説明

極低温ケーブルの終端接続部

【課題】冷媒槽の液面を制御する。
【解決手段】ケーブルコアを液体冷媒と共に収容する断熱管12を備えた極低温ケーブル10の終端接続部1であって、液体冷媒の液体冷媒層と気体冷媒層とが形成される冷媒槽21と、極低温ケーブルに接続されて常温部まで引き出される引出し導体31と、引出し導体に設けられた絶縁部材41と、冷媒槽に液体冷媒を供給する第一の循環冷却設備80と、冷媒槽内の液面位置Sを冷却する補助冷却機構60と、補助冷却機構に接続された第二の循環冷却設備70とを備え、液面高さに応じて、第一の循環冷却設備80のリザーバタンク85を加熱するヒータ133の加熱と停止とを切り替えて冷媒槽内の液面高さを目標の範囲内に制御する構成となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力を送電するための極低温ケーブルの終端接続部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超電導ケーブルシステムは超電導ケーブル冷却の為、リザーバタンク、ポンプ、冷凍機を備える。また、超電導ケーブルシステムは超電導ケーブル部と超電導終端接続部に分けられる。超電導ケーブル部は超電導ケーブルを冷却し通電する。この構造は超電導ケーブルを収納し液体冷媒を保持する為の冷媒槽と冷媒槽への熱侵入を低減させる為の真空層からなる。液体冷媒は超電導終端接続部に付随するリザーバタンク、ポンプ、冷凍機により供給、調整される。
【0003】
終端接続部は、極低温(液体窒素を冷媒とする場合、大気圧で−196℃)に維持された超電導ケーブルに電気的に接続されると共に常温環境まで引き出された引き出し導体と、超電導ケーブルの断熱管に連通して冷媒で満たされる冷媒槽と、冷媒槽の外部に引き出された引き出し導体を収容すると共に常温層を形成する碍管と備えている。
冷媒槽内には液体冷媒層と気体冷媒層とが形成されており、引き出し導体は、液体冷媒層から気体冷媒層を通過して碍管内の常温層まで引き出されている。
そして、引き出し導体の周囲には、エチレンプロピレンゴム若しくはエポキシなどからなるストレスコーンやコンデンサコーンからなる絶縁構造体が形成されている。
碍管内には、絶縁油などの絶縁流体が充填され、冷媒槽と碍管の間には気体冷媒が浸入しないようにシールを配置して気密に保持している。
【0004】
ところで、引き出し導体に施される絶縁構造体が、例えば、コンデンサコーン方式のブッシングの場合、内部に金属箔を挿入し電圧を分担することで絶縁に耐える設計の為、引き出し導体の通電時には当該金属箔の端部では電界ストレスが集中する。
一方、冷媒槽内では、窒素等の絶縁物質に於いて液体と気体では誘電率が大きく異なる為、その液体と気体の境界では耐電圧ストレスが低下する。
また、一般的に気体(SF6等の絶縁ガスは除く)の耐電圧ストレスは低い為、ブッシング中の金属箔端部の周囲は耐電圧ストレスの高い液体冷媒(例えば液体窒素)や絶縁油である必要がある。このため、冷媒槽内の液面位置はブッシング中の液面側の複数の金属箔の内で最も上位に位置する金属箔の先端部よりも十分に高い位置に維持されることが要求されていた。
【0005】
しかしながら、冷媒槽内の気体冷媒層は、引き出し導体を通じて常温層と隣接することから、熱侵入を受け易く、液体冷媒層と気体冷媒層の界面間での熱交換もある上、圧力変化に伴う気化と凝集といった状態変化を断続的に繰り返す為、液面位置を一定にすることが困難である。以上より従来の終端接続部は、引き出し導体及びその周囲に形成された絶縁構造物と冷媒槽の内壁との隙間を極力小さくして、気体冷媒層の容積を低減することで熱交換による体積変化量を少なくし、液面位置の変化を低減することが提案されていた(例えば、特許文献1参照)。
また、他の従来技術として、非循環型の冷却システムでは、(例えば限流器等)液面を管理する方法として、内側から、冷媒槽、二次冷媒槽、真空断熱層を有する三重構造を有する冷媒槽が用いられることもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−117724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の終端装置では、気体冷媒層の容積を低減するために、引き出し導体及びその周囲に形成された絶縁構造物と冷媒槽の内壁との隙間を極力小さくすることから、引き出し導体と冷媒層の内壁面との間の絶縁破壊の発生が生じやすくなるという問題があった。
【0008】
超電導ケーブルの冷却システムでは充分な絶縁性能が求められる。超電導ケーブルの冷却システムはリザーバタンク、ポンプ、冷凍機を備えたシステムであるが、コンデンサコーン方式のブッシングがあるガス層の圧力と液面高を維持する事が難しい。ガス層の圧力は必要な絶縁能力を得る為に必要な下限がある。冷媒圧力上昇に伴い冷媒温度も上昇し、一方で冷媒圧力が大気圧近辺の場合、ケーブル中で偶発的に発生した気泡が残存することで電気的な弱点になる(即ち、気泡が発生しない圧力以上である必要がある)。両者を満足する条件として冷媒圧力は0.2 MPaG近辺が最適である。また上限は容器の設計圧力である。一方、液面高はブッシングの性能を維持する為の下限(例えば、前述したブッシング中の液面側の金属箔先端部よりも十分に高い位置)と充分な熱勾配を得る為の上限がある。従来のシステムでは日射や通電等に伴うジュール熱の影響が非常に大きい為、システムの管理のみで追随する事が困難であった。
【0009】
従来のシステムに於ける圧力及び冷媒液面位置の変化と制御方法を例に挙げる。従来のシステムではガス層の圧力が設定上限値に達するとリザーバタンク内のヒータスイッチを切ることでリザーバタンク内の圧力を低減させて冷媒槽の液体冷媒をリザーバタンク側で回収し冷媒槽側の圧力を低下させる。また、圧力が設定下限値に達するとヒータスイッチを入れることでリザーバタンク内で液体冷媒を気化させ、圧力を上昇させてリザーバタンク内の液体冷媒を冷媒槽側に送り、冷媒槽側の圧力を上昇させる。
或いは、冷媒液面位置が設定上限値に達するとリザーバタンク内のヒータスイッチを切ることでリザーバタンク内の圧力を低減させて冷媒槽の液体冷媒をリザーバタンク側で回収し冷媒槽側の冷媒液面位置を低下させる。また、冷媒液面位置が設定下限値に達するとヒータスイッチを入れることでリザーバタンク内で液体冷媒を気化させ、圧力を上昇させてリザーバタンク内の液体冷媒を冷媒槽側に送り、冷媒槽側の冷媒液面位置を上昇させる。ここで設定上限値と設定下限値はヒータの入切に伴う圧力若しくは冷媒液面位置の変動を見越して設定している。いずれの場合もヒータの入切のみで圧力Pと冷媒液面位置Lの値が管理値内に入るように調整する。但し圧力Pと冷媒液面位置Lの関係は冷却システムの状態により異なる為、一対一対応できない。
