説明

検査方法、検査装置、プログラム及び画像形成装置の製造方法

【課題】加工孔又は凹部が施された検査対象物の良否を、高感度で、誤検出を抑制して、判定することができない。
【解決手段】撮像手段で撮像した画像をデジタル化した画像データから得られる画像データを構成する輝度配列の座標系を、rθ極座標変換の基準点を孔又は凹部中心付近として極座標系輝度配列に変換する画像処理をし、極座標系輝度配列の中で、基準点から半径rにおける輝度配列を抽出し、複数箇所の輝度値から輝度配列の位相を特定し、半径rの値を変更して位相特定より特定される位相を複数取得し、平均化し、平均化された位相と各半径rにおける輝度配列の少なくとも2箇所の輝度値とにより、周期性のある輝度値配列を各半径r毎に新たに生成し、判定基準輝度値配列とし、極座標系輝度配列の各半径rにおける輝度配列の値と各半径rに対応する判定基準輝度値配列とを照合して良否を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検査方法、検査装置、プログラム及び画像形成装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、液体吐出記録方式の「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を3次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0004】
また、液体吐出ヘッドとしては、液滴を吐出するノズル、ノズルが連通する個別液室(加圧液室、吐出室、圧力室、液体流路などとも称される。)、圧力室内の液体を加圧する圧力(エネルギー)を発生する圧力発生手段(エネルギー発生手段)と、各圧力室に液体を供給する比較的容積の大きな共通液室とを備えて、圧力発生手段で発生させる圧力で圧力室内の液体を加圧することによってノズルから液滴を吐出させる。ここで、圧力発生手段としては、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマル方式、圧電素子(本願では電気機械変換素子と同義語として用いる。)などを用いる圧電方式、静電力を発生する静電型アクチュエータを用いる静電方式などが知られている。
【0005】
ところで、液体吐出ヘッドにおいては、高速、高画質化に対応するために、多数のノズルが高密度に配置される。個々のノズルの形状が異形であったり、ゴミなどの異物が付着していると、滴吐出方向の曲がりなどの滴吐出不良が発生して高画質画像を形成することができなくなる。
【0006】
そこで、従来から液体吐出ヘッドのノズル(ノズル孔、吐出口)検査方法としては、顕微鏡等を用いた人による目視検査が一般的に行なわれている。この目視検査においては、有無及び限度見本により検査基準を設けて検査を実施するが、検査作業に時間がかかり、作業効率が悪いことから、自動化を図ることが求められている。
【0007】
ここで、液体吐出ヘッドのノズル径はある程度ばらつくことが許容されており、ノズル孔の検査の自動化を図る上では、このように検査対象物であるノズル孔のノズル径が変動することが1つの問題である。すなわち、画像処理技術を用いて目視検査を代替するには、一般的な方法として、良品サンプルの画像を予め取得し、検査対象画像とパターンマッチングを行なう方法、ノズル孔を全周測定する方法等があるが、前者は径変動に追従することが困難であり、後者はノズルエッジの位置認識精度に依存し、又画像を二値化しての処理となるため、ノズルエッジに付着した微小な異物、および輝度変化が少ない異物の検出が不可能であるという問題がある。
【0008】
つまり、ノズル径変動幅(変動が許容されている変動幅)に対して検出したい異物サイズが大きいときには、検出することができるが、径変動幅以下の異物サイズを検出する目的の場合は、径変動がノイズとして異物の検出を妨げてしまうことになる。前記パターンマッチング方法においては、良品サンプル画像を検査対象画像に併せて伸縮させてからマッチングを見る方法もあるが、伸縮により径端部境界域の形状特性を歪めて検査をしてしまうという新たな問題が生じることになる。
【0009】
また、従来の欠陥の検査装置として、検査領域に対応する画像データを取得する取得部と、画像データを直交座標系から極座標系のデータに変換する極座標変換部と、半径方向の直線を強調するフィルタ処理を実行するフィルタ処理部と、半径方向に表示される直線の平滑化を行なう平滑化処理部と、2値化基準に基づいて平滑化された画像データの2値化処理を行なう2値化処理部と、2値化処理された画像データから、抽出基準を満足する画像データを欠陥の候補として抽出する抽出部と、極座標系のデータを直交座標系に変換する直交座標変換部と、直交座標系のデータに基づいて欠陥の候補の特徴量を算出する算出部と、判定基準と特徴量とに基づいて欠陥の候補が欠陥であるか否かを判定する欠陥判定部とを含む演算部を備えるものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−209134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した特許文献1に記載の検査装置ないし方法をノズル孔の検査に適用した場合、画像処理により特定した中心を基準に極座標変換を行い、変換後の画像配列に対して判定を行なうことになり、この装置ないし方法は、ノズル径変動の影響を排除できる。
