説明

検体吸引装置

【課題】簡易な構成で吸引管の破損を防ぎつつ吸引管の適切な下降・吸引動作を可能とする検体吸引装置を提供する。
【解決手段】この第1検体分注アーム5(検体吸引装置)は、ピペット5bと、蓋101を検知する蓋検知部46と、ピペット5bを昇降させるZ駆動モータ73aと、ピペット5bの衝突を検知可能な衝突センサ55と、Z駆動モータ73aを制御するとともに、衝突センサ55が衝突を検知したときに停止するようにZ駆動モータ73aを制御する制御部とを備え、制御部は、蓋101が検知された検体容器100から検体を吸引する場合、蓋101より上方の所定高さまでピペット5bを下降させ、ピペット5bが所定高さまで下降した後は、衝突センサ55が衝突を検知したか否かに関わらずにピペット5bを下降させて蓋101を貫通させるようにZ駆動モータ73aを制御するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体吸引装置に関し、特に、蓋を有する検体容器と蓋を有さない検体容器とから検体を吸引可能な検体吸引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸引管を検体容器に挿入し、吸引管を介して検体容器から検体を吸引する検体吸引装置が知られている。このような検体吸引装置においては、吸引管を検体容器に向けて下降させる際に、吸引管と障害物との衝突による吸引管の破損を防止するために、吸引管の衝突が検知されたときに吸引管の下降を停止させるようにした検体吸引装置が知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、吸引管の衝突を検知可能な検体吸引装置において、蓋を有する検体容器から検体を吸引可能な検体吸引装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
特許文献2には、先端が鋭利に形成され液体を吸引することができる液体吸引管と、液体吸引管を上下方向に移動させる強弱2種類の駆動源と、液体吸引管に上向きの外力が作用したことを検知する外力検知手段とを備えた液体吸引装置が開示されている。この装置は、外力検知手段によって吸引管と障害物との衝突を検知して吸引管の下降を停止させる。さらに、この装置は、第1の駆動源を駆動させて容器に向けて液体吸引管を移動させたときに、外力検知手段によって外力が検知されなかったときには開放容器であると判定し、外力検知手段によって外力が検知されたときには容器キャップ(蓋)を有する密閉容器であると判定する。密閉容器であると判定されたときには、容器キャップから液体吸引管を引き離し、駆動源を第1の駆動源より強力な第2の駆動源に切り換えて吸引管を下降させ、容器キャップを貫通させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−275660号公報
【特許文献2】特開2000−088862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、吸引管によって容器の蓋を貫通するときに外力検知手段に外力がかかると、それが容器の蓋により生じた外力であるにもかかわらず、蓋以外の障害物との衝突によって生じる外力と区別がつかず、制御に支障をきたすおそれがある。そこで、特許文献2に記載の検体吸引装置では、吸引管によって容器の蓋を貫通するとき、外力検知手段を介して吸引管に駆動力を付与する第1駆動源から、外力検知手段を介さずに吸引管に駆動力を付与する第2駆動源に駆動源を切り換えることにより、吸引管が蓋に衝突したときの外力が外力検知手段に伝達しない状態で吸引管を下降させるように構成されている。しかしながら、このような構成には非常に複雑な機構が要求される。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、蓋を有する検体容器と蓋を有さない検体容器とから検体を吸引可能な検体吸引装置において、簡易な構成で吸引管の破損を防ぎつつ吸引管の適切な下降・吸引動作を可能とする検体吸引装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における検体吸引装置は、蓋を有する検体容器と蓋を有さない検体容器とから検体を吸引可能な検体吸引装置であって、検体容器の蓋を貫通可能に構成され、検体を吸引するための吸引管と、検体容器の蓋を検知する蓋検知部と、吸引管を昇降させる駆動部と、吸引管が障害物に衝突したことを検知可能な衝突検知部と、吸引管を下降させるように駆動部を制御するとともに、衝突検知部が吸引管の衝突を検知したときに下降を停止するように駆動部を制御する制御部と、を備え、制御部は、蓋検知部により蓋が検知された検体容器から検体を吸引する場合、検体容器の蓋より上方の所定高さまで吸引管を下降させ、吸引管が所定高さまで下降した後は、衝突検知部が吸引管の衝突を検知したか否かに関わらずに吸引管を下降させて蓋を貫通させるように駆動部を制御するように構成されている。
【0009】
この発明の一の局面における検体吸引装置では、上記のように、吸引管が障害物に衝突したことを検知可能な衝突検知部と、蓋検知部により蓋が検知された検体容器から検体を吸引する場合、検体容器の蓋より上方の所定高さまで吸引管を下降させ、吸引管が所定高さまで下降した後は、衝突検知部が吸引管の衝突を検知したか否かに関わらずに吸引管を下降させて蓋を貫通させるように駆動部を制御する制御部とを設けることによって、蓋を有する検体容器から検体を吸引する場合、蓋の上方の所定高さまで吸引管が下降するまでの間に吸引管と障害物とが衝突したときには、吸引管の下降を停止させて吸引管の破損を防止することができる。そして、所定高さからさらに吸引管を下降させるときには、衝突検知部が吸引管の衝突を検知したか否かに関わらずに吸引管を下降させるため、吸引管が蓋に衝突してもそのまま吸引管を下降させ蓋を貫通させることができる。したがって、衝突検知部に外力がかからないようにするための複雑な機構を設けることなく、簡素な構成とすることができる。これにより、簡易な構成で吸引管の破損を防ぎつつ、吸引管の適切な下降・吸引動作を行うことができる。
【0010】
上記一の局面による検体吸引装置において、好ましくは、制御部は、蓋検知部により蓋が検知されなかった検体容器から検体を吸引する場合、衝突検知部によって吸引管の衝突が検知されたときに下降を停止するように駆動部を制御するように構成されている。このように構成すれば、障害物と吸引管とが衝突することによる吸引管の破損を防止しながら、蓋を有さない検体容器から検体を吸引することができる。
【0011】
上記一の局面による検体吸引装置において、好ましくは、衝突検知部は、吸引管が障害物に衝突したときに、制御部に対して検知信号を出力可能に構成されており、衝突検知部が吸引管の衝突を検知したか否かに関わらずに吸引管を下降させる際、衝突検知部から制御部への検知信号の出力が遮断されるように構成されている。このように構成すれば、検知信号を遮断するという簡素な信号処理により、容易に、衝突検知部が吸引管の衝突を検知したか否かに関わらずに吸引管を下降させる構成を実現することができる。
【0012】
この場合において、好ましくは、衝突検知部から検知信号を受け取り、受け取った検知信号を制御部へ出力可能なスイッチ回路をさらに含み、スイッチ回路は、制御部からの命令に応じて、受け取った検知信号の制御部への出力の有無を切り替え可能に構成されており、制御部は、衝突検知部が吸引管の衝突を検知したか否かに関わらずに吸引管を下降させる際、検知信号を制御部へ出力しないようにスイッチ回路を切り替えるように構成されている。このように構成すれば、スイッチ回路を切り替えるのみで検知信号を遮断することができる。これにより、電子回路レベルの設計で衝突検知部が吸引管の衝突を検知したか否かに関わらずに吸引管を下降させる構成を実現することができる。
【0013】
上記吸引管が障害物に衝突したときに、衝突検知部が制御部に対して検知信号を出力可能な構成において、好ましくは、制御部は、吸引管を下降させる量に応じたパルス信号を駆動部に出力する駆動部制御回路を含み、駆動部は、駆動部制御回路によって入力されたパルス信号に応じて吸引管を下降させるように構成されており、駆動部制御回路は、衝突検知部から検知信号が入力されたときにパルス信号の出力を停止するように構成されている。このように構成すれば、衝突検知部から検知信号が入力されたときに駆動部制御回路がパルス信号の出力を停止するため、吸引管が蓋以外の障害物に衝突したとき、ソフトウェア(ソフトウェアを実行する制御部)による判断を待たずに駆動部制御回路により即座に吸引管の下降を停止することができる。ゆえに、吸引管が蓋以外の障害物に衝突したときの吸引管の破損をより確実に防止することができる。
【0014】
上記一の局面による検体吸引装置において、好ましくは、衝突検知部は、吸引管が障害物に衝突したときに、制御部に対して検知信号を出力可能に構成されており、衝突検知部が吸引管の衝突を検知したか否かに関わらずに吸引管を下降させる際、検知信号を出力しないように構成されている。このように構成すれば、衝突検知部が検知信号を出力しないようにすることにより、簡素な構成で、衝突検知部が吸引管の衝突を検知したか否かに関わらずに吸引管を下降させる構成を実現することができる。
【0015】
この場合において、好ましくは、衝突検知部は、衝突検知部が吸引管の衝突を検知したか否かに関わらずに吸引管を下降させる際、吸引管の衝突を検知しないように構成されている。このように構成すれば、衝突検知部が吸引管の衝突の検知をしないことにより、容易に、衝突検知部が吸引管の衝突を検知したか否かに関わらずに吸引管を下降させる際に衝突検知部が検知信号を出力しないようにすることができる。
【0016】
上記衝突検知部が吸引管の衝突を検知したか否かに関わらずに吸引管を下降させる際、衝突検知部が吸引管の衝突を検知しない構成において、好ましくは、衝突検知部は、電力が供給されているとき、吸引管の衝突を検知するように構成されており、制御部は、衝突検知部が吸引管の衝突を検知したか否かに関わらずに吸引管を下降させる際、衝突検知部への電力の供給を停止する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、衝突検知部への電力供給を停止するだけで、衝突検知部が吸引管の衝突を検知したか否かに関わらずに吸引管を下降させる際に衝突検知部が吸引管の衝突の検知をしない構成を実現することができる。
【0017】
上記一の局面による検体吸引装置において、好ましくは、吸引対象の検体容器の上方に配置され、吸引管が通過可能な通路が形成された通過部材をさらに備え、所定高さは、吸引管の先端が通過部材の通路に進入する高さである。このように構成すれば、何らかの原因により吸引管が検体容器の蓋に対して正確に位置づけられていない場合には、吸引管は通過部材の通路に進入できずに通路の周縁に衝突し、衝突検知部による検知結果に基づいて吸引管の下降が停止する。よって、吸引管が正確に位置づけられていないまま衝突検知部の検知結果の基づかずに吸引管が下降することによる吸引管の破損を防止することができる。
