説明

検知システム、検知装置、物品およびプログラム

【課題】コストの上昇を抑制しつつ、物品の種類を特定することのできる検知システム、検知装置、物品およびプログラムを得る。
【解決手段】物品50(チケット50A,50B)の検知対象とする領域に交番磁界を発生させる励磁コイルと当該励磁コイルによって発生された交番磁界に応じた電気信号が誘導される検知コイルとを含んで構成された第1コイル群11Aおよび第2コイル群11Bを、各々の励磁コイルにより発生される交番磁界の発生方向が互いに異なるように配置する一方、物品50に対し、各々前記検知対象とする領域に位置された場合に互いに異なるコイル群の励磁コイルにより発生される交番磁界の発生方向を含む予め定められた範囲内に磁化容易軸の軸線方向が含まれるように磁性体51を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知システム、検知装置、物品およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、検知領域に交番磁界を発生する励磁手段と、前記交番磁界と被検知物体との位置関係を変化させるために前記被検知物体を所持する所持者の位置を前記検知領域内で強制的に移動させる移動手段と、前記交番磁界の印加により前記被検知物体に付与された磁性体から発生される信号に基づき該被検知物体を検知する検知手段と、を備える物体検知装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−46904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、コストの上昇を抑制しつつ、物品の種類を特定することのできる検知システム、検知装置、物品およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の検知システムは、物品の検知対象とする領域に交番磁界を発生させる磁界発生コイルと当該磁界発生コイルによって発生された交番磁界に応じた電気信号が誘導される信号誘導コイルとを各々含んで構成され、各々の前記磁界発生コイルにより発生される交番磁界の発生方向が互いに異なるように配置された複数組のコイル群と、各々前記検知対象とする領域に位置された場合に互いに異なる前記コイル群の前記磁界発生コイルにより発生される交番磁界の発生方向を含む予め定められた範囲内に磁化容易軸の軸線方向が含まれるように磁性体が設けられた複数種類の物品と、前記検知対象とする領域に前記物品が位置された場合における前記磁性体の磁化反転による磁場の変化に応じた前記複数組のコイル群の前記信号誘導コイルによる電気信号の誘導状態に基づいて、当該物品の種類を特定する特定手段と、を有している。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記複数種類の物品の少なくとも1つを、前記磁性体が、前記コイル群の複数の組に対応して複数設けられているものとするものである。
【0007】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記特定手段によって前記物品の種類を特定する際に、当該物品と前記複数組のコイル群との位置関係が予め定められた位置関係となるように当該物品を位置決めする位置決め手段をさらに有するものである。
【0008】
さらに、請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の発明において、前記物品が、同一の前記コイル群に対応する前記磁性体が複数設けられており、前記特定手段が、前記信号誘導コイルに誘導された電気信号の信号レベルに基づいて、前記物品に設けられた磁性体の数をさらに特定するものである。
【0009】
一方、上記目的を達成するために、請求項5に記載の検知装置は、物品の検知対象とする領域に交番磁界を発生させる磁界発生コイルと当該磁界発生コイルによって発生された交番磁界に応じた電気信号が誘導される信号誘導コイルとを各々含んで構成され、各々の前記磁界発生コイルにより発生される交番磁界の発生方向が互いに異なるように配置された複数組のコイル群と、各々前記検知対象とする領域に位置された場合に互いに異なる前記コイル群の前記磁界発生コイルにより発生される交番磁界の発生方向を含む予め定められた範囲内に磁化容易軸の軸線方向が含まれるように磁性体が設けられた複数種類の物品が前記検知対象とする領域に位置された場合における前記磁性体の磁化反転による磁場の変化に応じた前記複数組のコイル群の前記信号誘導コイルによる電気信号の誘導状態に基づいて、当該物品の種類を特定する特定手段と、を備えている。
【0010】
