説明

検出装置、及びイメージング装置

【課題】コヒーレント電磁波源をも用いることができて、精密な測定が可能な検出装置及びイメージング装置を提供する。
【解決手段】検出装置は、発生部101、第1カプラ部104、遅延部106、第2カプラ部104、信号処理部108を有する。発生部101は、コヒーレント電磁波源102と拡散部103を含み、拡散部103は、符号パターンで電磁波源102の電磁波の伝播状態を変化させて擬似的にインコヒーレントな電磁波を生成する。第1カプラ部104は、発生部101からの電磁波を分岐する。遅延部106は、電磁波の伝播状態を変化させて伝播時間を遅延させる。第2カプラ部104は、測定対象105で伝播状態が変化した電磁波と、遅延部106からの電磁波を合流させて両者間の相関をとる。検出部107は、第2カプラ部104からの電磁波の信号を検出する。信号処理部108は、遅延部106の遅延量と検出部107の検出信号強度に基づいて、測定対象105の情報を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波を用いて測定対象の情報を取得する検出装置、及び測定対象のイメージを取得するイメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ミリ波からテラヘルツ波領域(30GHzから30THz)のうちの任意の帯域の周波数を含む高周波電磁波(本明細書ではテラヘルツ波と呼ぶ)を用いた非破壊な検査技術が開発されている。テラヘルツ波には、生体分子をはじめとして、様々な物質の吸収線が存在することが知られている。この周波数領域の応用分野として、X線に替わる安全な透視検査を行うイメージング技術がある。また、物質内部の吸収スペクトルや複素誘電率を求めて、分子の結合状態を調べる分光技術がある。また、生体分子の解析技術、キャリヤ濃度や移動度を評価する技術等が期待される。
【0003】
この様な技術として、ピコ秒オーダのパルス信号(すなわちテラヘルツ波)を用いた非破壊な検査技術、及びイメージング技術が提案されている(特許文献1参照)。この提案は、2次元のイメージングに関するものである。また、インコヒーレントな電磁波源を用い、屈折率の異なる層の境からの散乱光を検出し、深さ方向の情報を取得するイメージング技術も提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平10―090174号公報
【特許文献2】特公平06―035946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記技術は、インコヒーレント光(パルス信号を含む)を用いてイメージングを行うものである。しかし、インコヒーレントな電磁波源は、CW(Continuous Wave)電磁波源に比べ、低出力で安定性に劣る。そのため、より精密な測定を行うことが難しくなる。特に、テラヘルツ波の領域における多くのインコヒーレントな電磁波源は、マイクロワットオーダの微弱な信号であり、装置構成も大型化するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑み、本発明の検出装置は、以下のように構成される。
本検出装置は、インコヒーレントな電磁波を生成する発生部と、第1カプラ部と、遅延部と、第2カプラ部と、信号処理部とを有する。第1カプラ部は、前記インコヒーレントな電磁波を分岐する。遅延部は、第1カプラ部で分岐される前記インコヒーレントな電磁波の伝播状態を変化させて伝播時間を遅延させる。第2カプラ部は、第1カプラ部で分岐され測定対象によって伝播状態が変化した電磁波と、第1カプラ部で分岐され遅延部により伝播状態が変化した電磁波とを合流させて両者間の相関をとる。検出部は、第2カプラ部により合流したインコヒーレントな電磁波の信号を検出する。信号処理部は、遅延部による遅延量と検出部による検出信号の強度に基づいて、測定対象の情報を取得する。更に、発生部は、コヒーレントな電磁波を発生する電磁波源と、拡散部とを含み、拡散部は、時系列的に変化する符号パターンで電磁波源より発生するコヒーレントな電磁波の伝播状態を変化させて擬似的にインコヒーレントな電磁波を生成する。
【0006】
