説明

楽音装置及び楽音装置の生産方法

【課題】
電磁駆動体が響板に当接されたり離間されたりして、電子発音ができるとともに、アコースティック発音時の響板から放音される音質が劣化されない。
【解決手段】
電子発音時には、電磁駆動ユニット(電磁駆動体)21及び当接体8は付勢板バネ(付勢体)5によって響板1に付勢され、電磁駆動ユニット21によって響板1が楽音信号に基づいて振動・発音される。アコースティック発音時には、着脱レバー(離間体)35によって連結ワイヤー(離間体)2が引かれ、電磁駆動ユニット21及び当接体8が響板1から離間され、響板1の音が当接体8に伝わらず響音1の音が劣化しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、楽音装置または楽音装置の生産方法に関し、特に、楽器の響板を振動させて、この響板から楽音を発音・放音させるものに関し、楽器の響板を振動させる電磁駆動体の取り付けに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような響板(振動板)を振動させるものでは、ボルト、または木ねじなどでピアノの響板に電磁駆動体を固定し、この電磁駆動体に楽音信号を送り込んで、電磁駆動体ではなく、響板を振動させて、この響板から楽音を発音・放音させている。このような響板はフレームなどの取付け部材に取り付けられていた。
【0003】
【特許文献1】実開昭55−112985号公報
【特許文献2】特開平8−146949号公報
【特許文献3】特開平8−111896号公報
【特許文献4】特開平4−156799報
【特許文献5】特開昭53−69624号公報
【特許文献6】特開平4−56996号公報
【特許文献7】特開平5−80748号公報
【特許文献8】特開平5−73039報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような響板(振動板)を電磁駆動体の駆動部分で駆動してみると、電磁駆動体が響板にぶつかって、響板に傷をつけてしまうことがあった。また、このような電磁駆動体を響板に取り付ける際にも、ボルトや木ねじが響板を傷つけてしまうことがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本件発明は、電磁駆動体の駆動部分に接合され、響板に当接可能であるか、または響板に接合され、上記電磁駆動体の駆動部分に当接可能な、当該響板より硬度が低く、当該響板よりたわみが大きく、当該響板より柔らかい当接部材を備えた。また、本件発明は、上記に加えて、電磁駆動体を上記響板に対して付勢する付勢体を備えた。
【0006】
さらに、本件発明は、上記に加えて、この付勢体の付勢に抗して、上記電磁駆動体を移動させ、上記響板に当接していた上記当接部材を当該響板から離間させるか、または上記電磁駆動体の駆動部分に当接していた上記当接部材を当該駆動部分から離間させ、さらにこの離間状態を保持し、その上この保持状態を解除して上記当接を許容する離間体とを備えた。
【発明の効果】
【0007】
これにより、響板には響板より硬度が低く、当該響板より柔らかい当接部材が当接し、電磁駆動体が直接響板に当接しないので、電磁駆動体が響板にぶつかって、響板に傷をつけてしまうことがなくなる。そして、響板と電磁駆動体との間に、当該響板より硬度(硬さ)が低く柔らかい接合部材が介在されるので、響板と電磁駆動体とがぶつかりあって「ビリビリ」とか「ガリガリ」といったような共振による異常振動/異常音が発生してしまうことがなくなり、響板から発せられる楽音がクリアになり、響板から放音される音質が劣化しなくなる。
【0008】
多大な解析の結果、以下のことが判明した。電磁駆動体は周囲の空気を振動させない「無音振動」を起こし、響板は周囲の空気を振動させる「有音振動」を起こす。無音振動物体が有音振動物体に比べて、材質が硬く形状が小さく重量が重ければ、両者を密着接合させても両者の間に共振/共鳴は生じない。ところが、無音振動の電磁駆動体は有音振動の響板に比べて、形状は小さいが、材質はともに硬く重量もともに重い。そうすると、両者の間に共振/共鳴が生じてしまう。両者の間に、両者より柔らかくたわみが大きい当接部材を介在させれば、このような共鳴/共振は生じなくなった。
【0009】
周囲の空気に振動エネルギーを与える有音振動に有音振動が共振/共鳴する場合には、両有音振動に空気の振動がからみあって、間に当接部材を介在させても共鳴/共振が無くならない。これに対して、一方が無音振動であれば、両振動が振動する空気を介して共鳴/共振が起きず、当接部材によって両者の共鳴/共振が十分に無くなる。
【0010】
「音を放射する」硬い響板と、「音を放射しない」硬い電磁駆動体の駆動部分との間に、柔らかい当接部材が介在されているので、響板から放射される「音」に対して、電磁駆動体の駆動部分の「無音振動」が悪影響を与えてしまい、響板からの音が変質されてしまうことがなくなる。
【0011】
