説明

検査装置と検査方法

【課題】ボイドの形状に基づいて画像処理することにより効率よく被検体を検査すること。
【解決手段】検査方法は、(a)被検体のX線透過画像を撮像するステップと、(b)前記X線透過画像から、第1輝度に基づいて互いに分離された検出候補画像を生成するステップと、(c)前記検出候補画像の各々の縦横比に基づいて第1ボイド候補の画像を選択するステップと、(d)第2輝度に基づいて残りの検出候補画像の各々から第2ボイド候補の画像を生成するステップと、(e)前記第1ボイド候補画像と前記第2ボイド候補画像を合成してボイド候補の画像を生成するステップとを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置と検査方法に関し、特にX線画像を用いる検査装置、検査方法、そのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の管がスカート状に配置され、それらの間がロウ付け溶接されたとき、従来ロウ付け部の内部に欠陥(以下「ボイド」という)が存在するか否かについて検査する必要がある。このロウ付け部の検査のために、従来種々の方法が適用されていた。
特許第3530478号(特許文献1)には、ロウ付け部の検査にX線を使用する技術が示されている。この方法によれば、段階的にX線強度を変えながら所定部位が複数回撮像され、得られたX線透過画像の濃度が重ね合わされる。重ね合わされたX線透過画像の濃度が画素同士で差分し、得られた差分濃度から更に差分が計算され、変極点が求められる。変極点を連結することにより閉領域が作成され、内部に別の閉領域が存在しないものが抽出される。
【0003】
上記記載と関連して、特開平9−196865号公報(特許文献2)には、X線透視検査装置が示されている。この従来例では、検査対象物にX線が照射されて、異物の混入が調べられている。
【特許文献1】特許第3530478号
【特許文献2】特開平9−196865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ボイドの形状に基づいて画像処理することにより効率よく被検体を検査することができる検査方法と、そのためのプログラム、それらのための検査装置を提供することである。
本発明の他の課題は、ボイドの画像が連結していても、その特徴量に基づいて画像処理することにより効率よく被検体を検査することができる検査方法と、そのためのプログラム、それらのための検査装置を提供することである。
本発明の更に他の課題は、検査対象領域のボイドの画像のみが効率よく取得できる検査方法と、そのためのプログラム、それらのための検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下に、[発明の実施の形態]で使用する番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、[特許請求の範囲]の記載と発明の実施の形態の記載との対応関係を明らかにするために付加されたものであるが、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0006】
本発明の一観点では、検査方法は、(a)被検体の、例えば、X線画像を撮像するステップと、(b)前記X線画像から、第1輝度に基づいて互いに分離された検出候補画像を生成するステップと、(c)前記検出候補画像の各々の縦横比に基づいて第1ボイド候補の画像を選択するステップと、(d)第2輝度に基づいて残りの検出候補画像の各々から第2ボイド候補の画像を生成するステップと、(e)前記第1ボイド候補画像と前記第2ボイド候補画像を合成してボイド候補の画像を生成するステップとを具備する。
これにより、効率的にボイドを検出することができる。
【0007】
検査方法は、ボイドの基準特徴量に基づいて前記ボイド候補画像から、検出されたボイドを示すボイド検出画像を生成するステップを更に具備してもよい。
また、(f)ステップは、(f1)前記ボイド候補画像の充填率が、前記基準特徴量としての基準充填率より高いとき、その画像をボイド検出画像と判定するステップと、(f2)前記ボイド候補画像の充填率が前記基準充填率以下のとき、前記ボイド候補画像をボイド候補要素画像に分割するステップと、(f3)前記ボイド候補要素画像の形状特徴量を計算するステップと、(f4)前記形状特徴量がボイド基準を満たすとき、前記ボイド候補要素画像をボイド検出画像と判定するステップとを具備することが好ましい。
検査方法は、(g)前記ボイド候補画像から、前記被検体の一部の構成物に対応する所定領域に存在するものを除外するステップを更に具備してもよい。
