説明

検品方法

【課題】特別な設備を設けたり、作業者の作業量を増やすことなく、電波の漏洩を防止し、且つ無線ICタグの読み取り率を向上させることの可能な検品方法を提供する。
【解決手段】ゲートの入口に接近する物体の有無を検知し、前記ゲートの入口に接近する物体有りと検知された場合に前記ゲートの入口扉を開放し、前記物体の全部が前記ゲート内に侵入したか否かを検知し、物体の全部が前記ゲート内に侵入したと検知された場合に前記入口扉を閉鎖し、前記入口扉が全閉した後、前記ゲート内に設置されたアンテナから前記物体に向けて電波を送信し、前記物体に含まれる前記検品対象物に貼付されている無線ICタグから送信される電波を前記アンテナで受信することで、前記無線ICタグに記録されている管理情報を読み取り、前記所定条件の成立後、前記電波の送信を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検品方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場で生産された電子基板等の電子部品、その他の物品を出荷する際、一般に、出荷する物品の種類や数量を検査する検品が行われている。従来では、物品を収納するバケットに物品の種類や数量を記録したバーコードを貼付し、作業員が携帯型バーコードリーダを用いて各バケットに貼付されたバーコードを1枚ずつ読み取ることで検品作業を行っていた。しかしながら、この方法では、物品の生産量が増大してバケットの数が増えた場合、バーコードの読み取り作業を行う作業員の負担が大きくなり、作業ミスの頻度が高まるという問題があった。
【0003】
この問題に対して、通信距離が数m程度のUHF帯952MHzから954MHzの(国内電波法による)の電波を使用するRFID技術を利用した検品ゲートシステムが導入された。この検品ゲートシステムは、無線ICタグと無線通信可能な送受信機を備えたゲートを物品の入出庫箇所に設置し、物品の種類や数量を記録した無線ICタグが貼付されたバケットをハンドリフトや台車等に載せて上記ゲートを通過させる際に、自動的に各バケットに貼付された無線ICタグの記録情報を読み取ることで検品を行うシステムである。これにより、検品作業の大幅な効率化を図れるようになった。
【0004】
しかしながら、このような検品ゲートシステムにおいて、バケット内に電子基板等の導電性の物品が収納されていた場合、これらの物品がゲートの送受信機から送信される電波を反射してしまうため、バケットを多数積み重ねると内部まで電波が到達しにくくなり、無線ICタグの読み取り率が悪くなるという問題があった。この問題を解決するために、例えば、下記特許文献1には、ゲートに設けられた送受信機から送信された電波を、複数の反射板からなる電波指向部を経由して検品対象の無線ICタグに照射させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−88518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記特許文献1の技術では、一度に検品するバケット数が多くなると外形も大きくなり、周囲全面を交信領域としてカバーすることは難しく、電波が当らない箇所が発生しやすくなり、無線ICタグの読み取り率が低下する可能性がある。
【0007】
また、一般的に、出庫箇所のゲートの入口側には、出荷準備完了品置場が設けられており、出荷準備が完了したバケットが多数積み上げて置かれている。出荷準備完了品置場が狭く、場所に余裕がないときは、ゲートの出口側にもバケットが積み上げて置かれている場合もある。このような場合、上記特許文献1の技術では、ゲート外部周辺に置かれているバケットの無線ICタグも読み取ってしまう可能性がある。すなわち、UHF帯の電波は遠くまで届くため、作業者自体あるいは、検品のためゲート内に山積みされているバケット内の導電性の物品などで反射された反射波や、送受信機からの直接波がゲート外部に漏洩し、反射、回折によって遠方に積み上げてあるバケットの無線ICタグを読み取る可能性がある。
【0008】