また、上記課題に鑑み、本発明のイメージング装置は、上記検出装置において、信号処理部が、遅延部による遅延量と検出部による検出信号の強度に基づいて、測定対象の内部の深さ方向の情報を取得する。こうして、インコヒーレントな電磁波の伝播方向の測定対象の内部イメージが取得される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の検出装置及びイメージング装置によれば、比較的高出力なコヒーレント電磁波源をも用いることができるため、検出部で検出される検出信号強度が上がり、より精密な測定が可能となる。電磁波は原理的にどのような周波数のものでも使用できるが、特に、感度の良い検出器やパワーの大きい電磁波源を得るのが容易でない30GHzから30THzのうちの帯域の周波数を含むテラヘルツ波を用いるものにおいて、本発明は顕著な効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の思想を実施し得る形態について、図面を参照して説明する。尚、図中、同一機能を担う要素に関しては、同符号を用いる。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態に係るイメージング装置の概略構成図である。図1において、本実施形態のイメージング装置は、発生部101、カプラ部104、遅延部106、検出部107、信号処理部108で構成される。ここでは、単一のカプラ部104が、第1カプラ部の機能と第2カプラ部の機能を有している。第1カプラ部の機能は、発生部101からのインコヒーレントな電磁波を分岐するものである。第2カプラ部の機能は、サンプル(測定対象)105によって伝播状態が変化した第1カプラ部で分岐されるインコヒーレントな電磁波と、遅延部106により伝播状態が変化したインコヒーレントな電磁波を合流させて両者間の相関をとるものである。
【0010】
発生部101は、コヒーレントな電磁波源であるレーザ源102と、拡散部103とによって構成される。レーザ源102は、コヒーレントな単一波長の電磁波(CW光)を発生する部分である。拡散部103は、レーザ源102で発生する電磁波に対し、時間的にほぼランダムな変調(擬似ランダムな変調)を加えることで、このコヒーレントな電磁波を擬似的にインコヒーレントな電磁波に変換する部分である。時系列的(すなわち時間的に)に変化する符号パターンである任意の符号化信号を用いて、例えば、レーザ源102で発生する電磁波に対してデジタル的にON/OFFの強度変調を加えることで、擬似的にインコヒーレントな電磁波とする。または、この符号化信号に対応させて、コヒーレントな電磁波の位相をアナログ的に変調することで、粗密波を作り出し、これをインコヒーレントな電磁波とする。拡散部103の構成は、上記インコヒーレントな電磁波の生成という目的を達成することができれば、その態様は問わない。
【0011】
カプラ部104は、発生部101より出力されるインコヒーレントな電磁波を、一定の割合比で、遅延部106とサンプル105の方向に分岐する。更に、上述したように、カプラ部104は、遅延部106とサンプル105から来るインコヒーレントな電磁波を合流させ、検出部107に出力する。遅延部106は、カプラ部104から出力されるインコヒーレントな電磁波の伝播状態を変化させて伝播時間を遅延させ、時間遅延を与える部分である。
【0012】
検出部107は、カプラ部104から出力されるインコヒーレントな電磁波の信号の強度を検出する部分である。そして、信号処理部108は、検出部107の検出信号と遅延部106の時間遅延量をモニタし、サンプル105の表面及び内部の深さ方向(電磁波の伝播方向)の情報を算出する部分である。こうして、信号処理部108は、電磁波の伝播方向のサンプル105の内部形状を取得し、必要に応じて、測定対象の内部イメージを表示部に表示する。
【0013】
図面を参照しつつ、より詳細な動作を説明する。
図1において、レーザ源102は、コヒーレントな電磁波を生成する。拡散部103は、このコヒーレントな電磁波に対し、所定の符号パターンによって変調を加え、インコヒーレントな電磁波に変換する。本実施形態では、例えば、レーザ源102の出力をON-OFFスイッチングすることで、デジタル的な拡散を行うものとする。ここでは、説明を分かり易くするために、(10001010)というような8ビットの符号パターンを用いて、拡散を行うものとする。
【0014】
発生部101より出力された上記インコヒーレントな電磁波は、カプラ部104に到達する。この電磁波は、サンプル105及び遅延部106の方向に向かう2つに分岐される。図1に示すように、サンプル105に到達したインコヒーレントな電磁波は、サンプル105の表面及び内部を構成する屈折率差による界面(ハッチング部と白い部分の境界線で示す)において散乱される。散乱した電磁波は、再びカプラ部104に戻ってそこで検出部107の方向に反射される。この時、カプラ部104に到達する電磁波は、サンプル105の表面及び内部の界面の数と位置に応じて、エコー信号のように或る時間差をもって、順次到達する。