【0012】
しかしながら、実際の検査において異物が付着したノズルの場合、異物の影響により画像処理で中心を求める際に精度が低下し、真の中心と差分が生じることになる。又、中心を求める画像処理自体の精度にも、画像の分解能等による精度の限界がある。このように、差分がある、又は精度が十分でない中心位置を基準として生成された極座標変換後の画像配列には歪みが生じ、微小な異物をも検出するために厳しい検出閾値を与えて検査を行なうと、正常な検査対象物であっても誤検出が発生するという課題がある。
【0013】
つまり、従来の検査装置、画像処理方法では、検査対象物の形状変動が許容されている状態で、許容値より小さな異物も検出するという検査目的に対応することが困難であるという課題があり、その結果、画像処理による目視検査の自動化は困難であった。
【0014】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、加工孔又は凹部が施された検査対象物の良否を、高感度で、誤検出を抑制して、判定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するため、本発明に係る検査方法は、
検査対象物の加工孔又は凹部の良否を検査する検査方法であって、
撮像手段で撮像した画像をデジタル化した画像データから得られる画像データを構成する輝度配列の座標系を、rθ極座標変換の基準点を孔又は凹部中心付近として極座標系輝度配列に変換する画像処理をする工程と、
前記極座標系輝度配列の中で、基準点から半径rにおける輝度配列を抽出し、複数箇所の輝度値から前記輝度配列の位相を特定する位相特定工程と、
前記半径rの値を変更して前記位相特定工程より特定される位相を複数取得し、平均化する位相平均化工程と、
前記平均化された位相と各半径rにおける輝度配列の少なくとも2箇所の輝度値とにより、周期性のある輝度値配列を各半径r毎に新たに生成し、判定基準輝度値配列とする基準生成工程と、
前記極座標系輝度配列の各半径rにおける輝度配列の値と各半径rに対応する前記判定基準輝度値配列とを照合して良否を判定する判定工程と、を行なう
構成とした。
【0016】
ここで、前記位相特定工程で用いる複数の輝度値は、輝度の最大値、最小値である構成とできる。
【0017】
また、前記位相平均化工程に用いられる半径rにおける輝度配列はすべて、輝度が低下するピークが一つのみの輝度配列である構成とできる。
【0018】
また、前記画素の座標系をrθ極座標系に変換する画像処理では中心位置を自動的に算出し、前記基準点とする構成とできる。
【0019】
また、前記画素の座標系をrθ極座標系に変換する画像処理では既定の位置を前記基準点とする構成とできる。
【0020】
また、前記位相特定工程ではノイズ要素を除去する構成とできる。
【0021】
また、前記基準生成工程では良品の検査対象物の形状特性及び撮影環境特性に基づいた推論を行ない前記周期性のある輝度値配列の種類を決定する構成とできる。
【0022】
また、前記基準生成工程では前記周期性のある輝度値配列を数学的関数及び予め与えられた配列マップに従って生成する構成とできる。
【0023】
また、前記判定工程では、判定基準値を基準として予め定めた許容値の範囲内か否かで良否を判定する構成とできる。
【0024】
本発明に係る検査装置は、
検査対象物の加工孔又は凹部の良否を検査する検査装置であって、
撮像手段で撮像した画像をデジタル化した画像データから得られる画像データを構成する輝度配列の座標系を、rθ極座標変換の基準点を孔又は凹部中心付近として極座標系輝度配列に変換する画像処理をする手段と、
前記極座標系輝度配列の中で、基準点から半径rにおける輝度配列を抽出し、複数箇所の輝度値から前記輝度配列の位相を特定する位相特定手段と、
前記半径rの値を変更して前記位相特定工程より特定される位相を複数取得し、平均化する位相平均化手段と、
前記平均化された位相と各半径rにおける輝度配列の少なくとも2箇所の輝度値とにより、周期性のある輝度値配列を各半径r毎に新たに生成し、判定基準輝度値配列とする基準生成手段と、
前記極座標系輝度配列の各半径rにおける輝度配列の値と各半径rに対応する前記判定基準輝度値配列とを照合して良否を判定する判定手段と、を備えている
構成とした。
【0025】
本発明に係るプログラムは、
検査対象物の加工孔又は凹部の良否を検査する検査処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
撮像手段で撮像した画像をデジタル化した画像データから得られる画像データを構成する輝度配列の座標系を、rθ極座標変換の基準点を孔又は凹部中心付近として極座標系輝度配列に変換する画像処理と、
前記極座標系輝度配列の中で、基準点から半径rにおける輝度配列を抽出し、複数箇所の輝度値から前記輝度配列の位相を特定する位相特定処理と、
前記半径rの値を変更して前記位相特定工程より特定される位相を複数取得し、平均化する位相平均化処理と、
