説明

極性の変性ロウを含有する組成物

本発明は、生理学的に許容可能な組成物、特に少なくとも一の極性の変性ロウを含有する化粧品用組成物、並びにこのような組成物を使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一の極性の変性ロウを含有する組成物、例えば化粧品用組成物に関する。このような組成物は改善された特性と特徴、例えば改善された長時間にわたる持続性及び防汚性、改善された輝き/色調特性、及び/又はより良好なテクスチャー及び適用時の感触を有することができる。
【背景技術】
【0002】
有色の化粧品、例えばファンデーション、コンシーラ、リップスティック及びマスカラ、及び他の化粧品及びサンスクリーン組成物を含む多くの化粧品用組成物が、長時間にわたる持続性及び耐移り性について開発されている。このことは、一般的には、適用後に皮膜を形成する組成物を使用することにより達成される。このような組成物は、皮膚又は他のケラチン組織と接触して蒸発する揮発性溶媒を一般的に含有し、ロウ及び/又は樹脂、顔料、フィラー、及び活性剤を含有する層を残す。しかしながら、これらの組成物は、組成物が脆弱又は可撓性のない皮膜として、皮膚又は他のケラチン組織上に残存するため、着用者に不快感を与える傾向にあった。さらに、このような組成物は、しなやかあるいは柔軟ではない場合があり、快適な着用感がないおそれもあった。さらにこのような組成物は、粘着質な傾向を有し、結果として適用性、展伸性及び持続性が乏しくなっていた。
【0003】
よって、改善された化粧品特性を有する改善された化粧品用組成物が必要とされている。
従って、本発明の一態様は、従来組成物の少なくとも一の上述した問題を解決又は克服可能な、皮膚、毛髪、眼、睫、爪及び/又は唇等のケラチン物質を手入れ及び/又はメークアップ及び/又はトリートメントするための組成物にある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、少なくとも一の極性の変性ロウを有する組成物、好ましくは化粧品用組成物に関する。
また本発明は、少なくとも一の着色剤と少なくとも一の極性の変性ロウを含有する、有色の化粧品用組成物に関する。このような有色の化粧品用組成物は、無水唇用組成物(例えば、アイシャドウ、リップスティック又は液状リップカラー)又はファンデーションとすることができる。
さらに本発明は、少なくとも一の極性の変性ロウ、少なくとも一の着色剤及び水を含有する、有色の化粧品用組成物に関する。好ましくは、組成物は少なくとも一の揮発性油をさらに含有する。このような有色の含水性化粧品用組成物は、好ましくはファンデーション又はマスカラであり、エマルション又は分散液である。
【0005】
また本発明は、ケラチン物質をトリートメント、手入れ及び/又はメークアップするのに十分な量の本発明の組成物をケラチン物質に適用することによる、ケラチン物質(例えば皮膚、眼、睫又は唇)をトリートメント、手入れ及び/又はメークアップする方法に関する。
さらに本発明は、皮膚の欠点をカバーする又は隠すのに十分な量の本発明の組成物をケラチン物質に適用することによる、ケラチン物質(例えば、皮膚又は唇)に関連した皮膚の欠点をカバー又は隠すことに関する。
【0006】
また本発明は、ケラチン物質の外観を高めるのに十分な量の本発明の組成物をケラチン物質に適用することによる、ケラチン物質(例えば、皮膚、眼、睫又は唇)の外観を高める方法に関する。
さらに本発明は、改善された化粧品特性、例えば強化された防汚性、さらに長時間にわたる持続性、改善された輝き/色調、及び/又はより良好なテクスチャー又は適用時の感触を有する組成物に関する。
【0007】
また本発明は、少なくとも一の極性の変性ロウを組成物に添加することを含む、組成物の防汚性及び長時間にわたる持続性を強化する方法に関する。
さらに本発明は、少なくとも一の極性の変性ロウを組成物(例えば、ファンデーション)に添加することを含む、ケラチン物質への適用時の、組成物の感触又はテクスチャーを改善する方法に関する。
またさらに本発明は、少なくとも一の極性の変性ロウを組成物に添加することを含む、組成物の作製方法に関する。
上述した一般的記載及び以下の詳細な記載の双方は例示的で、説明のためだけのものであり、本発明を制限するものではないと理解される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここで使用される場合、「少なくとも一の」なる表現は一又は複数であることを意味し、よって個々の成分並びに混合物/組合せ物を含む。
ここで使用される場合、「皮膜形成体(film former)」又は「皮膜形成剤(film forming agent )」は、皮膜形成体に附随する溶媒が、基質上で蒸発、吸収及び/又は消散した後、適用された基質上に皮膜を残すポリマー又は樹脂を意味する。
【0009】
ここで使用される場合、「耐移り性」とは、例えば食事又は飲用により、ガラス、衣類又は皮膚等の他の物質と接触することで、容易に除去されない組成物が示す品質を意味する。耐移り性は、このような評価のための当該技術で公知の任意の方法により評価されてよい。例えば、組成物の耐移り性は「キス」テストにより評価され得る。「キス」テストは、ヒトのケラチン物質、例えば毛髪、皮膚又は唇に組成物を適用し、適用に続いて所定時間後、例えば適用2分後に、ペーパーシート等の物質に、毛髪、皮膚又は唇をこすりつけることを含むものであってよい。同様に、組成物の耐移り性は、毛髪、皮膚又は唇への適用に続いて所定時間後、任意の他の基質に着用者から移動した、例えば個人の毛髪、皮膚又は唇から着用している衣服の衿に移動した製品の量によっても評価され得る。ついで、基質(例えば、衿又は紙)に移動した組成物の量を評価し、比較してよい。例えば、製品のほとんどが着用者の毛髪、皮膚又は唇に残っているならば、組成物は耐移り性があるとされる。さらに、移動した量は、他の組成物、例えば商業的に入手可能な組成物と比較されてもよい。本発明の好ましい実施態様において、組成物は、全く又はほとんど、毛髪、皮膚又は唇から基質に移動しない。
【0010】
