説明

植物抽出物およびPUFAの組合せ

本発明は、貯蔵条件下で安定している、オレガノ抽出物などの植物抽出物と多価不飽和脂肪酸または誘導体(例えばエチルエステル「PUFA EE」)との組合せに関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の簡単な説明]
本発明は、高い安定性を示す、オレガノ抽出物などの植物抽出物と多価不飽和脂肪酸または誘導体例えばエチルエステル(「PUFA EE」)との組合せに関する。さらに本発明は、このような組合せおよび/またはそれらの揮発性構成要素を含む食品組成物、栄養補助組成物および医薬組成物にも関する。
【0002】
[発明の背景]
数多くの植物抽出物が、さまざまな医学的特性またはその他の健康上のメリットを有するものとして公知である。例えば、オレガノ抽出物は、国際公開第08/017484号パンフレットにおいて記述されているメリットなどのさまざまな精神的/情緒的メリットを有するものとして公知であり、この文献にはそれがバランスのとれた情緒および精神能力を維持する上で有用であることが示され、抗うつ剤として作用できることが記載されている。
【0003】
しかしながら植物抽出物は、特にこれらの抽出物の親油性含有量が富化された場合に、時間の経過と共に部分的に凝固することが観察されてきた。抽出物中に存在するろう様物質は結晶化し溶液から沈殿することが理論上想定されている。植物抽出物中に存在する活性成分は、これらのろうにより結合され、こうして生物学的利用能の低いものとなりかつ/または分解する可能性がある。
【0004】
長鎖不飽和脂肪酸(PUFA)も同様に、さまざまな健康上のメリットを有するものとして公知である。数多くの研究によって、PUFAの摂取が変性疾患、癌、心臓血管疾患、うつ病およびさまざまな炎症性疾患の危険性を低減できることが示されている。魚油から抽出されたPUFAが有する1つの問題点は、それらが酸素の存在下で容易に分解し、異臭および酸敗臭を発するという点にある。それらを安定させるためにさまざまな化学保存料を使用することができる。しかしながら、健康志向の強い消費者は、自らの食物として天然食品を好む傾向にある。
【0005】
オレガノ抽出物はこれまで抗酸化保存料として使用されてきた。Economou et al 1991 J.Am Oil Chem Soc 68(2):109−113は、オレガノのメタノール抽出物が、ラードを保存する上でその他の薬草抽出物よりも優れていることを見出した。Kulisic et al 2004 Food Chemistry 85:633−640は、オレガノ抽出物が、酸化防止剤としてアスコルビン酸よりも効果が低いが、α−トコフェロールおよび合成抗酸化ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)には匹敵することを見出した。主要構成成分としてカリオフィレンおよびスパスレノール、ゲルマクレン−Dおよびα−テルピネオールを有するハイドロ蒸留されたオレガノ精油が、メタノール抽出物と同様にテストされた。Sahin et al 2004 Food Control 15:549−557も同様に参照されたい。両方共、抗菌活性を有し、酸化防止剤であった。Botsoglou et al 2002 Meat Science 62:259−265は、飼料1kgあたり100mgのオレガノ精油を含む食物をニワトリに38日間与えた場合、生のおよび調理済みの食用肉中の脂質酸化が低下し、酢酸α−トコフェリルの食物サプリメントを用いるとより良い結果が得られるということを見出した。
【0006】
PUFAを保存するために特異的にオレガノ抽出物を使用することも同様に調査され、様々な結果が得られている。例えば、Bhale et al 2007 J.Food Sci.72(9):C504−508は、オレガノのメタノール抽出物とローズマリー抽出物の酸化阻害能力を比較した。オレガノ抽出物は、ローズマリー抽出物よりも優れていることが見出されたが、それは高温およびより高い濃度(約5%)においてだけのことであった。より低い温度でそしてより低い濃度では、ローズマリー抽出物の方が優れていた。この参考文献でテストされたPUFAは、メンハーデン油に由来していた。メンハーデン油は、エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)などのオメガ−3長鎖不飽和脂肪酸をわずか約30%しか含まないことがわかっている。
