説明

極細線材取出装置及びその取出方法

【課題】極めて細く軽量な極細線材であっても、多数本の極細線材から1本の極細線材を変形させずに確実かつスムーズに取り出せる極細線材取出装置を提供する
【解決手段】多数本の短寸の極細線材Tが収容される収納空間1aを有する収納容器1を備え、収納空間1aは、先端側へ段階的に内径が減少して極細線材Tの本数を段階的に減少させつつ先端取出孔10aへ誘導する階段状誘導孔10を具備し、誘導孔10の先端取出孔10aを、極細線材Tが1本のみ挿通する内径に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極細線材取出装置及びその取出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、収納容器内から細線材を取り出す装置及び取出方法としては、特許文献1及び2記載のように、多数の細線材が収納される収納容器内の先端側に先端取出孔を形成し、1本の細線材の端部に接触して先端方向に押し出す押出部材を設け、収納容器から1本の細線材を押し出して取り出すものが公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第3047565号公報
【特許文献2】実開昭59−782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、多数の細線材が、収納容器内や先端取出孔近傍に寄り集まってブリッジを生じ、細線材同士の相互の接触押圧を生じ、先端取出孔からスムーズに1本ずつ細線材を取り出すことができないという問題があった。
また、極めて細く軽量な極細線材では、(上記特許文献2に開示されたように)押出部材の先端部に当接させた(乗せた)まま、先端取出孔から突出させることは困難であった。また、押し出す途中で極細線材が傾倒すると、極細線材が取り出せないだけでなく、突出部材と先端壁部によって圧縮され極細線材が変形してしまう虞れがあった。
また、人の手で1本1本取り出すと、多大な時間と労力が費やされてしまうという問題や、作業者によって把持力を均一にすることが困難であるため、引き出しや把持の際に、極細線材を変形させてしまう虞れがあった。
【0005】
そこで、本発明は、極めて細く軽量な極細線材であっても、多数本の極細線材から1本の極細線材を変形させずに確実かつスムーズに取り出せる極細線材取出装置及び取出方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の極細線材取出装置は、多数本の短寸の極細線材が収容される収納空間を有する収納容器を備え、該収納空間は、先端側へ段階的に内径が減少して上記極細線材の本数を段階的に減少させつつ先端取出孔へ誘導する階段状誘導孔を具備し、上記誘導孔の上記先端取出孔を、上記極細線材が1本のみ挿通する内径に形成したものである。
【0007】
また、上記収納容器に収容された上記極細線材に除電エアを吹き付ける静電気発生防止手段を設けたものである。
また、上記収納容器を振動させて、上記極細線材を先端側へ送りを与える振動発生手段を設けたものである。
また、上記先端取出孔から突出する上記極細線材の突出長さ寸法を所定長さ寸法に規制するストッパ部材を設けたものである。
【0008】
また、上記収納容器の姿勢を、鉛直状態と所定傾斜角度の傾倒状態とに切換える傾動手段を設けたものである。
また、上記先端取出孔から突出した上記極細線材の先端部を、上記傾倒状態にて把持して、上記誘導孔の軸心方向に引き出すためのチャック部材を設けたものである。
なお、上記収納容器を複数個並列させて設けることも望ましい。
【0009】
また、上記誘導孔の段差面を中心に向かって下傾する擂鉢状に形成するのも望ましく、上記段差面の下傾角度をθとすると、0°<θ≦30°となるように設定するのが好ましい。
【0010】
また、本発明の極細線材取出方法は、多数本の極細線材を収容した収納容器の姿勢を鉛直状態に保ちつつ、該収納容器の階段状誘導孔に沿って上記極細線材を先端側へ送りながら段階的に送られる本数を減少させて、先端取出孔から上記極細線材の1本のみを該先端取出孔から所定長さ寸法だけ突出させ、上記収納容器の姿勢を傾倒状態にすると共に上記所定長さ寸法だけ突出している先端部を把持して上記極細線材を上記誘導孔の軸心方向に引き出す方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の極細線材取出装置及び取出方法によれば、極めて細く軽量な極細線材であっても、多数本の極細線材から1本の極細線材を変形させずに取り出すことができる。
