説明

検体測定装置及び方法

サンプル中のターゲット分子を測定するための装置が開示される。前記装置は、100nmを超える磁気ラベル(1)を含むモイエティ、前記モイエティに特異的に結合される結合表面(12)を含み、前記表面に結合する前記モイエティの量が前記サンプル中の前記ターゲット分子の量を指標し、前記表面に結合された前記モイエティの量を検出するための検出手段(31,31’)を含み、及び前記サンプル中でそれぞれのモイエティの磁気ラベルの凝集を低減させるために塩を含む。前記装置は好ましくはまた、前記結合表面に前記磁気ラベルを引きつけるための磁場生成装置(41)を含む。サンプル中でターゲット分子を測定する方法、及び前記装置とともに使用するための使い捨てカートリッジがまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気及び/又は磁気化可能ラベルを含むモイエティを用いる、サンプル中のターゲット分子の存在を決定する方法に関する。本発明はさらにかかる方法のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医学診断の分野において、唾液、血液、血清、血漿、尿などを含む体液サンプルなどの種々のサンプルにおいて対象となる広い範囲の検体の存在及び濃度を正確に決定できるものであることから、アッセイ系センサ装置は急速に注目度が高くなってきている。
【0003】
このために、蛍光又は化学発光プローブ、発色基質変換のための酵素又は磁気及び/又は磁気化可能粒子などの検出可能なラベルを含むモイエティ(moiety)が提供されており、これは、測定装置の結合表面、例えばセンサに特異的に結合し得るものである。この結合表面に結合する前記モイエティの量は、前記サンプル中に存在する対象検体又はターゲット分子の量を示すものである。というのは、例えば前記モイエティは、いわゆるサンドイッチアッセイなどにおいて、前記検体を介してのみ前記結合表面に結合し得るからであり、前記モイエティは、いわゆる競合アッセイなどにおいて、前記結合表面の限定された数の空間に前記検体と結合競合するからであり、又はいわゆる阻害アッセイなどにおいて、前記検体がまた特異的に前記モイエティと同じエピトープに結合して前記モイエティが前記結合表面へ結合することを阻害するから、である。さらなる知られたアッセイの例は、例えば国際特許出願公開第2007/060601号に開示され、及び他の例も当業者には明らかである。
【0004】
言い換えると、前記ターゲット分子又は前記モイエティのいずれかが、例えば前記装置の結合表面を定める抗体と特異的に結合し、それにより前記検体の濃度が、前記特異的結合形成の際に前記結合表面領域での検出可能なラベルの存在から決定され得る。多くの適切な特異的結合対の候補が自体知られており、通常、レセプタ分子と分子、例えば薬物との間の鍵と鍵穴タイプに基づくものである。このことは、アッセイ系装置を、特定のタンパク質及びその他の生物学的組成物、例えばDNA、RNA、ホルモン、代謝産物、薬物などの存在又は不存在を決定するため、又はタンパク質、ペプチド、プリオン、酵素、アプタマー、リボザイム及びデオキシリボザイムなどの活性及び触媒的分子の活性及び機能を決定するために、特に適したものとする。例えば、免疫アッセイは、さらに診断及び処置を補助するために体液中の特定のタンパク質の特定の量を決定するために使用されている。
【0005】
かかるアッセイ系装置の使用は、医学的診断の分野に有望な新たな機会を与えるものである。例えば医院、病院の病室、救急室及び患者の自宅などの実験室外の環境で迅速に医学診断に使用されるためのハンドヘルドバイオセンサシステムの提供などである。対象物の診断試験の例は、心筋梗塞の診断マーカーである心臓トロポニンI(cTnI)の検出である。
【0006】
理解されるべきことは、迅速性に加えて、かかる診断試験は、ある疾患バイオマーカがピコモル範囲での検出が必要とされるなど、高感度が要求される、ということである。かかる診断試験を実行するための特に有望な装置は、前記結合表面に特異的に結合するための磁気又は磁気化可能粒子でラベル化されたモイエティを用いるものである。というのは、磁場は前記磁気ラベルを前記結合表面へ向かって加速(引きつける)することができ、従って前記モイエティと前記結合表面との間で前記結合反応を加速する。結合していないモイエティを、例えば洗浄又は濯ぐことで除去した後、前記結合表面に結合される前記モイエティの量は、前記結合表面の前記表面の近くに存在する磁気ラベルの量により決定され得る。例えば光反射技術又は磁気検出技術などの方法による。
【0007】
実験室外の環境で試験するために、診断試験がコンパクトで丈夫であることが要求され、かつユーザが補助するステップができるだけ少ないことが要求される。理想的には、ユーザは前記サンプルを使い捨てカートリッジに加えることだけが必要であり、かつ前記診断試験のための全ての試薬が既に前記カートリッジに入れられており、さらに、前記試薬がしばしばドライフォームと参照される固体状態で存在するものである。タンパク質マーカーの検出のため、好ましいサンプルタイプは、血液が全身レベルの直接指標であることから、血液である。多くの場合に、血液はさらに、血球細胞除去処理されて検体試験のために血清又は血漿とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際特許出願公開第2007/060601号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者は、例えば生物学的サンプルに使用される場合には、前記のように試験アッセイでの磁気又は磁気化可能粒子モイエティの使用には問題があることを見出した。前記サンプルで決定されるべき検体の濃度(レベル)に拘わらず、測定値、即ち前記回収率(リカバリ)が低い、ということが見出された。検体の回収率は、前記サンプルの提供者試験体に強く依存し、同様に対象検体のタイプに依存する。前記干渉が無視できる程度の特定の提供者が存在し、また他の提供者には係る効果は顕著である。平均すると、例えば対象検体としての心臓トロポニンIについては全ての提供者サンプルの約15%が、前記アッセイが機能しない顕著な干渉を示す。
