検体処理装置および検体処理方法
【課題】異常が発生したときの検体処理の中断時間を短縮することが可能な検体処理装置および検体処理方法を提供する。
【解決手段】塗抹標本作製装置2は、染色機構部B〜Eを備えている。染色機構部B〜Eは、ベルト50bによって後方に搬送されるカセット20に対して処理を行う。染色機構部B〜Eにより処理が行われる位置に、到着するべきカセット20が到着しない場合、カセット到着エラーが発生する。また、染色機構部B〜EのセンサB2〜E2の位置で、検出されるべきカセット20が検出されない場合、カセット送り出しエラーが発生する。上記エラーが発生すると、エラー発生箇所の上流の処理が中断され、ベルト50bが前方に動かされる。これにより、カセット20同士がくっ付いている場合などの比較的軽微なエラーは解消され得る。
【解決手段】塗抹標本作製装置2は、染色機構部B〜Eを備えている。染色機構部B〜Eは、ベルト50bによって後方に搬送されるカセット20に対して処理を行う。染色機構部B〜Eにより処理が行われる位置に、到着するべきカセット20が到着しない場合、カセット到着エラーが発生する。また、染色機構部B〜EのセンサB2〜E2の位置で、検出されるべきカセット20が検出されない場合、カセット送り出しエラーが発生する。上記エラーが発生すると、エラー発生箇所の上流の処理が中断され、ベルト50bが前方に動かされる。これにより、カセット20同士がくっ付いている場合などの比較的軽微なエラーは解消され得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体容器内の検体を吸引し、吸引した検体に複数の処理を順次実行する検体処理装置およびそのための検体処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検体を吸引し、該検体に複数の処理を順次実行する検体処理装置として、検体を吸引してスライドガラス状に塗抹標本を作成する塗抹標本作製装置、および、検体を吸引してキュベットに収容し、キュベット内の検体を分析する検体分析装置等の検体処理装置が知られている。このような検体処理装置においては、検体の処理中に異常が発生した場合に、処理の継続が可能な検体の処理を継続することも知られている。
【0003】
たとえば、特許文献1の自動分析装置では、異常の内容が試料分注部、試薬分注部、攪拌部の何れかに関するものであると判断されたときには、反応テーブルおよび測光に関連する部分以外の機構部分を停止し、自動分析装置が部分停止状態とされる。そして、測光作業のみが残された状態にある複数の検体について測光作業が終了すれば、自動分析装置は、すべての部分が停止されるように制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−183955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような異常発生時に部分停止する自動分析装置では、異常が発生すると、部分停止の対象となった検体の処理は、測光作業のみが残された全ての検体について測光作業が終了した後でなければ、再開することができなかった。このため、上記特許文献1の自動分析装置では、異常が発生した場合の検体処理の中断時間が長いという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、異常が発生したときの検体処理の中断時間を短縮することが可能な検体処理装置および検体処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、検体容器から検体を吸引し、該検体に複数の処理を順次実行する検体処理装置に関する。本態様に係る検体処理装置は、検体の処理のための所定の動作をそれぞれが実行する複数の動作部と、前記複数の動作部による動作状況を監視し、動作の異常が検出されたとき、異常が検出された前記動作部に到達していない検体の処理を中断し、異常が検出された動作を再度実行させ、該再度の動作の実行によって前記異常が検出された前記動作部に動作の異常が検出されなければ、中断した前記検体の処理を再開するよう、前記複数の動作部を制御する制御部と、を有する。
【0008】
本態様に係る検体処理装置によれば、動作の異常が検出されたとき、異常が検出された動作が再度実行される。こうすると、検出された動作の異常が突発的な異常である場合に、異常が検出されなくなるため、中断された検体の処理を迅速に再開することができる。
【0009】
本態様に係る検体処理装置において、前記制御部は、動作の異常が検出されたとき、当該異常を解消するための復帰動作を実行させ、その後、異常が検出された動作を再度実行
させる構成とされ得る。こうすると、異常が検出された動作が再度実行されたときに、異常が検出されなくなる確率が高められる。
【0010】
また、本態様に係る検体処理装置において、前記制御部は、異常が検出された前記動作部に到達していない検体の処理を中断するとともに、異常が検出された前記動作部を通過した検体の処理を継続するよう、前記複数の動作部を制御する構成とされ得る。こうすると、異常が検出された動作部を通過した検体の処理を、迅速に完了させることができる。
【0011】
本態様に係る検体処理装置において、前記制御部は、動作の異常が検出されたときに、異常が検出された前記動作部に到達していない検体に対して他の動作部による処理が実行されている場合、当該他の動作部による前記検体に対する処理を完了させたのち、その検体に対して次に行われるべき処理を停止するように前記複数の動作部を制御する構成とされ得る。こうすると、処理が再開されたときに迅速に次の工程を開始することができる。
【0012】
また、本態様に係る検体処理装置において、前記制御部は、動作の異常が検出されたとき、前記検体容器からの新たな検体の吸引を中断し、異常が検出された動作の再度の実行によって動作の異常が検出されなければ、前記検体容器からの新たな検体の吸引を再開するよう、前記複数の動作部を制御する構成とされ得る。こうすると、異常が検出されたときに中断された新たな検体の吸引を、迅速に再開することができる。
【0013】
また、本態様に係る検体処理装置において、前記制御部は、動作の異常が検出されたとき、前記検体容器から吸引済みで、異常が検出された動作部に到達していない吸引済み検体の処理を中断し、異常が検出された動作の再度の実行によって動作の異常が検出されなければ、処理が中断された前記吸引済み検体の処理を再開するよう、前記複数の動作部を制御する構成とされ得る。こうすると、動作の異常が検出されたときに吸引済みの検体の処理が再開されるため、吸引済みの検体を破棄する必要がなくなる。これにより、スライドガラス、キュベット、異常が検出される前に分注された試薬等の消耗品の廃棄量を低減することができる。
【0014】
ここで、前記制御部は、動作の異常が検出されたとき、前記吸引済み検体の処理としての試薬のキュベットへの分注を中断し、異常が検出された動作の再度の実行によって動作の異常が検出されなければ、中断した前記試薬の分注を再開するよう、前記複数の動作部を制御する構成とされ得る。こうすると、異常が検出されたときに中断された試薬の分注を、迅速に再開することができる。
【0015】
また、前記制御部は、異常が検出された動作の再度の実行によって動作の異常が検出されなければ、処理の中断時間に基づいて処理の再開の可否を判定し、再開可能であれば、中断した検体の処理を再開するよう、前記複数の動作部を制御する構成とされ得る。こうすると、処理を再開した場合に、適切な処理結果が得られる検体のみを処理することができる。
【0016】
また、前記制御部は、処理の中断時間に応じて、処理が中断されていた前記吸引済み検体のうち処理を再開する対象となる検体を変更する構成とされ得る。こうすると、処理の中断時間が長く適切な処理結果が得られそうにない検体に対する無駄な処理を省きつつ、処理の中断時間が短く適切な処理結果が得られる見込みのある検体を無駄にしなくて済む。
【0017】
また、本態様に係る検体処理装置は、出力部をさらに備える構成とされ得る。ここで、前記制御部は、処理が再開された吸引済みの検体の処理結果を、他の検体の処理結果と区別可能に前記出力部に出力させる構成とされる。こうすると、出力部を参照することによ
り、処理が再開された検体を特定することができる。これにより、処理が中断されたことにより処理結果に影響が生じる場合でも、処理結果に生じた影響の原因を、容易に特定することができる。
【0018】
また、本態様に係る検体処理装置は、検体を前記複数の動作部に搬送する搬送部をさらに備える構成とされ得る。ここで、前記動作の異常は、前記動作部に対して前記検体が適正に搬入または搬出されなかったことにより検出される構成とされる。
【0019】
ここで、前記制御部は、第1動作部から第2動作部へ検体が正常に搬送されなかったとき、前記第1動作部から前記第2動作部へ向かう方向と逆の方向に前記検体を搬送させた後、再び、前記第1動作部から前記第2動作部へ前記検体を搬送するよう前記搬送部を制御する構成とされ得る。このように、検体が正常に搬送されない場合に逆の方向に検体を搬送すると、検体と搬送部とが適切に係合するようになることがある。よって、検体が正常に搬送されない場合に、搬送異常の原因を迅速に除去することができる。
【0020】
さらに、前記制御部は、前記逆の方向の搬送を行うときに干渉する動作部の動作が行われないタイミングにおいて、前記検体を前記逆の方向に搬送させるよう前記搬送部を制御する構成とされ得る。こうすると、逆の方向の搬送により、動作部に新たな異常が生じてしまうことを抑制することができる。
【0021】
また、本態様に係る検体処理装置において、前記制御部は、動作の異常が検出されたとき、異常が検出された動作部を、当該異常が検出された動作の初動状態に復帰させ、その後、異常が検出された動作を再度実行させる構成とされ得る。このように、動作の異常が検出された場合に、動作部を初動状態に復帰させると、動作部の異常が検出されなくなることがある。よって、動作の異常が検出された場合に、動作異常の原因を迅速に除去することができる。
【0022】
また、本態様に係る検体処理装置において、前記制御部は、動作の異常が検出されたとき、異常が検出されたことをユーザに通知する構成とされ得る。こうすると、動作部による動作に異常が発生したことを知ることができる。
【0023】
また、本態様に係る検体処理装置において、前記制御部は、異常が検出されたことをユーザに通知するとともに、異常が検出された動作を再度実行させるか否かの指示を受け付け、受け付けた指示に応じて前記複数の動作部を制御する構成とされ得る。異常が検出された動作を再度実行させて処理された検体は、通常の検体と処理の条件が異なることになる。ユーザによっては通常と異なる条件で処理された検体を採用せず、一から検体の処理をやり直すことがある。そのため、ユーザによって、異常が検出された動作を再度実行するのが好ましい場合と、再度実行しないのが好ましい場合とがある。上記の構成により、ユーザの状況に応じた迅速な復旧が可能になる。
【0024】
本発明の第2の態様は、検体処理方法に関する。本態様に係る検体処理方法は、検体容器から検体を吸引する吸引工程と、吸引された検体に複数の処理を順次実行する処理工程と、処理工程における動作の異常を検出する検出工程と、動作の異常が検出されたとき、異常が検出された前記動作部に到達していない検体の処理を中断する中断工程と、異常が検出された動作を再度実行する再動作工程と、再動作工程により動作の異常が検出されなければ、中断した前記検体の処理を再開する再開工程と、を含む。
【0025】
本態様に係る検体処理方法によれば、上記第1の態様と同様の効果が奏され得る。
【発明の効果】
【0026】
以上のとおり、本発明によれば、異常が発生したときの検体処理の中断時間を短縮することが可能な検体処理装置および検体処理方法を提供することができる。
【0027】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態により何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例1に係る臨床検体処理装置の構成を示す斜視図である。
【図2】実施例1に係る塗抹標本作製装置を上側から見た場合の構成を示す平面図である。
【図3】実施例1に係るカセットの構成を示す斜視図である。
【図4】実施例1に係る分注部の動作を説明する図である。
【図5】実施例1に係る塗抹標本作製装置と搬送装置の構成の概要を示す図である。
【図6】実施例1に係る塗抹標本作製装置による塗抹標本作製処理を示すフローチャートである。
【図7】実施例1に係る個別標本作製情報を示す図である。
【図8】実施例1に係るカセット到着エラーまたはカセット送り出しエラーが発生した場合の塗抹標本作製装置による処理を示すフローチャートである。
【図9】実施例1に係るカセット到着エラーまたはカセット送り出しエラーが発生した場合の塗抹標本作製装置による処理を示すフローチャートおよび新規検体の吸引再開処理を示すフローチャートである。
【図10】実施例1に係る表示操作部に表示される対処指示受付画面の構成を示す図および表示操作部に表示される検体吸引指示受付画面の構成を示す図である。
【図11】実施例2に係る免疫分析装置を上から見た場合の構成を示す平面図である。
【図12】実施例2に係る測定ユニットと制御装置の構成の概要を示す図である。
【図13】実施例2に係る測定ユニットによる測定処理を示すフローチャートである。
【図14】実施例2に係るピペット下降エラーが発生した場合の制御装置による処理を示すフローチャートである。
【図15】実施例2に係るピペット下降エラーが発生した場合の制御装置による処理を示すフローチャートおよび新規検体の吸引再開処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本実施例について、図面を参照して説明する。
【0030】
<実施例1>
本実施例は、血液検体の塗抹標本を作製する臨床検体処理装置に本発明を適用したものである。本実施例に係る臨床検体処理装置は、塗抹標本作製装置と搬送装置を備えている。なお、塗抹標本の作製の要否は、通常、前段の血液分析装置等による血液検体の分析結果に基づいて判断される。塗抹標本の作製を行う場合、血液検体を収容した検体容器を保持する検体ラックが、搬送装置にセットされる。しかる後、この検体ラックが搬送装置により搬送され、塗抹標本作製装置により塗抹標本が作製される。
【0031】
以下、本実施例に係る臨床検体処理装置について、図面を参照して説明する。
【0032】
図1は、本実施例に係る臨床検体処理装置1の構成を示す斜視図である。臨床検体処理装置1は、塗抹標本作製装置2と搬送装置3を備えている。なお、以下、X軸正方向を左方向、X軸負方向を右方向、Y軸正方向を後方、Y軸負方向を前方、Z軸正方向を上方向
、Z軸負方向を下方向と称することにする。
【0033】
塗抹標本作製装置2は、カバーの前面にタッチパネルからなる表示操作部2aを備えている。また、塗抹標本作製装置2のカバーの右上と、左上と、前面には、それぞれ、開口2b、2c、2dが形成されている。また、塗抹標本作製装置2は、開口2dを介して検体容器101を保持するためのハンド部41aを備えている。ユーザは、表示操作部2aを操作することにより塗抹標本作製装置2を制御し、開口2bを介して後述するカセット収容部47(図2参照)にカセット20をセットし、開口2cを介して後述するカセット保管部51(図2参照)に保管されているカセット20を取り出すことができる。
【0034】
搬送装置3は、塗抹標本作製装置2の前面に設置されており、搬入部3aと取り出し部3bを有している。搬送装置3は、搬入部3aに位置付けられた検体ラック100を取り出し部3bまで搬送する。検体容器101は、ハンド部41aの前方に位置付けられると、ハンド部41aにより抜き出され、塗抹標本作製装置2内に引き込まれる。
【0035】
図2は、塗抹標本作製装置2を上側から見た場合の構成を示す平面図である。
【0036】
塗抹標本作製装置2は、吸引分注機構部41と、スライドガラス供給部42と、スライドガラス横送り部43と、塗抹機構部44と、塗抹乾燥部45と、印字部46と、カセット収容部47と、カセット横送り部48と、カセット回転部49と、染色部50と、カセット保管部51と、を備えている。
【0037】
吸引分注機構部41は、ハンド部41aと、ピアサ(吸引針)41bと、分注ピペット41cを有している。ハンド部41aの前方に位置付けられた検体容器101は、ハンド部41aにより把持されて検体ラック100から抜き出され、ハンド部41aにより所定回数だけ攪拌される。しかる後に、この検体容器101に収容された血液検体は、ピアサ41bにより吸引され、左右(X軸方向)に移動可能な分注ピペット41cにより、塗抹機構部44の前方に位置付けられたスライドガラス10に滴下される。
【0038】
スライドガラス供給部42は、複数の新しいスライドガラス10を保持しており、これら新しいスライドガラス10を、順次スライドガラス横送り部43上まで移動させる。スライドガラス横送り部43は、スライドガラス供給部42から供給された新しいスライドガラス10を左方向(X軸正方向)に移動させて、塗抹機構部44の前方に位置付ける。
【0039】
塗抹機構部44は、前方に位置付けられたスライドガラス10に血液検体が滴下されると、この血液検体を塗抹する。塗抹された血液検体を含むスライドガラス10は、スライドガラス横送り部43により、右方向(X軸負方向)に移動され、順次、塗抹乾燥部45の前方と、印字部46の真下位置に位置付けられる。塗抹乾燥部45は、塗抹乾燥部45の前方に位置付けられたスライドガラス10に塗抹された血液検体を、ファン(図示せず)により乾燥させる。印字部46は、プリンタ(図示せず)からなり、スライドガラス10の端部に、検体番号、日付、受付番号、氏名などを印字する。
【0040】
カセット収容部47は、前方(Y軸負方向)に移動可能なベルト47aを有している。ユーザは、開口2b(図1参照)を介してベルト47a上に空のカセット20をセットすることができる。ベルト47aにセットされた空のカセット20は、ベルト47aが動くことにより前方に搬送される。
【0041】
図3(a)、(b)は、カセット20の構成を示す斜視図である。なお、図3(a)、(b)には、カセット20がベルト47aに載置されたときの図2の座標軸が併せて示されている。
【0042】
図3(a)を参照して、カセット20は、樹脂からなり、収容部20eにスライドガラス10を収容することができるよう、Y軸方向に厚みを有している。カセット20の上部には、仕切り部20cで左右に仕切られた収納口20a、20bが形成されている。仕切り部20cの下方向には、仕切り部20dが設置されており、カセット20の内部には、収容部20eが形成されている。カセット20の左右には、鍔部20f、20gが形成されており、鍔部20f、20gの下面が、下側から支持されることにより、ベルト47a上に載置される。カセット20の下方には、底部20hが形成されている。スライドガラス10は、収納口20aを介して、上側から挿入される。
【0043】
図3(b)は、カセット20にスライドガラス10が収容された状態を示す斜視図である。図3(b)に示すようにスライドガラス10が収容されると、収容部20eのうち、仕切り部20c、20dよりも右側の領域に隙間が生じる。かかる隙間により、スライドガラス10がカセット20に収容された状態でも、収納口20bを介してピペットが挿入可能となる。
【0044】
図2に戻り、カセット横送り部48は、カセット支持部48aと、左右に移動可能なベルト48bを有している。カセット支持部48aは、ベルト48bに固定されており、カセット20の底部20hを上方向に支持するよう構成されている。カセット収容部47の前方に位置付けられた空のカセット20は、カセット支持部48aに支持されて、カセット回転部49の前方まで左方向に搬送される。
【0045】
カセット回転部49は、平面49aと、X軸方向に平行な軸49bを備えている。軸49bがX軸周りに回転することにより、平面49aは、X−Y平面に平行な状態とX−Z平面に平行な状態となる。平面49aがX−Z平面に平行な状態のときに、カセット回転部49の前方に位置付けられた空のカセット20が、平面49a上に移動される。続いて、平面49aがX−Y平面に平行な状態とされ、印字部46から押し出されたスライドガラス10が、図示の如く、カセット20に挿入される。続いて、平面49aが再びX−Z平面に平行な状態とされ、平面49a上のスライドガラス10を収容するカセット20が、カセット横送り部48のカセット支持部48aに移動される。しかる後、このカセット20は、カセット横送り部48により左方向に搬送され、染色部50の前方に位置付けられる。
【0046】
染色部50は、送り込み機構部50aと、後方(Y軸正方向)に移動可能なベルト50bと、染色機構部A〜Eと、送り出し機構部50cを有する。染色機構部Bは、分注部B1とセンサB2からなり、染色機構部Cは、分注部C1とセンサC2からなり、染色機構部Dは、分注部D1とセンサD2からなり、染色機構部Eは、分注部E1とセンサE2からなる。
【0047】
染色部50の前方に位置付けられたカセット20が、カセット横送り部48のカセット支持部48aに支持された状態で、染色機構部Aにより、このカセット20に収容されているスライドガラス10上の塗抹標本の処理が行われる。具体的には、カセット20の収納口20bを介して、染色機構部Aのピペット(図示せず)が挿入され、このピペットにより、カセット20の収容部20eにメタノールが吐出される。しかる後に、このカセット20は、送り込み機構部50aにより、ベルト50b上に送り込まれる。
【0048】
