説明

楽音制御装置

【課題】操作部材の操作に応じて音を編集するとともに、編集された音に応じた力を操作者に感じさせる。
【解決手段】操作装置は、操作者によってホイール部が操作されると、その操作に応じたセンサ信号を出力する。コンピュータ装置は、操作装置から出力されたセンサ信号に基づいて、可動部のホイール部に対する相対的な位置の目標となる目標変位を生成し、ホイール部に設けられたコイルは、ホイール部と可動部との間に相互に働く力を、ホイール部及び可動部に対して非接触で付与して、目標変位へと可動部を移動させる。また、コンピュータ装置は、再生中の楽音信号において、生成した目標変位に基づく複数のループ期間と、ループ再生するよう指示する操作が検出されたタイミングに応じたループ再生開始位置とを決定し、ループ再生開始位置から各々のループ期間に含まれる楽音信号を順番に再生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作に応じて音を編集する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータを用いて楽音を編集する技術が知られている。例えば、特許文献1には、自動演奏中にループ演奏指示ボタンが押されると、音楽的に適切なループ演奏区間を設定して、ループ演奏を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−317819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、アコースティックの楽器を演奏する場合、演奏者は、楽器から発せられた音を耳で聴くのに加えて、楽器の振動によって音を感じることができる。例えば、ギターを弾く場合には、ギターの弦の振動によって音を感じることができる。一方、電子楽器を使用する場合、操作者は、鍵盤やスイッチを操作しながら音を作ったり編集したりするため、その操作によって作られる音を触覚的に感じることができない。
本発明はこのような背景に鑑みてなされたものであり、操作部材の操作に応じて音を編集するとともに、編集された音に応じた力を操作者に感じさせることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、操作者により操作される操作部材と、前記操作部材が操作されると、当該操作に応じた検出信号を出力する操作検出手段と、前記操作部材によって移動可能に支持され、当該操作部材に対して相対的に移動する可動部と、前記操作検出手段から出力された検出信号に基づいて、前記可動部の前記操作部材に対する相対的な位置の目標となる目標変位を生成する目標変位生成手段と、前記操作部材と前記可動部との間に相互に働く力を、前記操作部材及び前記可動部に対して非接触で付与して、前記目標変位生成手段によって生成された目標変位へと前記可動部を移動させる力付与手段と、楽音信号を再生する再生手段と、前記目標変位生成手段によって時系列に生成された目標変位を連ねた波形の周期に基づいて、楽音信号を繰り返し再生するときの当該楽音信号の再生期間を複数決定する再生期間決定手段と、楽音を繰り返し再生するよう指示する操作に応じた検出信号が前記操作検出手段から出力されたタイミングに応じて、前記再生手段によって再生されている楽音信号における時間軸上の位置を、楽音の再生を開始する繰り返し再生開始位置として決定する再生開始位置決定手段と、前記再生開始位置決定手段によって決定された繰り返し再生開始位置から、前記再生期間決定手段によって決定された各々の再生期間に含まれる楽音信号を前記再生手段に順番に再生させる再生制御手段とを備えることを特徴とする楽音制御装置を提供する。
【0006】
また、本発明は、操作者により操作される操作部材と、前記操作部材が操作されると、当該操作に応じた検出信号を出力する操作検出手段と、前記操作部材によって移動可能に支持され、当該操作部材に対して相対的に移動する可動部と、楽音信号を再生する再生手段と、前記操作検出手段から出力された検出信号に基づいて、楽音信号を繰り返し再生するときの当該楽音信号の再生期間を決定する再生期間決定手段と、楽音を繰り返し再生するよう指示する操作に応じた検出信号が前記操作検出手段から出力されたタイミングに応じて、前記再生手段によって再生されている楽音信号における時間軸上の位置を、楽音の再生を開始する繰り返し再生開始位置として決定する再生開始位置決定手段と、前記再生開始位置決定手段によって決定された繰り返し再生開始位置から、前記再生期間決定手段によって決定された再生期間に含まれる楽音信号を前記再生手段に繰り返し再生させる再生制御手段と、前記繰り返し再生開始位置から開始される前記再生期間に含まれる楽音信号の波形に基づいて、前記可動部の前記操作部材に対する相対的な位置の目標となる目標変位を生成する目標変位生成手段と、前記操作部材と前記可動部との間に相互に働く力を、前記操作部材及び前記可動部に対して非接触で付与して、前記目標変位生成手段によって生成された目標変位へと前記可動部を移動させる力付与手段とを備えることを特徴とする楽音制御装置を提供する。
【0007】
本発明の好ましい態様において、前記操作検出手段は、前記操作部材を移動させる操作が行われると、当該操作部材の移動量及び移動方向を表す検出信号を出力し、前記操作部材において前記繰り返し再生開始位置の変更を指示する操作がなされた場合に、前記操作検出手段から出力された検出信号の表す移動量及び移動方向に基づいて、前記繰り返し再生開始位置を変更する再生開始位置変更手段を備えてもよい。
【0008】
本発明の好ましい態様において、前記再生開始位置変更手段は、前記操作部材において前記繰り返し再生開始位置の変更を指示する操作がなされた場合に、前記再生手段によって再生されている楽音信号において、前記再生開始位置決定手段によって決定された繰り返し再生開始位置から、前記操作検出手段から出力された検出信号の表す移動量及び移動方向に対応する時間軸上の位置までの区間を特定し、当該楽音信号において音圧レベルが閾値以上となる複数のピーク位置のうち、特定された前記区間に含まれるピーク位置に前記繰り返し再生開始位置を変更してもよい。
【0009】
本発明の好ましい態様において、前記再生制御手段は、楽音信号を時間的に逆に再生させる逆再生を指示する操作を表す検出信号が前記操作検出手段から出力された場合には、前記再生期間に含まれる楽音信号を前記再生手段により逆再生させてもよい。
【0010】
本発明の好ましい態様において、前記目標変位生成手段は、前記検出信号に応じた条件の下で仮想的に行われる物理的な運動を規定した物理モデルに基づいて前記目標変位を生成してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、操作部材の操作に応じて音を編集するとともに、編集された音に応じた力を操作者に感じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態に係る楽音制御装置の構成を示す図である。
【図2】前記楽音制御装置の操作装置の構成を示す正面図である。
【図3】前記操作装置の構成を示す上面図である。