【0007】
PUFAのEPA含有量は、健康に対する数多くのメリットに関連していると思われることから、PUFAおよび植物抽出物の両方が安定しておりかつ両方共生物活性を有するのに充分な量で存在するPUFAおよび植物抽出物の調合物を生産することが望ましいと思われた。
【0008】
[発明の詳細な説明]
本発明は、貯蔵安定性の増加を示すPUFAと少なくとも1つの植物抽出物の安定した組合せに関するものであり、ここでその組合せがオレガノ抽出物およびメンハーデン油の組合せではないことを条件とし、PUFAおよび植物抽出物の両方の濃度は少なくとも約8%である。
【0009】
本発明の一態様においては、組合せはオレガノ抽出物とPUFAエチルエステルの混合物であり、ここで両方の構成要素共、高濃度すなわち少なくとも約8%(重量%)で存在している。この組合せは、驚くべき安定性を示し、長い保管寿命を有している。
【0010】
本発明は、同様に、さまざまな栄養補助食品、食物サプリメントおよび医薬組成物の製造を目的とした、オレガノ抽出物および/またはその揮発性構成要素と多価不飽和脂肪酸エチルエステル(以下「PUFA EE/オレガノ抽出物」と呼ぶ)にも関する。好ましい実施形態において、PUFA EE/オレガノ抽出物は、カプセルに入っている。
【0011】
好ましい実施形態において、組成物中のオレガノ抽出物の量(重量)は、少なくとも8%、好ましくは少なくとも15%であり、さらには少なくとも25%まで、または少なくとも50%までに拡大されてよく、従来の高濃度の酸化防止剤に典型的に見られる酸化促進性効果を示さない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】加圧下の酸素を用いた酸化に基づく加速酸化試験を用いて濃度が経時的に変動する濃度のオレガノ抽出物中のROPUFA「75」n−3 EE油の酸化を示す。酸素の消費は圧力降下によって判定される。X軸は時間数であり、Y軸は圧力である。
【図2】ROPUFA「75」n−3 EE油(オレガノ抽出物0%)の酸化が、オレガノ抽出物と異なる濃度で混合されている場合に比べ、純粋である場合の方が速いということを示している。
【図3】ろう化(waxing)を示すオレガノ抽出物のバイアルを示す。
【0013】
より高い濃度で酸化促進活性を示し得るアスコルビン酸などの一部の従来の酸化防止剤とは異なり、オレガノ抽出物は、高濃度でもその抗酸化能力を保持する。さらに、PUFA EEは、長期にわたりオレガノ油を安定化させて、これまで観察されてきたろう質沈殿を防止すると考えられている。
【0014】
[PUFA]
本発明で使用可能なPUFAは同様に、エステルなどのPUFA誘導体も含んでいる。その他の誘導体は、パルミチン酸エステルまたはその他の食用エステルを含む。1つの特に好ましいPUFA誘導体は、PUFAエチルエステル(PUFA EE)である。同様に本発明に含まれているのは、PUFAトリグリセリド(好ましくは最低25%のPUFA、より好ましくは30%のPUFA、特にEPAを富有するものである。
【0015】
本発明において好んで使用されるPUFAは、オレガノ抽出物が植物抽出物である場合PUFAがメンハーデン油由来ではないことを条件として、あらゆる供給源由来のものであってよい。これには魚油、例えばマグロ油、サケ油、イカ油、オキアミ油(具体的にはメンハーデン油、スミツキニシン属(Brevoortia sp)およびエトミディウム属(Ethmidium sp)を除く)が含まれていてよいが、長鎖n−3脂肪酸のその他の供給源例えば、植物、細菌、真菌(特に酵母)または藻類などの天然に生産されたものまたは遺伝子組み換え有機体を通して生産されたものなども含まれる可能性がある。
【0016】
好ましい実施形態において、本発明のPUFAは大量の、すなわち少なくとも30%そして好ましくはそれ以上のエイコサペンタノン酸またはそのエチルエステル、ドコサヘキサエン酸またはそのエチルエステルおよびその混合物を含む。例えばDSM Nutritional Products Ltd.,Basel SwitzerlandによりROPUFA75という商標で販売されている混合物など、このようなPUFA EEは市販されている。市販のPUFAは、多くの場合、酸化防止剤として存在する少量のローズマリー抽出物を少量含む。本発明によると、本発明の植物抽出物をPUFA中に存在する少量のローズマリー抽出物と組合せることには全く不利な効果がないことが見出されている。