このようなゲートからの漏洩電波による不要な読み取りを防止するために、電波の出力を下げるという方法が考えられるが、本来読み取りすべきゲート内のバケットに貼付された無線ICタグの読み取り率が低下する可能性がある。また、電波吸収用のボードを検品対象ではないバケットとゲートとの間に設置する方法も考えられるが、作業者の作業量が増えることになるため好ましくない。さらに、電波の伝搬遅延時間を計測して無線ICタグまでの距離を推定することにより、読み取るべきバケット(ゲート内のバケット)と、それ以外のバケット(ゲート外のバケット)とを判別する方法も考えられるが、伝搬遅延時間の計測用モジュールを設置する必要があり、コストの増大を招くことになる。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、特別な設備を設けたり、作業者の作業量を増やすことなく、電波の漏洩を防止し、且つ無線ICタグの読み取り率を向上させることの可能な検品方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る検品方法は、少なくとも両側面及び入口扉に電波遮蔽機能を有するゲートを備えた検品ゲートシステムを用いて、前記ゲート内を検品対象物が通過する際に、前記検品対象物に貼付されている無線ICタグから管理情報を読み取ることで検品を行う検品方法であって、前記ゲートの入口に接近する物体の有無を検知する物体検知工程と、前記物体検知工程にて前記ゲートの入口に接近する物体有りと検知された場合に前記ゲートの入口扉を開放する入口扉開放工程と、前記物体の全部が前記ゲート内に侵入したか否かを検知する侵入検知工程と、前記侵入検知工程にて前記物体の全部が前記ゲート内に侵入したと検知された場合に前記入口扉を閉鎖する入口扉閉鎖工程と、前記入口扉が全閉した後、前記ゲート内に設置されたアンテナから前記物体に向けて電波を送信する電波送信工程と、前記物体に含まれる前記検品対象物に貼付されている無線ICタグから送信される電波を前記アンテナで受信することで、前記無線ICタグに記録されている管理情報を読み取る情報読取工程と、前記所定条件の成立後、前記電波の送信を停止する電波停止工程とを有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の第2の態様に係る検品方法は、少なくとも両側面及び出口扉に電波遮蔽機能を有するゲートを備えた検品ゲートシステムを用いて、前記ゲート内を検品対象物が通過する際に、前記検品対象物に貼付されている無線ICタグから管理情報を読み取ることで検品を行う検品方法であって、前記ゲートの入口に接近する物体の有無を検知する物体検知工程と、前記物体検知工程にて前記ゲートの入口に接近する物体有りと検知された場合に前記ゲートの出口扉を閉鎖する出口扉閉鎖工程と、前記出口扉が全閉した後、前記物体が前記ゲートの入口を通過している間に、前記ゲート内に設置されたアンテナから前記物体に向けて電波を送信する電波送信工程と、前記物体に含まれる前記検品対象物に貼付されている無線ICタグから送信される電波を前記アンテナで受信することで、前記無線ICタグに記録されている管理情報を読み取る情報読取工程と、前記所定条件の成立後、前記電波の送信を停止する電波停止工程と、前記電波の送信の停止後、前記出口扉を開放する出口扉開放工程とを有することを特徴とする。
【0012】
また、上記の第1及び第2の態様に係る検品方法において、前記情報読取工程にて読み取った前記検品対象物の管理情報を、前記ゲート内に設置された情報処理端末に表示する情報表示工程と、前記読み取った管理情報と、予め登録しておいた前記検品対象物の管理情報とを比較し、その比較結果を前記情報処理端末に表示する比較結果表示工程とをさらに有することを特徴とする。
さらに、上記の第1及び第2の態様に係る検品方法において、前記電波送信工程では、前記入口扉または前記出口扉が全閉してから所定時間経過後に、前記電波の送信を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、特別な設備を設けたり、作業者の作業量を増やすことなく、電波の漏洩を防止し、且つ無線ICタグの読み取り率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態における検品ゲートシステム1の構成概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態における検品方法を表すフローチャートである。
【図3】本検品方法における侵入検知工程(ステップS3)の説明図である。
【図4】本検品方法における入口扉閉鎖工程(ステップS4)の説明図である。
【図5】本検品方法における電波送信工程(ステップS5、S6)の説明図である。
【図6】本検品方法における比較結果表示工程(ステップS9)の説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態における検品ゲートシステム1Aの構成概略図である。