前記平均化された位相と各半径rにおける輝度配列の少なくと2箇所の輝度値とにより、周期性のある輝度値配列を各半径r毎に新たに生成し、判定基準輝度値配列とする基準生成処理と、
前記極座標系輝度配列の各半径rにおける輝度配列の値と各半径rに対応する前記判定基準輝度値配列とを照合して良否を判定する判定処理と、をコンピュータに実行させる
構成とした。
【0026】
本発明に係る画像形成装置の製造方法は、
ノズル板に形成された複数のノズルから液滴を吐出して記録媒体上に画像を形成する画像形成装置の製造方法であって、
撮像手段で撮像した前記ノズルの画像をデジタル化した画像データから得られる画像データを構成する輝度配列の座標系を、rθ極座標変換の基準点を前記ノズルの中心付近として極座標系輝度配列に変換する画像処理をする工程と、
前記極座標系輝度配列の中で、基準点から半径rにおける輝度配列を抽出し、複数箇所の輝度値から前記輝度配列の位相を特定する位相特定工程と、
前記半径rの値を変更して前記位相特定工程より特定される位相を複数取得し、平均化する位相平均化工程と、
前記平均化された位相と各半径rにおける輝度配列の少なくとも2箇所の輝度値とにより、周期性のある輝度値配列を各半径r毎に新たに生成し、判定基準輝度値配列とする基準生成工程と、
前記極座標系輝度配列の各半径rにおける輝度配列の値と各半径rに対応する前記判定基準輝度値配列とを照合して前記ノズルの良否を判定する判定工程と、
前記判定工程の結果をもとに前記ノズル板の良品を選定して画像形成装置の組立を行なう組立工程と、を有する
構成とした。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る検査方法によれば、撮像手段で撮像した画像をデジタル化した画像データから得られる画像データを構成する輝度配列の座標系を、rθ極座標変換の基準点を孔又は凹部中心付近として極座標系輝度配列に変換する画像処理をする工程と、前記極座標系輝度配列の中で、基準点から半径rにおける輝度配列を抽出し、複数箇所の輝度値から前記輝度配列の位相を特定する位相特定工程と、前記半径rの値を変更して前記位相特定工程より特定される位相を複数取得し、平均化する位相平均化工程と、前記平均化された位相と各半径rにおける輝度配列の少なくとも2箇所の輝度値とにより、周期性のある輝度値配列を各半径r毎に新たに生成し、判定基準輝度値配列とする基準生成工程と、前記極座標系輝度配列の各半径rにおける輝度配列の値と各半径rに対応する前記判定基準輝度値配列とを照合して良否を判定する判定工程と、を行なう構成としたので、加工孔又は凹部が施された検査対象物の良否を、高感度で、誤検出を抑制して、判定できる。
【0028】
本発明に係る検査装置によれば、撮像手段で撮像した画像をデジタル化した画像データから得られる画像データを構成する輝度配列の座標系を、rθ極座標変換の基準点を孔又は凹部中心付近として極座標系輝度配列に変換する画像処理をする手段と、前記極座標系輝度配列の中で、基準点から半径rにおける輝度配列を抽出し、複数箇所の輝度値から前記輝度配列の位相を特定する位相特定手段と、前記半径rの値を変更して前記位相特定工程より特定される位相を複数取得し、平均化する位相平均化手段と、前記平均化された位相と各半径rにおける輝度配列の少なくとも2箇所の輝度値とにより、周期性のある輝度値配列を各半径r毎に新たに生成し、判定基準輝度値配列とする基準生成手段と、前記極座標系輝度配列の各半径rにおける輝度配列の値と各半径rに対応する前記判定基準輝度値配列とを照合して良否を判定する判定手段と、を備えている構成としたので、加工孔又は凹部が施された検査対象物の良否を、高感度で、誤検出を抑制して、判定できる。。
【0029】
本発明に係るプログラムによれば、撮像手段で撮像した画像をデジタル化した画像データから得られる画像データを構成する輝度配列の座標系を、rθ極座標変換の基準点を孔又は凹部中心付近として極座標系輝度配列に変換する画像処理と、前記極座標系輝度配列の中で、基準点から半径rにおける輝度配列を抽出し、複数箇所の輝度値から前記輝度配列の位相を特定する位相特定処理と、前記半径rの値を変更して前記位相特定工程より特定される位相を複数取得し、平均化する位相平均化処理と、前記平均化された位相と各半径rにおける輝度配列の少なくと2箇所の輝度値とにより、周期性のある輝度値配列を各半径r毎に新たに生成し、判定基準輝度値配列とする基準生成処理と、前記極座標系輝度配列の各半径rにおける輝度配列の値と各半径rに対応する前記判定基準輝度値配列とを照合して良否を判定する判定処理と、をコンピュータに実行させる構成としたので、加工孔又は凹部が施された検査対象物の良否を、高感度で、誤検出を抑制して、判定できる。
【0030】
