説明

検出装置

【課題】振動板の振動を抑制せずに出力信号を取得することが可能な接触検出装置を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明は、振動板の役割を果たす検出板120をケース体110に固定する際に、挟持部材130a、130bを介して検出板120の外周領域を部分的に固定する。本発明によれば、検出板120の外周領域全体がケース体110に固定されないため、振動の抑制を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動板に対する被接触物の接触を検出する検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、振動板を振動させ、この振動を用いて各種の処理を行う装置が数多くある。このような振動を用いる装置では、圧電素子等の振動子が固定された振動板の外周領域がケース体等に固定されている場合がある。例えば特許文献1には、ケースに設けられた段差状の支持部により振動板の周辺部を支持することが記載されている。
【特許文献1】特開2002−238094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上記従来の技術では、振動板の外周領域が固定されるため、振動板の振動が抑制されて振動による出力信号のレベルが低下する。例えば振動を用いた装置が、振動板の振動の変化により、振動板に物体が接触したか否かを判定する装置等であった場合、出力信号のレベルが低下すると振動の変化の検出が困難となる。
【0004】
本発明は、上記事情を鑑みてこれを解決すべく成されたものであり、振動板の振動を抑制せずに出力信号を取得することが可能な検出装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の如き構成を採用した。
【0006】
本発明の検出装置は、ケース体(110)と、振動板(120)とを含み、前記振動板(120)に対する被接触物の接触を検出する検出装置(100)であって、
前記振動板(120)は、
前記振動板(120)の外周領域の一部が、前記ケース体(110)との間に配置された挟持部材(130a、130b)を介して前記ケース体(110)に固定される構成とした。
【0007】
また本発明の検出装置において、前記挟持部材(130a、130b)は、前記外周領域と前記ケース体(110)との間に複数配置されており、
前記振動板(120)の外周領域は、複数配置された前記挟持部材(130a、130b)を介して前記ケース体(110)に固定された構成としても良い。
【0008】
また本発明の検出装置において、前記挟持部材(130a、130b)を形成する材料の材質は、前記振動板(120)を形成する材料の材質よりも硬質である構成としても良い。
【0009】
また本発明の検出装置において、前記振動板(120)に固定された圧電素子(140)と、
前記圧電素子(140)から出力される電圧信号の変動を検出する検出回路(300)を有し、
前記検出回路(300)は、
前記振動板(120)に対する被接触物の接触がない場合の電圧信号の波形を記憶する記憶手段(352)と、
前記圧電素子(140)から出力される電圧信号の波形を取得する取得手段(354)と、
前記記憶手段に記憶された波形と、前記取得手段により取得された前記電圧信号の波形とを比較する比較手段(355)と、を有し、
前記比較手段(355)による比較結果に基づき、前記振動板(120)に対する被接触物の接触を検出する構成としても良い。
【0010】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、振動板の振動を抑制せずに出力信号を取得することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、振動板をケース体に固定する際に、挟持部材を介して振動板の外周領域を部分的に固定する。本発明によれば、振動板の外周領域全体がケース体に固定されないため、振動の抑制を防止することができる。
(第一の実施形態)
以下に図面を参照して本発明の第一の実施形態について説明する。本実施形態では、本発明の接触検出装置の一実施形態である水滴検出装置について説明する。本実施形態の水滴検出装置では、振動板に水滴が接触したか否かを検出する装置である。
【0013】
図1は、第一の実施形態の水滴検出装置100を示す斜視図である。本実施形態の水滴検出装置100は、ケース体110から検出領域120Aを露出させた検出板120を有する。
【0014】
