説明

極低温流体用金属配管の設置構造

【課題】液体水素などの沸点の低い極低温流体を安全に流すことのできる安価な極低温流体用配管の設置構造を提供する。
【解決手段】金属配管は固定台から離間した位置に配置される。固定台上に固定された外装部材はその長手方向に沿って頂部近傍に複数の貫通穴を有するとともに、金属配管の外周から離間した位置でこれを囲繞している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温流体の流れる配管の設置構造に関し、特に液体水素などの沸点の低い液化ガスを流すための極低温流体用配管の設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
液体水素製造工場から液体水素ローリーによって搬送された液体水素を液体水素貯槽に貯蔵しておき、要望に応じて液体又は圧縮ガスの状態で燃料電池自動車に燃料充填することのできる水素供給ステーションが知られている。ここで、液体水素の供給時にあっては、液体水素貯槽から直接、燃料電池自動車に液体水素を供給する。一方、所定の圧力(例えば、25MPa若しくは35MPa)の圧縮水素ガスの供給時にあっては、二系統の供給方法が併用される。まず、液体水素貯槽において自然気化したボイルオフガスを回収タンクに回収しておき、燃料供給動作に応じてこのボイルオフガスを所定の圧力まで圧縮機ユニットで昇圧して圧縮水素ガスとして燃料電池自動車に供給する。また、液体水素貯槽内の液体水素を液体水素昇圧ユニットで液体水素のまま所定の圧力まで昇圧した後に気化器で気化して、あるいは液体水素貯槽内の液体水素を気化器で気化した後に水素ガス圧縮機にて所定の圧力まで昇圧して、この圧縮水素ガスをボイルオフガスからの圧縮水素ガスと混合若しくはこれと切り替えて燃料電池自動車に供給する。
【0003】
ところで上記した水素供給ステーションにおいて、液体水素貯槽から気化器に液体水素を供給する配管の如きは、液体水素が通る金属配管の周囲に断熱層を設けて液体水素の気化を防止した断熱多重配管が用いられている。例えば、特許文献1では、真空層とヘリウム層によって液体水素配管をその外部と断熱した多重配管の構造が開示されている。このような断熱多重配管は、断熱性能に優れるとともに、同心円状の多重管構造により外部から与えられる力に対する液体水素配管の保護にも優れている。
【0004】
一方、断熱性能は大幅に劣化するが、例えば特許文献1に開示の如き断熱多重配管は高価なため、金属配管の周囲に保冷材を巻き付けた単配管も場合によって利用され得る。例えば、特許文献2では、LNGやLPG等の液化ガスを配送する単配管の周囲に保冷材を与えた配管構造が開示されている。液化ガスが流れる金属配管はその長手方向に沿って保冷材で被覆されている。また金属配管は、保冷材を介して下半分を液受樋によって、また上半分を保冷カバーによって上下から強固に保持されている。かかる配管構造は、金属配管を液受樋及び保冷カバーで保護しているため、外部から与えられる力に対する金属配管の保護にも優れている。
【0005】
ここで上記した液体水素ステーションにおいて、気化器では液体水素昇圧ユニット、または直接、液体水素貯槽から運ばれる液体水素を熱交換により水素ガスに気化させている。つまり、気化器の手前の配管では、液体水素の温度を液体状体を維持できるような低温に保持する必要はないのである。故に、同配管は、多重断熱配管よりも、特許文献2に開示の如き安価な単配管を使用することが望まれている。
【特許文献1】特開2004−19813号公報
【特許文献2】特開平10−82494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方で、気化器までの上述した配管では、燃料電池自動車への圧縮水素ガスの供給時にのみ、液体水素や液体水素の蒸発により生じた極低温の水素ガスが流れて、それ以外のときは内部が常温程度の水素ガスで充満している。つまり、同配管は繰り返し大きな熱履歴を受け、特に、液体水素の流入時には急激にマイナス253℃まで温度が低下する。かかる低温では、金属配管の靱性が大きく低下するため、外部から与えられる力、特に衝撃力に対して金属配管を保護する必要がある。
【0007】
