説明

検知装置およびプログラム

【課題】検知精度の低下を抑制しつつ、消費電力を低減することのできる検知装置およびプログラムを得る。
【解決手段】制御部20により、人感センサ18によって検知対象とする領域を人が通過することが検出された場合に、通電された状態で上記検知対象とする領域に交番磁界を発生させる励磁コイル11に通電するように制御する一方、励磁コイル11によって発生された交番磁界に応じた電流が誘導される検知コイル12,13に誘導された電流に基づいて、上記検知対象とする領域を通過する磁性体を、当該磁性体の磁化反転による磁場の変化を検知することにより検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、検知領域に交番磁界を発生する励磁手段と、前記交番磁界と被検知物体との位置関係を変化させるために前記被検知物体を所持する所持者の位置を前記検知領域内で強制的に移動させる移動手段と、前記交番磁界の印加により前記被検知物体に付与された磁性体から発生される信号に基づき該被検知物体を検知する検知手段とを備える物体検知装置が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、雨滴除去機構を有するTVカメラにより撮像され、予めメモリに記憶された監視区域の背景画像データと順次入力されてくる監視区域の画像データとの差分を計算して、両画像間の変化の有無により侵入者などの異常状態を判定する監視装置において、雨天時に雨滴除去装置を作動させると共にその作動信号を異常判定部に知らせる雨滴除去機構作動部と、この作動信号の有無により監視処理を行うかどうかを制御する監視処理制御部とを設けたことを特徴とする監視装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−46904号公報
【特許文献2】特開平5−12591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、検知精度の低下を抑制しつつ、消費電力を低減することのできる検知装置およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の検知装置は、通電された状態で検知対象とする領域に交番磁界を発生させる磁界発生コイルと、前記磁界発生コイルによって発生された交番磁界に応じた電流が誘導される電流誘導コイルと、前記検知対象とする領域に移動体が通過することを検出する検出手段と、前記検出手段によって前記移動体が通過することが検出された場合に前記磁界発生コイルに通電するように制御する制御手段と、前記電流誘導コイルに誘導された電流に基づいて、前記検知対象とする領域を通過する磁性体を、当該磁性体の磁化反転による磁場の変化を検知することにより検知する検知手段と、を備えている。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記検知対象とする領域を前記移動体が通過していない状態において前記磁界発生コイルに通電することにより前記電流誘導コイルに誘導された電流を示す第1情報を取得する取得手段をさらに備え、前記検知手段は、前記検出手段によって前記移動体が通過することが検出された場合に前記電流誘導コイルに誘導された電流を示す第2情報から前記取得手段によって取得された前記第1情報を減算することにより得られた情報に基づいて、前記検知対象とする領域を通過する磁性体を検知する。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記電流誘導コイルは、稼働された状態で前記交番磁界に応じた電流が誘導されるものであり、前記制御手段は、前記電流誘導コイルを常時稼働するように制御すると共に、前記磁界発生コイルに、前記検出手段によって前記移動体が通過することが検出された場合、および前記検知対象とする領域を前記移動体が通過していない状態で、かつ前記第1情報を取得するタイミングとして予め定められたタイミングが到来した場合に通電するように制御し、前記取得手段は、前記磁界発生コイルに通電されていない状態で前記電流誘導コイルに誘導された電流を示す第3情報を取得すると共に、前記検知対象とする領域を前記移動体が通過していない状態で、かつ前記予め定められたタイミングが到来した場合に前記第1情報を取得した後、当該第1情報から前記第3情報を減算することによって第4情報を取得し、前記検知手段は、前記第2情報から前記第4情報を減算すると共に、当該第2情報を得る際の前記制御手段の制御によって前記磁界発生コイルに通電される直前に前記電流誘導コイルに誘導された電流を示す第5情報を減算することによって得られた情報に基づいて、前記検知対象とする領域を通過する磁性体を検知する。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記予め定められたタイミングを、前記電流誘導コイルに誘導された電流が予め定められた閾値以上に変化したタイミングとするものである。
