植込式医療装置
【課題】薬剤または生理活性物質を組み込んだ植込式医療装置の提供。
【解決手段】(a)少なくとも1つの表面を有し、基礎材料14から構成されており、患者の体内に導入することができる構造体12と、(b)前記構造体12の一方の表面上に配置された少なくとも一つのコーティング層16と、(c)前記少なくとも一つのコーティング層16の少なくとも一部分の上に配置された第1の生物活性物質の少なくとも1つの層18とからなり、前記少なくとも一つのコーティング層16は、前記少なくとも一つのコーティング層16から前記生物活性物質を徐々に放出する植込式医療装置10。前記生物活性物質は、パクリタキセルからなり、該パクリタキセルは、平滑筋細胞の増殖および移動を抑制する量である。前記コーティング層16は、パリレン誘導体であることが好ましい。
【解決手段】(a)少なくとも1つの表面を有し、基礎材料14から構成されており、患者の体内に導入することができる構造体12と、(b)前記構造体12の一方の表面上に配置された少なくとも一つのコーティング層16と、(c)前記少なくとも一つのコーティング層16の少なくとも一部分の上に配置された第1の生物活性物質の少なくとも1つの層18とからなり、前記少なくとも一つのコーティング層16は、前記少なくとも一つのコーティング層16から前記生物活性物質を徐々に放出する植込式医療装置10。前記生物活性物質は、パクリタキセルからなり、該パクリタキセルは、平滑筋細胞の増殖および移動を抑制する量である。前記コーティング層16は、パリレン誘導体であることが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、人間および動物用の医療装置に関する。更に詳細には、本発明は薬剤または生物活性物質を組み込んだ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な医療状態を、植込式医療装置を部分的に、または完全に食道、気管、結腸、胆管、尿道、脈管系、または人間または動物患者の他の位置に導入することによって治療することが、一般的になっている。例えば、脈管系の多くの治療は、ステント、カテーテル、バルーン、ワイヤ・ガイド、カニューレなどの装置を導入することを必要とする。しかし、このような装置を脈管系に導入し、それを通して操作すると、血管壁が侵害されたり、損傷を受けたりすることがある。損傷部位では往々にして血塊の形成または血栓症が結果として生じ、狭窄症または血管閉塞を引き起こす。さらに、医療装置が長期間にわたって患者の体内に残ると、装置自体に往々にして血栓が形成され、この場合も狭窄症または閉塞を引き起こす。その結果、患者は、心臓発作、肺塞症、卒中などの様々な合併症の危険を生じる。したがって、このような医療装置の使用は、様々な合併症を惹起する多大な危険性を孕んでおり、その使用方法の改善が企図されている。
【0003】
血管が狭窄症を経験する別の方法は、疾病を通してである。血管の狭窄を引き起こす最も一般的な疾病は、恐らくアテローム性動脈硬化症である。アテローム性動脈硬化症は、一般に冠状動脈、大動脈、腸骨大腿骨動脈および頸動脈に影響を及ぼす状態である。アテローム性動脈硬化症の脂質の斑、線維芽細胞、および繊維素は増殖し、1本または複数の動脈の閉塞を引き起こす。閉塞が増加するにつれ、狭窄症の臨界レベルに到達し、その時点で閉塞より先の血液の流れが不十分になり、閉塞の遠位側(下流)にある組織の代謝要求に適合するには不十分になる。その結果、虚血となる。
【0004】
アテローム性動脈硬化症の治療には、多くの医療装置および治療法が知られている。特定のアテローム性動脈硬化症疾患に特に有用な療法の一つは、経皮経管血管形成術(PTA)である。PTAの最中、バルーンを先端に付けたカテーテルを、バルーンがしぼんだ状態で、患者の動脈に挿入する。カテーテルの先端が、拡張すべきアテローム性動脈硬化症の斑の部位まで前進する。バルーンを動脈の狭窄区画に配置し、次に膨張させる。バルーンを膨張させると、アテローム性動脈硬化症の斑が「ひび割れ」て血管を拡張し、それによって少なくとも部分的に狭窄を緩和する。
【0005】
PTAは現在、広く使用されているが、2つの主要な問題がある。第1に、血管は、拡張処置後の最初の数時間の直後、またはその数時間の間に、急性閉塞を経験することがある。このような閉塞は「突発性閉鎖」と呼ばれる。突発性閉鎖は、恐らくPTAを使用したケースの5%程度で発生し、血流が即座に回復しない場合は、心筋梗塞および死をもたらすことがある。突発性閉鎖の主要なメカニズムは、弾性反跳、動脈切開および/または血栓症であると考えられている。血管形成術の時点で動脈壁に(抗血栓薬などの)適切な薬剤を直接送出すれば、血栓症の急性閉塞の発生率を低下させられると仮定されているが、その試みの結果は混合されている。
【0006】
PTAで遭遇する第2の主要な問題は、最初に血管形成術が成功した後、動脈が再び狭くなることである。このように再び狭くなることを「再狭窄」と呼び、これは通常、血管形成術後、最初の6ヶ月以内に発生する。再狭窄は、動脈壁からの細胞成分の増殖および移動、さらに「再造形」と呼ばれる動脈壁の幾何学的変化を通して生じると考えられる。同様に、適切な薬剤を動脈壁に直接送出すれば、再狭窄につながる細胞および/または再造形の事象を中断できると仮定されている。しかし、血栓症の急性閉塞を防止する試みと同様、この方法で再狭窄を防止する試みも混合されている。
【0007】
非アテローム性動脈硬化症の血管狭窄も、PTAで治療することができる。例えば、タカヤス動脈炎または神経線維腫症は、動脈壁の繊維肥大によって狭窄症を引き起こすことがある。しかし、疾病の繊維の性質のため、これらの病巣の際狭窄は血管形成術後、高い割合で発生する。これを治療または除去する医学的療法は、同様に期待はずれであった。
【0008】
脈管間ステントなどの装置は、PTAに、特に血管形成術後の急性または切迫閉鎖の場合に有用な補助具となることがある。ステントは、動脈の拡張区域に配置され、急性閉鎖および再狭窄を力学的に防止する。残念ながら、積極的かつ正確な抗血小板物質および血液凝固阻止療法(通常は全身に施与する)で、ステントの植込みが達成されても、血栓による血管閉鎖または血栓による合併症の発生率は依然として大きく、再狭窄の防止は、望まれるほど成功していない。さらに、全身の抗血小板物質および血液凝固阻止療法の望ましくない副作用が、出血性合併症の発生率を上昇させ、これは経皮的入口部位で最も多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−99056
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ステント、カテーテル、カニューレおよびその他の装置を食道、気管、胆管、尿道および人間の他の場所に挿入するか、整形外科用装置、インプラント、または代替品で、他の状態および疾病を治療することができる。このような状態および疾病を治療または防止し、例えば通路、内腔または血管などの身体部分の急性閉鎖および/または再狭窄を防止するよう、医療処置の間、またはその後に、適切な作用物質、薬剤または生物活性物質を直接身体部分に確実に送出する装置および方法を開発することが望ましい。特定の例として、PTAで、または関節切除術、レーザ切除などの介入的技術によって治療した血管領域に、抗トロンビン薬または他の薬品を送出できる装置および方法があると望ましい。このような装置は、短期間(つまり治療後の初期数時間および数日)および長期間(治療後数週間および数ヶ月)の両方にわたって作用物質を送出することも望ましい。作用物質、薬剤または生物活性物質の送出量を正確に管理し、それに対する全身暴露量を制限することも望ましい。これは、カテーテルに沿って、およびカテーテル先端で狭窄を防止することにより、静脈内カテーテル(これ自体が治療の成功に必要な作用物質の量を減少させるという利点を有する)を通して特定の器官または部位に化学療法薬を送出することを伴う療法に、特に有利である。多種多様な他の療法を、同様に改良することができる。言うまでもなく、このような装置に組み込む間に、作用物質、薬剤または生物活性物質の劣化を回避することも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
例示的脈管ステント、またはステントまたは他の装置を配置した脈管または他の器官、または体内の他の位置に作用物質、薬剤または生物活性物質を制御可能な状態で放出する他の植込可能な医療装置で、以上の問題が解決され、技術的進歩が達成される。装置構造体の1つの表面にコーティング層を配置することにより、このような装置に適用される作用物質、薬剤または生物活性物質の劣化を回避できることを、出願人は発見した。作用物質、薬剤または生物活性物質を、コーティング層の少なくとも一部に配置し、コーティング層は、自身上に配置された生物活性材料を制御下で放出する。また、本発明の医療装置は、生物活性物質上に配置した多孔質層を更に含み、多孔質層はポリマーで構成され、ポリマーは多孔質層を通して生物活性物質を制御下で放出する。
【0012】
本発明の或る態様では、コーティング層は、例えばパリレン誘導体の非孔質材料を備える。コーティング層は、好ましくは50から500,000オングストローム(Å)の範囲、より好ましくは100,000から500,000Åの範囲、例示的には約200,000Åの厚さを有する。別の態様では、非孔質材料は、吸着性材料または吸収性材料であり、吸着性材料のコーティング層は約230,000Åの厚さを有する。
【0013】
本発明の別の態様では、生物活性物質層は、抗血小板GP IIb/IIIa抗体などのキメラ・モノクローン抗体を含む。
【0014】
本発明のさらに別の態様では、少なくとも一部にコーティング層を配置した構造体の1つの表面に、粘着性促進層を配置する。粘着性促進層は、0.5から5,000Åの範囲の厚さを有するシランを含むことが好ましい。このような装置に適用される作用物質、薬剤または生物活性物質の劣化は、作用物質、薬剤または生物活性物質を、作用物質、薬剤または物質の劣化または損傷を引き起こすような溶剤、触媒、熱または他の化学物質または技術を使用せずに、生物学的適合性ポリマーの多孔質層で覆うことによって回避できることも、出願人は発見した。これらの生物学的適合性ポリマーは、気相蒸着またはプラズマ蒸着によって塗布することが好ましく、蒸気相から凝縮すると重合化して、単に硬化するするか、光分解重合可能でもよく、この目的に有用であることが予想される。しかし、他のコーティング技術も使用できる。
【0015】
装置が脈管系に使用するよう意図された場合、少なくとも1つの層の生物活性物質は、ヘパリンまたは他の抗血小板物質または抗血栓薬、またはデキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、または他のデキサメタゾン誘導体または抗炎症ステロイドであることが好ましい。さらに、以下のカテゴリーの作用物質を含め、広範囲の他の生物活性物質を使用することができる。つまり、血栓溶解薬、血管拡張剤、降圧薬、抗菌物質または抗菌剤、細胞分裂抑制剤、抗増殖剤、抗分泌薬、非ステロイドの抗炎症剤、免疫抑制剤、成長因子および成長因子拮抗薬、抗癌剤および/または化学療法薬、アンチポリメラーゼ、抗ウィルス薬、光力学療法薬、抗体標的療法薬、プロドラッグ、性ホルモン、フリーラジカル捕獲剤、酸化防止剤、生物学的作用物質、放射線治療薬、放射線不透過性作用物質および放射性同位元素で識別する作用物質である。主な制約は、生物活性物質が、少なくとも1つの多孔質層の気相蒸着またはプラズマ蒸着中に使用する真空など、コーティング技術に耐えられる必要があることである。つまり、生物活性物質は、付着温度、通常は常温またはそれに近い温度で比較的低い蒸気圧を持たねばならない。
【0016】
少なくとも1つの多孔質層は、触媒のない気相蒸着で塗布したポリアミド、パリレンまたはパリレン誘導体で構成することが好ましく、約5,000から250,000Åの厚さであると都合がよく、これは生物活性物質を制御下で放出するのに十分である。「パリレン」は、p−キシレンをベースにし、蒸気相重合で作成したポリマーの既知のグループの一般的名称であり、ポリマーの置換していない形態の名称でもあり、本明細書では後者の使用法を用いる。特に、パリレンまたはパリレン誘導体は、最初にp−キシレンまたは適切な誘導体を、周期性2量体di−p−キシレン(またはその誘導体)を生成するのに十分な温度(例えば約950℃)まで加熱することによって生成される。その結果生じた固体は、純粋な形態で分離し、次にひび割れ、十分な温度(例えば約680℃)で熱分解して、p−キシレン(または誘導体)のモノマー蒸気を生成することができる。モノマー蒸気を適切な温度(例えば50℃未満)まで冷却し、所望の対象、例えば生物活性物質の少なくとも1つの層に凝縮できるようにする。その結果生じたポリマーは、反復構造−(−CH2C6H4CH2−)−nを有し、nは約5,000に等しく、分子重量は500,000の範囲である。
【0017】
前記のように、気相蒸着で塗布可能なパリレンおよびパリレン誘導体のコーティングは、様々な生物医学的用途が知られており、Specialty Coating Systems(100 Deposition Drive, Clear Lake, WI 54005)、Para Tech Coating, Inc.(35 Argonaut, Aliso Viejo, CA 92656)およびAdvanced Surface Technology, Inc.(9 Linnel Circle, Billerica, MA 01821-3902)など、様々な供給源から、またはそれを通して市販されている。
【0018】
あるいは、少なくとも1つの多孔質層をプラズマ蒸着で塗布することができる。プラズマは、真空で維持され、通常は無線周波数範囲の電気エネルギーで励起される電離気体である。気体は真空に維持されるので、プラズマ蒸着プロセスは常温で、またはその付近で生じる。プラズマを使用して、ポリ(エチレン酸化物)、ポリ(エチレングリコール)、およびポリ(プロピレン酸化物)などのポリマー、さらにシリコン、メタン、テトラフルオロエチレン(TEFLONブランドのポリマーを含む)、テトラメチルジシオキサンなどのポリマーを付着させることができる。
【0019】
以上は、本発明の幾つかの好ましい実施形態を示すが、光重合可能なモノマーから誘導されたポリマーなど、他のポリマー系も使用することができる。また、例えば浸漬、噴霧など、他のコーティング技術を使用してもよい。
【0020】
装置は、構造体の頂部に2層以上の異なる生物活性材料を含んでもよい。しかし、本発明では、同じ層内で、装置の異なる表面には概ね同じ生物活性物質を配置しない。つまり、装置構造体の各表面は、生物活性物質が最も内側または最も外側の層である以外は、異なる生物活性物質を担持する。例えば、ヘパリンが最も内側の層または最も外側の層、またはその両方を形成することができる。これらの追加的層は、相互に直接載せるか、それぞれの間に入れた追加の多孔ポリマー層によって分離することができる。また、生物活性物質の層は、異なる生物活性物質の混合物を含んでも良い。多孔質層も、パリレンまたはパリレン誘導体で構成する。2つ以上の生物活性物質が異なる可溶性を有することができるので都合がよく、可溶性が低い方の生物活性物質(例えばデキサメタゾン)を含む層を、可溶性が高い方の生物活性物質(例えばヘパリン)を含む層の上に配置することが好ましい。予期することなく、これは、デキサメタゾンなどの比較的可溶性が低い物質の生体外での放出量を増加させながら、同時に、ヘパリンなどの可用性が高い方の物質の放出量を減少させることが判明した。
【0021】
装置に含まれる構造体は、様々な方法で構成することができるが、構造体は、ステンレス鋼、ニッケル、銀、プラチナ、金、チタン、タンタル、イリジウム、タングステン、ニチノール、インコネルなど、生物学的適合性金属で構成された脈管用ステントとして構成することが好ましい。脈管用ステントのすぐ上で、少なくとも1層の生物活性物質の下に、厚さ約50,000から500,000Åのパリレンまたはパリレン誘導体または他の生物学的適合性ポリマーのほぼ非孔質質の追加的コーティング層を付着させてもよい。追加のコーティング層は、単に少なくとも1つの多孔質層より孔が少なくてもよいが、ほぼ非孔質性である、つまりステントが、通常の使用環境で基本的に血液を透過しなくなるのに十分なほど非孔質性であることが好ましい。
【0022】
本発明の装置および方法は、食道、気管、胆管、尿道および脈管系など、人間または動物患者の広範囲の位置に、硬膜下および矯正装置、インプラントまたは置換品に有用である。これは、脈管内処置中、またはその後に適切な生物活性物質を確実に送出するために特に有利であり、特に、血管の急性閉鎖および/または再狭窄防止に使用される。特に、例えばPTAで開いた血管の領域に、抗血栓薬、抗血小板物質、抗炎症剤ステロイド、または他の薬物を送出することができる。同様に、例えば血管の内腔に生物活性物質を送出し、血管壁に別の生物活性物質を送出することができる。多孔性ポリマー層を使用すると、生物活性物質の放出量を、短期間と長期間の両方にわたって伸張に制御することができる。
【0023】
本発明の別の態様では、生物活性物質を非孔質層に取り付けて、長期間にわたって溶出させるので有利である。非孔質層は、構造体の基礎材料に取り付ける。非孔質層は、本明細書の以上または以下で列挙するいずれかでよく、同様に生物活性材料は、本明細書の以上または以下で列挙するいずれかでよい。好ましい実施形態では、市販されているReoPro(登録商標)などの糖蛋白IIb/IIIa抑制物質を、冠状動脈ステントなどの医療装置の外面に配置したパリレンの非孔質層に取り付ける。ReoPro(登録商標)が、長期間にわたってステントの表面から溶出するので有利である。
【0024】
以下、本発明を添付図面に示した実施形態に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の好ましい実施形態の部分概要断面図である。
【図2】本発明の別の好ましい実施形態の部分概要断面図である。
【図3】本発明のさらに別の好ましい実施形態の部分概要断面図である。
【図4】本発明のさらなる好ましい実施形態の部分概要断面図である。
【図5】本発明の追加的な好ましい実施形態の部分概要断面図である。
【図6A】本発明の追加的な好ましい実施形態Aの部分概要断面図である。
【図6B】本発明の追加的な好ましい実施形態Bの部分概要断面図である。
【図7】本発明の追加的な好ましい実施形態の部分概要断面図である。
【図8】図7の部分拡大上面図である。
【図9】図8の線9−9に沿った拡大断面図である。
【図10A】図8の線10−10に沿った断面Aの拡大断面図である。
【図10B】図8の線10−10に沿った断面Bの拡大断面図である。
【図10C】図8の線10−10に沿った断面Cの拡大断面図である。
【図10D】図8の線10−10に沿った断面Dの拡大断面図である。
【図11】生物活性物質が付着されたポリマー・コーティング層を有する図1に示された医療装置の別の実施態様を示す部分概要断面図である。
【図12】ポリマー・コーティング層が接着促進層を用いて装置基礎材料の外面に接着されている図1の医療装置の別の実施態様を示す部分概要断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明による植込可能な医療装置10を示す。医療装置10は先ず、人間または動物患者に導入することができる構造体12からなる。「することができる」とは、構造体12を、このような導入に合わせた形状およびサイズにするという意味である。説明の便宜上、図1は構造体12の一部だけを示す。
【0027】
例えば、構造体12は、特に患者の脈管系に挿入するようになっている脈管用ステントとして構成されている。しかし、このステント構造体は、特に食道、気管、結腸、胆管、尿道および尿管、硬膜下など、他の器官および部位に使用してもよい。実際、構造体12は、代替的に任意の常用の脈管または他の医療装置として構成することができ、螺旋巻きストランド、多孔シリンダなど、様々な従来通りのステントまたは他の補助具のいずれかを含むことができる。さらに、本発明が対処する問題は、患者の体内に実際に配置した装置の部分に関して生じるので、挿入する構造体12は装置全体である必要はなく、患者の体内に導入するよう意図された脈管または他の装置の一部にすぎなくてもよい。したがって、構造体12は、カテーテル、ワイヤ・ガイド、カニューレ、ステント、脈管または他の移植片、心臓ペースメーカのリード線またはリード先端、心臓細動除去器のリード線またはリード先端、心臓弁、または矯正装置、装具、インプラント、または置換品の少なくとも1つ、またはその任意の部分として構成することができる。構造体12は、そのいずれかの部分の組合せとして構成することもできる。
【0028】
しかし、構造体12は、Cook Incorporated(Bloomington, Indiana)から市販されているGianturco-ROubin FLEX-STENT(登録商標)またはGR II(登録商標)冠状動脈ステントなど、脈管系ステントとして構成することが、最も好ましい。このようなステントは、通常、長さが約10から約60mmで、患者の脈管系に挿入されると、約2から約6mmの直径に拡張するよう設計される。特にGianturco-Roubinステントは、通常は長さが約12から約25mmで、このように挿入すると約2から約4mmの直径まで拡張する。
【0029】