ここで特許文献2に開示の配管構造は、保冷材を介して金属配管を上下から金属部材によって強固に保持している。かかる構造では、金属部材に衝撃力が与えられると直ちに金属配管に衝撃力が伝達してしまう。また、LNG(沸点:−162℃)やLPG(沸点:−42℃)よりも沸点の低い液体水素(沸点:−253℃)や液体ヘリウム(沸点:−269℃)を配管に流すと、空気中の窒素(沸点:−196℃)や酸素(沸点:−183℃)が金属配管の外壁面で液化し、保冷材との間に滞留してしまうのである。特に、強い酸化作用を持つ液体酸素は、保冷材やこれに付着したゴミなどの可燃物と接触すると化学反応を生じ、発火するおそれがある。
【0008】
本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであって、液体水素などの沸点の低い極低温流体を安全に流すことのできる安価な極低温流体用配管の設置構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による極低温流体を流すための金属配管を固定台上に設置するための設置構造では、前記金属配管は前記固定台から離間した位置に配置され、前記固定台上に固定された外装部材はその長手方向に沿って頂部近傍に複数の貫通穴を有するとともに、前記金属配管の外周から離間した位置でこれを囲繞していることを特徴とする。
【0010】
本発明による設置構造によれば、液体水素などの沸点の低い極低温流体を流すための金属配管は、その外周から離間した位置でこれを囲繞する外装部材によって保護されているので、外部から与えられる力、特に衝撃力が負荷されても、外装部材と金属配管との間の間隔がこれを吸収して金属配管への影響を大幅に低減することができるのである。また、金属配管に液体水素などの沸点の低い極低温流体が流れても、外装部材が金属配管から離間しているので、外装部材と金属配管の間に空気が液化して生ずる液体酸素などが滞留しない。また、強い酸化作用を持つ液体酸素は、外装部材の内部で気化してその頂部近傍の複数の貫通穴から外部に拡散するので安全である。また、仮に、液体水素のような極低温流体が金属配管から漏出しても外装部材の内部で気化してその頂部近傍の複数の貫通穴から外部に拡散するので外装部材の内部に滞留することなく安全である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、液体水素などの沸点の低い極低温流体を流すための金属配管を固定台上に設置するための設置構造である。まず、長い筒状の外装部材が固定台から上方に離間した位置において略水平になるようにして固定されている。外装部材の内部には金属配管が挿入されて、外装部材は金属配管の外周から離間した位置でこれを囲繞している。かかる構造により、外部から与えられる力、特に衝撃力が負荷されても、外装部材と金属配管との間の間隔がこれを吸収して、金属配管への影響を大幅に低減することができるのである。また、金属配管に液体水素などの沸点の低い極低温流体が流れても、外装部材が金属配管から離間しているので、外装部材と金属配管の間に空気が液化して生ずる強い酸化作用を持つ液体酸素が滞留しない。
【0012】
ここで、金属配管は、外装部材の長手方向に離間した2カ所以上の位置において支持されている。かかる構造により、外部から与えられる力、特に衝撃力が外装部材に負荷されても、金属配管の支持箇所の間の撓みによってこれらの力を吸収できて、金属配管への影響を低減することができるのである。また、金属配管は固定台上において直接、支持されていてもよい。かかる構造により、外部から与えられる力、特に外装部材に負荷された衝撃力は、金属配管へは全く伝達しないのである。
【0013】
外装部材の頂部近傍にはその長手方向に沿って複数の貫通穴を有している。かかる構造により、金属配管に液体水素などの沸点の低い極低温流体が流れても、空気が液化して生ずる強い酸化作用を持つ液体酸素は、外装部材の内部で直ちに気化して拡散し、頂部近傍の複数の貫通穴から更に外部へも拡散するので安全である。また、仮に、液体水素が金属配管から漏出しても外装部材の内部で気化してその頂部近傍の複数の貫通穴から外部に拡散するので外装部材の内部に滞留することなく安全である。
【0014】
