説明

植物系複合吸水性ポリマー及びその製造方法

【課題】高い吸水性能を有し、かつ経済面、省資源、生産性の面で優れた植物系複合吸水性ポリマー及びその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】植物系複合吸水性ポリマー及びその製造方法において、植物系複合物質と多塩基酸の酸無水物の反応を固相系で行ない、カルボン酸基を導入することを特徴とする植物系複合吸水性ポリマーの製造方法。高い吸水性能を有し、かつ経済面、省資源、生産性の面で優れた植物系複合吸水性ポリマーを製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物系複合物質を主成分とする吸水性ポリマー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性ポリマーは、自重の数十倍から数千倍もの水を吸収できる材料として、生理用品、紙おむつなどの衛生資材、医療用資材、生活用資材、農・園芸用資材、運搬用資材、土木建築資材、電気機器関連資材、水処理剤などの幅広い分野で使用されている。
【0003】
この吸水性ポリマーにおいて幅広く用いられているものとして、澱粉、セルロースなどをアクリルニトリルで共重合させたアクリル系の吸水性ポリマーがある。このような吸水性ポリマーとしては、例えば、架橋ポリアクリル酸部分中和物、澱粉−アクリロニトリル共重合体の部分加水分解物、澱粉−アクリル酸グラフト共重合体、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とアクリル酸の共重合架橋物、カチオン性モノマーの架橋重合体、架橋イソブチレン−無水マレイン酸共重合体の加水分解物などが知られている。
【0004】
ところが、ビニルモノマーを主原料とするこれらの吸水性ポリマーは、安価である半面、生分解性に欠き、原料の一部に澱粉を使用しているものでも、澱粉以外のビニルポリマー部分の生分解性は非常に乏しい。このため、使用後の吸水性ポリマーは、通常、埋め立て処理により廃棄されているが、埋められた吸水性ポリマーは半永久的に土壌中に残存するため、埋め立て後の地盤が安定しないという問題がある。また、崩壊して生成したビニルモノマーによる地下水汚染などの二次災害の可能性も指摘され、埋め立てに適した場所が減少していることも大きな問題となっている。
【0005】
このような要請に対応すべく、近年では、生分解性を有する吸水性ポリマーが開発されている。生分解性を有する吸水性ポリマーとして、例えばポリエチレンオキシド架橋体、ポリビニルアルコール架橋体、ガラクトマンナン架橋体、アルギン酸架橋体、カルボキシメチルセルロース架橋体、ポリアミノ酸架橋体、変性澱粉架橋体などが知られている。これらの中では、例えば、以下のものが開示されている。
(1)ポリグルタミン酸架橋体(特許文献1)。
(2)リグニン架橋体(特許文献2)。
(3)カルボキシメチル澱粉架橋体(特許文献3)。
(4)コハク酸澱粉架橋体(特許文献4)。
【0006】
一方、架橋体製造方法としてグラフト重合、放射重合などが知られているが、例えば、特許文献5においてアルカリ触媒下、金属塩と混和するポリグルタミン酸架橋体製造法が開示されている。また、「澱粉科学の辞典」(不破英次編、朝倉書店刊)に記載されているように、澱粉に親水基を導入した化工澱粉が広く製造されており、リン酸澱粉、カルボキシメチル澱粉、ヒドロキシアルキル澱粉、カチオン澱粉、澱粉オクテニルコハク酸エステル、コハク酸澱粉などが挙げられる。また、これらの化工澱粉を押出機によって製造する方法が、特許文献6、及び非特許文献1において開示されている。さらに、カルボキシメチル化した澱粉粕から吸水性材料を製造する方法が特許文献7において開示されている。
(4)ポリグルタミン酸架橋体(特許文献5)。
(5)カルボキシメチル澱粉架橋体(特許文献6)。
(6)カルボキシメチル化澱粉粕架橋体(特許文献7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3715414号公報
【特許文献2】特許第4015035号広報
【特許文献3】特開昭53−17679号公報
【特許文献4】特開平8−208703号公報
【特許文献5】特許第3945950号公報
【特許文献6】特表2004−501212号公報
【特許文献7】特表2004−501212号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】不破英次編、「澱粉科学の辞典」、朝倉書店、2003年、p.393−427
【非特許文献2】Tomasik P.、Wang Y. J.,、Jane J.、「Faailic Routeto Anionic Starches. Succinylation, Maleination and Phthalation of Corn Starch on Extrusion」、Starch /Starke、47、Wiley-VCH Verlagsgesellschaft、1995年、p.96−99
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1〜4に開示されているポリグルタミン酸架橋体、リグニン架橋体、カルボキシメチル澱粉架橋体やコハク酸澱粉架橋体の製造方法は、水中、あるいはアルコール−水混合溶媒中での懸濁、または均一系における反応であり中和や洗浄の目的で多量の溶媒を使用している。このため生成物と上記溶媒の分離や生成物の乾燥に多大なエネルギーが消費され経済面、省資源の観点から問題である。また、これらの製造法はバッチ方式のため連続生産には不適であり、生産性に劣る問題がある。
【0010】
これに対して、特許文献5に開示の食用吸水性ポリマーや、特許文献6や特許文献7に開示のマルボキシルメチル化澱粉を製造する方法においては、多量の溶媒の替わりに、水和反応や澱粉を糊化させるための少量の水を用いて架橋体を得ており、経済面、省資源の面で有利な製造方法である。また連続生産が可能であるため生産性に優れる。しかし、この製造法における生成物は粘度調整剤用の冷水溶性澱粉を目的としており、高い吸水特性を示す吸水性材料を得るための方法までを包含するものにはなっていない。
【0011】
一方、非特許文献1には、澱粉と少量の無水コハク酸、無水マレイン酸などの二塩基酸無水物を反応させ、コハク酸、及びマレイン酸エステル澱粉を得る方法を示しているが、生成物が高い吸水性を示すことに関しては述べられていない。しかしながら、吸水性ポリマー製造が食糧と競合する材料の使用は避けるべきである。
【0012】
そこで、本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高い吸水性能を有し、かつ経済面、省資源、生産性の面で優れた植物系複合吸水性ポリマー及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の吸水性ポリマーは、植物系複合物質が多塩基酸の酸無水物で架橋されていることを特徴とする。