【図8】本発明の第2実施形態における検品方法を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係る検品方法の一実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
まず、本発明に係る検品方法の第1実施形態について説明する。なお、第1実施形態の検品方法を説明する前に、本検品方法を実現する上で必要な検品ゲートシステムの構成について説明する。
【0016】
図1は、第1実施形態における検品ゲートシステム1の構成概略図である。この図1において、ゲート2は、鉄骨からなるフレーム構造を有する断面矩形の直方体であり、物品(例えば、電子基板等の電子部品)を収納するバケット20の運搬通路上に設置されている。なお、各バケット20には、それぞれ管理情報を記録した無線ICタグ30が貼付されている。ここで、管理情報とは、バケット20に付されたバケット番号と、そのバケット20に収納されている各物品の製品番号とが紐付けされたデータを指す。このようなバケット20は、ハンドリフト40上に積載され、作業員50の手によって運搬される。
【0017】
このゲート2の入口2aに設けられた入口扉3と、天井面4と、入口2aから視てゲート2の左側面5及び右側面6とは、後述の電波遮蔽シートによって形成されている。また、入口2aの上部には、入口扉3の巻き上げ及び巻き出しを行うシート巻上げ機7が設置されており、このシート巻上げ機7による巻き上げ及び巻き出し動作によって、入口扉3の開閉が可能な構成となっている。なお、ゲート2の出口2bは電波遮蔽シート等で覆われておらず、開放状態となっている。
【0018】
ゲート2に使用される電波遮蔽シートは、線径27μmの金属線を用いて可視光透過率68%となるようなメッシュ構造の金属繊維の布を作り、その布を厚さ0.2mm乃至0.3mmの透明な塩化ビニールシートで挟んで構成されている。また、この電波遮蔽シートの電波遮蔽能力は、UHF帯周波数(953MHz)に対して約50dB程度である。
【0019】
シート巻上げ機7の表面中央部には、ゲート2の入口2a前の通路を検知対象領域とする赤外線センサ8が取り付けられている。この赤外線センサ8は、不図示の信号線を介してコントロールボックス10と接続されており、検知対象領域に存在する赤外線を検出し、その検知対象領域における赤外線強度分布を表す信号をコントロールボックス10に出力する。
【0020】
また、ゲート2の入口2aには、共に不図示の信号線を介してコントロールボックス10と接続されている投光器9a及び受光器9bからなる光電管センサ9が設置されている。投光器9aは、コントロールボックス10の制御に応じて光線(レーザ光でも赤外線でも良い)を出射するものであり、上記光線がゲート2の幅方向に対して平行に出射されるように、入口2aの左側支柱の下部に設置されている。また、受光器9bは、投光器9aから出射される光線の受光状態を示す信号をコントロールボックス10に出力するものであり、受光面が投光器9aに対向するように、入口2aの右側支柱の下部に設置されている。
【0021】
コントロールボックス10は、上記の赤外線センサ8及び光電管センサ9(受光器9b)の出力信号に基づいて、シート巻上げ機7による巻き上げ及び巻き出し動作を制御することで、入口扉3の開閉動作を制御するものであり、ゲート2の外部に設置されている。具体的には、このコントロールボックス10は、赤外線センサ8の出力信号を基に、ゲート2の入口2aに接近する人(実際には周辺の温度より高く、人体と同程度の温度を有する何らかの物体)の存在を検知した場合に、シート巻上げ機7に対して入口扉3の巻上げを指示する(つまり、入口扉3は開放される)。
【0022】
また、コントロールボックス10は、光電管センサ9(受光器9b)の出力信号を基に、光線の受光状態が「受光無し」(物体によって光線が遮断されている状態)から「受光有り」に遷移した場合に、物体の全部がゲート2内に侵入したと検知して、シート巻上げ機7に対して入口扉3の巻き出しを指示する(つまり入口扉3は閉鎖される)。さらに、このコントロールボックス10は、不図示の信号線を介してパソコン16と接続されており、入口扉3の開閉状態を示す信号(以下、入口開閉状態信号と称す)をパソコン16に出力する。
【0023】