また、響板と電磁駆動体との間には響板より硬度が低く柔らかい当接部材が介在され、しかも電磁駆動体が響板に付勢されて押し付けられるので、ボルトや木ねじなどで電磁駆動体を響板に固定しなくて済み、響板を傷つけて響板の音響特性を不用意に変えてしまうことがなくなり、響板から放音される音質が劣化しなくなる。
【0012】
さらに、離間体によって電磁駆動体を響板に当接させたり離間させたりできるので、複数種類の楽音からなる楽音信号を響板から楽音として放射させたり、これを行なわないようにしたりできる。この場合、響板から電磁駆動体を離間できるので、楽器を通常のアコースティックな状態で使用して、響板を振動させて放音させても、電磁駆動体までが振動して響板からの音が異質なものになってしまうことがなく、響板から放音される音質が劣化しない。
【0013】
また、電磁駆動体が響板に向かって付勢されれば、電磁駆動体の駆動部分の振動が響板に抜けなく伝達され、駆動部分の振動に響板が円滑に追随し、響板の音質が悪くなることがない。これが、逆の付勢であると、電磁駆動体の駆動部分と響板と当接体との間に瞬間的に隙間ができて、駆動部分の振動に響板が円滑に追随できず、響板の音質が劣化してしまう。
【0014】
さらに、この柔らかい当接部材が響板に当接したり離間されたりするので、楽器を通常演奏するアコースティック発音時には、電磁駆動体の駆動部分(場合によって当接部材も)を響板から離間できて、響板の音振動が電磁駆動体の駆動部分に伝わって、響板からの音が変質してしまうことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(1)響板1
響板1は、木製の方形板状であり、電子ピアノ、電子オルガン、消音ピアノなどの、電子楽器またはアコースティック楽器またはこれらの結合楽器といった、実際の楽器の響板である。この響板1は、振動されて音を放射する。この響板1の材質は、乾燥されたまたは水分を含んだ木材または樹脂が含浸された、含浸されていない木材、合板、集成材、ガラスまたは硬質樹脂(アクリル)などであり、たわみが少なく、たわみ度が小さく、剛度が大きく、剛体に近い。
【0016】
この響板1は、通常のアコースティックなピアノ・オルガンなどの鍵盤楽器、消音ピアノ、電子ピアノ、電子オルガンなどの電子的な鍵盤楽器に使われる木材と同じものが用いられる。なお、チェロ、バイオリンなどの弦楽器の前板、裏板、側板、胴、指板など、木琴・太鼓などの打楽器の発音体、膜、胴などの木製部分などと同じ材質でもよい。
【0017】
上記響板1の材質は、アルミニウム、ステンレス、鉄、チタン、マグネシウム、真鍮、プラチナまたはこれらの合金、冷間圧延鋼板などの鋼板、ガラス、硬質樹脂(アクリル)などでもよい。なお、フルート、オーボエなどの管楽器の管、本体など、シンバル、トライアングルなどの打楽器の発音体、胴などの金属製部分などと同じ材質でもよい。
【0018】
ところで、響板1は平坦で、表面は平面になっている。したがって、これら響板1から発音・放音される音は平面波となり、球面波の場合に比べて、耳の位置によって左右の耳に音圧の差が生じることがないし、広い範囲にわたって音像位置が一定位置で形成されることができ、響板1に対する耳の位置がかなりずれても、左右の耳に音圧の差を感じないし、音像がずれない。
【0019】
このような響板1は、複数に分離され、それぞれがほぼ水平方向/ほぼ横向きに延びるようにそろって配置され、それぞれから高音、中音、低音が放射されれば、高音、中音、低音がほぼ垂直方向/ほぼ縦向きに並んで配置され、しかもこれら各音が平面波なので、各高音、中音、低音につき、耳の位置が左右にずれても上下にずれても、左右の耳に音圧の差を感じにくいし、耳の位置によって 音像位置がずれることがなく、聴覚上違和感が生じない。
【0020】
このような響板1は、水平方向の左右両端が楽器のフレーム、骨組など楽器本体に固定されており、両端が節となり中央部分が腹となって振動し、周囲の空気を振動させて発音する。なお、響板1…がほぼ垂直方向/ほぼ縦向きに延びるように横に並んで配置されてもよいが、そうすると、高音、中音、低音の各音域の左右の耳への音圧に差が生じるし、各音域の音像位置も耳の位置によってずれることとなり、聴覚上違和感が生じる。
【0021】
(2)楽器の全体構造
図1は楽器の全体構造を示す。この楽器はアコースティックなアップライトピアノ31の例である。上記響板1は、このアップライトピアノ31の背面側に取り付けられている。アップライトピアノ31の底板32の左側の上面には電磁駆動ユニット(電磁駆動体)21が取り付けられ、この響板1の内面(裏面)の下左側(図1で左側)に対向して接合され当接されている。
【0022】
また、上記響板1の内面(裏面)の中央には、音を放射するツィータ(スピーカー)33が接合され取付けされている。アップライトピアノ31の鍵盤の下の棚34の下面中央には着脱レバー(離間体)35が取り付けられ、この着脱レバー35と上記電磁駆動ユニット21とには連結ワイヤー(離間体)2が連結されている。
【0023】