【0010】
従来のシステムに於いて、日射や通電等による短時間内でジュール熱の影響が大きい時の制御方法を例に挙げる。リザーバタンク内のヒータスイッチの入切のみで圧力や液面位置を制御した時の挙動を図7〜図10に示す。図7の例では、冷媒槽内の圧力について第1設定上限値P1と第1設定下限値P2とを定め、第1設定上限値P1まで圧力の上昇が検出されると、ヒータのスイッチをOFFし、第1設定下限値P2まで圧力の低下が検出されると、ヒータのスイッチをONにする制御が行われる。
また、図9の例では、冷媒槽内の液面高さについて第1設定上限値H1と第1設定下限値H2とを定め、第1設定上限値H1まで液面の上昇が検出されると、ヒータのスイッチをOFFし、第1設定下限値H2まで液面の低下が検出されると、ヒータのスイッチをONにする制御が行われる。
しかし、熱侵入に伴う圧力や液面位置変化が非常に大きくヒータの入切だけでは冷媒液面位置を十分に制御することができない。従って、これに対処するために、図8及び図10に示す制御が行われる。図8に示す例では、第1設定上限値P1よりもさらに高い第2設定上限値P3と、第1設定下限値P2よりもさらに低い第2設定下限値P4とを新たに定め、第1設定上限値P1でヒータのスイッチをOFFした後にさらに第2設定上限値P3まで圧力の上昇が検出されると、冷媒槽内の気体冷媒を外部に放出する制御を行い、また、第1設定下限値P2でヒータのスイッチをONした後にさらに第2設定下限値P4まで圧力の低下が検出されると、冷媒槽内へ液体冷媒を補充する制御が行われる。
また、図10に示す例では、第1設定上限値H1よりもさらに高い第2設定上限値H3と、第1設定下限値H2よりもさらに低い第2設定下限値H4とを新たに定め、第1設定上限値H1でヒータのスイッチをOFFした後にさらに第2設定上限値H3まで液面の上昇が検出されると、冷媒槽内の気体冷媒を外部に放出する制御を行い、また、第1設定下限値H2でヒータのスイッチをONした後にさらに第2設定下限値H4まで液面の低下が検出されると、冷媒槽内へ液体冷媒を補充する制御が行われる。
これにより、日射や通電等による短時間内でジュール熱の影響が大きい場合の液面位置維持を図っている。
しかしながら、かかる方法では、冷媒槽に、ヒータや気体冷媒層のガス放出のための設備、さらには、冷媒を補充するための設備が必須となるという問題があった。
【0011】
また、必要な場合は、従来の冷却システムでは冷媒槽の上部に、気体冷媒層の圧力を調整する圧力調整機構が設けられていた。この圧力調整機構は、真空層を備えた二重断熱構造が施された排出管と、冷媒槽内が所定の圧力に達すると弁が開いて気体冷媒を大気中に放出する定圧弁とからなり、この圧力調整機構によっても、冷媒槽内の圧力調節が行われていた。
しかし、圧力調整機構は、冷媒槽内の圧力上昇時に冷媒を大気中に放出する構造のため、冷媒槽の冷媒の減少を生じさせる。このため、圧力調整機構によって冷媒槽内の気体冷媒層の圧力の上昇を回避しようとすると、冷媒槽内の冷媒の損失が激しくなるという問題があった。
【0012】
また、三重構造の冷媒槽を用いる先行技術は、その主な目的が冷媒槽から冷媒の蒸発を防止することにあり、そのため、二次冷媒槽の液面位置が可変の構造であり、二次冷媒槽の液面位置の変化に伴い冷媒槽内のガス冷媒の冷却度合いが変化して、冷媒槽側の液面位置の制御には不向きという欠点があった。
本発明は、冷媒の温度変動が大きい場合にもヒータの入切で冷媒液面位置の管理が可能、さらに、冷媒の強制放出や液体冷媒の補充を必須としない終端接続部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の発明は、ケーブルコアと当該ケーブルコアを冷却する液体冷媒を収容する断熱管とを備えた極低温ケーブルの終端接続部であって、前記液体冷媒が貯留され、液体冷媒層と気体冷媒層とが形成される冷媒槽と、下端部が前記極低温ケーブルの超電導導体層と接続されると共に前記液体冷媒層に浸漬され、上端部が前記気体冷媒層を経て常温部に引き出される引出し導体と、前記引出し導体の周囲に設けられた絶縁部材と、前記冷媒槽に供給する液体冷媒を貯留するリザーバタンクを有する第一の循環冷却設備と、前記冷媒槽に設けられ、当該冷媒槽内の前記液体冷媒の液面位置における前記液体冷媒及び前記気体冷媒に対して熱交換を行うための熱交換面を有する補助冷却機構と、前記補助冷却機構に接続された第二の循環冷却設備とを備え、前記冷媒槽内の圧力又は液面高さに応じて、前記リザーバタンクを加熱するヒータの加熱と停止とを切り替えて前記冷媒槽内の液面高さが目標の範囲内に制御されることを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記補助冷却機構は、前記熱交換面を有する隔壁を介して前記冷媒槽内を冷却するための補助冷却用の液体冷媒の循環領域として、前記冷媒槽の周囲に形成された補助冷媒槽を備え、当該補助冷媒槽の上端と下端の間に前記冷媒槽の液体冷媒層の液面位置が配置されていることを特徴とする。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記補助冷媒槽は、液体冷媒で満たして気体冷媒層を有さないことを特徴とする。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記第二の循環冷却設備は、前記補助冷媒槽の上部からの補助冷却用の液体冷媒の供給と前記補助冷媒槽の下部からの補助冷却用の液体冷媒の回収とを輸送管を通じて行うことを特徴とする。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項2又は3記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記第二の循環冷却設備は、前記補助冷媒槽の下部からの補助冷却用の液体冷媒の供給と前記補助冷媒槽の上部からの補助冷却用の液体冷媒の回収とを輸送管を通じて行うことを特徴とする。
【0018】
請求項6記載の発明は、請求項2から5のいずれか一項に記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記補助冷媒槽を上下に並んだ複数の区画に分割し、それぞれの区画に対して補助冷却用の液体冷媒の供給と補助冷却用の液体冷媒の回収とを行うことを特徴とする。
【0019】