また、上記目的を達成するために、請求項6に記載の物品は、各々検知対象とする領域に位置された場合に、当該領域に交番磁界を発生させる磁界発生コイルと当該磁界発生コイルによって発生された交番磁界に応じた電気信号が誘導される信号誘導コイルとを各々含んで構成され、各々の前記磁界発生コイルにより発生される交番磁界の発生方向が互いに異なるように配置された複数組のコイル群における、互いに異なる前記コイル群の前記磁界発生コイルにより発生される交番磁界の発生方向を含む予め定められた範囲内に磁化容易軸の軸線方向が含まれるように磁性体が設けられた複数種類の物品である。
【0011】
さらに、上記目的を達成するために、請求項7に記載のプログラムは、物品の検知対象とする領域に交番磁界を発生させる磁界発生コイルと当該磁界発生コイルによって発生された交番磁界に応じた電気信号が誘導される信号誘導コイルとを各々含んで構成され、各々の前記磁界発生コイルにより発生される交番磁界の発生方向が互いに異なるように配置された複数組のコイル群と、各々前記検知対象とする領域に位置された場合に互いに異なる前記コイル群の前記磁界発生コイルにより発生される交番磁界の発生方向を含む予め定められた範囲内に磁化容易軸の軸線方向が含まれるように磁性体が設けられた複数種類の物品と、を有する検知システムにおいて実行され、コンピュータを、前記検知対象とする領域に前記物品が位置された場合における前記磁性体の磁化反転による磁場の変化を検知する検知手段と、前記検知手段による検知結果に応じた前記複数組のコイル群の前記信号誘導コイルによる電気信号の誘導状態に基づいて、当該物品の種類を特定する特定手段と、として機能させるためのものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1、請求項5、請求項6および請求項7に記載の発明によれば、ICタグを用いて物品の種類を特定する場合に比較して、コストの上昇を抑制しつつ、物品の種類を特定することができる、という効果が得られる。
【0013】
また、請求項2に記載の発明によれば、特定対象とする物品のすべてについて磁性体を1つのみ設ける場合に比較して、より多くの物品の種類を特定することができる、という効果が得られる。
【0014】
また、請求項3に記載の発明によれば、本発明の位置決め手段を有しない場合に比較して、より確実に物品の種類を特定することができる、という効果が得られる。
【0015】
さらに、請求項4に記載の発明によれば、特定対象とする物品のすべてについて磁性体を1つのみ設ける場合に比較して、より多くの物品の種類を特定することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態に係る検知システムの全体的な構成を示す斜視図(一部ブロック図)である。
【図2】実施の形態に係る検知システムの検知部におけるコイル群の配置状態を示す透視図である。
【図3】実施の形態に係る検知システムの電気的な要部構成を示すブロック図である。
【図4】大バルクハウゼン効果の説明に供する波形図である。
【図5】実施の形態に係る検知部に対する物品の大きさ、および物品の構成を示す平面図である。
【図6】実施の形態に係る識別情報の構成を示す模式図である。
【図7】実施の形態に係る物品検知処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】実施の形態に係る報知画面の表示状態例を示す概略図である。
【図9】実施の形態に係る検知システムの他の構成例を示す平面図である。
【図10】実施の形態に係る検知部の他の構成例を示す透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
【0018】
まず、図1を参照して、本実施の形態に係る検知システムの構成を説明する。なお、本実施の形態に係る検知システムは、大バルクハウゼン効果を有する磁性体が設けられた物品の種類を特定し、特定結果を報知するものである。
【0019】
同図に示すように、本実施の形態に係る検知システムは、検知部10、制御部20、警告灯30、表示装置40、および物品50を含んで構成されている。
【0020】
本実施の形態に係る検知システムでは、物品50として、映画,演劇,コンサート等で用いられるチケットが適用されており、物品50として複数の種類が予め用意されている。ここで、本実施の形態に係る検知システムでは、物品50の種類として大人用のチケット50Aおよび子供用のチケット50Bの2種類が用意されているが、物品の種類はこれに限るものでないことは言うまでもない。
【0021】
一方、本実施の形態に係る検知部10は、物品50が上面に載せられた状態で当該物品50に設けられた後述する磁性体51(図5も参照。)を検知するためのものであり、本実施の形態に係る検知システムでは、映画館,劇場,コンサート・ホール等の建物の入場口に設けられたテーブルに設置されている。
【0022】