【0014】
植物系複合物質は、植物を由来とする複合成分であって、例えば、ヤシ材粉砕チップ、油ヤシEFB、剪定枝、間伐材、木粉、おが屑、木材チップ、樹皮、紙パルプ、古紙等の木質系物質や、稲わら、バガス等の農産系物質、クラフトリグニンやリグニンスルフォン酸等の単離リグニン、木材セルロースやリンターセルロース等の単離セルロース、また糖類、穀類、澱粉などの植物系物質が含まれる。
【0015】
また、本発明は、植物系複合物質と多塩基酸の酸無水物を含む組成物を水溶液内で混合させる工程を含む。
【0016】
上記吸水性ポリマー中の多塩基酸の酸無水物は、例えば、無水マレイン酸などの二塩基酸無水物であることが好ましく、前記植物系複合物質の100重量部に対して6.2〜50重量部と、さらに触媒としてアルカリ金属の水酸化物を用い、かつアルカリ金属の水酸化物の仕込み量が前記植物系複合物質の100重量部に対して3.4〜28重量部の範囲で混合されていることを特徴とする。
【0017】
このように植物系複合物質と多塩基酸の酸無水物を含む組成物を水溶液内で混合させることにより、植物系複合物質と多塩基酸の酸無水物との架橋が開始され、植物系複合物質の重合体であるゲルが形成される。
【0018】
なお、植物系複合物質と多塩基酸の酸無水物を含む組成物とを水溶液内で混合させる場合には、植物系複合物質と多塩基酸の酸無水物を含む組成物の両者を水溶液として混合する場合、植物系複合物質は固体のままで多塩基酸の酸無水物を含む組成物の水溶液に混合させる場合、植物系複合物質の水溶液に多塩基酸の酸無水物を含む組成物を粉末のままで混合する場合、さらに、両者とも粉末のままで適当な水溶液中に添加し混合する場合が挙げられる。
【0019】
前記製造方法において、前記濾液のpHを3〜14に調整することができる。
【0020】
さらに、本発明は、押出機や混和機を用いて架橋させることにより吸水性ポリマーを製造することもできる。
【0021】
なお、本発明における「吸水性」という語は、単純に水分を吸収し得るものを意味し、一般の吸水性ポリマーのように数百〜数千倍もの水分を吸収し得るものに限られず、例えば、自重よりも数十倍程度の水分を吸収し得るものをも含まれる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、高い吸水性能を有し、かつ経済面、省資源、生産性の面で優れた植物系複合吸水性ポリマー及びその製造法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本実施形態の吸水性ポリマー及びその製造方法について説明する。
【0024】
本実施形態における吸水性ポリマーは、植物系複合物質を多塩基酸の酸無水物で架橋して構成されている。以下、これら各構成について詳細に説明する。
【0025】
本発明の植物系複合吸水性ポリマーの製造法で用いられる植物系複合物質は限定されるものではなく、部分的に澱粉やリグノセルロースを含有するものを用いることもできる。例えば、各種パーム材粉砕チップ、オイルパームEFB、剪定枝、間伐材、木粉、おが屑、木材チップ、樹皮、紙パルプ、古紙等の木質系物質や、稲わら、バガス、アルコール発酵残さなどの農産系物質、クラフトリグニンやリグニンスルフォン酸等の単離リグニン、木材セルロースやリンターセルロース等の単離セルロース、また糖類、穀類、スターチ等の植物系物質全般が用いられる。
また、各種澱粉作物から、各澱粉製造工程で採取・精製された澱粉を使うことが可能である。澱粉作物としては、例えば、甘藷、馬鈴薯、キャッサバ、タロイモ、ヤムイモ、タシロイモなどのイモ類、トウモロコシ、小麦、大麦、米、緑豆、葛、サゴヤシ、トゲサゴ、クジャクヤシ、フェニックスヤシ、片栗、蕨、オオウバユリ、ヒガンバナ、カラスウリ、キカラスウリ、トチノキ、コナラ、ミズナラ、アロールート、ガジュツ、食用カンナ、ソテツ、アビシニアバショウなどが挙げられ、単独または複数併用して使用することができる。
【0026】
ところで、澱粉粕とは、上記の各澱粉製造工程で採取可能な量の澱粉を採取した後の残渣であり、澱粉の他に、セルロース、ヘミセルロースなどの多糖類や、リグニン、タンパク質、脂肪などの成分を含有している。本発明では、各種澱粉作物の澱粉粕が制限なく使用できるが、吸水性材料の膨潤状態における耐熱性と吸水性能とのバランスが良好な点から、イモ類から得られる澱粉粕が好ましい。さらに好ましくは、安価で大量に入手しやすい点から、キャッサバから得られる澱粉粕である。なお、吸水性ポリマーの膨潤状態における耐熱性とは、高温でも保水力を備えていることを言う。
【0027】
このような澱粉粕のうち、乾燥質量換算で26〜90質量%の多糖類(澱粉)を含有する澱粉粕を植物系複合物質として使用することが好ましい。澱粉含有量が26質量%以上であると、優れた生分解性を有する吸水性ポリマーが得られる。一方、澱粉含有量が90質量%以下の澱粉粕を用いることで、得られる吸水性ポリマーの膨潤状態における耐熱性が良好となる。澱粉含有量のさらに好ましい範囲は、30〜85質量%であり、特に好ましくは35〜80質量%である。このような澱粉含有量の植物系複合物質を原料とすることにより、生分解性と膨潤状態における耐熱性とが良好な吸水性ポリマーが得られる。
ここで、植物系複合物質の澱粉含有量とは、酵素法によって測定された値である。酵素法とは財団法人日本食品分析センターで採用されている方法であり、詳細には試料のうち50%エタノールに不溶なものをグルコアミラーゼ処理(pH4.8、40℃、3時間)した後、これに含まれるブドウ糖の量を測定して0.9を乗じた値を指す。
【0028】
次に、このような植物系複合物質を原料として、吸水性ポリマーを製造する具体的方法について説明する。植物性複合材料は先立って適度に粉末にしておいたほうが望ましく、その際、ハンマーミルやワイリーミルなどの粉砕機を用いて10メッシュ程度に粉砕しておくことが望ましい。
本発明の植物性複合材料に用いる機械的磨砕手段は限定されるものではないが、例えば振動ボールミル、遊星型ボールミル、ロッドを用いた振動ミル、ロッドとボールを組み合わせた振動ミルなどが挙げられる。
【0029】
植物性複合物質の磨砕により、植物性複合材料の構造は、機械化学的に大きく分解される。機械化学とは、機械的エネルギーにより引き起こされる化学現象を指し、本発明の場合は磨砕という機械的エネルギーが加わることにより植物性複合材料を構成する澱粉やリグノセルロースなどの化学分解が促される。例えばリグノセルロース中のリグニンはラジカル生成により解重合され、その分子量を低下させ、溶解性の物質に変換される。
一方、セルロースは結晶構造を激しく損なうばかりでなく、そのグルコシド結合を失ってゆくことにより分子量を大きく減少してゆき、溶媒に溶解するようになる。
