説明

検出のための核酸を調製する方法

1以上のグリコシダーゼを多糖含有サンプルに提供して多糖を分解することによって、検出のために多糖含有サンプルから核酸を調製する方法が提供される。この核酸は、このサンプルからさらに抽出され得る。この方法は、高デンプン含量のサンプルにおいて核酸を検出するために特に有用である。この1以上のグリコシダーゼは、グリコアミラーゼ、枝切り酵素、ヘテロサッカリド分解酵素、および非グルコースホモサッカリド分解酵素からなる群より選択されるグリコシダーゼを含み得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、米国仮出願第60/518,895号(2004年11月10日出願)および同第60/556,584号(2004年3月25日出願)の利益を主張する。米国仮出願第60/518,895号および同第60/556,584号の各々は、それらの全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本願は、多糖含有サンプルにグリコシダーゼを提供することによって、このサンプルから核酸を調製するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
核酸を検出および操作する現行の方法は、サンプル中の不純物に起因して、頻繁に失敗する。これは、高い多糖含量を有するサンプル(例えば、デンプン含有サンプル)において特に問題である。これらの問題は、非常に少量の核酸を含むサンプルにおいて悪化する。
【0004】
多糖含有サンプル中で核酸を調製することは、食品サンプルおよび病原体中の核酸を検出または操作する場合に特に重要である。このようなサンプルは頻繁に、遺伝子改変された生物体(GMO)を含むか、または製品の完全性もしくは病原体夾雑物について試験する。ヌクレオチドベースの方法による、GMO、病原体夾雑物もしくは他の夾雑物の適切な同定、または製品の同一性は、充分な量の核酸が検出および操作に充分な純度で得られることを必要とする。従来の方法は、多糖含有核酸が非常に少量で検出されることを許容しない。
【0005】
さらに、多糖含有サンプルから核酸を精製する従来方法は頻繁に、毒性のカオトロピック塩として非常に毒性の化学物質(例えば、チオシアン酸グアニジン(GuSCN))を使用する。このような毒性夾雑物は、核酸の下流の操作を阻害し得る。従来の精製方法の毒性を有する化合物を使用しない方法についての甚大な必要性が存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、検出のために、多糖含有サンプル中で核酸を調製するための、方法、組成物およびキットについての、広範囲に認識される必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
これらの必要性を満たすために、出願人は、1以上のグリコシダーゼを多糖含有サンプルに提供してこの多糖を分解することによって、この多糖含有サンプル中での検出のための核酸を調製する方法を見出した。
【0008】
この方法は、1以上のグリコシダーゼを提供した後にこのサンプルからこの核酸を抽出する工程をさらに包含し得る。
【0009】
1以上のグリコシダーゼは、この多糖含有サンプルに提供されて、このサンプル中の多糖を分解する。この1以上のグリコシダーゼは、1以上のグリコアミラーゼ、枝切り酵素、ヘテロサッカリド分解酵素(heterosaccharide degrading enzyme)、または非グルコースホモサッカリド分解酵素を含み得る。この1以上のグリコアミラーゼは、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルカンα1,4−グルコシダーゼ、またはグルカンα1,6−グルコシダーゼを含み得る。
【0010】
核酸を抽出する工程は、この核酸を部分的に精製する工程、および/または単離する工程を包含し得る。この抽出する工程はまた、このサンプルにアルコールを提供することを包含し得る。このアルコールは、エタノール、イソプロパノール、またはそれらの組合せであり得る。
【0011】
本願はまた、多糖含有サンプル中で核酸を検出する方法を包含する。この核酸は、このサンプルに1以上のグリコシダーゼを提供する工程、およびこのサンプルからこの核酸を抽出する工程によって調製される。次いで、この核酸は、検出される。
【0012】
この核酸は、本明細書中で定義したとおりの任意の核酸であり得る。例えば、この核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)であり得る。
【0013】
この多糖は、デンプンであり得る。このサンプルはまた、食品サンプルであり得る。任意の食品は、このサンプルに包含され得る。例えば、この食品サンプルは、コーン、コーンミール、大豆、大豆粉末、小麦粉末、パパイヤ果実、コーンスターチ、トウモロコシ粉末、大豆ミール、コーンチップ、またはマルトデキストリンを包含し得る。この食品サンプルはまた、加工食品サンプルであり得る。
【0014】
この多糖は、検出する前に、1以上のグリコシダーゼを提供した後に、このサンプルから除去され得る。他の細胞成分もまた、このサンプルから除去され得る。このような細胞成分は、細胞膜、細胞タンパク質、または他の細胞破片であり得る。この細胞成分は、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、酢酸アンモニウム、または他の塩をこのサンプルに提供して、この細胞成分を沈澱させることにより除去され得る。
【0015】
核酸はまた、サンプルをカラムに導入することにより、サンプルから取り出され得る。例えば、この核酸は、メッセンジャーリボ核酸(mRNA)であり得、そしてこのカラムは、オリゴデキオシチミジンカラムである。別の例では、この核酸は、配列特異的プローブまたはプライマーを用いて抽出され得る。
【0016】
本願はまた、検出のために多糖含有サンプル中で核酸を調製するためのキットを提供する。このキットは、1以上のグリコシダーゼ、およびこのキットを使用するための指示書を備え得る。この1以上のグリコシダーゼは、1以上のグリコアミラーゼまたは多糖枝切り酵素であり得る。この1以上のグリコアミラーゼは、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルカンα1,4−グルコシダーゼまたはグルカンα1,6−グルコシダーゼを含み得る。このキットはまた、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノールまたはこれらの組合せ)をさらに含み得る。このキットは、カラム、ガラスビーズを含むカラムまたはガラスウールを含むカラムをさらに備え得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(詳細な説明)
本特許出願は、検出のための多糖含有サンプルから核酸を調製する方法、ならびにキットに関する。
【0018】
(一般的技術)
本願の実施は、他に示さない限り、当業者の技術範囲内である、分子生物学の従来技術(組換え技術を含む)、微生物学の従来技術、細胞生物学の従来技術、生化学の従来技術、免疫学の従来技術、タンパク質速度論の従来技術、および質量分析法の従来技術を用いる。このような技術は、例えば以下の文献において充分に説明される:Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版(SambrookおよびRussell,2001)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編,1984);Methods in Molecular Biology,Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis編,1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney編,1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.MatherおよびP.E.Roberts,1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.GriffithsおよびD.G.Newell編,1993−8)J.Wiley and Sons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.MillerおよびM.P.Calos編,1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編,1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction(Mullisら編,1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら編,1991);およびShort Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999);これらの全ては、それらの全体が本明細書中に参考として援用される。さらに、市販のアッセイキットおよび試薬を用いる手順は代表的に、他に注記されない限り、製造業者が規定したプロトコルに従って用いられる。
【0019】
(定義)
「サンプル」とは、任意の種類の液体サンプル(例えば、水、緩衝液、溶液または懸濁物)または任意の種類の固体サンプル(例えば、細胞、食品、水、空気、埃、穀粒または種子)をいうがこれらに限定されない。
【0020】
「核酸」とは、デオキシリボヌクレオチド(DNA)、リボヌクレオチド(RNA)またはそれらのアナログを包含する、任意の長さの核酸の鎖をいう。核酸は、三次元構造を有し得、そして既知または未知の任意の機能を果たし得る。以下は、核酸の非限定的な例である:遺伝子または遺伝子フラグメント、エキソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、およびプライマー。核酸は、改変ヌクレオチド(例えば、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログ)を含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造に対する改変は、核酸ポリマーのアセンブリの前または後に付与され得る。核酸の配列は、非ヌクレオチド成分によって中断され得る。核酸は、(例えば、標識成分との結合によって)重合後にさらに改変され得る。
【0021】
「多糖」とは、一緒に共有結合して直鎖または分枝鎖となる単糖または単糖誘導体の任意の組合せをいう。多糖は、ホモ多糖(homopolysaccharide)(任意の1種の単糖のみを含む)またはヘテロサッカリド(heterosaccharide)(2以上の種類の単糖を含む)であり得る。デンプンは、多糖の一例である。本明細書中で用いられる場合、「多糖」および「オリゴ糖」は、交換可能に用いられる。
【0022】
「グリコシダーゼ」とは、任意の多糖分解酵素をいう。「分解する」とは、多糖の単糖単位または単糖誘導体単位の間の1以上の結合を切断することをいう。
【0023】
「グリコアミラーゼ」とは、グルコースホモ多糖におけるグリコシル結合を加水分解する任意の酵素をいう。本明細書中で用いられる場合、グリコアミラーゼとは、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルカンα1,4−グルコシダーゼ、およびグルカンα1,6−グルコシダーゼを包含する。
【0024】
「抽出する」とは、1以上のクラスの化合物をサンプルから取り出すことをいう。例えば、「抽出する」とは、このサンプルにアルコールを導入すること、カラムベースの精製、または配列特異的ハイブリダイゼーションを包含し得る。
