下記の実施例を参照されたい。
【0106】
記載のように、本発明の別の目的は、本明細書に開示される植物由来の哺乳動物の組織因子及び断片を含む凝固用組成物を提供することである。そのような組成物は、例えば、粗抽出物を含む。
【0107】
一方で、より精製されたTFが必要とされる場合には、凝固剤及び凝固用組成物は、実質的に純粋な組織因子又はその機能断片の調製物を含む。
【0108】
凝固製剤
本発明の凝固用組成物は、単独で又は他の治療用剤や血流量を最少にする手法の一つ若しくはそれ以上と組み合わせて、用いることができる。そのような薬剤には、他の血液因子(例えば、組織因子断片)又は綿ガーゼのような固形支持材さえも含まれる。技術的は例としては、創傷に圧力を加えること、焼灼又は縫合が挙げられる。この点に於いて、好ましい凝固用組成物は、一つ又はそれ以上の伝統的な賦形剤を含むものである、すなわち、薬学的に許容される非経口的、腸溶性又は経鼻投与への適用に好適で、活性のある化合物と有害反応をおこさず、レシピエントに有害とならない、有機若しくは無機の担体である。
【0109】
薬学的に許容される好適な担体は、水、食塩水、アルコール、植物性油脂、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、香油、モノグリセリド脂肪酸、及びジグリセリド、petroethral脂肪酸エステル、ヒドロキシメチル−セルロース、ポリビニルピロリドン等、を含むものであるが、それらに限定されるものではない。これらの医薬製剤は殺菌可能であり、必要に応じて、活性のある化合物(一般的には、組織因子)と有害な反応をおこさない助剤、例えば滑剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧作用のための塩、緩衝剤、着色剤、香味料及び/又は芳香剤等と混合される。下記のRemington’s Pharmaceutical Sciencesを参照されたい。
【0110】
特定の凝固組成物中での使用のための粗抽出物及び/又は更に精製された組織因子の標準的な量は、組成物の使用目的、予想される血流量、選択される特定の組織因子配列、必要とされる血流停止速度等のような暗黙に了解されたパラメーターによって様々である。しかしながら殆どの場合、組成物中の組織因子又は機能断片の量は(w/wで表される)、血液1ミリリットル当たり約1ナノグラム〜約5000マイクログラム、例えば約100ナノグラム〜50マイクログラムである。
【0111】
治療法及びその他の用法
本発明により産生される凝固用組成物は、診断アッセイ(PT、aPTT及びその他の標準血液凝固検査)を含む幅広い状況で使用することが可能である。この態様に於いて、凝固用組成物は再脂質化されたTFの代わりに使用することが可能である。
【0112】
しかしながら、凝固用組成物は多くの場合、対象に於いて失血の予防又は治療のために使用するのが好ましい。この場合、本方法は、本明細書に開示される抗凝固剤の治療有効量に、対象を接触させることを含むものである。一方、本方法は、実質的に純粋な哺乳動物の組織因子又はその機能断片と同様に、本明細書に提供される何れかの粗抽出物と共に使用することが可能である。
【0113】
血液凝固の役割に加えて、TFは血管新生の役割を果たすものである。これは遺伝的にTFがノックアウトされたマウスが、血管の発達障害のために胎日齢で9〜10日を超えて発育できなかったことがわかったときに発見されたものである(Carmelietら,(1996)Nature 383:73〜75; Buggeら,(1996)PNAS 93:6258〜6263; Toomeyら,(1996)Blood 88:1583〜1587)。さらなる研究により、凝固プロテアーゼが活性化すると、血管新生を促進させる血管内皮増殖因子の産生の増大をもたらすプロテアーゼ活性化受容体を活性化させることが、明らかになった(Richardら,(2002)Oncogene 20:1556〜1562; Miliaら,(2002)Circ.Res. 91:346〜352)。さらに、腫瘍細胞上でのTFの過剰発現は、腫瘍増殖、脈管化及び転移を促進する(Muellerら(1992)PNAS 89:11832〜11836)。
【0114】
血液凝固、血管新生及び脈管発達/再構築(リモデリング)を促進させるTFの役割は、十分に立証されている。これらの役割は、創傷の修復及び治癒に於いて明らかに重要である。哺乳動物源から単離された又は植物以外の宿主に於ける組換え手段により産生されたTFを用いて、創傷の修復及び治癒を促進する、様々な報告がなされている(Nakagawaらの(1998)Seminars in Thromb.& Hemostasis 24:207〜210; Philippartらの(2003)The Internatl J of Oral & Maxillofacial Implants 3:411〜416)。さらに、インビボでの凝固及び創傷治癒に対する効果の研究をするために、動物モデルとして背中に部分層創傷を負わせたブタを用いた(Eaglstein及びMertzの(1978)J Invest.Dermatology 71:382〜384; Alvarez,Mertz及びEaglesteinの(1983)J.Surgical Res.35:142〜148)。前記モデルを用いて、植物由来のTFが創傷からの出血を効果的に、対照よりも早く、そして再脂質化されて精製されたTFタンパク質と少なくとも同程度で、止めたということが示された(実施例に記載)。
【0115】
さらに、本発明は対象に於ける創傷治癒の促進のための方法を提供するものである。一態様に於いて、本方法は、本明細書に開示されるいずれかの凝固組成物の治療有効量を対象に接触させることを含むものである。
【0116】
さらに、本発明の方法は、対象に於ける血管新生の促進を含むものである。一態様に於いては、本方法は、本明細書に開示されるいずれかの抗凝固組成物の治療有効量を対象に接触させることを含むものである。
【0117】
さらなる方法は、対象に於ける管脈再構築の促進を含むものである。一態様に於いて、本方法は、本明細書に開示されるいずれかの抗凝固組成物の治療有効量を対象に接触させることを含むものである。
【0118】
凝固用組成物は、創傷の上又は創傷の近くに凝固用組成物を注ぐ又はスプレーするというような、本発明の方法に於いて許容される殆どどのような形態で使用してもよい。
【0119】