送り込み機構部50aによりベルト50b上に送り込まれたカセット20は、ベルト50bに鍔部20f、20gが支持される。この状態で、ベルト50bが動くことにより、カセット20は後方に搬送される。なお、ベルト50bは、塗抹標本作製装置2が動作状態にあるとき、常に後方に動き続けている。
【0049】
分注部B1〜E1は、それぞれ、分注部B1〜E1の真下に位置付けられたカセット20に収容されたスライドガラス10上の塗抹標本に対して処理を行う。具体的には、分注部B1は、カセット20からメタノールを吸引して、カセット20に染色液1を吐出する。分注部C1は、カセット20から染色液1を吸引して、カセット20に染色液1の希釈液を吐出する。分注部D1は、カセット20から染色液1の希釈液を吸引して、カセット20に染色液2の希釈液を吐出する。分注部E1は、カセット20から染色液2の希釈液を吸引し、カセット20内を水洗いする。なお、分注部B1〜E1の動作については、追って図4を参照して説明する。
【0050】
センサB2〜E2は、発光部と受光部からなる透過型のセンサであり、それぞれ、分注部B1〜E1の僅かに後方に位置付けられている。センサB2〜E2は、それぞれ、分注部B1〜E1で処理が行われて後方に移動されたカセット20が、センサB2〜E2の発光部と受光部の間に位置付けられたことを検出する。なお、センサB2〜E2によりカセット20が検出されるときの、カセット20の位置を、以下、「通過位置」と称することにする。
【0051】
ベルト50bの後方に搬送されたカセット20は、送り出し機構部50cによって、左方向に送り出される。これにより、カセット20は、カセット保管部51の後方に位置付けられる。
【0052】
カセット保管部51は、送り込み機構部51aと、前方(Y軸負方向)に移動可能なベルト51bを有する。送り出し機構部50cから送り出されたカセット20は、送り込み機構部51aにより、ベルト51b上に送り込まれる。ベルト51b上に送り込まれたカセット20は、ベルト51bが動くことにより、前方に搬送される。ベルト51bの前方に位置付けられたカセット20は、開口2c(図1参照)を介してユーザにより取り出される。こうして、塗抹標本の作製が終了する。
【0053】
次に、図4を参照して、分注部B1〜E1の動作を説明する。なお、分注部C1、D1、E1の動作は、分注部B1と略同様であるため、ここでは便宜上、分注部B1の動作についてのみ説明する。
【0054】
図4(a)〜(c)は、分注部B1をY軸正方向に見た時の側面図である。分注部B1は、基板B11と、ストッパB12と、排出ピペットB13と、供給ピペットB14を有する。
【0055】
図4(a)を参照して、基板B11は、塗抹標本作製装置2内に固定されている。ストッパB12は、基板B11に対して上下(Z軸方向)に移動可能な金属板であり、ストッパB12の前面(Y軸負方向側の面)には、接触型のセンサB12aが設置されている。排出ピペットB13と供給ピペットB14は、一体となって上下に移動可能となるよう構成されている。排出ピペットB13は、カセット20内の液体を吸引して排出することができ、供給ピペットB14は、カセット20内に液体を吐出することができる。
【0056】
図4(a)に示すようにストッパB12が位置付けられているとき、ベルト50bに支持されて後方に搬送されるカセット20の後方側の面は、ストッパB12に当接して停止する。このときのカセット20の位置を、以下、「停止位置」と称することにする。このとき、センサB12aにより、カセット20が停止位置に位置付けられたことが検出される。この状態で、排出ピペットB13と供給ピペットB14が下方向に移動され、排出ピペットB13と供給ピペットB14の先端部が、図4(b)に示す如く、カセット20の収容部20e内に位置付けられる。
【0057】
続いて、図4(b)に示す状態で、排出ピペットB13による吸引と、供給ピペットB14による吐出が行われる。吸引と吐出が終了すると、排出ピペットB13と供給ピペットB14は、上方向に移動され、さらに、ストッパB12が上方向に移動される。これにより、図4(c)に示す状態となり、カセット20はベルト50bに支持されながら、後方へ移動する。
【0058】
カセット20が、分注部B1の停止位置から僅かに後方に移動して、分注部B1の通過位置に位置付けられると、センサB2(図2参照)により、このカセット20が検知される。これにより、このカセット20が分注部B1を通過したことが分かる。
【0059】
図5は、塗抹標本作製装置2と搬送装置3の構成の概要を示す図である。
【0060】
塗抹標本作製装置2は、制御部201と、記憶部202と、駆動部203と、センサ部204と、表示操作部2aと、通信部205を備えている。
【0061】
制御部201は、記憶部202に記憶されているコンピュータプログラムを実行することにより、塗抹標本作製装置2の各部を制御する。記憶部202は、ハードディスク等の記憶装置からなり、塗抹標本作製装置2を動作させるためのコンピュータプログラムが記憶されている。また、記憶部202には、塗抹標本作製装置2内の各血液検体に関する工程を記憶する情報(以下、「個別標本作製情報」という)が記憶されている。また、記憶部202には、塗抹標本作製装置2が廃棄検体対策を行うか否かの設定が記憶されている。個別標本作製情報と廃棄検体対策については、それぞれ、追って図7と図9を参照して説明する。
【0062】
駆動部203は、塗抹標本作製装置2内の各部を駆動させるための機構を含んでおり、制御部201により制御される。センサ部204は、分注部B1〜E1のストッパ前面に配されている接触型のセンサと、センサB2〜E2に加えて、塗抹標本作製装置2内の他のセンサを含んでいる。センサ部204に含まれる各センサは、制御部201により制御され、センサ部204の検出信号は、制御部201に出力される。
【0063】
表示操作部2aは、図1に示したように、表示機能と入力機能が一体となったタッチパネルである。ユーザにより表示操作部2aが操作されると、制御部201に操作内容を示す信号が出力される。また、制御部201により、表示操作部2aに各種情報が表示される。通信部205は、搬送装置3の通信部304との間でデータ通信を行う。
【0064】
搬送装置3は、制御部301と、駆動部302と、センサ部303と、通信部304を備えている。制御部301は、搬送装置3内の各部を制御する。駆動部302は、搬送装置3内の各部を駆動させるための機構を含んでおり、制御部301により制御される。センサ部303は、搬送装置3内のセンサを含んでおり、制御部301により制御され、センサ部303の検出信号は、制御部301に出力される。通信部304は、塗抹標本作製装置2の通信部205との間でデータ通信を行う。
【0065】
図6は、塗抹標本作製装置2による塗抹標本作製処理を示すフローチャートである。以下の塗抹標本作製処理が行われる際には、まず、搬送装置3によって、ハンド部41a(図1、2参照)の前方位置に検体容器101が位置付けられる。このとき、搬送装置3の制御部301から、塗抹標本作製装置2の制御部201に、検体吸引指示が送信される。
【0066】
塗抹標本作製装置2の制御部201は、搬送装置3から検体吸引指示を受信すると(S11:YES)、S12〜S23の処理を順に行う。なお、制御部201は、搬送装置3
から検体吸引指示を受信すると、受信に基づく各検体容器101について、S12〜S23の処理を並行して行う。
【0067】
制御部201は、ハンド部41aにより把持された検体容器101から、ピアサ41bにより血液検体を吸引する(S12)。このとき、制御部201は、この血液検体に関して、塗抹標本作製装置2内における実行中工程等を含む“個別標本作製情報”を作成して、記憶部202に記憶する(S13)。
【0068】
図7(a)は、個別標本作製情報を示す図である。
【0069】
ピアサ41bにより吸引された各血液検体の個別標本作製情報は、図中の列に示すように、それぞれ、管理番号、検体番号、作成結果、実行中工程等を含んでいる。管理番号と検体番号は、いずれもピアサ41bにより吸引された血液検体に対して一意に付与される。なお、管理番号と検体番号によって識別される血液検体を、以下、「識別検体」と称することにする。
【0070】
作製結果は、実行中の工程が正常に行われているか否かを示す。実行中工程は、識別検体が、塗抹標本作製装置2内のどの工程にあるかを示す。なお、実行中工程に示される工程番号は、塗抹標本作製装置2内のいずれかの処理内容に対応している。たとえば、染色機構部Bでは、カセット20の到着検出工程と、カセット20の送り出し検出工程と、排出ピペットB13と供給ピペットB14の下降工程と、排出工程と、吐出工程などの複数の工程が行われる。塗抹標本作製装置2の制御部201は、識別検体が、どの工程に位置付けられているかを、個別標本作製情報を参照して判定する。
【0071】
図6に戻り、制御部201は、分注ピペット41cにより、血液検体を塗抹機構部44の前方に位置付けられたスライドガラス10に滴下し、塗抹機構部44により、この血液検体を塗抹する(S14)。
【0072】
続いて、制御部201は、塗抹標本を含むスライドガラス10を右方向に移動させて、このスライドガラス10に、印字部46により文字を印字する(S15)。続いて、制御部201は、このスライドガラス10を、カセット回転部49によりカセット20に収納する(S16)。続いて、制御部201は、このカセット20を、カセット横送り部48により染色部50の前方まで搬送する(S17)。
【0073】
続いて、制御部201は、染色機構部A〜Eにより、S18〜S22の処理を順に行う。すなわち、染色機構部Aは、染色部50の前方に位置付けられたカセット20に、メタノールを分注する(S18)。染色機構部Bは、染色機構部Bの停止位置に位置付けられたカセット20からメタノールを吸引し、このカセット20に染色液1を吐出する(S19)。染色機構部Cは、染色機構部Cの停止位置に位置付けられたカセット20から染色液1を吸引し、このカセット20に染色液1の希釈液を吐出する(S20)。染色機構部Dは、染色機構部Dの停止位置に位置付けられたカセット20から染色液1の希釈液を吸引し、このカセット20に染色液2の希釈液を吐出する(S21)。染色機構部Eは、染色機構部Eの停止位置に位置付けられたカセット20から染色液2の希釈液を吸引し、このカセット20の収容部20e内を水洗いする(S22)。
【0074】
続いて、制御部201は、染色機構部Eによる処理が終了すると、このカセット20を、送り出し機構部50cにより、カセット保管部51に送り出す(S23)。こうして、塗抹標本作製処理が終了する。
【0075】
図8は、カセット到着エラーまたはカセット送り出しエラーが発生した場合の塗抹標本
作製装置2による処理を示すフローチャートである。
【0076】
ここで、カセット到着エラーとは、染色部50の染色機構部B〜Eの停止位置に、到着するべきカセット20が到着しない場合に発生するエラーである。たとえば、送り込み機構部50aにより、ベルト50b上に送り込まれたカセット20が、染色機構部Bの停止位置に到着するべきタイミングから、所定時間を経過しても到着しない場合に、カセット到着エラーが発生する。
【0077】
カセット送り出しエラーとは、染色部50の染色機構部B〜Eの通過位置で、検出されるべきカセット20が検出されない場合に発生するエラーである。たとえば、染色機構部Bの停止位置にあるカセット20が、ベルト50bにより後方に移動されてセンサB2により検出される通過位置に位置付けられるべきタイミングから、所定時間を経過しても到着しない場合に、カセット送り出しエラーが発生する。
【0078】
塗抹標本作製装置2内で上記いずれかのエラーが発生すると、塗抹標本作製装置2の制御部201は、まず、エラー発生箇所における処理を中断する。なお、このとき、ベルト50bは、通常通り後方に動かされている。
【0079】
続いて、制御部201は、塗抹標本作製装置2内においてエラー発生時に実行中の処理(エラー発生箇所を除く)を完了させる(S31)。続いて、制御部201は、エラー発生箇所より下流の処理を継続し、エラー発生箇所より上流の処理を中断する(S32)。
【0080】
ここで、染色機構部B〜Eの停止位置に到着するべきカセット20が到着しないことにより、カセット到着エラーが発生した場合、エラー発生箇所は、それぞれ染色機構部B〜Eとなる。また、染色機構部B〜Eの通過位置に到着するべきカセット20が到着しないことにより、カセット送り出しエラーが発生した場合、エラー発生箇所は、それぞれ染色機構部B〜Eとなる。エラー発生箇所が染色機構部B〜Eであるとき、それぞれ、図6のS12〜S19の処理、S12〜S20の処理、S12〜S21の処理、S12〜S22の処理が中断されることになる。
【0081】
続いて、制御部201は、エラー発生箇所と、エラー発生箇所より上流にある識別検体の個別標本作製情報に、“停止フラグON”を書き込む(S33)。
【0082】
図7(b)は、カセット到着エラーまたはカセット送り出しエラーが発生した場合の、個別標本作製情報を示す図である。
【0083】
図7(b)において、エラー発生箇所より下流にある識別検体の管理番号は1、2であり、エラー発生箇所と、エラー発生箇所より上流にある識別検体の管理番号は3以上であるとする。このとき、図8のS33の処理が行われると、図7(b)に示す如く、管理番号が3以上である識別検体の実行中工程の項目には、位置付けられている工程と、“停止フラグON”が書き込まれる。
【0084】
図8に戻り、次に、塗抹標本作製装置2の制御部201は、表示操作部2aに、対処指示受付画面を表示する(S34)
図10(a)は、図8のS34において、表示操作部2aに表示される対処指示受付画面410の構成を示す図である。
【0085】
対処指示受付画面410は、メッセージ表示部411と、OKボタン412と、強制排出ボタン413を有している。メッセージ表示部411には、エラーが発生した工程と、エラー内容と、エラー番号と、対処方法等が表示される。図10(a)では、染色機構部
Dにおいてカセット送り出しエラーが発生している旨が示されている。ユーザは、OKボタン412または強制排出ボタン413を押下することができる。
【0086】
図8に戻り、塗抹標本作製装置2の制御部201は、OKボタン412または強制排出ボタン413が押下されることにより、指示を受け付けると(S35:YES)、処理がS36に進められる。
【0087】
制御部201は、S35で受け付けた指示内容が、エラー復帰指示でない(S36:NO)、すなわち、強制排出ボタン413が押下されたとき、染色部50内の全ての塗抹標本を排出する(S37)。この場合、染色部50よりも上流側に位置付けられている塗抹標本とカセット20は、ここでは排出されず、中断時の位置に留められる。
【0088】
他方、制御部201は、S35で受け付けた指示内容が、エラー復帰指示である(S36:YES)、すなわち、OKボタン412が押下されたとき、ベルト50bを前方(Y軸負方向)に戻しても問題がないかを判定する(S38)。すなわち、この判定の際に、エラー発生箇所の下流側で継続されている処理において、ベルト50bが前方に戻されることにより、問題が生じないかが判定される。たとえば、染色機構部Bでエラーが発生した場合に、処理が継続されている染色機構部Dにおいて、停止位置に位置付けられているカセット20にピペットが挿入されていると、ベルト50bが前方に戻されることにより、分注と吐出の処理に問題が生じる。制御部201は、このような問題が生じないかを判定する。
【0089】
制御部201は、ベルト50bを前方に戻しても問題ないと判定すると(S38:YES)、エラー復帰処理を行う(S39)。具体的には、制御部201は、ベルト50bを6mmだけ前方に動かす。続いて、制御部201は、エラー復帰確認処理を行う(S40)。具体的には、制御部201は、ベルト50bを通常の状態と同様に後方に動かす。
【0090】
エラー復帰確認処理が行われたにも拘わらず、再度同じエラーが発生した場合(S41:YES)、処理がS34に戻される。他方、エラー復帰確認処理により、同じエラーが発生しなかった場合(S41:NO)、端子1に処理が続けられる。
【0091】
図9(a)は、図8の端子1以降の処理を示すフローチャートである。
【0092】
塗抹標本作製装置2の制御部201は、新規検体の吸引再開処理を行う(S42)。新規検体の吸引再開処理については、追って図9(b)を参照して説明する。
【0093】
続いて、制御部201は、廃棄検体対策に関する設定を参照して、廃棄検体対策を行うか否かを判定する(S43)。なお、廃棄検体対策を行うか否かは、あらかじめ塗抹標本作製装置2の表示操作部2aを介して、ユーザにより設定されている。また、廃棄検体対策に関する設定は、記憶部202に記憶されている。
【0094】
廃棄検体対策に関する設定が、“廃棄検体対策を行わない”に設定されている場合(S43:NO)、制御部201は、エラー発生箇所より上流の染色部50にあるカセット20を、カセット20内の液を回収しつつ、カセット保管部51に排出する(S43)。この場合、染色部50よりも上流側に位置付けられている塗抹標本とカセット20は、ここでは排出されず、中断時の位置に留められる。
【0095】
他方、廃棄検体処理に関する設定が、“廃棄検体対策を行う”に設定されている場合(S43:YES)、制御部201は、エラー発生箇所より上流の中断されていた全ての処理を再開する(S45)。なお、ピアサ41bによる新規検体の吸引は、S45の処理で
再開されない。新規検体の吸引は、後述する新規検体の吸引再開処理によって再開される。
【0096】
続いて、制御部201は、エラー発生箇所より上流の染色部50上にある識別検体の個別標本作製情報に、低信頼性標本であることを書き込む(S46)。たとえば、図7(b)に示すように、該当する管理番号の作製結果の項目に、“低信頼”が書き込まれる。
【0097】
続いて、制御部201は、低信頼性標本とされた識別検体の個別標本作製情報を、表示操作部2aに表示する(S46)。表示操作部2aには、図7(b)のような表形式の個別標本作製情報が表示される。こうして、エラー発生時の塗抹標本作製装置2の処理が終了する。
【0098】
図9(b)は、S42で実行される新規検体の吸引再開処理を示すフローチャートである。なお、この処理が開始される時点で、図8のS32の処理で説明したように、ピアサ41bによる吸引は中断されている。
【0099】
塗抹標本作製装置2の制御部201は、カセット到着エラーまたはカセット送り出しエラーが発生した時に、既に吸引されていた血液検体が、全て染色部50に到着したか(図6のS14〜S17の処理が終了したか)を判定する(S51)。制御部201は、個別標本作製情報の実行中工程を参照して判定を行う。かかる血液検体が全て染色部50に到着していると(S51:YES)、制御部201は、検体吸引指示受付画面を表示操作部2aに表示する(S52)。
【0100】
図10(b)は、表示操作部2aに表示される検体吸引指示受付画面420の構成を示す図である。検体吸引指示受付画面420は、OKボタン421とキャンセルボタン422を有している。ユーザは、OKボタン421またはキャンセルボタン422を押下することができる。
【0101】
図9(b)に戻り、塗抹標本作製装置2の制御部201は、検体吸引指示受付画面420のOKボタン421が押下されたと判定すると(S53:YES)、塗抹標本作製装置2による吸引を再開する(S54)。これにより、ハンド部41aの前方に位置付けられた検体容器101が、順次、ハンド部41aに把持されて、ピアサ41bにより検体の吸引が行われる。こうして、新規検体の吸引再開処理が終了する。
【0102】
以上、本実施例によれば、染色機構部B〜Eにおいて、カセット到着エラーまたはカセット送り出しエラーが発生した場合に、エラー発生箇所より上流の処理が中断された後、ベルトを6mm戻すエラー復帰処理が行われる。これにより、カセット20がベルト50bに引っ掛かっている場合や、カセット20同士がくっ付いている場合などの比較的軽微なエラーは解消され得る。
【0103】
また、この場合に、エラー発生箇所より下流の処理が継続される。これにより、エラー発生箇所を通過した塗抹標本の処理を、迅速に完了させることができる。
【0104】
また、本実施例によれば、廃棄検体対策を行う設定がなされていると、エラーが解消された後、中断していた処理が再開される。これにより、中断していた塗抹標本を廃棄せずに済むため、再度塗抹標本の染色等を行う必要がなくなり、消耗品の廃棄量を低減することができる。このように消耗品の廃棄量を低減することは、環境保護に対しても有効である。
【0105】
また、この場合に、中断していた血液検体と塗抹標本(識別検体)については、個別標
本作製情報の作製結果に“低信頼”と書き込まれる。また、中断していた識別検体の個別標本作製情報は、表示操作部2aに表示される。これにより、ユーザは、中断することなく処理が終了した識別検体と、中断していた識別検体とを区別することができる。
【0106】
<実施例2>
本実施例は、血液などの検体を用いてB型肝炎、C型肝炎、腫瘍マーカおよび甲状腺ホルモンなど種々の項目の検査を行うための免疫分析装置に本発明を適用したものである。
【0107】
以下、本実施例に係る免疫分析装置について、図面を参照して説明する。
【0108】
図11は、本実施例に係る免疫分析装置6を上から見た場合の構成を示す平面図である。免疫分析装置6は、測定ユニット7と、測定ユニット7の前方に設置された検体搬送部8と、測定ユニット7に電気的に接続された制御装置9を備えている。
【0109】
測定ユニット7は、緊急検体・チップ搬送部71と、ピペットチップ供給装置72と、チップ脱離部73と、検体分注部74と、試薬テーブル75a、75bと、1次B/F分離部76aと、2次B/F分離部76bと、1次B/F分離テーブル77aと、2次B/F分離テーブル77bと、1次反応部80と、2次反応部81と、試薬分注部82〜84と、R4試薬分注部85と、R5試薬分注部86と、検出部87と、廃棄用孔88を備えている。なお、本実施例に係る免疫分析装置6では、検体分注部74により吸引および吐出された血液等の検体が他の検体と混ざり合うのを抑制するために、検体の吸引および吐出を行う度に、使い捨てのピペットチップの交換が行われている。