本発明に係る画像形成装置の製造方法によれば、撮像手段で撮像した前記ノズルの画像をデジタル化した画像データから得られる画像データを構成する輝度配列の座標系を、rθ極座標変換の基準点を前記ノズルの中心付近として極座標系輝度配列に変換する画像処理をする工程と、前記極座標系輝度配列の中で、基準点から半径rにおける輝度配列を抽出し、複数箇所の輝度値から前記輝度配列の位相を特定する位相特定工程と、前記半径rの値を変更して前記位相特定工程より特定される位相を複数取得し、平均化する位相平均化工程と、前記平均化された位相と各半径rにおける輝度配列の少なくとも2箇所の輝度値とにより、周期性のある輝度値配列を各半径r毎に新たに生成し、判定基準輝度値配列とする基準生成工程と、前記極座標系輝度配列の各半径rにおける輝度配列の値と各半径rに対応する前記判定基準輝度値配列とを照合して前記ノズルの良否を判定する判定工程と、前記判定工程の結果をもとに前記ノズル板の良品を選定して画像形成装置の組立を行なう組立工程と、を有する構成としたので、ノズル異常を高精度に検出して高精度のノズル板を使用することができ、画像品品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る検査方法、検査装置、プログラム及び画像形成装置の製造方法の一実施形態の説明に供するフロー図である。
【図2】図1の抽出工程(処理)及び基準値生成工程(処理)の説明に供するフロー図である。
【図3】検査対象物であるノズル板の1つのノズル部分の拡大説明図である。
【図4】図3のノズル部分の撮像画像の例を示す説明図である。
【図5】図4の画像の半径方向における輝度配分布を示す説明図である。
【図6】rθ極座標変換の基準点が検査対象物の孔中心と同一である場合の極座標系輝度配列の説明に供する説明図である。
【図7】rθ極座標変換の基準点が検査対象物の孔中心と同一でない場合の極座標系輝度配列の説明に供する説明図である。
【図8】rθ極座標変換の基準点が検査対象物の孔中心と同一でない場合の判定基準輝度値配列の説明に供する説明図である。
【図9】rθ極座標変換の基準点が検査対象物の孔中心と同一でない場合の判定基準輝度値配列の説明に供する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明をヘッドのノズル孔の検査について適用した例で説明する。
図1に示すように、カメラなどの撮像手段で撮像した画像をデジタル化した画像データから得られる直交座標系輝度配列で構成される画像データを取り込み、当該輝度配列の座標系を、rθ極座標変換して、rθ極座標の基準点を孔中心付近として極座標系輝度配列に変換する画像処理(工程)を行う。
【0033】
そして、極座標系輝度配列の中で、基準点から半径rにおける輝度配列を抽出し、複数箇所の輝度値から前記輝度配列の位相を特定する位相特定処理(工程)をrの値を変更して複数の半径rについて行うことにより半径r毎の位相情報を取得し、これら複数の位相情報に対して平均化処理(工程)を行ない、平均化された位相と各半径rにおける輝度配列の複数の輝度値とにより、周期性のある輝度値配列を、各半径r毎に新たに生成する基準生成処理(工程)を行なって、判定基準輝度値配列とする。
【0034】
その後、極座標系輝度配列の各半径rにおける輝度配列の値と各半径rに対応する判定基準輝度値配列とを照合して良否(OK/NG)を判定する判定処理(工程)を行なう。
【0035】
ここで、図2に示すように、位相特定処理では、極座標系輝度配列のデータからノイズフィルタでノイズを除去し、輝度の最大値を特定し、輝度が最大値となる位相(θ)を特定して、位相Aとし、輝度の最小値を特定し、輝度が最小値となる位相(θ)を特定して、位相Bとする。ここで、「ノイズ」とは検出ノイズのみを指すものではなく、検出に不要な部分という意味で用いている。例えば、半径rの領域が一部加工孔内にかかる場合には、この部位はエッジ検出には寄与しない明部(透過光で検査の場合)となるためノイズとして輝度の検出域からは除外している。またここでは、輝度の最大値、最小値の2点の輝度で位相を特定しているが、これに限るものではなく、位相分布が推定できる(例えば円形の加工孔の場合にはsinカーブ)ものであれば、最大値、最小値が不明の場合でも任意の3点の輝度情報があれば、位相、波高値、輝度の振幅の中心値の3つの変数が決まるため位相分布(sinカーブ)を特定することができる。したがって、最大、最小のどちらかが検出できない場合(例えば前述の半径rの一部が加工孔内にかかる場合など)であっても、位相の特定は可能である。
【0036】
ここで、このようにして得られた複数箇所の輝度情報からsinカーブを形成してそれをそのまま判定基準輝度値配列として利用することも考えられるが、このようにした場合、輝度を特定した位相位置(上記例では輝度が最大値、最小値となる位置)にちょうど異物、異形があった場合には、判定基準輝度値配列自体がずれてしまうという問題がある。そこで、本発明では、半径rを変更して複数の半径rにおける位相情報を取得し、これらの平均化処理を行うことを特徴としている。半径rを変えることにより輝度値は当然変動するが、同心円であるため、位相(θ)は原則変化しないため、複数の半径rの位相情報を平均化することにより、特定の半径rにおける位相特定位置に異物があった場合でもその影響を抑え、より正確な位相(θ)の特定が可能となる。
【0037】
さらに、平均化処理の前に各半径r毎に特定された位相情報をフィルタリングして、明らかにデータに不具合があるものは平均化処理から除外することもでき、このようにすることで、さらに正確な位相(θ)の特定が可能となる。具体的には、加工孔が円形の場合には、前記位相A〜位相B間が180°か否かを検査し、180°からずれたものに関しては平均化処理から除くという処理が可能である。