本発明はまた、本明細書に開示される凝固用組成物の少なくとも一つを含む吸収剤(又は吸着剤)を提供するものである。好ましくは、前記吸収剤は、ガーゼ(好ましくは、殺菌された綿又は綿との混紡を含む)のような医学上許容される支持体である。前記凝固用組成物の殆ど何れもを、例えば乾燥した製剤又は濡れた若しくは湿った形態の吸収剤に、塗布することが可能である。
【0120】
さらに、吸収剤を含む粘着性の支持体を提供する。好ましくは、粘着性の支持体は無菌である。必要に応じて、粘着性支持体及び吸収剤は、好ましくは耐水性及び耐外気性の包装容器に収納又は密閉できる。
【0121】
以下に、特定の発明の態様を記載する。それらは、本発明の範囲を何ら制限するものではないと理解されたい。
【0122】
一態様に於いて、本発明は、植物に於ける活性化組換えヒト組織因子(rhTF)の産生に関するものである。それは、止血及び創傷治癒のため直接的に使用できるバイオマス保有rhTFの、効果的及び低費用の産生方法を特徴とする。精製又は脂質化の必要はない。植物、植物組織又は植物細胞に於ける、一過性発現及び安定的な形質転換の両方に使用できる完全長の(アミノ酸数263)rhTFをコードする遺伝子を伴ったバイナリーベクターを構成した。一例では、rhTFはレタスにて一過性に産生される。このタンパク質の2つのサンプルが調製され、試験された。植物由来のrhTFの一つのサンプルは精製されて脂質化された(植物精製TF)。二つめのサンプルは人工的な精製も脂質化もされていない粗抽出物の断片であった。断片は、葉のバイオマスを同量のPBSで簡単にホモジナイズして、4℃にて1,000×gで5分間遠心分離することにより作製された。上清を粗抽出物として使用した。プロトロンビン時間アッセイを用いて、両サンプルの血液凝固活性を試験した。両サンプルが、ヒトTFに似た高い凝固活性を有することが明らかになった。ブタモデルでの動物実験もまた、顕著な凝固活性を示した。したがって、植物の発現システムを使用して、ヒト及び他の哺乳動物での止血及び創傷治癒の両方のために使用できる、低費用で高活性のrhTFを産生することが可能である。
【0123】
一態様に於いて、rhTFの遺伝子を伴うバイナリーベクターを産生するアグロバクテリウムテュメファシエンスの細胞を使用することが可能である。前記ベクターは、植物、植物組織又は植物細胞の一過性の発現及び安定的な形質転換のどちらにも使用できる。このベクターに於いて、真核性の部分は:TL(アグロバクテリウムTIプラスミドからの腫瘍誘導領域の左側の末端反復)、プロモーター(誘導性又は構成性)、アポプラストの標的シグナルペプチド、rhTFの遺伝子、転写終止シグナル、NPTII遺伝子の発現を指向する35Sプロモーター、転写終止シグナル及びTR(アグロバクテリウムTIプラスミドからの腫瘍誘発領域の右側の末端反復)、からなるものである。
【0124】
別の態様に於いては、rhTF遺伝子は、一過性又は安定的にトランスジェニック植物に於いて発現するものである。
【0125】
他の態様に於いて、如何なる精製手順もなしに活性化するrhTFタンパク質を含む調製物を得ることができる。
【0126】
他の態様に於いて、rhTF断片は、液体形態に、再構成のための凍結乾燥形態に、又は乾燥粉末噴霧使用に、軟膏若しくは他の局所製剤、若しくは粉末の葉バイオマスとして構成することが可能である。
【0127】
別の態様に於いて、そのような製剤は、ヒト又は他の哺乳動物に於ける止血及び創傷治癒のため使用することが可能である。
【0128】
考察のように、本発明は、一態様に於いて、負傷した人々又は哺乳動物の激しい出血の予防のため及び創傷治癒の促進のための、rhTFの新しい製造技術及び適用を特徴とするものである。それは、創傷の治療又は処置に利用できるrhTF源を低費用で無制限に量産することを可能にするものである。
【0129】
さらに、開示されたトランスジェニック植物により産生さる及び得られる、可溶性で機能的なヒト組織因子を包含する組成物を提供する。トランスジェニック植物、植物組織又は植物細胞に於けるヒト組織因子の遺伝子の発現のための方法を開示する。より具体的には、組織因子が精製及び再脂質化される調製物と同様に、組織因子タンパク質を有する植物材料からの粗抽出物の断片を含む活性化組織因子を製造することができる。さらに、組織因子を発現する植物材料の粗抽出物からの断片は、外生的な脂質の導入を必要とすることなく活性化する。インビトロで凝固を引き起こすこと及びインビボで出血を止めることにより示されたように、そのような調製物は活性である。さらに、血液の凝固を促進させる、失血を最小化する並びに創縫合及び治癒の促進のためのそのような調製物の使用方法を開示する。
【0130】
以下の実施例は、本発明を更に説明するものであって制限するものではない。
【実施例1】
【0131】
組織因子をコードするアグロバクテリウムベクターの調製
この実施例は、植物に於いて、組換えヒト組織因子(rhTF)を産生する方法を説明するものである。本方法は、Escherichia coli及びアグロバクテリウム・テュメファシエンスに於ける複製を可能にするプラスミドDNAベクターに、組織因子をコードするDNA配列を移植してクローンを作製することを含むものである。この組換えDNA分子は、TF遺伝子が発現されるような植物、植物組織又は細胞に導入されるものである。
【0132】
バイナリーベクターの構造
バイナリーベクターは、一過性発現及び安定的な形質転換の両方のために使用できる完全長(アミノ酸数263)のrhTF(図1)をコードする遺伝子を有するように構成された。図2に於けるバイナリーベクターの地図は、TR、Nos−3’末端(逆方向)、トマトサブチラーゼアポプラストを標的とするシグナルペプチドを伴う(逆方向)rhTF遺伝子(Janzikら、(2000)(逆方向)、2,4−D誘導型(OCS)3Masプロモーター(Gelvinら、米国特許第5,955,646号)(逆方向)、35Sプロモーター、NPTII遺伝子、35S−3’末端、及びTLを含むことを表す。
【0133】