【0010】
従って、前記方法及び装置の再現性が損なわれることが見出された。
【0011】
さらに、この問題は、ラベル化モイエティの量を操作又は測定するために磁気駆動を利用するアッセイを阻害する。前記アッセイの間に磁場を適用することは、磁気粒子を強制的に集め得る。このことは、磁気粒子が直径100nmより大きい場合に特にそうである。かかる粒子は磁場がない場合でさえクラスタ化する傾向を持つ。これに代えて又はこれに加えて、磁気粒子及び/又は磁気化可能粒子又はラベルを含むモイエティはサンプルの適用の前に固体形で装置内に堆積されることができ、及び前記装置へ前記流体サンプルが添加される際に再分散されて、前記磁気及び/又は磁気化可能性粒子が最初の塊状状態から分散される。
【0012】
前記の信頼性及び再現性の問題は、独立請求項に定める本発明により低減され得る。従属請求項は有利な実施態様を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに、対象サンプルに塩を添加することが、前記アッセイ方法及びかかるアッセイを実施するための装置に信頼性及び/又は再現性を改善することが見出された。
【0014】
提供者ごとの変動の理由は、例えば血漿及び血清のタンパク質、脂質、電解質、ホルモンなどのサンプルの組成物が実質的に患者ごとに変動するからである、と考えられている。本発明者による種々の提供者サンプルの分析は、血漿又は血清などのサンプル内の、例えばタンパク質は前記粒子の表面に吸収されて、不可逆的な磁気又は磁気化可能粒子間の相互作用を低減することを示唆する。この問題はまた、全血液がサンプルマトリクスとして、「そのまま」の形又は溶解させた形のいずれかとして適用される場合に現れる。塩の添加は、前記結合表面に結合するために存在する前記モイエティの磁気及び/又は磁気化可能ラベルの塊状化を予防するか少なくとも低減させる、と現在考えられている。従って前記濃度に相対するより正確かつ高精度シグナルが結合事象ごとに検出され、再現性及び信頼性について改善される。
【0015】
従って、溶解すると、前記装置へ前記サンプルを添加した後前記サンプルと共に分散された磁気及び/又は磁気化可能粒子の塊状化を低減させる塩を含む装置は、前記説明したように有益である。
【0016】
前記サンプルはあらゆる由来の分析サンプルであって、塩の添加なしで使用されると前記のクラスタ化回収率問題を生じるサンプルであり得る。前記サンプルは、動物又は人間の身体性サンプルであり得る。またはタンパク質及び/又は脂質含有物を含むサンプルであり得る。前記サンプルは、好ましくは唾液、血液、血液血清、血液血漿であり得る。又は前記サンプルはその他の身体からの流体形であり得る。一般的にはかかるサンプルは水系であるが、他の溶媒、例えば標本からの前記サンプルを得た後加えられた溶媒もあり得る。ただし得られたサンプル中の塩の溶解が可能となる必要がある。理解されるべきことは、身体由来ではないが体性流体と同様のクラスタ化成分を含む実験室サンプルもまた、本発明のアッセイ方法で有利に分析され得るということである。
【0017】
前記モイエティは、生物学的物質又はその断片又は細胞などの生物学的要素の部分である検体の指標であり得る。生物学的物質には、DNA、RNA、ホルモン、代謝産物、薬物などが含まれ、又はタンパク質、ペプチド、プリオン、酵素、アプタマー、リボザイム及びデオキシリボザイムなどの活性及び触媒性生体分子の活性度及び機能を決める物質が含まれる。好ましくは前記モイエティは、体性タンパク質及び/又はその断片の存在を指標するものである。前記モイエティは、好ましくは、対象検体と特異的に相互作用するモノ及び/又はポリクローナル抗体である。好ましくは前記モイエティは、心疾患予測をスクリーニングし及び/又は診断し及び/又は決定するために使用され得る検体についての指標となるように選択される。従って、本発明のアッセイは、例えばうっ血性心不全(CHF)の試験に有利であり、これは現在Bタイプ利尿ペプチド(又BNP)又はGC−Bとして知られてる利尿ペプチド(BNP)を指標するモイエティを使用することで診断され、又はproBNPの生物学的不活性のN末端断片であるNT−proBNPを指標するモイエティを使用され得る。また、前記アッセイは、トロポニンI及び/又はTの存在を示すモイエティを用いて心筋梗塞又は心不全を試験するために有利である。さらに、前記モイエティは、副甲状腺ホルモン(PTH)又は上皮小体ホルモンの存在の指標であり、人又は動物の知られた関連する疾患を診断するために使用され得る副甲状腺機能亢進症又は副甲状腺機能低下症を試験するために使用され得る。
【0018】
前記サンプル中に溶解させる塩濃度は、好ましくは0.1〜5モル/Lであることが必要である。というのはこの範囲であれば磁気ラベルの凝集が抑制され得ることが、見出されたからである。
【0019】
前記装置に与えられる塩の量は、ある所定の容量のサンプルチャンバを満たした際に、前記クラスタ化抑制効果を与えるに適する濃度に到達するように、調節され得る。従って前記サンプルチャンバと塩の量は、前記アッセイの間、0.1から5モル/Lの範囲となるような範囲である。
【0020】
適切な塩には、リチウム、ナトリウム又はカリウムなどのアルカリ金属塩が挙げられる。好ましくは塩は、ナトリウム(Na)及び/又はカリウム(K)塩が含まれ、例えば塩化カリウム(KCl)、ヨウ化カリウム(KI)、臭化カリウム(KBr)、塩化ナトリウム(NaCl)、臭化ナトリウム(NaBr)及びそれらの組合せが挙げられる。かかる塩は、最大の改良を与えることが見出された。即ち、磁気及び/又は磁気化可能粒子の凝集化挙動を最も強く低減させる。
