説明

検査システムおよび検査方法

【課題】 適当な無線端末と検査装置とを確実に無線接続できる検査システムを提供する。
【解決手段】 検査システムは、検査ライン100を流れる車両10に搭載および接続され、外部と無線通信可能な無線端末40と、無線端末40と無線通信し、該無線端末40を介して車両10を検査する検査装置30と、車両10に搭載され、検査ライン100に設けられるバーコード50を取得するカメラ24とを有する。無線端末40は、バーコード50に基づいて車両10の現在位置を特定し、特定された前記現在位置が検査装置30と通信すべき位置か否かを判断し、通信すべき位置である場合、検査装置30との通信を確立する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査システムおよび検査方法に関し、特に、検査工程において被検査物を検査する際に適応される検査システムおよび検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
検査工程の複数ある工程において、車両に組み付けられた電装部品の適合性および作動性が検査されている。電装部品の検査は、ラインに設置された検査装置に車両(電装部品)が接続され、相互に通信することにより、実行される。
【0003】
車両と検査装置とは、電装部品および検査装置から延びる有線の診断用コネクタを接続することにより、通信が可能となる。
【0004】
しかし、近年では、電装部品の増加に伴い、検査品目も増加しているので、診断用コネクタの抜き差し回数が多大となっている。作業者の負担および検査時間の増加を引き起こしている。
【0005】
そこで、製造工程において予め無線通信用の無線端末を車両に搭載し、各工程において、無線端末と検査装置とを無線接続して検査するシステムが採用されつつある(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−297062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のように無線通信を採用したシステムにおいては、無線端末の通信可能範囲内に複数の検査装置が存在する場合、無線端末は、自身の位置がわからないので、検査装置と通信すべきか判断できない。逆に、検査装置の通信可能範囲内に複数の無線端末が存在する場合、検査装置も、どの無線端末と通信すべきか判断できない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、適当な無線端末と検査装置とを確実に無線接続できる検査システムおよび検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の検査システムは、検査工程を流れる被検査物に搭載および接続され、外部と無線通信可能な無線端末と、前記無線端末と無線通信し、該無線端末を介して前記被検査物を検査する検査装置と、前記被検査物に搭載され、前記検査工程に設けられる特徴情報を取得する特徴情報取得手段と、前記被検査物に搭載され、前記特徴情報に基づいて該被検査物の現在位置を特定する特定手段と、前記被検査物に搭載され、前記特定手段により特定された前記現在位置が前記検査装置と通信すべき位置か否かを判断し、通信すべき位置である場合、該検査装置との通信を確立する確立手段と、を有する。
【0009】
本発明の検査方法は、検査工程を流れる被検査物に搭載される特徴情報取得手段により、前記検査工程に設けられる特徴情報を取得する取得工程と、取得した特徴情報に基づいて該被検査物の現在位置を特定する特定工程と、特定された前記現在位置において、前記被検査物に搭載された無線端末と、前記被検査物を検査する検査装置とを無線通信すべきか否かを判断する判断工程と、無線通信すべきと判断した場合、前記無線端末と前記検査装置との無線通信接続を確立する確立工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の検査システムによれば、特定手段が特徴情報に基づいて被検査物の現在位置を特定し、確立手段が被検査物の現在位置が前記検査装置と通信すべき位置かを判断してから検査装置との通信を確立する。したがって、無線端末の位置を考慮した上で、適当な無線端末と検査装置とを確実に無線接続できる。
【0011】
本発明の検査方法によれば、特徴情報に基づいて被検査物の現在位置を特定し、該現在位置において、無線端末と検査装置とを無線通信すべきか否かを判断してから、無線端末と検査装置との無線通信接続を確立する。したがって、無線端末の位置を考慮した上で、適当な無線端末と検査装置とを確実に無線接続できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1は検査システムを示す概略図、図2は車載装置の概略構成を示すブロック図、図3は車載カメラを示す該略図である。