【0015】
一方、遅延部106に到達した電磁波は、遅延部106によって、或る時間遅延を与えられた状態で、再びカプラ部104の方向に反射される。
【0016】
カプラ部104では、サンプル105と遅延部106で反射された電磁波が、それぞれ到達する。この時、カプラ部104は、サンプル105と遅延部106で反射されて到達した電磁波を干渉させ、検出部107に出力する。検出部107は、この干渉した電磁波の強度を検出する。
【0017】
この時の信号例の様子を図9に示す。図9において、(A)は、サンプル105と遅延部106で反射された2つの電磁波の相関がとれている状態(すなわち、カプラ部104に到達するタイミングが同じ状態)の信号の時系列的な流れを示している。他方、(B)は、サンプル105と遅延部106で反射された電磁波が、1ビットずれた状態でカプラ部104に到達した場合を示している。
【0018】
図9(A)、(B)において、(1)は、カプラ部104に入力される電磁波の電界振幅(E)を示している。詳しくは、(リファレンス)は、遅延部106で反射されて到達する電磁波を示し、(サンプル)は、サンプル105における任意の屈折率界面で反射されて到達する電磁波を示している。(2)は、各電磁波がカプラ部104で干渉し、検出部107へ出力される電磁波の電界振幅(E、2E)を示している。図示のように、カプラ部104へ到達する2つの電磁波のタイミングによって、波形が異なる。
【0019】
また、図9(A)、(B)において、(3)は、検出部107で検出される電磁波の強度信号を示している。検出部107は、電磁波の強度信号を検出する部分であるため、到達する電磁波の電界振幅(E、2E)の2乗に比例する値を出力する。ここで、図9中に記載されている記号Aは、検出部107の特性によってきまる定数である。(3)に示す信号波形は、矩形波状であるが、検出部107の持つ時定数によっては、波形の高周波成分が減衰(波形がなまる)した形で出力される。
【0020】
図9に示すように、検出部107で検出される電磁波の強度波形は、カプラ部104へ到達する2つの電磁波のタイミングによって、波形や平均的な強度値が異なることが分かる。つまり、カプラ部104へ到達する電磁波のタイミングにより、干渉性が変化する。このことから、拡散部103による擬似ランダムな変調により、CW光を擬似的にインコヒーレント光とみなすことができる。テラヘルツ波の領域では、高出力で安価なインコヒーレントな電磁波源がないことから、本実施形態などで示す本発明の構成は、この電磁波領域で用いると特に効果的である。
【0021】
信号処理部108では、上記の如き検出部107の出力より、カプラ部104における信号の相関を判断する。具体的には、検出部107の出力が、所望の波形パターン(例えば、図9(A)の状態)となる個所、もしくは、検出される平均的な強度値が最大となる箇所について、相関がとれていると判断する。
【0022】
このような一連の信号の流れの検出について、本実施形態のイメージング装置は、遅延部106の遅延状態を掃引して行う。この結果、遅延部106による遅延状態と検出部107で検出される相関状態より、サンプル105の屈折率界面の深さ方向(この場合、電磁波の伝播方向)の位置を特定でき、サンプル105の深さ方向の情報を取得することができる。このような作業を、サンプル105に入射する電磁波の位置を面内方向(例えば、深さ方向に対して垂直な方向)に走査しつつ実行することで、サンプル105の3次元情報を取得することもできる。測定対象105に照射される電磁波と測定対象105の照射箇所との相対位置を変化させる走査手段としては、例えば、図1の上下方向或いは紙面に垂直方向にサンプル105を移動する移動機構がある。或いは、サンプル105に対して電磁波自体を光学系の移動で走査する方式でもよい。この場合、カプラ部104からサンプル105の電磁波照射個所までの伝播経路の長さは一定になるように光学系を移動させる必要がある。これは、電磁波の走査によって、サンプル105とカプラ部104の距離が変化すると、電磁波の相関状態が変化してしまうためである。この状態を回避するために、例えば、カプラ部104とサンプル105間の距離を測定する側距手段を別途設け、距離を一定にするように移動手段を制御してもよい。また、両者の距離情報を利用して、測定結果を補正する形態でもよい。
【0023】