【0018】
この場合において、好ましくは、通過部材は、上下に移動可能に設けられており、制御部は、蓋検知部により蓋が検知された検体容器から検体を吸引する場合、通過部材によって検体容器の蓋を下向きに押さえるように通過部材を下降させるように構成されている。このように構成すれば、通過部材と検体容器の蓋までの距離を限りなく小さくすることができる。ゆえに、衝突検知部の検知結果に基づかずに吸引管を下降させた場合に、何らかの原因で吸引管が蓋以外の障害物と衝突する可能性を低減させることができる。さらに、検体容器の蓋を下向きに押さえることにより、蓋を貫通するときの検体容器のぐらつきを抑制することができ、かつ、蓋を貫通した吸引管を引き抜くときの検体容器の浮き上がりを抑制することができる。
【0019】
上記通過部材を備える構成において、好ましくは、吸引管が検体容器に収容された検体の液面に到達したことを検知する液面検知部と、検体を吸引する吸引部とをさらに備え、制御部は、液面検知部が吸引管の液面への到達を検知したとき、吸引管がさらに所定量下降するように駆動部を制御し、吸引管が所定量下降したのち検体を吸引するように吸引部を制御するように構成されている。このように構成すれば、液面より所定量下降したところで検体を吸引することができる。液面より所定量下降したところで検体を吸引することにより、液面から浅い位置で吸引を開始することによる空吸い(空気を吸引すること)を未然に防止し、確実に検体を吸引することができる。
【0020】
この場合において、好ましくは、通過部材の通路に挿入された吸引管に洗浄液を供給して吸引管を洗浄する洗浄部をさらに備え、制御部は、吸引管の先端が通過部材を通過するまで、液面検知部の検知結果に関わらずに吸引管が下降するように駆動部を制御するように構成されている。このように構成すれば、通過部材に洗浄液が残存した場合であっても、吸引管が通過部材の通路を通過するときに液面検知部が残存した洗浄液を検知することによる誤検知を防止することができる。
【0021】
上記一の局面による検体吸引装置において、好ましくは、吸引管が相対的に上方に移動可能な状態で吸引管を支持する支持部材をさらに備え、駆動部は、支持部材を昇降させることにより吸引管を昇降させるように構成されており、衝突検知部は、吸引管が支持部材に対して相対的に上方に移動したとき、吸引管の衝突を検知するように構成されている。このように構成すれば、吸引管は、物理的に障害物に衝突しない限り支持部材に対して上方に移動することはないため、このような構成によれば、吸引管が障害物に衝突したことを確実に検知することができる。
【0022】
この場合において、好ましくは、衝突検知部は、支持部材に設けられた検知部と、検知部と所定の位置関係となるように吸引管に設けられた被検知部材とを含み、吸引管が支持部材に対して上方に移動することにより、検知部と被検知部材とが所定の位置関係になくなったとき、吸引管の衝突を検知するように構成されている。このように構成すれば、簡素な構成により吸引管の上方への移動を確実に検知して、吸引管の衝突を検知することができる。
【0023】
上記支持部材を備える構成において、好ましくは、吸引管が支持部材に対して相対的に上方へ移動したとき、支持部材に対して下向きの力を吸引管に付与する弾性部材をさらに備える。このように構成すれば、吸引管が障害物に衝突することにより吸引管が支持部材に対して上方に移動したとしても、吸引管が障害物から引き離されたときには、弾性部材によって吸引管を衝突前の位置に自然復帰させることができる。
【0024】
上記支持部材を備える構成において、好ましくは、支持部材に対する吸引管の所定量を超える上方への移動を規制する規制部材をさらに備え、吸引管は、支持部材に対する上方への移動が規制部材によって規制された状態で蓋を貫通するように構成されている。このように構成すれば、吸引管を支持部材に対して上昇させるように構成した場合においても、吸引管のぐらつきを抑えつつ、検体容器の蓋を貫通させる際に、吸引管に駆動部の駆動力を十分に伝達することができる。
【0025】
上記一の局面による検体吸引装置において、好ましくは、検体容器を保持するラックを搬送する搬送路をさらに備え、蓋検知部は、搬送路上の所定高さに向かって光を照射する照射部と、搬送路を挟んで照射部からの光を受光する受光部とを含み、受光部において照射部からの光が受光されたか否かに基づいて、検体容器の蓋を検知するように構成されている。このように構成すれば、ラックを搬送しながら、ラックに保持された検体容器の蓋を検知することができる。これにより、検体容器の蓋の有無を迅速に判断することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態による第1検体分注アームを備えた分析装置の全体構成を示した斜視図である。
【図2】図1に示した一実施形態による第1検体分注アームを備えた分析装置の全体構成を示した平面図である。
【図3】図2に示した分析装置の検体搬送部の蓋検知部を示した部分断面図である。
【図4】図1に示した一実施形態による第1検体分注アームを備えた分析装置の制御部を示したブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態による第1検体分注アームを模式的に示した側面図である。
【図6】図5に示した一実施形態による第1検体分注アームを模式的に示した背面図である。
【図7】図5に示した一実施形態による第1検体分注アームを模式的に示した上面図である。
【図8】図5に示した一実施形態による第1検体分注アームのピペットの取り付け構造を説明するための断面図である。
【図9】図8に示した一実施形態による第1検体分注アームのピペットの取り付け構造を説明するための分解斜視図である。
【図10】図8に示した第1検体分注アームのピペットが支持部材に対して上昇した状態を示す断面図である。
【図11】本発明の一実施形態による第1検体分注アームの検体分注処理動作を説明するためのフローチャートである。
【図12】図11に示した本発明の一実施形態による第1検体分注アームの検体吸引処理を説明するためのフローチャートである。
【図13】図11に示した本発明の一実施形態による第1検体分注アームの検体吸引処理を説明するためのフローチャートである。
【図14】検体吸引位置においてピペットとピペット洗浄部と検体容器とが上下に配置された状態(ピペット洗浄部の下降前)を示す模式図である。
【図15】検体吸引位置における検体吸引処理動作(蓋ありの場合)を説明するための模式図である。
【図16】検体吸引位置における検体吸引処理動作(蓋なしの場合)を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
まず、図1〜図10、図14および図16を参照して、本発明の一実施形態による第1検体分注アーム5を備えた分析装置1の構成について説明する。なお、本実施形態では、本発明の「検体吸引装置」の一例である分析装置の検体分注アームに本発明を適用した例について説明する。
【0029】
分析装置1は、検体(血漿)に試薬を添加することで調製された測定試料に光を照射して、凝固法、合成基質法、免疫比濁法および凝集法を用いて、検体の光学的な測定および分析を行う血液凝固分析装置である。
【0030】
この分析装置1は、図1に示すように、検体(血漿)に含まれる成分を光学的に測定する測定機構部2と、測定機構部2に電気的に接続されたPC(パーソナルコンピュータ)からなる制御装置3とを備えている。制御装置3は、制御部3aと、表示部3bと、キーボード3cとから主として構成されたコンピュータによって構成されている。制御装置3は、操作入力に基づいて検体の分析動作の開始、終了指示などを測定機構部2に送信するとともに、測定機構部2からの駆動停止報告やエラー報告などの各種報告や分析結果などを受信する機能を有する。また、制御装置3は、受信したエラー報告や測定機構部2による検出値に基づいて得られる分析結果などを表示部3bに表示する機能を有する。
【0031】
図2に示すように、測定機構部2は、検体搬送部(サンプラ)4と、第1検体分注アーム5と、第2検体分注アーム6と、キュベット(反応容器)設置部7および試薬設置部8と、試薬分注アーム9、10および11と、キュベット移送部12と、反応部13と、検出部14と、キュベット供給部15と、キャッチャユニット16、17および18とから構成されている。
【0032】
検体搬送部4は、ラック貯留部41と、ラック搬送部42と、ラック回収部43とを備えている。ラック貯留部41は、検体を収容した複数の検体容器100が載置されたラック110(図1参照)を貯留するとともに、ラック搬送部42にラック110を送り出す機能を有する。ラック搬送部42は、ラック貯留部41とラック回収部43とに渡ってX方向に延びるように設けられ、サーボモータ44およびエンコーダ45を有する。ラック搬送部42は、図示しない搬送機構をサーボモータ44により駆動することによって、X方向に延びるラック搬送部42上の任意の位置にラック110を移動させることが可能なように構成されている。これにより、ラック搬送部42は、ラック110に載置された分析対象(分注対象)の検体容器100を、第1検体分注アーム5による検体吸引位置300および第2検体分注アーム6による検体吸引位置400に搬送することが可能である。また、ラック回収部43は、分注が終了した検体容器100を保持するラック110をラック搬送部42から回収する機能を有する。
【0033】
また、ラック搬送部42には、X方向に沿って蓋検知部46と、バーコードリーダ47と、ピペット洗浄部48とが設けられている。蓋検知部46は、図3に示すように、発光部46aと受光部46bとからなる光学式センサであり、ラック搬送部42により搬送されるラック110上の検体容器100の上端部(矢印Z1方向端部)に設けられた蓋101が発光部46aと受光部46bとの間の光路を通過するように設置されている。ここで、検体容器100は、上端に開口を有する管状容器であり、上端の開口が蓋101により密閉される検体容器(図14参照)と、蓋101のない検体容器(図16参照)とが用いられる。蓋検知部46は、検体容器100が発光部46aと受光部46bとの間にある状態で、発光部46aから受光部46bに向けて光を照射する。このとき、受光部46bにおいて光が受光されなければ、その検体容器100には蓋101があることが検知される。一方、受光部46bにおいて光が受光されれば、その検体容器100には蓋101がないことが検知される。このように、ラック搬送部42により搬送される検体容器100の蓋の有無を検知することにより、ラック110に蓋101のある検体容器100と蓋101のない検体容器100(図16参照)とが混在しても、迅速に各検体容器の蓋の有無を検知することができる。
【0034】
また、図2に示すように、バーコードリーダ47は、ラック搬送部42により搬送されるラック110に添付された識別用のバーコードラベル(図示せず)、および、ラック110上の検体容器100に貼付された識別用のバーコードラベル(図示せず)を読み取る機能を有する。