ここで、検知部10は制御部20に接続されており、検知部10の作動は制御部20によって制御される。一方、制御部20は警告灯30および表示装置40に接続されており、制御部20は、検知部10による検知結果に応じて、警告灯30による警告および表示装置40による各種情報の表示を行う。なお、本実施の形態に係る検知システムでは、制御部20、警告灯30、および表示装置40が上記建物の入場口の付近に設けられているが、これに限らず、これらの装置の少なくとも1つが当該入場口とは離れた別室に設けられていてもよく、検知部10と一体的に設けられていてもよい。
【0023】
図2に示すように、本実施の形態に係る検知部10は、交番磁界を発生する励磁コイル12と、外部からの磁界によって誘導されて電流が流れる検知コイル13,14とを各々含んで構成された複数組(本実施の形態では、2組)のコイル群(本実施の形態では、第1コイル群11Aおよび第2コイル群11B)を内蔵している。なお、本実施の形態に係る検知部10では、第1コイル群11Aおよび第2コイル群11Bの各々毎に検知コイル13,14が予め定められた方向に並んで対称に設けられている。また、本実施の形態に係る検知部10では、励磁コイル12が検知部10の物品50が載せられる面(以下、「物品検知面」という。)に対して直交する方向に巻き回される一方、検知コイル13,14が物品検知面に平行な方向に巻き回されている。このように励磁コイル12を巻き回すことにより、励磁コイル12により発生される交番磁界が、より確実に物品検知面に平行な方向に発生される。
【0024】
図3には、本実施の形態に係る検知システムの電気的な要部構成が示されている。
【0025】
同図に示すように、本実施の形態に係る検知システムは、第1コイル群11Aおよび第2コイル群11Bの各々毎に対応して設けられ、対応するコイル群における励磁コイル12に磁界を発生させるための励磁電流を供給する励磁電流供給部15と、第1コイル群11Aおよび第2コイル群11Bの各々毎に対応して設けられ、対応するコイル群における検知コイル13,14に誘導されたアナログの電気信号をデジタル情報に変換する信号処理部21A,21Bと、信号処理部21A,21Bによって得られたデジタル情報に基づいて物品50の種類を特定するコントローラ22と、を備えている。
【0026】
ここで、検知コイル13,14は、平面上で隣り合い、かつ巻線方向が逆になるように配置されている。そして、検知コイル13の一端部は、対応する信号処理部21Aまたは信号処理部21Bに接続され、検知コイル13の他端部は検知コイル14の一端部に接続されている。また、検知コイル14の他端部は、対応する信号処理部21Aまたは信号処理部21Bに接続されている。
【0027】
一方、コントローラ22は、マイクロコンピュータによって構成され、CPU(中央処理装置)22A、ROM(Read Only Memory)22B、RAM(Random Access Memory)22C、およびフラッシュメモリ等からなる不揮発性の記憶部22Dを備えており、検知システム全体の動作を制御する。
【0028】
また、励磁電流供給部15は、コントローラ22からの制御に応じて、対応する励磁コイル12に対して交流の励磁電流を供給する。励磁コイル12は、励磁電流供給部15から励磁電流が供給されることにより励磁され、正弦波のように磁界が変化する交番磁界を発生する。そして、検知コイル13,14では、対応する励磁コイル12で発生された交番磁界によって交流電流が誘導されると共に、大バルクハウゼン効果を有する磁性体を含んだ物品50が上記交番磁界内に存在する場合は、磁化反転によってパルス電流が生じる。
【0029】
図4(A),(B)は、大バルクハウゼン効果を説明するための図である。
【0030】
大バルクハウゼン効果は、図4(A)に示すB−H特性、つまりヒステリシスループがほぼ長方形で、保磁力(Hc)が比較的小さな材料、例えば、Co−Fe−Ni−B−Siからなるアモルファス磁性材料を交番磁界中においた際に、急峻な磁化反転が起きる現象である。大バルクハウゼン効果を有する磁性体は、正負それぞれ予め定められた強度よりも大きな強度の磁界が作用した際に磁化反転する。このため、励磁コイル12に励磁電流を流して交番磁界を発生させ、その交番磁界中に物品50を置くと、磁化反転時に、物品50の近傍に配置された検知コイル13,14にパルス状の電流が流れる。
【0031】
例えば、励磁コイル12により図4(B)の上段に示す交番磁界が発生した場合、検知コイル13,14には、一例として図4(B)の下段に示すパルス電流が流れる。
【0032】
ただし、検知コイル13,14の電流には、このパルス電流だけでなく、交番磁界によって誘導される交流電流も含まれている。本実施の形態に係る検知システムでは、この検知コイル13,14に誘導される交流電流を相殺させるために、検知コイル13,14を巻線方向が逆になるように接続している。