【0014】
本実施形態の検査システムでは、車両10(被検査物)を検査し、特に車両10に搭載される車載装置20を、検査装置30により検査する。
【0015】
検査システムには、車両に搭載された車載装置20、車載装置20を検査する検査装置30、および車載装置20と検査装置30との無線通信を可能とする無線端末40が含まれる。これらについて、詳細に説明する。
【0016】
(車載装置20)
車載装置20は、図2に示すように、ECU(電子制御装置)21、ATユニット(自動変速装置)22、ITマスタ23などを含む。
【0017】
ECU21は、車載装置20の各部を総合的に制御する。ATユニット22は、車両10の変速段を制御する。ITマスタ23は、車両10各部のうち、特にユーザの運転を支援する装置を制御する。
【0018】
ITマスタ23には、たとえば、カメラコントローラ231、ナビユニット232、オーディオ233、ディスプレイ234、集中スイッチ235などが接続される。ナビユニット232はカーナビゲーションシステムを実行し、オーディオ233は車両10内での音楽再生などを実行し、ディスプレイ234は各種情報を表示し、集中スイッチ235はステアリングに配置されて各部への操作を実現する。
【0019】
カメラコントローラ231は、車両10に搭載された車載カメラ24による撮像を制御する。車載カメラ24は、図3に示すように、車両10の各方向を撮影するためのカメラである。カメラ24には、たとえば、レーンキープ用カメラ241、フロントビューカメラ242、サイドビューカメラ243、バックビューカメラ244などがある。
【0020】
レーンキープ用カメラ241は、車両10前方の視界を有し、車両10のレーンキープを支援する。フロントビューカメラ242、サイドビューカメラ243およびバックビューカメラ244は、それぞれ、車両10の斜め前方の視界、車両10の側方の視界、および車両10後方の視界を有し、車庫入れなどの際に、画像を取得する。
【0021】
検査システムにおいては、カメラコントローラ231およびカメラ24は、特徴情報取得手段として作用する。必要に応じて、カメラコントローラ231およびカメラ24は、特徴情報50を画像として取得する。特徴情報取得手段としては、上記カメラ241〜244の全てを用いる必要はなく、少なくとも一つのカメラを使用すればよい。
【0022】
なお、カメラ24により取り込む特徴情報50とは、たとえば、バーコード50などの光学的な読み取り用の記号である。バーコード50は、図1に示すように、各検査工程に設けられ、各検査工程を特定できるように表現されている。
【0023】
車載装置20は、図2に示すように、ECU21、ATユニット22およびITマスタ23から延びる診断コネクタ25をさらに有する。診断コネクタ25は、車載装置20を無線端末40と接続するためのコネクタである。無線端末40と接続されることにより、検査装置30からの信号を車載装置20内に伝達し、また、車載装置20内の情報を検査装置30に送信する。
【0024】
(検査装置30)
検査装置30は、検査ライン100において、各検査工程に配置されている。検査装置30は、無線端末40を介して車載装置20と無線通信して、車載装置20の動作を監視し、車載装置20が正常に作動しているか否かを検査する。また、検査装置30は、車載装置20に対して、所定の信号を出力して反応を調べ、車載装置20が正常か否かを検査する。
【0025】
(無線端末40)
無線端末40は、車載装置20と検査装置30との無線通信を可能とする。無線端末40は、車載装置20側に延びるコネクタ41を有する。該コネクタ41が車載装置20の診断コネクタ25と有線接続される。無線端末40は、車両10と共に検査ライン100を進み、検査工程に入ると検査装置30と無線通信を行う。
【0026】
本実施形態において、無線端末40は、車載装置20の現在位置を特定する特定手段としても機能する。無線端末40は、各検査工程と、各検査工程に設けられているバーコード50とを対応付けたテーブルとを記憶している。無線端末40は、車載装置20のカメラ24により撮像したバーコード50をテーブルに照会することによって、車両10が現在存在する検査工程を特定できる。
【0027】
また、検査工程と検査工程との間に車両10が存在する場合には、カメラ24によりバーコード50が撮像されず、工場内の風景が撮像される。無線端末40は、工場内の風景の画像をテーブルと照合しても、検査工程が特定できない。したがって、この場合には、車両10が検査工程にはないことを判別できる。ここで、風景の画像には、なんら特徴がないが、車両10が検査工程にないことを示す特徴情報50となる。