【0110】
この免疫分析装置6では、測定対象である血液等の検体と緩衝液(R1試薬)とを混合させ、得られた混合液に、検体に含まれる抗原に結合する捕捉抗体を担持した磁性粒子を含む試薬(R2試薬)を添加する。抗原と結合した捕捉抗体を担持する磁性粒子を1次B/F(Bound Free)分離部76aの磁石に引き寄せることにより、捕捉抗体と結合しなかった検体内の成分を除去する。そして、標識抗体(R3試薬)とさらに添加した後に、標識抗体および抗原に結合した捕捉抗体を担持する磁性粒子を2次B/F分離部76bの磁石に引き寄せることにより、未反応の標識抗体を含むR3試薬を除去する。さらに、分散液(R4試薬)および標識抗体との反応過程で発光する発光基質(R5試薬)を添加した後、標識抗体と発光基質との反応によって生じる発光量を測定する。このような過程を経て、標識抗体に結合する検体に含まれる抗原を定量的に測定している。
【0111】
検体搬送部8は、未処理の検体を収容した試験管111が載置されたラック110をセットするためのラックセット部8aと、分注処理済みの検体を収容した試験管111が載置されたラック110を貯留するためのラック貯留部8bとを有している。検体搬送部8は、検体を収容した複数の試験管111が載置されたラック110を、検体分注部74の吸引位置に対応する位置まで搬送する。未処理の検体を収容した試験管111が、検体分注部74の吸引位置に対応する位置まで搬送されると、検体分注部74により試験管111内の血液等の検体の吸引が行われる。しかる後、その試験管111を載置したラック110は、ラック貯留部8bに貯留される。
【0112】
緊急検体・チップ搬送部71は、試験管設置部71bとチップ設置部71cとが形成された搬送ラック71aを有している。試験管設置部71bには、検体搬送部8により搬送される検体に割り込んで検査する必要がある緊急検体を収容した試験管111が保持される。試験管設置部71bに保持された試験管111は、検体分注部74の吸引位置に対応する位置まで搬送される。
【0113】
ピペットチップ供給装置72は、投入されたピペットチップを1つずつ緊急検体・チッ
プ搬送部71の搬送ラック71aのチップ設置部71cに載置する機能を有している。チップ脱離部73は、後述する検体分注部74に装着されたピペットチップを脱離するために設けられている。
【0114】
検体分注部74は、アーム部74aと、軸74bと、ピペット74cを有している。アーム部74aは、軸74bを中心に回動すると共に、上下方向に移動することができる。ピペット74cは、アーム部74aの先端部に設置されており、検体の吸引及び吐出を行う。このピペット74cの先端には、緊急検体・チップ搬送部71のチップ設置部71cにより搬送されるピペットチップが装着される。検体分注部74は、検体搬送部8により搬送された試験管111内の検体を、後述する1次反応部80の1次反応テーブル80aの保持部80cに保持されるキュベット(図示せず)内に分注する。
【0115】
試薬テーブル75aは、回転駆動される回転テーブルである。試薬テーブル75aには、緩衝液(R1試薬)が収容される試薬容器と、標識抗体を含むR3試薬が収容される試薬容器が設置される。試薬テーブル75bは、回転駆動される回転テーブルである。試薬テーブル75bには、捕捉抗体が担持された磁性粒子を含むR2試薬が収容される試薬容器が設置される。
【0116】
1次反応部80は、1次反応テーブル80aと容器搬送部80bを有している。1次反応テーブル80aには、キュベットを保持するための保持部80cが形成されている。1次反応テーブル80aは、検体とR1試薬およびR2試薬とが収容されるキュベットを回転方向に搬送する。容器搬送部80bは、このキュベットを、後述する1次B/F分離テーブル77aに搬送する。
【0117】
ここで、1次反応部80は、回転駆動される1次反応テーブル80aの保持部80cに保持されるキュベットを、所定の期間(本実施例では、20秒)毎に所定の角度だけ回転移送するとともに、キュベット内の検体と、R1試薬と、R2試薬とを攪拌するために設けられている。すなわち、1次反応部80は、キュベット内で磁性粒子を有するR2試薬と検体中の抗原とを反応させるために設けられている。
【0118】
試薬分注部82は、アーム部82aと、軸82bと、ピペット82cを有している。アーム部82aは、軸82bを中心に回動すると共に、上下方向に移動することができる。ピペット82cは、アーム部82aの先端部に設置されており、試薬容器内のR1試薬の吸引および吐出を行う。試薬分注部82は、試薬テーブル75aに設置される試薬容器内のR1試薬を吸引するとともに、吸引したR1試薬を1次反応部80aのキュベット内に分注する。
【0119】
試薬分注部83は、アーム部83aと、軸83bと、ピペット83cを有している。アーム部83aは、軸83bを中心に回動すると共に、上下方向に移動することができる。ピペット83cは、アーム部83aの先端部に設置されており、試薬容器内のR2試薬の吸引および吐出を行う。試薬分注部83は、試薬テーブル75bに設置される試薬容器内のR2試薬を、1次反応部80の検体およびR1試薬が分注されたキュベット内に分注する。
【0120】
1次B/F分離部76aは、1次反応部80の容器搬送部80bによって搬送されたキュベット内の試料から、検体に含まれる抗原に結合した捕捉抗体を担持した磁性粒子と、捕捉抗体に結合しなかった未反応成分とを分離するために設けられている。未反応成分が除去された1次B/F分離テーブル77aのキュベットは、搬送機構78により2次反応部81の2次反応テーブル81aの保持部81cに搬送される。
【0121】
搬送機構78は、先端にキュベット把持部(図示せず)を有するアーム部78aを、軸78bを中心に回動させるとともに、上下方向に移動させることが可能なように構成されている。
【0122】
2次反応部81は、1次反応部80と同様の構成を有しており、2次反応テーブル81aと容器搬送部81bを有している。2次反応テーブル81aには、キュベットを保持するための保持部81cが形成されている。2次反応テーブル81aは、検体、R1試薬、R2試薬、R3試薬、R4試薬およびR5試薬が収容されるキュベットを回転方向に搬送する。容器搬送部80bは、このキュベットを、後述する2次B/F分離テーブル77bに搬送し、2次B/F分離部76bにより処理されたキュベットを、再び2次反応テーブル81aの保持部81cに搬送する。
【0123】
ここで、2次反応部81は、回転駆動される2次反応テーブル81aの保持部81cに保持されるキュベットを、所定の期間(本実施例では、20秒)毎に所定の角度だけ回転移送するとともに、キュベット内の検体、R1試薬、R2試薬、R3試薬、R4試薬、およびR5試薬を攪拌するために設けられている。すなわち、2次反応部81は、キュベット内で標識抗体を有するR3試薬と検体中の抗原とを反応させるとともに、発光基質を有するR5試薬とR3試薬の標識抗体とを反応させるために設けられている。
【0124】
試薬分注部84は、アーム部84aと、軸84bと、ピペット84cを有している。アーム部84aは、軸84bを中心に回動すると共に、上下方向に移動することができる。ピペット84cは、アーム部84aの先端部に設置されており、試薬容器内のR3試薬の吸引および吐出を行う。試薬分注部84は、試薬テーブル75aに設置される試薬容器内のR3試薬を吸引するとともに、その吸引されたR3試薬を2次反応部81の検体、R1試薬およびR2試薬が分注されたキュベット内に分注する。
【0125】
2次B/F分離部76bは、1次B/F分離部76aと同様の構成を有しており、2次反応部81の容器搬送部81bによって搬送されたキュベット内の試料から、捕捉抗体および抗原を介して磁性粒子に結合した標識抗体と、未反応の標識抗体とを分離するために設けられている。
【0126】
R4試薬分注部85とR5試薬分注部86は、図示しないノズル部を上下移動させ、それぞれR4試薬およびR5試薬を、2次反応部81のキュベット内に供給するために設けられている。
【0127】
検出部87は、2次反応部81の2次反応テーブル81aの保持部81cに保持されるキュベットを、当該検出部87に搬送するための搬送機構部87aを備えている。検出部87は、所定の処理が行なわれた検体の抗原に結合する標識抗体と発光基質との反応過程で生じる発光量を、光電子増倍管(Photo Multiplier Tube)で取得することにより、そ
の検体に含まれる抗原の量を測定する。
【0128】
廃棄用孔88は、測定済の試料が収容されたキュベットを廃棄するために設けられている。測定済みの試料が収容されたキュベットは、検出部87の搬送機構部87aにより吸引部(図示せず)の下方の位置に搬送され、この吸引部によって測定済の試料が吸引され、このキュベットが空にされる。しかる後、このキュベットは、搬送機構部87aにより廃棄用孔88に対応する位置まで搬送され、廃棄用孔88を介して免疫分析装置6の下部に配置される図示しないダストボックスに廃棄される。
【0129】
制御装置9は、パーソナルコンピュータ等からなり、表示部9aと入力部9bを含んでいる。制御装置9は、測定ユニット7における各機構の動作制御を行うとともに、測定ユ
ニット7で得られた検体の光学的な情報を分析する。ユーザは、表示部9aを介して、検体の分析結果等の情報を確認することができ、入力部9bを介して、測定ユニット7の制御等を行うことができる。
【0130】
図12は、測定ユニット7と制御装置9の構成の概要を示す図である。
【0131】
測定ユニット7は、制御部701と、分注部702と、試薬テーブル部703と、反応部704と、B/F分離部705と、B/F分離テーブル部706と、検出部87と、機構部707と、通信部708と、記憶部709を備えている。
【0132】
制御部701は、記憶部709に記憶されている制御用プログラムを実行して、測定ユニット7内の各部を制御すると共に、これら各部から出力される信号を受信する。
【0133】
分注部702は、検体分注部74と、試薬分注部82〜84と、R4試薬分注部85と、R5試薬分注部86から構成されており、試薬テーブル部703は、試薬テーブル75a、75bから構成されており、反応部704は、1次反応部80と2次反応部81から構成されており、B/F分離部705は、1次B/F分離部76aと2次B/F分離部76bから構成されており、B/F分離テーブル部706は、1次B/F分離テーブル77aと2次B/F分離テーブル77bから構成されている。なお、機構部707は、測定ユニット7内のその他の機構部と、検体搬送部8の各機構から構成されている。
【0134】
分注部702は、モータ702mとセンサ702sを含んでおり、試薬テーブル部703は、モータ703mとセンサ703sを含んでおり、反応部704は、モータ704mとセンサ704sを含んでおり、B/F分離部705は、モータ705mとセンサ705sを含んでおり、B/F分離テーブル部706は、モータ706mとセンサ706sを含んでおり、検出部87は、モータ87mとセンサ87sを含んでおり、機構部707は、モータ707mとセンサ707sを含んでいる。
【0135】
分注部702と、試薬テーブル部703と、反応部704と、B/F分離部705と、B/F分離テーブル部706と、検出部87と、機構部707は、それぞれ、モータ702m、703m、704m、705m、706m、87m、707mによって駆動されるように構成されている。たとえば、分注部702を構成する検体分注部74と、試薬分注部82〜84と、R4試薬分注部85と、R5試薬分注部86は、検体や試薬等を吸引、吐出するためのピペット(ノズル部)を備え、このピペットをモータ702mによって上下に移動させたり、回動(旋回)させたりするように構成されている。また、試薬テーブル部703を構成する試薬テーブル75a、75bは、モータ703mによって回転するように構成されている。
【0136】
分注部702と、試薬テーブル部703と、反応部704と、B/F分離部705と、B/F分離テーブル部706と、検出部87と、機構部707の動作状況は、センサ702s、703s、704s、705s、706s、87s、707sによって検出されるように構成されている。これらセンサは、各機構部の原点位置(動作始点位置または動作終点位置)を検出する接触型または透過型のセンサと、モータのパルス数を検出するエンコーダと、ノズル部が障害物に衝突したことを検出する衝突センサと、テーブルに保持されたキュベットを検出するセンサ等を含んでいる。
【0137】
通信部708は、制御装置9の通信部903との間でデータ通信を行う。記憶部709には、制御部701によって実行される制御プログラムが記憶されている。また、記憶部709には、測定ユニット7内の各検体に関する工程等を記憶する情報(以下、「個別検体進捗情報」という)が記憶されている。また、記憶部902には、後述するエラー発生
時に、測定ユニット7が検体を廃棄するか否かを判定するために用いる中断時間が記憶されている。個別検体進捗情報と中断時間については、それぞれ、追って図13と図15を参照して説明する。
【0138】
制御装置9は、制御部901と、記憶部902と、表示部9aと、入力部9bと、通信部903を備えている。
【0139】
制御部901は、記憶部902に記憶されているコンピュータプログラムを実行することにより、制御装置9の各部を制御すると共に、測定ユニット7に動作指示を送信する。記憶部902は、ハードディスク等の記憶装置からなり、制御装置9を動作させ、測定ユニット7を動作させるためのコンピュータプログラムが記憶されている。
【0140】
表示部9aは、ディスプレイ等で構成されており、画像データに基づいて各種情報を表示する。入力部9bは、マウスやキーボード等で構成されており、ユーザにより入力された情報を制御部901に出力する。通信部903は、測定ユニット7の通信部708との間でデータ通信を行う。
【0141】
図13は、測定ユニット7による測定処理を示すフローチャートである。以下の測定処理が行われる際には、まず、ユーザによって制御装置9の入力部9bから測定開始指示が入力され、この測定開始指示が測定ユニット7に送信される。測定ユニット7は、測定開始指示を受信すると、検体搬送部8を駆動して試験管111を順次吸引位置まで搬送させる。なお、以下に示すS61〜S74の処理は、試験管111から吸引される検体ごとに、並行して行われる。
【0142】
測定ユニット7の制御部701は、図示しないキュベット供給部を駆動して、1次反応部80の1次反応テーブル80aの保持部80cに空のキュベットをセットする(S61)。
【0143】
続いて、制御部701は、試薬テーブル75aに設置された試薬容器内のR1試薬を、試薬分注部82のピペット82cによって吸引する。しかる後、制御部701は、アーム部82aを回動し、1次反応テーブル80aの保持部80cに保持されているキュベット内に、吸引したR1試薬を吐出する(S62)。
【0144】
続いて、制御部701は、緊急検体・チップ搬送部71の搬送ラック71aによって搬送されるピペットチップを、検体分注部74に装着する。しかる後、制御部701は、検体搬送部8により吸引位置まで搬送されたラック110に載置される試験管111から、検体分注部74のピペット74cにより血液等の検体を吸引する。そして、制御部701は、アーム部74aを回動して、R1試薬が分注されたキュベット内に、吸引した検体を吐出する(S63)。
【0145】
このとき、制御部701は、この検体に関して、測定ユニット7内における実行中工程等を含む“個別検体進捗情報”を作成して、記憶部709に記憶する(S64)。なお、個別検体進捗情報は、上記実施例1で示した図7(a)の個別標本作製情報と略同様に構成されている。
【0146】
その後、1次反応部80の容器搬送部80bによって、R1試薬と検体が収容されたキュベットが攪拌され、攪拌されたR1試薬と検体が、1次反応テーブル80aの保持部80cのキュベット内で所定時間インキュベーションされる。
【0147】
次に、制御部701は、試薬テーブル75bに設置された試薬容器内のR2試薬を、試
薬分注部83のピペット83cによって吸引する。しかる後、制御部701は、アーム部83aを回動し、所定時間インキュベーションされたR1試薬と検体を収容するキュベット内に、吸引したR2試薬を吐出する(S65)。
【0148】
その後、1次反応部80の容器搬送部80bにより、R1試薬、検体およびR2試薬が収容されたキュベットが攪拌される。そして、攪拌されたR1試薬、検体およびR2試薬が、1次反応テーブル80aの保持部80cのキュベット内で所定時間インキュベーションされ、その結果、R2試薬に含まれる磁性粒子に担持された捕捉抗体と検体に含まれる抗原とが結合する。
【0149】
次に、制御部701は、インキュベーションされたR1試薬、検体およびR2試薬を収容したキュベットを、1次反応部80の容器搬送部80bにより、1次B/F分離テーブル77aに搬送する(S66)。
【0150】
続いて、制御部701は、1次B/F分離テーブル77aに保持されたキュベット内の磁性粒子を、当該キュベットの側方に配置される磁石により集磁する。そして、制御部701は、1次B/F分離部76aのノズル部をキュベット内に挿入して、試料を吸引することにより、磁性粒子および当該磁性粒子に捕捉抗体を介して結合した抗原を除く未反応成分を除去する(S67)。未反応成分が除去された後のキュベットは、1次B/F分離テーブル77aの回転によって、搬送機構78のアーム部78aによって把持可能な位置まで移送される。
【0151】
続いて、制御部701は、1次B/F分離部76aにより未反応成分が除去されたキュベットを、搬送機構78のアーム部78aによって把持し、2次反応部81の2次反応テーブル81aの保持部81cに搬送する(S68)。
【0152】
次に、制御部701は、試薬テーブル75aに設置された試薬容器内のR3試薬を、試薬分注部84のピペット84cによって吸引する。しかる後、制御部701は、アーム部84aを回動して、捕捉抗体を介して磁性粒子に結合した抗原を収容したキュベット内に、標識抗体を含む所定量のR3試薬を吐出する(S69)。
【0153】
その後、2次反応部81の容器搬送部81bにより、捕捉抗体を介して磁性粒子に結合した抗原と、標識抗体とが収容されたキュベットが攪拌される。そして、攪拌されたキュベット内の成分が所定時間インキュベーションされる。その結果、捕捉抗体、磁性粒子、抗原、および標識抗体が結合して、複合体を形成する。
【0154】
次に、制御部701は、インキュベーションされた成分を収容したキュベットを、2次反応部81の容器搬送部81bにより、2次B/F分離テーブル77bに搬送する(S70)。
【0155】
続いて、制御部701は、2次B/F分離テーブル77bに保持されたキュベット内の磁性粒子を、1次B/F分離部76aにおける工程と同様に、当該キュベットの側方に配置される磁石により集磁する。そして、制御部701は、2次B/F分離部76bのノズル部がキュベット内に挿入して、試料を吸引することにより、磁性粒子を含む複合体を形成しなかった未反応の標識抗体を除去する(S71)。未反応の標識抗体が除去された後のキュベットは、2次B/F分離テーブル77bの回転によって、2次反応部81の容器搬送部81bにより搬送可能な位置まで移送される。
【0156】
続いて、制御部701は、2次B/F分離部76bにより未反応成分が除去されたキュベットを、2次反応部81の容器搬送部81bにより、再び2次反応テーブル81aの保
持部81cに搬送する(S72)。
【0157】
次に、制御部701は、R4試薬分注部85を駆動して、免疫分析装置6の下部に設置された図示しない試薬容器内のR4試薬(分散液)を、複合体を収容したキュベット内にノズル部から吐出する(S73)。
【0158】
続いて、制御部701は、R5試薬分注部86を駆動して、免疫分析装置6の下部に設置される図示しない試薬容器内のR5試薬を、複合体を収容したキュベット内にノズル部から吐出する(S74)。
【0159】
その後、2次反応部81の容器搬送部81bにより、複合体、分散液(R4試薬)および発光基質を含むR5試薬を収容したキュベットが攪拌される。そして、攪拌されたキュベット内の成分は、2次反応テーブル81aの保持部81cのキュベット内で所定時間インキュベーションされる。
【0160】
次に、制御部701は、インキュベーションされた成分を収容したキュベットを、検出部87の搬送機構部87aにより測定位置に搬送する。しかる後、R3試薬の標識抗体とR5試薬の発光基質との反応過程で生じる発光量(光子の数に比例する量)が、光電子増倍管(図示せず)で取得される(S75)。取得された測定結果は、制御装置9の制御部901に送信される。
【0161】
このようにして、試験管111から吸引された検体についての測定処理が終了する。
【0162】
図14は、ピペット下降エラーが発生した場合の制御装置9による処理を示すフローチャートである。
【0163】
ここで、本実施例では、ピペット下降エラーとして、試薬分注部83のピペット83cを下降させるときに生じるエラーを例にとり説明する。
【0164】
試薬分注部83は、ピペット83cを下降させるとき、ピペット83cの移動距離に対応した駆動パルス数だけモータの軸を回転するよう、測定ユニット7の制御部701から指示を受ける。しかしながら、エンコーダにより検出されたモータの実パルス数と、指示された駆動パルス数との差が所定以上あった場合、ピペット83cを下降させるための機構の一時的な不具合などが考えられる。このような場合には、制御部701は、試薬分注部83のピペット83cに関するピペット下降エラー信号を、制御装置9に送信する。なお、制御部701は、上記エラーが発生すると、エラー発生箇所における処理を中断する。