ここで使用される場合、「長時間にわたる持続性」を有する組成物とは、長時間経過後、裸眼で見て、適用時と同様又は実質的に同様の色調が保持されている組成物を称する。長時間にわたる持続性は、このような特性を評価するための、当該技術で公知の任意の方法により評価され得る。例えば、長時間にわたる持続性は、ヒトの毛髪、皮膚又は唇に組成物を適用し、長時間経過後の組成物の色調を評価することを含むテストにより評価され得る。例えば、組成物の色調を、毛髪、皮膚又は唇への適用直後に評価し、所定時間後に、これらの特徴を再評価して比較してもよい。さらにこれらの特徴は、他の組成物、例えば商業的に入手可能な組成物に対して評価してもよい。
【0011】
ここで使用される場合、「粘着性」とは、2つの物質の間の付着性を称する。例えば、2つの物質に間の粘着性が大きければ大きい程、物質の間の付着性は増す。「粘着性」を定量化するために、2つの物質に関し、IUPACに定義される「付着仕事量」を測定することが有用である。一般的に言えば、付着仕事量では、2つの物質を分離させるのに必要な仕事量が測定される。よって、2つの物質に関する付着仕事量が大きければ大きい程、物質間にはより大きな付着力が存在し、2つの物質の間の粘着性が大きくなることを意味している。
【0012】
付着仕事量、よって粘着性は、許容可能な技術、及び付着性の測定に一般的に使用される方法を使用して定量することができ、典型的には強制時間単位(例えばグラム秒(「gs」))で報告されている。例えば、ステイブル・マイクロ・システム社(Stable Micro Systems, Ltd.)のTA-XT2は、その全内容が参照としてここに導入される、2000年1月に改訂されたTA-XT2応用研究(参照:MATI/PO.25)に説明されている手順に従い、付着性を測定するのに使用可能である。この方法によれば、実質的に非粘着質な物質の付着仕事量の所望の値は、約0.5gs未満、約0.4gs未満、約0.3gs未満、及び約0.2gs未満を含む。当該技術で公知である他の類似した方法を、付着性を測定するための他の類似した分析装置において使用することができる。
【0013】
ここで使用される場合、「耐水性」とは、水をはじく能力、及び水に対する耐性を称する。耐水性は、このような特性を評価する当該技術で公知の任意の方法により評価されてよい。例えば、マスカラ用組成物はつけまつげに適用されてよく、ついで、所定時間、例えば20分水に配してもよい。予め確定されている時間の経過後、つけまつげを水から取り出し、例えばペーパーシート等の物質上に渡す。ついで、物質上に残った残留物の程度を評価し、他の組成物、例えば商業的に入手可能な組成物と比較してよい。同様に、例えば組成物を皮膚に適用し、所定時間、皮膚を水に浸してもよい。ついで、予め確定されている時間後、皮膚に残存する組成物の量を評価し、比較してもよい。例えば、製品のほとんどが着用者、例えば睫毛、皮膚等に残っているならば、組成物は耐水性があるとされる。本発明の好ましい実施態様において、組成物はほとんど又は全く帯着者から移動しない。
【0014】
本発明の化粧品用組成物及び方法は、ここで記載された本発明の必須要素及び制限、並びにここに記載された付加的な又は任意の成分、要素又は制限、もしくは毛髪への局所適用を意図した個人用の手入れ用組成物に有用な任意の有用な他のものを含有する、それらからなる、又は本質的にそれらからなることができる。
【0015】
本発明の組成物は、液状又は非液状(半固体状、柔らかい固体状、固体状等)、任意の形態であってよい。例えば、ペースト、固形物、ゲル、又はクリームであってよい。さらにはエマルション、例えば水中油型又は油中水型エマルション、多相エマルション、例えば油中水中油型エマルション又は水中油中水型エマルション、又は固形物、無水ゲルを含む硬質又は柔軟なゲルであってよい。また組成物は、半透明な無水ゲル又は透明な無水ゲルから選択される形態とすることができる。本発明の組成物は、例えば外部又は連続した脂肪相を含有していてもよい。組成物は無水であってよい。また組成物は鋳型成形された組成物、又はスティック又は皿型のような成型品とすることもできる。一実施態様において、組成物は鋳型スティック又は流し込みスティック(poured stick)等の固形物である。
【0016】
スティック等の意図する用途に応じて、組成物の硬度を考慮することができる。組成物の硬度は、例えばグラム重量(gf)で表してよい。本発明の組成物は、例えば20gf〜2000gf、例えば20gf〜900gf、さらには20gf〜600gfの範囲の硬度を有してよい。
【0017】
この硬度は2つの方法の一方で測定される。第1の硬度テストは、組成物にプローブを挿入し、特に高さ25mm、直径8mmのエボナイト性のシリンダーを具備するテクスチャー分析器(例えばレオ社(Rheo)のTA-XT2i)を使用する方法に従う。硬度測定は20℃で、組成物の5つのサンプルの中心で実施される。シリンダーを2mm/sの前速度、次いで0.5mm/sの速度、最後に2mm/sの後速度、全置換量が1mmで、組成物の各サンプルに導入する。記録された硬度値は観察された最大ピークのものである。測定誤差は±50gfである。
【0018】
第2の硬度テストは、直径8.1mm、好ましくは12.7mmのスティック状組成物を切断し、インデルコ−シャティヨン社(Indelco-Chatillon Co.)のDFGHS2張力測定器を使用し、速度100mm/分、20℃で硬度を測定することを含む、「チーズワイヤー」法である。この方法の硬度値は、上述した条件でスティックを切断するために要した剪断力を、グラムで表したものである。この方法によった場合、スティック形態をした本発明の組成物の硬度は、例えば直径8.1mmのスティックのサンプルにおいては、30gf〜300gf、例えば30gf〜250gfの範囲にあり、さらに直径12.7mmのスティックのサンプルにおいては、例えば30gf〜200gf、さらには30gf〜120gfの範囲にある。
【0019】
本発明の組成物の硬度は、組成物が自己支持しており、容易に崩壊して、ケラチン物質に満足のいく付着物を形成できるようなものであってよい。また、この硬度により、例えばスティック状又は皿状の形態に鋳型成形又は成形された本発明の組成物に、良好な衝撃強度を付与することができる。
【0020】
当業者であれば、所望の硬度及び考慮される用途に基づき、上述した概略の硬度テストの少なくとも一方を使用し、組成物を評価して選択するであろう。意図する用途を考慮して、これらの硬度テストの少なくとも一方から許容可能な硬度が得られるならば、組成物は本発明の好ましい実施態様の範疇に入る。
【0021】