【0017】
[植物抽出物およびその揮発性構成要素]
本発明で使用される植物抽出物は、任意の植物抽出物であってよいが、好ましいものとしては、オレガノ、タイム、リッピア、レモンバーム、カモミール、ホップ、バレリアン、オリーブ、マジョラム、セージ、月桂樹、ブラッククミン、カワカワ、ブラックペッパー、フェンネル、シナモン、朝鮮人参およびショウガおよびそれらの混合物が含まれる。
【0018】
本明細書中で使用される「抽出物」とは、植物由来の材料の広いカテゴリを包含するように意図されている。例えば、抽出物は、食用に適したあらゆるタイプの抽出物例えば水性抽出物、蒸気抽出物、植物油、食品中に許容されている有機溶媒抽出物(特にエタノール抽出物、プロピレングリコール抽出物、酢酸エチル抽出物そして超臨界流体二酸化炭素(SFCO)などであってよい。「抽出物」は同様に、植物活性成分の蒸留液、濃縮物およびその他の混合物をも含んでいる。
【0019】
本発明の好ましい植物抽出物はオレガノ抽出物である。オレガノ種は、その化学的構造が極めて多様であるものとして公知である。例えば、23の地域に成育するO.ブルガレ種ヒルツム(O.vulgare ssp.hirtum)中の精油の多様性について記述するVokou et al 1993 Biochemical Systematics and Ecology 21(2):287−295を参照されたい。本発明において、抽出物の植物供給源は、この大きな多様性に起因して抽出物の化学的含有率ほど重要ではない。したがって、オレガノ抽出物は、以下に詳述する通り有効であるのに充分なレベルでその他の揮発性物質と共にカルバコールおよびチモキノンを含むかぎりにおいて、オリガナム(Origanum)属に属するあらゆる植物(全植物体またはその一部分)からのあらゆる由来のものであってよい。
【0020】
本発明において使用するために好ましいオリガナム(Origanum)属由来の植物の例としては、O.ブルガレ(O.vulgare)およびその亜種および/またはO.ミヌチフロラム(O.minutiflorum)がある。使用してよいその他の種としては、O.マジョラナ(O.majorana)、O.ディクタマス(O.dictamus)、O.クレティカム(O.creticum)、O.x マジョリカム(O.x majoricum)、O.アウレウム(O.aureum)、O.コンパクツス(O.compactus)、O.シリアカ(O.syriaca)、O.チトハンツム(O.tytthantum)、ヘラクレオティカム(O.heracleoticum)、O.スミルナエウム(O.smyrnaeum)、O.ビレンス(O.virens)およびO.ヒルツム(O.hirtum)がある。
【0021】
好ましいのは、その揮発性構成要素のうちの少なくとも1つを高い割合で含む抽出物である。より好ましいのは、抽出物の合計重量に基づいて、上述の通りの揮発性構成要素を合計で少なくとも65重量%含むオレガノ抽出物である。完全に天然の抽出物は、その少なくとも1つの具体的揮発性構成要素で強化されてよい。
【0022】
本発明に関連して好ましいオレガノ抽出物は、次の特徴を有するものである:
その重量に基づいて、
・ オレガノ抽出物が少なくとも30重量%のカルバクロールを含む、
・ オレガノ抽出物が少なくとも50重量%のカルバクロールを含む、そして
・ より好ましくは、オレガノ抽出物が少なくとも55重量%のカルバクロールを含む。
【0023】
同様に好ましいのは、0〜30重量%の範囲内の量でチモキノンを含むオレガノ抽出物であって、ここでその重量に基づいて、
・ 好ましくは、オレガノ抽出物は少なくとも1重量%のチモキノンを含み、
・ より好ましくは、オレガノ抽出物は少なくとも2重量%のチモキノンを含み、
・ より好ましくは、オレガノ抽出物は少なくとも4重量%のチモキノンを含み、
・ 最も好ましくは、オレガノ抽出物は4〜30重量%の範囲内のチモキノンを含む。
【0024】
その他の好ましいオレガノ抽出物は、オレガノ抽出物の重量に基づいて、
・ 少なくとも50重量%のカルバクロールおよび0〜25重量%のチモキノンを含む;
・ 好ましくは、少なくとも50重量%のカルバクロールおよび少なくとも1重量%のチモキノンを含む;