【0021】
好ましい実施態様では、KCl及びKBrの組合せが使用される。これは特に対象検体として、心臓トロポニンI、NT−proBNP又は副甲状腺ホルモンを含むサンプル中でクラスタ形成を効果的に低減するものである。
【0022】
又は塩は、カリウムチオシアネート(KSCN)及びグアジニンイソシアネートなどのチオシアネート塩である。かかる塩は、サンプルの挙動、特に血清サンプルの挙動を効果的に改善するものである。血清サンプルの挙動は前記の干渉の影響を強く受けるものである。
【0023】
前記塩及びモイエティは、ドライフォームとして参照される固体形で装置に一緒に入れられ得る。かかる場合に、本発明は特に効果的となる。というのは磁気及び/又は磁気化可能ラベルモイエティを含む装置を長時間保存することが、使用の前及び/又は使用の際に前記ラベルの強い凝集を生じる恐れがあるからである。例えば、前記装置は、前記結合表面を含むサンプルチャンバに接続された入口を有することができ、前記塩は前記入口に置かれる。前記入口は前記サンプルを濾過する濾過手段を含み、前記濾過手段がさらに前記塩を含む。前記磁気ラベルを持つ前記モイエティから上流に前記塩を置くことで、前記塩は、前記サンプルが前記モイエティを含む測定チャンバに到達する前に前記サンプル中に溶解され得る。
【0024】
又は、前記塩及び前記モイエティは一緒に固体形で前記装置内に置かれる。前記塩と前記モイエティを混合し、それを前記装置内の同じ場所に一緒に置くことで、前記サンプル中で前記磁気及び/又は磁気化可能ラベルの凝集がより効果的に抑制される。
【0025】
1つの実施態様では、前記装置は前記サンプルを受ける使い捨てカートリッジであり、ある量の前記塩及び前記モイエティが入れられている。これは、前記カートリッジを受け、前記カートリッジの前記結合表面上の前記モイエティを測定することができる別の装置が使用され得る、という利点を有する。従ってそれぞれのサンプルについて、複数の測定には、前記カートリッジを交換することだけを必要とする。従って、使い捨てカートリッジは前記装置と独立して提供され得る。
【0026】
前記装置は、前記結合表面の存在を決定するための検出手段を含み得る。好ましくは、かかる手段は、光学手段であって、例えば漏れ全反射(frustrated total internal reflection)ユニット、又はその他の顕微鏡ユニットであって、前記結合表面上の磁気及び/又は磁気化粒子を検出可能な手段である。又は、前記検出手段は磁気手段であってよく、それを介して前記結合表面上の磁気及び/又は磁気化ラベルを検出することができる、手段である。
【0027】
前記装置は、前記結合表面上の磁気又は磁気化可能ラベルを引きつけるための磁場発生装置を含む。これは、前記結合表面での前記モイエティの濃度を増加させることで前記結合表面での前記結合反応のために必要な時間を低減する。
【0028】
本発明の他の実施態様により、サンプル中のターゲット分子を、磁気又は磁気化可能ラベルと本発明による前記塩との組合せを用いて測定する方法が提供される。前記方法は、例えば阻害アッセイ、競合アッセイ、サンドイッチアッセイなどの生物学的アッセイ又はその一部であり得る。さらに、前記アッセイは液体又は液化(例えば水に溶解して)生物学的サンプルに向けられ得る。前記本発明の方法の構成は、前記装置についての構成と類似する。本発明の方法は同様の有利な効果を持つ。
【0029】
好ましくは、前記方法はさらに、前記測定の精度をさらに高めるために前記測定ステップに先立って前記結合表面の近くから結合されていない磁気ラベルを除去することを含む。かかる除去は、例えば洗浄又は濯ぎ又は磁気駆動により達成され得る。
【0030】
前記方法は、NT−proBNPを指標するモイエティを用いてうっ血性心不全の診断方法、又は前記モイエティが心臓トロポニンI又はTを指標するように選択される場合には、心筋梗塞の診断方法であり得る。これらの場合のサンプルは好ましくは血液である。かかる診断における決定的なこれらの心臓疾患マーカーの境界レベルは、当技術分野においてよく知られている。前記方法は、前記決定される検体レベルが前記境界レベルと比較され、かかる境界レベルよりも高いか低いかが示されるステップを含む。
【0031】
本発明の実施態様は、添付の図面を参照して、非限定的な例示により、より詳細に説明される。
【0032】
理解されるべきことは、図は模式的にのみ示されており寸法通りではない、ということである。さらに理解されるべきことは、図を通じて同じ参照符号は同じ又は類似の部品を示すために使用される、ということである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明の適用のための適切な装置の1つの非限定的な例を模式的に示す。
【図2】図2は、本発明の1つの実施態様による装置の一側面を模式的に示す。
【図3】図3は、本発明の1つの例示的実施態様による、サンプルへ塩を加える効果を模式的に示す。
【図4】図4は、本発明の他の例示的実施態様による、サンプルへ塩を加える効果を模式的に示す。
【図5】図5は、本発明の他の例示的実施態様による、サンプルへ塩を加える効果を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明では、「ターゲット分子」とは、濃度又は存在を決定されるべき全ての分子であり得る。ターゲット分子の例は、タンパク質、酵素、ホルモン、ペプチド、核酸などの分子ターゲット、及び病原体細胞、細菌細胞及び真菌細胞などの細胞ターゲットである。前記ターゲット分子は、分析されるサンプル中などに存在するか、センサ装置内で例えば前記装置内で起こる反応を介して形成され得る。前記センサが反応をモニタするために使用される場合、前記ターゲットは例えば前記反応の出発物質又は反応生成物であり得る。