ゲート2の天井面4における出口2b側には、幅方向に沿って2つのアンテナ11及び12が設置されている。これらアンテナ11及び12は、ゲート2の入口2aに向けて電波が照射されるように、天井面4に設けられた不図示のパイプ上に設置されている。また、出口2bの左側支柱下部及び右側支柱下部には、同様に、ゲート2の入口2aに向けて電波が照射されるように配置されたアンテナ13、14が取り付けられている。これらアンテナ11、12、13及び14は、不図示の信号線を介してリードライタ15と接続されており、リードライタ15から入力される送信信号に応じた電波を送信する一方、受信した電波(バケット20に貼付された無線ICタグ30から送信される電波)に応じた受信信号をリードライタ15に出力する。
【0024】
リードライタ15は、ゲート2の天井面4に設けられた不図示のパイプ上に設置されており、不図示の信号線を介してパソコン16と接続されている。このリードライタ15は、パソコン16から入力される読み取り開始コマンドの符号化、変調及びUHF帯への周波数変換を行うことで読み取り開始コマンドを含む送信信号を生成して各アンテナ11、12、13及び14に出力する。また、このリードライタ15は、各アンテナ11、12、13及び14から入力される受信信号のIF帯への周波数変換、復調及び復号化を行うことにより、受信信号に含まれる管理情報(各バケット20に貼付された無線ICタグ30に記録されている管理情報)を抽出し、この管理情報をパソコン16に出力する。
【0025】
パソコン16は、ゲート2の右側面6の内側に設けられた不図示のパイプ上に設置されており、コントロールボックス10から入力される入口開閉状態信号に基づいて、電波の送信開始タイミング及び送信停止タイミングを制御する。具体的には、このパソコン16は、コントロールボックス10から入力される入口開閉状態信号に基づいて、入口扉3が全閉してから所定時間経過後(例えば2秒経過後)に、リードライタ15に対して読み取り開始コマンドを出力することで、各アンテナ11、12、13及び14からの電波送信を開始する。また、このパソコン16は、電波の送信開始(読み取り開始コマンドの出力)から所定時間経過後(例えば7秒経過後)に、リードライタ15に対して読み取り終了を指示することで電波の送信を停止する。
【0026】
なお、製造ラインでは、物品完成後に物品をバケットに収納する際、バケット20に付された番号と、そのバケット20に収納された各物品の製品番号とを紐付けしたデータを管理情報として無線ICタグ30に記録してバケット20に貼付するが、同時にこれらバケット20毎の管理情報はパソコン16のデータベースに登録されることになる。
パソコン16は、読み取ったバケット20の管理情報を画面に表示すると共に、その読み取ったバケットの管理情報と、上記データベースに予め登録されている管理情報とを比較し、その比較結果を画面に表示する機能も有する(詳細は後述する)。
【0027】
以上が、本検品方法を実現する上で必要な検品ゲートシステム1の構成についての説明であり、以下、上述した検品ゲートシステム1を用いた本検品方法について、図2のフローチャートを参照しながら説明する。
【0028】
図2に示すように、まず、ステップS1において、ゲート2の入口2aに接近する物体の有無を検知する(物体検知工程)。具体的には、図1に示すように、検品ゲートシステム1の動作中において、赤外線センサ8は、入口2a前の通路に設定された検知対象領域における赤外線強度分布を表す信号をコントロールボックス10に出力しており、コントロールボックス10は、赤外線センサ8の出力信号に基づいて、検知対象領域に人体と同程度の温度を有する何らかの物体が存在するか否かを判断することにより、ゲート2の入口2aに接近する物体(つまり作業員50)の有無を検知する。
【0029】
このステップS1において、「No」の場合、つまり、ゲート2の入口2aに接近する物体が存在しない場合、ゲート2の入口2aに接近する作業員50が検知されるまでステップS1は繰り返される。一方、ステップS1において、「Yes」の場合、つまり、ゲート2の入口2aに接近する物体の存在が検知された場合には、ステップS2において入口扉3を開放する(入口扉開放工程)。具体的には、図1に示すように、コントロールボックス10は、赤外線センサ8の出力信号を基に、ゲート2の入口2aに接近する物体の存在を検知した場合に、シート巻上げ機7に対して入口扉3の巻上げを指示する。これにより、シート巻上げ機7によって入口扉3は巻上げられて開放される。
【0030】