【0010】
さらに、請求項5に記載の発明は、請求項2から請求項4の何れか1項に記載の発明において、前記第1情報および前記第2情報を、予め定められた期間毎の移動平均として得られる情報とするものである。
【0011】
一方、上記目的を達成するために、請求項6に記載のプログラムは、コンピュータを、検知対象とする領域に移動体が通過することを検出する検出手段によって前記移動体が通過することが検出された場合に、通電された状態で前記検知対象とする領域に交番磁界を発生させる磁界発生コイルに通電するように制御する制御手段と、前記磁界発生コイルによって発生された交番磁界に応じた電流が誘導される電流誘導コイルに誘導された電流に基づいて、前記検知対象とする領域を通過する磁性体を、当該磁性体の磁化反転による磁場の変化を検知することにより検知する検知手段と、として機能させるためのものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1および請求項6に記載の発明によれば、磁界発生コイルに常時通電させる場合に比較して、検知精度の低下を抑制しつつ、消費電力を低減することができる、という効果が得られる。
【0013】
また、請求項2に記載の発明によれば、第1情報を用いない場合に比較して、より検知精度の低下を抑制することができる、という効果が得られる。
【0014】
また、請求項3に記載の発明によれば、第3情報、第4情報、および第5情報を用いない場合に比較して、より検知精度の低下を抑制することができる、という効果が得られる。
【0015】
また、請求項4に記載の発明によれば、予め定められたタイミングをユーザに指定させる場合に比較して、より利便性を向上させることができる、という効果が得られる。
【0016】
さらに、請求項5に記載の発明によれば、移動平均を用いない場合に比較して、より検知精度の低下を抑制することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態に係る検知装置の全体的な構成を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は正面図であり、(C)は側面図である。
【図2】実施の形態に係る検知装置の電気的な要部構成を示すブロック図である。
【図3】大バルクハウゼン効果の説明に供する波形図である。
【図4】実施の形態に係るバックグランドノイズ取得処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】実施の形態に係る移動体通過割り込み処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】実施の形態に係る検知装置の他の形態の構成例を示す側面図である。
【図7】実施の形態に係る励磁コイルの他の形態の構成例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
【0019】
まず、図1を参照して、本実施の形態に係る検知装置の構成を説明する。なお、本実施の形態に係る検知装置は、大バルクハウゼン効果を有する磁性体の埋め込まれたタグが通過したか否かを検知して、通過した場合に警報を発するものである。
【0020】
同図に示すように、本実施の形態に係る検知装置は、2つの対向するセキュリティゲート10と、2つのセキュリティゲート10を向かい合わせて並列に支持する支持台14と、各セキュリティゲート10の動作を制御する制御部20と、タグの通過が検知された場合に光が発せられる警告灯30と、を備えている。なお、制御部20は、2つのセキュリティゲート10の何れかの内部に設けてもよく、支持台14内に設けてもよく、2つのセキュリティゲート10とは別体として設けてもよい。さらに、警告灯30も2つのセキュリティゲート10の何れかに設けてもよく、2つのセキュリティゲート10とは別体として設けてもよい。
【0021】
また、本実施の形態に係る検知装置には、セキュリティゲート10と支持台14の間に調整部材16が設けられてり、セキュリティゲート10の高さの調整が行えるものとされている。
【0022】
ここで、本実施の形態に係る検知装置では、2つのセキュリティゲート10の間の空間がタグを検知する検知領域とされている。そして、本実施の形態では、持ち出しが禁止されている重要書類等の物品41に上記タグを付して一体としておく一方、セキュリティゲート10を物品41が保管されている空間の出入口に設置しておき、物品41が上記空間から持ち出される際に警告灯30が点灯される結果、物品41の持ち出しが制限されるものとされている。