請求項7記載の発明は、請求項2から4のいずれか一項に記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記補助冷媒槽は、前記冷媒槽の冷媒貯留領域の周囲に形成された補助冷媒槽からなり、当該補助冷媒槽は前記冷媒槽の液体冷媒層の液面位置の下方から上方に渡って形成されていることを特徴とする。
【0020】
請求項8記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記第二の循環冷却設備は、補助冷却用の液体冷媒を貯留するリザーバタンクと、補助冷却用の液体冷媒を循環させる循環ポンプと補助冷却用の液体冷媒を冷却する冷凍機とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、終端接続部が、冷媒槽内の液体冷媒の液面位置における液体冷媒及び気体冷媒に対して熱交換を行うための熱交換面を有する補助冷却機構と、当該補助冷却機構に接続された第二の循環冷却設備とを備えている。
このため、冷媒槽内で液体冷媒と気体冷媒との熱交換を行う液面を直接的に冷却することができ、冷媒槽内の気体冷媒層に熱侵入を受けても一定の温度幅に保つことが可能となる。それによりヒータの電源を切入で気体冷媒層の圧力上昇及び下降を抑止することができ、冷媒槽内の液体冷媒の液面の高さを制御することが可能である。
また、従来技術のように、引き出し導体と冷媒槽の内壁面とを近接させる必要がなく、これらの間の絶縁破壊の発生も効果的に回避することが可能である。
さらに、冷媒槽に、気体冷媒放出設備又は冷媒補充設備を常時運転においては必須とすることなく、冷媒槽内の液体冷媒の液面の高さを制御することが可能である。
また、補助冷却機構を、冷媒槽内の液体冷媒の液面位置における液体冷媒及び気体冷媒に対して熱交換を行うための熱交換面を有する構造とし、また、補助冷却槽に気体層を有さず、液体冷媒のみで満たされる構成とした場合には、従来のような二次冷却槽の液面管理を不要とし、冷却槽の液面管理に有利な構成とすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第一の実施形態に係る超電導ケーブルの終端接続部の概略構成を示す図である。
【図2】終端接続部が施工される超電導ケーブルの一例を示す図である。
【図3】コンデンサコーンの断面構造を模式的に示した説明図である。
【図4】第二の実施形態に係る超電導ケーブルの終端接続部の概略構成を示す図である。
【図5】第三の実施形態である超電導ケーブルの終端接続部の概略構成を示す図である。
【図6】終端接続部の冷媒槽の内側にバッフル板を装備する場合の装備位置を図示した説明図である。
【図7】冷媒槽の内部圧力をヒータのみで制御する例を示す線図である。
【図8】冷媒槽の内部圧力をヒータと気体冷媒の外部放出とにより制御する例を示す線図である。
【図9】冷媒槽の液面高さをヒータのみで制御する例を示す線図である。
【図10】冷媒槽の液面高さをヒータと気体冷媒の外部放出とにより制御する例を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第一の実施形態)
以下、本発明の第一の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は第一の実施形態である極低温ケーブルとしての超電導ケーブル10の終端接続部1の概略構成を示す図、図2は終端接続部1が施工される超電導ケーブルの一例を示す図である。
【0024】
(超電導ケーブル)
図2に示す超電導ケーブル10は、断熱管12内に一心のケーブルコア11が収納された単心型の超電導ケーブルである。ケーブルコア11は、フォーマ111、超電導導体層112、電気絶縁層113、超電導シールド層114、常電導シールド層115、保護層116等により構成される。
【0025】
フォーマ111は、ケーブルコア11を形成するための巻心であり、例えば銅線等の常電導線材を撚り合わせて構成される。フォーマ111には、短絡事故時に超電導導体層112に流れる事故電流が分流される。
【0026】
超電導導体層112は、フォーマ111の上に複数条の超電導線材を螺旋状に巻回することにより形成される。図2では、超電導導体層112を4層の積層構造としている。超電導導体層112には、定常運転時に送電電流が流れる。
超電導導体層112を構成する超電導線材は、例えば、テープ状の基板上に中間層、超電導層、保護層等が順に形成された積層構造を有している。超電導層を構成する超電導体には、液体窒素温度以上で超電導特性を示すRE系超電導体(RE:希土類元素)、例えば(組成式) YBa2Cu37-δで表されるY系超電導体を適用できる。また、金属マト
リクス中に超電導体が形成されているテープ状の超電導線材でもよい。超電導体には、ビスマス系超電導体、例えば化学式Bi2Sr2CaCu28+δ(Bi2212), Bi2Sr2Ca2Cu310+δ(Bi2223)を適用できる。なお、化学式中のδは酸素不定比量を示す。
【0027】
電気絶縁層113は、例えば絶縁紙、絶縁紙とポリプロピレンフィルムを接合した半合成紙、高分子不織布テープなどで構成され、超電導導体層112の上に巻回することにより形成される。
【0028】
超電導シールド層114は、電気絶縁層113の上に複数条の超電導線材を螺旋状に巻回することにより形成される。図2では、超電導シールド層114を2層の積層構造としている。超電導シールド層114には、定常運転時に電磁誘導によって導体電流とほぼ同じ電流が逆位相で流れる。超電導シールド層114を構成する超電導線材には、超電導導体層112と同様のものを適用できる。
【0029】
常電導シールド層115は、超電導シールド層114の上に銅線あるいは銅編組線に代表される常電導導体を巻回することにより形成される。常電導シールド層115には、短絡事故時に超電導シールド層114に流れる事故電流が分流される。
保護層116は、例えば絶縁紙、高分子不織布などで構成され、常電導シールド層115の上に巻回することにより形成される。
【0030】
断熱管12は、ケーブルコア11を収容するとともに冷媒(例えば液体窒素)が充填される内管121と、内管121の外周を覆うように配設された外管122からなる二重環構造を有している。
内管121及び外管122は、例えばステンレス製のコルゲート管である。内管121と外管122の間には、例えばアルミを蒸着したポリエチレンフィルムの積層体で構成された多層断熱層123が介在され、真空状態に保持される(いわゆるスーパーインシュレーション)。また、外管122の外周はポリエチレンなどの防食層124で被覆されている。
【0031】
(終端接続部の概要)
図1に示すように、終端接続部1は、低温容器20に超電導ケーブル10の端部が所定の状態で収容され、引き出し導体31を介して電流が実系統側に引き出される構成となっている。