これらのステント寸法は、言うまでもなく冠状動脈に使用する例示的ステントに適用可能である。大動脈、食道、気管、結腸、胆道、または尿道など、患者の他の部位に使用するよう意図されたステントまたはカテーテル部分などの構造体は、このような使用にさらに適した異なる寸法を有する。例えば、大動脈、食道、気管および結腸ステントは、最大約25mmの直径および約100mm以上の長さを有する。
【0030】
構造体12は、構造体12の意図された用途に適した基礎材料14で構成される。基礎材料14は、生物学的に適合性であることが好ましいが、患者から十分隔離されていれば、細胞傷害性または他の有毒な基礎材料を使用してもよい。このような非適合性材料は、例えば放射性材料をカテーテルによって治療すべき特定の組織内、またはその近傍に配置する放射線治療に有用である。しかし、大部分の環境では、構造体12の基礎材料は生物学的に適合性であるとよい。
【0031】
基礎材料14として様々な従来の材料を使用することができる。構造体12を例示する冠状動脈ステント以外の構造に、より有用な材料もある。基礎材料14は、これに適用するポリマー層の可撓性または弾性に応じて、弾性または非弾性でよい。基礎材料は、生物分解性または非生物分解性でよく、様々な生物分解性ポリマーが知られている。さらに、例示的な冠状動脈ステントに特に有用でなくても、幾つかの有用な構造体12の基礎材料として働くのに十分な強度を有する生物学的作用物質がある。
【0032】
したがって、基礎材料14は、ステンレス鋼、タンタル、チタン、ニチノール、金、プラチナ、インコネル、イリジウム、銀、タングステン、または別の生物学的適合性金属、またはそのいずれかの合金、炭素または炭素繊維、酢酸セルロース、硝酸セルロース、シリコン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオルトエステル、ポリアンヒドライド、オリエエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、高分子量ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、またはポリ乳酸、ポリグリコール酸またはその共重合体、ポリアンヒドライド、ポリカプロラクタム、吉草酸ポリヒドドキシブチレートまたは他の生物分解性ポリマー、またはその混合物または共重合体、タンパク質、細胞外基質成分、コラーゲン、繊維素または他の生物学的作用物質、またはそのいずれかの適切な混合物のうち少なくとも1つを含むことができる。ステンレス鋼は、構造体12を脈管系ステントとして構成する場合、基礎材料14として特に有用である。
【0033】
言うまでもなく、構造体12をポリプロピレン、ポリエチレン、または蒸気のその他など、放射線透過性材料で構成した場合、従来の放射線不透過性コーティングをこれに塗布することができ、塗布することが好ましい。放射性不透過性コーティングは、患者の脈管系に導入中、または導入した後、X線または透視装置で構造体12の位置を識別する手段を提供する。
【0034】
引き続き図1を参照すると、本発明の脈管装置10は、次に、構造体12の1つの表面に配置された生物活性物質の少なくとも1つの層18を備える。本発明では、構造体12の1つの表面に少なくとも1つの生物活性物質を配置し、他の表面は生物活性物質を含まないか、1つまたは複数の異なる生物活性物質を含む。この方法で、例えば脈管ステントで1つまたは複数の生物活性物質または作用物質を、ステントの内腔表面から血流へと送出し、ステントの導管表面で異なる治療薬を送出することができる。選択された物質が気相蒸着またはプラズマ蒸着中に生じる真空に曝されても耐えることができる限り、層18の生物活性物質として広範囲の薬物、医薬品および物質を使用することができる。本発明の実践に特に有用なのは、ステント挿入の外科手術または他の処置で既に開いた血管の急性閉鎖および再狭窄を防止または改良する材料である。構造体12が脈管ステントである場合、血栓溶解剤(血栓を溶解、破壊または分散させる)および抗血栓形成剤(血栓の形成を妨害または防止する)は、特に有用な生物活性物質である。特に好ましい血栓溶解剤はウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、および組織プラスミノーゲン活性化因子である。特に好ましい抗血栓形成剤は、ヘパリン、ヒルジン、および抗血小板物質である。
【0035】
ウロキナーゼは、通常は人間の腎臓細胞を培養して獲得されるプラスミノーゲン活性酵素である。ウロキナーゼは、プラスミノーゲンの、線維素性血栓を破壊する繊維素溶解プラスミンへの転換に触媒作用を及ぼす。
【0036】
ヘパリンは、通常はブタの腸粘膜またはウシの肺臓から獲得されるムコ多糖体抗凝血薬である。ヘパリンは、血液の内因性抗トロンビンIIIの効果を大幅に増強させることにより、トロンビン抑制物質として作用する。トロンビンは、凝固カスケードの有効な酵素であり、繊維素の形成に触媒作用を及ぼす上で重要である。したがって、トロンビンを阻止することにより、ヘパリンは繊維素トロンビンの形成を阻止する。あるいは、ヘパリンは、構造体12の外層に共有結合してもよい。したがって、ヘパリンは構造体12の最も外側の層を形成し、酵素で容易に分解されず、トロンビン抑制物質として活性状態を維持する。
【0037】
言うまでもなく、他の機能を有する生物活性物質も、本発明の装置10で成功裏に送出することができる。例えば、メトトレキセート(methotrexate)などの抗増殖剤は、平滑筋細胞の過剰増殖を抑制し、したがって血管の拡張区域の再狭窄を抑制する。抗増殖剤は、この目的のため約4ヶ月から6ヶ月の期間にわたって供給することが望ましい。また、高度に脈管が成長することを特徴とする様々な悪性腫瘍状態の治療にも、抗増殖剤の局所的送出が有用である。このような場合、本発明の装置10は、腫瘍の動脈系に配置して、比較的多量の抗増殖剤を腫瘍に直接送出する手段を提供することができる。
【0038】
カルシウム拮抗薬または硝酸塩などの血管拡張剤は、血管形成術処置後によくある血管痙攣を抑制する。血管痙攣は、血管の損傷への反応として発生し、血管が治癒するにつれ、血管痙攣を生じる傾向が低下する。したがって、血管拡張剤は、約2週間から3週間の期間にわたって供給することが望ましい。言うまでもなく、血管形成術による外傷のみが、血管痙攣を引き起こす血管損傷ではなく、装置10は、その血管痙攣を防止するため、大動脈、頸動脈、腎動脈、腸骨動脈、または末梢動脈など、冠状動脈以外の血管に導入することができる。
【0039】
構造体12が冠状動脈ステント以外のものとして形成される場合、様々な他の生物活性物質が特に使用に適している。例えば、装置10により局所的腫瘍に抗癌化学療法薬を送出することができる。特に、装置10を、腫瘍または他の場所に血液を供給する動脈内に配置して、比較的大量の作用物質を腫瘍に直接、長期間にわたって送出しながら、全身暴露および毒性を制限することができる。作用物質は、腫瘍のサイズを縮小する治療の術前減量剤、または疾病の症状を軽減する緩和剤でもよい。本発明の生物活性物質は、装置10を介して送出されるのであって、従来の化学療法で使用するカテーテルを通してなど、装置10で画成される任意の内腔を通る外部の供給源からの通路によって送出されるものではない。本発明の生物活性物質は、言うまでもなく、装置10から、装置によって画定された内腔へ、または装置と接触する組織へ放出することができ、内腔は、これを通して送出される他の作用物質を搬送することができる。例えば、例えば胸部組織または前立腺に位置する腫瘍に送出するため、装置の組織に露出した表面へ、クエン酸タモキシフェン、Taxol(登録商標)またはその誘導体、Proscar(登録商標)、Hytrin(登録商標)またはEulexin(登録商標)を塗布することができる。
【0040】
パーキンソン病などの神経障害の治療には、メシル酸ブロモクリプチンまたはペルゴリドメチラートなどのドーパミンまたは作用薬が有用である。装置10は、この目的のために視床黒質に供給する脈管、または他の場所に配置して、視床の治療を局所化することができる。
【0041】
広範囲の他の生物活性物質を装置10で送出することができる。したがって、層18に含まれる生物活性物質はヘパリン、共有結合ヘパリン、または他のトロンビン抑制剤、ヒルジン、ヒルログ、アルガトロンバン、D−フェニルアラニル、−L−ポリ−L−アルギニルクロロメチルケトン、または別の抗トロンボゲン剤、またはその混合物、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子、または部の血栓溶解剤、またはその混合物、線維素溶解素、血管痙攣抑制剤、カルシウム拮抗薬、硝酸塩、窒素酸化物、窒素酸化物促進剤または別の血管拡張剤、Hytrin(登録商標)または他の降圧薬、抗菌剤または抗生物質、アスピリン、チクロピジン、糖蛋白IIb/IIIa抑制剤または表面糖蛋白受容体の他の抑制剤、または他の抗血小板剤、コルヒチンまたは他の細胞分裂抑制薬、または別の微小管抑制剤、ジメチルスルホキシド(DMSO)、レチノイドまたは別の抗分泌剤、サイトカラシンまたは別のアクチン抑制剤、または再造形抑制剤、デオキシリボ核酸、アンチセンスヌクレオチドまたは別の分子遺伝介入の作用物質、メトトレキセートまたは別の代謝拮抗物質または抗増殖剤、クエン酸タモキシフェン、Taxol(登録商標)またはその誘導体、または他の抗癌化学療法作用物質、デキサメタゾン、デキサメタゾン燐酸ナトリウム、酢酸デキサメタゾンまたは別のデキサメタゾン誘導体、または別の抗炎症ステロイドまたは非ステロイド系抗炎症剤、サイクロスポリンまたは別の免疫抑制剤、トラピダル(PDGF拮抗薬)、アンジオペプチン(成長ホルモン拮抗薬)、アンジオジェニン、成長因子、抗成長因子抗体、または別の成長因子拮抗薬、ドーパミン、メシル酸ブロモクリプチン、パーゴライドメシレートまたは別のドーパミン作動薬、60Co(半減期5.3年)、192Ir(73.8日)、32P(14.3日)、111In(68時間)、90Y(64時間)、99mTc(6時間)または別の放射線療法薬、沃素含有化合物、バリウム含有化合物、金、タンタル、プラチナ、タングステン、酵素、細胞外基質成分、細胞成分または別の生物学的作用物質、カプトプリル、エナラプリルまたは別のアンギオテンシン転換酵素(ACE)阻害薬、アスコルビン酸、α‐トコフェロール、スーパーオキシドジスムターゼ、デスフェリオキサミン、21−アミノステロイド(ラサロイド)または別のフリーラジカル捕獲剤、鉄キレート剤または酸化防止剤、14C−、3H−、131I−、32P−または36S−の放射性同位元素を使って識別する形態または以上のいずれかの他の放射性同位元素を使って識別する形態、エストロゲンまたは別の性ホルモン、AZTまたは他のアンチポリメラーゼ、アシクロビル、ファミシクロビル、塩酸リマンタジン、ガンシクロビルナトリウム、ノルビル、Crixivanまたは他の抗ウイルス薬、5−アミノレブリン酸、メタテトラヒドロキシフェニルクロリン、ヘキサデカフルオロ亜鉛フタロシアニン、テトラメチルヘマトポルフィリン、ローダミン123または他の光力学療法薬、緑膿菌外毒素Aに対抗し、A431表皮癌細胞に関連するIgG2κ抗体、ノルアドレナリン酵素に対するモノクローン抗体、サポリンまたは他の抗体標的療法薬に共役するドーパミンβ−ヒドロキッシラーゼ、遺伝子療法薬、およびエナラプリルおよび他のプロドラッグ、Proscar(登録商標)、Hytrin(登録商標)または他の前立腺肥大(HBP)を治療する作用物質、またはそのいずれかの混合物、および様々な形態の小腸粘膜下組織(SIS)のうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0042】
特に好ましい態様では、生物活性物質の層は、構造体の総表面積1cm2当たり、好ましくは約0.01mgから約10mg、より好ましくは約0.1mgから約4mgの生物活性物質を含む。「総表面積」とは、構造体の合計または全体的な範囲から計算し、必ずしも特定の形状または構造体の個々の部品の実際の表面積ではない。つまり。装置の表面には、コーティングの厚さ0.001インチ(0.03mm)につき約100μgから約300μgの薬物を含んでもよい。
【0043】
しかし、構造体12を脈管ステントとして構成する場合、層18の生物活性物質にとって特に好ましい材料は、ヘパリン、デキサメタゾンおよびその誘導体などを含む抗炎症ステロイド、およびヘパリンとこのようなステロイドの混合物である。
【0044】
さらに図1を参照すると、本発明の装置10は、生物活性物質の層18および生物活性物質がない表面上に配置された少なくとも1つの多孔質層20も含む。多孔質層20の目的は、装置10を患者の脈管系内に配置した場合に、生物活性物質を制御下で放出することである。多孔質層20の厚さは、このような制御を提供するよう選択される。
【0045】
特に、多孔質層20は、好ましくは気相蒸着により生物活性物質層18上に付着させたポリマーで構成される。プラズマ蒸着も、この目的には有用なことがある。層20は、溶剤、触媒または同様の重合促進剤がない蒸気から重合化することが好ましい。多孔質層20のポリマーは、蒸気相が凝縮すると、加熱、可視光線または紫外線、放射線、超音波などの硬化剤または活動がなくても自動的に重合化するポリマーであることも好ましい。多孔質層20のポリマーは、ポリイミド、パリレン、またはパリレン誘導体であることが最も好ましい。
【0046】
パリレンまたはパリレン誘導体は、最初に付着した時に、比較的大きい孔を有する繊維質の網に似たネットワークを形成すると考えられる。さらに付着するにつれ、多孔質層20は厚くなるばかりでなく、パリレンまたはパリレン誘導体が既に形成された孔にも付着し、既存の孔を小さくするとも考えられる。したがって、パリレンまたはパリレン誘導体の付着を慎重かつ正確に制御することにより、生物活性物質の少なくとも1つの層18から放出される物質の量を細かく制御することができる。この理由から、生物活性物質は、少なくとも1つの多孔質層20の中またはそれ全体に分散するのではなく、その下にあると考えられる。しかし、多孔質層20は、層10の展開中に、例えば装置をカテーテルに通し、脈管系または患者の他の場所に挿入する間、生物活性物質層18の保護も実行する。
【0047】
図1に示すように、本発明の装置10は、構造体12と生物活性物質の少なくとも1つの層18との間に配置された少なくとも1つの追加コーティング層16を更に備えることができる。追加コーティング層16は、単に医療品級のプライマーでよいが、追加コーティング層16は、少なくとも1つの多孔質層20と同じポリマーで構成することが好ましい。しかし、追加コーティング層16は、少なくとも1つの多孔質層20ほど多孔性でないことも好ましく、ほぼ非孔質であることが、さらに好ましい。「ほぼ非孔質」とは、追加コーティング層16が構造体12の基礎材料14と、使用中に装置10が露出する血液との間の認識可能な相互作用を防止するのに十分なほど不透過性である、という意味である。ほぼ非孔質性である追加コーティング層16を使用することにより、上述したように有害または有毒の基礎材料14を使用することができる。しかし、構造体12の基礎材料14が生物学的に適合性であっても、ほぼ非孔質性のコーティング層16を使用して、これを血液から隔離することができるので有利である。
【0048】
本発明の範囲内に用途がある他のポリマー系には、少なくとも2つの架橋性C−C(炭素・炭素)二重結合を有し、気体でなく重合可能でエチレン不飽和の追加化合物であり、大気圧で100℃を超える沸点と、約100〜1500の分子量を有し、高分子量の追加ポリマーを容易に形成することができる液体モノマーなど、光重合可能なモノマーから誘導したポリマーが含まれる。モノマーは好ましくは、分子またはその混合物ごとに2つ以上のアクリレートまたはメタクリレート基を含む、追加の光重合可能でポリエチレン不飽和のアクリル酸またはメタクリル酸エステルであることが、さらに好ましい。このような多官能アクリレートの幾つかの例示的な例は、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチロプロパントリアクリレート、トリメチロプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレートまたはペンタエリトリトールテトラメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、およびジエチレングリコールジメタクリレートである。
【0049】
幾つかの特殊な場合にも有用なのは、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、および2−ヘドロキシプロピルアクリレートなどのモノアクリレートである。N−メチロールメタクリルアミドブチルエーテルなどの少量の(メタ)アクリル酸のアビニルなどの脂肪族モノカルボン酸などのビニルエステル、ブタンジオール−1,4−ジビニルエーテルおよびアリルエーテルおよびアリルエステルなどのジオールのビニルエーテルも適切である。(メタ)アクリル酸を含むブタンジオール−1,4−ジグリシジルエーテルまたはビスフェノールAジグリシジルエーテルなど、ジまたはポリエポキシの反応生成物など、他のモノマーも含まれる。光重合可能な液体分散媒体の特徴は、モノマーまたはその混合物を適切に選択することにより、特定の目的に合わせて変更することができる。
【0050】
他の有用なポリマー系には、生物学的適合性で、ステントを植え込んだ場合に血管への刺激を最小にするポリマーが含まれる。このポリマーは、所望の放出量または所望のポリマー安定性に応じて、生物学的に安定性または生物学的に吸収性でよいが、この実施形態には生物学的吸収性ポリマーが好ましい。というのは、生物学的に安定性のポリマーと異なり、植込後長期にわたって存在しないので、有害な慢性の局所反応がない。使用できる生物学的吸収性ポリマーには、ポリ(L乳酸)、ポリカプロラクトン、ポリ(ラクチド−コ−グリコライド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート−コ−吉草酸エステル)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリアンヒドライド、ポリ(グリコール酸)、ポリ(D,Lラクトース酸)、ポリ(グリコール酸−コ−トリメチレンカーボネート)、ポリフォスフォエステル、ポリフォスフォエステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、シアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、コポリ(エーテル-エステル)(例えばPEO/PLA)、ポリアルキレンオキサレート、ポリフォスファゼンおよび生体分子、例えばフィブリン、フィブリノゲン、セルロース、スターチ、コラーゲンおよびヒアルロン酸が含まれる。また、ポリウレタン、シリコンおよびポリエステルなどの慢性組織反応が比較的低い生物学的安定性ポリマーを使用することができ、ステント上で溶解し、硬化または重合できる場合は、ポリオレフィン、ポリイソブチレンおよびエチレンアルファオレフィンコポリマー、アクリル酸ポリマーおよびコポリマー、ポリ塩化ビニルなどのビニルハロゲン化ポリマーおよびコポリマー、ポリビニルメチルエーテルなどのポリビニルエーテル、ポリフッ化ビニリデンおよびポリ塩化ビニリデンなどのポリハロゲン化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリスチレンなどの芳香族ポリビニル、ポリ酢酸ビニルなどのポリビニルエステル、エチレンメチルメタクリレートコポリマー、アクリロニトリルスチレンコポリマー、ABS樹脂、および酢酸エチレンビニルコポリマーなどの相互およびオレフィンとのビニルモノマーのコポリマー、ナイロン66およびポリカプロラクタムなどのポリアミド、アルキド樹脂、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、レーヨン、レートントリアセテート、セルロース、酢酸セルロース、セルロースブチレン、酢酸セルロースブチレン、セロファン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル、およびカルボキシメチルセルロースも使用することができる。
【0051】
ステント表面に様々なコーティングを施すには、プラズマ蒸着および気相蒸着が好ましい方法であるが、他の技術を使用してもよい。例えば、ポリマー溶液をステントに塗布し、溶剤を蒸発させ、これによってステント表面にポリマーと治療物質を残すことができる。通常、溶液をステントに噴霧するか、ステントを溶液に浸漬することにより、溶液をステントに塗布することができる。浸漬による塗布か噴霧による塗布かの選択は、原則的に溶液の粘度および表面張力で決まるが、エアブラシで得られるような細かい霧を噴霧すると、均一性が最大のコーティングが提供され、ステントに塗布されるコーティング材料の量を最大限に制御できることが判明している。噴霧または浸漬により塗布したコーティングのいずれも、コーティングの均一性を改善し、ステント上に塗布される治療物質の量の制御を改善するには、複数の塗布ステップが望ましい。
【0052】
生物活性物質の層18が、ヘパリンなどの比較的可溶性の物質を含み、少なくとも1つの多孔質層20がパリレンまたはパリレン誘導体で構成されている場合、少なくとも1つの多孔質層20は、5,000から250,000Åの厚さであることが好ましく、5,000から100,000Åの厚さであることがより好ましく、約50,000Åの厚さが最適である。少なくとも1つの追加コーティング層16がパリレンまたはパリレン誘導体で構成されている場合、少なくとも1つの追加コーティングは、約50,000から500,000Åの厚さであることが好ましく、約100,000から500,000Åの厚さであることがより好ましく、約200,000Åの厚さが最適である。