・ より好ましくは、少なくとも55重量%のカルバクロールおよび少なくとも2重量%のチモキノンを含む;または
・ 少なくとも55重量%のカルバクロールおよび少なくとも4重量%のチモキノンを含むものである。
【0025】
好ましいオレガノ抽出物は、SFCOを用いた抽出により得られる。このような抽出物は、いかなる有機溶媒残渣も、タンパク質も、重金属も一切含まないはずであるという利点を有する。望ましい場合、超臨界二酸化炭素を用いた抽出には、ろうを低減し、揮発性物質を選択的に富化するための第2の超臨界流体CO−抽出ステップが後続してよい。
【0026】
オレガノ抽出物またはその揮発性構成要素は、天然由来または合成または混合(すなわち部分的に天然、部分的に合成)由来であり得る。すなわち、活性構成要素は、植物の抽出および分別により得ることができるか、または、化学的に合成可能であり、所望の場合には、植物抽出物と任意の所望の数量で混合可能である。これらは、例えば、10%(w/w)以下といった低い濃度でまたは最高ほぼ100%(w/w)の濃度でそれらを含む溶液などとして、任意の所望の純度および濃度で調製され使用され得る。
【0027】
[PUFA]
本発明のPUFAは、好ましくは、高濃度のn−3多価不飽和脂肪酸誘導体を含む。好ましくはこれらはエステルの形をとり、好ましくはエイコサペンタエン酸エチルエステル(EPA EE)およびドコサヘキサエン酸エチルエステル(DHA EE)の形をとる。好ましい実施形態においては、PUFAは、調製物中に少なくとも約60重量%の濃度、より好ましくは少なくとも約70重量%の濃度、そして最も好ましくは少なくとも約75重量%の量で存在する。PUFA調製物は、必要に応じてさらなる担体油を含んでいてよい。
【0028】
PUFA EE組成物は、酸化に対して極めて脆弱であり、多くの場合、トコフェロール、クエン酸、ローズマリー抽出物などの酸化防止剤で処理された状態で供給される。これらの構成要素は、本発明の混合物中にも存在するかもしれない。オレガノ抽出物がもつPUFAそして特にEPAを安定化させる能力は、これらのその他の酸化防止剤の存在下または不在下とは無関係に観察される。
【0029】
意外なことに、オレガノ抽出物が特異的にEPA EEを安定化できることが見出された。このことは、PUFAがもたらす健康上のメリットの多くがEPA(またはその誘導体、EPA EE)に由来することから、有意である。したがって、本発明の好ましい実施形態において、EPAまたはEPA EEなどの誘導体は、DHA(またはDHA EE)などのその他のPUFAに比べ、PUFA混合物において高い百分率を構成している。
【0030】
[組合せ]
本発明の好ましい実施形態において、オレガノ抽出物およびPUFA EEは8:92〜92:8の比率(重量%)で存在する。より好ましい実施形態においては、オレガノの比率は、混合物の少なくとも8%、好ましくは少なくとも約25%であり、少なくとも約50%であってよい。これらの比率は、本発明の2つの態様を提供する。すなわち、酸化促進効果が全く観察されることなく安定性が得られること、そして第2に、PUFA EEとオレガノ抽出物の両方が、この混合物を摂取する人に対して共に生物活性効果を及ぼすのに充分な高い濃度で存在することである。
【0031】
一部の酸化防止剤例えばビタミンEは、それらが大量に存在する場合に酸化促進剤となり得る。例えばSetiadi et al 2003 Theochem 620(2−3):93−106を参照されたい。
【0032】
本発明の組成物は、好ましくはカプセルの形をしている。カプセルは、ソフトゲルカプセルまたは密閉ハードシェルカプセルであってよい。カプセルはPUFA EE/オレガノ抽出物組合せを収容することができる。カプセル自体は任意の従来の方法により作られてよく、通常は、例えば(魚、豚、家禽、牛の)ゼラチンのマトリクス、セルロース原料(例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース)をベースとする植物マトリクスまたはデンプンまたはデンプン由来材料を含む。
【0033】
