説明

植物精油含有ハウスダスト処理剤

【課題】 有効成分が少量であり、かつ処理剤の使用量が少量であっても、ハウスダスト中のアレルゲンを有効に不活性化(低減化)させることのできるハウスダスト処理剤を提供すること。
【解決手段】 (a)クローブ精油、ジユ精油及びこれらの混合物からなる群から選ばれる植物精油と、(b)塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム及びこれらの混合物からなる群から選ばれるカチオン性界面活性剤とを含有するハウスダスト処理剤であって、(a)/(b)の比が重量比で2/1から1/9であることを特徴とする前記ハウスダスト処理剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウスダストによって起こるアレルギー、アトピー性疾患、喘息などの予防技術に関し、特に、ハウスダスト中に含まれるアレルゲンを不活性化(低減化)させるハウスダスト処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、気密化等の住宅環境変化によるハウスダストの増加が問題となっている。ハウスダストは1mm以下の微細塵としてアレルゲン物質を含み、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、喘息等のアレルギー性疾患の原因とされている。厚生労働省の「2003年保健福祉動向調査」では国民の3人に1人がアレルギー疾患のような症状があり、アレルギー性疾患対策への要望は高いものとなっている。ハウスダストにはヤケヒョウヒダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)、コナヒョウヒダニ(D.farinae)等のチリダニの糞や死骸の破片から由来するアレルゲン、クラドスポリウム(クロカビ)やアスペルギルス(コウジカビ)等のカビ由来のアレルゲン、ゴキブリ、チャタテムシ等の糞や死骸の破片から由来するアレルゲン、犬、猫のフケ、肛門の分泌物、唾液、尿に由来されるアレルゲン等、1μm〜100μm程度の特に微細なアレルゲン物質が含まれている。ハウスダストは、カーペット、寝具等の繊維物質に多く存在し、カーペット上の歩行や掃除、布団の上げ下ろし等の日常生活により、室内空気中に浮遊したり、落下する。フローリング等の床にも存在していることが明らかになっている。
ハウスダスト対策としては、日常の掃除機がけを頻繁に行い、さらに1平方メートル当り20秒以上の掃除機かけで丁寧にハウスダストを取り除く等、厚生労働省、東京都等から推奨されているが、家事等に負われている主婦にとっては面倒なものとなっている。
【0003】
これまでに、エタノール等の水との共沸温度が100℃未満の有機化合物と水とを含む液状成分中に、その溶液の乾燥後に固体を生成してアレルゲンを担持する固体源物質を含有する組成物、及び該組成物を対象物に噴霧又は塗布し、ハウスダスト中のアレルゲンを乾燥後の析出物に包含させることにより、掃除機等によって効率よく除去する方法が開示されているが(特許文献1〜4)、掃除前に噴霧するのが面倒くさい、噴霧した後乾くまで待っていなくてはならない等の不便さがある。
また、ハウスダスト中のアレルゲンを低減化及び不活化(不活性化)する方法及び抗アレルゲン剤等も提案されている。アレルゲン低減化剤としては、特許文献5にセスキテルペンアルコール、特許文献6に硫酸アルミニウム、特許文献7に芳香族ヒドロキシ化合物等が開示されている。アレルゲン不活化剤としては、特許文献8及び9にモクセイ科オリーブ属またはイボダノキ属の植物及びザクロの葉の抽出物が夫々開示されている。特許文献10にPVA、水膨潤性粘土鉱物、植物抽出物、特許文献11にアンモニウム又はアミン基を有する高分子、特許文献12〜15にカルシウム塩、ストロンチウム塩、希土類金属塩、アルミニウム塩、ジルコニウム塩が開示されている。抗アレルゲン剤として特許文献16にタンニン酸が開示されている。しかしながら、アレルゲンの低減化又は不活化(不活性化)するには効果が不充分であり、多くの有効成分量を必要とするので、被洗物の変色や風合いの劣化等に問題を生じ好ましくない。
【0004】
【特許文献1】特開2003−336100号公報
【特許文献2】特開2003−336099号公報
【特許文献3】特開2003−334504号公報
【特許文献4】特開2003−334237号公報
【特許文献5】特開2003−238394号公報
【特許文献6】特開2003−334240号公報
【特許文献7】特開2003−81727号公報