【0053】
生物活性物質の少なくとも1つの層18が、ヘパリンなどの比較的可用性の物質を含む場合、少なくとも1つの層18は、構造体12の総表面積の1cm2当たり合計約0.1から4mgの生物活性材料を含むことが好ましい。これによるヘパリンの放出量(生体外で測定)は、脈管ステントを通る典型的な血流で、1日に0.5から0.5mg/cm2の範囲であることが望ましく、1日に0.25mg/cm2であることが好ましい。デキサメタゾンの可用性は、ヘパリンを含むか含まずに、これをデキサメタゾン燐酸ナトリウムなどのこれより可溶性が高い誘導体と混合することにより、所望に応じて調節できる。
【0054】
図11は、コーティング層16を構造体12の基礎材料14の外面に直接塗布する、本発明の装置10の別の態様を示す。この形状では、コーティング層16は、前述したような非孔質コーティング層であることが好ましい。コーティング層16がパリレン誘導体を備える場合、非孔質コーティング層16は、50,000から500,000Åの範囲の厚さであり、100,000から500,000Åの範囲であることがより好ましく、約200,000Åであることが最適である。本発明のこの態様では、非孔質コーティング層16も吸着性であり、ここで吸着性とは、W.B. Saunders Co.(Philadelphia, PA)のDorland's Illustrated Medical Dictionary第26版で指示されているように、他の物質または粒子をその表面に引きつける作用物質と定義される。次に、生物活性物質18をコーティング層16の表面に付着させる。追加コーティング層20を生物活性物質層18を塗布することができる。あるいは、コーティング物質および同じまたは異なる生物活性物質の代替層を、生物活性物質層18の表面に加えることができる。しかし、本発明のこの特定の態様では、構造体12の外層が生物活性物質層18である。
【0055】
図11に示すような本発明のさらに別の態様では、コーティング層16は、吸収層および/または生物活性物質を取り付けることができる吸着層と考えることができる。1つの特定の例では、装置10は、構造体12のステンレス鋼の基礎材料14をポリマーおよび特にパリレンでコーティングするステンレス鋼GR II(登録商標)ステントである。このパリレンの吸着性ポリマー層16は、厚さが約230,000Åである。抗血小板GP IIb/IIIa抗体(AZ1)の生物活性物質層18を、吸着性ポリマー層16に受動的に添加した。ポリマーでコーティングしたステンレス鋼ステントを、37℃のAZ1抗体(1mg/ml、pH=7.2)の緩衝水溶液に約24時間浸漬した。AZ1は、モノクローン抗ウサギ血小板糖蛋白(GP)IIb/IIIa抗体である。放射性同位元素で識別されるAZ1を使用し、ステント表面積1mm2当たり約0.02μgの抗体を添加することが実証された(3×20mmのGR II(登録商標)ステントで合計約2μg)。生体外の流システム(10ml/分、PBSに1%のBSA)では、約10日間の潅流の後、ステントに添加した抗体の約半分が残っていることも実証された。
【0056】
ステントに作用物質を添加するメカニズムは、ポリマー層の表面への吸着および/またはポリマーへの吸収を含むと考えられる。
【0057】
同様にセルロースでコーティングしたステンレス鋼ステントにAZ1を添加し、放出させた以前の研究によると、ウサギの深い動脈損傷モデルでは、血小板凝集が阻止され、血栓が減少した。(Aggarwal et al., Antthrombotic Potential of Polymer-Coated Stents Eluting Platelet Glycoprotein IIb/IIa Receptor Antibody, American Heart Association Circulation Vol.94 No.12, December 15, 1996, pp.3311-3317参照)。
【0058】
別の例では、生物活性物質層18としてc7E3Fabをポリマーコーティング層16に取り付ける。生物活性物質c7E3Fabは、血小板のGp IIa/IIIbインテグリンに作用して凝集を阻止するキメラモノクローン抗体である。この抗体または受容体ブロッカーは、人間の静脈に使用し、冠状動脈形成術中に血栓を防止することができる。この受容体ブロッカーは、Eli Lilly(Indianapolis, IN)から入手できるReoPro(登録商標)としても知られる。抗血小板GP IIb/IIIa抗体(c7E3 Fab)の生物活性物質層を、吸着性ポリマー層16に受動的に添加した。ポリマーでコーティングしたステンレス鋼ステントを、37℃のc7E3Fab抗体(1mg/ml、pH=7.2)の緩衝水溶液に約24時間浸漬した。c7E3FaBは、人間の血小板血栓抑制剤である。放射性同位元素で識別されるc7E3Fabを使用し、ステント表面積1mm2当たり約0.10μgの抗体を添加することが実証された(3×20mmのGR II(登録商標)ステントで合計約10μg)。生体外の流システム(10ml/分、PBSに1%のBSA)では、約10日間の潅流の後、ステントに添加した抗体の約半分が残っていることも実証された。知られているように、吸着の程度は、温度および吸着剤の表面積によって決定される。基本的に2種類の吸着がある。つまり物理的な吸着(物理吸着とも呼ぶ)および化学的な吸着(化学吸着とも呼ぶ)。物理吸着の力は、吸着剤表面と吸着質分子との間で小さい。吸着のエネルギーは、概ね3KJmol-1未満である。物理吸着は、通常、可逆性である。化学吸着の結合力は、物理吸着よりはるかに強力であり、吸着のエネルギーは最大400KJmol-1の範囲である。化学吸着は、物理吸着より可逆性が非常に低い。吸着剤ポリマー層16上のc7E3Fabの吸着は、化学吸着と考えられる。
【0059】
別の例では、パクリタキセルをコーティングした冠状動脈ステントが、増殖を抑制する可能性があることを示した。再狭窄のメカニズムは、慢性再造形と新内膜過形成を含む。金属ステントは、慢性再造形を防止することができる。しかし、ステントは実際に新内膜過形成を促進することがあるので、再狭窄の防止に成功するには、ステントと抗増殖薬とを組み合わせた療法が必要となることがある。抗増殖療法の様々な手段のうち、ステントのコーティングから放出される作用物質が魅力的なようである。
【0060】
抗増殖薬のうち、パクリタキセル、つまり抗微小管剤が、平滑筋細胞の増殖および移動を抑制することが判明し、生物活性物質層18として、またはその中に使用することができる。その作用メカニズムは、異常に安定した非機能性微小管の重合を促進することを含む。新内膜過形成を防止するその効力は、平滑筋細胞の培養研究で、および局所的または漸進的に管理した場合に、バルーン損傷の幾つかの動物モデルで実証されている。
【0061】
より最近には、パクリタキセルをコーティングしたステントも、ステント再狭窄モデルのブタの冠状動脈で新内膜過形成を抑制したことが示された。「遅放出性」パクリタキセルでコーティングしたGR
II(登録商標)ステント(作用物質合計175〜200μgで、生体外放出動態は、最初の30日間に0.75μg/日)が、対照標準と比較してステント内再狭窄が大幅に減少したことが判明した(表1)。さらに、コーティング自体が生物学的適合性のようである。基礎材料14または吸着ポリマー層16へのパクリタキセルの吸着は、物理吸着と考えられる。
【0062】
【表1】
【0063】
「速放性」パクリタキセルを2回投与したその後の研究データで、「低投与量」および「高投与量」パクリタキセルでコーティングしたステントは両方とも、対照標準のステントと比較して、ステント内再狭窄を大幅に減少させることが判明した(表2)。
【0064】
【表2】
【0065】
これら研究の結果は、パクリタキセルをコーティングしたステントは、幾何学的再造形を解消し、新内膜過形成を減少させることによって、再狭窄を場合によって効果的に防止できることを示唆する。これらの発見は、大動脈口の病巣や小血管など、危険性が高い病巣の亜集団にとって特に重要であり、ステントの長期結果を改善できるばかりでなく、ステント植込の効能も延長する。これらの研究は、例えば好ましくは10から1000kÅの範囲、より好ましくは20から250kÅ、より好ましくは230kÅの厚さ範囲のパリレンのコーティング層16で実施した。濃縮パクリタキセルを基礎材料14または吸着ポリマー層16上に配置できることも提起された。これらの濃縮物は、0.06μg/mm2から60μg/mm2の範囲、好ましくは1.5μg/mm2から5μg/mm2の範囲、より好ましくは1.8μg/mm2でよい。パクリタキセルは水溶性が低いが、組織のタンパク質および脂質と接触すると、これを吸収することができる。
【0066】
本明細書には、パクリタキセルをコーティングした冠状動脈ステントで過形成を減少させる動物研究の要約も含まれている。これらの研究では、埋め込んだ医療器具は、冠状動脈ステントにパクリタキセルを使用したことから明白なように、細胞毒特性を有する生物活性物質を含んでいた。
【0067】
1ヶ月のブタの研究を実施し、標準的な3.0×12mmの冠状動脈ステント(対照標準)を使用したステント植込の結果を、様々な量のパクリタキセルをコーティングした3.0×12mmのステントを使用して入手した結果とを比較した。これらの研究は、ステントに関して安全性の問題がないことを明らかにし、適切な量でステントにコーティングすれば、パクリタキセルはステント内の再狭窄を阻止することにより、開通性を維持するのに役立つという説得力のある証拠を提供する。
【0068】
幼い家畜ブタで、左前下行冠状動脈(LAD)に1つのステントおよび左回旋枝(LCX)または右冠状動脈(RCA)に1つのステントを入れた。ステント植込前の血管直径の差を考慮に入れるため、各ステントの展開圧力を調節し、バルーン対動脈の比率(BAR)を約1.1から1.2にした。ステント植込後1ヶ月間、ブタを追跡した。
【0069】
ブタには、脂質またはコレステロール補助食品がない標準の高繊維食を給餌した。抗血小板効果のため、各ブタには、外科手術の少なくとも2日前から開始して、325mgのアスピリンと250mgのチクロピジンを毎日投与し、研究の終了時まで続けた。各ブタには、ステント植込中は約10,000単位のヘパリン、および追跡形成術中に約10,000単位のヘパリンも投与した。他には抗血小板薬も抗凝血薬も与えなかった。
【0070】
ステント植込直前、ステント植込直後、および1ヶ月の追跡で、血管撮影図を記録した。追跡血管撮影直後、心臓を切開し、冠状動脈系を生理的圧力の潅流固定法にかけた。次に、血管を処理して、各ステント内の近位、中央および遠位位置から形態測定分析のために組織断面を取得した。
【0071】
ステントを植え込んだ核動脈で、コンピュータ支援定量冠状動脈血管撮影(QCA)分析および組織形態測定分析を実施した。定量病理組織学的分析も実施し、損傷と炎症の両方について各動脈を評価した。
【0072】
表3は、ステント上のパクリタキセルの量、およびパクリタキセルがパリレンの多孔質層で覆われているか否か(対照標準はパクリタキセル0μg、パクリタキセル35μg、パクリタキセル85μg、およびパクリタキセル400μg+パリレンN)によってカテゴリー化した4グループを含む研究の概要を示す。この研究完了前に死亡したブタは、19頭中わずか2頭であった。パクリタキセル5μgグループの1頭は、処置後約1時間で死亡し、パクリタキセル15μgグループの1頭が処置後約17日後に死亡した。
【0073】
【表3】
【0074】
表4は、研究の手順および追跡QCAの結果を示す。パクリタキセルが最大量の3つの処置グループ(つまり、パクリタキセル35μg、パクリタキセル85μg、およびパクリタキセル400μg+パリレンN)は、個々の対照標準グループより追跡時の平均直径および追跡時のMLDが有意に大きかった。その結果、パクリタキセルが最大量の処置グループの後発損失は、対照標準より有意に小さかった。パクリタキセルが最小量の2つの処置グループ(つまりパクリタキセルのコーティング合計が5μgおよび15μg)は、対照標準と比較して、結果に有意の差は見られなかった。したがって、これらの研究は、投与量に応じた効果がある、つまりパクリタキセルがステント内再狭窄を抑制するには少なくとも最小量が必要であることを示唆する。
【0075】
表5は、3ヶ月の研究の定量組織形態測定の結果を示し。これらの結果は、定量血管撮影法の結果と一致する。パクリタキセル最高の3グループの内腔直径および血管外径は、個々の対照標準より大きかったが、パクリタキセル85μgおよびパクリタキセル400μg+パリレンNグループの結果のみが、一貫して有意に大きかった。パクリタキセル85μgおよびパクリタキセル400μg+パリレンNのグループは、血管壁の厚さおよび新内膜の厚さが対照標準より有意に小さかった。パクリタキセルの量が次に多い(35μg)のステントに関する壁の厚さおよび新内膜の厚さの結果は、対照標準より小さい傾向があるが、いずれの測定値も統計的に有意な程度には達しなかった。
【0076】
組織検査により、パクリタキセルでコーティングしたステントまたは対照標準のステントの炎症反応には、有意の差がないことが判明した。パクリタキセル400μg+パリレンN、パクリタキセル85μgおよびパクリタキセル35μgのステントから得た組織片の約50%に管腔繊維素の小さい偶発的斑点が観察され、パクリタキセル15μgのステント、パクリタキセル5μgのステント、または対照標準の冠状動脈ステントのいずれの組織片にも、これは観察されなかった。パクリタキセル400μg+パリレンN、パクリタキセル85μgおよびパクリタキセル35μgのステントの組織片の80%以上、パクリタキセル5μgのステントの組織片の約28%、および対照標準の冠状動脈ステントの組織片の10%未満で、血管壁の細胞欠乏および硝子質化も観察された。これらの発見は、この1ヶ月の研究において臨床後遺症を伴わなかった。
【0077】
【表4】
【0078】
【表5】
【0079】
本発明の植込可能な医療装置について、患者に導入するようになっているステントなどの構造体を使用して説明してきた。構造体12は、基礎材料14で構成され、少なくとも1つの表面を有する。基礎材料の表面は、自身上への生物活性物質の接着を促進するよう、1cm当たり20から30ダインの範囲を超えた固有の表面エネルギー密度を有する。Bairdの研究によると、1cm当たり20から30ダインの範囲で、自身上にある生体がそこにもある場合、物質の接着性が最小になる。選択される基礎材料に応じて、表面エネルギー密度を選択し、自身上に配置された生物活性物質の接着性を最小にする。ステンレス鋼など、選択される基礎材料に応じて、固有の表面エネルギー密度は、市販のイオン・ビーム衝突および/または蒸着で増加させることができる。表面処理を実施し、この場合も基礎材料上に配置された生物活性物質の接着性を最小にする。
【0080】
構造体の表面に配置された生物活性物質に関して、細胞毒特性を有する生物活性物質を選択して、過形成を最小にする。細胞毒特性を有する生物活性物質としてパクリタキセルを使用して、前述した研究を実施した。パクリタキセルは、単独でも、他の抗癌剤、抗腫瘍薬または他の化学療法薬と組み合わせても使用することができる。細胞毒特性を有する生物活性物質を使用することが、細胞毒物質の使用が全く奨励されていないか、禁止さえされている現在の考えに、反対しているのは明白である。
【0081】
図12は、図11の装置10のさらに別の態様を示す。この実施形態では、パリレン接着促進層30を、構造体12のステンレス鋼の基礎材料14に最初に適用する。例示により、接着促進層30は、例えば0.5から5,000Å、好ましくは2から50Åの範囲の厚さを有する薄いシランの層である。このシラン促進層は、ガンマメタクリルオキシプロピルトリメトキシシランを含むA−174シランであることが好ましく、これはSpecialty Coating Systems Inc.(Indianapolis, IN)から入手可能である。基礎材料14の外面を準備する際は、最初にイソプロピルアルコールで洗浄する。次に、ステントをシランに浸漬し、その薄い層を基礎材料の外面に塗布する。次に、パリレンのポリマー・コーティング層16をシラン層に塗布する。基礎材料14の外面を準備する他の方法には、プラズマ・エッチングおよびグリット・ブラスト仕上げがある。準備には、基礎材料の外面をイソプロピルアルコールで洗浄し、基礎材料の外面にプラズマ・エッチングを施し、プラズマ・エッチングした表面にシランを塗布することが含まれる。グリット・ブラスト仕上げを使用して、基礎材料の外面にグリット・ブラスト仕上げを施して、次にイソプロピルアルコールで洗浄し、洗浄したグリット・ブラスト仕上げ表面にシランを塗布する。
【0082】
図2で示すように、本発明の装置10は、生物活性物質の1つの層18を含むことに制限されない。装置10は、例えば、構造体12上に配置された生物活性物質の第2層22を備える。第2層の生物活性物質は、第1の生物活性物質層18の生物活性物質と異なってもよいが、そうである必要はなく、ただし中間の多孔質層24がない状態で装置10の同じ表面に配置してはならない。層18と22に異なる物質を使用することにより、装置10は2つ以上の治療機能を実行することができる。
【0083】
本発明の装置10は、生物活性物質の層18と22それぞれの間に配置されたポリマーの追加の多孔質層24を更に含むことができる。生物活性物質18が構造体12の1つの表面にあることを繰り返しておく。他の表面は、生物活性物質がないか、1つまたは複数の異なる生物活性物質を含んでもよい。追加の多孔質層24により、層18および22の生物活性物質の放出量が異なる。同時に、あるいは代替的に、装置10は、2つの層18および22に、相互に異なり、可溶性が異なる生物活性材料を使用することができる。このような場合、可溶性が低い方の生物活性物質を含む層22を、可溶性が高い方の生物活性物質を含む層18の上に配置すると有利であり、好ましい。あるいは、生物活性物質18を、図8から図10に示され、以下でさらに詳細に検討するように、ステント表面内に生じる穴、窪み、スロットなどに含めてもよい。
【0084】
例えば、装置10の構造体12を脈管ステントとして構成する場合、少なくとも1つの層が比較的可溶性の高いヘパリンを含み、第2層22が比較的可溶性が低いデキサメタゾンを含むと有利である。ヘパリンはデキサメタゾンの放出を促進し、ヘパリンがない場合のデキサメタゾンの放出量より何倍も、放出量を増加させる。ヘパリンの放出量は低下するが、デキサメタゾン放出量の増加ほど劇的には低下しない。特に、デキサメタゾンが、蒸気で開示したような寸法の多孔パリレン層20の下に位置する場合、その放出量は無視できる。十分な放出量は、多孔質層20の厚さが10倍以上減少した場合のみ獲得される。これに対して、デキサメタゾンの層22を、ヘパリンの層18の上で、上述した寸法の多孔パリレン層20より下に配置すると、デキサメタゾンを1日に約1から10μg/cm2という望ましい量で放出することができる。さらに思いがけず、デキサメタゾンのこのような放出量の増加は、ヘパリンが層18から全て放出された後にも維持されると考えられる。
【0085】
生物活性物質層18および/または22は、多孔ポリマー層20および/または24の塗布とは関係なく、装置10に塗布される。装置10を患者の脈管系に導入する前に、層18および/または22の生物活性物質が多孔質層20および/または24に混入することは、意図されず、単に偶発的なことである。これにより、単にポリマー層に生物活性物質を分散させた場合より、生物活性物質の放出量がさらに制御される。
【0086】
装置10は、生物活性物質の層18および22が2つ以上ある場合は、追加の多孔質層24を含む必要がない。図3で示すように、層18および22は、多孔質層で分離する必要がなく、相互に直接当たってもよい。この実施態様では、可溶性が低い方の生物活性物質を含む層22を、可溶性が高い方の生物活性物質を含む層18の上に配置すると、さらに有利である。
【0087】
追加の多孔質層24の有無に関係なく、層18および22は構造体12の総表面積の1cm2当たりそれぞれヘパリンおよびデキサメタゾンを約0.05から2.0mgずつ含むことが好ましい。したがって、構造体12上の層18および22に配置された生物活性物質の総量は、約0.1から10mg/cm2の範囲であることが好ましい。
【0088】
デキサメタゾン燐酸ナトリウムなどのデキサメタゾン誘導体には、デキサメタゾン自体より有意に可溶性が高いものもある。本発明の装置10の生物活性物質として、可溶性が高いデキサメタゾン誘導体を使用する場合は、少なくとも1つの多孔質層20(および追加の多孔質層24)の厚さを、それに応じて調節するとよい。
【0089】
開示されたような装置10の特定の構造体を、様々な方法で特定の使用法に適合させることができる。例えば、装置10は、同じまたは異なる生物活性物質のさらなる層を含んでもよい。生物活性物質のこの追加層は、都合上、または所望に応じて、追加の多孔質層から分離しても、しなくてもよい。あるいは、追加の多孔質層は、生物活性物質の追加の層のいずれかのみ分離してもよい。さらに、装置10の構造体12の1つの部分に1つの生物活性物質を配置し、装置10の構造体12の異なる部分に別の生物活性物質を配置してもよい。
【0090】