【0033】
物品50に含まれる磁性体の材料(磁性材料)としては、一般には永久磁石、例えば希土類系のネオジュウム(Nd)−鉄(Fe)−ボロン(B)を主成分としたもの、サマリウム(Sm)−コバルト(Co)を主成分としたもの、アルニコ系のアルミ(Al)−ニッケル(Ni)−コバルト(Co)を主成分としたもの、フェライト系のバリュウム(Ba)またはストロンチウム(Sr)と酸化鉄(Fe)を主成分としたものや、その他に軟質磁性材料、酸化物軟質磁性材料等がある。上記大バルクハウゼン効果を起こす磁性材料としては、基本組成がFe−Co−SiやCo−FeNi系であるアモルファス磁性材料を用いることが好ましい。
【0034】
磁性材料の形状は、大バルクハウゼン効果を起こすのに適した形状であれば特に限定されない。ただし、大バルクハウゼン効果を起こすには、断面積に対応する長さが必要となることから、線状(ワイヤ状)や帯状であることが好ましく、ワイヤ状であることがより好ましい。
【0035】
磁性材料がワイヤ状である場合には、大バルクハウゼン効果を起こすために必要な最小直径として10μm以上であることが好ましい。また、最大直径としては特に限定はされないが、例えば、記録媒体(用紙)に磁性材料を漉き込んで一体とする場合、記録媒体の表面に磁性材料が露出することを抑制するために、その直径は記録媒体の厚みに依存し、例えば90μm前後の厚さの記録媒体の場合には、60μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。
【0036】
磁性材料の長さとしては、大バルクハウゼン効果を起こすために必要な最小長さとして5mm以上が好ましい。アモルファス磁性材料の最大長については、内部に含有されたときに、記録媒体から露出されない程度の長さであればよく、特に限定はされないが、430mm以下であることが好ましい。
【0037】
一方、図3に示すように、信号処理部21A,21Bは、両端子間の電圧(対応する検知コイル13の一端部および検知コイル14の他端部からそれぞれ出力された信号電圧)の差動を増幅して出力する差動増幅器31と、差動増幅器31から出力された信号の波形を整形する波形整形回路33と、波形整形回路33で波形整形された信号をデジタル情報に変換するアナログ/デジタルコンバータ(以下、「ADC」という。)34と、を備えている。なお、信号処理部21A,21Bは、波形整形回路33とADC34の間に、波形整形回路33によって得られた信号から磁性体の磁化反転によって生じるパルス電流に対応する予め定められた帯域の信号を抽出して出力するバンドパスフィルタをさらに備えるようにしてもよい。
【0038】
コントローラ22は、信号処理部21A,21Bの各々のADC34から出力されたデジタル情報のレベルが予め定められた閾値を超えたか否かを判定するか、あるいは当該デジタル情報の波形形状が上記磁性体の磁化反転による波形形状であるか否かを、当該磁化反転による波形形状を示すものとして予め定められた基準波形形状との相互相関値に基づいて判定する相互相関法等により判定することで物品50が物品検知面に位置されたか否かを検知する一方、検知された物品の種類が予め想定されている物品50の種類(本実施の形態では、チケット50Aまたはチケット50B)でない場合に警告灯30を点灯させる。なお、本実施の形態に係る検知システムでは、物品50の検知を相互相関法によって行うものとされている。
【0039】
一方、本実施の形態に係る検知システムでは、一例として図5に示すように、チケット50Aに対して大バルクハウゼン効果を有するワイヤ状の磁性体51が、その軸線方向が垂直方向となるように複数本(本実施の形態では、3本)設けられる一方、チケット50Bに対して磁性体51が、その軸線方向が水平方向となるように複数本(本実施の形態では、3本)設けられている。これに対し、本実施の形態に係る検知部10では、第1コイル群11Aおよび第2コイル群11Bが、各々の励磁コイル12によって発生される交番磁界の発生方向が互いに交差する方向(本実施の形態では、互いに直交する方向)となるように検知部10に設けられている。従って、チケット50Aを検知部10の物品検知面に図5に示す方向で載せた際には、第1コイル群11Aのみの検知コイル13,14によってチケット50Aに設けられた磁性体51が検知される。また、チケット50Bを検知部10の物品検知面に図5に示す方向で載せた際には、第2コイル群11Bのみの検知コイル13,14によってチケット50Bに設けられた磁性体51が検知される。
【0040】