【0035】
また、ピペット洗浄部48は、ラック搬送部42の検体吸引位置300の上方の位置(図5参照)に設けられている。ピペット洗浄部48は、上下(Z方向)に貫通する吸引管通路48aを有し、第1検体分注アーム5の後述するピペット5b(図5参照)が検体容器100から検体の吸引を行う際に、この吸引管通路48aを通過するように構成されている。ピペット洗浄部48は、吸引管通路48aをピペット5bが通過する際に内部で洗浄液を吐出および吸引してピペット5bの洗浄を行う機能を有する。また、ピペット洗浄部48は、上下に移動可能に設けられている。ピペット洗浄部48は、制御部3aが図示しないモータを駆動することによって昇降する。ピペット洗浄部48は、このように上下移動可能であることにより、検体容器100の蓋101を下向きに押さえつける機能も有している。蓋101を押さえることにより、第1検体分注アーム5(第2検体分注アーム6)に設けられたピペット5b(6b)が蓋101を貫通するときに、検体容器100にがたつきが生じないようにすることができる。さらには、蓋101を貫通したピペット5bを蓋101から引き抜くときに、ピペット5bの上昇に伴って検体容器100が浮き上がることを防止することができる。
【0036】
また、本実施形態では、第1検体分注アーム5は、アーム部5aと、ピペット5bと、本体部5cとを有し、検体搬送部4により検体吸引位置300に搬送された検体容器100内の検体を吸引し、キュベット設置部7に設置されたキュベット(図示せず)またはキュベット移送部12に設置されたキュベットに検体を分注(吐出)する機能を有している。なお、第1検体分注アーム5の詳細な構造は、後述する。
【0037】
また、第2検体分注アーム6は、アーム部6a、ピペット6bおよび本体部6cを有し、検体搬送部4により検体吸引位置400に搬送された検体容器100内の検体を吸引し、キュベット設置部7に設置されたキュベットまたはキュベット移送部12に設置されたキュベットに検体を分注(吐出)する機能を有している。
【0038】
試薬設置部8は、測定に用いられる各種の試薬および希釈液などを収容した試薬容器を設置するために設けられている。
【0039】
試薬分注アーム9、10および11は、それぞれ、試薬設置部8に設置された試薬容器(図示せず)内の試薬を吸引して、キュベット設置部7およびキュベット移送部12などに設置されたキュベットに対して、所定の試薬を吐出(分注)する機能を有する。試薬分注アーム9、10および11は、それぞれ、アーム部9a、10aおよび11aと、ピペット9b、10bおよび11bと、本体部9c、10cおよび11cとを有する。試薬分注アーム9(10、11)は、それぞれ、本体部9c(10c、11c)によりアーム部9a(10a、11a)を旋回させ、ピペット9b(10b、11b)を試薬容器の上方およびキュベットの上方に位置づけるとともに、本体部9c(10c、11c)によりアーム部9a(10a、11a)を昇降させてピペット9b(10b、11b)から試薬の吸引および吐出動作を行うように構成されている。
【0040】
キュベット移送部12は、設置口に設置されたキュベットを保持して搬送路12a上をX方向に移動可能に構成されている。キュベット移送部12は、設置されたキュベットをキュベット設置部7手前(矢印Y2方向側)の分注位置と、キャッチャユニット16手前の移載位置とに移送する機能を有する。
【0041】
反応部13は、キャッチャユニット17の周囲を取り囲むように円環形状に形成され、複数のキュベットを保持可能に構成されている。反応部13は、セットされたキュベットを加温する機能を有している。すなわち、反応部13において、キュベットに収容された検体と試薬との混合試料が加温され、キュベット内の検体と各種試薬との反応が促進される。
【0042】
検出部14は、反応部13において検体と各種試薬との反応が行われた後の測定試料に対して光学的測定を行うことにより、測定試料に含まれる成分を反映した光学的情報を検出する機能を有する。
【0043】
キュベット供給部15は、複数のキュベットを収納可能に構成されており、キュベット貯留部15aにキュベットを順次供給することが可能なように構成されている。
【0044】
キャッチャユニット16、17および18は、それぞれ、キュベットを把持して搬送する機能を有する。キャッチャユニット16は、キュベット貯留部15aからキュベットを取り出してキュベット移送部12にセットするとともに、キュベット移送部12から反応部13にキュベットを搬送する機能を有する。また、キャッチャユニット18は、搬送路18a上をX方向に移動可能に構成され、反応部13から検出部14にキュベットを搬送する機能を有する。キャッチャユニット17およびキャッチャユニット18は、それぞれ、廃棄口19aおよび廃棄口19bに使用済みのキュベットを廃棄する機能を有する。
【0045】
また、図4に示すように、測定機構部2は、主制御部20と、各機構(第1検体分注アーム5などの各種分注アーム、反応部13、試薬設置部8、キャッチャユニット16〜18など)の動作制御を行うための副制御部(図4では、第1検体分注アーム5の副制御部80のみ図示している)を備えている。各種分注アーム、反応部13、キュベット設置部7、試薬設置部8、キュベット移送部12およびキャッチャユニット16〜18などの各機構は、主制御部20からの駆動指令に基づいて、それぞれの副制御部により制御されている。また、検体搬送部4も主制御部20によって制御されるように構成されている。
【0046】
主制御部20は、図4に示すように、CPU21を備えている。主制御部20は、制御装置3に接続されており、検体の光学的な情報(測定データ)を制御装置3に送信するとともに、制御装置3の制御部3a(図1参照)からの信号を受信するための機能を有している。また、主制御部20は、検体搬送部4および測定機構部2の各部に対して、CPU21により駆動命令を送信するとともに、各部の駆動停止報告やエラー報告を受信する機能を有する。受信した各部の駆動停止報告やエラー報告は、主制御部20から制御装置3に送信されるように構成されている。
【0047】
次に、本実施形態による第1検体分注アーム5の構造について詳細に説明する。また、第1検体分注アーム5の副制御部80についても併せて説明する。なお、本実施形態では、第1検体分注アーム5の副制御部80についてのみ説明し、他の副制御部についての説明は省略する。
【0048】
第1検体分注アーム5は、図2に示すように、本体部5cによりアーム部5aを旋回駆動させることにより検体吸引位置300の上方にピペット5bを配置(図14参照)した後、図5に示すように、本体部5cによりアーム部5aを下降させることにより、検体吸引位置300に配置された検体容器100にピペット5bを挿入して検体の吸引を行うように構成されている。また、第1検体分注アーム5は、アーム部5aを上昇させて検体容器100からピペット5bを抜き出し、アーム部5aを旋回させてキュベット設置部7またはキュベット移送部12に設置されたキュベット上方の分注位置にピペット5bを位置づけ、検体を分注(吐出)するように構成されている。
【0049】
図5〜図7に示すように、アーム部5aは、軸部51と、支持部材52と、ガイド部53とを備えている。アーム部5aは、本体部5cのθ駆動モータ72aおよびZ駆動モータ73aによって、軸部51と、支持部材52と、ガイド部53とを含む全体が旋回(回動)および昇降するように構成されている。軸部51は、上端に支持部材52が固定されているとともに、本体部5cに軸周りの回転および昇降可能に支持されている。また、軸部51は、中空のスプラインシャフトからなり、ピペット5bと接続されたチューブ(図示せず)や各種センサの信号線(図示せず)などの配線処理を軸部51の内部を通過させて行うことが可能なように構成されている。
【0050】
支持部材52は、水平方向に延びる金属板からなる略U字状(図6参照)の断面を有するフレームであり、根本部(矢印A2方向側)で軸部51の上端に取り付けられている。支持部材52の先端(矢印A1方向側)には、ピペット5bが下方に延びるようにして、支持部材52に対して上方に相対移動可能に取り付けられている。また、図7に示すように、支持部材52には、第1検体分注アーム5の副制御部80(図4参照)を備えた制御基板54が設置されている。この制御基板54には、発光部と受光部とを有する光学式の衝突センサ55が設けられている。衝突センサ55は、後述するように、ピペット5bとともに移動する被検知部材65の検知片65aを検知することにより、支持部材52に対するピペット5bの上昇を検知するように構成されている。また、制御基板54には、ピペット5bを電極として用いた静電容量式の液面センサ56(図4参照)が設けられており、ピペット5bの先端が液面に接触したことを検知することが可能に構成されている。
【0051】
図5に示すように、ガイド部53は、支持部材52の下方に配置されるとともに、支持部材52と平行に設けられている。ガイド部53は、根本部が軸部51に固定的に取り付けられている。また、ガイド部53の先端には、上下方向(Z方向)の貫通孔を有するピペットガイド53aが設けられており、ピペット5bが挿入された状態で取り付けられている。これにより、ピペット5bが下方(矢印Z2方向)に向けてガイドされるように構成されている。
【0052】
ピペット5bは、金属製の管部材であり、支持部材52から下方に向けて取り付けられている。また、ピペット5bは、先端(下端)が検体容器100の蓋101を貫通することが可能なように鋭角に形成されている。検体容器100内の検体の吸引時には、支持部材52(アーム部5a)が下降されることによりピペット5bが下降され、ピペット5bの先端が蓋101を上方から貫通することにより、検体容器100内部にピペット5bの先端が挿入されるように構成されている。また、図8および図9に示すように、ピペット5bは、中空の保持部材61の内部に挿入されるようにして、保持部材61に保持されている。
【0053】
保持部材61は、ピペット5bの上端と連通する開口部61aが形成された上部61bと、上部61bから下方に延びる円筒状の第1筒部61cと、第1筒部61cから下方に延びる円筒状の第2筒部61dと、第2筒部61dから側方に広がるフランジ部61eとを有している。
【0054】
保持部材61の上端の開口部61aには、流路62aを有する中空の接続部材62と、接続部材62を固定するための接続部材63とが取り付けられている。そして、ピペット5bと、保持部材61と、接続部材62の流路62aとが連通するように構成されている。そして、接続部材62の流路62aの上端には、チューブ(図示せず)の一方端が取り付けられるとともに、他方端が軸部51内を通過して後述するシリンジユニット74(図5参照)と接続される。これにより、ピペット5bの先端から検体の吸引および吐出を行うことが可能である。保持部材61は、第1筒部61cが摺動部材64の筒状部64aに挿入された状態で摺動部材64に支持されている。このため、ピペット5bと保持部材61とは、一体となって摺動部材64から抜き差しすることが可能である。