別法として、装置10は、追加のコーティング層16を全く含まなくてもよい。このような形状が図4に図示され、ここでは生物活性物質層18が構造体12の基礎材料14の直接上に配置される。このような場合、基礎材料14を表面処理するか表面活性化して、特に少なくとも1つの多孔質層20を付着させる前に、基礎材料14への生物活性物質の付着または接着を促進すると、非常に有利である。表面処理および表面活性化も、生物活性物質の放出量を選択的に変更することができる。このような処理を使用して、基礎材料14上に追加のコーティング層16がある場合は、その付着または接着を促進することもできる。追加のコーティング層16自体、または第2または追加の多孔質層24自体を同様に処理して、生物活性物質層18の付着または接着を促進するか、生物活性物質の放出量をさらに制御することができる。
【0091】
表面処理の有用な方法には、洗浄、エッチングや穿孔、切削または研削などの物理的変更、および溶剤処理、下塗の塗布、界面活性剤塗布、プラズマ処理、イオン衝撃および共有結合などの化学的変更など、様々なこのような処置のいずれかが含まれる。
【0092】
生物活性物質層18を最上部に付着させる前に、追加のコーティング層16(例えばパリレン)をプラズマ処理すると特に有利であることが発見された。プラズマ処理は、生物活性物質の接着性を改善し、付着できる生物活性材料の量を増加させ、生物活性物質がより均一な層に付着させることができるようにする。実際、ヘパリンなどの吸湿性作用物質を、疎水性で湿潤性が低い未変更のパリレン表面に付着させることは非常に困難である。しかし、プラズマ処理により、パリレン表面が湿潤性になり、ヘパリンをその上に容易に付着することができる。
【0093】
多孔ポリマー層20および24のいずれかも、上述した方法のいずれかで表面処理し、生物活性物質の放出量を変更したり、層表面の生物学的適合性を他の方法で改善したりすることができる。例えば、ポリエチレン酸化物、ホスファチジルコリンまたは共有結合した生物活性物質、例えば共有結合で取り付けたヘパリンのオーバーコートを層20および/または24に適用すると、層の表面をさらに血液に適合させることができる。同様に、層20および/または24をプラズマ処理するか、水素コーティングを施すと、その表面エネルギーを変化させ、好ましくは20から30ダイン/cmの範囲の表面エネルギーを提供し、表面をさらに生物適合性にすることができる。
【0094】
図5は、(a)多孔質層20および24のいずれか一方と(b)他の多孔質層20および24、追加コーティング層16および基礎材料14のいずれかまたは全てとの間に機械的接着またはコネクタ26を設けた、図10の実施形態を示す。コネクタ26は、層16、20および/または24を相互に、および基礎材料14に確実に固定する。コネクタ26は、特に生物活性物質層18および/または20が患者の体内に完全に放出された後、装置10に構造的完全性を与える。
【0095】
説明の便宜上、図5では、1つの多孔質層20を基礎材料14に固定する基礎材料14の複数の突起として、コネクタ26を図示している。あるいは、コネクタ26は、多孔質層20から生物活性物質層18を通って基礎材料14まで延在してもよい。いずれの場合も、コネクタ26によって幾つかの区画に分割された生物活性物質の1つの層18を、多孔質層20と基礎材料14との間に配置する。コネクタは、異なる生物活性剤を装置表面の異なる領域に区切る働きもする。
【0096】
コネクタ26は様々な方法で設けることができる。例えば、コネクタ26は、初期製造中、または構造体12へと成形する間に、基礎材料14と一体品として形成することができる。コネクタ26は、既存の構造体12に追加したブリッジ、支柱、ピンまたはスタッドなどの別個の要素として形成することもできる。コネクタ26は、基礎材料上の組合せランド、肩、台地、ポッドまたはパンとして形成することもできる。あるいは、複数のコネクタ26の望ましい位置の間にある基礎材料14の部分を、エッチング、機械的研磨などで除去し、その間に生物活性物質層18を付着させてもよい。コネクタ26は、以前に塗布した生物活性物質層18の一部を拭き取るか、エッチングで除去することによって、基礎材料14へと下方に延在するよう形成し、多孔質層20が気相蒸着またはプラズマ蒸着で基礎材料14の露出部分に直接付着できるようすることができる。基礎材料14の一部を露出させて多孔質層20に直接接続させる他の方法が、当業者には明白である。
【0097】
図6A、図6Bおよび図7で図示するような別の好ましい実施形態では、生物活性物質18を基礎材料14の1つの表面に配置し、図6Aの構造体12を構成する。図7は、コイル状にする前の平坦または平面の状態でステント10を示し、最も外側の表面に塗布した多孔質層20を示す。図6Aおよび図6Bは、図7の線6−6に沿った断面図である。図6Aの基礎材料14の1つの表面に配置された生物活性物質18は、幾つかの異なる治療および/または診断剤でよい。例えば、装置10は、患者の体内の腫瘍付近に配置し、クエン酸タモキシフェンまたはTaxol(登録商標)などの化学療法薬を腫瘍に直接送出するステントでもよい。多孔質層20を生物活性物質18上に配置して、表面を平滑化し、さらに生物活性物質18の放出の制御程度を上げる。図6Aでさらに示すように、装置の対向する表面は、例えば多孔質層20に共有結合したヘパリン18’を有してもよく、特にこの表面が、例えば血管の内腔に対面する場合に、抗血栓効果および血液適合性を提供する。本明細書で検討したように、第3の異なる生物活性物質を、第1の生物活性物質18とは対向する基礎材料14の表面で、共有結合ヘパリンまたは他の共有結合生物活性物質などの他の生物活性物質と同じ基礎材料14の側に配置し、多孔質層20で分離してもよい(図示せず)。
【0098】
図6Aに示す実施形態の変形が図6Bに図示され、ここでは2つの生物活性物質18および18’を、構造体12の基礎材料14の同じ表面に配置する。多孔質層20を、生物活性物質18および18’上、さらに基礎材料の生物活性物質がない表面に配置することができる。この実施形態は、装置10の特定の表面が露出する組織へ、例えば抗炎症剤および抗ウィルス薬など、2つの作用物質を送出することが望ましい状態を示す。さらに、生物活性物質に対向する装置の表面は、例えば抗血栓剤など、1つまたは複数の生物活性物質または治療薬を配置するために使用可能である。
【0099】
既に検討したように、制限要素が装置の合計厚さ、複数の層の接着などである場合、生物活性物質の複数の層および多孔質層を装置10に適用することができる。
【0100】
本発明のさらに別の実施形態では、本発明の装置が、生物活性物質を含むため装置内に開口を含む。この実施形態は、図8、図9、図10A、図10B、図10Cおよび図10Dに図示されている。図8は、図7のステントのアームを示し、ここでアームは、生物活性物質が含まれる穴28を含む。図9は、図8の線9−9に沿ったステントのアームの断面を示す。基礎材料14がコーティング16を含み、多孔質層20が生物活性物質18の最も外側の層を形成して、これを通して拡散する場合、生物活性物質18は穴28に含まれる。代替実施態様では、装置の基礎材料14に窪み28’を切削、エッチングまたは打ち抜くことができ、ここに生物活性物質18を含むことができる。この実施態様は図10A、図10B、図10Cおよび図10Dに図示され、これは図8の線10−10に沿って切り取った断面図である。窪み28’は、医療装置の基礎材料14の表面にあるスロットまたは溝の形態でもよい。本発明のこの態様は、放出される生物活性物質18の総量および放出速度の制御を向上させるという利点を提供する。例えば、図10Dに示すようなV字形の窪み28’は、より均一で直線の放出速度を有する図10Bに示すような正方形の窪み28’と比較すると、含まれる生物活性物質28の量が少なくなり、幾何学的速度で物質を放出する。
【0101】
上述した穴、窪み、スロット、溝などは、様々な技術で装置10の表面に形成することができる。例えば、このような技術には、レーザを使用した穿孔および切削、電子ビームによる機械加工など、またはフォトレジスト手法を使用して所望の口をエッチングすることが含まれる。
【0102】
装置10の表面にコーティングすることができる上記の生物活性物質は全て、本発明のこの態様の口に含むよう使用することができる。同様に、生物活性物質の層および多孔質層を、本発明の他の態様に関して前述したように、装置の外面に適用して組み合わせることができ、例えばヘパリンを、図9に示す装置の1つの表面に共有結合することができる。
【0103】
これで、本発明による装置10の作成方法が理解できる。最も単純な形態では、この方法は、生物活性物質の少なくとも1つの層18を表面12に付着させるステップと、その後、好ましくは気相蒸着またはプラズマ蒸着によって少なくとも1つの多孔質層20を、構造体の1つの表面にある少なくとも1つの生物活性物質層18上に付着するステップとを含む。少なくとも1つの多孔質層20は、生物学的適合性ポリマーで構成され、生物活性物質を制御下で放出するのに十分な厚さである。最初に、少なくとも1つの追加のコーティング層16を、気相蒸着によって構造体12の基礎材料14に直接付着させることが好ましい。このような付着は、ジ−p−キシリレンまたはその誘導体を準備するか取得し、ジ−p−キシリレンまたは誘導体を昇華するか分解して、モノマーのp−キシリレンまたはモノマーの誘導体を生成し、モノマーが基礎材料14上で同時に凝集し、重合できるようにして実行する。付着ステップは、真空状態で、基礎材料14を付着するステップの間、室温またはその付近に維持して実行する。付着は、ポリマーの溶剤または触媒が一切ない状態、および重合を補助する他の作用がない状態で実行する。付着ステップを実行するために好ましい誘導体の一つは、ジクロロ−ジ−p−キシリレンである。パリレンまたはパリレン誘導体を、以上で開示した厚さで適用し、ほぼ非孔質であるが、いかなる場合も適用される少なくとも1つの多孔質層20よりは多孔性が低いコーティング層16を生成することが好ましい。コーティング層16の組成により必要な場合は、次に例えば以上で開示したプラズマ処理など、適切な方法で層16を表面処理する。
【0104】
次に、所望の生物活性物質の少なくとも1つの層18を、構造体12の1つの表面に、特に追加のコーティング層16に塗布する。この塗布ステップは、生物活性物質の流体混合物を追加のコーティング層16に浸漬、ロール塗り、はけ塗り、または噴霧などの様々な都合のよい方法で、または生物活性物質の流体混合物または乾燥粉末を静電塗装する、または他の任意の適切な方法で実行することができる。生物活性物質ごとに装置の異なる区域または表面に塗布することができる。
【0105】
1つまたは複数の生物活性物質および揮発性流体の混合物を構造体に塗布し、次に例えば蒸発などの適切な方法で流体を除去することができるので、特に都合がよい。ヘパリンおよび/またはデキサメタゾンまたはその誘導体が生物活性物質として働く場合、流体はエチルアルコールであることが好ましい。生物活性物質は、上記で開示した量で塗布することが好ましい。
【0106】
構造体12に生物活性物質層18を付着する他の方法も、同様に有用である。しかし塗布する方法に関係なく、重要なのは、多孔質層20を上に付着させるまで、生物活性物質に必要なのは物理的に所定の位置に保持することのみ、ということである。これで、キャリア、界面活性剤、化学結合、および生物活性物質を他の装置に保持するために往々にして使用される他のこのような方法を使用しなくてすむ。このような方法に使用する添加物は有毒なことがあるか、添加物または方法が生物活性剤を変化または劣化させ、効果を低下させるか、有毒にしてしまうことさえある。にもかかわらず、所望に応じて、本発明の生物活性物質18を付着するには、これらの他の方法も使用してよい。
【0107】
生物活性物質は、言うまでもなく、滑らかな膜または粒子の層として、構造体12の1つの表面に付着させることができる。さらに、装置の表面ごとに異なる生物活性物質を含むような方法で、複数の異なる生物活性物質を付着させることができる。後者の場合、粒子サイズが、装置10の特性または特徴に影響することがある。例えば、最も上の多孔コーティング20の滑らかさ、装置10の輪郭、生物活性物質層18が付着する表面積、生物活性物質の放出速度、生物活性物質層18の隆起または凹凸、生物活性物質層18の接着の均一性および強度、および他の特性または特徴である。例えば、小さい粒子サイズ、通常は直径10μm未満まで処理した材料である微粉にした生物活性物質を使用すると有用であった。しかし、生物活性物質は、マイクロカプセルに入れた粒子として付着するか、リポゾーム中に分散させる、小さいキャリア粒子に吸着または吸収させるなどしてもよい。
【0108】
本発明によるさらに別の実施形態では、特定の幾何学的パターンで生物活性物質を構造体12の1つの表面に配置することができる。例えば、ステントのアームの先端に生物活性物質がないか、生物活性物質を平行線状に適用する、特に2つ以上の生物活性物質を同じ表面に適用することができる。
【0109】
いかなる場合も、いったん生物活性物質層18が所定の位置についたら、次に少なくとも1つの多孔質層20を、少なくとも1つの追加層16を塗布したのと同じ方法で、少なくとも1つの生物活性材料層18上に塗布する。しかし、少なくとも1つの多孔質層20を生成するよう、上記の開示より薄く、パリレンまたはパリレン誘導体などのポリマーを塗布する。
【0110】
第2の生物活性物質層22または追加の多孔質層24など、他の任意の層を適切な順序で、上記で開示したのと同じ方法で塗布する。この方法のステップは、上記で開示した生物活性物質、構造体および基礎材料のいずれかで実行することが好ましい。
【0111】
言うまでもなく、多孔質層および追加のコーティング層20、24および/または16のいずれか、または全てに、パリレンおよびその誘導体に関して以上で開示したものと同様の方法で、気相蒸着によりポリイミドを蓄積してもよい。ポリ(エチレン酸化物)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレン酸化物)、シリコン、またはメタン、テトラフルオロエチレンまたはテトラメチルジシロキサンのポリマーを他の物質にプラズマ蒸着させる技術は、よく知られている。
【0112】
生物活性物質の放出を制御する別の技術には、多孔質層20を付着させる前に、ポロゲンと呼ばれる単分散ポリマー粒子を、1つまたは複数の生物活性物質を含む装置10の表面に付着させることが含まれる。多孔質層20を付着させ、硬化させた後、ポロゲンを適切な溶剤で溶解して除去し、外部コーティングに空隙または孔を残して、その下にある生物活性物質の通過を容易にする。
【0113】
本発明の装置10を人間または動物患者の医療処置に使用する方法も、これで容易に理解することができる。本発明の方法は、植込可能な脈管装置10、つまり患者の脈管系に導入するようになっている構造体12および基礎材料14で構成される構造体12を含む装置10を患者に挿入するステップを含む以前の方法に対し、改良されている。本発明による方法は、生物活性物質の少なくとも1つの層18を構造体12の1つの表面に蓄積させる予備ステップと、その後、少なくとも1つの多孔質層20を少なくとも1つの生物活性物質層18上に付着させ、多孔質層20はポリマーで構成され、装置10が患者の脈管系内に配置されると、生物活性物質を制御下で放出するのに十分な厚さを有する。
【0114】
方法は、さらに、上記で開示した装置10の作成方法にしたがって、上記で開示した装置10の様々な実施形態の2つの付着ステップを実行する必要があることがある。特に、少なくとも1つの多孔質層20を付着させるステップは、溶剤または触媒を一切含まないモノマー蒸気、好ましくはパリレンまたはパリレン誘導体の蒸気から少なくとも1つの層20を重合することを含むことができる。方法は、構造体12と少なくとも1つの生物活性物質層18の間に少なくとも1つの追加コーティング層16を付着させるステップも含むことができる。
【0115】
本発明による処置方法は、装置10を患者の脈管系に挿入することによって完了する。少なくとも1つの多孔質層20および任意の追加の多孔質層24が、制御された状態で、即ち徐々に、1つまたは複数の生物活性物質を患者の体内に自動的に放出する。
【0116】
医療処置の方法の残りの詳細は、本発明の装置10を作成する方法に関して開示したものと同じであり、簡潔のためにここでは繰り返さない。
【0117】
前記のように、本発明は、装置に含まれる1つまたは複数の生物活性物質の放出を正確に制御する、植込式医療装置を提供する。さらに、ポリイミド、パリレン、パリレン誘導体または他のポリマー層16、24および/または24は、他のポリマー層に必要な厚さと比較して、驚くほど薄くすることができる。したがって、構造体12上の全体的コーティングの大部分を生物活性物質で構成することができる。これにより、従来技術の装置により供給されるよりはるかに多く、比較的大量の生物活性物質を患者に供給することができる。医療処置の実行中、または実行後に、この量の生物活性物質を、患者の体内の多種多様な位置のいずれかに供給することができるが、PTAで開いた領域に抗血栓薬または他の薬剤を送出することにより、血管の突発性閉鎖および/または再狭窄を防止するのに特に有用である。本発明により、生物活性物質の放出速度を短期および長期の両方にわたって慎重に制御することができる。最も重要なことは、他のポリマー・コーティング技術で生じるかもしれない生物活性物質の劣化が回避されることである。
【産業上の利用可能性】
【0118】
以上説明したように、本発明は、脈管の外科処置の実施時に有用であり、したがって人間用医薬及び獣医薬への適用可能性を有する。
【0119】
本発明によれば、装置の一部しかコーティングしなくてもよいことが考えられる。さらに、装置の様々な部分を様々な生物活性物質またはコーティング層でコーティングすることができる。装置の同じ部分の異なる側または領域を、異なる生物活性物質またはコーティング層でコーティングできることも考えられる。
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、人間および動物用の医療装置に関する。更に詳細には、本発明は薬剤または生物活性物質を組み込んだ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な医療状態を、植込式医療装置を部分的に、または完全に食道、気管、結腸、胆管、尿道、脈管系、または人間または動物患者の他の位置に導入することによって治療することが、一般的になっている。例えば、脈管系の多くの治療は、ステント、カテーテル、バルーン、ワイヤ・ガイド、カニューレなどの装置を導入することを必要とする。しかし、このような装置を脈管系に導入し、それを通して操作すると、血管壁が侵害されたり、損傷を受けたりすることがある。損傷部位では往々にして血塊の形成または血栓症が結果として生じ、狭窄症または血管閉塞を引き起こす。さらに、医療装置が長期間にわたって患者の体内に残ると、装置自体に往々にして血栓が形成され、この場合も狭窄症または閉塞を引き起こす。その結果、患者は、心臓発作、肺塞症、卒中などの様々な合併症の危険を生じる。したがって、このような医療装置の使用は、様々な合併症を惹起する多大な危険性を孕んでおり、その使用方法の改善が企図されている。
【0003】
血管が狭窄症を経験する別の方法は、疾病を通してである。血管の狭窄を引き起こす最も一般的な疾病は、恐らくアテローム性動脈硬化症である。アテローム性動脈硬化症は、一般に冠状動脈、大動脈、腸骨大腿骨動脈および頸動脈に影響を及ぼす状態である。アテローム性動脈硬化症の脂質の斑、線維芽細胞、および繊維素は増殖し、1本または複数の動脈の閉塞を引き起こす。閉塞が増加するにつれ、狭窄症の臨界レベルに到達し、その時点で閉塞より先の血液の流れが不十分になり、閉塞の遠位側(下流)にある組織の代謝要求に適合するには不十分になる。その結果、虚血となる。
【0004】
アテローム性動脈硬化症の治療には、多くの医療装置および治療法が知られている。特定のアテローム性動脈硬化症疾患に特に有用な療法の一つは、経皮経管血管形成術(PTA)である。PTAの最中、バルーンを先端に付けたカテーテルを、バルーンがしぼんだ状態で、患者の動脈に挿入する。カテーテルの先端が、拡張すべきアテローム性動脈硬化症の斑の部位まで前進する。バルーンを動脈の狭窄区画に配置し、次に膨張させる。バルーンを膨張させると、アテローム性動脈硬化症の斑が「ひび割れ」て血管を拡張し、それによって少なくとも部分的に狭窄を緩和する。
【0005】
PTAは現在、広く使用されているが、2つの主要な問題がある。第1に、血管は、拡張処置後の最初の数時間の直後、またはその数時間の間に、急性閉塞を経験することがある。このような閉塞は「突発性閉鎖」と呼ばれる。突発性閉鎖は、恐らくPTAを使用したケースの5%程度で発生し、血流が即座に回復しない場合は、心筋梗塞および死をもたらすことがある。突発性閉鎖の主要なメカニズムは、弾性反跳、動脈切開および/または血栓症であると考えられている。血管形成術の時点で動脈壁に(抗血栓薬などの)適切な薬剤を直接送出すれば、血栓症の急性閉塞の発生率を低下させられると仮定されているが、その試みの結果は混合されている。
【0006】
PTAで遭遇する第2の主要な問題は、最初に血管形成術が成功した後、動脈が再び狭くなることである。このように再び狭くなることを「再狭窄」と呼び、これは通常、血管形成術後、最初の6ヶ月以内に発生する。再狭窄は、動脈壁からの細胞成分の増殖および移動、さらに「再造形」と呼ばれる動脈壁の幾何学的変化を通して生じると考えられる。同様に、適切な薬剤を動脈壁に直接送出すれば、再狭窄につながる細胞および/または再造形の事象を中断できると仮定されている。しかし、血栓症の急性閉塞を防止する試みと同様、この方法で再狭窄を防止する試みも混合されている。