続いて、ステップS3において、物体の全部(つまり、作業員50、ハンドリフト40及びバケット20の全て)がゲート2内に侵入したか否かを検知する(侵入検知工程)。具体的には、図3に示すように、コントロールボックス10は、光電管センサ9(受光器9b)の出力信号を基に、光線の受光状態が「受光無し」(物体によって光線が遮断されている状態)から「受光有り」に遷移したか否かを判断することで、物体の全部がゲート2内に侵入したか否かを検知する。つまり、検品対象物であるバケット30が積載されたハンドリフト40が、作業員50によって入口2aからゲート2内へ運搬されている最中では、投光器9aから出射される光線は作業員50やバケット20等によって遮断されるため、光線の受光状態は「受光無し」となるが(図3参照)、作業員50及びハンドリフト40の全部がゲート2内に侵入すると、光線の受光状態は「受光有り」に変わることになる。
【0031】
上記ステップS3において、「No」の場合、つまり光電管センサ9の受光状態が「受光無し」のままである場合(バケット20は運搬中)、光電管センサ9の受光状態が「受光有り」に遷移するまでステップS3は繰り返される。一方、ステップS3において、「Yes」の場合、つまり物体の全部がゲート2内に侵入した場合には、ステップS4において入口扉3を閉鎖する(入口扉閉鎖工程)。具体的には、図4に示すように、コントロールボックス10は、光電管センサ9(受光器9b)の出力信号を基に、光電管センサ9の受光状態が「受光無し」から「受光有り」に遷移した場合に、物体の全部がゲート2内に侵入したと検知して、シート巻上げ機7に対して入口扉3の巻き出しを指示する。これにより、シート巻上げ機7によって入口扉3は巻出されて閉鎖される。
【0032】
続いて、ステップS5において、入口扉3が全閉してから所定時間(例えば2秒)が経過したか否かを判断し、「Yes」の場合には、ステップS6において、ゲート2内に設置されたアンテナ11、12、13及び14から無線ICタグ読み取り用の電波を送信する(これらステップS5及びS6は電波送信工程に相当する)。具体的には、図5に示すように、パソコン16は、コントロールボックス10から入力される入口開閉状態信号に基づいて、入口扉3が全閉してから所定時間経過後に、リードライタ15に対して読み取り開始コマンドを出力することで、各アンテナ11、12、13及び14からの電波照射を開始する。
ここで、必ずしも入口扉3が全閉してから所定時間経過するまで待つ必要はなく、入口扉3が全閉してから直ぐに電波送信を開始しても良いが、所定時間経過するまで待つことにより、入口扉3が確実に全閉してから電波送信が行われるので、電波が入口2aからゲート2外部に漏れることを防ぐことができる。
【0033】
続いて、ステップS7において、各バケット20に貼付されている無線ICタグ30から送信される電波を各アンテナ11、12、13及び14で受信することで、各バケット20の無線ICタグ30に記録されている管理情報を読み取る(情報読取工程)。具体的には、各バケット20に貼付されている無線ICタグ30は、電波を受信すると、その受信した電波から電源電圧を生成して起動し、内部メモリに記録されている管理情報を電波に重畳させて送信する。そして、各アンテナ11、12、13及び14で受信された無線ICタグ30の電波は、受信信号としてリードライタ15に送られ、リードライタ15は、受信信号のIF帯への周波数変換、復調及び復号化を行うことにより、受信信号に含まれる管理情報を抽出し、この管理情報をパソコン16に出力する。
【0034】
アンテナ11、12、13及び14から照射された電波は、バケット20内の電子基板等の物品と、電波遮蔽シートで形成されたゲート2の天井面4、左側面5、右側面6及び入口扉3に当たって反射され、反射された電波は再び物品及び電波遮蔽シートに反射されて、減衰するまでこれを繰り返す。このように、電波遮蔽シートを用いることにより、ゲート2内部に電波を閉じ込めることができるため、電波がゲート2外部に漏れて、検品に関係のないバケットの無線ICタグを誤って読み取ることがない。また、電波が反射を繰り返すために、無線ICタグ30に様々な方向から電波が当たるようになり、無線ICタグ30の位置によらず、読み取り率を向上することができる。
【0035】
そして、ステップS8において、パソコン16は、読み取ったバケット20の管理情報を画面に表示し(情報表示工程)、ステップS9において、読み取ったバケット20の管理情報と、データベースに予め登録されている管理情報(以下、管理テーブルと称す)とを比較し、その比較結果を画面に表示する(比較結果表示工程)。具体的には、例えば、ゲート2が入庫エリアに設置されている場合には、図6(a)に示すように、データベースに予め登録されている管理テーブル上の入庫確認項目が「入庫済」ではないバケット番号を照合対象とし、それに該当するバケット番号が読み取ったバケット番号の中に存在する場合に、そのバケット番号の入庫確認項目を「入庫済み」と登録して表示する。