上記深さ方向の分解能は、発生部101を構成する拡散部103の信号拡散状態に依存する。例えば、上記構成例の場合、8ビットの符号パターンによる変調を、どの程度の時間スパンで行うかによって決まる。1psecの時間あたり、8ビットの符号化信号によってコヒーレントな電磁波を拡散させる場合、分解能は、およそ0.3mmとなる。分解能は、拡散部103の能力や本イメージング装置の適応先に応じて、選択される。
【0024】
尚、ここまでは、サンプル105及び遅延部106において反射される電磁波を用いる系について述べてきたが、これに限るものではない。例えば、図10のような構成を取ることにより、サンプル105及び遅延部106において透過される電磁波を用いる系にすることもできる。ここでは、上記第1カプラ部104と上記第2カプラ部104とが別個に設けられる。
【0025】
また、本実施例は、内部形状を持たない物質などの測定対象の一般的な情報の取得を行う検出装置として構成することもできる。例えば、図9(A)で示すような信号を、測定対象がある場合と無い場合のそれぞれで検出し、両者の比較から、測定対象の誘電率、吸収係数などを検出することができる。これに基づいて測定対象の同定、特性検査などを行ってもよい。測定対象の或る深さの部分の誘電率、吸収係数などを検出することもできる。
【0026】
発生部101からの電磁波は、ミラーやレンズなどで光学的に所望の形状(ライン状、円形状など)に成形することができる。例えば、ライン状の電磁波の形状に応じて、検出部107を検出器アレイとすれば、検出動作をより高速に行えることになる。
【0027】
発生部101は、インコヒーレントな電磁波を複数生成する構成にもできる。例えば、発生部101と検出部107の組を複数組設ける形態も可能である。この様な形態をとることにより、測定対象のより広範囲の分析をより短時間で行うことができる。例えば、こうした複数の組が、測定対象の各領域を分担して分析したり、使用する波長を異ならせて各波長領域において分担して測定対象を分析したりすることができる。また、各組が、同じ波長領域において測定対象を測定し、得られた信号の差分を取ってより精度の高い分析をすることもできる。複数組を用いる形態では、場合に応じて、各組に割り当てられる波長と符号パターンは適宜決めればよい。複数のインコヒーレントな電磁波をそれぞれ直交関係にあるように符号パターンで生成すれば、各電磁波のクロストークを低減することができる。
【0028】
また、発生部101と検出部107の組が複数組ある場合でも、上記の如き走査手段を組み合わせることで、より広範囲のイメージを短時間で取得することができる。
【0029】
前記インコヒーレントな電磁波は、粗密波であるようにもできる。この場合、電磁波のON-OFFで拡散を行う方法に比べ、検出部107が単位時間あたりに検出する電磁波の光量が比較的多くなる。よって、受信可能な拡散信号の単位時間あたりの変化率が制限される度合いが軽減される。こうして、検出感度が上がり、S/Nの向上やシステムの高速化が実現できる。
【0030】
粗密波にする場合、カプラ部104と検出部107の間の電磁波経路中に、前記粗密波の粗密状態を解消する復元部を有するようにできる。復元部の構成としては、種々のものがある。具体的には、後述する図7のように振動部703で符号パターンに従ってレーザ源102を振動させてインコヒーレントな電磁波を生成する場合、検出部107も該符号パターンに従って振動させて電磁波を受ける。例えば、検出部107に到達する電磁波に対し、粗密波の粗部分が到達しようとする時は、検出部107をカプラ部104に近づける方向に検出部107の位置を制御する。また、粗密波の密部分が到達しようとする時は、逆に検出部107を遠ざける方向に位置制御する。この様な移動制御を符号パターンに従って行うことで電磁波の粗密間隔を一定にして(帯域の復元に相当)、帯域復元された電磁波を検出部107で検出することができる。
【0031】
以上のような構成によって、CW電磁波源などであっても、擬似的なインコヒーレント光が得られる。特に、テラヘルツ波領域では、従来のインコヒーレントな電磁波源に比べ、単一波長の半導体レーザ等の小型で安価な電磁波源を使用できるため、装置構成が小型化し、コストも安くなるという効果がある。また、本実施例のイメージング装置及び検出装置によれば、高出力なコヒーレント電磁波源をも用いることができるため、検出部で検出される信号強度が上がり、より精密な測定が可能となる。そして、より深い深さ方向のサンプルの情報を取得することができる。
【実施例】
【0032】