明らかなように、本発明の好ましい実施態様の組成物の硬度は、例えば組成物が有利には自己支持し、容易に崩壊して、ケラチン物質に満足のいく付着物を形成できるようにされる。さらにこの硬度により、本発明の組成物は良好な衝撃強度を有する。
【0022】
本発明の好ましい実施態様において、スティック形態の組成物は、変形可能で可撓性のある弾性的固体の性質を有しており、適用する際に、顕著に弾性的な柔軟性を付与する。
【0023】
ここで記載するように、安定性は、25℃で8週間、制御された環境チャンバーに組成物を配することでテストされる。このテストにおいては、サンプルの物質状態を、チャンバーに配した時に検査する。ついで、24時間、3日、1週間、2週間、4週間及び8週間後、サンプルを再度検査する。各検査において、サンプルを、組成物の異常性、例えば組成物がエマルションの形態ならば相分離、組成物がスティック形態ならば曲かり及び傾斜度合い、融解又はシネレシス(又は発汗)について調査する。また安定性を、25℃、37℃、45℃及び凍結解凍状態下で、8週間テストを繰り返すことによりさらにテストする。これらのテストのいずれかで、組成物の機能を妨害する異常性が観察された場合は、組成物は安定性を欠くものとみなされる。当業者であれば、意図する用途に基づき、組成物の機能を妨害する異常性を、容易に認識するであろう。
【0024】
極性の変性ロウ
本発明においては、少なくとも一の極性の変性ロウを含有する組成物が提供される。ここで使用される場合、「極性の変性ロウ」は、極性基又は単位を含み、変性しており、メタロセン触媒を使用して作製されるロウを称する。適切な極性の変性ロウには、その全内容が参照としてここに導入される、米国特許出願公開第20070031361号に開示されているものが含まれる。
【0025】
好ましくは、極性の変性ロウは、25000g/mol以下、好ましくは1000〜22000g/mol、特に好ましくは4000〜20000g/molの重量平均分子量Mw、15000g/mol以下、好ましくは500〜12000g/mol、特に好ましくは1000〜5000g/molの数平均分子量Mn、1.5〜10、好ましくは1.5〜5、特に好ましくは1.5〜3、さらに好ましくは2〜2.5の範囲のモル質量分布Mw/Mnを有し、メタロセン触媒により得られた、エチレン及び/又はプロピレンモノマーのホモポリマー及び/又はコポリマーロウをベースにしている。コポリマーロウのケースにおいては、コポリマーロウの全重量に基づき、一方のモノマーに由来する0.1〜30.0重量%の構造単位と、他方のモノマーに由来する70.0〜99.9重量%の構造単位を有していることが好ましい。このようなホモポリマー及びコポリマーロウは、例えばここで特定されるメタロセン触媒を使用し、その全内容が参照としてここに導入される欧州特許第571882号に記載された方法により作製することができる。適切な調製方法には、モノマーの重合が可能であると共に、例えば、メタロセン触媒下におけるオレフィンの懸濁重合、溶液重合、及び気相重合が含まれる。
【0026】
極性の変性ロウは、酸素含有ガスを用いて酸化させることにより、又は極性モノマー、例えばマレイン酸又はアクリル酸又はこれらの酸の誘導体とグラフト反応させることにより、上述したホモポリマー及びコポリマーから、公知の方式で生成させることができる。空気を用いた酸化によるメタロセンポリオレフィンロウの極性変性は、例えば欧州特許第0890583A1に記載されており、グラフト化による変性は、例えば米国特許第5,998,547号に記載されており、双方の全内容は、それらの全てが参照としてここに導入される。
【0027】
本発明において、特に好ましい極性の変性ロウは、親水性の変性ロウ(すなわち、親水性の特性を有するロウが提供されるように変性されたロウ)である。適切な例には、限定されるものではないが、無水マレイン酸、アクリラート、メタクリラート、ポリビニルピロリドン(PVP)等、親水性単位で変性されている、例えばC2-C30基、特にエチレン、プロピレン、C18-C30等の疎水性基のホモポリマー又はコポリマーが含まれる。特に好ましくは、親水性の変性ロウは、アクリラート/無水マレイン酸単位で変性した、エチレン及びプロピレンのホモポリマー及びコポリマーである。
【0028】
本発明において、特に好ましい極性の変性ロウには、疎水性の変性ロウ(すなわち、疎水性の特性を有するロウが提供されるように変性されたロウ)が含まれる。適切な例には、限定されるものではないが、例えばC2-C30基、特にエチレン、プロピレン、C18-C30等の疎水性基で変性されている、無水マレイン酸、アクリラート、メタクリラート、ポリビニルピロリドン(PVP)等の親水性のホモポリマー又はコポリマーが含まれる。
【0029】
本発明で使用される特に好ましい極性の変性ロウは、リコケア(LICOCARE)の商品名でクラリアント社(Clariant)から商業的に入手可能な、ポリプロピレン-無水マレイン酸の変性ロウ(「PPMA」)、C26-C28アルファオレフィン無水マレイン酸コポリマーの変性ロウである。このようなロウは、親水性の無水マレイン酸基と疎水性基との反応に起因してエチレン基(類)が包含されるため、C26-C28アルファオレフィン-エチレン-無水マレイン酸のコポリマー、及びポリプロピレン-エチレン-無水マレイン酸のコポリマーとして公知である。このようなロウの特定の例には、PP207、LP3349、CM401 LP3345、CA301 LP3346、及びCA302 LP3347との命名を有し、リコケアの名称でクラリアント社から市販されている製品が含まれる。
【0030】
特に好ましい実施態様において、組成物は唇用組成物であり、極性の変性ロウが示差走査熱量測定により測定された場合に、低い結晶化度を有するものであることが好ましい。極性の変性ロウは、好ましくは40%未満、さらに好ましくは30%未満、最も好ましくは20%未満の結晶化度を有する。例えば、リコケア PP207 LP3349は約11%の結晶化度を有する。このようなロウは、改善された透明度を有し、同様に、唇用組成物の光沢をあまり低減させなかった。
【0031】
好ましくは極性の変性ロウ(類)は、それらの間の全ての範囲及び部分的範囲を含み、好ましくは組成物の全重量に対して約0.1%〜約30%、より好ましくは組成物の全重量に対して約0.5%〜約20%、最も好ましくは約1%〜約15%、例えば約5%〜約15%、及び約10%〜約20%である。
【0032】