前記除外するステップは、前記X線画像の二値化処理から得られる画像から前記構成物のエッジを検出するステップと、前記検出されたエッジから直線領域を設定するステップと、前記直線領域に基づいて前記決定されたボイド検出画像の一部をマスクするステップとを具備することが好ましい。
(a)ステップは、前記被検体の異なる部位を撮像するとき、前記被検体の特定部位が前記X線画像の中心となるように、X線発生器とX線カメラの位置を制御するステップを具備することが好ましい。
【0008】
本発明の他の観点では、上記のいずれかの検査方法を実現するための計算機読み取り可能なプログラムが提供される。
【0009】
本発明の他の観点では、検査装置は、第1移動指示に応答して移動し、発生指示に応答してX線を発生するX線発生器(4)と、被検体移動指示に応答して被検体の位置と姿勢を動かすアクチュエータ(6)と、第2移動指示に前記X線発生器から発生されたX線を用いて前記被検体を撮像するX線カメラ(8)と、前記X線カメラの撮像結果からX線画像を生成する画像キャプチャ(10)と、表示装置(12)と、前記X線発生器に前記発生指示を出力し、前記アクチュエータを駆動し、前記画像キャプチャからの前記X線画像から検出対象画像を取得する処理ユニット(2)とを具備する。前記処理ユニット(2)は、前記第1と第2の移動指示と前記被検体移動指示を発行し、前記発生指示を前記X線発生器に発行して前記被検体のX線画像を撮像し、前記X線画像から、第1輝度に基づいて互いに分離された検出候補画像を生成し、前記検出候補画像の各々の縦横比に基づいて第1ボイド候補の画像を選択し、第2輝度に基づいて残りの検出候補画像の各々から第2ボイド候補の画像を生成し、前記第1ボイド候補画像と前記第2ボイド候補画像を合成してボイド候補の画像を生成して前記表示装置に出力する。
【0010】
前記処理ユニット(2)は、ボイドの基準特徴量に基づいて前記ボイド候補画像から、検出されたボイドを示すボイド検出画像を生成することが好ましい。
前記処理ユニット(2)は、前記ボイド候補画像の充填率が、前記基準特徴量としての基準充填率より高いとき、その画像をボイド検出画像と判定し、前記ボイド候補画像の充填率が前記基準充填率以下のとき、前記ボイド候補画像をボイド候補要素画像に分割し、前記ボイド候補要素画像の形状特徴量を計算し、前記形状特徴量がボイド基準を満たすとき、前記ボイド候補要素画像をボイド検出画像と判定することが好ましい。
前記処理ユニット(2)は、前記ボイド候補画像から、前記被検体の一部の構成物に対応する所定領域に存在するものを除外することが好ましい。このとき、前記処理ユニット(2)は、前記X線画像の二値化処理から得られる画像から前記構成物のエッジを検出し、前記検出されたエッジから直線領域を設定し、前記直線領域に基づいて前記決定されたボイド検出画像の一部をマスクすることが好ましい。
前記処理ユニット(2)は、 前記被検体の異なる部位を撮像するとき、前記被検体の特定部位が前記X線画像の中心となるように、X線発生器とX線カメラの組の位置を制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ロウ付け部はX線透過画像上では暗いことを利用して、画像処理でロウ付け部の中心を自動抽出し、ロウ付け部の中心の画像上の中心からのずれ量が求められ、撮像機構の位置決め(調整)が行われる。
また、低い閾値でX線透過画像が二値化され、抽出されたエリアの形状特徴(円形度、大きさ)からボイドと考えられる領域と、ロウ付け部の構造による領域に分けられる。その後、後者の領域は、その領域内で輝度が調べられ、より高い閾値で再度二値化される。こうして、効率よくボイド検出画像が得られる。
更に、抽出されたボイドエリアの特徴(外接エリアでの充填率など)に基づいて判定され、画像が分離される。こうして、より正確にボイドを検出することができる。
加えて、ロウ付け部の輪郭(位部分の輪郭)から管形状の領域を得て、それを用いてボイド検出画像をマスキングする。こうして、より適切なボイド検出画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、本発明の検査装置について詳細に説明する。
被検体は、本実施形態では、例えばロケットエンジンのスカート部であり、エンジンスカートの側面を形成するように多数の管が配置され、その管の間がロウ付けされている。このため、図8(a)に示されるように、エンジンスカートの上部では、管の間のインターバルは狭く、下部では管の間のインターバルは広くなっている。本発明の第1実施形態による検査装置では、このエンジンスカートが縦方向ではなく、横方向に載置されて、ロウ付け部の検査が行われる。