【0025】
「部分的に精製する」とは、1以上の化合物または化合物のクラスを化合物の混合物または化合物のクラスの混合物から取り出すことをいう。例えば、「核酸を部分的に精製する」とは、1以上の核酸を核酸または非核酸の混合物から取り出すことをいう。部分的に精製された化合物は、さらなる化合物を付随し得る。
【0026】
「単離する」とは、1つの化合物または化合物のクラスを化合物の混合物または化合物のクラスの混合物から分離することをいう。例えば、「核酸を単離する」とは、1種の核酸を、核酸および非核酸成分の混合物から取り出すことをいう。
【0027】
「高デンプン含量」とは、約60重量%よりも多くのデンプンまたは複合炭水化物(complex carbohydrate)を含むサンプルをいう。「高デンプン含量」を有するサンプルの例としては、粉、穀粒、穀粒ミール(grain meal)、ポテトおよび他の塊茎のサンプルが挙げられるがこれらに限定されない。他の例としては、加工食品製品(例えば、朝食用シリアル)における高デンプン化合物のブレンドが挙げられ得る。
【0028】
(核酸を調製する方法)
検出のために多糖含有サンプルから核酸を調製する方法が提供する。1以上のグリコシダーゼが、この多糖含有サンプルに添加されてその中の多糖が分解される。次いで、この核酸が抽出され得る。次いで、この核酸は、検出され得るか、増幅され得るか、ハイブリダイゼーションベースの方法によって同定され得るか、さもなければ操作され得る。
【0029】
核酸を調製する従来の方法では、多糖(例えば、デンプン)はしばしば、核酸と共沈する。多糖が核酸と共沈する場合、核酸を増幅方法(例えば、PCR)によって、または他の検出方法(例えば、ハイブリダイゼーション検出)によって、操作することは困難である。多糖はまた、制限エンドヌクレアーゼを用いた消化および他の酵素操作を阻害し得る。多糖が本出願の方法によりグリコシダーゼによって分解される場合、この核酸は、容易に検出され得るか、増幅され得るかまたは消化され得る。
【0030】
(グリコシダーゼ)
グリコシダーゼは、例えば、グリコアミラーゼ、枝切り酵素、ヘテロサッカリド分解酵素、または非グルコースホモ多糖分解酵素であり得る。
【0031】
(グリコアミラーゼ)
グリコアミラーゼは、核酸含有サンプル中の多糖を分解するために用いられる。本明細書中で用いられる場合、「グリコアミラーゼ」は、多糖中の任意のグリコシル結合を加水分解する任意の酵素を包含する。グリコアミラーゼは、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルカンα1,4−グルコシダーゼ、およびグルカンα1,6−グルコシダーゼを包含する。
【0032】
α−アミラーゼは、オリゴ糖および多糖中の1,4−α−グルコシド結合のエンド型加水分解に関与する酵素である。この酵素はまた、1,4−α−D−グルカングルカノヒドロラーゼおよびグリコーゲン分解酵素としても公知である。この酵素は、デンプン、グリコーゲンならびに関連する多糖およびオリゴ糖に作用する。α−アミラーゼの例は、例えば、Biomolecular Structure and Modeling Group,Department of Biochemistry and Molecular Biology,University College,Londonのウェブサイトにおいて見出され得る。他の例は、例えば、Sauer J,Sigurskjold BW,Christensen U,Frandsen TP,Mirgorodskaya E,Harrison M,Roepstorff P,Svensson B.,Glucoamylase:structure/function relationships,and protein engineering,Biochem Biophys Acta.2000年12月29日;1543(2):275−293,およびCoutinho PM,Reilly PJ.,Structure−function relationships in the catalytic and starch binding domains of glucoamylase,Protein Eng.1994年3月;7(3):393−400において考察される。
【0033】
β−アミラーゼは、鎖の非還元末端から連続するマルトース単位を除去するような、多糖における1,4−α−グルコシド結合の加水分解に関与する酵素である。この酵素はまた、1,4−α−D−グルカンマルトヒドロラーゼ、サッカロゲンアミラーゼまたはグリコーゲン分解酵素としても公知である。β−アミラーゼは、デンプン、グリコーゲンならびに関連する多糖およびオリゴ糖に作用して、転化によってβ−マルトースを生成する。β−アミラーゼの例は、例えば、Biomolecular Structure and Modeling Group,Department of Biochemistry and Molecular Biology,University College,Londonのウェブサイトにおいて見出され得る。他の例は、例えば、Sauer J.Sigurskjold,Christensen Frandsen,Mirgorodskaya Harrison,Roepstorff Svensson,Glucoamylase:structure/function relationships,and protein engineering, Biochem Biophys Acta.2000年12月29日;1543(2):275−293、およびCoutinho Reilly,Structure−function relationships in the catalytic and starch binding domains of glucoamylase,Protein Eng.1994年3月;7(3):393−400において考察される。
【0034】
グルカンα1,4−グルコシダーゼは、β−D−グルコースの放出を伴って、鎖の非還元末端から連続して末端1,4−結合α−D−グルコース残基を加水分解することに関与する酵素である。この酵素はまた、グルコアミラーゼ、1,4−α−D−グルカングルコヒドロラーゼ、アミログルコシダーゼ、γ−アミラーゼ、リソソームα−グルコシダーゼ、およびエキソ1,4−α−グルコシダーゼとしても公知である。いくつかの形態のこの酵素は、順番の次の結合が1,4−である場合、1,6−α−D−グルコシド結合を迅速に加水分解し得、そしてこの酵素のいくつかの調製物は、他の多糖において1,6−α−D−グルコシド結合および1,3−α−D−グルコシド結合を加水分解する。グルカンα1,4−グルコシダーゼの例は、例えば、Biomolecular Structure and Modeling Group,Department of Biochemistry and Molecular Biology,University College,Londonのウェブサイトにおいて見出され得る。他の例は、例えば、Sauer Sigurskjold,Christensen Frandsen,Mirgorodskaya Harrison,Roepstorff Svensson,Glucoamylase:structure/function relationships,and protein erigineering,Biochem Biophys Acta.2000年12月29日;1543(2):275−293、およびCoutinho Reilly,Structure−function relationships in the catalytic and starch binding domains of glucoamylase,Protein Eng.1994年3月;7(3):393−400において考察される。
【0035】
(多糖枝切り酵素)
多糖枝切り酵素は、多糖中のα−1,6結合を切断する。多糖枝切り酵素としては、当該分野で公知の任意の枝切り酵素が挙げられる。枝切り酵素としては、2つの一般的カテゴリーが挙げられる:イソアミラーゼおよびプルラナーゼ(例えば、R酵素)。プルラナーゼは、多糖中のα1,6−結合を加水分解し得る。これらの分子としては、酵母グルカンプルランR酵素が挙げられ、例えば、Nakamura Y,Umemoto T,Ogata N,Kuboki Y,Yano M,Sasaki T(1996);Starch debranching enzyme(R−enzyme or pullulanase)from developing rice endosperm:purification,cDNA and chromosomal localization of the gene;Planta 199:209−218,Nakamura Y.Umemoto T.Takahata Y.Komae K.Amano E.Satoh H(1996);およびChanges in structure of starch and enzyme activities affected by sugary mutations in developing rice endosperm:possible role of starch debranching enzyme(R−enzyme)in amylopectin biosynthesis.Physiol Plant 97:491 498)において考察される。
【0036】
(ヘテロサッカリド分解酵素および非グルコースホモサッカリド分解酵素)
グリコシダーゼはまた、ヘテロサッカリド分解酵素および非グルコースホモ多糖分解酵素を包含する。これらの酵素は、当該分野で公知の任意のヘテロサッカリド分解酵素または非グルコースホモ多糖分解酵素を包含し得る。ヘテロサッカリド分解酵素としては、キシロシダーゼが挙げられるがこれに限定されない。非グルコースまたは非グルコースホモ多糖分解酵素としては、例えば、グリクロニダーゼが挙げられる。
【0037】
グリコシダーゼは、種々の供給源(細菌、植物および真菌、ならびに動物が挙げられる)から入手され得る。細菌供給源の例としては、Bacillus(例えば、Bacillus subtilis、Bacillus licheniformis、Bacillus amyloliquefaciens、およびBacillus stearothermophilus)、Streptomyces(例えば、Streptomyces tendae)、Thermoanaerobacteria、Alteromonas haloplanktis、およびPseudoalteromonas haloplanctisが挙げられるがこれらに限定されない。真菌供給源の例としては、Aspergillus niger、Aspergillus oryzae、Aspergillus sp.、およびRhizopus sp.が挙げられるがこれらに限定されない。植物供給源の例としては、オオムギ種子(Hordeum vulgare)、Amaranthus hypochondriacus(オオケタデ)、およびPhaseolus vulgaris(インゲンマメ)が挙げられるがこれらに限定されない。動物供給源としては、哺乳動物(ヒトが挙げられる)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0038】
グリコシダーゼはまた、商業的に獲得され得る。例えば、Aspergillus nigerまたはRhizopus sp.由来のアミログルコシダーゼは、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)、VWR International(Brisbane,CA)、ICN Biomedicals(Costa Mesa,CA)、Neogen(Lexington KY)、およびAmerican Laboratories Inc.(Omaha,NB)から獲得され得る。