【0165】
制御装置9の制御部901は、測定ユニット7から上記ピペット下降エラー信号を受信すると、エラー発生時に実行中の処理(エラー発生箇所を除く)を完了させる(S81)。続いて、制御部901は、エラー発生箇所より下流の処理を継続し、エラー発生箇所より上流の処理を中断する(S82)。このとき、検体分注部74による新規検体の吸引も中断される。
【0166】
ここで、試薬分注部83においてピペット下降エラーが発生した場合に中断されるエラー発生箇所より上流の処理とは、図13のS61〜S66の処理である。したがって、エラー発生時に1次反応テーブル80aの保持部80cに保持されているキュベットに対する処理、およびエラー発生時に実行中であった1次反応テーブル80aにキュベットを保持させるための処理が中断され、検体搬送部8、1次反応部80、試薬分注部82および検体分注部74が、動作を停止する。
【0167】
また、試薬分注部83においてピペット下降エラーが発生した場合に継続されるエラー発生箇所より下流の処理とは、すでに1次反応テーブル80aを離れたキュベットに対する処理である。したがって、エラー発生時に1次B/F分離テーブル77a、2次反応テーブル81a、および2次B/F分離テーブル77bに保持されているキュベットに対する処理が継続され、1次B/F分離部76a、搬送機構78、2次反応部81、試薬分注部84、2次B/F分離部76b、R4試薬分注部85、R5試薬分注部86、および検出部87が、動作を継続する。
【0168】
続いて、制御部901は、処理が中断されたキュベットの個別検体進捗情報に、“停止フラグON”を書き込む(S83)。なお、“停止フラグON”は、上記実施例1で示した図7(b)の個別標本作製情報における“停止フラグON”と同様に書き込まれる。
【0169】
次に、制御部901は、表示部9aに対処指示受付画面を表示する(S84)。なお、対処指示受付画面は、上記実施例1で示した図10(a)の対処指示受付画面410と略同様に構成される。本実施例では、たとえば、試薬分注部83においてピペット下降エラーが発生したとすると、図10(a)のメッセージ表示部411に、“R2試薬分注工程、ピペット下降異常”等のメッセージが表示される。
【0170】
図14に戻り、制御装置9の制御部901は、対処指示受付画面でOKボタン412または強制排出ボタン413が押下されることにより、指示を受け付けると(S85:YES)、処理がS86に進められる。
【0171】
制御部901は、S85で受け付けた指示内容が、エラー復帰指示でない(S86:NO)、すなわち、強制排出ボタン413が押下されたとき、測定ユニット7内の全ての検体を排出する(S87)。これにより、検体を含むキュベットは、空にされた後、廃棄用孔88を介して廃棄される。
【0172】
他方、制御部901は、S85で受け付けた指示内容が、エラー復帰指示である(S86:YES)、すなわち、OKボタン412が押下されたとき、ピペット下降エラーが生じたピペットを、動作始点位置(原点位置)に戻しても問題がないかを判定する(S88)。すなわち、この判断の際に、エラー発生箇所の下流側で継続されている処理において、このピペットが動作始点位置(原点位置)に戻されることにより、問題を生じないかが判定される。たとえば、試薬分注部83でピペット下降エラーが生じた場合に、試薬分注部83のピペット83cが動作始点位置(原点位置)に戻されると、試薬分注部83のアーム83aとピペット83cは、エラー発生時に1次反応テーブル80aから1次B/F分離テーブル77aへキュベットを搬送中である容器搬送部80bと接触する惧れがある。制御部901は、このような問題が生じないかを判定する。
【0173】
制御部901は、ピペットを動作始点位置(原点位置)に戻しても問題ないと判定すると(S88:YES)、エラー復帰処理を行う(S89)。具体的には、制御部901は、ピペット下降エラーが生じたピペットを動作始点位置(原点位置)に戻す。続いて、制御部901は、エラー復帰確認処理を行う(S90)。具体的には、制御部901は、ピペット下降エラーが生じたピペットを、エラー発生位置で再度下降させる。
【0174】
エラー復帰確認処理が行われたにも拘わらず、再度同じエラーが発生した場合(S91:YES)、処理がS84に戻される。他方、エラー復帰確認処理により、同じエラーが発生しなかった場合(S91:NO)、端子2に処理が続けられる。
【0175】
図15(a)は、図14の端子2以降の処理を示すフローチャートである。
【0176】
制御装置9の制御部901は、新規検体の吸引再開処理を行う(S92)。新規検体の吸引再開処理については、追って図15(b)を参照して説明する。続いて、制御部901は、記憶部902に記憶されている中断時間を読み出して、中断していた時間が、読み出した中断時間内であるかを判定する(S93)。
【0177】
中断していた時間が、上記読み出した中断時間(所定時間:例えば20分)内であると(S93:YES)、制御部901は、1次反応テーブル80aに保持されているキュベットのうち、反応に関する試薬(R2試薬)が分注されていないキュベットに対する処理を再開する(S94)。具体的には、1次反応テーブル80aに保持されているキュベットのうち、R1試薬のみが分注されているキュベットへの検体の分注、および、R1試薬と検体が分注されているキュベットへのR2試薬の分注が再開される。処理が中断されていたキュベットのうち、R2試薬分注済みキュベットは廃棄対象とされる。捕捉抗体を含むR2試薬が分注されると、処理が中断されている間もキュベット内で抗原抗体反応が進行してしまうため、キュベット間で反応時間にバラつきが生じることを防止すべく、R2試薬分注後に処理が中断されたキュベットはすべて廃棄対象としている。一方、R2試薬が分注されていないキュベット(緩衝液からなるR1試薬のみが分注されたキュベット、およびR1試薬と検体が分注されたキュベット)では反応が進行することはない。そのため、長時間にわたる処理の中断によってキュベット内の液体が乾燥しない限り、処理を再開しても分析結果にほとんど影響を及ぼさない。そこで、本実施例では、中断時間が所定時間内である場合には、R1試薬分注済みキュベット、およびR1試薬と検体分注済みキュベットを廃棄対象とせずに、中断していた処理を再開することで、検体とR1試薬の無駄を可能な限り少なくするようにしている。廃棄対象とされたキュベットは、試薬分注が行われることなく、1次B/F分離テーブル77a、2次反応テーブル81a、2次B/F分離テーブル77b、及び検出部87に順次搬送されていき、検出部87でキュベットが空にされたのち廃棄用孔88を介して廃棄される。
【0178】
続いて、制御部901は、処理が再開されたキュベットに対応する個別検体進捗情報に、処理の中断が発生したキュベットであることを示すフラグ情報を書き込む(S95)。書き込まれたフラグ情報は、そのキュベットの測定が終了したのち、測定結果とともに表示部9aに表示される。
【0179】
他方、中断していた時間が、上記読み出した中断時間(所定時間)内でないと(S93:NO)、制御部901は、1次反応テーブル80aに保持されているキュベットのうち、空のキュベットへのR1試薬の分注が再開される(S96)。R1試薬が分注されたキュベットおよびR1試薬と検体が分注されたキュベットは、すべて廃棄対象とされる。R2試薬分注済みキュベットを廃棄対象とする理由は既に述べた理由と同じである。R1試薬分注済みキュベットを廃棄対象とする理由は、長時間にわたる処理の中断によりキュベット内の液体が乾燥するおそれがあるためである。廃棄対象とされたキュベットは、試薬分注が行われることなく、1次B/F分離テーブル77a、2次反応テーブル81a、2次B/F分離テーブル77b、および検出部87に順次搬送されていき、検出部87でキュベットが空にされたのち、廃棄用孔88を介して廃棄される。
【0180】
図15(b)は、S92で実行される新規検体の吸引再開処理を示すフローチャートである。
【0181】
制御装置9の制御部901は、検体吸引指示受付画面を表示部9aに表示する(S101)。本実施例の検体吸引指示受付画面は、上記実施例1で示した図10(b)の検体吸引指示受付画面420と同様である。制御部901は、検体吸引指示受付画面420のOKボタン421が押下されたと判定すると(S102:YES)、測定ユニット7に吸引
指示信号を送信し、測定ユニット7の検体分注部74による新規検体の吸引を再開させる(S103)。こうして、新規検体の吸引再開処理が終了する。
【0182】
なお、本実施例では、試薬分注部83においてピペット下降エラーが発生した場合(ステップS65の処理が中断した場合)を例にとって説明したが、検体分注部74、試薬分注部82、および試薬分注部84においてピペット下降エラーが発生した場合のいずれにも本発明を適用することができる。
【0183】
以上、本実施例によれば、ピペット下降エラーが発生した場合に、エラー発生箇所より上流の処理が中断された後、ピペットを動作始点位置(原点位置)に戻すエラー復帰処理が行われる。これにより、ピペットを下降させるための機構の一時的な不具合など、比較的軽微なエラーは解消され得る。
【0184】
また、この場合に、エラー発生箇所より下流の処理が継続される。これにより、エラー発生箇所を通過した検体の処理を、迅速に完了させることができる。
【0185】
また、本実施例によれば、エラーが解消されたときに、中断時間が所定時間内であると、中断されていた上流の処理が再開される。これにより、中断していた全ての検体を廃棄せずに済むため、再度検体に対して試薬等を使用する必要がなくなり、消耗品の廃棄量を低減することができる。このように消耗品の廃棄量を低減することは、環境保護に対しても有効である。
【0186】
また、この場合に、中断していた検体の個別検体進捗情報に、処理の中断が発生したことを示すフラグ情報が書き込まれる。また、中断していた検体の個別検体進捗情報は、表示部9aに表示される。これにより、ユーザは、中断することなく処理が終了した検体と、中断していた検体とを区別することができる。
【0187】
また、本実施例によれば、エラーが解消したときに、中断時間が所定時間内でないと、エラー発生箇所より上流の検体のうち、反応に関する試薬を分注済みの検体は廃棄される。しかしながら、1次反応テーブル80aに保持されている空のキュベットへの処理は再開されるため、迅速に検体の処理を再開することができる。
【0188】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明の実施例はこれらに限定されるものではない。
【0189】
たとえば、上記実施例では、測定対象として血液を例示したが、尿についても測定対象とされ得る。すなわち、尿を検査する検体処理システムにも本発明を適用することができ、さらに、他の臨床検体を検査する臨床検体処理システムに本発明を適用することもできる。
【0190】
また、上記実施例では、エラー復帰処理が行われた後で、エラー復帰確認処理が行われているが、これに限らず、エラー復帰処理が省略されても良い。
【0191】
また、上記実施例1では、エラー発生時に吸引済みの血液検体が、全て染色部50に到着した後(図6のS14〜S17の処理が終了した後)で、検体吸引指示がなされてから、新規検体の吸引が再開された。しかしながら、これに限らず、全ての検体に対する所定の処理(たとえば、図6のS14〜S15の処理)が終了した後で、新規検体の吸引が再開されるようにしても良い。
【0192】
また、上記実施例2では、新規検体の吸引は、検体吸引指示がなされてから再開された
が、これに限らず、全ての検体に対する所定の処理(たとえば、図13のS61〜S69の処理)が終了した後で、新規検体の吸引が再開されるようにしても良い。
【0193】
また、上記実施例では、新規検体の吸引再開処理において、検体吸引指示が行われた後で新規検体の吸引が再開されたが、これに限らず、中断されていた上流の処理が再開されるときに、併せて自動的に新規検体の吸引が再開されるようにしても良い。
【0194】
また、上記実施例では、図10の対処指示受付画面410で、ユーザによりOKボタン412が押下されたときに、エラー復帰処理が行われたが、これに限らず、塗抹標本作製装置2の制御部201または制御装置9の制御部901により、自動的に実行されるようにしても良い。また、エラー復帰処理を自動的に実行する形態において、自動的に所定回数(例えば3回)のエラー復帰処理を行い、その結果エラーが解消されない場合に、ユーザにエラーを通知するようにしてもよい。
【0195】
また、上記実施例では、エラー復帰を行った結果、エラーが解消されなかった場合、再び図10の対処指示受付画面410を表示してエラー復帰の指示を受け付けたが、一度エラー復帰の指示を受け付けたらエラーが解消されるまでエラー復帰処理を繰り返し行ってもよい。この場合、エラー復帰処理を所定時間(あるいは所定回数)繰り返してもなおエラーが解消しない場合に、再びユーザの指示を受け付けるようにしてもよい。
【0196】
また、上記実施例では、エラーが検出されるとユーザによる指示を受け付けるまで処理を中断した状態で待機しておき、エラー復帰の指示を受け付けると無条件にエラー復帰を行ったが、これに限られない。具体的には、実施例1では、エラーが検出されてから所定時間が経過した場合には、エラー復帰の指示を待たずに、処理が中断されていたカセットを自動的に排出してもよい。実施例2では、エラーが検出されてから所定時間が経過した場合には、エラー復帰の指示を待たずに、1次反応テーブル80aに保持されたキュベットのうちR1試薬、R2試薬および検体の少なくとも一つが分注されたキュベットを排出してもよい。
【0197】
また、上記実施例では、上記所定のエラーが発生したときに、エラー発生箇所より下流にある検体の処理が継続されたが、これに限らず、エラーが発生したときに、エラー発生箇所より下流にある検体の処理を中断し、その後所定のタイミング(たとえば、エラー復帰確認処理の後)で、下流にある検体の処理を再開するようにしても良い。
【0198】
また、上記実施例1では、カセット到着エラーまたはカセット送り出しエラーが発生した場合に、塗抹標本作製装置2によってエラーに対する処理が行われたが、これに限らず、他の制御装置によってエラーに対する処理が行われるようにしても良い。
【0199】
また、上記実施例2では、ピペット下降エラーが発生した場合に、制御装置9によってエラーに対する処理が行われたが、これに限らず、測定ユニット7によってエラーに対する処理が行われるようにしても良い。
【0200】
また、上記実施例2では、中断時間が所定時間内でないと、エラー発生箇所より上流にあるR1試薬を分注済みの検体と、R2試薬を分注済みの検体の全てが破棄されたが、R2試薬を分注済みの検体の全てとR1試薬を分注済みの検体の一部のみを破棄するようにしても良い。この場合、たとえば、中断時間が所定時間程度であれば、問題なく分析結果が得られる検体の処理のみが再開されるようにする。これにより、処理の中断時間が長く適切な処理結果が得られそうにない検体に対する無駄な処理を省きつつ、処理の中断時間が短く適切な処理結果が得られる見込みのある検体を無駄にしなくても済むようになる。
【0201】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0202】
1 … 臨床検体処理装置(検体処理装置)
2 … 塗抹標本作製装置(検体処理装置)
6 … 免疫分析装置(検体処理装置)
2a … 表示操作部(出力部)
9a … 表示部(出力部)
50b … ベルト(搬送部)
74 …検体分注部(動作部)
82〜84 … 試薬分注部(動作部、第1動作部、第2動作部)
201 … 制御部
901 … 制御部
B〜E … 染色機構部(動作部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体容器内の検体を吸引し、吸引した検体に複数の処理を順次実行する検体処理装置およびそのための検体処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検体を吸引し、該検体に複数の処理を順次実行する検体処理装置として、検体を吸引してスライドガラス状に塗抹標本を作成する塗抹標本作製装置、および、検体を吸引してキュベットに収容し、キュベット内の検体を分析する検体分析装置等の検体処理装置が知られている。このような検体処理装置においては、検体の処理中に異常が発生した場合に、処理の継続が可能な検体の処理を継続することも知られている。
【0003】
たとえば、特許文献1の自動分析装置では、異常の内容が試料分注部、試薬分注部、攪拌部の何れかに関するものであると判断されたときには、反応テーブルおよび測光に関連する部分以外の機構部分を停止し、自動分析装置が部分停止状態とされる。そして、測光作業のみが残された状態にある複数の検体について測光作業が終了すれば、自動分析装置は、すべての部分が停止されるように制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−183955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような異常発生時に部分停止する自動分析装置では、異常が発生すると、部分停止の対象となった検体の処理は、測光作業のみが残された全ての検体について測光作業が終了した後でなければ、再開することができなかった。このため、上記特許文献1の自動分析装置では、異常が発生した場合の検体処理の中断時間が長いという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、異常が発生したときの検体処理の中断時間を短縮することが可能な検体処理装置および検体処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、検体容器から検体を吸引し、該検体に複数の処理を順次実行する検体処理装置に関する。本態様に係る検体処理装置は、検体の処理のための所定の動作をそれぞれが実行する複数の動作部と、前記複数の動作部による動作状況を監視し、動作の異常が検出されたとき、異常が検出された前記動作部に到達していない検体の処理を中断し、異常が検出された動作を再度実行させ、該再度の動作の実行によって前記異常が検出された前記動作部に動作の異常が検出されなければ、中断した前記検体の処理を再開するよう、前記複数の動作部を制御する制御部と、を有する。
【0008】
本態様に係る検体処理装置によれば、動作の異常が検出されたとき、異常が検出された動作が再度実行される。こうすると、検出された動作の異常が突発的な異常である場合に、異常が検出されなくなるため、中断された検体の処理を迅速に再開することができる。
【0009】
本態様に係る検体処理装置において、前記制御部は、動作の異常が検出されたとき、当該異常を解消するための復帰動作を実行させ、その後、異常が検出された動作を再度実行
させる構成とされ得る。こうすると、異常が検出された動作が再度実行されたときに、異常が検出されなくなる確率が高められる。
【0010】
また、本態様に係る検体処理装置において、前記制御部は、異常が検出された前記動作部に到達していない検体の処理を中断するとともに、異常が検出された前記動作部を通過した検体の処理を継続するよう、前記複数の動作部を制御する構成とされ得る。こうすると、異常が検出された動作部を通過した検体の処理を、迅速に完了させることができる。
【0011】
本態様に係る検体処理装置において、前記制御部は、動作の異常が検出されたときに、異常が検出された前記動作部に到達していない検体に対して他の動作部による処理が実行されている場合、当該他の動作部による前記検体に対する処理を完了させたのち、その検体に対して次に行われるべき処理を停止するように前記複数の動作部を制御する構成とされ得る。こうすると、処理が再開されたときに迅速に次の工程を開始することができる。
【0012】
また、本態様に係る検体処理装置において、前記制御部は、動作の異常が検出されたとき、前記検体容器からの新たな検体の吸引を中断し、異常が検出された動作の再度の実行によって動作の異常が検出されなければ、前記検体容器からの新たな検体の吸引を再開するよう、前記複数の動作部を制御する構成とされ得る。こうすると、異常が検出されたときに中断された新たな検体の吸引を、迅速に再開することができる。
【0013】
また、本態様に係る検体処理装置において、前記制御部は、動作の異常が検出されたとき、前記検体容器から吸引済みで、異常が検出された動作部に到達していない吸引済み検体の処理を中断し、異常が検出された動作の再度の実行によって動作の異常が検出されなければ、処理が中断された前記吸引済み検体の処理を再開するよう、前記複数の動作部を制御する構成とされ得る。こうすると、動作の異常が検出されたときに吸引済みの検体の処理が再開されるため、吸引済みの検体を破棄する必要がなくなる。これにより、スライドガラス、キュベット、異常が検出される前に分注された試薬等の消耗品の廃棄量を低減することができる。
【0014】
ここで、前記制御部は、動作の異常が検出されたとき、前記吸引済み検体の処理としての試薬のキュベットへの分注を中断し、異常が検出された動作の再度の実行によって動作の異常が検出されなければ、中断した前記試薬の分注を再開するよう、前記複数の動作部を制御する構成とされ得る。こうすると、異常が検出されたときに中断された試薬の分注を、迅速に再開することができる。
【0015】
また、前記制御部は、異常が検出された動作の再度の実行によって動作の異常が検出されなければ、処理の中断時間に基づいて処理の再開の可否を判定し、再開可能であれば、中断した検体の処理を再開するよう、前記複数の動作部を制御する構成とされ得る。こうすると、処理を再開した場合に、適切な処理結果が得られる検体のみを処理することができる。