以下に、本発明の思想を実施し得る形態に関して、より具体的な実施例を図面を参照して説明する。尚、以下の実施例において、既に説明した部分と共通する部分の記載は省略する。
【0033】
(実施例1)
本実施例は、上記実施形態のイメージング装置を実現し得る一構成例に係る。本実施例では、空間光学系を用いたサンプル105の深さ方向の情報を入手するイメージング装置の適応例を示す。
【0034】
図2は、本実施例のイメージング装置の概略構成図である。本実施例では、図2に示すように、カプラ部104としてビームスプリッタ204を用いる。遅延部106としては、ミラーのような、電磁波を光学的に反射する反射部206を用いる。
【0035】
また、レーザ源102として、量子カスケードレーザ(QCL)を用いる。ただし、これに限らず、共鳴トンネルダイオード(RTD)のような、その他の半導体素子を用いることもできる。また、非線形光学結晶を利用した発振器や、後進波発振器(BWO)の様な電子管を用いた発振器でもよい。レーザ源102などの電磁波源は、単一周波数成分を外部に放射する目的を達成できれば、その態様は問わない。こうした発振器は小型化が容易で、比較的パワーの大きいコヒーレントな電磁波を出射することができる。
【0036】
本実施例の拡散部103は、このようなレーザ源102の駆動ドライバであり、駆動ドライバによって出力を制御し、スイッチングを行う。また、本実施例では、検出部107はボロメータのような熱型検出素子を用いる。検出部107に関しても、到達する電磁波の強度を検出する目的を達成できれば、その態様は問わない。
【0037】
本実施例では、反射部206の位置は、電磁波の伝播方向に変化させる。この時、ビームスプリッタ204で干渉される複数の電磁波の強度を検出部107でモニタすることで、サンプル105の深さ方向の情報を取得することができる。
【0038】
このような構成によって、CW電磁波源を用いても、発生部101をインコヒーレントな電磁波源とみなすことができるイメージング装置を提供できる。そのため、CW電磁波源を用いる干渉系に特有のスペックルノイズを減少できるので、測定精度を向上することができる。その他の点は、上記実施形態と同様である。
【0039】
(実施例2)
本実施例も、上記実施形態のイメージング装置を実現し得る一構成例を示す。具体的には、実施例1の変形例であり、電磁波の伝播経路を、光導波路に置き換えたものである。
【0040】
図3は、本実施例のイメージング装置の概略構成図である。図3のように、電磁波の伝播経路として、ファイバによる光導波路309を用いる。これに対応して、カプラ部104としてファイバカプラ304を用いる。
【0041】
このような構成によって、電磁波の主要な伝播経路は光導波路309となる。この結果、電磁波と不要な外来ノイズとの干渉を低減することができるため、S/N比が改善し、測定精度を向上できる。また、ファイバによる光導波路309を用いるため、空間光学系に比べて光軸調整作業が簡単であり、取り扱いが簡便になるという効果がある。更に、ファイバによる光導波路309を用いるため、設置自由度が向上する効果がある。その他の点は、上記実施形態と同様である。
【0042】
(実施例3)
本実施例は、発生部101における擬似的にインコヒーレントな電磁波の発生方法が上記実施例と異なる実施例に関する。具体的には、本実施例では、コヒーレントな電磁波に対し、電磁波を透過する部分と反射する部分を、上記時系列的に変化する符号パターンに応じて、順次機械的に入れ替えることで、インコヒーレントな電磁波を作る。
【0043】
例えば、拡散部103として、図4に示すような回転盤403を用いる。図4のように、回転盤403は、電磁波を反射する反射部410と電磁波を透過する透過部411で構成する。例えば、反射部410は金属導体で構成する。透過部411は、空洞でもよいし、使用する電磁波に対して極力透明な物質が充填されてもよい。回転盤403は、図4の紙面の法線方向に伸びる回転軸を中心として回転する。
【0044】
電磁波は、回転軸にほぼ沿う方向で、回転盤403に入射する。回転盤403に入射する電磁波は、電磁波の伝播経路中に連続的に交互に入れ替わる反射部410と透過部411によってスイッチングされ、擬似的にインコヒーレントな電磁波となる。
【0045】
尚、図4では、反射部410と透過部411は規則的に配置されているように描かれているが、実際には、インコヒーレントな電磁波を生成するための上記符号パターンに応じて配置される。この場合、符号パターンに応じて、反射部410と透過部411が配置される。もしくは、回転盤403の回転速度を符号パターンに応じて変化させることによって、インコヒーレントな電磁波とすることもできる。この場合は、必ずしも、反射部410と透過部411の配置数や配置間隔は符号パターンに依る必要はない。