【0038】
次に、基準生成処理について説明する。上記のように平均化して特定された位相(θ)データに対して、各半径rにおける少なくとも2箇所の位相における輝度値を入力することにより、位相に加えて波高値、輝度の振幅の中心値も決定できるため各半径rにおける輝度値配列のsinカーブを特定することができ、これが判定基準輝度値配列となる。ここで入力する輝度値は、理論上どの位相位置のものでもよいが、位相特定工程で用いた輝度値(ここでは最大値、最小値)を用いることが好ましい。新たに選択した場合は、その位置に異物、異形の存在する可能性があり、基準がずれてしまうリスクが高まるためである。
【0039】
こうして特定された各半径r毎の判定基準輝度値配列と、画像処理において得られた各半径rに対応する輝度配列を照合し、基準として定めた許容値の範囲内か否かで加工孔の良否判定する判定処理を行う。許容値は、輝度異常の個数の上限として設定してもよいし、輝度異常領域のサイズの上限として設定してもよく、任意に設定できる。
【0040】
つまり、本発明では、画像データから得られる画像データを構成する輝度配列の座標系を、rθ極座標変換の基準点を孔又は凹部中心付近して極座標系輝度配列に変換する画像処理を行い、中心位置ズレにより発生する極座標変換後の輝度配列に存在する周期的変動に位相及び量を合わせ、さらに異物、異形の影響を受けない判定基準輝度値配列を生成し、これと輝度配列の比較(照合)を行なうことにより、中心位置ズレ量より微小な異物及び不良を検出することができる。
【0041】
以下に具体的に説明する。まず、ここでは、検査対象物は、例えば図3に示すように、液体吐出ヘッドのノズル部材としてのノズル板1であり、ノズル板1には、基材1aに例えば電鋳工法にて加工孔としてのノズル孔(吐出口)2が形成されている。また、このノズル板1の滴吐出面側には、電鋳時のレジストパターンに対応する凹部3が形成され、滴吐出面との間には段差3aが生じている。
【0042】
このノズル板1をカメラなどの撮像手段で撮像することにより、図4に示すような撮像結果(画像)が得られる。この画像について、図5(a)に示すようにある角度θ(位置5)におけるノズル孔中心側から外周側までの半径方向の輝度分布は、透過照明及び落斜照明により、同図(b)に示すように、ノズル孔2と凹部3との境界部及び凹部3と滴吐出面との間の段差部3aで輝度が低下した(暗くなる)分布となる。
【0043】
ここで、画像のノズル孔に当る部分の中心付近を基準点に極座標変換を行なうと、次のようになる。
<中心ズレがない場合>
rθ(半径角度)極座標変換の基準点が検査対象物の孔中心と同一であれば、例えば図6(b)に示す極座標系輝度配列61が得られる。異物及び不良なき場合、中心からの任意の半径rにおいては、θ=0〜360°の全周において輝度は同一な値となる。したがって、中心からの半径r毎に輝度の基準値及び許容値を設定することにより、これを外れた個所を正常ではない異物及び不良として検出(判定)することができる。
【0044】
つまり、図6(c)に示すようにある角度θにおける半径r方向の輝度はノズル孔2と凹部3との境界部で特に暗くなり、図6(a)に示すようにノズル孔2の周面に異物が付着していたり、ノズル孔2自体が変形しているとその部分が暗くなるので、θ=0〜360°の全周に亘って輝度配列を採ると、図6(b)に示すような極座標系輝度配列61となる。このような場合であれば、特定の半径rの位置における輝度異常を見るだけでよく、比較的変形等の異常点の検出は容易であるが、ノズル毎に高精度にノズル孔の中心と基準点をあわせる必要があり、生産性が低下してしまうという課題がある。
【0045】
<中心ズレがある場合>
rθ極座標変換の基準点が検査対象物の孔中心と同一でない場合は、例えば図7(b)に示すような極座標系輝度配列71が得られる。異物及び不良が存在しない(良品である)場合であっても、半径rの位置でのθ=0〜360°の全周の輝度は同一な値とはならず、周期的な値の変動が存在する状態となる、この変動が、異物及び不良が引き起こす輝度の変化より大きい場合、輝度の基準値を周期的な値の変動の平均値としても、許容値を厳しくしたのみでは、不良以外の領域も検出してしまい、誤検出となる。一方、許容値を緩くした場合(広くした場合)は、誤検出は避けられるが、微小な異物や不良を検出することができなくなり、結果として検出感度を高めることができなくなる。
【0046】
つまり、図7(c)に示すようにある角度θにおける半径r方向の輝度はノズル孔2と凹部3との境界部で特に暗くなり、図7(a)に示すようにノズル孔2の周面に異物が付着していたり、ノズル孔2自体が変形しているとその部分が暗くなり、かつ、角度θの位置が異なることで暗くなる部分の半径r方向における位置が変化するので、θ=0〜360°の全周に亘って輝度配列を採ると、図7(b)に示すような極座標系輝度配列71となる。
【0047】