多数の極細線材が先端取出孔近傍で寄り添うように密集して極細線材同士の相互の摩擦によって、ブリッジを生ずることを防止し、1本の極細線材を確実に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明の極細線材取出装置の実施の一形態を示す正面図である。
【図2】図1のD−D断面図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】収納容器の拡大断面図である。
【図5】図4のE−E断面図である。
【図6】本装置の使用状態の要部断面側面図である。
【図7】誘導孔の他の実施の一例を示す要部拡大断面図である。
【図8】誘導孔の別の実施の一例を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態を示す図面に基づき本発明を詳説する。
図1は本発明の極細線材取出装置の実施の一形態を示す正面図である。図2はそのD−D断面図である。図3は、図2の要部拡大図である。
本発明の極細線材取出装置(以下本装置とも言う)は、多数本の短寸の極細線材Tが収容される収納空間1aを有すると共に先端に先端取出孔10aを有する収納容器1と、収納容器1内の極細線材Tに除電エアを吹き付ける静電気発生防止手段20と、先端取出孔10aから突出する極細線材Tの突出長さ寸法を規制するストッパ部材40と、収納容器1の姿勢を鉛直状態と傾倒状態とに切り換える傾動手段50と、突出した極細線材Tを把持するチャック部材60と、を備えている。さらに、所望により収納容器1を振動させて極細線材Tを先端取出孔10aから突出させる振動発生手段30を、図1の二点鎖線のように付設する。
【0014】
極細線材Tは、タングステン等の金属製である。例えば、半導体回路等の検査のためのプローブピン(導電針)に用いられるものである。なお、本発明に於て短寸とは20mm〜100mmの長さ寸法を言う。また、極細とは線材外径寸法Dtが0. 05mm〜0. 5mmの寸法であるものを言う。また、両端部(先端部Ta及び基端部)が尖った鋭利な針状(先端加工したもの)ではなく、軸心直交状端面を有している。
【0015】
図4に、収納容器1の要部拡大断面図を示す。また、図5に図4のE−E断面図を示す。
収納容器1は、内部に略円柱状の収納空間1aが形成され、収納空間1aは、先端側へ段階的に内径が減少する階段状の誘導孔10を有している。
【0016】
誘導孔10は、最先端に、先端壁部1bを貫通する先端取出孔10aを有している。
先端取出孔10aの前段に、先端取出孔10aよりも内径が大きな第1の案内孔10b1 を有している。第1の案内孔10b1 の前段には、第1の案内孔10b1 よりも内径が大きな第2の案内孔10b2 を有している。さらに、第2の案内孔10b2 の前段には、第2の案内孔10b1 よりも内径が大きな第3の案内孔10b3 を有している。言い換えると、先端取出孔10aの内径(取出内径寸法Da)から収納容器1の内径(容器内径寸法D1 )まで段階的に拡径する複数の案内孔10bn を有している。つまり、収納容器1の内径(容器内径寸法D1 )から先端取出孔10aの内径(取出内径寸法Da)に向かって段階的に(順次)縮径する複数の案内孔10bn を有している。先端取出孔10aと案内孔10bn は同心状に配設されている。
そして、先端取出孔10aは、極細線材Tが1本のみ挿通する内径(取出内径寸法Da)に形成している。
【0017】
即ち、誘導孔10は、先端取出孔10aに接近しようとする多数本の極細線材T(図4及び図5に於て二点鎖線で示している)の本数を、案内孔10bn によって、段階的に減少させて、最終的に、1本の極細線材Tを先端取出孔10aに導き、収納空間1a(収納容器1)から突出するように形成している。
【0018】
次に、誘導孔10の段差面11の半径方向の段差寸法Yは、極細線材Tの線材外径寸法Dtよりも僅かに大きく、かつ、線材外径寸法Dtの2倍の寸法(極細線材Tの2本分)よりも小さく形成され、次の孔(案内孔10bn 又は先端取出孔10a)の外周を極細線材Tが1重で包囲するように形成している。つまり、次の(先端側方向の)孔に挿入された極細線材Tの外周を段差面11上の極細線材Tが1重で包囲するように形成している。