【0030】
本発明の製造方法においては、多塩基酸の酸無水物としては、例えば、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸、クエン酸、リンゴ酸などの酸無水物が挙げられる。これらの多塩基酸の酸無水物を植物系複合物質が有するヒドロキシル基とエステル化反応させることで、カルボキシル基を導入することができる。
これらの中では一つの分子内に複数のカルボキシル基を有する多塩基酸が分子内で環状構造を形成している化合物が、エステル化反応時に副生成物が発生しないため特に好ましい。このような多塩基酸の酸無水物の中では、入手のし易さから、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸などの二塩基酸無水物が好ましく、生分解性の点から特に無水コハク酸および無水マレイン酸が好ましい。
【0031】
一方、本発明の製造方法では、反応を促進する公知のエステル化触媒を特に制限なく使用することができ、例えば酸類、塩基類、ルイス酸類、アミン類などが挙げられる。これらの中では、使用した触媒が反応後の植物系複合吸水性材料において、カルボン酸基の対イオンになる点から、ナトリウムイオン、カリウムイオンなど一価の陽イオンであるアルカリ金属の水酸化物や炭酸塩、あるいはアミン類などの塩基性物質が好ましい。これらの中では、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムが価格や低毒性の面から好ましく、反応性の面から水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの、アルカリ金属の水酸化物が特に好ましい。
【0032】
可塑剤として水のみを使用する場合は、吸水性ポリマーの組成物と水の合計量に対して30〜80質量部、特に好ましくは45〜55質量部の水を使用することで本発明の反応を行なうことができる。水の添加量が30質量部未満であると、植物系複合物質の中に含まれる澱粉が可塑化せず、反応が充分に進行しない。また80質量部を超えると多塩基酸の酸無水物が水と反応する割合が大きくなり、高性能の吸水性ポリマーを得ることはできない。
【0033】
また、本発明の製造方法において、多塩基酸の酸無水物として、一つの分子内に複数のカルボキシル基を有する多塩基酸が分子内で環状構造を形成している化合物を用い、かつ反応触媒としてアルカリ金属の水酸化物を用いる場合には、反応時の副生成物としての塩類の発生が少量である。このため反応生成物の精製を行なわずにそのまま吸水性ポリマーとして用いた場合、塩類を多量に含むものに比べて吸水力の点で優れている。この理由は、多量の塩類の存在下では吸水性ポリマー中のカルボン酸基同士の電気的な反発力が減少し、結果として吸水力が低下する現象に基づいており、吸水性ポリマー中に含有される塩類量の少ない方が高い吸水性能を示すためである。
これに対して、モノクロロ酢酸ナトリウムによるカルボキシメチル化反応などのように、多量の塩類を副生する反応により得られる物質は、反応生成物中に塩類を多く含有し、吸水性能が低下するため、塩類を精製除去することが必要となる。
【0034】
また、本発明に製造法における反応時には、他の添加剤を加えることができる。この添加剤としては、潤滑剤、防腐剤、着色剤などであり、いずれも公知のものを特に制限なく使用することができる。
【0035】
また、本発明で用いられる吸水性ポリマーの製造方法では、植物系複合物質を架橋剤と触媒を十分混和する必要がある。そのため一般的な押出機なども特に制限なく使用することができる。単軸押出機、多軸押出機のいずれも使用可能であるが、好ましくはかみ込み性に優れる多軸押出機である。特に2軸押出機が好ましく、さらにその方式としては、押出物にせん断応力がかかりやすく、また輸送効率が高い点から、完全かみ合い型の同方向回転型が好ましい。
【0036】
植物系複合物質、多塩基酸の酸無水物、及び反応触媒の投入順序は、特に制限がなく、全ての原料を一括で投入する方法の他、途中に設けられた投入口から各原料を順次投入することもできる。
反応温度としては、25〜180℃であり、25℃より低いと充分に反応が進行せず、180℃を超えると植物系複合物質の劣化が著しい。特に好ましくは、80〜150℃の範囲であり、特に好ましくは80〜130℃の範囲である。
【0037】
生成物は、このままの状態で吸水性ポリマーとして用いることもできるが、使用の目的に応じて適した形状に加工しても良い。例えば、ペレタイザーによりペレット状にすること方法や、公知の粉砕機を用いてさらに小さく破砕することができる。
【0038】
上記方法によって反応した後には、必要に応じて未架橋成分を除去してもよい。未架橋成分とは、吸水性ポリマーの内部で架橋していない成分、及び未反応の多塩基酸の酸無水物、触媒、架橋剤であり、水に溶解する成分を指す。具体的な除去方法としては、架橋後の吸水性ポリマーを適当量の蒸留水中に浸漬し、充分に未架橋部分を溶解した後に、濾過して得られたゲル状部分を乾燥する方法などが使用できる。
【0039】
以上のように、本実施形態の吸水性ポリマーは、化粧品、汎用品、紙おむつなどの衛生用品,埋立地などに用いられる土木資材、農業園芸資材などの用途がある。
【0040】
加えて澱粉質成分、植物繊維質成分及び蛋白質成分は、いずれも生分解性、即ち、バクテリア、カビ、酵母などの微生物あるいは他の生物など、自然環境下で天然に存在する因子により化学的に破壊され得る高分子物質である。それゆえこれらを骨格成分として製造される本発明の成形体は、自然環境下で容易に分解されやすく、またその焼却に際しても、大きな燃焼エネルギーを発生して焼却設備に過大の負荷を与えることはない。
【実施例】
【0041】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
[実施例1]
ミキサーで粉砕した100グラムのキャッサバの澱粉製造工程で得られたキャッサバ澱粉粕(別称キャッサバパルプ、含水率9.6質量%、乾燥質量換算で澱粉68質量%含有)をメタノールに分散した後、45グラムの水酸化ナトリウムを含む水酸化ナトリウム水溶液100mlを添加して40℃で90分間加温した後、39.2グラムのモノクロロ酢酸を添加し、6時間放置した。76%メタノールに分散させ、酢酸で中和し、凍結乾燥することによりカルボキシルメチル化澱粉粕を得た。
これにエポキシ樹脂1,000mlを添加した後、50℃で1時間加温してカルボキシメチル化澱粉粕架橋体を得た。
【0042】
生成された架橋体の吸水率を測定するために、ゲルを大量の蒸留水中にて2日間静置した。その後、濾過により未反応物を除き、膨潤したゲルの重量(a)を測定した。次いで、このゲルを凍結乾燥した後、再び、その重量(b)を測定し、吸水率(a/b)を求めた。この結果を表1に示す。
【表1】