【0023】
ここで、本実施の形態に係る各セキュリティゲート10には、交番磁界を発生する励磁コイル11と、外部からの磁界によって誘導されて電流が流れる検知コイル12,13とが備えられている。なお、本実施の形態に係る検知装置では、検知コイル12,13が横方向に並んで対称に設けられている。
【0024】
また、本実施の形態に係る検知装置には、支持台14の上記空間の内部側の端部近傍に人の通過を検出するために人感センサ18が設けられている。なお、人感センサ18としては、人体表面から放出される赤外線を受信することにより人を検出するパッシブ型のセンサを適用してもよく、また、例えば、赤外線ビームを発射することにより、当該赤外線ビームを反射または遮った物体を検出するアクティブ型のセンサを適用してもよい。
【0025】
図2には、本実施の形態に係る検知装置の電気的な要部構成が示されている。
【0026】
同図に示すように、本実施の形態に係る検知装置は、前述した励磁コイル11に磁界を発生させるための励磁電流を供給する励磁電流供給部15と、前述した検知コイル12,13に誘導されたアナログの電気信号をデジタル信号に変換する信号処理部21と、信号処理部21によって得られたデジタル信号に基づいてタグの通過を検知するコントローラ22と、を備えている。
【0027】
ここで、検知コイル12,13は、平面上で隣り合い、かつ巻線方向が逆になるように配置されている。そして、検知コイル12の一端部は信号処理部21に接続され、検知コイル12の他端部は検知コイル13の一端部に接続されている。また、検知コイル13の他端部は信号処理部21に接続されている。
【0028】
一方、コントローラ22は、マイクロコンピュータによって構成され、CPU(中央処理装置)22A、ROM(Read Only Memory)22B、RAM(Random Access Memory)22C、およびフラッシュメモリ等からなる不揮発性の記憶部22Dを備えており、検知装置全体の動作を制御する。
【0029】
また、励磁電流供給部15は、コントローラ22からの制御に応じて、励磁コイル11に対して交流の励磁電流を供給する。
【0030】
励磁コイル11は、励磁電流供給部15から励磁電流が供給されることにより励磁され、正弦波のように磁界が変化する交番磁界を発生する。そして、検知コイル12,13では、励磁コイル11で発生された交番磁界によって交流電流が誘導されると共に、大バルクハウゼン効果を有する磁性体を含んだタグが上記交番磁界内に存在する場合は、磁化反転によってパルス電流が生じる。
【0031】
図3(A),(B)は、大バルクハウゼン効果を説明するための図である。
【0032】
大バルクハウゼン効果は、図3(A)に示すB−H特性、つまり、ヒステリシスループがほぼ長方形で、保磁力(Hc)が比較的小さな材料、例えば、Co−Fe−Ni−B−Siからなるアモルファス磁性材料を交番磁界中においた際に、急峻な磁化反転が起きる現象である。大バルクハウゼン効果を有する磁性体は、正負それぞれ予め定められた強度よりも大きな強度の磁界が作用した際に磁化反転する。このため、励磁コイル11に励磁電流を流して交番磁界を発生させ、その交番磁界中にタグを置くと、磁化反転時に、タグの近傍に配置された検知コイル12,13にパルス状の電流が流れる。
【0033】
例えば、励磁コイルにより図3(B)の上段に示す交番磁界が発生した場合、検知コイル12,13には、図3(B)の下段に示すようなパルス電流が流れる。
【0034】
ただし、検知コイル12,13の電流には、このパルス電流だけでなく、交番磁界によって誘導される交流電流も含まれている。本実施の形態に係る検知装置では、この検知コイル12,13に誘導される交流電流を相殺させるために、検知コイル12,13を巻線方向が逆になるように接続している。
【0035】
タグに含まれる磁性体の材料(磁性材料)としては、一般には永久磁石、例えば希土類系のネオジュウム(Nd)−鉄(Fe)−ボロン(B)を主成分としたもの、サマリウム(Sm)−コバルト(Co)を主成分としたもの、アルニコ系のアルミ(Al)−ニッケル(Ni)−コバルト(Co)を主成分としたもの、フェライト系のバリュウム(Ba)またはストロンチウム(Sr)と酸化鉄(Fe)を主成分としたものや、その他に軟質磁性材料、酸化物軟質磁性材料等がある。上記大バルクハウゼン効果を起こす磁性材料としては、基本組成がFe−Co−SiやCo−FeNi系であるアモルファス磁性材料を用いることが好ましい。
【0036】
磁性材料の形状は、大バルクハウゼン効果を起こすのに適した形状であれば特に限定されない。ただし、大バルクハウゼン効果を起こすには、断面積に対応する長さが必要となることから、線状(ワイヤ状)や帯状であることが好ましく、ワイヤ状であることがより好ましい。