修飾されたバイナリーベクターを構築するために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりrhTF遺伝子(又はヒトcDNA)を包含するプラスミドからrhTF遺伝子を複製した。PCR法を用いて、rhTF遺伝子を、トマトサブチラーゼアポプラストを標的とするシグナルペプチド(Janzikら、2000)に融合させた。PCRにより、SalI部位をPCR産物の5’−末端部に導入し、SpeI部位をその3’−末端部に導入した。修飾したrhTF配列を植物のバイナリーベクターに導入するため、κ軽鎖抗体(米国特許出願第10/739,447号)を有するpSUNP2ベクターを、SalI及びSpeIで開裂させて、同エンドヌクレアーゼで開裂したrhTFのPCR産物にライゲートした。他のバイナリー植物形質転換ベクターもまた使用することができ(例えば、pBIN19(Bevan,1984))、それはpSUNP2の前駆体又はpBIN20であった(Hennegan及びDanna,1998)。κ軽鎖を有するSalI−SpeI断片を、サブチラーゼシグナルに結合(fused)したrhTFを有するSalI−SpeI断片に置き換える際に、コード領域を(OCS)3Masプロモーター及びNos−3’末端の間に挿入した。得られた、rhTFを伴ったプラスミドをpSUNP12と名付け(地図を図2に示す)、そのベクターの完全配列を図7A〜Fに表す。レタスに於けるrhTFの一過性発現のために、pSUNP12ベクターをアグロバクテリウム・テュメファシエンス菌C58(Sciakyら、1978)又は何れかの関連する菌(例えば、C58C1)に組み込んだ。
【実施例2】
【0134】
アグロバクテリウム・テュメファシエンスの懸濁液の調製
pSUNP12ベクターを搭載したアグロバクテリウム・テュメファシエンス菌C58/C1を、レタスに於ける一過性発現の手順に従って(米国特許出願第10/739,447号)成育し、レタスの葉に減圧浸潤させた。
【0135】
アグロバクテリウムのpSUNP12バイナリーベクターとの培養物を、5g/Lのスクロース、2mMのMgSO、10mMのMES(pH5.6)及び20μMのアセトシリンゴンを添加したLBの培養液中で29℃にて一晩培養した。一晩培養を始めるために使用した接種材料と最終培養物の体積の比は1:100であり、最終OD600が約2.4の懸濁物となった。懸濁液は10mMのMES(pH5.6)及び200μMのアセトシリンゴンを添加して、22℃にて1時間インキュベートした。浸潤する前に、100μMの2,4−D及び0.005%のトゥイーン(Tween)20を加えた。レタスを、アグロバクテリウム培養物に減圧浸潤させ、葉を、米国特許出願第10/739,447及び実施例3に記載されているように処理した。一過性にrhTFを発現したレタスの葉をrhTFの単離及び精製のため、またもう一方で、粗抽出物の調製のために使用した。
【実施例3】
【0136】
レタスの形質転換
処理済みのレタス球の減圧浸潤及びインキュベーション
アグロバクテリウムの前処理された懸濁液1.25Lをバキュームデシケーター内の2リットルガラスビーカーに入れた。レタス球全体を懸濁液に浸して、減圧下(水柱25インチ)で20分保持し、それから素早く減圧を解除した。レタス球を水で簡単に洗い流して、日照時間16時間で22℃にて3〜4日間、湿った紙タオル上の透明なカバー付きの箱の中に放置した。インキュベーションの後、処理したレタスをタンパク質抽出のためホモジナイズして、実施例4に記載のようにrhTFを精製するために使用した。
【実施例4】
【0137】
植物のrhTFサンプルの調製
植物により産生されたrhTFのサンプルを、精製された形態及び粗抽出物として、以下のようにして調製した:
1.レタスにより産生されたrhTFの精製:葉バイオマスを、1:1の抽出緩衝液(100mMのTris−HCl(pH8.0);1mMのEDTA;0.15MのNaCl;1%のTriton X−100)と共にワーリングブレンダー内で、4℃にて1分間ホモジナイズした。ホモジネートを7,000×gで15分間遠心分離して、次いで、上清を15,000×gで15分間遠心分離した。最終の上清を−70℃で凍結保存した。
【0138】
凍結させたレタスのTF抽出物を4℃で解凍して、20,000×gで30分間遠心分離してから、上清を1μmフィルターで濾過した。Qセファロースファストフロー樹脂を、5体積の緩衝液(20mMのTris−HCl、0.1MのNaCl,0.5%のTween80,pH7.5)で平衡化して、上清をQセファロース樹脂に装填して、結合しなかったものを減圧下で回収した。Qフロースルーを20,000×gで30分間遠心分離して、上清を緩衝液(20mMのTris−HCl、0.1MのNaCl、0.5%のTween80、pH7.5)であらかじめ平衡化したI47アフィニティーカラムに充填した。充填後、カラムをそれぞれ5体積のI47カラム洗浄緩衝液1(20mMのTris−HCl、1MのNaCl、0.5%のグルコシド、pH8.0)、緩衝液2(50mMのリン酸ナトリウム、pH6.0、0.5%グルコシド)及び緩衝液3(100mMの酢酸ナトリウム、pH4.0、0.5%グルコシド、0.15MのNaCl)で洗浄して、5体積の溶離緩衝液(100mMの酢酸、pH3.0、1%グルコシド、0.15MのNaCl)でカラムを溶出する。タンパク質のピークを回収し、1MのTrisでpH8.0に調節する。得られたTFを濃縮して、緩衝液を保存緩衝液(20mMのTris−HCl、200mMのNaCl、pH8.0、1%のグルコシド)に交換した。TF濃度は、モル吸光係数44410M−1を用いたA280によって決定する(1OD280は0.67mg/mLに等しい)。保存のため、それを−70℃にて凍結した。
【0139】
2.粗抽出物の調製:レタスの葉を同体積のPBSで簡単にホモジナイズして、1000×gで5分間、4℃にて遠心分離した。上清を粗抽出物として使用した。保存のため、−70℃にて凍結させて維持した。
【実施例5】
【0140】
精製した植物rhTFの特徴付け
精製したレタスのTFを、E.coli由来のrhTF243と比較するために12%のNuPAGE Bis−Trisゲルに装填した(図3)。E.coli由来のrhTF243の分子量は27.4KDである。レタスTF263のアミノ酸組成物に基づき、理論上の分子量は29.59KDであるが、しかしながら、本発明者らはゲル上の分子量マーカーにより、分子量は35.4KDであり、レタスTF263がグルコシル化されたタンパク質であることを示すものであると予測した。
【0141】
A:プロトロンビン時間(PT)アッセイ
脂質化されたrhTF及びTFの粗抽出物をPT緩衝液(38mMのTris−HCl、pH7.5、0.1%のBSA及び14.6mMのCaCl)で段階希釈した。0.2mLの脂質化されたrhTF又はTFの粗抽出物をプラスチックのツインウェルキュベットに注入することにより、PTアッセイを開始した。キュベットにはそれぞれ、あらかじめ0.01mLのPT緩衝液で1〜2分間インキュベートした血漿0.1mLを入れた。0.01mLのPT緩衝液をcH36に置き換えて、抗TF抗体のレタスTFへの影響を検査した。自動化された凝固タイマー(MLAエレクトラ800)を、凝固時間をモニターするために使用した。