【0019】
例えば、極細線材Tの線材外径寸法Dtが0. 07mmである場合は、先端取出孔10aの内径を0. 1mmに設定している。先端取出孔10aの前段の第1の案内孔10b1 の内径寸法を0. 25mmに設定し、Y=0. 075mmとする。
図5に示すように、第1の案内孔10b1 では、7本の極細線材Tが挿入され、その7本の内の1本のみが次の孔である先端取出孔10aに誘導され挿入する。残りの6本は、第1の案内孔10b1 の段差面11上で、先端取出孔10aに挿入した1本の周囲を包囲して、待機状態である。
【0020】
次に、図7に示すように、各々の板状部材に内径の異なる案内孔10bn を形成すると共に、最下段の板状部材に先端取出孔10aを形成したものを積層して一体化し、先端取出孔10aへ向かって段階的に内径が減少する誘導孔10を形成するも好ましい。
【0021】
さらに、誘導孔10の段差面11を中心に向かって下傾(勾配)する擂鉢上に形成している。段差面11の下傾角度をθとすると、0°<θ≦30°となるように設定している。
段差面11を0°(水平状)よりも下傾させることで、各孔(案内孔10bn 及び先端取出孔10a)の中心に向かってスムーズに極細線材Tが移動して、先端側にある次の孔に挿入させることができる。30°よりも大きいと、段差面11上の極細線材Tが中心に寄り過ぎて、お互いに支え合ってしまい、次の孔へ極細線材Tがスムーズに移動せず、ブリッジ状となる虞れが生じる。
【0022】
また、図8に示すように、板状部材を局部的に湾曲凹状に形成して、その凹状の中心に案内孔10bn を貫設して、積層している。最下段の板状部材に、先端取出孔10aを形成すると共に上面を湾曲凹状とするも好ましい。
【0023】
図1に於て、本装置は、収納容器1を複数個(図1では10個)並列して設けている。
収納容器1の開口部がある基端側に接近可能として、静電気発生防止手段20を設けている。静電気発生防止手段20は、収納容器1の開口部から除電エアを内部の極細線材Tに吹き付けるように、除電エアを吐出す吹出部21を各収納容器1の開口部に対応させて配設している。
【0024】
図2及び図3に於て、収納容器1の先端側に、収納容器1の先端を内嵌して保持するブロック状の保持部材71を備えている。保持部材71は、各収納容器1毎に設けられている。また、収納容器1の先端壁部1b近傍には、突出した極細線材Tが挿通すると共に誘導孔10と同心状にノズル状のガイド部材73が取着された、ブロック状の支持部材72が、設けられている。保持部材71及び支持部材72は、連結部材74に取着されている。
【0025】
そして、収納容器1の先端側で、ガイド部材73よりもさらに極細線材Tの突出方向(突出矢印Qの方向)側に、第1水平軸心L1 廻りに揺動自在なストッパ部材40を設けている。
ストッパ部材40は、突出する極細線材Tの先端部Taが当接して、突出長さ寸法を所定長さ寸法Sに規制する当接面40aを有している。つまり、収納容器1の先端取出孔10a(先端壁部1b)から当接面40aの長さ寸法が、所定長さ寸法Sとなるようにストッパ部材40を配設している。
当接面40aが軸心L0 (突出する極細線材T)に直交状に配設される規制状態と、図2で示す二点鎖線のように第1水平軸心L1 廻り(揺動矢印N1 方向)に揺動して極細線材Tが突出方向に移動自在となる規制解除状態と、に切換自在に、ストッパ部材40が取付けられている。
【0026】
ストッパ部材40は、収納容器群(列)の両側に設けられると共に磁石を内蔵したロック部材41,41によって、規制状態と規制解除状態とに切換自在に設けられている。
ロック部材41,41からの磁力を受ける(磁石とストッパ部材40とが接触乃至近接する)ことで、規制状態の姿勢が保持される(規制状態)。磁力を解除する(磁石とストッパ部材40とが離間する)ことで、規制状態の姿勢が解除される(規制解除状態)。
【0027】
ストッパ部材40よりも下方位置に、チャック部材60を設けている。チャック部材60は、第3水平軸心L3 廻り(開閉揺動矢印N3 方向)に揺動自在に設けられる横断面L字状の押爪部材61と、押爪部材61の押圧部61aと共働きして極細線材Tの先端部Taを把持するゴムパッキン等の弾性部材からなる押受部材62と、を有している。