終端接続部1では、超電導ケーブル10の超電導導体層112と引き出し導体31とが、導体用接続端子としての導体用可動接続端子50を介して電気的に接続されている。
【0032】
(低温容器)
低温容器20は、SUS(ステンレス鋼)製であって、内側の冷媒槽21と、外側の真空槽22からなる二重構造を有しており、超電導ケーブル10の端部が接続されている。上記真空槽22は、超電導ケーブル10の断熱管12の外管122が溶接接続されており、冷媒槽21は内管121が溶接接続されている。そして、中空なる冷媒槽21と真空槽22の間の領域と、断熱管12の内管121と外管122の間の領域とは、それぞれ真空吸引され、断熱構造が形成されている。
【0033】
また、冷媒槽21の内部領域と内管121の内部領域とは連通し、これらの領域には、液体冷媒(例えば液体窒素)が充填されている。この液体冷媒は、後述する第一の循環冷却設備80によって、内管121から冷媒槽21にかけて循環されている。
この第一の循環冷却設備80は、液体冷媒を貯留するためのリザーバタンク85と液体冷媒を循環させる循環ポンプ86と液体冷媒を冷却する冷凍機87からなる冷却装置81と、冷媒槽21及び内管121と冷却装置81との間において液体冷媒の循環経路を形成する輸送管82,83と、輸送管82に設けられ、液体冷媒の流量を自在に制御する流量調整機構としての流量制御弁84とを備えている。
輸送管82、83は、いずれも、真空層を備えた二重管構造により断熱構造が施されている。そして、輸送管82は、断熱構造を備えるバヨネットコネクタ88を介して冷媒槽21に接続され、冷却装置81から冷媒槽21に液体冷媒を供給する。また、輸送管83は、断熱構造を備えるバヨネットコネクタ89を介して超電導ケーブル10の内管121に接続されており、内管121から冷却装置81に向けて液体冷媒を回収する。
これにより、液体冷媒は、終端接続部1の外部に設けられた冷凍機87によって所定の極低温まで冷却が行われており、循環が行われることより、終端接続部1及び超電導ケーブル10内の液体冷媒の排熱が行われている。
【0034】
また、低温容器20は、鉛直上方に立ち上げられた円筒状に形成されており、その上部には、低温容器20と同心で円筒状の碍子管33が連設され、さらに、碍子管33の上端部には実系統側に接続される上部金具32が取り付けられている。
そして、低温容器20の冷媒槽21内には、前述したように、液体冷媒が充填されており、液体冷媒の液面Sの下側に液体窒素からなる液体冷媒層が形成され、液面Sの上側に気体窒素からなる気体冷媒層が形成されている。
【0035】
冷媒槽21と碍子管33の内部であってこれらの中心位置には、導体用可動接続端子50から上部金具32までを電気的に接続する引き出し導体31が配設されている。この引き出し導体31は、全体が良導体、例えば銅により形成された中実又は中空の丸棒体である。
そして、当該引き出し導体31には、当該引き出し導体31を囲繞するように絶縁部材としてのコンデンサコーン方式のブッシング41が装備されている。ブッシング41は、外周に固定装備された取り付け用のフランジ部411により、低温容器20の上端部に取り付けられている。そして、このブッシング41の取り付け用フランジ部411は、冷媒槽21を密閉するようシール加工が施されており、これにより、冷媒槽21と碍子管33のそれぞれの内部領域を分離し、液体や気体の流通を阻止している。
上記碍子管33の内部領域には、絶縁油やSFガス等からなる流体絶縁体が充填されている。なお、碍子管33内の流体絶縁体は常温であり、当該碍子管33は、常温部に相当する。
【0036】
(コンデンサコーン)
図3はブッシング41の断面構造を模式的に示した説明図である。図1及び図3に示すように、ブッシング41は、引き出し導体31を挿入するステンレス製の中空パイプ412と、中空パイプ412の外周面上に形成された絶縁材料からなるブッシング絶縁体414と、引き出し導体31と中空パイプ412との連結部に介挿された絶縁材料からなるカラー413と、ブッシング絶縁体414の外周面上であって上下方向における中間位置設けられた取り付け用フランジ部411とを備えている。
【0037】
かかるブッシング絶縁体414は、鉛直方向について下端部414aと中間部414bと上端部414cとから構成されており、中間部414bは鉛直方向について均一の外径をなし、下端部414aと上端部414cは下方又は上方に向かうほど縮径しており、ブッシング絶縁体414の全体は略紡錘形状に形成されている。
【0038】
そして、ブッシング絶縁体414の下端部414aと上端部414cには、鉛直方向について一定の幅のコンデンサ電極を形成する金属箔415が、中空パイプ412を中心とする半径方向について一定の間隔で階段的かつ同心状となるように絶縁体414中に埋め込まれている。また、最外層となる金属箔415は、ブッシング絶縁体414の中間部414bの全域に渡って形成されており、当該最外層の金属箔415については図示しないアース線が取り付けられて、接地されている。
【0039】
また、ブッシング絶縁体414としては、エポキシ樹脂、EPR(エチレンプロピレンゴム)、ゴム、FRP(fiber reinforced plastics)などが用いられている。また、金属箔415は、例えばアルミ箔或いは銅線、銅編素線、金属線、金属編組線等から形成される。
かかる構造により、各金属箔415は、ブッシング絶縁体414中において高圧側(中心部側)から低圧側(外周側)に向かってそれぞれ等しい容量のコンデンサが直列接続された形になるために、ブッシング絶縁体414の界面に沿う電界はほぼ均一に整えられる。さらに、ブッシング絶縁体414の最外層の金属箔415は接地されているので、ブッシング絶縁体414の外径が均一な中間部の表面電界は接地電位とすることができる。
【0040】
(補助冷却機構)
ところで、上記ブッシング41は、その下端部から上端部にかけて、冷媒槽21の液体冷媒層から気体冷媒層を介して碍子管33内の常温部にまで延在している。
そして、ブッシング41の下端部414aには金属箔415が同心状に埋め込まれており、金属箔415の下端部はその構造上、電界強度が高くなる。また、冷媒槽21の冷媒の液面Sは、液体と気体の誘電率の違いにより電界が集中する。
このため、液面と金属箔415の下端部との間で絶縁破壊が発生しないように、冷媒槽21内の液体冷媒の液面Sは、金属箔415の下端部が存在する領域(ブッシング41の下端部414aの最上部)からある程度上方に離隔した位置を下限位置として、これより下降しないように管理する必要がある。