【0007】
非アテローム性動脈硬化症の血管狭窄も、PTAで治療することができる。例えば、タカヤス動脈炎または神経線維腫症は、動脈壁の繊維肥大によって狭窄症を引き起こすことがある。しかし、疾病の繊維の性質のため、これらの病巣の際狭窄は血管形成術後、高い割合で発生する。これを治療または除去する医学的療法は、同様に期待はずれであった。
【0008】
脈管間ステントなどの装置は、PTAに、特に血管形成術後の急性または切迫閉鎖の場合に有用な補助具となることがある。ステントは、動脈の拡張区域に配置され、急性閉鎖および再狭窄を力学的に防止する。残念ながら、積極的かつ正確な抗血小板物質および血液凝固阻止療法(通常は全身に施与する)で、ステントの植込みが達成されても、血栓による血管閉鎖または血栓による合併症の発生率は依然として大きく、再狭窄の防止は、望まれるほど成功していない。さらに、全身の抗血小板物質および血液凝固阻止療法の望ましくない副作用が、出血性合併症の発生率を上昇させ、これは経皮的入口部位で最も多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−99056
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ステント、カテーテル、カニューレおよびその他の装置を食道、気管、胆管、尿道および人間の他の場所に挿入するか、整形外科用装置、インプラント、または代替品で、他の状態および疾病を治療することができる。このような状態および疾病を治療または防止し、例えば通路、内腔または血管などの身体部分の急性閉鎖および/または再狭窄を防止するよう、医療処置の間、またはその後に、適切な作用物質、薬剤または生物活性物質を直接身体部分に確実に送出する装置および方法を開発することが望ましい。特定の例として、PTAで、または関節切除術、レーザ切除などの介入的技術によって治療した血管領域に、抗トロンビン薬または他の薬品を送出できる装置および方法があると望ましい。このような装置は、短期間(つまり治療後の初期数時間および数日)および長期間(治療後数週間および数ヶ月)の両方にわたって作用物質を送出することも望ましい。作用物質、薬剤または生物活性物質の送出量を正確に管理し、それに対する全身暴露量を制限することも望ましい。これは、カテーテルに沿って、およびカテーテル先端で狭窄を防止することにより、静脈内カテーテル(これ自体が治療の成功に必要な作用物質の量を減少させるという利点を有する)を通して特定の器官または部位に化学療法薬を送出することを伴う療法に、特に有利である。多種多様な他の療法を、同様に改良することができる。言うまでもなく、このような装置に組み込む間に、作用物質、薬剤または生物活性物質の劣化を回避することも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
例示的脈管ステント、またはステントまたは他の装置を配置した脈管または他の器官、または体内の他の位置に作用物質、薬剤または生物活性物質を制御可能な状態で放出する他の植込可能な医療装置で、以上の問題が解決され、技術的進歩が達成される。装置構造体の1つの表面にコーティング層を配置することにより、このような装置に適用される作用物質、薬剤または生物活性物質の劣化を回避できることを、出願人は発見した。作用物質、薬剤または生物活性物質を、コーティング層の少なくとも一部に配置し、コーティング層は、自身上に配置された生物活性材料を制御下で放出する。また、本発明の医療装置は、生物活性物質上に配置した多孔質層を更に含み、多孔質層はポリマーで構成され、ポリマーは多孔質層を通して生物活性物質を制御下で放出する。
【0012】
本発明の或る態様では、コーティング層は、例えばパリレン誘導体の非孔質材料を備える。コーティング層は、好ましくは50から500,000オングストローム(Å)の範囲、より好ましくは100,000から500,000Åの範囲、例示的には約200,000Åの厚さを有する。別の態様では、非孔質材料は、吸着性材料または吸収性材料であり、吸着性材料のコーティング層は約230,000Åの厚さを有する。
【0013】
本発明の別の態様では、生物活性物質層は、抗血小板GP IIb/IIIa抗体などのキメラ・モノクローン抗体を含む。
【0014】
本発明のさらに別の態様では、少なくとも一部にコーティング層を配置した構造体の1つの表面に、粘着性促進層を配置する。粘着性促進層は、0.5から5,000Åの範囲の厚さを有するシランを含むことが好ましい。このような装置に適用される作用物質、薬剤または生物活性物質の劣化は、作用物質、薬剤または生物活性物質を、作用物質、薬剤または物質の劣化または損傷を引き起こすような溶剤、触媒、熱または他の化学物質または技術を使用せずに、生物学的適合性ポリマーの多孔質層で覆うことによって回避できることも、出願人は発見した。これらの生物学的適合性ポリマーは、気相蒸着またはプラズマ蒸着によって塗布することが好ましく、蒸気相から凝縮すると重合化して、単に硬化するするか、光分解重合可能でもよく、この目的に有用であることが予想される。しかし、他のコーティング技術も使用できる。
【0015】
装置が脈管系に使用するよう意図された場合、少なくとも1つの層の生物活性物質は、ヘパリンまたは他の抗血小板物質または抗血栓薬、またはデキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、または他のデキサメタゾン誘導体または抗炎症ステロイドであることが好ましい。さらに、以下のカテゴリーの作用物質を含め、広範囲の他の生物活性物質を使用することができる。つまり、血栓溶解薬、血管拡張剤、降圧薬、抗菌物質または抗菌剤、細胞分裂抑制剤、抗増殖剤、抗分泌薬、非ステロイドの抗炎症剤、免疫抑制剤、成長因子および成長因子拮抗薬、抗癌剤および/または化学療法薬、アンチポリメラーゼ、抗ウィルス薬、光力学療法薬、抗体標的療法薬、プロドラッグ、性ホルモン、フリーラジカル捕獲剤、酸化防止剤、生物学的作用物質、放射線治療薬、放射線不透過性作用物質および放射性同位元素で識別する作用物質である。主な制約は、生物活性物質が、少なくとも1つの多孔質層の気相蒸着またはプラズマ蒸着中に使用する真空など、コーティング技術に耐えられる必要があることである。つまり、生物活性物質は、付着温度、通常は常温またはそれに近い温度で比較的低い蒸気圧を持たねばならない。
【0016】
少なくとも1つの多孔質層は、触媒のない気相蒸着で塗布したポリアミド、パリレンまたはパリレン誘導体で構成することが好ましく、約5,000から250,000Åの厚さであると都合がよく、これは生物活性物質を制御下で放出するのに十分である。「パリレン」は、p−キシレンをベースにし、蒸気相重合で作成したポリマーの既知のグループの一般的名称であり、ポリマーの置換していない形態の名称でもあり、本明細書では後者の使用法を用いる。特に、パリレンまたはパリレン誘導体は、最初にp−キシレンまたは適切な誘導体を、周期性2量体di−p−キシレン(またはその誘導体)を生成するのに十分な温度(例えば約950℃)まで加熱することによって生成される。その結果生じた固体は、純粋な形態で分離し、次にひび割れ、十分な温度(例えば約680℃)で熱分解して、p−キシレン(または誘導体)のモノマー蒸気を生成することができる。モノマー蒸気を適切な温度(例えば50℃未満)まで冷却し、所望の対象、例えば生物活性物質の少なくとも1つの層に凝縮できるようにする。その結果生じたポリマーは、反復構造−(−CH2C6H4CH2−)−nを有し、nは約5,000に等しく、分子重量は500,000の範囲である。
【0017】
前記のように、気相蒸着で塗布可能なパリレンおよびパリレン誘導体のコーティングは、様々な生物医学的用途が知られており、Specialty Coating Systems(100 Deposition Drive, Clear Lake, WI 54005)、Para Tech Coating, Inc.(35 Argonaut, Aliso Viejo, CA 92656)およびAdvanced Surface Technology, Inc.(9 Linnel Circle, Billerica, MA 01821-3902)など、様々な供給源から、またはそれを通して市販されている。
【0018】
あるいは、少なくとも1つの多孔質層をプラズマ蒸着で塗布することができる。プラズマは、真空で維持され、通常は無線周波数範囲の電気エネルギーで励起される電離気体である。気体は真空に維持されるので、プラズマ蒸着プロセスは常温で、またはその付近で生じる。プラズマを使用して、ポリ(エチレン酸化物)、ポリ(エチレングリコール)、およびポリ(プロピレン酸化物)などのポリマー、さらにシリコン、メタン、テトラフルオロエチレン(TEFLONブランドのポリマーを含む)、テトラメチルジシオキサンなどのポリマーを付着させることができる。
【0019】
以上は、本発明の幾つかの好ましい実施形態を示すが、光重合可能なモノマーから誘導されたポリマーなど、他のポリマー系も使用することができる。また、例えば浸漬、噴霧など、他のコーティング技術を使用してもよい。
【0020】
装置は、構造体の頂部に2層以上の異なる生物活性材料を含んでもよい。しかし、本発明では、同じ層内で、装置の異なる表面には概ね同じ生物活性物質を配置しない。つまり、装置構造体の各表面は、生物活性物質が最も内側または最も外側の層である以外は、異なる生物活性物質を担持する。例えば、ヘパリンが最も内側の層または最も外側の層、またはその両方を形成することができる。これらの追加的層は、相互に直接載せるか、それぞれの間に入れた追加の多孔ポリマー層によって分離することができる。また、生物活性物質の層は、異なる生物活性物質の混合物を含んでも良い。多孔質層も、パリレンまたはパリレン誘導体で構成する。2つ以上の生物活性物質が異なる可溶性を有することができるので都合がよく、可溶性が低い方の生物活性物質(例えばデキサメタゾン)を含む層を、可溶性が高い方の生物活性物質(例えばヘパリン)を含む層の上に配置することが好ましい。予期することなく、これは、デキサメタゾンなどの比較的可溶性が低い物質の生体外での放出量を増加させながら、同時に、ヘパリンなどの可用性が高い方の物質の放出量を減少させることが判明した。
【0021】
装置に含まれる構造体は、様々な方法で構成することができるが、構造体は、ステンレス鋼、ニッケル、銀、プラチナ、金、チタン、タンタル、イリジウム、タングステン、ニチノール、インコネルなど、生物学的適合性金属で構成された脈管用ステントとして構成することが好ましい。脈管用ステントのすぐ上で、少なくとも1層の生物活性物質の下に、厚さ約50,000から500,000Åのパリレンまたはパリレン誘導体または他の生物学的適合性ポリマーのほぼ非孔質質の追加的コーティング層を付着させてもよい。追加のコーティング層は、単に少なくとも1つの多孔質層より孔が少なくてもよいが、ほぼ非孔質性である、つまりステントが、通常の使用環境で基本的に血液を透過しなくなるのに十分なほど非孔質性であることが好ましい。
【0022】
本発明の装置および方法は、食道、気管、胆管、尿道および脈管系など、人間または動物患者の広範囲の位置に、硬膜下および矯正装置、インプラントまたは置換品に有用である。これは、脈管内処置中、またはその後に適切な生物活性物質を確実に送出するために特に有利であり、特に、血管の急性閉鎖および/または再狭窄防止に使用される。特に、例えばPTAで開いた血管の領域に、抗血栓薬、抗血小板物質、抗炎症剤ステロイド、または他の薬物を送出することができる。同様に、例えば血管の内腔に生物活性物質を送出し、血管壁に別の生物活性物質を送出することができる。多孔性ポリマー層を使用すると、生物活性物質の放出量を、短期間と長期間の両方にわたって伸張に制御することができる。
【0023】
本発明の別の態様では、生物活性物質を非孔質層に取り付けて、長期間にわたって溶出させるので有利である。非孔質層は、構造体の基礎材料に取り付ける。非孔質層は、本明細書の以上または以下で列挙するいずれかでよく、同様に生物活性材料は、本明細書の以上または以下で列挙するいずれかでよい。好ましい実施形態では、市販されているReoPro(登録商標)などの糖蛋白IIb/IIIa抑制物質を、冠状動脈ステントなどの医療装置の外面に配置したパリレンの非孔質層に取り付ける。ReoPro(登録商標)が、長期間にわたってステントの表面から溶出するので有利である。
【0024】
以下、本発明を添付図面に示した実施形態に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の好ましい実施形態の部分概要断面図である。
【図2】本発明の別の好ましい実施形態の部分概要断面図である。
【図3】本発明のさらに別の好ましい実施形態の部分概要断面図である。
【図4】本発明のさらなる好ましい実施形態の部分概要断面図である。
【図5】本発明の追加的な好ましい実施形態の部分概要断面図である。
【図6A】本発明の追加的な好ましい実施形態Aの部分概要断面図である。
【図6B】本発明の追加的な好ましい実施形態Bの部分概要断面図である。
【図7】本発明の追加的な好ましい実施形態の部分概要断面図である。
【図8】図7の部分拡大上面図である。
【図9】図8の線9−9に沿った拡大断面図である。
【図10A】図8の線10−10に沿った断面Aの拡大断面図である。
【図10B】図8の線10−10に沿った断面Bの拡大断面図である。
【図10C】図8の線10−10に沿った断面Cの拡大断面図である。
【図10D】図8の線10−10に沿った断面Dの拡大断面図である。
【図11】生物活性物質が付着されたポリマー・コーティング層を有する図1に示された医療装置の別の実施態様を示す部分概要断面図である。
【図12】ポリマー・コーティング層が接着促進層を用いて装置基礎材料の外面に接着されている図1の医療装置の別の実施態様を示す部分概要断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明による植込可能な医療装置10を示す。医療装置10は先ず、人間または動物患者に導入することができる構造体12からなる。「することができる」とは、構造体12を、このような導入に合わせた形状およびサイズにするという意味である。説明の便宜上、図1は構造体12の一部だけを示す。
【0027】
例えば、構造体12は、特に患者の脈管系に挿入するようになっている脈管用ステントとして構成されている。しかし、このステント構造体は、特に食道、気管、結腸、胆管、尿道および尿管、硬膜下など、他の器官および部位に使用してもよい。実際、構造体12は、代替的に任意の常用の脈管または他の医療装置として構成することができ、螺旋巻きストランド、多孔シリンダなど、様々な従来通りのステントまたは他の補助具のいずれかを含むことができる。さらに、本発明が対処する問題は、患者の体内に実際に配置した装置の部分に関して生じるので、挿入する構造体12は装置全体である必要はなく、患者の体内に導入するよう意図された脈管または他の装置の一部にすぎなくてもよい。したがって、構造体12は、カテーテル、ワイヤ・ガイド、カニューレ、ステント、脈管または他の移植片、心臓ペースメーカのリード線またはリード先端、心臓細動除去器のリード線またはリード先端、心臓弁、または矯正装置、装具、インプラント、または置換品の少なくとも1つ、またはその任意の部分として構成することができる。構造体12は、そのいずれかの部分の組合せとして構成することもできる。
【0028】
しかし、構造体12は、Cook Incorporated(Bloomington, Indiana)から市販されているGianturco-ROubin FLEX-STENT(登録商標)またはGR II(登録商標)冠状動脈ステントなど、脈管系ステントとして構成することが、最も好ましい。このようなステントは、通常、長さが約10から約60mmで、患者の脈管系に挿入されると、約2から約6mmの直径に拡張するよう設計される。特にGianturco-Roubinステントは、通常は長さが約12から約25mmで、このように挿入すると約2から約4mmの直径まで拡張する。
【0029】
これらのステント寸法は、言うまでもなく冠状動脈に使用する例示的ステントに適用可能である。大動脈、食道、気管、結腸、胆道、または尿道など、患者の他の部位に使用するよう意図されたステントまたはカテーテル部分などの構造体は、このような使用にさらに適した異なる寸法を有する。例えば、大動脈、食道、気管および結腸ステントは、最大約25mmの直径および約100mm以上の長さを有する。
【0030】
構造体12は、構造体12の意図された用途に適した基礎材料14で構成される。基礎材料14は、生物学的に適合性であることが好ましいが、患者から十分隔離されていれば、細胞傷害性または他の有毒な基礎材料を使用してもよい。このような非適合性材料は、例えば放射性材料をカテーテルによって治療すべき特定の組織内、またはその近傍に配置する放射線治療に有用である。しかし、大部分の環境では、構造体12の基礎材料は生物学的に適合性であるとよい。
【0031】
基礎材料14として様々な従来の材料を使用することができる。構造体12を例示する冠状動脈ステント以外の構造に、より有用な材料もある。基礎材料14は、これに適用するポリマー層の可撓性または弾性に応じて、弾性または非弾性でよい。基礎材料は、生物分解性または非生物分解性でよく、様々な生物分解性ポリマーが知られている。さらに、例示的な冠状動脈ステントに特に有用でなくても、幾つかの有用な構造体12の基礎材料として働くのに十分な強度を有する生物学的作用物質がある。
【0032】
したがって、基礎材料14は、ステンレス鋼、タンタル、チタン、ニチノール、金、プラチナ、インコネル、イリジウム、銀、タングステン、または別の生物学的適合性金属、またはそのいずれかの合金、炭素または炭素繊維、酢酸セルロース、硝酸セルロース、シリコン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオルトエステル、ポリアンヒドライド、オリエエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、高分子量ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、またはポリ乳酸、ポリグリコール酸またはその共重合体、ポリアンヒドライド、ポリカプロラクタム、吉草酸ポリヒドドキシブチレートまたは他の生物分解性ポリマー、またはその混合物または共重合体、タンパク質、細胞外基質成分、コラーゲン、繊維素または他の生物学的作用物質、またはそのいずれかの適切な混合物のうち少なくとも1つを含むことができる。ステンレス鋼は、構造体12を脈管系ステントとして構成する場合、基礎材料14として特に有用である。
【0033】
言うまでもなく、構造体12をポリプロピレン、ポリエチレン、または蒸気のその他など、放射線透過性材料で構成した場合、従来の放射線不透過性コーティングをこれに塗布することができ、塗布することが好ましい。放射性不透過性コーティングは、患者の脈管系に導入中、または導入した後、X線または透視装置で構造体12の位置を識別する手段を提供する。
【0034】
引き続き図1を参照すると、本発明の脈管装置10は、次に、構造体12の1つの表面に配置された生物活性物質の少なくとも1つの層18を備える。本発明では、構造体12の1つの表面に少なくとも1つの生物活性物質を配置し、他の表面は生物活性物質を含まないか、1つまたは複数の異なる生物活性物質を含む。この方法で、例えば脈管ステントで1つまたは複数の生物活性物質または作用物質を、ステントの内腔表面から血流へと送出し、ステントの導管表面で異なる治療薬を送出することができる。選択された物質が気相蒸着またはプラズマ蒸着中に生じる真空に曝されても耐えることができる限り、層18の生物活性物質として広範囲の薬物、医薬品および物質を使用することができる。本発明の実践に特に有用なのは、ステント挿入の外科手術または他の処置で既に開いた血管の急性閉鎖および再狭窄を防止または改良する材料である。構造体12が脈管ステントである場合、血栓溶解剤(血栓を溶解、破壊または分散させる)および抗血栓形成剤(血栓の形成を妨害または防止する)は、特に有用な生物活性物質である。特に好ましい血栓溶解剤はウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、および組織プラスミノーゲン活性化因子である。特に好ましい抗血栓形成剤は、ヘパリン、ヒルジン、および抗血小板物質である。
【0035】
ウロキナーゼは、通常は人間の腎臓細胞を培養して獲得されるプラスミノーゲン活性酵素である。ウロキナーゼは、プラスミノーゲンの、線維素性血栓を破壊する繊維素溶解プラスミンへの転換に触媒作用を及ぼす。
【0036】
ヘパリンは、通常はブタの腸粘膜またはウシの肺臓から獲得されるムコ多糖体抗凝血薬である。ヘパリンは、血液の内因性抗トロンビンIIIの効果を大幅に増強させることにより、トロンビン抑制物質として作用する。トロンビンは、凝固カスケードの有効な酵素であり、繊維素の形成に触媒作用を及ぼす上で重要である。したがって、トロンビンを阻止することにより、ヘパリンは繊維素トロンビンの形成を阻止する。あるいは、ヘパリンは、構造体12の外層に共有結合してもよい。したがって、ヘパリンは構造体12の最も外側の層を形成し、酵素で容易に分解されず、トロンビン抑制物質として活性状態を維持する。
【0037】