【図4】前記操作装置の構成を図2中の矢線VA方向から見た側面図である。
【図5】前記操作装置の構成を図2中の矢線VB方向から見た側面図である。
【図6】変位データと前記操作装置の可動部の位置との関係を示す図である。
【図7】前記楽音制御装置のコントロール装置の構成を示すブロック図である。
【図8】前記楽音制御装置のコンピュータ装置の構成を示すブロック図である。
【図9】前記楽音制御装置の機能構成を示す図である。
【図10】前記コンピュータ装置が用いる物理モデルの一例を示す図である。
【図11】前記コンピュータ装置のフォースフィードバック生成部の処理を示す図である。
【図12】前記フォースフィードバック生成部のパラメータ変更の一例を示す図である。
【図13】前記フォースフィードバック生成部のパラメータ変更の一例を示す図である。
【図14】前記フォースフィードバック生成部が生成する振動波形の一例を示す図である。
【図15】前記コンピュータ装置の楽音生成部の処理を示す図である。
【図16】前記楽音生成部のループ再生処理を説明する図である。
【図17】第2実施形態に係る楽音制御装置の機能構成を示す図である。
【図18】第2実施形態に係る前記楽音制御装置の楽音生成部の処理を示す図である。
【図19】第2実施形態に係る前記楽音生成部のループ再生処理を説明する図である。
【図20】変形例に係る物理モデルの一例を示す図である。
【図21】変形例に係るループ再生開始位置を変更する処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
[構成]
図1は、第1実施形態に係る楽音制御装置1の構成を示す図である。同図に示すように、楽音制御装置1は、操作装置10と、コントロール装置20と、コンピュータ装置30とを備えている。操作装置10とコントロール装置20とは通信ケーブル41を介して接続されており、コントロール装置20とコンピュータ装置30とは、通信ケーブル42を介して接続されている。
【0014】
(操作装置の構成)
次に、操作装置10の構成について説明する。図2は操作装置10の正面図、図3は操作装置10の上面図、図4は操作装置10を図2中の矢線VA方向から見た側面図、図5は操作装置10を図2中の矢線VB方向から見た側面図である。図2に示すように、操作装置10は、台車部11と、ホイール部12と、可動部13とを備えている。
【0015】
台車部11は、土台111と、支持部材112と、車軸113a,113bと、車輪114a,114bと、モータ115とを備えている。土台111上には、4つのバネ116が設けられており、支持部材112は、これらのバネ116によって支持されている。また、支持部材112は、土台111に対して図中の矢印E方向へ移動可能に取り付けられている。この支持部材112は、ホイール部12を回転可能に支持している。これにより、操作者は、ホイール部12を図中の矢印E方向に押し下げる操作(以下、「押し下げ操作」という)を行うことができる。操作者によって押し下げ操作が行われると、支持部材112を支持するバネ116が縮んで、ホイール部12及び支持部材112が図中の矢印E方向へ下がる。このとき、ホイール部12の押し下げ量が大きくなるにつれて、土台111と支持部材112との間の距離Lは小さくなる。また、ホイール部12が押し下げられた状態において操作者が押し下げ操作をやめると、バネ116の弾性力によってホイール部12及び支持部材112が図中の矢印E方向と逆方向へ跳ね上がり、押し下げられる前の位置に戻る。支持部材112には、押し量センサ14が設けられている。この押し量センサ14は、例えば反射型の光センサであり、土台111に設けられた反射板140に対して光を照射することにより、ホイール部12の押し下げ量を計測し、計測した押し下げ量に応じたセンサ信号を出力する。つまり、押し量センサ14は、ホイール部12を押し下げる操作が行われると、この操作に応じた検出信号であるセンサ信号を出力する操作検出手段である。
【0016】
また、図3に示すように、土台111の両端には、図中の矢印CD方向に貫通する貫通孔が形成されており、一方の貫通孔には車軸113aが通されており、他方の貫通孔には車軸113bが通されている。そして、車軸113aの両端には、車輪114aが取り付けられており、車軸113bの両端には、車輪114bが取り付けられている。これにより、操作者は、ホイール部12をつかんで、操作装置10を図中の矢印A方向又はB方向に移動させる操作(以下、「移動操作」という)を行うことができる。操作者によってホイール部12が図中の矢印A方向に動かされると、車輪114a,114bが反時計回りに回転し、操作装置10が図中の矢印A方向へと移動する。操作者によってホイール部12が図中の矢印B方向に動かされると、車輪114a,114bが時計回りに回転し、操作装置10が図中の矢印B方向へと移動する。また、図2に示すように、車軸113bには、モータ115が接続されている。このモータ115は、車軸113bを介して車輪114bを回転させる。モータ115には、距離センサ15が設けられている。この距離センサ15は、例えばエンコーダであり、車輪114bの回転数を計測し、その回転数に応じた2相のパルス列をセンサ信号として出力する。この車輪114bの回転数は、操作装置10の移動距離に対応する値であるから、距離センサ15は操作装置10の移動距離を計測しているといえる。また、2相のパルス列の位相関係は、車輪114bの回転方向に対応して反転する。つまり、距離センサ15は、ホイール部12を用いて操作装置10を移動させる操作が行われると、操作装置10の移動量(移動距離)及び移動方向を表す検出信号であるセンサ信号を出力する操作検出手段である。
【0017】
ホイール部12は、例えばプラスティックで形成された内部が中空の円筒状の部材であり、後述する軸131が挿入される空洞を有している。このホイール部12は、操作者により触れられた状態で操作される操作部材である。また、ホイール部12は、上述したように支持部材112によって回転可能に支持されている。これにより、操作者は、ホイール部12を図4中の矢印F方向に回転させる操作(以下、「回転操作」という)を行うことができる。操作者によって回転操作が行われると、ホイール部12は、回転軸を中心として図中の矢印F方向に回転する。ホイール部12の側面には、角度センサ16が設けられている。この角度センサ16は、例えばエンコーダであり、基準線kから見たホイール部12の回転角度を計測し、その回転角度に応じた2相のパルス列をセンサ信号として出力する。つまり、角度センサ16は、ホイール部12を回転する操作が行われると、その操作に応じた検出信号であるセンサ信号を出力する操作検出手段である。
【0018】