そこで、本実施形態においては、rθ極座標変換の基準点が検査対象物の孔中心とズレがある場合であっても、基準点から半径rのライン81(図8)に沿った輝度配列を取得し、複数の輝度値の数値から輝度配列をsinカーブ(図9のライン91)で近似し、位相(θ=0の位置)を特定する。ここで、輝度配列を取得した半径rの位置に異物、異形等が存在した場合には、この位相位置はずれてしまっている場合が考えられる。そこで、半径rを変更し、複数の位相情報を取得して平均化することで、より真実に近い位相(θ=0の位置)が特定できる。
【0048】
ここで、図8からも明らかなように半径rが小さい時は、輝度検出位置は全てノズル孔内となり、全体が輝度配列は全体が「明」状態となる。その後、半径Rが大きくなるにしたがい、図8でいうならば両端部から輝度の低下が始まる。このとき、中心部はまだノズル孔内に存在するため、「明」状態であり、輝度配列は完全なsinカーブを形成しない。しかし、ノズル孔内の「明」部をノイズとしてフィルタリングし、両端の暗部領域の輝度を用いて近似することにより、位相(θ=0の位置)の特定は可能となる。
【0049】
さらに半径rが大きくなると、図8に示されたように全域がノズルエッジの暗部にかかる領域となり、この状態では輝度配列は図9のライン91で示されるようにsinカーブに近くなる。このとき、図9(b)に示すように、両端部では輝度ピーク値(最暗部)近傍となり、中心部ではピークの立ち上がり部(最明部)となる。このような状態であれば、sinカーブ近似のための輝度値を輝度配列全域から取得できるため、前述のように輝度配列の端部のみからしか取得できない場合に比べて近似精度も高くできる。具体的に輝度の最大、最小となる位相の値を用いてsinカーブ近似を行い位相(θ=0の位置)を特定することが可能となる。
【0050】
さらに半径rが大きくなると、図8における端部が輝度の最暗部を越えてしまい、再度明方向変化する。このようになると、輝度配列中に暗部ピークが2箇所形成されることとなり、sinカーブ近似に用いることはできなくなる。したがって、このような領域の半径rの輝度配列は位相特定には用いることができない。
【0051】
すなわち、図5(b)を用いて説明するならば、基準点を中心として半径rの全周が、領域Aに入ることが最も好ましく、少なくとも一部が領域Aに入っていれば位相特定は可能となるため、この領域で複数の半径rの輝度配列を取得し、それぞれの位相を特定する。しかし、一部でも領域Bにかかった場合には位相特定は不可能となるため、取得範囲からは除外している。
【0052】
取得する輝度配列の数は多ければ多いほど位相精度向上には有効であるが、数を多くすれば処理時間が長くなる。実際の取得する輝度配列の間隔(rの間隔)は検出しようとする異物や異形サイズの1/3程度が好ましい。異物や異形と同等の間隔の輝度配列では、異物、異形の検出とノイズの区別が困難であり、異物や異形サイズの1/3程度の間隔で検出を行なうことによりノイズとの分離が可能となる。図8では1μmの異物を検出するため、0.365μm間隔で半径rの輝度値配列を抽出している。
【0053】
このように複数の半径rの輝度配列からそれぞれ特定された位相(θ=0の位置)を平均化することで、より正確な位相(θ=0の位置)を特定している。ここでは、ここの輝度配列をsinカーブで近似して位相を特定し平均化しているが、これに限るものではなく、例えば最大値、最小値の位相のみを検出し、すべての輝度配列の最大値、最小値の位相をそれぞれ平均化したあとで、sinカーブで近似を行い、位相(θ=0の位置)を特定してもよい。
【0054】
ここで平均化されて特定された位相を各半径rの輝度配列に当てはめ、少なくとも2つの輝度値を入力することによりsinカーブの波高値と輝度値の振幅の中心値とを決定し、各半径rの輝度配列に対応する判定基準輝度値配列を生成する。この判定基準輝度値配列は、各半径r毎に生成される。この判定基準輝度値配列を元に、極座標変換された画像の極座標系輝度配列の各半径rにおける輝度配列と比較することにより、中心ズレに起因する歪みの影響を除去した比較判定を行なうことができる。
【0055】
ここで、直交座標系輝度配列をrθ極座標系輝度配列に変換する画像処理について前述した図5を参照して説明する。
前述したように、本発明によれば、基準点と加工孔の中心ズレがあっても異常検出が可能となる。しかし、高精度検出のためには、これも前述のように図5の領域Aに半径rの全周が収まる必要があり、この領域でできるだけ多くの半径rの輝度配列を取得するためにも、基準点と加工孔の中心ズレ量はできるだけ少ない方がよい。ここで、検査対象物が孔である場合、透過照明を採用すれば、画像には孔の部分が輝度の高い円形状の領域として存在する。当該領域の面積の重心を求める画像処理手法を用いると、検査対象物の特性として真円の孔であるため、重心を中心とすることが可能になる。この得られた中心をrθ極座標系輝度変換の基準点とすることで、自動的に極座標変換を行うことができる。
【0056】
また、検査対象物が孔である場合、透過照明を採用すれば、画像には孔の部分が輝度の高い円形状の領域として存在するので、当該領域が安定して画像中心に存在する場合には別の方法として、中心を既定の位置とし、この規定の位置をrθ極座標系輝度変換の固定の基準点とすることで、自動的に極座標変換を行なうこともできる。
【0057】