増粘剤
本発明は、エラストマー性化合物、例えば信越からKSG6、ダウ・コーニング社(Dow Corning)からトレフィル(Trefil)E-505C又はトレフィルE-506C、グラント・インダストリー社(Grant Industries)からグランシル(Gransil)(SR-CYC、SR DMF10、SR-DC556)の名称で作製され、販売されているもの、又は信越から既に構成化されているゲルの形態で市販されているもの(KSG15、KSG17、KSG16、KSG18、KSG21)、ジェネラル・エレクトリック社からのグランシルSR 5CYCゲル、グランシルSR DMF10ゲル、グランシルSR DC556ゲル、SF1204及びJK113、又は乳化エラストマー、例えば信越からKSG-210、KSG-30、KSG-31、KSG-32、KSG-33、KSG-40、KSG-41、KSG-42、KSG-43及びKSG-44の名称で販売されているものをさらに含有していてもよい。
【0033】
また組成物は、変性クレー類、例えばC10ないしC22脂肪酸の塩化アンモニウムで変性したヘクトライト類、特にクアテルニウム(quaternium)-18ベントナイト(bentonite)として公知のジステアリルジメチルアンモニウムクロリドで変性したヘクトライト、中でもレオックス社(Rheox)からベントーン(Bentone)34の名称で作製又は販売されている製品、サザンクレイ社(Southern Clay)で製造又は販売されているクレイトーン(Claytone)XL、クレイトーン34及びクレイトーン40、サザンクレイ社からクレイトーンHT、クレイトーンGR及びクレイトーンPSの名称で製造又は販売され、クアテルニウム-18ベンザルコニウムベントナイト類の名称で公知の変性クレー類、ステラルコニウム(steralkonium)ベントナイト類として公知の、ステアリルジメチルベンゾイルアンモニウムクロリドで変性したクレー類、例えばサザンクレイ社からクレイトーンAPA及びクレイトーンAFの名称で製造又は販売されている製品、及びレオックス社で製造又は販売されているバラゲル(Baragel)24をさらに含有していてもよい。
【0034】
また組成物は、シリカ、例えばヒュームドシリカをさらに含有していてもよい。ヒュームドシリカは、例えば約5nm〜200nmの範囲のナノメートル又はマイクロメートルであってよい粒子径を有する。
ヒュームドシリカは、水素-酸素炎において、揮発性ケイ素化合物を高温で加水分解することにより得られ、微細に分割されたシリカが生成される。このプロセスにより、それらの表面に多数のシラノール基を有する親水性シリカを得ることができる。このような親水性シリカは、例えばデガッサ社(Degussa)から「エアロシル(Aerosil)130(登録商標)」、「エアロシル200(登録商標)」、「エアロシル255(登録商標)」、「エアロシル300(登録商標)」及び「エアロシル380(登録商標)」、及びカボット社(Cabot)から「CAB-O-SIL HS-55(登録商標)」、「CAB-O-SIL EH-5(登録商標)」、「CAB-O-SIL LM-130(登録商標)」、「CAB-O-SIL MS-55(登録商標)」及び「CAB-O-SIL M-5(登録商標)」の名称で製造又は販売されている。
【0035】
よって化学反応により、親水性シリカの表面を化学的に変性させ、シラノール基の数を減少させることもできる。シラノール基は、例えば疎水性基で置き換えることもでき;これにより疎水性シリカが付与される。疎水性基は以下のものであってよい:(a)トリメチルシロキシル基、特にヘキサメチルジシラザンの存在下で、ヒュームドシリカを処理することにより得られるもの。このように処理されたシリカは、CFTA(第6版、1995年)に従い、「シリル化シリカ」として公知である。それらは、例えばデガッサ社から「エアロシルR812(登録商標)」、及びカボット社から「CAB-O-SIL TS-530(登録商標)」の参照名で製造又は販売されている;(b)ジメチルシリルオキシル又はポリジメチルシロキサン基、特にポリジメチルシロキサン又はジメチルジクロロシランの存在下で、ヒュームドシリカを処理することにより得られるもの。このように処理されたシリカは、CFTA(第6版、1995年)に従い、「シリル化ジメチルシリカ」として公知である。それらは、例えばデガッサ社から「エアロシルR972(登録商標)」及び「エアロシルR974(登録商標)」、及びカボット社から「CAB-O-SIL TS-610(登録商標)」及び「CAB-O-SIL TS-720(登録商標)」の参照名で製造又は販売されている;(c)シランアルコキシド類又はシロキサン類とヒュームドシリカを反応させることから誘導される基。これらの処理されたシリカは、例えばデガッサ社から「エアロシルR805(登録商標)」の参照名で製造又は販売されている製品である。
【0036】
疎水性シリカ、例えばヒュームドシリカを使用することにより、例えばロウ、フィラー及び顔料(真珠母を含む)等の不透明粒子の不在下、にじみ出ることのない、スティックの形態をした半透明又は透明な組成物を得ることができる。
【0037】
また本発明の組成物は、少なくとも一の典型的なロウをさらに含有してもよい。本発明の目的において、典型的なロウは、室温(25℃)、大気圧(760mmHg、すなわち101KPa)で固体状であり、可逆的な固体/液体の状態変化を受け、40℃を超える、さらには55℃を越え、200℃までの高い融点を有する脂質親和性脂肪化合物である。ロウをその融点にすることにより、油と混和し、顕微鏡的に均質な混合物を形成させることができるが、混合物の温度を室温まで戻すと、混合物の油中のロウが再結晶化する。混合物におけるこの再結晶化は、混合物の光沢低下の原因である。
【0038】
本発明の目的において、ロウは、化粧品及び皮膚科学において一般的に使用されているものであり;それらは、例えば天然由来のもの、特にミツロウ、オゾケライト、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、オーリクリーロウ、モクロウ、コルク繊維ロウ、サトウキビロウ、パラフィンロウ、亜炭ロウ、マイクロクリスタリンワックス、ラノリンロウ、モンタンロウ、オゾケライト類及び水素化油、例えば水素化ホホバ油、並びに合成由来のロウ、例えばエチレンの重合から誘導されたポリエチレンロウ、フィッシャー-トロプシュ合成法により得られたロウ、脂肪酸エステル及びグリセリド類で、40℃、例えば55℃以上でも固体状のもの、脂肪アルコールロウ、例えばC30-C50アルコールを含み、ペルホルマコール(Performacol)の名称(ペルホルマコール350、425及び550)で、ベイカー・ペトロライト社(Baker Petrolite)から販売されているもの、シリコーンロウ、例えばアルキル-及びアルコキシ-ポリ(ジ)メチルシロキサン類及び/又はポリ(ジ)メチル-シロキサンエステルで、40℃、例えば55℃以上でも固体状のものである。