可動部13は、軸131と、分銅132a,132bと、鉄心133とを備えている。図2に示すように、軸131は、ホイール部12の内部を貫通するように設けられており、ホイール部12の軸受け122によって図中の矢印A方向又はB方向へ移動可能に支持されている。可動部13は、軸131がホイール部12の空洞内を移動することによって、ホイール部12に対して相対的に移動する。軸131の両端には、分銅132a,132bが設けられている。この分銅132a,132bは、質量体として用いられる金属製の重りである。また、分銅132aには、中央位置センサ17が設けられている。この中央位置センサ17は、例えばフォトインタラプタであり、図中の矢印AB方向における可動部13の中心位置を検出する。分銅132bには、位置センサ18が設けられている。この位置センサ18は、例えば光センサであり、図中の矢印AB方向における可動部13の位置を計測する。ここで、中央位置センサ17及び位置センサ18は、ホイール部12の回転操作に連れて可動部13が回転してしまうと、正確な位置を計測できなくなってしまう。そこで、分銅132aには、可動部13の連れ回りを抑止するための回転抑止部材134が設けられている。図に示すように、回転抑止部材134は、一方の端が分銅132aに固定されており、他方の端が支持部材112に形成された孔210に通されている。これにより、ホイール部12が回転されても、回転抑止部材134によって可動部13の回転が妨げられるため、可動部13が連れ回らないようになる。
【0019】
ホイール部12の内部に位置する軸131の中心部には、鉄心133が設けられている。また、ホイール部12の内部には、コイル121a,121bが設けられている。ここで、図2を参照して、可動部13の駆動原理について説明する。ホイール部12のコイル121aに電流が供給されると、コイル121aと鉄心133との間に相互に吸引力が働き、鉄心133がコイル121aに引き付けられる。これにより、可動部13が図中の矢印A方向へと移動する。一方、コイル121bに電流が供給されると、コイル121bと鉄心133との間に相互に吸引力が働き、鉄心133がコイル121bに引き付けられる。これにより、可動部13が図中の矢印B方向へと移動する。つまり、コイル121a,121bは、ホイール部12と可動部13との間に相互に働く力を、ホイール部12及び可動部13に対して非接触で付与して、可動部13を移動させる力付与手段である。
【0020】
この可動部13の駆動制御は、後述する変位データに基づいて行われる。図6は、変位データと可動部13の位置との関係を示す図である。ここでは、変位データが−750〜750までの値に設定されている場合を想定する。例えば、変位データの値が−750である場合には、可動部13の鉄心133が図中の矢印A方向の端位置へと移動される。一方、変位データの値が750である場合には、可動部13の鉄心133が図中の矢印B方向の端位置へと移動される。また、図に示すように、これらの端位置の間における可動部13の鉄心133の位置と変位データの値とは、線形の関係になっている。
【0021】
(コントロール装置の構成)
次に、コントロール装置20の構成について説明する。図7は、コントロール装置20の構成を示すブロック図である。同図に示すように、コントロール装置20は、制御部21と、電源部22と、入出力部23と、通信部24とを備えている。制御部21は、コントロール装置20の各部を制御するとともに、操作装置10の可動部13の駆動を制御する。電源部22は、コントロール装置20の各部及び操作装置10に電力を供給する。入出力部23は、操作装置10と制御部21との間の信号のやり取りを制御する。例えば、入出力部23は、操作装置10の押し量センサ14,距離センサ15,角度センサ16から出力されたセンサ信号を受け取り、制御部21に供給する。また、入出力部23は、制御部21から供給された制御信号を操作装置10へ出力する。通信部24は、例えばシリアル通信により、コンピュータ装置30とデータの送受信を行う。
【0022】
(コンピュータ装置の構成)
次に、コンピュータ装置30の構成について説明する。図8は、コンピュータ装置30の構成を示すブロック図である。同図に示すように、コンピュータ装置30は、CPU(Central Processing Unit)31と、ROM(Read Only Memory)32と、RAM(Random Access Memory)33と、記憶部34と、通信部35と、操作部36と、表示部37と、音源部38と、放音部39とを備えている。CPU31は、ROM32又は記憶部34に記憶されているプログラムを実行して各種の処理を行う。ROM32は、コンピュータ装置30の起動に必要なプログラムやデータを記憶している。RAM33は、CPU31がプログラムを実行する際のワークエリアとして使用される。記憶部34は、例えばハードディスクであり、CPU31によって実行されるプログラムや各種データを記憶している。この記憶部34には、フォースフィードバック生成ソフトウェア34aと楽音生成ソフトウェア34bとが記憶されている。通信部35は、例えばシリアル通信により、コントロール装置20とデータの送受信を行う。操作部36は、例えばキーボードとマウスであり、操作者の操作を受け付けて、その操作に応じた操作信号をCPU31に入力する。表示部37は、例えば液晶ディスプレイであり、CPU31の制御に応じた画像を表示する。音源部38は、指定された楽音を表す楽音信号を生成して出力する。放音部39は、例えばパワードスピーカと呼ばれるアンプ内蔵型のスピーカであり、楽音信号に応じた音を放音する。なお、ここでは、楽音信号を生成して音として出すことを「再生する」という。つまり、音源部38と放音部39とが協働することにより、楽音信号を再生する再生手段が実現される。
【0023】
次に、楽音制御装置1の機能構成について説明する。図9は、楽音制御装置1の機能構成を示す図である。同図に示すように、コントロール装置20の制御部21は、データ変換部201と、サーボ制御部202として機能する。データ変換部201は、操作装置10の角度センサ16,押し量センサ14,距離センサ15から出力されたセンサ信号をセンサデータに変換する。サーボ制御部202は、コンピュータ装置30から送信される変位データに基づいて、操作装置10の可動部13の駆動をサーボ制御する。また、コンピュータ装置30のCPU31は、フォースフィードバック生成部301と、楽音生成部302として機能する。フォースフィードバック生成部301は、CPU31が記憶部34に記憶されているフォースフィードバック生成ソフトウェア34aを実行することにより実現される。このフォースフィードバック生成部301は、コントロール装置20から送信されるセンサデータと予め決められた物理モデルMとに基づいて、操作装置10の可動部13のホイール部12に対する相対的な位置の目標となる目標変位を生成する。つまり、フォースフィードバック生成部301は、操作装置10から出力されたセンサ信号と物理モデルMとに基づいて目標変位を生成する目標変位生成手段である。楽音生成部302は、CPU31が記憶部34に記憶されている楽音生成ソフトウェア34bを実行することにより実現される。この楽音生成部302は、フォースフィードバック生成部301によって生成される目標変位及びコントロール装置20から送信されるセンサデータに基づいて、音源部38にて生成された楽音信号を編集する。
【0024】