次に、位相特定工程について前述した図6及び図7を参照して説明する。
前述したように、検査対象物に孔があり、孔形状が真円である場合、極座標変換の基準点と孔中心のズレがないときには、図6に示す極座標系輝度配列61のように周期性は存在しない。一方、極座標変換の基準点と孔中心のズレが発生したときには、図7に示す極座標系輝度配列71のように周期性が発生するが、検査対象物は真円であるので、周期性の性状は数学的関数で表現することができる。そこで、これを踏まえた上で、前記関数を用いて近似することで高精度に位相を特定することができる。具体的には、検査対象物が真円であれば、sinカーブでの近似が可能となり、他の形態(例えば楕円など)の場合には、それに応じた近似曲線を用いることができる。
【0058】
つまり、極座標変換された輝度配列の値より位相を特定する位相特定処理で、予め把握されている検査対象物の形状特性及び撮影環境特性を踏まえた推論方法により、位相を演算抽出することにより、精度の良い判定基準輝度値配列を生成し、この判定基準輝度値配列との照合(比較)を行なうことによって、歪みの影響を回避して、高感度な(厳しい)検出許容値を利用することができるようになる。
【0059】
また、前述したように、極座標変換の基準点と中心ズレが発生した場合、異物又は不良が存在する可能性が含まれることになる。そこで、極座標変換後の輝度配列より中心ズレ方向及び量を抽出するときに、異物及び不良による輝度配列の乱れも含まれるので、これが事前に特定できる場合にはこれをノイズとして除去することで、精度の良い判定基準輝度値配列を生成し、この判定基準輝度値配列との照合(比較)を行なうことによって、歪みの影響を回避して、高感度な(厳しい)検出許容値を利用することができるようになる。また、前述のように半径rの輝度配列がノズル孔内にかかる場合はノズル孔内部分をノイズとして処理することも有効である。
【0060】
次に、基準生成工程について前述した図2を参照して説明する。
前述したように、検査対象物に孔があり、孔形状が真円である場合、極座標変換の基準点と孔中心のズレがないときには、周期性は存在しない。一方、極座標変換の基準点と孔中心のズレが発生したときには、周期性があり、検査対象物は真円であるので、周期性の性状は数学的関数又は予め与えられた配列マップで表現することができる。これを踏まえた上で、特定された位相と基準点から半径rにおける少なくとも一つの輝度値を変数として、数学的関数及び予め与えられた配列マップ(本実施形態ではsin波形)に当てはめて生成することで、基準点から半径rにおける判定基準輝度値配列が得られる。
【0061】
つまり、数学的関数、及び予め与えられた配列マップを用いて、判定基準輝度値配列を生成することにより、極座標変換の基準点ズレにより発生する歪みを含んだ配列でも、高感度な(厳しい)検出許容値を利用することができるようになる。
【0062】
次に、判定工程について前述した図1を参照して説明する。
判定工程では、極座標系輝度配列と判定基準輝度値配列が入力される。判定工程では、両配列の比較を行い、比較した結果の差異の許容値をパラメータ値として可変設定可能する。このように、パラメータ値を任意に可変設定できるようにすることで、検出感度を自在に変化させることができる。
【0063】
なお、上述した各工程(処理)を行なう手段を備えることによって検査装置を構成することができる。また、上述した各工程(処理)をコンピュータに実行させるプログラムを構成することもできる。
【0064】
また、上記実施形態では本発明を液体吐出ヘッドのノズル部材のノズル孔の検査に適用した例で説明したが、これに限るものではなく、また、加工孔に限らず凹部(溝部)なども検査対象とすることができる。
【符号の説明】
【0065】
1 ノズル板
2 ノズル孔
3 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の加工孔又は凹部の良否を検査する検査方法であって、
撮像手段で撮像した画像をデジタル化した画像データから得られる画像データを構成する輝度配列の座標系を、rθ極座標変換の基準点を孔又は凹部中心付近として極座標系輝度配列に変換する画像処理をする工程と、
前記極座標系輝度配列の中で、基準点から半径rにおける輝度配列を抽出し、複数箇所の輝度値から前記輝度配列の位相を特定する位相特定工程と、
前記半径rの値を変更して前記位相特定工程より特定される位相を複数取得し、平均化する位相平均化工程と、
前記平均化された位相と各半径rにおける輝度配列の少なくとも2箇所の輝度値とにより、周期性のある輝度値配列を各半径r毎に新たに生成し、判定基準輝度値配列とする基準生成工程と、
前記極座標系輝度配列の各半径rにおける輝度配列の値と各半径rに対応する前記判定基準輝度値配列とを照合して良否を判定する判定工程と、を行なう
ことを特徴とする検査方法。
【請求項2】
前記位相特定工程で用いる複数の輝度値は、輝度の最大値、最小値であることを特徴とする請求項1に記載の検査方法。
【請求項3】
前記位相平均化工程に用いられる半径rにおける輝度配列はすべて、輝度が低下するピークが一つのみの輝度配列であることを特徴とする請求項1又は2に記載の検査方法。
【請求項4】