【0039】
(A.1以上のグリコシダーゼの提供)
本願の方法では、1以上のグリコシダーゼは、サンプルに提供されて、サンプル中の多糖を分解する。グリコシダーゼは、サンプル中に見出される、核酸(特に、少量の核酸)の精製、検出または増幅を妨害する多糖を分解する。
【0040】
少量の核酸は、約1000ng未満、約500ng未満、約400ng未満、約300mg未満、約200ng未満、約100ng未満、約5ng未満、または約0.1ng未満であり得る。少量の核酸を多数の競合基質(多糖が挙げられる)から抽出することは、しばしば、下流適用には充分でないかもしれない、1マイクロリットルあたり2ng未満の核酸を残す。
【0041】
このサンプルは、少なくとも約10重量%、少なくとも約15重量%、少なくとも約20重量%、少なくとも約25重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約35重量%、少なくとも約40重量%、少なくとも約45重量%、少なくとも約55重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約65重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約75重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約85重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、または少なくとも約100重量%の多糖を含み得る。このサンプルが少なくとも約100重量%の多糖を含む場合、核酸は、痕跡量で存在する。
【0042】
1以上のグリコシダーゼとしては、1以上のグリコアミラーゼ、枝切り酵素、ヘテロサッカリド分解酵素、および非グルコースホモ多糖分解酵素が挙げられ得る。
【0043】
この多糖は、1以上のグリコアミラーゼによって分解され得る。特に、このグリコアミラーゼによって分解される多糖は、デンプンである。デンプンは、植物中に見いだされる栄養貯蔵物であり、ポリマーグルコース鎖である。デンプンは2つの形態で生じる:α−1,4結合のグルコースモノマーのみを含む、アミロース、および30個のα−1, 4グルコース−グルコース結合毎に約1個のα−1,6グルコース−グルコース結合を含む分枝形態である、アミロペクチン。サンプル中に存在するデンプンを分解することにより、核酸が検出され得る。
【0044】
グリコシダーゼは、液体溶液の形態で提供され得る。このグリコシダーゼは、任意の濃度で提供され得る。サンプル中の多糖の濃度が高いほど、添加する必要があるグリコシダーゼの濃度は高くなる。例えば、1単位は、40℃で30分間において、緩衝化1%デンプン溶液から10mgのグルコースを生成する。1単位は、pH6.6および30℃において1分間あたり1mgのデンプンをデキストリン化する。50Uにおいて、500mgの多糖は、10分間で分解される。例えば、核酸含有溶液の溶液1mLあたり50Uの酵素は、ポリヌクレオチドを検出するに充分に多糖を分解する。
【0045】
1以上のグリコシダーゼは、糖を沈澱させる溶液(例えば、酢酸カリウムまたは酢酸ナトリウム)と組み合わせて添加され得る。あるいは、1以上のグリコシダーゼは、高塩濃度による沈澱を回避するために、塩の前に添加され得る。このグリコシダーゼ反応物は、多糖分解の速度を上昇させるために加熱され得る。
【0046】
このサンプルとしては、生物学的実体を含むことが疑われる材料が挙げられる。このサンプルは、このサンプルの供給源に関してもそれを作製する様式に関しても限定される必要はない。一般に、このサンプルは、生物学的サンプルおよび/または環境サンプルであり得る。生物学的サンプルは、ヒトもしくは他の動物、体液、固形組織サンプル、組織培養物もしくはそこから誘導した細胞およびそれらの後代、これらの供給源のいずれかから調製した切片もしくは塗沫標本、または核酸を含む任意の他のサンプルから誘導され得る。好ましい生物学的サンプルは、体液であり、体液としては、尿、血液、脳脊髄液(CSF)、滑液(sinovial fluid)、精液、羊水および唾液が挙げられるがこれらに限定されない。他の種類の生物学的サンプルとしては、食品製品および成分(例えば、シリアル、粉、酪農品目(dairy item)、植物、肉および肉副産物)、ならびに廃棄物が挙げられ得る。環境サンプルは、環境材料に由来し、環境材料としては、土壌、水、汚水、化粧品、農業的および工業的なサンプル、ならびに食品および酪農品の加工機器、装置、器具、使い捨て品目および非使い捨て品目から得られたサンプルが挙げられるがこれらに限定されない。
【0047】
1つの実施形態では、これらのサンプルは、高デンプン含有サンプルである。「高デンプン含量」を有するサンプルの例としては、粉、穀粒、穀粒ミール、デンプン、糖、ポテトおよび他の塊茎のサンプルが挙げられるがこれらに限定されない。他の例としては、加工食品製品(例えば、朝食用シリアル)中の高デンプン化合物のブレンドが挙げられ得る。デンプン含有サンプルとしては、加工食品、トウモロコシ、コーンミール、大豆、大豆粉末、小麦粉末、パパイヤ果実、およびコーンスターチが挙げられる。加工食品としては、コーン含有食品(例えば、市販の朝食用シリアルおよびコーンチップ)が挙げられ得る。
【0048】
このサンプルは、固体形態、液体形態、ゲル形態であってもよく、または懸濁物として存在してもよい。いくつかの例では、固体サンプルは、グリコシダーゼを提供する前に粉に挽かれ得る。このサンプルは、懸濁物の形態をとってもよく、または1以上の溶媒によって可溶化されてもよい。
【0049】
本明細書中に開示される方法はまた、グリコアミラーゼ(glycolamylase)を施す前または後に、さらなる非核酸成分をサンプルから除去する工程を包含し得る。細胞は溶解され得、そして非核酸材料は、当該分野で周知の方法を用いて除去され得る。例えば、タンパク質は、サンプルを界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS))で処理することによって変性され得る。他の方法は、例えば、Sambrook H.およびRussell,2001 Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第3版,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY;Permingeat HR,Romagnoli MV,およびVallejos RH,1998,A simple method for isolating high yield and quality DNA from cotton(G.hirsutum L.)leaves;Plant Mol Biol.Reporter 16:1−6;Paterson AH,Brubaker CLおよびWendel JF,1993,A rapid method for extraction of cotton(Gossypium spp.)genomic DNA suitable for RFLP or PCR analysis;Plant Mol Biol.Reporter 11(2)122−127;ならびにCouch JAおよびFritz P.1990,Extraction of DNA from plants high in polyphenolics;Plant Mol Biol.Reporter 8(1)8−12において見出され得る。
【0050】
タンパク質およびペプチドはまた、当該分野で公知の方法によって除去され得る。例えば、酢酸カリウムまたは酢酸ナトリウムは、核酸を抽出する前に、炭水化物およびタンパク質を沈澱させるために用いられ得る。酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウムもまた、溶液からのタンパク質および炭水化物の沈澱を補助し、それにより、核酸抽出の間、この核酸をガラス粒子に自由に結合するままにする。別の例では、タンパク質およびペプチドは、フェノール抽出によって除去され得、そして適切な緩衝剤(例えば、Tris−EDTA)中で変性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS))を用いて変性され得る。サンプルは、このプロセスの間に加熱され得、そして遠心分離されて非核酸成分が除去され得る。この非核酸固体物質は、(必要に応じて加熱の後に)遠心分離によって除去され得る。
【0051】
この核酸がリボヌクレオチド(RNA)分子である場合、RNAの分解は、RNAヌクレアーゼを除去することにより、低減または最小化され得る。RNA分解は、このサンプル中に残るRNaseを分解するプロテアーゼを添加することのような周知の方法によって防止され得る。例えば、RNaseを含まないプロテイナーゼが添加され得る。あるいは、RNaseのインヒビター(例えば、RNAsin)が添加され得る。例えば、Sambrook,J.,Russell,D.W.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第3版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,7.82,2001を参照のこと。
【0052】
(B.核酸の抽出)
核酸は、得られる溶液から抽出され得る。核酸は、当該分野で公知の1以上の方法によって抽出され得る。
【0053】
核酸は、(しばしば、核酸を沈澱させる塩の存在下で)溶媒をこのサンプルに導入することによって抽出され得る。例えば、この核酸は、アルコール溶液(例えば、エタノール溶液またはイソプロパノール溶液)中に配置されることにより、抽出され得る。任意の濃度のアルコールが提供され得る。例えば、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%のエタノールの溶液がサンプルに提供されて、この核酸が抽出され得る。あるいは、別の例では、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%のイソプロパノールがサンプルに提供されてこの核酸が抽出され得る。核酸はまた、ポリエチレングリコールをこのサンプルに添加することによって沈澱し得る。
【0054】
あるいは、核酸は、核酸以外の成分を沈澱させる溶媒を導入することによって抽出され得る。この場合、核酸は溶液中に残り、そして他の成分が除去される。
【0055】
この核酸はまた、カラムベースの精製によって抽出され得る。カラムベースの抽出は、当該分野で公知のカラムを用いて実施され得る。1つの実施形態では、このカラムは、ガラスビーズであり得る。このようなガラスビーズは、高デンプン化合物からの核酸の抽出に伴って通常生じる詰まりを緩和するために用いられ得る大きな穴のシリカビーズ結合マトリクスおよび現在入手可能なシリカウェハ様カラムを提供する。これらのカラムは、例えば、ISC Bioexpress(Kaysville,UT)、VWR(Buffalo Grove,IL)、Axygen(Union City,CA)から市販され得る。次いで、ガラスビーズは、このカラムに添加される。あるいは、微量遠心チューブの底部は、小さな針で穿刺され得(穴が作製され得)、そしてガラスビーズが充填され得る。あるいは、ガラス繊維フィルターがこのカラムに添加され得る。ガラスミルクまたは珪藻土とは異なり、このビーズは圧縮せず、それゆえ、上清のずっと良好な流れを可能にする。残りのデンプンが存在する場合、このようなカラムは詰まらず、DNAを依然として効率的に結合し得る。
【0056】
核酸は、この核酸をカラムクロマトグラフィー(例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)またはFPLC)を通して分離することにより抽出され得る。
【0057】
