説明

極低温液体の製造装置

【課題】宇宙空間において極低温液体を効率的に製造し貯蔵する技術を提供する。
【解決手段】液体水素製造装置100は、液体水素を製造し貯蔵するためのタンク10と、固定式輻射防止板20と、可動式輻射防止板30と、可動式輻射防止板30を駆動するモータ50と、太陽からの輻射熱を検出する温度センサ60と、モータ50の駆動を制御する制御ユニット40とを備えている。制御ユニット40は、温度センサ60の出力に基づいて、太陽の方向、すなわち、輻射熱の入射方向を検出し、太陽からタンク10への輻射熱の入射を遮蔽するように、モータ50を駆動して、可動式輻射防止板30を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宇宙空間において極低温液体を製造し貯蔵する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液体水素等の極低温液体を貯蔵する容器等が提案されている(例えば、下記特許文献1〜3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開昭64−49208号公報
【特許文献2】特開平8−142976号公報
【特許文献3】特開平2−186199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記容器等は、極低温液体よりも温度が高い環境下(例えば、地球上)で、極低温液体を貯蔵するために用いられるものであって、極低温液体よりも温度が低くなる宇宙空間で用いたり、極低温液体を製造したりすることについては考慮されていなかった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、宇宙空間において極低温液体を効率的に製造し貯蔵する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題の少なくとも一部を解決するため、本発明では、以下の構成を採用した。
本発明の装置は、
宇宙空間において極低温液体を製造し貯蔵する装置であって、
前記極低温液体の原料となる気体を貯蔵し、前記宇宙空間への熱輻射によって前記極低温液体を製造し、該極低温液体を貯蔵するためのタンクと、
該タンクの外部に設置され、外部から入射する輻射熱を遮蔽するための可動式の輻射防止板と、
前記輻射防止板を駆動する駆動装置と、
を備えることを要旨とする。
【0007】
宇宙空間の温度は、約3(K)である。一方、極低温液体の温度は、3(K)よりも高い。したがって、宇宙空間において、断熱層を備えないタンクに極低温液体の原料となる気体を貯蔵し、タンクの輻射防止板に覆われていない部分から宇宙空間に熱輻射させることによって、極低温液体を製造することができる。また、可動式の輻射防止板によって、太陽等の恒星や、他の惑星からタンクへの輻射熱の入射を遮蔽することができるので、タンクの温度上昇を抑制し、極低温液体を貯蔵することができる。つまり、本発明によって、宇宙空間において極低温液体を効率的に製造し貯蔵することができる。
【0008】
上記装置において、さらに、
前記輻射熱の入射方向を検出するセンサを備え、
前記駆動装置は、前記センサによって検出された前記輻射熱の入射方向に応じて、該輻射熱の前記タンクへの入射を遮断するように、前記輻射熱防止板を駆動するようにしてもよい。
【0009】
センサとしては、例えば、温度センサや、赤外線センサなどを用いることができる。
【0010】
本発明によって、外部からタンクへの輻射熱の入射があるときに、その入射方向を検出して遮蔽することができる。
【0011】
また、本発明の装置において、さらに、
タイマと、
前記輻射防止板の駆動スケジュールを記憶する記憶部と、を備え、
前記駆動装置は、前記タイマを参照し、前記駆動スケジュールに基づいて、前記輻射防止板を駆動するようにしてもよい。
【0012】
一般に、宇宙空間において、輻射熱の入射方向は、予め算出することができる。例えば、本発明の装置が地球の周回軌道上を周回しながら利用される場合には、この装置の周回速度等に基づいて、各時刻における太陽の方向を予め算出することができる。したがって、本発明によって、上述したセンサを用いずに、外部から入射する輻射熱を遮蔽するように、輻射防止板の駆動を制御することができる。
【0013】
上記いずれかの装置において、さらに、
固定式の輻射防止板を備えるようにしてもよい。
【0014】
固定式の輻射防止板の数は、任意に設定可能である。本発明によって、タンクに常に入射する輻射熱を遮蔽することができる。例えば、地球等の惑星の周回軌道上で、本発明の装置を用いる場合には、常時、その惑星からの輻射熱の入射を遮蔽することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
B.第2実施例:
C.変形例:
【0016】
A.第1実施例:
図1は、本発明を適用した第1実施例としての液体水素製造装置100の概略構成を示す説明図である。この液体水素製造装置100は、地球の周回軌道上の宇宙空間において、周回軌道上を周回しながら利用されるものとする。
【0017】
図示するように、液体水素製造装置100は、液体水素を製造し貯蔵するためのタンク10と、タンク10に固定された輻射防止板20(以下、固定式輻射防止板20と呼ぶ)と、可動式の輻射防止板30(以下、可動式輻射防止板30と呼ぶ)と、可動式輻射防止板30を駆動するモータ50と、太陽からの輻射熱を検出する温度センサ60と、モータ50の駆動を制御する制御ユニット40とを備えている。
【0018】
タンク10には、内部に水素ガスを供給するための供給バルブ12や、製造された液体水素を排出するための排出バルブ14が備えられている。
【0019】
固定式輻射防止板20は、地球からの輻射熱を遮蔽する。また、可動式輻射防止板30は、太陽の方向に追従して駆動し、太陽からの輻射熱を遮蔽する。なお、可動式輻射防止板30は、太陽が地球の陰に入っている期間は、太陽からの輻射熱は、地球によって遮蔽されているので、駆動しない。
【0020】