【特許文献8】特開2003−55122号公報
【特許文献9】特開2003−370996号公報
【特許文献10】特開2002−128680号公報
【特許文献11】特開2001−354573号公報
【特許文献12】特開2001−328936号公報
【特許文献13】特開2001−322937号公報
【特許文献14】特開2001−247467号公報
【特許文献15】特開2001−139479号公報
【特許文献16】特開昭61−44821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑み、これを解決しようとするものであり、有効成分が少量であり、かつ処理剤の使用量が少量であっても、ハウスダスト中のアレルゲンを有効に不活性化(低減化)させることのできるハウスダスト処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の植物精油とカチオン性界面活性剤を組みあわせることによりハウスダスト中のアレルゲンを相乗効果的に不活性化することを見出すと共に、ハウスダストに含まれるダニ、花粉、カビ、ペット等から由来するアレルゲン全てに著しい効果を発揮されることを見出すことにより、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は(a)クローブ精油、ジユ精油及びこれらの混合物からなる群から選ばれる植物精油と、(b)塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウムから及びこれらの混合物からなる群から選ばれるカチオン性界面活性剤とを含有するハウスダスト処理剤であって、(a)/(b)の比が重量比で2/1から1/9であることを特徴とする前記ハウスダスト処理剤を提供する。
本発明はまた、上記ハウスダスト処理剤を、物品の表面に存在するハウスダスト及び/又は空気中に舞っているハウスダストに適用して該ハウスダスト中に含まれるアレルゲンを不活性化させる工程を含む、ハウスダスト処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、有効成分量が少量であり、且つ処理剤の使用量が少量であっても、ハウスダスト中に存在するアレルゲンを有効かつ手軽に不活性化することができる。本発明によればまた、本発明のハウスダスト処理剤を適用した物品の変色や風合いを損なうことが少なく、物品表面上の残存感が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(a)植物精油
本発明において使用できる植物精油は、クローブ精油、ジユ精油及びこれらの混合物からなる群から選ばれるものである。
クローブ精油は、フトモモ科常緑樹のつぼみ、葉、茎等から、通常水蒸気蒸留法により採油される精油である。オイゲノールを主成分とし、その酢酸エステル、カリオフィレン、バニリン等を含有し、香辛料の他、医薬品、タバコ香料、香粧品香料等の用途が知られている。クローブ精油としては、商業的に入手可能なものを使用することができる。例えば、ABSOLUTE CLOVE BUDSの商品名でCHARABOTから市販されているものを使用することができる。
ジユ精油は、バラ科ワレモコウの根、根茎から、通常水蒸気蒸留法により抽出される精油である。タンニン及びトリテルペノイド系サポニンを主成分とする。収斂作用、チロシナーゼ活性阻害作用、殺菌・抗菌作用、抗炎症(抗プラスミン)作用、SOD様作用等を有することが知られており、化粧品素材として汎用されている。ジユ精油としては、商業的に入手可能なものを使用することができる。例えば、ジユ精油-Rの商品名で丸善製薬(株)から市販されているものを使用することができる。
特に、ジユ精油はダニ、花粉に対するアレルゲン不活化(低減化)効果は高く、クローブ精油はカビに対するアレルゲン不活化(低減化)効果が高いので好ましい。
混合物として使用する場合、クローブ精油とジユ精油とは、質量比にして、8/2〜2/8で混合するのが好ましく、6/4〜4/6で混合するのがより好ましい。このような比で混合すると、ダニ、花粉、カビに対してのアレルゲン不活性化(低減化)がより好ましい結果となる。しかし、混合精油の芳香という観点から見ると、特に配合量が多い場合、単独で用いたほうがよい。
本発明のハウスダスト処理剤の全質量を基準として、植物精油は、0.005%以上の量で含まれるのが好ましく、より好ましくは0.05%以上であって、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下の量で含まれるのが好ましい。このような量で特定の植物精油を含有することにより、ハウスダスト中に存在するアレルゲンを有効かつ手軽に不活性化(低減化)することができ、本発明のハウスダスト処理剤を適用した物品の変色や風合いを損なうことが少ないので好ましい。