ここで、フォースフィードバック生成部301にて用いられる物理モデルMについて説明する。この物理モデルMは、例えば振動数、振幅、減衰力などの条件によって変化する物理的な運動を規定するものである。図10は、物理モデルMの一例である粘性減衰系のバネモデルを示す図である。このバネモデルでは、仮想可動部mが静止している状態から乱されると、仮想バネgの弾性力によって仮想可動部mが図中の左右方向に振動を開始する。そして、摩擦などの減衰力によって仮想可動部mの振動が徐々に小さくなっていき、やがて仮想可動部mが静止するようになっている。
【0025】
[動作]
次に、上述した図9を参照して、第1実施形態に係る楽音制御装置1の動作について説明する。まず、操作者は、コンピュータ装置30の操作部36を操作して、楽音の再生を指示する。音源部38は、この操作により指示された楽音を表す楽音信号Soを生成し、放音部39に供給する。放音部39は、音源部38から供給された楽音信号Soに応じた音を放音する。これにより、操作者によって指示された楽音が再生される。続いて、操作者は、再生中の楽音を聞きながら、操作装置10を操作して、再生中の楽音を編集する。ここでは、操作者が操作装置10のホイール部12をつかんで、ホイール部12の押し下げながら、操作装置10を図2中の矢印B方向へ閾値以上の加速度で移動させる操作を行った場合を想定する。この場合、押し量センサ14は、ホイール部12の押し下げ量を計測し、計測した押し下げ量に応じたセンサ信号Sbを出力する。また、距離センサ15は、車輪114bの回転数を計測し、計測した回転数に応じた2相のパルス列をセンサ信号Scとして出力する。なお、この例では、操作者によってホイール部12の回転操作が行われていないため、角度センサ16からはセンサ信号が出力されない。
【0026】
押し量センサ14からセンサ信号Sbが出力され、距離センサ15からセンサ信号Scが出力されると、コントロール装置20のデータ変換部201は、このセンサ信号Sb,Scを入出力部23から受け取る。続いて、データ変換部201は、センサ信号Sbに基づいてホイール部12の押し下げ量を特定し、特定した押し下げ量を表すセンサデータDbを生成する。また、データ変換部201は、センサ信号Scのパルス数をカウントしてホイール部12の移動距離を特定するとともに、センサ信号Scのパルス列の位相関係に基づいて操作装置10の移動方向を特定する。そして、データ変換部201は、特定した移動距離及び移動方向を表すセンサデータDcを生成する。続いて、データ変換部201は、生成したセンサデータDb,Dcを通信部24によってコンピュータ装置30に送信する。
【0027】
コントロール装置20からセンサデータDb,Dcが送信されてくると、コンピュータ装置30のCPU31は、このセンサデータDb,Dcを通信部35によって受信する。続いて、CPU31は、エディットモードをオンにする操作が行われたか否かを判定し、この操作が行われた場合にはエディットモードをオンにする。ここでは、エディットモードをオンにする操作が、ホイール部12の押し下げながら、操作装置10を閾値以上の加速度で移動させる操作であるものとする。なお、エディットモードをオンにする操作が行われていない場合には、上述した楽音の再生が引き続き行われる。この例では、ホイール部12の押し下げ操作を表すセンサデータDbと、操作装置10の移動操作を表すセンサデータDcとが受信され、さらにセンサデータDcの表す単位時間当たりの移動距離から求められる加速度が閾値以上になるため、CPU31は、エディットモードをオンにする操作が行われたと判定し、エディットモードをオンにする。エディットモードがオンになると、フォースフィードバック生成部301及び楽音生成部302は以下の処理を行う。
【0028】
まず、フォースフィードバック生成部301が行う処理について説明する。図11は、フォースフィードバック生成部301の処理を示す図である。まず、フォースフィードバック生成部301は、受信したセンサデータDb,Dcに基づいて、物理モデルMのパラメータを変更する(ステップS11)。図12は、センサデータDbに基づくパラメータの変更の一例を示す図である。図の例では、センサデータDbに基づいて図10に示したバネモデルの振幅と減衰力とが変更される。具体的には、フォースフィードバック生成部301は、図12(a)に示すように、センサデータDbの表すホイール部12の押し下げ量が大きくなるほど、バネモデルの振幅を大きくする。さらに、フォースフィードバック生成部301は、図12(b)に示すように、センサデータDbの表すホイール部12の押し下げ量が大きくなるほど、バネモデルの減衰力を小さくする。なお、フォースフィードバック生成部301は、ホイール部12の押し下げ量が最大である場合には、減衰力を0にする。また、図13は、センサデータDcに基づくパラメータの変更の一例を示す図である。図の例では、センサデータDcに基づいて図10に示したバネモデルの振動数が変更される。具体的には、フォースフィードバック生成部301は、図に示すように、センサデータDcの表す移動距離が大きくなるほど、バネモデルの振動数を大きくする。
【0029】
続いて、フォースフィードバック生成部301は、パラメータが変更された物理モデルMを用いて仮想可動部mの振動を表す振動波形Xを生成する(図11のステップS12)。このとき生成される振動波形Xは、物理モデルMのパラメータによって異なる波形になる。例えば、上述したようにバネモデルの振動数が大きくなると、図14(a)に示すように、生成される振動波形Xの周波数が大きくなる。また、上述したようにバネモデルの振幅が大きくなると、図14(b)に示すように、生成される振動波形Xの振幅が大きくなる。また、上述したようにバネモデルの減衰力が小さくなると、図14(c)に示すように、生成される振動波形Xが0に収束するまでの時間が長くなる。なお、バネモデルの減衰力が0の場合には、振動波形Xは収束しない。
【0030】
続いて、フォースフィードバック生成部301は、生成した振動波形Xを−750〜750までの値に数値化して、可動部13の目標変位を表す変位データDxを生成する(図11のステップS13)。そして、フォースフィードバック生成部301は、生成した変位データDxを通信部35によってコントロール装置20に送信する。
【0031】
次に、楽音生成部302が行う処理について説明する。図15は、楽音生成部302の処理を示す図である。まず、楽音生成部302は、センサデータDbが受信された時点の楽音信号Soの再生位置をループ再生開始位置P0として決定する(ステップSA21)。ここでは、ホイール部12を押し下げる操作が、楽音を繰り返し再生するよう指示する操作として扱われるようになっている。つまり、楽音生成部302は、楽音を繰り返し再生するよう指示する操作に応じたセンサ信号が操作装置10から出力されたタイミングに応じて、再生されている楽音信号における時間軸上の位置を、楽音の再生を開始する繰り返し再生開始位置であるループ再生開始位置として決定する再生開始位置決定手段である。
【0032】