【0055】
摺動部材64は、筒状部64aと、支持部64bと、取付部64cとを有する金属製の部材である。筒状部64aは、支持部64bから下方に延びるように円筒状に形成されており、下端部近傍の外周面にネジ部64dが形成されている。支持部64bは、上面が保持部材61の上部61bの下面と当接することにより、保持部材61を支持している。また、取付部64cには、被検知部材65が取り付けられている。被検知部材65は、衝突センサ55が設けられた制御基板54と対向する(図7参照)ように配置されている。この被検知部材65には、対向する衝突センサ55側に延びるように形成された検知片65aが一体的に設けられている。そして、後述するように摺動部材64が上方(矢印Z1方向)に移動したとき(図10参照)に、検知片65aが衝突センサ55を遮光するように構成されている。また、摺動部材64は、筒状部64aがガイド部材66に挿入されるようにして、上方に移動可能に支持されている。なお、筒状部64aは、このガイド部材66と支持部材52の取付孔52aとを通って支持部材52の下面側(矢印Z2方向側)に突出するように配置されている。そして、支持部材52の下面側でネジ部64dに係止部材67のネジ部67aが螺合するように構成されている。
【0056】
ガイド部材66は、摺動部材64の筒状部64aが挿入される円孔の内周面からなるガイド面66aと、下面から下方に延びる突出部66bとを有する。また、ガイド部材66は、上面が摺動部材64の支持部64bの下面と当接することによって、摺動部材64を上方に移動(摺動)可能に支持するように構成されている。摺動部材64は、筒状部64aの外周面がガイド部材66のガイド面(内周面)66aと当接することによって、上方(矢印Z1方向)に移動可能なようにガイドされる。また、ガイド部材66は、支持部材52の取付孔52aに突出部66bが嵌め込まれるようにして位置決めされるとともに、ネジ止めなどにより支持部材52に固定的に設置されている。
【0057】
係止部材67は、筒状形状を有し、下部の内周面に形成されたネジ部67aが摺動部材64の筒状部64aのネジ部64dに螺合することにより、摺動部材64に取り付けられている。係止部材67は、係止部材67の上端面67bが支持部材52の下面に対して所定の間隔D1を隔てて離間するように構成されている。この間隔D1は、たとえば約1.5mmである。これにより、図10に示すように、係止部材67は、摺動部材64が上方(矢印Z1方向)に移動したときに摺動部材64と一体的に間隔D1だけ移動して上端面67bが支持部材52の下面と当接することによって、摺動部材64を係止する機能を有する。したがって、摺動部材64のガイド部材66(支持部材52)に対する上方への移動可能距離は、係止部材67により間隔D1の距離に制限される。また、係止部材67の上側の内周部と摺動部材64の筒状部64aの外周面との間には、コイルバネ68が設けられている。
【0058】
コイルバネ68は、摺動部材64の筒状部64aが挿入された状態で係止部材67の内側部に収納されている。コイルバネ68の下端は、係止部材67の内側上面と当接するとともに、コイルバネ68の上端は、支持部材52の下面(ガイド部材66の突出部66bの下面)と当接している。このため、コイルバネ68は、摺動部材64(係止部材67)の上方への移動(図10参照)に伴って、支持部材52の下面と係止部材67の内側上面との間で圧縮され弾性変形する。これにより、コイルバネ68は、摺動部材64の上方への移動に際して、摺動部材64(係止部材67)に対して下方への反発力(付勢力)を付与するように構成されている。
【0059】
なお、図8に示すように、保持部材61が摺動部材64に支持された状態で、保持部材61の第2筒部61dの一部およびフランジ部61eは、係止部材67の下端よりも下方(矢印Z2方向)に突出する。そして、この第2筒部61dには、係止部材67の下端面およびフランジ部61eの上面と当接するようにスペーサ69が取り付けられている。これにより、保持部材61は、スペーサ69を介して係止部材67の下面側に係合するとともに、上部61bの下面が摺動部材64の支持部64bの上面に係合するように構成されている。この結果、保持部材61に保持されたピペット5bが、支持部材52(およびガイド部材66)に対して、摺動部材64と一体的に上方(矢印Z1方向)に移動するように構成されている。
【0060】
このような構成により、本実施形態では、図10に示すように、ピペット5b(アーム部5a)が下降する際にピペット5bの先端が検体容器100の蓋101または他の物体と当接すると、コイルバネ68が弾性変形されてピペット5bが支持部材52に対して間隔D1だけ上方に移動する。また、ピペット5bが支持部材52に対して間隔D1だけ上方に移動したときに、摺動部材64に取り付られた被検知部材65の検知片65aが衝突センサ55を遮光することにより、ピペット5bの上方への移動が検知されるように構成されている。そして、ピペット5bが蓋101または他の物体から引き離されたときには、コイルバネ68によってピペット5bを衝突前の位置に自然復帰させる。
【0061】
図5および図6に示すように、本体部5cは、軸部51を回転および昇降可能に支持するシャーシ部71と、軸部51(アーム部5a)を回動させるための回動機構部72と、軸部51(アーム部5a)を昇降させるための昇降機構部73と、ピペット5bから検体の吸引および吐出を行うためのシリンジユニット74とを備えている。シャーシ部71は、軸部51を回転可能、かつ、上下移動可能に支持している。
【0062】
回動機構部72は、ステッピングモータからなるθ駆動モータ72aと、θ駆動モータ72aの回転位置を検出するθエンコーダ72bとを有する。また、図6および図7に示すように、軸部51およびθ駆動モータ72aの出力軸には、それぞれプーリ72cおよび72dが取り付けられている。なお、プーリ72dは、スプラインシャフトからなる軸部51に対して軸周りの回転方向に係合するとともに、上下方向(Z方向)には相対移動可能な状態で取り付けられており、シャーシ部71に支持されている。そして、プーリ72cおよび72dには、駆動ベルト72eが掛け渡されている。これにより、θ駆動モータ72aによってアーム部5aを軸部51周りに旋回させるように構成されている。
【0063】
図5に示すように、昇降機構部73は、ステッピングモータからなるZ駆動モータ73aと、Z駆動モータ73aの回転位置を検出するZエンコーダ73bとを有する。また、Z駆動モータ73aの出力軸に取り付けられたプーリ73cと、シャーシ部71に上下(Z方向)に並ぶように配置された一対のプーリ73dおよび73eとに、テンションプーリ73fを介して駆動ベルト73gが掛け渡されている。さらに、一対のプーリ73dおよび73eの間の位置で、駆動ベルト73gと軸部51とを連結する連結具75(図6参照)が設けられている。これにより、Z駆動モータ73aによって駆動ベルト73gを上下させることにより、アーム部5a(ピペット5b)上下に昇降させるように構成されている。
【0064】
シリンジユニット74は、シリンジ74aおよびプランジャー74bと、プランジャー74bを進退させるためのシリンジモータ74cとを有している。シリンジ74aには図示しないチューブが接続され、軸部51内を通ってピペット5b(接続部材62)と連通している。また、シリンジユニット74には、プランジャー74bの進退方向(上下方向)に沿って駆動ベルト74dが掛け渡された一対のプーリ74eおよび74fが設けられ、駆動ベルト74dとプランジャー74bとが連結具76により連結されている。さらに、プーリ74eはプーリ74gと連結されており、プーリ74gとシリンジモータ74cの出力側のプーリ74hとに駆動ベルト74iが掛け渡されている。これにより、シリンジモータ74cの駆動により、シリンジ74aに対してプランジャー74bを進退させ、ピペット5bから検体の吸引および吐出を行うことが可能なように構成されている。
【0065】
図4に示すように、第1検体分注アーム5の副制御部80は、通信回路81と、Zモータ制御回路82と、スイッチ回路83と、θモータ制御回路84と、シリンジユニット制御回路85と、エンコーダ入出力回路86とを備えている。
【0066】
通信回路81は、主制御部20と通信を行い、分析動作に伴う第1検体分注アーム5の駆動命令(Z方向の駆動命令、旋回(θ)方向の駆動命令、シリンジユニット74の駆動命令)を主制御部20のCPU21から受信するとともに、第1検体分注アーム5の駆動停止報告やエラー報告を主制御部20に送信する機能を有する。また、通信回路81は、受信した駆動命令を、Zモータ制御回路82と、θモータ制御回路84と、シリンジユニット制御回路85とにそれぞれ出力する。
【0067】
Zモータ制御回路82は、Z方向の駆動命令に応じたパルス信号をZ駆動モータ73aに出力して、Z駆動モータ73aによるアーム部5a(ピペット5b)上下方向の昇降動作を制御する機能を有する。また、Zモータ制御回路82は、アーム部5aの上限位置を検知するための上限センサ87(図4にのみ図示)からリミット信号を受け取るとともに、スイッチ回路83を介して衝突センサ55および液面センサ56からリミット信号(検知信号)を受け取るように構成されている。そして、Z駆動モータ73aの駆動中にこのリミット信号(検知信号)が入力されると、Zモータ制御回路82は、Z駆動モータ73aへのパルス信号の出力を停止する。この結果、Z駆動モータ73aの駆動が停止される。
【0068】
なお、副制御部80は、FPGA (Field Programmable Gate Array)で構成されている。Zモータ制御回路82はFPGAにより構築されたハード回路であり、リミット信号がラッチされると瞬時にパルス信号の出力を停止する。そのため、Z駆動モータ73aの駆動停止は主制御部20の判断を待たずに行われ、Z駆動モータ73aの駆動が停止したことを報告する駆動停止報告のみが主制御部20に送られる。このように、CPUからなる主制御部20の判断を待つことなく、ハード回路によって瞬時にZ駆動モータ73aの駆動を停止することにより、ピペット5bが衝突したときに即座に下降を停止することができる。また、Zモータ制御回路82は、主制御部20のCPU21からの制御信号に基づき、スイッチ回路83に対してオンオフ切り替え信号を出力するように構成されている。
【0069】
スイッチ回路83は、液面センサ56および衝突センサ55の検知信号(リミット信号)を受け取るとともに、Zモータ制御回路82に受け取ったリミット信号を出力する機能を有する。また、スイッチ回路83は、主制御部20からの命令に応じてZモータ制御回路82から出力されるオンオフ切り替え信号に基づき、液面センサ56および衝突センサ55の検知信号(リミット信号)の一方または両方の出力および遮断を切り替え可能に構成されている。主制御部20は、このリミット回路83を制御することにより、衝突センサ55のオン/オフ、及び液面センサ56のオン/オフを切り換える。