ここで、外装部材の頂部近傍はメッシュ体、すなわち「貫通穴」がメッシュ体からなる穴であってもよい。かかる構造によれば、外装部材の内部に貫通穴からゴミなどの可燃物が侵入することを大幅に防止できるのである。更に、メッシュ体は着脱自在であることが好ましい。かかる構造によれば、メッシュ体の穴から外装部材の内部に不可避的に侵入した細かいゴミなどの可燃物を取り除くことが容易になる。
【0015】
更に、金属配管は2本の配管を直列に繋ぐ、若しくは配管の分岐する連結部を有する場合がある。連結部は極低温流体の流れる下流側に設けられることが好ましい。かかる構造により、連結部に与えられる熱履歴を小さくすることが出来て連結部のゆるみ等が防止できるのである。連結部近傍、好ましくはその上部に水素センサーが位置するように外装部材に水素センサーが取り付けられる。かかる構造によれば、仮に、水素が連結部からわずかに漏出した場合にあってもこれを即、検知することが可能である。
【0016】
更に、外装部材は、その底部近傍に一定の間隔で永久磁石、特にネオジム磁石が埋め込まれていることが好ましい。かかる構造によれば、強い酸化作用を持つ液体酸素を一定の箇所に集めて気化させることが出来るのである。
以上の如き構成によれば、液体水素などの沸点の低い極低温流体を安全に流すことのできる安価な極低温流体用配管の設置構造が得られるのである。
【実施例1】
【0017】
更に本発明による第1の実施例について図1乃至図5を参照しつつ、詳細に説明する。
【0018】
図1に示すように、1つのタイプの水素供給ステーション100では、液体水素及び圧縮水素ガスのそれぞれが液体水素ディスペンサー101及び圧縮水素ディスペンサー102を介して供給可能である。詳細には、液体水素製造工場から液体水素ローリー120によって搬送される液体水素は、水素供給ステーションの液体水素貯槽104に貯蔵される。
【0019】
ここで、燃料電池自動車122への液体水素の供給時にあっては、液体水素貯槽104から液体水素ディスペンサー101を介して直接、液体水素が供給される。
【0020】
一方、燃料電池自動車121への所定の圧力(例えば、25MPa若しくは35MPa)の圧縮水素ガスの供給時にあっては、二系統の供給方法が併用される。まず、液体水素貯槽104において自然気化したボイルオフガス(BOG)は、BOG回収タンク105に回収される。燃料供給動作に応じてBOG回収タンク105内のボイルオフガスは、所定の圧力まで圧縮機ユニット106で昇圧されて圧縮水素ガスとして蓄圧器ユニット107に送られる。蓄圧器ユニット107内の圧力が一定の圧力よりも高いときは、圧縮水素ディスペンサー102を介して燃料電池自動車121に圧縮水素ガスが供給される。また、蓄圧器ユニット107内の圧力が一定の圧力よりも低下したときは、液体水素貯槽104内の液体水素を液体水素昇圧ユニット108で液体水素のまま所定の圧力まで昇圧した後に、気化器109で気化させる。(または、液体水素昇圧ユニット108を用いずに、液体水素貯槽104から液体水素を直接、気化器109に導き、気化させた後に昇圧ユニットで昇圧しても良い。)気化器109で気化した圧縮水素ガスは、ボイルオフガスからの圧縮水素ガスと混合若しくはこれと切り替えて圧縮水素ディスペンサー102を介して燃料電池自動車121に供給される。
【0021】
ところで上記した水素供給ステーション100において、気化器109は、圧縮水素ガスの燃料電池自動車121への燃料供給時にあって、ボイルオフガスからの圧縮水素ガスによる蓄圧器ユニット107内の圧力が一定の圧力よりも低下したときにのみ動作する。気化器109は、液体水素昇圧ユニット108で所定の圧力まで昇圧された液体水素を圧力を保ったまま熱交換して水素ガスに気化させるのである。一方、気化器109の非動作時にあっては、液体水素昇圧ユニット108及び気化器109はともに自然気化した液体水素によって充たされているのである。
【0022】
ここで液体水素昇圧ユニット108及び気化器109の間を連結する金属配管1では、気化器109の動作時及び非動作時にかかわらず、内部を流れる液体水素及び水素ガスの温度を一定温度に維持する必要はない。そこで以下に述べる如き配管の設置構造を用いることで、多重断熱配管ではない単配管を金属配管1に用いることが出来るのである。
【0023】