【0009】
(b)カチオン性界面活性剤
本発明の処理剤は、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウムから及びこれらの混合物を必須成分として含有する。このうち、塩化ジデシルジメチルアンモニウムが好ましい。
本発明のハウスダスト処理剤の全質量を基準として、これらのカチオン界面活性剤は、0.005%以上の量で含まれるのが好ましく、より好ましくは0.05%以上であって、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下の量で含まれるのが好ましい。このような量で特定のカチオン界面活性剤を含有することにより、ハウスダスト中に存在するアレルゲンを有効かつ手軽に不活性化(低減化)することができ、本発明のハウスダスト処理剤を適用した物品の変色や風合いを損なうことが少ないので好ましい。
【0010】
(a)成分と(b)成分との配合比
本発明の処理剤は、(a)植物精油と(b)カチオン性界面活性剤とを、質量比にして、2/1〜1/9、好ましくは1/1〜1/3で含有する。このような割合で(a)成分と(b)成分とを含有すると、アレルゲンを不活性化(低減化)する効果が最も高くなるので好ましい。
【0011】
本発明のハウスダスト処理剤組成物には液安定性、被洗物への浸透性、スプレーの使用性等の点から任意成分として界面活性剤、溶剤、香料、pH調整剤、防腐剤等を配合することができる。
<界面活性剤>
界面活性剤の具体例としては(b)成分以外のカチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤が挙げられ、これらの1種または2種以上を混合して適宜使用することができる。
(1)(b)成分以外のカチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化ジデシルジメチルアンモニウムを除くジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等が挙げられる。これらカチオン性界面活性剤の対イオンとしての陰イオンは、ハロゲンイオン等が挙げられる。
(2)両性界面活性剤としては、ベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリン型両性界面活性剤、アミノ酸型両性界面活性剤等が挙げられる。
(3)非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルジメチルアミンオキシド、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類等が挙げられる。
【0012】
<溶剤>
溶剤としては特に限定されるものではないが、低級アルコールまたは下記一般式(I)で表されるグリコール化合物が好ましい。
RO{(C2H4O)m(C3H6O)n}H (I)
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基またはベンゼン環を示す。m及びnは各々0〜3の数字であって、両者が同時に0になることはなく、{ }内はm及びnが0より大きいときに、オキシエチレン基とオキシプロピレン基がランダム状及び/またはブロック状に結合しているポリオキシアルキレン鎖である。)
低級アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノールを含有できる。この中でも好ましくはエタノールが好適であり、エタノールは発酵、合成のエタノールが用いられる。また、変性アルコールを用いても良い。