【0037】
磁性材料がワイヤ状である場合には、大バルクハウゼン効果を起こすために必要な最小直径として10μm以上であることが好ましい。また、最大直径としては特に限定はされないが、例えば、記録媒体(用紙)に磁性材料を漉き込んで一体とする場合、記録媒体の表面に磁性材料が露出することを抑制するために、その直径は記録媒体の厚みに依存し、例えば90μm前後の厚さの記録媒体の場合には、60μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。
【0038】
磁性材料の長さとしては、大バルクハウゼン効果を起こすために必要な最小長さとして5mm以上が好ましい。アモルファス磁性材料の最大長については、内部に含有されたときに、記録媒体から露出されない程度の長さであればよく、特に限定はされないが、430mm以下であることが好ましい。
【0039】
一方、図2に示すように、信号処理部21は、両端子間の電圧(検知コイル12の一端部および検知コイル13の他端部からそれぞれ出力された信号電圧)の差動を増幅して出力する差動増幅アンプ31と、差動増幅アンプ31から出力された信号の波形を整形する波形整形回路32と、波形整形回路32で波形整形された信号をデジタル信号に変換するアナログ/デジタルコンバータ(以下、「ADC」という。)34と、を備えている。なお、信号処理部21は、波形整形回路32とADC34の間に、波形整形回路32によって得られた信号から磁性体の磁化反転によって生じるパルス電流に対応する予め定めた帯域の信号を抽出して出力するバンドパスフィルタをさらに備えるようにしてもよい。
【0040】
コントローラ22は、ADC34から出力されたデジタル信号のレベルが閾値を超えたか否かを判定するか、あるいは当該デジタル信号の波形形状が磁性体の磁化反転による波形形状であるか否かを、当該磁化反転による波形形状を示すものとして予め定められた基準波形形状との相互相関値に基づいて判定する相互相関法等により判定することでタグの通過の有無を検知し、タグの通過が検知された場合、警告灯30を点灯させる。なお、本実施の形態に係る検知装置では、タグの通過の有無を相互相関法によって検知するものとされている。
【0041】
また、コントローラ22には、人感センサ18が接続されており、コントローラ22により、人感センサ18による人の検出結果が把握される。
【0042】
ところで、本実施の形態に係る検知装置は、検知コイル12,13に誘導される交流電流に重畳されてしまうノイズであるバックグランドノイズを除去するバックグランドノイズ除去機能を有している。ここで、バックグランドノイズは、周辺機器の配置状態や稼働状態等の変化に応じて検知装置の検知コイル12,13による検知信号に影響を与えるノイズであるため、本実施の形態に係るバックグランドノイズ除去機能では、バックグランドノイズを常時検知し、セキュリティゲート10の間を人が通過する際に検知された検知信号から当該バックグランドノイズを除去するようにしている。
【0043】
なお、バックグランドノイズには、励磁コイル11に励磁電流を供給しない状態であっても検知コイル12,13による検知信号に重畳されるノイズと、励磁コイル11に励磁電流を供給した状態で検知コイル12,13による検知信号に重畳されるノイズの2種類のノイズがある。
【0044】
ここで、前者のノイズには、一例として空気調和器(所謂エアコン)の稼働時におけるノイズがある。なお、空気調和器は、稼働中の作動状態が時々刻々変化するため、当該空気調和器によるノイズも時々刻々変化することになる。また、後者のノイズには、一例として周囲に設置されている金属物により、励磁コイル11によって発生された磁界により発生するノイズがある。なお、この種のノイズでは、ノイズの発生源となる金属物は固定されている場合が多く、この金属物が移動された場合に当該ノイズの状態が変化することになる。
【0045】
なお、図示は省略するが、本実施の形態に係る検知装置は、検知装置による検知領域(各セキュリティゲート10の間の空間。)を撮影するカメラを備えており、当該カメラによって、上記検知領域を人が通過するときのみ当該検知領域を撮影する自動撮影機能も有している。前述した人感センサ18は、この自動撮影機能のために従前より設けられているものであり、本実施の形態に係る検知装置では、この人感センサ18を上記バックグランドノイズ除去機能でも兼用するようにしている。このため、当該バックグランドノイズ除去機能のために新たなハードウェア(人感センサ18)を追加する必要がなく、検知装置のコストの上昇や大型化を招くことはない。
【0046】