【0142】
B:精製されたE.coliのrhTF(アミノ酸数243)、精製された植物rhTF(完全サイズ−アミノ酸数263)及び植物rhTFの粗抽出物のPT比較アッセイ
精製されたレタスのrhTF及びE.coliにより産生されたrhTF243(最終濃度1000nM)を、50mMのTris−HCl、pH7.5、0.1%のBSA、14.6mMのCaCl2、0.07mg/mlのホスファチジルコリン及び0.03mg/mLのホスファチジルセリンを含んだ緩衝液中で37℃にて30分間脂質化した。そして、脂質化されたTFを、PTアッセイの緩衝液(38mMのTris−HCl、pH7.5、0.1%のBSA,14.6mMのCaCl)で、3、1、0.5、0.25、0.1、0.05及び0.025nMの濃度に希釈した。レタスrhTFの粗抽出物は、ELISAにより定量化して、精製されたrhTFと同じスケールに希釈した。
【0143】
PT試験を、これら3つのサンプルに行った。図4は、精製されたレタスrhTFの凝固時間が、TF243とよく似ていることを表し、レタスにより産生されたrhTFが機能していることを示す、そしてその有効性はE.coliのTF243の有効性と同程度であった。一方で、rhTFの粗抽出物を精製された形態と比較した。図4は、rhTFの粗抽出物の有効性が両方の精製された形態と類似しているということ、及び3つのサンプルの用量反応のパターンが同じであるということを表す。
【0144】
C:植物rhTFに対する抗−TFモノクローナル抗体の影響
抗−TF抗体(Sunol−cH36)のレタスに産生されたrhTFへの影響をPTアッセイにより試験した。抗体の濃度を、0、250nM、500nM及び1000nMとして調製した。それぞれの濃度からの10μLの抗体を混合して、そして100μLのヒト血漿とインキュベートし、それぞれに、濃度が10nMである200μLの精製及び脂質化されたrhTFを異なるcH36濃度に対して加えた。図5は、抗−TF抗体、Sunol−cH36がレタスに産生されたrhTFの凝固時間を引き延ばすということを表す。例えば、500nMの抗体濃度で凝固時間が25秒から42秒に増加している、一方、rhTF243への影響に比べると、凝固時間は25秒から48秒に増加している。抗−TF抗体であるSunol−cH36は、rhTF243及び植物により産生されたrhTF263の両方に作用した。しかしながら、本発明者らは、高濃度のSunol−cH36では、レタス由来のrhTFに対する影響はE.coliのrhTF243に対する影響に較べて小さいということを見出した。
【実施例6】
【0145】
ブタモデルに於ける部分的に厚みのある創傷の止血に対する植物rhTFの効果
本研究は、ブタモデルに於ける、部分層創傷の止血のための局所薬の効果を検査することを目的とするものである。
【0146】
A.実験動物
ブタの皮膚とヒトの皮膚が形態的に類似性があることから、創傷モデルの対象としてブタを採用した。特定病原体(SPF:Ken−O−Kaw農場、ウィンザー、イリノイ)を含まない体重が約50kgの若い雌性ブタを使用した。動物は、実験開始前の少なくとも2週間を室内で管理し、任意に基礎食を与え、そして固体ごとに許容された動物施設(実験動物管理認定協会 American Association for Accreditation of Laboratory Animal Care(AAALAC)コンプライアンスを満たすもの)に於いて、調節された気温(19〜21℃)及び照明(照明有りで12時間/暗闇で12時間)のもとで飼育した。
【0147】
B.創傷を与える手法
実験当日に実験動物の横腹及び背中を動物用標準クリッパーで挟んだ。それぞれの動物の両側の皮膚を非抗生物質石けん(ニュートロジーナ固形石けん;ジョンソンアンドジョンソン、ロサンゼルス、カリフォルニア)及び滅菌水で洗浄して、創傷を与える準備をした。それぞれの動物は、塩酸チレタミンとゾラゼパム(1.4mg/kg)(テラゾール;Laderle Parenterals Inc,Carolina,Puerto Rico)、キシラジン(2.0mg/kg)(X−jet; Phoenix Scientific Inc,St.Joseph,MO)及びアトロピン(0.04mg/kg)(Atrojet SA; Phoenix Scientific Inc,St.Joseph,MO)を筋肉注射して、イソフルラン(Isothesia;Abbott Laboratories,Chicago,IL)及び酸素を組み合わせて、覆面により吸入させて麻酔した。
【0148】
10mm×7mm×0.4mm(深さ)の長方形(直方体)をした、およそ52個の創傷を、傍脊椎及び胸郭の領域に、7mmの刃の付いた特殊化したelectrokeraomeで与えた。創傷は、それぞれおよそ15mmの無傷の皮膚によって隔てた。
【0149】
C.治療
8個の創傷をそれぞれの処置群に無作為に割り当てた。ここで5種類の処置群の結果を提示する:
1.滅菌水
2.PBS
3.E.coli由来のrhTF243(100nM)
4.植物由来の精製されたrhTF(10nM)
5.植物由来のrhTFの粗抽出物(10nM)
【0150】
サンプルとして、すぐに適用できる0.2mL量の溶液材料が提供された。実験の前に、試験サンプルを35℃の水浴に入れて処置まで維持する。全ての処置は、創傷を与えてから5分以内に施し、止血を視覚的に検査した。止血の評価は、処置を施してから出血の停止までの時間を計測することによりなされた。それぞれの創傷を独自にスコア化し;それぞれの治療群からの8個のスコアを平均して、その平均値をグラフ化した(表2を参照のこと)。それぞれの治療群からの代表的な創傷を写真撮影した。
【0151】
創傷を与えて、点状出血の開始後に拭き取った。負傷及び拭き取り後、全ての処置を直ちに施し、止血を視覚的に検査した。それぞれの創傷を作製し、拭き取り処置を施した後、凝固時間及び創傷部での出血の及ぶ範囲を観察した。処置は一度だけ施した。
【0152】
凝固時間を決定するために、治療を施した時にストップウォッチで計測をスタートし、出血の停止を決定した時にストップした。この時間を記録した。出血の範囲を決定するために、次の基準に従って創傷部での血液の蓄積を評価した:
スコア: 1=なし、 2=穏やか、 3=中程度、 4=著しい、 5=多量
注意: スコア3を標準的な出血とした(すなわち、未処置の創傷)。
それぞれの処置群からの代表的な創傷を写真撮影した。
【0153】
【表2】

【0154】
D.止血までの時間
dsHO及びPBSで処置した対照創傷は、止血までの平均時間がそれぞれ40秒及び43秒であった。Ec−TF243 100、Pur−pTF10及びCr−pTF10で処置した創傷の止血までの平均時間は、それぞれ14秒、15秒及び11秒であった。
【0155】
E.止血のスコア
dsHO又はPBSで処置した対照創傷は、平均の止血のスコアが、それぞれ3.00及び3.12であった。Ec−TF243 100、Pur−pTF10又はCr−pTF10で処置した創傷の平均の止血のスコアは、それぞれ1.93、2.00及び1.93であった。従って、Ec−TF243 100、Pur−pTF10及びCr−pTF10は止血を維持することが可能であったが、しかし未処置及びPBS処置の群の両方では、ゆっくりと出血が続いた(図6)。
【実施例7】
【0156】
rhTFを産生する安定したトランスジェニック植物
安定的なトランスジェニックシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)(va.Columbia)植物を、pSUNP12ベクター又は類似した植物発現ベクター、pSUNP14を含むアグロバクテリウムで浸潤することによるインプランタでの形質転換を使用して作製した。pSUNP14ベクターは、1から243までのアミノ酸(つまり図1に表す、配列...AISLH配列の後で終わる)をコードするrhTF遺伝子の断片を、pSUNP12ベクターのrhTF263遺伝子の断片の代わりに含むものである。植物は上述のように形質転換したが、顕花植物に於いては、その過程はフローラルディップ法と称されるアグロインフィルトレーション法が用いられた。(例えば、Clough SJ及びBent AF.1998 The Plant Journal 16:735〜743を参照されたい)。1ヶ月半の後、その植物はT0種子を生産した。カナマイシン(Km)を含んだ固体培地での種子発芽及び生長させて、T0トランスジェニック植物を選別した。発色のよい緑色のT0種子を土壌に移し、異なったレベルのrhTF発現を伴った100を超えるトランスジェニック植物を生産した。T1種子生産のための最良の候補を選択した。その中で、A12−9系が4.3mg/kgのrhTF263を誘発無しに産生し、そしてA14−17系が2.9mg/kgのrhTF243を誘発無しで産生した。組換えhTF発現は、1mMのサリチル酸とともに水をやること又は上述したように葉を2,4−Dで処理することにより、(OCS)3MASプロモーターの誘発を通じてさらに増加した。これらの方法により、トランスジェニックシロイヌナズナ植物を誘発して、少なくとも20mg/kgのrhTFを産生することができた。これらの植物からのT1種子は、さらなるスクリーニング及びT2植物生産のために使用する。
【0157】
本明細書に開示した全ての特許及び刊行物を参照して本明細書に取り込む。
【0158】
本発明は、その好ましい態様に基づき詳細に記載するものであるが、当該開示により当業者であれば、添付の請求の範囲で示される精神及び範囲を逸脱することなく修飾及び改良を行うことができるものであると理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】図1A〜Bは、好ましいベクターのシグナルペプチド(下線)に対応するヒト組織因子(太字)のアミノ酸配列を表す図面である(1A)。図1Bは、トマトサブチラーゼ(subtilase)シグナルペプチド(下線)とヒト組織因子(太字)のアミノ酸配列を表す図面である。想定されるグリコシル化部位を二重下線で表す。
【図2】図2は、好ましい植物形質転換ベクター(pSUNP12)の物理的地図を表す図面である。
【図3】図3は、精製された植物rhTFのNuPAGE Bis−tris ゲル(12%)での泳動を表す写真である。レーン1は分子量マーカーであり;レーン2は精製されたレタスのrhTFの全長(アミノ酸数:263個)であり;レーン3は、E.coliのアミノ酸数が243個の精製されたrhTF
【図4】図4は、rhTF243(E.coli由来で、精製及び再脂質化された)、レタス由来のrhTF(精製及び再脂質化された)及びレタス由来のrhTFの粗抽出物を、異なる量でPTアッセイした結果を表すグラフである。
【図5】図5は、E.coli由来のrhTF243及びレタス由来のrhTFに対する、抗TF抗体、Sunol−cH36、の効果を表すPTアッセイの結果を示すグラフである。
【図6−1】図6A〜Eは、創傷を、水(dsHO;6A)、PBS(6B)、E.coliのTF(243;6C)、精製された植物TF(6D)及び植物由来の粗抽出物のTF(6E)で処置した後の写真である。
【図6−2】図6A〜Eは、創傷を、水(dsHO;6A)、PBS(6B)、E.coliのTF(243;6C)、精製された植物TF(6D)及び植物由来の粗抽出物のTF(6E)で処置した後の写真である。
【図7−1】図7A〜Fは、図2で模式的に表したベクターの完全なヌクレオチド配列を表す。
【図7−2】図7A〜Fは、図2で模式的に表したベクターの完全なヌクレオチド配列を表す。
【図7−3】図7A〜Fは、図2で模式的に表したベクターの完全なヌクレオチド配列を表す。
【図7−4】図7A〜Fは、図2で模式的に表したベクターの完全なヌクレオチド配列を表す。
【図7−5】図7A〜Fは、図2で模式的に表したベクターの完全なヌクレオチド配列を表す。
【図7−6】図7A〜Fは、図2で模式的に表したベクターの完全なヌクレオチド配列を表す。
【図7−7】図7A〜Fは、図2で模式的に表したベクターの完全なヌクレオチド配列を表す。
【図7−8】図7A〜Fは、図2で模式的に表したベクターの完全なヌクレオチド配列を表す。
【図7−9】図7A〜Fは、図2で模式的に表したベクターの完全なヌクレオチド配列を表す。
【図7−10】図7A〜Fは、図2で模式的に表したベクターの完全なヌクレオチド配列を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)植物に於いて作動可能な第一のプロモーター、
(b)核酸配列が前記プロモーターに作動可能に会合する、哺乳動物の組織因子タンパク質又はその機能断片をコードする発現可能な核酸配列;及び
(c)前記核酸配列に作動可能に会合する終止配列