【0035】
「溶液中で」とは、反応又はアッセイが液体環境で実施されることを意味する。使用される試薬は前記液体媒体中に溶解する必要はなく、懸濁又は分散状態で存在し得る。
【0036】
選択的結合は、2つのモイエティ(分子)を組合せて形成される。即ちモイエティAとモイエティBとであり、前記2つのモイエティは特異的結合を有し、前記モイエティは他の分子よりも他の前記モイエティとより強く又は好んで結合し、他の分子とはほとんど又は全く交差反応性を示さない。一般に、モイエティAとモイエティBとの特異的結合の結合係数(Ka)は、少なくとも10l/mol、より好ましくは少なくとも1010l/mol、さらに好ましくは1011l/mol、さらに好ましくは少なくとも1012l/mol、特にさらに好ましくは少なくとも1013から1017l/molである。
【0037】
図1は、本発明が適用される装置の一例示的実施態様、ここではマイクロ電子センサ装置を示す。前記装置の中心コンポーネントはキャリア11であり、例えばガラス又はポリスチレンなどの透明プラスチックでできている。前記キャリア11はサンプルチャンバ2の隣に設けられ、サンプルチャンバ2内に、薬物、抗体、DNAなどの検出されるべきターゲット成分を含むサンプル流体が提供され得る。
【0038】
前記サンプルはさらに磁気粒子1、例えば超常磁性ビーズを含む。これらの粒子は通常、抗体などのモイエティ(図示されていない)に結合、例えば接着されており、これは前記キャリア11と前記サンプルチャンバ2の間の境界、いわゆる結合表面12と言われる境界を定める前記表面と結合するためである。この結合表面12は場合により、例えば抗体などのキャプチャ要素でコーティングされ、特異的に前記モイエティと直接的に又はターゲット成分を介して結合し得る。言い換えると、前記結合表面12は全ての適切なアッセイの一部を形成し得るものである。例えばサンドイッチアッセイでは、前記モイエティは前記結合表面に前記ターゲット分子を介して結合する。また競合アッセイでは、前記モイエティは前記結合表面12での結合位置について前記ターゲット分子と競合する。また阻害アッセイでは、前記ターゲット分子が前記モイエティがこれらの結合位置に結合することを阻害する。
【0039】
これらのセンサ装置は、磁場生成装置41、例えばコイルとコアを持つ電磁石を含み、磁場Bを前記結合表面12及び前記サンプルチャンバ2の隣接する空間に制御可能に生成する。この磁場Bに助けられて、磁気粒子1は操作され得る。即ち磁気化され、特に動かされる(磁場勾配が用いられる場合)。従って、例えば、前記表面へ前記磁気粒子1を持つ前記モイエティの結合を加速するために、磁気粒子1を前記表面12に引きつける。
【0040】
前記センサ装置は、さらに光源21、例えば前記キャリア11内へ透過される入力光ビームL1を生成するレーザー又はLEDを含むことができる。前記入力光ビームL1は、前記結合表面12へ全内部反射(TIR)の臨界角θcよりも大きい角度で到達し、従って「出力光ビーム」L2として全内部反射される。前記出力光ビームL2は、他の表面を通って前記キャリア11を出ていく。これが光検出装置31、例えば光ダイオードにより検出される。前記光検出装置31は、前記出力光ビームL2の光の量を決定する(例えば、前記スペクトルの全部又はある部分でのこの光ビームの光強度により表現される)。この測定結果は、前記検出装置31に接続された評価及び記録モジュール32により評価され、及び場合により所定の観察期間にわたりモニタされる。
【0041】
前記光源21において、市販DVDレーザーダイオード(λ=658nm)が使用され得る。コリメータレンズが入力光ビームL1を平行化するために用いられ、例えば0.5mmのピンホール23が前記ビーム直径を低減するために使用され得る。正確な測定のためには非常に安定な光源が必要である。しかし、完全に安定な電源を用いる場合でも、レーザーの温度変化は前記出力を変動させランダムに変化させ得る。
【0042】
この問題に対処するために、前記光源は場合により、前記レーザーの出力レベルをモニタするための組み込み入力光モニタ用ダイオード22を含み得る。前記モニタ用センサ22の出力(ローパスフィルタされている)はその後前記評価モジュール32と結合され得る。前記評価モジュールは前記検出装置31からの前記(ローパスフィルタされた)光学シグナルを前記モニタ用センサ22の出力で割算処理される。シグナル対ノイズ比を改善するために、得られたシグナルは時間平均され得る。前記割算処理は、電源変動によるレーザー出力に変動の効果を除去して安定化電源の必要を除き、同様に温度変動によるレーザー出力の変動の効果を除去してペルチェ素子などの予備的措置の必要を除く。
【0043】
1つの実施態様では、前記レーザー出力自体が測定されず(又は測定されるだけでなく)、前記光源21の最終出力が(もまた)測定される場合に、さらなる改善が達成される。図1に示されるように、前記レーザー出力の一部分がピンホール23を出る。この部分のみが前記キャリア11での実際の測定に使用され、従って前記最も直接の光源シグナルである。明らかにこの部分は前記レーザーの前記出力に関連し、例えば集積モニタ用ダイオード22により決定されるが、前記光路でのいかなる機械的変化又は不安定性により影響は受けない。
【0044】
従って、前記入力光ビームL1の光の量は、前記ピンホール23の後及び/又は前記光源21の最終的な全ての光学コンポーネントの後に測定することが有利である。これは例えば以下の適切な方法で実施され得る。即ち、45度で置かれ得る平行ガラスプレート24を用いることで、又は例えば90%透過/10%反射ビームスプリッタなどのビームスプリッタをピンホール23の後ろに挿入し、前記光ビームの小部分を別の入力光モニタ用センサ22’へ反射させることで、又は前記ピンホール23又は入力光ビームL1の端部に小さいミラーを用いて前記ビームの小部分を検出装置へ反射させることで、などである。