核酸はまた、核酸を特異的に結合するカラムを用いて抽出され得る。例えば、ガラスビーズカラムは、サンプル中の核酸を特異的に結合する。次いで、この核酸は、このカラムから溶出され得る。他のカラムは当該分野で公知である。
【0058】
この核酸はまた、配列特異的様式で抽出され得る。例えば、別個の核酸配列は、固定した配列特異的プローブへのハイブリダイゼーションによって抽出され得る。ハイブリダイゼーション法によって核酸を取得する方法は、当該分野で周知であり、例えば、Mark Schena,MicroArray Analysis,Wiley−Liss,John Wiley & Sons,Hoboken NJ(2003)において記載の通りである。配列特異的プローブは、サンプル中の核酸へのプローブのハイブリダイゼーションの前または後に(例えば、ビオチン−アビジン相互作用を介して)固体表面へと結合され得る。DNA分子は、増幅された産物をDNAインターカレート色素で直接的に染色することにより可視化され得る。当業者に明らかなように、例示的な色素としては、SYBRグリーン、SYBRブルー、DAPI、ヨウ化プロピジウム、Hoeste、SYBRゴールドおよび臭化エチジウムが挙げられるがこれらに限定されない。増幅されたDNA分子中にインターカレートされた発光色素の量は、増幅された産物の量に直接的に比例し、これは、FluroImager(Molecular Dynamics)または他の等価なデバイスを製造業者の指示書に従って用いて便利に定量され得る。このようなアプローチの1つのバリエーションは、増幅された産物のゲル電気泳動、続いて染色および選択されたインターカレート色素の可視化である。あるいは、標識されたオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブ(例えば、蛍光プローブ(例えば、FRETプローブおよび比色プローブ))を用いて増幅を検出し得る。
【0059】
RNAは、オリゴデキオシチミジンハイブリダイゼーション配列を含むカラムを用いて抽出され得る。例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)は、オリゴデキオシチミジンカラムを用いて抽出され得る。カラムは、手で調製されてもよく、または商業的に入手してもよい。あるいは、RNAはまた、ガラスビーズに結合され得る。これは、6.3を超えるpHおよび高塩濃度という変更を行って、DNAについてと同様に実施される。
【0060】
この核酸は、抽出後に部分的に精製されてもよくまたは単離されてもよい。この核酸は、上記で考察した抽出方法のいずれかを用いて、部分的に精製されてもよくまたは単離されてもよい。オリゴデキオシチミジンカラムは、例えば、Molecular Research Center Inc.(Cincinnati,OH)、Stratagene(La Jolla,CA)、Invitrogen(Carlsbad,CA)、またはAmersham(Pistcataway,NJ)から商業的に入手され得る。
【0061】
核酸はまた、使用前に(代表的には緩衝液中に)再可溶化され得る。再可溶化の方法は、例えば、Sambrook H,EF FritschおよびManiatis T,1989 Molecular Cloning:A laboratory manual 第2版 Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor,NYに開示される通り、当該分野で周知である。
【0062】
この核酸がリボヌクレオチド(RNA)分子である場合、さらなるプロテイナーゼは、この核酸の分解を防止するために添加され得る。例えば、RNaseを含まないプロテイナーゼKは、RNAの分解を防止するためにこのサンプルに添加され得る。
【0063】
(C.核酸の検出)
核酸は必要に応じて、当該分野で公知の任意の方法によって検出され得る。特に、核酸は、増幅法またはハイブリダイゼーション法によって検出され得る。
【0064】
この核酸は、増幅法によって検出され得る。例えば、増幅は、合理的な忠実度で標的配列を複製し得るプライマー依存性ポリメラーゼを用いた任意の方法を意味する。増幅は、天然または組換えのDNAポリメラーゼ(例えば、T7 DNAポリメラーゼ、E.coli DNAポリメラーゼのKlenowフラグメント、Taqポリメラーゼ、Tthポリメラーゼ、Pfuポリメラーゼ)および/またはRNAポリメラーゼ(例えば、逆転写酵素)によって実施され得る。Tthポリメラーゼはまた、逆転写酵素活性をも有する。
【0065】
好ましい増幅法は、PCRである。PCRについての一般的手順は、米国特許第4,683,195号(Mullisら)および同第4,683,202号(Mullisら)に教示される。しかし、各増幅反応について用いられる最適なPCR条件は、一般的に経験的に決定されるかまたは当業者によって通常用いられるコンピュータソフトウェアを用いて評価される。多数のパラメーターが、反応の成功に影響を与える。これらの中でも特に、アニーリングの温度および時間、伸長時間、Mg2+、pH、ならびにプライマー、テンプレートおよびデオキシリボヌクレオチドの相対濃度である。一般に、このテンプレート核酸は、ポリメラーゼ反応の前に、少なくとも約95℃まで1〜10分間加熱することによって変性される。約20〜99サイクルの増幅は、90℃〜96℃の範囲にて0.05分間〜1分間での変性、48℃〜72℃の範囲の温度にて0.05分間〜2分間のアニーリング、および68℃〜75℃にて少なくとも0.1分間の伸長を最適の最終サイクルで用いて実行される。1つの実施形態では、PCR反応は、約100ngのテンプレート核酸、20μMの上流プライマーおよび下流プライマー、ならびに0.05mM〜0.5mMの各種dNTP、および0.5単位〜5単位の市販の熱安定性DNAポリメラーゼを含み得る。
【0066】
従来のPCRの1つのバリエーションは、逆転写PCR反応(RT−PCR)であり、ここでは、逆転写酵素が最初にRNA分子を一本鎖cDNA分子に変換し、次いでこれが、ポリメラーゼ連鎖反応においてその後の増幅のためのテンプレートとして用いられる。RT−PCRを実施する際に、逆転写酵素は一般的に、標的核酸が加熱変性された後に、反応サンプルに添加される。次いで、この反応物は、適切な温度(例えば、30℃〜45℃)にて充分な量の時間(10分間〜60分間)にわたって維持されて、予定されたサイクルの増幅が起こる前にcDNAテンプレートが作製される。あるいは、Tth DNAポリメラーゼが、RT−PCRのために用いられ得る。当業者は、定量的な結果が所望される場合、増幅される核酸の相対コピーを維持または制御する方法を用いることに注意を払わねばならないことを認識する。「定量的」増幅の方法は、当業者に周知である。例えば、定量的PCRは、同じプライマーを用いて既知量のコントロール配列を同時に共増幅する(co−amplifying)ことを包含し得る。このことは、PCR反応を較正するために用いられ得る内部標準を提供する。
【0067】
1つの内部標準は、合成AW106 cRNAである。AW106 cRNAは、当業者に公知の標準的技術に従ってサンプルから単離されたRNAと合わされる。次いで、このRNAは、逆転写酵素を用いて逆転写されて、cDNAが提供される。次いでこのcDNA配列は、標識されたプライマーを用いて(例えば、PCRによって)増幅される。この増幅産物は、(代表的には電気泳動によって)分離され、そして放射能の量(増幅された産物の量に比例する)が決定される。次いで、このサンプル中のmRNAの量は、既知のAW106 RNA標準によって生成されたシグナルとの比較によって算出される。定量的PCRについての詳細なプロトコルは、PCR Protocols,A Guide to Methods and Applications,Innisら,Academic Press,Inc.N.Y.(1990)に提供される。
【0068】
従来のPCRおよびRT−PCRに加えて、別の好ましい増幅法は、リガーゼ連鎖ポリメラーゼ連鎖反応(ligase chain polymerase chain reaction:LCR)である。この方法は、各々が標的特異的部分および標的配列に無関係の短いアンカー配列を有するプライマー対のセットへの、サンプルから誘導された核酸のプールの連結を包含する。次いで、アンカー配列を含む第2のセットのプライマーが、第1のセットのプライマーに連結した標的配列を増幅するために用いられる。LCRを実施するための手順は、当業者に周知であり、それゆえ、本明細書中に詳述しない(例えば、WO 97/45559、WO 98/03673、WO97/31256、および米国特許第5,494,810号を参照のこと)。
【0069】
上記の増幅方法は、高度に感受性であり、極めて少量のサンプルを用いて複数の生物学的実体の大規模同定が実行可能である。
【0070】
核酸はまた、ハイブリダイゼーション法によって検出され得る。これらの方法において、標識された核酸は、標識された核酸プローブまたは標識されていない核酸プローブを含む基質へと添加され得る。あるいは、標識されていないまたは標識されていない核酸は、標識された核酸プローブを含む基質へと添加され得る。ハイブリダイゼーション法は、例えば、MicroArray Analysis,Marc Schena,John Wiley and Sons,Hoboken NJ 2003に開示される。
【0071】
核酸を検出する方法は、標識の使用を含み得る。例えば、放射標識は、(放射性ホスフェートの取り込みを検出および定量するために)写真フィルムまたはホスホイメージャー(phosphoimager)を用いて検出され得る。蛍光マーカーは、発光した光を検出するために光検出器を用いて検出および定量され得る(例えば、例示的な装置については、米国特許第5,143,854号を参照のこと)。酵素標識は代表的に、酵素に基質を提供し、基質への酵素の作用によって生成される反応産物を測定することにより、検出される。比色標識は、着色した標識を単に可視化することにより検出される。
【0072】
1つの実施形態では、この増幅された核酸分子は、増幅された産物を核酸インターカレート色素で直接的に染色することによって可視化される。当業者に明らかなように、例示的な色素としては、SYBRグリーン、SYBRブルー、DAPI、ヨウ化プロピジウム、Hoeste、SYBRゴールドおよび臭化エチジウムが挙げられるがこれらに限定されない。増幅したDNA分子にインターカレートする発光色素の量は、増幅産物の量に直接比例し、これは、FluroImager(Molecular Dynamics)または他の等価なデバイスを製造業者の指示書に従って用いて便利に定量され得る。このようなアプローチの1つのバリエーションは、増幅された産物のゲル電気泳動、続いて染色および選択されたインターカレート色素の可視化である。あるいは、標識されたオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブ(例えば、蛍光プローブ(例えば、蛍光共鳴エネルギー輸送(fluorescent resonance energy transfer;FRET)プローブおよび比色プローブ))を用いて増幅を検出し得る。所望の場合、試験される生物学的実体の代表的なゲノム配列の特異的増幅が、配列決定によって、または増幅された産物が予想されたサイズを有すること、予想された制限消化パターンを示すことまたは正しいクローン化ヌクレオチド配列にハイブリダイズすることの実証によって、確認され得る。
【0073】
(D.デバイス)
上記の方法は、当該分野で公知のデバイスを用いて実施され得る。
【0074】
本明細書中に開示される方法は、個々のチューブを用いて実施され得る。サンプルは、この方法の間、チューブ間で移されてもよく、または同じチューブ中に保持されてもよい。
【0075】