さらに、前述したように、本実施の形態に係る検知装置では、タグの通過の有無を相互相関法によって検知するものとされているため、本実施の形態に係る検知装置には、上記磁化反転による波形形状を示すものとして予め定められた基準波形信号が記憶部22Dの予め定められた領域に予め記憶されている。
【0047】
以上のように構成された検知装置によるバックグランドノイズ除去機能、自動撮影機能等を実現するための各種処理は、プログラムを実行することにより、コンピュータを利用してソフトウェア構成により実現してもよい。ただし、ソフトウェア構成による実現に限られるものではなく、ハードウェア構成や、ハードウェア構成とソフトウェア構成の組み合わせによって実現してもよいことは言うまでもない。
【0048】
以下では、本実施の形態に係る検知装置が、上記プログラムを実行することにより各種処理を実現するものとされている場合について説明する。この場合、当該プログラムを検知装置のコントローラ22に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納された状態で提供される形態、有線または無線による通信手段を介して配信される形態等を適用してもよい。
【0049】
次に、本実施の形態に係る検知装置の作用として、本発明に特に関係するバックグランドノイズ除去機能に関する処理を実行する際の作用を説明する。なお、ここでは、錯綜を回避するために、一方のセキュリティゲート10のみを用いてタグの通過を検知する場合について説明する。
【0050】
本実施の形態に係る検知装置では、バックグランドノイズ除去機能を実現するために、バックグランドノイズ取得処理および移動体通過割り込み処理が実行される。そこで、まず、図4を参照して、バックグランドノイズ取得処理を実行する際の検知装置の作用を説明する。なお、図4は、検知装置の不図示の電源スイッチがオン状態とされている際にコントローラ22のCPU22Aにより実行されるバックグランドノイズ取得処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはROM22Bに予め記憶されている。
【0051】
まず、同図のステップ100では、検知コイル12,13による検知動作を開始させるべく信号処理部21の稼働を開始するように制御し、次のステップ102では、信号処理部21から出力されているデジタル信号の予め定められた第1期間(本実施の形態では、5秒間)の、予め定められた周期(本実施の形態では、励磁コイル11に供給する励磁電流の1周期)単位での移動平均を算出する。なお、本実施の形態に係る検知装置では、予め定められた期間(本実施の形態では、5秒間)分の最新の上記デジタル信号をRAM22Cに記憶しており、本ステップ102では、この記憶しているデジタル信号を用いて、上記第1期間だけ遡った期間の移動平均を算出している。
【0052】
次のステップ104では、上記ステップ102の処理によって平均化された波形信号(以下、「第1波形信号」という。)における予め定められた信号レベル(本実施の形態では、最大信号レベル)が予め定められた閾値以上であるか否かを判定し、否定判定となった場合は後述するステップ116に移行する一方、肯定判定となった場合にはステップ106に移行する。なお、本実施の形態に係る検知装置では、上記ステップ104の処理において用いられる閾値として、検知装置の用途や、検知装置に要求されるタグの検知精度等に応じて、比較対象とする信号レベルが当該値以上である場合に、周辺機器の配置状態や稼働状態の変化等によってバックグランドノイズが変化したと見なす値として、実機を用いた実験や、実機の仕様等に基づくコンピュータ・シミュレーション等によって予め得られた値を用いている。
【0053】
ステップ106では、励磁コイル11への励磁電流の供給を開始するように励磁電流供給部15を制御し、次のステップ108にて、信号処理部21から出力されているデジタル信号の上記予め定められた第1期間の、上記予め定められた周期単位での移動平均を算出する。
【0054】
次のステップ110では、励磁コイル11への励磁電流の供給を停止するように励磁電流供給部15を制御し、次のステップ112にて、上記ステップ108の処理によって平均化された波形信号(以下、「第2波形信号」という。)から上記第1波形信号を予め定められた同一経過時間毎に減算することにより第1差分波形信号を算出し、次のステップ114にて、算出した第1差分波形信号を記憶部22Dの予め定められた領域に記憶する。
【0055】
次のステップ116では、本バックグランドノイズ取得処理プログラムを終了するタイミングとして予め定められたタイミングが到来したか否かを判定し、否定判定となった場合は上記ステップ102に戻る一方、肯定判定となった時点でステップ118に移行する。なお、本実施の形態に係る検知装置では、上記予め定められたタイミングとして、検知装置の不図示の電源スイッチがオフ状態とされたタイミングを適用しているが、これに限らず、例えば、検知装置の稼働を終了する時刻として予め定められた時刻となったタイミング、ユーザによってバックグランドノイズ取得処理プログラムの終了を指示する指示操作が行われたタイミング等を適用する形態としてもよい。