この着脱レバー(離間体)35を引くと、連結ワイヤー2が引かれ、電磁駆動ユニット21の振動板(駆動部分)23が響板1から離間される。着脱レバー(離間体)35を解放すると、連結ワイヤー2が復帰され、電磁駆動ユニット21の振動板(駆動部分)23が響板1に当接して接合される。
【0024】
上記棚34の下面の右側には、音源ユニット36が取り付けられている。上記底板32の上面の右側には、アンプボックス37が取り付けられている。音源ユニット36からの複数種類の楽音からなる楽音信号のうち、フィルタ処理によって低音成分(中音成分も含む)が抽出されて上記電磁駆動ユニット21に送られ、当該楽音信号のうち、フィル処理によって高音成分が抽出されて上記ツィータ33に送られ楽音が発音/放射される。
【0025】
この高音部分は、複数種類の楽音からなる楽音信号のうち、2kHz付近以上の周波数の楽音がフィルタによって抽出される。これにより、高音部分は、電磁駆動ユニット21を通じて響板1から放射せず、ツィータ33から直接放射されるので、高音の減衰が少なくなる。
【0026】
(3)電磁駆動ユニット(電磁駆動体)21の取付け構造
図2及び図3は、上記電磁駆動ユニット(電磁駆動体)21の取付け構造を示す。上記響板1はアップライトピアノ31の背面の支柱(骨組)3に固定されている。上記アップライトピアノ31の底板32の上面左側には、断面が「L」字状の板状の取付け具4がボルトまたは木ねじなどで固定されている。
【0027】
このボルトまたは木ねじを緩めて、この取付け具4は前後または左右(水平方向)に位置調整可能となっている。これにより、当接体8が経年変化によって厚さが変化したり、縮んだり、膨張したりしても、響板1への最適な当接位置に調節できる。
【0028】
この取付け具4の縦の面の奥側つまり響板1側には、付勢板バネ(付勢体)5が取り付けられている。この付勢板バネ5は、帯状の板バネがすり鉢型または富士山型に成型され、その両端がボルトまたは木ねじなどで取付け具4に固定されている。
【0029】
この付勢板バネ5の頂部には、上記電磁駆動ユニット21がボルト6などで取付けられている。この付勢板バネ5によって、電磁駆動ユニット21が上記響板1に向かって/対して付勢される。
【0030】
このボルト6は、「コ」字状の連結具7及び上記付勢板バネ5の頂部を貫通して電磁駆動ユニット21に螺合螺着される。電磁駆動ユニット21の外形は円柱状の本体ケース22とこの本体ケース22の下面に設けられている円形の平坦な振動板23とからなっている。
【0031】
この振動板23の中央には、円板状の当接体8が接合され両面テープまたは接着剤などで接着されている。この両面テープまたは接着剤は、円板状の当接体8の円形の奥面の周縁に沿って取り付けられている。この当接体8の直径は例えば80mm、厚さは例えば10mmほどである。
【0032】
このように当接体8の周縁だけで振動板23に接着されているから、当接体8が響板1に当接したときの響板1への当接面と、電磁駆動ユニット21の振動板23への当接面とにおける、音響伝達/振動伝達の特性を同じまたは近似したものにでき、響板1から放音される音質が劣化しなくなり、両面テープまたは接着剤の使用量を少なくできる。
【0033】
上記当接体8の直径/大きさは、電磁駆動ユニット21の振動板23の直径/大きさより小さい。これにより、当接体8が振動板23の周縁からはみ出さない。もしはみ出ると、このはみ出し部分の音響伝達/振動伝達の特性と、はみ出ていない部分の音響伝達/振動伝達の特性とが異なってしまい、当接体8全体の音響伝達/振動伝達の特性が均一とならず、音の反射が起きたり、この反射で少々の共振が起きたりしてしまう。振動板23より小さい当接体8ならば、このようなことは起きず、響板1から放音される音質が劣化しなくなる。
【0034】
(4)楽音装置の生産方法
以上のような楽音装置の生産方法または電磁駆動ユニット21付きの楽器の生産方法は以下の通りである。
(a)当接体8を電磁駆動ユニット21の振動板23に接着/接合させる。
(b)取付け具4に、電磁駆動ユニット21、付勢板バネ5、連結具7を、ボルト6で固定するとともに、連結ワイヤー2の一端を取付け具4に挿通させて連結具7に固定する。
【0035】
(c)当接体8が響板1に当接/離間が可能なように(b)の取付け具4を楽器に固定し、着脱レバー35を楽器に固定する。
(d)ツィータ33、音源ユニット36、アンプボックス37を楽器に取り付ける。
このうち、(a)の工程は、(b)の工程の後に行なってもよい。また(d)の工程は、(c)、(b)または(a)の工程の前に行なってもよい。
【0036】
上記電磁駆動ユニット21、連結ワイヤー2、取付け具4、付勢板バネ5、連結具7、当接体8、ツィータ33、着脱レバー35、音源ユニット36、アンプボックス37の全部または一部の取付けは、いったん生産された楽器に対して、後から付加する形で取り付けられるが、楽器の生産と同時に取付けられてもよい。
【0037】
(4)着脱レバー(離間体)35及び連結ワイヤー(離間体)2
図4は、上記着脱レバー(離間体)35を示す。この着脱レバー35は、回動部11と握り部12とからなっている。回転部11は上記アップライトピアノ31の棚34の下面に回動可能に取り付けられており、握り部12は、この回動部11に一体となって、この回動部11から突出している。