本明細書中に開示される方法は、マルチサイト(multi−site)試験デバイス(例えば、マルチウェルプレートまたは一連の接続チューブ(「ストリップチューブ」))を用いて実施され得る。この方法は、核酸含有サンプルのアリコートを、マルチサイト試験デバイスの少なくとも2つの部位へと入れる工程、および1以上のグリコシダーゼをこれらの部位の各々に同時に提供する工程を包含し得る。サンプルは、異なるマルチサイトデバイスの間で操作されてもよく、または同じマルチサイトデバイスにおける異なる部位の間で操作されてもよい。
【0076】
このマルチサイト試験デバイスは、液体の通過に抵抗して「試験部位」といわれる領域または空間を形成する物理的障壁によって互いに隔てられた複数の区画を備える。このデバイス内に含まれるこれらの試験部位は、種々の方法で配列され得る。好ましい実施形態では、これらの試験部位は、マルチウェルプレートに配列される。これは代表的に、8×12の様式で配列された96ウェルを有するマイクロタイタープレートのサイズおよび形状を有する。384ウェルプレートもまた用いられ得る。この様式の1つの利点は、マイクロタイタープレートでアッセイを取り扱って読み取ることに関して器具が既に存在することである;従って、市販の流体操作デバイスの大規模な再設計は、必要ではない。しかし、この試験デバイスは、サイズおよび構成が異なり得る。サーモサイクラー(thermocycler)、光サイクラー(lightcycler)、フローもしくはエッチチャネルPCR、マルチウェルプレート、チューブストリップ、マイクロカード、ペトリプレート(これらは、デバイス内に配置された異なる媒体を分離するために用いられる内部ディバイダーを備え得る)などを包含するがこれらに限定されない種々の形式の試験デバイスが用いられ得ることが意図される。種々の材料が、本願において用いられるデバイスを製造するために用いられ得る。
【0077】
一般に、デバイスが製造される材料は、増幅反応および/または免疫アッセイを妨害しない。好ましいマルチサイト試験デバイスは、以下の種類の材料のうちの1以上から作製される:(ポリ)テトラフルオロエチレン、(ポリ)ビニリデンジフルオリド、ポリプロピレン、およびポリスチレン。
【0078】
このデバイスは、米国特許第6,626,051号に開示されるデバイスであり得る。
【0079】
(核酸を調製する方法についての用途)
本方法は、多糖含有サンプル中で核酸を調製するために特に有用である。
【0080】
(デンプン含有サンプル)
本方法は、上記のように、多糖含有サンプル(例えば、デンプン含有サンプル、特に高デンプンサンプル)中で核酸を調製するために用いられ得る。デンプン含有サンプルとしては、種子、トウモロコシ、コーンミール、大豆、大豆粉末、小麦粉末、パパイヤ果実およびコーンスターチが挙げられる。
【0081】
(食品ベースのサンプル)
本明細書中で開示される方法はまた、食品サンプル中で核酸を調製するために用いられ得る。食品ベースのサンプルとしては、調製した食品(例えば、トウモロコシ、コーンミール、大豆、大豆粉末、小麦粉末、パパイヤ果実、コーンスターチ、コーンチップおよびマルトデキストリン)が挙げられる。他の食品サンプルとしては、作物および葉組織が挙げられる。さらなる成分(例えば、抗酸化剤)は、葉組織について必要とされ得る。本明細書中の方法はまた、肉サンプルから核酸を得るために用いられ得る。この核酸は続いて、禁猟期の動物、絶滅危惧種、または任意の種(または複数の種)由来の材料がサンプル中に存在するか否か(例えば、食品製品中のピーナッツ残渣またはウシ飼料中の有蹄動物材料)を同定するために用いられ得る。
【0082】
本方法はまた、加工食品サンプルから核酸を調製するために用いられ得る。食品加工はしばしば、大規模な混合手順および粉砕手順、ならびに高温調理手順を包含する。多くの加工食品は、多量の多糖および少量の核酸を含む。加工食品の例としては、オートシリアル、オーズシリアル(O’s cereal)、クラッカー、乾燥豆腐、味噌粉末、ポレンタ、Twix(登録商標)クッキーおよびソイナッツバター(soynut butter)が挙げられる。
【0083】
(病原体)
本明細書中に開示される方法は、病原体から核酸を調製するために用いられ得る。一般に、宿主における病原体の存在または病原体関連核酸の存在は、サンプルにおける核酸の分析により検出される。しかし、食品伝搬(foodborne)病原体は、頻繁に、高多糖サンプル(例えば、高デンプンサンプル)中に含まれる。本明細書中に開示される方法に従うことにより、病原体に特異的な核酸が検出され得る。これは、微生物細胞壁を破壊してこの微生物の溶解を許容するさらなる工程を必要とする。これを行う方法は当該分野で公知である。例えば、リゾチーム(Sigma,St.Louis MO)は、グラム陽性細菌の細胞壁を破壊するために用いられ得る(Flamm RK,Hinrichs DJ,Thomashow MF.Infect Immun.1984年4月;44(1):157−61)。低濃度(40ng/100ul TE)で、リゾチームはまた、核酸単離のためにグラム陰性細菌を破壊するために用いられ得る。酵母に関しては、ザイモリアーゼまたはリティカーゼ(van Burik JA,Schreckhise RW,White TC,Bowden RA,Myerson D.Med Mycol.1998年10月;36(5):299−303)は、より容易な核酸単離のために細胞壁を消化してスフェロプラストを作製するために用いられ得る。用いられ得る他の緩衝液としては、2−メルカプトエタノール、ソルビトール緩衝液、N−ラウリルサルコシンナトリウム塩溶液、酢酸ナトリウム溶液または酢酸カリウム溶液が挙げられる。
【0084】
病原体の例または核酸が本方法およびアッセイ系に従って調製され得る病原体の存在としては、Staphylococcus epidermidis、Escherichia coli、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MSRA)、Staphylococcus aureus、Staphylococcus hominis、Enterococcus faecalis、Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus capitis、Staphylococcus warneri、Klebsiella pneumoniae、Haemophilus influnzae、Staphylococcus simulans、Streptococcus pneumoniaeおよびCandida albicansが挙げられるがこれらに限定されない。
【0085】
食品伝搬病原体に関連した核酸は、本明細書中に開示される方法によって調製され得る。この方法は、Listeria、Campylobacter、E.coliおよびSalmonellaから核酸を検出するために用いられ得る。
【0086】
さらなる例としては、Bacillus anthracis(炭疽)、Clostridium botulinum(ボツリヌス中毒)、Brucellae(ブルセラ症)、Vibrio cholera(コレラ)、Clostridium perfringens(ガス壊疸、クロストリジウム菌壊死(Clostridial myonecrosis)、壊疽性腸炎)、エボラウイルス(エボラ出血熱)、Yersinia pesits(ペスト)、Coxiella burnetii(Q熱)、および痘瘡ウイルス(天然痘)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0087】
異なる病原体に対して特異的な配列を有する核酸は、本明細書中に考察される核酸特異的抽出方法によってさらに調製され得る。病原体は、それらの特異的なポリヌクレオチド配列に基づいて他の病原体から区別され得る。特異的病原体は、他の病原体には見出されない特異的ポリヌクレオチド配列を有する。同じ病原体の異なる株に特異的な核酸は、配列特異的様式により検出され得る。
【0088】
(遺伝子改変された生物体)
本明細書中に開示される方法はまた、遺伝子改変された生物体(GMO)から核酸が検出のために調製されることを可能にする。GMOの例としては、1以上の遺伝子が改変、付加または欠失された生物体が挙げられるがこれらに限定されない。GMOは、1以上の特定の遺伝子の存在、1以上の特定の遺伝子の非存在、特定の変更、または1以上の特定の遺伝子の変更された発現によって特徴付けられ得る。
【0089】
GMOは、食品サンプル中に頻繁に見出される。例えば、遺伝子改変された農業製品(例えば、遺伝子改変された穀粒)は、多量の多糖を含む加工食品中に含まれ得る。遺伝子改変された生物体に特異的な核酸を調製するために、グリコシダーゼは、本明細書中に開示される方法に従って食品サンプルに提供される。次いで、(頻繁に少量で存在する)GMOの核酸は、検出され得る。
【0090】
(非固有植物相および非固有動物相)
本明細書中に開示される方法はまた、非固有植物相(fluora)および非固有動物相に特異的な核酸を調製するための方法を提供する。特定の地域に固有ではない生物体は、固有の植物相および動物相に対して環境的危険および生物学的危険を提示する。非固有植物相および非固有動物相の存在は頻繁に、(しばしば多量の)多糖を含む。非固有植物相および非固有動物相の存在および数は、反応の方法を用いて測定され得る。
【0091】
別の例として、食品サンプルはまた、禁猟期に殺傷された猟獣の肉を含み得るか、または絶滅危惧種から得られる。このような食品サンプルは、性別または種に特異的な核酸配列に基づいて同定され得る。これらの食品サンプルはまた、頻繁に、核酸が容易に検出されるのを妨げる多糖(例えば、デンプン)を含む。配列特異的抽出技術が用いられる場合、本方法により、この配列に特異的な核酸が検出される。
【0092】
(キット)
検出のために多糖含有サンプルから核酸を調製するためのキットが提供される。このキットは、1以上のグリコシダーゼを備え得る。さらなる実施形態では、この1以上のグリコシダーゼは、1以上のグリコアミラーゼを含み得る。このキットは、サンプルを粒子化もしくは可溶化するための溶媒および材料、サンプルから他の成分を除去するさらなる溶媒、カラム、ならびに本明細書中に開示される通りの他の構成要素のような構成要素を備えるように形成され得る。このキットは、このキットの使用指示書とともに包装され得る。
【0093】
これらの試薬または反応物は、固体形態で供給され得るか、または在庫保存に適切な、そして後に試験が実施される場合の反応媒体への交換もしくは添加のために適切な、液体緩衝液中に溶解/懸濁され得る。適切な包装が提供される。このキットは、上記の方法において用いられるさらなる構成要素を必要に応じて提供し得る。
【0094】
これらのキットは、種々の生物学的サンプルを試験するために用いられ得、この生物学的サンプルとしては、体液、固体組織サンプル、組織培養物またはそこから誘導した細胞およびそれらの後代、ならびにこれらの供給源のいずれかから調製した切片または塗沫標本が挙げられる。これらのキットはまた、種々のサンプル(例えば、表面物質(surface matter)、土壌、水、農業サンプルおよび工業サンプル、ならびに食品および酪農品の加工機器、装置、器具、使い捨て品目および非使い捨て品目から得たサンプル)を試験するために用いられ得る。
【実施例】
【0095】
以下の非限定的な実施例は、本願をさらに例示する。本願の教示に照らせば、特定の変更および改変が本願に行われ得ることが当業者に容易に明らかである。
【0096】
(実施例1)
200mgの粉に挽いたトウモロコシを計量し、そして2mlの微量遠心管に入れた。1mlの抽出緩衝液(10mM Tris、1mM EDTA、1% SDS、pH7.5)を添加した。このサンプルを、塊が見えなくなるまで充分に混合した。このサンプルを55℃の水浴中で10分間加熱した。次いで、このサンプルを14,000rpmにて4分間にわたって遠心分離機に入れた。上の水相を取り出し、そして新たな1.5mlチューブに入れた。