【0013】
図1は、本発明の第1実施形態による検査装置の構成を示すブロック図である。図1を参照して、検査装置は、処理ユニット2、X線発生器4、被検体20を駆動するアクチュエータ6、X線カメラ8、画像キャプチャ10、表示ユニット12とを備えている。処理ユニット2は、記憶部(図示せず)を有している。
処理ユニット2は、移動指示をアクチュエータ6に出力する。アクチュエータ6は、その移動指示に応答して被検体を動かして被検体の位置、向き等を制御する。また、処理ユニット2は、移動指示をX線発生器4に発行する。移動指示に応答してX線発生器4は移動して撮像位置を変える。X線カメラ8の位置もX線発生器4の位置に対応して移動される。処理ユニット2は、画像キャプチャ10を制御して、X線カメラ8で撮像された被検体のX線透過画像を取り込む。処理ユニット2は、X線透過画像に画像処理を行い、被検体の欠陥を抽出して、その結果を表示ユニット12に出力する。
【0014】
次に本発明の検査装置の動作について図2を参照して説明する。
処理ユニット2は、移動指示をX線発生器4とX線カメラ6とに発行して、X線発生器4とX線カメラ6を検査部位に移動させる。ついで、処理ユニット2は、発生指示をX線発生器4に、撮像指示をX線カメラ6に発行して被検体としてのエンジンスカートの検査対象部位を撮像する。処理ユニット2の処理の下、撮像結果は画像キャプチャ10に送られる。画像キャプチャ10は、撮像結果から、図3(a)に示される被検体のX線透過画像を生成して、処理ユニット2に転送する。X線透過画像を受け付けると、処理ユニット2は、記憶部(図示せず)に一旦格納する。図3(a)に示されるX線原画像では、上部と下部が管に対応し、中央部がロウ付け部に対応している。これは、エンジンスカートを横にして撮像したためである。中央部では、ロウ付け部の厚さムラにより横長のエリアと右下に楕円エリアが示され、横長のエリアの中に更に楕円のエリアが示されている。これら楕円のエリアが本発明の検査装置で検出されるべきボイドである。
【0015】
処理ユニット2は、X線透過画像を読み出して二値化処理を行って検査領域抽出二値画像を生成する。検査領域は、一般的にはロウ部に対応している。検査領域抽出二値画像は、非検査領域と検査領域とが二値データで区分されている画像である。例えば、X線透過画像の非検査領域としての上下部は”0”に対応し、検査領域としての中央部は”1”に対応している。生成された検査領域抽出二値画像は、記憶部に格納される。
【0016】
X線透過画像の処理では、ステップS2で、処理ユニット2は、上記X線原画像に対してノイズ除去を目的にモフォロジ処理(前処理)を行なう。
次いで、ステップS4で、入力ユニットから低めの閾値が設定される。この閾値は、ユーザにより設定されてもよいし、あるいは処理ユニット2により自動的に設定されてもよい。処理部ユニット2は、設定された閾値に基づいてX線原画像の二値化処理を行う。これにより、図3(b)に示される二値化画像が得られる。低めの閾値を用いる二値化を採用すれば、ボイド候補をもれなく抽出できる。
【0017】
ステップS6で処理ユニット2は、記憶部から検査領域抽出二値画像を読み出し、ステップS4で二値化された画像と、画素単位で論理積(AND)を計算する。こうして、図3(b)に示されるように、X線原画像から検査領域以外を削除して、ロウ付け部に対応する検査領域の画像を抽出することができる。続いて、ステップS8では、処理ユニット2は、検査領域に存在する高輝度の領域の画像の各々にラベルを付与する。
【0018】
ステップS10では、処理ユニット2は、ラベルが付与されたラベル画像が横長ラベル画像であるか否かを判定する。一般的にボイドは略円形又は(横/縦)の比が小さい或いは1に近い略楕円形として想定されている。(横/縦)の比が大きい、又は(縦/横)の比が大きい楕円はボイドとは想定されていない。また、ラベル画像が略円形又は略楕円形の画像であるとしても、半径或いは高さ等が大きく画像の領域が大きいものは、ボイドではないと考えられる。そこで、図3(c)に示されるように、ラベル画像が横長ラベルの場合、即ち(横/縦)比が大きい楕円の場合には、ステップS12が実行される。図3(g)に示されるように、横長ラベルではない場合には、ステップS30が実行される。ステップS30では、図3(h)に示されるように、ラベル画像の形状の特徴、例えば(横/縦)比が1に近いか否かの円形度、ラベル画像の大きさからラベル画像がボイドの画像と考えられるか否かが判定される。ラベル画像がボイド画像と判定されるときは、ステップS34が実行され、図3(i)に示されるラベル画像はボイド候補画像(1)として記憶部に格納される。また、ラベル画像が大きすぎる等によりボイド画像とは判定されないときは、ステップS32が実行され、処理ユニット2は、上記閾値としてより高い値を設定する。その後、閾値設定処理を除いて、ステップS4が実行される。こうして、前回より輝度が高いノイズが除かれた二値化画像が得られる。続いて、ステップS6以降の処理が実行される。