PUFA EE/オレガノ抽出物に加えて、本発明に係るカプセルはさらに、あらゆる由来のゼラチン、植物性ガム、リグニンスルホン酸塩、タルク、糖類、デンプン、アラビアガム、植物油、ポリアルキレングリコール、着香剤、保存料、安定化剤、乳化剤、緩衝液、潤滑剤、着色剤、湿潤剤、充填剤などを含む(ただしこれらに限定されない)従来の医薬/栄養補給添加剤およびアジュバント、賦形剤または希釈剤を含んでいてよい。一般に、カプセルは、充填体積をカプセルサイズに調整するための油を含有するものとし、PUFA EEがかなり低い粘度を有する傾向にあることから粘度を増大させるための賦形剤を含んでいてよい。増粘剤が存在する場合、それは、公知の増粘剤、例えば蜜ろう、鉱ろう、植物ベースのろう、コロイドシリカまたはレシチンのいずれから選択されていてもよい。
【0034】
典型的には、オレガノ抽出物をヒトに投与するための有益な日用量は、約10mg〜300mgである。これは単回用量で摂取されてよく、またはオレガノ抽出物の薬物動態に起因して部分投薬量を一日に数回摂取することが望ましい場合もある。一日2回カプセルを摂取する人の場合、投薬毎に送出されるオレガノの合計量は、約5mg〜約200mgの範囲とすべきである。一日あたり合計6個のカプセル(一日2回、3個のカプセル)を摂取しなければならないとすると、各カプセルはおよそ1.5〜50mgのオレガノを含むはずである。これに基づいて、当業者であれば同様にして一日4個、2個または単一のカプセルを摂取するための適切な量を決定することができる。好ましくは、用量は、30、60、120または180mg、すなわち、投薬量の約3.5重量%、7重量%、13重量%または19重量%である。
【0035】
PUFAについては、一日に少なくとも約1000〜6000mgの合計摂取量でトリグリセリド(非カプセル食事源を含む)を得ようとした場合、カプセル1個あたりの量は約50〜1000mgの範囲内にあるはずである。高n−3PUFA EE調合物については、同量(すなわち、天然に発生するよりも高い濃度のトリグリセリドを有する)、量を相応して下向きに調整してよく、カプセルのサイズ/量を低減することができる。濃縮調合物の付加的な利点は、それらがより容易に消化され、魚臭いあと味が少ないという点にある。
【0036】
本発明の1つの好ましいカプセルは、約60mgのオレガノ抽出物と約750mgのPUFA EEの混合物を含む。この混合物は、合計カプセル含有量の約50〜60重量%を構成する。残りの約50〜40%には、グリセロール、二酸化ケイ素レシチンまたはろうなどの1つ以上の粘度調整剤を含む、その他の賦形剤および充填剤が含まれる。
【0037】
[実施例]
[実施例1]
[材料の調製]
[オレガノ抽出物]
オリガナム・ブルガレ(Origanum vulgare)またはO.ミヌチフロラム(O.minutiflorum)の乾燥した葉および花を、天然二酸化炭素を用いた超臨界流体抽出により抽出した。抽出物は、Flavex Naturextrakte GmbHから得た。
【0038】
抽出物は、特徴的な臭いを伴う暗赤褐色の液体である。使用された抽出物(RV0141−73)を、100%ピーク面積方法を用いてGC/MSシステムを伴うFlavexにより分析したところ、85.3%の精油を含んでいる。
【0039】
主要構成要素は、79.9%ピーク面積のフェノールカルバクロールおよび6.44%のピーク面積のチモキノンであった。存在するその他の化合物は、2.4%ピーク面積のシメン、2.8%ピーク面積のリナロール、2.3%ピーク面積のボルネオール、1.9%ピーク面積のカリオフィレンそして少量のリモネン、4−テルピネオールおよびチモールである。
【0040】
ROPUFA「75」n−3 EE油(UT07050003)は、黄味がかった油性液体であり、DSM Nutritional Products GmbHにより生産されている。それは、エチルエステルの形のn−3多価不飽和脂肪酸(PUFA)を、大部分はエイコサペンタエン酸(EPA EE)およびドコサヘキサエン酸(DHA EE)として少なくとも75%含む。それは、パルミチン酸アスコルビル、トコフェロール、クエン酸で処理され安定化され、ローズマリー抽出物(約1000ppm)を含む。
【0041】
[実施例2]
[酸化安定性]