【0097】
次いで、50μlのグリコアミラーゼ(10mM酢酸緩衝液中1U/μl)を添加し、55℃にて10分間インキュベーションすることによって、この溶液中の多糖を分解した。1/10の体積の3M酢酸カリウム(pH4.8)溶液を添加し、そして混合した。あるいは、酢酸カリウム溶液(pH5.6)を用いた。このサンプルを、3分間、14,000rpmにて5分間遠心分離した。ペレットを乱すことなく、この液体を取り出した。
【0098】
この上清を、70mgのガラスビーズ(Sigma G−9143,St.Louis,MO)を含む0.5mlカラムチューブに入れた。次いで、このカラムを、2000rpmにて30秒間遠心分離した。素通り画分(flow through)を捨てた。このカラムを、500μlの70%エタノールを添加することによって洗浄した。あるいは、70%イソプロパノールを用い得る。このカラムを、フルスピードで30秒間さらに遠心分離し、そして素通り画分を捨てた。この洗浄プロセスを繰り返した。このカラムを新たな収集チューブに入れ、1分間スピンして、あらゆる残存アルコールを除去した。このカラムを新たな1.5ml収集チューブに入れた。50μlのTE(pH7.5)または水を添加し、そしてこのカラムにおいて室温にて1分間静置させた。次いで、このカラムをフルスピードで1分間遠心分離してDNAを溶出させた。このDNAは、PCRの準備ができていた。
【0099】
1〜4μlの溶出したDNAをPCR反応物に添加した。PCR産物のゲルを図1aに示す。
【0100】
(実施例2)
マルトデキストリンサンプル中の核酸を検出した。2gのマルトデキストリンを50mlのチューブに添加した。3mlの抽出緩衝液(10mM Tris、1mM EDTA、1% SDS、pH7.5)を添加し、そしてこのサンプルをボルテックスして塊を除去した。次いで、このサンプルを水浴中で55℃にて10分間インキュベートした。除去されると、このマルトデキストリンは、可溶化しており、そして透明な粘性の液体が観察された。2Mを超える濃度までの5M NaClの添加(additional)により、このマルトデキストリンは溶液から析出した。このサンプルを氷上に10分間置いた。
【0101】
マルトデキストリンを遠心分離によって除去した。上清を新たなチューブに移し、そしてビーズをこのチューブに添加した。このビーズを室温にて10分間平衡化させて、核酸を結合させた。このチューブを垂直に置き、そしてガラスビーズをこのチューブから吸引し、そしてカラムに入れた。このカラムを、500μlの70%エタノールの添加によって洗浄した。あるいは、70%イソプロパノールを用いた。このカラムをフルスピードで30秒間再度遠心分離し、そして素通り画分を捨てた。この洗浄プロセスを繰り返した。このカラムを新たな収集チューブに入れ、1分間スピンして、あらゆる残存アルコールを除去した。このカラムを新たな1.5mlの収集チューブに入れた。50μlのTE(pH7.5)を添加し、そしてこのカラム中で室温にて1分間静置させた。次いで、このカラムをフルスピードで1分間遠心分離してDNAを溶出させた。
【0102】
このDNAをPCRによって検出した。一般に、1〜4μlの溶出したDNAをPCR反応において用いる。増幅産物を図2に示す。
【0103】
(実施例3)
デンプンサンプル中の細菌の単離のために、種々の界面活性剤(例えば、CTAB、Trition X、またはTween)を全て1%〜10%の間の濃度で利用するために、緩衝液条件を改変する。種々の塩(例えば、NaCl、酢酸カリウム)を、細胞溶解を補助するために、種々の段階で用いる。あるいは、低速遠心分離を用いて、過剰なデンプン産物をサンプルから除去して、細菌の単離をより容易にする。一旦、大部分のデンプンが除去されたら、熱を用いて細胞溶解を補助する。大部分のデンプン産物の除去および細菌の溶解の際に、1/10の体積の3M酢酸カリウム(pH4.8)溶液を添加して混合する。あるいは、pH5.6の酢酸カリウム溶液を用い得る。次いで、このサンプルを3分間、14000rpmにて5分間遠心分離する。ペレットを乱すことなく、この液体を取り出す。
【0104】
この上清を、ガラスビーズ(Sigma G−9143)を含む0.5mlカラムチューブに入れる。次いで、このカラムを、2000rpmにて30秒間遠心分離する。素通り画分を捨てる。このカラムを、500μlの70%エタノールを添加することによって洗浄する。あるいは、70%イソプロパノールを用い得る。このカラムを、フルスピードで30秒間再度遠心分離し、そして素通り画分を捨てる。この洗浄プロセスを繰り返す。このカラムを新たな収集チューブに入れ、フルスピードで1分間スピンして、あらゆる残存アルコールを除去する。このカラムを新たな1.5ml収集チューブに入れる。50μlのTE(pH7.5)を添加し、そしてこのカラムにおいて室温にて1分間静置させる。次いで、このカラムをフルスピードで1分間遠心分離してDNAを溶出させる。このDNAは、PCRの準備ができている。
【0105】
一般に、1〜4μlの溶出したDNAをPCR反応に用いる。
【0106】
(実施例4)
本実施例は、本明細書中に開示される方法を用いて1グラムの多糖含有サンプルから核酸を調製したことを例示する。
【0107】
以下のキット構成要素を、室温で保存した:175mLの緩衝液1;3.5mLの緩衝液2;17.5mLの緩衝液3;3.2mLの緩衝液4;それぞれ5チューブの試薬A、50カラム(2つのガラス繊維ディスク(Whatman GF−D,Houston,TX)および収集チューブを含む)および50本の溶出チューブ。緩衝液1は10mM Tris HCL(pH7.5)、1mM EDTA、1% SDSであった。緩衝液2は10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)であった。緩衝液3は3M酢酸カリウム溶液(60mlの5M酢酸カリウム、10mlの氷酢酸、30mlの水、pH5.6)であった。あるいは、緩衝液3は(60mlの5M酢酸カリウム、11.5mlの氷酢酸、28.5mlの水、pH5.6)であった。緩衝液4は10mM Tris HCL(pH7.3)であった。試薬Aは、粉末化グリコアミラーゼ(一旦酢酸ナトリウム溶液が添加されるとグリコアミラーゼ1U/μlとなる)であった。
【0108】
多糖含有サンプルを2.8mLまたは3.0mLまでの緩衝液1と充分に混合した。あるいは、さらなる緩衝液1を添加して、サンプルを充分に水和および液化させた。
【0109】
サンプルの水和点を試験するために、1gのサンプルを測定し、そしてこのサンプルを水和および液化するために必要な水の量を決定することにより、予備水和試験を行った。一旦これが決定されたら、同じ量の緩衝液を用いて、類似のサンプルを水和した。最初の遠心分離工程後の溶解緩衝液回収の最適量は、600μL〜800μLの間であった。あるいは、最初の遠心分離工程後の溶解緩衝液回収の最適量は、回収され得る量すべてであった。
【0110】
試薬Aを調製した。650μLの緩衝液2を、試薬Aとラベルが付けられたバイアルに添加した。混合物を混合したがボルテックスしなかった。水和した試薬Aを−20℃で保存した。凍結と融解との繰り返しを回避するように注意した。水和していない試薬のバイアルは、室温で安定であった。各々10回の抽出を行い得る、試薬Aの5本のバイアルを供給した。
【0111】
核酸を含む疑いのある1グラムのサンプルを粉に挽いた。そしてこれを15mLのチューブに入れる。2.8mL〜3.0mLの緩衝液1をサンプルチューブに添加した。このチューブの内容物を充分に混合して塊を回避した。このサンプルの徹底的な水和を確認した。さらなる乾燥サンプルがこの溶液中に残っているかまたはこのサンプルがペーストに似ている場合、より多くの緩衝液1を1mlずつ増やしながら添加して充分に混合した。
【0112】
この混合物を55℃の水浴中に10分間入れた。続いて、このサンプルを遠心機に入れ、そして(その遠心機およびチューブについて)最大速度で10分間スピンした。800μLまでの上清を取り出した。一部の上清はチューブに残っていた。この取り出した上清を新たな1.5mLチューブに入れ、そしてペレットのキャリーオーバーを制限した。あるいは、全ての上清を取り出した。
【0113】
50μLの試薬A溶液を添加した。混合後、この混合物を55℃にて10分間インキュベートした。0.3倍の体積の緩衝液3を添加した。このサンプルを0℃と−20℃との間に冷却した。この溶液を1〜5分間静置させた。このサンプルを、14,000×gにて5分間遠心分離した。ペレットを乱すことなく液体を取り出し、そして新たな2.0mlチューブに入れた。
【0114】
0.5〜0.8倍の体積の95%エタノールをこの液体に添加し、そして反転することにより成分を混合した。このサンプルを14,000×gにて1分間遠心分離して、あらゆる沈殿物をペレット化した。900μLの上清をカラムチューブに入れた。この液体は、ガラスビーズ複合体(色素を含む25mMスクロース溶液を使用し、そしてこのビーズをカラムにおいて乾燥させることにより一緒に凝集したガラスビーズ)を直ちに活性化し、そして緑色から透明への色の変化および解離が生じた。このサンプルを2,000×gにて30秒間遠心分離した。このカラムの素通り画分を捨て、そしてこのカラムを収集チューブに戻した。
【0115】
900μLまでの残りの上清をこのカラムチューブに添加した。このチューブを2,000×gにて30秒間遠心分離した。素通り画分を捨て、そしてこのカラムを収集チューブに戻した。
【0116】
このカラムを、400μLの70%エタノールを添加することにより洗浄した。このカラムを14,000×gにて30秒間遠心分離し、素通り画分を捨て、そしてこのカラムを収集チューブに戻した。(あるいは、70%イソプロパノールを用いた。)この洗浄を繰り返し、素通り画分を捨て、そしてこのカラムを収集チューブに戻した。このカラムを14,000×gにて1分間遠心分離してあらゆる残存アルコールを除去し、そしてきれいな1.5mL溶出チューブに入れた。
【0117】
50〜80μLの緩衝液4を添加し、そしてこのカラムを室温にて1分間〜5分間にわたって室温で平衡化した。改善された収率のために、緩衝液4を55℃まで予め温めたか、またはこのサンプルを55℃にてインキュベートし得る。TE緩衝液(より長い保存)または水(配列決定適用の前)を添加した。あるいは、10mM Trisを添加した。このカラムを14,000×gにて1分間スピンして、DNAを溶出させた。代替法として、微量遠心管の全ての遠心分離を6,000rpmにて達成した。遠心分離時間の時間を、それに合わせて増やした。
【0118】
DNAをPCRによって検出した。一般に、1〜4μLの溶出したDNAをPCR反応において用いた。
【0119】
上記方法によって得た核酸由来のPCRアンプリコンのアガロースゲルを図2に示す。増幅した核酸は、2a)マルトデキストリンおよび2b)小麦粉末から抽出した核酸から増幅したrubisco遺伝子の一部に対応する。図2cは、コーンチップから抽出した核酸から増幅したrubisco遺伝子の一部に対応する、増幅した核酸を示す。図2dおよび図2eは、それぞれ、コーンミールおよび大豆粉末から抽出した核酸から増幅したrubisco遺伝子の一部に対応する、増幅した核酸を示す。
【0120】
この方法によって得た核酸由来のPCRアンプリコンのアガロースゲルを図2に開示する。この増幅した核酸は、2f)トウモロコシ粒および2g)パパイヤ果実から抽出した核酸から増幅したrubisco遺伝子の一部に対応する。
【0121】
この方法によって得た核酸由来のPCRアンプリコンの別のアガロースゲルは、図3に開示される。この増幅反応において用いられるプライマーは、配列番号3および配列番号4に対応していた。この増幅した核酸は、3a)大豆ミールおよび3b)大豆粉末から抽出した核酸から増幅したレクチン遺伝子の一部に対応し、そして3c)コーンミールおよび3d)トウモロコシ粉末から抽出した核酸から増幅したrubisco遺伝子の一部に対応する。