【0019】
横長ラベル画像はボイド画像ではなく、ロウ付け部の厚さの分布により抽出される構造依存の画像である場合もある。そこで、処理ユニット2は、横長ラベルの各々に対して、ステップS12からステップS18までの処理を実行する。ステップS14では、処理ユニット2は、ラベルごとに設定される閾値に基づいて二値化処理を実行する。横長ラベル画像がロウ付け部の厚さの分布によるときは、一般的に横長ラベル画像の輝度は低い。一方、ボイド画像の輝度は比較的高いので、閾値を上げることで、ボイド画像を分離することができる。ステップS16で、こうして新たに得られた画像の各々に新たなラベルが付与される。その後、図3(d)に示されるように、ラベル画像の形状の特徴、例えば(横/縦)比が1に近いか否かの円形度、ラベル画像の大きさからラベル画像がボイド画像と考えられるか否かが判定される。ラベル画像がボイド画像と判定されたときは、ステップS20で図3(e)に示される画像がボイド候補画像(2)として記憶部に格納される。
【0020】
次に、ステップS22では、ステップS34で得られたボイド候補画像(1)とステップS20で得られたボイド候補画像(2)が記憶部から読み出され、合成され、図3(f)に示されるように、検出されたボイドを示す新たなボイド検出画像が生成される。ボイド検出画像の中のボイド画像の各々には、ステップS24でラベルが付与される。
従来の手法では、ボイドの抽出において、ロウ付け部の明暗処理により輝度値が大きく変化している部分をエッジとして抽出し,エッジを近傍で結合してボイド部分と判定していた。その際にボイドの一般的な形状(円・楕円)の特徴は利用しないので、例えば、全体的に暗い部分でも、輝度差があればエッジとして抽出されていた。このため、局所的に明るい部分を見つけるという人間による検査と一致しない場合があった。また,単純に一定以上明るい部分を抽出するようにする方法もあるが、ロウ付け部の構造による線状の明るい部分全体を抽出して、過剰抽出となっていた。
本実施形態では、先ず低い閾値で画像が二値化され、抽出された鰓の形状特徴(円形度・大きさ)からボイドと考えられる領域(領域2)と、ロウ付け部の構造(領域1)に分けられる。後者は、更にその領域内での輝度の分布を調べ、より高い閾値で再度二値化される。これにより、より適切な輝度に基づいてボイド検出画像が検出される。
【0021】
次いで、ステップS40で、ラベルが付与されたボイド画像(ラベル画像)の特徴に基づいてボイドが検出される。その後、ステップS50で、管部に相当する位置でボイドと検出されたものを除く処理が行われる。尚、ステップS24、S40、S50は省略されてもよい。
【0022】
次に、本発明の第2実施形態による検査装置の構成は、第1実施形態による検査装置と同様である。従って、その説明は省略する。第2実施形態による検査装置の動作を図4を参照して説明する。この動作は、第1実施形態のステップS40に対応する。
【0023】
従来では、図5(a)に示されるように、連結された画像があるとき、図5(b)に示されるように、T1、T2を管部からの画像の距離(接合部幅)、T3をロウ付け部幅とすると、T3−(T1+T2)で非接合部幅が求まり、{T3−(T1+T2)}/T3で接合率が求まる。従来では、この得られたけ接合率の結果、ボイド画像が過剰に不合格とされることがあった。
【0024】
本実施形態では、先ず、画像の要素の各々にラベルが付与されラベル画像が得られる。このステップは第1実施形態のステップS24に対応する。ステップS41では、図5(c)に示されるように、処理ユニット2は、ラベル画像の各々のラベル特徴量(充填率)を計算する。図5(d)に示されるように、充填率とは、{(抽出ボイド面積)/(外接長方形の面積)}をいう。図5(c)では、暗い部分の面積と、暗い部分に外部で隣接する長方形の面積との比が計算される。ステップS42では、充填率が基準値以下であるか否かが判定される。充填率が基準値以下では無いと判定されると、ステップS46が実行される。
【0025】