を含んでなる植物の発現ベクター。
【請求項2】
(d)植物に於いて作動可能な第二のプロモーター、
(e)前記第二のプロモーターに作動可能に会合する選択可能なマーカー遺伝子、
(f)アグロバクテリウムのTR配列;及び
(g)アグロバクテリウムのTL配列
をさらに含んでなる、請求項1に記載の植物の発現ベクター。
【請求項3】
哺乳動物の組織因子又は断片をコードする発現可能な核酸配列が、配列番号: として表1に示されるヒト組織因子の成熟配列に少なくとも70%の相同性を有するものである、請求項1及び2に記載の植物の発現ベクター。
【請求項4】
哺乳動物の組織因子又は断片をコードする発現可能な核酸配列が、配列番号: として表1に示されるヒト組織因子の成熟配列に少なくとも80%の相同性を有するものである、請求項1〜3に記載の植物の発現ベクター。
【請求項5】
哺乳動物の組織因子又は断片をコードする発現可能な核酸配列が、配列番号: として表1に示されるヒト組織因子の成熟配列に少なくとも90%の相同性を有するものである、請求項1〜4に記載の植物の発現ベクター。
【請求項6】
哺乳動物の組織因子又は断片をコードする発現可能な核酸配列が、配列番号: として表1に示されるヒト組織因子の成熟配列に少なくとも99%の相同性を有するものである、請求項1〜5に記載の植物の発現ベクター。
【請求項7】
前記核酸配列によってコードされる哺乳動物の組織因子又は断片が、配列番号: として表1に示されるヒト成熟組織の標準プロトロンビン時間(PT)アッセイに於けるプロトロンビン時間の少なくとも70%を示すものである、請求項1〜6に記載の植物の発現ベクター。
【請求項8】
前記核酸配列によってコードされる哺乳動物の組織因子又は断片が、配列番号: として表1に示されるヒト組織因子の成熟タンパク質の標準プロトロンビン時間(PT)アッセイに於けるプロトロンビン時間の少なくとも80%を示すものである、請求項1〜7に記載の植物の発現ベクター。
【請求項9】
前記核酸配列によってコードされる哺乳動物の組織因子又は断片が、配列番号: として表1に示されるヒト組織因子の成熟タンパク質の標準プロトロンビン時間(PT)アッセイに於けるプロトロンビン時間の少なくとも90%を示すものである、請求項1〜8に記載の植物の発現ベクター。
【請求項10】
前記核酸配列によってコードされる哺乳動物の組織因子又は断片が、配列番号: として表1に示されるヒト組織因子の成熟タンパク質の標準プロトロンビン時間(PT)アッセイに於けるプロトロンビン時間の少なくとも99%を示すものである、請求項1〜9に記載の植物の発現ベクター。
【請求項11】
前記第一のプロモーターが植物に於いて誘導性である、請求項1〜10に記載の植物の発現ベクター。
【請求項12】
前記第一のプロモーターが植物に於いて構成性である、請求項1〜10に記載の植物の発現ベクター。
【請求項13】
組織因子をコードする前記核酸配列がさらに、植物又は哺乳動物の由来の分泌シグナルペプチドをコードする配列を包含するものである、請求項1〜12に記載の植物の発現ベクター。
【請求項14】
前記植物由来のシグナル配列が、トマト、米、タバコ、カラシナ、綿、トウモロコシ又はアルファルファ由来のものである、請求項13に記載の植物の発現ベクター。
【請求項15】
構成要素(a)及び(d)〜(g)が、ベクター上に5’から3’の方向で位置するものである、請求項1〜14に記載の植物の発現ベクター。
【請求項16】
構成要素(b)及び(c)が、ベクター上の構成要素(a)及び(d)〜(f)の位置に対して逆の方向に位置するものである、請求項15に記載の植物の発現ベクター。
【請求項17】
請求項1〜16の何れか一つの複製可能な発現ベクターを包含する形質転換細胞を含んでなるトランスジェニック植物。
【請求項18】
前記植物が双子葉植物である、請求項17に記載のトランスジェニック植物。
【請求項19】
前記植物が単子葉植物である、請求項18に記載のトランスジェニック植物。
【請求項20】
前記植物が、マメ科(Fabaceae)、ナス科(Solanaceae)、アブラナ科(Brassicaceae)、バラ科(Rosaceae)又はキク科(Compositae)のものである、請求項17に記載のトランスジェニック植物。
【請求項21】
前記植物が、ウキクサ、タバコ(ニコチアナ・タバカム、Nicotiana tabacum)、カラシナ(シロイヌナズナ、Arabidopsis)、ジャガイモ(バレイショ、Solanum tuberosum)、ダイズ(グリシン・マックス、Glycine max)、トマト(リコペルシコン・エスクレンタル)、キャッサバ(Manihot esculenta)、ビート、ラッカセイ(Arachis hypogaea)、綿(Gossypium hirsutum)、柑橘植物(カンキツ類、Citrus spp.)、トウモロコシ又はメイズ(Zea mays)、マメ(例えば、サヤインゲン(インゲンマメ、Phaseolus vulgaris)及びライマメ(Phaseolus limensis))、エンドウ豆(スイートピー類、Lathyrus spp.)、甜菜、ヒマワリ、ニンジン、セロリ、亜麻、キャベツ(及び他のアブラナ科植物)、コショウ、マンゴー、桃、リンゴ、西洋ナシ、バナナ、ヒマワリ、タマネギ、イチゴ、アルファルファ、オートムギ、小麦、ライムギ、米、オオムギ、ソルガム及びカノーラ、である請求項20に記載のトランスジェニック植物。
【請求項22】
前記植物がアキノノゲシ(Lactucua)属である、請求項20に記載のトランスジェニック植物。
【請求項23】
前記植物がL.sativa(レタス)である、請求項17に記載のトランスジェニック植物。
【請求項24】
前記植物が穀草類である、請求項17に記載のトランスジェニック植物。
【請求項25】
グリコシル化を遺伝子操作されている請求項17に記載のトランスジェニック植物。
【請求項26】
子孫植物、切り枝、挿し木、品種又は種子が哺乳動物の組織因子タンパク質又はその機能断片をコードする発現可能な核酸配列を含んでなる、請求項17〜25に記載のトランスジェニック植物由来の子孫植物、切り枝、挿し木、品種又は種子。
【請求項27】
前記トランスジェニック植物が哺乳動物の組織因子タンパク質又はその機能的な断片をコードする発現可能な核酸配列を含んでなる、請求項26に記載の切り枝、挿し木、品種又は種子から得られるトランスジェニック植物。
【請求項28】
形質転換された細胞が、
(a)植物に於いて作動可能な第一のプロモーター、