【0045】
図1はまた、選択的な第2の光検出装置31’を示し、これは前記検出装置31に代えて又は加えて粒子1から発光される蛍光を検出するために使用される。この蛍光は前記入力光ビームL1のエバネセンス波により増強されたものである。この蛍光は通常全ての側へ等方的に発光されるので、前記第2の検出装置31’は原理的にあらゆる位置へ、例えばまた結合表面12の上に設けることができる。さらに、前記検出装置31を前記蛍光のサンプリングのために用いることももちろん可能であり、この場合前記蛍光は反射光L2とは例えばスペクトル的に区別され得る。
【0046】
前記記載の装置は、磁気粒子1及びターゲット成分の検出のための光学手段を、非限定的例示の方法によってのみ適用するものである。理解されるべきことは、前記結合表面12に結合される前記ラベル化モイエティの量を検出するための適する全ての技術が使用され得る、ということである。
【0047】
そのような選択的手段の場合に、前記検出技術は、唾液、血液血清、血液血漿などのサンプル流体のバックグラウンドの影響を除去又は少なくとも低減させるために表面特定的である必要がある。これは以下説明される漏れ全内部反射の原理を用いて達成される。
【0048】
屈折についてのスネルの法則によれば、2つの媒体A及びBの境界の法線に関して角度θ及びθを持つ場合には、次の式を満たす。
sinθ=nsinθ
ここでn、nはそれぞれ媒体A及びBの屈折率である。高屈折率(例えばn=2)を持つ媒体A中での光線は、より低い屈折率の媒体、例えば空気(n=1)又は水(n≒1.3)との境界で、角度θよりも小さい角度で前記法線から離れるように屈折される。入射光の一部は前記境界で反射され、入射と同じ角度θを持つ。入射角度θが徐々に増加していくと、屈折角度θは90度になるまで増加する。前記入射に対応する角度は臨界角、θとされ、sinθ=n/nで与えられる。
【0049】
入射角がより大きくなると、全ての光は媒体A(ガラス)内部で反射され、これは「全内部反射」とされる。しかし媒体A(ガラス)と媒体B(空気又は水)の間の境界に非常に接近すると、エバネセンス波が媒体B中に形成され、それは前記表面から離れるにつれて指数関数的に減衰する。
前記表面から距離zの関数として前記場の強度は次のように表される:
【0050】
【数1】

ここでk=2π/λ、θは全反射ビームの入射角、及びnとnはぞれぞれの媒体の屈折率である。
【0051】
波長λの典型的値、例えばλ=650nm及びnA=1.53とnB=1.33とすると、前記場の強度は、約228nmの距離離れた後その始めの値よりもexp(−1)≒0.37へ減少する。このエバネセント波が図1の設定で磁気粒子1などの他の媒体と相互作用する場合、前記入射光の部分が前記サンプル流体内へ結合され(これが、「漏れ全内部反射」とされる)、前記反射強度が減少されることとなる(一方クリーンな境界でかつ相互作用がない場合には反射強度は100%となる)。邪魔物、すなわち前記結合表面12上又は非常に近い(約200nm内)磁気ビーズ(サンプルチャンバ2内のその他の磁気ビーズではなく)の量に依存して、前記反射強度はそれに従い低下する。サンドイッチアッセイの場合、この強度低下は、結合された磁気ビーズの量、従ってターゲット分子の濃度の直接の測定となる。上で説明した約200nmであるエバネセンス波の相互作用距離を典型的抗体、ターゲット分子及び磁気ビーズの大きさと比較すると、前記バックグラウンドの影響は最小となることが明らかである。より長い波長λは前記相互作用距離を増加させるが、前記バックグラウンド流体の影響は非常に小さいものとなる。
【0052】
前記説明される手順は適用される磁場とは関係しない。このことは、リアルタイムで調製、測定及び洗浄ステップを光学的にモニタすることを可能とする。前記モニタされたシグナルはまた、測定を制御し、又は個別のプロセスステップを制御するために使用され得る。
【0053】
典型的応用の材料として、キャリア11の媒体Aはガラス及び/又は通常屈折率1.52である透明プラスチックであり得る。サンプルチャンバ2での媒体Bは、水系であり、1.3に近い屈折率を持つものである。これは臨界角θが60度に対応する。入射角70度は従って、いくらかより大きい屈折率を持つ流体媒体を可能にする実用上の選択である。n=1.52とすると、nは最大1.43まで許容される。より高いnは、より大きいn及び/又はより大きい入射角を必要とする。
【0054】
強調されるべきことは、図1に示される本発明の装置の実施態様は、非限定的に例示する方法でのみ示される。本発明は、全てのアッセイ系センサ装置へ適用されることができ、前記アッセイ系センサ装置が前記アッセイ形成を促進する磁気駆動装置を利用するものである。というのは本発明で対処する前記問題は、例えば検出手段の実施上詳細に拘わらず、かかるセンサ装置に一般的に生じるものであるからである。異なる光学原理を利用する検出手段、例えば蛍光ラベルをさらに含む前記モイエティの場合において蛍光量を検出するように構成される前記検出手段を持つ検出手段、又は非光学原理を利用する検出手段、例えば前記磁気粒子1および生成された磁場との間の相互作用の量を検出するように構成される検出手段が、考えられる。
【0055】
本発明により、前記装置、例えばアッセイ系センサ装置はさらに、好ましくは乾燥形の塩を、前記サンプルチャンバ2内のサンプルを受ける際に前記磁気粒子1の凝集を抑制するために含む。これは、前記結合表面12に結合するための磁気粒子1を含む前記モイエティがまた乾燥形で前記装置に存在する場合に特に関連することである。というのは前記モイエティを前記流体サンプルで湿潤させる際に、既に説明したように磁気粒子の凝集のため前記アッセイが機能しなくなるからである。
【0056】