【0016】
また、前記制御部は、処理の中断時間に応じて、処理が中断されていた前記吸引済み検体のうち処理を再開する対象となる検体を変更する構成とされ得る。こうすると、処理の中断時間が長く適切な処理結果が得られそうにない検体に対する無駄な処理を省きつつ、処理の中断時間が短く適切な処理結果が得られる見込みのある検体を無駄にしなくて済む。
【0017】
また、本態様に係る検体処理装置は、出力部をさらに備える構成とされ得る。ここで、前記制御部は、処理が再開された吸引済みの検体の処理結果を、他の検体の処理結果と区別可能に前記出力部に出力させる構成とされる。こうすると、出力部を参照することによ
り、処理が再開された検体を特定することができる。これにより、処理が中断されたことにより処理結果に影響が生じる場合でも、処理結果に生じた影響の原因を、容易に特定することができる。
【0018】
また、本態様に係る検体処理装置は、検体を前記複数の動作部に搬送する搬送部をさらに備える構成とされ得る。ここで、前記動作の異常は、前記動作部に対して前記検体が適正に搬入または搬出されなかったことにより検出される構成とされる。
【0019】
ここで、前記制御部は、第1動作部から第2動作部へ検体が正常に搬送されなかったとき、前記第1動作部から前記第2動作部へ向かう方向と逆の方向に前記検体を搬送させた後、再び、前記第1動作部から前記第2動作部へ前記検体を搬送するよう前記搬送部を制御する構成とされ得る。このように、検体が正常に搬送されない場合に逆の方向に検体を搬送すると、検体と搬送部とが適切に係合するようになることがある。よって、検体が正常に搬送されない場合に、搬送異常の原因を迅速に除去することができる。
【0020】
さらに、前記制御部は、前記逆の方向の搬送を行うときに干渉する動作部の動作が行われないタイミングにおいて、前記検体を前記逆の方向に搬送させるよう前記搬送部を制御する構成とされ得る。こうすると、逆の方向の搬送により、動作部に新たな異常が生じてしまうことを抑制することができる。
【0021】
また、本態様に係る検体処理装置において、前記制御部は、動作の異常が検出されたとき、異常が検出された動作部を、当該異常が検出された動作の初動状態に復帰させ、その後、異常が検出された動作を再度実行させる構成とされ得る。このように、動作の異常が検出された場合に、動作部を初動状態に復帰させると、動作部の異常が検出されなくなることがある。よって、動作の異常が検出された場合に、動作異常の原因を迅速に除去することができる。
【0022】
また、本態様に係る検体処理装置において、前記制御部は、動作の異常が検出されたとき、異常が検出されたことをユーザに通知する構成とされ得る。こうすると、動作部による動作に異常が発生したことを知ることができる。
【0023】
また、本態様に係る検体処理装置において、前記制御部は、異常が検出されたことをユーザに通知するとともに、異常が検出された動作を再度実行させるか否かの指示を受け付け、受け付けた指示に応じて前記複数の動作部を制御する構成とされ得る。異常が検出された動作を再度実行させて処理された検体は、通常の検体と処理の条件が異なることになる。ユーザによっては通常と異なる条件で処理された検体を採用せず、一から検体の処理をやり直すことがある。そのため、ユーザによって、異常が検出された動作を再度実行するのが好ましい場合と、再度実行しないのが好ましい場合とがある。上記の構成により、ユーザの状況に応じた迅速な復旧が可能になる。
【0024】
本発明の第2の態様は、検体処理方法に関する。本態様に係る検体処理方法は、検体容器から検体を吸引する吸引工程と、吸引された検体に複数の処理を順次実行する処理工程と、処理工程における動作の異常を検出する検出工程と、動作の異常が検出されたとき、異常が検出された前記動作部に到達していない検体の処理を中断する中断工程と、異常が検出された動作を再度実行する再動作工程と、再動作工程により動作の異常が検出されなければ、中断した前記検体の処理を再開する再開工程と、を含む。
【0025】
本態様に係る検体処理方法によれば、上記第1の態様と同様の効果が奏され得る。
【発明の効果】
【0026】
以上のとおり、本発明によれば、異常が発生したときの検体処理の中断時間を短縮することが可能な検体処理装置および検体処理方法を提供することができる。
【0027】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態により何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例1に係る臨床検体処理装置の構成を示す斜視図である。
【図2】実施例1に係る塗抹標本作製装置を上側から見た場合の構成を示す平面図である。
【図3】実施例1に係るカセットの構成を示す斜視図である。
【図4】実施例1に係る分注部の動作を説明する図である。
【図5】実施例1に係る塗抹標本作製装置と搬送装置の構成の概要を示す図である。
【図6】実施例1に係る塗抹標本作製装置による塗抹標本作製処理を示すフローチャートである。
【図7】実施例1に係る個別標本作製情報を示す図である。
【図8】実施例1に係るカセット到着エラーまたはカセット送り出しエラーが発生した場合の塗抹標本作製装置による処理を示すフローチャートである。
【図9】実施例1に係るカセット到着エラーまたはカセット送り出しエラーが発生した場合の塗抹標本作製装置による処理を示すフローチャートおよび新規検体の吸引再開処理を示すフローチャートである。
【図10】実施例1に係る表示操作部に表示される対処指示受付画面の構成を示す図および表示操作部に表示される検体吸引指示受付画面の構成を示す図である。
【図11】実施例2に係る免疫分析装置を上から見た場合の構成を示す平面図である。
【図12】実施例2に係る測定ユニットと制御装置の構成の概要を示す図である。
【図13】実施例2に係る測定ユニットによる測定処理を示すフローチャートである。
【図14】実施例2に係るピペット下降エラーが発生した場合の制御装置による処理を示すフローチャートである。
【図15】実施例2に係るピペット下降エラーが発生した場合の制御装置による処理を示すフローチャートおよび新規検体の吸引再開処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本実施例について、図面を参照して説明する。
【0030】
<実施例1>
本実施例は、血液検体の塗抹標本を作製する臨床検体処理装置に本発明を適用したものである。本実施例に係る臨床検体処理装置は、塗抹標本作製装置と搬送装置を備えている。なお、塗抹標本の作製の要否は、通常、前段の血液分析装置等による血液検体の分析結果に基づいて判断される。塗抹標本の作製を行う場合、血液検体を収容した検体容器を保持する検体ラックが、搬送装置にセットされる。しかる後、この検体ラックが搬送装置により搬送され、塗抹標本作製装置により塗抹標本が作製される。
【0031】
以下、本実施例に係る臨床検体処理装置について、図面を参照して説明する。
【0032】
図1は、本実施例に係る臨床検体処理装置1の構成を示す斜視図である。臨床検体処理装置1は、塗抹標本作製装置2と搬送装置3を備えている。なお、以下、X軸正方向を左方向、X軸負方向を右方向、Y軸正方向を後方、Y軸負方向を前方、Z軸正方向を上方向
、Z軸負方向を下方向と称することにする。
【0033】
塗抹標本作製装置2は、カバーの前面にタッチパネルからなる表示操作部2aを備えている。また、塗抹標本作製装置2のカバーの右上と、左上と、前面には、それぞれ、開口2b、2c、2dが形成されている。また、塗抹標本作製装置2は、開口2dを介して検体容器101を保持するためのハンド部41aを備えている。ユーザは、表示操作部2aを操作することにより塗抹標本作製装置2を制御し、開口2bを介して後述するカセット収容部47(図2参照)にカセット20をセットし、開口2cを介して後述するカセット保管部51(図2参照)に保管されているカセット20を取り出すことができる。
【0034】
搬送装置3は、塗抹標本作製装置2の前面に設置されており、搬入部3aと取り出し部3bを有している。搬送装置3は、搬入部3aに位置付けられた検体ラック100を取り出し部3bまで搬送する。検体容器101は、ハンド部41aの前方に位置付けられると、ハンド部41aにより抜き出され、塗抹標本作製装置2内に引き込まれる。
【0035】
図2は、塗抹標本作製装置2を上側から見た場合の構成を示す平面図である。
【0036】
塗抹標本作製装置2は、吸引分注機構部41と、スライドガラス供給部42と、スライドガラス横送り部43と、塗抹機構部44と、塗抹乾燥部45と、印字部46と、カセット収容部47と、カセット横送り部48と、カセット回転部49と、染色部50と、カセット保管部51と、を備えている。
【0037】
吸引分注機構部41は、ハンド部41aと、ピアサ(吸引針)41bと、分注ピペット41cを有している。ハンド部41aの前方に位置付けられた検体容器101は、ハンド部41aにより把持されて検体ラック100から抜き出され、ハンド部41aにより所定回数だけ攪拌される。しかる後に、この検体容器101に収容された血液検体は、ピアサ41bにより吸引され、左右(X軸方向)に移動可能な分注ピペット41cにより、塗抹機構部44の前方に位置付けられたスライドガラス10に滴下される。
【0038】
スライドガラス供給部42は、複数の新しいスライドガラス10を保持しており、これら新しいスライドガラス10を、順次スライドガラス横送り部43上まで移動させる。スライドガラス横送り部43は、スライドガラス供給部42から供給された新しいスライドガラス10を左方向(X軸正方向)に移動させて、塗抹機構部44の前方に位置付ける。
【0039】
塗抹機構部44は、前方に位置付けられたスライドガラス10に血液検体が滴下されると、この血液検体を塗抹する。塗抹された血液検体を含むスライドガラス10は、スライドガラス横送り部43により、右方向(X軸負方向)に移動され、順次、塗抹乾燥部45の前方と、印字部46の真下位置に位置付けられる。塗抹乾燥部45は、塗抹乾燥部45の前方に位置付けられたスライドガラス10に塗抹された血液検体を、ファン(図示せず)により乾燥させる。印字部46は、プリンタ(図示せず)からなり、スライドガラス10の端部に、検体番号、日付、受付番号、氏名などを印字する。
【0040】
カセット収容部47は、前方(Y軸負方向)に移動可能なベルト47aを有している。ユーザは、開口2b(図1参照)を介してベルト47a上に空のカセット20をセットすることができる。ベルト47aにセットされた空のカセット20は、ベルト47aが動くことにより前方に搬送される。
【0041】
図3(a)、(b)は、カセット20の構成を示す斜視図である。なお、図3(a)、(b)には、カセット20がベルト47aに載置されたときの図2の座標軸が併せて示されている。
【0042】
図3(a)を参照して、カセット20は、樹脂からなり、収容部20eにスライドガラス10を収容することができるよう、Y軸方向に厚みを有している。カセット20の上部には、仕切り部20cで左右に仕切られた収納口20a、20bが形成されている。仕切り部20cの下方向には、仕切り部20dが設置されており、カセット20の内部には、収容部20eが形成されている。カセット20の左右には、鍔部20f、20gが形成されており、鍔部20f、20gの下面が、下側から支持されることにより、ベルト47a上に載置される。カセット20の下方には、底部20hが形成されている。スライドガラス10は、収納口20aを介して、上側から挿入される。
【0043】
図3(b)は、カセット20にスライドガラス10が収容された状態を示す斜視図である。図3(b)に示すようにスライドガラス10が収容されると、収容部20eのうち、仕切り部20c、20dよりも右側の領域に隙間が生じる。かかる隙間により、スライドガラス10がカセット20に収容された状態でも、収納口20bを介してピペットが挿入可能となる。
【0044】
図2に戻り、カセット横送り部48は、カセット支持部48aと、左右に移動可能なベルト48bを有している。カセット支持部48aは、ベルト48bに固定されており、カセット20の底部20hを上方向に支持するよう構成されている。カセット収容部47の前方に位置付けられた空のカセット20は、カセット支持部48aに支持されて、カセット回転部49の前方まで左方向に搬送される。
【0045】
カセット回転部49は、平面49aと、X軸方向に平行な軸49bを備えている。軸49bがX軸周りに回転することにより、平面49aは、X−Y平面に平行な状態とX−Z平面に平行な状態となる。平面49aがX−Z平面に平行な状態のときに、カセット回転部49の前方に位置付けられた空のカセット20が、平面49a上に移動される。続いて、平面49aがX−Y平面に平行な状態とされ、印字部46から押し出されたスライドガラス10が、図示の如く、カセット20に挿入される。続いて、平面49aが再びX−Z平面に平行な状態とされ、平面49a上のスライドガラス10を収容するカセット20が、カセット横送り部48のカセット支持部48aに移動される。しかる後、このカセット20は、カセット横送り部48により左方向に搬送され、染色部50の前方に位置付けられる。
【0046】
染色部50は、送り込み機構部50aと、後方(Y軸正方向)に移動可能なベルト50bと、染色機構部A〜Eと、送り出し機構部50cを有する。染色機構部Bは、分注部B1とセンサB2からなり、染色機構部Cは、分注部C1とセンサC2からなり、染色機構部Dは、分注部D1とセンサD2からなり、染色機構部Eは、分注部E1とセンサE2からなる。
【0047】
染色部50の前方に位置付けられたカセット20が、カセット横送り部48のカセット支持部48aに支持された状態で、染色機構部Aにより、このカセット20に収容されているスライドガラス10上の塗抹標本の処理が行われる。具体的には、カセット20の収納口20bを介して、染色機構部Aのピペット(図示せず)が挿入され、このピペットにより、カセット20の収容部20eにメタノールが吐出される。しかる後に、このカセット20は、送り込み機構部50aにより、ベルト50b上に送り込まれる。
【0048】
送り込み機構部50aによりベルト50b上に送り込まれたカセット20は、ベルト50bに鍔部20f、20gが支持される。この状態で、ベルト50bが動くことにより、カセット20は後方に搬送される。なお、ベルト50bは、塗抹標本作製装置2が動作状態にあるとき、常に後方に動き続けている。
【0049】
分注部B1〜E1は、それぞれ、分注部B1〜E1の真下に位置付けられたカセット20に収容されたスライドガラス10上の塗抹標本に対して処理を行う。具体的には、分注部B1は、カセット20からメタノールを吸引して、カセット20に染色液1を吐出する。分注部C1は、カセット20から染色液1を吸引して、カセット20に染色液1の希釈液を吐出する。分注部D1は、カセット20から染色液1の希釈液を吸引して、カセット20に染色液2の希釈液を吐出する。分注部E1は、カセット20から染色液2の希釈液を吸引し、カセット20内を水洗いする。なお、分注部B1〜E1の動作については、追って図4を参照して説明する。
【0050】
センサB2〜E2は、発光部と受光部からなる透過型のセンサであり、それぞれ、分注部B1〜E1の僅かに後方に位置付けられている。センサB2〜E2は、それぞれ、分注部B1〜E1で処理が行われて後方に移動されたカセット20が、センサB2〜E2の発光部と受光部の間に位置付けられたことを検出する。なお、センサB2〜E2によりカセット20が検出されるときの、カセット20の位置を、以下、「通過位置」と称することにする。
【0051】
ベルト50bの後方に搬送されたカセット20は、送り出し機構部50cによって、左方向に送り出される。これにより、カセット20は、カセット保管部51の後方に位置付けられる。
【0052】
カセット保管部51は、送り込み機構部51aと、前方(Y軸負方向)に移動可能なベルト51bを有する。送り出し機構部50cから送り出されたカセット20は、送り込み機構部51aにより、ベルト51b上に送り込まれる。ベルト51b上に送り込まれたカセット20は、ベルト51bが動くことにより、前方に搬送される。ベルト51bの前方に位置付けられたカセット20は、開口2c(図1参照)を介してユーザにより取り出される。こうして、塗抹標本の作製が終了する。
【0053】
次に、図4を参照して、分注部B1〜E1の動作を説明する。なお、分注部C1、D1、E1の動作は、分注部B1と略同様であるため、ここでは便宜上、分注部B1の動作についてのみ説明する。
【0054】
図4(a)〜(c)は、分注部B1をY軸正方向に見た時の側面図である。分注部B1は、基板B11と、ストッパB12と、排出ピペットB13と、供給ピペットB14を有する。
【0055】
図4(a)を参照して、基板B11は、塗抹標本作製装置2内に固定されている。ストッパB12は、基板B11に対して上下(Z軸方向)に移動可能な金属板であり、ストッパB12の前面(Y軸負方向側の面)には、接触型のセンサB12aが設置されている。排出ピペットB13と供給ピペットB14は、一体となって上下に移動可能となるよう構成されている。排出ピペットB13は、カセット20内の液体を吸引して排出することができ、供給ピペットB14は、カセット20内に液体を吐出することができる。
【0056】
図4(a)に示すようにストッパB12が位置付けられているとき、ベルト50bに支持されて後方に搬送されるカセット20の後方側の面は、ストッパB12に当接して停止する。このときのカセット20の位置を、以下、「停止位置」と称することにする。このとき、センサB12aにより、カセット20が停止位置に位置付けられたことが検出される。この状態で、排出ピペットB13と供給ピペットB14が下方向に移動され、排出ピペットB13と供給ピペットB14の先端部が、図4(b)に示す如く、カセット20の収容部20e内に位置付けられる。
【0057】
続いて、図4(b)に示す状態で、排出ピペットB13による吸引と、供給ピペットB14による吐出が行われる。吸引と吐出が終了すると、排出ピペットB13と供給ピペットB14は、上方向に移動され、さらに、ストッパB12が上方向に移動される。これにより、図4(c)に示す状態となり、カセット20はベルト50bに支持されながら、後方へ移動する。
【0058】
カセット20が、分注部B1の停止位置から僅かに後方に移動して、分注部B1の通過位置に位置付けられると、センサB2(図2参照)により、このカセット20が検知される。これにより、このカセット20が分注部B1を通過したことが分かる。
【0059】
図5は、塗抹標本作製装置2と搬送装置3の構成の概要を示す図である。
【0060】
塗抹標本作製装置2は、制御部201と、記憶部202と、駆動部203と、センサ部204と、表示操作部2aと、通信部205を備えている。
【0061】
制御部201は、記憶部202に記憶されているコンピュータプログラムを実行することにより、塗抹標本作製装置2の各部を制御する。記憶部202は、ハードディスク等の記憶装置からなり、塗抹標本作製装置2を動作させるためのコンピュータプログラムが記憶されている。また、記憶部202には、塗抹標本作製装置2内の各血液検体に関する工程を記憶する情報(以下、「個別標本作製情報」という)が記憶されている。また、記憶部202には、塗抹標本作製装置2が廃棄検体対策を行うか否かの設定が記憶されている。個別標本作製情報と廃棄検体対策については、それぞれ、追って図7と図9を参照して説明する。
【0062】
駆動部203は、塗抹標本作製装置2内の各部を駆動させるための機構を含んでおり、制御部201により制御される。センサ部204は、分注部B1〜E1のストッパ前面に配されている接触型のセンサと、センサB2〜E2に加えて、塗抹標本作製装置2内の他のセンサを含んでいる。センサ部204に含まれる各センサは、制御部201により制御され、センサ部204の検出信号は、制御部201に出力される。
【0063】
表示操作部2aは、図1に示したように、表示機能と入力機能が一体となったタッチパネルである。ユーザにより表示操作部2aが操作されると、制御部201に操作内容を示す信号が出力される。また、制御部201により、表示操作部2aに各種情報が表示される。通信部205は、搬送装置3の通信部304との間でデータ通信を行う。
【0064】
搬送装置3は、制御部301と、駆動部302と、センサ部303と、通信部304を備えている。制御部301は、搬送装置3内の各部を制御する。駆動部302は、搬送装置3内の各部を駆動させるための機構を含んでおり、制御部301により制御される。センサ部303は、搬送装置3内のセンサを含んでおり、制御部301により制御され、センサ部303の検出信号は、制御部301に出力される。通信部304は、塗抹標本作製装置2の通信部205との間でデータ通信を行う。
【0065】
図6は、塗抹標本作製装置2による塗抹標本作製処理を示すフローチャートである。以下の塗抹標本作製処理が行われる際には、まず、搬送装置3によって、ハンド部41a(図1、2参照)の前方位置に検体容器101が位置付けられる。このとき、搬送装置3の制御部301から、塗抹標本作製装置2の制御部201に、検体吸引指示が送信される。
【0066】
塗抹標本作製装置2の制御部201は、搬送装置3から検体吸引指示を受信すると(S11:YES)、S12〜S23の処理を順に行う。なお、制御部201は、搬送装置3
から検体吸引指示を受信すると、受信に基づく各検体容器101について、S12〜S23の処理を並行して行う。
【0067】
制御部201は、ハンド部41aにより把持された検体容器101から、ピアサ41bにより血液検体を吸引する(S12)。このとき、制御部201は、この血液検体に関して、塗抹標本作製装置2内における実行中工程等を含む“個別標本作製情報”を作成して、記憶部202に記憶する(S13)。