【0046】
また、回転盤403による反射を避けるために、その表面に無反射コーティングもしくはSWS(Sub
Wavelength Structure)構造を作り込んでもよい。本実施例では、回転駆動系によるインコヒーレントな電磁波の発生方法を述べたが、反射部と透過部を有する拡散部材を並進移動させるリニア駆動系を用いることも可能である。
【0047】
本実施例では、機械的にインコヒーレントな電磁波をつくるため、イメージング装置の作製が容易になり、動作が安定するという効果がある。その他の点は、上記実施形態と同様である。
【0048】
(実施例4)
本実施例は、発生部101における擬似的にインコヒーレントな電磁波の発生方法が上記実施例と異なる実施例に関する。具体的には、コヒーレントな電磁波に対し、上記符号パターンに応じて電磁波の伝播速度を変化させることによって、インコヒーレントな電磁波を作る。
【0049】
本実施例では、拡散部103として、図5のような回転盤503を用いる。図5に示すように、回転盤503は、電磁波の伝播速度が異なる複数の透過部511によって構成される。例えば、複数の透過部511は、各透過部511の厚みを変えることで、遅延時間を制御する。本実施例では、石英基板を用いるが、拡散部103の目的を達成できる部材であれば、これに限らない。また、同一の物質ではなく、異なる物質によって透過部511を形成して、伝播状態を制御してもよい。各透過部511を構成する物質は、極力使用する電磁波に対し透明であることが望ましい。実施例3と同じく、回転盤503は、図5の紙面の法線方向を回転軸として回転する。ここでも、電磁波は、回転軸にほぼ沿う形で、回転盤503に入射する。
【0050】
回転盤503に入射する電磁波は、電磁波の伝播経路中に連続的に交互に入れ替わる複数の透過部511によって、位相状態が変化し、上記符号パターンに応じた粗密波となって伝播する。この粗密波が、擬似的にインコヒーレントな電磁波となる。
【0051】
尚、実施例3と同じく、複数の透過部511は規則的に配置されているように描かれているが、実際には、インコヒーレントな電磁波とするために、上記符号パターンに応じて各透過部511の占有領域を変化させる。もしくは、回転速度を符号パターンに応じて変化させることによって、インコヒーレントな電磁波とすることもできる。この場合、必ずしも、複数の透過部511の配置数などは符号パターンに依る必要はない。
【0052】
本実施例では、擬似的にインコヒーレントな電磁波として、符号パターンに応じた粗密波を用いる。こうした粗密波は、スイッチングによるインコヒーレントな電磁波に比べ、電磁波を定常的に発生している状態に維持するため、単位時間あたりの平均的なパワーを大きくできる。つまり、電磁波の利用効率が上がるため、より精密な測定が可能となり、測定対象のより深い部分の情報を取得することが容易となるという効果がある。その他の点は、上記実施例3と同様である。
【0053】
(実施例5)
本実施例は、発生部101における擬似的にインコヒーレントな電磁波の発生方法が上記実施例と異なる実施例に関する。具体的には、MEMS(Micro
Electro Mechanical Systems)技術を用いて、上記符号パターンに応じて電磁波の伝播状態を変化させることによって、インコヒーレントな電磁波を作る。
【0054】
本実施例では、拡散部103として、例えば、図6のようなマイクロミラーを集積したMEMS素子を用いる。図6のMEMS素子は、可動なマイクロミラーである複数のスイッチ部603を有しており、入射する電磁波の反射方向を変化させることで、カプラ部104に到達する出射波の伝播遅延時間を制御する。この結果、上記符号パターンに応じた粗密波が形成できる。図6では、2つの電磁波経路(出射波1、出射波2)が示してあるが、3つ以上あってもよい。また、1つの電磁波経路において出射波を上記符号パターンに応じてオン・オフスイッチングし、インコヒーレントな電磁波とすることもできる。上記スイッチ部603は、例えば、磁石とコイルを含む電磁力駆動手段、対向する電極を含む静電力駆動手段などで揺動される。
【0055】
本実施例では、マイクロミラーを用いた拡散部103の例を示したが、その他のMEMS技術(例えば、スイッチ素子)を用いた素子を用いることもできる。また、図3のようにファイバ型の導波路を用いる場合、伝播状態が異なる複数のファイバ導波路の中から、電磁波を導入するファイバ導波路をMEMSスイッチによって上記符号パターンに応じて選択することで、同様の動作を行うこともできる。
