説明

植物性の包装の製造方法及びこの方法で使用される搬送装置

【課題】ダイと分離手段間の距離が比較的長い、植物性の包装の製造方法および植物性の包装を製造するための搬送装置を提供する。
【解決手段】連続した管形押出し物20の押出しと、連続した管形押出し物20の搬送と、を有する植物性の包装の製造方法であって、前記搬送は、複数の間隔のあいた水平なくい41で前記連続した管形押出し物を吊り、前記くい41を一定の速度で繰り返し水平方向へ移動させることから成り、2つの隣接した前記水平のくい41間の連続した前記管形押出し物20は、閉じた空間を形づくることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用のタンパク性の包装の製造方法と、食用のタンパク性の包装の製造方法で使用される搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、食用のタンパク性の膜を製造するための方法が、押出機での加熱による水とタンパク質を含む原料の混錬と溶解、溶解した原料を押出機のダイを通して押し出すことによる管形押出し物の成型、管形押出し物の内側への大気圧以上でのガスの供給とガスの排出、分離手段(take−off means)による管形押出し物の受止めと保持、を伴うことを開示している。この分離手段では、管形押出し物の内壁が接着することを防ぐために、管形押出し物は、この中及びダイの円形の開口部と保持型の分離手段の間で、閉じた空間を形づくる。この方法を使用した装置も開示されている。この従来技術の方法では、管形押出し物は分離手段より前で十分に冷却されない。なぜならば、管形押出し物の内壁への粘着を防ぐために、管形押出し物の内壁へ吹き込まれるガスにブロッキング防止剤が加え混ぜられるため、ダイと分離手段間の距離が制限されるからである。使用されているブロッキング防止剤は、粒径5−10μmのでんぷん粒であるが、食用油脂のマイクロカプセルの形等でもよい。更に、この不十分な冷却により、押出し速度も制限される。すなわち、製造速度が制限される。特許文献1に開示の内容は、参照することにより本明細書に含まれる。
【特許文献1】米国特許第5569482号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決するためになされたものであり、ダイと分離手段間の距離が比較的長い、植物性の包装の製造方法および植物性の包装を製造するための搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成する本発明に係る植物性の包装の製造方法は、連続した管形押出し物の押出しと、連続した管形押出し物の搬送と、を有する植物性の包装の製造方法であって、前記搬送は、複数の間隔のあいた水平なくい(posts)で前記連続した管形押出し物を吊り、前記くいを一定の速度で繰り返し水平方向へ移動させることから成り、2つの隣接した前記水平のくい間の連続した前記管形押出し物は、閉じた空間を形づくることを特徴とする。
【0005】
上記目的を達成する本発明に係る植物性の包装を製造するための搬送装置は、水平に回転させることのできる環状部材と、前記環状部材を回転させる駆動手段と、一端は前記環状部材にピボット的(pivotally)に接続し、他端は、前記環状部材より低くない位置へ垂直方向に回転可能な前記複数のくいと、前記環状部材の片側に配置され、前記環状部材と仮想の水平面を形づくる支持梁と、前記環状部材より下に一端が位置し、他端は、前記支持梁に接続あるいは上にあり、前記両端の間に形成される弓形部分は、両端のうちの下側の端から上に向かって前記他端へ延び、環状部材の周りに広がり、前記くいの一端が前記環状部材で運搬されているときに、前記くいの他端は、弓形部分で上方に、前記支持梁上で水平に移動できる弓形のエレベーティングレール(elevating rail)と、からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
目的を成し遂げるために、本発明により提供される植物性の包装の製造方法および植物性の包装を製造するための搬送装置は、吊り下げ法(hanging manner)で、連続した管形押出し物を移動させ、連続した管形押出し物が分離手段で固定される前に比較的長い冷却距離(時間)を作り出している。そのため、本発明の方法ではブロッキング防止剤を省いてもよく、本方法の製造速度が上がる可能性がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の使用に適した適切な押出機は、米国特許第5569482号明細書で開示されたものである。図1と2に示すように、押出機1はスクリュー2aを有するバレルとダイホルダー3からなる。ダイ4は、ダイホルダー3に固定する。