押爪部材61が図2で示す二点鎖線のように第3水平軸心L3 廻りに揺動することで、極細線材Tを把持可能な開口状態となる。チャック部材60が極細線材Tを把持状態を保持する際に、押圧部61aと押受部材62とをクリップ部材等で挟んで保持させる。
【0028】
チャック部材60は、軸心L0 と平行に配設された2本ガイドシャフト91と、ガイドシャフト91に沿って往復移動可能なスライド部材92と、を備えた往復移動手段90に着脱自在に設けている。つまり、チャック部材60は、本装置から離脱可能に(着脱自在に)設けている。
【0029】
次に、収納容器1、振動発生手段30、ストッパ部材40、チャック部材60、往復移動手段90は、板状又は枠組状の傾動ベース部材5の設置面5a上に設けている。誘導孔10の軸心L0 が、側面視で設置面5aに平行になるように、収納容器1を配設している。
【0030】
傾動ベース5部材は、固定のベース部材2に立設されると共に第2水平軸心L2 を中心とする円弧状切欠部52を有する側板51に、枢着軸54によって、第2水平軸心L2 廻り(傾動矢印N2 方向)に揺動自在に枢着されている。そして、円弧状切欠部52に挿通させたガイド軸部材53を側面に取着している。ガイド軸部材53を円弧状切欠部52の内周面に沿わせつつ第2水平軸心L2 廻りに揺動させることで、傾動ベース部材5は、安定かつスムーズに鉛直面状態から水平面状態まで傾動可能である。
【0031】
即ち、傾動ベース部材5に設けられる収納容器1は、円弧状切欠部52とガイド軸部材53と枢着軸54とから成る傾動手段50によって、姿勢が、鉛直状態と所定傾斜角度の傾倒状態と水平状態とに切換え可能である。
【0032】
上述した本装置を用いた本発明の極細線材取出方法について説明する。
多数本の短寸の極細線材Tが収容されている搬送用容器から、各収納容器1の収納空間1a内に多数本の極細線材Tを挿入する。極細線材Tは、作業者に触れられずに各収納容器1に収納される。
【0033】
静電気発生防止手段20によって、収納容器1内の極細線材Tに除電エアを吹き付ける。収納容器1と極細線材Tとの間の静電気の発生、極細線材T同士の静電気の発生を防止する。
【0034】
多数本の極細線材Tを収容した各収納容器1の姿勢を鉛直状態に保ちつつ、振動発生手段30によって、収納容器1を振動させて、収納空間1a内の極細線材Tに、先端側方向への送りを与える。
また、振動によって、極細線材T同士が接触して(擦れて)静電気が発生し、極細線材T同士が密着して詰まるのを防止するため、適時(所定時間毎に)除電エアを吹き付ける。
【0035】
図3に示すように、振動する収納容器1の収納空間1aでは、振動及び極細線材Tの自重により階段状誘導孔10に沿って、極細線材Tが先端取出孔10a方向に送られる。各案内孔10bn に挿入される極細線材Tの本数が、先端取出孔10aに近い案内孔10bn 程少なくなって、最終の先端取出孔10aには、1本のみが送られ挿通する。先端取出孔10aに多数の極細線材Tが我先にと密集して詰まるのを防止する。つまり、誘導孔10は、先端取出孔10a方向(先端側)に送られる極細線材Tの本数を段階的に減少させつつ先端取出孔10aへ誘導し、先端取出孔10aから1本のみを突出させる。
【0036】
先端取出孔10aから突出する極細線材Tの先端部Taは、ガイド部材73を通過する。ガイド部材73の先細テーパ孔に案内されて変形することなく、ストッパ部材40の当接面40aに当接する。ストッパ部材40は、極細線材Tの突出長さ寸法を所定長さ寸法Sに規制する。
【0037】
図1に示すように、各収納容器1から極細線材Tが1本ずつ所定長さ寸法Sだけ出揃った後に、傾動手段50によって、傾動ベース部材5は第2水平軸心L2 廻りに傾動される。全ての収納容器1の姿勢を、同時に鉛直状態から所定傾斜角度の傾倒状態に切り換える。
ここで、所定傾斜角度とは、ストッパ部材40が規制解除状態であっても、吐出した極細線材Tが、自重によって突出せず、収納容器1内の極細線材T同士やガイド部材73との摩擦によって、所定長さ寸法Sが保持される傾斜角度であって、水平状態よりも僅かに傾斜している状態である。
【0038】
図6に示す要部断面側面図のように、収納容器1が傾倒状態となった後、ストッパ部材40を規制解除状態にし、開口状態にしたチャック部材60を往復移動手段90によって、極細線材Tの先端部Taに接近させる。チャック部材60は、押爪部材61の押圧部61aと押受部材62との間に、先端部Taを把持する。