【0056】
本実施例では、MEMS技術を適応した素子によって、上記符号パターンに応じて電磁波の伝播状態を制御し、インコヒーレントな電磁波を作る。そのため、装置の小型化が容易となる。また、素子構成も小さくなるので、機械的な共振周波数が上がり、上記符号パターンに応じた高速な変調が可能となる。そのため、より高い分解能でサンプル105の深さ方向の情報が取得できる。その他の点は、上記実施形態と同様である。
【0057】
(実施例6)
本実施例は、発生部101における擬似的にインコヒーレントな電磁波の発生方法が上記実施例と異なる実施例に関する。具体的には、電磁波の伝播方向に電磁波源102を上記符号パターンに応じて振動させることで、電磁波の伝播状態を制御するものである。
【0058】
本実施例では、例えば、図7のようにアクチュエータである振動部703にレーザ源102を固定し、これを電磁波の伝播方向に振動させる。その結果、カプラ部104に到達する電磁波の伝播遅延時間を制御でき、上記符号パターンに応じた粗密波が形成できる。振動部703によるレーザ源102の移動距離は、位相に換算してπから−πであることが望ましい。
【0059】
本実施例では、レーザ源102を振動させるという簡単な構成によって、インコヒーレントな電磁波を作ることができる。特に、電磁波の伝播状態を変化させるために、電磁波の伝播経路中に制御素子を介在させていないので、これらの制御素子による損失を無くすることができる。そのため、より精密な測定が可能となり、測定対象のより深い部分の情報を取得することが容易となる。その他の点は、上記実施形態と同様である。
【0060】
(実施例7)
本実施例は、発生部101における擬似的にインコヒーレントな電磁波の発生方法の発生方法が上記実施例と異なる実施例に関する。具体的には、電磁波の伝播経路の長さを上記符号パターンに応じて機械的に変化させ、電磁波の伝播状態を制御するものである。
【0061】
本実施例では、例えば、図8のように、アクチュエータである振動部703に遅延光学部812を固定し、これを振動させることで電磁波の光路長を変化させる。その結果、カプラ部104に到達する電磁波の伝播遅延状態を制御でき、上記符号パターンに応じた粗密波が形成できる。本実施例でも、振動部703による遅延光学部812の移動距離は、位相に換算してπから−πであることが望ましい。
【0062】
また、図3のようにファイバ型の導波路を用いる場合、この導波路を伸張・収縮させることで、同様の動作を行うことができる。この方法として、例えば、ファイバの外部に設けたアクチュエータによって、機械的に伸張・収縮させる方法がある。
【0063】
本実施例では、電磁波の伝播状態を制御する光学素子を振動させることで、インコヒーレントな電磁波を作る。このように小型で軽量な素子を振動させるので、機械的な共振周波数が上がり、上記符号パターンに応じた高速な変調が可能となる。そのため、より高い分解能でサンプル105の深さ方向の情報が取得できる。その他の点は、上記実施形態と同様である。
【0064】
(実施例8)
本実施例は、発生部101における擬似的にインコヒーレントな電磁波の発生方法が上記実施例と異なる実施例に関する。具体的には、外部のエネルギーによって、上記符号パターンに応じて電磁波の伝播状態を制御するものである。
【0065】
例えば、電磁波の伝播経路中に、外部の電界により屈折率が変化する電気光学素子を配置する。電気光学素子としては、BBO結晶、LiTzO3結晶、KTP結晶、ZnTe結晶など、外部の電界によって屈折率が変化する物質であればよい。また、図3のように、ファイバ型の導波路を用いる場合、ファイバの被膜材料の屈折率を外部の電界により変化させる態様であってもよい。
【0066】
このように、外部の電界によって電磁波の伝播を制御する素子を用いることによって、電磁波の光路長を変化させる。その結果、カプラ部104に到達する電磁波の伝播遅延状態を制御でき、上記符号パターンに応じた粗密波が形成できる。
【0067】
本実施例では、印加電界などの外部のエネルギーによって電磁波の伝播状態を制御している。その結果、高速な変調が可能となり、サンプル105の深さ方向分解能を向上させることができるという効果がある。
【0068】
(実施例9)