冷媒槽21内では、気体冷媒層が熱変化を生じやすく、また、常温部にも近いことから温度上昇が生じやすく、これにより液面での熱交換によって冷媒の気化が進み、気体冷媒層の圧力が上昇することが、冷媒槽21内における液体冷媒の液面の下降を生じる大きな要因となっている。
【0041】
このため、適正な液面管理を行うために、冷媒槽21には補助冷却機構60が設けられている。
補助冷却機構60は、真空槽22の内側であって、冷媒槽21内の液体冷媒及び気体冷媒に対して熱交換面61aを有する隔壁61を介して設けられた補助冷却用の液体冷媒の循環領域である補助冷媒槽62により構成される。
補助冷媒槽62は、冷媒槽21の周囲を囲繞した円筒状であって、冷媒槽21とは冷媒の流通が生じないように物理的に分離されている。そして、冷媒槽21内の液体冷媒とは別系統で補助冷却用の液体冷媒の循環が行われてもよい。補助冷却用の液体冷媒は、冷媒槽21の液体冷媒と同じ液体窒素を使用するが、別系統である場合は、液体窒素よりも低温となる他の液体或いは気体冷媒を使用しても良い。
【0042】
外部から、系全体への熱侵入において、定常時の熱侵入をW1、異常時(例えば、過電流発生時等)又は定常時以外の熱侵入(夏季日中等)をW2、補助冷却機構を通して冷媒槽から排出される熱量の単位時間あたりの許容最大値をWmaxとすると、W2<Wmax(但し、W1<W2)を満たす補助冷却機構であれば良い。
【0043】
隔壁61は、SUS(ステンレス鋼)製の冷媒槽21の内壁をそのまま利用しても良いが、補助冷媒槽62の部分だけ、より熱伝導性の高い材料で形成しても良いが、いずれにしても、冷媒槽21内の液体冷媒及び気体冷媒を全周について取り囲むように形成され、補助冷媒槽62内の液体冷媒は一枚の隔壁61を介して冷媒槽21内の液体及び気体の冷媒を冷却するようになっている。
即ち、隔壁61の内面側が、補助冷却機構60内の補助冷却用の液体冷媒と冷媒槽21内の液体冷媒及び気体冷媒との熱交換面61aとなる。そして、補助冷媒槽62及びその隔壁61は、上下方向について、冷媒槽21内の液体冷媒の液面Sを含む範囲で形成される。即ち、ブッシング41の複数の金属箔415の内で下端部が最上位置となる当該金属箔415の下端部に対して絶縁破壊を生じない距離だけ上方となる位置が液体冷媒の液面の下側限界位置であるため、この下側限界位置を含む範囲で形成される。
【0044】
(第二の循環冷却設備)
また、上記補助冷却機構60には、補助冷媒槽62内の液体冷媒を循環冷却する第二の循環冷却設備70が併設されている。
この第二の循環冷却設備70は、補助冷却用の液体冷媒を貯留するリザーバタンク75と、補助冷却用の液体冷媒を循環させる循環ポンプ76と補助冷却用の液体冷媒を冷却する冷凍機77からなる冷却装置71と、補助冷媒槽62と冷却装置71との間において液体冷媒の循環経路を形成する輸送管72,73と、輸送管72に設けられ、液体冷媒の流量を自在に制御する流量調整機構としての流量制御弁74とを備えている。
【0045】
輸送管72、73は、いずれも、真空層を備えた二重管構造により断熱構造が施されており、低温容器20の真空槽22を貫通して、その内側に設けられた補助冷媒槽62に接続されている。また、輸送管72、73は断熱構造を備えるバヨネットコネクタ78,79を介して真空槽22の外壁と接続され、真空槽22との接続部における熱進入が防止されている。
輸送管72は冷却装置71から補助冷媒槽62に液体冷媒を供給するための供給管であり、補助冷媒槽62の上端部近傍に設けられた開口に連通している。また、輸送管73は補助冷媒槽62から冷却装置71に液体冷媒を回収するための回収管であり、補助冷媒槽62の下端部近傍に設けられた開口に連通している。
これにより、冷却装置71で冷却された液体冷媒は補助冷媒槽62の上部に供給され、補助冷媒槽62内の液体冷媒は補助冷媒槽62の下部から回収される。補助冷媒槽62内では、昇温した液体冷媒は上部に、低温の液体冷媒は下部に滞留するので、昇温した液体冷媒がすぐに冷却され、補助冷媒槽62内の液体冷媒の温度を上下に渡って均一化することが可能となる。これにより、補助冷媒槽62は、冷媒槽21内の液面位置における液体冷媒及び気体冷媒を効果的に冷却することが可能である。
なお、液体冷媒は補助冷媒槽62の上部から供給して下部から回収することがより望ましいが、液体冷媒は補助冷媒槽62の下部から供給して上部から回収しても良い。この場合、補助冷媒槽62の上部の温度の上がった液体冷媒を効果的に回収することが可能である(第二、第三の実施形態も同様である)。
【0046】
また、この第二の循環冷却設備70では、リザーバタンク75内で液体冷媒が気化した場合でも循環ポンプ76側には冷媒ガスが移動せずに液体冷媒のみが循環ポンプ76を介して補助冷媒槽62に供給されるようになっている。また、これにより、補助冷媒槽62の内部は、液体冷媒で満たされた状態となり、内部に気体冷媒層が発生せず、その上下全幅に渡って冷媒槽21を冷却することが可能となっている。
【0047】
流量制御弁74は手動操作により開度が調節可能な弁であり、開度調節によって冷却装置71から補助冷媒槽62への液体冷媒の流量を制御することが可能である。
【0048】
(終端接続部の作用)
以上の構成からなる終端接続部1について、特に、補助冷却機構60及び循環冷却設備70による作用を説明する。
超電導ケーブル10及び終端接続部1の冷媒槽21内では、図示しない循環冷却装置により液体冷媒が循環され、超電導ケーブル10のケーブルコア11の冷却が行われる。
そして、冷媒槽21内では、上方からの熱侵入などにより、気体冷媒が吸熱し、液体冷媒の液面では蒸発と凝縮を行い、気体冷媒層の圧力に応じて液面高さが変動を生じ得る状態となる。
【0049】
(圧力制御及び液面高さ制御)
また、冷媒槽21には、図1に示すように、内部の液体冷媒の液面高さを検出する液面検出手段としての液面センサ131(例えば、測距センサ)と、冷媒槽21の内部の気体層の圧力を検出する圧力検出手段としての圧力センサ132とが設けられ、第一の循環冷却設備80のリザーバタンク85には内部の冷媒を加熱するヒータ133が設けられている。
そして、図示しない制御装置により、冷媒槽21内の圧力を一定の範囲に維持する圧力制御と冷媒槽21内の液体冷媒の液面高さを一定の範囲に維持する液面高さ制御とが実行される。
【0050】
即ち、図7に示すように、冷媒槽21内の圧力について予め第1設定上限値P1と第1設定下限値P2とが定められ、圧力センサ132により第1設定上限値P1まで圧力の上昇が検出されると、ヒータ133のスイッチをOFFし、リザーバタンク85内の圧力を低減させて冷媒槽21の液体冷媒をリザーバタンク85側で回収し冷媒槽21側の圧力を低下させる。