特に、図2及び図3に示すように、整地されて小石を敷き詰めた地面やコンクリート台などの水平面を有する固定台10の上には、ボルト11等で支持金具12が固定されている。支持金具12の上方端部近傍は、半環状の取付部12a及び12bに分岐している。取付部12a及び12bの間には、筒状の金属管からなる外装部材2が位置しており、取付部12a及び12bの上方端部近傍のボルト13を締めることによって固定されている。なお、図2では、1つの支持金具12のみを示したが、支持金具12は金属配管1及び外装部材2の長手方向に沿って固定台10の上に互いに離間して複数個設けられている。
【0024】
外装部材2は、その長手方向に沿って頂部近傍に細長い貫通穴である換気孔2aを複数有している。換気孔2aのいくつかには、上方から配管留め金具15がはめ込まれている。配管留め金具15は、断面略U字状に屈曲せしめた金属等からなる板状部材であって、その両端部15aは外側へ向けて屈曲して脱落が防止されている(特に、図3参照)。配管留め金具15の屈曲部15bが外装部材2の内部の略中央部に位置するようにして、その両端部15aは換気孔2aから外部に向けて突出しており、外装部材2の外周に沿って位置している。
【0025】
金属配管1は、配管留め金具15の屈曲部15bの内側にはめ込まれて、外装部材2の筒状内部に収容されている。すなわち、外装部材2は、金属配管1の外周から離間した位置でこれを囲繞するとともに、金属配管1と長手方向を一致させているのである。なお、図2では、1つの配管留め金具15のみを示したが、配管留め金具15は、外装部材2の長手方向に沿った複数の換気孔2aにおいて、適当な間隔で複数だけ設けられている。つまり金属配管1は配管留め金具15によって所定間隔で外装部材2上に支持されているのである。
【0026】
かかる金属配管1の取り付け構造によれば、外装部材2の外部から与えられる力、特に衝撃力が外装部材2に負荷されても、外装部材2と金属配管1との間の空間がこれを吸収して、金属配管1への力の影響を大幅に低減することができるのである。また、配管留め金具15は、間隔を空けて設けられているので、外装部材2に与えられた力が配管留め金具15を介して金属配管1に伝達しても、隣り合う配管留め金具15の間にある金属配管1が可撓であるため、これを吸収することができて、金属配管1の狭い範囲への応力の集中を防止できるのである。特に、金属配管1内に液体水素の如き、極低温流体が流れているときには金属配管1の靱性が低下するため、金属配管1への応力の集中を防止できる本取り付け構造は特に好ましい。
【0027】
更に、変形例として図4及び図5に示すように、外装部材2の固定台10への取り付け構造は上記した構造と同様である。外装部材2の側面には、窓2bが設けられている。また、固定台10の上には、ボルト21等で配管支持金具22が固定されている。配管支持金具22の上方端部近傍からは水平に配管取付ステージ23が伸びており、その先端部23aが窓2bを介して外装部材2内部に位置している。配管取付ステージ23上には金属配管1が載置されて、取付金具24によって軽く固定されている。
【0028】
かかる金属配管1の取り付け構造によれば、外装部材2の外部から与えられる力、特に衝撃力が外装部材2に負荷されても金属配管1には力が伝達しないのである。
【0029】
以上において、金属配管1に液体水素や液体ヘリウムの如き、極低温流体が流れているときには、金属配管1の表面において空気が液化して液体窒素や液体酸素が生じる。これらの液化ガスは、金属配管1から外装部材2内の底部に落下して直ちに気化して空気中に拡散するのである。特に、液体酸素のような強い酸化作用を持つ液化ガスは、固定台10上に落下せず固定台10上のゴミなどの可燃物との接触を防止できるとともに、外装部材2の底部で直ちに気化して金属配管1の周囲及び外装部材2の内部に滞留しないため安全である。また、仮に、液体水素が金属配管1から漏出したとしても外装部材2の内部で気化して、換気孔2aから外装部材2の外部に拡散することができる。故に、外装部材2の内部に水素ガスが滞留することなく安全である。
【実施例2】
【0030】
更に本発明による第2の実施例について図6乃至8を参照しつつ、詳細に説明する。
【0031】