【0008】
ダイ4は、図2で示された構成を有する。すなわち、ダイ4を構成する中空の箱(hollow box)10の鍔部12はボルト12aでダイホルダー3に固定される。中空の箱10に設けられ、T型をした材料経路13の注入口13aは、ダイホルダー3の出口3aに接続される。管形のガス供給管14と、ガス供給管14を中に含んでいるガス流出経路15を有するシリンダー(cylinder)11は、材料経路13に設けられる。シリンダー11は、中空の箱10の穴10Aに、ボルト11aにより、固定される。シリンダー11の下部で、中空の箱10の材料経路13の下側の位置に、円形開口部16は、形づくられる。
【0009】
冷媒としてガスを導入する冷却ジャケット17は、中空の箱10の外面の下側の位置に設けられる。円形開口部16は、冷却ジャケット17で冷却される。
【0010】
第1流量調整器8aと、任意に、ブロッキング防止剤供給器31は、配管32に設けられ、配管32は、ガス供給管14をポンプおよび同等のものからなるガス供給器8へ接続する。第2流量調整器8bは、配管33に設けられ、配管33は、冷却ジャケット17をガス供給器8へ接続する。流出調整器18は、ガス流出経路15の排気口15aに備えられる。
【0011】
この装置を使用し包装を製造するために、水とタンパク質を含む溶解した原料(図示せず)は、押出機1から押出され、圧力により注入口13aを通り材料経路13へ移動する。水とタンパク質を含む原料は、材料経路13を通って移動する間に、膨張が起こらない温度まで、冷却ジャケット17で冷却される。押出機の開口16から下方へ押出される管形押出し物20は、ダイ4の下に設けられる搬送装置で受けられる。ガス供給装置8の作動により、管形押出し物20の内部へガス供給管14から絶え間なく、ガスは、供給される。円形開口部16から押出された後、大気圧より高い圧力のガスは、管形押出し物20へ供給される。ガス供給管14から押出し物内部へ供給されるガスは、反対方向に、ダイ4の円形開口部16へ向かって流れ、ガス流出経路15と排気口15aを通過し流れ出る。この行程の間に、ガスは、管形押出し物20の内側表面を乾燥させ、円形開口部16の直後で管形押出し物20が軟らかく固化していない状態の間に、留まり、三次元方向に広がる。(図1と図2は広がった後の状態を示す。)この行程において、伸び比は、ガス供給管14から導入されるガスの量と圧力により調整される。でんぷん粒のようなブロッキング防止剤は、押出し物の内壁の接着を防ぐために、ブロッキング防止剤供給器31からガス供給管14を通り管形押出し物20へ供給されてもよい。ダイ4のほぼ円形開口部16で広がる、押出し管20の周囲の広がりは、ボルト5aでダイ4へ固定されている管形ガイド5で調整される。そのため、同一の周辺長を有する管形押出し物が得られる。
【0012】
管形ガイド5の内筒の周辺長を変えるとともに、押出機1の運転条件とガス供給の状態を調整することで、異なる周辺長を有する管形押出し物20を得られる。
【0013】
図1に示すように、本発明の搬送装置は複数個のくい41を有し、くい41のいくつかは、ダイ4の下を水平方向に、一定の速度で移動する。連続する管形押出し物20は、水平のくい41に吊り下げられ、ダイ4から運び去られる。任意の2つの隣接した水平方向のくい41の間で、吊るされた管形押出し物20において、閉じた空間が形成される。2つの隣接した水平方向のくい41の間の吊るされた押出し物20の長さと、吊るされた押出し物20の吊り時間は、くい41の速度および/または2つのくい41の間隔を変えることにより、調整できる。すなわち、連続した管形押出し物20の冷却時間を調整できる。
【0014】
2つの反対方向に回転している一対のローラー50は、管形押出し物が搬送された後、連続した管形押出し物20をつかむために使用される。ここにおいて、ローラー50での連続した管形押出し物20の速度は、ダイ4から流出する連続した管形押出し物20の速度と実質的には同じである。連続した管形押出し物20を切断して薄膜にするために、ローラーの下流に、カッター60が設けられ、この薄膜は収集ローラー70で巻き上げられる。カッター60は省いてもよく、連続した管状押出し物20は、ローラー50の下流の収集ローラー70で巻き上げられる。
【0015】