ステップS42で、充填率が基準値以下であると判定されると、その画像は、複数のボイドの要素が結合した画像であると判断され、ステップS43が実行される。ステップS43では、対象としてのラベル画像に対して収縮・膨張処理が行なわれる。収縮処理では、対象画像としてのラベル画像の周囲の一定幅、例えば1画素分又は2画素分の幅が削除される。即ち、輝度が0とされる。更に収縮の要望があるときは、所定幅分対象画像から削除される。削除される画素の輝度は種々であり、それらが輝度0にされる。こうして、図5(e)に示されるように、分離された画像を有する収縮画像が得られる。続いて、元の画像に近づけるために、膨張処理が行われる。膨張処理では、対象画像の周囲に一定幅、例えば1画素分の幅が追加される。更に膨張の要望があるときは、所定幅分対象画像の周囲に付加される。追加される画素の輝度は一定である。こうして、図5(f)に示される膨張画像が得られる。このように、収縮・膨張処理をラベル画像に適用することにより、1つのラベル画像を3つの適切な画像に分解することができる。
【0026】
ステップS44では、処理ユニット2は、ステップS43で得られた画像の各々に対して、図5(g)に示されるように、ラベル特徴量が計算される。特徴量は、{T3−(T1+T2+T4)}/T3として計算される。値T1〜T4の定義は図5(h)に示されている。即ち、T1は上部の画像の上部の管部からの距離であり、T2は下部の画像の下部の管部からの距離であり、T3は管部間の距離であり、T4は分離された画像間の距離である。
ステップS45では、処理ユニット2は、計算された特徴量がボイド判定基準を満たすか否かを判定する。ボイド判定基準を満たさないときは、ステップS47が実行され、判定対象画像は非ボイド画像であると判定される。一方、ボイド判定基準を満たすときには、ステップS46が実行される。ステップS46では、対象画像はボイド画像と判定される。また、第1実施形態におけるステップS8、S16の判定と同様に、各対象画像が横長画像であるのか否かが判定され、更に、ボイド画像か否かは、円形度等に基づいて判断される。
【0027】
従来では、輪郭をつないだ部分がどんな形状であれ、ボイドとして認識されていた。このため、複数のボイドがつながった場合には、全体で大きなボイドであると誤認識されていた。本実施形態では、抽出されたボイドエリアの特徴(充填率=抽出ボイド面積/外接長方形の面積)に基づいて単一のボイド画像であるか否かが判定され、連結ボイド画像であると判定されたときは、分離され、ボイド形状の特徴(大きさ、円形度等)に基づいて各分離画像がボイドであるか否かが判定されている。これにより、より精密にボイドを判定することが可能となる。
尚、第2実施形態は、第1実施形態の後に続けて実行されてもよい。
【0028】
次に、本発明の第3実施形態による検査装置の構成は、第1実施形態による検査装置と同様である。従って、その説明は省略する。第3実施形態による検査装置の動作を図6を参照して説明する。この動作は、第1実施形態の動作のステップS50に対応する。
【0029】
従来では、図7(a)に示されるように、ロウが管部の上にはみだしている部分も暗いロウ付け部として認識され、分析対象となっていた。このため、抽出不要なボイドも抽出され、検査精度が低下していた。
【0030】
本実施形態では、第1実施形態において説明されたロウ付け部抽出二値化画像が準備される。この二値化画像は、第1実施形態における検査対象領域画像と同様である。
次に、ステップS52で、処理ユニット2は、ロウ部抽出二値化画像からエッジを抽出する。続いて、ステップS54では、抽出されたエッジを用いて管部を表わす直線を抽出する。ステップS56では、処理ユニット2は、抽出された直線を用いて、図7(b)に示されるように、管部領域を表わす二値化画像を生成する。この二値化管部画像では、非管部領域と管部領域とが二値データで区分されている画像である。例えば、非管部領域では画素は”1”の輝度に対応し、管部領域の輝度は”0”に対応している。ステップS58では、その二値化管部画像とボイド検出画像との論理積(AND)が画素ごとに計算される。これにより、図7(c)に示されるロウ付けが管部にはみだした部分は、検査対称から除外され、ボイド検査の精度が改善される。
【0031】
従来では、処理対象領域の決定において、暗い部分をロウ部として認識するが、ロウ部がはみだしている部分も分析の対象としていまい、不要なボイドを抽出して検査精度が低下していた。一方、本発明の第3実施形態では、ロウ部輪郭(暗い部分の輪郭)から管形状にフィッティングし、その領域は管部として除外される。
【0032】