【0068】
図7(a)は、個別標本作製情報を示す図である。
【0069】
ピアサ41bにより吸引された各血液検体の個別標本作製情報は、図中の列に示すように、それぞれ、管理番号、検体番号、作成結果、実行中工程等を含んでいる。管理番号と検体番号は、いずれもピアサ41bにより吸引された血液検体に対して一意に付与される。なお、管理番号と検体番号によって識別される血液検体を、以下、「識別検体」と称することにする。
【0070】
作製結果は、実行中の工程が正常に行われているか否かを示す。実行中工程は、識別検体が、塗抹標本作製装置2内のどの工程にあるかを示す。なお、実行中工程に示される工程番号は、塗抹標本作製装置2内のいずれかの処理内容に対応している。たとえば、染色機構部Bでは、カセット20の到着検出工程と、カセット20の送り出し検出工程と、排出ピペットB13と供給ピペットB14の下降工程と、排出工程と、吐出工程などの複数の工程が行われる。塗抹標本作製装置2の制御部201は、識別検体が、どの工程に位置付けられているかを、個別標本作製情報を参照して判定する。
【0071】
図6に戻り、制御部201は、分注ピペット41cにより、血液検体を塗抹機構部44の前方に位置付けられたスライドガラス10に滴下し、塗抹機構部44により、この血液検体を塗抹する(S14)。
【0072】
続いて、制御部201は、塗抹標本を含むスライドガラス10を右方向に移動させて、このスライドガラス10に、印字部46により文字を印字する(S15)。続いて、制御部201は、このスライドガラス10を、カセット回転部49によりカセット20に収納する(S16)。続いて、制御部201は、このカセット20を、カセット横送り部48により染色部50の前方まで搬送する(S17)。
【0073】
続いて、制御部201は、染色機構部A〜Eにより、S18〜S22の処理を順に行う。すなわち、染色機構部Aは、染色部50の前方に位置付けられたカセット20に、メタノールを分注する(S18)。染色機構部Bは、染色機構部Bの停止位置に位置付けられたカセット20からメタノールを吸引し、このカセット20に染色液1を吐出する(S19)。染色機構部Cは、染色機構部Cの停止位置に位置付けられたカセット20から染色液1を吸引し、このカセット20に染色液1の希釈液を吐出する(S20)。染色機構部Dは、染色機構部Dの停止位置に位置付けられたカセット20から染色液1の希釈液を吸引し、このカセット20に染色液2の希釈液を吐出する(S21)。染色機構部Eは、染色機構部Eの停止位置に位置付けられたカセット20から染色液2の希釈液を吸引し、このカセット20の収容部20e内を水洗いする(S22)。
【0074】
続いて、制御部201は、染色機構部Eによる処理が終了すると、このカセット20を、送り出し機構部50cにより、カセット保管部51に送り出す(S23)。こうして、塗抹標本作製処理が終了する。
【0075】
図8は、カセット到着エラーまたはカセット送り出しエラーが発生した場合の塗抹標本
作製装置2による処理を示すフローチャートである。
【0076】
ここで、カセット到着エラーとは、染色部50の染色機構部B〜Eの停止位置に、到着するべきカセット20が到着しない場合に発生するエラーである。たとえば、送り込み機構部50aにより、ベルト50b上に送り込まれたカセット20が、染色機構部Bの停止位置に到着するべきタイミングから、所定時間を経過しても到着しない場合に、カセット到着エラーが発生する。
【0077】
カセット送り出しエラーとは、染色部50の染色機構部B〜Eの通過位置で、検出されるべきカセット20が検出されない場合に発生するエラーである。たとえば、染色機構部Bの停止位置にあるカセット20が、ベルト50bにより後方に移動されてセンサB2により検出される通過位置に位置付けられるべきタイミングから、所定時間を経過しても到着しない場合に、カセット送り出しエラーが発生する。
【0078】
塗抹標本作製装置2内で上記いずれかのエラーが発生すると、塗抹標本作製装置2の制御部201は、まず、エラー発生箇所における処理を中断する。なお、このとき、ベルト50bは、通常通り後方に動かされている。
【0079】
続いて、制御部201は、塗抹標本作製装置2内においてエラー発生時に実行中の処理(エラー発生箇所を除く)を完了させる(S31)。続いて、制御部201は、エラー発生箇所より下流の処理を継続し、エラー発生箇所より上流の処理を中断する(S32)。
【0080】
ここで、染色機構部B〜Eの停止位置に到着するべきカセット20が到着しないことにより、カセット到着エラーが発生した場合、エラー発生箇所は、それぞれ染色機構部B〜Eとなる。また、染色機構部B〜Eの通過位置に到着するべきカセット20が到着しないことにより、カセット送り出しエラーが発生した場合、エラー発生箇所は、それぞれ染色機構部B〜Eとなる。エラー発生箇所が染色機構部B〜Eであるとき、それぞれ、図6のS12〜S19の処理、S12〜S20の処理、S12〜S21の処理、S12〜S22の処理が中断されることになる。
【0081】
続いて、制御部201は、エラー発生箇所と、エラー発生箇所より上流にある識別検体の個別標本作製情報に、“停止フラグON”を書き込む(S33)。
【0082】
図7(b)は、カセット到着エラーまたはカセット送り出しエラーが発生した場合の、個別標本作製情報を示す図である。
【0083】
図7(b)において、エラー発生箇所より下流にある識別検体の管理番号は1、2であり、エラー発生箇所と、エラー発生箇所より上流にある識別検体の管理番号は3以上であるとする。このとき、図8のS33の処理が行われると、図7(b)に示す如く、管理番号が3以上である識別検体の実行中工程の項目には、位置付けられている工程と、“停止フラグON”が書き込まれる。
【0084】
図8に戻り、次に、塗抹標本作製装置2の制御部201は、表示操作部2aに、対処指示受付画面を表示する(S34)
図10(a)は、図8のS34において、表示操作部2aに表示される対処指示受付画面410の構成を示す図である。
【0085】
対処指示受付画面410は、メッセージ表示部411と、OKボタン412と、強制排出ボタン413を有している。メッセージ表示部411には、エラーが発生した工程と、エラー内容と、エラー番号と、対処方法等が表示される。図10(a)では、染色機構部
Dにおいてカセット送り出しエラーが発生している旨が示されている。ユーザは、OKボタン412または強制排出ボタン413を押下することができる。
【0086】
図8に戻り、塗抹標本作製装置2の制御部201は、OKボタン412または強制排出ボタン413が押下されることにより、指示を受け付けると(S35:YES)、処理がS36に進められる。
【0087】
制御部201は、S35で受け付けた指示内容が、エラー復帰指示でない(S36:NO)、すなわち、強制排出ボタン413が押下されたとき、染色部50内の全ての塗抹標本を排出する(S37)。この場合、染色部50よりも上流側に位置付けられている塗抹標本とカセット20は、ここでは排出されず、中断時の位置に留められる。
【0088】
他方、制御部201は、S35で受け付けた指示内容が、エラー復帰指示である(S36:YES)、すなわち、OKボタン412が押下されたとき、ベルト50bを前方(Y軸負方向)に戻しても問題がないかを判定する(S38)。すなわち、この判定の際に、エラー発生箇所の下流側で継続されている処理において、ベルト50bが前方に戻されることにより、問題が生じないかが判定される。たとえば、染色機構部Bでエラーが発生した場合に、処理が継続されている染色機構部Dにおいて、停止位置に位置付けられているカセット20にピペットが挿入されていると、ベルト50bが前方に戻されることにより、分注と吐出の処理に問題が生じる。制御部201は、このような問題が生じないかを判定する。
【0089】
制御部201は、ベルト50bを前方に戻しても問題ないと判定すると(S38:YES)、エラー復帰処理を行う(S39)。具体的には、制御部201は、ベルト50bを6mmだけ前方に動かす。続いて、制御部201は、エラー復帰確認処理を行う(S40)。具体的には、制御部201は、ベルト50bを通常の状態と同様に後方に動かす。
【0090】
エラー復帰確認処理が行われたにも拘わらず、再度同じエラーが発生した場合(S41:YES)、処理がS34に戻される。他方、エラー復帰確認処理により、同じエラーが発生しなかった場合(S41:NO)、端子1に処理が続けられる。
【0091】
図9(a)は、図8の端子1以降の処理を示すフローチャートである。
【0092】
塗抹標本作製装置2の制御部201は、新規検体の吸引再開処理を行う(S42)。新規検体の吸引再開処理については、追って図9(b)を参照して説明する。
【0093】
続いて、制御部201は、廃棄検体対策に関する設定を参照して、廃棄検体対策を行うか否かを判定する(S43)。なお、廃棄検体対策を行うか否かは、あらかじめ塗抹標本作製装置2の表示操作部2aを介して、ユーザにより設定されている。また、廃棄検体対策に関する設定は、記憶部202に記憶されている。
【0094】
廃棄検体対策に関する設定が、“廃棄検体対策を行わない”に設定されている場合(S43:NO)、制御部201は、エラー発生箇所より上流の染色部50にあるカセット20を、カセット20内の液を回収しつつ、カセット保管部51に排出する(S43)。この場合、染色部50よりも上流側に位置付けられている塗抹標本とカセット20は、ここでは排出されず、中断時の位置に留められる。
【0095】
他方、廃棄検体処理に関する設定が、“廃棄検体対策を行う”に設定されている場合(S43:YES)、制御部201は、エラー発生箇所より上流の中断されていた全ての処理を再開する(S45)。なお、ピアサ41bによる新規検体の吸引は、S45の処理で
再開されない。新規検体の吸引は、後述する新規検体の吸引再開処理によって再開される。
【0096】
続いて、制御部201は、エラー発生箇所より上流の染色部50上にある識別検体の個別標本作製情報に、低信頼性標本であることを書き込む(S46)。たとえば、図7(b)に示すように、該当する管理番号の作製結果の項目に、“低信頼”が書き込まれる。
【0097】
続いて、制御部201は、低信頼性標本とされた識別検体の個別標本作製情報を、表示操作部2aに表示する(S46)。表示操作部2aには、図7(b)のような表形式の個別標本作製情報が表示される。こうして、エラー発生時の塗抹標本作製装置2の処理が終了する。
【0098】
図9(b)は、S42で実行される新規検体の吸引再開処理を示すフローチャートである。なお、この処理が開始される時点で、図8のS32の処理で説明したように、ピアサ41bによる吸引は中断されている。
【0099】
塗抹標本作製装置2の制御部201は、カセット到着エラーまたはカセット送り出しエラーが発生した時に、既に吸引されていた血液検体が、全て染色部50に到着したか(図6のS14〜S17の処理が終了したか)を判定する(S51)。制御部201は、個別標本作製情報の実行中工程を参照して判定を行う。かかる血液検体が全て染色部50に到着していると(S51:YES)、制御部201は、検体吸引指示受付画面を表示操作部2aに表示する(S52)。
【0100】
図10(b)は、表示操作部2aに表示される検体吸引指示受付画面420の構成を示す図である。検体吸引指示受付画面420は、OKボタン421とキャンセルボタン422を有している。ユーザは、OKボタン421またはキャンセルボタン422を押下することができる。
【0101】
図9(b)に戻り、塗抹標本作製装置2の制御部201は、検体吸引指示受付画面420のOKボタン421が押下されたと判定すると(S53:YES)、塗抹標本作製装置2による吸引を再開する(S54)。これにより、ハンド部41aの前方に位置付けられた検体容器101が、順次、ハンド部41aに把持されて、ピアサ41bにより検体の吸引が行われる。こうして、新規検体の吸引再開処理が終了する。
【0102】
以上、本実施例によれば、染色機構部B〜Eにおいて、カセット到着エラーまたはカセット送り出しエラーが発生した場合に、エラー発生箇所より上流の処理が中断された後、ベルトを6mm戻すエラー復帰処理が行われる。これにより、カセット20がベルト50bに引っ掛かっている場合や、カセット20同士がくっ付いている場合などの比較的軽微なエラーは解消され得る。
【0103】
また、この場合に、エラー発生箇所より下流の処理が継続される。これにより、エラー発生箇所を通過した塗抹標本の処理を、迅速に完了させることができる。
【0104】
また、本実施例によれば、廃棄検体対策を行う設定がなされていると、エラーが解消された後、中断していた処理が再開される。これにより、中断していた塗抹標本を廃棄せずに済むため、再度塗抹標本の染色等を行う必要がなくなり、消耗品の廃棄量を低減することができる。このように消耗品の廃棄量を低減することは、環境保護に対しても有効である。
【0105】
また、この場合に、中断していた血液検体と塗抹標本(識別検体)については、個別標
本作製情報の作製結果に“低信頼”と書き込まれる。また、中断していた識別検体の個別標本作製情報は、表示操作部2aに表示される。これにより、ユーザは、中断することなく処理が終了した識別検体と、中断していた識別検体とを区別することができる。
【0106】
<実施例2>
本実施例は、血液などの検体を用いてB型肝炎、C型肝炎、腫瘍マーカおよび甲状腺ホルモンなど種々の項目の検査を行うための免疫分析装置に本発明を適用したものである。
【0107】
以下、本実施例に係る免疫分析装置について、図面を参照して説明する。
【0108】
図11は、本実施例に係る免疫分析装置6を上から見た場合の構成を示す平面図である。免疫分析装置6は、測定ユニット7と、測定ユニット7の前方に設置された検体搬送部8と、測定ユニット7に電気的に接続された制御装置9を備えている。
【0109】
測定ユニット7は、緊急検体・チップ搬送部71と、ピペットチップ供給装置72と、チップ脱離部73と、検体分注部74と、試薬テーブル75a、75bと、1次B/F分離部76aと、2次B/F分離部76bと、1次B/F分離テーブル77aと、2次B/F分離テーブル77bと、1次反応部80と、2次反応部81と、試薬分注部82〜84と、R4試薬分注部85と、R5試薬分注部86と、検出部87と、廃棄用孔88を備えている。なお、本実施例に係る免疫分析装置6では、検体分注部74により吸引および吐出された血液等の検体が他の検体と混ざり合うのを抑制するために、検体の吸引および吐出を行う度に、使い捨てのピペットチップの交換が行われている。
【0110】
この免疫分析装置6では、測定対象である血液等の検体と緩衝液(R1試薬)とを混合させ、得られた混合液に、検体に含まれる抗原に結合する捕捉抗体を担持した磁性粒子を含む試薬(R2試薬)を添加する。抗原と結合した捕捉抗体を担持する磁性粒子を1次B/F(Bound Free)分離部76aの磁石に引き寄せることにより、捕捉抗体と結合しなかった検体内の成分を除去する。そして、標識抗体(R3試薬)とさらに添加した後に、標識抗体および抗原に結合した捕捉抗体を担持する磁性粒子を2次B/F分離部76bの磁石に引き寄せることにより、未反応の標識抗体を含むR3試薬を除去する。さらに、分散液(R4試薬)および標識抗体との反応過程で発光する発光基質(R5試薬)を添加した後、標識抗体と発光基質との反応によって生じる発光量を測定する。このような過程を経て、標識抗体に結合する検体に含まれる抗原を定量的に測定している。
【0111】
検体搬送部8は、未処理の検体を収容した試験管111が載置されたラック110をセットするためのラックセット部8aと、分注処理済みの検体を収容した試験管111が載置されたラック110を貯留するためのラック貯留部8bとを有している。検体搬送部8は、検体を収容した複数の試験管111が載置されたラック110を、検体分注部74の吸引位置に対応する位置まで搬送する。未処理の検体を収容した試験管111が、検体分注部74の吸引位置に対応する位置まで搬送されると、検体分注部74により試験管111内の血液等の検体の吸引が行われる。しかる後、その試験管111を載置したラック110は、ラック貯留部8bに貯留される。
【0112】
緊急検体・チップ搬送部71は、試験管設置部71bとチップ設置部71cとが形成された搬送ラック71aを有している。試験管設置部71bには、検体搬送部8により搬送される検体に割り込んで検査する必要がある緊急検体を収容した試験管111が保持される。試験管設置部71bに保持された試験管111は、検体分注部74の吸引位置に対応する位置まで搬送される。
【0113】
ピペットチップ供給装置72は、投入されたピペットチップを1つずつ緊急検体・チッ
プ搬送部71の搬送ラック71aのチップ設置部71cに載置する機能を有している。チップ脱離部73は、後述する検体分注部74に装着されたピペットチップを脱離するために設けられている。
【0114】
検体分注部74は、アーム部74aと、軸74bと、ピペット74cを有している。アーム部74aは、軸74bを中心に回動すると共に、上下方向に移動することができる。ピペット74cは、アーム部74aの先端部に設置されており、検体の吸引及び吐出を行う。このピペット74cの先端には、緊急検体・チップ搬送部71のチップ設置部71cにより搬送されるピペットチップが装着される。検体分注部74は、検体搬送部8により搬送された試験管111内の検体を、後述する1次反応部80の1次反応テーブル80aの保持部80cに保持されるキュベット(図示せず)内に分注する。
【0115】
試薬テーブル75aは、回転駆動される回転テーブルである。試薬テーブル75aには、緩衝液(R1試薬)が収容される試薬容器と、標識抗体を含むR3試薬が収容される試薬容器が設置される。試薬テーブル75bは、回転駆動される回転テーブルである。試薬テーブル75bには、捕捉抗体が担持された磁性粒子を含むR2試薬が収容される試薬容器が設置される。
【0116】
1次反応部80は、1次反応テーブル80aと容器搬送部80bを有している。1次反応テーブル80aには、キュベットを保持するための保持部80cが形成されている。1次反応テーブル80aは、検体とR1試薬およびR2試薬とが収容されるキュベットを回転方向に搬送する。容器搬送部80bは、このキュベットを、後述する1次B/F分離テーブル77aに搬送する。
【0117】
ここで、1次反応部80は、回転駆動される1次反応テーブル80aの保持部80cに保持されるキュベットを、所定の期間(本実施例では、20秒)毎に所定の角度だけ回転移送するとともに、キュベット内の検体と、R1試薬と、R2試薬とを攪拌するために設けられている。すなわち、1次反応部80は、キュベット内で磁性粒子を有するR2試薬と検体中の抗原とを反応させるために設けられている。
【0118】
試薬分注部82は、アーム部82aと、軸82bと、ピペット82cを有している。アーム部82aは、軸82bを中心に回動すると共に、上下方向に移動することができる。ピペット82cは、アーム部82aの先端部に設置されており、試薬容器内のR1試薬の吸引および吐出を行う。試薬分注部82は、試薬テーブル75aに設置される試薬容器内のR1試薬を吸引するとともに、吸引したR1試薬を1次反応部80aのキュベット内に分注する。
【0119】
試薬分注部83は、アーム部83aと、軸83bと、ピペット83cを有している。アーム部83aは、軸83bを中心に回動すると共に、上下方向に移動することができる。ピペット83cは、アーム部83aの先端部に設置されており、試薬容器内のR2試薬の吸引および吐出を行う。試薬分注部83は、試薬テーブル75bに設置される試薬容器内のR2試薬を、1次反応部80の検体およびR1試薬が分注されたキュベット内に分注する。
【0120】
1次B/F分離部76aは、1次反応部80の容器搬送部80bによって搬送されたキュベット内の試料から、検体に含まれる抗原に結合した捕捉抗体を担持した磁性粒子と、捕捉抗体に結合しなかった未反応成分とを分離するために設けられている。未反応成分が除去された1次B/F分離テーブル77aのキュベットは、搬送機構78により2次反応部81の2次反応テーブル81aの保持部81cに搬送される。
【0121】
搬送機構78は、先端にキュベット把持部(図示せず)を有するアーム部78aを、軸78bを中心に回動させるとともに、上下方向に移動させることが可能なように構成されている。
【0122】
2次反応部81は、1次反応部80と同様の構成を有しており、2次反応テーブル81aと容器搬送部81bを有している。2次反応テーブル81aには、キュベットを保持するための保持部81cが形成されている。2次反応テーブル81aは、検体、R1試薬、R2試薬、R3試薬、R4試薬およびR5試薬が収容されるキュベットを回転方向に搬送する。容器搬送部80bは、このキュベットを、後述する2次B/F分離テーブル77bに搬送し、2次B/F分離部76bにより処理されたキュベットを、再び2次反応テーブル81aの保持部81cに搬送する。
【0123】
ここで、2次反応部81は、回転駆動される2次反応テーブル81aの保持部81cに保持されるキュベットを、所定の期間(本実施例では、20秒)毎に所定の角度だけ回転移送するとともに、キュベット内の検体、R1試薬、R2試薬、R3試薬、R4試薬、およびR5試薬を攪拌するために設けられている。すなわち、2次反応部81は、キュベット内で標識抗体を有するR3試薬と検体中の抗原とを反応させるとともに、発光基質を有するR5試薬とR3試薬の標識抗体とを反応させるために設けられている。
【0124】
試薬分注部84は、アーム部84aと、軸84bと、ピペット84cを有している。アーム部84aは、軸84bを中心に回動すると共に、上下方向に移動することができる。ピペット84cは、アーム部84aの先端部に設置されており、試薬容器内のR3試薬の吸引および吐出を行う。試薬分注部84は、試薬テーブル75aに設置される試薬容器内のR3試薬を吸引するとともに、その吸引されたR3試薬を2次反応部81の検体、R1試薬およびR2試薬が分注されたキュベット内に分注する。