言うまでもなく、他の機能を有する生物活性物質も、本発明の装置10で成功裏に送出することができる。例えば、メトトレキセート(methotrexate)などの抗増殖剤は、平滑筋細胞の過剰増殖を抑制し、したがって血管の拡張区域の再狭窄を抑制する。抗増殖剤は、この目的のため約4ヶ月から6ヶ月の期間にわたって供給することが望ましい。また、高度に脈管が成長することを特徴とする様々な悪性腫瘍状態の治療にも、抗増殖剤の局所的送出が有用である。このような場合、本発明の装置10は、腫瘍の動脈系に配置して、比較的多量の抗増殖剤を腫瘍に直接送出する手段を提供することができる。
【0038】
カルシウム拮抗薬または硝酸塩などの血管拡張剤は、血管形成術処置後によくある血管痙攣を抑制する。血管痙攣は、血管の損傷への反応として発生し、血管が治癒するにつれ、血管痙攣を生じる傾向が低下する。したがって、血管拡張剤は、約2週間から3週間の期間にわたって供給することが望ましい。言うまでもなく、血管形成術による外傷のみが、血管痙攣を引き起こす血管損傷ではなく、装置10は、その血管痙攣を防止するため、大動脈、頸動脈、腎動脈、腸骨動脈、または末梢動脈など、冠状動脈以外の血管に導入することができる。
【0039】
構造体12が冠状動脈ステント以外のものとして形成される場合、様々な他の生物活性物質が特に使用に適している。例えば、装置10により局所的腫瘍に抗癌化学療法薬を送出することができる。特に、装置10を、腫瘍または他の場所に血液を供給する動脈内に配置して、比較的大量の作用物質を腫瘍に直接、長期間にわたって送出しながら、全身暴露および毒性を制限することができる。作用物質は、腫瘍のサイズを縮小する治療の術前減量剤、または疾病の症状を軽減する緩和剤でもよい。本発明の生物活性物質は、装置10を介して送出されるのであって、従来の化学療法で使用するカテーテルを通してなど、装置10で画成される任意の内腔を通る外部の供給源からの通路によって送出されるものではない。本発明の生物活性物質は、言うまでもなく、装置10から、装置によって画定された内腔へ、または装置と接触する組織へ放出することができ、内腔は、これを通して送出される他の作用物質を搬送することができる。例えば、例えば胸部組織または前立腺に位置する腫瘍に送出するため、装置の組織に露出した表面へ、クエン酸タモキシフェン、Taxol(登録商標)またはその誘導体、Proscar(登録商標)、Hytrin(登録商標)またはEulexin(登録商標)を塗布することができる。
【0040】
パーキンソン病などの神経障害の治療には、メシル酸ブロモクリプチンまたはペルゴリドメチラートなどのドーパミンまたは作用薬が有用である。装置10は、この目的のために視床黒質に供給する脈管、または他の場所に配置して、視床の治療を局所化することができる。
【0041】
広範囲の他の生物活性物質を装置10で送出することができる。したがって、層18に含まれる生物活性物質はヘパリン、共有結合ヘパリン、または他のトロンビン抑制剤、ヒルジン、ヒルログ、アルガトロンバン、D−フェニルアラニル、−L−ポリ−L−アルギニルクロロメチルケトン、または別の抗トロンボゲン剤、またはその混合物、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子、または部の血栓溶解剤、またはその混合物、線維素溶解素、血管痙攣抑制剤、カルシウム拮抗薬、硝酸塩、窒素酸化物、窒素酸化物促進剤または別の血管拡張剤、Hytrin(登録商標)または他の降圧薬、抗菌剤または抗生物質、アスピリン、チクロピジン、糖蛋白IIb/IIIa抑制剤または表面糖蛋白受容体の他の抑制剤、または他の抗血小板剤、コルヒチンまたは他の細胞分裂抑制薬、または別の微小管抑制剤、ジメチルスルホキシド(DMSO)、レチノイドまたは別の抗分泌剤、サイトカラシンまたは別のアクチン抑制剤、または再造形抑制剤、デオキシリボ核酸、アンチセンスヌクレオチドまたは別の分子遺伝介入の作用物質、メトトレキセートまたは別の代謝拮抗物質または抗増殖剤、クエン酸タモキシフェン、Taxol(登録商標)またはその誘導体、または他の抗癌化学療法作用物質、デキサメタゾン、デキサメタゾン燐酸ナトリウム、酢酸デキサメタゾンまたは別のデキサメタゾン誘導体、または別の抗炎症ステロイドまたは非ステロイド系抗炎症剤、サイクロスポリンまたは別の免疫抑制剤、トラピダル(PDGF拮抗薬)、アンジオペプチン(成長ホルモン拮抗薬)、アンジオジェニン、成長因子、抗成長因子抗体、または別の成長因子拮抗薬、ドーパミン、メシル酸ブロモクリプチン、パーゴライドメシレートまたは別のドーパミン作動薬、60Co(半減期5.3年)、192Ir(73.8日)、32P(14.3日)、111In(68時間)、90Y(64時間)、99mTc(6時間)または別の放射線療法薬、沃素含有化合物、バリウム含有化合物、金、タンタル、プラチナ、タングステン、酵素、細胞外基質成分、細胞成分または別の生物学的作用物質、カプトプリル、エナラプリルまたは別のアンギオテンシン転換酵素(ACE)阻害薬、アスコルビン酸、α‐トコフェロール、スーパーオキシドジスムターゼ、デスフェリオキサミン、21−アミノステロイド(ラサロイド)または別のフリーラジカル捕獲剤、鉄キレート剤または酸化防止剤、14C−、3H−、131I−、32P−または36S−の放射性同位元素を使って識別する形態または以上のいずれかの他の放射性同位元素を使って識別する形態、エストロゲンまたは別の性ホルモン、AZTまたは他のアンチポリメラーゼ、アシクロビル、ファミシクロビル、塩酸リマンタジン、ガンシクロビルナトリウム、ノルビル、Crixivanまたは他の抗ウイルス薬、5−アミノレブリン酸、メタテトラヒドロキシフェニルクロリン、ヘキサデカフルオロ亜鉛フタロシアニン、テトラメチルヘマトポルフィリン、ローダミン123または他の光力学療法薬、緑膿菌外毒素Aに対抗し、A431表皮癌細胞に関連するIgG2κ抗体、ノルアドレナリン酵素に対するモノクローン抗体、サポリンまたは他の抗体標的療法薬に共役するドーパミンβ−ヒドロキッシラーゼ、遺伝子療法薬、およびエナラプリルおよび他のプロドラッグ、Proscar(登録商標)、Hytrin(登録商標)または他の前立腺肥大(HBP)を治療する作用物質、またはそのいずれかの混合物、および様々な形態の小腸粘膜下組織(SIS)のうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0042】
特に好ましい態様では、生物活性物質の層は、構造体の総表面積1cm2当たり、好ましくは約0.01mgから約10mg、より好ましくは約0.1mgから約4mgの生物活性物質を含む。「総表面積」とは、構造体の合計または全体的な範囲から計算し、必ずしも特定の形状または構造体の個々の部品の実際の表面積ではない。つまり。装置の表面には、コーティングの厚さ0.001インチ(0.03mm)につき約100μgから約300μgの薬物を含んでもよい。
【0043】
しかし、構造体12を脈管ステントとして構成する場合、層18の生物活性物質にとって特に好ましい材料は、ヘパリン、デキサメタゾンおよびその誘導体などを含む抗炎症ステロイド、およびヘパリンとこのようなステロイドの混合物である。
【0044】
さらに図1を参照すると、本発明の装置10は、生物活性物質の層18および生物活性物質がない表面上に配置された少なくとも1つの多孔質層20も含む。多孔質層20の目的は、装置10を患者の脈管系内に配置した場合に、生物活性物質を制御下で放出することである。多孔質層20の厚さは、このような制御を提供するよう選択される。
【0045】
特に、多孔質層20は、好ましくは気相蒸着により生物活性物質層18上に付着させたポリマーで構成される。プラズマ蒸着も、この目的には有用なことがある。層20は、溶剤、触媒または同様の重合促進剤がない蒸気から重合化することが好ましい。多孔質層20のポリマーは、蒸気相が凝縮すると、加熱、可視光線または紫外線、放射線、超音波などの硬化剤または活動がなくても自動的に重合化するポリマーであることも好ましい。多孔質層20のポリマーは、ポリイミド、パリレン、またはパリレン誘導体であることが最も好ましい。
【0046】
パリレンまたはパリレン誘導体は、最初に付着した時に、比較的大きい孔を有する繊維質の網に似たネットワークを形成すると考えられる。さらに付着するにつれ、多孔質層20は厚くなるばかりでなく、パリレンまたはパリレン誘導体が既に形成された孔にも付着し、既存の孔を小さくするとも考えられる。したがって、パリレンまたはパリレン誘導体の付着を慎重かつ正確に制御することにより、生物活性物質の少なくとも1つの層18から放出される物質の量を細かく制御することができる。この理由から、生物活性物質は、少なくとも1つの多孔質層20の中またはそれ全体に分散するのではなく、その下にあると考えられる。しかし、多孔質層20は、層10の展開中に、例えば装置をカテーテルに通し、脈管系または患者の他の場所に挿入する間、生物活性物質層18の保護も実行する。
【0047】
図1に示すように、本発明の装置10は、構造体12と生物活性物質の少なくとも1つの層18との間に配置された少なくとも1つの追加コーティング層16を更に備えることができる。追加コーティング層16は、単に医療品級のプライマーでよいが、追加コーティング層16は、少なくとも1つの多孔質層20と同じポリマーで構成することが好ましい。しかし、追加コーティング層16は、少なくとも1つの多孔質層20ほど多孔性でないことも好ましく、ほぼ非孔質であることが、さらに好ましい。「ほぼ非孔質」とは、追加コーティング層16が構造体12の基礎材料14と、使用中に装置10が露出する血液との間の認識可能な相互作用を防止するのに十分なほど不透過性である、という意味である。ほぼ非孔質性である追加コーティング層16を使用することにより、上述したように有害または有毒の基礎材料14を使用することができる。しかし、構造体12の基礎材料14が生物学的に適合性であっても、ほぼ非孔質性のコーティング層16を使用して、これを血液から隔離することができるので有利である。
【0048】
本発明の範囲内に用途がある他のポリマー系には、少なくとも2つの架橋性C−C(炭素・炭素)二重結合を有し、気体でなく重合可能でエチレン不飽和の追加化合物であり、大気圧で100℃を超える沸点と、約100〜1500の分子量を有し、高分子量の追加ポリマーを容易に形成することができる液体モノマーなど、光重合可能なモノマーから誘導したポリマーが含まれる。モノマーは好ましくは、分子またはその混合物ごとに2つ以上のアクリレートまたはメタクリレート基を含む、追加の光重合可能でポリエチレン不飽和のアクリル酸またはメタクリル酸エステルであることが、さらに好ましい。このような多官能アクリレートの幾つかの例示的な例は、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチロプロパントリアクリレート、トリメチロプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレートまたはペンタエリトリトールテトラメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、およびジエチレングリコールジメタクリレートである。
【0049】
幾つかの特殊な場合にも有用なのは、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、および2−ヘドロキシプロピルアクリレートなどのモノアクリレートである。N−メチロールメタクリルアミドブチルエーテルなどの少量の(メタ)アクリル酸のアビニルなどの脂肪族モノカルボン酸などのビニルエステル、ブタンジオール−1,4−ジビニルエーテルおよびアリルエーテルおよびアリルエステルなどのジオールのビニルエーテルも適切である。(メタ)アクリル酸を含むブタンジオール−1,4−ジグリシジルエーテルまたはビスフェノールAジグリシジルエーテルなど、ジまたはポリエポキシの反応生成物など、他のモノマーも含まれる。光重合可能な液体分散媒体の特徴は、モノマーまたはその混合物を適切に選択することにより、特定の目的に合わせて変更することができる。
【0050】
他の有用なポリマー系には、生物学的適合性で、ステントを植え込んだ場合に血管への刺激を最小にするポリマーが含まれる。このポリマーは、所望の放出量または所望のポリマー安定性に応じて、生物学的に安定性または生物学的に吸収性でよいが、この実施形態には生物学的吸収性ポリマーが好ましい。というのは、生物学的に安定性のポリマーと異なり、植込後長期にわたって存在しないので、有害な慢性の局所反応がない。使用できる生物学的吸収性ポリマーには、ポリ(L乳酸)、ポリカプロラクトン、ポリ(ラクチド−コ−グリコライド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート−コ−吉草酸エステル)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリアンヒドライド、ポリ(グリコール酸)、ポリ(D,Lラクトース酸)、ポリ(グリコール酸−コ−トリメチレンカーボネート)、ポリフォスフォエステル、ポリフォスフォエステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、シアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、コポリ(エーテル-エステル)(例えばPEO/PLA)、ポリアルキレンオキサレート、ポリフォスファゼンおよび生体分子、例えばフィブリン、フィブリノゲン、セルロース、スターチ、コラーゲンおよびヒアルロン酸が含まれる。また、ポリウレタン、シリコンおよびポリエステルなどの慢性組織反応が比較的低い生物学的安定性ポリマーを使用することができ、ステント上で溶解し、硬化または重合できる場合は、ポリオレフィン、ポリイソブチレンおよびエチレンアルファオレフィンコポリマー、アクリル酸ポリマーおよびコポリマー、ポリ塩化ビニルなどのビニルハロゲン化ポリマーおよびコポリマー、ポリビニルメチルエーテルなどのポリビニルエーテル、ポリフッ化ビニリデンおよびポリ塩化ビニリデンなどのポリハロゲン化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリスチレンなどの芳香族ポリビニル、ポリ酢酸ビニルなどのポリビニルエステル、エチレンメチルメタクリレートコポリマー、アクリロニトリルスチレンコポリマー、ABS樹脂、および酢酸エチレンビニルコポリマーなどの相互およびオレフィンとのビニルモノマーのコポリマー、ナイロン66およびポリカプロラクタムなどのポリアミド、アルキド樹脂、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、レーヨン、レートントリアセテート、セルロース、酢酸セルロース、セルロースブチレン、酢酸セルロースブチレン、セロファン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル、およびカルボキシメチルセルロースも使用することができる。
【0051】
ステント表面に様々なコーティングを施すには、プラズマ蒸着および気相蒸着が好ましい方法であるが、他の技術を使用してもよい。例えば、ポリマー溶液をステントに塗布し、溶剤を蒸発させ、これによってステント表面にポリマーと治療物質を残すことができる。通常、溶液をステントに噴霧するか、ステントを溶液に浸漬することにより、溶液をステントに塗布することができる。浸漬による塗布か噴霧による塗布かの選択は、原則的に溶液の粘度および表面張力で決まるが、エアブラシで得られるような細かい霧を噴霧すると、均一性が最大のコーティングが提供され、ステントに塗布されるコーティング材料の量を最大限に制御できることが判明している。噴霧または浸漬により塗布したコーティングのいずれも、コーティングの均一性を改善し、ステント上に塗布される治療物質の量の制御を改善するには、複数の塗布ステップが望ましい。
【0052】
生物活性物質の層18が、ヘパリンなどの比較的可溶性の物質を含み、少なくとも1つの多孔質層20がパリレンまたはパリレン誘導体で構成されている場合、少なくとも1つの多孔質層20は、5,000から250,000Åの厚さであることが好ましく、5,000から100,000Åの厚さであることがより好ましく、約50,000Åの厚さが最適である。少なくとも1つの追加コーティング層16がパリレンまたはパリレン誘導体で構成されている場合、少なくとも1つの追加コーティングは、約50,000から500,000Åの厚さであることが好ましく、約100,000から500,000Åの厚さであることがより好ましく、約200,000Åの厚さが最適である。
【0053】
生物活性物質の少なくとも1つの層18が、ヘパリンなどの比較的可用性の物質を含む場合、少なくとも1つの層18は、構造体12の総表面積の1cm2当たり合計約0.1から4mgの生物活性材料を含むことが好ましい。これによるヘパリンの放出量(生体外で測定)は、脈管ステントを通る典型的な血流で、1日に0.5から0.5mg/cm2の範囲であることが望ましく、1日に0.25mg/cm2であることが好ましい。デキサメタゾンの可用性は、ヘパリンを含むか含まずに、これをデキサメタゾン燐酸ナトリウムなどのこれより可溶性が高い誘導体と混合することにより、所望に応じて調節できる。
【0054】
図11は、コーティング層16を構造体12の基礎材料14の外面に直接塗布する、本発明の装置10の別の態様を示す。この形状では、コーティング層16は、前述したような非孔質コーティング層であることが好ましい。コーティング層16がパリレン誘導体を備える場合、非孔質コーティング層16は、50,000から500,000Åの範囲の厚さであり、100,000から500,000Åの範囲であることがより好ましく、約200,000Åであることが最適である。本発明のこの態様では、非孔質コーティング層16も吸着性であり、ここで吸着性とは、W.B. Saunders Co.(Philadelphia, PA)のDorland's Illustrated Medical Dictionary第26版で指示されているように、他の物質または粒子をその表面に引きつける作用物質と定義される。次に、生物活性物質18をコーティング層16の表面に付着させる。追加コーティング層20を生物活性物質層18を塗布することができる。あるいは、コーティング物質および同じまたは異なる生物活性物質の代替層を、生物活性物質層18の表面に加えることができる。しかし、本発明のこの特定の態様では、構造体12の外層が生物活性物質層18である。
【0055】
図11に示すような本発明のさらに別の態様では、コーティング層16は、吸収層および/または生物活性物質を取り付けることができる吸着層と考えることができる。1つの特定の例では、装置10は、構造体12のステンレス鋼の基礎材料14をポリマーおよび特にパリレンでコーティングするステンレス鋼GR II(登録商標)ステントである。このパリレンの吸着性ポリマー層16は、厚さが約230,000Åである。抗血小板GP IIb/IIIa抗体(AZ1)の生物活性物質層18を、吸着性ポリマー層16に受動的に添加した。ポリマーでコーティングしたステンレス鋼ステントを、37℃のAZ1抗体(1mg/ml、pH=7.2)の緩衝水溶液に約24時間浸漬した。AZ1は、モノクローン抗ウサギ血小板糖蛋白(GP)IIb/IIIa抗体である。放射性同位元素で識別されるAZ1を使用し、ステント表面積1mm2当たり約0.02μgの抗体を添加することが実証された(3×20mmのGR II(登録商標)ステントで合計約2μg)。生体外の流システム(10ml/分、PBSに1%のBSA)では、約10日間の潅流の後、ステントに添加した抗体の約半分が残っていることも実証された。
【0056】
ステントに作用物質を添加するメカニズムは、ポリマー層の表面への吸着および/またはポリマーへの吸収を含むと考えられる。
【0057】
同様にセルロースでコーティングしたステンレス鋼ステントにAZ1を添加し、放出させた以前の研究によると、ウサギの深い動脈損傷モデルでは、血小板凝集が阻止され、血栓が減少した。(Aggarwal et al., Antthrombotic Potential of Polymer-Coated Stents Eluting Platelet Glycoprotein IIb/IIa Receptor Antibody, American Heart Association Circulation Vol.94 No.12, December 15, 1996, pp.3311-3317参照)。
【0058】
別の例では、生物活性物質層18としてc7E3Fabをポリマーコーティング層16に取り付ける。生物活性物質c7E3Fabは、血小板のGp IIa/IIIbインテグリンに作用して凝集を阻止するキメラモノクローン抗体である。この抗体または受容体ブロッカーは、人間の静脈に使用し、冠状動脈形成術中に血栓を防止することができる。この受容体ブロッカーは、Eli Lilly(Indianapolis, IN)から入手できるReoPro(登録商標)としても知られる。抗血小板GP IIb/IIIa抗体(c7E3 Fab)の生物活性物質層を、吸着性ポリマー層16に受動的に添加した。ポリマーでコーティングしたステンレス鋼ステントを、37℃のc7E3Fab抗体(1mg/ml、pH=7.2)の緩衝水溶液に約24時間浸漬した。c7E3FaBは、人間の血小板血栓抑制剤である。放射性同位元素で識別されるc7E3Fabを使用し、ステント表面積1mm2当たり約0.10μgの抗体を添加することが実証された(3×20mmのGR II(登録商標)ステントで合計約10μg)。生体外の流システム(10ml/分、PBSに1%のBSA)では、約10日間の潅流の後、ステントに添加した抗体の約半分が残っていることも実証された。知られているように、吸着の程度は、温度および吸着剤の表面積によって決定される。基本的に2種類の吸着がある。つまり物理的な吸着(物理吸着とも呼ぶ)および化学的な吸着(化学吸着とも呼ぶ)。物理吸着の力は、吸着剤表面と吸着質分子との間で小さい。吸着のエネルギーは、概ね3KJmol-1未満である。物理吸着は、通常、可逆性である。化学吸着の結合力は、物理吸着よりはるかに強力であり、吸着のエネルギーは最大400KJmol-1の範囲である。化学吸着は、物理吸着より可逆性が非常に低い。吸着剤ポリマー層16上のc7E3Fabの吸着は、化学吸着と考えられる。