また、例えば、ゲート2が出庫エリアに設置されている場合には、図6(b)に示すように、管理テーブル上の入庫確認項目が「入庫済」で且つ出庫確認項目が「出庫済」ではないバケット番号を照合対象とし、それに該当するバケット番号が読み取ったバケット番号の中に存在する場合に、そのバケット番号の出庫確認項目を「出庫済み」と登録して表示する。
この他、読み取ったバケット番号に紐付けされた製品番号の中に、本来、そのバケット内には収納されていないはずの物品の製品番号が含まれていた場合、或いは、本来、そのバケット内には収納されているはずの物品の製品番号が含まれていなかった場合には、その旨をエラー情報として画面に表示しても良い。
【0036】
そして、ステップS10において、所定時間(例えば7秒)が経過したか否かを判断し、「Yes」の場合には、ステップS11において、アンテナ11、12、13及び14からの電波送信を停止する(電波停止工程)。具体的には、パソコン16は、電波の送信開始(読み取り開始コマンドの出力)から所定時間経過後(例えば7秒経過後)に、リードライタ15に対して読み取り終了を指示することで電波の送信を停止する。ここでの所定時間は、ハンドリフト40に積載された全てのバケット20の無線ICタグ30を読み取るために必要な時間が設定されている。
また、電波送信を停止する条件として、上記のように電波の送信開始から所定時間が経過したことを条件としたが、この他、入口扉3が開放された場合に電波送信を停止するようにしても良い。このような条件を追加することで、誤って別の作業員50が入口扉3に近づいて入口扉3が開放された場合であっても、電波がゲート2外部に漏洩することを防止することができる。なお、この場合、入口扉3を閉鎖した後、再度電波照射を行うことが望ましい。
【0037】
このように、アンテナ11、12、13及び14からの電波送信を停止した後、ステップS12において、作業員50によってバケット20が積載されたハンドリフト40を出口2bから運び出す。
【0038】
以上説明したように、本実施形態によれば、ゲート2内部の通路が電波遮蔽シートで覆われているため、検品中に電波がゲート2外部に漏洩することがなく、ゲート2外部に積載された不要なバケット20の無線ICタグ30を誤って読み取ることがない。また、電波がゲート2内部で何度も反射しながら回り込むように伝播するため、幾重にも積み重ねられ、電子基板等の導電性の物品が収納されたバケット20に貼付された無線ICタグ30に電波が当たりやすくなり、読み取り率を向上することができる。また、ゲート2外部に特別な設備を設ける必要がなく、作業員50の作業量は殆ど変わらず、現場の作業環境を損なうことがない。さらに、電波の出力やアンテナの角度の細かい調整を行う必要がない。
【0039】
なお、ゲート2の出口2b側には出口扉が設けられていないため、出口2b側から電波が漏洩する可能性があるが、出口2b側にバケット20が置かれていなければ何ら問題はなく、また、出口2bを開放できるため、出口扉用の電波遮蔽シート、シート巻上げ機、赤外線センサ、光電管センサ等が不要となり、低コスト化及び省スペース化を実現できる。さらに、作業者50が出口2bからゲート2外部にはみ出していても、バケット20がゲート2内部に納まっていれば検品可能となる。加えて、出口2bが開放されることにより、通気性及び見通しが良くなり、作業効率が向上する。
【0040】
〔第2実施形態〕
次に、本発明に係る検品方法の第2実施形態について説明する。図7は、第2実施形態における検品ゲートシステム1Aの構成概略図である。第2実施形態と第1実施形態とで異なる点は、ゲート2(以下、第1実施形態と区別するために第2実施形態のゲートの符号を2Aとする)において入口扉3及びシート巻上げ機7が削除されて、入口2aが開放状態となっており、出口2bに電波遮蔽シートで形成された出口扉17が設けられており、出口2bの上部に出口扉17の巻き上げ及び巻き出しを行うシート巻上げ機18が設置されている点である。また、これに合わせて、アンテナ11及び12は、ゲート2Aの出口2bに向けて電波が照射されるように、天井面4の入口2a側に設けられた不図示のパイプ上に設置されている。また、アンテナ13、14は、同じくゲート2Aの出口2bに向けて電波が照射されるように、入口2aの左側支柱下部及び右側支柱下部に配置されている。つまり、各アンテナからの電波照射方向は図1の逆となる。