【0122】
(実施例5)
本実施例は、本明細書中に開示される方法を用いて0.2グラムの多糖含有サンプルから核酸を調製したことを例示する。
【0123】
以下のキット構成要素を、室温で保存した:91.0mLの緩衝液1;3.5mLの緩衝液2;14.0mL緩衝液3;3.2mLの緩衝液4、5アリコートの試薬A、50本のカラム(2つのガラスファイバーディスクを含む)および関連する収集チューブ、および50本の溶出チューブ。緩衝液1は、10mM Tris HCL(pH7.5)、1mM EDTA、1% SDSであった。緩衝液2は、10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)であった。緩衝液3は、3M酢酸カリウム溶液(60mLの5M酢酸カリウム、10mLの氷酢酸、30mLの水、pH5.6)であった。あるいは、緩衝液3は、(60mLの5M酢酸カリウム+11.5mLの氷酢酸、28.5mLの水、pH5.6)であった。緩衝液4は、10mM Tris HCL(pH7.3)であった。試薬Aは、粉末化グリコアミラーゼであった(これは、一旦酢酸ナトリウム溶液が添加されるとグリコアミラーゼ1U/μlであった)。
【0124】
一般に、大部分のデンプン様サンプルは、1mLの緩衝液1と充分に混合した。しかし、いくつかの場合には、このサンプルを充分に水和および液化するためには、より多くの緩衝液が必要とされた。必要であれば、サンプルを水和するために1.4mLまでを添加した。
【0125】
0.2グラムのサンプルを単に測定し、そしてこのサンプルを水和および液化するために必要な多量の水の量を決定することにより、予備水和試験を行った。一旦これが決定されたら、同じ量の緩衝液を用いて、類似のサンプルを水和した。
【0126】
0.2グラムのサンプルに関しては、試薬Aを以下の通りに調製した。650μLの緩衝液2を、試薬Aとラベルが付けられたバイアルに添加した。混合物を混合したがボルテックスしなかった。水和した試薬Aを−20℃で保存した。凍結と融解との繰り返しを回避するように注意した。水和していない試薬Aのバイアルは、室温で安定であった。各々10回の抽出を行い得る、試薬Aの5本のバイアルを供給した。
【0127】
核酸を含む疑いのある0.2グラムのサンプルを粉に挽いた。そしてこれを2mLのチューブに入れる。1mLの緩衝液1をサンプルチューブに添加した。このチューブの内容物を充分に混合して塊を回避した。
【0128】
この混合物を55℃の水浴中に10分間入れた。続いて、このサンプルを遠心機に入れ、そして14,000rpmにて4分間スピンした。上清を新たな1.5mLチューブに入れ、そしてペレットのキャリーオーバーを制限した。あるいは、全ての上清を取り出した。
【0129】
50μLの試薬A溶液を添加した(または比較のために、酵素なしで添加した)。混合後、この混合物を55℃にて10分間インキュベートした。0.3倍の体積の緩衝液3を添加した。このサンプルを0℃と20℃との間に冷却した。(このサンプルはまた、これらの温度で保存され得る。)この溶液を1〜5分間静置させた。このサンプルを、14,000rpmにて5分間遠心分離した。ペレットを乱すことなく液体を取り出した。そして新たな2.0mlチューブに入れる。
【0130】
0.5〜0.8倍の体積の95%エタノールをこの液体に添加し、そして反転することにより成分を混合した。(あるいは、95%のイソプロパノールを代替物として用いた。)このサンプルを14,000rpmにて1分間遠心分離して、あらゆる沈殿物をペレット化した。900μLの上清をカラムチューブに入れた。この液体は、ガラスビーズ複合体を直ちに活性化し、そして緑色から透明への色の変化および解離が生じた。このサンプルを2,000rpmにて30秒間遠心分離した。このカラムの素通り画分を捨て、そしてこのカラムを収集チューブに戻した。
【0131】
900μLまでの残りの上清をこのカラムチューブに添加した。このチューブを2,000rpmにて30秒間遠心分離した。素通り画分を捨て、そしてこのカラムを収集チューブに戻した。遠心分離プロセスを繰り返した。
【0132】
このカラムを、400μLの70%エタノールを添加することにより洗浄した。このカラムを14,000pmにて30秒間遠心分離し、素通り画分を捨て、そしてこのカラムを収集チューブに戻した。(70%イソプロパノールを、70%エタノールの代用物として用い得る。)あるいは、このサンプルをエタノールの添加の前または後に保存した。この洗浄を繰り返し、素通り画分を捨て、そしてカラムを収集チューブに戻した。このカラムを14,000rpmにて1分間遠心分離してあらゆる残存アルコールを除去し、そして1.5mL溶出チューブに入れた。
【0133】
50μLの緩衝液4を添加し、そしてこのカラムを室温にて1分間〜5分間にわたって室温で平衡化した。改善された収率のために、緩衝液4を55℃まで予め温め得るか、またはこのサンプルを55℃にてインキュベートし得る。あるいは、TE緩衝液(より長い保存)または水(配列決定適用の前)を添加した。このカラムを14,000rpmにて1分間スピンして、DNAを溶出させた。
【0134】
代替法として、微量遠心管の全ての遠心分離を6,000rpmにて実施した。遠心分離時間の時間を、それに合わせて増やした。
【0135】
DNAをPCRによって検出した。一般に、1〜4μLの溶出したDNAをPCR反応において用いた。全てのPCR反応を、rubiscoに特異的なプライマー(配列番号5および配列番号6)を用いて行った。
【0136】
図4は、異なるサンプルについてrubisco遺伝子に特異的なプライマーを用いるPCRによって生成されたPCRアンプリコンのアガロースゲルを示す。
【0137】
多糖が多く核酸含量がより低い加工食品は、グルコアミラーゼを用いた場合、PCRによって検出された。特に、図4におけるゲルのレーン「b」は、コーンチップサンプルをグリコアミラーゼで処理した場合の、このサンプルからのrubiscoのPCRアンプリコンを示す。PCRアンプリコンは、このサンプルをグリコアミラーゼで処理しなかった場合、ゲルのレーン「e」において観察されなかった。同様に、図4においてゲルのレーン「c」は、コーンスターチサンプルをグリコアミラーゼで処理した場合の、このサンプルからのrubiscoのPCRアンプリコンを示す。PCRアンプリコンは、このサンプルをグリコアミラーゼで処理しない場合、レーン「f」において観察されなかった。
【0138】
図4におけるレーン「g」は、Twix(登録商標)クッキーサンプルをグリコアミラーゼで処理した場合の、このサンプルからのrubiscoのPCRアンプリコンを示す。このサンプルをグリコアミラーゼで処理しなかった場合、レーン「k」において、極めてわずかなPCRアンプリコンしか観察されなかった。同様に、図4においてレーン「h」は、グリコアミラーゼで処理した、粉に挽いた小麦クラッカーのサンプルからのrubsicoのPCRアンプリコンを示す。さらに、このサンプルをグリコアミラーゼで処理しなかった場合には、レーン「l」において、極めてごくわずかなPCRアンプリコンしか観察されなかった。図4においてレーン「i」は、味噌粉末サンプルをグリコアミラーゼで処理した場合の、このサンプルからのrubiscoのPCRアンプリコンを示す。さらに、このサンプルをグリコアミラーゼで処理しなかった場合、極めてごくわずかなPCRアンプリコンしか観察されなかった。最後に、レーン「j」は、オートシリアルサンプルをグリコアミラーゼで処理した場合の、このサンプルからのrubiscoのPCRアンプリコンを示す。このサンプルをグリコアミラーゼで処理しなかった場合、レーン「n」においてPCRアンプリコンは観察されなかった。
【0139】
少量の核酸および多量の多糖を有する加工食品サンプルを、グリコアミラーゼ(グリコシダーゼ)での処理によって、検出のために調製した。各加工食品サンプル中へとグリコアミラーゼを提供することによる核酸の調製後、核酸は容易に検出された。グリコアミラーゼがなければ、これらの加工食品サンプルの核酸は、検出不可能であるかまたはごくわずかにしか検出可能でなかった。
【0140】
図4におけるレーン「a」は、粉に挽いた種子サンプルをグリコアミラーゼで処理した場合の、このサンプルからのrubiscoのPCRアンプリコンを示す。種子サンプル中での多量の核酸の存在および大規模な食品加工の欠如が、PCRによる増幅後のアンプリコンの検出を説明するようであることが留意される。
【0141】
(実施例6)
本実施例は、1グラムの食品サンプルからの核酸の調製を示す。
【0142】
このプロトコルは、DNA抽出のスケーラビリティ(scalability)、カラムの使用、ならびにサンプルからのデンプンの除去を増強するためのエタノールおよび増加した酢酸カリウムの使用、ならびにサンプルからのデンプンの除去を増強するための冷却の使用を実証する。
【0143】
以下の緩衝液を調製した。緩衝液1は、10mM Tris、1mM EDTA、1% SDSであった。緩衝液3は、5M酢酸カリウムであった。緩衝液4は、10mM Tris(pH7.5)であった。緩衝液5は、10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)であった。試薬6は、アミログリコシダーゼ酵素であった。このカラムは、縺れたガラス繊維の2枚のディスクを含んでいた。
【0144】
緩衝液2を最初の使用の前に調製し、そして−20℃で保存した。緩衝液2を、150μlの緩衝液5を試薬6とラベルの付けられたバイアルに添加することによって作製した。水和した溶液を、13,000prm〜16,000rpmにて20秒間遠心分離した。上の相を、緩衝液とラベルの付けられた供給チューブに変えた(transformed)。
【0145】
1グラムの粉に挽いたトウモロコシを、15mlのチューブに入れた。2mlの緩衝液1を添加し、そしてサンプルをボルテックサー(vortexer)で混合した。このサンプルを55℃の水浴中に10分間入れた。インキュベーション後、このサンプルを、スイングバケット遠心分離機に入れ、そして3,400×gにて10分間スピンした。清澄した上清を取り出し、そして2mlチューブに移した。50μLの緩衝液2を添加し、このチューブを混合し、そして55℃にて10分間インキュベートした。このサンプルを冷まし、そして(上清の)0.3倍の体積の緩衝液3を添加して混合する。このサンプルを氷上に5分間置き、次いでフルスピード(14,000rpm)で5分間遠心分離した。清澄にした上清を取り出し、そして新たな2mlチューブに移した。0.5倍の体積の95%エタノールを添加し、そしてチューブを反転によって混合した。900μLの混合した上清を、(収集チューブの内側の)このカラムに添加し、そしてこのサンプルを、2,000rpmにて30秒間遠心分離した。このカラムを取り出し、素通り画分を捨てた。このカラムを収集チューブに戻し、そして残りの上清をこのカラムに添加した。さらに、このサンプルを2,000rpmにて30秒間遠心分離し、そして素通り画分を捨てた。このカラムを、400μLの70%エタノールを添加することによって2回洗浄し、そして10,000rpmにて30秒間遠心分離した。素通り画分を捨て、そしてこのカラムを収集チューブに戻した。残りのアルコールを、10,000rpmにて1分間の最終スピンによって除去した。このカラムを新たな1.5mLチューブに移し、そして80μLの緩衝液4をこのカラムに添加した。このサンプルを5分間静置し、そして1分間の遠心分離によってDNAを最終的に溶出させた。1μL〜4μLのサンプルを取り出し、そして新たに作製されたPCR反応混合物に添加した。このPCR反応混合物は、2.5μlの10×PCR緩衝液、1.5μlのMgCl 50mM、0.5μlのdNTP 10mM、0.25μlのBSA、0.25μlのTaq、0.25μlの各プライマー、17.5μlの水、および2μlのサンプルを含んでいた。