【0059】
別の例では、パクリタキセルをコーティングした冠状動脈ステントが、増殖を抑制する可能性があることを示した。再狭窄のメカニズムは、慢性再造形と新内膜過形成を含む。金属ステントは、慢性再造形を防止することができる。しかし、ステントは実際に新内膜過形成を促進することがあるので、再狭窄の防止に成功するには、ステントと抗増殖薬とを組み合わせた療法が必要となることがある。抗増殖療法の様々な手段のうち、ステントのコーティングから放出される作用物質が魅力的なようである。
【0060】
抗増殖薬のうち、パクリタキセル、つまり抗微小管剤が、平滑筋細胞の増殖および移動を抑制することが判明し、生物活性物質層18として、またはその中に使用することができる。その作用メカニズムは、異常に安定した非機能性微小管の重合を促進することを含む。新内膜過形成を防止するその効力は、平滑筋細胞の培養研究で、および局所的または漸進的に管理した場合に、バルーン損傷の幾つかの動物モデルで実証されている。
【0061】
より最近には、パクリタキセルをコーティングしたステントも、ステント再狭窄モデルのブタの冠状動脈で新内膜過形成を抑制したことが示された。「遅放出性」パクリタキセルでコーティングしたGR
II(登録商標)ステント(作用物質合計175〜200μgで、生体外放出動態は、最初の30日間に0.75μg/日)が、対照標準と比較してステント内再狭窄が大幅に減少したことが判明した(表1)。さらに、コーティング自体が生物学的適合性のようである。基礎材料14または吸着ポリマー層16へのパクリタキセルの吸着は、物理吸着と考えられる。
【0062】
【表1】
【0063】
「速放性」パクリタキセルを2回投与したその後の研究データで、「低投与量」および「高投与量」パクリタキセルでコーティングしたステントは両方とも、対照標準のステントと比較して、ステント内再狭窄を大幅に減少させることが判明した(表2)。
【0064】
【表2】
【0065】
これら研究の結果は、パクリタキセルをコーティングしたステントは、幾何学的再造形を解消し、新内膜過形成を減少させることによって、再狭窄を場合によって効果的に防止できることを示唆する。これらの発見は、大動脈口の病巣や小血管など、危険性が高い病巣の亜集団にとって特に重要であり、ステントの長期結果を改善できるばかりでなく、ステント植込の効能も延長する。これらの研究は、例えば好ましくは10から1000kÅの範囲、より好ましくは20から250kÅ、より好ましくは230kÅの厚さ範囲のパリレンのコーティング層16で実施した。濃縮パクリタキセルを基礎材料14または吸着ポリマー層16上に配置できることも提起された。これらの濃縮物は、0.06μg/mm2から60μg/mm2の範囲、好ましくは1.5μg/mm2から5μg/mm2の範囲、より好ましくは1.8μg/mm2でよい。パクリタキセルは水溶性が低いが、組織のタンパク質および脂質と接触すると、これを吸収することができる。
【0066】
本明細書には、パクリタキセルをコーティングした冠状動脈ステントで過形成を減少させる動物研究の要約も含まれている。これらの研究では、埋め込んだ医療器具は、冠状動脈ステントにパクリタキセルを使用したことから明白なように、細胞毒特性を有する生物活性物質を含んでいた。
【0067】
1ヶ月のブタの研究を実施し、標準的な3.0×12mmの冠状動脈ステント(対照標準)を使用したステント植込の結果を、様々な量のパクリタキセルをコーティングした3.0×12mmのステントを使用して入手した結果とを比較した。これらの研究は、ステントに関して安全性の問題がないことを明らかにし、適切な量でステントにコーティングすれば、パクリタキセルはステント内の再狭窄を阻止することにより、開通性を維持するのに役立つという説得力のある証拠を提供する。
【0068】
幼い家畜ブタで、左前下行冠状動脈(LAD)に1つのステントおよび左回旋枝(LCX)または右冠状動脈(RCA)に1つのステントを入れた。ステント植込前の血管直径の差を考慮に入れるため、各ステントの展開圧力を調節し、バルーン対動脈の比率(BAR)を約1.1から1.2にした。ステント植込後1ヶ月間、ブタを追跡した。
【0069】
ブタには、脂質またはコレステロール補助食品がない標準の高繊維食を給餌した。抗血小板効果のため、各ブタには、外科手術の少なくとも2日前から開始して、325mgのアスピリンと250mgのチクロピジンを毎日投与し、研究の終了時まで続けた。各ブタには、ステント植込中は約10,000単位のヘパリン、および追跡形成術中に約10,000単位のヘパリンも投与した。他には抗血小板薬も抗凝血薬も与えなかった。
【0070】
ステント植込直前、ステント植込直後、および1ヶ月の追跡で、血管撮影図を記録した。追跡血管撮影直後、心臓を切開し、冠状動脈系を生理的圧力の潅流固定法にかけた。次に、血管を処理して、各ステント内の近位、中央および遠位位置から形態測定分析のために組織断面を取得した。
【0071】
ステントを植え込んだ核動脈で、コンピュータ支援定量冠状動脈血管撮影(QCA)分析および組織形態測定分析を実施した。定量病理組織学的分析も実施し、損傷と炎症の両方について各動脈を評価した。
【0072】
表3は、ステント上のパクリタキセルの量、およびパクリタキセルがパリレンの多孔質層で覆われているか否か(対照標準はパクリタキセル0μg、パクリタキセル35μg、パクリタキセル85μg、およびパクリタキセル400μg+パリレンN)によってカテゴリー化した4グループを含む研究の概要を示す。この研究完了前に死亡したブタは、19頭中わずか2頭であった。パクリタキセル5μgグループの1頭は、処置後約1時間で死亡し、パクリタキセル15μgグループの1頭が処置後約17日後に死亡した。
【0073】
【表3】
【0074】
表4は、研究の手順および追跡QCAの結果を示す。パクリタキセルが最大量の3つの処置グループ(つまり、パクリタキセル35μg、パクリタキセル85μg、およびパクリタキセル400μg+パリレンN)は、個々の対照標準グループより追跡時の平均直径および追跡時のMLDが有意に大きかった。その結果、パクリタキセルが最大量の処置グループの後発損失は、対照標準より有意に小さかった。パクリタキセルが最小量の2つの処置グループ(つまりパクリタキセルのコーティング合計が5μgおよび15μg)は、対照標準と比較して、結果に有意の差は見られなかった。したがって、これらの研究は、投与量に応じた効果がある、つまりパクリタキセルがステント内再狭窄を抑制するには少なくとも最小量が必要であることを示唆する。
【0075】
表5は、3ヶ月の研究の定量組織形態測定の結果を示し。これらの結果は、定量血管撮影法の結果と一致する。パクリタキセル最高の3グループの内腔直径および血管外径は、個々の対照標準より大きかったが、パクリタキセル85μgおよびパクリタキセル400μg+パリレンNグループの結果のみが、一貫して有意に大きかった。パクリタキセル85μgおよびパクリタキセル400μg+パリレンNのグループは、血管壁の厚さおよび新内膜の厚さが対照標準より有意に小さかった。パクリタキセルの量が次に多い(35μg)のステントに関する壁の厚さおよび新内膜の厚さの結果は、対照標準より小さい傾向があるが、いずれの測定値も統計的に有意な程度には達しなかった。
【0076】
組織検査により、パクリタキセルでコーティングしたステントまたは対照標準のステントの炎症反応には、有意の差がないことが判明した。パクリタキセル400μg+パリレンN、パクリタキセル85μgおよびパクリタキセル35μgのステントから得た組織片の約50%に管腔繊維素の小さい偶発的斑点が観察され、パクリタキセル15μgのステント、パクリタキセル5μgのステント、または対照標準の冠状動脈ステントのいずれの組織片にも、これは観察されなかった。パクリタキセル400μg+パリレンN、パクリタキセル85μgおよびパクリタキセル35μgのステントの組織片の80%以上、パクリタキセル5μgのステントの組織片の約28%、および対照標準の冠状動脈ステントの組織片の10%未満で、血管壁の細胞欠乏および硝子質化も観察された。これらの発見は、この1ヶ月の研究において臨床後遺症を伴わなかった。
【0077】
【表4】
【0078】
【表5】
【0079】
本発明の植込可能な医療装置について、患者に導入するようになっているステントなどの構造体を使用して説明してきた。構造体12は、基礎材料14で構成され、少なくとも1つの表面を有する。基礎材料の表面は、自身上への生物活性物質の接着を促進するよう、1cm当たり20から30ダインの範囲を超えた固有の表面エネルギー密度を有する。Bairdの研究によると、1cm当たり20から30ダインの範囲で、自身上にある生体がそこにもある場合、物質の接着性が最小になる。選択される基礎材料に応じて、表面エネルギー密度を選択し、自身上に配置された生物活性物質の接着性を最小にする。ステンレス鋼など、選択される基礎材料に応じて、固有の表面エネルギー密度は、市販のイオン・ビーム衝突および/または蒸着で増加させることができる。表面処理を実施し、この場合も基礎材料上に配置された生物活性物質の接着性を最小にする。
【0080】
構造体の表面に配置された生物活性物質に関して、細胞毒特性を有する生物活性物質を選択して、過形成を最小にする。細胞毒特性を有する生物活性物質としてパクリタキセルを使用して、前述した研究を実施した。パクリタキセルは、単独でも、他の抗癌剤、抗腫瘍薬または他の化学療法薬と組み合わせても使用することができる。細胞毒特性を有する生物活性物質を使用することが、細胞毒物質の使用が全く奨励されていないか、禁止さえされている現在の考えに、反対しているのは明白である。
【0081】
図12は、図11の装置10のさらに別の態様を示す。この実施形態では、パリレン接着促進層30を、構造体12のステンレス鋼の基礎材料14に最初に適用する。例示により、接着促進層30は、例えば0.5から5,000Å、好ましくは2から50Åの範囲の厚さを有する薄いシランの層である。このシラン促進層は、ガンマメタクリルオキシプロピルトリメトキシシランを含むA−174シランであることが好ましく、これはSpecialty Coating Systems Inc.(Indianapolis, IN)から入手可能である。基礎材料14の外面を準備する際は、最初にイソプロピルアルコールで洗浄する。次に、ステントをシランに浸漬し、その薄い層を基礎材料の外面に塗布する。次に、パリレンのポリマー・コーティング層16をシラン層に塗布する。基礎材料14の外面を準備する他の方法には、プラズマ・エッチングおよびグリット・ブラスト仕上げがある。準備には、基礎材料の外面をイソプロピルアルコールで洗浄し、基礎材料の外面にプラズマ・エッチングを施し、プラズマ・エッチングした表面にシランを塗布することが含まれる。グリット・ブラスト仕上げを使用して、基礎材料の外面にグリット・ブラスト仕上げを施して、次にイソプロピルアルコールで洗浄し、洗浄したグリット・ブラスト仕上げ表面にシランを塗布する。
【0082】
図2で示すように、本発明の装置10は、生物活性物質の1つの層18を含むことに制限されない。装置10は、例えば、構造体12上に配置された生物活性物質の第2層22を備える。第2層の生物活性物質は、第1の生物活性物質層18の生物活性物質と異なってもよいが、そうである必要はなく、ただし中間の多孔質層24がない状態で装置10の同じ表面に配置してはならない。層18と22に異なる物質を使用することにより、装置10は2つ以上の治療機能を実行することができる。
【0083】
本発明の装置10は、生物活性物質の層18と22それぞれの間に配置されたポリマーの追加の多孔質層24を更に含むことができる。生物活性物質18が構造体12の1つの表面にあることを繰り返しておく。他の表面は、生物活性物質がないか、1つまたは複数の異なる生物活性物質を含んでもよい。追加の多孔質層24により、層18および22の生物活性物質の放出量が異なる。同時に、あるいは代替的に、装置10は、2つの層18および22に、相互に異なり、可溶性が異なる生物活性材料を使用することができる。このような場合、可溶性が低い方の生物活性物質を含む層22を、可溶性が高い方の生物活性物質を含む層18の上に配置すると有利であり、好ましい。あるいは、生物活性物質18を、図8から図10に示され、以下でさらに詳細に検討するように、ステント表面内に生じる穴、窪み、スロットなどに含めてもよい。
【0084】
例えば、装置10の構造体12を脈管ステントとして構成する場合、少なくとも1つの層が比較的可溶性の高いヘパリンを含み、第2層22が比較的可溶性が低いデキサメタゾンを含むと有利である。ヘパリンはデキサメタゾンの放出を促進し、ヘパリンがない場合のデキサメタゾンの放出量より何倍も、放出量を増加させる。ヘパリンの放出量は低下するが、デキサメタゾン放出量の増加ほど劇的には低下しない。特に、デキサメタゾンが、蒸気で開示したような寸法の多孔パリレン層20の下に位置する場合、その放出量は無視できる。十分な放出量は、多孔質層20の厚さが10倍以上減少した場合のみ獲得される。これに対して、デキサメタゾンの層22を、ヘパリンの層18の上で、上述した寸法の多孔パリレン層20より下に配置すると、デキサメタゾンを1日に約1から10μg/cm2という望ましい量で放出することができる。さらに思いがけず、デキサメタゾンのこのような放出量の増加は、ヘパリンが層18から全て放出された後にも維持されると考えられる。
【0085】
生物活性物質層18および/または22は、多孔ポリマー層20および/または24の塗布とは関係なく、装置10に塗布される。装置10を患者の脈管系に導入する前に、層18および/または22の生物活性物質が多孔質層20および/または24に混入することは、意図されず、単に偶発的なことである。これにより、単にポリマー層に生物活性物質を分散させた場合より、生物活性物質の放出量がさらに制御される。
【0086】
装置10は、生物活性物質の層18および22が2つ以上ある場合は、追加の多孔質層24を含む必要がない。図3で示すように、層18および22は、多孔質層で分離する必要がなく、相互に直接当たってもよい。この実施態様では、可溶性が低い方の生物活性物質を含む層22を、可溶性が高い方の生物活性物質を含む層18の上に配置すると、さらに有利である。
【0087】
追加の多孔質層24の有無に関係なく、層18および22は構造体12の総表面積の1cm2当たりそれぞれヘパリンおよびデキサメタゾンを約0.05から2.0mgずつ含むことが好ましい。したがって、構造体12上の層18および22に配置された生物活性物質の総量は、約0.1から10mg/cm2の範囲であることが好ましい。
【0088】
デキサメタゾン燐酸ナトリウムなどのデキサメタゾン誘導体には、デキサメタゾン自体より有意に可溶性が高いものもある。本発明の装置10の生物活性物質として、可溶性が高いデキサメタゾン誘導体を使用する場合は、少なくとも1つの多孔質層20(および追加の多孔質層24)の厚さを、それに応じて調節するとよい。
【0089】
開示されたような装置10の特定の構造体を、様々な方法で特定の使用法に適合させることができる。例えば、装置10は、同じまたは異なる生物活性物質のさらなる層を含んでもよい。生物活性物質のこの追加層は、都合上、または所望に応じて、追加の多孔質層から分離しても、しなくてもよい。あるいは、追加の多孔質層は、生物活性物質の追加の層のいずれかのみ分離してもよい。さらに、装置10の構造体12の1つの部分に1つの生物活性物質を配置し、装置10の構造体12の異なる部分に別の生物活性物質を配置してもよい。
【0090】
別法として、装置10は、追加のコーティング層16を全く含まなくてもよい。このような形状が図4に図示され、ここでは生物活性物質層18が構造体12の基礎材料14の直接上に配置される。このような場合、基礎材料14を表面処理するか表面活性化して、特に少なくとも1つの多孔質層20を付着させる前に、基礎材料14への生物活性物質の付着または接着を促進すると、非常に有利である。表面処理および表面活性化も、生物活性物質の放出量を選択的に変更することができる。このような処理を使用して、基礎材料14上に追加のコーティング層16がある場合は、その付着または接着を促進することもできる。追加のコーティング層16自体、または第2または追加の多孔質層24自体を同様に処理して、生物活性物質層18の付着または接着を促進するか、生物活性物質の放出量をさらに制御することができる。
【0091】
表面処理の有用な方法には、洗浄、エッチングや穿孔、切削または研削などの物理的変更、および溶剤処理、下塗の塗布、界面活性剤塗布、プラズマ処理、イオン衝撃および共有結合などの化学的変更など、様々なこのような処置のいずれかが含まれる。
【0092】
生物活性物質層18を最上部に付着させる前に、追加のコーティング層16(例えばパリレン)をプラズマ処理すると特に有利であることが発見された。プラズマ処理は、生物活性物質の接着性を改善し、付着できる生物活性材料の量を増加させ、生物活性物質がより均一な層に付着させることができるようにする。実際、ヘパリンなどの吸湿性作用物質を、疎水性で湿潤性が低い未変更のパリレン表面に付着させることは非常に困難である。しかし、プラズマ処理により、パリレン表面が湿潤性になり、ヘパリンをその上に容易に付着することができる。
【0093】
多孔ポリマー層20および24のいずれかも、上述した方法のいずれかで表面処理し、生物活性物質の放出量を変更したり、層表面の生物学的適合性を他の方法で改善したりすることができる。例えば、ポリエチレン酸化物、ホスファチジルコリンまたは共有結合した生物活性物質、例えば共有結合で取り付けたヘパリンのオーバーコートを層20および/または24に適用すると、層の表面をさらに血液に適合させることができる。同様に、層20および/または24をプラズマ処理するか、水素コーティングを施すと、その表面エネルギーを変化させ、好ましくは20から30ダイン/cmの範囲の表面エネルギーを提供し、表面をさらに生物適合性にすることができる。
【0094】
図5は、(a)多孔質層20および24のいずれか一方と(b)他の多孔質層20および24、追加コーティング層16および基礎材料14のいずれかまたは全てとの間に機械的接着またはコネクタ26を設けた、図10の実施形態を示す。コネクタ26は、層16、20および/または24を相互に、および基礎材料14に確実に固定する。コネクタ26は、特に生物活性物質層18および/または20が患者の体内に完全に放出された後、装置10に構造的完全性を与える。
【0095】
説明の便宜上、図5では、1つの多孔質層20を基礎材料14に固定する基礎材料14の複数の突起として、コネクタ26を図示している。あるいは、コネクタ26は、多孔質層20から生物活性物質層18を通って基礎材料14まで延在してもよい。いずれの場合も、コネクタ26によって幾つかの区画に分割された生物活性物質の1つの層18を、多孔質層20と基礎材料14との間に配置する。コネクタは、異なる生物活性剤を装置表面の異なる領域に区切る働きもする。
【0096】
コネクタ26は様々な方法で設けることができる。例えば、コネクタ26は、初期製造中、または構造体12へと成形する間に、基礎材料14と一体品として形成することができる。コネクタ26は、既存の構造体12に追加したブリッジ、支柱、ピンまたはスタッドなどの別個の要素として形成することもできる。コネクタ26は、基礎材料上の組合せランド、肩、台地、ポッドまたはパンとして形成することもできる。あるいは、複数のコネクタ26の望ましい位置の間にある基礎材料14の部分を、エッチング、機械的研磨などで除去し、その間に生物活性物質層18を付着させてもよい。コネクタ26は、以前に塗布した生物活性物質層18の一部を拭き取るか、エッチングで除去することによって、基礎材料14へと下方に延在するよう形成し、多孔質層20が気相蒸着またはプラズマ蒸着で基礎材料14の露出部分に直接付着できるようすることができる。基礎材料14の一部を露出させて多孔質層20に直接接続させる他の方法が、当業者には明白である。
【0097】
図6A、図6Bおよび図7で図示するような別の好ましい実施形態では、生物活性物質18を基礎材料14の1つの表面に配置し、図6Aの構造体12を構成する。図7は、コイル状にする前の平坦または平面の状態でステント10を示し、最も外側の表面に塗布した多孔質層20を示す。図6Aおよび図6Bは、図7の線6−6に沿った断面図である。図6Aの基礎材料14の1つの表面に配置された生物活性物質18は、幾つかの異なる治療および/または診断剤でよい。例えば、装置10は、患者の体内の腫瘍付近に配置し、クエン酸タモキシフェンまたはTaxol(登録商標)などの化学療法薬を腫瘍に直接送出するステントでもよい。多孔質層20を生物活性物質18上に配置して、表面を平滑化し、さらに生物活性物質18の放出の制御程度を上げる。図6Aでさらに示すように、装置の対向する表面は、例えば多孔質層20に共有結合したヘパリン18’を有してもよく、特にこの表面が、例えば血管の内腔に対面する場合に、抗血栓効果および血液適合性を提供する。本明細書で検討したように、第3の異なる生物活性物質を、第1の生物活性物質18とは対向する基礎材料14の表面で、共有結合ヘパリンまたは他の共有結合生物活性物質などの他の生物活性物質と同じ基礎材料14の側に配置し、多孔質層20で分離してもよい(図示せず)。