図2に示されるように、前記サンプルチャンバ2は通常入口52を含み、これはフィルタ53を含む。前記フィルタは、前記磁気ラベル1及び前記結合表面12を含む前記乾燥モイエティに前記サンプルを曝露する前に前記サンプルを濾過するためである。1つの好ましい実施態様では、前記塩51は、前記サンプルチャンバ2内で乾燥形で前記磁気ラベル1を含む前記モイエティと一緒に置かれる。前記塩51の量は、前記流体サンプルを前記入口52を介して前記サンプルチャンバ2へ添加すると、前記サンプル中の前記塩濃度が、0.1から5Mの範囲となるように選択される。前記塩がこの範囲で選択される場合、前記磁気粒子1と前記サンプル内のタンパク質との間に想定される相互作用により磁気粒子1の不可逆的クラスタ化が十分低減される。次のことが見出された。即ち、このクラスタ化を低減する最良の改善は、前記塩と磁気的にラベル化されたモイエティが前記サンプルチャンバ2内で乾燥形で一緒に、即ち混合される場合であり、なぜなら前記サンプル中の前記塩の最終濃度がより好ましく制御されるからである、ということである。
【0057】
又は前記塩51は、前記磁気ラベル1を含む前記モイエティから上流、即ち前記サンプルが前記モイエティで濡れる前に前記塩51を濡らすような位置に置かれ得る。例えば前記塩51は入口52内に置かれるか、又は前記フィルタ53内に置かれ得る。前記フィルタ53は例えば、血液細胞を前記サンプルから濾過するために含まれる。
【0058】
前記サンプルチャンバ2は、本発明の装置に組み込まれた部分であり得る。又は前記サンプルチャンバ2は、この装置の再使用を促進する使い捨てカートリッジであり得る。前記結合表面12は、前記サンプルチャンバ2の一部分であり得る(図1には図示されていない)。
【0059】
既に説明したように、サンプル中の磁気粒子1の非可逆的凝集の量は前記サンプルの組成成分に依存する。特に、血漿サンプルは、血漿提供者間で凝集挙動が大きく変動することが示されている。実験的に次のことが確認された。即ち、Na及びK塩、及び特にそのハロゲン化塩が、サンプルの全範囲について磁気粒子1の望ましくないクラスタ化を効果的に低減する、ということである。さらに、次のことが見出された。即ち、特に磁気粒子を凝集させる傾向がある血漿サンプルについて、KSCN及びグアジミンSCNなどのチオシアネート塩はかかるサンプルの磁気凝集を顕著に低減させる、ということである。
【0060】
しかし理解されるべきことは、他のタイプの塩もまた使用可能である、ということである。例えばMgハロゲン化物はまた、Na及びK塩よりはやや低い程度であるが、高いタンパク質含有量を持つサンプル中で磁気粒子の凝集を顕著に低減させる。
【0061】
また、心臓トロポニン又は副甲状腺ホルモンの存在を決定する場合に、KBr及びKClの混合物が、前記サンプル内の磁気粒子の凝集を特に効果的に低減させることが見出された。
【0062】
本発明は以下の非限定的な実施例により詳細に説明される。理解されるべきことは、ここで選択された実施例で記載されていない本発明の他の実施態様もまた可能である、ということである。
【0063】
実施例1
実験は次のように実施された。すなわち、100%EDTA血漿サンプルに種々の濃度の塩を添加し、そこに5分間磁石を適用した後、形成された粒子凝集サイズが決定された。前記凝集サイズは、光学顕微鏡を用いて確定された。使用された粒子は、ターゲット分子としてトロポニンに対するモノクローナル抗体でコーティングした500nmサイズの超常磁性粒子1であった。実験結果が表Iに示される。
【0064】
【表1】

【0065】
表Iは明らかに次のことを示す。NaCl及びKClを前記サンプルに添加することは、EDTA血漿サンプル内の磁気粒子凝集のクラスタサイズを顕著に低減する。4つ以下の磁気粒子1の小さいクラスタのみが全ての塩濃度で観察された。
【0066】
以下の実験では、異なるタイプの凝集挙動を持つ血漿サンプルへの塩添加の効果が調べられた。3つのタイプの血漿サンプルが使用された;すなわち、磁気粒子1のクラスタ化を実質的に与えない良性サンプル、磁気粒子1の中間的なクラスタ化を与える普通サンプル、及び磁気粒子1の顕著なクラスタ化を与える悪性サンプルである。異なるタイプの血漿サンプルは異なる血漿供与者から得た。
【0067】
実施例2
アッセイは、種々の血漿供与者からのサンプル(良性、普通、悪性)を用いて実施され、心臓トロポニン(cTnI)を500pMスパイクした。実験は使い捨てカートリッジを用いて行った。前記カートリッジには、トレーサであるトロポニン抗体(抗−cTnI)でコーティングされた乾燥の500nmサイズ磁気粒子1と、塩、 4−(2− ヒロドキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、スクロース及びウシ血清アルブミン(BSA)からなる乾燥緩衝剤とが含まれる。試験は異なるタイプの塩で繰り返された。
【0068】
溶液中に与えられた最終塩濃度は3Mであった。前記アッセイは次の磁気駆動プロトコルを用いて行った。即ち1分間の粒子とサンプルのインキュベーション及び4分間の前記センサ表面で粒子のパルス駆動であり、前記センサ表面の上でキャプチャ抗−cTnI抗体が結合される。
【0069】
前記表面へ結合された粒子は、図1の装置について説明されたように漏れ全内部反射の原理を用いて検出される。前記センサのシグナル強度は、結合されていない磁気粒子1をこれらの粒子をセンサ表面から離すように磁力を適用することで除去することで得られた。これらの試験結果は図3に示され、前記センサシグナル強度を、前記良性、普通、悪性の血漿サンプルに添加した塩の濃度の関数として示す。同様に表IIにも示す。
【0070】
【表2】

【0071】