【0039】
本発明において、融点値は、5又は10℃/分の温度上昇を伴う、「示差走査熱量測定」法により測定された、融解ピークに相当する。
【0040】
組成物は、ポリシリコーン-ポリアミドのコポリマー、例えば米国特許出願公開第2004/0170586号に開示されたもの(特に好ましいタイプのコポリマーは、ナイロン611/ジメチコーンコポリマーである)、粘着付与剤(例えば、レガライト(Regalite)の名称で販売されているもの)、脂溶性又は脂肪分散性のレオロジー変性剤(例えば、PVP)、及び/又はブロックコポリマー、例えばA-B又はA-B-A型のコポリマー(例えば、クレイトン(Kraton)の名称で販売されているもの)をさらに含有していてもよい。
しかしながら、特に好ましい実施態様において、組成物は、上述にて論議した増粘剤の存在が組成物の化粧品的特性に影響を与えない程度に少ない増粘剤しか含有しない。好ましくは、組成物は、このような増粘剤を実質的に含有しない(すなわち、約1%未満の増粘剤を含有)、このような増粘剤を本質的に含有しない(すなわち、約0.5%未満の増粘剤を含有)、又はこのような増粘剤を含有しない(すなわち、約0.1%未満の増粘剤を含有)。
【0041】
特に好ましい実施態様において、組成物は、このようなエラストマー及び/又はロウの存在が組成物の化粧品的特性に影響を与えない程度に少ないエラストマー及び/又はロウしか含有しない。好ましくは、組成物は、このようなエラストマー及び/又はロウを実質的に含有しない(すなわち、約0.5%未満のエラストマー及び/又はロウを含有)、このようなエラストマー及び/又はロウを本質的に含有しない(すなわち、約0.25%未満のエラストマー及び/又はロウを含有)、又はこのようなエラストマー及び/又はロウを含有しない(すなわち、約0.1%未満のエラストマー及び/又はロウの増粘剤を含有)。
【0042】
揮発性油
本発明の特に好ましい実施態様においては、場合によっては少なくとも一の揮発性油をさらに含有する組成物が提供される。好ましくは、少なくとも一の揮発性油は揮発性シリコーン油、揮発性炭化水素油、又はそれらの混合物である。
好ましい実施態様において、組成物は、一又は複数の揮発性シリコーン油を含有していてよい。このような揮発性シリコーン油の例には、室温で6cSt以下の粘度を有し、2〜7のケイ素原子を有する直鎖状又は環状のシリコーン油が含まれ、これらのシリコーン類は場合によっては1〜10の炭素原子のアルキル又はアルコキシ基で置換されていてもよい。本発明で使用され得る特定の油には、オクタメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘプタメチルオクチルトリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン及びそれらの混合物が含まれる。使用され得る他の揮発性油には、6cStの粘度のKF96Aで、94℃の引火点を有する、信越の市販品が含まれる。好ましくは、揮発性シリコーン油は少なくとも40℃の引火点を有する。
【0043】
揮発性シリコーン油の非限定的例を、次の表1に列挙する。
表1

【0044】
さらに、直鎖状の揮発性シリコーン油を、本発明の組成物に使用してもよい。適切な直鎖状の揮発性シリコーン油には、その内容が参照としてここに導入される米国特許第6,338,839号及び国際公開第03/042221号に記載されているものが含まれる。一実施態様において、直鎖状の揮発性シリコーン油はデカメチルテトラシロキサンである。他の実施態様において、デカメチルテトラシロキサンは、デカメチルテトラシロキサンよりもさらに揮発性である他の溶媒と組合せてもよい。
【0045】
他の好ましい実施態様において、組成物は一又は複数の揮発性非シリコーン油を含有していてよく、揮発性炭化水素油、揮発性エステル及び揮発性エーテルから選択され得る。このような揮発性非シリコーン油の例には、限定されるものではないが、8〜16の炭素原子を有する揮発性炭化水素油、及びそれらの混合物、特に分枝状のCないしC16アルカン類、例えばCないしC16イソアルカン類(イソパラフィン類としても公知)、イソドデカン、イソデカン、イソヘキサデカン、例えばイソパー(Isopar)又はペルメチル(Permethyl)の商品名で販売されている油、分枝状のCないしC16エステル、例えばイソヘキシル又はイソデシルのネオペンタノアート、及びそれらの混合物が含まれる。好ましくは、揮発性非シリコーン油は少なくとも40℃の引火点を有する。
【0046】
揮発性非シリコーン油の非限定的例を、次の表2に付与する。
表2

【0047】
溶媒/油の揮発度は、米国特許第6,338,839号に説明されているように、蒸発速度を使用して測定することができる。
【0048】
揮発性油(類)が存在する場合、それらは、好ましくは組成物の全重量に対して約5%〜約90%、さらに好ましくは組成物の全重量に対して約10%〜約80%、最も好ましくは約20%〜約75%であり、それらの間の全ての範囲及び部分的範囲を含む。
【0049】
着色剤
本発明の特に好ましい実施態様においては、場合によっては少なくとも一の着色剤をさらに含有する組成物が提供される。好ましくは、このような有色組成物は化粧品用組成物、例えば唇用組成物(例えば、リップスティック又は液状リップカラー)、マスカラ、マニキュア又はファンデーションである。
この実施態様において、少なくとも一の着色剤は、好ましくは顔料、染料、例えば脂溶性染料、真珠光沢顔料、及びパール剤から選択される。
【0050】
本発明で使用され得る代表的な脂溶性染料には、スーダンレッド、DCレッド17、DCグリーン6、β−カロテン、大豆油、スーダンブラウン、DCイエロー11、DCバイオレット2、DCオレンジ5、アナトー及びキノリンイエローが含まれる。脂溶性染料が存在する場合、それらは組成物の全重量に対して、一般的に20重量%まで、例えば0.0001%〜6%の範囲の濃度を有する。