【0125】
2次B/F分離部76bは、1次B/F分離部76aと同様の構成を有しており、2次反応部81の容器搬送部81bによって搬送されたキュベット内の試料から、捕捉抗体および抗原を介して磁性粒子に結合した標識抗体と、未反応の標識抗体とを分離するために設けられている。
【0126】
R4試薬分注部85とR5試薬分注部86は、図示しないノズル部を上下移動させ、それぞれR4試薬およびR5試薬を、2次反応部81のキュベット内に供給するために設けられている。
【0127】
検出部87は、2次反応部81の2次反応テーブル81aの保持部81cに保持されるキュベットを、当該検出部87に搬送するための搬送機構部87aを備えている。検出部87は、所定の処理が行なわれた検体の抗原に結合する標識抗体と発光基質との反応過程で生じる発光量を、光電子増倍管(Photo Multiplier Tube)で取得することにより、そ
の検体に含まれる抗原の量を測定する。
【0128】
廃棄用孔88は、測定済の試料が収容されたキュベットを廃棄するために設けられている。測定済みの試料が収容されたキュベットは、検出部87の搬送機構部87aにより吸引部(図示せず)の下方の位置に搬送され、この吸引部によって測定済の試料が吸引され、このキュベットが空にされる。しかる後、このキュベットは、搬送機構部87aにより廃棄用孔88に対応する位置まで搬送され、廃棄用孔88を介して免疫分析装置6の下部に配置される図示しないダストボックスに廃棄される。
【0129】
制御装置9は、パーソナルコンピュータ等からなり、表示部9aと入力部9bを含んでいる。制御装置9は、測定ユニット7における各機構の動作制御を行うとともに、測定ユ
ニット7で得られた検体の光学的な情報を分析する。ユーザは、表示部9aを介して、検体の分析結果等の情報を確認することができ、入力部9bを介して、測定ユニット7の制御等を行うことができる。
【0130】
図12は、測定ユニット7と制御装置9の構成の概要を示す図である。
【0131】
測定ユニット7は、制御部701と、分注部702と、試薬テーブル部703と、反応部704と、B/F分離部705と、B/F分離テーブル部706と、検出部87と、機構部707と、通信部708と、記憶部709を備えている。
【0132】
制御部701は、記憶部709に記憶されている制御用プログラムを実行して、測定ユニット7内の各部を制御すると共に、これら各部から出力される信号を受信する。
【0133】
分注部702は、検体分注部74と、試薬分注部82〜84と、R4試薬分注部85と、R5試薬分注部86から構成されており、試薬テーブル部703は、試薬テーブル75a、75bから構成されており、反応部704は、1次反応部80と2次反応部81から構成されており、B/F分離部705は、1次B/F分離部76aと2次B/F分離部76bから構成されており、B/F分離テーブル部706は、1次B/F分離テーブル77aと2次B/F分離テーブル77bから構成されている。なお、機構部707は、測定ユニット7内のその他の機構部と、検体搬送部8の各機構から構成されている。
【0134】
分注部702は、モータ702mとセンサ702sを含んでおり、試薬テーブル部703は、モータ703mとセンサ703sを含んでおり、反応部704は、モータ704mとセンサ704sを含んでおり、B/F分離部705は、モータ705mとセンサ705sを含んでおり、B/F分離テーブル部706は、モータ706mとセンサ706sを含んでおり、検出部87は、モータ87mとセンサ87sを含んでおり、機構部707は、モータ707mとセンサ707sを含んでいる。
【0135】
分注部702と、試薬テーブル部703と、反応部704と、B/F分離部705と、B/F分離テーブル部706と、検出部87と、機構部707は、それぞれ、モータ702m、703m、704m、705m、706m、87m、707mによって駆動されるように構成されている。たとえば、分注部702を構成する検体分注部74と、試薬分注部82〜84と、R4試薬分注部85と、R5試薬分注部86は、検体や試薬等を吸引、吐出するためのピペット(ノズル部)を備え、このピペットをモータ702mによって上下に移動させたり、回動(旋回)させたりするように構成されている。また、試薬テーブル部703を構成する試薬テーブル75a、75bは、モータ703mによって回転するように構成されている。
【0136】
分注部702と、試薬テーブル部703と、反応部704と、B/F分離部705と、B/F分離テーブル部706と、検出部87と、機構部707の動作状況は、センサ702s、703s、704s、705s、706s、87s、707sによって検出されるように構成されている。これらセンサは、各機構部の原点位置(動作始点位置または動作終点位置)を検出する接触型または透過型のセンサと、モータのパルス数を検出するエンコーダと、ノズル部が障害物に衝突したことを検出する衝突センサと、テーブルに保持されたキュベットを検出するセンサ等を含んでいる。
【0137】
通信部708は、制御装置9の通信部903との間でデータ通信を行う。記憶部709には、制御部701によって実行される制御プログラムが記憶されている。また、記憶部709には、測定ユニット7内の各検体に関する工程等を記憶する情報(以下、「個別検体進捗情報」という)が記憶されている。また、記憶部902には、後述するエラー発生
時に、測定ユニット7が検体を廃棄するか否かを判定するために用いる中断時間が記憶されている。個別検体進捗情報と中断時間については、それぞれ、追って図13と図15を参照して説明する。
【0138】
制御装置9は、制御部901と、記憶部902と、表示部9aと、入力部9bと、通信部903を備えている。
【0139】
制御部901は、記憶部902に記憶されているコンピュータプログラムを実行することにより、制御装置9の各部を制御すると共に、測定ユニット7に動作指示を送信する。記憶部902は、ハードディスク等の記憶装置からなり、制御装置9を動作させ、測定ユニット7を動作させるためのコンピュータプログラムが記憶されている。
【0140】
表示部9aは、ディスプレイ等で構成されており、画像データに基づいて各種情報を表示する。入力部9bは、マウスやキーボード等で構成されており、ユーザにより入力された情報を制御部901に出力する。通信部903は、測定ユニット7の通信部708との間でデータ通信を行う。
【0141】
図13は、測定ユニット7による測定処理を示すフローチャートである。以下の測定処理が行われる際には、まず、ユーザによって制御装置9の入力部9bから測定開始指示が入力され、この測定開始指示が測定ユニット7に送信される。測定ユニット7は、測定開始指示を受信すると、検体搬送部8を駆動して試験管111を順次吸引位置まで搬送させる。なお、以下に示すS61〜S74の処理は、試験管111から吸引される検体ごとに、並行して行われる。
【0142】
測定ユニット7の制御部701は、図示しないキュベット供給部を駆動して、1次反応部80の1次反応テーブル80aの保持部80cに空のキュベットをセットする(S61)。
【0143】
続いて、制御部701は、試薬テーブル75aに設置された試薬容器内のR1試薬を、試薬分注部82のピペット82cによって吸引する。しかる後、制御部701は、アーム部82aを回動し、1次反応テーブル80aの保持部80cに保持されているキュベット内に、吸引したR1試薬を吐出する(S62)。
【0144】
続いて、制御部701は、緊急検体・チップ搬送部71の搬送ラック71aによって搬送されるピペットチップを、検体分注部74に装着する。しかる後、制御部701は、検体搬送部8により吸引位置まで搬送されたラック110に載置される試験管111から、検体分注部74のピペット74cにより血液等の検体を吸引する。そして、制御部701は、アーム部74aを回動して、R1試薬が分注されたキュベット内に、吸引した検体を吐出する(S63)。
【0145】
このとき、制御部701は、この検体に関して、測定ユニット7内における実行中工程等を含む“個別検体進捗情報”を作成して、記憶部709に記憶する(S64)。なお、個別検体進捗情報は、上記実施例1で示した図7(a)の個別標本作製情報と略同様に構成されている。
【0146】
その後、1次反応部80の容器搬送部80bによって、R1試薬と検体が収容されたキュベットが攪拌され、攪拌されたR1試薬と検体が、1次反応テーブル80aの保持部80cのキュベット内で所定時間インキュベーションされる。
【0147】
次に、制御部701は、試薬テーブル75bに設置された試薬容器内のR2試薬を、試
薬分注部83のピペット83cによって吸引する。しかる後、制御部701は、アーム部83aを回動し、所定時間インキュベーションされたR1試薬と検体を収容するキュベット内に、吸引したR2試薬を吐出する(S65)。
【0148】
その後、1次反応部80の容器搬送部80bにより、R1試薬、検体およびR2試薬が収容されたキュベットが攪拌される。そして、攪拌されたR1試薬、検体およびR2試薬が、1次反応テーブル80aの保持部80cのキュベット内で所定時間インキュベーションされ、その結果、R2試薬に含まれる磁性粒子に担持された捕捉抗体と検体に含まれる抗原とが結合する。
【0149】
次に、制御部701は、インキュベーションされたR1試薬、検体およびR2試薬を収容したキュベットを、1次反応部80の容器搬送部80bにより、1次B/F分離テーブル77aに搬送する(S66)。
【0150】
続いて、制御部701は、1次B/F分離テーブル77aに保持されたキュベット内の磁性粒子を、当該キュベットの側方に配置される磁石により集磁する。そして、制御部701は、1次B/F分離部76aのノズル部をキュベット内に挿入して、試料を吸引することにより、磁性粒子および当該磁性粒子に捕捉抗体を介して結合した抗原を除く未反応成分を除去する(S67)。未反応成分が除去された後のキュベットは、1次B/F分離テーブル77aの回転によって、搬送機構78のアーム部78aによって把持可能な位置まで移送される。
【0151】
続いて、制御部701は、1次B/F分離部76aにより未反応成分が除去されたキュベットを、搬送機構78のアーム部78aによって把持し、2次反応部81の2次反応テーブル81aの保持部81cに搬送する(S68)。
【0152】
次に、制御部701は、試薬テーブル75aに設置された試薬容器内のR3試薬を、試薬分注部84のピペット84cによって吸引する。しかる後、制御部701は、アーム部84aを回動して、捕捉抗体を介して磁性粒子に結合した抗原を収容したキュベット内に、標識抗体を含む所定量のR3試薬を吐出する(S69)。
【0153】
その後、2次反応部81の容器搬送部81bにより、捕捉抗体を介して磁性粒子に結合した抗原と、標識抗体とが収容されたキュベットが攪拌される。そして、攪拌されたキュベット内の成分が所定時間インキュベーションされる。その結果、捕捉抗体、磁性粒子、抗原、および標識抗体が結合して、複合体を形成する。
【0154】
次に、制御部701は、インキュベーションされた成分を収容したキュベットを、2次反応部81の容器搬送部81bにより、2次B/F分離テーブル77bに搬送する(S70)。
【0155】
続いて、制御部701は、2次B/F分離テーブル77bに保持されたキュベット内の磁性粒子を、1次B/F分離部76aにおける工程と同様に、当該キュベットの側方に配置される磁石により集磁する。そして、制御部701は、2次B/F分離部76bのノズル部がキュベット内に挿入して、試料を吸引することにより、磁性粒子を含む複合体を形成しなかった未反応の標識抗体を除去する(S71)。未反応の標識抗体が除去された後のキュベットは、2次B/F分離テーブル77bの回転によって、2次反応部81の容器搬送部81bにより搬送可能な位置まで移送される。
【0156】
続いて、制御部701は、2次B/F分離部76bにより未反応成分が除去されたキュベットを、2次反応部81の容器搬送部81bにより、再び2次反応テーブル81aの保
持部81cに搬送する(S72)。
【0157】
次に、制御部701は、R4試薬分注部85を駆動して、免疫分析装置6の下部に設置された図示しない試薬容器内のR4試薬(分散液)を、複合体を収容したキュベット内にノズル部から吐出する(S73)。
【0158】
続いて、制御部701は、R5試薬分注部86を駆動して、免疫分析装置6の下部に設置される図示しない試薬容器内のR5試薬を、複合体を収容したキュベット内にノズル部から吐出する(S74)。
【0159】
その後、2次反応部81の容器搬送部81bにより、複合体、分散液(R4試薬)および発光基質を含むR5試薬を収容したキュベットが攪拌される。そして、攪拌されたキュベット内の成分は、2次反応テーブル81aの保持部81cのキュベット内で所定時間インキュベーションされる。
【0160】
次に、制御部701は、インキュベーションされた成分を収容したキュベットを、検出部87の搬送機構部87aにより測定位置に搬送する。しかる後、R3試薬の標識抗体とR5試薬の発光基質との反応過程で生じる発光量(光子の数に比例する量)が、光電子増倍管(図示せず)で取得される(S75)。取得された測定結果は、制御装置9の制御部901に送信される。
【0161】
このようにして、試験管111から吸引された検体についての測定処理が終了する。
【0162】
図14は、ピペット下降エラーが発生した場合の制御装置9による処理を示すフローチャートである。
【0163】
ここで、本実施例では、ピペット下降エラーとして、試薬分注部83のピペット83cを下降させるときに生じるエラーを例にとり説明する。
【0164】
試薬分注部83は、ピペット83cを下降させるとき、ピペット83cの移動距離に対応した駆動パルス数だけモータの軸を回転するよう、測定ユニット7の制御部701から指示を受ける。しかしながら、エンコーダにより検出されたモータの実パルス数と、指示された駆動パルス数との差が所定以上あった場合、ピペット83cを下降させるための機構の一時的な不具合などが考えられる。このような場合には、制御部701は、試薬分注部83のピペット83cに関するピペット下降エラー信号を、制御装置9に送信する。なお、制御部701は、上記エラーが発生すると、エラー発生箇所における処理を中断する。
【0165】
制御装置9の制御部901は、測定ユニット7から上記ピペット下降エラー信号を受信すると、エラー発生時に実行中の処理(エラー発生箇所を除く)を完了させる(S81)。続いて、制御部901は、エラー発生箇所より下流の処理を継続し、エラー発生箇所より上流の処理を中断する(S82)。このとき、検体分注部74による新規検体の吸引も中断される。
【0166】
ここで、試薬分注部83においてピペット下降エラーが発生した場合に中断されるエラー発生箇所より上流の処理とは、図13のS61〜S66の処理である。したがって、エラー発生時に1次反応テーブル80aの保持部80cに保持されているキュベットに対する処理、およびエラー発生時に実行中であった1次反応テーブル80aにキュベットを保持させるための処理が中断され、検体搬送部8、1次反応部80、試薬分注部82および検体分注部74が、動作を停止する。
【0167】
また、試薬分注部83においてピペット下降エラーが発生した場合に継続されるエラー発生箇所より下流の処理とは、すでに1次反応テーブル80aを離れたキュベットに対する処理である。したがって、エラー発生時に1次B/F分離テーブル77a、2次反応テーブル81a、および2次B/F分離テーブル77bに保持されているキュベットに対する処理が継続され、1次B/F分離部76a、搬送機構78、2次反応部81、試薬分注部84、2次B/F分離部76b、R4試薬分注部85、R5試薬分注部86、および検出部87が、動作を継続する。
【0168】
続いて、制御部901は、処理が中断されたキュベットの個別検体進捗情報に、“停止フラグON”を書き込む(S83)。なお、“停止フラグON”は、上記実施例1で示した図7(b)の個別標本作製情報における“停止フラグON”と同様に書き込まれる。
【0169】
次に、制御部901は、表示部9aに対処指示受付画面を表示する(S84)。なお、対処指示受付画面は、上記実施例1で示した図10(a)の対処指示受付画面410と略同様に構成される。本実施例では、たとえば、試薬分注部83においてピペット下降エラーが発生したとすると、図10(a)のメッセージ表示部411に、“R2試薬分注工程、ピペット下降異常”等のメッセージが表示される。
【0170】
図14に戻り、制御装置9の制御部901は、対処指示受付画面でOKボタン412または強制排出ボタン413が押下されることにより、指示を受け付けると(S85:YES)、処理がS86に進められる。
【0171】
制御部901は、S85で受け付けた指示内容が、エラー復帰指示でない(S86:NO)、すなわち、強制排出ボタン413が押下されたとき、測定ユニット7内の全ての検体を排出する(S87)。これにより、検体を含むキュベットは、空にされた後、廃棄用孔88を介して廃棄される。
【0172】
他方、制御部901は、S85で受け付けた指示内容が、エラー復帰指示である(S86:YES)、すなわち、OKボタン412が押下されたとき、ピペット下降エラーが生じたピペットを、動作始点位置(原点位置)に戻しても問題がないかを判定する(S88)。すなわち、この判断の際に、エラー発生箇所の下流側で継続されている処理において、このピペットが動作始点位置(原点位置)に戻されることにより、問題を生じないかが判定される。たとえば、試薬分注部83でピペット下降エラーが生じた場合に、試薬分注部83のピペット83cが動作始点位置(原点位置)に戻されると、試薬分注部83のアーム83aとピペット83cは、エラー発生時に1次反応テーブル80aから1次B/F分離テーブル77aへキュベットを搬送中である容器搬送部80bと接触する惧れがある。制御部901は、このような問題が生じないかを判定する。
【0173】
制御部901は、ピペットを動作始点位置(原点位置)に戻しても問題ないと判定すると(S88:YES)、エラー復帰処理を行う(S89)。具体的には、制御部901は、ピペット下降エラーが生じたピペットを動作始点位置(原点位置)に戻す。続いて、制御部901は、エラー復帰確認処理を行う(S90)。具体的には、制御部901は、ピペット下降エラーが生じたピペットを、エラー発生位置で再度下降させる。
【0174】
エラー復帰確認処理が行われたにも拘わらず、再度同じエラーが発生した場合(S91:YES)、処理がS84に戻される。他方、エラー復帰確認処理により、同じエラーが発生しなかった場合(S91:NO)、端子2に処理が続けられる。
【0175】
図15(a)は、図14の端子2以降の処理を示すフローチャートである。
【0176】
制御装置9の制御部901は、新規検体の吸引再開処理を行う(S92)。新規検体の吸引再開処理については、追って図15(b)を参照して説明する。続いて、制御部901は、記憶部902に記憶されている中断時間を読み出して、中断していた時間が、読み出した中断時間内であるかを判定する(S93)。
【0177】
中断していた時間が、上記読み出した中断時間(所定時間:例えば20分)内であると(S93:YES)、制御部901は、1次反応テーブル80aに保持されているキュベットのうち、反応に関する試薬(R2試薬)が分注されていないキュベットに対する処理を再開する(S94)。具体的には、1次反応テーブル80aに保持されているキュベットのうち、R1試薬のみが分注されているキュベットへの検体の分注、および、R1試薬と検体が分注されているキュベットへのR2試薬の分注が再開される。処理が中断されていたキュベットのうち、R2試薬分注済みキュベットは廃棄対象とされる。捕捉抗体を含むR2試薬が分注されると、処理が中断されている間もキュベット内で抗原抗体反応が進行してしまうため、キュベット間で反応時間にバラつきが生じることを防止すべく、R2試薬分注後に処理が中断されたキュベットはすべて廃棄対象としている。一方、R2試薬が分注されていないキュベット(緩衝液からなるR1試薬のみが分注されたキュベット、およびR1試薬と検体が分注されたキュベット)では反応が進行することはない。そのため、長時間にわたる処理の中断によってキュベット内の液体が乾燥しない限り、処理を再開しても分析結果にほとんど影響を及ぼさない。そこで、本実施例では、中断時間が所定時間内である場合には、R1試薬分注済みキュベット、およびR1試薬と検体分注済みキュベットを廃棄対象とせずに、中断していた処理を再開することで、検体とR1試薬の無駄を可能な限り少なくするようにしている。廃棄対象とされたキュベットは、試薬分注が行われることなく、1次B/F分離テーブル77a、2次反応テーブル81a、2次B/F分離テーブル77b、及び検出部87に順次搬送されていき、検出部87でキュベットが空にされたのち廃棄用孔88を介して廃棄される。
【0178】
続いて、制御部901は、処理が再開されたキュベットに対応する個別検体進捗情報に、処理の中断が発生したキュベットであることを示すフラグ情報を書き込む(S95)。書き込まれたフラグ情報は、そのキュベットの測定が終了したのち、測定結果とともに表示部9aに表示される。
【0179】
他方、中断していた時間が、上記読み出した中断時間(所定時間)内でないと(S93:NO)、制御部901は、1次反応テーブル80aに保持されているキュベットのうち、空のキュベットへのR1試薬の分注が再開される(S96)。R1試薬が分注されたキュベットおよびR1試薬と検体が分注されたキュベットは、すべて廃棄対象とされる。R2試薬分注済みキュベットを廃棄対象とする理由は既に述べた理由と同じである。R1試薬分注済みキュベットを廃棄対象とする理由は、長時間にわたる処理の中断によりキュベット内の液体が乾燥するおそれがあるためである。廃棄対象とされたキュベットは、試薬分注が行われることなく、1次B/F分離テーブル77a、2次反応テーブル81a、2次B/F分離テーブル77b、および検出部87に順次搬送されていき、検出部87でキュベットが空にされたのち、廃棄用孔88を介して廃棄される。