続いて、楽音生成部302は、フォースフィードバック生成部301にて生成された振動波形Xに基づいて、ループ再生を行うときのループ期間Tを複数決定する(ステップSA22)。この振動波形Xは、フォースフィードバック生成部301によって時系列に生成された目標変位を連ねた波形である。つまり、楽音生成部302は、フォースフィードバック生成部301によって時系列に生成された目標変位を連ねた波形の周期に基づいて、楽音信号を繰り返し再生するときの再生期間であるループ期間を複数決定する再生期間決定手段である。図16を参照して具体的に説明すると、楽音生成部302は、振動波形Xの半周期に応じた複数のループ期間Tを決定する。図の例では、振動波形Xの半周期l1に対応するループ期間T1,半周期l2に対応するループ期間T2、半周期l3に対応するループ期間T3,・・・が決定される。なお、図中の振動波形Xのように減衰振動を表す波形が用いられる場合には、決定されるループ期間Tが徐々に短くなっていき、やがて0となる。
【0033】
続いて、楽音生成部302は、上述したステップSA21にて決定されたループ再生開始位置P0と、上述したステップSA22にて決定されたループ期間Tとに基づいて、ループ再生処理を行う(図15のステップSA23)。図16を参照して具体的に説明すると、楽音生成部302は、まずループ再生開始位置P0から時間軸に沿って楽音信号を抽出していき、ループ再生開始位置P0からループ期間T1だけ経過したループ終了位置P1に到達すると、ループ再生開始位置P0に戻る。続いて、楽音生成部302は、再びループ再生開始位置P0から時間軸に沿って楽音信号を抽出していき、ループ再生開始位置P0からループ期間T2だけ経過したループ終了位置P2に到達すると、ループ再生開始位置P0に戻る。続いて、楽音生成部302は、再びループ再生開始位置P0から時間軸に沿って楽音信号を抽出していき、ループ再生開始位置P0からループ期間T3だけ経過したループ終了位置P3に到達すると、ループ再生開始位置P0に戻る。楽音生成部302は、このループ再生処理を、ループ期間Tが0になるか、操作者がホイール部12の押し下げ操作をやめる、すなわちエディットモードがオフになるまで繰り返す。このようにして抽出された楽音信号は、ループ楽音信号Slとして放音部39に供給される。これにより、ループ再生が実現される。つまり、楽音生成部302は、ループ再生開始位置から各々のループ期間に含まれる楽音信号を順番に再生させる再生制御手段である。なお、ループ再生処理が終了した場合には、再び楽音信号Soが時間軸に沿って再生される。このとき、楽音信号Soは、例えばループ再生開始位置P0から再生されてもよいし、ループ再生が開始されてからの時間経過に応じた位置から再生されてもよい。
【0034】
図9に示すように、コンピュータ装置30から変位データDxが送信されてくると、コントロール装置20のサーボ制御部202は、この変位データDxを通信部24によって受信する。続いて、サーボ制御部202は、中央位置センサ17の検出結果を用いて、操作装置10の可動部13を中心位置へと移動させる。具体的には、サーボ制御部202は、中央位置センサ17によって検出された中心位置へと可動部13を移動させる制御信号を生成し、生成した制御信号を入出力部23から操作装置10へ出力する。これにより、ホイール部12のコイル121a又は121bに電流が供給されて、可動部13が図6中の矢印AB方向における中心位置へと移動する。
【0035】
続いて、サーボ制御部202は、位置センサ18の検出結果を用いて、変位データDxが表す目標変位へと操作装置10の可動部13を移動させる。具体的には、サーボ制御部202は、変位データDxが表す目標変位へと可動部13を移動させる制御信号Sxを生成し、生成した制御信号Sxを入出力部23から操作装置10へ出力する。例えば、変位データDxの値が−750である場合には、サーボ制御部202は、可動部13の鉄心133を図6中の矢印A方向の端位置へと移動させる制御信号Sxを生成し出力する。また、変位データDxの値が750である場合には、サーボ制御部202は、可動部13の鉄心133を図6中の矢印B方向の端位置へと移動させる制御信号Sxを生成し出力する。これにより、可動部13は、変位データDxが表す目標変位へと移動する。上述したように、この変位データDxは、物理モデルMの仮想可動部mの動きに基づいて生成されている。つまり、可動部13は、物理モデルMの仮想可動部mと同じような動きをすることになる。このようにして、ホイール部12のコイル121a又は121bによって可動部13が駆動されると、可動部13の質量と加速度の変化に応じた力がホイール部12に加わり、ホイール部12が振動する。このとき、操作者は、ホイール部12を触っているため、このホイール部12の振動を体で感じる。
【0036】
また、このとき、コンピュータ装置30の放音部39は、楽音生成部302から供給された楽音信号Slに応じた音を放音する。放音部39から放音される音と、ホイール部12の振動とは、いずれも操作装置10の操作に基づいて生成されている。したがって、操作者は、ホイール部12の操作に応じて編集された音を聴きながら、編集された音に対応する振動を感じることができる。
【0037】
<第2実施形態>
次に、本発明に係る第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、フォースフィードバック生成部301及び楽音生成部302にて上述した第1実施形態とは異なる処理が行われる。なお、第2実施形態に係る楽音制御装置1の構成は、上述した第1実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0038】
[動作]
図17を参照して、第2実施形態に係る楽音制御装置1の動作について説明する。まず、操作者は、上述と同様に、コンピュータ装置30の操作部36を操作して、楽音の再生を指示する。これにより、操作者によって指示された楽音が再生される。続いて、操作者は、再生中の楽音を聞きながら、操作装置10を操作して、再生中の楽音を編集する。ここでは、操作者が操作装置10のホイール部12をつかんで、ホイール部12の回転させながら、ホイール部12を押し下げる操作を行った場合を想定する。この場合、角度センサ16は、ホイール部12の回転角度を計測し、計測した回転角度に応じた2相のパルス列をセンサ信号Saとして出力する。また、押し量センサ14は、ホイール部12の押し下げ量を計測し、計測した押し下げ量に応じたセンサ信号Sbを出力する。なお、この例では、操作者によって操作装置10の移動操作が行われていないため、距離センサ15からはセンサ信号が出力されない。
【0039】
角度センサ16からセンサ信号Saが出力され、押し量センサ14からセンサ信号Sbが出力されると、コントロール装置20のデータ変換部201は、このセンサ信号Sa,Sbを入出力部23から受け取る。続いて、データ変換部201は、センサ信号Saのパルス数をカウントしてホイール部12の回転角度を特定し、特定した回転角度を表すセンサデータDaを生成する。また、データ変換部201は、センサ信号Sbに基づいてホイール部12の押し下げ量を特定し、特定した押し下げ量を表すセンサデータDbを生成する。続いて、データ変換部201は、生成したセンサデータDa,Dbを通信部24によってコンピュータ装置30に送信する。
【0040】