【0039】
チャック部材60は、収納容器1の傾倒状態にて、1本ずつ並列に配設された極細線材Tを、その並列状態を保持したままで把持すると共に往復移動手段90によって、収納容器1から離間方向(図6の左方向)に移動し、把持した各極細線材Tを誘導孔10の軸心L0 方向に引き出す。そして、チャック部材60は、1本ずつ並列に配設された極細線材T(極細線材列)を把持したままで、本装置(スライド部材92)から離脱される。
【0040】
このように、複数本の極細線材Tを、平行に並列状としてチャック部材60から突出した極細線材列(群)として取り出せる。極細線材列をチャック部材60に把持させたまま、極細線材Tを作業者の手に触れさせることなく次の工程に搬送(供給)できる。
例えば、極細プローブピンの製造工程に於て、極細線材Tの取出工程として適用すれば、極細線材Tが人の手に触れず、さらに、極細線材Tを1本ずつ並列し、かつ、チャック部材60から所定の長さ突出した、極細線材列(群)としてチャック部材60と一緒に次の自動機や工程(洗浄工程、電着工程、焼付け工程等)に供給できるため、製造工程全体の自動化や省力化に貢献できる。
【0041】
なお、本発明は、設計変更可能であって、例えば、ストッパ部材40とチャック部材60を一体状に設けても良い。また、チャック部材60が極細線材Tを把持状態を保持する際に、押圧部61aと押受部材62とを螺着によって閉じるように構成しても良い。
なお、振動発生手段30として、振動モータ、電磁石のON/OFFを利用した方式、偏心軸をモータで回転させる方式などによる上下振動が、極細線材をバラさせるために好適である。
【0042】
以上のように、本発明の極細線材取出装置は、多数本の短寸の極細線材Tが収容される収納空間1aを有する収納容器1を備え、収納空間1aは、先端側へ段階的に内径が減少して極細線材Tの本数を段階的に減少させつつ先端取出孔10aへ誘導する階段状誘導孔10を具備し、誘導孔10の先端取出孔10aを、極細線材Tが1本のみ挿通する内径に形成したので、極めて細く軽量な極細線材Tであっても、多数本から1本の極細線材Tを変形させずにスムーズに取り出すことができる。多数の極細線材Tが収納容器1内や先端取出孔10a近傍で寄り添うように密集して、極細線材T同士の相互の摩擦や、極細線材T同士の相互の支持によってブリッジを生ずることを防止し、1本の極細線材Tを迅速かつ確実に取り出すことができる。
【0043】
また、収納容器1に収容された極細線材Tに除電エアを吹き付ける静電気発生防止手段20を設けたので、収納容器1と極細線材Tとの静電気の発生、極細線材T同士の静電気の発生を防止して、収納容器1内が詰まらずより安定して1本ずつ極細線材Tを取り出すことができる。
【0044】
また、収納容器1を振動させて、極細線材Tを先端側へ送りを与える振動発生手段30を設けたので、極細線材T同士の支え合によるブリッジを防止する。確実かつより迅速に先端側に極細線材Tを送り(突出させて)、極細線材Tを取り出すことができる。
【0045】
また、先端取出孔10aから突出する極細線材Tの突出長さ寸法を所定長さ寸法Sに規制するストッパ部材40を設けたので、次工程(例えば、洗浄工程や電着工程)に於て、高精度な作業を能率良く行い得る。
【0046】
また、収納容器1の姿勢を、鉛直状態と所定傾斜角度の傾倒状態とに切換える傾動手段50を設けたので、収納容器1から極細線材Tが自重によって抜けない状態としつつ容易にチャック部材60等にて搬出できる。
【0047】
また、先端取出孔10aから突出した極細線材Tの先端部Taを、傾倒状態にて把持して、誘導孔10の軸心L0 方向に引き出すためのチャック部材60を設けたので、極細線材Tに直接人の手が触れることなく取り出すことができる。極細線材Tを収納容器1から直線状に取り出させて、取り出しの際の変形を防止できる。機械的に均一な力で先端部Taを変形させずに把持できる。
【0048】
また、上記収納容器1を複数個並列させて設けたので、極細線材Tが並列した極細線材列(群)状態にすることができ、まとめてチャッキングしたり、一度に洗浄や電着等の次工程の作業を能率良く行いえる。
【0049】
また、誘導孔10の段差面11を中心に向かって下傾する擂鉢状に形成したので、極細線材Tを先端取出孔10aへ容易かつスムーズに誘導できる。1本の極細線材Tを迅速に突出させることができる。