次に、本発明の第4実施形態による検査装置の構成は、第1実施形態による検査装置と同様である。本発明では種々のものが検査されるが、検査される被検体の一つは、ロケットエンジンのスカート部である。スカート部では、エンジンスカートの側面を形成するように多数の管が配置されている。このため、図8(a)に示されるように、エンジンスカートの上部では、管の間のインターバルは狭く、下部では管の間のインターバルは広くなっている。エンジンが横向きに載置されるときは、一方の側で狭く、他方の側で広くなっている。従って、図8(b)に示されるように、エンジンスカートの種々の部位を検査するとき、X線発生器4とX線カメラ8をただ単に水平方向に移動させただけでは、直前に検査された部位に対応する部位が画像の中央にこない場合がある。そのため、第4実施形態では、画像の連続性を保ちながらX線発生器4とX線カメラ8が移動され、検査対象部位の管部が常に画像の中央にくるようにされる。
このように、本実施形態では、ロウ付け部は暗いことを利用して画像処理でロウ付け部の中央を自動抽出し、ロウ付け部の中心の画像の中心からのずれ量を求めてX線発生器4とX線カメラ8の位置が決定され、制御されている。
【0033】
以上述べたように、本発明によれば、ロウ付け部は暗いことを利用して、画像処理でロウ付け部の中心を自動抽出し、ロウ付け部の中心の画像上の中心からのずれ量が求められ、撮像機構の位置決め(調整)が行われる。
また、低い閾値でX線透過画像が二値化され、抽出されたエリアの形状特徴(円傾度、大きさ)からボイドと考えられる領域と、ロウ付け部の構造による領域に分けられる。その後、後者の領域は、その領域内で輝度が調べられ、より高い閾値で再度二値化される。こうして、効率よくボイド検出画像が得られる。
更に、抽出されたボイドエリアの特徴(外接エリアでの充填率など)に基づいて判定され、画像が分離される。こうして、より正確にボイドを検出することができる。
加えて、ロウ付け部の輪郭(位部分の輪郭)から管形状の領域を得て、それを用いてボイド検出画像をマスキングする。こうして、より適切なボイド検出画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態による検査装置の構成を示す図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態による検査装置の動作を説明するフローチャートである。
【図3】図3は、本発明の第1実施形態による検査装置の動作を説明するための図である。
【図4】図4は、本発明の第2実施形態による検査装置の動作を説明するフローチャートである。
【図5】図5は、本発明の第2実施形態による検査装置の動作を説明するための図である。
【図6】図6は、本発明の第3実施形態による検査装置の動作を説明するフローチャートである。
【図7】図7は、本発明の第3実施形態による検査装置の動作を説明するための図である。
【図8】図8は、本発明で、X線が被検体に照射される様子を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
2:処理ユニット
4:X線発生器
6:アクチュエータ
8:X線カメラ
10:画像キャプチャ
12:表示装置
20:被検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)被検体のX線画像を撮像するステップと、
(b)前記X線画像から、第1輝度に基づいて互いに分離された検出候補画像を生成するステップと、
(c)前記検出候補画像の各々の縦横比に基づいて第1ボイド候補の画像を選択するステップと、
(d)第2輝度に基づいて残りの検出候補画像の各々から第2ボイド候補の画像を生成するステップと、
(e)前記第1ボイド候補画像と前記第2ボイド候補画像を合成してボイド候補の画像を生成するステップと
を具備する
検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の検査方法において、
(f)ボイドの基準特徴量に基づいて前記ボイド候補画像から、検出されたボイドを示すボイド検出画像を生成するステップ
を更に具備する
検査方法。
【請求項3】
請求項2に記載の検査方法において、
前記(f)ステップは、
(f1)前記ボイド候補画像の充填率が、前記基準特徴量としての基準充填率より高いとき、その画像をボイド検出画像と判定するステップと、
(f2)前記ボイド候補画像の充填率が前記基準充填率以下のとき、前記ボイド候補画像をボイド候補要素画像に分割するステップと、
(f3)前記ボイド候補要素画像の形状特徴量を計算するステップと、
(f4)前記形状特徴量がボイド基準を満たすとき、前記ボイド候補要素画像をボイド検出画像と判定するステップと
を具備する
検査方法。
【請求項4】
請求項1に記載の検査方法において、
(g)前記ボイド候補画像から、前記被検体の一部の構成物に対応する所定領域に存在するものを除外するステップ