酸化に対する脂質溶液試料の相対的安定性を、Oxipres装置を用いた加速酸化試験において測定した。初期条件を70℃および5〜6バールにセットした。ML OXIPRES(商標)(Mikrolab Aarhus A/S、Denmark)装置は、加圧下の酸素を用いた酸化に基づく改良ボンベ方法である。Gearhart 1957 J.Amer.Oil Chem.Soc 34:427およびStuckey et al J.Amer.Oil Chem.Soc.35:581およびBlankenship et al 1973 J.Amer.Oil Chem. Soc.50:377−318を参照されたい。試験は高圧で行なわれた場合に加速される。酸素消費量は、実験中のボンベ内の圧力降下により決定される。
【0042】
最初の実験は、ブランク、異なる濃度(0%、8%、25%および100%)でオレガノ抽出物と混合されたROPUFA「75」n−3 EE油という5種類の溶液試料を用いて実施した。この実験中、具体的な定量分析は一切実施しなかった。
【0043】
第2の実験は、異なる濃度(0%、4%、8%、25%、50%および100%)でオレガノ抽出物と混合したROPUFA「75」n−3 EE油という6種類の溶液試料を用いて、実施した。この実験については、各試料についてT0およびTfinalでさらなる定量および定性分析、すなわち、チモキノン、カルバクロール、パルミチン酸アスコルビル、トコフェロール(α−、γ−およびδ−)およびPUFA(メチルエステルとして)の定量化をT0およびTfinalで実施した。
【0044】
[結果]
図1は、純粋なROPUFA「75」n−3 EE油(オレガノ抽出物0%)の酸化が、異なるオレガノ抽出物濃度(8%および25%)で混合溶液試料を用いた場合よりも急速であることを示している。約65時間後、オレガノ抽出物の酸化阻害能力は、オレガノ濃度の上昇に伴い有意に増大する。純粋オレガノ抽出物(100%)についての曲線は、ブランク試料に比べて有意に減少せず、こうして純粋オレガノ抽出物が安定していること実証している。
【0045】
第1の実施形態にしたがって、図2は、純粋なROPUFA「75」n−3 EE油(オレガノ抽出物0%)の酸化が、異なるオレガノ抽出物濃度(4%、8%、25%および50%)の混合溶液試料の場合よりも急速であることを示している。約70時間後、オレガノ抽出物の酸化阻害能力は、オレガノ抽出物の濃度上昇に伴って有意に増大した。純粋オレガノ抽出物(100%)の曲線は、有意に減少せず、純粋オレガノ抽出物が安定していることを表している。
【0046】
[実施例3]
[PUFA分析]
EPA、DHAおよびDPAの同定を、真正基準標準(authentic reference standard)と保持時間を比較することによって行なった。トリコサノン酸メチルエステルを用いた内部標準較正を適用することにより定量化を実施した。
【0047】
以下の表1では、Oxipres実験前後の溶液試料の結果が示されている。oxipres実験の前に分析された各溶液試料についてのEPA EE、DHA EE、DPA EEおよび合計PUFAの決定濃度(Cinitial)を基準値として使用して、Oxipres実験後のPUFA化合物の安定性を評価する。Oxipres実験後の結果(Cfinal)から、保持されたPUFA(精度%=Cfinal/Cinitial*100として表されたもの)対基準値の百分率を各溶液試料について計算して、PUFAの安定性を観察する。
【0048】
【表1】



【0049】
上の表において、「EPA」はEPA EEを意味し、「DHA」はDHA EEを意味し、「DPA」はDPA EEを意味する。
【0050】
オレガノ抽出物は、合計PUFAの酸化を遅延される上での有意な能力を実証した。純粋なROPUFA「75」n−3 EE油溶液試料においては、合計PUFAは初期濃度の43.5%まで減少した。オレガノ抽出物の酸化阻害能力は、異なる溶液試料中のオレガノ抽出物濃度の増加(4%、8%、25%および50%)に伴って、初期値のそれぞれ45.8%、51.1%、51.4%および52.9%まで合計PUFAの安定性を有意に増大させた。
【0051】
純粋「75」n−3 EE油中の保持されたEPA EE、DHA EEおよびDPA EEは、それぞれ初期濃度の41.6%、41.4%および65.6%まで減少した。EPA EE(329mg/g)は、ROPUFA「75」n−3 EE油の主要な構成要素である。EPA EEは、異なる溶液試料中におけるオレガノ抽出物濃度の増加(4%、8%、25%および50%)に伴ってそれぞれ初期値の46.7%、53.5%、53.4%および55.2%までのより高い安定性増加を有している。