【0043】
[実施例2]
ミキサーで粉砕した1グラムのキャッサバの澱粉製造工程で得られたキャッサバ澱粉粕(別称キャッサバパルプ、含水率9.6質量%、乾燥質量換算で澱粉68質量%含有)に2Mの水酸化ナトリウム水溶液10mlを添加して混和した後、エポキシ樹脂1mlを添加して50℃で1時間加温した後、0.1Mリン酸水溶液100mlに浸漬して中和した。凍結乾燥して澱粉粕架橋体を得た。
【0044】
生成された架橋体の吸水率を測定するために、ゲルを大量の蒸留水中にて2日間静置した。その後、濾過により未反応物を除き、膨潤したゲルの重量(a)を測定した。次いで、このゲルを凍結乾燥した後、再び、その重量(b)を測定し、吸水率(a/b)を求めた。この結果を表1に示す。
【0045】
[実施例3]
粉砕した5グラムのキャッサバの澱粉製造工程で得られたキャッサバ澱粉粕(別称キャッサバパルプ、含水率9.6質量%、乾燥質量換算で澱粉68質量%含有)に無水マレイン酸と水酸化ナトリウム水溶液を用いて吸水性ポリマーを得た。
【0046】
(水酸化ナトリウム濃度)
ミキサーにて粉砕した5グラムの澱粉粕と乳鉢を用いて破砕した1.25グラムの無水マレイン酸を混和した混合物に、0.3〜3.0グラムの水酸化ナトリウムを11.5mlの蒸留水に溶解して調製した水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加しながら混和した後、80℃で1時間加温した。室温に冷却し、架橋体を得た。
【0047】
生成された架橋体の吸水率を測定するために、ゲルを大量の蒸留水中にて2日間静置した。その後、濾過により未反応物を除き、膨潤したゲルの重量(a)を測定した。次いで、このゲルを凍結乾燥した後、再び、その重量(b)を測定し、吸水率(a/b)を求めた。結果を表2に示す。水酸化ナトリウム濃度は、0.6〜1.0グラムの範囲がよく、好ましくは0.6〜0.8グラムの範囲で、0.7グラムが最適であった。
【表2】