を更に具備する
検査方法。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の検査方法において、
(g)前記ボイド検出画像から、前記被検体の一部の構成物に対応する所定領域に存在するものを除外するステップ
を更に具備する
検査方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の検査方法において、
前記除外するステップは、
前記X線画像の二値化処理から得られる画像から前記構成物のエッジを検出するステップと、
前記検出されたエッジから直線領域を設定するステップと、
前記直線領域に基づいて前記決定されたボイド検出画像の一部をマスクするステップと
を具備する
検査方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の検査方法において、
前記(a)ステップは、
前記被検体の異なる部位を撮像するとき、前記被検体の特定部位が前記X線画像の中心となるように、X線発生器とX線カメラの位置を制御するステップ
を具備する
検査方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の検査方法を実現するための計算機読み取り可能なプログラム。
【請求項9】
第1移動指示に応答して移動し、発生指示に応答してX線を発生するX線発生器と、
被検体移動指示に応答して被検体の位置と姿勢を動かすアクチュエータと、
第2移動指示に前記X線発生器から発生されたX線を用いて前記被検体を撮像するX線カメラと、
前記X線カメラの撮像結果からX線画像を生成する画像キャプチャと、
表示装置と、
前記X線発生器に前記発生指示を出力し、前記アクチュエータを駆動し、前記画像キャプチャからの前記X線画像から検出対象画像を取得する処理ユニットと
を具備し、
前記処理ユニットは、前記第1と第2の移動指示と前記被検体移動指示を発行し、前記発生指示を前記X線発生器に発行して前記被検体のX線画像を撮像し、前記X線画像から、第1輝度に基づいて互いに分離された検出候補画像を生成し、前記検出候補画像の各々の縦横比に基づいて第1ボイド候補の画像を選択し、第2輝度に基づいて残りの検出候補画像の各々から第2ボイド候補の画像を生成し、前記第1ボイド候補画像と前記第2ボイド候補画像を合成してボイド候補の画像を生成して前記表示装置に出力する
検査装置。
【請求項10】
請求項9に記載の検査装置において、
前記処理ユニットは、ボイドの基準特徴量に基づいて前記ボイド候補画像から、検出されたボイドを示すボイド検出画像を生成する
検査装置。
【請求項11】
請求項10に記載の検査装置において、
前記処理ユニットは、
前記ボイド候補画像の充填率が、前記基準特徴量としての基準充填率より高いとき、その画像をボイド検出画像と判定し、前記ボイド候補画像の充填率が前記基準充填率以下のとき、前記ボイド候補画像をボイド候補要素画像に分割し、前記ボイド候補要素画像の形状特徴量を計算し、前記形状特徴量がボイド基準を満たすとき、前記ボイド候補要素画像をボイド検出画像と判定する
検査装置。
【請求項12】
請求項9に記載の検査装置において、
前記処理ユニットは、
前記ボイド候補画像から、前記被検体の一部の構成物に対応する所定領域に存在するものを除外する
検査装置。
【請求項13】
請求項10又は11に記載の検査装置において、
前記処理ユニットは、
前記ボイド検出画像から、前記被検体の一部の構成物に対応する所定領域に存在するものを除外する
検査装置。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の検査装置において、
前記処理ユニットは、
前記X線画像の二値化処理から得られる画像から前記構成物のエッジを検出し、前記検出されたエッジから直線領域を設定し、前記直線領域に基づいて前記決定されたボイド検出画像の一部をマスクする
検査装置。
【請求項15】
請求項9乃至14のいずれか一項に記載の検査装置において、
前記処理ユニットは、
前記被検体の異なる部位を撮像するとき、前記被検体の特定部位が前記X線画像の中心となるように、X線発生器とX線カメラの位置を制御する
検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−198463(P2009−198463A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−43457(P2008−43457)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】