【0028】
さらに、本実施形態において、無線端末40は、確立手段としても機能する。後述する条件に合致した場合には、無線端末40は、検査装置30との無線接続を確立する。
【0029】
(作用)
次に、上記構成を含む検査システムによる検査の流れを説明する。以下では、特に、車両10に搭載された無線端末40および車載装置20の動作に注目して動作を説明する。
【0030】
図4は、検査システムの動作の流れを示すフローチャートである。
【0031】
車両10が検査ライン100に従って進行する間、各車両10に搭載された無線端末40は、検査装置30から撮影要求がないか監視する(ステップS1)。ここで、検査装置30からの撮影要求は、たとえば、検査装置30が担当する検査工程に車両10が流れてきたときに発生される。検査装置30が発生する撮影要求は、通信ができる範囲の全ての無線端末40に受信される。たとえば、図1の検査工程(A)に存在する検査装置30からの撮影要求は、検査工程(A)、(C)および位置(B)に存在する車両10の無線端末40に受信される。
【0032】
撮影要求がない場合(ステップS1:NO)、無線端末40は、撮影要求があるまで待機すべく、ステップS6の処理に進む。
【0033】
撮影要求がある場合(ステップS1:YES)、無線端末40は、車載装置20のITマスタ23を制御し、カメラ24により画像を撮影させる(ステップS2)。無線端末40は、記憶しているテーブルに撮影した画像を照合し、現在車両10が存在する検査工程を特定できるか否か判断する(ステップS3)。たとえば、図1に示す検査工程(A)、(C)に存在する車両10では、カメラ24がバーコード50を撮影できるので、無線端末40は検査工程を特定できる。一方、位置(B)に存在する車両10では、カメラ24がバーコード50を撮影できず、無線端末40は検査工程を特定できない。すなわち、無線端末40は、検査工程にいないことを確認できる。
【0034】
現在の検査工程を特定できない場合(ステップS3:NO)、無線端末40は、自身が搭載されている車両10が撮影要求をした検査装置30の検査対象とはならないと判断する。無線端末40は、検査装置30と無線通信することなく、検査ライン100の流れに従って車両10と共に進行を続け、ステップS6の処理に進む。
【0035】
現在の検査工程を特定できた場合(ステップS3:YES)、無線端末40は、特定した検査工程と、撮影要求した検査装置30の検査工程とが一致するか否かを判断する(ステップS4)。
【0036】
一致しない場合(ステップS4:NO)、無線端末40は、自身が搭載されている車両10が存在する検査工程と、撮影要求をした検査装置30の検査工程とが異なると判断し、今回撮影要求があった検査装置30とは無線通信せず、ステップS6の処理に進む。たとえば、図1に示す検査工程(A)の検査装置30が撮影要求をしていた場合、検査工程(C)に存在する無線端末40は、検査工程が異なるので無線通信しない。
【0037】
特定した検査工程と、検査装置30の検査工程とが一致する場合(ステップS4:YES)、無線端末40は、撮影要求した検査装置30との無線通信を開始する(ステップS5)。この後は、無線端末40と検査装置30とは、信号を暗号化するなどして、2者間のみの通信を確立する。
【0038】
無線端末40は、検査装置30による検査が終わった後、他の検査装置30による検査も含めて全ての検査が終了したか否かを判断する(ステップS6)。検査が終了していない場合(ステップS6:NO)、ステップS1からの処理に戻る。検査が終了している場合(ステップS6:YES)、検査ライン100における全検査工程を終了したとして、処理を終了する。
【0039】
(効果)
以上のように、本実施形態の検査システムによれば、無線端末40がバーコード50に基づいて車両10の現在位置を特定し、該現在位置が検査装置30と通信すべき位置かを判断してから検査装置30との通信を確立する。したがって、無線端末40の位置を考慮した上で、適当な無線端末40と検査装置30とを確実に無線接続できる。
【0040】
特に、上記実施形態では、撮影要求を引き金として、カメラ24によりバーコード50を取り込み、撮影要求をした検査装置30の検査工程と車両10の現在位置とが一致する場合に、無線接続を確立している。したがって、同じ検査工程に存在する検査装置30と車両10の車載装置20とを確実に無線接続できる。
【0041】
また、特徴情報取得手段として、車両10の機能の一部として搭載されているカメラ24を用いているので、車載装置20の位置検出のために新たな設備を用意する必要がなく、生産コストの向上を防止できる。
【0042】