【0180】
図15(b)は、S92で実行される新規検体の吸引再開処理を示すフローチャートである。
【0181】
制御装置9の制御部901は、検体吸引指示受付画面を表示部9aに表示する(S101)。本実施例の検体吸引指示受付画面は、上記実施例1で示した図10(b)の検体吸引指示受付画面420と同様である。制御部901は、検体吸引指示受付画面420のOKボタン421が押下されたと判定すると(S102:YES)、測定ユニット7に吸引
指示信号を送信し、測定ユニット7の検体分注部74による新規検体の吸引を再開させる(S103)。こうして、新規検体の吸引再開処理が終了する。
【0182】
なお、本実施例では、試薬分注部83においてピペット下降エラーが発生した場合(ステップS65の処理が中断した場合)を例にとって説明したが、検体分注部74、試薬分注部82、および試薬分注部84においてピペット下降エラーが発生した場合のいずれにも本発明を適用することができる。
【0183】
以上、本実施例によれば、ピペット下降エラーが発生した場合に、エラー発生箇所より上流の処理が中断された後、ピペットを動作始点位置(原点位置)に戻すエラー復帰処理が行われる。これにより、ピペットを下降させるための機構の一時的な不具合など、比較的軽微なエラーは解消され得る。
【0184】
また、この場合に、エラー発生箇所より下流の処理が継続される。これにより、エラー発生箇所を通過した検体の処理を、迅速に完了させることができる。
【0185】
また、本実施例によれば、エラーが解消されたときに、中断時間が所定時間内であると、中断されていた上流の処理が再開される。これにより、中断していた全ての検体を廃棄せずに済むため、再度検体に対して試薬等を使用する必要がなくなり、消耗品の廃棄量を低減することができる。このように消耗品の廃棄量を低減することは、環境保護に対しても有効である。
【0186】
また、この場合に、中断していた検体の個別検体進捗情報に、処理の中断が発生したことを示すフラグ情報が書き込まれる。また、中断していた検体の個別検体進捗情報は、表示部9aに表示される。これにより、ユーザは、中断することなく処理が終了した検体と、中断していた検体とを区別することができる。
【0187】
また、本実施例によれば、エラーが解消したときに、中断時間が所定時間内でないと、エラー発生箇所より上流の検体のうち、反応に関する試薬を分注済みの検体は廃棄される。しかしながら、1次反応テーブル80aに保持されている空のキュベットへの処理は再開されるため、迅速に検体の処理を再開することができる。
【0188】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明の実施例はこれらに限定されるものではない。
【0189】
たとえば、上記実施例では、測定対象として血液を例示したが、尿についても測定対象とされ得る。すなわち、尿を検査する検体処理システムにも本発明を適用することができ、さらに、他の臨床検体を検査する臨床検体処理システムに本発明を適用することもできる。
【0190】
また、上記実施例では、エラー復帰処理が行われた後で、エラー復帰確認処理が行われているが、これに限らず、エラー復帰処理が省略されても良い。
【0191】
また、上記実施例1では、エラー発生時に吸引済みの血液検体が、全て染色部50に到着した後(図6のS14〜S17の処理が終了した後)で、検体吸引指示がなされてから、新規検体の吸引が再開された。しかしながら、これに限らず、全ての検体に対する所定の処理(たとえば、図6のS14〜S15の処理)が終了した後で、新規検体の吸引が再開されるようにしても良い。
【0192】
また、上記実施例2では、新規検体の吸引は、検体吸引指示がなされてから再開された
が、これに限らず、全ての検体に対する所定の処理(たとえば、図13のS61〜S69の処理)が終了した後で、新規検体の吸引が再開されるようにしても良い。
【0193】
また、上記実施例では、新規検体の吸引再開処理において、検体吸引指示が行われた後で新規検体の吸引が再開されたが、これに限らず、中断されていた上流の処理が再開されるときに、併せて自動的に新規検体の吸引が再開されるようにしても良い。
【0194】
また、上記実施例では、図10の対処指示受付画面410で、ユーザによりOKボタン412が押下されたときに、エラー復帰処理が行われたが、これに限らず、塗抹標本作製装置2の制御部201または制御装置9の制御部901により、自動的に実行されるようにしても良い。また、エラー復帰処理を自動的に実行する形態において、自動的に所定回数(例えば3回)のエラー復帰処理を行い、その結果エラーが解消されない場合に、ユーザにエラーを通知するようにしてもよい。
【0195】
また、上記実施例では、エラー復帰を行った結果、エラーが解消されなかった場合、再び図10の対処指示受付画面410を表示してエラー復帰の指示を受け付けたが、一度エラー復帰の指示を受け付けたらエラーが解消されるまでエラー復帰処理を繰り返し行ってもよい。この場合、エラー復帰処理を所定時間(あるいは所定回数)繰り返してもなおエラーが解消しない場合に、再びユーザの指示を受け付けるようにしてもよい。
【0196】
また、上記実施例では、エラーが検出されるとユーザによる指示を受け付けるまで処理を中断した状態で待機しておき、エラー復帰の指示を受け付けると無条件にエラー復帰を行ったが、これに限られない。具体的には、実施例1では、エラーが検出されてから所定時間が経過した場合には、エラー復帰の指示を待たずに、処理が中断されていたカセットを自動的に排出してもよい。実施例2では、エラーが検出されてから所定時間が経過した場合には、エラー復帰の指示を待たずに、1次反応テーブル80aに保持されたキュベットのうちR1試薬、R2試薬および検体の少なくとも一つが分注されたキュベットを排出してもよい。
【0197】
また、上記実施例では、上記所定のエラーが発生したときに、エラー発生箇所より下流にある検体の処理が継続されたが、これに限らず、エラーが発生したときに、エラー発生箇所より下流にある検体の処理を中断し、その後所定のタイミング(たとえば、エラー復帰確認処理の後)で、下流にある検体の処理を再開するようにしても良い。
【0198】
また、上記実施例1では、カセット到着エラーまたはカセット送り出しエラーが発生した場合に、塗抹標本作製装置2によってエラーに対する処理が行われたが、これに限らず、他の制御装置によってエラーに対する処理が行われるようにしても良い。
【0199】
また、上記実施例2では、ピペット下降エラーが発生した場合に、制御装置9によってエラーに対する処理が行われたが、これに限らず、測定ユニット7によってエラーに対する処理が行われるようにしても良い。
【0200】
また、上記実施例2では、中断時間が所定時間内でないと、エラー発生箇所より上流にあるR1試薬を分注済みの検体と、R2試薬を分注済みの検体の全てが破棄されたが、R2試薬を分注済みの検体の全てとR1試薬を分注済みの検体の一部のみを破棄するようにしても良い。この場合、たとえば、中断時間が所定時間程度であれば、問題なく分析結果が得られる検体の処理のみが再開されるようにする。これにより、処理の中断時間が長く適切な処理結果が得られそうにない検体に対する無駄な処理を省きつつ、処理の中断時間が短く適切な処理結果が得られる見込みのある検体を無駄にしなくても済むようになる。
【0201】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0202】
1 … 臨床検体処理装置(検体処理装置)
2 … 塗抹標本作製装置(検体処理装置)
6 … 免疫分析装置(検体処理装置)
2a … 表示操作部(出力部)
9a … 表示部(出力部)
50b … ベルト(搬送部)
74 …検体分注部(動作部)
82〜84 … 試薬分注部(動作部、第1動作部、第2動作部)
201 … 制御部
901 … 制御部
B〜E … 染色機構部(動作部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体容器から検体を吸引し、該検体に複数の処理を順次実行する検体処理装置であって、
検体の処理のための所定の動作をそれぞれが実行する複数の動作部と、
前記複数の動作部による動作状況を監視し、動作の異常が検出されたとき、異常が検出された前記動作部に到達していない検体の処理を中断し、異常が検出された動作を再度実行させ、該再度の動作の実行によって前記異常が検出された前記動作部に動作の異常が検出されなければ、中断した前記検体の処理を再開するよう、前記複数の動作部を制御する制御部と、を有する、
ことを特徴とする検体処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検体処理装置において、
前記制御部は、動作の異常が検出されたとき、当該異常を解消するための復帰動作を実行させ、その後、異常が検出された動作を再度実行させる、
ことを特徴とする検体処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の検体処理装置において、
前記制御部は、異常が検出された前記動作部に到達していない検体の処理を中断するとともに、異常が検出された前記動作部を通過した検体の処理を継続するよう、前記複数の動作部を制御する、
ことを特徴とする検体処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載の検体処理装置において、
前記制御部は、動作の異常が検出されたときに、異常が検出された前記動作部に到達していない検体に対して他の動作部による処理が実行されている場合、当該他の動作部による前記検体に対する処理を完了させたのち、その検体に対して次に行われるべき処理を停止するように前記複数の動作部を制御する、
ことを特徴とする検体処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の検体処理装置において、
前記制御部は、動作の異常が検出されたとき、前記検体容器からの新たな検体の吸引を中断し、異常が検出された動作の再度の実行によって動作の異常が検出されなければ、前記検体容器からの新たな検体の吸引を再開するよう、前記複数の動作部を制御する、
ことを特徴とする検体処理装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載の検体処理装置において、
前記制御部は、動作の異常が検出されたとき、前記検体容器から吸引済みで、異常が検出された動作部に到達していない吸引済み検体の処理を中断し、異常が検出された動作の再度の実行によって動作の異常が検出されなければ、処理が中断された前記吸引済み検体の処理を再開するよう、前記複数の動作部を制御する、
ことを特徴とする検体処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の検体処理装置において、
前記制御部は、動作の異常が検出されたとき、前記吸引済み検体の処理としての試薬のキュベットへの分注を中断し、異常が検出された動作の再度の実行によって動作の異常が検出されなければ、中断した前記試薬の分注を再開するよう、前記複数の動作部を制御する、
ことを特徴とする検体処理装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の検体処理装置において、
前記制御部は、異常が検出された動作の再度の実行によって動作の異常が検出されなければ、処理の中断時間に基づいて処理の再開の可否を判定し、再開可能であれば、中断した検体の処理を再開するよう、前記複数の動作部を制御する、
ことを特徴とする検体処理装置。
【請求項9】
請求項6ないし8の何れか一項に記載の検体処理装置において、
前記制御部は、処理の中断時間に応じて、処理が中断されていた前記吸引済み検体のうち処理を再開する対象となる検体を変更する、
ことを特徴とする検体処理装置。
【請求項10】
請求項1ないし9の何れか一項に記載の検体処理装置において、
出力部をさらに備え、
前記制御部は、処理が再開された吸引済みの検体の処理結果を、他の検体の処理結果と区別可能に前記出力部に出力させる、
ことを特徴とする検体処理装置。
【請求項11】
請求項1ないし10の何れか一項に記載の検体処理装置において、
検体を前記複数の動作部に搬送する搬送部をさらに備え、
前記動作の異常は、前記動作部に対して前記検体が適正に搬入または搬出されなかったことにより検出される、
ことを特徴とする検体処理装置。
【請求項12】
請求項11に記載の検体処理装置において、
前記制御部は、第1動作部から第2動作部へ検体が正常に搬送されなかったとき、前記第1動作部から前記第2動作部へ向かう方向と逆の方向に前記検体を搬送させた後、再び、前記第1動作部から前記第2動作部へ前記検体を搬送するよう前記搬送部を制御する、ことを特徴とする検体処理装置。
【請求項13】
請求項12に記載の検体処理装置において、
前記制御部は、前記逆の方向の搬送を行うときに干渉する動作部の動作が行われないタイミングにおいて、前記検体を前記逆の方向に搬送させるよう前記搬送部を制御する、
ことを特徴とする検体処理装置。
【請求項14】
請求項1ないし10の何れか一項に記載の検体処理装置において、
前記制御部は、動作の異常が検出されたとき、異常が検出された動作部を、当該異常が検出された動作の初動状態に復帰させ、その後、異常が検出された動作を再度実行させる、
ことを特徴とする検体処理装置。
【請求項15】
請求項1ないし14の何れか一項に記載の検体処理装置において、
前記制御部は、動作の異常が検出されたとき、異常が検出されたことをユーザに通知する、
ことを特徴とする検体処理装置。
【請求項16】
請求項15に記載の検体処理装置において、
前記制御部は、異常が検出されたことをユーザに通知するとともに、異常が検出された動作を再度実行させるか否かの指示を受け付け、受け付けた指示に応じて前記複数の動作部を制御する、
ことを特徴とする検体処理装置。
【請求項17】
検体容器から検体を吸引する吸引工程と、
吸引された検体に複数の処理を順次実行する処理工程と、
処理工程における動作の異常を検出する検出工程と、
動作の異常が検出されたとき、異常が検出された前記動作部に到達していない検体の処理を中断する中断工程と、
異常が検出された動作を再度実行する再動作工程と、
再動作工程により動作の異常が検出されなければ、中断した前記検体の処理を再開する再開工程と、を含む、
ことを特徴とする検体処理方法。
【請求項1】
検体容器から検体を吸引し、該検体に複数の処理を順次実行する検体処理装置であって、
検体の処理のための所定の動作をそれぞれが実行する複数の動作部と、
前記複数の動作部による動作状況を監視し、動作の異常が検出されたとき、異常が検出された前記動作部に到達していない検体の処理を中断し、異常が検出された動作を再度実行させ、該再度の動作の実行によって前記異常が検出された前記動作部に動作の異常が検出されなければ、中断した前記検体の処理を再開するよう、前記複数の動作部を制御する制御部と、を有する、
ことを特徴とする検体処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検体処理装置において、
前記制御部は、動作の異常が検出されたとき、当該異常を解消するための復帰動作を実行させ、その後、異常が検出された動作を再度実行させる、
ことを特徴とする検体処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の検体処理装置において、
前記制御部は、異常が検出された前記動作部に到達していない検体の処理を中断するとともに、異常が検出された前記動作部を通過した検体の処理を継続するよう、前記複数の動作部を制御する、
ことを特徴とする検体処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載の検体処理装置において、
前記制御部は、動作の異常が検出されたときに、異常が検出された前記動作部に到達していない検体に対して他の動作部による処理が実行されている場合、当該他の動作部による前記検体に対する処理を完了させたのち、その検体に対して次に行われるべき処理を停止するように前記複数の動作部を制御する、
ことを特徴とする検体処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の検体処理装置において、
前記制御部は、動作の異常が検出されたとき、前記検体容器からの新たな検体の吸引を中断し、異常が検出された動作の再度の実行によって動作の異常が検出されなければ、前記検体容器からの新たな検体の吸引を再開するよう、前記複数の動作部を制御する、
ことを特徴とする検体処理装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載の検体処理装置において、
前記制御部は、動作の異常が検出されたとき、前記検体容器から吸引済みで、異常が検出された動作部に到達していない吸引済み検体の処理を中断し、異常が検出された動作の再度の実行によって動作の異常が検出されなければ、処理が中断された前記吸引済み検体の処理を再開するよう、前記複数の動作部を制御する、
ことを特徴とする検体処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の検体処理装置において、
前記制御部は、動作の異常が検出されたとき、前記吸引済み検体の処理としての試薬のキュベットへの分注を中断し、異常が検出された動作の再度の実行によって動作の異常が検出されなければ、中断した前記試薬の分注を再開するよう、前記複数の動作部を制御する、
ことを特徴とする検体処理装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の検体処理装置において、
前記制御部は、異常が検出された動作の再度の実行によって動作の異常が検出されなければ、処理の中断時間に基づいて処理の再開の可否を判定し、再開可能であれば、中断した検体の処理を再開するよう、前記複数の動作部を制御する、
ことを特徴とする検体処理装置。
【請求項9】
請求項6ないし8の何れか一項に記載の検体処理装置において、
前記制御部は、処理の中断時間に応じて、処理が中断されていた前記吸引済み検体のうち処理を再開する対象となる検体を変更する、
ことを特徴とする検体処理装置。
【請求項10】
請求項1ないし9の何れか一項に記載の検体処理装置において、
出力部をさらに備え、
前記制御部は、処理が再開された吸引済みの検体の処理結果を、他の検体の処理結果と区別可能に前記出力部に出力させる、
ことを特徴とする検体処理装置。
【請求項11】
請求項1ないし10の何れか一項に記載の検体処理装置において、
検体を前記複数の動作部に搬送する搬送部をさらに備え、
前記動作の異常は、前記動作部に対して前記検体が適正に搬入または搬出されなかったことにより検出される、
ことを特徴とする検体処理装置。
【請求項12】
請求項11に記載の検体処理装置において、
前記制御部は、第1動作部から第2動作部へ検体が正常に搬送されなかったとき、前記第1動作部から前記第2動作部へ向かう方向と逆の方向に前記検体を搬送させた後、再び、前記第1動作部から前記第2動作部へ前記検体を搬送するよう前記搬送部を制御する、ことを特徴とする検体処理装置。
【請求項13】
請求項12に記載の検体処理装置において、
前記制御部は、前記逆の方向の搬送を行うときに干渉する動作部の動作が行われないタイミングにおいて、前記検体を前記逆の方向に搬送させるよう前記搬送部を制御する、
ことを特徴とする検体処理装置。
【請求項14】
請求項1ないし10の何れか一項に記載の検体処理装置において、
前記制御部は、動作の異常が検出されたとき、異常が検出された動作部を、当該異常が検出された動作の初動状態に復帰させ、その後、異常が検出された動作を再度実行させる、
ことを特徴とする検体処理装置。
【請求項15】
請求項1ないし14の何れか一項に記載の検体処理装置において、
前記制御部は、動作の異常が検出されたとき、異常が検出されたことをユーザに通知する、
ことを特徴とする検体処理装置。
【請求項16】
請求項15に記載の検体処理装置において、
前記制御部は、異常が検出されたことをユーザに通知するとともに、異常が検出された動作を再度実行させるか否かの指示を受け付け、受け付けた指示に応じて前記複数の動作部を制御する、
ことを特徴とする検体処理装置。
【請求項17】
検体容器から検体を吸引する吸引工程と、
吸引された検体に複数の処理を順次実行する処理工程と、
処理工程における動作の異常を検出する検出工程と、
動作の異常が検出されたとき、異常が検出された前記動作部に到達していない検体の処理を中断する中断工程と、
異常が検出された動作を再度実行する再動作工程と、
再動作工程により動作の異常が検出されなければ、中断した前記検体の処理を再開する再開工程と、を含む、
ことを特徴とする検体処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−58132(P2012−58132A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203143(P2010−203143)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
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