(b)前記プロモーターに作動可能に会合する、哺乳動物の組織因子タンパク質又はその機能断片をコードする発現可能な核酸配列、
(c)前記核酸配列に作動可能に会合する終止配列、
(d)植物に於いて作動可能な第二のプロモーター、
(e)前記第二のプロモーターに作動可能に会合する選択可能なマーカー遺伝子、
(f)アグロバクテリウムTR配列、及び
(g)アグロバクテリウムTL配列;
ここで、前記発現可能な核酸配列は哺乳動物の組織因子タンパク質又は断片をコードし、更に前記組織因子タンパク質又は断片に作動可能に連結する植物特異的シグナルペプチドをコードするものである、
を含んでなる形質転換された植物細胞を含むトランスジェニックレタス(L.sativa)。
【請求項29】
i)前記第一のプロモーターが誘導性又は構成性であり、
ii)発現可能な核酸配列が、配列番号: として表1に示される配列によって表されるヒト組織因子の成熟タンパク質、その機能断片又は配列番号: として表1に示されるヒト組織因子の成熟に少なくとも約70%の相同性を有し、配列番号: として示されるヒト組織因子の成熟タンパク質のプロトロンビン時間の少なくとも70%を提示する配列をコードするものであり、
iii)前記終止配列がNos−3’であり、
iv)前記第二のプロモーターが35Sプロモーターである、及び
v)前記選択可能なマーカー遺伝子がNPTIIである、請求項28に記載のトランスジェニックレタス(L.sativa)。
【請求項30】
請求項1〜29に記載のトランスジェニック植物から得られる、組換え哺乳動物の組織因子タンパク質又はその機能断片。
【請求項31】
作動可能に連結した植物由来のシグナルペプチドを含んでなる、組換え哺乳動物の組織因子又はその機能断片。
【請求項32】
シグナル配列が、トマト、米、タバコ、カラシナ、綿、メイズ又はアルファルファに由来するものである、請求項31に記載の組換え哺乳動物の組織因子。
【請求項33】
組織因子配列が、図1B(配列番号: );又は配列番号: に少なくとも70%の相同性を有する配列によって表されるものである、請求項31及び32に記載の組換え哺乳動物の組織因子。
【請求項34】
組織因子配列が、配列番号: として表1に示されるヒト組織因子の成熟タンパク質の少なくとも70%のプロトロンビン時間を示すものである、請求項33に記載の組換え哺乳動物の組織因子。
【請求項35】
少なくとも何れか一つの植物特異的グリカンを含んでなる、組換え哺乳動物の組織因子又はその機能断片。
【請求項36】
前記植物特異的グリカンがα(1,3)フコース基である、請求項35に記載の組換え哺乳動物の組織因子。
【請求項37】
植物特異的グリカンがβ(1,2)キシロース基である、請求項35に記載の組換え哺乳動物の組織因子。
【請求項38】
植物特異的グリカンがα(1,3)フコース及びβ(1,2)キシロース基である、請求項35に記載の組換え哺乳動物の組織因子。
【請求項39】
α(1,3)フコースがN−アセチルグルコサミン(GlaNAc)基に共有結合したものである、請求項36〜37に記載の組換え哺乳動物の組織因子。
【請求項40】
β(1,2)キシロース基がマンノース基に共有結合したものである、請求項36〜38に記載の組換え哺乳動物の組織因子。
【請求項41】
組織因子配列が、図1B(配列番号: )によって代表される配列;又は配列番号: の配列に少なくとも70%の相同性を有する配列である、請求項30〜40に記載の組換え哺乳動物の組織因子。
【請求項42】
組織因子配列が、配列番号: として表1に示されるヒト組織因子の成熟タンパク質のプロトロンビン時間の少なくとも70%を示すものである、請求項41に記載の組換え哺乳動物の組織因子。
【請求項43】
請求項30〜42に記載の組換え哺乳動物の組織因子が実質的に精製された調製物。
【請求項44】
請求項30〜42に記載の組換え哺乳動物の組織因子の実質的に精製された調製物及びホスファチジルコリン又はホスファチジルセリンのうちの少なくとも何れか一つ。
【請求項45】
請求項18〜29に記載のトランスジェニック植物から得られた水性の画分に懸濁された、組換え組織因子(rhTF)又はその機能断片を含む粗抽出物。
【請求項46】
組換え組織因子又はその断片が、さらに、作動可能に連結した植物又は哺乳動物由来のシグナルペプチドを包含するものである、請求項45に記載の粗抽出物。
【請求項47】
さらに前記組換え組織因子又はその断片、植物特異的グリカンをさらに含む前記組織因子又は断片、を含んでなる請求項45〜46に記載の粗抽出物。
【請求項48】
抽出物が、薬学的に許容される溶液を含むものである、請求項45〜47に記載の粗抽出物。
【請求項49】
前記溶液が、水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)又はトリス緩衝生理食塩水である請求項48に記載の粗抽出物。
【請求項50】
請求項30〜49に記載の組成物のうちの少なくとも何れか一つを含む抗凝固剤。
【請求項51】
薬学的に許容される媒体、添加剤又は安定剤のうちの少なくとも何れか一つをさらに含んでなる請求項50に記載の抗凝固剤。
【請求項52】
i)(a)植物に於いて作動可能な第一のプロモーター、(b)核酸配列がプロモーターに作動可能に会合する、哺乳動物の組織因子タンパク質又はその機能断片をコードする発現可能な核酸配列;及び(c)前記核酸配列に作動可能に会合する終止配列、を含む複製可能な発現ベクターの少なくとも何れか一つを好適な植物又は植物組織に導入すること;及び
ii)哺乳動物の組織因子タンパク質又はその機能断片の発現を促す条件下で植物又は植物組織を培養すること、それによりトランスジェニック植物を作製すること、
を含んでなる、請求項17〜29に記載のトランスジェニック植物を作製する方法。
【請求項53】
i)好適なアグロバクテリウム種に、(a)植物に於いて作動可能な第一のプロモーター、(b)核酸配列がプロモーターに作動可能に会合する、哺乳動物の組織因子タンパク質又はその機能断片をコードする発現可能な核酸配列、及び(c)核酸配列に作動可能に会合する終止配列、を含む複製可能な発現ベクターの少なくとも何れか一つを導入すること;及び
ii)トランスジェニック植物を作製するために、前記バクテリウムを、ベクターでの植物又は植物組織の形質転換を促す条件下で、好適な植物又は植物組織と共に培養すること、
を含んでなる、請求項17〜29に記載のトランスジェニック植物を作製する方法。
【請求項54】