さらに、特徴情報50としてバーコード50を用いているので、特徴情報50を作成する費用がほとんど必要ない。特徴情報50がカメラ24により撮像できるように、特徴情報50を各検査工程に貼り付ければよいので、特徴情報50の設置も極めて容易である。
【0043】
なお、上記実施形態では、特徴情報50として、バーコード50を例示している。しかし、これに限定されない。バーコード50以外にも、光学的に識別可能ないかなる記号等も適用できる。また、各検査工程に配置された照明の輝度の差異により、検査工程を識別することもできる。さらに、各検査工程に配置された音響装置により規則的な音を発声することによって、検査工程を識別してもよい。予め、検査ライン100の各検査工程の風景を撮影して記憶しておき、該風景を、カメラ24により撮影した画像とパターンマッチングすることによって、検査工程を識別してもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、無線端末40が、特定手段および確立手段の役割を果たしている。しかし、たとえば、車載装置20のECU21が、特定手段および確立手段の役割を果たしてもよい。この場合、ECU21がカメラ24により撮像したバーコード50を認識して、車両10が存在する検査工程を特定する。そして、検査装置30と検査工程が一致すれば、無線端末40を介して、検査装置30との接続を確立する。
【0045】
(変形例1)
上記実施形態では、検査装置30側から撮影要求があった場合に、カメラ24によりバーコード50を撮像し、通信を確立している。撮影要求以外のことをきっかけとして、バーコード50を撮像し、通信を確立することもできる。
【0046】
図5は、改良した検査システムの動作の流れを示すフローチャートである。
【0047】
車両10が検査ライン100に従って進行する間、各車両10に搭載された無線端末40は、車両10が停止したか否かを判断する(ステップS11)。通常、検査ライン100上において車両10が停止するのは、何らかの検査工程に入ったときである。
【0048】
車両10が停止しない場合(ステップS11:NO)、車両10が停止するまで待機すべく、ステップS16の処理に進む。
【0049】
車両10が停止した場合(ステップS11:YES)、無線端末40は、車載装置20のITマスタ23を制御し、カメラ24により画像を撮影させる(ステップS12)。無線端末40は、記憶しているテーブルと撮影した画像とを比較し、現在車両10が存在する検査工程を特定できるか否か判断する(ステップS13)。
【0050】
現在の検査工程を特定できない場合(ステップS13:NO)、無線端末40は、自身が搭載されている車両10が撮影要求をした検査装置30の検査対象とはならないと判断する。無線端末40は、検査装置30と無線通信することなく、検査ライン100の流れに従って車両10と共に進行を続け、ステップS16の処理に進む。
【0051】
現在の検査工程を特定できた場合(ステップS13:YES)、無線端末40は、特定した検査工程に設けられている検査装置30と通信可能か否かを判断する(ステップS14)。
【0052】
通信可能でない場合(ステップS14:NO)、無線端末40は、今は検査装置30と通信すべきでないと判断し、ステップS6の処理に進む。
【0053】
通信可能である場合(ステップS14:YES)、無線端末40は、撮影要求した検査装置30との無線通信を開始する(ステップS15)。この後は、無線端末40と検査装置30とは、信号を暗号化するなどして、2者間のみの通信を確立する。
【0054】
無線端末40は、検査装置30による検査が終わった後、他の検査装置30による検査も含めて全ての検査が終了したか否かを判断する(ステップS16)。検査が終了していない場合(ステップS16:NO)、ステップS11からの処理に戻る。検査が終了している場合(ステップS16:YES)、検査ライン100における全検査工程を終了したとして、処理を終了する。
【0055】
以上のように、検査システムの変形例1によれば、車両10が停止したことをきっかけとして、カメラ24によりバーコード50を撮像して車両10が存在する検査工程を特定する。そして、車両10が存在する検査工程に設けられた検査装置30と通信可能であれば、無線接続を確立する。これによって、検査ライン100において、車両10が各検査工程に止まるたびに、自動的に車両10の車載装置20および検査装置30の無線接続を確立できる。
【0056】
(変形例2)
さらに、上記変形例1に加えて、検査システムを利用して、検査中に車載装置20に生じた不具合を記録できる。
【0057】
図6は改良した検査システムにおける車載装置20の概略構成を示す図、図7はさらに改良した検査システムの動作の流れを示すフローチャートである。