【0048】
(水添加量)
ミキサーにて粉砕した5グラムの澱粉粕と乳鉢を用いて破砕した1.25グラムの無水マレイン酸を混和した混合物に、0.7グラムの水酸化ナトリウムを3〜11.5mlの蒸留水に溶解して調製した水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加しながら混和した後、80℃で1時間加温した。室温に冷却し、架橋体を得た。
【0049】
生成された架橋体の吸水率を測定するために、ゲルを大量の蒸留水中にて2日間静置した。その後、濾過により未反応物を除き、膨潤したゲルの重量(a)を測定した。次いで、このゲルを凍結乾燥した後、再び、その重量(b)を測定し、吸水率(a/b)を求めた。結果を表3に示す。水添加量は、好ましくは6〜9mlの範囲で、6mlが最適であった。
【表3】

【0050】
(水酸化ナトリウムと無水マレイン酸の当量での添加濃度)
ミキサーにて粉砕した5グラムの澱粉粕と乳鉢を用いて破砕した0.31〜2.5グラムの無水マレイン酸を混和した混合物に、0.17〜1.4グラムの水酸化ナトリウムを6mlの蒸留水に溶解して調製した水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加しながら混和した後、80℃で1時間加温した。室温に冷却し、架橋体を得た。
【0051】
生成された架橋体の吸水率を測定するために、ゲルを大量の蒸留水中にて2日間静置した。その後、濾過により未反応物を除き、膨潤したゲルの重量(a)を測定した。次いで、このゲルを凍結乾燥した後、再び、その重量(b)を測定し、吸水率(a/b)を求めた。結果を表4に示す。無水マレイン酸濃度添は、0.31/0.17(1/4)〜2.5/1.4(2)の範囲がよく、好ましくは0.31/0.17(1/4)〜2.5/1.4(2)グラムの範囲が好適で、1.25/0.7(1)が最適であった。