また、圧力センサ132により第1設定下限値P2まで圧力の低下が検出されると、ヒータ133のスイッチをONにして、リザーバタンク85内で液体冷媒に気泡を発生させ、圧力を上昇させてリザーバタンク85内の液体冷媒を冷媒槽21側に送り、冷媒槽21側の圧力を上昇させる制御が行われる。
【0051】
また、図9に示すように、冷媒槽21内の液面高さについて予め第1設定上限値H1と第1設定下限値H2とが定められ、液面センサ131により第1設定上限値H1まで液面の上昇が検出されると、ヒータ133のスイッチをOFFし、リザーバタンク85内の圧力を低減させて冷媒槽21の液体冷媒をリザーバタンク85側で回収し冷媒槽21側の冷媒液面位置を低下させる。
また、液面センサ131により第1設定下限値H2まで液面の低下が検出されると、ヒータ133のスイッチをONにする制御が行われ、リザーバタンク85内で液体冷媒に気泡を発生させ、圧力を上昇させてリザーバタンク85内の液体冷媒を冷媒槽21側に送り、冷媒槽側の冷媒液面位置を上昇させる制御が行われる。
【0052】
なお、圧力制御及び液面高さ制御は、同時に実施され、例えば、圧力制御と液面高さ制御のいずれか一方がヒータ133をONにすべき状態が検出された場合にはヒータ133をONにし、圧力制御と液面高さ制御のいずれか一方がヒータ133をOFFにすべき状態が検出された場合にはヒータ133をOFFする制御を行い、相互の制御を並立させている。
【0053】
(第一の実施形態による技術的効果)
上記第一の実施形態における終端接続部1では、冷媒槽21内の液体冷媒の液面位置Sにおける液体冷媒及び気体冷媒に対して熱交換を行うための熱交換面61aを有する隔壁61を介して冷媒槽21を囲繞する円筒形の補助冷媒槽62を有する補助冷却機構60と、当該補助冷媒槽62内の液体冷媒を循環冷却させるための第二の循環冷却設備70とを備えている。さらに、循環冷却設備70の冷却装置71はリザーバタンク75と循環ポンプ76と冷凍機77とを備えている。
このため、冷媒槽21内で液体冷媒と気体冷媒との熱交換を行う液面を直接的に冷却することができ、冷媒槽21内の気体冷媒層に熱侵入を受けても一定の温度幅に保つことが可能となる。それにより、より効果的に気体冷媒層の圧力上昇及び下降を抑止することができ、冷媒槽21内の液体冷媒の液面Sの高さを制御することが可能である。
また、補助冷媒槽62及び第二の循環冷却設備70による冷媒槽21内の液体冷媒の液面Sの高さ維持により、ヒータ133の電源を切入で気体冷媒層の圧力上昇及び下降を抑止することができ、例えば、前述した図8や図10に示す段階的な上下限値を設定する圧力制御及び液面高さ制御を不要とし、冷媒槽21内の液体冷媒の液面の高さを適正に制御することが可能である。
【0054】
また、補助冷却機構60の循環冷却設備70は、輸送管72により補助冷媒槽62の上部から液体冷媒が供給され、輸送管73により補助冷媒槽62の下部から液体冷媒が回収されるので、補助冷媒槽62内の上部と下部との間の温度勾配を解消し、冷媒槽21に対する効果的な冷却を行うことが可能となる。
【0055】
また、断熱構造が施された排出管341と、排出管341の圧力が一定値を超えると気体冷媒を排出する定圧弁342とを備え、気体冷媒層の圧力を非定常的に調整する緊急用圧力調整機構34を冷媒槽21に設け、補助冷媒槽62の輸送管72には液体冷媒の流量を調整する流量制御弁74を設けたので、冷媒槽21内の気体冷媒層の圧力を一定の範囲内に維持すると共に、補助冷媒槽62に対する液体冷媒の流量調整により、気体冷媒層を一定の平衡温度に安定させることができ、ヒータ133の電源の切入を行うことにより冷媒槽21内の液面位置の調節を任意に行うことが可能となる。
【0056】
(第二の実施形態)
次に、本発明の第二の実施形態について図4に基づいて説明する。図4は第二の実施形態である終端接続部1Aの概略構成を示す。
なお、以下の実施形態である終端接続部1Aにおいて、前述した終端接続部1と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明は省略し、終端接続部1Aについて終端接続部1と異なる点について専ら説明するものとする。
【0057】
上記終端接続部1Aの補助冷却機構60Aは、補助冷却用の液体冷媒の循環領域として、冷媒槽21内に螺旋状に形成された補助冷却管62Aを備える点が終端接続部1と異なっている。
即ち、この補助冷却管62Aは、上下に隙間なく巻回されることで略円筒状をなしており、冷媒槽21内の液体冷媒及び気体冷媒を囲繞するように配置されている。
補助冷却管62Aの上下方向における形成範囲は、前述した補助冷媒槽62と同一である。即ち、冷媒槽21内の液体冷媒の液面Sを含む範囲であり、ブッシング41の複数の金属箔415の液面側の端部の中で最上位置となる当該金属箔415の下端部に対して絶縁破壊を生じない距離だけ上方となる位置を含む範囲で形成される。
【0058】
また、この補助冷却管62Aは、SUS、銅或いはその他の熱伝導性の良い材料により形成されている。補助冷却管62Aの形成部位では、冷媒槽21の内壁は除去されており、補助冷却管62Aの螺旋状の状態での内側となる管壁面の半分が熱交換面を有する隔壁となっている。また、かかる構造のため、螺旋状の状態で互いに隣接する補助冷却管62Aの管壁同士には隙間が生じないように溶接加工などによりシールされる。
【0059】
また、第二の循環冷却設備70の輸送管72は、補助冷却管62Aの上端部に接続され、輸送管73は補助冷却管62Aの下端部に接続される。これにより、補助冷却管62Aには、その上端部から液体冷媒が供給され、下端部から液体冷媒が回収される。
【0060】
補助冷却管62Aを備えた終端接続部1Aの場合も、終端接続部1の場合と同様に、補助冷却管62Aに対して、リザーバタンク75、循環ポンプ76及び冷凍機77を備える第二の循環冷却設備70により一定の流量で液体冷媒の循環冷却が行われるので、冷媒槽21内で熱交換が行われている液面の液体冷媒及び気体冷媒に対して冷却を行うことができる。
また、螺旋状の補助冷却管62Aを備えることにより、補助冷却管62Aの内部に沿って冷媒を循環させることができるので、冷媒槽21内の液体冷媒及び気体冷媒に対して全周方向について効果的且つ均一に冷却することができ、効率的に冷却及び液面調節を行うことが可能である。
また、補助冷却管62A及び第二の循環冷却設備70による冷媒槽21内の液体冷媒の液面Sの高さ維持により、ヒータ133の電源を切入で気体冷媒層の圧力上昇及び下降を抑止することができ、例えば、前述した図8や図10に示す段階的な上下限値を設定する圧力制御及び液面高さ制御を不要とし、冷媒槽21内の液体冷媒の液面の高さを適正に制御することが可能である。
【0061】