【0051】
本発明で使用され得る真珠光沢顔料は、白色の真珠光沢顔料、例えば、チタン又はオキシ塩化ビスマスで被覆されたマイカ、有色の真珠光沢顔料、例えば、酸化鉄を有するチタンマイカ、フェリックブルー又は酸化クロムを有するチタンマイカ、上述したものから選択される有機顔料を有するチタンマイカ、及びオキシ塩化ビスマスをベースとした真珠光沢顔料から選択され得る。また真珠光沢顔料が存在するならば、それらは、組成物の全重量に対して50重量%まで、例えば0.1%〜20%、好ましくは0.1%〜15%の範囲の、それらの間の全ての範囲及び部分的範囲を含む濃度で組成物に存在する。
【0052】
本発明で使用され得る顔料は、白色、有色、無機物、有機物、ポリマー性、非ポリマー性で、被覆された又は被覆されていない顔料から選択され得る。無機顔料の代表的な例には、表面処理されていてもよい二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄、酸化クロム、マンガンバイオレット、ウルトラマリンブルー、クロム水和物及びフェリックブルーが含まれる。有機顔料の代表的な例には、カーボンブラック、D&C型の顔料、アルミニウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、コチニールカルミンをベースとしたレーキ類が含まれる。
【0053】
前記顔料が存在するならば、それらは、組成物の全重量に対して50重量%まで、例えば0.5%〜40%、さらには2%〜30%の範囲の、それらの間の全ての範囲及び部分的範囲を含む濃度で、組成物に存在し得る。ある製品のケースにおいては、真珠光沢顔料を含む顔料は、例えば組成物の重量の50%までであってよい。
【0054】
皮膜形成剤
本発明の特に好ましい実施態様においては、場合によっては少なくとも一の皮膜形成剤(皮膜形成体)をさらに含有する組成物が提供される。許容可能な皮膜形成剤は当該分野で公知であり、限定されるものではないが、その全ての内容が参照としてここに導入される、米国特許出願第2004/0170586号に開示されているものが含まれる。このような皮膜形成剤の非限定的代表例には、シリコーン樹脂、例えばMQ樹脂(例えば、トリメチルシロキシシリカート)、T-プロピルシルセスキオキサン及びMK樹脂(例えば、ポリメチルシルセスキオキサン)、シリコーンエステル、例えばその開示が参照としてここに導入される、米国特許第6,045,782号、同5,334,737号及び同4,725,658号に開示されているもの、ビニルポリマー、メタクリルポリマー、及びアクリルポリマーから選択される骨格と、ペンダントシロキサン基及びペンダントフルオロ化学基から選択される少なくとも一の鎖を含有するポリマー、例えばその開示が参照としてここに導入される、米国特許第5,209,924号、同4,693,935号、同4,981,903号、同4,981,902号、及び同4,972,037号、及び国際公開第01/32737号に開示されているもの、ポリマー、例えばその開示が参照としてここに導入される、米国特許第5,468,477号に開示されているもの(このようなポリマーの非限定的例は、VS70IBMの商品名で3M社から商業的に入手可能なポリ(ジメチルシロキサン)-g-ポリ(メタクリル酸イソブチル)である)が含まれる。
【0055】
好ましい実施態様において、皮膜形成体が存在する場合、それらは、組成物の全重量に対して0.1重量%〜30重量%の範囲の量で組成物に存在する。皮膜形成体は、組成物の全重量に対して、好ましくは0.5重量%〜20重量%、さらに好ましくは2重量%〜15重量%の範囲で、それらの間の全ての範囲及び部分的範囲を含む量で存在する。当業者であれば、本発明の皮膜形成体が商業的に入手可能であり、希釈液の形態で供給者から入荷されることを認識しているであろう。よって、ここに開示された皮膜形成体の量は、活性物質の重量パーセントで表される。
【0056】
特に好ましい実施態様において、皮膜形成剤が存在する場合、ポリオルガノシロキサン含有ポリマー(類)と皮膜形成剤の組合せた量は、組成物の全重量に対して30-50重量%である。特に好ましい実施態様において、ポリオルガノシロキサン含有ポリマーはシリコーン-ポリアミドコポリマーであり、皮膜形成剤はシリコーン樹脂、特にトリメチルシロキシシリカート、メチルシルセスキオキサン又はプロピルシルセスキオキサンである。
【0057】
本発明の好ましい実施態様において、本発明の組成物は無水である。「無水」とは、組成物が水を実質的に含有しない(すなわち水が組成物の重量に対して約0.5%未満である)ことを意味する。
【0058】
好ましい実施態様においては、無水組成物、好ましくはマスカラが提供される。このような実施態様においては、極性の変性ロウを、油(例えば植物性油、特にイソドデカン、エステル、例えばイソノナン酸イソノニル、又は水素化ポリデセン、例えばピュアシン(PureSyn)2の商品名で販売されているもの)に、高剪断下で溶解させることにより、このような組成物を調製することが好ましい。
特に好ましい無水実施態様においては、低Mwの極性の変性ロウを使用することができる。例えば、10000未満、好ましくは7000未満、最も好ましくは約3000未満(例えば、2025)のMwを有する極性の変性ロウを使用することができる。
【0059】
他の好ましい実施態様において、本発明の組成物は水をさらに含有する。この実施態様において、水は、組成物の全重量に対して、好ましくは約0.6〜約70%、より好ましくは約3.0〜60%、さらに好ましくは約5〜約50%の範囲の量で存在する。好ましくは、このような水分含有化粧品用組成物は、唇用組成物(例えば、リップスティック又は液状リップカラー)、ファンデーション又はマスカラであり、エマルション又は分散液である。
【0060】
特に好ましい実施態様において、本発明の組成物はエマルションの形態である。適切なエマルションの形態には、限定されるものではないが、水中油型、油中水型、油中水中油型、水中油中水型及びナノエマルション(その油球が非常に微細な粒子経である、すなわち約100ナノメートル(nm)未満の数平均径を有するエマルション)が含まれる。エマルションは、少なくとも一の油相と少なくとも一の水相を含有する。典型的に述べれば、エマルションは、エマルションを安定化させ、エマルションの相分離を阻害するために、界面活性剤又は界面活性剤様物質を含有する。