このように、本実施の形態に係る検知システムでは、ワイヤ状とされた磁性体51を、軸線方向(磁化容易軸)が対応するコイル群の励磁コイル12によって発生される交番磁界の発生方向と一致するようにチケット50A,50Bに設けているが、これに限るものではない。各チケットは、物品検知面上に載せられた場合に対応するコイル群の励磁コイル12により発生される交番磁界の発生方向を含み、かつ上記磁化反転が検知される範囲として予め定められた範囲内に軸線方向が含まれるように磁性体51が設けられていればよい。また、本実施の形態では、励磁コイル12によって発生される交番磁界の発生方向が直交するように各コイル群を配置しているが、これに限るものではなく、各励磁コイル12により発生される交番磁界の発生方向が交差し、かつ検知対象とする物品(チケット50A,50B)に設けられた磁性体51に磁化反転を生じさせるコイル群の組み合わせが、物品の種類毎に異なるものとされていればよい。
【0041】
このように、本実施の形態に係る検知システムでは、物品50の種類毎に検知されるコイル群が異なることを利用して、物品検知面に載せられた物品50がチケット50Aおよびチケット50Bの何れであるのかを特定する物品特定機能が搭載されている。
【0042】
このため、本実施の形態に係る検知システムは、一例として図6に示される識別情報がROM22Bの予め定められた領域に記憶されている。同図に示すように、本実施の形態に係る識別情報は、検知コイルおよび識別結果の各情報が記憶されたものとして構成されている。
【0043】
なお、上記検知コイルは、物品50を検知した検知コイルを示す情報であり、上記識別結果は、対応する検知コイルで物品50が検知された場合の当該物品50の種類を示す情報である。なお、同図では、錯綜を回避するために、第1コイル群11Aに設けられている検知コイル13,14を「コイルA」と表記し、第2コイル群11Bに設けられている検知コイル13,14を「コイルB」と表記し、チケット50Aを「物品A」と表記し、チケット50Bを「物品B」と表記している。同図に示す例では、例えば、第1コイル群11Aのみの検知コイル13,14によって物品50が検知された場合には、当該物品50がチケット50Aであることを示し、第1コイル群11Aおよび第2コイル群11Bの双方の検知コイル13,14によって物品50が検知された場合には、当該物品50がチケット50Aおよびチケット50Bの何れでもなく、検知結果が異常であることを示している。
【0044】
また、前述したように、本実施の形態に係る検知システムでは、物品50を相互相関法によって検知するものとされているため、本実施の形態に係る検知システムのコントローラ22には、上記磁化反転による波形形状を示すものとして予め定められた基準波形形状を示すデジタル情報(以下、「基準波形情報」という。)が記憶部22Dの予め定められた領域に予め記憶されている。
【0045】
以上のように構成された検知システムによる物品特定機能等を実現するための各種処理は、プログラムを実行することにより、コンピュータを利用してソフトウェア構成により実現してもよい。ただし、ソフトウェア構成による実現に限られるものではなく、ハードウェア構成や、ハードウェア構成とソフトウェア構成の組み合わせによって実現してもよいことは言うまでもない。
【0046】
以下では、本実施の形態に係る検知システムが、上記プログラムを実行することにより各種処理を実現するものとされている場合について説明する。この場合、当該プログラムを検知システムのコントローラ22に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納された状態で提供される形態、有線または無線による通信手段を介して配信される形態等を適用してもよい。
【0047】
次に、図7を参照して、本実施の形態に係る検知システムの作用を説明する。なお、図7は、制御部20の不図示の電源スイッチがオン状態とされた際にコントローラ22のCPU22Aにより実行される物品検知処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはROM22Bに予め記憶されている。
【0048】
まず、同図のステップ100では、第1コイル群11Aおよび第2コイル群11Bの各々について、検知コイル13,14による検知動作を開始させるべく信号処理部21A,21Bの稼働を開始するように制御すると共に、励磁コイル12への励磁電流の供給を開始するように励磁電流供給部15を制御する。次のステップ102では、ROM22Bから前述した識別情報(図6も参照。)を読み出し、次のステップ104にて、記憶部22Dから前述した基準波形情報を読み出す。
【0049】
次のステップ106では、信号処理部21A,21Bから出力されているデジタル情報の予め定められた第1期間(本実施の形態では、5秒間)の、予め定められた周期(本実施の形態では、励磁コイル12に供給する励磁電流の1周期)単位での移動平均を算出する。なお、本実施の形態に係る検知システムでは、予め定められた期間(本実施の形態では、5秒間)分の最新の上記デジタル情報をRAM22Cに記憶しており、本ステップ106では、この記憶しているデジタル情報を用いて、上記第1期間だけ遡った期間の移動平均を算出している。