【0070】
主制御部20が衝突センサ55をオフする命令をZモータ制御回路82に与えると、Zモータ制御回路82は、衝突センサ55からのリミット信号のZモータ制御回路82への出力を遮断するようスイッチ回路83を切り換える信号(オフ切替信号)をスイッチ回路83に与える。スイッチ回路83は、オフ切替信号を受け取ると、後述のオン切替信号を受け取るまでの間、衝突センサ55からのリミット信号のZモータ制御回路82への出力を遮断する。主制御部20が、液面センサ56をオフするときも同様の処理が実行される。
【0071】
主制御部20が衝突センサ55をオンする命令をZモータ制御回路82に与えると、Zモータ制御回路82は、衝突センサ55からのリミット信号がZモータ制御回路82へ入力されるようスイッチ回路83を切り換える信号(オン切替信号)をスイッチ回路83に与える。スイッチ回路83は、オン切替信号を受け取ると、オフ切替信号を受け取るまでの間、衝突センサ55からのリミット信号をZモータ制御回路82へ入力する。主制御部20が、液面センサ56をオンするときも同様の処理が実行される。
【0072】
スイッチ回路83によりZモータ制御回路82へのリミット信号の出力を遮断した場合には、Zモータ制御回路82(副制御部80)は、衝突センサ55がピペット5bの障害物との衝突を検知したか、あるいは液面センサ56がピペット5bの液面への到達を検知したかに関わらずにZ駆動モータ73aの駆動制御を行う。
【0073】
θモータ制御回路84は、旋回(θ)方向の駆動命令に応じたパルス信号をθ駆動モータ72aに出力して、θ駆動モータ72aによるアーム部5aの旋回(軸部51の軸周りの回動)動作を制御する機能を有する。
【0074】
シリンジユニット制御回路85は、シリンジユニット74の駆動命令(吸引または吐出)に応じてシリンジモータ74cの駆動動作を制御する機能を有する。
【0075】
エンコーダ入出力回路86は、Zエンコーダ73bからの出力信号(Z駆動モータ73aの回転位置情報)およびθエンコーダ72bからの出力信号(θ駆動モータ72aの回転位置情報)を受け取り、通信回路81を介して主制御部20に出力する機能を有する。これにより、アーム部5aが主制御部20からの駆動指令の通りに移動(上下方向および旋回方向の移動)したことを確認し、ピペット5bを正確に検体吸引位置300の上方に位置づけることが可能である。
【0076】
なお、主制御部20は、同様に検体搬送部4のサーボモータ44(図2参照)に対する駆動指令を送信するとともに、エンコーダ45(図2参照)からの出力信号(サーボモータ44の回転位置情報)を受信する。これにより、検体搬送部4に搬送されるラック110上の吸引対象とされる検体容器100を正確に検体吸引位置300(400)に位置付けて検体の吸引を行うことが可能である。
【0077】
次に、図2〜図5および図11〜図14を参照して、本実施形態による第1検体分注アーム5の検体分注動作について説明する。以下に説明する第1検体分注アーム5の動作は、主制御部20(CPU21)から第1検体分注アーム5の副制御部80に送信される駆動命令に基づいて、副制御部80の制御回路(Zモータ制御回路82、θモータ制御回路84、シリンジユニット制御回路85)により各駆動モータ(Z駆動モータ73a、θ駆動モータ72a、シリンジモータ74c)が制御されることにより行われる。
【0078】
まず、図11のステップS1において、ピペット5bを検体吸引位置300の上方に移動させる。すなわち、θ駆動モータ72aにより、ピペット5bが検体吸引位置300の上方に配置されるまで、アーム部5aが旋回される。また、この際、図2に示すように、検体搬送部4のラック搬送部42により、検体容器100が載置されたラック110が検体吸引位置300まで搬送される。そして、θエンコーダ72bの出力信号と検体搬送部4のエンコーダ45の出力信号とに基づいて、アーム部5a(ピペット5b)とラック110上の検体容器100と、ピペット洗浄部48の吸引管通路48aとが検体吸引位置300で正確に上下に配置(図14参照)される。なお、吸引対象の検体容器100が検体吸引位置300に搬送される間に、蓋検知部46(図3参照)により検体容器100の蓋101の有無が検知される。
【0079】
次に、第1検体分注アーム5およびラック110の移動が完了すると、ステップS2において、検体吸引が行われる。ここで、検体吸引時の動作は、検体容器100の蓋101の有無により異なる。ここで、主制御部20は、検体容器100の搬送中に蓋検知部46による検出結果(蓋101の有無)を取得し、検体容器100の蓋101の有無に応じた検体吸引処理を行う。したがって、このステップS2の検体吸引処理では、図12に示す蓋ありの場合と、図13に示す蓋なしの場合とのいずれかの処理が行われる。なお、それぞれの検体吸引処理については、後述する。
【0080】
ステップS2において検体吸引が完了すると、ステップS3に進み、θ駆動モータ72a(図5参照)により、ピペット5bが分注位置の上方に配置されるまで、アーム部5aが旋回される。すなわち、図2に示すように、キュベット設置部7に設置されたキュベットまたはキュベット移送部12に設置されたキュベットの上方の所定位置にピペット5bが配置される。
【0081】
そして、ステップS4において、アーム部5a(ピペット5b)がキュベットの上方の分注位置でZ駆動モータ73a(図5参照)により下降されるとともに、シリンジモータ74c(図5参照)が駆動され、ピペット5bから検体が吐出されることによりキュベットに検体が分注される。
【0082】
以上により、第1検体分注アーム5による検体分注動作が完了する。検体分注動作が完了した後、検体が分注されたキュベットは、キュベット移送部12およびキャッチャユニット16により反応部13に移送されるとともに、試薬分注アーム9、10および11によりキュベットに試薬が分注される。そして、反応部13において検体と各種試薬との反応が行われた後、キャッチャユニット18によりキュベットが反応部13から検出部14に移送され、キュベット内の測定試料に対して光学的測定が行われる。
【0083】
次に、図1、図4、図5、図8、図10〜図12、図14および図15を参照して、図11のステップS2における蓋101を有する検体容器100に対する検体吸引処理(蓋ありの場合)について説明する。
【0084】
図12に示すように、蓋ありの場合には、ステップS11において、衝突センサ55がオンされる。すなわち、図4に示すように、Zモータ制御回路82から出力されるオン切替信号に基づき、スイッチ回路83により衝突センサ55の検知信号(リミット信号)がZモータ制御回路82へ出力されるように切り替えられる(衝突センサオン)。また、ステップS12において、液面センサ56がオフされる。すなわち、Zモータ制御回路82から出力されるオフ切替信号に基づき、スイッチ回路83により液面センサ56の検知信号(リミット信号)が遮断されるように切り替えられる(液面センサオフ)。
【0085】
次に、ステップS121において、制御部3aの制御命令に基づいて図示しないモータが駆動されることにより、図14の状態から洗浄部48が所定量だけ下降する。これにより、図15に示すように、検体容器100の蓋101が下向きに押さえつけられる。
【0086】
次に、ステップS13において、Z駆動モータ73aが駆動され、アーム部5aの下降が開始される。この際、図15に示すように、主制御部20(CPU21)からピペット5bの先端がピペット洗浄部48に設けられた通路に進入するための所定量(距離D11)だけ下降するように駆動命令が出力される。このとき、ピペット5bが検体容器100の蓋101に対して正確に位置づけられていない場合には、ピペット5bは洗浄部48の吸引管通路48aに進入できずに通路の周縁に衝突し、ピペット5bの下降が停止する。このように、吸引管通路48aにピペット5bが進入するまで衝突センサ55をオンしておくことにより、ピペット5bが蓋101に対して正確に位置づけられていることを確認することができる。本実施形態では、後述するように、蓋101の上方の位置で衝突センサ55をオフし、衝突センサ55をオフした状態でピペット5bを下降させて蓋101を貫通させるため、ピペット5bが蓋101に対して正確に位置づけられていることが要求される。本実施形態では、ピペット5bによって蓋101を貫通させる前に、上記のようにピペット5bが蓋101に対して正確に位置づけられていることを確認することにより、安全性を担保したうえで衝突センサ55をオフすることができる。
【0087】
なお、ステップS12において液面センサ56をオフすることによって、ピペット洗浄部48にピペット5bの洗浄時の液体が残存していた場合に液面を検知(下降停止)してしまうことなく、ピペット5bの先端がピペット洗浄部48の吸引管通路48aを通過することができる。
【0088】
次に、ステップS14において、主制御部20により、アーム部5aが停止したか否かが判断される。駆動命令に基づき所定量(距離D11、図15参照)の下降が完了すると、アーム部5aの下降が停止されるとともに副制御部80から主制御部20に駆動停止報告が送信される。また、衝突センサ55がオン状態なので、ピペット5bの先端が物体と当接した場合には、図10に示すように、ピペット5b(摺動部材64)が支持部材52に対して上昇する。このとき、衝突センサ55が検知片65aを検知することにより、衝突センサ55からリミット信号が出力される。図4に示すように、このリミット信号がスイッチ回路83を介してZモータ制御回路82に入力されることにより、アーム部5aの下降が停止されるとともに、エラー報告が副制御部80から主制御部20に対して出力される。駆動停止報告またはエラー報告に基づいてアーム部5aの停止が確認されると、ステップS15に進む。
【0089】
図12に示すように、ステップS15では、主制御部20により、エラーが発生したか否かが判断される。副制御部80からエラー報告を受信した場合には、ステップS16に進み、アーム部5aが上昇される。すなわち、主制御部20(CPU21)から上限センサ87(図4参照)のリミット信号を受け取るまでアーム部5aを上昇させるように駆動命令が出力される。Z駆動モータ73aが駆動されてアーム部5aの上昇が完了すると、ステップS17に進み、制御装置3の表示部3b(図1参照)に、「ピペットクラッシュが発生しました」というピペット5bの衝突が検知された旨が表示(エラー出力)される。その後、ステップS18において、主制御部20により、制御装置3からのユーザの操作に基づく再試行の命令が受信されたか否かが判断される。衝突の原因となった物体が取り除かれた後、再試行命令が送信されると、ステップS11に戻り検体吸引動作が再開される。
【0090】