【0038】
上記回動部11の周面に、上記連結ワイヤー2の一端が固定されている。この回動部11の横の棚34の下面には、保持突起13が設けられており、この保持突起13に握り部12が係合可能となっている。連結ワイヤー2の他端は、上記「L」字状の取付け具4を貫通し、上記「コ」字状の連結具7の2つの先端の間に連結固定されている。
【0039】
図2に示すように、上記着脱レバー35の握り部12を、付勢板バネ5の付勢に抗して回すと、連結ワイヤー2が引かれ、電磁駆動ユニット21及び振動板23が移動され、響板1に当接していた当接体8が響板1から離間される。握り部12を、保持突起13に係合させると、この離間状態が保持される。
【0040】
図3に示すように、握り部12を、保持突起13から外して、上記保持状態を解除すると、付勢板バネ5の付勢によって電磁駆動ユニット21及び振動板23が復動され、付勢板バネ5の付勢によって当接体8の響板1への接合及び当接が許容される。
【0041】
このように、響板1と電磁駆動ユニット21との間には響板1より硬度が低く柔らかい当接体8が介在され、しかも電磁駆動ユニット21が響板1に付勢されて押し付けられるので、ボルトや木ねじなどで電磁駆動ユニット21を響板1に固定しなくて済み、響板1を傷つけて響板1の音響特性を不用意に変えてしまうことがなくなる。
【0042】
さらに、着脱レバー35及び連結ワイヤー2によって電磁駆動ユニット21または/及び当接体8を響板1に当接させたり離間させたりできるので、複数種類の楽音からなる楽音信号を響板1から楽音として放射させたり、これを行なわないようにしたりできる。
【0043】
この場合、電磁駆動ユニット21または/及び当接体8を響板1から離間できるので、楽器を通常のアコースティックな状態で使用して、響板1を振動させて放音させても、電磁駆動ユニット21、振動板23または/及び当接体8までが振動して響板1からの音が異質なものになってしまうことがない。
【0044】
上記着脱レバー35の握り部12を、保持突起13から解放した、図4の位置には、電源スイッチ38が設けられている。この電源スイッチ38のオン/オフによって、上記音源ユニット36、アンプボックス37の電源が投入されたり、切られたりする。
【0045】
したがって、電磁駆動ユニット21及び振動板23が当接体8とともに響板1へ当接すると、これに連動して音源ユニット36、アンプボックス37の電源が投入され、上記楽音信号の発生、増幅及び響板1からの放音が可能となる。
【0046】
また、電磁駆動ユニット21及び振動板23が当接体8とともに響板1から離間すると、これに連動して音源ユニット36、アンプボックス37の電源が切られ、上記楽音信号の発生、増幅及び響板1からの放音が禁止される。
【0047】
したがって、この楽器のアコースティック演奏時には、音源ユニット36、アンプボックス37などの電子発音手段/楽音信号発生手段が作動しなくなり、不用意な発音がなされなくなる。なお、アンプボックス37から電磁駆動ユニット21及びツィータ33への接続線にオン/オフスイッチが介在され、このオン/オフスイッチが上記電源スイッチ38によって切り換えられてもよい。
【0048】
(5)当接体8
上記当接体8の材質は、発泡ウレタン製、ウレタンエラストマー製、スチレン系ポリマー、エポキシ、塩化ビニール、酢酸ビニール、合成ゴムなどの可撓性のある軟質樹脂製、布、紙、パルプなどで、密度は690kg/m3、25%圧縮強さは1.06Mpa、引張り強度は2.67Mpa、伸びは150%、引裂強度は8.60N/mm、圧縮永久歪みは7.6%である。
【0049】
この当接体8は、上記響板1または振動板23(電磁駆動ユニット21)より、密度は小さく、25%圧縮強さは小さく、引張り強度は小さく、伸びは大きく、引裂強度は小さく、圧縮永久歪みは大きい。
【0050】
上記当接体8は、上記響板1または振動板23より硬度(硬さ)が低く、当該響板1または振動板23より柔らかい。振動板23は、上記響板1より硬度(硬さ)が高く、当該響板1より硬いか、または上記響板1とほぼ同じ硬度で、当該響板1とほぼ同じ硬さである。
【0051】
このような硬度(硬さ)は、一定荷重で圧子を押し込み、その深さ、荷重をくぼみの面積で割った値で表わされる。場合によって、この硬度(硬さ)は、上記密度、25%圧縮強さ、引張り強度、伸び、引裂強度、圧縮永久歪みのいずれか、またはこれらの一部または全部の加算値/乗算値などで表わされる。
【0052】
このような当接体8の硬度(硬さ)は、上記響板1または振動板23の硬度(硬さ)の2/3乃至1/10、望ましくは1/2乃至1/5、より望ましくは1/3乃至1/4とされる。これにより、響板1と当接体8とがぶつかりあって共振による異常振動/異常音が発生してしまうことがなくなり、響板1から発せられる楽音がクリアになり、響板1から放音される音質が劣化しなくなる。
【0053】