図3及び表IIから、Na及びK塩が全ての血漿タイプのシグナル強度の顕著な改善を与えることが分かる。これは、より多くの磁気ラベル1がcTnIを介して抗−cTnI抗体に結合したことを意味し、磁気粒子1のクラスタ化を抑制することを示すものである。特にKBrは、普通及び悪性血漿にも良好に作用し、塩が添加されない対応するサンプルタイプと比較すると3倍程度の改善が見られる。
【0072】
実施例3
アッセイは、種々の血漿供与者からの良性及び悪性サンプルを用いて実施され、心臓トロポニン(cTnI)を500pMスパイクした。実験は使い捨てカートリッジを用いて行った。前記カートリッジには、トレーサであるトロポニン抗体(抗−cTnI)でコーティングされた乾燥の500nm磁気粒子1と、塩、4−(2−ヒロドキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、スクロース及びウシ血清アルブミン(BSA)からなる乾燥バッファとが含まれる。試験は異なるタイプの塩で繰り返された。溶液中に与えられた最終塩濃度は100mMであった。
【0073】
前記アッセイは次の磁気駆動プロトコルを用いて行った。即ち1分間の粒子とサンプルのインキュベーション及び4分間の前記センサ表面で粒子をパルス駆動することであり、前記センサ表面の上でキャプチャ抗−cTnI抗体が結合される。
【0074】
前記表面へ結合された粒子は、図1の装置について説明されたように漏れ全内部反射の原理を用いて検出される。前記センサのシグナル強度は、結合されていない磁気粒子1をこれらの粒子をセンサ表面から離すように磁力を適用することで除去することで得られた。これらの試験結果は図3に示され、前記センサシグナル強度を、前記良性、悪性の血漿サンプルに添加した塩の濃度の関数として示す。同様に表IIIにも示す。
【0075】
【表3】

【0076】
次のことが明確に示される。即ち、チオシアネート塩、及び特にグアニジンチオシアネート塩が悪性血漿内のセンサシグナル強度を顕著に改善する、ことである。これは、より多くの磁気ラベル1が前記cTnIを介して抗−cTnI抗体に結合されることを意味し、従って磁気粒子1のクラスタ化を低減することを示す。
【0077】
実施例4
アッセイは、種々の血漿提供者(S698、S701、S705、S710)からのサンプル及び500pMの副甲状腺ホルモン(PHF)をスパイクした緩衝液を用いて行った。試験は、使い捨てカートリッジ内で行った。前記カートリッジには、トレーサーとして抗−PHT抗体をコーティングした乾燥500nmサイズ磁気粒子とKCl(1.5M)、HEPES、スクロース及びBSAからなる乾燥緩衝物を含む。コントロールサンプルにKClは添加されていない。それぞれの試験はそれぞれのサンプルについて2回行った。
【0078】
前記アッセイは、2分間前記粒子をサンプルとインキュベーションし、さらに8分間キャプチャ抗−PTH抗体を結合した前記センサ表面の前記粒子をパルス駆動する磁気駆動プロトコルを用いて実施された。前記表面に結合した粒子は、既に説明した漏れ全内部反射を用いて検出された。
【0079】
前記センサのシグナルの強度は、結合していない磁気粒子1を、これらの粒子をセンサ表面から離すように磁力を適用することで得た。これらの実験の結果は図5に示され、1つのサンプルに対して2回の試験による平均センサシグナル強度が、種々の血漿サンプルと緩衝液サンプルに添加された塩の関数として示されおり、表IVにまとめられている。
【0080】
【表4】

【0081】
これらから次のことが分かる。即ち、悪性サンプルS710(このサンプルの小さいシグナル強度から、粒子1がこのサンプル中では強くクラスタ化していることが明らかである)以外の全てのサンプルタイプは、KClの添加がセンサシグナツ強度を顕著に改善すること、である。これは、より多くの磁気ラベル1が、前記抗−PTH抗体に前記PTHを介して前記センサ表面に結合されたことを意味し、このことはこれらのサンプル中で磁気粒子1の阻害クラスタ化を低減することを示す。予想できるように、前記緩衝液でのシグナル強度の改善は、前記緩衝液中のタンパク質の不存在により達成されたものである。これはまた、サンプル中のかかるタンパク質含有量は磁気粒子1の非可逆的凝集の原因であることを明らかに示すものである。
【0082】
前記の心臓トロポニンI又はPTHについての実験で得られたものと同様な改善がまた。実験で使用されたそれぞれの抗体をN−末端proBrain利尿ペプチド(NT−proBNP)と交換した実験でも得られた。従って、本発明は、NT−proBNPの決定に依存するアッセイにおいても同様に有効である。
【0083】
まとめると、前記実験例は、前記サンプルに適切な塩を添加することが、磁気粒子1でラベル化された前記モイエティの凝集挙動を大きく改善する、ということを明らかに示す。
【0084】
強調されるべきことは、前記実験例は本発明の範囲を限定することを意図するものではない、ということであり、かつここでは簡潔性の理由から与えられなかった多くの実験例が存在する、ということである。例えば、凝集挙動の同様の低減は、唾液などの他の高タンパク質含有材料においても観察された。従って、本発明は、唾液中のTHC、モルフィン、メタンフェタミン、アンメタフィン及びコカインなどの薬物の乱用を検出するためのアッセイ系の磁気粒子への応用可能なものである。かかるアッセイにおいて、例えば1MのNaClの添加が磁気粒子1の凝集を顕著に低減させることが見出された。
【0085】
当業者であれば、本発明の記載に基づき、必要な磁気化可能又は磁気粒子に基づくアッセイについてなんら困難なく、本発明の利点を与えるタンパク質及び塩のその他の組合せについて認識することができるはずである。
【0086】