好ましい実施態様において、エマルション組成物は、それらが適用されるケラチン物質から、容易に除去可能である(例えば、それらは洗浄可能である)。
【0061】
本発明の特に好ましい一実施態様は、エマルションであるが、界面活性剤を実質的に含有しない(すなわち、4%未満の界面活性剤)、又は本質的に界面活性剤を含有しない(すなわち、2%未満の界面活性剤)、ケラチン物質に適用される組成物にある。特に好ましい実施態様において、エマルションは唯一の界面活性剤を含有する。
界面活性剤が存在する場合、好ましい界面活性剤には、O/W界面活性剤、例えばトゥイーン(Tween)20、イヌテック(Inutec)及びアンフィソール(Amphisol)Kの名称で販売されているものが含まれる。
本発明の特に好ましい他の一実施態様は、エマルションであるが、実質的にTEA-ステアラートフリーを含有しない(すなわち、0.25%未満のTEA-ステアラート)、又はTEA-ステアラートを含有しない(すなわち、0.05%未満のTEA-ステアラート)、ケラチン物質(毛髪又は睫毛)に適用される組成物にある。
【0062】
付加的な添加剤
本発明の組成物は、考慮される分野で通常使用される任意の添加剤をさらに含有可能である。例えば、分散剤、特にポリ(12-ヒドロキシステアリン酸)、酸化防止剤、精油、サンスクリーン剤、防腐剤、香料、フィラー、中和剤、化粧品用及び皮膚用の活性剤、例えばエモリエント、保湿剤、ビタミン類、必須脂肪酸、界面活性剤、ペースト状の化合物及びそれらの混合物を添加することができる。このような成分の非包括的列挙は、その全内容が参照としてここに導入される、米国特許出願第2004/0170586号に見出すことができる。適切な付加的成分のさらなる例は、この出願に参照されて導入されている他の参考文献に見出すことができる。このような付加的成分のまたさらなる例は、International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook(第9版、2002年)に見出される。
【0063】
当業者であれば、考慮される添加により、本発明の組成物の有利な特性が悪影響を受けないか、実質的に受けないように留意して、任意の付加的な添加剤及び/又はその量を選択するであろう。
これらの物質は、所望する特性、例えばコンシステンシー又はテクスチャーを有する組成物を調製するために、当業者により様々に選択され得る。
これらの添加剤は、(存在するならば)組成物の全重量に対して0%〜99%(例えば0.01%〜90%)、さらには0.1%〜50%で、それらの間の全ての範囲及び部分的範囲を含む割合で、組成物に存在していてよい。
【0064】
言うまでもなく、本発明の組成物は、化粧品的又は皮膚科学的に許容可能、すなわち無毒性の生理学的に許容可能な媒体を含有し、ヒトの睫毛に適用可能なものであるべきである。
このような付加的な成分の非限定的例には、非揮発性油、例えばシリコーン油(例えば、ジメチコーン、フェニルトリメチコーン、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン等)、又は炭化水素油(例えば、エステル)が含まれる。本発明の一実施態様において、本発明の組成物は、シリコーン油を実質的に含有しない(すなわち、約0.5%未満のシリコーン油を含有)。他の実施態様において、組成物は非シリコーン油を実質的に含有しない(すなわち、約0.5%未満の非シリコーン油を含有)。他の実施態様において、組成物は非揮発性油を実質的に含有しない(すなわち、約0.5%未満の非揮発性油を含有)。
【0065】
本発明の好ましい実施態様においては、本発明の組成物を、ケラチン物質をトリートメント、手入れ及び/又はメークアップするのに十分な量、ケラチン物質に適用することによる、皮膚、唇、毛髪及び粘膜等のケラチン物質をトリートメント、手入れ及び/又はメークアップする方法が提供される。好ましくは、ケラチン物質の「メークアップ」には、ケラチン物質に色調を付与するのに十分な量、ケラチン物質に少なくとも一の着色剤を適用することを含む。
【0066】
好ましい他の実施態様においては、皮膚の欠点をカバーする又は隠すのに十分な量の本発明の組成物をケラチン物質に適用することによる、ケラチン物質に関連した欠点、例えば欠陥又はしみをカバー又は隠す方法が提供される。
他の好ましい実施態様においては、ケラチン物質の外観を高めるのに十分な量、本発明の組成物をケラチン物質に適用することによる、ケラチン物質の外観を高める方法が提供される。
【0067】
上述した3つの好ましい実施態様において、少なくとも一の極性の変性ロウを含有する本発明の組成物は、ケラチン物質をトリートメント、手入れ及び/又はメークアップするのに、又はケラチン物質に関連した欠点、例えば皮膚の欠陥又はしみをカバー又は隠すのに、又はケラチン物質の外観を高めるのに十分な量、ケラチン物質の所望の領域に局所的に適用される。組成物は、必要であれば、所望の領域に好ましくは1日1回又は2回、より好ましくは1日1回適用され、ついで好ましくは、衣類又は他の物体等(例えば、グラス又はトップコート)と接触する前に乾燥させる。組成物は、好ましくは約1分未満、より好ましくは約45秒未満乾燥させる。組成物は、好ましくは乾燥しているか、又は適用前に乾燥させたか、又は予めベースコートが適用された所望の領域に適用される。最も好ましくは、組成物は、少なくとも一の着色剤、少なくとも一の皮膜形成剤、少なくとも一の増粘剤、及び/又は少なくとも一の揮発性油をさらに含有する。
【0068】
本発明の好ましい実施態様においては、改善された化粧品特性、例えば改善された適用時の感触(例えば、テクスチャー、妨害性又は粘着性の低下)、強化された防汚性、輝き/色調、及び/又はさらに長時間にわたる持続性を有する組成物が提供される。
本発明のさらなる実施態様においては、少なくとも一の極性の変性ロウを組成物に添加することを含む、組成物の粘弾性を改善する方法が提供される。この実施態様において、少なくとも一の極性の変性ロウは、所望の結果を得るのに十分な量で存在している。
本発明の他の実施態様においては、少なくとも一の極性の変性ロウを組成物に添加することを含む、組成物の防汚性、耐移り性及び/又は長時間にわたる持続性を改善する方法が提供される。この実施態様において、少なくとも一の極性の変性ロウは、所望の結果を得るのに十分な量で存在している。