【0041】
以下、上記のような第2実施形態における検品ゲートシステム1Aを用いた本検品方法について、図8のフローチャートを参照しながら説明する。なお、図8のフローチャートにおいて、図2のフローチャートと重複するステップについては簡略化して説明する。
【0042】
図8に示すように、まず、ステップS21において、ゲート2Aの入口2aに接近する物体の有無を検知する(物体検知工程)。このステップS21において、「Yes」の場合、つまり、ゲート2Aの入口2aに接近する物体(作業員50)有りと検知された場合には、ステップS22において出口扉17を閉鎖する(出口扉閉鎖工程)。具体的には、コントロールボックス10は、赤外線センサ8の出力信号を基に、ゲート2Aの入口2aに接近する物体の存在を検知した場合に、シート巻上げ機18に対して出口扉17の巻出しを指示する。これにより、シート巻上げ機18によって出口扉17は巻出されて閉鎖される。
【0043】
続いて、ステップS23において、出口扉17が全閉した後、物体がゲート2Aの入口2aを通過している間に、ゲート2A内に設置された各アンテナ11、12、13及び14から無線ICタグ読み取り用の電波を送信する(電波送信工程)。具体的には、パソコン16は、出口扉17が全閉した後、光電管センサ9の受光状態が「受光無し」(物体によって光線が遮断されている状態)となっている間に、リードライタ15に対して読み取り開始コマンドを出力することで、各アンテナ11、12、13及び14からの電波照射を行う。ここで、第1実施形態と同様に、出口扉17が全閉してから所定時間経過後(例えば2秒経過後)に、電波照射を行うようにしても良い。
【0044】
そして、ステップS24において、各バケット20に貼付されている無線ICタグ30から送信される電波を各アンテナ11、12、13及び14で受信することで、各バケット20の無線ICタグ30に記録されている管理情報を読み取る(情報読取工程)。
アンテナ11、12、13及び14から照射された電波は、バケット20内の電子基板等の物品と、電波遮蔽シートで形成されたゲート2Aの天井面4、左側面5、右側面6及び出口扉17に当たって反射され、反射された電波は再び物品及び電波遮蔽シートに反射されて、減衰するまでこれを繰り返す。つまり、第1実施形態と同様に、ゲート2A内部に電波を閉じ込めることができるため、電波がゲート2A外部に漏れて、検品に関係のないバケットの無線ICタグを誤って読み取ることがない。また、電波が反射を繰り返すために、無線ICタグ30に様々な方向から電波が当たるようになり、無線ICタグ30の位置によらず、読み取り率を向上することができる。
【0045】
続いて、ステップS25において、パソコン16は、読み取ったバケット20の管理情報を画面に表示し(情報表示工程)、ステップS26において、読み取ったバケット20の管理情報と、データベースに予め登録されている管理情報(管理テーブル)とを比較し、その比較結果を画面に表示する(比較結果表示工程)。
【0046】
そして、ステップS27において、電波の送信開始から所定時間(例えば7秒)が経過したか否かを判断し、「Yes」の場合には、ステップS28において、アンテナ11、12、13及び14からの電波送信を停止する(電波停止工程)。ここで、電波送信を停止する条件として、上記のように電波の送信開始から所定時間が経過したことを条件としたが、この他、物体の全部(つまり作業員50及びハンドリフト40、バケット20等)がゲート2A内に侵入した場合に、電波送信を停止するようにしても良い。
【0047】
そして、ステップS29において、電波の送信の停止後、出口扉17を開放する(出口扉開放工程)。具体的には、パソコン10は、コントロールボックス10を介してシート巻上げ機18に対して出口扉17の巻上げを指示する。これにより、シート巻上げ機18によって出口扉17は巻上げられて開放される。
このように、出口扉17の開放後、ステップS30において、作業員50によってバケット20が積載されたハンドリフト40を出口2bから運び出す。
【0048】
以上のように、第2実施形態によっても、第1実施形態と同様に、特別な設備を設けたり、作業者の作業量を増やすことなく、電波の漏洩を防止し、且つ無線ICタグの読み取り率を向上させることが可能となる。また、第2実施形態では、ゲート2Aの入口2a側に入口扉が設けられていないため、入口2a側から電波が漏洩する可能性があるが、入口2a側にバケット20が置かれていなければ何ら問題はなく、ゲート2Aの出口2bの外側に、検品とは関係のないバケット20が置かれている場合に特に有効である。