コントロール装置20からセンサデータDa,Dbが送信されてくると、コンピュータ装置30のCPU31は、このセンサデータDa,Dbを通信部35によって受信する。続いて、CPU31は、ホイール部12を押し下げる操作が行われたか否かを判定し、この操作が行われた場合にはエディットモードをオンにする。この例では、ホイール部12の押し下げ操作を表すセンサデータDbが受信されるため、CPU31は、エディットモードをオンにする。エディットモードがオンになると、フォースフィードバック生成部301及び楽音生成部302は以下の処理を行う。
【0041】
まず、楽音生成部302が行う処理について説明する。図18は、楽音生成部302の処理を示す図である。楽音生成部302は、上述した第1実施形態のステップSA21と同様に、ループ再生開始位置P0を決定する(ステップSB21)。続いて、楽音生成部302は、受信したセンサデータDaの表す回転角度に基づいて、ループ期間Tnを決定する(ステップSB22)。つまり、楽音生成部302は、操作装置10から出力されたセンサ信号に基づいて、楽音を繰り返し再生するときの楽音の再生期間であるループ期間を決定する。例えば、楽音生成部302は、センサデータDaの表す回転角度が大きいほど、ループ期間Tnを長くする。続いて、楽音生成部302は、上述したステップSB21にて決定されたループ再生開始位置P0と、上述したステップSB22にて決定されたループ期間Tnとに基づいて、ループ再生処理を行う(ステップSB23)。図19を参照して具体的に説明すると、楽音生成部302は、まずループ再生開始位置P0から時間軸に沿って楽音信号を抽出していき、ループ再生開始位置P0からループ期間Tnだけ経過したループ終了位置Pnに到達すると、ループ再生開始位置P0に戻る。続いて、楽音生成部302は、再びループ再生開始位置P0から時間軸に沿って楽音信号を抽出していき、ループ終了位置Pnに到達するとループ再生開始位置P0に戻る。楽音生成部302は、このループ再生処理を、操作者がホイール部12の押し下げ操作をやめる、すなわちエディットモードがオフになるまで繰り返す。このようにして抽出された楽音信号は、ループ楽音信号Slとして放音部39に供給される。これにより、ループ再生が実現される。つまり、楽音生成部302は、ループ再生開始位置からループ期間に含まれる楽音信号を繰り返し再生させる。
【0042】
次に、フォースフィードバック生成部301が行う処理について説明する。フォースフィードバック生成部301は、楽音生成部302にて抽出されたループ楽音信号Slを取得し、取得したループ楽音信号Slの波形を振動波形Xとする。続いて、フォースフィードバック生成部301は、振動波形Xを−750〜750までの値に数値化し、可動部13の目標変位を表す変位データDxを生成する。つまり、フォースフィードバック生成部301は、ループ再生開始位置から開始されるループ期間に含まれる楽音信号の波形に基づいて、可動部13のホイール部12に対する相対的な位置の目標となる目標変位を生成する。そして、フォースフィードバック生成部301は、生成した変位データDxを通信部35によってコントロール装置20に送信する。以降の動作は、上述した第1実施形態の動作と同様である。
【0043】
以上説明した第1及び第2実施形態によれば、操作装置10の操作に応じて音を編集するとともに、編集された音に応じた力を操作者に感じさせることができる。また、上述した構成では、可動部13の軸131の両端に分銅132a,132bが設けられており、非接触で与えられる力によって左右に移動されるようになっているため、操作者の体に伝わるようなしっかりとした振動を発生させることができる。また、上述した構成では、可動部13の鉄心133が端位置へと移動された場合にも、分銅132a,132bがホイール部12に接触しないようになっているため、可動部13の動作を正確に制御することができる。さらに、上述した構成では、例えばモータなどの駆動部を可動部13に直接接続して可動部13を移動させる構成と比べて、可動部13を移動させるために必要な力が少なくて済むため、それに伴う発熱も軽減される。
【0044】
<変形例>
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の各変形例を適宜組み合わせてもよい。
(変形例1)
上述した第1実施形態において、フォースフィードバック生成部301にて用いられる物理モデルMは、図10に示した粘性減衰系のバネモデルに限らない。要するに、物理モデルMは、操作装置10から出力されるセンサ信号に応じた条件の下で仮想的に行われる物理的な運動を規定するものであればよい。図20(a)は、磁力を利用した物理モデルを示す図である。同図に示すように、この物理モデルにおいては、負極性の磁性体n1,n2の間に正極性の仮想可動部maが配置されており、仮想可動部maの磁力を変化させることで、仮想可動部maが振動するようになっている。この場合、上述したステップS11では、例えば仮想可動部maの磁力の大きさなどが変更される。また、図20(b)は、ゴムボールモデルを示す図である。同図に示すように、このゴムボールモデルにおいては、壁面w1と壁面w2との間に弾性を有する仮想可動部mbが配置されており、仮想可動部mbが静止している状態から乱されると、自身の弾性力によって壁面w1と壁面w2との間を行き来するようになっている。この場合、上述したステップS11では、例えば上述したセンサデータDaに基づいて仮想可動部mbの弾性力が変更され、上述したセンサデータDbに基づいてゴムボールモデルの減衰力が変更される。
【0045】
(変形例2)
上述した第1実施形態では、フォースフィードバック生成部301にて用いられる物理モデルMは1つだけであったが、複数の物理モデルMが用いられてもよい。この場合、フォースフィードバック生成部301は、センサデータ毎に異なる物理モデルMを選択し、選択した物理モデルMのパラメータを対応するセンサデータに基づいて変更する。続いて、フォースフィードバック生成部301は、それらの物理モデルMに基づいて複数の振動波形を生成し、生成した複数の振動波形を合成してから変位データを生成する。
【0046】
(変形例3)
上述した第1実施形態では、単一のセンサデータによって物理モデルMのパラメータを変更していたが、複数のセンサデータの組み合わせによって物理モデルMのパラメータを変更してもよい。例えば、ホイール部12の回転操作を表すセンサデータDaと、ホイール部12の押し下げ操作を表すセンサデータDbとの組み合わせによって、物理モデルMの或るパラメータを変更してもよい。
【0047】
(変形例4)
上述した第1実施形態では、物理モデルMを用いて目標変位を生成する例を挙げて説明したが、物理モデルMを用いずに目標変位を生成してもよい。この場合、コンピュータ装置30の記憶部34には、センサデータ毎に、そのセンサデータが採り得る値と、その値に応じた目標変位とが対応付けられたテーブルが記憶される。なお、センサデータのどの値にどのような目標変位を対応付けるかは任意である。例えば、センサデータの各値と、その値のセンサデータに基づいて上述のようにパラメータが変更されたときに物理モデルMによって生成される目標変位とを対応付けて記憶させておいてもよい。そして、フォースフィードバック生成部301は、受信したセンサデータの値に対応付けて記憶された目標変位を特定し、特定した目標変位に応じた変位データをコントロール装置20に送信する。