この当接体8の硬度(硬さ)の値と、上記響板1または振動板23の硬度(硬さ)の値とが、近いと、振動板23から響板1への振動/音の伝達損失が大きくなるが、響板1と振動板23との共振による異常振動/異常音が少なくなり、響板1から放音される音質が劣化しなくなる。これらの値の差が大きくなると、振動板23から響板1への振動/音の伝達損失が小さくなるが、響板1と振動板23との共振による異常振動/異常音が増えて、響板1から放音される音質が劣化する。
【0054】
上記響板1の固有振動数と振動板23の固有振動数とは、同形同大において、ほぼ同じまたは近似している。また、上記当接体8の固有振動数と上記響板1または振動板23の固有振動数とは、同形同大において、数倍または大きく異なっている。
【0055】
また、上記当接体8の固有振動数は、選択する材質よっては、無いこともある。このような各部材の固有振動数は、各部材に力が働かないときでも減衰がない振動周波数である。この固有振動数そのもの、またはこの固有振動数付近で共振が起きる。この固有振動数は、上記部材の材質によって変化するし、部材の大きさ、幅、厚さ、形状によっても変化するので、固有振動数を対比するときは、同形同大で対比する必要がある。
【0056】
(6)電磁駆動ユニット21の構造
電磁駆動ユニット21の外形は円柱状の本体ケース22とこの本体ケース22の下面に設けられている円形の平坦な振動板23とからなっている。この振動板23及び本体ケース22は金属または硬質樹脂からなり、たわみが少なく、たわみ度が小さく、剛度が大きく、剛体に近い。電磁駆動ユニット21の中にはコイルと磁石とが内蔵され、上記本体ケース22及び振動板23の一方にコイルが連結され他方に磁石が連結される。
【0057】
上記コイルに複数種類の楽音からなる楽音信号が流れると、コイルに生じる磁界と磁石の磁界との相互作用によって、コイルまたは磁石が振動/駆動/変位し、本体ケース22に対して振動板23が振動/駆動/変位する。本体ケース22つまりコイルと磁石のうち一方を、上記響板1より重い上記底板32(取付け具4)など楽器本体側に固定し、振動板23つまり他方を上記響板1に直接または上記当接体8を介して当接(接合/取付け/連結/接着/固定を含む)させる。
【0058】
これにより、楽器本体に対して振動板23及び響板1の方を電磁駆動させて振動させることができる。電磁駆動ユニット21は、スピーカーとは異なり、それ自体は発音/放音せず、接合された他の物体を電磁駆動させて振動させ発音/放音させるものである。このような電磁駆動ユニット11…は、特開平8−146949号公報、特開平8−111896号公報などに開示されている。
【0059】
上記振動板23と響板1と当接体8の両面は、共にほぼ平坦で互いにほぼ平行になっており、当接体8の厚さもほぼ均一である。ほぼ平行であれば、平面のほか、球面、円筒面、その他の湾曲した面、多面体の面であってもよい。このように平行/厚さ均一であれば、振動板23から響板1への音響伝達/振動伝達の特性が均一となって、響板1から放音される音質が劣化しなくなる。なお、場合によって、振動板23と響板1とは平行でなくてもよい。
【0060】
上記電磁駆動体ユニット21の振動板23はスピーカーのコーンや平板振動板などと異なり、重量があって駆動させるのにパワーのある信号が供給され、それ自体は音を出すものではなく、響板1といった他の物体に振動を伝えて音を出させるものである。
【0061】
上記電磁駆動体ユニット21の振動板23自身は音を放射しないので、音の放射にあたっては、電磁駆動体ユニット21の振動板23からの発生音も考慮する必要がなくなり、響板1からの発生音だけを考慮すればよく、楽音装置全体からの発生音の分析・解析が容易になる。なお、電磁駆動体ユニット21の振動板23自身からも音が放射されてもよい。
【0062】
ここで、音を放射するには、振動する物体の周囲の空気を振動させなくてならない。したがって、響板1は周囲の空気を振動(有音振動)させるが、電磁駆動体ユニット21の振動板23は周囲の空気を振動させず(無音振動)、当接体8を介して、響板1を振動(有音振動)させるのみである。
【0063】
周囲の空気に対して振動のエネルギーを伝えることができない材質/形状/重量のとき無音振動となり、周囲の空気に対して振動のエネルギーを伝えることができる材質/形状/重量のとき有音振動となる。したがって、同じ振動を与えても、有音振動には空気抵抗がある分だけ、無音振動の振動形態とは差異が生じる。
【0064】
多大な解析の結果、無音振動物体が有音振動物体に比べて、材質が硬く形状が小さく重量が重ければ、両者を密着接合させても両者の間に共振/共鳴は生じない。ところが、無音振動の電磁駆動体ユニット21の振動板23は有音振動の響板1に比べて、形状は小さいが、材質はともに硬く重量もともに重い。そうすると、両者の間に共振/共鳴が生じてしまう。両者の間に、両者より柔らかくたわみが大きい当接体8を介在させれば、このような共鳴/共振は生じなくなった。
【0065】