(第三の実施形態)
次に、本発明の第三の実施形態について図5に基づいて説明する。図5は第三の実施形態である極低温ケーブルとしての超電導ケーブル10の終端接続部1Bの概略構成を示す図である。
なお、以下の実施形態である終端接続部1Bにおいて、前述した終端接続部1と同一の構成については同一の符号を伏して重複する説明は省略し、終端接続部1Bについて終端接続部1と異なる点について専ら説明するものとする。
【0062】
上記終端接続部1Bは、終端接続部1と同じ低温容器20、補助冷却機構60を備えており、低温容器20の冷媒槽21及び超電導ケーブル10の内管121に液体冷媒を循環させる第一の循環冷却設備80Bと、補助冷却機構60に液体冷媒を循環させる第二の循環冷却設備70Bとが、液体冷媒を貯留するリザーバタンク75Bを共用する点が終端接続部1と異なっている。
【0063】
第一の循環冷却設備80Bは、液体冷媒を貯留するためのリザーバタンク75Bと液体冷媒を循環させる循環ポンプ86と液体冷媒を冷却する冷凍機87からなる冷却装置81と、冷媒槽21及び内管121と冷却装置81との間において液体冷媒の循環経路を形成する輸送管82,83と、輸送管82に設けられ、液体冷媒の流量を自在に制御する流量調整機構としての流量制御弁84とを備えている。
輸送管82、83は、いずれも、真空層を備えた二重管構造により断熱構造が施されている。そして、輸送管82は、断熱構造を備えるバヨネットコネクタ88を介して冷媒槽21に接続され、冷却装置81から冷媒槽21に液体冷媒を供給する。また、輸送管83は、断熱構造を備えるバヨネットコネクタ89を介して超電導ケーブル10の内管121に接続されており、内管121から冷却装置81に向けて液体冷媒を回収する。
【0064】
第二の循環冷却設備70Bは、液体冷媒を貯留するためのリザーバタンク75Bと液体冷媒を循環させる循環ポンプ76Bと液体冷媒を冷却する冷凍機77Bからなる冷却装置71Bと、補助冷媒槽62と冷却装置71Bとの間において液体冷媒の循環経路を形成する輸送管72B,73Bと、輸送管72Bに設けられ、液体冷媒の流量を自在に制御する流量調整機構としての流量制御弁74Bとを備えている。
輸送管72B,73Bは、いずれも、真空層を備えた二重管構造により断熱構造が施されている。そして、輸送管72Bは、断熱構造を備えるバヨネットコネクタ78Bを介して補助冷媒槽62に接続され、冷却装置71Bから補助冷媒槽62に液体冷媒を供給する。また、輸送管73Bは、断熱構造を備えるバヨネットコネクタ79Bを介して補助冷媒槽62に接続されており、補助冷媒槽62から冷却装置71Bに向けて液体冷媒を回収する。
【0065】
上述のように、第一の循環冷却設備80Bの冷却装置81と第二の循環冷却設備70Bの冷却装置71Bとは、リザーバタンク75Bを共用するので同じ液体冷媒がそれぞれの経路を循環することとなる。
これにより、各循環冷却設備80B,70Bの構成が簡易化され、設置コスト、製造コストの低減を図ると共に熱侵入の低減を図ることが可能となる。
【0066】
また、輸送管72Bの流量制御弁74Bよりも下流側の部分と輸送管82の流量制御弁84よりも下流側の部分とが連結管91により連結されており、当該連結管91には流量制御弁92が装備されている。従って、冷却装置81と冷却装置71Bのいずれか一方に突発的なトラブルが発生し停止した場合でも、流量制御弁74B,84,92を適宜開閉操作することにより、冷却槽21と補助冷却槽62の双方に液体冷媒を供給することが可能となっている。
【0067】
また、リザーバタンク75Bには、内部の液体冷媒の加熱を行うヒータ133が装備されており、圧力調整機構34には冷媒槽21の内部圧力を検出する圧力センサ132が装備され、また、冷媒槽21には内部の液体冷媒の液面高さを検出する液面センサ131が装備されている。これにより、前述した図7及び図9に示す圧力制御と液面高さ制御が実行される。
【0068】
なお、終端接続部1Bも補助冷媒槽62に換えて、第二の実施形態で例示した螺旋状の補助冷却管62Aを備える構成としても良い。
【0069】
(その他)
以上、本発明者によってなされた発明を第1〜第3の実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0070】
例えば、超電導導体ケーブル10が単心型超電導ケーブルである場合を例示したが、三心のケーブルコアを一括して断熱管内に収納した三心一括型超電導ケーブルの終端部に施工する終端接続部においても適用できる。
【0071】
また、極低温ケーブルとして超電導ケーブル10を例示したが、極低温下で使用する他の極低温ケーブルについても、上記各実施形態を適用することが可能である。
また、各実施形態では、二次冷媒槽と冷媒槽を冷却するそれぞれの循環冷却システムを流れる冷媒の温度は、基本、同じであってよい。すなわち、二次冷却槽の冷媒の温度を、冷媒槽に対して相対的に低くして循環させる必要はない。基本、管理温度レベル以下であればよい。
【0072】
また、冷媒槽21には、その内部領域を上下に二分するバッフル板を装備しても良い。図6は前述した終端接続部1の冷媒槽21の内側にバッフル板を装備する場合の装備位置B1〜B3を図示した説明図である。
バッフル板はプラスチックその他の絶縁体からなる多孔質の平板であり、断熱性を備えている。
バッフル板は、その中心部を引き出し導体31及びブッシング41が貫通している。また、バッフル板とブッシング41の表面及びバッフル板と冷媒槽21の内壁との間は、いずれも僅かな隙間を設けることにより、バッフル板の上下間での断熱性が確保することができる。
このバッフル板の固定は、ブッシング41のフランジ部411や、上蓋から吊下する等の方法が採られる。
また、バッフル板の設置位置は、図6のB1のように、液面Sより上方に固定し、気体冷媒層を上下に二分する配置としても良い。また、図6のB2のように、ほぼ液面Sの高さに固定し、気体冷媒層と液体冷媒槽とを分離する配置としても良い。さらに、図6のB3のように、液面Sより下方に固定し、液体冷媒層を上下に二分する配置としても良い。バッフル板は多孔構造であるため比重が小さく、このように液面Sより下方に固定するには、浮力が生じ得るので、フランジ部411や上蓋から吊下支持する場合には、浮かないように部材で支持することが望ましい。
また、バッフル板は、上下方向について補助冷媒槽62の上端から下端までの範囲内に設置する必要がある。
バッフル板は多孔質であるため高い断熱性を有するため、上述のように固定することでバッフル板の上側の侵入熱が下側の領域に移動をすることを抑止し、高い保冷効果を得ることが可能である。