【0050】
また、段差面11の下傾角度をθとすると、0°<θ≦30°となるように設定したので、極細線材Tを先端取出孔10aへスムーズに誘導できる。各段差面11で各孔中心に寄り添うように密集せず、極細線材T同士の相互の摩擦や、極細線材T同士の相互の支持によって、収納容器内が詰まるのをより確実に防止し、1本の極細線材Tをより迅速に突出させることができる。
【0051】
また、本発明の極細線材取出方法は、多数本の極細線材Tを収容した収納容器1の姿勢を鉛直状態に保ちつつ、収納容器1の階段状誘導孔10に沿って極細線材Tを先端側へ送りながら段階的に送られる本数を減少させて、先端取出孔10aから極細線材Tの1本のみを先端取出孔10aから所定長さ寸法Sだけ突出させ、収納容器1の姿勢を傾倒状態にすると共に所定長さ寸法Sだけ突出している先端部Taを把持して極細線材Tを誘導孔10の軸心L0 方向に引き出すので、極めて細く軽量な極細線材Tであっても、多数本から1本の極細線材Tを変形させずに取り出すことができる。多数の極細線材Tが収納容器1内や先端取出孔10a近傍でブリッジを生ずることを防止でき、安定して1本の極細線材Tを確実に取り出すことができる。収納容器1から極細線材Tが自重によって抜けない傾倒状態にすることができ、収納容器1から1本の極細線材Tを抜き出した際に、収納容器1内の他の極細線材Tが突出するのを防止できる。極細線材Tに直接人の手が触れることなく直線状に取り出させて、変形を防止できる。
【符号の説明】
【0052】
1 収納容器
1a 収納空間
10 誘導孔
10a 先端取出孔
11 段差面
20 静電気発生防止手段
30 振動発生手段
40 ストッパ部材
50 傾動手段
60 チャック部材
S 所定長さ寸法
T 極細線材
Ta 先端部
0 軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数本の短寸の極細線材(T)が収容される収納空間(1a)を有する収納容器(1)を備え、該収納空間(1a)は、先端側へ段階的に内径が減少して上記極細線材(T)の本数を段階的に減少させつつ先端取出孔(10a)へ誘導する階段状誘導孔(10)を具備し、
上記誘導孔(10)の上記先端取出孔(10a)を、上記極細線材(T)が1本のみ挿通する内径に形成したことを特徴とする極細線材取出装置。
【請求項2】
上記収納容器(1)に収容された上記極細線材(T)に除電エアを吹き付ける静電気発生防止手段(20)を設けた請求項1記載の極細線材取出装置。
【請求項3】
上記収納容器(1)を振動させて、上記極細線材(T)を先端側へ送りを与える振動発生手段(30)を設けた請求項1又は2記載の極細線材取出装置。
【請求項4】
上記先端取出孔(10a)から突出する上記極細線材(T)の突出長さ寸法を所定長さ寸法(S)に規制するストッパ部材(40)を設けた請求項1,2又は3記載の極細線材取出装置。
【請求項5】
上記収納容器(1)の姿勢を、鉛直状態と所定傾斜角度の傾倒状態とに切換える傾動手段(50)を設けた請求項1,2,3又は4記載の極細線材取出装置。
【請求項6】
上記先端取出孔(10a)から突出した上記極細線材(T)の先端部(Ta)を、上記傾倒状態にて把持して、上記誘導孔(10)の軸心(L0 )方向に引き出すためのチャック部材(60)を設けた請求項5記載の極細線材取出装置。
【請求項7】
多数本の極細線材(T)を収容した収納容器(1)の姿勢を鉛直状態に保ちつつ、該収納容器(1)の階段状誘導孔(10)に沿って上記極細線材(T)を先端側へ送りながら段階的に送られる本数を減少させて、先端取出孔(10a)から上記極細線材(T)の1本のみを該先端取出孔(10a)から所定長さ寸法(S)だけ突出させ、
上記収納容器(1)の姿勢を傾倒状態にすると共に上記所定長さ寸法(S)だけ突出している先端部(Ta)を把持して上記極細線材(T)を上記誘導孔(10)の軸心(L0 )方向に引き出すことを特徴とする極細線材取出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−163270(P2010−163270A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8657(P2009−8657)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】