【0052】
DHA EE(210mg/g)は、ROPUFA「75」n−3 EE油の第2の主要な構成要素である。DHA EEは、異なる溶液試料中におけるオレガノ抽出物濃度の増加(4%、8%、25%および50%)に伴って、それぞれ初期値の43.6%、47.1%、47.8%および49.0%までの高い安定性増加を有する。
【0053】
DPA EE(47.7mg/g)はROPUFA「75」n−3 EE油の少ない方の構成要素の1つである。DPA EEもまた、異なる溶液試料中におけるオレガノ抽出物濃度の増加(4%、8%、25%および50%)に伴って、それぞれ初期値の43.6%、47.1%、47.8%および49.0%までのオレガノ抽出物の酸化阻害能力の増加を示す。
【0054】
[実施例4]
[ソフトゲルキャップ]
サイズ16(体積=0.985)の細長いソフトゼラチンカプセルを、一般に公知の技術にしたがって調製し、これは以下の組成を含む:
【0055】
【表2】



【0056】
上述のものと類似のカプセルを、30、60または120mgのオレガノ抽出物を用いて作ることができる。好ましくはこれらのカプセルは、一日に1回または2回摂取される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物抽出物および多価不飽和脂肪酸(PUFA)またはPUFAの誘導体を含む安定した組成物であって、前記植物抽出物が少なくとも8重量%の量で存在するが、但しPUFAがメンハーデン油である場合、植物抽出物はオレガノではないことが条件となる、組成物。
【請求項2】
前記植物抽出物がオレガノ抽出物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記PUFAがPUFAエチルエステルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記植物抽出物が、オレガノ、タイム、リッピア、レモンバーム、カモミール、ホップ、バレリアン、オリーブ、マジョラム、セージ、月桂樹、ブラッククミン、カワカワ、ブラックペッパー、フェンネル、シナモン、朝鮮人参、ショウガおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
オレガノ抽出物と多価不飽和脂肪酸エチルエステルの混和物(PUFA EE/オレガノ抽出物)を含む、組成物。
【請求項6】
前記オレガノ抽出物が、超臨界条件下で液体二酸化炭素を用いた抽出によりオリガヌム(Origanum)属の植物から得られる、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記PUFA EE/オレガノ抽出物が、オリガヌム・ブルガレ(Origanum vulgare)および/またはオリガヌム・ミヌチフロラム(Origanum minutiflorum)から得られる、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記オレガノ抽出物が、揮発性構成要素の少なくとも1つを高分量で含む、請求項5〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記揮発性構成要素がカルバクロール、チモール、チモキノンおよびチモキノールを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
カプセルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも約3.5%のオレガノ抽出物を含む、請求項10に記載のカプセル。
【請求項12】
請求項1に記載の組成物を含む食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−523856(P2011−523856A)
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512974(P2011−512974)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/057189
【国際公開番号】WO2009/150179
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】