一方、主制御部20に駆動停止報告が送信された場合には、ステップS15でエラーなしと判断され、ステップS19に進む。ステップS19では、衝突センサ55がオフされる。すなわち、図4に示すように、Zモータ制御回路82から出力されるオフ切替信号に基づき、スイッチ回路83により衝突センサ55の検知信号(リミット信号)が遮断されるように切り替えられる(衝突センサオフ)。これにより、液面センサ56および衝突センサ55のいずれの検知結果にも基づかずにアーム部5aの下降動作が行われるようになる。
【0091】
ステップS20では、Z駆動モータ73aが駆動され、アーム部5aの下降が開始される。この際、図15に示すように、主制御部20(CPU21)からピペット5bの先端が検体容器100の蓋101を貫通するための所定量(距離D12)だけ下降するように駆動命令が出力される。なお、ステップS12およびステップS19において液面センサ56および衝突センサ55の両方をオフすることによって、ピペット5bの先端が検体容器100の蓋101と当接した際に検知信号(リミット信号)が出力されてアーム部5aの下降が停止されるのを防止することができる。ここで、ステップS14においてピペット洗浄部48の吸引管通路48a内のピペット5bと検体容器100とが検体吸引位置300(図2参照)で正確に上下に配置されていること(図15参照)が確認されているので、ピペット5bの先端が検体容器100の蓋101以外の部分と当接するおそれは無い。
【0092】
検体容器100の蓋101の当接時には、図8および図10に示すように、蓋101の反作用によってコイルバネ68が弾性変形するとともにピペット5bが間隔D1だけ支持部材52に対して上方に移動する。これにより、ピペット5bの先端と蓋101との当接時の衝撃が吸収される。このとき、係止部材67の上端面67bが支持部材52の下面と当接することによってピペット5bの上方への移動が停止される。そして、図10に示すように、ピペット5bの先端と蓋101とが当接した後、アーム部5aがさらに下降されると、今度は支持部材52の下面が係止部材67の上端面67bを押下げるようにしてピペット5bが下降されるので、Z駆動モータ73aの駆動力がコイルバネ68に吸収されることなく完全に蓋101に伝達される。これにより、ピペット5bの先端が蓋101を貫通する。ピペット5bの先端が蓋101を貫通した後、アーム部5a(ピペット5b)の下降量が所定量(距離D12、図15参照)になると下降が停止される。
【0093】
ステップ21において、主制御部20により、アーム部5aが停止したか否かが判断される。駆動命令に基づき所定量(距離D12、図15参照)の下降が完了すると、アーム部5aの下降が停止されるとともに、副制御部80から主制御部20に駆動停止報告が送信される。主制御部20が駆動停止報告を受信すると、ステップ22に進む。
【0094】
ステップS22では、液面センサ56がオンされる。すなわち、図4に示すように、Zモータ制御回路82から出力されるオン切替信号に基づき、スイッチ回路83により液面センサ56の検知信号(リミット信号)がZモータ制御回路82へ出力されるように切り替えられる(液面センサオン)。
【0095】
次に、図12のステップS23において、Z駆動モータ73aが駆動され、アーム部5aの下降が開始される。この際、主制御部20(CPU21)からピペット5bの先端が検体容器100の底部近傍(下限位置)に到達するまでの所定量(距離D13、図15参照)まで下降するように駆動命令が出力される。
【0096】
次に、ステップS24において、主制御部20により、アーム部5aが停止したか否かが判断される。ピペット5bの先端が検体(液面)に到達すると液面センサ56から検知信号(リミット信号)が出力され、アーム部5aの下降が停止されるとともに、主制御部20に駆動停止報告が送信される。一方、液面が検知されないまま所定量(距離D13、図15参照)下降した場合には、アーム部5aの下降が停止されるとともに、主制御部20にエラー報告が送信される。駆動停止報告またはエラー報告に基づいてアーム部5aの停止が確認されると、ステップS25に進む。
【0097】
ステップS25では、主制御部20により、エラーが発生したか否かが判断される。エラー報告に基づき、主制御部20によりエラーが発生したと判断された場合には、ステップS26に進む。つまり、液面が検知されないまま所定量(距離D13、図15参照)下降して下限位置まで到達した場合には、吸引対象の検体容器100内に検体が存在しないことになる。このため、検体吸引を行うことなく、ステップS26においてアーム部5aが上限位置まで上昇される。アーム部5aの上昇が完了すると、ステップS27に進み、制御装置3の表示部3bに、「検体がありません」と表示(エラー出力)され、吸引対象の検体容器100内に検体が存在しない旨が通知される。その後、ステップS28において、主制御部20により、制御装置3からのユーザの操作に基づく再試行の命令が受信されたか否かが判断される。再試行命令が送信されると、ステップS11に戻り検体吸引動作が再開される。
【0098】
一方、液面センサ56の検知信号(リミット信号)に基づいてアーム部5aが停止され、主制御部20に駆動停止報告が送信された場合には、図12のステップS25においてエラーなしと判断され、ステップS29に進む。ステップS29では、主制御部20(CPU21)から検体の吸引量に対応した所定量(距離D14、図15参照)だけ下降するように駆動命令が出力される。この駆動命令に基づき、Z駆動モータ73aが駆動され、アーム部5aの下降が開始される。
【0099】
そして、ステップS30において、液面から検体の吸引量に対応した所定量(距離D14、図15参照)だけ下降した位置で検体の吸引が行われる。すなわち、シリンジモータ74cが駆動され、ピペット5bから検体が吸引される。これにより、第1検体分注アーム5により所定量の検体が吸引される。その後、ステップS31に進み、アーム部5aが上限位置まで上昇され、検体吸引動作が終了する。この後、図11のステップS3以降の動作に移行する。
【0100】
このようにして、蓋101を有する検体容器100に対して検体吸引が行われる。
【0101】
次に、図1、図4、図5、図10、図11、図13、図14および図16を参照して、図11のステップS2における蓋101のない検体容器100に対する検体吸引処理(蓋なしの場合)について説明する。
【0102】
図13に示すように、蓋なしの場合には、ステップS41において、衝突センサ55(図4参照)がオンされる。また、ステップS42において、液面センサ56(図4参照)がオフされる。
【0103】
次に、ステップS421において、図示しないモータが駆動されることにより、洗浄部48が所定量だけ下降する。なお、蓋の有無によって検体容器100の高さが異なる。そのため、蓋ありの場合では、洗浄部48の下降により蓋101が下向きに押さえつけられるが、蓋なしの場合では、検体容器100の上端より上方の位置で洗浄部48が停止する(図16参照)。
【0104】
次に、ステップS43において、Z駆動モータ73aが駆動され、アーム部5aの下降が開始される。この際、主制御部20(CPU21)からピペット5bの先端がピペット洗浄部48の通路に侵入するための所定量(距離D21、図16参照)だけ下降するように駆動命令が出力される。
【0105】
次に、ステップS44において、主制御部20により、アーム部5aが停止したか否かが判断される。所定量(距離D21、図16参照)の下降が完了するとアーム部5aの下降が停止されるとともに、主制御部20に駆動停止報告が送信される。また、ピペット5bの先端が物体と当接した場合(図10参照)には、衝突センサ55からリミット信号が出力される。これにより、アーム部5aの下降が停止されるとともに、エラー報告が主制御部20に対して出力される。駆動停止報告またはエラー報告に基づいてアーム部5aの停止が確認されると、ステップS45に進む。
【0106】
ステップS45では、主制御部20により、エラーが発生したか否かが判断される。副制御部80からエラー報告を受信した場合には、ステップS46に進み、アーム部5aが上限位置まで上昇される。そして、ステップS47において制御装置3の表示部3b(図1参照)に、ピペット5bの衝突が検知された旨が表示(エラー出力)される。その後、ステップS48において、主制御部20により、制御装置3からのユーザの操作に基づく再試行の命令が受信されたか否かが判断され、再試行命令が送信されると、ステップS41に戻り検体吸引動作が再開される。
【0107】
一方、主制御部20に駆動停止報告が送信された場合には、ステップS45でエラーなしと判断され、ステップS49に進む。ここで、蓋なしの場合にはピペット5bにより蓋101を貫通する必要がないので、衝突センサ55は常時オン状態にあり、衝突センサ55の検知結果に基づく動作制御が常時行われる。また、検体容器100の蓋101(図14参照)がないため、ピペット洗浄部48を通過した後、直ちに液面検知動作が行われる。したがって、ステップS49において、液面センサ56がオンされる。
【0108】
次に、ステップS50において、アーム部5aの下降が開始される。この際、主制御部20(CPU21)からピペット5bの先端が検体容器100の底部近傍(下限位置)に到達するまでの所定量(距離D22、図16参照)まで下降するように駆動命令が出力される。
【0109】
次に、ステップS51において、主制御部20により、アーム部5aが停止したか否かが判断される。ピペット5bの先端が検体(液面)に到達すると液面センサ56から検知信号(リミット信号)が出力され、アーム部5aの下降が停止されるとともに、主制御部20に駆動停止報告が送信される。一方、液面が検知されないまま所定量(距離D22、図16参照)下降した場合には、アーム部5aの下降が停止されるとともに、主制御部20にエラー報告が送信される。駆動停止報告またはエラー報告に基づいてアーム部5aの停止が確認されると、ステップS52に進む。
【0110】
ステップS52では、主制御部20により、エラーが発生したか否かが判断される。液面が検知されないまま所定量(距離D22)下降して下限位置まで到達した場合には、エラー報告に基づき主制御部20によりエラーが発生したと判断され、ステップS53に進む。そして、ステップS53においてアーム部5aが上限位置まで上昇され、ステップS54に進む。ステップS54において、制御装置3の表示部3b(図1参照)に、「検体がありません」と表示(エラー出力)され、吸引対象の検体容器100内に検体が存在しない旨が通知される。その後、ステップS55において、主制御部20により、制御装置3からのユーザの操作に基づく再試行の命令が受信されたか否かが判断される。再試行命令が送信されると、ステップS41に戻り検体吸引動作が再開される。
【0111】
一方、液面センサ56の検知信号(リミット信号)に基づいてアーム部5aが停止された場合には、ステップS52においてエラーなしと判断されてステップS56に進む。ステップS56では、検体の吸引量に対応した所定量(距離D23、図16参照)だけ下降するようにZ駆動モータ73aが駆動され、アーム部5aの下降が開始される。