変性アルコールにはメタノール変性、ベンゾール変性、トリオール変性、メチルエチルケトン変性、安息香酸デナトニウム変性、香料変性等の一般変性アルコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、クロロホルム、炭酸ジエチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、ヘキサン、工業用エチルエーテル、ゲラニオール、8アセチル化ショ糖、フェニルエチルエーテル、ジエチルフタレート、ブルシン、リナリールアセテート、フレーバーH-No.4、フレーバーH-No.6、フレーバーH-No.9、フレーバーH-No.11、フレーバーH-No.1、フレーバーH-No.3、フレーバーH-No.10、フレーバーH-No.12、フレーバーH-No.13、フレーバーT-No.100、フレーバーT-No.101、フレーバーT-No.102、フレーバーT-No.103、フレーバーT-No.107、フレーバーS-No.201、ヘキサン、リナロール、アルキルベンゼンスルホン酸塩水溶液、酢酸ビニル単量体、ヘプタン、イソプロピルアルコール、ブタノール変性等の選択変性アルコール、アクリル酸エチル、ベンジルアセテート、メタノール/10%安息香酸デナトニウムアルコール溶液、フレーバーH-No.14、種酢及び水(酸量10%以上、アルコール分15%以下)、高酸度醸造酢(酸量10%以上)、フレーバーT-No.3、フレーバーT-No.4、フレーバーH-No.2、フレーバーT-No.104、フレーバーT-No.105、フレーバーT-No.106、メタノール/ホルマリン/ローダミンB、メチルエチルケトン/8アセチル化ショ糖/イソプロピルアルコール、パラオキシ安息香酸ブチル、白ラックまたは精製セラックまたはセラック等の特別変性アルコールが挙げられる。
【0013】
上記一般式(I)で表せられる化合物の具体例としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル等を挙げることができる。これらの溶剤は、単独で用いても、また2種以上併用して用いても良い。
【0014】
<香料>
香料成分としては特に限定されるものではないが、具体的には、脂肪族炭化水素、テルペン炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素類、脂肪族アルコール、テルペンアルコール、芳香族アルコール等のアルコール類、脂肪族エーテル、芳香族エーテル等のエーテル類、脂肪族オキサイド、テルペン類のオキサイド等のオキサイド類、脂肪族アルデヒド、テルペン系アルデヒド、水素化芳香族アルデヒド、チオアルデヒド、芳香族アルデヒド等のアルデヒド類、脂肪族ケトン、テルペンケトン、水素化芳香族ケトン、脂肪族環状ケトン、非ベンゼン系芳香族ケトン、芳香族ケトン等のケトン類、アセタール類、ケタール類、フェノール類、フェノールエーテル類、脂肪酸、テルペン系カルボン酸、水素化芳香族カルボン酸、芳香族カルボン酸等の酸類、酸アマイド類、脂肪族ラクトン、大環状ラクトン、テルペン系ラクトン、水素化芳香族ラクトン、芳香族ラクトン等のラクトン類、脂肪族エステル、フラン系カルボン酸エステル、脂肪族環状カルボン酸エステル、シクロヘキシルカルボン酸族エステル、テルペン系カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル等のエステル類、ニトロムスク類、ニトリル、アミン、ピリジン類、キノリン類、ピロール、インドール等の含窒素化合物等々の合成香料及び植物からの天然香料を挙げることができる。さらに、植物精油としてはペパーミント抽出液、チャ抽出液、甜茶抽出液、トウガラシチンキ、セイジエキス、サルビア抽出液、 オウバク抽出液、ワイルドタイム抽出液、ローズマリーエキス、ローズマリー油、ジュウヤク抽出液、サンザシ抽出液、シコンエキス、サンショウ抽出液、サボンソウ抽出液、クジン抽出液、ユズ抽出液、ヒキオコシエキス、エンメイソウ、ローヤルゼリー抽出液、レモン抽出液、レモン油、グレープフルーツ抽出液、グレープフルーツ油、ライム果汁、マジョラム抽出液、ユーカリ抽出液を挙げることができる。配合量は、これらの中の1種または2種以上の成分を組み合わせ、組成中に0〜0.3重量%が最適である。
【0015】
<液安定化剤>
液安定化剤として、pH調整剤を配合することできる。pH調整剤としては特に限定されるものではないが、アルカリ、酸等を適宜配合することができる。アルカリとしては、アルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属炭酸塩やアンモニア、アミン等水溶液で塩基性を示すものであれば特に限定されることはない。