当接体8の形状は両者より小さいが、大きくてもよいし、当接体8の重量は両者より小さいが、大きくてもよい。なお、周囲の空気に振動エネルギーを与える有音振動に有音振動が共振/共鳴する場合には、両有音振動に空気の振動がからみあって、間に当接体8を介在させても共鳴/共振が無くならない。これに対して、一方が無音振動であれば、両振動が振動する空気を介して共鳴/共振が起きず、当接体8によって両者の共鳴/共振が十分に無くなる。
【0066】
(7)他の実施の形態
本件発明は上記実施例に限定されず、本件発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記当接体8は、電磁駆動ユニット21の振動板23に接着(接合/取付け/連結/固定を含む)される代わりに、響板1の方に接着されてもよい。この場合、当接体8に対して、電磁駆動ユニット21の振動板23が当接したり離間したりする。
【0067】
上記当接体8は複数に分割されてもよく、この複数の当接体8の厚さ・長さ・幅・大きさが異なっていてもよいし、当接体8の厚さは均一でなくてもよく、形状は方形、多角形、環状円形、環状多角形など円形以外でもよい。上記当接体8は省略されてもよいし、電磁駆動ユニット21の振動板23より大きくてはみ出ていてもよいし、振動板23と同じ大きさでもよい。
【0068】
上記ツィータ33は、スピーカーでもよいし、小型の電磁駆動ユニットでも良いし、省略されてもよい。付勢板バネ(付勢体)5は、電磁駆動ユニット21を響板1へ押し付けているが、電磁駆動ユニット21を響板1へ引っ張ってもよい。この場合、電磁駆動ユニット21を引っ張る1つまたは複数の弾性体が支柱3と電磁駆動ユニット21との間に架け渡される。
【0069】
上記連結ワイヤー2は棒のようなもので、電磁駆動ユニット21を響板1に向かって押し付けるものでもよい。この場合、付勢板バネ5は、電磁駆動ユニット21を、響板1に向かってではなく取付け具4に向かって付勢する。そして、付勢板バネ5は、電磁駆動ユニット21と取付け具4との間において両者を引き合うように付勢する。
【0070】
本件発明の装置を取り付ける楽器は、アップライトピアノのほか、グランドピアノでもよい。この場合、響板1はほぼ垂直方向/ほぼ縦向きではなくほぼ水平方向/ほぼ横向きに配置されるので、電磁駆動ユニット21及び取付け具4もほぼ横向き/ほぼ水平方向向きにされて取り付けられる。
【0071】
付勢板バネ(付勢体)5による電磁駆動ユニット21の付勢は、取付け具4に向かってより、響板1に向かっての方がよい。なぜなら、電磁駆動ユニット21が響板1に押し付けられれば、電磁駆動ユニット21の振動が響板1に抜けなく伝達され、響板1の音質が悪くなることがない。
【0072】
逆に、電磁駆動ユニット21が取付け具4に押し付けられれば、電磁駆動ユニット21の振動板23の当接体8と響板1とが瞬間的に離間してしまうことが生じ、電磁駆動ユニット21の振動が響板1に伝わるときに抜けが生じてしまい、響板1の音質が悪くなることがある。
【0073】
上記響板1が複数の場合には、複数の電磁駆動ユニット21、連結ワイヤー2、取付け具4、付勢板バネ5、連結具7、当接体8、着脱レバー35または/及びツィータ33が複数の響板1それぞれに設けられる。この場合、複数の連結ワイヤー2が1つの着脱レバー35に連結されても良い。
【0074】
電磁駆動ユニット21及び取付け具4の取付け位置は、響板1の端部ではなく、中央に近いところまたは中央でも良いし、ツィータ33は響板1の中央ではなく、端部に近いところまたは端部に近いところでも良い。電磁駆動ユニット21及び取付け具4またはツィータ33は、1つの響板1に複数取り付けられてもよい。この場合、電磁駆動ユニット21及び取付け具4またはツィータ33は、響板1の両端部の互いに対称な位置に取り付けられる。
【0075】
着脱レバー(離間体)35には、電磁駆動ユニット21を響板1に着脱させる連結ワイヤー(離間体)2のほか、消音ピアノの消音/発音を切り換えるための切換ワイヤーも連結されても良い。この場合、消音ピアノの発音時(アコーステック発音時)には、電磁駆動ユニット21の振動板23が響板1から離間され、消音ピアノの消音時(電子発音時)には、電磁駆動ユニット21の振動板23が響板1に当接される。
【0076】
この消音ピアノの消音時(電子発音時)でも、さらに電気的に切り換えられ、音源ユニット36からの楽音信号が電磁駆動ユニット21に送られるか、若しくはヘッドフォン(図示せず)または外部スピーカー(図示せず)へ送られる。
【0077】
上記複数種類の楽音からなる楽音信号は、複数種類の楽器、音色、音高または/及びタッチの楽音の信号からなっており、ポリフォニックに発音される楽音の信号であり、低音、中音、高音の各周波数帯域の楽音が含まれている。このような楽音信号には、楽器の弦自体、管自体、打自体の部分の楽音の信号ほか、響板部分の楽音の信号も含まれるが、弦自体、管自体、打自体の部分の楽音の信号のみでもよいし、響板部分の楽音の信号のみでもよい。
【0078】
(8)他の発明の効果