前記画素の座標系をrθ極座標系に変換する画像処理では中心位置を自動的に算出し、前記基準点とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の検査方法。
【請求項5】
前記画素の座標系をrθ極座標系に変換する画像処理では既定の位置を前記基準点とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の検査方法。
【請求項6】
前記位相特定工程ではノイズ要素を除去することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の検査方法。
【請求項7】
前記基準生成工程では良品の検査対象物の形状特性及び撮影環境特性に基づいた推論を行ない前記周期性のある輝度値配列の種類を決定することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の検査方法。
【請求項8】
前記基準生成工程では前記周期性のある輝度値配列を数学的関数及び予め与えられた配列マップに従って生成することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の検査方法。
【請求項9】
前記判定工程では、判定基準値を基準として予め定めた許容値の範囲内か否かで良否を判定することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の検査方法。
【請求項10】
検査対象物の加工孔又は凹部の良否を検査する検査装置であって、
撮像手段で撮像した画像をデジタル化した画像データから得られる画像データを構成する輝度配列の座標系を、rθ極座標変換の基準点を孔又は凹部中心付近として極座標系輝度配列に変換する画像処理をする手段と、
前記極座標系輝度配列の中で、基準点から半径rにおける輝度配列を抽出し、複数箇所の輝度値から前記輝度配列の位相を特定する位相特定手段と、
前記半径rの値を変更して前記位相特定工程より特定される位相を複数取得し、平均化する位相平均化手段と、
前記平均化された位相と各半径rにおける輝度配列の少なくとも2箇所の輝度値とにより、周期性のある輝度値配列を各半径r毎に新たに生成し、判定基準輝度値配列とする基準生成手段と、
前記極座標系輝度配列の各半径rにおける輝度配列の値と各半径rに対応する前記判定基準輝度値配列とを照合して良否を判定する判定手段と、を備えている
ことを特徴とする検査装置。
【請求項11】
検査対象物の加工孔又は凹部の良否を検査する検査処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
撮像手段で撮像した画像をデジタル化した画像データから得られる画像データを構成する輝度配列の座標系を、rθ極座標変換の基準点を孔又は凹部中心付近として極座標系輝度配列に変換する画像処理と、
前記極座標系輝度配列の中で、基準点から半径rにおける輝度配列を抽出し、複数箇所の輝度値から前記輝度配列の位相を特定する位相特定処理と、
前記半径rの値を変更して前記位相特定工程より特定される位相を複数取得し、平均化する位相平均化処理と、
前記平均化された位相と各半径rにおける輝度配列の少なくと2箇所の輝度値とにより、周期性のある輝度値配列を各半径r毎に新たに生成し、判定基準輝度値配列とする基準生成処理と、
前記極座標系輝度配列の各半径rにおける輝度配列の値と各半径rに対応する前記判定基準輝度値配列とを照合して良否を判定する判定処理と、をコンピュータに実行させる
ことを特徴とするプログラム。
【請求項12】
ノズル板に形成された複数のノズルから液滴を吐出して記録媒体上に画像を形成する画像形成装置の製造方法であって、
撮像手段で撮像した前記ノズルの画像をデジタル化した画像データから得られる画像データを構成する輝度配列の座標系を、rθ極座標変換の基準点を前記ノズルの中心付近として極座標系輝度配列に変換する画像処理をする工程と、
前記極座標系輝度配列の中で、基準点から半径rにおける輝度配列を抽出し、複数箇所の輝度値から前記輝度配列の位相を特定する位相特定工程と、
前記半径rの値を変更して前記位相特定工程より特定される位相を複数取得し、平均化する位相平均化工程と、
前記平均化された位相と各半径rにおける輝度配列の少なくとも2箇所の輝度値とにより、周期性のある輝度値配列を各半径r毎に新たに生成し、判定基準輝度値配列とする基準生成工程と、
前記極座標系輝度配列の各半径rにおける輝度配列の値と各半径rに対応する前記判定基準輝度値配列とを照合して前記ノズルの良否を判定する判定工程と、
前記判定工程の結果をもとに前記ノズル板の良品を選定して画像形成装置の組立を行なう組立工程と、を有する
ことを特徴とする画像形成装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−185682(P2011−185682A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49777(P2010−49777)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】