【0112】
そして、ステップS57において、液面から検体の吸引量に対応した所定量(距離D23、図16参照)だけ下降した位置で検体の吸引が行われる。その後、ステップS58に進み、アーム部5aが上限位置まで上昇され、検体吸引動作が終了する。この後、図11のステップS3以降の動作に移行する。
【0113】
このようにして、蓋101のない検体容器100に対して検体吸引が行われる。
【0114】
本実施形態では、上記のように、ピペット5bが障害物に衝突したことを検知可能な衝突センサ55と、蓋検知部46により蓋101が検知された検体容器100から検体を吸引する場合、検体容器100の蓋101より上方の所定高さ(距離D11、図15参照)までピペット5bを下降させ、ピペット5bが所定高さ(距離D11)まで下降した後は、衝突センサ55がピペット5bの衝突を検知したか否かに関わらずにピペット5bを下降させて蓋101を貫通させるようにZ駆動モータ73aを制御する副制御部80とを設ける。このように構成することによって、蓋101を有する検体容器100から検体を吸引する場合、蓋101の上方の所定高さ(距離D11)までピペット5bが下降するまでの間にピペット5bと障害物とが衝突したときには、ピペット5bの下降を停止させてピペット5bの破損を防止することができる。そして、所定高さ(距離D11)からさらにピペット5bを下降させるときには、衝突センサ55がピペット5bの衝突を検知したか否かに関わらずにピペット5bを下降させるため、ピペット5bが蓋101に衝突してもそのままピペット5bを下降させ蓋101を貫通させることができる。したがって、衝突センサ55に外力がかからないようにするための複雑な機構を設けることなく、簡素な構成とすることができる。これにより、簡易な構成でピペット5bの破損を防ぎつつ、ピペット5bの適切な下降・吸引動作を行うことができる。
【0115】
また、本実施形態では、上記のように、副制御部80(Zモータ制御回路82)は、蓋検知部46により蓋101が検知されなかった検体容器100から検体を吸引する場合、衝突センサ55によってピペット5bの衝突が検知されたときに下降を停止するようにZ駆動モータ73aを制御する。このように構成することによって、障害物とピペット5bとが衝突することによるピペット5bの破損を防止しながら、蓋を有さない検体容器100(図16参照)から検体を吸引することができる。
【0116】
また、本実施形態では、上記のように、衝突センサ55がピペット5bの衝突を検知したか否かに関わらずにピペット5bを下降させる際、衝突センサ55からZモータ制御回路82への検知信号の出力がスイッチ回路83により遮断される。このように構成することによって、検知信号を遮断するという簡素な信号処理により、容易に、衝突センサ55がピペット5bの衝突を検知したか否かに関わらずにピペット5bを下降させる構成を実現することができる。
【0117】
また、本実施形態では、上記のように、衝突センサ55がピペット5bの衝突を検知したか否かに関わらずにピペット5bを下降させる際、副制御部80(Zモータ制御回路82)は、主制御部20からの命令に応じて検知信号をZモータ制御回路82へ出力しないようにスイッチ回路83を切り替える。このように構成することによって、スイッチ回路83を切り替えるのみで検知信号(リミット信号)を遮断することができる。これにより、電子回路レベルの設計で衝突センサ55がピペット5bの衝突を検知したか否かに関わらずにピペット5bを下降させる構成を実現することができる。
【0118】
また、本実施形態では、上記のように、Zモータ制御回路82は、衝突センサ55から検知信号(リミット信号)が入力されたときにパルス信号の出力を停止する。このように構成することによって、衝突センサ55から検知信号が入力されたときにZモータ制御回路82がパルス信号の出力を停止するため、ピペット5bが蓋101以外の障害物に衝突したとき、ソフトウェア(ソフトウェアを実行する主制御部20)による判断を待たずにZモータ制御回路82により即座にピペット5bの下降を停止することができる。ゆえに、ピペット5bが蓋101以外の障害物に衝突したときのピペット5bの破損をより確実に防止することができる。
【0119】
また、本実施形態では、上記のように、ピペット5bの先端がピペット洗浄部48の吸引管通路48aに進入する所定高さ(D11、図15参照)まで、衝突センサ55をオンにしたままピペット5bを下降させる(図12のステップS13およびS14参照)。このように構成することによって、何らかの原因によりピペット5bが検体容器100の蓋101に対して正確に位置づけられていない場合には、ピペット5bはピペット洗浄部48の吸引管通路48aに進入できずに通路の周縁に衝突し、衝突センサ55による検知結果に基づいてピペット5bの下降が停止する。よって、ピペット5bが正確に位置づけられていないまま衝突センサ55の検知結果の基づかずにピペット5bが下降することによるピペット5bの破損を防止することができる。
【0120】
また、本実施形態では、上記のように、蓋検知部46により蓋101が検知された検体容器100から検体を吸引する場合、制御部3aが、ピペット洗浄部48によって検体容器100の蓋101を下向きに押さえるようにピペット洗浄部48を下降させる。このように構成することによって、ピペット洗浄部48と検体容器100の蓋101までの距離を限りなく小さくすることができる。ゆえに、衝突センサ55の検知結果に基づかずにピペット5bを下降させた場合に、何らかの原因でピペット5bが蓋以外の障害物と衝突する可能性を低減させることができる。さらに、検体容器100の蓋101を下向きに押さえることにより、蓋101を貫通するときの検体容器100のぐらつきを抑制することができ、かつ、蓋101を貫通したピペット5bを引き抜くときの検体容器100の浮き上がりを抑制することができる。
【0121】
また、本実施形態では、上記のように、主制御部20は、液面センサ56がピペット5bの液面への到達を検知したとき、ピペット5bがさらに所定量(距離D14またはD23、図15および図16参照)下降するようにZ駆動モータ73aを制御し、ピペット5bが所定量(距離D14またはD23)下降したのち検体を吸引するようにシリンジユニット74を制御する。このように構成することによって、液面より所定量(距離D14またはD23)下降したところで検体を吸引することができる。液面より所定量(距離D14またはD23)下降したところで検体を吸引することにより、液面から浅い位置で吸引を開始することによる空吸い(空気を吸引すること)を未然に防止し、確実に検体を吸引することができる。
【0122】
また、本実施形態では、上記のように、副制御部80(Zモータ制御回路82)は、ピペット5bの先端がピペット洗浄部48を通過するまで、液面センサ56の検知結果に関わらずにピペット5bが下降するようにZ駆動モータ73aを制御する。このように構成することによって、ピペット洗浄部48に洗浄液が残存した場合であっても、ピペット5bがピペット洗浄部48の通路を通過するときに液面センサ56が残存した洗浄液を検知することによる誤検知を防止することができる。
【0123】
また、本実施形態では、上記のように、衝突センサ55は、ピペット5bが支持部材52に対して相対的に上方に移動したとき、ピペット5bの衝突を検知する。このように構成することによって、ピペット5bは、物理的に障害物に衝突しない限り支持部材52に対して上方に移動することはないため、このような構成によれば、ピペット5bが障害物に衝突したことを確実に検知することができる。
【0124】
また、本実施形態では、上記のように、ピペット5bが支持部材52に対して上方に移動することにより、衝突センサ55と被検知部材65がとが所定の位置関係になくなったとき(被検知部材65の検知片65aが衝突センサ55を遮光したとき)、衝突センサ55がピペット5bの衝突を検知する。このように構成することによって、簡素な構成によりピペット5bの上方への移動を確実に検知して、ピペット5bの衝突を検知することができる。
【0125】
また、本実施形態では、上記のように、ピペット5bが支持部材52に対して相対的に上方へ移動したとき、支持部材52に対して下向きの力をピペット5bに付与するコイルバネ68を設ける。このように構成することによって、ピペット5bが障害物に衝突することによりピペット5bが支持部材52に対して上方に移動したとしても、ピペット5bが障害物から引き離されたときには、コイルバネ68によってピペット5bを衝突前の位置に自然復帰させることができる。
【0126】
また、本実施形態では、上記のように、ピペット5bは、支持部材52に対する上方への移動が係止部材67によって規制された状態で蓋101を貫通する。このように構成することによって、ピペット5bを支持部材52に対して上昇させるように構成した場合においても、ピペット5bのぐらつきを抑えつつ、検体容器100の蓋101を貫通させる際に、ピペット5bにZ駆動モータ73aの駆動力を十分に伝達することができる。
【0127】
また、本実施形態では、上記のように、検体容器100を保持するラック110を搬送するラック搬送部42を設け、蓋検知部46は、受光部46bにおいて発光部46aからの光が受光されたか否かに基づいて、検体容器100の蓋101を検知する。このように構成することによって、ラック110を搬送しながら、ラック110に保持された検体容器100の蓋101を検知することができる。これにより、検体容器100の蓋101の有無を迅速に判断することが可能になる。
【0128】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0129】
たとえば、上記実施形態では、保持部材61、摺動部材64、係止部材67およびスペーサ69を用いてピペット5bを支持部材52に取り付けるとともに、これらの部材が支持部材52に対してピペット5bと一体的に上昇するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ピペットを支持部材に対して上昇可能に支持されるように構成すれば、保持部材61、摺動部材64、係止部材67およびスペーサ69を用いる構成とは異なる構成を用いてもよい。
【0130】
また、上記実施形態では、本発明の弾性部材の一例として、コイルバネ68を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ゴム緩衝材などのコイルバネとは異なる弾性部材を設けてもよい。
【0131】
また、上記実施形態では、ステッピングモータにより支持部材52(アーム部5a)を上下移動させるように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ステッピングモータ以外のサーボモータなどを用いて支持部材を上下移動させるように構成してもよい。
【0132】