酸としては、有機酸や無機酸があげられ、有機酸としては例えば、ギ酸、酢酸等のモノカルボン酸類、シュウ酸、マロン酸、コハク酸等のジカルボン酸類、トリカルバリル酸、プロパン-1,1,2,3,テトラカルボン酸等のポリカルボン酸類、グルコール酸、酒石酸、クエン酸、オキサル酢酸、グルコン酸等のオキシまたはケトカルボン酸類、フタル酸等の芳香族カルボン酸類、エチレンジアミン、N−メチルエチレンジアミン等のアミン及びその誘導体、イミノジ酢酸、イミノジプロピオン酸、フェニルイミノジ酢酸、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、メルカプトエチルイミノジ酢酸等のイミノジ酢酸、ニトリロトリ酢酸、カルボキシエチルイミノジ酢酸等のニトリロ酢酸、N,N−エチレンジアミンジ酢酸等の誘導体類、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリメチレンテトラアミンヘキサ酢酸等のアミノポリ酢酸類、グルシン、アラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸類等、トリポリリン酸、フィチン酸、1,1ヒドロキシエタン1、2ジホスホン酸等のリン酸類が挙げられる。無機酸としては具体的には塩酸、硫酸、リン酸、炭酸、メタ珪酸などが挙げられる。最も好ましいpH調整剤としては、ポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、ジホスホン酸、窒素が2以上であるアミノカルボン酸のナトリウムまたはカリウムの塩から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0016】
<防腐剤等>
本発明に用いられる防腐剤としては限定されるものではないが、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸イソンブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル等の安息香酸系防腐剤類、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム等のソルビン酸系防腐剤類、デヒドロ酢酸類、プロピオン酸類、ジフェニル、オルトフェニルフェノール及びナトリウム等のジフェニル類、チアベンゾール、イマザリル等が挙げられる。
その他、紫外線吸収剤、着色剤、増粘剤等を配合することができる。尚、これらの任意成分に用いられる化合物は、通常に使用されるものであればどの様なものでも良く、特に限定されるものではない。
【0017】
増粘剤は鉱物性、植物性、海藻類等の天然高分子、ビニル系高分子が挙げられ、植物性増粘剤としてはキサンタンガム、セルロース系高分子等が挙げられ、海藻類増粘剤としてはアルギニン酸等が挙げられる。ビニル系高分子としては親水性基を有するビニル化合物が挙げられ、親水基を有するビニル化合物はイオン性基または非イオン性基を有するビニル化合物が挙げられる。イオン性基としてアニオン性基を有するビニル化合物はアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリロイルアミノ2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられ、カチオン性基を有するビニル化合物としてはメタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド、メタクリル酸アミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリル酸アミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。また、非イオン性を有するビニル化合物としてはアクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等の三級アミンを有する親水性ビニル化合物が挙げられる。
さらに、本発明のハウスダスト処理剤に、(a)植物精油と(b)カチオン性界面活性剤とに加え、ハウスダスト中のアレルゲンを不活性化する剤及び/又は除去する剤を配合してもよい。例えば、ヒドロキシ安息香酸、重合度が200〜30000のポリビニルアルコール、天然または合成スメクタイト粘土、ベントナイト、モンモリロナイト、パイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイトなどの水膨潤性粘土鉱物をあげることができる。
【0018】
本発明の処理剤の好ましい配合例としては、(a)クローブ、ジュ及びこれらの混合物からなる群から選ばれる植物精油:0.005〜1質量%、(b)塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム及びこれらの混合物からなる群から選ばれるカチオン界面活性剤:0.005〜1質量%とを含有し、(a)と(b)との質量比が(a)/(b)=2/1〜1/9であるものがあげられる。