【0050】
次のステップ108では、上記ステップ104の処理によって読み出した基準波形情報と、上記ステップ106の処理によって平均化されたデジタル情報(以下、「検知波形情報」という。)との相互相関値を算出する。
【0051】
次のステップ110では、上記ステップ108の処理によって算出した相互相関値に予め定められた閾値以上であるものが存在するか否かを判定し、否定判定となった場合は後述するステップ116に移行する一方、肯定判定となった場合にはステップ112に移行する。なお、本実施の形態に係る検知システムでは、上記ステップ110の処理において用いられる閾値として、検知システムの用途や、検知システムに要求される物品の種類に対する特定の精度等に応じて、比較対象とする相互相関値が当該値以上である場合に物品検知面に物品50が載せられたものと見なす値として、実機を用いた実験や、実機の仕様等に基づくコンピュータ・シミュレーション等によって予め得られた値を用いている。
【0052】
ステップ112では、上記ステップ110の処理において相互相関値が上記閾値以上であると判定された検知波形情報を得るために用いられた検知コイル13,14に対応する識別結果を上記ステップ102の処理によって読み出した識別情報から抽出することにより、物品検知面に載せられた物品50の種類(本実施の形態では、チケット50Aまたはチケット50B)、または検知結果が異常であることを特定し、次のステップ114にて、特定結果を報知した後にステップ116に移行する。なお、本実施の形態に係る検知システムでは、上記ステップ114による報知として、上記ステップ112による特定結果が異常であった場合には警告灯30を点灯または点滅させるように制御すると共に、表示装置40によって物品50の種類が特定できなかった旨を表示するように制御する。これに対し、上記ステップ112によって物品50の種類が特定できた場合には、一例として図8に示すように、特定した物品50の種類を示す情報を表示装置40によって表示するように制御する。
【0053】
ステップ116では、本物品検知処理プログラムを終了するタイミングとして予め定められたタイミングが到来したか否かを判定し、否定判定となった場合は上記ステップ106に戻る一方、肯定判定となった時点でステップ118に移行する。なお、本実施の形態に係る検知システムでは、上記予め定められたタイミングとして、制御部20の不図示の電源スイッチがオフ状態とされたタイミングを適用しているが、これに限らず、例えば、検知システムの稼働を終了する時刻として予め定められた時刻となったタイミング、ユーザによって物品検知処理プログラムの終了を指示する指示操作が行われたタイミング等を適用する形態としてもよい。
【0054】
ステップ118では、上記ステップ100の処理によって開始した信号処理部21A,21Bの稼働および励磁コイル12への励磁電流の供給を停止するように制御し、その後に本物品検知処理プログラムを終了する。
【0055】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0056】
また、上記の実施の形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の組み合わせにより種々の発明が抽出される。実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0057】
例えば、上記実施の形態では、検知部10に対して第1コイル群11Aおよび第2コイル群11Bの2つのコイル群のみを設けた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、コイル群を3つ以上設ける形態としてもよい。
【0058】
図9には、この場合の上記実施の形態と同一の第1コイル群11Aおよび第2コイル群11Bに加えて、第3コイル群11Cを検知部10に設ける一方、種類の特定対象とする物品として、チケット50Aおよびチケット50Bに加えてチケット50Cを適用した場合の形態例が示されている。
【0059】
同図に示す例では、第3コイル群11Cが第2コイル群11Bと同様の構成とされ、第1コイル群11Aの同図上方に、第2コイル群11Bと同様の状態で検知部10に内蔵されている。また、チケット50Cは、大バルクハウゼン効果を有する磁性体51が、第1コイル群11Aおよび第3コイル群11Cにより検知可能な2箇所に対して、軸線方向が各々水平方向となるように複数本(同図に示す例では、3本)ずつ設けられている。
【0060】
従って、この形態では、チケット50Cが物品検知面に載せられた際には第1コイル群11Aおよび第3コイル群11Cから磁化反転によるパルス電流が出力されるため、この状態となった場合にチケット50Cが載せられたものと特定される。