i)好適な植物又は植物組織に、(a)植物に於いて作動可能な第一のプロモーター、(b)核酸配列がプロモーターに作動可能に会合する、哺乳動物の組織因子タンパク質又はその機能断片をコードする発現可能な核酸配列;及び(c)前記核酸配列に作動可能に会合する終止配列、の少なくとも何れか一つを導入すること;及び
ii)植物又は植物組織を、哺乳動物の組織因子タンパク質又はその機能断片の発現を促す条件下で培養すること、それによりトランスジェニック植物を作製すること;及び
iii)前記トランスジェニック植物から粗抽出物を調製すること;及び
iv)前記粗抽出物から組換え組織因子又はその機能断片を単離すること、
を含んでなる方法である、請求項30〜44に記載の単離された組換え組織因子又はその機能断片を作製する方法。
【請求項55】
i)好適なアグロバクテリウム種に、(a)植物に於いて作動可能な第一のプロモーター、(b)核酸配列が前記プロモーターに作動可能に会合する、哺乳動物の組織因子タンパク質又はその機能断片をコードする発現可能な核酸配列、及び(c)核酸配列に作動可能に会合する終止配列、を含む複製可能な発現ベクターの少なくとも何れか一つを導入すること;及び
ii)トランスジェニック植物を作製するために、前記バクテリウムを、ベクターでの植物又は植物の組織因子の形質転換を促す条件下で、好適な植物又は植物組織と共に培養すること;及び
iii)トランスジェニック植物からの粗抽出物を調製すること;及び
iv)粗抽出物から組換え組織因子又はその機能断片を単離すること、を含んでなる方法である、請求項30〜44に記載の単離された組換え組織因子又はその機能断片を作製する方法。
【請求項56】
前記方法がさらに組換え組織因子又はその機能断片を、クロマトグラフ法、遠心分離法又は免疫学的沈降法の少なくとも何れか一つにより精製することを含むものである、請求項54又は55に記載の方法。
【請求項57】
得られる組換え組織因子又はその断片が実質的に純粋である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
対象を、請求項50又は51に記載の抗凝固剤の治療有効量に接触させることを含んでなる方法である、対象に於ける出血の予防又は治療若しくは処置のための方法。
【請求項59】
対象が、治療若しくは処置を必要とするヒトの患者である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
対象が、治療若しくは処置を必要とする哺乳動物のである、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
請求項50又は51に記載の抗凝固剤を含む吸収剤。
【請求項62】
前記吸収剤が医療用のガーゼである、請求項61に記載の吸収剤。
【請求項63】
前記医療用のガーゼが綿繊維又は綿を含んだ混紡繊維を含むものである、請求項62に記載の吸収剤。
【請求項64】
吸着剤が薬学的に許容される溶液を含んでなる、請求項61〜63に記載の吸収剤。
【請求項65】
請求項61〜64に記載の吸収剤を含んでなる粘着性の支持体。
【請求項66】
前記粘着性の支持体が殺菌されたものである、請求項65に記載の粘着性の支持体。
【請求項67】
包装容器が耐水性及び耐外気性である、請求項66に記載の粘着性支持体を含んでなる包装容器。
【請求項68】
ベクターがさらに遺伝子サイレンシングを抑制する配列を含むものである、請求項1〜11に記載の複製可能な植物発現ベクター。
【請求項69】
第一のプロモーターが2,4,−D誘導性(OCS)3Masプロモーターである、請求項29に記載のトランスジェニックレタス(L.sativa)。
【請求項70】
組織因子の植物特異的グリカンが、末端ガラクトース基を欠くものである、請求項35〜40に記載の組換え哺乳動物の組織因子。
【請求項71】
組織因子の植物特異的グリカンがさらに、末端アセチルノイラミン酸(NeuAc;シアリン酸)基を欠くものである、請求項70に記載の組換え哺乳動物の組織因子。
【請求項72】
前記シアリン酸基がガラクトース群に共有結合するものである、請求項71に記載の組換え組織因子。
【請求項73】
抗凝固剤が創傷上又はその付近に抗凝固剤を注ぐこと又はスプレーすることの一つ又はそれ以上により対象に供給されるものである、請求項58に記載の方法。
【請求項74】
請求項50又は51の抗凝固剤の治療有効量を対象に接触させることを含んでなる方法である、対象に於いて創傷治癒を促進させる方法。
【請求項75】
対象を、請求項50又は51に記載の抗凝固剤の治療有効量に接触させることを含んでなる、対象に於ける血管形成を促進するための方法。
【請求項76】
対象を、請求項50又は51に記載の抗凝固剤の治療有効量に接触させることを含んでなる、対象に於ける血管再形成を促進するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図7−4】
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【図7−5】
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【図7−6】
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【図7−7】
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【図7−8】
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【図7−9】
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【図7−10】
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【公表番号】特表2008−504033(P2008−504033A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518348(P2007−518348)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/022766
【国際公開番号】WO2006/004675
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(504090190)アルター・バイオサイエンス・コーポレーション (8)
【Fターム(参考)】