【0056】
ステップ118では、上記ステップ100の処理によって開始した信号処理部21の稼働を停止するように制御し、その後に本バックグランドノイズ取得処理プログラムを終了する。
【0057】
次に、図5を参照して、移動体通過割り込み処理を実行する際の検知装置の作用を説明する。なお、図5は、人感センサ18によって人が検出された際にコントローラ22のCPU22Aにより割り込み処理として実行される移動体通過割り込み処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムもROM22Bに予め記憶されている。
【0058】
まず、同図のステップ200では、信号処理部21から出力されているデジタル信号の上記予め定められた第1期間の、上記予め定められた周期単位での移動平均を、上記バックグランドノイズ取得処理プログラムのステップ102の処理と同様に算出し、次のステップ202では、励磁コイル11への励磁電流の供給を開始するように励磁電流供給部15を制御し、次のステップ204にて、信号処理部21から出力されているデジタル信号の予め定められた第2期間(本実施の形態では、100ミリ秒間)の、上記予め定められた周期単位での移動平均を算出する。
【0059】
次のステップ206では、励磁コイル11への励磁電流の供給を停止するように励磁電流供給部15を制御し、次のステップ208では、記憶部22Dから上記第1差分波形信号を読み出し、次のステップ210にて、上記ステップ204の処理によって平均化された波形信号(以下、「第3波形信号」という。)から上記第1差分波形信号、および上記ステップ200の処理によって平均化された波形信号(以下、「第4波形信号」という。)を予め定められた同一経過時間毎に減算することにより第2差分波形信号を算出する。
【0060】
次のステップ212では、記憶部22Dから前述した基準波形信号を読み出し、次のステップ214にて、読み出した基準波形信号と、上記ステップ210の処理によって算出した第2差分波形信号との相互相関値を算出する。
【0061】
次のステップ216では、上記ステップ214の処理によって算出した相互相関値が予め定められた閾値以上であるか否かを判定し、否定判定となった場合は本移動体通過割り込み処理プログラムを終了する一方、肯定判定となった場合にはステップ218に移行する。なお、本実施の形態に係る検知装置では、上記ステップ216の処理において用いられる閾値として、検知装置の用途や、検知装置に要求されるタグの検知精度等に応じて、比較対象とする相互相関値が当該値以上である場合に検知領域をタグが通過したものと見なす値として、実機を用いた実験や、実機の仕様等に基づくコンピュータ・シミュレーション等によって予め得られた値を用いている。
【0062】
ステップ218では、警告灯30を発光させることにより、タグの通過が検知されたことを報知し、その後に本移動体通過割り込み処理プログラムを終了する。
【0063】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0064】
また、上記の実施の形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の組み合わせにより種々の発明が抽出される。実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0065】
例えば、上記実施の形態では、本発明の検出手段として人感センサ18を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、人に加えて、その他の物も検出される物体検出センサを適用する形態としてもよい。
【0066】
また、上記実施の形態では、人感センサ18を、セキュリティゲート10を境界としてタグの持ち出しを制限する空間の内部側に設けた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、タグの持ち込みを制限する空間の出入口にセキュリティゲート10を設け、当該セキュリティゲート10を境界として当該空間の外部側に人感センサ18を設ける形態や、タグの持ち出し、および持ち込みの双方を制限する空間の出入口にセキュリティゲート10を設け、当該セキュリティゲート10を境界として当該空間の内部側および外部側の双方に人感センサ18を設ける形態としてもよい。
【0067】