本発明の処理剤は、各成分を攪拌混合することにより調製することができる。
本発明の処理剤は、物品の表面に存在するハウスダスト及び/又は空気中に舞っているハウスダストに適用することにより使用することができる。適用方法としては、噴霧、塗布等があげられる。噴霧する場合、本発明の処理剤を、トリガー型スプレー容器、ディスペンサー式スプレー容器または噴射剤と共に充填されるエアゾール容器、詰め替え可能な蓄圧式エアゾール容器などの噴射容器に充填し、室内の空中又は、カーペット、絨毯、フローリング、ビニル床等の床対象物、ソファ−、ぬいぐるみ等の繊維製品、布団、毛布等の寝具に直接噴霧することができる。また、その後布部材、紙部材、不織布などの拭き取り部材による拭き取る操作を行うことも可能である。また、シート状の不織布などに本発明の処理剤をあらかじめ含浸させ、ウェットティッシュの様な形状で使用することも可能である。
【0019】
本発明のハウスダスト処理剤はまた、不織布、織布や、衣料、カーペット、絨毯等の繊維製品に含浸、塗布又は吸着させることによりハウスダスト処理剤物品を製造することが出来る。このようなハウスダスト処理剤物品によっても、ハウスダスト中のアレルゲンを不活性化することが可能である。
【実施例】
【0020】
以下の表1に記載の成分を用い、各成分を所定量量りとり、攪拌混合することにより、実施例及び比較例のハウスダスト処理剤を調製した。なお、実施例及び比較例の組成物は全てpH=7に調整した。
このようにして調製したハウスダスト処理剤について、スギ花粉アレルゲン低減化率、ダニアレルゲン低減化率、実ダニアレルゲン低減化及びカビ胞子発育抑制効果を、以下に記載の方法に従って評価した。結果を表1に併記する。



【0021】
【表1】

【0022】
【表2】








【0023】
【表3】

【0024】
<試験方法>
スギ花粉アレルゲン(Cryj 1)及びダニアレルゲン(Der f II)の低減化効果については、ELISAサンドイッチ法を用いて測定した。また、実ダニアレルゲンに対する低減化効果については、実ダニアレルゲンとして家庭で使用したカーペット中のダニアレルゲンの低減化効果を測定した。
【0025】
スギ花粉アレルゲン低減化効果測定方法(ELISA)
サンドイッチELISA法を用いてCry j 1(スギ花粉アレルゲン)に対する低減化効果の測定を行なった。
(1)抗体の固相化:抗Cry j I モノクロナール抗体013(生化学工業(株))をPBS(pH7.4±0.05リン酸バッファー液(NaCl, Na2HPO4, KH2PO4をそれぞれ8g/L、1.15g/L、0.2g/Lとなるように蒸留水に溶解したもの))で2μg/mLの濃度に希釈し、マイクロプレート(住友ベークライト(株) ELISA用プレートHタイプ)の各ウエルに100μLずつ分注し、冷蔵庫中(約4℃)で16時間(1晩)静置した。
(2)洗浄:プレートをPBS200μLで3回洗浄した。
(3)ブロッキング:1%BSAを含むPBSを各ウエルに200μLずつ分注し、室温で2時間静置した。BSAは、SIGMA社製、ALBUMIN, BOVINEを使用した。
(4)洗浄:プレートをTween20(東京化成工業(株))を0.05質量%含むPBS(以下Tween - PBSとする)200μLで3回洗浄した。
(5)抗原-不活化剤反応:精製スギ花粉抗原Cry j I(生化学工業(株))をPBSで500ng/mLの濃度に希釈し、不活化剤が添加されたテストサンプル950μLと抗原50μLを混合し、1分間静置した。
(6)抗原-抗体反応:抗原-不活化剤混合液100μLをPBS900μLで希釈混合後、マイクロプレートの各ウエルに100μLずつ分注し、室温で2時間静置した。同時に検量線用抗原溶液(抗原をPBSで希釈したもの)、テストサンプルのスタンダードとして蒸留水をマイクロプレートの各ウエルに100μLずつ分注し、室温で2時間静置した。
(7)洗浄:プレートをT-PBSで3回洗浄した。
(8)標識抗体反応:ペルオキシダーゼ標識 抗Cry j 1モノクローナル抗体053(生化学工業(株))をPBSで至適濃度に希釈し、各ウエルに100μL分注 し室温で2時間静置した。
(9)洗浄:プレートをT-PBSで3回洗浄した。
(10)基質、発色反応:ペルオキシダーゼ用発色キットO(住友ベークライト(株))を用いて発色反応を行なう。基質液100容量に対し、発色剤20錠の割合で溶解し発色液とした。この発色液を各ウエルに100μLずつ分注し、光を遮った状態で室温で15分間反応させた。
(11)停止反応:発色キットの停止液100μLを分注した。