[2]上記当接部材の大きさは電磁駆動体の駆動部分の大きさより小さいことを特徴とする請求項1記載の楽音装置。これにより、当接体が電磁駆動体の駆動部分の周縁からはみ出さない。もしはみ出ると、このはみ出し部分の音響伝達/振動伝達の特性と、はみ出ていない部分の音響伝達/振動伝達の特性とが異なってしまい、当接体全体の音響伝達/振動伝達の特性が均一とならず、響板から放音される音質が劣化する。
【0079】
[3]上記響板には音を放射する放音体/ツィータが当該響板から離間しないように接合され、 上記複数種類の楽音からなる楽音信号のうち、低音成分が上記電磁駆動体に送られ、当該楽音信号のうち、高音部分が上記放音体に送られることを特徴とする請求項1または2記載の楽音装置。これにより、高音は、電磁駆動体を通じて響板から放射せず、放音体/ツィータから直接放射されるので、高音の減衰が少なくなる。
【0080】
[4]上記電磁駆動体の駆動部分の表面と、上記響板の表面とはほぼ平行であり、上記当接部材の厚さはほぼ均一であり、 上記電磁駆動体の駆動部分または/及び上記響板は上記響板よりたわみが小さく、 上記電磁駆動体の駆動部分自身は音を放射しないことを特徴とする請求項1、2または3記載の楽音装置。
【0081】
このように平行であれば、電磁駆動体の駆動部分から響板への音響伝達/振動伝達の特性が均一となって、響板から放音される音質が劣化しなくなる。また、電磁駆動体の駆動部分自身は音を放射しないので、音の放射にあたっては、連結部材からの発生音を考慮する必要がなくなるし、電磁駆動体の駆動部分からの発生音も考慮する必要がなくなり、響板からの発生音だけを考慮すればよく、楽音装置全体からの発生音の分析・解析が容易になる。
【0082】
[5]上記響板は、ほぼ水平方向に延びており、複数の響板がほぼ垂直方向に並んで配置されていることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の楽音装置。これにより、各響板からの各音の発生体が縦に並んで配置され、しかもこれら各音が平面波なので、各音ごとにつき、耳の位置が左右にずれても上下にずれても、左右の耳に音圧の差を感じにくいし、耳の位置によって 音像位置がずれることがなく、聴覚上違和感が生じないし、たとえ上記異常振動/異常音が発生しても左右の耳に音圧の差として感じられず、この異常振動/異常音が目立たず、響板から放音される音質が劣化しなくなる。
【0083】
[6]上記電磁駆動体および当接部材を響板から離間または上記電磁駆動体を当接部材及び響板から離間させるときには、上記楽音信号の上記放音体への送り込みを禁止する、上記電磁駆動体および当接部材を響板に当接または上記電磁駆動体を当接部材及び響板に当接させるときには、上記楽音信号の上記放音体への送り込みを許容する切換手段をさらに備えていることを特徴とする請求項3、4または5記載の楽音装置。
【0084】
[7]上記電磁駆動体および当接部材を響板から離間または上記電磁駆動体を当接部材及び響板から離間させるときには、上記楽音信号の電磁駆動体への送り込みを禁止する、上記電磁駆動体および当接部材を響板に当接または上記電磁駆動体を当接部材及び響板に当接させるときには、上記楽音信号の電磁駆動体への送り込みを許容する切換手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の楽音装置。
【0085】
[8]振動されて音を放射する楽器の響板と、複数種類の楽音からなる楽音信号を機械的変化に変換して、楽器の響板を駆動させて音を放射させる電磁駆動体と、を用いて、 上記響板より硬度が低く、当該響板より柔らかい当接部材を、上記電磁駆動体の駆動部分に接合させて上記響板に当接可能とさせるか、または上記響板に接合させて上記電磁駆動体の駆動部分に当接可能とさせ、 上記電磁駆動体を上記響板に対して付勢する付勢体を取り付け、 この付勢体の付勢に抗して、上記電磁駆動体を移動させ、上記響板に当接していた上記当接部材を当該響板から離間させるか、または上記電磁駆動体の駆動部分に当接していた上記当接部材を当該駆動部分から離間させ、さらにこの離間状態を保持し、その上この保持状態を解除して上記当接を許容する離間体を取り付けることを特徴とする楽音装置の生産方法。
【0086】
[9]上記当接部材の硬度(硬さ)は、上記響板、電磁駆動体の駆動部分の硬度(硬さ)の2/3乃至1/10、望ましくは1/2乃至1/5、より望ましくは1/3乃至1/4であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載の楽音装置。これにより、響板と電磁駆動体の駆動部分とがぶつかりあって共振による異常振動/異常音が発生してしまうことがなくなり、響板から発せられる楽音がクリアになり、響板から放音される音質が劣化しなくなる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