【0058】
変形例2では、図6に示すように、無線端末40は、検査装置30の代わりに、サーバ60と無線通信する。
【0059】
変形例2の検査システムでは、ECU21が診断装置として作用する。すなわち、ECU21は、車両10が様々な検査を受けている間、常に、車載装置20に不具合が発生しないかを監視している。
【0060】
不具合が発生した場合、該不具合の情報がサーバ60に無線送信される。サーバ60は、記憶装置として作用し、不具合の情報を蓄積する。これにより、検査項目以外について検査途中または検査後に不具合が発生した場合であっても、不具合の情報を残せる。後に、不具合の発生原因を解析する際に、不具合が発生した状況を再現する必要がなくなり、原因解析に役立つ情報が得られる。
【0061】
以下、検査システムの詳細な動作の流れを説明する。
【0062】
ECU21は、不具合が発生したか否かを判断する(ステップS21)。
【0063】
不具合が発生していない場合(ステップS21:NO)、不具合が発生するまで待機する。不具合が発生した場合(ステップS21:YES)、ECU21は、車載装置20のITマスタ23を制御し、カメラ24により画像を撮影させる(ステップS22)。ECU21は、記憶しているテーブルと撮影した画像と比較し、現在車両10が存在する検査工程を特定できるか否か判断する(ステップS23)。
【0064】
現在の検査工程を特定できる場合(ステップS23:YES)、ECU21は、特定した検査工程を示す情報と、発生した不具合の内容を示す情報と、不具合発生時の車両状態を示す情報とを、無線端末40を介して、サーバ60に送信する(ステップS24)。これにより、どの検査工程においてどの不具合が発生し、そのときの車両10の状態がどのようであったかをサーバ60に蓄積できる。なお、車両状態を示す情報とは、たとえば、変速機が何段に入っているか、車速、ステアリングの角度など車両10のあらゆる情報である。
【0065】
現在の検査工程を特定できない場合(ステップS23:NO)、ECU21は、カメラ24により撮影した画像自体と、発生した不具合の内容を示す情報と、不具合発生時の車両状態を示す情報とを、無線端末40を介して、サーバ60に送信する(ステップS24)。これにより、どの不具合が発生し、そのときの車両10の状態がどのようであったかをサーバ60に蓄積できる。また、撮影した画像に基づいて不具合が発生した場所を推測および特定できる。
【0066】
なお、ステップS24においては、検査工程を特定できないので、たとえば、車載カメラの全て(図3に示すカメラ241〜244)により画像を取得すれば、情報量が大きくなり、後で不具合発生位置を特定するのに有利である。
【0067】
以上のように、変形例2においては、不具合の発生をきっかけとして、カメラ24により撮像している。バーコード50を撮影できる検査工程内において不具合が発生した場合には、不具合情報と共に発生工程の情報もサーバ60に蓄積できる。したがって、後から、不具合の発生原因を解析するときに、不具合発生状況を再現しなくても、不具合発生時の状態を知ることができる。
【0068】
一方、バーコード50を撮影できないような場所、たとえば、検査工程間やテストコースでの走行クリニック時に不具合が生じた場合には、不具合情報と共に不具合発生時の車両10の周りの画像をサーバ60に蓄積できる。したがって、画像を調べることによって、おおよそどの場所で不具合が発生したかを知ることができ、後から、不具合の発生原因を解析するときに、不具合発生状況を再現しなくても、不具合発生時の状態を知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】検査システムを示す概略図である。
【図2】車載装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】車載カメラを示す該略図である。
【図4】検査システムの動作の流れを示すフローチャートである。
【図5】改良した検査システムの動作の流れを示すフローチャートである。
【図6】改良した検査システムにおける車載装置の概略構成を示す図である。
【図7】さらに改良した検査システムの動作の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0070】
10…車両、
20…車載装置、
21…ECU、
22…ATユニット、
23…ITマスタ、
24…カメラ、
25…診断コネクタ、
30…検査装置、
40…無線端末、
41…コネクタ、
50…バーコード(特徴情報)、
60…サーバ、
100…検査ライン、
231…カメラコントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査工程を流れる被検査物に搭載および接続され、外部と無線通信可能な無線端末と、