なお、バッフル板は通気性と通水性は有していないので、圧力センサ132による冷媒槽21の気体層の圧力検出に対する影響が生じないように、上下に貫通する微小の通気孔が形性されていてもよい。
また、バッフル板をB1又はB2に配置する場合には、冷媒槽21の内部の液体冷媒の液面高さを検出するために、浮きの高さを計測する液面計を利用することも可能である。この場合、液面計の浮きの上下動を妨げないように、バッフル板には浮きを上下動させるための微小な貫通穴が形成される。
また、バッフル板を終端接続部1に設ける場合を例示したが、終端接続部1A,1Bに設けても良い。
【0073】
また、補助冷却機構60の円筒状の補助冷媒槽62は、その内部を水平な分割面により複数(例えば、二乃至三)に上下方向に区分しても良い。例えば、三つに区分する場合には、補助冷媒槽62は上段と中段と下段の三つに領域に区画され、各々の内部は液体冷媒槽の流通ができないように水密性をもって仕切るようにする。そして、上中下の三つの区画のそれぞれに、区画内に液体冷媒を供給する輸送管72と区画内の液体冷媒を回収する輸送管73とを個別に接続し、区画毎に個別に液体冷媒の循環を行うことを可能とする。
これにより、冷媒槽21内の液体冷媒の液面Sの高さが、隔壁61の熱交換面61aにおける上中下のそれぞれの区画に対応する三つの領域のいずれの領域内であるかに応じて、対応する区画について、液体冷媒を供給し循環を行うことで、局所的に効率的な冷却を行うことが可能である。
また、冷媒槽21の内部圧力の上昇の度合いや液面の低下の度合いが激しい場合には、全ての区画に対して液体冷媒の循環を行い、冷却能力を高めることも可能である。
なお、各区画の輸送管72に設けられる流量制御弁74を電気信号による制御流量や開閉制御が可能な電磁弁とし、液面Sの検出に応じて対応する区画に対して液体冷媒の循環を行うよう自動制御を行う構成としても良い。また、その場合も、圧力の上昇率や液面の上昇率を求めてその値が一定値を超えるような場合には全ての区画に対する循環を行うような制御を付加しても良い。
【符号の説明】
【0074】
1,1A,1B 終端接続部
10 超電導ケーブル(極低温ケーブル)
11 ケーブルコア
12 断熱管
20 低温容器
21 冷媒槽
22 真空槽
31 引き出し導体
33 碍子管(常温部)
34 圧力調整機構
35 金属箔
41 コンデンサコーン方式のブッシング(絶縁部材)
50 導体用可動接続端子
60,60A 補助冷却機構
61 隔壁
61a 熱交換面
62 補助冷媒槽(補助冷却用の液体冷媒の循環領域)
62A 補助冷却管(補助冷却用の液体冷媒の循環領域)
70,70B 循環冷却設備
71 冷却装置
72,72B 輸送管
73,73B 輸送管
74,74B 流量制御弁(流量調整機構)
75,75B リザーバタンク
80,80B 第一の循環冷却設備
85 リザーバタンク
111 フォーマ
112 超電導導体層
113 電気絶縁層
114 超電導シールド層
121 内管
122 外管
133 ヒータ
341 排出管
342 定圧弁
414 ブッシング絶縁体
414a 下端部
414b 中間部
414c 上端部
415 金属箔
S 液面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルコアと当該ケーブルコアを冷却する液体冷媒を収容する断熱管とを備えた極低温ケーブルの終端接続部であって、
前記液体冷媒が貯留され、液体冷媒層と気体冷媒層とが形成される冷媒槽と、
下端部が前記極低温ケーブルの超電導導体層と接続されると共に前記液体冷媒層に浸漬され、上端部が前記気体冷媒層を経て常温部に引き出される引出し導体と、
前記引出し導体の周囲に設けられた絶縁部材と、
前記冷媒槽に供給する液体冷媒を貯留するリザーバタンクを有する第一の循環冷却設備と、
前記冷媒槽に設けられ、当該冷媒槽内の前記液体冷媒の液面位置における前記液体冷媒及び前記気体冷媒に対して熱交換を行うための熱交換面を有する補助冷却機構と、
前記補助冷却機構に接続された第二の循環冷却設備とを備え、
前記冷媒槽内の圧力又は液面高さに応じて、前記リザーバタンクを加熱するヒータの加熱と停止とを切り替えて前記冷媒槽内の液面高さが目標の範囲内に制御されることを
特徴とする極低温ケーブルの終端接続部。
【請求項2】
前記補助冷却機構は、前記熱交換面を有する隔壁を介して前記冷媒槽内を冷却するための補助冷却用の液体冷媒の循環領域として、前記冷媒槽の周囲に形成された補助冷媒槽を備え、
当該補助冷媒槽の上端と下端の間に前記冷媒槽の液体冷媒層の液面位置が配置されていることを特徴とする請求項1記載の極低温ケーブルの終端接続部。
【請求項3】
前記補助冷媒槽は、液体冷媒で満たして気体冷媒層を有さないことを特徴とする請求項2記載の極低温ケーブルの終端接続部。
【請求項4】
前記第二の循環冷却設備は、前記補助冷媒槽の上部からの補助冷却用の液体冷媒の供給と前記補助冷媒槽の下部からの補助冷却用の液体冷媒の回収とを輸送管を通じて行うことを特徴とする請求項2又は3記載の極低温ケーブルの終端接続部。
【請求項5】
前記第二の循環冷却設備は、前記補助冷媒槽の下部からの補助冷却用の液体冷媒の供給と前記補助冷媒槽の上部からの補助冷却用の液体冷媒の回収とを輸送管を通じて行うことを特徴とする請求項2又は3記載の極低温ケーブルの終端接続部。
【請求項6】
前記補助冷媒槽を上下に並んだ複数の区画に分割し、それぞれの区画に対して補助冷却用の液体冷媒の供給と補助冷却用の液体冷媒の回収とを行うことを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の極低温ケーブルの終端接続部。
【請求項7】
前記補助冷媒槽は、前記冷媒槽の内側に螺旋状に形成された補助冷却管からなることを特徴とする請求項2から6のいずれか一項に記載の極低温ケーブルの終端接続部。
【請求項8】
前記第二の循環冷却設備は、補助冷却用の液体冷媒を貯留するリザーバタンクと、補助冷却用の液体冷媒を循環させる循環ポンプと補助冷却用の液体冷媒を冷却する冷凍機とを有することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の極低温ケーブルの終端接続部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−217334(P2012−217334A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−83444(P2012−83444)
【出願日】平成24年4月2日(2012.4.2)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】