本実施形態のケース体110は、回路収納部111と蓋部112とを有する。回路収納部111には、水滴検出を行うための回路等が収納されている。蓋部112は、回路収納部111の蓋となる。また本実施形態のケース体110の回路収納部111及び蓋部112には、それぞれ検出領域120Aを取り囲む枠部113a、113bと検出領域120Aを露出させるための切り抜き部114a、114bが形成されている。枠部113a、113b及び切り抜き部114a、114bは、回路収納部111に蓋部112が被せられたとき、それぞれが重なって検出領域120Aが露出するように形成されている。
【0015】
本実施形態の検出板120は、例えば透明な板に後述する圧電素子が接着されたものであり、振動板として機能する。本実施形態の検出板120は、圧電素子が接着されたガラス板とした。尚圧電素子は、検出板120の露出面120A以外の箇所に接着されているものとした。
【0016】
本実施形態の水滴検出装置100では、回路収納部111に収納された回路により圧電素子を予め振動させておき、圧電素子の振動が伝搬された検出領域120Aに水滴が付着したときの検出領域120Aの振動の変化に基づき、水滴の付着(接触)を検出する。
【0017】
次に図2を参照して、本実施形態の水滴検出装置100における検出板120の固定方法について説明する。図2は、検出板120の固定方法を説明する図である。図2(A)は、水滴検出装置100の上面投透視図であり、図2(B)は水滴検出装置100のA−A断面図である。
【0018】
本実施形態の検出板120は、検出領域120Aが露出するように挟持されている。尚検出領域120Aは、検出板120において切り抜き部114a、114bから露出している領域である。検出領域120Aは、例えば本実施形態の水滴検出装置100が設置される目的等を考慮して決定されても良い。例えば本実施形態の水滴検出装置100が、雨滴検出を目的として設置される場合には、検出領域120Aは広い方が、広範囲での雨滴検出を行うことができるため好ましい。また本実施形態の水滴検出装置100が、水滴が落下した位置を特定する目的として設定される場合には、検出領域120Aは狭い方が、より精密に位置を特定することができるため好ましい。
【0019】
また検出板120には、検出領域120A以外の領域に圧電素子140が接着されて固定されている。尚圧電素子140は、検出板120と密着するように接着されていることが好ましい。圧電素子140は、後述する駆動回路及び検出回路と接続されており、駆動回路からの信号に基づき駆動する。
【0020】
また本実施形態の検出板120は、外周領域を回路収納部111に設けられた挟持部材130bと、蓋部112に設けられた挟持部材130a(図2(B)参照)とにより挟持されている。検出板120の外周領域とは、例えば検出領域120Aの外側であって、枠部113a、113bと重なる領域を示す。
【0021】
本実施形態では、このように検出板120を挟持部材130a、130bで挟持するため、検出板120がケース体110(回路収納部111及び蓋部112)に触れることがない。よって本実施形態では、検出板120がケース体110に直接固定されることにより、圧電素子140から検出板120に伝搬された振動が抑制されることがない。
【0022】
また本実施形態の検出板120は、外周領域が部分的に挟持部材130a、130bに挟持されている。よって本実施形態では、検出板120の外周領域全てが固定された状態に比べて、検出板120に伝搬された振動は抑制されない。このため本実施形態では、検出板120の微細な振動の変化を検出することができる。
【0023】
また本実施形態では、挟持部材130a、130bは、検出板120よりも硬質な材質で形成されることが好ましい。例えば本実施形態の検出板120がガラスであった場合には、挟持部材130a、130bは金属等で形成されることが好ましい。挟持部材130a、130bを検出板120よりも硬質な部材で形成した場合、検出板120に伝搬される振動(表面弾性波)が挟持部材130a、130bに吸収されないため、検出板120の振動の抑制をより一層小さくすることができる。
【0024】
次に本実施形態の水滴検出装置100における水滴の付着の検出方法について説明する。本実施形態の水滴検出装置100では、ケース体110の回路収納部111内に圧電素子140を駆動する駆動回路200、検出板120の振動の変化を検出する検出回路300が収納されている。
【0025】
図3は、水滴検出装置100の有する駆動回路200と検出回路300を示す回路図である。
【0026】
本実施形態では、圧電素子140を駆動回路200により駆動させ、検出板120を予め振動させておく。そして検出板120に水滴が触れたときの検出板120の振動の変化を、圧電素子140から出力される電圧信号の変化として検出回路300により検出する。
【0027】
圧電素子140には、圧電素子140を振動させるための駆動信号を供給する駆動回路200と、圧電素子140の振動を電圧信号として検出する検出回路300とが接続されている。
【0028】
本実施形態の駆動回路200は、所定間隔で間欠的にパルス信号を出力し、圧電素子140を振動させる。