本実施例は、上記イメージング装置を実現し得る一構成例に係る。具体的には、マルチ化に関するものである。本実施例では、複数の符号パターンによって変調された複数のインコヒーレントな電磁波によって、サンプル105の深さ方向の情報を取得する。この時、望ましくは、各符号パターンは直交関係にある。
【0069】
本実施例では、複数の電磁波でサンプル105を照射することによって、サンプル105の情報を取得する。このことにより、イメージングの高速化が容易になる。特に、直交関係にある符号パターンを用いて電磁波を変調することで、各電磁波のクロストークを低減することができ、測定精度を維持することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施形態の概略構成図。
【図2】本発明の実施例1を説明する図。
【図3】本発明の実施例2を説明する図。
【図4】本発明の実施例3を説明する図。
【図5】本発明の実施例4を説明する図。
【図6】本発明の実施例5を説明する図。
【図7】本発明の実施例6を説明する図。
【図8】本発明の実施例7を説明する図。
【図9】本発明の装置の動作を説明する図。
【図10】本発明の別の実施形態の概略構成を説明する図。
【符号の説明】
【0071】
101 発生部
102 電磁波源(レーザ源)
103、403、503、603、703、812 拡散部(回転盤、スイッチ部、振動部、遅延光学部)
104 カプラ部(第1カプラ部、第2カプラ部)
105 測定対象(サンプル)
106、206 遅延部(反射部)
107 検出部
108 信号処理部
204 カプラ部(ビームスプリッタ)
304 カプラ部(ファイバカプラ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インコヒーレントな電磁波を生成する発生部と、
前記インコヒーレントな電磁波を分岐する第1カプラ部と、
前記第1カプラ部で分岐される前記インコヒーレントな電磁波の伝播状態を変化させて伝播時間を遅延させる遅延部と、
前記第1カプラ部で分岐され測定対象によって伝播状態が変化した電磁波と、前記第1カプラ部で分岐され前記遅延部により伝播状態が変化した電磁波とを合流させて両者間の相関をとる第2カプラ部と、
前記第2カプラ部により合流したインコヒーレントな電磁波の信号を検出する検出部と、
前記遅延部による遅延量と前記検出部による検出信号の強度に基づいて、前記測定対象の情報を取得する信号処理部と、
を有し、
前記発生部は、コヒーレントな電磁波を発生する電磁波源と、拡散部とを含み、前記拡散部は、時系列的に変化する符号パターンで前記電磁波源より発生するコヒーレントな電磁波の伝播状態を変化させて擬似的にインコヒーレントな電磁波を生成する、
ことを特徴とする検出装置。
【請求項2】
単一のカプラ部が、前記第1カプラ部と前記第2カプラ部を兼ねる請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記発生部は、インコヒーレントな電磁波を複数生成する請求項1または2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記複数のインコヒーレントな電磁波は、それぞれ直交関係にある請求項3に記載の検出装置。
【請求項5】
前記インコヒーレントな電磁波は、粗密波である請求項1乃至4のいずれかに記載の検出装置。
【請求項6】
前記第2カプラ部と前記検出部の間の電磁波経路中に、前記粗密波の粗密状態を解消する復元部を有する請求項5に記載の検出装置。
【請求項7】
前記測定対象に照射される前記インコヒーレントな電磁波と前記測定対象との相対位置を変化させる走査手段を有する請求項1乃至6のいずれかに記載の検出装置。
【請求項8】
前記電磁波は、30GHzから30THzのうちの帯域の周波数を含む電磁波である請求項1乃至7のいずれかに記載の検出装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の検出装置において、
前記信号処理部は、前記遅延部による遅延量と前記検出部による検出信号の強度に基づいて、前記測定対象の内部の深さ方向の情報を取得して、前記インコヒーレントな電磁波の伝播方向の内部イメージを取得することを特徴とするイメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−249577(P2008−249577A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92831(P2007−92831)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】