前記無線端末と無線通信し、該無線端末を介して前記被検査物を検査する検査装置と、
前記被検査物に搭載され、前記検査工程に設けられる特徴情報を取得する特徴情報取得手段と、
前記被検査物に搭載され、前記特徴情報に基づいて該被検査物の現在位置を特定する特定手段と、
前記被検査物に搭載され、前記特定手段により特定された前記現在位置が前記検査装置と通信すべき位置か否かを判断し、通信すべき位置である場合、該検査装置との通信を確立する確立手段と、
を有する検査システム。
【請求項2】
前記特徴情報取得手段は、前記検査装置からの特徴情報取得要求に応じて、前記特徴情報を取得し、
前記確立手段は、前記特徴情報に基づいて特定される現在位置が、前記特徴情報取得要求を発した前記検査装置の位置と一致するか否かを判断し、一致する場合に、該検査装置と通信すべき位置であると判断する請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
前記特徴情報取得手段は、前記被検査物が前記検査工程上での進行を停止したときに、前記特徴情報を取得し、
前記確立手段は、前記現在位置に設けられる前記検査装置と通信可能か否かを判断し、可能な場合に、該検査装置と通信すべき位置であると判断する請求項1または請求項2に記載の検査システム。
【請求項4】
前記被検査物に搭載され、該被検査物の異常を診断する診断装置と、
情報を記憶する記憶装置と、
をさらに有し、
前記特徴情報取得手段は、前記診断装置により異常と診断されると、前記特徴情報を取得し、
前記無線端末は、前記特徴情報に基づいて特定される現在位置の情報を、発生した前記異常および現在の前記被検査物の状態の情報と共に、前記記憶装置に送信する請求項1〜3のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項5】
前記特徴情報とは、光学的に読み取り可能な記号であり、前記被検査物に対して作業される各工程に設けられており、
前記特徴情報取得手段は、前記記号を撮像可能な撮像装置である請求項1〜4のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項6】
前記被検査物は、車両であり、
前記特徴情報取得手段は、車両の機能の一部として搭載される車載カメラである請求項1〜5のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項7】
検査工程を流れる被検査物に搭載される特徴情報取得手段により、前記検査工程に設けられる特徴情報を取得する取得工程と、
取得した特徴情報に基づいて該被検査物の現在位置を特定する特定工程と、
特定された前記現在位置において、前記被検査物に搭載された無線端末と、前記被検査物を検査する検査装置とを無線通信すべきか否かを判断する判断工程と、
無線通信すべきと判断した場合、前記無線端末と前記検査装置との無線通信接続を確立する確立工程と、
を有することを特徴とする検査方法。
【請求項8】
前記取得工程は、前記検査装置からの特徴情報取得要求に応じて実行され、
前記判断工程は、前記特徴情報に基づいて特定される現在位置が、前記特徴情報取得要求を発した前記検査装置の位置と一致するか否かを判断し、一致する場合に、無線通信すべきと判断する請求項7に記載の検査方法。
【請求項9】
前記取得工程は、前記被検査物が前記検査工程上での進行を停止したときに実行され、
前記判断工程は、前記現在位置に設けられる前記検査装置と前記無線端末とが通信可能か否かを判断し、可能な場合に、無線通信すべきと判断する請求項7または請求項8に記載の検査方法。
【請求項10】
前記被検査物の異常を診断する診断工程と、
前記特徴情報に基づいて特定される現在位置の情報を、発生した前記異常および現在の前記被検査物の状態の情報と共に送信する送信工程と、
送信された情報を記憶する記憶工程と、
をさらに含み、
前記取得工程は、前記診断工程において異常が診断されると実行される請求項7〜9のいずれか一項に記載の検査方法。
【請求項11】
前記取得工程では、光学的に読み取り可能な記号として設けられた前記特徴情報を撮像することにより、前記特徴情報が取得される請求項7〜10のいずれか一項に記載の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−258489(P2006−258489A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−73502(P2005−73502)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】