【0029】
本実施形態の検出回路300はアンプ310、フィルタ320、整流回路330、積分回路340、演算部350を有する。アンプ310の入力は、圧電素子140と接続されており、圧電素子140の振動により発生した電圧信号を検出して増幅する。アンプ310で増幅された電圧信号は、フィルタ320によりノイズを除去されて、整流回路330に入力される。整流回路330は、ノイズが除去された電圧信号を整流する。
【0030】
整流された電圧信号は、積分回路340を介して演算部350に入力される。演算部350では、積分回路340の出力に基づき圧電素子140から出力される電圧信号の変化を検出する。尚演算部350の出力信号は、例えば本実施形態の水滴検出装置100を有する装置本体を制御する本体回路等に供給されても良い。
【0031】
以下に、図4を参照して本実施形態の演算部350の処理について説明する。図4は、演算部350を説明するブロック図である。
【0032】
演算部350は、演算処理装置351、記憶装置352を有し、後述する各部の機能を実現する。本実施形態の演算処理部351は、波形記憶部353、信号取得部354、波形比較部355を有する。
【0033】
本実施形態の波形記憶部353は、駆動回路200から供給されるパルス信号により圧電素子140が駆動した際に積分回路340から出力される波形を取得し、取得した波形を基準波形として記憶装置352に記憶させる。よって記憶装置352には、検出板120に水滴等の被接触物が接触していない状態における検出板120の振動の波形が基準波形として記憶されている。尚本実施形態では、駆動回路200及び検出回路300に電源が供給されて圧電素子140の駆動が開始した時点で、波形記憶部353による基準波形の記憶が行われても良い。
【0034】
信号取得部354は、積分回路340から出力される信号を定期的に取得する。波形比較部355は、信号取得部354により取得された信号と、記憶装置352に記憶された基準波形とを比較する。そして波形比較部355は、比較の結果2つの波形が一致しなければ、検出板120に水滴等の非接触物が触れたものと検出したことを示す信号を出力する。
【0035】
以下に図5を参照して本実施形態の演算部350の動作を説明する。図5は、演算部350において検出された波形を示す図である。図5(A)は、検出板120に水滴が付着していない状態における波形を示す図であり、図5(B)は、検出板120に霧吹きで一度スプレーした状態における波形を示す図であり、図5(C)は、検出板120に霧吹きで二度スプレーした状態における波形を示す図である。
【0036】
図5に示すように、本実施形態では、検出板120に水滴が付着した場合、検出板120の振動が変化し、圧電素子140から出力される電圧信号の波形の変化となって現れる。よって本実施形態では、検出板140に水滴が付着していない状態の電圧信号の波形を基準波形Aとして記憶しておき、後に取得される電圧信号の波形Bと基準波形Aとを比較すれば、検出板120の水滴が付着したか否かを検出することができる。
【0037】
また本実施形態の演算部350では、例えば基準波形Aと波形Bとが異なる場合、波形Bを一時的に記憶装置352に記憶しても良い。そして、波形比較部355は、例えば基準波形Aと異なる波形Bが取得された後に、さらに変化した波形Cが取得された場合、波形Bと波形Cとを比較しても良い。
【0038】
本実施形態において、演算部350を上記のように構成すれば、例えば検出板120に付着した水滴の量の変化等も検出することができる。
【0039】
例えば本実施形態では、記憶装置352に、波形と、波形に対応した水滴の量等とが対応付けられたテーブルを予め格納しておいても良い。そして信号取得部354により積分回路340から出力される信号を取得したとき、このテーブルを参照して検出板120に付着した水滴の量等を検出しても良い。
【0040】
以上に説明したように、本実施形態によれば、検出板120の外周領域を挟持部材130a、130bを介して部分的に固定することにより、検出板120の振動が抑制されて出力信号のレベルが低下することを防止できる。よって本実施形態では、検出板(振動板)の振動を抑制せずに出力信号を取得することができ、検出板の微細な振動の変化を検出することができる。
(第二の実施形態)
以下に図面を参照して本発明の第二の実施形態について説明する。本発明の第二の実施形態では、検出領域を狭くした点が第一の実施形態と相違する。よって以下の第二の実施形態の説明では、第一の実施形態との相違点についてのみ説明し、第一の実施形態と同様の機能構成を有するものには第一の実施形態の説明で用いた符号と同様の符号を付与し、説明を省略する。
【0041】
図6は、第二の実施形態の水滴検出装置100Aを示す斜視図である。本実施形態の水滴検出装置100Aは、ケース体110Aから検出領域120Bを露出させた検出板120Cを有する。