また、上記実施の形態では、検知装置の一方のセキュリティゲート10のみを用いてタグを検知する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、双方のセキュリティゲート10を用いてタグを検知する形態としてもよい。この場合、何れか一方のセキュリティゲート10によりタグが検知された場合に警報を報知するようにする形態、双方のセキュリティゲート10によりタグが検知された場合のみ警報を報知する形態等としてもよい。
【0068】
また、上記実施の形態では、検知領域に人が存在せず、励磁コイル11に励磁電流を供給した状態で検知された第2波形信号と、励磁コイル11に励磁電流を供給しない状態で検知された第1波形信号との差分を示す第1差分波形信号を予め導出しておき、実際に人が検知領域を通過した際に、励磁コイル11に励磁電流を供給した状態で検知された第3波形信号から、上記第1差分波形信号と、当該励磁コイル11への励磁電流の供給を行う直前に検知された第4波形信号とを減算することにより、タグの通過の有無を検知するために用いる第2差分波形信号を導出する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、上記第1差分波形信号に代えて上記第2波形信号を適用し、上記第2差分波形信号として、上記第3波形信号から上記第2波形信号を減算することにより得られる差分波形信号を適用する形態としてもよい。
【0069】
また、上記実施の形態では、一対の検知コイル12,13が横方向に配置されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、一例として図6に示すように、検知コイル12,13が縦方向に配置されている形態等、各検知コイルが平面上で隣り合うように配置され、かつ巻線方向が逆になるように接続されている他の形態としてもよい。
【0070】
また、上記実施の形態では、第1波形信号から第4波形信号の各波形信号として、予め定められた期間毎の移動平均によって得られたものを適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、移動平均をとらずに瞬間的な電流値を適用する形態としてもよい。
【0071】
また、上記実施の形態では、警告灯30を発光させることにより、タグの通過を報知する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、スピーカ等による音声による報知、通信回線等を介した外部装置による報知等、他の報知形態としてもよい。
【0072】
また、上記実施の形態では、検知領域における人の通過が検出されたタイミングで第4波形信号を取得した後、続け様に励磁コイル11に通電して第2差分波形信号を取得する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、第4波形信号を取得した後、予め定められた期間だけ待機した後に励磁コイル11に通電して第2差分波形信号を導出する形態としてもよい。
【0073】
また、上記実施の形態では、検知コイル12,13を巻線方向が逆になるように接続して検知コイル12,13に交番磁界によって誘導された交流電流を互いに打ち消す場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、検知コイル12,13のアナログ信号をデジタル変換した後に差を求めて交流電流を打ち消す形態としてもよい。
【0074】
また、上記実施の形態では、検知装置に2つのセキュリティゲート10が設けられている場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、セキュリティゲート10が1つのみ設けられている形態としてもよいし、セキュリティゲート10が3つ以上設けられている形態としてもよい。
【0075】
また、上記実施の形態では、励磁コイル11の形状を矩形状とした場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、励磁コイル11の形状を、図7に示すように、平行四辺形とする形態としてもよい。この場合、タグが水平に移動しても移動中に上辺、下辺に近くなるため、タグの検知が行い易くなる。
【0076】
また、上記実施の形態では、第1波形信号の信号レベルが予め定められた閾値以上となったか否かを判定することにより、バックグランドノイズが変化して第2波形信号を検知するべきタイミングが到来したことを自動的に検知する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、周辺機器の配置状態や稼働状態等が変化する等してバックグランドノイズが変化したと考えられる場合にユーザによって予め定められた指示操作を行うものとしておき、当該指示操作がユーザによって行われたことを検知することにより、第2波形信号を検知するべきタイミングが到来したことを検知する形態としてもよい。