電磁駆動体が響板に当接されたり離間されたりして、電子発音ができるとともに、アコースティック発音時の響板から放音される音質が劣化されない。電子発音時には、電磁駆動ユニット(電磁駆動体)21及び当接体8は付勢板バネ(付勢体)5によって響板1に付勢され、電磁駆動ユニット21によって響板1が楽音信号に基づいて振動・発音される。アコースティック発音時には、着脱レバー(離間体)35によって連結ワイヤー(離間体)2が引かれ、電磁駆動ユニット21及び当接体8が響板1から離間され、響板1の音が当接体8に伝わらず響音1の音が劣化しない。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】アップライトピアノ31の楽器の全体構造を示す。
【図2】電磁駆動ユニット(電磁駆動体)21の取付け構造を示し、当接体8が響板1から離間される状態を示す。
【図3】電磁駆動ユニット(電磁駆動体)21の取付け構造を示し、当接体8が響板1に当接される状態を示す。
【図4】当接体8の響板1への離間/当接を切り換える、着脱レバー(離間体)35を示す。
【符号の説明】
【0089】
1…響板、2…連結ワイヤー(離間体)、
3…支柱、4…取付け具、
5…付勢板バネ(付勢体)、6…ボルト、
7…連結具、8…当接体(当接部材)、
11…回動部、12…握り部、
13…保持突起、21…電磁駆動ユニット(電磁駆動体)、
22…本体ケース、23…振動板(駆動部分)、
31…アップライトピアノ、32…底板、
33…ツィータ(スピーカー)(放音体)、34…棚、
35…着脱レバー(離間体)、36…音源ユニット、
37…アンプボックス、38…電源スイッチ(切換手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動されて音を放射する楽器の響板と、
複数種類の楽音からなる楽音信号を機械的変化に変換して、上記楽器の響板を駆動させて音を放射させる電磁駆動体と、
この電磁駆動体の駆動部分に接合され、上記響板に当接可能であるか、または上記響板に接合され、上記電磁駆動体の駆動部分に当接可能な、当該響板よりたわみが多く、当該響板より柔らかい当接部材と、
上記電磁駆動体を上記響板に対して付勢する付勢体と、
この付勢体の付勢に抗して、上記電磁駆動体を移動させ、上記響板に当接していた上記当接部材を当該響板から離間させるか、または上記電磁駆動体の駆動部分に当接していた上記当接部材を当該駆動部分から離間させ、さらにこの離間状態を保持し、その上この保持状態を解除して上記当接を許容する離間体とを備えたことを特徴とする楽音装置。
【請求項2】
上記当接部材の大きさは電磁駆動体の駆動部分の大きさより小さいことを特徴とする請求項1記載の楽音装置。
【請求項3】
上記響板には音を放射する放音体が当該響板から離間しないように接合され、
上記複数種類の楽音からなる楽音信号のうち、低音成分が上記電磁駆動体に送られ、当該楽音信号のうち、高音部分が上記放音体に送られることを特徴とする請求項1または2記載の楽音装置。
【請求項4】
上記電磁駆動体の駆動部分の表面と、上記響板の表面とはほぼ平行であり、上記当接部材の厚さはほぼ均一であり、
上記電磁駆動体の駆動部分または/及び上記響板は上記響板よりたわみが小さく、
上記電磁駆動体の駆動部分自身は音を放射しないことを特徴とする請求項1、2または3記載の楽音装置。
【請求項5】
上記響板は、ほぼ水平方向に延びており、複数の響板がほぼ垂直方向に並んで配置されていることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の楽音装置。
【請求項6】
上記電磁駆動体および当接部材を響板から離間または上記電磁駆動体を当接部材及び響板から離間させるときには、上記楽音信号の上記放音体への送り込みを禁止する、上記電磁駆動体および当接部材を響板に当接または上記電磁駆動体を当接部材及び響板に当接させるときには、上記楽音信号の上記放音体への送り込みを許容する切換手段をさらに備えていることを特徴とする請求項3、4または5記載の楽音装置。
【請求項7】
振動されて音を放射する楽器の響板と、複数種類の楽音からなる楽音信号を機械的変化に変換して、楽器の響板を駆動させて音を放射させる電磁駆動体と、を用いて、
上記響板より硬度が低く、当該響板より柔らかい当接部材を、上記電磁駆動体の駆動部分に接合させて上記響板に当接可能とさせるか、または上記響板に接合させて上記電磁駆動体の駆動部分に当接可能とさせ、 上記電磁駆動体を上記響板に対して付勢する付勢体を取り付け、 この付勢体の付勢に抗して、上記電磁駆動体を移動させ、上記響板に当接していた上記当接部材を当該響板から離間させるか、または上記電磁駆動体の駆動部分に当接していた上記当接部材を当該駆動部分から離間させ、さらにこの離間状態を保持し、その上この保持状態を解除して上記当接を許容する離間体を取り付けることを特徴とする楽音装置の生産方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−328186(P2007−328186A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160054(P2006−160054)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)
【Fターム(参考)】