【表4】

【0052】
(加熱温度)
ミキサーにて粉砕した5グラムの澱粉粕と乳鉢を用いて破砕した1.25グラムの無水マレイン酸を混和した混合物に、0.7グラムの水酸化ナトリウムを6mlの蒸留水に溶解して調製した水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加しながら混和した後、25~100℃で1時間加温した。室温に冷却し、架橋体を得た。
【0053】
生成された架橋体の吸水率を測定するために、ゲルを大量の蒸留水中にて2日間静置した。その後、濾過により未反応物を除き、膨潤したゲルの重量(a)を測定した。次いで、このゲルを凍結乾燥した後、再び、その重量(b)を測定し、吸水率(a/b)を求めた。結果を表5に示す。加熱温度は、50〜90℃の範囲がよく、好ましくは80〜100℃の範囲で、80℃が最適であった。
【表5】

【0054】
(加熱時間)
ミキサーにて粉砕した5グラムの澱粉粕と乳鉢を用いて破砕した1.25グラムの無水マレイン酸を混和した混合物に、0.7グラムの水酸化ナトリウムを6mlの蒸留水に溶解して調製した水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加しながら混和した後、80℃で15分〜24時間加温した。室温に冷却し、架橋体を得た。
【0055】
生成された架橋体の吸水率を測定するために、ゲルを大量の蒸留水中にて2日間静置した。その後、濾過により未反応物を除き、膨潤したゲルの重量(a)を測定した。次いで、このゲルを凍結乾燥した後、再び、その重量(b)を測定し、吸水率(a/b)を求めた。結果を表6に示す。加熱温度80℃では加熱時間は、30分〜3時間の範囲がよく、好ましくは60分〜3時間の範囲が最適であった。
【表6】

【0056】
(各種加熱温度での加熱時間)
ミキサーにて粉砕した5グラムの澱粉粕と乳鉢を用いて破砕した1.25グラムの無水マレイン酸を混和した混合物に、0.7グラムの水酸化ナトリウムを6mlの蒸留水に溶解して調製した水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加しながら混和した後、90~130℃で5〜120分の範囲で加温した。室温に冷却し、架橋体を得た。
【0057】
生成された架橋体の吸水率を測定するために、ゲルを大量の蒸留水中にて2日間静置した。その後、濾過により未反応物を除き、膨潤したゲルの重量(a)を測定した。次いで、このゲルを凍結乾燥した後、再び、その重量(b)を測定し、吸水率(a/b)を求めた。結果を表7に示す。加熱温度は、好ましくは100〜130℃の範囲で、加熱時間は10〜40分が好適であった。
【表7】









【0058】
(カルボキシメチル化)
無処理及びカルボキシルメチル化した澱粉粕を用いて澱粉粕のカルボキシルメチル化が給水率に及ぼす影響に関して検討した。ミキサーにて粉砕した5グラムの澱粉粕試料に乳鉢を用いて破砕した1.25グラムの無水マレイン酸と0.7グラムの水酸化ナトリウムを6mlの蒸留水に溶解して調製した水酸化ナトリウム水溶液の混和順序を変えて混和した後、80℃で1時間加温した。室温に冷却し、架橋体を得た。
【0059】
生成された架橋体の吸水率を測定するために、ゲルを大量の蒸留水中にて2日間静置した。その後、濾過により未反応物を除き、膨潤したゲルの重量(a)を測定した。次いで、このゲルを凍結乾燥した後、再び、その重量(b)を測定し、吸水率(a/b)を求めた。この時無水マレイン酸と水酸化ナトリウムのモル比は1/1.5である。結果を表8に示す。当該技術による澱粉粕から架橋体の製造では澱粉粕のカルボキシメチル化は高い吸水率を有する架橋体の製造に悪影響を及ぼした。また、混和順序にとくに制限はないが、好ましく粉末の無水マレイン酸と澱粉粕を混和した後、水酸化ナトリウム水溶液を添加するほうが高い吸水率を有する架橋体を得られた。
【表8】

【0060】
(混和順序)
ミキサーにて粉砕した5グラムの澱粉粕に乳鉢を用いて破砕した1.25グラムの無水マレイン酸と0.7グラムの水酸化ナトリウムを6mlの蒸留水に溶解して調製した水酸化ナトリウム水溶液の混和順序を変えて混和した後、80℃で1時間加温した。室温に冷却し、架橋体を得た。
【0061】
生成された架橋体の吸水率を測定するために、ゲルを大量の蒸留水中にて2日間静置した。その後、濾過により未反応物を除き、膨潤したゲルの重量(a)を測定した。次いで、このゲルを凍結乾燥した後、再び、その重量(b)を測定し、吸水率(a/b)を求めた。この時無水マレイン酸と水酸化ナトリウムのモル比は1/1.5である。結果を表9に示す。混和順序は、とくに制限はないが好ましくAであった。
【表9】