【0077】
その他、上記実施の形態で説明した検知装置の構成(図1〜図2参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要な部分を削除したり、新たな部分を追加したりしてもよいことは言うまでもない。
【0078】
さらに、上記実施の形態で説明した各種プログラムの処理の流れ(図4,図5参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0079】
10 セキュリティゲート
11 励磁コイル
12,13 検知コイル
14 支持台
15 励磁電流供給部
18 人感センサ
20 制御部
21 信号処理部
22 コントローラ
22A CPU
22B ROM
22C RAM
22D 記憶部
30 警告灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電された状態で検知対象とする領域に交番磁界を発生させる磁界発生コイルと、
前記磁界発生コイルによって発生された交番磁界に応じた電流が誘導される電流誘導コイルと、
前記検知対象とする領域に移動体が通過することを検出する検出手段と、
前記検出手段によって前記移動体が通過することが検出された場合に前記磁界発生コイルに通電するように制御する制御手段と、
前記電流誘導コイルに誘導された電流に基づいて、前記検知対象とする領域を通過する磁性体を、当該磁性体の磁化反転による磁場の変化を検知することにより検知する検知手段と、
を備えた検知装置。
【請求項2】
前記検知対象とする領域を前記移動体が通過していない状態において前記磁界発生コイルに通電することにより前記電流誘導コイルに誘導された電流を示す第1情報を取得する取得手段をさらに備え、
前記検知手段は、前記検出手段によって前記移動体が通過することが検出された場合に前記電流誘導コイルに誘導された電流を示す第2情報から前記取得手段によって取得された前記第1情報を減算することにより得られた情報に基づいて、前記検知対象とする領域を通過する磁性体を検知する
請求項1記載の検知装置。
【請求項3】
前記電流誘導コイルは、稼働された状態で前記交番磁界に応じた電流が誘導されるものであり、
前記制御手段は、前記電流誘導コイルを常時稼働するように制御すると共に、前記磁界発生コイルに、前記検出手段によって前記移動体が通過することが検出された場合、および前記検知対象とする領域を前記移動体が通過していない状態で、かつ前記第1情報を取得するタイミングとして予め定められたタイミングが到来した場合に通電するように制御し、
前記取得手段は、前記磁界発生コイルに通電されていない状態で前記電流誘導コイルに誘導された電流を示す第3情報を取得すると共に、前記検知対象とする領域を前記移動体が通過していない状態で、かつ前記予め定められたタイミングが到来した場合に前記第1情報を取得した後、当該第1情報から前記第3情報を減算することによって第4情報を取得し、
前記検知手段は、前記第2情報から前記第4情報を減算すると共に、当該第2情報を得る際の前記制御手段の制御によって前記磁界発生コイルに通電される直前に前記電流誘導コイルに誘導された電流を示す第5情報を減算することによって得られた情報に基づいて、前記検知対象とする領域を通過する磁性体を検知する
請求項2記載の検知装置。
【請求項4】
前記予め定められたタイミングは、前記電流誘導コイルに誘導された電流が予め定められた閾値以上に変化したタイミングである
請求項3記載の検知装置。
【請求項5】
前記第1情報および前記第2情報は、予め定められた期間毎の移動平均として得られる情報である
請求項2から請求項4の何れか1項記載の検知装置。
【請求項6】
コンピュータを、
検知対象とする領域に移動体が通過することを検出する検出手段によって前記移動体が通過することが検出された場合に、通電された状態で前記検知対象とする領域に交番磁界を発生させる磁界発生コイルに通電するように制御する制御手段と、
前記磁界発生コイルによって発生された交番磁界に応じた電流が誘導される電流誘導コイルに誘導された電流に基づいて、前記検知対象とする領域を通過する磁性体を、当該磁性体の磁化反転による磁場の変化を検知することにより検知する検知手段と、
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−52927(P2012−52927A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196160(P2010−196160)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】