固定台10の上に固定された支持金具12’の上方端部は、湾曲した取付部12a’及び12b’に分岐している。取付部12a’及び12b’の上には後述するように組み合わされて筒状の金属管からなる外装部材2がビス31により固定されている。
【0032】
外装部材2は、上部包囲部材32aと樋状部材32bとの2つの部材を組み合わせた筒状体である。側部に設けられたヒンジ33によって上部包囲部材32aが樋状部材32bに対して回動自在である(特に、図8参照)。外装部材2の上部包囲部材32aの頂部には、上部包囲部材32aと樋状部材32bを組み合わせた状態(図7参照)で、鉛直方向Aから傾斜して窄孔された貫通穴である換気孔34がある。換気孔34は、外装部材2の長手方向に沿って細長く、外装部材2の円周方向に沿って互いに平行に複数本形成されている。
【0033】
外装部材2の樋状部材32bの内面には、配管取付金具36が立設されている。配管取付金具36の上方端部近傍は、半環状の取付部36a及び36bに分岐している。取付部36a及び36bの間には、金属配管1が位置しており、取付部36a及び36bの上方端部近傍のねじ37を締めることによって固定されている。なお、図6では、1つの配管取付金具36のみを図示したが、配管取付金具36は外装部材2の樋状部材32bの上にその長手方向に沿って互いに離間して複数設けられている。
【0034】
かかる金属配管1の取り付け構造によれば、外装部材2の外部から与えられる力、特に衝撃力が外装部材2に負荷されても、外装部材2と金属配管1との間の空間がこれを吸収して、金属配管1への影響を大幅に低減することができるのである。また、配管取付金具36は、金属配管1の長手方向に間隔を空けて設けられているので、外装部材2に与えられた力が配管取付金具36を介して金属配管1に伝達しても、隣り合う配管取付金具36の間にある金属配管1が撓んでこれを吸収して、金属配管1の狭い範囲への応力集中を防止できるのである。特に、金属配管1内に液体水素の如き、極低温流体が流れているときには金属配管1の靱性が低下するため、金属配管1への応力集中を防止できる本取り付け構造は特に好ましい。
【0035】
また、金属配管1に極低温流体が流れているときには、金属配管1の表面に空気が液化して液体窒素や液体酸素が生じる。これらの液化ガスは、金属配管1から外装部材2の樋状部材32bの底部に落下して直ちに気化して拡散するのである。特に、液体酸素のような強い酸化作用を持つ液化ガスが滞留しないので安全である。ここで外装部材2の上部包囲部材32aの換気孔34は、鉛直方向Aから傾斜するようにして形成されているので、外装部材2の直上から落下してくる落ち葉などの可燃物であるゴミ等が外装部材2の内部に入りづらく、ゴミなどの可燃物と液体酸素の接触を防止できるのである。更に、外装部材2はヒンジ33を中心に上部包囲部材32aを回動せしめて内部を露出させることが出来るので、外装部材2の内部を清掃することが容易である。
【0036】
更に、仮に、液体水素が金属配管1から漏出しても、外装部材2の内部で気化して水素ガスとなり、空気よりも軽い水素ガスは、傾斜して形成された複数の換気孔34から外部に拡散できる。故に、外装部材2の内部に水素ガスが滞留することなく安全である。
【実施例3】
【0037】
更に本発明による第3の実施例について図9及び図12を参照しつつ、詳細に説明する。
【0038】
水平面を有する固定台10の上には、ボルト11等で支持金具41が固定されている。支持金具41は正面から見て略T字状(図10参照)であり、両側端部41aが上方に向けて屈曲している。側端部41aの間に挟まれるようにして、支持金具41の上には樋状部材42がビス43によって側方から固定されている。樋状部材42は、短冊状の金属板の両側部42aを上方に屈曲させた断面略コ状の金属板である。
【0039】
樋状部材42の上には、金属製のメッシュ網などの多くのエアー抜きの貫通穴を有する網状体44がその長手方向に沿って着脱自在に取り付けられている。樋状部材42及び網状体44により、後述する金属配管1を包囲する外装部材2を構成している。網状体44のメッシュの大きさ(間隔)については、落ち葉などの可燃性のゴミがその内部に入らない程度であることが好ましい。なお、図9では1つの支持金具41のみを図示したが、支持金具41は樋状部材42及び網状体44の長手方向に沿って固定台10の上に互いに離間して複数設けられている。
【0040】