図1での使用に適し、本発明の好適な実施の形態に係って構成された搬送装置40を図3に示す。搬送装置40は、枠90を有し、その枠及び枠の外側へは回転主軸91aと91bが取付く。搬送装置40の駆動装置は、回転主軸91aと91bに中心が各々固定された一対の車輪92aと92bと、主軸91aを回転させるために枠90上に取付けられたモーター92cから成り、環状のエンドレスチェーン42が車輪92a及び92bに噛み合う。前記エンドレスチェーン42には、複数のくい41が等間隔に、くいの一端でピボット的に接続する。そのため、くい41の他端は、垂直に回転でき、エンドレスチェーン42と同じ高さ、あるいはエンドレスチェーン42よりも高く持ち上げることができる。水平な支持梁43は枠90上及び枠90の中に備え付けられ、エンドレスチェーン42と同じ高さにあり、そのため、支持梁43とエンドレスチェーン42は仮想の水平面を形づくる。また、弓形のエレベーティングレール44は、枠90上及び枠90の外に備え付けられ、エレベーティングレール44の一端はエンドレスチェーン42の下に位置し、エレベーティングレール44の他端は支持梁43のわずか上に位置し、弓形の部分は前記上端から前記他端へ延び、エンドレスチェーン42の周囲に広がる。
【0016】
モータ92cが起動した後、車輪92a、92b、回転主軸91aおよび91bの助けにより、エンドレスチェーン42は反時計回りに回転させられる。くい41は、回転するエンドレスチェーン42によって反時計回りに運ばれる。これらは、エレベーティングレール44と支持梁43で更に支持されるもの以外は、重力により鉛直である。くい41の下端は、くい41がエレベーティングレール44と接触したとき、エレベーティングレール44の下端から、くい41の下端がエレベーティングレール44を離れるまで、エレベーティングレール44で連続的に持ち上げられる。エレベーティングレール44を離れた後、くい41の下端は、支持梁43で支持される。一方の端を支持梁により支持されるくい41は、このとき水平で、ダイ4(図1に示す)の下でダイ4から遠ざかる方向に、搬送されている。移動量は、おおよそ、支持梁43の右端から左端までである。くい41の一方の端が支持梁43を離れた後は、くい41は、再び鉛直となる。すなわち、図3に示すように、重力により位置Aから、くい41の一方の端が落下する。エンドレスチェーン42の回転に伴い、くい41のいくつかは、支持梁43の右端から左端へ繰り返し水平に動く。連続した管形押出し物20は、水平なくい41で受け取られ、図1に示すローラー50に到達する前に搬送される。
【0017】
図1で、連続した管形押出し物を搬送するために、平行で水平なくいを有するループコンベヤーも使用できることは、明らかである。そこでは、連続した管形押出し物20は、平行で水平なくいに吊り下げられる。移動量は、ループコンベヤーの直線部分である。
【実施例】
【0018】
液体原料と混合する前に、乾燥した原料は、混合され、結果として生じる糊のような混合物は、以下の条件下で、植物性の包装を製造するために、押出し機へ供給される。
原料は、大豆タンパク質分離物30%、小麦のでんぷん20%、グリセロール10%、パーム油5%と水35%で、これらにおいて、大豆タンパク質分離物と小麦のでんぷんは、混合され、結果として生じる混合物に、グリセロール、パーム油、水が加えられ、完全に攪拌される。
【0019】
結果として生じる糊のような混合物は、二軸押出機(Model:Tex58fc−20AW, The Japan Steel Work, LTD.)へ供給され、供給速度 25rpm、シリンダの温度プロフィール 冷却/20/80/170−220/170−220/170−220℃、軸の回転速度 150−300rpm、ダイ温度 150−160℃、ダイ圧力 5−40kg/cm2、押出し物を拡大する圧縮ガスの圧力 0.3−0.5MPaの条件で押出される。
【0020】
ダイからの管形押出し物は、図3に示される搬送装置40により、450cm/minの割合で、受けられる。ここで、2つの隣接したくい41の間の間隔は35cmで、支持梁43は30cmの長さで、くい41の速度は、450cm/minである。管形押出し物20は、図1に示すように、2つの隣接した水平のくい41の間で管形押出し物20の内部が閉じた空間となった状態で、水平のくい41によって、吊るされ、搬送される。
【0021】
搬送装置40で搬送される管形押出し物20は試験されたが、管形押出し物20内部での接着は実質上起こらなかった。
【0022】
本発明の他の実施例において、乾燥した原料と液体材料は、直接、押出機に供給され、ここで、これらは、混合され押出される。本発明のさらなる実施例では、液体原料は単純化され、水だけが、液体原料として使用される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】押出機と環状部材を含む、本発明の食用の植物性の膜を製造するための装置の例を示した概略図である。