【0061】
また、上記実施の形態では、検知部10として、物品50を物品検知面に載せるものを適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、物品50が上記実施の形態で示したチケットのような薄手のものである場合には、物品50を側面から挿入するものを検知部10として適用する形態としてもよい。
【0062】
図10には、この場合の検知部10の構成例が示されている。この場合、同図に示すように、センサ18を物品50の挿入方向の先端部に設け、通常は励磁コイル12および検知コイル13,14への通電は行わず、センサ18によって物品50の挿入が完了したことが検知された場合のみ、励磁コイル12および検知コイル13,14に通電する形態としてもよい。なお、センサ18としては、フォトインタラプタ等の光学センサ等の非接触センサの他、接触されることにより機械的に物品を検知する接触センサ等が用いられる。
【0063】
また、同図に示す形態では、物品50を挿入する挿入口17から物品50の先端部が突き当たる最深部にかけて物品50の幅方向の端部および上面の位置を規制する位置決め部16が設けられている。この場合、位置決め部16は、物品50と複数組のコイル群(同図に示す例では、第1コイル群11Aおよび第2コイル群11B)との位置関係が、対応するコイル群に設けられた検知コイル13,14によって物品50に設けられた磁性体51が検知される位置関係となるように当該物品50を位置決めするように予め設けられている。
【0064】
また、上記実施の形態では、各コイル群に対応して複数本(上記実施の形態では、3本)の磁性体51を設けた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各々1本ずつ磁性体51を設ける形態としてもよい。
【0065】
また、上記実施の形態では、物品50に設けられた磁性体51の有無を検出する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、物品50に設けられた磁性体51の本数も検出する形態としてもよい。この場合、コントローラ22のCPU22Aは、信号処理部21A,21Bから出力されたデジタル情報により示される信号レベルの大きさに応じて磁性体の本数を特定する。この場合、磁性体51の位置のみならず、磁性体51の本数も物品50の種類の特定に用いられるため、上記実施の形態に比較して、特定される物品50の種類数が大幅に増える。
【0066】
また、上記実施の形態では、一例として図1に示すように、検知部10をテーブルに横型に設置する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、検知部10を壁面や柱等に縦型に設置する形態としてもよい。
【0067】
また、上記実施の形態では、検知波形情報として、予め定められた期間毎の移動平均によって得られたものを適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、移動平均をとらずに瞬間的な波形情報を適用する形態としてもよい。
【0068】
また、上記実施の形態では、警告灯30を発光させることにより、物品50の種類を特定できなかったことを報知する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、スピーカ等による音声による報知、通信回線等を介した外部装置による報知等、他の報知形態としてもよい。
【0069】
また、上記実施の形態では、検知コイル13,14を巻線方向が逆になるように接続して検知コイル13,14に交番磁界によって誘導された交流電流を互いに打ち消す場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、検知コイル13,14のアナログ信号をデジタル変換した後に差を求めて交流電流を打ち消す形態としてもよい。また、検知コイルは必ずしも2つ一組とする必要はなく、1つのみで構成する形態としてもよい。
【0070】
その他、上記実施の形態で説明した検知システムの構成(図1〜図3,図5参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要な部分を削除したり、新たな部分を追加したりしてもよいことは言うまでもない。
【0071】
さらに、上記実施の形態で説明した物品検知処理プログラムの処理の流れ(図7参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0072】
10 検知部
11A 第1コイル群
11B 第2コイル群
11C 第3コイル群
12 励磁コイル
13,14 検知コイル
15 励磁電流供給部