留意すべきことは、前記実施態様は本発明を限定するものではなく、当業者であれば、特許請求の範囲の範囲から離れることなく、多くの変更・変法を設計することができるはずである、ということである。特許請求の範囲において、括弧内の参照符号は特許請求の範囲を限定するように解釈されるべきではない。用語「含む」は、請求項に記載される要素又はステップが複数であることを除外するものではない。要素の前に付される「1つの」はそれが複数であることを除外するものではない。本発明は、いくつかの別々の要素からなるハードウェアの手段で実施され得る。いくつかの手段が列記される装置に係る請求項において、それらの手段のいくつかはハードウェアの1つの事項及び同じ事項により実施され得る。ある手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組合せが有利なものではないということを意味するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルを受ける装置であり、前記装置は:
前記サンプル中に検体の存在を指標するモイエティを含み、前記モイエティは直径が100nmよりも大きい磁気及び/又は磁気化可能ラベルを含み、前記装置がさらに、前記サンプル中に溶解させて前記サンプルと接触する際に前記モイエティの凝集を低減させる量の塩を含む、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であり、前記塩が、前記サンプルを受けた後前記サンプル中に溶解した前記塩の濃度が、0.1から5モル/Lの範囲となる量で存在する、装置。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか1項に記載の装置であり、前記塩が、アルカリ金属塩の群の1以上の塩を含むように選択される、装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置であり、前記塩が、塩化カリウム、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化ナトリウム及びヨウ化ナトリウム及びそれらの組合せを含む群から選択される、装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置であり、前記塩が、臭化カリウムと塩化カリウムの組合せを含む、装置。
【請求項6】
請求項1又は2のいずれか1項に記載の装置であり、前記塩がチオシアネート塩である、装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置であり、前記チオシアネート塩が、カリウムチオシアネート及びグアジニンチオシアネートを含む群から選択される、装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の装置であり、前記モイエティが心臓疾患の指標である、装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の装置であり、前記モイエティが、心臓トロポニンI又はT、NT−proBNP又はPHTの1以上の指標である、モノクローナル及び/又はポリクローナル抗体であるか又は含む、装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の装置であり、前記塩及び前記モイエティの量が、前記装置にサンプルを適用する前に固体物質として前記装置に存在する、装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の装置であり、さらに、サンプルチャンバへ接続されるサンプル入口を含み、前記塩の量が前記入口に置かれる、装置。
【請求項12】
請求項11に記載の装置であり、前記入口が前記サンプルを濾過するためのフィルタ手段を含み、前記フィルタ手段が、前記塩の量を含む、装置。
【請求項13】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の装置であり、さらに前記モイエティを結合するための結合表面及び前記結合したモイエティの存在を検出するための検出手段を含む、装置。
【請求項14】
請求項13に記載の装置であり、さらに、前記磁気及び/又は磁気化可能ラベルを前記結合表面に引きつけるための磁場生成装置を含む、装置。
【請求項15】
サンプル中の検体の存在を決定するための方法であり、前記方法は次のステップ:
磁気及び/又は磁気化可能なラベルを含み、かつ直径が100nmを超える、モイエティを準備し、
前記モイエティを結合するための結合表面を準備し、前記結合されたモイエティが前記サンプル中の検体の存在の指標であり、
前記サンプルを前記モイエティに接触させ、及び前記結合表面上の前記モイエティの存在を測定して前記検体の存在を決定し、及び
前記方法において、前記サンプル中の前記モイエティの凝集を低減するための塩の量を前記サンプル中に、測定前又は少なくとも測定中に溶解させる、方法。
【請求項16】
請求項13に記載の方法であり、前記サンプルが、血液、血液血漿及び血液血清の少なくとも1つを含む、方法。
【請求項17】
請求項15又は16のいずれか1項に記載の方法であり、前記塩が、臭化カリウムと塩化カリウムの組合せを含み、かつ前記モイエティが、心臓トロポニンI又はT、TN−proBNP及び副甲状腺ホルモンの少なくとも1つの存在の指標であるように選択される、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−515956(P2013−515956A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545501(P2012−545501)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/IB2010/055873
【国際公開番号】WO2011/077333
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】