金属配管1は、樋状部材42の上面に立設された配管取付金具45の上方端部の取付部45aに固定されている。なお、図9では1つの配管取付金具45のみを図示したが、配管取付金具45は樋状部材42の上面にその長手方向に互いに離間して複数設けられている。
【0041】
かかる金属配管1の取り付け構造によれば、外装部材2としての樋状部材42及び網状体44の外部から与えられる力、特に衝撃力がこれらに負荷されても、樋状部材42及び網状体44と金属配管1との間の空間がこれを吸収して、金属配管1への影響を大幅に低減することができるのである。また、配管取付金具45は、金属配管1の長手方向に間隔を空けて設けられているので、樋状部材42及び網状体44に与えられた力が配管取付金具45を介して金属配管1に伝達しても、隣り合う配管取付金具45の間の金属配管1がこれを吸収して、金属配管1の狭い範囲への応力集中を防止できるのである。特に、金属配管1内に液体水素の如き、極低温流体が流れているときには金属配管1の靱性が低下するため、金属配管1への応力集中を防止できる本取り付け構造は特に好ましい。
【0042】
更に、変形例として図11及び図12に示すように、樋状部材42の固定台10への取り付け構造は、上記した実施例と同様である。網状体44の側面には、窓44bが設けられている。また、固定台10の上には、ボルト21等で配管支持金具22が固定されている。配管支持金具22の上方端部近傍には配管取付ステージ23がその先端部23aが窓44bを介して網状体44内に位置するようにして固定されている。配管取付ステージ23上には金属配管1が載置されて取付金具24によって軽く固定されている。
【0043】
かかる金属配管1の取り付け構造によれば、樋状部材42及び網状体44の外部から与えられる力、特に衝撃力が樋状部材42及び網状体44に負荷されても金属配管1には力が全く伝達しないのである。
【0044】
以上において、金属配管1に極低温流体が流れているときには、金属配管1の表面に空気が液化して液体窒素や液体酸素が生じる。これらの液化ガスは、金属配管1から樋状部材42内に落下して直ちに気化して拡散するのである。特に、液体酸素のような強い酸化作用を持つ液化ガスが滞留しないので安全である。更に、金属配管1の直上から落下してくる落ち葉などの可燃性のゴミが網状体44の内部に入りづらく、可燃性のゴミと液体酸素の接触を防止できるのである。また、仮に、液体水素が金属配管1から漏出しても直ちに気化して、網状体44から外部に拡散できる。故に、水素ガスが滞留することなく安全である。
【実施例4】
【0045】
更に本発明による新たな実施例について図13を参照しつつ、詳細に説明する。
【0046】
水素供給ステーション100(図1参照)において、液体水素昇圧ユニット108と(もしくは、先述したように液体水素昇圧ユニット108を設けないときにあっては、液体水素貯槽104と)気化器109とを繋ぐ上記した実施例の要部である金属配管1は、通常は水素ガスで充たされておりほぼ外気の温度と同一である。一方、液体水素が流れるときにあっては、金属配管1は断熱されていないため、液体水素昇圧ユニット108から気化器109へ向けて正の温度勾配が生ずる。すなわち、金属配管1は、液体水素昇圧ユニット108の出口近傍では、液体水素の沸点である−253℃に近く、気化器109側ではそれよりも高い温度である。よって金属配管1が受ける熱履歴は、液体水素昇圧ユニット108側でより大であり、気化器109側でより小である。
【0047】
ところで、金属配管1は、その長さ調整及び分岐などのために接続部3を設けることがある。かかる接続部3には応力が集中しやすいため、熱履歴のより小である気化器109側に接続部3が設けられる。
【0048】
一方、上記した実施例1乃至3の極低温流体用配管の設置構造では、金属配管1は、その長手方向に離間した位置にある取り付け部(配管留め金具15、取付金具24等)で支持されており、ある程度の撓みが許容されている。故に、不連続部である接続部3に応力が集中しやすく、接続部3以外では金属配管1の劣化が少ないのである。そこで応力集中部の接続部3の劣化の測定により金属配管1全体の劣化の推定をすることが出来る。
【0049】