16 位置決め部
20 制御部
21A,21B 信号処理部
22 コントローラ
22A CPU
22B ROM
22C RAM
22D 記憶部
30 警告灯
31 差動増幅器
33 波形整形回路
34 ADC
50 物品
50A チケット
50B チケット
50C チケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品の検知対象とする領域に交番磁界を発生させる磁界発生コイルと当該磁界発生コイルによって発生された交番磁界に応じた電気信号が誘導される信号誘導コイルとを各々含んで構成され、各々の前記磁界発生コイルにより発生される交番磁界の発生方向が互いに異なるように配置された複数組のコイル群と、
各々前記検知対象とする領域に位置された場合に互いに異なる前記コイル群の前記磁界発生コイルにより発生される交番磁界の発生方向を含む予め定められた範囲内に磁化容易軸の軸線方向が含まれるように磁性体が設けられた複数種類の物品と、
前記検知対象とする領域に前記物品が位置された場合における前記磁性体の磁化反転による磁場の変化に応じた前記複数組のコイル群の前記信号誘導コイルによる電気信号の誘導状態に基づいて、当該物品の種類を特定する特定手段と、
を有する検知システム。
【請求項2】
前記複数種類の物品の少なくとも1つは、前記磁性体が、前記コイル群の複数の組に対応して複数設けられている
請求項1記載の検知システム。
【請求項3】
前記特定手段によって前記物品の種類を特定する際に、当該物品と前記複数組のコイル群との位置関係が予め定められた位置関係となるように当該物品を位置決めする位置決め手段をさらに有する
請求項1または請求項2記載の検知システム。
【請求項4】
前記物品は、同一の前記コイル群に対応する前記磁性体が複数設けられており、
前記特定手段は、前記信号誘導コイルに誘導された電気信号の信号レベルに基づいて、前記物品に設けられた磁性体の数をさらに特定する
請求項1から請求項3の何れか1項記載の検知システム。
【請求項5】
物品の検知対象とする領域に交番磁界を発生させる磁界発生コイルと当該磁界発生コイルによって発生された交番磁界に応じた電気信号が誘導される信号誘導コイルとを各々含んで構成され、各々の前記磁界発生コイルにより発生される交番磁界の発生方向が互いに異なるように配置された複数組のコイル群と、
各々前記検知対象とする領域に位置された場合に互いに異なる前記コイル群の前記磁界発生コイルにより発生される交番磁界の発生方向を含む予め定められた範囲内に磁化容易軸の軸線方向が含まれるように磁性体が設けられた複数種類の物品が前記検知対象とする領域に位置された場合における前記磁性体の磁化反転による磁場の変化に応じた前記複数組のコイル群の前記信号誘導コイルによる電気信号の誘導状態に基づいて、当該物品の種類を特定する特定手段と、
を備えた検知装置。
【請求項6】
各々検知対象とする領域に位置された場合に、当該領域に交番磁界を発生させる磁界発生コイルと当該磁界発生コイルによって発生された交番磁界に応じた電気信号が誘導される信号誘導コイルとを各々含んで構成され、各々の前記磁界発生コイルにより発生される交番磁界の発生方向が互いに異なるように配置された複数組のコイル群における、互いに異なる前記コイル群の前記磁界発生コイルにより発生される交番磁界の発生方向を含む予め定められた範囲内に磁化容易軸の軸線方向が含まれるように磁性体が設けられた複数種類の物品。
【請求項7】
物品の検知対象とする領域に交番磁界を発生させる磁界発生コイルと当該磁界発生コイルによって発生された交番磁界に応じた電気信号が誘導される信号誘導コイルとを各々含んで構成され、各々の前記磁界発生コイルにより発生される交番磁界の発生方向が互いに異なるように配置された複数組のコイル群と、各々前記検知対象とする領域に位置された場合に互いに異なる前記コイル群の前記磁界発生コイルにより発生される交番磁界の発生方向を含む予め定められた範囲内に磁化容易軸の軸線方向が含まれるように磁性体が設けられた複数種類の物品と、を有する検知システムにおいて実行され、
コンピュータを、
前記検知対象とする領域に前記物品が位置された場合における前記磁性体の磁化反転による磁場の変化を検知する検知手段と、
前記検知手段による検知結果に応じた前記複数組のコイル群の前記信号誘導コイルによる電気信号の誘導状態に基づいて、当該物品の種類を特定する特定手段と、
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−122956(P2012−122956A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275882(P2010−275882)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】