【0062】
[実施例4]
澱粉(キャッサバ澱粉、含水率9.6質量%)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行ない、架橋体を得た。この時混合物の固形分濃度と、無水マレイン酸/水酸化ナトリウムのモル比は実施例1と同じ条件である。
【0063】
生成された架橋体の吸水率を測定するために、ゲルを大量の蒸留水中にて2日間静置した。その後、濾過により未反応物を除き、膨潤したゲルの重量(a)を測定した。次いで、このゲルを凍結乾燥した後、再び、その重量(b)を測定し、吸水率(a/b)を求めた。得られた粒子状の吸水性材料の吸水倍率は83倍であった。結果を表10に示す。
【表10】

【0064】
[実施例5]
CM化澱粉粕5グラムと乳鉢で破砕した無水マレイン酸1.25グラムを混和した混合物に0.75グラムの水酸化ナトリウムを蒸留水6mlに溶解した水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加しながら混和した後、80℃で1時間加温し室温に冷却し、架橋体を得た。
【0065】
生成された架橋体の吸水率を測定するために、ゲルを大量の蒸留水中にて2日間静置した。その後、濾過により未反応物を除き、膨潤したゲルの重量(a)を測定した。次いで、このゲルを凍結乾燥した後、再び、その重量(b)を測定し、吸水率(a/b)を求めた。結果を表10に示す。
【0066】
[実施例6]
可溶性澱粉(じゃがいも、和光純薬工業社製)から粉砕して調製した木質チップ5グラムと乳鉢で破砕した無水マレイン酸1.25グラムを混和した混合物に0.75グラムの水酸化ナトリウムを蒸留水6mlに溶解した水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加しながら混和した後、80℃で1時間加温し室温に冷却し、架橋体を得た。
【0067】
生成された架橋体の吸水率を測定するために、ゲルを大量の蒸留水中にて2日間静置した。その後、濾過により未反応物を除き、膨潤したゲルの重量(a)を測定した。次いで、このゲルを凍結乾燥した後、再び、その重量(b)を測定し、吸水率(a/b)を求めた。結果を表10に示す。
【0068】
[実施例7]
カルボキシメチルセルロース(東京化成工業社製)5グラムと乳鉢で破砕した無水マレイン酸1.25グラムを混和した混合物に0.75グラムの水酸化ナトリウムを蒸留水6mlに溶解した水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加しながら混和した後、80℃で1時間加温し室温に冷却し、架橋体を得た。
【0069】
生成された架橋体の吸水率を測定するために、ゲルを大量の蒸留水中にて2日間静置した。その後、濾過により未反応物を除き、膨潤したゲルの重量(a)を測定した。次いで、このゲルを凍結乾燥した後、再び、その重量(b)を測定し、吸水率(a/b)を求めた。結果を表10に示す。
【0070】
[実施例8]
澱粉粕を用いてRhizopusとパン酵母でエタノール発酵を行い、エタノール蒸留後の発酵蒸留残渣を凍結乾燥して得られた澱粉粕発酵蒸留残渣5グラムと乳鉢で破砕した無水マレイン酸1.25グラムを混和した混合物に0.75グラムの水酸化ナトリウムを蒸留水6mlに溶解した水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加しながら混和した後、80℃で1時間加温し室温に冷却し、架橋体を得た。
【0071】
生成された架橋体の吸水率を測定するために、ゲルを大量の蒸留水中にて2日間静置した。その後、濾過により未反応物を除き、膨潤したゲルの重量(a)を測定した。次いで、このゲルを凍結乾燥した後、再び、その重量(b)を測定し、吸水率(a/b)を求めた。結果を表10に示す。
【0072】
[実施例9]
リグニン(インド産)5グラムと乳鉢で破砕した無水マレイン酸1.25グラムを混和した混合物に0.75グラムの水酸化ナトリウムを蒸留水6mlに溶解した水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加しながら混和した後、80℃で1時間加温し室温に冷却し、架橋体を得た。
【0073】
生成された架橋体の吸水率を測定するために、ゲルを大量の蒸留水中にて2日間静置した。その後、濾過により未反応物を除き、膨潤したゲルの重量(a)を測定した。次いで、このゲルを凍結乾燥した後、再び、その重量(b)を測定し、吸水率(a/b)を求めた。結果を表11に示す。