【図2】図1の主要部を部分的に拡大した断面図である。そこでは、押出機のバレルの前端部へダイが取付けられている。
【図3】図1での使用に適した本発明の搬送装置を示した概略図である。
【符号の説明】
【0024】
20 管形押出し物、
41 くい、
42 環状部材、
43 支持梁、
44 エレベーティングレール、
90 枠、
92a,92b 車輪、
92c モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続した管形押出し物の押出しと、連続した管形押出し物の搬送と、を有する植物性の包装の製造方法であって、
前記搬送は、複数の間隔のあいた水平なくいで前記連続した管形押出し物を吊り、前記くいを一定の速度で繰り返し水平方向へ移動させることから成り、
2つの隣接した前記水平のくい間の連続した前記管形押出し物は、閉じた空間を形づくることを特徴とする前記植物性の包装の製造方法。
【請求項2】
前記複数の水平なくいは、前記連続した管形押出し物の押出し速度以下の速度で移動する、請求項1に記載の植物性の包装の製造方法。
【請求項3】
前記複数の水平なくいは、一定の間隔に間を空けられた、請求項1に記載の植物性の包装の製造方法。
【請求項4】
前記管形押出し物の搬送後に、前記連続した管形押出し物を切断し、連続した膜にすることからなる請求項1に記載の植物性の包装の製造方法。
【請求項5】
前記管形押出し物の搬送後に、前記連続した管形押出し物を集めることからなる、請求項1に記載の植物性の包装の製造方法。
【請求項6】
前記複数個の水平のくいにより、前記管形押出し物を吊り下げ、搬送する間に、前記管形押出し物を冷却することからなる、請求項1に記載の植物性の包装の製造方法。
【請求項7】
前記押出しは、植物性タンパクと水からなる混合物を押し、環状のオリフィスを通過させることからなる請求項1に記載の植物性の包装の製造方法。
【請求項8】
前記混合物は、植物性タンパクの重量で100−150の割合、でんぷんの重量で0−50の割合であり、グリセロースの重量で0−30の割合、食用油の重量で0−10の割合、水の重量で80−100の割合、繊維性材料の重量で0−10の割合からなる、請求項7に記載の植物性の包装の製造方法。
【請求項9】
水平に回転させることのできる環状部材と、
前記環状部材を回転させる駆動手段と、
一端は前記環状部材にピボット的に接続し、他端は、前記環状部材より低くない位置へ垂直方向に回転可能な前記複数のくいと、
前記環状部材の片側に配置され、前記環状部材と仮想の水平面を形づくる支持梁と、
前記環状部材より下に一端が位置し、他端は、前記支持梁に接続あるいは上にあり、前記両端の間に形成される弓形部分は、両端の内の下側の端から上に向かって前記他端へ延び、環状部材の周りに広がり、前記くいの一端が前記環状部材で運搬されているときに、前記くいの他端は、弓形部分で上方に、前記支持梁上で水平に移動できる弓形のエレベーティングレールと、からなる植物性の包装を製造するための搬送装置。
【請求項10】
前記環状部材は、エンドレスチェーンまたはエンドレスベルトからなる、請求項9に記載の植物性の包装を製造するための搬送装置。
【請求項11】
一対の車輪及びモータからなる駆動装置と、
前記環状部材にかみ合わさった前記車輪と、
輪の形をした、前記車輪により支持された前記環状部材と、
前記環状部材を水平に回転させるために前記モータで駆動され、垂直軸周りに回転する前記車輪の内の一つと、
からなる請求項9に記載の植物性の包装を製造するための搬送装置。
【請求項12】
前記複数のくいは、一定の間隔で間を空けられている請求項9に記載の植物性の包装を製造するための搬送装置。
【請求項13】
前記駆動装置、前記支持梁、前記弓形のエレベーティングレールが配置された枠からなる請求項9に記載の植物性の包装を製造するための搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−202550(P2007−202550A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−131970(P2006−131970)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(596032694)財団法人食品工業発展研究所 (9)
【Fターム(参考)】