金属配管1には液体水素昇圧ユニット108から高圧の液化水素が流入し得るため、微細な劣化で液体水素が漏れたとしても直ちにこれを測定できることが望ましい。
【0050】
また、上述した熱履歴により、接続部3に設けられるコネクターなどではゆるみが生じやすく、金属配管1内部の水素が少しでも漏れた時点でこれを発見することが望まれる。
【0051】
そこで外装部材2の内部であって、接続部3の上部には水素センサー4を設けて、その出力を警報機に導くのである。
【0052】
本実施例によれば、接続部3の水素漏れのみを検出することで金属配管1全体の劣化を予測できるので、金属配管1全体を定期的に検査する必要が減ぜられるのである。また、接続部3において水素が少しでも漏れた時点でこれを発見することができて、迅速な対処が可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明による配管の設置構造を含むシステムの図である。
【図2】本発明による配管の設置構造を表す側面図である。
【図3】図2のA−A断面における断面図である。
【図4】本発明による配管の設置構造を表す側面図である。
【図5】図4のA−A断面における断面図である。
【図6】本発明による配管の設置構造を表す側面図である。
【図7】図6のA−A断面における断面図である。
【図8】図7の一態様における図である。
【図9】本発明による配管の設置構造を表す側面図である。
【図10】図9のA−A断面における断面図である。
【図11】本発明による配管の設置構造を表す側面図である。
【図12】図11のA−A断面における断面図である。
【図13】本発明による配管の設置構造の要部の図である。
【符号の説明】
【0054】
1 金属配管
2 外装部材
2a 換気孔
2b 窓
3 接続部
4 水素センサー
10 固定台
11 ボルト
15 配管留め金具
22 配管支持金具
23 配管取付ステージ
32a 上部包囲部材
32b 樋状部材
33 ヒンジ
34 換気孔
36 配管取付金具
41 支持金具
42 樋状部材
44 網状体
45 配管取付金具
100 水素供給ステーション
101 液体水素ディスペンサー
102 圧縮水素ディスペンサー
104 液体水素貯槽
108 液体水素昇圧ユニット
109 気化器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温流体を流すための金属配管を固定台上に設置するための設置構造であって、前記金属配管は前記固定台から離間した位置に配置され、前記固定台上に固定された外装部材はその長手方向に沿って頂部近傍に複数の貫通穴を有するとともに、前記金属配管の外周から離間した位置でこれを囲繞していることを特徴とする極低温流体用金属配管の設置構造。
【請求項2】
前記外装部材の頂部近傍はメッシュ体からなることを特徴とする請求項1記載の極低温流体用金属配管の設置構造。
【請求項3】
前記メッシュ体は着脱自在であることを特徴とする請求項2記載の極低温流体用金属配管の設置構造。
【請求項4】
前記金属配管は、前記外装部材の前記長手方向に離間した2カ所以上の位置で支持されていることを特徴とする請求項1乃至3のうちの1に記載の極低温流体用金属配管の設置構造。
【請求項5】
前記金属配管は、前記固定台上の前記長手方向に離間した2カ所以上の位置で支持されていることを特徴とする請求項1乃至3のうちの1に記載の極低温流体用金属配管の設置構造。
【請求項6】
前記金属配管は連結部を有し、水素センサーが前記外装部材に取り付けられて前記連結部近傍に位置することを特徴とする請求項1乃至5のうちの1に記載の極低温流体用金属配管の設置構造。
【請求項7】
前記外装部材は、その底部近傍に永久磁石が埋め込まれていることを特徴とする請求項1乃至6のうちの1に記載の極低温流体用金属配管の設置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−63135(P2009−63135A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−233403(P2007−233403)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000186913)昭和シェル石油株式会社 (322)
【Fターム(参考)】