制御ユニット40は、内部にCPU、RAM、ROM、タイマ等を備えるマイクロコンピュータとして構成されており、温度センサ60の出力に基づいて、太陽の方向、すなわち、輻射熱の入射方向を検出し、太陽からタンク10への輻射熱の入射を遮蔽するように、モータ50を駆動して、可動式輻射防止板30を駆動する。制御ユニット40、および、モータ50は、本発明における駆動装置に相当する。なお、本実施例では、輻射熱の入射方向を検出するために、温度センサ60を用いるものとしたが、これに限られず、例えば、赤外線センサを用いるようにしてもよい。
【0021】
宇宙空間の温度は、約3(K)であり、液体水素の温度(約20(K))よりも低い。したがって、タンク10に水素ガスを貯蔵し、タンク10の固定式輻射防止板20、および、可動式輻射防止板30に覆われていない部分から宇宙空間に熱輻射させることによって、液体水素を製造することができる。また、固定式輻射防止板20によって地球からタンク10への熱輻射を遮蔽し、可動式輻射防止板30によって、太陽からタンク10への輻射熱の入射を遮蔽することができるので、タンク10の温度上昇を抑制し、液体水素を貯蔵することができる。つまり、本実施例の液体水素製造装置100によって、宇宙空間において液体水素を効率的に製造し貯蔵することができる。
【0022】
B.第2実施例:
図2は、本発明を適用した第2実施例としての液体水素製造装置100Aの概略構成を示す説明図である。この液体水素製造装置100Aも、第1実施例の液体水素製造装置100と同様に、地球の周回軌道上の宇宙空間において、周回軌道上を周回しながら利用される。
【0023】
第2実施例の液体水素製造装置100Aは、第1実施例の100とほぼ同じであり、タンク10と、固定式輻射防止板20と、可動式輻射防止板30と、モータ50と、制御ユニット40Aとを備えている。
【0024】
第2実施例の液体水素製造装置100Aは、第1実施例の液体水素製造装置100と異なり、輻射熱の入射方向を検出するためのセンサを備えていない。その代わりに、制御ユニット40AのROMに、可動式輻射防止板30の駆動スケジュールが予め記憶されている。この駆動スケジュールには、予め算出された各時刻における太陽からの輻射熱の入射方向(角度)が記されている。制御ユニット40Aは、タイマを参照し、駆動スケジュールに基づいて、可動式輻射防止板30を駆動する。こうすることによって、第1実施例の液体水素製造装置100における温度センサ60を用いずに、可動式輻射防止板30の駆動を制御することができる。
【0025】
以上説明した第2実施例の液体水素製造装置100Aによっても、先に説明した第1実施例の液体水素製造装置100と同様に、宇宙空間において液体水素を効率的に製造し貯蔵することができる。
【0026】
C.変形例:
以上、本発明のいくつかの実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施の形態になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様での実施が可能である。例えば、以下のような変形例が可能である。
【0027】
C1.変形例1:
上記実施例では、液体水素製造装置100、および、液体水素製造装置100Aは、固定式輻射防止板20を備えるものとしたが、これを備えないようにしてよい。
【0028】
C2.変形例2:
上記実施例では、液体水素製造装置100、および、液体水素製造装置100Aは、地球の周回軌道上の宇宙空間で利用されるものとし、固定式輻射防止板20、および、可動式輻射防止板30の数は、それぞれ1つであるものとしたが、これに限られない。これらの数は、例えば、液体水素製造装置100、または、液体水素製造装置100Aを利用する環境に応じて、任意に設定可能である。
【0029】
C3.変形例3:
上記実施例では、本発明を液体水素製造装置に適用した場合について説明したが、これに限られない。液体ヘリウムや、液体窒素等、他の極低温液体を製造、貯蔵する装置に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明を適用した第1実施例としての液体水素製造装置100の概略構成を示す説明図である。
【図2】本発明を適用した第2実施例としての液体水素製造装置100Aの概略構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0031】
100、100A…液体水素製造装置
10…タンク
12…供給バルブ
14…排出バルブ
20…固定式輻射防止板
30…可動式輻射防止板
40、40A…制御ユニット
50…モータ
60…温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
宇宙空間において極低温液体を製造し貯蔵する装置であって、
前記極低温液体の原料となる気体を貯蔵し、前記宇宙空間への熱輻射によって前記極低温液体を製造し、該極低温液体を貯蔵するためのタンクと、
該タンクの外部に設置され、外部から入射する輻射熱を遮蔽するための可動式の輻射防止板と、
前記輻射防止板を駆動する駆動装置と、
を備える装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置であって、さらに、
前記輻射熱の入射方向を検出するセンサを備え、
前記駆動装置は、前記センサによって検出された前記輻射熱の入射方向に応じて、該輻射熱の前記タンクへの入射を遮断するように、前記輻射熱防止板を駆動する、
装置。
【請求項3】
請求項1記載の装置であって、さらに、
タイマと、
前記輻射防止板の駆動スケジュールを記憶する記憶部と、を備え、
前記駆動装置は、前記タイマを参照し、前記駆動スケジュールに基づいて、前記輻射防止板を駆動する、
装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の装置であって、さらに、
固定式の輻射防止板を備える、
装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−120891(P2007−120891A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−315576(P2005−315576)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】