【0146】
トウモロコシサンプルの正方向プライマーは、CCGCTGTATCACAAGGGCTGGTACC(配列番号1)であり、逆方向プライマーは、GGAGCCCGTGTAGAGCATGACGATC(配列番号2)であった。これらのプライマーは、インベルターゼ遺伝子に対応する。
【0147】
ポジティブコントロールPCR反応を、トウモロコシDNAおよびインベルターゼ遺伝子特異的プライマーでスパイクした。ネガティブDNAコントロールPCR反応は、インベルターゼ遺伝子特異的プライマーを含んでいたが、トウモロコシDNAを有さなかった。反応を、MJ Research PCT−100機で、以下の条件に従って行った:95℃で2分間の最初の融解、続いて95℃にて20秒間、53℃にて10秒間および72℃にて10秒間を42サイクル、72℃にて3分間の最終工程、および4℃での保持。
【0148】
PCRの後、このサンプルを、2% TBEEアガロースゲルにて100Vで30分間泳動した。次いで、ゲルをUVトランスルミネーター(transluminator)に移し、そしてPolaroid Landカメラで撮影した。増幅したインベルターゼ配列は、ポジティブコントロールおよび試験サンプルについて検出され、そしてネガティブコントロールでは検出されなかった。
【0149】
本明細書中に引用される全ての刊行物、特許および特許出願は、あたかも各々の個々の刊行物、特許または特許出願が参考として援用されると具体的かつ個々に示されたかのように、その全体が全ての目的のために、本明細書中に参考として援用される。理解を明確にする目的で例示および例として上記を幾分詳細に記載してきたが、本願の教示に照らせば、請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく特定の変更および改変が本願に行われ得ることが当業者に容易に明らかである。
【0150】
出願人は、請求していない何らかの主題を放棄したわけでも、公共の用に供したわけでもない。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】図1は、本明細書中に開示した方法によって得られた核酸由来のPCRアンプリコンのアガロースゲルを示す。この増幅した核酸は、1a)粉に挽いたトウモロコシおよび1b)コーンスターチから調製した核酸から増幅したインベルターゼ遺伝子の一部である。
【図2】図2は、本明細書中に開示した方法によって得られた核酸由来のPCRアンプリコンのアガロースゲルの複合物を示す。このアンプリコンは、2a)マルトデキストリン、2b)小麦粉末、2c)コーンチップ、2d)コーンミール、2e)大豆粉末、2f)トウモロコシ粒、および2g)パパイヤ果実から調製した核酸から増幅したrubisco遺伝子の一部である。
【図3】図3は、本明細書中に開示した方法によって得られた核酸由来のPCRアンプリコンのアガロースゲルを示す。この増幅した核酸は、3a)大豆ミールおよび3b)大豆粉末から調製した核酸から増幅したレクチン遺伝子の一部であり、そして3c)コーンミール、および3d)トウモロコシ粉末から抽出した核酸から増幅したrubisco遺伝子の一部である。
【図4】図4は、本明細書中に開示した方法によって得られた核酸由来のPCRアンプリコンのアガロースゲルを示す。この増幅した核酸は、以下から調製した核酸から増幅したrubisco遺伝子の一部である:4a)グリコアミラーゼで処理した粉に挽いたトウモロコシ、4b)グリコアミラーゼで処理したコーンチップ、4c)グリコアミラーゼで処理したコーンスターチ、4d)グリコアミラーゼで処理していない粉に挽いたトウモロコシ、4e)グリコアミラーゼで処理していないコーンチップ、4f)グリコアミラーゼで処理していないコーンスターチ、4g)グリコアミラーゼで処理したTwix(登録商標)クッキー、4h)グリコアミラーゼで処理した小麦クラッカー、4i)グリコアミラーゼで処理した味噌粉末、4j)グリコアミラーゼで処理したオートシリアル、4k)グリコアミラーゼで処理していないTwix(登録商標)クッキー、4l)グリコアミラーゼで処理していない小麦クラッカー、4m)グリコアミラーゼで処理していない味噌粉末、4n)グリコアミラーゼで処理していないオートシリアル、4o)ポジティブPCRコントロール、および4p)ネガティブPCRコントロール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多糖含有サンプル中で検出のための核酸を調製する方法であって、該方法は、1以上のグリコシダーゼを該多糖含有サンプルに提供して、該検出のための核酸を調製する工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記1以上のグリコシダーゼを提供した後に前記サンプルから前記核酸を抽出する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
多糖含有サンプル中で核酸を検出する方法であって、請求項1に記載の方法に従って前記核酸を調製する工程;および該核酸を検出する工程を包含する、方法。
【請求項4】
前記1以上のグリコシダーゼが、グリコアミラーゼ、枝切り酵素、ヘテロサッカリド分解酵素、および非グルコースホモサッカリド分解酵素からなる群より選択されるグリコシダーゼを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1以上のグリコシダーゼが、1以上のグリコアミラーゼを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記グリコアミラーゼが、α−アミラーゼである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記グリコアミラーゼが、β−アミラーゼである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記グリコアミラーゼが、グルカンα1,4−グルコシダーゼである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記グリコアミラーゼが、グルカンα1,6−グルコシダーゼである、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記抽出する工程が、前記核酸を部分的に精製することを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記抽出する工程が、前記核酸を単離することを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記抽出する工程が、前記サンプルにアルコールを提供することを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記アルコールが、エタノール、イソプロパノールまたはそれらの組合せである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記核酸が、デオキシリボ核酸(DNA)である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記核酸が、リボ核酸(RNA)である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記多糖が、デンプンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記サンプルが、食品サンプルである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記食品サンプルが、加工食品サンプルである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記加工食品サンプルが、コーンミール、大豆粉末、小麦粉末、コーンスターチ、コーンチップおよびマルトデキストリンからなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記1以上のグリコシダーゼを提供した後に前記サンプルから前記多糖を除去する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記サンプルから細胞成分を除去する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記細胞成分が、細胞膜である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記細胞成分が、細胞タンパク質である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記細胞成分が、前記サンプルに酢酸カリウムおよび/または酢酸ナトリウムを提供して前記細胞成分を沈澱させることにより除去される、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記抽出する工程が、前記サンプルをカラムに適用することを包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記核酸が、メッセンジャーリボ核酸(mRNA)であり、前記カラムが、オリゴデオキシチミジンカラムである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
サンプルから核酸を検出するためのキットであって、該キットは:
a)グリコシダーゼ;
b)該キットを使用するための指示書
を備える、キット。
【請求項28】
前記グリコシダーゼが、グリコアミラーゼである、請求項27に記載のキット。
【請求項29】
前記グリコアミラーゼが、α−アミラーゼである、請求項27に記載のキット。
【請求項30】
前記グリコアミラーゼが、β−アミラーゼである、請求項27に記載のキット。
【請求項31】
前記グリコアミラーゼが、グルカンα1,4−グルコシダーゼである、請求項27に記載のキット。
【請求項32】
前記グリコアミラーゼが、グルカンα1,6−グルコシダーゼである、請求項27に記載のキット。
【請求項33】
酢酸カリウムおよび/または酢酸ナトリウムをさらに含む、請求項27に記載のキット。
【請求項34】
ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)をさらに含む、請求項27に記載のキット。
【請求項35】
アルコールをさらに含む、請求項27に記載のキット。
【請求項36】
前記アルコールが、エタノール、イソプロパノール、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項27に記載のキット。
【請求項37】
カラムをさらに備える、請求項27に記載のキット。
【請求項38】
前記カラムが、ガラスビーズを含む、請求項37に記載のキット。
【請求項39】
前記カラムが、ガラスウールを含む、請求項37に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−512811(P2007−512811A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539800(P2006−539800)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/037488
【国際公開番号】WO2005/047521
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.POLAROID
【出願人】(505430285)インベスチゲン, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】