【0098】
図6Aに示す実施形態の変形が図6Bに図示され、ここでは2つの生物活性物質18および18’を、構造体12の基礎材料14の同じ表面に配置する。多孔質層20を、生物活性物質18および18’上、さらに基礎材料の生物活性物質がない表面に配置することができる。この実施形態は、装置10の特定の表面が露出する組織へ、例えば抗炎症剤および抗ウィルス薬など、2つの作用物質を送出することが望ましい状態を示す。さらに、生物活性物質に対向する装置の表面は、例えば抗血栓剤など、1つまたは複数の生物活性物質または治療薬を配置するために使用可能である。
【0099】
既に検討したように、制限要素が装置の合計厚さ、複数の層の接着などである場合、生物活性物質の複数の層および多孔質層を装置10に適用することができる。
【0100】
本発明のさらに別の実施形態では、本発明の装置が、生物活性物質を含むため装置内に開口を含む。この実施形態は、図8、図9、図10A、図10B、図10Cおよび図10Dに図示されている。図8は、図7のステントのアームを示し、ここでアームは、生物活性物質が含まれる穴28を含む。図9は、図8の線9−9に沿ったステントのアームの断面を示す。基礎材料14がコーティング16を含み、多孔質層20が生物活性物質18の最も外側の層を形成して、これを通して拡散する場合、生物活性物質18は穴28に含まれる。代替実施態様では、装置の基礎材料14に窪み28’を切削、エッチングまたは打ち抜くことができ、ここに生物活性物質18を含むことができる。この実施態様は図10A、図10B、図10Cおよび図10Dに図示され、これは図8の線10−10に沿って切り取った断面図である。窪み28’は、医療装置の基礎材料14の表面にあるスロットまたは溝の形態でもよい。本発明のこの態様は、放出される生物活性物質18の総量および放出速度の制御を向上させるという利点を提供する。例えば、図10Dに示すようなV字形の窪み28’は、より均一で直線の放出速度を有する図10Bに示すような正方形の窪み28’と比較すると、含まれる生物活性物質28の量が少なくなり、幾何学的速度で物質を放出する。
【0101】
上述した穴、窪み、スロット、溝などは、様々な技術で装置10の表面に形成することができる。例えば、このような技術には、レーザを使用した穿孔および切削、電子ビームによる機械加工など、またはフォトレジスト手法を使用して所望の口をエッチングすることが含まれる。
【0102】
装置10の表面にコーティングすることができる上記の生物活性物質は全て、本発明のこの態様の口に含むよう使用することができる。同様に、生物活性物質の層および多孔質層を、本発明の他の態様に関して前述したように、装置の外面に適用して組み合わせることができ、例えばヘパリンを、図9に示す装置の1つの表面に共有結合することができる。
【0103】
これで、本発明による装置10の作成方法が理解できる。最も単純な形態では、この方法は、生物活性物質の少なくとも1つの層18を表面12に付着させるステップと、その後、好ましくは気相蒸着またはプラズマ蒸着によって少なくとも1つの多孔質層20を、構造体の1つの表面にある少なくとも1つの生物活性物質層18上に付着するステップとを含む。少なくとも1つの多孔質層20は、生物学的適合性ポリマーで構成され、生物活性物質を制御下で放出するのに十分な厚さである。最初に、少なくとも1つの追加のコーティング層16を、気相蒸着によって構造体12の基礎材料14に直接付着させることが好ましい。このような付着は、ジ−p−キシリレンまたはその誘導体を準備するか取得し、ジ−p−キシリレンまたは誘導体を昇華するか分解して、モノマーのp−キシリレンまたはモノマーの誘導体を生成し、モノマーが基礎材料14上で同時に凝集し、重合できるようにして実行する。付着ステップは、真空状態で、基礎材料14を付着するステップの間、室温またはその付近に維持して実行する。付着は、ポリマーの溶剤または触媒が一切ない状態、および重合を補助する他の作用がない状態で実行する。付着ステップを実行するために好ましい誘導体の一つは、ジクロロ−ジ−p−キシリレンである。パリレンまたはパリレン誘導体を、以上で開示した厚さで適用し、ほぼ非孔質であるが、いかなる場合も適用される少なくとも1つの多孔質層20よりは多孔性が低いコーティング層16を生成することが好ましい。コーティング層16の組成により必要な場合は、次に例えば以上で開示したプラズマ処理など、適切な方法で層16を表面処理する。
【0104】
次に、所望の生物活性物質の少なくとも1つの層18を、構造体12の1つの表面に、特に追加のコーティング層16に塗布する。この塗布ステップは、生物活性物質の流体混合物を追加のコーティング層16に浸漬、ロール塗り、はけ塗り、または噴霧などの様々な都合のよい方法で、または生物活性物質の流体混合物または乾燥粉末を静電塗装する、または他の任意の適切な方法で実行することができる。生物活性物質ごとに装置の異なる区域または表面に塗布することができる。
【0105】
1つまたは複数の生物活性物質および揮発性流体の混合物を構造体に塗布し、次に例えば蒸発などの適切な方法で流体を除去することができるので、特に都合がよい。ヘパリンおよび/またはデキサメタゾンまたはその誘導体が生物活性物質として働く場合、流体はエチルアルコールであることが好ましい。生物活性物質は、上記で開示した量で塗布することが好ましい。
【0106】
構造体12に生物活性物質層18を付着する他の方法も、同様に有用である。しかし塗布する方法に関係なく、重要なのは、多孔質層20を上に付着させるまで、生物活性物質に必要なのは物理的に所定の位置に保持することのみ、ということである。これで、キャリア、界面活性剤、化学結合、および生物活性物質を他の装置に保持するために往々にして使用される他のこのような方法を使用しなくてすむ。このような方法に使用する添加物は有毒なことがあるか、添加物または方法が生物活性剤を変化または劣化させ、効果を低下させるか、有毒にしてしまうことさえある。にもかかわらず、所望に応じて、本発明の生物活性物質18を付着するには、これらの他の方法も使用してよい。
【0107】
生物活性物質は、言うまでもなく、滑らかな膜または粒子の層として、構造体12の1つの表面に付着させることができる。さらに、装置の表面ごとに異なる生物活性物質を含むような方法で、複数の異なる生物活性物質を付着させることができる。後者の場合、粒子サイズが、装置10の特性または特徴に影響することがある。例えば、最も上の多孔コーティング20の滑らかさ、装置10の輪郭、生物活性物質層18が付着する表面積、生物活性物質の放出速度、生物活性物質層18の隆起または凹凸、生物活性物質層18の接着の均一性および強度、および他の特性または特徴である。例えば、小さい粒子サイズ、通常は直径10μm未満まで処理した材料である微粉にした生物活性物質を使用すると有用であった。しかし、生物活性物質は、マイクロカプセルに入れた粒子として付着するか、リポゾーム中に分散させる、小さいキャリア粒子に吸着または吸収させるなどしてもよい。
【0108】
本発明によるさらに別の実施形態では、特定の幾何学的パターンで生物活性物質を構造体12の1つの表面に配置することができる。例えば、ステントのアームの先端に生物活性物質がないか、生物活性物質を平行線状に適用する、特に2つ以上の生物活性物質を同じ表面に適用することができる。
【0109】
いかなる場合も、いったん生物活性物質層18が所定の位置についたら、次に少なくとも1つの多孔質層20を、少なくとも1つの追加層16を塗布したのと同じ方法で、少なくとも1つの生物活性材料層18上に塗布する。しかし、少なくとも1つの多孔質層20を生成するよう、上記の開示より薄く、パリレンまたはパリレン誘導体などのポリマーを塗布する。
【0110】
第2の生物活性物質層22または追加の多孔質層24など、他の任意の層を適切な順序で、上記で開示したのと同じ方法で塗布する。この方法のステップは、上記で開示した生物活性物質、構造体および基礎材料のいずれかで実行することが好ましい。
【0111】
言うまでもなく、多孔質層および追加のコーティング層20、24および/または16のいずれか、または全てに、パリレンおよびその誘導体に関して以上で開示したものと同様の方法で、気相蒸着によりポリイミドを蓄積してもよい。ポリ(エチレン酸化物)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレン酸化物)、シリコン、またはメタン、テトラフルオロエチレンまたはテトラメチルジシロキサンのポリマーを他の物質にプラズマ蒸着させる技術は、よく知られている。
【0112】
生物活性物質の放出を制御する別の技術には、多孔質層20を付着させる前に、ポロゲンと呼ばれる単分散ポリマー粒子を、1つまたは複数の生物活性物質を含む装置10の表面に付着させることが含まれる。多孔質層20を付着させ、硬化させた後、ポロゲンを適切な溶剤で溶解して除去し、外部コーティングに空隙または孔を残して、その下にある生物活性物質の通過を容易にする。
【0113】
本発明の装置10を人間または動物患者の医療処置に使用する方法も、これで容易に理解することができる。本発明の方法は、植込可能な脈管装置10、つまり患者の脈管系に導入するようになっている構造体12および基礎材料14で構成される構造体12を含む装置10を患者に挿入するステップを含む以前の方法に対し、改良されている。本発明による方法は、生物活性物質の少なくとも1つの層18を構造体12の1つの表面に蓄積させる予備ステップと、その後、少なくとも1つの多孔質層20を少なくとも1つの生物活性物質層18上に付着させ、多孔質層20はポリマーで構成され、装置10が患者の脈管系内に配置されると、生物活性物質を制御下で放出するのに十分な厚さを有する。
【0114】
方法は、さらに、上記で開示した装置10の作成方法にしたがって、上記で開示した装置10の様々な実施形態の2つの付着ステップを実行する必要があることがある。特に、少なくとも1つの多孔質層20を付着させるステップは、溶剤または触媒を一切含まないモノマー蒸気、好ましくはパリレンまたはパリレン誘導体の蒸気から少なくとも1つの層20を重合することを含むことができる。方法は、構造体12と少なくとも1つの生物活性物質層18の間に少なくとも1つの追加コーティング層16を付着させるステップも含むことができる。
【0115】
本発明による処置方法は、装置10を患者の脈管系に挿入することによって完了する。少なくとも1つの多孔質層20および任意の追加の多孔質層24が、制御された状態で、即ち徐々に、1つまたは複数の生物活性物質を患者の体内に自動的に放出する。
【0116】
医療処置の方法の残りの詳細は、本発明の装置10を作成する方法に関して開示したものと同じであり、簡潔のためにここでは繰り返さない。
【0117】
前記のように、本発明は、装置に含まれる1つまたは複数の生物活性物質の放出を正確に制御する、植込式医療装置を提供する。さらに、ポリイミド、パリレン、パリレン誘導体または他のポリマー層16、24および/または24は、他のポリマー層に必要な厚さと比較して、驚くほど薄くすることができる。したがって、構造体12上の全体的コーティングの大部分を生物活性物質で構成することができる。これにより、従来技術の装置により供給されるよりはるかに多く、比較的大量の生物活性物質を患者に供給することができる。医療処置の実行中、または実行後に、この量の生物活性物質を、患者の体内の多種多様な位置のいずれかに供給することができるが、PTAで開いた領域に抗血栓薬または他の薬剤を送出することにより、血管の突発性閉鎖および/または再狭窄を防止するのに特に有用である。本発明により、生物活性物質の放出速度を短期および長期の両方にわたって慎重に制御することができる。最も重要なことは、他のポリマー・コーティング技術で生じるかもしれない生物活性物質の劣化が回避されることである。
【産業上の利用可能性】
【0118】
以上説明したように、本発明は、脈管の外科処置の実施時に有用であり、したがって人間用医薬及び獣医薬への適用可能性を有する。
【0119】
本発明によれば、装置の一部しかコーティングしなくてもよいことが考えられる。さらに、装置の様々な部分を様々な生物活性物質またはコーティング層でコーティングすることができる。装置の同じ部分の異なる側または領域を、異なる生物活性物質またはコーティング層でコーティングできることも考えられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 少なくとも1つの表面を有し、基礎材料(14)から構成されている構造体(12)と、
(b) 前記1つの表面の少なくとも一部分の上に配置された第1の生物活性物質の1つの層(18)と
を有する植込式医療装置であって、
前記第1の生物活性物質がパクリタキセルからなり、該パクリタキセルが平滑筋細胞の増殖および移動を抑制する量とされ、
前記第1の生物活性物質の層(18)が当該植込式医療装置の最外側層とされている、
ことを特徴とする植込式医療装置(10)。
【請求項2】
前記パクリタキセルの濃度は、0.06μg/mm2と60μg/mm2の間である
ことを特徴とする請求項1に記載の植込式医療装置(10)。
【請求項3】
前記パクリタキセルの濃度は、1.5μg/mm2と5μg/mm2の間である
ことを特徴とする請求項2に記載の植込式医療装置(10)。
【請求項4】
前記パクリタキセルの濃度は、1.8μg/mm2である
ことを特徴とする請求項1に記載の植込式医療装置(10)。
【請求項5】
前記パクリタキセルの量は、35と400μgの間である
ことを特徴とする請求項1に記載の植込式医療装置(10)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの表面は、前記第1の生物活性物質の前記基礎材料への接着を
増加させる表面エネルギー密度を有する
ことを特徴とする請求項1−5のいずれかに記載の植込式医療装置(10)。
【請求項7】
前記構造体(12)の1つの表面上に配置された少なくとも1つの接着促進層(3
0)をさらに有し、
前記パクリタキセルは、前記少なくとも1つの接着促進層(30)の少なくとも一
部上に配置される
ことを特徴とする請求項1−6のいずれかに記載の植込式医療装置(10)。
【請求項8】
少なくとも1つのコーティング層(16)が、生物活性物質の層(18)の下で前記構造体(12)の1つの表面上に配置され、
前記コーティング層は、前記第1の生物活性物質の前記コーティング層への接着を
増加させる表面エネルギー密度を有し、
前記少なくとも1つのコーティング層は、前記少なくとも1つのコーティング層(
16)から前記生物活性物質を徐々に放出する
ことを特徴とする請求項1−5のいずれかに記載の植込式医療装置(10)。
【請求項9】
前記コーティング層(16)が、非孔質材料からなる
ことを特徴とする請求項8に記載の植込式医療装置(10)。
【請求項10】
前記少なくとも1つのコーティング層(16)が、パリレン誘導体からなる
ことを特徴とする請求項8に記載の植込式医療装置(10)。
【請求項11】
前記少なくとも1つのコーティング層(16)が、50,000から500,00
0オングストロームの範囲の厚さを有する
ことを特徴とする請求項10に記載の植込式医療装置(10)。
【請求項12】
前記少なくとも1つのコーティング層(16)が、100,000から500,0
00オングストロームの範囲の厚さを有する
ことを特徴とする請求項10に記載の植込式医療装置(10)。
【請求項13】
前記構造体(12)は、穴又は窪みを有し、それら穴又は窪み内に生物活性材料が含まれるようにする
ことを特徴とする請求項10に記載の植込式医療装置(10)。
【請求項14】
前記非孔質材料が、吸着性物質および吸収性物質の少なくとも1つである
ことを特徴とする請求項8に記載の植込式医療装置(10)。
【請求項15】
前記構造体(12)は、穴又は窪みを有し、それら穴又は窪み内に生物活性材料が含まれるようにする
ことを特徴とする請求項14に記載の植込式医療装置(10)。
【請求項16】
前記生物活性物質層が、キメラ・モノクローン抗体を含む
ことを特徴とする請求項1−15のいずれかに記載の植込式医療装置(10)。
【請求項17】
当該植込式医療装置がステント又はバルーンを先端に付けたカテーテルとされる
ことを特徴とする請求項1−16のいずれかに記載の植込式医療装置(10)。
【請求項1】
(a) 少なくとも1つの表面を有し、基礎材料(14)から構成されている構造体(12)と、
(b) 前記1つの表面の少なくとも一部分の上に配置された第1の生物活性物質の1つの層(18)と
を有する植込式医療装置であって、
前記第1の生物活性物質がパクリタキセルからなり、該パクリタキセルが平滑筋細胞の増殖および移動を抑制する量とされ、
前記第1の生物活性物質の層(18)が当該植込式医療装置の最外側層とされている、
ことを特徴とする植込式医療装置(10)。
【請求項2】
前記パクリタキセルの濃度は、0.06μg/mm2と60μg/mm2の間である
ことを特徴とする請求項1に記載の植込式医療装置(10)。
【請求項3】
前記パクリタキセルの濃度は、1.5μg/mm2と5μg/mm2の間である
ことを特徴とする請求項2に記載の植込式医療装置(10)。
【請求項4】
前記パクリタキセルの濃度は、1.8μg/mm2である
ことを特徴とする請求項1に記載の植込式医療装置(10)。
【請求項5】
前記パクリタキセルの量は、35と400μgの間である
ことを特徴とする請求項1に記載の植込式医療装置(10)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの表面は、前記第1の生物活性物質の前記基礎材料への接着を
増加させる表面エネルギー密度を有する
ことを特徴とする請求項1−5のいずれかに記載の植込式医療装置(10)。
【請求項7】
前記構造体(12)の1つの表面上に配置された少なくとも1つの接着促進層(3
0)をさらに有し、
前記パクリタキセルは、前記少なくとも1つの接着促進層(30)の少なくとも一
部上に配置される
ことを特徴とする請求項1−6のいずれかに記載の植込式医療装置(10)。
【請求項8】
少なくとも1つのコーティング層(16)が、生物活性物質の層(18)の下で前記構造体(12)の1つの表面上に配置され、
前記コーティング層は、前記第1の生物活性物質の前記コーティング層への接着を
増加させる表面エネルギー密度を有し、
前記少なくとも1つのコーティング層は、前記少なくとも1つのコーティング層(
16)から前記生物活性物質を徐々に放出する
ことを特徴とする請求項1−5のいずれかに記載の植込式医療装置(10)。
【請求項9】
前記コーティング層(16)が、非孔質材料からなる
ことを特徴とする請求項8に記載の植込式医療装置(10)。
【請求項10】
前記少なくとも1つのコーティング層(16)が、パリレン誘導体からなる
ことを特徴とする請求項8に記載の植込式医療装置(10)。
【請求項11】
前記少なくとも1つのコーティング層(16)が、50,000から500,00
0オングストロームの範囲の厚さを有する
ことを特徴とする請求項10に記載の植込式医療装置(10)。
【請求項12】
前記少なくとも1つのコーティング層(16)が、100,000から500,0
00オングストロームの範囲の厚さを有する
ことを特徴とする請求項10に記載の植込式医療装置(10)。
【請求項13】
前記構造体(12)は、穴又は窪みを有し、それら穴又は窪み内に生物活性材料が含まれるようにする
ことを特徴とする請求項10に記載の植込式医療装置(10)。
【請求項14】
前記非孔質材料が、吸着性物質および吸収性物質の少なくとも1つである
ことを特徴とする請求項8に記載の植込式医療装置(10)。
【請求項15】
前記構造体(12)は、穴又は窪みを有し、それら穴又は窪み内に生物活性材料が含まれるようにする
ことを特徴とする請求項14に記載の植込式医療装置(10)。
【請求項16】
前記生物活性物質層が、キメラ・モノクローン抗体を含む
ことを特徴とする請求項1−15のいずれかに記載の植込式医療装置(10)。
【請求項17】
当該植込式医療装置がステント又はバルーンを先端に付けたカテーテルとされる
ことを特徴とする請求項1−16のいずれかに記載の植込式医療装置(10)。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−11210(P2012−11210A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177068(P2011−177068)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【分割の表示】特願2000−565941(P2000−565941)の分割
【原出願日】平成11年8月20日(1999.8.20)
【出願人】(502274071)クック インコーポレイテッド (50)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【分割の表示】特願2000−565941(P2000−565941)の分割
【原出願日】平成11年8月20日(1999.8.20)
【出願人】(502274071)クック インコーポレイテッド (50)
【Fターム(参考)】
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