(12)吸光度測定:マイクロプレートリーダーで492nmにおける吸光度を測定した。
(13) Cry j I 濃度の算出:検量線の吸光度から得られる値を用いてテストサンプル及びスタンダードのCry j 1 濃度(それぞれT、Sとする)を算出した。
(14) アレルゲン低減化率の算出:不活化剤が添加されたテストサンプルのアレルゲン低減化率Rは下記の式で表わされる。
R = (1―T/S)×100 (%)
各サンプルについて上記試験を3回行ない、アレルゲン低減化率の平均値を該テストサンプルのアレルゲン低減化率とした。
【0026】
ダニアレルゲン低減化効果測定方法(ELISA)
サンドイッチELISA法を用いてDer f II(コナヒョウヒダニ虫体に含まれるアレルゲン)に対する低減化効果の測定を行なった。
(1)抗体の固相化:抗Der f IIモノクロナール抗体15E11(アサヒビール薬品(株))をPBS(pH7.4±0.05リン酸バッファー液(NaCl, Na2HPO4, KH2PO4をそれぞれ8g/L、1.15g/L、0.2g/Lとなるように蒸留水に溶解したもの)で2μg/mLの濃度に希釈し、マイクロプレート(住友ベークライト(株) ELISA用プレートHタイプ)の各ウエルに100μLずつ分注し、冷蔵庫中(約4℃)で16時間(1晩)静置した。
(2)洗浄:プレートをPBS200μLで3回洗浄した。
(3)ブロッキング:1%BSAを含むPBSを各ウエルに200μLずつ分注し、室温で2時間静置した。BSAは、SIGMA社製、ALBUMIN, BOVINEを使用した。
(4)洗浄:プレートをTween20(東京化成工業(株))を0.05質量%含むPBS(以下Tween PBSとする)200μLで3回洗浄した。
(5)抗原-不活化剤反応:精製ダニ抗原rDer f II(アサヒビール薬品(株))をPBSで500ng/mLの濃度に希釈し、不活化剤が添加されたテストサンプル950μLと抗原50μLを混合し、1分間静置した。
(6)抗原-抗体反応:抗原-不活化剤混合液100μLをPBS900μLで希釈混合後、マイクロプレートの各ウエルに100μLずつ分注し、室温で2時間静置した。同時に検量線用抗原溶液(抗原をPBSで希釈したもの)、テストサンプルのスタンダードとして蒸留水をマイクロプレートの各ウエルに100μLずつ分注し、室温で2時間静置した。
(7)洗浄:プレートをT-PBSで3回洗浄した。
(8)標識抗体反応:西洋ワサビペルオキシダーゼ標識 抗Der f IIモノクローナル抗体13A4PO(アサヒビール薬品(株))をPBSで至適濃度に希釈し、各ウエルに100μL分注し室温で2時間静置した。
(9)洗浄:プレートをT-PBSで3回洗浄した。
(10)基質、発色反応:ペルオキシダーゼ用発色キットO(住友ベークライト(株))を用いて発色反応を行なう。基質液100容量に対し、発色剤20錠の割合で溶解し発色液とした。この発色液を各ウエルに100μLずつ分注 し、光を遮った状態で室温で15分間反応させた。
(11)停止反応:発色キットの停止液100μLを分注した。
(12)吸光度測定:マイクロプレートリーダーで492nmにおける吸光度を測定した。
(13) Der f II濃度の算出:検量線の吸光度から得られる値を用いてテストサンプル及びスタンダードのDer f II濃度(それぞれT、Sとする)を算出した。
(14) アレルゲン低減化率の算出:不活化剤が添加されたテストサンプルのアレルゲン低減化率Rは下記の式で表わされる。
R = (1―T/S)×100 (%)
各サンプルについて上記試験を3回行ない、アレルゲン低減化率の平均値を該テストサンプルのアレルゲン低減化率とした。
【0027】
実ダニアレルゲン低減化効果測定方法(マイティーチェッカー)
5年間家庭で使用したカーペットを1m2の大きさに切り取りとり、屋内塵性ダニ簡易検査キット マイティーチェッカー(シントーファイン(株))を使用し、ダニアレルゲン低減化効果の測定を行なった。各サンプルについて試験は3回行ない、アレルゲン低減化率の平均値を該テストサンプルのアレルゲン低減化率とした。
<イニシャルのダニアレルゲン量の測定方法>
(1)ダストサンプラーに6メッシュと200メッシュのダストフィルター、及びマイティフェルト(全てシントファイン製)をとりつけ、掃除機にセットした。
(2)カーペットを250Wの掃除機で1分間吸引した。
(3)マイティフェルト上のダニアレルゲンを10mLのPBSで抽出した。
(4)マイティーチェッカーにて、ダニアレルゲン量を判定した。
<テストサンプル使用後のダニアレルゲン量の測定方法>