【表11】

【0074】
[実施例10]
剪定枝から粉砕して調製した木質チップ5グラムと乳鉢で破砕した無水マレイン酸1.25グラムを混和した混合物に0.75グラムの水酸化ナトリウムを蒸留水6mlに溶解した水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加しながら混和した後、80℃で1時間加温し室温に冷却し、架橋体を得た。
【0075】
生成された架橋体の吸水率を測定するために、ゲルを大量の蒸留水中にて2日間静置した。その後、濾過により未反応物を除き、膨潤したゲルの重量(a)を測定した。次いで、このゲルを凍結乾燥した後、再び、その重量(b)を測定し、吸水率(a/b)を求めた。結果を表11に示す。
【0076】
[実施例11]
油ヤシのEmpty Fruit Bunch(EFB)を水に混和して凍結させた後、ボールミルで粉砕して調製したEFB粉砕物(平均径:160mm)5グラムと乳鉢で破砕した無水マレイン酸1.25グラムを混和した混合物に0.75グラムの水酸化ナトリウムを蒸留水6mlに溶解した水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加しながら混和した後、80℃で1時間加温し室温に冷却し、架橋体を得た。
【0077】
生成された架橋体の吸水率を測定するために、ゲルを大量の蒸留水中にて2日間静置した。その後、濾過により未反応物を除き、膨潤したゲルの重量(a)を測定した。次いで、このゲルを凍結乾燥した後、再び、その重量(b)を測定し、吸水率(a/b)を求めた。結果を表11に示す。
【0078】
[実施例12]
油ヤシのEmpty Fruit Bunch(EFB)を挟みで裁断したEFB(平均長:2mm)5グラムと乳鉢で破砕した無水マレイン酸1.25グラムを混和した混合物に0.75グラムの水酸化ナトリウムを蒸留水6mlに溶解した水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加しながら混和した後、80℃で1時間加温し室温に冷却し、架橋体を得た。
【0079】
生成された架橋体の吸水率を測定するために、ゲルを大量の蒸留水中にて2日間静置した。その後、濾過により未反応物を除き、膨潤したゲルの重量(a)を測定した。次いで、このゲルを凍結乾燥した後、再び、その重量(b)を測定し、吸水率(a/b)を求めた。結果を表11に示す。
【0080】
[実施例11]
油ヤシのEmpty Fruit Bunch(EFB)5グラムと乳鉢で破砕した無水マレイン酸1.25グラムを混和した混合物に0.75グラムの水酸化ナトリウムを蒸留水6mlに溶解した水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加しながら混和した後、80℃で1時間加温し室温に冷却し、架橋体を得た。
【0081】
生成された架橋体の吸水率を測定するために、ゲルを大量の蒸留水中にて2日間静置した。その後、濾過により未反応物を除き、膨潤したゲルの重量(a)を測定した。次いで、このゲルを凍結乾燥した後、再び、その重量(b)を測定し、吸水率(a/b)を求めた。結果を表11に示す。
【0082】
植物系複合物質と無水マレイン酸との反応をアルカリ存在下で行なうことにより、優れた飽和吸水倍率を有する吸水性ポリマーを得ることができた。
また、原料に澱粉粕を用いた場合、溶液法で調製したものに比べ、固相法により合成した複合吸水性ポリマーが高い飽和吸水倍率を有した。原因として、溶液法で反応させる場合、澱粉粕内部の繊維成分が澱粉分子と強く絡み合っているために反応が充分に進行しなかったことが考えられる。さらに得られた植物系複合吸水性ポリマー中において、水不溶性の繊維成分が解離されていない状態で存在し、澱粉分子の運動を抑制し膨潤、吸水を妨げているためだと推察できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物系複合物質が多塩基酸の酸無水物で架橋された植物系複合吸水性ポリマー。
【請求項2】
前記多塩基性の酸無水物が二塩基酸無水物であることを特徴とする植物系複合吸水性ポリマー。
【請求項3】
植物系複合物質がヤシ材粉砕チップ、オイルパームEFB、剪定枝、間伐材、木粉、おが屑、木材チップ、樹皮、紙パルプ、古紙等の木質系物質や、稲わら、バガス等の農産系物質、クラフトリグニンやリグニンスルフォン酸等の単離リグニン、木材セルロースやリンターセルロース等の単離セルロース、また糖類、穀類、澱粉等の植物系物質からなることを特徴とする植物系複合吸水性ポリマーの製造方法。
【請求項4】
植物系複合物質が多塩基酸の酸無水物で架橋された植物系複合吸水性ポリマーの製造方法であって、前記植物系複合物質と多塩基酸の酸無水物を含む組成物とを水溶液内で混合することを含む、植物系複合吸水性ポリマーの製造方法。
【請求項5】
前記植物系複合物質の100重量部と、前記多塩基酸の酸無水物を含む組成物の6.2〜50重量部とを前記水溶液内で混合させることを特徴とする請求4に記載の植物系複合吸水性ポリマーの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の製造方法において、さらに触媒としてアルカリ金属の水酸化物を用い、かつアルカリ金属の水酸化物の仕込み量が前記植物系複合物質の100重量部に対して3.4〜28重量部の範囲であることを特徴とする請求項4または5に記載の植物系複合吸水性材料の製造方法。

【公開番号】特開2012−12549(P2012−12549A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152853(P2010−152853)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(597002416)
【Fターム(参考)】