また、上記実施形態では、摺動部材64に被検知部材65を設け、光学式の衝突センサ55が被検知部材65の検知片65aを検知することによりピペット5bの上昇を検知するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば摺動部材に機械式スイッチを設けて、被検知部材を設けることなくピペットの上昇を検知するように構成してもよい。
【0133】
また、上記実施形態では、副制御部80(Zモータ制御回路82)を衝突センサ55の検知結果(リミット信号)に基づいてZ駆動モータ73aを停止させるように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、衝突センサの検知結果(リミット信号)に基づいてZ駆動モータを逆方向に僅かに駆動させることにより、ピペットの先端が物体と当接したときに僅かにピペット(支持部材)を上昇させるように制御してもよい。
【0134】
また、上記実施形態では、検体容器100の蓋101の貫通時に、スイッチ回路83を用いて衝突センサ55の検知信号(リミット信号)の出力を遮断することによって、衝突センサ55がピペット5bの衝突を検知したか否かに関わらずにピペット5bが下降するようZ駆動モータ73aの駆動制御を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、検体容器の蓋の貫通時に、衝突センサ自体をオフする(衝突センサへの電力供給を停止する)ことによって、衝突センサがピペットの衝突を検知したか否かに関わらずピペット5bが下降するようZ駆動モータの駆動制御を行うように構成してもよい。
【0135】
同様に、上記実施形態では、検体容器100の蓋101の貫通時に、スイッチ回路83を用いてオン状態の液面センサ56の検知信号(リミット信号)の出力を遮断することによって、液面センサ56がピペット5bの液面への到達を検知したか否かに関わらずにZピペット5bが下降するよう駆動モータ73aの駆動制御を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、検体容器の蓋の貫通時に、液面センサ自体をオフする(液面センサへの電力供給を停止する)ことによって、液面センサがピペットの液面への到達を検知したか否かに関わらずにピペットが下降するようZ駆動モータの駆動制御を行うように構成してもよい。
【0136】
また、上記実施形態では、測定機構部に主制御部を設けるとともに第1検体分注アームに副制御部を設け、主制御部からの駆動命令に基づいて副制御部が第1検体分注アームの各部(Z駆動モータ、θ駆動モータなど)の駆動制御を行うように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、主制御部が直接第1検体分注アームの各部の駆動制御を行うように構成してもよい。
【符号の説明】
【0137】
1 分析装置
3a 制御部
5 第1検体分注アーム(検体吸引装置)
5b ピペット(吸引管)
20 主制御部(制御部)
42 ラック搬送部(搬送路)
46 蓋検知部
46a 発光部(照射部)
46b 受光部
48 ピペット洗浄部(通過部材、洗浄部)
48a 吸引管通路(通路)
52 支持部材
55 衝突センサ(衝突検知部、検知部)
56 液面センサ(液面検知部)
65 被検知部材(衝突検知部)
67 係止部材(規制部材)
68 コイルバネ(弾性部材)
73a Z駆動モータ(駆動部)
74 シリンジユニット(吸引部)
80 副制御部(制御部)
82 Zモータ制御回路(制御部、駆動部制御回路)
83 スイッチ回路
100 検体容器
101 蓋
110 ラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋を有する検体容器と蓋を有さない検体容器とから検体を吸引可能な検体吸引装置であって、
検体容器の蓋を貫通可能に構成され、検体を吸引するための吸引管と、
検体容器の蓋を検知する蓋検知部と、
前記吸引管を昇降させる駆動部と、
前記吸引管が障害物に衝突したことを検知可能な衝突検知部と、
前記吸引管を下降させるように前記駆動部を制御するとともに、前記衝突検知部が前記吸引管の衝突を検知したときに下降を停止するように前記駆動部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記蓋検知部により蓋が検知された検体容器から検体を吸引する場合、検体容器の蓋より上方の所定高さまで前記吸引管を下降させ、前記吸引管が所定高さまで下降した後は、前記衝突検知部が前記吸引管の衝突を検知したか否かに関わらずに前記吸引管を下降させて蓋を貫通させるように前記駆動部を制御するように構成されている、検体吸引装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記蓋検知部により蓋が検知されなかった検体容器から検体を吸引する場合、前記衝突検知部によって前記吸引管の衝突が検知されたときに下降を停止するように前記駆動部を制御するように構成されている、請求項1に記載の検体吸引装置。
【請求項3】
前記衝突検知部は、前記吸引管が障害物に衝突したときに、前記制御部に対して検知信号を出力可能に構成されており、
前記衝突検知部が前記吸引管の衝突を検知したか否かに関わらずに前記吸引管を下降させる際、前記衝突検知部から前記制御部への検知信号の出力が遮断されるように構成されている、請求項1または2に記載の検体吸引装置。
【請求項4】
前記衝突検知部から検知信号を受け取り、受け取った検知信号を前記制御部へ出力可能なスイッチ回路をさらに含み、
前記スイッチ回路は、前記制御部からの命令に応じて、受け取った検知信号の前記制御部への出力の有無を切り替え可能に構成されており、
前記制御部は、前記衝突検知部が前記吸引管の衝突を検知したか否かに関わらずに前記吸引管を下降させる際、検知信号を前記制御部へ出力しないように前記スイッチ回路を切り替えるように構成されている、請求項3に記載の検体吸引装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記吸引管を下降させる量に応じたパルス信号を前記駆動部に出力する駆動部制御回路を含み、
前記駆動部は、前記駆動部制御回路によって入力されたパルス信号に応じて前記吸引管を下降させるように構成されており、
前記駆動部制御回路は、前記衝突検知部から検知信号が入力されたときにパルス信号の出力を停止するように構成されている、請求項3または4に記載の検体吸引装置。
【請求項6】
前記衝突検知部は、前記吸引管が障害物に衝突したときに、前記制御部に対して検知信号を出力可能に構成されており、前記衝突検知部が前記吸引管の衝突を検知したか否かに関わらずに前記吸引管を下降させる際、検知信号を出力しないように構成されている、請求項1または2に記載の検体吸引装置。
【請求項7】
前記衝突検知部は、前記衝突検知部が前記吸引管の衝突を検知したか否かに関わらずに前記吸引管を下降させる際、前記吸引管の衝突を検知しないように構成されている、請求項6に記載の検体吸引装置。
【請求項8】
前記衝突検知部は、電力が供給されているとき、前記吸引管の衝突を検知するように構成されており、
前記制御部は、前記衝突検知部が前記吸引管の衝突を検知したか否かに関わらずに前記吸引管を下降させる際、前記衝突検知部への電力の供給を停止する制御を行うように構成されている、請求項7に記載の検体吸引装置。
【請求項9】
吸引対象の検体容器の上方に配置され、前記吸引管が通過可能な通路が形成された通過部材をさらに備え、
前記所定高さは、前記吸引管の先端が前記通過部材の通路に進入する高さである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の検体吸引装置。
【請求項10】
前記通過部材は、上下に移動可能に設けられており、
前記制御部は、前記蓋検知部により蓋が検知された検体容器から検体を吸引する場合、前記通過部材によって検体容器の蓋を下向きに押さえるように前記通過部材を下降させるように構成されている、請求項9に記載の検体吸引装置。
【請求項11】
前記吸引管が検体容器に収容された検体の液面に到達したことを検知する液面検知部と、
検体を吸引する吸引部とをさらに備え、
前記制御部は、前記液面検知部が前記吸引管の液面への到達を検知したとき、前記吸引管がさらに所定量下降するように前記駆動部を制御し、前記吸引管が所定量下降したのち検体を吸引するように前記吸引部を制御するように構成されている、請求項9または10に記載の検体吸引装置。
【請求項12】
前記通過部材の通路に挿入された前記吸引管に洗浄液を供給して前記吸引管を洗浄する洗浄部をさらに備え、
前記制御部は、前記吸引管の先端が前記通過部材を通過するまで、前記液面検知部の検知結果に関わらずに前記吸引管が下降するように前記駆動部を制御するように構成されている、請求項11に記載の検体吸引装置。
【請求項13】
前記吸引管が相対的に上方に移動可能な状態で前記吸引管を支持する支持部材をさらに備え、
前記駆動部は、前記支持部材を昇降させることにより前記吸引管を昇降させるように構成されており、
前記衝突検知部は、前記吸引管が前記支持部材に対して相対的に上方に移動したとき、前記吸引管の衝突を検知するように構成されている、請求項1〜12のいずれか1項に記載の検体吸引装置。
【請求項14】
前記衝突検知部は、
前記支持部材に設けられた検知部と、
前記検知部と所定の位置関係となるように前記吸引管に設けられた被検知部材とを含み、
前記吸引管が前記支持部材に対して上方に移動することにより、前記検知部と前記被検知部材とが所定の位置関係になくなったとき、前記吸引管の衝突を検知するように構成されている、請求項13に記載の検体吸引装置。
【請求項15】
前記吸引管が前記支持部材に対して相対的に上方へ移動したとき、前記支持部材に対して下向きの力を前記吸引管に付与する弾性部材をさらに備える、請求項13または14に記載の検体吸引装置。
【請求項16】
前記支持部材に対する前記吸引管の所定量を超える上方への移動を規制する規制部材をさらに備え、
前記吸引管は、前記支持部材に対する上方への移動が前記規制部材によって規制された状態で蓋を貫通するように構成されている、請求項13〜15のいずれか1項に記載の検体吸引装置。
【請求項17】
検体容器を保持するラックを搬送する搬送路をさらに備え、
前記蓋検知部は、前記搬送路上の所定高さに向かって光を照射する照射部と、前記搬送路を挟んで前記照射部からの光を受光する受光部とを含み、前記受光部において前記照射部からの光が受光されたか否かに基づいて、検体容器の蓋を検知するように構成されている、請求項1〜16のいずれか1項に記載の検体吸引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−42294(P2012−42294A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182735(P2010−182735)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】