(1)カーペットに、テストサンプル60gをスプレーで均一に噴霧し室温で15分間放置した。
(2)ダストサンプラーに6メッシュと200メッシュのダストフィルター、及びマイティフェルト(全てシントファイン製)をとりつけ、掃除機にセットした。
(3)250Wの掃除機で1分間吸引した。
(4)マイティフェルト上のダニアレルゲンを10mLのPBSで抽出した。
(5)マイティーチェッカーにて、ダニアレルゲン量を判定した。
(マイティーチェッカーの判定基準)
1:ダニアレルゲンの汚染はない(全く発色していない、<1μg/m2
2:ややダニアレルゲンで汚染されている(うっすらと発色しているのがわかる、5μg/m2
3:ダニアレルゲンで汚染されている(ラインであることがはっきりとわかる、10μg/m2
4:非常に汚染されている(濃く、太いハッキリとしたライン、>35μg/m2
屋内塵性ダニ簡易検査キット マイティーチェッカー(シントーファイン(株))を使用し、実ダニアレルゲンの低減化効果の測定を行なった。
【0028】
カビ胞子発育抑制効果測定方法
(1)カビ胞子の初発数調製方法
1. 100mLの三角フラスコに0.85%の生理食塩水を100mL入れアルミホイルで覆い、オートクレーブで滅菌した(滅菌条件:121℃、20分、圧力103Kパスカル)。
2. 前培養を終了したシャーレー中のCladosporium cladosporioides(IFO6348)をブルーチップを使用して掻き取り、1.の三角フラスコの中に溶け方にかたよりが生じないように注意しながら入れる。
3. 2. の溶液(母液と呼ぶ)を振とう培養機を用い、150rpmで3分間振とうした。
4. 滅菌済の容器に 3. の母液と滅菌済の生理食塩水を容量比が1対9の割合となるよう混合した(以下カビ胞子分散溶液と呼ぶ)。
(2)カビ胞子の初発数測定方法
1. (1) 4. のカビ胞子分散溶液を滅菌済みシリンジを用いて10mL採り、0.45μmの濾紙(日本ミリポア(株)製)を用いて濾過した。濾紙を5mLの生理食塩水で洗浄し、滅菌済みシャーレーに回収した。
2. カビ胞子分散溶液を生理食塩水で10倍希釈し、そのうち10mLを滅菌済みシリンジを用いて採り、以降は 1.と同様の操作を行なった。
3. 2. のカビ胞子分散溶液を生理食塩水でさらに10倍希釈し、そのうち10mLを滅菌済みシリンジを用いて採り、以降は1. と同様の操作を行なった。
4. この操作をあと3回繰り返した。
5. 2. から4. までのシャーレーを25℃4日間培養し、カビ胞子の初発数をカウントした。
(3)テストサンプルのカビ胞子数測定方法
1. (1)4.のカビ胞子分散溶液を滅菌済みシリンジを用いて10mL採り、濾紙を用いて濾過した。5mLの生理食塩水で濾紙を洗浄し、濾紙を滅菌済みシャーレーに回収した。
2. 1. の濾紙にテストサンプル200μLを均一に滴下し、1時間室温で放置した。
3. 2. の濾紙を5mLの生理食塩水で洗浄し、滅菌済みシャーレーに回収した。
4. 25℃4日間培養し、カビ胞子数をカウントした。
(4)カビ胞子の発育抑制効果の算出:カビ胞子の発育抑制効果Cは、カビ胞子の初発数iに対し、テストサンプルを滴下した場合のカビ胞子数Sのlog値の差で表示される。
C = logi - logS
各サンプルについて上記試験を3回行ない、カビ胞子の発育抑制効果の平均値を該テストサンプルのカビ胞子の発育抑制率とした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)クローブ精油、ジユ精油及びこれらの混合物からなる群から選ばれる植物精油と、(b)塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム及びこれらの混合物からなる群から選ばれるカチオン性界面活性剤とを含有するハウスダスト処理剤であって、(a)/(b)の比が重量比で2/1から1/9であることを特徴とする前記ハウスダスト処理剤。
【請求項2】
請求項1記載のハウスダスト処理剤を、物品の表面に存在するハウスダスト及び/又は空気中に舞っているハウスダストに適用して該ハウスダスト中に含まれるアレルゲンを不活性化させる工程を含む、ハウスダスト処理方法。

【公開番号】特開2006−151895(P2006−151895A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−346530(P2004−346530)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】