【0048】
(変形例5)
上述した第1実施形態では、物理モデルMのパラメータがセンサデータに基づいて変更されていたが、物理モデルMのパラメータの変更に用いられるものはこれに限らない。例えば、コンピュータ装置30の操作部36の操作によって物理モデルMのパラメータが変更されてもよい。あるいは、フォースフィードバック生成ソフトウェア34aによって物理モデルMのパラメータが変更されてもよい。
【0049】
(変形例6)
上述した実施形態では、ホイール部12のコイル121a,121bと可動部13の鉄心133とによって可動部13を駆動する構成を例に挙げて説明したが、可動部13を駆動する構成はこれに限らない。例えば、空気圧を利用して可動部13を駆動させてもよい。要するに、操作装置10は、ホイール部12と可動部13との間に相互に働く力を、ホイール部12及び可動部13に対して非接触で付与する力付与手段を備えていればよい。
【0050】
(変形例7)
上述した第1実施形態において、楽音生成部302は、エディットモードがオンになった後に、エディットモードをオンにするための移動操作とは逆の方向へ閾値以上の加速度で操作装置10を移動させる操作が行われた場合には、リバースループ再生処理を行ってもよい。このリバースループ生成処理では、ループ期間に含まれる楽音信号を時間的に逆に逆再生させる処理が行われる。また、ここでは、エディットモードをオンにするための移動操作とは逆の方向へ閾値以上の加速度で操作装置10を移動させる操作が、楽音信号を時間的に逆に再生させる逆再生を指示する操作として扱われるようになっている。つまり、楽音生成部302は、楽音信号を時間的に逆に再生させる逆再生を指示する操作を表すセンサ信号が操作装置10から出力された場合には、ループ期間に含まれる楽音信号を逆再生させる。
【0051】
上述した図16を参照して、リバースループ再生処理について具体的に説明する。まず、楽音生成部302は、上述したステップSA21,SA22の処理を行う。続いて、楽音生成部302は、図中のループ終了位置P1から時間軸と逆の方向に楽音信号を抽出していき、ループ再生開始位置P0に到達すると、ループ終了位置P2に戻る。続いて、楽音生成部302は、ループ終了位置P2から時間軸と逆の方向に楽音信号を抽出していき、ループ再生開始位置P0に到達すると、ループ終了位置P3に戻る。このようにして抽出された楽音信号は、ループ楽音信号Slとして放音部39に供給される。これにより、リバースループ再生が実現される。
なお、リバースループ再生が行われている間に、ホイール部12を押し下げた状態で、エディットモードをオンにするための移動操作と同じ方向へ閾値以上の加速度で操作装置10を移動させる操作が行われた場合には、上述した第1実施形態にて説明したループ再生に戻ってもよい。
【0052】
また、上述した第2実施形態においても、楽音生成部302は、エディットモードがオンになった後に、エディットモードをオンにするための移動操作とは逆の方向へ閾値以上の加速度で操作装置10を移動させる操作が行われた場合には、リバースループ再生処理を行ってもよい。上述した図19を参照して、第2実施形態に係るリバースループ再生処理について具体的に説明する。まず、楽音生成部302は、上述したステップSB21,SB22の処理を行う。続いて、楽音生成部302は、図中のループ終了位置Pnから時間軸と逆の方向に楽音信号を抽出していき、ループ再生開始位置P0に到達すると、再びループ終了位置Pnに戻る。続いて、楽音生成部302は、再びループ終了位置Pnから時間軸と逆の方向に楽音信号を抽出していき、ループ再生開始位置P0に到達すると、再びループ終了位置Pnに戻る。このようにして抽出された楽音信号は、ループ楽音信号Slとして放音部39に供給される。これにより、第2実施形態に係るリバースループ再生が実現される。
【0053】
(変形例8)
上述した実施形態において、楽音生成部302は、受信したセンサデータDbの表す押し下げ量が閾値以上である場合には、操作装置10の移動操作を表すセンサデータDcが受信されると、そのセンサデータDcの表す移動距離及び移動方向に応じてループ再生開始位置P0を変更してもよい。ここでは、ホイール部12を閾値以上の押し下げ量まで押し下げる操作が、ループ再生開始位置の変更を指示する操作として扱われるようになっている。つまり、楽音生成部302は、ホイール部12においてループ再生開始位置の変更を指示する操作がなされた場合に、操作装置10から出力されたセンサ信号の表す移動量及び移動方向に基づいて、ループ再生開始位置を変更する再生開始位置変更手段である。図21(a)を参照して具体的に説明すると、楽音生成部302は、例えば操作装置10が図中の矢印A方向へと移動された場合には、上述にて決定されたループ再生開始位置P0を、操作装置10の移動距離に応じた分だけ時間軸方向へずらす。これにより、ループ再生開始位置P0が図中の位置P01に変更される。また、楽音生成部302は、操作装置10が図中の矢印B方向へと移動された場合には、上述にて決定されたループ再生開始位置P0を、操作装置10の移動距離に応じた分だけ時間軸と逆方向へずらす。これにより、ループ再生開始位置P0が図中の位置P02に変更される。
【0054】
さらに、楽音生成部302は、楽音信号Soのピーク位置に基づいてループ再生開始位置P0を変更してもよい。図21(b)を参照して具体的に説明すると、まず楽音生成部302は、楽音信号Soに対してオンセット分析を行い、音圧レベルが閾値以上の部分となるピーク位置Q01〜Q03を検出する。続いて、楽音生成部302は、上述にて決定されたループ再生開始位置P0から、操作装置10の移動方向及び移動距離に対応する位置P01までの区間を変更区間Nとして特定する。続いて、楽音生成部302は、特定した変更区間Nに含まれるピーク位置Q03にループ再生開始位置P0をずらす。つまり、楽音生成部302は、ホイール部12において繰り返し再生開始位置の変更を指示する操作がなされた場合に、再生されている楽音信号において、ループ再生開始位置から、操作装置10から出力されたセンサ信号の表す移動量及び移動方向に対応する時間軸上の位置までの区間を特定し、この楽音信号において音圧レベルが閾値以上となる複数のピーク位置のうち、特定された区間に含まれるピーク位置にループ再生開始位置を変更する。これにより、エッジのある音をループ再生の開始点とすることができる。
また、楽音生成部302は、特定した変更区間N内に複数のピーク位置が含まれている場合には、ループ再生開始位置P0から最も近いピーク位置にループ再生開始位置P0をずらしてもよいし、或いは操作装置10の移動時の加速度に応じたピーク位置にループ再生開始位置P0をずらしてもよい。
【0055】
(変形例9)
上述した実施形態において、操作装置10には、ホイール部12の押し下げ操作を固定するロックボタンが設けられていてもよい。この場合、操作者がホイール部12を所望の所まで押し下げてこのロックボタンを押すと、操作者が押し下げ操作をやめても、ホイール部12が押し下げられた状態のまま固定される。これにより、操作者がホイール部12を押し下げ続けなくても、ループ再生を継続することができる。