【0049】
なお、上記第1及び第2実施形態では、ゲート2(2A)の天井面4を電波遮蔽シートによって形成した場合について説明したが、天井から電波が漏洩しても誤って外部のバケット20の無線ICタグ30を読み取ってしまう虞がない場合や、読み取り率に影響がない場合には、天井を開放しても良い。また、ゲート2(2A)の断面形状は、矩形に限らず、山形または円形でも良い。また、無線ICタグ30に記録する管理情報として、物品の種類や数量などの情報を記録することもできる。さらに、バケット内に収納する物品は導電性物品に限定されない。
【符号の説明】
【0050】
1、1A…検品ゲートシステム、2、2A…ゲート、2a…入口、2b…出口、3…入口扉、4…天井面、5…左側面、6…右側面、7、18…シート巻上げ機、8…赤外線センサ、9…光電管センサ、9a…投光器、9b…受光器、10…コントロールボックス、11、12、13、14…アンテナ、15…リードライタ、16…パソコン、17…出口扉、20…バケット、30…無線ICタグ、40…ハンドリフト、50…作業員

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも両側面及び入口扉に電波遮蔽機能を有するゲートを備えた検品ゲートシステムを用いて、前記ゲート内を検品対象物が通過する際に、前記検品対象物に貼付されている無線ICタグから管理情報を読み取ることで検品を行う検品方法であって、
前記ゲートの入口に接近する物体の有無を検知する物体検知工程と、
前記物体検知工程にて前記ゲートの入口に接近する物体有りと検知された場合に前記ゲートの入口扉を開放する入口扉開放工程と、
前記物体の全部が前記ゲート内に侵入したか否かを検知する侵入検知工程と、
前記侵入検知工程にて前記物体の全部が前記ゲート内に侵入したと検知された場合に前記入口扉を閉鎖する入口扉閉鎖工程と、
前記入口扉が全閉した後、前記ゲート内に設置されたアンテナから前記物体に向けて電波を送信する電波送信工程と、
前記物体に含まれる前記検品対象物に貼付されている無線ICタグから送信される電波を前記アンテナで受信することで、前記無線ICタグに記録されている管理情報を読み取る情報読取工程と、
前記所定条件の成立後、前記電波の送信を停止する電波停止工程と、
を有することを特徴とする検品方法。
【請求項2】
少なくとも両側面及び出口扉に電波遮蔽機能を有するゲートを備えた検品ゲートシステムを用いて、前記ゲート内を検品対象物が通過する際に、前記検品対象物に貼付されている無線ICタグから管理情報を読み取ることで検品を行う検品方法であって、
前記ゲートの入口に接近する物体の有無を検知する物体検知工程と、
前記物体検知工程にて前記ゲートの入口に接近する物体有りと検知された場合に前記ゲートの出口扉を閉鎖する出口扉閉鎖工程と、
前記出口扉が全閉した後、前記物体が前記ゲートの入口を通過している間に、前記ゲート内に設置されたアンテナから前記物体に向けて電波を送信する電波送信工程と、
前記物体に含まれる前記検品対象物に貼付されている無線ICタグから送信される電波を前記アンテナで受信することで、前記無線ICタグに記録されている管理情報を読み取る情報読取工程と、
前記所定条件の成立後、前記電波の送信を停止する電波停止工程と、
前記電波の送信の停止後、前記出口扉を開放する出口扉開放工程と、
を有することを特徴とする検品方法。
【請求項3】
前記情報読取工程にて読み取った前記検品対象物の管理情報を、前記ゲート内に設置された情報処理端末に表示する情報表示工程と、
前記読み取った管理情報と、予め登録しておいた前記検品対象物の管理情報とを比較し、その比較結果を前記情報処理端末に表示する比較結果表示工程と、
をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の検品方法。
【請求項4】
前記電波送信工程では、前記入口扉または前記出口扉が全閉してから所定時間経過後に、前記電波の送信を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の検品方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−11841(P2011−11841A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155793(P2009−155793)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】