【0069】
本発明のさらなる実施態様においては、少なくとも一の極性の変性ロウを組成物に添加することを含む、組成物、好ましくはメークアップ用組成物、特にファンデーション又は唇用組成物の感触又はテクスチャーを改善する方法が提供される。この実施態様において、少なくとも一の極性の変性ロウは、所望の結果を得るのに十分な量で存在している。
本発明のさらなる他の実施態様においては、少なくとも一の他の成分と少なくとも一の極性の変性ロウを、組成物を形成させるために混合することを含む、組成物を作製する方法が提供される。特に好ましい実施態様において、極性の変性ロウは水相に存在し、他の成分は油相に存在し、他の成分と極性の変性ロウは、水相と油相が組合せられる際に組合せられる。このような好ましい手順により、とりわけ、実質的又は本質的に界面活性剤を含有しないエマルションの調製が可能となる。
【0070】
特に示さない限りは、明細書及び特許請求の範囲に使用されている成分の量、反応条件、その他色々を表す全ての数値は、いずれの場合においても、「約」なる用語により加減されると理解される。従って、それとは対照的に示されていない場合、以下の明細書及び附随する特許請求の範囲に説明されている数的パラメータは、本発明により得られると思われる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。
本発明の広範囲において説明された数的範囲及びパラメータは、近似値であるにもかかわらず、特定の実施例で説明されている数値は、可能な限り正確に報告している。しかしながら、任意の数値は、それらそれぞれの測定において見出される標準偏差から必然的に生じる誤差を本質的に含む。以下の実施例は本発明を例証することを意図しており、結果としてその範囲を限定するものではない。パーセンテージは重量に基づいて付与される。
【実施例】
【0071】
実施例1及び2−ファンデーション

実施例1は脆弱な形態であった。実施例2はムース様の形態であった。
【0072】
実施例3、4及び5−長時間付着し、耐移り性のあるファンデーション

実施例3は極性の変性ロウを含有していなかった。対して、実施例4及び5は極性の変性ロウを含有していた。実施例4及び5は、実施例3よりも耐移り性があり、良好な(より長い)持続性を有していた。
【0073】
実施例6−洗浄可能なマスカラ(エマルション)

【0074】
実施例7及び8−輝きがあり、長時間耐着するマスカラ

【0075】
実施例9、10、11及び12−リップグロス

実施例9はヒュームドシリカを含有しており、透明ではなく、適用時にかなりの接着性(粘着性)がある組成物となった。実施例9及び10は無極性のロウを含有しているが、極性の変性ロウは含有していなかった。これらの組成物は透明ではあるが、粘着質であった。実施例12は本発明の代表例であり、極性の変性ロウを含有していた。実施例12は透明で、かつ非粘着質であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一の極性の変性ロウと少なくとも一の増粘剤を含有する組成物。
【請求項2】
組成物がエマルションである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
組成物が無水である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも一の着色剤をさらに含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
増粘剤がポリシリコーン-ポリアミドのコポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
増粘剤がナイロン611/ジメチコーンのコポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
増粘剤がA-Bポリマー又はA-B-Aポリマーであり、Aが硬質セグメントを表し、Bが軟質セグメントを表す、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
ポリマーがポリスチレンを含有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
増粘剤が、脂溶性又は分散性のレオロジーポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも一の脂溶性又は分散性のレオロジーポリマーがポリビニルピロリドンである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも一の極性の変性ロウが、本質的にポリプロピレン単位と無水マレイン酸単位からなるロウ、本質的にC26−C28アルファオレフィン単位と無水マレイン酸単位からなるロウ、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも一の極性の変性ロウが、本質的にポリプロピレン単位と無水マレイン酸単位からなるロウである、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも一の極性の変性ロウが、本質的にC26-C28アルファオレフィン単位と無水マレイン酸単位からなるロウである、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
皮膚に請求項1に記載の組成物を適用することを含む、皮膚をメークアップする方法。
【請求項15】
唇に請求項1に記載の組成物を適用することを含む、唇をメークアップする方法。
【請求項16】
睫に請求項1に記載の組成物を適用することを含む、睫をメークアップする方法。

【公表番号】特表2011−507961(P2011−507961A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540809(P2010−540809)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/087567
【国際公開番号】WO2009/086036
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】