【0042】
本実施形態のケース体110Aは、回路収納部111Aと蓋部112Aとを有する。回路収納部111Aには、水滴検出を行うための回路等が収納されている。蓋部112Aは、回路収納部111Aの蓋となる。また本実施形態のケース体110Aの回路収納部111A及び蓋部112Aには、それぞれ検出領域120Bを取り囲む枠部113c、113dと検出領域120Bを露出させるための切り抜き部114c、114dが形成されている。枠部113c、113d及び切り抜き部114c、114dは、回路収納部111Aに蓋部112Aが被せられたとき、それぞれが重なって検出領域120Bが露出するように形成されている。
【0043】
次に図7を参照して、本実施形態の水滴検出装置100Aにおける検出板120Cの固定方法について説明する。図7は、検出板120Cの固定方法を説明する図である。図7(A)は、水滴検出装置100Aの上面投透視図であり、図7(B)は水滴検出装置100AのA−A断面図である。
【0044】
本実施形態では、検出板120Cは、挟持部材130c、130dにより外周領域が部分的に挟持されて、ケース体110Aに固定されている。よって本実施形態でも第一の実施形態と同様に、検出板120Cの振動が抑制することを防止できる。
【0045】
尚本実施形態では、検出板120Cは、検出板120Cと枠部113cとの間に配置された4つの挟持部材130cと、検出板120Cと枠部113dとの間の配置された4つの挟持部材130dとの合計8つの挟持部材により挟持される構成としたが、これに限定されない。本実施形態では、検出板120Cと枠部113cとの間に2つ挟持部材130cが配置されており、検出板120Cと枠部113dとの間に2つの挟持部材130dが配置されていても良い。この場合検出板120Cは、合計4つの挟持部材により挟持されることとなる。
【0046】
尚本実施形態の水滴検出装置100Aにおける検出板120Cの振動の変化の検出方法については、第一の実施形態と同様である。
【0047】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】第一の実施形態の水滴検出装置100を示す斜視図である。
【図2】検出板120の固定方法を説明する図である。
【図3】水滴検出装置100の有する駆動回路200と検出回路300を示す回路図である。
【図4】演算部350を説明するブロック図である。
【図5】演算部350において検出された波形を示す図である。
【図6】第二の実施形態の水滴検出装置100Aを示す斜視図である。
【図7】検出板120Cの固定方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0049】
100、100A 水滴検出回路
110、110A ケース体
111、111A 回路収納部
112、112A 蓋部
113a、113b、113c、113d 枠部
114a、114b、114c、114d 切り抜き部
120、120C 検出板
120A、120B 検出領域
130a、130b、130c、130d 挟持部材
140 圧電素子
200 駆動回路
300 検出回路
350 演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース体と、振動板とを含み、前記振動板に対する被接触物の接触を検出する検出装置であって、
前記振動板は、
前記振動板の外周領域の一部が、前記ケース体との間に配置された挟持部材を介して前記ケース体に固定される検出装置。
【請求項2】
前記挟持部材は、前記外周領域と前記ケース体との間に複数配置されており、
前記振動板の外周領域は、複数配置された前記挟持部材を介して前記ケース体に固定された請求項1記載の検出装置。
【請求項3】
前記挟持部材を形成する材料の材質は、前記振動板を形成する材料の材質よりも硬質である請求項1又は2記載の検出装置。
【請求項4】
前記振動板に固定された圧電素子と、
前記圧電素子から出力される電圧信号の変動を検出する検出回路を有し、
前記検出回路は、
前記振動板に対する被接触物の接触がない場合の電圧信号の波形を記憶する記憶手段と、
前記圧電素子から出力される電圧信号の波形を取得する取得手段と、
前記記憶手段に記憶された波形と、前記取得手段により取得された前記電圧信号の波形とを比較する比較手段と、を有し、
前記比較手段による比較結果に基づき、前記振動板に対する被接触物の接触を検出することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−198222(P2009−198222A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37883(P2008−37883)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】