【0056】
(変形例10)
上述した第1実施形態では、センサデータDb,Dcに基づいて図12及び図13に示すように物理モデルMのパラメータを変更する例を挙げて説明したが、どのセンサデータによって物理モデルMのどのパラメータを変更するか、また、センサデータの値によって物理モデルMのパラメータをどのように変更するかは任意に設定すればよい。
【0057】
(変形例11)
上述した実施形態において、コントロール装置20のデータ変換部201,サーボ制御部202は、CPUが1又は複数のプログラムを実行することにより実現されてもよいし、1又は複数のハードウェアによって実現されてもよい。また、コンピュータ装置30のフォースフィードバック生成部301,楽音生成部302は、CPU31と他のハードウェアとの協働によって実現されてもよいし、CPU31に代えて1又は複数のハードウェアによって実現されてもよい。また、CPU31によって行われる処理は、単一のプログラムによって実現されてもよいし、複数のプログラムによって実現されてもよい。また、CPU31によって実行される各プログラムは、磁気テープや磁気ディスクなどの磁気記録媒体、光ディスクなどの光記録媒体、光磁気記録媒体、半導体メモリなどの、コンピュータ装置が読み取り可能な記録媒体に記憶された状態で提供し得る。また、このプログラムを、インターネットのようなネットワーク経由でダウンロードさせることも可能である。
【符号の説明】
【0058】
1…楽音制御装置、10…操作装置、11…台車部、12…ホイール部、121a,121b…コイル、13…可動部、131…軸、132a,132b…分銅、133…鉄心、14…押し量センサ、15…距離センサ、16…角度センサ、17…中央位置センサ、18…位置センサ、20…コントロール装置、30…コンピュータ装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者により操作される操作部材と、
前記操作部材が操作されると、当該操作に応じた検出信号を出力する操作検出手段と、
前記操作部材によって移動可能に支持され、当該操作部材に対して相対的に移動する可動部と、
前記操作検出手段から出力された検出信号に基づいて、前記可動部の前記操作部材に対する相対的な位置の目標となる目標変位を生成する目標変位生成手段と、
前記操作部材と前記可動部との間に相互に働く力を、前記操作部材及び前記可動部に対して非接触で付与して、前記目標変位生成手段によって生成された目標変位へと前記可動部を移動させる力付与手段と、
楽音信号を再生する再生手段と、
前記目標変位生成手段によって時系列に生成された目標変位を連ねた波形の周期に基づいて、楽音信号を繰り返し再生するときの当該楽音信号の再生期間を複数決定する再生期間決定手段と、
楽音を繰り返し再生するよう指示する操作に応じた検出信号が前記操作検出手段から出力されたタイミングに応じて、前記再生手段によって再生されている楽音信号における時間軸上の位置を、楽音の再生を開始する繰り返し再生開始位置として決定する再生開始位置決定手段と、
前記再生開始位置決定手段によって決定された繰り返し再生開始位置から、前記再生期間決定手段によって決定された各々の再生期間に含まれる楽音信号を前記再生手段に順番に再生させる再生制御手段と
を備えることを特徴とする楽音制御装置。
【請求項2】
操作者により操作される操作部材と、
前記操作部材が操作されると、当該操作に応じた検出信号を出力する操作検出手段と、
前記操作部材によって移動可能に支持され、当該操作部材に対して相対的に移動する可動部と、
楽音信号を再生する再生手段と、
前記操作検出手段から出力された検出信号に基づいて、楽音信号を繰り返し再生するときの当該楽音信号の再生期間を決定する再生期間決定手段と、
楽音を繰り返し再生するよう指示する操作に応じた検出信号が前記操作検出手段から出力されたタイミングに応じて、前記再生手段によって再生されている楽音信号における時間軸上の位置を、楽音の再生を開始する繰り返し再生開始位置として決定する再生開始位置決定手段と、
前記再生開始位置決定手段によって決定された繰り返し再生開始位置から、前記再生期間決定手段によって決定された再生期間に含まれる楽音信号を前記再生手段に繰り返し再生させる再生制御手段と、
前記繰り返し再生開始位置から開始される前記再生期間に含まれる楽音信号の波形に基づいて、前記可動部の前記操作部材に対する相対的な位置の目標となる目標変位を生成する目標変位生成手段と、
前記操作部材と前記可動部との間に相互に働く力を、前記操作部材及び前記可動部に対して非接触で付与して、前記目標変位生成手段によって生成された目標変位へと前記可動部を移動させる力付与手段と
を備えることを特徴とする楽音制御装置。
【請求項3】
前記操作検出手段は、前記操作部材を移動させる操作が行われると、当該操作部材の移動量及び移動方向を表す検出信号を出力し、
前記操作部材において前記繰り返し再生開始位置の変更を指示する操作がなされた場合に、前記操作検出手段から出力された検出信号の表す移動量及び移動方向に基づいて、前記繰り返し再生開始位置を変更する再生開始位置変更手段を備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の楽音制御装置。
【請求項4】
前記再生開始位置変更手段は、
前記操作部材において前記繰り返し再生開始位置の変更を指示する操作がなされた場合に、
前記再生手段によって再生されている楽音信号において、前記再生開始位置決定手段によって決定された繰り返し再生開始位置から、前記操作検出手段から出力された検出信号の表す移動量及び移動方向に対応する時間軸上の位置までの区間を特定し、
当該楽音信号において音圧レベルが閾値以上となる複数のピーク位置のうち、特定された前記区間に含まれるピーク位置に前記繰り返し再生開始位置を変更する
ことを特徴とする請求項3に記載の楽音制御装置。
【請求項5】
前記再生制御手段は、楽音信号を時間的に逆に再生させる逆再生を指示する操作を表す検出信号が前記操作検出手段から出力された場合には、前記再生期間に含まれる楽音信号を前記再生手段により逆再生させる
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の楽音制御装置。
【請求項6】
前記目標変位生成手段は、前記検出信号に応じた条件の下で仮想的に行われる物理的な運動を規定した物理モデルに基づいて前記目標変位を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の楽音制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−224048(P2010−224048A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68836(P2009−68836)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】